エンタープライズIT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ) マイクロソフト社の新 OS「Windows Vista」を巡って パソコン用基本ソフトで世界の 90 % で、1995 年の Windows 95 発表時の熱 写真を容易に扱うことができるのが特 以上のシェアを占める米マイクロソフ 狂的な騒ぎや、XP 発売時の爆発的な 徴である。しかし評論家の多くは、 ト社は、新製品「Windows Vista」の企 売上げは今のところ見られない。 Vista の多くの機能はすでにアップル 業向けを昨年 11 月に、個人用を本年1 多くのパソコン利用者の主な用途 社の Mac OS X に存在しており、Vista 月 30 日に販売開始した。Windows XP は、電子メール、ワープロ、表計算、 の古いバージョンのファイルをリカバ を発売して以来 5 年ぶりの新製品であ ウェブ検索などであり、このような範 ーする新機能も、Mac OS の相当派手 る。Vista の開発には 60 億ドルの開発 囲で使用する限り XP で十分。しかも なタイムマシン技術の後を追っている 費、8,000 名のソフト技術者をつぎ込 フリーソフトや市販ソフトでほとんど に過ぎないと見ている」と手厳しい。 み、それでも当初の完成時期より2年 の機能を補完することができ、Vista また、ビジネスウイーク誌2月 19 日 程度遅れたとされている。 の持つ新機能に魅力を感じる企業や一 号では、マイクロソフト社が強調して Vista がこれまでの XP と比べて何が 般消費者は、多くないように思われる。 いる Vista のセキュリティに対して 違うかと言えば、まず検索機能である。 しかも、マイクロソフト社は XP のサ 「確かにある程度セキュリティは強化 メールやその他のファイルの全文検 ポート期間を当初の 2009 年までから されている。しかし Vista の利用者は 索、写真やビデオのメタデータ検索が 2014 年4月まで延長することを発表 XP 利用者同様自分のパソコンのセキ 容易にできるようになっている。もう した。サポートの打ち切りは使用中の ュリティを確保するには、別のソフト ひとつ大きな特徴は、高いセキュリテ 性能で満足している利用者にとって ウェアを導入する必要がある。結局 ィ機能である。ユーザーの意図しない は、新 OS への切り替えを無理強いし Vista も必要なセキュリティの一部を 動作を防ぐためユーザーアカウントコ ているということになる。さすがのマ 装備しているに過ぎない」と指摘して ントロール機能が追加されており、ウ イクロソフト社もこうした利用者の声 いる。また、エコノミスト誌の1月 20 イルスやフィッシング、スパイウェア を無視できなくなったということであ 日号でも「オープンソースソフトウェ などを防ぐ機能が強化されている。ま ろう。言い換えれば、これで XP 利用 アの台頭、インターネットにより自由 た、デジタル写真の補正、整理、編集 者の Vista への切り替えはいよいよ遅 に手に入る最新オンラインソフトの増 などを一般の利用者が容易に扱うこと れることになる。 加、払拭できないセキュリティに対す ができ、リモコンを使ってパソコンを Vista に対する評論家の論調を見て るパソコンの脆弱性の3点から、マイ 家電感覚で使える機能を盛り込んだ も必ずしも好意的ではない。ビジネス クロソフト社の OS の普遍性には変化 り、DVD の再生、作成機能が標準機能 ウイーク誌の2月5日号では、「Vista が起きつつある」と述べている。 となっているなど、AV 機能の充実も が発売されたときに、ほとんどの消費 マイクロソフト社は Vista への切り 大きな特徴である。 者は何故それを買わなければならない 替えを促進するために、今後知恵を絞 1月 30 日の発売直後は、秋葉原や かが分からなかった。Vista は多くの って種々の手段を講じていくであろ 有楽町の量販店には、深夜にも拘わら 新機能を持っているとはいえ、マイク う。1985 年に最初の Windows が世に ず記念イベントやカウントダウンイベ ロソフト社は本当に消費者にとってパ 現れて以来、95、98、2000、XP と世 ントに多くの Windows ファンが集ま ソコンの使い方が変わったと思わせる 界を席巻してきたマイクロソフト社だ り、出足はまあまあだったものの、そ ようなポイントに、焦点を絞ることが が、果たして Vista がどのような運命 の後は一進一退を繰り返している。一 できていないように見受けられる」と をたどるのか非常に興味深い。 般消費者や企業の多くは様子見の構え 指摘しており、「Vista は音楽、映画、 ビジネスコミュニケーション 2007 Vol.44 No.5 5
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