《今週のトピック》 【インドネシア】 首都南郊のデポック市で小規模な爆弾

アジア地域で活躍する企業関係者のための最新リスク情報
株式会社ジェイ・エス・エス
2015年 2月26日号
ウィークリー・アジアレポート
(通巻第46号) 毎週木曜日発行
《今週のトピック》
【インドネシア】
☆ 首都南郊のデポック市で小規模な爆弾テロ、負傷者なし
2月23日夕刻、首都ジャカルタ南郊の西ジャワ州デポック市マルゴンダラヤ通
り沿いにある市庁舎に隣接するショッピングモール「ITCデポック」の構内で小
規模な爆発が発生し、大勢の買物客らがパニックになり同モールから同通りに逃
げ出す騒ぎとなった。
爆発の現場は、同モールの中2階にある子供向け遊技エリアに近い男性用トイ
レの中で、国家警察の機動隊「ブリモブ」の爆発物処理班が出動し、同モール周
辺に規制線を設置して現場検証を行った。
国家警察のアグス・リアント報道官(警察大佐)は翌24日に行った記者会見で、
「時限式の簡易爆弾(IED)が使用された」と語り、現場から信管やタイマー、
電池、電気コードなどが見つかったことを明らかにした。
国内治安政策の最高責任者であるテジョ・エディ・プルディアトノ政治・法務・
治安担当調整相(退役海軍大将)は24日、
「(爆発を)深く憂慮している」と表明
するとともに、国家情報庁(BIN)にも調査を命じたことを明らかにした。
一方、イスラム過激派「インドネシア・イスラム国(NII)」の元メンバーで、
現在はマリクサレ大学(アチェ州)人類学部講師のテロ問題専門家、アル・カイ
ダル氏は、英字紙「ジャカルタ・ポスト」の取材に対して「今回の事件はNIIの
リーダーだったアブ・ロバン(2013年に対テロ当局との銃撃戦で死亡)が率いて
いたテロ・グループの残党による犯行の可能性が高い」との見方を示した。
アブ・ロバンのグループは、2011年9月に中ジャワ州スラカルタ(ソロ)で発
生したキリスト教会自爆テロ事件(実行犯死亡、30人負傷)、および2013年6月の
中スラウェシ州ポソ県での同県警本部自爆テロ事件(実行犯死亡、1人負傷)を
実行したものの、高威力のIEDを製造できる能力を持っていないという。
アル・カイダル氏によると、「アブ・ロバン・グループ」は警備態勢が緩くア
クセスが容易な「ソフトターゲット」を狙う傾向があり、市民に恐怖感を与える
ことを目的としていると指摘した。
同氏は、同グループが今後も小規模な爆弾テロを続発させる可能性があるとし
て、
「ショッピングモールなどでは特に警戒が必要だ」と強調した。
また、同氏によると、NII系の過激派メンバーは、一般のイスラム教徒は自分
達とは違う(堕落した)信仰の持ち主だと決めつけており、テロで(外国人だけ
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でなく)インドネシア人が犠牲になることも意に介さないところがある。
同氏は、現在でもNII系を含む国内のテロ・ネットワークから情報を得ること
ができるとされているだけに、その発言には一定の重みがある。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① インドネシアでは1949年以降、同国のイスラム国家化を目指す「ダルル・イスラム
(DI)」運動が西ジャワ、南スラウェシ、アチェなどで巻き起こり、西ジャワの指導者カル
トスウィルヨの率いたNII運動がその中核となった。DI運動は1960年代半ばまでに国
軍によって鎮圧されたが、その思想は現在も各地のイスラム過激派に受け継がれてい
る。NIIの影響力が特に強い地域としては、西ジャワ州、南スラウェシ州のマカッサル、
中スラウェシ州ポソなどが挙げられる。
② 去る2月22日には、ソマリアのイスラム武装勢力「アル・シャバブ」が欧米の、特にユダ
ヤ資本の大型ショッピングモールに対するテロ攻撃を呼びかける声明を発した(2月24
日付けJSS海外安全速報第23号参照)。デポックの爆弾テロはそれとは無関係と見ら
れるものの、モールを狙ったテロの脅威は今に始まったことではない。とりわけジャカル
タでは、2001年8月に市中心部のモール「プラザ・アトリウム」の駐車場で爆弾テロが発
生して6人が重軽傷を負ったのをはじめ、モール狙いのテロが繰り返されているので、
利用時は一定の警戒を保ち、特に出入口付近には長く留まらない方がよい。
《各国リスクレポート》
【中国】
☆ 南昌発深セン行きの旅客機内で窃盗、男を逮捕
2月中旬、東方航空の南昌発深セン行き旅客機(MU5261)内に搭乗していた
空中安全員(機内の安全に関する特別訓練を受けた警備員)2人が、同機が水平
飛行に移行した途端に荷物棚を開けて中のバッグを探り始めた男に目をつけた。
安全員らは、男が機内盗を行ったとの疑いを持ったものの、確証を得られなか
ったが、空港到着後に男が手ぶらで降機しようとしたため、声を掛けて制止した。
そして、男が先程探っていたバッグの持ち主に中身を確認させたところ、現金
2,000元(約3万8,000円)がなくなっていたため、男を公安局員に引き渡した。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① 旅客機内は密室であることから「窃盗は発生しない」と考えがちであるが、こうした機
内盗の被害が中国の国内路線で近年多発しており、香港、マカオ、シンガポールなどの
発着便や、東南アジア各国への路線でも増加傾向にある(「JSSマンスリーレポート」1
月号参照)。現金や貴重品はバッグに入れず、身に着けておくことをお勧めする。
② 東方航空によると、2014年中に同社の旅客機内で発生した窃盗事件は9件に上って
いる。
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☆ 上海で3月から戦後70周年記念行事を順次開催
1月28日、第一次上海事変(一・二八事変:1932年)の記念式典が上海市内で
行われた。同式典では、今年の戦後70周年に際して市内各地で記念行事を3月か
ら市内各地で順次実施することや、抗日戦争のテーマパークを建設することが発
表された。
各行事の具体的な日程や開催場所は次のとおりである。
[ 上海で予定されている戦後70周年記念行事 ]
⑤
⑩
市政府
⑪
④
③
⑦、⑫
複数箇所: ①
未
定:⑧、⑨
②
記 念
① 抗日戦争に関するテーマの講座など
行
日程:3月~
場所:
「東方講壇(市民向け文化講座)」開講場
所(市内各地の文化施設や教育機関、行
政施設など)
③ 上海の春国際音楽節
(抗日戦争・世界ファシズム戦争勝利を記念したテーマ)
日程:4月18日~5月18日
場所:上海東方芸術センター(浦東新区丁香路
425号)
⑤ 抗日戦争・世界ファシズム戦争勝利70周年記念活動
日程:8月13日
場所:上海ソン(さんずいに松)瀘抗戦記念館
(宝山区友誼路1号)
⑦ 抗日戦争・世界ファシズム戦争勝利70周年記念活動
日程:9月3日
場所:四行倉庫抗戦記念館(閘北区光復路1号)
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⑥
事 予 定
② 大韓民国臨時政府旧跡をメインとした記念活動
日程:4月13日前後
場所:大韓民国臨時政府旧跡(黄埔区馬当路306
弄4号)
④ 「上海と反ファシズム戦争」をテーマとした大規模展覧会
日程:7月7日~8月13日
場所:上海展覧センター(静安区延安中路1000
号)
⑥ 「中流砥柱-中国共産党と全民抗日戦争文物・図・写真展」
日程:8月中旬
場所:中共一大会跡記念館(黄埔区興業路76号)
⑧ 抗日戦争・世界ファシズム戦争勝利70周年記念座談会
日程:9月3日
場所:未定
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⑨ 抗日戦争・世界ファシズム戦争勝利70周年記念活文芸演出活動
日程:9月初旬
場所:未定
⑩ 外岡遊撃隊記念館期間式典
日程:9月18日
場所:外岡遊撃隊記念館(嘉定区外岡鎮楊甸村
恒諧路999号)
⑪ 国歌誕生80周年記念活動
⑫ 四行倉庫保衛戦をテーマとした記念活動
日程:10月1日(国慶節)以降
場所:国歌記念広場(楊浦区荊州路151号)
日程:10月27日
場所:四行倉庫抗戦記念館(閘北区光復路1号)
【JSSコメント】
JSSコメント】
○ これらの記念行事を通じて、市民が反日意識を高める可能性もあるため、該当する期
間には、各種行事が行われている会場付近に極力近づかない方がよい。
☆ 上海市公安局が春節前後の警備体制を強化
上海市公安局は春節(今年は2月19日)を迎えるに当たって、同日午後8時から
春節当日の19日午前1時まで、市内で「最高レベルの警備態勢」を敷いた。市内
各地の街頭には5,800人の公安局員が配置され、公安局と武装警察の機動隊員な
どによるパトロールを行った。
同市公安局は、3月5日まで外灘や豫園、人民広場、南京路歩行街などの主要観
光地を中心に延べ5万2,000人の局員を投入し、中国では珍しい自転車によるパト
ロールも実施する方針を明らかにしている。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① 上海では昨年の大晦日(12月31日)に黄浦区の外灘(バンド)で大規模な将棋倒し事
故が発生して36人が圧死し、49人が負傷したことから当局の警備体制の不備が問題
視された経緯がある。
② 今年の全国人民代表大会(全人代)は3月5日から開催されるが、昨年3月1日(全人
代直前の週末)には、雲南省昆明市の昆明駅でウイグル族による無差別殺傷事件が
発生したこともあって、今の時期は上海市のみならず全国の治安当局が惨事の再発防
止に神経を尖らせている。
☆ 広東省深セン市の商業施設出入口で失業男による爆弾事件
2月15日午後9時20分頃、広東省深セン市龍崗区の地下鉄「双龍駅」付近の商業
施設「天虹商場」の出入口で爆発が発生し、店舗のガラス窓などが割れた。
目撃者によると、突然大きな爆発音がして周辺に濃い煙が立ち込めたとのこと
で、付近にいた警備員が爆発を起こしたと見られる男を追い掛けたものの、簡易
爆弾(IED)を投げ付けられ負傷したという。その後、男は別の警備員らによっ
て取り押さえられ、公安局員に引き渡された。
取調べに対して男は、「失業後、長期間にわたって再就職できなかったため、
占い師に見てもらったところ『前にある壁を壊せば道が開ける』と言われたので、
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爆弾を作って爆発させた」などと自供している。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① 中国では、爆竹や花火が大量に消費されることから黒色火薬の入手が容易であり、
それらを使ったIEDによる恐喝や愉快犯などの事件が多発している。
② 3月16日頃まで春節のUターンラッシュが続くため、空港や駅、バスターミナル等で混
雑が発生しているが、この時期は、そうした人込みを狙ったウイグル族過激派等による
テロの可能性も危惧されるので、公共交通機関は極力利用しないこと、やむを得ず利
用する際は出入口付近に長く留まらないようにすることをお勧めする。
【香港】
☆ 葵青区で南アジア人による連続強盗
2月20日午後10時頃、葵青区葵涌にあるトンネル付近で、帰宅途中の男性が南
アジア人3人に襲撃され、スマートフォンを強奪された。
翌21日午後11時頃には、この現場から約5km離れた「大窩口駅」付近の公園で、
散歩をしていた非番の機動隊員が4人組の南アジア人に取り囲まれて殴る蹴るの
暴行を受け、同じくスマートフォンを強奪された。同隊員は頭部や目尻などを負
傷し、居合わせた通行人の通報によって病院に搬送された。
警察は、同一グループによる犯行と見て捜査している。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① 香港では近年、南アジア人による暴力事件が多発しており、本件のように徒党を組ん
で強盗に及ぶケースも少なくない。
② 暗がりの中では、スマートフォンの画面から漏れる光が離れた場所からも目立つた
め、犯罪者を呼び寄せてしまう場合があるので、夜間の人通りのない戸外などでスマー
トフォン等を取り出して操作したり、通話したりするのは禁物である。
【台湾】
☆ 台北市永和区で乳母が勤め先の家庭の口座から現金を盗む
2月中旬、台北市永和区に住む女性が、約1か月のツアーガイドの仕事から帰宅
し、銀行口座の残額を確認したところ、39万台湾元(約146万円)が何者かによ
って勝手に引き出されていた。
警察が捜査したところ、現金は複数回に分けて郵便局のATMから引き出されて
おり、監視カメラの映像記録などから、被害者宅で乳母として働いているフィリ
ピン人の女による犯行であることが判明した。
取調べに対して女は、
「1年前からこの家で働いており、同家の子供に遊ばせる
ためiPadを預かっていた。ある日、iPadのロック解除のパスワードが、キャッシ
ュカードのパスワードと同じなのではないかと思い、試しに同家からカードを持
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ち出して試したら現金を引き出せたので、その後も数回にわたって口座から現金
を盗んだ。現金の一部はフィリピンの実家に仕送りとして送金した」と供述した。
警察は、女の手元に残っていた32万台湾元(約120万円)を女性に返却した。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① 銀行口座などの重要パスワードは他人に知られぬよう固有のものにして、メモに書き
留めたり、使い回したりせず、定期的に変更するのが鉄則である。
② 使用人に悪心を抱かせることのないよう、現金やカードなどの貴重品は必ず鍵のかか
る場所に保管し、施錠や鍵の管理を徹底する必要がある。
【フィリピン】
☆ セブ島タリサイ市の飲食店で早朝に銃撃事件、外国人3人死傷
2月20日午前4時20分頃、観光リゾートとして有名なセブ島のタリサイ市のファ
ーストフード店「マクドナルド」で銃撃事件が発生し、ドイツ人の男性短期滞在
者(31歳)が腹部などを5発撃たれて死亡したほか、在留者のフランス人男性(31
歳)とインド人男性(32歳)が腕や脚、後頭部などに銃弾を受けて負傷した。
警察によると、店内でインド人とフランス人が食事していたところ、後から入
ってきた地元の男2人に絡まれ、インド人の方が「金を貸せよ」などとからかわ
れて口論になった。その後、同店の警備員の仲裁で男2人は一旦立ち去ったが、
しばらくして総勢4人で再び現れ、外国人らに向けて拳銃を乱射し始めた。
フランス人とドイツ人は撃たれながらもトイレに逃げ込み、九死に一生を得た。
一方、別のテーブルにいたドイツ人は店の2階の倉庫へ逃げ込んだが、犯人ら
は追いかけてきて銃弾を浴びせたという。
同店の警備員は銃を装備しておらず、何も対応できなかった。事件後、警察は
現場から空薬莢21個(9mm口径16個、45口径5個)を押収した。
フランス人とインド人は知人同士であるが、死亡したドイツ人はたまたま店に
いた赤の他人であったにも拘らず、仲間と見なされて巻き添えを食ったものと見
られる。ドイツ人の友人らによると、彼はフィリピン中部に壊滅的被害をもたら
した2013年11月の大型台風の被災者支援のため、頻繁にセブ島を訪れていた。
警察は、24日までにバイクタクシーやトライシクルの運転手ら3人を容疑者と
して逮捕するとともに、拳銃2丁や覚醒剤などを押収した。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① フィリピン人男性は、口論となったり侮辱されたと感じると異常なまでに激昂する傾向
がある上、銃の入手が容易なこともあって、ささいなトラブルが発砲事件に発展する場
合が少なくない。また、低所得者層の間では覚醒剤が蔓延しており、それも凶悪犯罪多
発の原因になっている。
② フィリピンではインド人が高利貸しをしている事が多く、フィリピン人よりも肌の色が黒
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いことも相俟って、こうした揶揄や侮蔑の対象にされることが多い。邦人の場合、そうし
たことはあまりないが、万が一揶揄されても相手にしないことが一番である。
【タイ】
☆ チェンマイでドイステープ寺の鐘を蹴った中国人が捜査対象に
タイ北部のチェンマイ市の入管当局と警察は2月23日、タイの仏教徒が神聖視
する同地の観光名所、ドイステープ寺の境内に吊り下げられている鐘を足蹴にし
た中国人観光客と見られる男の行方を捜索中であると発表した。
入管当局によると、問題の「足蹴り」シーンは同寺院の監視カメラに記録され
ているほか、当時現場に居た目撃者を捜している。その写真はインターネット上
で拡散しており、多くのタイ人が強い憤りを表明している。
同市警察の捜査当局も、中国人ツアーガイドや旅行代理店からも事情を聴取し
ており、この無作法な男を見つけ出し、公衆(メディア)の前で謝罪させるなど
「きついお灸を据える」としている。
捜査当局は、男が中国雲南省の景洪からメコン川を下る高速船でタイに入国し、
チェンマイ県に隣接するチェンライ県の同河岸にあるチェンセーン郡の国境入
管施設で入国手続きをした可能性が高いと見て入国者のデータを調べている。
入管当局は、男を刑事犯として逮捕しないまでも、もし男が心から反省しない
場合は「要注意人物」として再入国禁止の対象とするという。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① 中国人観光客のマナーの悪さは世界各地で白眼視されているが、仏教を篤く信仰す
るタイの寺院でのこうした行為はマナー以前の問題であり、この男性はタイ人から殴る
蹴るのリンチを受けてもおかしくはなかった。
② こうした悪質なものでなくとも、現地での社会的・文化的な禁忌や避けるべき行為につ
いては、邦人も日頃から見識を深めて十分に留意する必要がある。
【ミャンマー】
☆ シャン州での戦闘をめぐり政府高官がFacebookで中国を牽制
ミャンマー国軍部隊と少数民族・コーカン族の武装組織「ミャンマー民族民主
同盟軍(MNDAA)」とがシャン州北部・コーカン自治区内で2月9日以来、激し
い戦闘を展開している事態に関連して、ミャンマー大統領府高官のムー・ゾー氏
は19日、自身のFacebook上のページで、
「中国政府が悪化を憂慮している国境地
帯の治安状況は、同国当局がMNDAAの幹部達が同国領内にいるところを逮捕し
てミャンマー政府に引き渡してくれれば、すぐにでも常態に復す筈だ」と述べ、
MNDAAが中国雲南省内の聖域を拠点に攻撃を仕掛けていることを示唆した。
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MNDAAの最高指導者であるプン・チャーシン参謀長は人種的には中国系で、
東西冷戦時代に中国の支援を受けていた旧「ビルマ共産党(CPB)」の元幹部だ
った。そのため、現在でも中国の治安当局とは良好な関係にあり、MNDAAは武
器や資金の調達で中国当局から支援を受けていることは、ミャンマー少数民族問
題に詳しい海外の専門家の間では周知の事実である。
ムー・ゾー氏はミャンマーと中国の外相が17日に今回の事態の解決に向けて会
談を行ったことを明らかにするとともに、「両国の協力は必要だ。(中略)ただ、
『テロリスト』のミャンマー領内への攻撃が中国領内からなされていないとの相
互理解が前提だ」と強調し、中国側を暗に批判した。ロイター通信(2月19日付
け)によると、こうしたミャンマー政府の疑念に対して、在ミャンマー中国大使
館は何のコメントも行っていない。
また、ほぼ半世紀にわたってミャンマー少数民族問題を一貫して取材してきた
スウェーデン人ジャーナリストのバーティル・リントナー氏(タイ北部・チェン
マイ在住)はロイター通信の取材に対して、今回の事態が発生した遠因は、2009
年に国軍が当時のMNDAAの指導部から(同組織の「国境警備隊(BGF)」への
再編に反発した)プン・チャーシン一派(主流派)を武力で追放したことにある、
と指摘した。同氏によると、
「2009年にプンはコーカンから追い出された。だか
ら今、戻ってきたというだけの話だ」ということになる。
なお、国軍のミャ・トゥン・ウー保安局長兼第6特別作戦室(ネピドー軍管区)
室長によると、9日以来の戦闘では、21日までに国軍将校7人と兵士47人、および
警察官1人と民間人6人の計61人が死亡し、将校12人と兵士93人が負傷した。そ
れに対して、MNDAA側は戦闘員約72人が死亡しているという。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① 中国の国境政策にとって、同じ「中国人」の指導層が率いる「ワ州連合軍(UWSA)」
の支配地域がほぼ中国の「クリミア化」しているように、コーカン自治区のような国境地
帯がネピドーから派遣されたビルマ族の国軍幹部よりも「ビルマ共産党(CPB)」時代以
来、良好な関係を築いてきたプンの組織が支配する方が、領土拡張の戦略や国境貿易
のやりやすさなどからも都合がよい。中国は雲南省への避難民の流入を憂慮し警告す
る一方で、MNDAAがコーカン自治区の行政を奪取することを本音では望んでいると見
られる節がある。
② 国営テレビの18日夜の報道は、「この戦闘では、カチン族系『カチン独立軍(KIA)』、
パラウン族系『タアン民族解放軍(TNLA)』、シャン族系『シャン州軍・南部(SSA-S)』が
MNDAAと共闘している」として、これらの少数民族武装組織を非難する論評を行っ
た。ただ、当該の3組織とも昨年来、断続的に国軍部隊と衝突を繰り返しており、特に今
回の戦闘でMNDAAに加勢しているとの情報はなく、KIAのスポークスマンも同報道を
「政府側のプロパガンダだ」と切り捨てている。
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【バングラデシュ】
☆ 22日からの72時間ハルタルを48時間延長、各地で爆弾事件多発
与野党の政治的対立から混乱が続くバングラデシュでは、最大野党「バングラ
デシュ民族主義者党(BNP)」率いる野党連合が無期限の交通封鎖を呼び掛けた1
月初旬以降、バスへの火炎瓶攻撃などにより、2月24日までに少なくとも78人が
死亡、300人以上が負傷している。
野党側は2月に入って、金曜日(休日)および土曜日(政府関係休日)を除く
ほぼ連日ハルタル(ゼネスト)を実施しており、2月22日午前6時から新たに実施
された72時間ハルタルは48時間の延長が宣言され、27日午前6時までとされた。
各地で簡易爆弾(IED)の投擲事件等が多発しており、ダッカでは旧市街のラ
クスミ・バザールで22日正午過ぎ、登校中の女子学生がIEDの爆発で重傷を負い
病院に収容された。商業地区のミルプールでは午後0時20分頃、
「カウラン・バザ
ール」
(野菜市場)でIED2個が爆発した。同地区では同日深夜、バスに火炎瓶を
投げつけようとしていた3人が群衆から激しい暴行を受け、警察により病院に搬
送されたものの、収容先の病院で死亡した。このほか、ダッカ大学構内などでも
IEDの爆発により重軽傷者が出ている。
地方では、北部・ジョイプルハット県で午後5時半頃、与党「アワミ連盟(AL)
」
のハルタル抗議集会にIEDが投げ込まれ、同県の女性AL会長及び事務局長ら6人
が負傷した。爆発後、怒ったAL支持者らは同県のBNP事務所を放火した。
このほか、22日中だけでも全国で車への放火5件、バス停留所などの爆発事件
などが発生した。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① ハルタル中も、市民の多くはハルタルを無視して通勤しているが、ダッカと他の県を結
ぶ長距離バスは、ハイウェイや地方での道路における火炎瓶攻撃の危険性があるた
め、運行本数を減らしている。
② 国内の有識者や欧州連合(EU)などの国際社会は、双方の対話を呼び掛けている
が、現在まで目立った進展は見られない。また、2月25日には、慈善事業をめぐる横領
容疑でカレダ・ジアBNP総裁の逮捕状が発行されており、与野党の政治的対立はさら
に激化する可能性が高い。
【インド】
☆ 首都デリーでアンナ・ハザレ氏らが抗議集会
2月23日から24日にかけて、著名な社会活動家アンナ・ハザレ氏(77歳)の支
持者や各州の農民らが首都デリー中心部に集結し、政府が推進している土地買
収・復旧・再定住法令の改正案に対する抗議デモを行った。
これにより、市中心部ではコンノート・プレイス、マンディ・ハウス、ミント・
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ロード、リング・ロード、マトゥラ・ロード、ヴィカス・マルグの一部など各所
で渋滞が発生し、治安当局は警察部隊を増派するなどして混乱の収拾に当たった。
今回の抗議行動では、集会に先立つ2月20日にハリヤナ州パルワルを出発した
デモ隊の一行が州境のバダルプルからデリー市内に入り、1万人以上の参加者が
コンノート・プレイスの南側にある集会場のジャンタル・マンタルに向け、3日
間かけて市内を行進した。
集会1日目の23日には、ハザレ氏の意向で政治的な意図が介入しないよう、農
民達とハザレ氏のみで抗議集会が行われ、パンジャブ、ハリヤナ、ラジャスタン、
ウッタルプラデシュ、ビハール、マハラシュトラ各州から集結した多数の農民を
前にしてハザレ氏が演説し、改正案を取り下げるよう政府に訴えた。
翌24日は、改正案に反対する野党「国民会議派(INC)
」や「インド共産党(CPI)」
など、様々な政党の政治家や関係者らも次々に会場へ駆け付けてハザレ氏への支
持を表明したため、集会は大いに盛り上がった。
「庶民党(AAP)」を率いるアルヴィンド・ケジリワル・デリー首都圏首相も
演説し、「例えデリーにおける土地問題が中央政府の管轄下にあるとしても、私
はデリー首都圏の首相として、デリーの村のいかなる農夫からも強制的に土地を
奪うことは許さない」と宣言して、農民らの熱狂的な声援を受けた。
モディ政権は今回の改正案について、「開発プロジェクト促進のため」と説明
しているが、ハザレ氏は「法改正で利益を享受できるのは企業だけだ」として政
府見解を厳しく批判している。
ハザレ氏は、「既に劣悪な状態にある農民らの生活をさらに圧迫しかねない今
回の改正案が可決されれば、政府と農民達の間に大きな対立がもたらされるだろ
う」との懸念を示した。
抗議運動を受けて、中央政府は問題を農民らのグループと協議するため、8人
のメンバーからなる委員会を設置した。
【JSSコメント】
JSSコメント】
① ハザレ氏は、政府が改正案を取り下げない場合、デリー西部のラムリラ・マイダン広
場において「さらに大規模な無期限デモを実行すると宣言している。ラムリラ・マイダン
広場は、2011年8月にハザレ氏が汚職防止法案の成立を要求して12日間ハンガースト
ライキを行い、最終的に政府から譲歩を引き出した場所である。
② 政治家の汚職問題に比べると、今回の土地収用問題は分かりにくく、都市住民にとっ
て関心の薄いテーマではあるが、人気の高いケジリワル首都圏首相が応援しているこ
ともあって、大規模な抗議行動が今後もデリーで相次ぐことが予想される。
以上
本レポート内容の全部または一部の転送・転載・第三者への提供を厳禁します。
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