オーケストラの指揮者のように

オーケストラの指揮者のように
RI 元会長 クリフォード・ダクターマン
オーケストラの指揮者のように
皆さんはこの一週間、正式にロータリーの地区ガバナーになるための研修を受けられました。ここでもう
一つ、ご自分に問いかけていただきたいことがあります:来年度、皆さんは、どんな「ロータリーリーダー」
になろうとお思いでしょうか。
インターネットで「leadership((リーダーシップ)」という言葉を検索すると、400万件以上の検索結果が出
てきます。しかし、その中で、ロータリー地区ガバナーのリーダーシップに触れたものは、一つもないでし
ょう。リーダーシップにはさまざまなスタイルがあります。しかし、ボランティアであるロータリアンの集まりを
指導するリーダーとして皆さんが担う仕事は、一般的なリーダー職とは異なります。地区ガバナーにふさ
わしいリーダーシップのスタイルとは、具体的にどのようなものでしょうか。
軍隊の曹長のように振舞うガバナーは長続きしないでしょう。どんなにがんばっても、クラブ会長が兵隊
のように列を成して指令に従うことはないでしょう。
また、鞭で動物を調教するようなリーダーシップも、まったく効果的とはいえません。クラブ会長を思いの
ままにあやつることなどできません。
あるいは、フットボールのコーチのように選手たちを怒鳴り散らして指導するのも、ロータリーのガバナー
にふさわしいスタイルとは思えません。
ボランティアであるロータリアンのリーダーとして成功するために必要なスキルは、特別なものであり、個
人的なスキルです。ボランティアを解雇することもできなければ、新しいクラブ会長を雇うこともできませ
ん。
長年、ロータリーの優れたリーダーたちを見てわかったことは、彼らはオーケストラの指揮者のようなリー
ダーシップスキルと気質を備えているということです。オーケストラにさまざまな楽器、スキル、才能を持
つ演奏者が集まっているように、ロータリーでも地区やクラブのリーダーは、さまざまな能力、関心、体験
を備えた人びとです。
まず、バイオリンやチェロなどの弦楽器のセクションがあります。ロータリーでそれに相当するのは、地区
にとって非常に重要な存在である一方、常に神経を使って課題に敏感に反応できるロータリアンが思い
浮かびます。彼らは、次年度のテーマを支える人びとです。
クラリネット、オーボエ、ファゴットなどの木管楽器は、幅広い音域を担います。ロータリーで木管楽器に
当たるのは、リーダーシップチームの中でも物静かなメンバーで、ありとあらゆる仕事を根気よく担当して
くれる人たちです。たまに、キーキーという音が1~2回聞こえてくるかもしれません。
そして、トランペット、トロンボーン、チューバなど金管楽器のセクションがあります。このセクションは、い
つも大声で明確に声が聞こえてくるロータリアンたちです。声が挙がれば、何か意見があるとすぐわかり、
2016 年国際協議会
1
オーケストラの指揮者のように
RI 元会長 クリフォード・ダクターマン
それも明確に表現されます。時々、チューバのような人だと、「バーン」と力強い声が聞こえるだけかもし
れません。
オーケストラの後部には、ドラム、シンバル、ベルなどの打楽器が並びます。どのロータリークラブにも、
こうした打楽器のような会員がいるのではないでしょうか。つまり、クラブや地区の定番プロジェクトで太
鼓をたたいて盛り上げたり、新しい会員や活動をドラムロールで盛大に迎え入れてくれる、クラブに欠か
せない会員です。
どのオーケストラでも、裏方で働く人びとがいます。彼らは、舞台を設営し、椅子を並べ、照明や音響を
担当します。ロータリーの地区で言えば、仕事を着実にこなしてくれる堅実な会員です。常に準備がで
きていて、苦情を言うことはほとんどありません。彼らは、会場監督やRI会長代理のエイドによく任命され
ます。
そしてもちろん、コンサートでは実際の演奏が行われます。この演奏こそが、何時間もの練習、終わりの
ないリハーサル、入念な準備の最終結果です。地区では、地区大会がこれに当たるでしょう。地区大会
は、地区の素晴らしさを実際に見てもらえる大舞台であり、次年度の一番大きな公演となります。
それから、交響楽団には、音楽評論家がついてまわります。毎回の演奏について、意見や感想を述べ
ます。ロータリーで、こうした評論家に当たるのは、パストガバナーでしょう。
オーケストラにさまざまな楽器や演奏家が参加するように、地区内でも多様なクラブがあることに気づく
でしょう。皆さんの役割は、オーケストラの偉大な指揮者のように、リーダーシップを発揮して、弦楽器、
木管楽器、金管楽器、打楽器を取りまとめ、美しく調和されたシンフォニーを奏でることです。
では、どうしたらそれが可能でしょうか。2016-17年度に皆さまがガバナーとして、地区内のロータリアンを
まとめるには、どのようなリーダーシップやマネージメントのスキルが必要でしょうか。
オーケストラ指揮者のスキルに注目してみましょう。
1. 準備ができている。指揮者は、演奏する音楽を熟知しています。楽譜をよく理解し、優れたリーダー
になるために、毎日練習し、勉強を積みます。最高の演奏に欠かせない一つひとつの音符や記号を把
握しています。自分の準備も整えるとともに、演奏家一人ひとりが自分の能力を最大限に引き出せるよう
手助けします。
2. 耳を傾ける。偉大な指揮者は、常に耳を傾けます。少しでも音程が外れていればそれをキャッチで
きます。音の組み合わせを聴いて、絶妙なコンビネーションを生み出すことができます。つまり、聴く耳を
持っています。
3. 分かちあう。オーケストラの指揮者は、自らの経験を分かち合い、自分の知識に基づいて指導を行
います。リーダーが音楽のテンポ、ボリューム、そして雰囲気を決めますが、いつも分かち合いの心がな
くてはなりません。
2016 年国際協議会
2
オーケストラの指揮者のように
RI 元会長 クリフォード・ダクターマン
4. 励ます。偉大な指揮者は、音楽家を励まし、優れた演奏を称えます。全体の構成を見て、一部を強
めたり、ほかの部分を弱めたりします。演奏が終わると礼をしますが、常にオーケストラ全体に拍手を送り、
ソロの演奏家を称えます。指揮者はすべての演奏家を励まし、称えるのです。
5. 発展を促す。演奏家は技能の高い順に着席しますが、上のレベルへ進めるよう、指揮者が演奏家
を育成します。ご存知の通り、第一バイオリンの首席奏者がコンサートマスターとなり、指揮者に最も近
い席に座ります。各楽器ごとに演奏者の音楽的才能を伸ばし、高いレベルの演奏ができるよう指揮者が
指導します。
6. 演奏する。オーケストラの最終目的は、人びとに喜んでもらえる演奏をすることです。さまざまに異な
る部分が一体となって、美しいコンサートを作り出します。指揮者のスキルが一般の目にとまるのは、こ
のときです。指揮者の下、すべての演奏者が最高のコンサートを実現します。
興味深いことに、オーケストラの指揮者が持つこれら6つのリーダーシップのスタイルは、ロータリーの地
区ガバナーに求められるリーダーシップのスキルとほぼ同じです。指揮者はオーケストラあってのリーダ
ーです。同様に、地区ガバナーも、熱心なクラブや地区のボランティアがいてはじめて成り立つ役割で
す。指揮者の役割がガバナーの役割とどう関連しているのかをご説明しましょう。
「優れたガバナーは入念に準備を整えている」
地区で、国際ロータリー会長の計画や目標を一番良く把握しているのは地区ガバナーです。ガバナー
は、方針、細則、ロータリーの地区内外の慣習にもよく通じています。ガバナーは、地区でリーダーシッ
プに全力を注ぐ準備ができています。地区のロータリアンが、自分で思ってもいなかったような能力を発
揮できるようにする、それが偉大なガバナーです。
「優れたガバナーは聞く耳を持っている」
自分の話より、人の話に耳を傾けるガバナーほど、よいリーダーといえましょう。よく聞くことで、伸ばすべ
き強みと取り組むべき弱点が分かってきます。聞くほどに、学ぶことがたくさんでてくるものです。耳を貸
すことでクラブの課題を理解するガバナーほど、効果的に対処することができます。
「優れたガバナーは経験や知識を分かち合う」
ガバナーの多くは、奉仕プロジェクト、クラブ活動、ロータリー財団、青少年プログラムなどの経験があり、
この経験をクラブ会長や地区委員会と分かち合うことができます。この一週間、皆さんは数々の話し合い
を通じて、地区の方々と分かち合える情報やアイデアを得られたことでしょう。思いやりある、親切なアド
バイスをぜひクラブや地区のロータリアンに提供してください。
「最も優れたガバナーは人を励まし、活躍を称える」
素晴らしい活躍を称えることはモチベーションをさらに高めます。人前で感謝の意を表したり、感謝状を
送るといったことは、ガバナーのリーダーシップスキルの一つです。大いに人を励まし、また誠意を持っ
2016 年国際協議会
3
オーケストラの指揮者のように
RI 元会長 クリフォード・ダクターマン
て貢献を称えましょう。自分にではなく、地区の成果に注目を集めましょう。そうすれば、地区で強力な
チームを築くことができるでしょう。ガバナーとして思慮深さを示し、ロータリアンの功績を称えるには、人
前での感謝や表彰ほどよい方法はありません。
「優れたガバナーは力強い地区を築くための新リーダーを育成する」
毎年、新しいロータリアンを育て、未来のリーダーとして開花させる必要があります。地区ガバナーは、
将来の地区リーダーを探し、選りすぐり、育成する上で理想的な立場にあります。潜在的な能力や隠れ
た才能を持つロータリアンが大勢います。その人たちが将来にロータリーのリーダーとなれるよう、こうし
た能力や才能を伸ばせるよう支援し、機会を与えなくてはなりません。
「地区ガバナーとしての成果は地区で最後の演奏によって評価される」
これは成果の究極的な集大成であり、重要なものです。真に偉大な音楽家は、演奏の成功を語る時に、
「私」ではなく「私たち」として語るものです。皆さんのリーダーシップはすべて、地区大会で人びとの目
に留まることになります。オーケストラ演奏の場合、チューバや第二バイオリンなど、一つの楽器の音色
が評価されるわけではありません。評価されるのは、多くの楽器のパートを綿密かつ見事にまとめ上げる
指揮者の力量です。地区大会は、皆さんが優れたリーダーシップを示す場です。それがみなさんの集
大成です。
あと数週間で、皆さんは、7月1日から始まる新年度に向けて、クラブ会長や地区委員に研修を行い、新
年度の目標と計画について説明します。また地区委員会は地区大会、ロータリー財団、会員増強、その
ほかの各プログラムに取り組みます。ロータリーのあらゆる仕組みについて考えることになります。
7月1日には、皆さんが舞台に上がります。ここにおられる一人ひとりが、指揮棒を手に演台に立ち、それ
ぞれの“交響曲”を始めます。
ソリストの音色が聞こえてきますか。ガバナーの公式訪問の開始がまさにそれです。後方から聞こえてく
るのは、委員会の活動です。さらに、インターアクターやローターアクターも交え、青少年交換学生も参
加します。
その後ろで奏でられている音が聞こえますか。地区委員会が着々と、ロータリー財団補助金の活用法を
検討しています。物静かに地区大会の準備を進めるグループもあります。大会に先駆けてガバナー月
信に載せる原稿を担当者から頼まれます。それぞれのグループが役割を果たすことで、全体のハーモ
ニーが生まれます。
公式訪問が続きます。財団の募金活動も見過ごしてはなりません。公共イメージ委員会にもがんばって
もらいましょう。RYLAのグループからもメロディが聞こえてきます。職業奉仕委員会のテーマも聞こえま
すか。
公式訪問が続きます。Eメールも絶え間なく入ってきます。地区大会の計画も進行中です。アトランタ国
際大会の推進も続けます。ガバナー補佐が進捗を報告してくれます。引き続きクラブから募金活動に招
2016 年国際協議会
4
オーケストラの指揮者のように
RI 元会長 クリフォード・ダクターマン
待されます。財布を忘れないようにしましょう。
すべての公式訪問がやっと終わる頃でしょうか。ただし、月信の発行が続きます。海外の地区からの職
業研修チームを紹介します。それと並行して、新クラブが加盟する準備ができているかどうか確認します。
一つひとつの活動が“演奏”に深みを与えます。元気な青少年奉仕委員会のおかげで、テンポがどんど
ん速くなります。
軽やかな音が時々聞こえてきます。5カ月遅れでクラブが計画と目標を提出してきたようです。地区会員
増強委員会の報告書も届きました。ポリオ撲滅支援のミニマラソン大会も忘れてはなりません。地区大会
に出席するジャーム会長の代理との連絡も欠かせません。特別訪問、アトランタ国際大会への旅行の準
備、委員会会合、感謝状、ポール・ハリス・フェローの認証、地区大会の詳細など、すべての活動がクラ
イマックスに向けて高まりを見せます。また、ポリオプラスの報告書が届き、ガバナーエレクトとノミニーと
の協力も進みます。
音楽が脈打つ様子を体全体で感じられるようになります。テンポもどんどん速くなります。もう力尽きると
思われたころ、オーケストラは一体となり、美しいクライマックスがやってきて、(音楽が止まる)交響曲が
終わりを迎えます。
拍手喝采の中、お辞儀をし、オーケストラ全員が真の称賛に値することを示します。またソリストにも感謝
の意を表します。最後には、オーケストラ全員が皆さんのリーダーシップを絶賛してくれるでしょう。
最高の瞬間は、指揮棒をガバナーエレクトに手渡すときです。間もなくコンサートプログラムの次の楽曲
が始まります。
これがロータリーのサイクルです。これがロータリー地区を導くということです。多岐多様な地区委員会や
クラブ会長をまとめて、地区の素晴らしい活動を成功させます。優れた指揮者としてのリーダーシップス
キルがあってこそ実現できることです。
まだ余韻が残る中で、皆さんは「よくやった!」と言えるでしょう。しかし地区のロータリアンは、自分たち
が素晴らしいガバナーをリーダーとして選んだのだと、改めて実感するでしょう
皆さん、これこそがロータリーの優れたリーダーシップです。地区というオーケストラの指揮者は、皆さん
です。
さあ、がんばってまいりましょう。
2016 年国際協議会
5