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EU(欧州連合)における商標権消尽
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1. EUにおける商標権消尽原則の定義は?
1988年12月21日付け第1回欧州共同体指令(89/104/EEC)は欧州共同体加盟国間国内法を調和させる目的で発令さ
れ、同指令第7条(1)は次のように規定している :
"商標権所有者自身によるか、あるいは所有者の同意に基づいて加盟国市場*に置かれた商品について商標権者は、商標権
を理由にその商品の使用を禁止することはできない"
即ち、この条文は、"ある商品がEEA(欧州経済圏協定)加盟国の一つに商標権者の同意のもとに輸入された時、商標権者
は、その商品が別のEEA圏内の国に再輸入されてもそれに反対することはできない。"ということを意味している。
欧州裁判所は上記7条(1)、即ち商標権消尽の地理的適用範囲をどう解釈するかについて判断する機会を得ている。
*加盟国市場とはEU加盟国(フランス、ドイツ、イタリア、英国、アイルランド、ベルギー、リュクセンブルグ、オラン
ダ、ギリシャ、スペイン、ポルチュガル、オーストリア、デンマーク、スエーデン、フィンランド)及びEFTA(欧州自由
貿易協定)加盟国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェイ)でこれら加盟国がEEA(欧州経済圏)を形成して
いる。
2. 欧州裁判所の商標権消尽についての解釈
1999年7月1日付け判決(事件C-173/89、Sebago Inc.,& Ancienne Maison Dubois対G-B Unics)、いわゆる
セバゴ事件において共同体商標指令7条(1)は次のように解釈されるべきであるとしている:
"商標権は共同体、(EEA協定発効後はEEA圏内)で商標権所有権者自身によるか、またはその同意に基づいて市場に置
かれた商品についてのみ消尽する。また《商標指令7条(1)をもって、EEA圏外市場において商標権所有者によって置かれ
た商品に対しても消尽を認めるかどうかについて、EEA加盟国が勝手に国内法を定める自由を与えている》、と解釈する
ことはできない。
また商標指令7条(1)の言うところの消尽が成立する為には、商標権者の同意は、各商品1個ごとに与えられなければ
ならない"
本判決は、これ以前に出され、EU(欧州連合)に関する限りにおいてはっきり国際消尽を否定した欧州裁判所判決(1998
年7月16日、事件C-355/96、Silhouette Internaitonal Schmied GmbH & Co.KG 対Hartlauer
Handelsgesellschaft mbH)の内容を再確認するものであった。
本判例は、商標権者の国籍がEU加盟国の国籍であるかどうかに関わらず、また該当商品がEU加盟国原産であるかを問わ
ずに適用される。
3. 欧州裁判所の商標権消尽原則についての上記の解釈がEU加盟国に及ぼす影響
3.1 商標付き商品流通に関して
EU圏内消尽の原則適用によって、商標権者はEU各国とそれ以外の国々への流通戦略を変えることが可能となった。EU圏
内では独占流通代理店網を構築することができる。
しかしながら、上記判例だけで、商標権消尽に対する全ての問題が解決されたわけではないので、EEA圏外で流通契約を
結ぶ時には、EEA圏内への直接・間接の(再)輸入を禁止する条項を契約書に明記することが望まれる。
何故なら1999年5月18日付け英国高等法院(Zino Davidoff SA対A&G Imports Ltd.)の出した判決に関連して英国高
等法院が欧州裁判所に判断をあおいでいる問題がまだ判決待ちとなっているからである。本件は、Davidoffの商標をつけ
た商品がシンガポールから英国に逆輸入された事件に関している。
問題は、Zino Davidoff社が、シンガポールの流通代理店との契約書署名時にアジア地域で販売されている商品のEEA
圏内への直接あるいは間接の流通(輸入)を禁止すると明文化しなかったところにある。
英国高等法院が欧州裁判所に判断を仰いだ問題は次の通り:
"1988年商標法指令が商標権所有者の同意に基づき、共同体内に置かれた商品について言及しているからには、その合意
の範囲には明示的なものも、黙示的なものも、また直接の合意も、または間接の合意も包含すると解釈されるべきかどう
か?"(事件、C-415/99、C-416/99)
欧州裁判所の判決を待つ間、商標権者が自ら許諾してEEA圏外においた商品がEEA圏内に再輸入(平行輸入)されることを
望まない場合には、流通代理店との契約時にその旨を明記することが強く薦められる。
3.2 商標権者がとれる法的制裁措置について
商標権者が流通業者にEEA圏内における該当商品流通を許可しなかったのに、その流通業者がEEA圏内に商品を置いた時
には、商標権者は自分の商標権を主張して、流通業者の商品の販売禁止を要求できる。
つまり、商標権者は、例えその商品が正真の商標をつけたものであっても、EU圏内に平行輸入している上記の流通業者に
対し商標侵害を主張し輸入の禁止を求めることができる。
例えば、シルエット事件では商品はシルエットの商標をつけた流行遅れのオーストリア製品であったが、一旦ブルガリア
に輸出されたものを別のオーストリアの業者が買い付け、オーストリアに再輸入されたものであった。
セバゴ事件は、セバゴの正真の商標をつけたエルサルバドルで生産された商品が、ベルギーの業者によって買い付けら
れ、ベルギーに輸入されたものであった。
セバゴ事件で、(ベルギーでの)販売禁止を請求した商標権者が、アメリカ国籍であったことは興味深い。
3.3 フランスへの影響
フランスは1988年の商標指令発令より以前に欧州共同体内の商標権消尽原則を既に採用していた。
現行フランス知的所有権法第713-4条は、1993年12月31日付け法律第93-1420号によって変更が加えられ、商標指令
第7条(1)を次のように採用している。
"商標権所有者自身によるか、あるいは所有者の同意に基づいて欧州共同体市場あるいはEEA(欧州経済圏)に置かれた商品
について商標権者は、商標権を理由にその商品の使用を禁止することはできない"
消尽原則が適用とならない並行輸入に対しては商標権侵害訴訟及び侵害差押さえを要求できる。それに加え不公正競争で
も訴えることが可能である。
一例では最近オランダ領アンチーユ諸島から商標権者の同意なしに正真の商品をフランスに持ち込み販売した業者が不公
正競争と商標権侵害を理由に罰せられた。損害賠償金判決額は150万フランであった。
(1998年9月17日リヨン控訴院判決、Ste Kiabi対Ste Viastel)
***
商標権消尽原則は政治的経済的理由によって動くものであり、今後も消尽原則は変化していくと考えた方がよい。
しかしながら、最近の欧州裁判所の判決は、今までフランスが採ってきた工業所有権の強い保護の方針を支持し、はっき
りと商標権者に有利な方向に、また商標権者が自らの流通網を構築する権利を保護する方向に傾いている。
これによって、欧州地域に商品を流通させる最も良い方法はEU(欧州連合)内で自らの商標を保護することにあると、欧州
地域での商品販売を考えている外国企業に理解してもらえるようになることが期待される。
© Cabinet Beau de Lomenie/Aurelia Marie/2000年10月
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