水溶性チタンによる無機粒子の表面 処理効果とセラミック材料への応用

第2回マツモト技術講演会
2007年11月26日(月)
航空会館(東京)
水溶性チタンによる無機粒子の表面
処理効果とセラミック材料への応用
岐阜大学 工学部 機能材料工学科
准教授 櫻田 修
教授
橋場 稔
微粒子を水に分散させた懸濁液
微粒子を液体中に分散させる技術
インク、食品、化粧品、セラミックスなど多方面で利用
粒子径小 → 粒子は凝集傾向
ナノ領域に迫るサイズの微粒子
水中で分散させた懸濁液を
調製する技術の確立が急務
(岐阜大学校内の掲示)
生態・人体への影響
管理・廃棄の問題
環境負荷の低減化
コストの削減
水を使ったプロセス
( http://www.jwa.or.jp/gms-fullglobe.html )
地球にやさしく!
セラミックス製造プロセスを一例に、
微粒子を分散させた懸濁液、
特に濃厚な微粒子懸濁液(スラリー、泥漿)
を中心に調製方法ならびに分散・流動性の評価について
→ 様々な分野で応用可能
1. セラミックスとは?
2. セラミックス製造プロセスと成形法
3. 湿式成形法とコロイド科学
4. 微粒子の分散と流動
微粒子分散のメカニズム
5. 濃厚微粒子分散懸濁液の分散・流動性の評価
分散性の評価
沈降試験、ゼータ電位測定、粒子径分布
湿潤点・流動点の評価
レオロジー
6. チタンを含む水溶液を用いた微粒子の分散とその応用
セラミックスとは?
Ceramics
ギリシャ語 keramos 梵語 car (焼く)
無機質の非金属製品を焼成によって製造する工学
窯を用いて天然もしくは人工の鉱物原料を高温で加熱
し、焼結または溶融させて製造する全ての製品。人為的
熱処理によりつくられた無機質固体材料。
どんな製品があるの? 陶磁器、ガラス、琺瑯、レンガ、耐火物、セメントなど。
最近では携帯電話や電化製品の部品の一部
などにも。
セラミックス・プロセッシングとは?
原料
(raw materials)
固有の性質
(intrinsic property)
製造工程
製品
(ceramic processing)
(product)
物性
(physical property)
セラミックス・プロセッシング
原料
混合
成形
Build up 湿式
乾式
気相法
ボールミル
溶液法
ナノサイズ アトリーター
混錬
Break down
1 μm
原料粉末を制するものが
セラミックスを制する
焼成
加工
研削
キルン
乾式
研磨
バッチ
押し出し
接合
ホットプレス
射出
HIP
CIP
鋳込み
Direct-casting
セラミックスの
力学的性質
ドクターブレード
高温固体反応
Characterization
セラミックスの成形法の例(湿式法)
鋳込み成形法; 泥漿の調製
セラミック粉末
分散剤
ボール
ポット
ボールミリング
鋳込み直前の泥漿中の脱ガス
真空中で撹拌脱ガス
泥漿をセッコウ型に流し込む
(a)泥漿を多孔質
型に流し込み
(b) 余分な泥漿を
排泥
成形体
(c) 脱型
焼成体
写真提供: 岐阜県セラミックス技術研究所元所長 島田 忠 様
成形体を型からとりはずす
写真提供: 岐阜県セラミックス技術研究所元所長 島田 忠 様
成形体の焼成
白い台の上に成形した物質(成形体)を置きます。成形体は簡単に
割れてしまいますので、これを1000℃以上の高温で焼き固めます。
成形体と焼結体
焼結体
成形体
湿式成形法
懸濁液の粒子濃度
成形密度
成形体の粒子の充填構造
→ 焼結体の密度に影響
酸化アルミニウム
α-酸化アルミニウム
酸化ジルコニウム
安達直己、櫻田 修、橋場 稔、水系懸濁液を用いた
セラミックスプロセッシング, J. Soc. Inorg. Mater.
Jpn., 12, 463-471 (2005).
濃厚でかつ流動性のある分散性の
良好な懸濁液(泥漿)をつくるには?
泥漿のpH、粉表面電荷の制御
適切な分散剤の選択
分散メカニズムの解明
用いる粒子のサイズ: コロイド領域
→ コロイド科学
コロイドって何だろう?
Colloid (英) Kollo(膠)+EIdo(形)
→ コロイド科学(膠質科学)
10-9 10-7 m程度の大きさ
原子、分子 < コロイド < 粒子
1) チンダル現象(1868年、英)
2) ブラウン運動 (1827年、英)
3) 透析
4) 電気泳動
5) 凝析 ・塩析
コロイドの特性
表面効果 (比表面積の増大)
粒子径効果 (光の吸収と散乱)
表面力効果 (粒子の分散・凝集)
金コロイド
構造効果 (粒子や分子の凝集体)
分割によって,表面積が増大
比表面積(m2
g-1)
天然
オパール
6
s=
Dρ
D: 粒子の直径(m); ρ: 粒子の密度(kg m-3)
ρ = 3x103 kg m-3 の粒子について,
D = 2 μm → s = 1 m2 g-1
D = 20 nm → s = 100 m2 g-1
粒子径 小 → 比表面積 大
単分散シリカ
微粒子を安定に分散させた懸濁液の調製法
静電的な反発力を利用
分散剤の使用 無機塩の添加
ポリリン酸ナトリウム,水ガラス
高分子電解質
陰イオン性高分子電解質
ポリアクリル酸,ポリメタクリル酸
陽イオン性高分子電解質
ポリエチレンイミン
オキシジルコニウム塩の水溶液
酢酸ジルコニウム
チタン酸水溶液
チタンを含む乳酸水溶液
CH CH
CH CH2
C=O C=O
3
O
O
n
SM
(スイチレンマレイン酸)
CH2
SO3
SO3
n
DEMOL-AS
(花王、ポリスチレンスルホン酸)
微粒子分散・凝集のメカニズム
懸濁液中で粒子間に作用する力
溶媒
浮力
van der Waals 引力
VB
VB
VA
VR
反発力
VR
DLVO理論
VA
VG
重力
VG
サブミクロン程度以下の大きさの粒子
→ 重力( VG )、浮力( VB )の影響少ない
微粒子の分散・凝集: VA と VR の和が重要!!
粒子間ポテンシャル ( VT = VR + VA )
分散・凝集とポテンシャル曲線の関係
ポテンシャルエネルギー
+
静電反発力 ( VR )
+
エネルギー障壁 ( Vmax ) 0
粒子間距離
0
二次極小
粒子間ポテンシャル
( VT = VR + VA )
van der Waals 引力 ( VA )
エネルギー障壁( Vmax ) 大
粒子間距離
+
-
(a) 分散安定系
0
粒子間距離
+
-
(b) 臨界凝集系
0
粒子間距離
エネルギー障壁( Vmax ) 無し
-
(c) 凝集系
エネルギー障壁 大 → 分散・流動性向上!
分散・流動性のよい懸濁液を調製するには?
1) 懸濁液のpH調整(静電安定化機構)
溶媒が水の場合
→ 粒子最表面に水酸基形成
O H2+
O H
O-
Si O H2+
Si O H
Si O-
O H2+
O H
O-
at low pH
at iep
Zeta potential
+ 分散
-
凝集
ゼータ電位 (zeta potential)
→ 表面電荷を反映した定量的な値
at high pH
分散
等電点よりも、pHを低く or 高く
+
+
+
pH変化
→ 粒子表面の電荷が変化
+
粒子間の静電的反発増大
等電点(iep)
- -
-
-
分散・流動性向上
等電点(iep, pzt): 表面電荷が見かけ上、0になるpH
電気泳動堆積(EPD)法による多積層体の作製
-
Pd
+
電極
ステンレス
泥漿
電源装置
+
泥
漿
模式図
Pd:水素吸収特性に優れる
電気を帯びた微粒子懸濁液を調製
550μm
→ 電場をかけて荷電微粒子を電極上に堆積
これまでのEPDに関する研究
水系懸濁液の
EPD
水の電気分解による電
極からの気体の発生
堆積体が多孔質
非水系溶媒
対策法
欠点 環境に悪影響
陰極に水素吸蔵金属
(Pd)
T. Uchikoshi, et al., Trans. Mat. Res. Soc. Jpn.,
25, 107-110 (2000).
欠点 高価
酸化還元反応を利用した無気孔堆積体の作製
C6H4(OH)2
→ C6H4O2 + 2H+ + 2e-
4H+ + 4e- + O2
OH
OH
½O2
→ 2H2O
O
H2 O
ヒドロキノン(HQ)
J. Janca, et al., J. Colloid Interface Sci., 229,
423–430 (2000).
Al2O3
O
キノン(Q)
ZrO2
酸素の発生を抑制
陽極上にマクロな気孔
の無い堆積体の作製
550μm
O. Sakurada, et al., J. Mater. Sci., 39, 1845-1847 (2004).
分散・流動性のよい懸濁液を調製するには?
(PAA)
2) 高分子電解質を分散剤として添加(静電立体安定化)
ポリアクリル酸アンモニウム(PAA)を添加した酸化アルミニウムの分散
CHーCH2
分散安定化
凝集
Flocculation
COO- NH4+ n
Polyelectrolyte Concentration
高分子分散剤の濃度
Apparent Viscosity, ηapp / Pa s
粒子表面に吸着
10
2
10
1
10
0
PAAの分子量
■ 2500
● 6200
▲ 29000
0.0
0.2
0.4
0.6
PAA / mass%
(a) 0, (b) 0.0025, (c) 0.125, (d) 0.25, (e) 1.25, (f) 2.5, (g) 12.5, (h) 25 mass%
0.8
1.0
懸濁液の評価方法
• 分散性
沈降試験,ゼータ電位測定,粒子径分布
• 湿潤点・流動点の評価
• 流動性の評価(レオロジー)
• 分散剤の吸着量の測定
分散性の評価
(a)
分散状態
(b)
凝集状態
体積
増大
密な
充填
分散状態(a)と凝集状態(b)からの沈降による沈降堆積の違い
沈降速度と沈降体積
湿潤点・流動点の評価
簡便な分散剤の効果試験
各々の粉末の測定
SiC粉末
C粉末
SiC/C混合系の測定
SiC粉末 + C粉末
分散剤
水
スパチュラで混練しな
がら,水を加える
湿潤点
一塊になるのに要
した水の量
+
はじめに添加した
分散剤の液量
流動点
スパチュラから流れ
落ちるまでに要した
水の量
+
はじめに添加した
分散剤の液量
懸濁液の流動性の定量的評価
レオロジー
(Rheology)とは?
レオロジー(Rheology)とは?
語源:ギリシャ語のレオ(ρεω、流れるの意味)
物質の変形と流動に関する科学
1929年 Binghamの主張が実を結んで
アメリカに”The Society of Rheology”設立
骨格: 弾性力学、粘性流体力学
(変形する物体の力学)
食品、インク、塗料、セラミックスなどの材料、化粧品、医薬品、土木、など
固体の変形 フックの法則
ゴム、バネ
力
力を作用
t1
t2
→ 変形
物体の内部に変形を元にもどそうとする力
が発生 (内部応力という)
時間
その力を取り除く → 元の状態にもどる
変
形
内部応力 消滅
弾性(elasticity)
t2
t1
時間
1660年 Hooke, Robert (イギリス)
Boyle の助手
顕微鏡図譜(Micrographia)
力
(力)=(比例定数)x(変形量)
弾性率
変形量
バネの弾性力は、伸びに比例する
ボイルの法則: 気体の体積と圧力が反比例する
<ものの変形と力との関係>
固体の変形 ずり変形
(shear)
S m2
S m2
dm
PN
Hm θ
Hm
A
B
A
B
底面を固定して、上面に接線力を作用
上面の単位面積にはたらく力
pt =
P (N)
P
=
( Pa )
2
S (m ) S
ずり(せん断)応力
単純な固体
+ - + -
- + - +
+ - + -
- + - +
+ - + -
- + - +
分子間の弱い引力
砂糖(砂糖の分子)
+ -
- +
+ -
- +
+ -
- +
イオン間の電気的引力
塩化ナトリウム
強い共有結合
ダイヤモンド(炭素原子)
(原子・イオン・分子が規則正しく並んだ結晶)
液体
温度上昇 → 分子・イオンの運動が激しく
→ 規則的な位置にとどまっていられなくなる
→ 溶融液体 (例) 氷 → 水
液体に溶けた溶液 (溶融液体よりも低温)
いずれも液体
→ 分子・イオンは互いにぶつかり合いながら自由に移動
→ 液体の中で小さい粒が不規則に動くブラウン運動
粘性
S m2
力
PN
dm
t1
t2
時間
Hm θ
変
形
A
B
底面を固定して、上面に接線力を作用
t1
力
t2
時間
ニュートン流動
変形速度
(変形速度)=(一番上のカードの速度)÷(カードの高さ)
( /s )
( m/s )
(m)
ずり(せん断)速度
泥漿の流動性(レオロジー)評価
パラレルプレート型セル
レオメーター
(HAAKE RS-50)
ダブルギャップ型セル
流動性の評価
80
塑性流動
Plastic
Flow
Pseudoplastic
Flow
擬塑性流動 0<n<1
Newtonian Flow
ニュートン流動
n=1
ダイラタント流動
Dilatant Flow
Shear stress / Pa
Shear
Stress,/ τPa
/ Pa
せん断応力
ビンガム
Bingham
Flow
流動
PAA / wt%
0.15
0.20
60
0.30
0.40
0.50
40
20
1<n
Shear
Rate,/ γs-1/ s-1
せん断速度
せん断速度-せん断応力曲線(流動曲線)
0
0
200
400
-1
Shear rate / s
600
ポリアクリル酸の添加濃度を変化
させた時のアルミナ泥漿流動曲線
環境にやさしいチタンを含む
水溶液を利用した水系懸濁液
微粒子を分散させたサスペンションを調製するには?
分散機構と実際に分散させるために行われる方法
チタン酸水溶液を分散剤として用いた微粒子の分散
国際公開番号: WO 2005/094978
国際公開日: 2005年10月13日
チタン酸水溶液を用いた誘電体前駆水溶液の調製
公開番号: 2007-161502
チタンを含む水溶液による微粒子の分散
酢酸ジルコニウム
酸性領域で泥漿の
流動性が向上
Al2O3・ZrO2・SiO2・SiC
O. Sakurada, et al., J. Mater. Sci. Lett., 20,
929 (2001).
本研究
本研究
Tiを含む水溶液
ゾル-ゲル法 (大矢ら)
Zrと同族のTiの
ハロゲンを含ま
ない水溶液調製
セラミックス粒子
の分散?
O. Sakurada, et al., J. Ceram. Soc. Jpn.,
115, 846-849 (2007).
薄膜作製
(ディップコーティング、
スピンコーティング)
T. Ohya, et al., J. Sol-Gel Sci. Tech., 30, 71 (2004).
チタンを含むハロゲンフリー水溶液の調製
Titanium tetraisopropoxide [TIP, Ti(OCH(CH3)2)4]
Lactic Acid [Lac, CH3CH(OH) COOH]
TIP
Lac
水
混合(TIPとLacのモル比1)
TIPの加水分解
Ti(OH)4
白濁した溶液
スターラーで攪拌(2週間)
TiとLacの錯形成
無色透明な水溶液
TIP-Lac
Ti(OH)4が可溶化
(14日)
酸化アルミニウム懸濁液の調製
Al2O3
水
TIP-Lac
Al2O3 : AKP-30
住友化学工業製
粒径0.3 μm
ボールミリング 24時間
pH調整
硝酸
アンモニア水
TMAOH
懸濁液
1)
2)
3)
ゼータ電位
沈降試験(分散性の評価)
流動(レオロジー)挙動 レオメーター HAAKE RS-150
懸濁液の流動性の定量的評価 レオメーター
測定セル
5.0x10-3 M
-1
10
5.0x10-3 M
-2
10
分散
pH
4
10.5
分散
凝集
-3
10
凝集
分散
-4
10
分散
Ti[TIP-Lac] / M
-5
10
-3
10
0
-2
10
Ti[TIP-Lac] / M
-1
60
等電点が酸性側にシフト
→ 表面電荷が逆転
pH 4: 分散 →
凝集(5.0x10-3 M
iep: 5.0x10-3 M
pH
凝集
10
) → 分散
Zeta Potential / mV
Sedimentation velocity / mm s
-1
分散性評価 沈降試験( 2 vol% Al2O3 )
40
20
分散
0
分散
-20
-40
-60
pH 10.5:
2.5x10-3 M
以上 → 分散性向上
4
10.5
0
-3
10
-2
Ti
10
[ TIP - Lac ]
-1
/M
10
チタン含有水溶液の化学
従来知られている水溶性チタンの化合物
Ti(IV): TiOCl2, TiCl4, TiOSO4
Ti(III): TiCl3, Ti2(SO4)3
強酸性pH領域で安定 → pH上昇で水酸化物の沈殿形成
アミンなどで安定化したチタン水溶液
岐阜大・高橋らの報告
チタンアルコキシド + アミン / 水酸化テトラメチルアンモニウム
→ チタン含有水溶液
有機酸で安定化したチタン水溶液
古くからクエン酸、酒石酸などとの安定な錯体
乳酸錯体
CAS # 65104-06-5
Titanium(IV) bis(ammonium lactato)dihydroxide Aldrich Chemical Co., Inc.
[CH3CH(O-)CO2NH4]2Ti(OH)2
チタンラクテートアンモニウム塩 [(OH)2Ti(C3H5O3)2-](NH4+)2
チタンラクテート [(OH)2Ti(C3H5O3)2]
マツモトファインケミカル(株)
東北大学・垣花らの報告
Diammonium Tris(2-hydroxypropionato)
titanate(IV)
Tiと乳酸(Lac)の物質量(モル)比 2 以上!!
今回使用したチタンの水溶液(TIP-Lac)
Tiと乳酸(Lac)の物質量(モル)比 1 で合成した透明な水溶液
貧溶媒(1-ブタノール)を過剰に加えて生じた沈殿物の組成:
Ti2O3(Lac)·2H2O
Ti(OPri)4 + 2Lac-H2 + H2O ⇆
2H2[TiO(Lac)2] ⇆
H2[TiO(Lac)2] + 4PriOH
H2[Ti2O2(Lac)3] + Lac-H2
H2[Ti2O2(Lac)3] + H2O ⇆
H2[Ti2O3(Lac)2] + Lac-H2
H2[Ti2O3(Lac)2] + 2NH3 ⇆ (NH4)2[Ti2O3(Lac)2]
(1)
(2)
(3)
(4)
Ti(OPri)4: Titanium tetraisopropoxide [ TIP, Ti(OCH(CH3)2)4 ]
Lac:
Lactic Acid [ Lac, CH3CH(OH) COOH ]
T. OHYA, et al., “Aqueous Titanate Sols from Ti Alkoxide-α-hydroxycarboxylic
Acid System and Preparation of Titania Films from the Sols,”
J. Sol-Gel Sci. Tech., 30, 71–81 (2004).
TIP-Lacの溶存状態
陰イオン染料との反応
陽イオン染料との反応
トルイジンブルー
メチルオレンジ
バインドシェドラー
グリーン
フルオレセイン
水
レーザー光
0.5M TIP-Lac
チンダル現象
カプリブルー
沈殿形成
TIP-Lacは嵩高い
陰イオン
振ると泡立つ
Apparent viscosity, ηapp / Pa s
流動性評価 レオロジー( 20 vol% Al2O3 )
Shear stress: 1 Pa
pH
4
10.5 凝集
5
10
2
10
分散
-1
10
分散
-4
10
pH 4: 分散 →
0
-3
10
-2
10
Ti [ TIP-Lac ] / M
凝集(5.0x10-2 M
) → 分散
pH 10.5: 2.5x10-3 M 以上流動性向上
-1
10
分散挙動
に一致
SDSを分散剤として添加した酸化チタン懸濁液
TiO2-SDS系の吸着状態と
凝集-再分散モデル
SDS濃
度増大
(a)
(a)
(b) 凝集
SDS濃
度増大
(c) 再分散
SDS: Sodium dodecyl sulfate
(b) 凝集
(陰イオン性界面活性剤)
CH3(CH2)10CH2OSO3-
Na+
粒子径 up
(c) 再分散
チタン酸による分散挙動と類似!
SDS濃度による懸濁液中のTiO2粒子の
平均粒子径(○)とゼータ電位(●)
萩原、他、色材、55、546 (1982). [ 北原文雄著、「分散・凝集の解明と応用技術」、pp. 85-88 (1992、テクノシステム).]
チタンを含む水溶液による微粒子の分散機構
pH 4 の懸濁液
表面電荷: 負
- -
-- - --
--
--
-
-
-
-
-
-
-
+
+
+
+
+
+++
--
-
+++
+ --
+ -
- -
-- - --
-
+++
-
-
-
-
+
+
-
-
+++
-
-
+ -
+
-
-
[Ti]TIP-Lac / M
-
5 x 10-3 M
- -
-- - --
-
凝集
- -
-- - --
--
--
-
-
-
-
-
-
-
+
+
+
+++
-
+ -
+
+-
+ --
+ -
-
-
-
-
+
+
+
+
+
-
+++
--
-
+++
-
+
+
-+
-
-
-
+++
+ -
+
-
+
+
+
+
-
+
+ -
+
+
+
+
-
+ -
+
- - -
+- - + + + -
+
+ -
-
+
+
-+
+-
+
+
+
+
+++
+++
+
+
+
+
+
+
+++
分散
+++
+++
-
+
+
+
+
+
+
-
+
-+
+++
+
+
+
+++
-
TIP-Lac
-
+
+
+
- -
-- - --
-
+
+
+
-
-
+ --
+ -
+
+
+
+++
+
+
+++
+
+
+
--
-
+
+
+
- -
-- - --
--
--
-
-
-
-
-
-
-
表面電荷: 0
表面電荷: 正
分散
+
+
酸化チタン(アナターゼ)懸濁液から作製した
成形体の焼成
酸化チタン粒子
(アナターゼ)
太陽電池
光触媒
加熱
アナターゼ焼結体
が必要
新技術
300~750℃
チタン酸が酸化チタンに変化
→ 粒子間に均一に分散
→ 焼結助剤として働く
→ アナターゼだけの焼結体
チタン酸水溶液を分散剤として
懸濁液を作り、成形体を作製
加熱
ルチルの
焼結体
800℃以上
加熱
従来法
300~750℃
ポリカルボン酸を分散剤として
懸濁液を作り、成形体を作製
ニーズに適合!
分散剤の有機物は消失
→ 粒子間の結合は弱い
→ 焼結体は得られない
アナターゼから
→ ルチルに変化
(高温安定型)
TIP-Lacを添加した酸化チタン(アナターゼ)成形体
加熱温度を変化させた時のXRD
○
JCPDS
○ Anatase 21-1272
● Rutile
21-1276
●
●
●
○
●
○ ○
o
800 C
●
○
●
○ ○
●
●
○
●
○
●
○
o
750 C
o
700 C
o
600 C
o
500 C
a. r.
20
30
40
50
2θ / deg.
60
70
Cu-Kα
800 oC以上の温度でルチル型が出現
チタン酸水溶液を用いた誘電体
Ti等の金属酸水溶液 + Pb、Zr、Ba等の有機酸塩水溶液
↓
高濃度な透明水溶液(誘電体前駆水溶液)
メリット
•
•
•
•
•
•
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、
チタン酸バリウム(BT)、
チタン酸ストロンチウムなど
水溶液なので組成のコントロールが容易
均一組成
環境負荷低減化 (ハロゲン、硫黄、窒素フリー)
濃厚な前駆水溶液(濃縮可能)
微粒子の分散効果
簡便、安価
PZT前駆体を加熱した時のXRD
Mixture (Pb-Ac, Zr-Ac, TIP-Lac)
Intensity
JCPDS 33-0784
Pb[Zr0.52 Ti0.48]O3
Lead Zirconium Titanium Oxide
o
650 C
o
600 C
o
550 C
o
500 C
DPZ-LQ-P(6)
(DAI-NIPPON TORYO CO., Ltd.)
20
40
2θ / deg.
60
80
(Cu-Kα)
比較的低温で合成可能 ・ 均一組成 ・ 組成比制御が容易
まとめ
• 従来の微粒子濃厚分散系の調製
高分子電解質を分散剤として添加する以外では困難
→ チタンを含む安定な水溶液が微粒子の分散剤として有効
陰イオン性の高分子電解質と同様の挙動
• 分散剤として利用可能なpH: 非常に広い領域( pH 2 ~ 11 )
• 提案のチタン酸水溶液: ハロゲン、硫黄、窒素を含まない
→ 環境負荷の低いプロセスの実現、製品化
チタンそのものも安全性が高い
• 加熱処理で従来の分散剤(高分子電解質)は消失
→ 提案の分散剤は微量であるが酸化チタンとして残存
→ 新規な機能を持った材料作製が期待 誘電体材料など
紹介した一連の研究は、
岐阜大学工学部機能材料工学科材料プロセス工学講座 橋場研究室で行われたものです。
橋場 稔
岐阜大学教授
塗師幸夫(故) 元岐阜大学教授 高橋康隆
岐阜大学名誉教授
島田 忠
元岐阜県セラミックス研究所所長
多くの学生さんたち
大矢智一博士 岐阜大学大学院博士後期課程修了
尾畑成造博士 同上
安達直己博士 同上
ほか。
研究協力機関: 岐阜県セラミックス研究所