日産自動車の技術戦略について 日産自動車株式会社 常務執行役員 篠原 稔 1 自動車マーケットの動向 2 日本市場:全体需要の低迷 -登録車(除く軽自動車)06年度は1977年度以来、29年振りの低水準 (千台) 6,000 6,000 バブル経済 5,000 5,000 軽規格変更 4,000 4,000 1977年 2005年から2006年にかけ 2005年から2006年にかけ て急激に全需が落ち込み て急激に全需が落ち込み 3,000 3,000 2,000 2,000 1980 1985 1990 1995 2000 2005 FY 71 FY 72 FY 73 FY 74 FY 75 FY 76 FY 77 FY 78 FY 79 FY 80 FY 81 FY 82 FY 83 FY 84 FY 85 FY 86 FY 87 FY 88 FY 89 FY 90 FY 91 FY 92 FY 93 FY 94 FY 95 FY 96 FY 97 FY 98 FY 99 FY 00 FY 01 FY 02 FY 03 FY 04 FY 05 FY 06 1975 FY 2004 Third Quarter Review 3 日本市場: 小型車へのシフト 6,698千台 軽自動車 25% 小型ハッチバック ワゴン 7% MPV・SUV 12% 5,619千台 小型車 へのシフト 36% 7% 12% 9% セダン 29% 18% セダンの縮小 スポーツカー 商用車他 4% 10% 0% 16% 14% 94年度 06年度 FY 2004 Third Quarter Review 4 日本市場: 好評価な最近の新型車 (1) スカイライン (V36) 受注台数 20,000台の受注を先代モデルよりも5ヶ月早く達成 20 (千台) 15 10 <好評価のポイント> ・新V6エンジン ・4輪アクティブサス ・室内の高級感 等 5 0 50 100 スカイライン (V36) スカイライン (V35) 150 200 (販売日数) FY 2004 Third Quarter Review 5 日本市場: 好評価な最近の新型車 (2) デュアリス (J10) 受注台数 発売開始後1.5ヶ月で1万台以上の受注を達成 20 (千台) 15 10 <好評価のポイント> ・しなやかな足回り ・手頃な価格設定 ・デザイン 等 5 0 30 60 (販売日数) 90 120 FY 2004 Third Quarter Review 6 日本市場: 好評価な最近の新型車 (3) エクストレイル (T31) 受注台数 発売開始後1ヶ月で1万台を超える受注を達成 12,500 (台) 10,000 7,500 <好評価のポイント> ・4WD性能の向上 ・スクラッチガードコート ・撥水性の高い室内 等 5,000 2,500 10 20 (販売日数) 30 40 FY 2004 Third Quarter Review 7 日本市場: 好評価な最近の新型車 (4) 東京モーターショーでのGT-R発表 全体入場者数の減少(150万人⇒140万人)に対し、日産ブース 来訪者は前回比21%増加(パンフレット配布部数ベース) FY 2004 Third Quarter Review 8 新興市場の拡大 中国 ロシア +31% +70% 3,217千台 ティアナ インフィニティG35 4,226千台 568千台 968千台 シルフィー 中南米 キャシュカイ +15% 中東 インフィニティFX +12% インド 3,015千台 3,465千台 +24% 600千台 673千台 ティーダ パスファインダー 1,494千台 1,848千台 2005年度 2006年度 FY 2004 Third Quarter Review 9 Orchardコンセプト 10 Orchardコンセプト Ⅰ. Harvest Plan 商品化される技術、性能、機能 採用時期 Ⅱ. Seeding & Growth Harvest に向け重点開発する要素技術の特定 開発促進方策の立案 組織体制、外部連携、投入後の継続的な技術改良 Ⅲ. Soil Enrichment Harvest, Seeding & Growth のために、継続的 に保有するコンピテンシー(基盤技術)の醸成 将来の Harvest に向けた基礎研究の推進 11 日産の4つの戦略的技術開発領域 各々の領域毎に、明確な目標(Vision 2015)とそれに向けた 具体的なロードマップをつくり、開発を推進 安全 Life on Board 環境 Dynamic Performance 品質・コ スト 12 日産の4つの戦略的技術開発領域 日産の技術が提供するコアバリュー: 「信頼のドライビングプレジャー 」 安全 Life on Board 環境 Dynamic Performance 品質・コ スト 13 ご紹介する技術領域 本日は、安全・環境にフォーカスして日産の先進技術をご紹介 安全 Life on Board 環境 Dynamic Performance 品質・コ スト 14 新技術の採用計画 (研究・先行開発) 投入される主な技術 先行開発費用 FY98 FY99 FY00 FY01 FY02 FY03 FY04 FY05 FY06 FY 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 15 環境技術の取り組み 16 ニッサン・グリーンプログラム(NGP) 2010 グローバル環境マネジメントの構築 長期計画・目標の策定 CO2排出量削減の取り組み強化 日産独自の商品・技術の導入 17 企業姿勢 :シンシア・エコ イノベーター 地球と将来の世代のために 地球と将来の世代のために シンシア(誠実な) シンシア(誠実な) 環境問題に対し積極的に取り組み、環境負荷を低減する 環境問題に対し積極的に取り組み、環境負荷を低減する エコ・イノベーター エコ・イノベーター 持続可能なモビリティ社会の発展のために、お客さまに 持続可能なモビリティ社会の発展のために、お客さまに 革新的な商品を提供する 革新的な商品を提供する 18 環境に関する3つの重要課題 CO2排出量の削減 エミッションのクリーン化 (大気・水・土壌の保全) 資源循環 (リデュース、リユース、リサイクルの推進*) * リデュース:Reduce(発生抑制)、リユース:Reuse(再使用)、リサクイル:Recycle(再生利用): 3R活動 19 自動車の長期CO2削減トレンド -30% -28% -44% -57~ -40%~ -100% -100% 2015 80 80 60 40 2050 20 -70%低減 2010 2020 2030 2040 2050 ガソリン ディーゼル エンジン エンジン 再生可能資源 からの水素使用 60 0 2000 100 40 20 パワーソースの改良、エネルギーの転換 によるCO2排出量比(Well to Wheel) 北米Comb.モード 100 再生可能資源 からの電気使用 新車のCO2排出量比(Well to Wheel) 短中期的には、エンジンの燃費向上が中心。 長期的には、電動車両の普及が重要。 0 燃料電池車 電気自動車 ハイブリッド車 20 環境のビジョン 技術開発の目標値 (2015年) CO2 40% 削減 (燃費60%向上・2005年比) CO2削減の考え方 クルマ, 人, 社会からのアプローチ (トリプルレイヤードアプローチ) 社会 人 クルマ - 10% - 30% CO2削減目標 21 トリプルレイヤードアプローチ 交通環境 他セクターと連動した総合的な取組み 人 燃費メータ エコ運転アドバイス 社会 人 クルマ クルマ クリーンディーゼル 高効率ガソリン 電動車 22 社会 人 ガソリンエンジン技術:VVEL*1 クルマ 2007年 北米・日本でスカイラインクーペより搭載開始 CO2排出量を約10%*2削減、エンジントルクを約10%増大 VVEL *1 Variable Valve Event and Lift *2 VVEL装着有無で比較した場合のエンジン単体でのCO2削減効果(社内測定値) 23 社会 クリーンディーゼルエンジン (M9R) 人 クルマ ルノーとの共同開発による 新技術クリーンディーゼルエンジン 技術アイテム 1600 bar コモンレールシステム z ピエゾ式インジェクター z DPF* z 可変ノズルターボ z バランサーシャフト z * DPF:ディーゼル・パティキュレート・フィルター M9R 24 国内の新しい規制に対応した クリーンディーゼルを 2008年秋にエクストレイルで日本に投入 25 将来に向けたクリーンディーゼルの開発:Tier2Bin5 日産は、ディーゼル乗用車で現在最も厳しい規制である 米国のTier2Bin5を、2003年に世界で初めてクリア 触媒システム LNT (NOx触媒) DPF 酸化触媒 26 更にクリーンなディーゼルエンジンを目指して:SULEV* 最終ゴールの大気並みの排気を目指した技術を開発中 現在Tier2Bin5に対しHCを90%削減、NOxを70%削減 HC NOx (g/km) (g/km) 0.06 0.05 0.05 0.04 0.04 -90% 0.03 0.03 -70% 0.02 0.02 0.01 0.01 0 0 Bin5 SULEV* * 米国カリフォルニア州の排出ガス規制 Bin5 SULEV* 27 社会 人 電動化技術の開発 クルマ モータ、インバータ、バッテリーは全ての電動車両における基幹技術 バッテリーは電動車両の性能・コスト・居住性に大きく影響 HEV FCV EV モーター モーター モーター インバーター インバーター インバーター バッテリー バッテリー バッテリー ラミネート型 リチウムイオンバッテリー 28 社会 新開発ラミネート型リチウムイオンバッテリー 人 クルマ 高い性能と信頼性を満足するバッテリーを開発 2009年より商品化を開始する予定 エネルギー2倍 出力2倍 2.5kW/kg 従来 ラミネート サイズ半分 140Wh/kg 従来 ラミネート 高い信頼性を既に確保 安定した結晶構造を持つ材料を使用 ½ the Size 筒型 ラミネート型 Charge Discharge ラミネート型による高い冷却性能 29 社会 エコ運転アドバイス 2007年 エコプロダクツ大賞 人 クルマ 実用燃費を最新のIT技術で把握 データに基づく燃費改善・CO2低減の運転をアドバイス 1) エコメータを見ながら運転 15.5k エコ運転 m 実燃費 2) CARWINGSのウェブサイトで 燃費を確認 燃費ランキング Gold Rank 運転アドバイス 3) 他のドライバの燃費と比較をする 4) 結果にもとづいてエコ運転を ウェブサイト上でアドバイス (C) Copyright NISSAN MOTOR CO., LTD. 2007 All rights d 30 社会 人 北京 STARWINGS プロジェクト クルマ 北京市交通情報センターとの協力による渋滞緩和プロジェクト 北京市 交通情報 センター リアルタイム交通情報 北京の1万台のタクシーからの道路交通情報 混雑 渋滞 混雑 ナビゲーション システム 混雑 最速ルート 北京最速ルート探索システム 31 安全技術の取り組み 32 日産の安全ビジョン (Vision2015) 日産車がかかわる死亡・重傷者数の低減 2015年までに死亡・重傷者数を半減 究極目標は実質ゼロ 7.6 実質ゼロ 1995 2004 3.14 2.23 1.57 半減 実質ゼロ 1995 半減 11.2 2004 2015 2015 日産車1万台あたりの 死亡・重傷者数 日産車1万台あたりの 死亡者数 日産車1万台あたりの 死亡・重傷者数 15.3 15.2 11.9 半減 7.3 実質ゼロ 1995 2004 2015 33 安全に対する取組み “セーフティ・シールド” ~「クルマが人を守る」という考え方~ 通常運転から衝突後まで、運転状況に応じて適切な技術を提供 事故そのものを減らし、究極は死亡重傷者をゼロに 危険が顕在化していない 例:自動配光システム(AFS) 危険が顕在化している 例:車線逸脱防止(LDP) 衝突するかもしれない 例:横滑り防止装置(VDC) 衝突が避けられない 例:被害軽減ブレーキ / プリクラッシュベルト 衝突・衝突後 例:衝突安全ボディ 34 安全に対する取組み (本日ご紹介する技術) “セーフティ・シールド” ~「クルマが人を守る」という考え方~ 通常運転から衝突後まで、運転状況に応じて適切な技術を提供 事故そのものを減らし、究極は死亡重傷者をゼロに 危険が顕在化していない アラウンドビューモニター (AVM) ディスタンス・コントロール・アシスト (DCA) SKY プロジェクト 危険が顕在化している レーン・ディパーチャー・プリベンション (LDP) 衝突するかもしれない 衝突が避けられない ポップアップエンジンフード 低フリクションシートベルト 衝突・衝突後 35 1938年に米国心理学者のJ.Gibsonが提唱した 「ぶつからない走り方」 危険領域を知覚し、その領域に触れない空間を走る 険 危 に いか バ イ ラ ド 、 し 出 を検 ? か る え 伝 に ー Field of safe travel 出典:Gibson,J.J., college,S. and Crooks,L.E. (1938). A theoretical field-analysis of automobile-driving. The American Journal of Psychology 36 前方の危険はドライバーの目と耳と足裏に伝える ディスタンス・コントロール・アシスト(DCA) 世界初 -インテリジェントペダルー 2007年冬 日本でフーガより搭載予定 車間検知レーダー ペダルが押し戻される 37 側方の危険はドライバーの目と耳と身体に伝える レーン・ディパーチャー・プリベンション(LDP) 世界初 2007年冬 北米でインフィニティEXより搭載予定 カメラによる白線検知 ブレーキ制御による逸脱防止 38 駐車時は周囲を上空から見渡す アラウンドビューモニター (AVM) 世界初 2007年10月 日本でエルグランドより搭載開始 4つの高精度カメラで全周をとらえる 上空映像に合成 39 ポップアップエンジンフード 2007年10月 日本でスカイラインクーペより搭載 歩行者との衝突時にエンジンフードを上げ、頭部への 衝撃を緩和 アクチュエータ作動前 アクチュエータ作動後 40 低フリクション・シートベルト 新型エクストレイルより搭載開始 引き出す時に軽く、着用しても圧迫感が少ない 装着時の使い易さ・快適性を向上 引出し力低減 圧迫感低減 変化杉綾織 ベルトをソフトにする 新しい織り方 引き出し力を約10%低減 圧迫感を約20%低減 41 SKY(スカイ)プロジェクト (06年より開始) Start ITS from Kanagawa, Yokohama 神奈川県で地方自治体、関連企業と協力して実証試験を開始 渋滞改善 プローブ情報を活用した、 動的経路誘導システム 安全 見えない位置の車や歩行者 の情報を伝え、事故を低減 パートナー 日本新交通管理システム協会 (UTMS) 警察庁、神奈川県警察本部 42 飲酒運転事故の実態 飲酒運転による死亡事故件数は減少しているが、 依然死亡事故の約10%を占めている 死亡事故件数 (件) 1500 1391 1276 1000 611 500 0 1995 2000 2005 飲酒運転が関与した死亡事故件数の推移(国内) Japan: NPA Traffic Green Paper (Subject 1 fatal accidents) 43 ナビを使った飲酒運転防止の呼びかけ 2007年6月より搭載開始 カーウイングスナビの画面上に、飲酒運転防止の メッセージを表示 夕刻から夜間の起動時にメッセージ表示(17:30-翌5:00) 44 飲酒運転防止コンセプトカー 総合的に飲酒状態を検知する技術を開発中 表情・動きからの検知 表情(ねむさ)判断 アルコールの検知 アルコールセンサ シフトノブより検出 車両挙動からの検知 ふらつき運転 ふらつき判断 操舵角 ハンドル操作の乱れ ハンドル操作 の滑らかさ 滑らかさ 低減 10sec 45 自治体と共同したアルコールインターロックの検証 2007年7月より、3地域で実証実験を開始 アルコール インターロックシステム 連携自治体 栃木県 県庁(1台) 上三川町(2台) 福岡県 北九州市(2台) 神奈川県 厚木市(3台) 46 R&D体制の強化 47 日産R&D拠点(グローバル) 日産のR&Dはグローバルに21拠点、19,400人の体制 NTCE(UK) NTCE(B) NTCNA(AZ) NTCNA(FH) DNTC/NCIC DFL NTCE(S) NTC YNTC (RNTBCI) &NATC NTCSEA NTCNA (NMEX) NBA NSA 48 NTC/NATCの役割 NTC&NATCで開発した技術、プラットフォームはグローバルに 発信され、設計・製造が行われる。 NTCE(UK) NTCE(B) NTCNA(AZ) NTCNA(FH) DNTC/NCIC DFL NTCE(S) NTC YNTC (RNTBCI) &NATC NTCSEA NTCNA (NMEX) NBA NSA 49 グローバルな開発能力の強化 インド、ベトナム、メキシコ等に人材を求めて開発を展開 NTCE(UK) NTCE(B) NTCNA(AZ) DNTC/NCIC NTCE(S) RNTBCI NTCNA(FH) DFL NTC&NATC YNTC NTCSEA NTCNA (NMEX) NBA NSA 50 国内R&D拠点の強化 2006年以降、R&D拠点の強化を進めてきている 北海道陸別試験場 (2006.09) 先進技術開発センター(2007.05) GRANDRIVE (2007.09) テクニカルセンター (2007.10) 51
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