の諸原則 ≪日本版スチュワードシップ・コード≫ に関する取り組み

「責任ある機関投資家」の諸原則
≪日本版スチュワードシップ・コード≫
に関する取り組み(平成28年度)
平成28年8月31日
日本生命保険相互会社
H28-903G
<
第1章
目
次 >
はじめに .................................................................................................. 2
(1)日本版スチュワードシップ・コードの受け入れについて ...................................... 2
(2)コーポレートガバナンス・コード策定を受けて ..................................................... 3
第2章
日本版スチュワードシップ・コードの諸原則への取り組み .................... 4
第3章
当社のスチュワードシップ活動について ................................................ 8
(1)当社の株式投資とスチュワードシップ活動の基本的な考え方 ............................... 8
(2)スチュワードシップ活動の全体像 ......................................................................... 10
(3)対話のテーマ .......................................................................................................... 13
(4)議決権行使 ............................................................................................................. 16
(5)課題改善に向けた取り組み .................................................................................... 26
第4章
平成27年度の取り組み結果 ................................................................ 28
(1)スチュワードシップ活動の状況............................................................................. 28
(2)スチュワードシップ活動の成果と事例.................................................................. 30
第5章
平成28年度の取り組み方針 ................................................................ 37
(1)重点対話取り組みの拡大(85 社から 200 社程度へ) ........................................... 37
(2)スチュワードシップ活動に係る体制の強化 .......................................................... 39
1
第1章
はじめに
(1)日本版スチュワードシップ・コードの受け入れについて
平成 26 年 2 月 26 日、
「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コー
ド≫ 1(以下、当コード)が策定・公表され、日本生命保険相互会社(以下、当社)は、責任
ある機関投資家として、
当コードを受け入れる旨を、
平成 26 年 5 月 26 日に表明いたしました。
当コードでは、機関投資家が投資先企業との建設的な対話などを通じて、企業の企業価値向
上や持続的成長を促すことにより、お客様の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任として
「スチュワードシップ責任」という概念が定義され、機関投資家が当該責任を果たすにあたり、
有用と考えられる諸原則が定められています。
当社は、生命保険事業の公共性や負債特性等に鑑み、投資先企業の企業価値向上の果実を中
長期にわたる安定的な株主還元や株価の上昇といった形で享受することを、株式投資の基本的
な考え方とし、従来から企業との対話を中長期的な企業価値向上に繋げることを重視してまい
りました。
当コードが掲げている、機関投資家と企業の建設的な対話などを通じて、企業価値の向上や
持続的成長を促すという考え方は、当社のこうした考え方やスタンスに合致するものであり、
その理念に深く賛同しております。
当社では、これまでの取り組みに加え、企業との対話に係る考え方やスタンスを丁寧に開示
していくことや、PDCAの観点から対話の履歴を継続的に振り返りつつ、対話の成果を確認
していくことを、強化してまいります。また、自らの取り組みを振り返り、環境の変化等も踏
まえつつ適宜見直しを行うことで、より効果的なものにすべく努めてまいります。
1
当コードの内容については、以下URLをご参照ください。
http://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf
2
(2)コーポレートガバナンス・コード策定を受けて
平成 27 年 6 月 1 日、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることを目的に、
「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために
~」 2(以下、コーポレートガバナンス・コード)が策定されました。
当社では、コーポレートガバナンス・コードが、実効的なコーポレートガバナンス態勢の構
築に向けた個々企業の取り組みを促すのみならず、日本版スチュワードシップ・コードと対を
なして、投資家と企業の建設的な対話を活性化させる原動力となると考えており、その策定を
歓迎しております。コーポレートガバナンス・コードに記載されている項目について、企業が
積極的に取り組んでいくことを、当社も前向きに捉えております。
一方で、望ましいコーポレートガバナンスの在り方は個々企業によって区々であると考えら
れます。また、日本版スチュワードシップ・コード同様、コーポレートガバナンス・コードに
おいても、いわゆる「プリンシプルベース・アプローチ」
、
「コンプライ・オア・エクスプレイ
ン」の手法が採用されていることを、当社も尊重しております。
したがって、当社では、投資先企業に対しコーポレートガバナンスについて画一的な対応を
求めるのではなく、対話を通じて企業のスタンスや考え方の把握に努めるとともに、課題意識
の表明を含めた建設的な意見交換を重ねることで、企業の自律的な対応を促し、中長期的な企
業価値向上に向けた企業の取り組みをサポートしてまいりたいと考えております。
2
コーポレートガバナンス・コードの内容については、以下URLをご参照ください。
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/code.pdf
3
第2章
原則1
日本版スチュワードシップ・コードの諸原則への取り組み
機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これ
を公表すべきである。
当社の取り組み
: コンプライ
当社は、
「スチュワードシップ責任を果たすための基本方針」を策定し公表しております。
詳細につきましては、
「第3章(2)スチュワードシップ活動の全体像」
(P10~12)をご参
照ください。
原則2
機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反につい
て、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
当社の取り組み
: コンプライ
当社は、保険業法等の定めに従い、利益相反管理方針を定め、お客様の利益が不当に害され
る恐れのある取引を適切に管理する体制を整備しております 3。
また、株式の売買や議決権行使等に係る判断は、いずれも営業部門から独立した運用部門で
行っており、投資先企業との取引関係の有無等に関わらず、適切な判断を下しております。
原則3
機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に
果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
当社の取り組み
: コンプライ
当社は、株式投資に係る十分な実務経験や高度な専門知識を備えたアナリストやポートフォ
リオ・マネージャーのほか、スチュワードシップ活動を行う専管人材が、企業訪問や対話、実
地調査、情報収集などを通じ、企業の業績や財務状況、業界動向等を把握すると同時に、企業
3
当社の利益相反管理方針については、以下URLをご参照ください。
http://www.nissay.co.jp/info/rieki.html
4
価値に影響を与える国内外の景気動向等の外部環境について、日々把握に努めております。
また、投資先企業の株主総会における議決権行使の場面においても、判断を行うにあたり、
情報収集や対話などを通じ、個別企業の状況の把握に努めております。
原則4
機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企
業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
当社の取り組み
: コンプライ
当社は、投資先企業との建設的な対話を通じて企業の発展に寄与・貢献することを重視して
おります。
対話にあたっては、経営戦略や収益性、株主還元など、様々なテーマについてヒアリングを
行い、企業の状況を把握するとともに、課題が見られる企業に対しては、当社の考え方や課題
意識を伝えることにより、認識の共有化と問題の改善に努めております。また、長期的な視点
に基づき、PDCAの観点から対話の履歴を継続的に振り返りつつ、対話の成果を確認してお
ります。
詳細につきましては、対話に関する基本スタンスは「第3章(2)スチュワードシップ活動
の全体像」
(P10~12)を、対話の取り組み状況や成果・事例は「第4章 平成27年度の取
り組み結果」(P28~36)を、今後の方針は「第5章
平成28年度の取り組み方針」(P37
~40)を、それぞれご参照ください。
このほか、生命保険協会として「株式価値向上に向けた取り組みについて」4 と題する調査
を、昭和 49 年から 42 年間にわたり継続して実施しております。当該調査では、企業と投資家
に対しアンケート調査を実施し、業界としての提言を発信しているほか、アンケートに協力い
ただいた企業と投資家、および東証一部上場の全企業に対して調査結果を送付しております。
当社は、当該調査への参画を通じ、企業と投資家の認識相違の分析・把握に努めており、投
資先企業との対話をより建設的なものとするよう努めております。
4
当該調査の詳細については、以下URLをご参照ください。
http://www.seiho.or.jp/info/category/news/opinion-securities
5
機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つととも
原則5
に、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、
投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
当社の取り組み
: コンプライ
当社は、全ての保有株式について、適切に議決権を行使しております。また、個別議案への
賛否判断を行うにあたっては、定型的・短期的な基準のみで画一的に判断するのではなく、個
別企業の状況や改善に向けた取り組み状況等を十分に検討したうえで、きめ細かく判断してお
ります。
課題が認められる企業に対しては、対話を通じて認識の共有を図り、改善に向けた取り組み
が期待できるかを確認いたします。また、単年度の個別議案への対応にとどまることなく、複
数年度にわたり継続的なフォローアップを行い、改善を促すことを重視しております。なお、
企業の取り組みに変化が見られない場合等には、議案に不賛同としたり、株式の売却を行って
おります。
<議決権行使結果の開示に関する方針>
当社では、議決権行使をスチュワードシップ活動の一部と位置付けております。当社の取り
組みについて、より的確にご理解いただく観点から、議決権行使結果の集計表を開示する方法
ではなく、スチュワードシップ活動全体を通じた成果をお示ししております。当社では、投資
先企業と中長期にわたりWin-Winの関係を築いていくことを目指していることから、単
年度の不賛同数の積み上げを示すのではなく、中長期にわたるスチュワードシップ活動の成果
や対話の事例等について、定量・定性の両面から開示しております。
詳細につきましては、議決権行使に関する基本スタンスは「第3章(4)議決権行使」(P
16~25)を、議決権行使の取り組み状況や成果・事例は「第4章 平成27年度の取り組み結
果」
(P28~36)を、今後の方針は「第5章
平成28年度の取り組み方針」
(P37~40)を、
それぞれご参照ください。
6
機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たし
原則6
ているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべき
である。
当社の取り組み
: コンプライ
当社のスチュワードシップ活動をわかりやすくお伝えする観点から、当文書において、当社
の基本的な考え方・スタンスや、投資先企業との対話のテーマ、議決権行使のプロセスなどに
ついて記載し、ホームページにて開示を行っております。また、対話や議決権行使における具
体的な取り組み状況や成果・事例等については、毎年更新を行い、定期的な報告に努めており
ます。
機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境
原則7
等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う
判断を適切に行うための実力を備えるべきである。
当社の取り組み
: コンプライ
当社は、投資先企業の持続的成長に資する建設的な対話を行うために、人材・陣容の充実を
図っております。日本株投資を専門に担当する部署を設置するとともに、株式投資に係る十分
な実務経験や高度な専門知識を備えた人材およびスチュワードシップ活動を行う専管人材を
配置しており、日々の実務や各種研修会への参加、勉強会の実施などを通じ、日々研鑽に努め
ております。
7
第3章
当社のスチュワードシップ活動について
(1)当社の株式投資とスチュワードシップ活動の基本的な考え方
当社は、生命保険契約というご契約者との長いお約束を必ず守ることを使命とし、運用収益
の長期・安定的な拡大に向けて資産運用に取り組んでおります。
【当社の資産運用の基本的考え方】
①ご契約者に対する経済的保障責任を全うすることを第一義として資産の運用を行う
②一貫した運用戦略の遂行を通じて運用収益の長期・安定的な拡大を図る
③生命保険事業の使命や公共性をふまえ、ご契約者に納得いただける運用を実践する
株式投資におきましても、生命保険事業の特性等に鑑み、リスク・リターン等を考慮しつつ、
持続的な成長が期待できる企業や、株主への利益還元に前向きに取り組んでいる企業等に、長
期的な視点で投資を行い、投資先企業の企業価値向上の果実を、中長期にわたる安定的な株主
還元や株価の上昇といった形で享受することを、投資の基本的な考え方としております。
日本経済への長期資金の供給者として、企業との良い緊張感のある関係を保ちながら、当社
と投資先企業がともに成長していく、共存共栄の関係を築くことを目指しております。
8
当社は、企業との対話や議決権行使といったスチュワードシップ活動を、投資先企業の中長
期的な企業価値向上を促し、運用収益向上に繋げるための重要な手段と位置付け、日々取り組
んでおります。
【株式投資の考え方とスチュワードシップ活動】
安定成長期
成熟期
企
業
価
値
投
資
の
視
点
将来の
有力銘柄発掘
より株主還元に注目
安定成長による企業価値向上
バランスのとれた株主還元
成長回帰への期待
株主還元の充実
成長性・株主還元の観点で魅力ある企業に投資しつつ、
課題の改善が見込めない銘柄を売却し、運用収益向上を図る
9
株主還元や株価上昇の形で享受
より成長性に注目
対話を通じ企業価値向上を促す
黎明期
(2)スチュワードシップ活動の全体像
当社では、スチュワードシップ活動の基本スタンスをより明確化する観点から、以下のとお
り「スチュワードシップ責任を果たすための基本方針」を定めております。
スチュワードシップ責任を果たすための基本方針
1.投資先企業との建設的な対話に取り組み、中長期的な企業価値向上を促すとともに、
その果実を株主還元や株価上昇といった形で享受し、運用収益の拡大に繋げます。
2.対話内容をPDCAの観点から継続的に振り返りつつ、企業の取り組みの変化を確認し、
必要に応じ追加の働きかけを行うことで、対話の実効性を高めます。
3.株主総会の議決権行使では、画一的に賛否を判断するのではなく、個別企業の状況を
十分に検討したうえで、対話を通じ当社の考え方や課題意識を伝え、改善を促します。
4.対話を通じても投資先企業の取り組みに改善が期待できない場合、議決権行使における
不賛同や、株式の売却等を検討します。
当社は、スチュワードシップ活動において、投資先企業との建設的な対話を通じて企業の発
展に寄与・貢献し、長期投資を行う機関投資家として企業価値向上の果実を享受することを目
指しております。このような取り組みに際しては、企業と相互に信頼しながら、Win-Wi
nの関係を構築することで、ともに成長していくことが重要であると考えております。
こうした考え方を実現するために、当社では、次に記載するSTEP1からSTEP4ま
での基本サイクルに沿って、スチュワードシップ活動を実践しております。
10
【スチュワードシップ活動の基本サイクル】
STEP1
STEP4
投資先企業の分析
モニタリング
建設的な対話
Win-Winの関係
中長期的な
企業価値向上
STEP2
対
STEP3
話
議決権行使
(課題がある場合) 課題解決に向けた取り組み
STEP1
株式投資に係る十分な実務経験や高度な専門知識を備えたアナリストやポートフォリオ・マ
ネージャーが、企業の業績や財務状況、業界動向等につき日常的に情報収集を行い、投資先企
業を分析いたします。
STEP2
対話を通じて、投資先企業の動向を把握するとともに、目指すべき方向性についての認識を
共有します。
11
投資先企業との対話は、例えば決算発表後のミーティングや、IRミーティングなどを通じ、
日常的に行っております。この際、経営戦略や収益性、株主還元など、様々なテーマについて
ヒアリングを行い、企業の状況を把握するとともに、企業の目指す方向性を確認しております。
また、課題が認められる企業に対しては、課題の解決を目的とする対話を実施し、目指すべき
方向性を共有しつつ、問題の改善に努めております。対話に際して、当社がどのような視点を
重視しているかにつきましては、
「
(3)対話のテーマ」
(P13~15)をご参照ください。
対話先を選定するにあたっては、当社の投資規模や、個々企業の置かれた状況等に応じて、
当社が長期の機関投資家として企業価値向上に寄与・貢献することができるかという視点から
一定の優先順位付けを行っておりますが、極力多くの投資先企業と対話を実施できるよう努め
ております。
STEP3
全ての保有株式の議決権を行使いたします。この際、当社スクリーニング基準に沿って課題
を抽出するほか、課題が認められる企業に対しては、画一的に賛否を判断するのではなく、課
題改善に向けたこれまでの取り組み状況や、今後の方向性を十分に評価したうえで、賛否を判
断いたします。当社の議決権行使スタンスについては、「(4)議決権行使」
(P16~25)をご
参照ください。
STEP4
投資先企業と共有した目指すべき方向性に沿って経営が行われているかという視点から、決
算内容の確認や各種モニタリングを行い、投資先企業の企業価値向上プロセスを確認していき
ます。
課題がある場合
当社では、投資先企業において課題が認められる場合、対話(STEP2)および議決権
行使(STEP3)を課題改善に向けた最も重要な手段と位置付け、問題の改善に努めてお
ります。投資先企業が課題に直面した際の当社スタンスについては、
「(5)課題改善に向けた
取り組み」
(P26~27)をご参照ください。
当社では、こうした一連の基本サイクルを繰り返し回していくことで、中長期的に企業価値が
向上し、投資先企業とのWin-Winの関係が構築されると考えております。なお、この過
程において、対話を通じて改善を促しても企業の取り組みに変化が見られない場合や、議決権
行使において議案に対して不賛同とした場合については、状況に応じて株式の売却も検討して
まいります。
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(3)対話のテーマ
当社では、投資先企業との対話に際して、以下に掲げるテーマを基本的な視点として重視し
ております。
①経営戦略
【主な対話テーマ】
中長期的な経営ビジョンや経営方針、事業環境や経営課題、中期経営計画、
具体的な事業戦略 等
当社では、投資先企業に対し、明確な経営ビジョンのもと、事業環境や経営上の諸課題を
踏まえて、持続的な利益成長や中長期的な企業価値向上に資する経営戦略を策定、実行いた
だくことを期待しております。
また、こうした観点から、経営戦略が明示され、かつ具体的な数値目標を伴った中期経営
計画を策定し、公表することを要望させていただく場合があります。
②収益性
【主な対話テーマ】
各事業のビジネスモデル、競争力、コスト構造、資本コスト、ROE、ROA、
ROIC 等
当社では、投資先企業に対し、経営戦略の遂行を通じて事業の競争力を高め、多様なステ
ークホルダーに対する価値創造と収益性の向上を両立させることで、短期的にではなく中長
期的に資本コストを上回るROEを維持しながら、企業価値の持続的な向上に努めていただ
くことを期待しております。
また、こうした観点から、価値創造に向けた中長期的なベンチマークの一つとして、RO
Eの目標値の明示を要望させていただく場合があります。また、投資先企業の事業特性や業
界環境等を踏まえつつ、一つの目安として、最低限 5%以上のROEを目指すことや、より
高い水準のROEを中長期的に目指すことが適切と判断される場合には、その旨を要望させ
ていただく場合があります。
13
③財務戦略・資源配分
【主な対話テーマ】
望ましい財務・資本構成、手元資金の使途、成長投資、M&A、研究開発 等
当社では、投資先企業に対し、財務面の健全性に配慮しながら、余剰な資金・自己資本を
抱えることなく、設備投資やM&A、研究開発等に資金を有効活用し、持続的な成長に繋げ
ていただくことを期待しております。
また、こうした観点から、手元資金の使途の明示や、目標とする財務・資本構成について
の説明を要望させていただく場合があります。
④株主還元
【主な対話テーマ】
株主還元の基本方針、望ましい配当性向の水準、自社株買いについての考え方 等
当社では、投資先企業に対し、企業価値向上に向けた成長投資・研究開発等への資金配分
を行ったうえで、適切な株主還元を行っていただくことを期待しております。
また、こうした観点から、配当性向等の株主還元の目標値の明示や、投資先企業の事業特
性や業界環境等を踏まえつつ、一つの目安として、最低限 15%以上、あるべき水準として
30%以上の配当性向を目指すことを要望させていただく場合があります。
⑤E(環境)S(社会)G(ガバナンス)
【主な対話テーマ】
コーポレートガバナンス態勢のあり方全般、株主総会議案、環境・社会問題への
対応状況、不祥事への対応状況、情報開示 等
当社では、投資先企業に対し、中長期的な企業価値向上に資する経営の礎として、有効か
つ適切な形でコーポレートガバナンスを機能させていただくことや、環境・社会問題に関連
する経営上の諸課題に適切に対処していただくことを期待しております。また、情報開示の
充実により、企業と投資家の建設的な対話の前提となる、相互理解の促進に努めていただく
14
ことを期待しております。
こうした観点から、コーポレートガバナンス・コードへの形式的な対応のみならず、実効
的なコーポレートガバナンス態勢の構築に向けた対応を要望させていただく場合がありま
す。また、環境・社会問題に起因する中長期的な投資リスクを抑制する観点から、地球温暖
化等の環境問題や女性の活躍推進を通じた社会問題への対応状況といったESG項目につ
いて、内容を確認させていただく場合があります。
15
(4)議決権行使
1)議決権行使プロセス(全体像)
当社は、実効的なスチュワードシップ活動を実践していくために、投資を行った全ての企業
に対して、以下のプロセスで議決権を行使しております。
【議決権行使プロセス】
具体的プロセス
社数(※)
投資対象ユニバース(全上場企業)
約3,600
保有企業(議決権行使対象)
1,754
570
(32.5%)
課題意識の表明
 客観基準に基づく
課題企業の抽出
(例)
 ROE5%未満が継続
 配当性向が15%未満
 社外取締役が不在
「議決権行使精査要領」
に基づくスクリーニング
精査
 投資対象ユニバースから
投資銘柄を選定
366
(20.9%)
 チェック項目の確認と、
対話を通じた当社課題意識
の表明
(例)
 収益性向上への取組み
 成長投資への資金ニーズ
 ガバナンス強化に向けた
今後の取組み
 企業の状況に応じた
最終判断を実施
賛否判断
(※)平成27年7月~平成28年6月の株主総会
16
具体的には、まず、当社の社内基準である「議決権行使精査要領」に則り、全ての株主総会
議案の課題の有無を洗い出し、精査対象とする議案の選別を行います。
精査対象となった議案については、必要に応じて企業と対話を行い、当社の考え方やスタン
ス、課題意識を伝えるとともに、課題の背景や今後の対応方針等、議案別のチェック項目につ
いて確認いたします。
精査対象となった議案の賛否判断を行うにあたっては、定型的・短期的な基準のみで画一的
に判断するのではなく、中長期的な企業価値向上という観点から、個別企業の状況や改善に向
けた取り組み状況等を十分に検討したうえで、下図に示すようにきめ細かく判断いたします。
【議決権行使の判断】
「議決権行使精査要領」に基づくスクリーニング・精査
課題意識の表明
• 基準に抵触しない
• 精査のうえ課題なしと判断
• 今後の取り組み方針が明確
• 課題解決に向けた
取り組み内容を評価
• 課題意識が共有化されない
• 改善が期待できない
• 中長期で改善が見られない
賛同
賛同
(イエローカード)
不賛同
(レッドカード)
定期的にモニタリング
取り組み状況に応じて
不賛同を検討
状況に応じて売却を検討
約8割
約2割
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<賛同の考え方>
「議決権行使精査要領」に照らして基準に抵触しない企業や、抵触はしたものの精査の過程
で課題がないものと判断された企業に対しては、議案に賛同し、その後、フォローアップする
課題がないかを定期的にモニタリングしてまいります。
<賛同(イエローカード)の考え方>
課題があると判断される企業に対しては、必要に応じて当社の課題意識を表明し、企業が当
社と課題意識を共有できるか、企業に課題解決に向けた意思があるか、といった点を確認して
おります。対話を通じて、今後の課題解決に向けた取り組み方針が明確である、もしくは、こ
れまでの取り組み内容が妥当なものであること等から、信任に値すると判断できる場合には、
この段階では議案に賛同といたします。当社では、このように課題解決を促す観点から賛同と
した議案を、
「イエローカード」として認識し、その後の状況をモニタリングしております。
改善に向けた取り組みが十分でないと判断される場合等には、以降の株主総会において、当該
議案に不賛同といたします。
<不賛同(レッドカード)の考え方>
企業との対話を通じても、企業と課題意識を共有化できない場合や、課題解決に向けた前向
きな行動が期待できない場合、中長期にわたり改善が見られない場合には、議案に不賛同とし、
状況に応じて株式を売却することを検討してまいります。
当社は、企業が課題を解決するには相応の期間を要する場合もあるため、企業に対して拙速
な対応を求めるのではなく、議決権行使の場面でも中長期的な視点で実効的な取り組みを促し
ていくことが重要であると考えております。
18
2)議決権行使精査要領について
当社の「議決権行使精査要領」 5は、中長期的な企業価値向上や、株主への利益還元姿勢、
コーポレートガバナンス等の観点から、客観基準に基づくスクリーニングにより、課題のある
議案を効率的かつ包括的に抽出することを目的に、平成 10 年度に当社が独自に策定したもの
です。
内容については、策定以降、日本企業の置かれた状況や法令等の改正、コーポレートガバナ
ンスを巡る議論の動向等も踏まえつつ、見直しを実施してきており、今後も、議決権行使取り
組みの一層の充実を図ることを目指し、内容の改正を検討してまいります。
また、平成 26 年度からは、議決権行使の方針を定めるにあたり、資産運用部門の関係部署
による「議決権行使検討会議」を開催し、より幅広い視点から議論を行うことで、議決権行使
取り組みの一層の充実を図っております。
5
議決権行使精査要領の概要については、以下URLをご参照ください。
http://www.nissay.co.jp/kaisha/csr/unyou/pdf/seisa_youryou.pdf
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3)個別議案の考え方
当社の議決権行使のプロセスは、上述のとおり、まず、「議決権行使精査要領」に則り、精
査対象とする議案を洗い出したうえで、精査対象議案について、課題の背景や今後の対応方針
等、議案別のチェック項目について確認いたします。
精査対象となった議案の種類別の主な考え方は以下のとおりです(平成 28 年 8 月現在)
。
①剰余金処分議案
・当社は、成長に向けた資金を有効に活用し、余剰資金を適切に株主へ還元することを
求めております。配当性向が 15%未満の企業に対しては、以下の項目を確認し、個別
企業の状況を踏まえて判断しております。
 設備投資等の資金ニーズの有無
 株主還元目標の有無
 財務体力の状況
 自己株式の取得状況 等
<賛同となる主な事例>
・成長に向けた投資を行うことを優先し、株主に対して納得的な説明を行っている場合
・株主還元を強化している場合(増復配、配当性向の改善、自己株式取得の実施 等)
・財務体力が業界他社と比較してぜい弱な水準にあり、十分な株主還元がやむを得ず行えな
い状況にあると認められる場合
<不賛同となる主な事例>
・余剰資金の使途(中長期的な投資計画等)が明確でない場合
・中期経営計画等において株主還元に関する目標や考え方が明確でない場合
・必要以上に内部留保を積み増していると判断される場合
20
②取締役・監査役選任議案(ROEが低位にとどまる場合)
・ROEが 5%を下回る状態が継続しており、株式価値の毀損が懸念される場合には、
個別企業の置かれた事業環境や業績・財務内容、改善に向けた取り組みの妥当性や進
捗状況等を確認し、取締役を信任するか否かを個別に検討しております。
<賛同となる主な事例>
・不採算事業からの撤退や固定費の削減等、事業構造改革に取り組み、収益性の改善に向け
た取り組みが進捗している、もしくは今後の改善が期待できると判断される場合
・中期経営計画等でROEやこれに代わる経営目標を掲げ、当該目標値の達成に向けた具体
的なアプローチを株主に対して示している場合
<不賛同となる主な事例>
・中期経営計画等において、ROEやこれに代わる経営目標、収益性改善に向けた道筋が明
示されておらず、対話を通じても納得的な説明が得られない場合
・業績不振に対して適切な対応策が講じられていないと判断される場合
③取締役・監査役選任議案(社外取締役を設置していない場合)
・コーポレートガバナンス態勢の実効性確保の観点から、最低でも社外取締役を1名
選任することを求めております。
<賛同となる主な事例>
・社外取締役を選任することが、当該企業に不利益を生じさせる等、個社事情に応じた納得
的な説明が得られた場合
・相応の理由から社外取締役を選任していないものの、今後、社外取締役の選任に向けた意
向があり、具体的な取り組み内容が納得的であると判断される場合
<不賛同となる主な事例>
・招集通知に記載されている「社外取締役を置くことが相当でない理由」の内容において、
社外取締役を置くことによりどのような不利益が生じるかといった具体的な記載がなく、
個社事情に応じた納得的な説明も得られない場合
21
・対話を通じて社外取締役の選任を求めても、選任に向け前向きに検討していく意向が確認
できない場合
④取締役・監査役選任議案(社外役員の取締役会・監査役会への出席率が低い場合)
・社外役員の取締役会・監査役会への出席率が低位にとどまる場合、社外役員による経
営監督機能の発揮状況が懸念されるため、そのような状態に至った背景および企業側
の考え方、改善に向けた意思の有無等を把握したうえで、社外役員選任議案の賛否を
個別に検討しております。
<賛同となる主な事例>
・社外役員が十分に出席できなかっただけの相応の事情があり、改善に向けた意思や具体的
な取り組み内容が納得的であると判断される場合
・出席率改善に向けた取り組みの成果が確認できる場合
<不賛同となる主な事例>
・出席率の改善に向けて取り組んでいく意思が確認できない場合
・出席率が低位にとどまる社外役員が当該企業の経営に対してどのように貢献しているか
について納得的な説明が得られない場合
⑤取締役・監査役選任議案(監査役会の独立性に問題がある場合)
・監査役会を構成する社外監査役の全員が、大株主出身者で構成される等、監査役会の
独立性に問題がある場合、客観的な立場から監査機能が発揮できない懸念があるため、
そのような状態に至った背景および企業側の考え方、改善に向けた意思の有無等を把
握したうえで、社外監査役の選任について個別に賛否を検討しております。
<賛同となる主な事例>
・対話を通じて、実質的に独立性が担保されている状況であると判断される場合
・社外監査役の独立性を確保できなかっただけの相応の事情があり、改善に向けた意思や具
体的な取り組み内容が納得的であると判断される場合
22
<不賛同となる主な事例>
・改善に向けた企業側の明確な意思が確認できない場合
・客観的に監査機能を発揮できていると判断できるだけの納得的な説明が得られない場合
⑥取締役・監査役選任議案(不祥事等が発生している場合)
・法令違反等の不祥事や訴訟、本業以外での多額の損失計上等がある場合には、責任の
明確化や再発防止策の策定・履行など、改善に向けた取り組みを求めるとともに、取
締役・監査役の選任候補者について、信任しうるかどうかを個別に検討しております。
<賛同となる主な事例>
・社内処分等の責任明確化や再発防止策の策定・履行等といった適切な対策が講じられてい
ると判断される場合
<不賛同となる主な事例>
・不祥事等の発生に関して、適切な対策が講じられていない場合
⑦役員退職慰労金贈呈議案
・低ROEや低配当性向の場合や不祥事を起こしている場合等、株式価値の毀損が懸念
される状況において、贈呈対象者が企業価値向上に向けた職責を果たしてきたかを検
討し、退職慰労金贈呈の適切性を判断しております。
<賛同となる主な事例>
・業績動向や株主還元とのバランスを考慮して、贈呈金額を減額する等、相応の措置が取ら
れていると判断される場合
<不賛同となる主な事例>
・無配や低水準の配当性向、低水準のROE等といった株式価値を毀損している状態が継続
している場合
・不祥事等に対して贈呈対象者に責任があると認められる場合
・そのほか、贈呈対象者が企業価値向上に貢献してきたと判断できない場合
23
⑧ストックオプション議案
・ストックオプションは、企業の役職員等が株主価値向上に向けた経営に取り組むイン
センティブを高めるものと考えており、こうした目的に沿って付与される場合、原則
として肯定的に捉えております。
・ただし、付与対象者が適切でない場合や新株予約権の行使に伴い既存株主の株式価値
が著しく希薄化すると判断されるものは好ましくないものと考えております。
<賛同となる主な事例>
・付与対象者や新株予約権が行使された場合の希薄化率に問題がない場合
<不賛同となる主な事例>
・付与対象者に社外者が含まれており、対象者が企業価値向上へどのように貢献するかにつ
いて納得的な説明が得られない場合
・新株予約権の行使に伴い著しい希薄化が発生するため、ストックオプションの付与が適切
でないと判断される場合
・不祥事等に関して付与対象者に責任があると判断される場合
24
⑨買収防衛策議案
・当社は、企業が買収を防ぐ手段として最も望ましいものは、持続的な利益成長等を通
じ、中長期的に株式価値を高めることと考えております。
・したがって、買収防衛策の導入の前提として、①企業が株式価値向上に努めているこ
と、②企業側と買収側が十分な議論を交わすための時間や情報を確保し、株主が適切
な判断を行う環境を整えることを目的に、当該防衛策が適切に運用されること、の二
点が必要と考えております。
・上記の考え方に基づき、当社は、「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のため
の買収防衛策に関する指針」 6 や、「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在
り方」 7 といった指針等に沿った適切な内容のものであるか否か、企業が業績改善を
通じた株式価値向上に努めているか、といった観点から検討を行っております。
<賛同となる主な事例>
・上記指針に沿った適切な内容のものであり、企業が業績改善を通じた株式価値向上に努め
ている場合
<不賛同となる主な事例>
・買収防衛策を発動した場合、その見返りとして買収者に金員等を支払う可能性がある場合
・長期にわたる業績不振等により株式価値を毀損している企業において、買収防衛策の導入
や更新により株式価値を更に毀損する懸念が大きいと判断される場合
6
7
当該指針は、平成 17 年 5 月に経済産業省および法務省によって策定されました。
内容につきましては、以下URLをご参照ください。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/shishin_sakutei.html
当該指針は、平成 20 年 6 月に経済産業省の企業価値研究会によって策定されました。
内容につきましては、以下URLをご参照ください。
http://www.meti.go.jp/report/data/g80630aj.html
25
(5)課題改善に向けた取り組み
1)課題の発見・抽出プロセス
当社では、投資先企業において、企業価値向上に向けた重大な課題があると判断される場合
には、目的を持った対話を行うことで、課題の改善を促しております。投資先企業が抱える課
題は、以下の 2 つのプロセスを通じて発見・抽出いたします。
①日常的な分析および対話を通じて発見された課題
②当社の「議決権行使精査要領」に沿って抽出した課題
これら2種類の課題について、日常的な対話や議決権行使の場面を利用して、当社の考え方
や課題意識を伝えるとともに、改善を促してまいります。
【課題の種類とアプローチ方法】
①日常的な分析・対話を
通じて発見された課題
②「議決権行使精査要領」
に沿って抽出した課題
例)
 情報開示姿勢
 E(環境)・S(社会)の課題
 経営スタンス・事業方針 等
例)
 ROE5%未満
 配当性向15%未満
 ガバナンス上の課題 等
対話および議決権行使を通じて改善を促す
26
2)改善に向けた取り組み
当社では、長期の機関投資家として、投資先企業が課題に直面した際には、拙速な解決策で
はなく、中長期的かつ持続可能な方法での解決を求めてまいります。
投資先企業との対話を通じて、当社の考え方やスタンス、課題意識を伝えるとともに、投資
先企業の考え方も丁寧にヒアリングしたうえで、課題解決に向けた企業の意思を確認し、解決
に向けた取り組み状況をフォローしてまいります。また、課題の内容に応じて、解決までに一
定の時間が必要と判断される場合には、相応の期間モニタリングを続けたうえで、状況に応じ
て追加の対話を行い、進捗状況を確認してまいります。
企業が対話に応じない場合や、十分な対話を行っても目指すべき方向性が擦りあわない場合、
相応の時間を要しても課題が改善しない場合には、議決権行使の際に不賛同票を投じたり、保
有株式を売却するといった対応を行ってまいります。
当社では、こうしたプロセスを経ることで、投資先企業の課題が減少していくことを目指し
ております。
【投資先企業の課題解消プロセス】
対
課
題
話
・
モニタ
リング
課題解消
対
課
題
話
・
モニタ
リング
(課題解消が期待できない場合)
27
不賛同
課
/
題
売却
・・・
対話を実施するほど課題は減少
課題解消
第4章
平成27年度の取り組み結果
(1)スチュワードシップ活動の状況
1)対話の状況
平成 27 年度(平成 27 年 7 月~平成 28 年 6 月)は、548 社と延べ 736 件の対話を実施いた
しました。対話を実施した 548 社は、同期間の当社投資先企業数 1,733 社に対し、社数ベース
で約 3 割、時価ベースで約 7 割の水準に相当します。
【対話の実施状況】
投資先企業
1,733 社
対話実施件数
※
548 社
(延べ 736 件)
・平成 27 年 7 月~平成 28 年 6 月の 1 年間の対話件数を集計
2)重点対話の状況
平成 27 年度(平成 27 年 7 月~平成 28 年 6 月)は、低ROE、低配当性向、不祥事等の課
題を有し、その課題が特に深刻であると認められる投資先を「重点対話企業」として選定し、
課題の解消を目的とした重点的な対話を実施いたしました。
【重点対話の実施状況】
重点対話
85 社
(延べ 132 件)
低ROE
59 社
(延べ 87 件)
低配当性向
26 社
(延べ 39 件)
4社
(延べ 15 件)
不祥事等
※
・平成 27 年 7 月~平成 28 年 6 月の 1 年間の対話件数を集計
・内訳は一部重複あり
28
3)議決権行使の状況
平成 27 年度
(平成 27 年 7 月~平成 28 年 6 月)
は、投資先企業 1,754 社のうち、
366 社
(20.9%)
と議決権行使の場面における対話を行い、課題意識の表明をいたしました。
【議決権行使の状況】
投資先企業
1,754 社
精査
570 社
課題意識の表明
※
366 社
・平成 27 年 7 月~平成 28 年 6 月の 1 年間の対話件数を集計
・臨時株主総会や決算期変更に伴う 2 回目以降の定時株主総会を 1 社としてカウント
また、議決権行使結果の議案別の内訳は以下のとおりとなっております。
【議案別の議決権行使の状況】
(社)
①対象
②精査
③課題意識の表明
②/①
合計
1,754
570
(32.5%)
366
(20.9%)
剰余金処分
1,299
176
(13.5%)
147
(11.3%)
取締役選任
1,601
195
(12.2%)
161
(10.1%)
監査役選任
1,081
60
(5.6%)
51
(4.7%)
定款一部変更
680
73
(10.7%)
55
(8.1%)
退職慰労金贈呈
250
48
(19.2%)
44
(17.6%)
役員報酬改定
515
11
(2.1%)
8
(1.6%)
新株・新株予約権発行
125
14
(11.2%)
10
(8.0%)
会計監査人選任
30
6
(20.0%)
4
(13.3%)
組織再編関連
39
17
(43.6%)
3
(7.7%)
買収防衛策
107
107
(100.0%)
3
(2.8%)
その他会社提案
136
6
(4.4%)
2
(1.5%)
32
32
(100.0%)
0
(0.0%)
株主提案
※
③/①
・社数ベース(議案ベースでない)
・臨時株主総会や決算期変更に伴う 2 回目以降の定時株主総会を 1 社としてカウント
29
(2)スチュワードシップ活動の成果と事例
1)スチュワードシップ活動の成果
当社では、スチュワードシップ活動が実効性を伴ったものとなっているかについて様々な観
点から検証を行っており、その成果を確認できております。
当社は議決権行使の場面で、課題があると判断される企業に対して、課題意識を表明したう
えで、中長期的な視点で改善を促すことを重視して、議案への賛否を判断しております(詳細
は、
「第3章(4)議決権行使」
(P16~25)をご参照ください)。
こうした議決権行使の取り組みが実効性を伴ったものとなっているか検証するため、平成
26 年度(平成 26 年 7 月~平成 27 年 6 月)に議決権行使の際に課題意識を表明した企業につ
いて、平成 27 年度(平成 27 年 7 月~平成 28 年 6 月)に改善が見られたかどうかを調査した
ところ、以下のような結果となりました。
【課題意識を表明した企業の改善動向】
課題意識の表明
賛同先の
不賛同先の
改善割合
改善割合
合計
※
64%
30%
株主還元
67%
45%
収益性(低ROE)
60%
67%
コーポレートガバナンス
71%
25%
その他
24%
9%
・平成 26 年度(平成 26 年 7 月~平成 27 年 6 月)の議決権行使の際に課題意識を表明した
企業のうち、改善動向が評価可能な企業について集計
・改善の定義は以下の通り
①「議決権行使精査要領」に抵触しなくなったもの
②「議決権行使精査要領」に抵触したものの、前向きな変化が認められたもの
(具体的には、増復配の実施、株主還元等に関する目標開示、ROE・業績改善、出席率改善)
30
課題意識を表明したうえで、企業の取り組み方針やその内容から改善が期待できると判断し
た場合には賛同、改善が期待できないと判断した場合には不賛同にて対応しておりますが、そ
の後の改善割合は、賛同としたもの(64%)が、不賛同としたもの(30%)を上回りました。
なかでも改善割合の高かったコーポレートガバナンスに関する課題に関しては、企業の取り
組み方針等を評価し、議案に賛同としたものついて、以下のような成果を確認しております。

社外取締役が不在であった企業のうち、71%が社外取締役を新たに導入

社外取締役・監査役の取締役会・監査役会への出席率が低水準であった企業のうち、71%
において、出席率が改善
また、下図では、低配当性向であることを課題として対話を実施した企業の改善動向を示し
ておりますが、対話を実施した企業のうち、配当還元が増加した企業の割合(59%)が、上場
企業全体で見た場合(50%)を、昨年度に引き続き上回りました。
特に、重点対話を行った企業については、73%の企業が増復配を実施しております。また、
配当目標を新たに公表したケースや、配当方針の見直しが行われたケースが確認されました。
【当社投資先企業において増復配を行った企業の割合】
平成 26 年
平成 27 年
平成 28 年
3 月期
3 月期
3 月期
全上場企業
45%
47%
50%
当社投資先企業
51%
54%
56%
61%
60%
59%
対話実施
うち重点対話
73%
対話実施せず
※
49%
52%
・継続してモニタリング可能な企業のうち、3 月期決算企業について集計
・重点対話は、株主還元について課題意識を表明した先
31
55%
当社は、長期投資家としての取り組みが実効性を伴ったものとなっているかを検証するため、
今後も様々な視点から定期的に振り返りを行い、スチュワードシップ活動の更なる実効性向上
に努めてまいります。
32
2)スチュワードシップ活動の事例
①配当性向が低位にとどまる企業の事例
<事例1>
配当性向が改善した事例
・ 当該企業は、株主還元方針として安定配当の維持を掲げており、近年、業績が堅調に推移
する中で、配当性向は下落基調にありました。当社としては、企業価値向上に伴う適切な
利益配分の観点から、当該企業の配当方針について課題意識を有しており、日常的な対話
を通じて、業績に応じた柔軟かつ適切な株主還元の実施を要請しておりました。
・ 昨年度の議決権行使の際には、当該企業の配当性向は当社スクリーニング基準に抵触する
水準にあったものの、日常的な対話を通じて、当該企業が株主に十分配慮したうえで今後
の配当方針を柔軟に見直していく意向である旨が確認できたため、剰余金処分議案には賛
同にて対応いたしました。
・ その後、当該企業は、当社からの課題意識の表明を受けて増配を実施するとともに、配当
方針を業績連動型へと変更し、業績が好調な場合には特別配当の形で配当を上乗せする旨
を公表いたしました。この結果、当該企業の今期予想配当性向は当社基準を上回る水準と
なり、対話の成果が見られたものと認識しております。
<事例2>
配当性向が改善しなかった事例
・ 当該企業は、強固な事業基盤を背景に高い収益力を有しており、業績は好調に推移してお
ります。また、過去からの利益の蓄積により、自己資本や手元資金は極めて高い水準にあ
り、結果的に、当該企業の配当還元の水準は、収益力・財務体力に比して低い水準となっ
ております。また、内部留保の積み上がりは、当該企業のROEを押し下げる要因にもな
っています。
・ 当社では、過年度より当該企業と継続的に対話を実施し、資金の有効活用や株主還元の充
実を要望してまいりました。昨年度は、当該企業が増配を決定したことから、株式市場も
株主還元姿勢の変化を歓迎し、株価は大きく上昇しました。また、対話の中で、株主還元
強化について引き続き前向きに検討していく意思が確認できたことから、昨年度は剰余金
処分議案に賛同にて対応いたしました。
・ しかし、直近期においては、配当水準が据え置かれ、依然として当社スクリーニング基準
に抵触する状況となりました。その後、改めて対話を実施いたしましたが、豊富に有する
手元資金の使途に関して認識の隔たりは大きかったことから、今年度は剰余金処分議案に
ついて不賛同にて対応いたしました。
33
②ROEが低位にとどまる企業の事例
<事例3>
ROEが改善した事例
・ 当該企業は、主力製品の需要の落ち込みに加えて、創業時から続く事業が長期間赤字に陥
っていたことから、ROEが長期にわたり低迷していました。
・ 当社は、当該企業に対し、事業環境や競争戦略について詳細な説明を求めるとともに、中
長期的な利益率向上に向けた取り組みを要請いたしました。当該企業との対話を通じ、赤
字事業の分離はブランド価値を損ない問題解決には繋がらないことや、株主からのROE
向上の要請を社内の意識変革に活用していく姿勢が確認できたため、その後の進捗状況を
見守ることといたしました。
・ その後、当該企業が発表した新たな中期経営計画において、ROE目標が初めて公表され
たほか、直近期の決算発表では、主力事業の採算改善に伴いROEの大幅な改善が見られ
ております。当社としては、引き続き新中期経営計画の進捗をフォローし、継続的に対話
を行っていく方針としております。
<事例4>
ROEが改善しなかった事例
・ 当該企業は、主要販売先がグローバル市場で苦戦した影響により、大幅な当期純損失を複
数回計上した結果、財務体質が著しく毀損しておりました。また、中期経営計画の公表が
なく、業績の回復や収益性向上に向けたビジョンも明示されていない状況にありました。
・ 当該企業は研究開発型の企業であり、成果が業績に表れるまでに時間を要する点を踏まえ、
当社では数年にわたり当該企業の業績動向を注意深くフォローしてまいりました。この間、
当該企業において、資金繰りや財務体質改善に向けた対応は図られてきた一方、抜本的な
収益改善に向けた取り組み成果は認められず、直近期においても大幅な当期純損失が計上
される結果となりました。
・ その後実施した対話において、改めて足もとの業況を踏まえた今後の収益改善策について
確認を行いましたが、中長期的な企業価値の向上は見込み難いと判断せざるを得なかった
ことから、取締役選任議案には不賛同にて対応するとともに、全株式の売却を行いました。
③コーポレートガバナンス態勢に課題がある企業の事例
<事例5>
出席率が改善した事例
・ 当該企業は、社外取締役の取締役会への出席率が低水準にとどまっていたことから、昨年
度の株主総会に先だって、複数回にわたり対話を実施してまいりました。その中で、遠隔
34
地からの出席となることや、本業での多忙さ等を理由に取締役会への出席率は低位にとど
まっているものの、社外取締役が当該企業の事業分野において極めて高度な知見を有して
おり、当社経営に大きく貢献している、との説明が得られました。また、当社の課題意識
表明を経営として重く受け止め、ガバナンス態勢強化に向けた専門委員会を社内に立ち上
げたほか、以後の取締役会には当該社外取締役が全回出席している等の前向きな変化を確
認することができました。
・ 当該社外取締役が、期待される経営監督機能をそれまで十分に発揮してきていたとは言え
ないものの、その知見は当該企業の経営にとって有益なものであると判断できるだけの十
分な説明が得られたことや、当社の課題意識を真摯に受け止め、今後はガバナンス態勢強
化に向けた改善取り組みが期待できるものと判断されたことから、昨年度は当該社外取締
役の改選議案について賛同にて対応いたしました。
・ 当社はその後も当該企業との対話を継続し、ガバナンス態勢強化に向けた取り組みをフォ
ローしてまいりました。今年度の株主総会では、当該社外取締役が直近1年間におけるほ
ぼ全ての取締役会に出席したことを確認できております。
<事例6>
監査役会の独立性に課題がある事例
・ 当該企業が株主総会に上程した社外監査役選任議案は、候補者全員が当該企業の大株主出
身者で構成されており、監査役会の独立性が懸念される状態にありました。
・ 昨年度の株主総会にあたり実施した対話の際には、当社からの課題意識の表明を受けて、
監査役会のあり方について翌年の株主総会までに検討していくとの説明が得られたこと
から、監査役選任議案には賛成にて対応いたしました。
・ その後、当社は、当該企業および大株主となっている企業と対話を行い、当社の課題意識
を伝えるとともに、改善を促してまいりました。しかし、今年度の株主総会においても、
独立した社外監査役が選任されることはなく、当該企業から改善に向けた具体的な取り組
み策も示していただけなかったことから、今年度の社外監査役選任議案には反対にて対応
いたしました。
・ 当社としては、大株主となっている企業の影響力が大きいものと考えており、当該企業、
および大株主となっている企業とは、その後も継続して対話を行っております。大株主と
なっている企業からは、総会後、当事案をグループ全体の課題として認識し、改善に向け
て取り組み始めた旨、説明がありました。当社としては、不賛同票を投じた場合には、保
有株式の売却も視野に入れて検討を行っておりますが、当該企業については対話の手応え
も一定認識していることから、引き続き粘り強く改善を促していく方針としております。
35
④不祥事を起こした企業の事例
<事例7>
品質基準に係る不正行為が発覚した事例
・ 当該企業では、主力事業以外の周辺事業領域において、品質基準に係る不正行為が発覚い
たしました。当該企業は、外部調査機関を用いて原因究明と再発防止に努めていたことか
ら、当社としてはその進捗を注視してまいりましたが、調査の過程で今回の事案以外にも
品質基準に係る不正行為が発生していたことが明らかとなりました。
・ 度重なる不正行為は、偶然発生したものではなく、企業風土に起因する根の深い課題であ
ることが懸念されたことから、当該企業と実施した対話の中では、今回の不正行為の発生
原因や再発防止策にとどまらず、不正行為発覚時の初動と公表までのプロセス、企業風土
に根差した課題点など、当該企業のリスク管理や法令順守に関する根本的な姿勢や能力に
ついて詳細にヒアリングを行いました。
・ 複数回にわたる対話の中で、当該企業が事態を深刻に受け止め、再発防止策の再徹底、経
営陣の刷新等、改善に向け真摯に取り組みを進めている様子は確認できたものの、当社と
しては、当該企業のガバナンスに関する問題は根深く、仮に主力事業において同様の不正
行為が発覚した場合、株式価値に甚大な影響を及ぼす可能性も否定できないとの判断に至
りました。したがって、当該企業の株式について一部売却を実施するとともに、当該企業
との対話を今後も継続し、ガバナンス改善に向けた取り組み状況をフォローしていく方針
としております。
<事例8>
不適切な会計処理が発覚した事例
・ 当該企業は、不適切な会計処理が明らかとなり、決算発表が遅延する事態が発生いたしま
した。当社は当該企業と対話を行い、不適切な会計処理の内容や経緯など詳細をヒアリン
グするとともに、今後の対応策について確認を行いました。
・ 当該企業からは、不適切な会計処理に至った要因や、今後の再発防止策について丁寧に説
明していただきましたが、当該企業では過年度にも不適切な会計処理が発生しており、そ
の際に講じられた再発防止策が適切に機能していなかったものと判断せざるを得ません
でした。
・ 当社としては、複数回にわたり不適切な会計処理が発生した点について誠に遺憾であると
認識しており、当該企業の経営陣の業務執行・監督能力に課題があると判断せざるを得な
かったことから、今年度の株主総会においては取締役選任議案に不賛同にて対応するとと
もに、全株式を売却する方針としております。
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第5章
平成28年度の取り組み方針
(1)重点対話取り組みの拡大(85 社から 200 社程度へ)
当社では、対話活動において、個社の状況や投資規模等を考慮しつつ、当社にとって重要性
が高いと判断される企業を選定しております。なかでも、低ROEや低配当性向、コーポレー
トガバナンスに改善の余地がある企業等、課題を有すると考えられる企業を中心に「重点対話
企業」として選定し、対話取り組みを強化しております。
こうした取り組みを質・量の両面から一層充実すべく、平成 28 年度は「重点対話企業」を
85 社から 200 社程度に拡大し、対話活動に取り組んでまいります。
【重点対話企業の選定】
課題
大
中
小
顕在化
せず
重要性の
観点から
対象を選定
大
投資規模
原則
全件対話
中
小
重要性の
観点から
対象を選定
課題
全
体
で
2
0
0
社
程
度
定義
重大な不祥事が発生している企業や、業績面で深刻な課題を抱えている企業、
大
その他議決権行使で不賛同を検討すべきコーポレートガバナンス上の課題を
抱えている企業 等
中
収益性や株主還元に課題のある状態が一定期間にわたり継続している企業
小
収益性や株主還元について、足もとで課題が生じている企業
顕在化
せず
収益性や株主還元、コーポレートガバナンス等について明確な課題が顕在化
していない企業
37
課題の大きさ、投資規模の大きさに応じ、重点的に対話すべき企業を選定することで、投資
先企業の中長期的な企業価値向上に貢献することを目指すだけでなく、当社株式ポートフォリ
オの質向上にも繋げてまいります。
加えて、現時点では明確な課題が顕在化していない場合であっても、当社投資規模が大きい
企業については、投資先企業の置かれた事業環境や将来の見通し等を総合的に勘案しつつ、必
要に応じ対話を行っていくことで、投資先企業の状況の把握に努めるとともに、一層の企業価
値向上を促してまいります。
また、課題が大きいものの当社投資規模の小さい企業については、重要性の観点から対話対
象企業を選定します。日常の対話を行うことができなかった場合にも、議決権行使の場面で対
話を実施することで、企業に対し課題意識を表明するとともに、改善に向けた取り組みを促し
てまいります。
上記取り組みを通じ、平成28年度に「重点対話企業」200社程度との対話を行い、建設
的な意見交換を重ねてまいります。また、当該取り組み以外にも、投資先企業との日常の対話
や議決権行使時の対話を通じ、当社の考え方や課題意識を伝えることにより、認識の共有化と
問題の改善に努めることで、投資先企業の中長期的な企業価値向上に資するよう努めてまいり
ます。
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(2)スチュワードシップ活動に係る体制の強化
日本版スチュワードシップ・コードの原則7では、機関投資家が投資先企業との建設的な対
話に取り組むために備えるべき実力について記載されています。
従来から、当社では日本株投資を専門に担当する部署を設置するとともに、株式投資に係る
十分な実務経験や高度な専門知識を備えた人材を配置し、日々研鑽に努めてまいりました。
当社では、当コードにおいて、
「機関投資家は、こうした対話や判断を適切に行うために必
要な体制の整備を行うべきである」
(指針7-2)
「将来のスチュワードシップ活動がより適切
なものとなるよう努めるべきである」
(指針7-3)との記載がなされていること、およびそ
の趣旨に賛同していることを踏まえ、今般、下記の対応を通じ、スチュワードシップ活動を推
進するための体制について、一段の強化を図りました。
1)対話専管人材の配置
当社では、平成 28 年度より、日本株投資の担当部署に、企業との建設的な対話を専門に担
当する人材を 2 名、追加で配置いたしました。
従来、当社では日本株投資担当部署のアナリストやポートフォリオ・マネージャーが企業と
の対話に取り組んでまいりました。今後は、既存の取り組みに加え、当該専管人材がアナリス
トと連携しつつ、年間を通じて投資先企業との対話に取り組んでまいります。
体制強化を通じ、機関投資家としての更なる「実力」向上に努めるとともに、投資先企業と
の建設的な対話について、質・量の両面から一層強化してまいります。
39
2)対話・議決権行使の高度化に向けた新システムの導入
当社では、企業との対話および議決権行使の実効性を高めるため、企業との対話内容をPD
CAの観点から継続的に振り返る中で、企業の取り組みの変化を確認し、必要に応じ追加の働
きかけを行うことを、議決権行使では個別企業の状況を十分に検討したうえで、対話を通じて
当社の考え方や課題意識を伝え、改善を促すことを重視してまいりました。
こうした当社のスチュワードシップ活動を支える体制整備の一環として、当社は、株式会社
エックスネット(社長:茂谷武彦、以下「同社」
)が提供するXNETサービス「スチュワー
ドシップ・ソリューション」
(以下、
「本サービス」
)の導入を決定いたしました。
本サービスは、スチュワードシップ活動の一環として行う企業との対話および議決権行使の
管理をトータルに支援する各種アプリケーションを提供するものです。
本サービスの導入により、当社は企業との対話履歴を従来以上に体系的に管理・保存するこ
とが可能になるため、企業との対話に係るPDCAの観点からの振り返りをより円滑に行うこ
とが可能となります。また、議決権行使業務の大幅な効率化が可能になるため、当社は個別議
案の分析や企業との対話等、議決権行使の実効性向上のための取り組みに従来以上に時間を割
くことが可能となります。
当社では、本サービスの導入が当社業務の大幅な効率化に繋がるだけでなく、企業との対話
および議決権行使の質向上に資するものと考えており、今後の当社取り組みの一層の充実に繋
げてまいりたいと考えております。
以
40
上