攻撃性行動が見られる犬のドーパミンD4 受容体遺伝子多型に関する研究

攻撃性行動が見られる犬のドーパミンD4
受容体遺伝子多型に関する研究
麻布大学
鹿野正顕
太田光明
1
はじめに
近年、犬は愛玩動物から伴侶動物として人ととも
に生活するようになり、新たな人と犬との関係が
構築されている。
両者の関係がより密接になるにつれ、
人社会での犬の問題行動が注視されている。
2
問題行動
分離不安
不適切な排便
破壊行動
攻撃行動
10通り以上もの異なる攻撃型に分類される
気質
攻撃行動の各型
情動
後天的な学習
3
気質・学習・内的変化の関連性
特異的遺伝子部位
攻撃行動
内的要因
(カテコールアミン)
(DRD4)
しつけ(調教)
特異的遺伝子
部位の変化
改善
行動の変化
内的要因
の変化
否改善
4
実験方法
1) 学習とそれに伴う内的要因の変化との関連について
• 攻撃行動の行動修正に用いる服従訓練を行った
→ 改善傾向をみるため各個体の行動調査
• 尿中カテコールアミン濃度測定
→ 訓練に対する内的要因の変化
5
2)攻撃行動と気質との関連性
• 各個体の示す攻撃行動に関するスクリーニング
テスト
→ 攻撃行動の型の分類
・DRD4遺伝子多型の解析
→ DRD4遺伝子多型と攻撃行動との関連
6
対象動物
Dog Breeds
Dog No
Age
Sex
A
Cardigan Welsh Corgi
Unknown
Male
B
Golden Retriever
3
Male
C
Labrador Retriever
3
Male
実験期間
2002年12月14日から2003年1月24日までの42日間
7
結果1)学習とそれに伴う内的要因の変化との関連について
Dog No
Dog Breeds
Age
Sex
A
Cardigan Welsh Corgi
Unknown
Male
B
Golden Retriever
3
Male
C
Labrador Retriever
3
Male
行動解析の結果、個体Aのみ1月7日以降に行動の
改善が認められた
8
各個体における実験前後での尿中カテコールアミン濃度の変化
実験前
(n g/ m l)
実験後
7 0 .0 0
6 0 .0 0
5 0 .0 0
4 0 .0 0
3 0 .0 0
上昇
2 0 .0 0
1 0 .0 0
0 .0 0
NE
E
DA
個体A
NE
E
個体B
DA
NE
E
DA
個体C
9
個体Aにおける尿中カテコールアミン濃度と訓練時間との関連
NE
(ng/ml)
70
60
50
40
30
20
10
0
-10 0
-20
順位相関係数=0.91
20
40
60
ノルエピネフリンと訓練時間
80
訓練時間
(min)E
(ng/ml)
70
60
50
40
30
20
10
0
-10 0
-20
-30
順位相関係数=0.91
10
20
30
40
訓練時間
(min)
エピネフリンと訓練時間
10
考察1)学習とそれに伴う内的要因の変化との関連について
改善が見られた個体
•訓練時間と尿中ノルエピネフリン、エピネフリンは相関が見られた
•訓練後の尿中ノルエピネフリン濃度の上昇が見られた
11
訓練前後の介助犬候補犬の尿中ノルエピネフリン(NE)と
エピネフリン(E)の変化(pg/ml)
6000
訓練前(15分)
訓練後
上昇
5000
訓練前(20分)
訓練後
4000
訓練前(30分)
訓練後
3000
上昇
2000
1000
0
NE
E
M.ohta. et.al (2001)
。
12
訓練前( )と訓練後( )の尿中ノルエピネフリン
(NE)とエピネフリン(E)濃度(pg/ml)
3500
個体1
減少
個体2
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
NE
E
NE
E
13
行動を変化させる
神経活性を高めることができる
訓練方法(刺激)の適用が重要
14
結果2) 攻撃行動と特異的遺伝子部位(DRD4)との関連性
各個体の示す攻撃行動に関するスクリーニングテスト
攻撃行動が生じる状況と攻撃行動の頻度
状況
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
動いている人、動物、もしくは物(自転車、車、etc)を犬が見たとき
ハンドラーがおやつやおもちゃなど犬が好きな物を取り上げようとしたとき
ハンドラー以外の人がおやつやおもちゃなど犬が好きな物を取り上げようとしたとき
ハンドラーが犬を撫でたり、毛をといたり、あるいは犬の下半身に触れたとき
◎
ハンドラー以外の人が犬を撫でたり、毛をといたり、あるいは犬の下半身に触れたと ◎
ハンドラーが犬が寝床で寝ているところに近づいたとき
ハンドラー以外の人が犬が寝床で寝ているところに近づいたとき
餌を食べているときハンドラーが犬に近づいたとき
餌を食べているときハンドラー以外の人が犬に近づいたとき
ハンドラーが犬に服従的な行動を取らせたとき
ハンドラー以外の人が犬に服従的な行動を取らせたとき
犬がなわばりだと思っている場所にハンドラーが入ろうとしたとき
犬がなわばりだと思っている場所にハンドラー以外の人が入ろうとしたとき
原因がわからず突然噛みつく
人が犬に不安を与えたとき
◎
Dog No.
B
A
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
C
○
△
△
△
△
○
○
※ ◎:常に攻撃行動を示す ○:時々攻撃行動を示す △:まれに攻撃行動を示す
※ 各個体の左段は実験前、右段は実験後の攻撃行動を示している
15
個体B、個体CのおけるDRD4遺伝子多型
(bp)
500
400
447a bp
個体B
個体C
16
支配性攻撃行動を示す個体では共通した
遺伝子型がみられた
DRD4遺伝子多型と攻撃性との関連性が考えられる
17
結論
•行動変化にはカテコールアミンといった内的要因の変化
が重要であり、各個体において、こうした変化を引き起こ
す刺激(訓練方法)の選択が必要である
•攻撃行動と気質との関係を明らかにするには、DRD4遺
伝子多型部位のみならず、情動に関与する種々の遺伝子
部位との関連性を明らかにする必要がある
18
気質・学習・内的変化の関連性
特異的遺伝子部位
攻撃行動
(DRD4)
内的要因
(カテコールアミン)
しつけ(調教)
行動の変化
特異的遺伝子
部位の変化
内的要因
の変化
改善
否改善
19