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日本消化器外科学会 第 69 回日本消化器外科学会総会【2014 年 7 月】
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[RS-7] 要望演題 7:食道癌サルベージ手術の実際と成績
座長:大平 雅一(大阪市立大学大学院腫瘍外科)
日時:2014年7月16日(水)13:10∼14:00
会場:第4会場 (郡山市民文化センター 4階 第4会議室)
RS-7-1 食道切除または根治的化学放射線療法後のリンパ節再発に対す
るリンパ節切除の意義
RS-7-2 Salvage 手術における合併症回避のための工夫とその成績 ―
salvage 手術 90 例の経験から―
渡邊 雅之:1、峯 真司:1、志垣 博信:1、大矢 周一郎:1、佐野 武:1、山口 俊晴:2、
吉田 直矢:2、馬場 祥史:2、井田 智:2、馬場 秀夫:2
1:有明病院 消化器外科、2:熊本大学大学院 消化器外科学
谷山 裕亮:1、宮田 剛:1、亀井 尚:1、中野 徹:1、阿部 薫夫:1、桂 一憲:1、桜井
直:1、手島 仁:1、日景 允:1、大内 憲明:1
1:東北大学大学院 先進外科学
【はじめに】食道扁平上皮癌に対する食道切除や根治的化学放射線療法 (dCRT) 後の
リンパ節再発は最も多い再発形式のひとつであるが,根治的治療後のリンパ節再発に対
するリンパ節切除の意義は明らかではない.【目的】食道切除,dCRT 後のリンパ節再
発に対する切除の意義を明らかにする.【対象および方法】2004 年 4 月から 2013 年
3 月に食道切除または dCRT 後のリンパ節再発に対して切除を施行した 24 例の短期
および長期成績を retrospective に解析した.食道切除後の再発に対する二期的切除が
17 例 (頸部 11 例,縦隔 4 例,腹部 2 例),dCRT 後の遺残・再燃に対するサルベージ
リンパ節切除が 7 例 (頸部 3 例,縦隔 1 例,腹部 3 例) であった.
【結果】術後合併症
は 24 例中 3 例 (12.5%) に認められたがいずれも保存的に軽快し,在院日数の中央値
は 7 日であった.食道切除後のリンパ節再発に対する二期的切除を施行した 17 例の
3 年無再発生存率・全生存率は 51.5%・75.5% であった.頸部リンパ節再発と縦隔・腹
部リンパ節再発に分けて検討すると,3 年全生存率はそれぞれ 90.9%,44.4% であり,
頸部リンパ節再発例で有意に良好であった (P=0.0097).dCRT 後の遺残・再燃 7 例の
サルベージリンパ節切除後の無再発生存期間・全生存期間の中央値は 2 か月・15 か月
であった.リンパ節切除後の再再発は 15 例に認められたが,食道切除後のリンパ節再
発例 8 例では二期的リンパ節切除後の局所再発が 1 例 (12.5%) であったのに対して
dCRT 後のサルベージリンパ節切除例 7 例中 6 例 (85.7%) が切除局所または近傍の
リンパ節に再発を認めた.【まとめ】食道癌に対する根治的治療後のリンパ節再発の切
除は安全に施行しえた.食道切除後のリンパ節再発に対する二期的切除による局所制御
効果は高く,特に頸部リンパ節再発に関しては良好な予後が期待される.一方,dCRT
後のサルベージリンパ節切除例に対しては切除による局所制御が困難な症例が多く,そ
の適応は慎重に判断すべきと考えられた.
RS-7-3 当科における食道癌サルベージ手術の治療戦略の工夫と治療
【背景】 食道癌の salvage 手術は通常手術と比べ合併症の頻度が高く,周術期管理に難渋す
ることが多い.当科では種々の合併症の経験から 1) 厳密な R0 手術可能症例の選択,2) 気道
血流に配慮したリンパ節郭清縮小と気管支動脈の温存,3) 再建臓器の血流評価及び臓器血流
を意識した管理,4) リハビリ介入による早期離床などの合併症対策に取り組み症例を重ねた.
【対象と方法】 2002 年 1 月から 2013 年 10 月にかけて salvage 食道亜全摘を行った 90 例
を対象とし,これらの症例を年代別に前期:2001-2005,中期:2006-2009,後期:2010-2013 と
分類した.84 例が 5FU+CDDP を主とした化学療法併用,残り 6 例は照射単独であった.
CRT 後の CR 後再燃例は 46 例,non-CR は 44 例 (遺残 41 例,狭窄 3 例) であった.手
術は鏡視下食道切除 83 例,開胸食道切除 4 例,食道抜去 3 例であった.同時期に行った術
前未治療の通常手術 256 症例を比較対象とした.これらの生存率を比較するとともに年代別
合併症の推移を検討し,合併症対策の効果を検討した.
【結果】salvage 全症例の 5 年生存率は 29% であった.そのうち R0 症例の 5 年生存率は
38% であったのに対し R1,2 症例では 2 年以上の長期生存は認めていない.R0 切除率は中
期で 68% であったが R0 切除の適応を厳密にした後期では 83% となった.胸部リンパ節郭
清個数は前期で中央値 14 個に対して中期・後期ではともに 7 個となったが,郭清を手控えた
ことによる予後への影響は認められなかった.気管支動脈の温存率は前期では 38% に対して
中期・後期では 62%,57% であった.salvage 症例の合併症に関して,手術関連死は前・中
期それぞれ 1 例と 3 例に対し後期では認めておらず,再手術も前・中期では 24% の症例に
行われたのに対し後期では 8% であった.気管壊死や気管切開・穿刺を要した呼吸不全では
有意差こそ認められなかったものの減少傾向であり,術後肺炎は salvage 手術群で 27% か
ら 8% へと有意差を持って減少した.縫合不全は salvage 症例において前期・中期でそれぞ
れ 29%,31% であったが,後期では 9% と有意差を持って減少した.しかし通常手術群で
も前・中期で 19%,21%,後期で 9% と有意差を持って減少していた.また術後在院日数は
salvage 群,通常手術群ともに有意差を持って短縮していた.
【考察】salvage 手術の成績向上のためには適応を厳密にし,緻密な手技・管理を行う事が肝
要であり,術後合併症の頻度も通常手術と同程度にまで減らせることができると考えられた.
RS-7-4 食道癌サルベージ手術の実際と成績
成績
錦 耕平:1、曽我部 俊介:1、岩間 密:1、牧野 知紀:1、白石 治:1、安田 篤:1、新
海 政幸:1、今野 元博:1、今本 治彦:1、安田 卓司:1
1:近畿大学医学部 上部消化管
【はじめに】化学放射線療法 (CRT) 後の遺残,再発食道癌に対する救済治療として
salvage 手術が根治を望める唯一の治療となるが,組織の瘢痕化,虚血性変化による
高い合併症,在院死亡が問題とされている.当科での salvage 手術においても 2001
年-2009 年において遺残症例に対する R0 率は 60% と低く,術後も約半数に縫合不
全を認め,致死性肺炎や気道壊死などにより在院死亡率 (18.2%) も高かった.また,
領域内再発/遠隔再発:21.2%/30.3% に認め,OS(1y/3y/5y:57.6%/42.4%/24.4%) と予後
不良であった.そこで,根治性,安全性を求める手術手技,治療戦略の改善を行った.
【改善点】1.手術手技:瘢痕組織内での盲目的な手術操作は術中臓器損傷や臓器血流障
害を招く恐れが高く,常に温存する臓器の剥離層を意識し,それを連続させて面を形成
する剥離手技.2.縫合不全対策:胃噴門部の照射野を外す細径胃管,照射野内の食道
も長く残さず瘢痕組織での吻合回避,吻合部での圧迫回避 (必要に応じて胸鎖関節切
除),胃脾間膜脂肪織や大網による吻合部の被覆と死腔充填.3.致死性肺炎対策:呼吸
筋温存目的での HALS 手技,重症例では二期分割,周術期呼吸リハビリの介入.4.気
道壊死対策:気管支動脈,気管鞘内の lateral longitudinal anastomosis の温存.5. リ
ンパ節郭清:根治 CRT 後の違残例は局所も領域内も制御不良で通常の郭清が必要であ
り,適切な 2 領域,3 領域郭清の施行.【結果】2009 年 1 月以降,根治 CRT 後の再
発 salvage 手術症例 5 例において肺合併症の為,3 例に 2 期再建を行い,有茎空腸皮
下再建を行った 1 例に縫合不全は認め,2 例に誤嚥性肺炎は認めたが,在院死は認め
なかった.また,cT4(cT3.5) 局所進行胸部食道癌に対する salvage 手術を前提とした
術前 50Gy 化学放射線療法行う治療戦略を開始し,現在まで 20 例に施行.一期/二期
分割:18/2,郭清範囲 (D2/D3:2/17),R0 率 90%,術後合併症 (縫合不全/肺炎:1 例/7 例
(内,再挿管 3 例)),在院死 2 例 (10%),再発形式 (領域内再発/遠隔再発:0/6(30%)),
OS(1y/3y:87.8%/64.1%) と比較的良好な成績が得られている.【結語】salvage 手術の
リスクは未だ高いものの,手術手技の改善,計画された salvage 手術の治療戦略によ
り予後向上に寄与すると考えられた.
第69回 日本消化器外科学会総会
細川 正夫:1、坂下 啓太:1、吉川 智宏:1、澄川 宗祐:1、木ノ下 義宏:1、久須美
貴哉:1、西田 靖仙:1、小野寺 祐也:2、原田 慶一:3、明神 美弥子:3
1:恵佑会札幌病院 消化器外科、2:恵佑会札幌病院 放射線診断科、3:恵佑会札幌病院
放射線治療科
【初めに】
局所進行食道癌は予後不良であり,手術単独による治療成績向上は期待できない.
根治的化学放射線治療 (CRT) を多数行った経験より,安全性に信頼できる CRT 及び手術を組み
合わせた治療を始めたが,その初期成績を示す.
【対象と方法】
化 学 放 射 線 治 療 は 放 射 線 量 50.4Gy,症 例 に よ り 60Gy,化 学 療 法 (CDDP 70mg/m2 , 5-FU
700mg/m2 )x5 2 コースを行う.2012 年より CT,MRI,EUS による壁深達度が T3.5(3 以深で 4
も疑われる) で遠隔転移がない症例に,3 領域照射野を伴う CRT をおこなう.治療後 3-4 週で内
視鏡所見及び生検,PET-CT により主病巣の SUVmax 3.0 以上で局所癌遺残が疑われる症例に
は積極的切除をおこなっている.
手術は通常の 3 領域リンパ節郭清を伴う食道癌根治手術とほぼ同じである.頸部食道胃管吻合
は Collard 変法が第 1 選択である.手術室にて気管チューブ抜管である.現在まで 36 例にこの
治療がなされた.
男 31 例,女 5 例,初診時平均年齢 男 62.5 歳,女 64. 0 歳である.
主 病 巣 の 占 居 部 位 は ,Ce/Ut/Mt/Lt/Ae 3/5/20/7/1,C Stage は Ⅰ/Ⅱ A/Ⅱ B/Ⅲ/Ⅳ A/Ⅳ B
0/2/1/20/11/2 である.
組織型は扁平上皮癌 34 例,腺癌 2 例である.
【成績】
術式は,右開胸開腹食道摘出,胸骨後経路頸部食道胃吻合 29 例,胸壁前経路 2 例,胸腔内食道
胃吻合 2 例,後縦隔経路による咽頭胃吻合 3 例である.平均手術時間 275 分 (4 時間 35 分),平
均出血量 471ml であった.
術後合併症は,手術直接死亡,在院死亡はなく,吻合部縫合不全 13.9%,人工呼吸器装着例はな
かった.
全例の 6,12,18 ヶ月の粗生存率は各々 95.8%,89.4%,70.4% である.
死亡 4 例はいずれも癌死であり,癌性胸膜炎 2 例,多発肝転移 1 例,多発骨転移 1 例であった.
【まとめ】
局所進行食道癌 (T3 以深あるいは T4 を疑う T3.5) に対し,根治的 CRT と同じ照射野および線量
の治療後手術 (サルベージ手術) の短期治療成績を述べた.手術直接死亡,在院死亡はなく,術
後合併症も許容される範囲と思われる.術後生存は経過観察期間が短いが,12 ヶ月粗生存率は
89.4% であり,局所進行食道癌としては期待される成績であり,今後も継続する予定である.
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
日本消化器外科学会 第 69 回日本消化器外科学会総会【2014 年 7 月】
RS-7-5 頚部食道癌に対するサルベージ手術の現状と可能性
2
RS-7-6 当院における食道癌に対する化学放射線療法後の食道切除術の
検討
小郷 泰一:1、中島 康晃:1、川田 研郎:1、東海林 裕:1、宮脇 豊:1、了徳寺 大郎:1、
藤原 尚志:1、奥田 将史:1、永井 鑑:1、河野 辰幸:1
1:東京医科歯科大学附属病院 食道・胃外科
気賀澤 悠:1、竹内 裕也:1、真柳 修平:1、中村 理恵子:1、高橋 常浩:1、和田 則
仁:1、川久保 博文:1、才川 義朗:1、大森 泰:1、北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科
【緒言】教室における頚部食道癌サルベージ手術の対象と治療成績を検討し,今後の治
療戦略について考察する.
【対象と方法】2006 年以降,教室で経験した頚部食道癌 54 例中,初回治療として根治
的化学放射線療法 (CRT) を選択した症例は 18 例であった.このうち 5 例は CR を
維持しているが,6 例は病勢の悪化によりサルベージ手術とならなかった.今回,CRT
後の遺残・再発に対してサルベージ手術を施行しえた 7 例 (男性 6 例,女性 1 例,年
齢中央値 66 歳) を対象にサルベージ手術の治療成績を検討した.
【結果】治療前診断は Stage III が 1 例,Stage IVa が 6 例であった.4 例が下咽頭浸
潤を認め,4 例が気管 T4 症例であった.CRT 治療効果は CR2 例,PR2 例,奏効率
57.1% であった.サルベージ手術選択理由としては CR・PR 後再燃が 4 例,CRT 後
遺残が 2 例,CRT 施行中の病勢進行が 1 例であった.CRT からサルベージ手術まで
の期間は中央値 295 日であった.6 例に対し咽喉食摘遊離空腸再建術,1 例に対し喉
頭温存非開胸食道抜去胃管再建術を施行し,1 例が R2 手術となった.合併症は遊離空
腸グラフト閉塞が 1 例,後出血が 1 例でそれぞれ再手術を要した.その他肺炎を 1
例,創感染を 3 例に認め,術後在院日数は中央値 38 日であった.術後再発は 3 例で,
全例術野外リンパ節に 1 年以内に再発を認めた.1 年生存率は 57.1%,3 年生存率は
14.2%,生存期間中央値は 19 ヶ月であった.
【考察】局所進行頚部食道癌治療においては,喉頭温存目的に CRT を選択することが
多いが,down stage が得られた症例でも,食道気管瘻形成や根治性を理由に咽喉食摘
が選択され,喉頭温存率は低かった.頚部食道癌のサルベージ手術は浸潤臓器の合併切
除により R0 手術が期待できるが,高度進行癌を対象とし,手術適応決定の際に喉頭温
存可否が加味されるため病勢が制御不能な状態で手術が行われることが多いため,良好
【背景】根治的化学放射線療法 (以下 CRT) 後の食道癌遺残・再発症例に対する手術は手
術関連死を含め合併症の頻度が高く,安全性と根治性の確立が必要とされている.当科
では 2006 年以降,合併症の予防を目的とした周術期ステロイド・シルベスタットナト
リウムの使用,術後早期経腸栄養管理,他科と連携した周術期リハビリテーション,口
腔ケアを行っている.年代毎および放射線照射量の違いによる周術期合併症の発生頻度
に関して検討した.
【対象】2000 年 1 月から 2012 年 12 月までに CRT 後の遺残・再発に対して食道切除
術を施行された胸部食道癌 52 例を対象とした.
【方法】照射線量 50Gy 以上の根治的 CRT 後に食道切除手術が施行された群 (Salvage
群) と 50Gy 未満で食道切除術を施行された群 (non-Salvage 群) の周術期合併症に関
して比較した.また,2006 年前後での周術期合併症に関しても比較検討を行った.
【結果】Salvage 群,non-Salvage 群ともに 26 例であった.治療開始前ステージは
salvage 群 (I/II/III/IV=8/4/5/9),non-Salvage 群 (I/II/III/IV=0/3/7/16),術式は Salvage
群で 1 例のみ非開胸食道抜去術が施行された以外は右開胸開腹胸部食道全摘術が施行さ
れた.縫合不全は salvage 群が 5/26 例 (19.2%),non-Salvage 群が 5/26 例 (19.2%),
肺炎は Salvage 群が 4/26 例 (15.3%),non-Salvage 群が 4/26 例 (15.3%) であり,2
群間に差は認められなかった.年代別の比較では,2006 年以前が 30 例 (58%),平均放
射線照射量 49.6Gy であったのに対し,2006 年以降が 22 例 (42%),平均放射線照射量
52.2Gy であり,両群間に放射線照射量の差は認めなかった.(p=0.16) 合併症の比較で
は縫合不全と肺炎が 2006 年以前はそれぞれ 7/30 例 (23.3%),肺炎 6/30 例 (20.0%) で
あったのに対し,2006 年以降は縫合不全 3/22 例 (13.6%),肺炎 2/22 例 (9.1%) と合併
症の減少傾向を認めた.
な長期成績がえられないと考える.放射線照射野内での徹底郭清や遊離空腸再建におけ
【考察】本検討では術前放射線照射線量は合併症の発生に影響を与えず,周術期のステロ
る血管吻合はグラフト閉塞や創感染に伴う動脈破綻など致死的な合併症につながる危険
イド・シルベスタットナトリウム,術後早期経腸栄養管理,リハビリテーション,口腔
性が高く,注意深い術中・術後管理も必要である.頚部食道癌に対するサルベージ手術
ケアなどの合併症予防対策を積極的に行う事で合併症の減少が認められた.CRT 後の遺
はこのような特殊性を伴うが,局所制御力に優れるため,適切な時期に治療を行えば有
残・再発症例に対する手術に関して,今後も安全性および根治性の向上のため,更なる
効な治療手段になりうると考えられた.
工夫と検討が必要と考えられた.
第69回 日本消化器外科学会総会
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery