子育て情報 11月号

平成 27 年 11 月
子育て情報 11月号
椙山女学園大学附属幼稚園
アートな秋を楽しもう
園長
横 尾 尚 子
秋になると、日本では「食欲の秋」
「スポーツの秋」「芸術の秋」などと言われます。涼しい季節にな
って感受性や繊細さが研ぎ澄まされ、物事に集中して取り組むことが可能になるからでしょうか。秋は、
人の心を何かしら掻き立ててくれるようです。
「食欲の秋」の由来には、これといって決まったものはないようです。秋は収穫の時季。新米や種々
の野菜・果実が豊富にとれ、おいしいものがたくさん食べられるからでしょう。冬に備えて身体にエネル
ギーを蓄えるために、食欲が旺盛になるからかもしれませんね。
「スポーツの秋」については 10 月号で
取り上げ、10 日の運動会への期待を述べました。そして迎えた運動会は、本当に素晴らしいものでした。
かけっこ、親子競技、可愛すぎるリズム、綱引き、バルーンにリレー。子ども達一人ひとりの笑顔と頑
張りに、たくさんの感動と元気をもらいました。みんな、ありがとう。保護者の皆様のご協力に感謝い
たします。
「芸術の秋」という言葉は、
「美術の秋」がもとになったそうです。
「美術の秋」のキャッチコピーは、
1918 年の雑誌『新潮』3 号で使われ始めたもので、国内の有名な美術公募展である「日展」
「二科展」
「院
展」などがすべて秋に開催されることとも関わっているようです。秋は芸術作品を創作するだけでなく、
鑑賞するのにもピッタリの季節なのでしょう。今月、本園でも『すぎのこアートギャラリー』を開催し
ます。お子さんの作品はもとより、幼児期の作品ならではの味わいや、年少から年中・年長へと作品の内
容や表現が育っていく様子も、ぜひご鑑賞ください。そのポイントを、絵にしぼって少しご紹介します。
子どもたちが描く絵には、独特の表現と発達の順序があり、絵の表現の中に発達の筋道があると言わ
れています。独特の表現としては、頭(顔)に手足がはえたように描く「頭足人」
。家や人をいろいろな方
向(視点)からバラバラに描く「多視点画法」
。食卓を囲む人々を描くときに、食卓の周りに放射状に四方
に倒れたように人を描く「展開描法」
。家や車の中を透き通したように描く「レントゲン描法」などがあ
ります。これらは、子どもが周りの世界を知る・理解する能力の発達「認知機能の発達」と深く関わって
いるのですが、微笑ましくも魅了される表現です。
子どもの絵の表現の発達は、さまざまな心身の発達と関係しています。子どもは知っていることを絵
に描くと言われているように、自分の知っていることを、親しい人に伝えたいことを、その子特有の認
識の仕方で絵に表現するそうです。子どもの絵の表現内容から、子どもの世界観の広がり(認知機能の発
達)をみることができそうです。また、自分の思いや考えていることを絵に表すためには、手指の巧緻性
(器用さ)に代表されるような「運動機能の発達」も必要です。さらに、ものを描くには、身近な事物や
出来事にまず興味や関心を持つことが大切です。事物事象に対する感性、喜怒哀楽といった「感情や情
緒の発達」が、絵の内容を深め豊かにするようです。このように、諸能力の発達が絵の表現を促し、絵
の表現が豊かに発達することが刺激となって、諸能力の発達も促されて行くのです。子どもの絵は、子
どもの発達状況を多面的に物語ってくれているのですね。
子どもの作品にふれる時に、大人の身勝手な美意識を押し付けることは慎まなければならないでしょ
う。子どもは作品を通して、何を語ろうとしているのでしょうか。何に感動したのでしょうか。そのメ
ッセージを、子どもの世界観を、子どもの気持ちになって感じることが大切です。子どもの作品は評価
するものではなく、心を聴くもの、共感するものだと思います。お子さんと一緒にアートな秋をお楽し
みください。