G4 H4 H6 - 東京理科大学 基礎工学部 材料工学科 曽我研究室

5.Tm
5.Tm3+含有結晶の
含有結晶の二波長励起アップコンバージョン
二波長励起アップコンバージョン
アップコンバージョン(UC)発光は希土類イオンの離散的な電子準位を
1
G4
利用した多段階励起により、励起波長より短波長の発光を得られる現象
である。この UC 発光を得るためには、希土類イオンの電子準位間の多
1120nm
段階励起に対応した励起波長を選択する必要がある。このとき二つの異
なる波長の励起光を用いれば、励起準位の選択の自由度が大幅に増し、
3
H4
一般に行われている一波長励起 UC では得られない発光を得ることがで
きる。また光のエネルギーと準位間のエネルギーの一致をとりやすいので、
800nm
480nm
励起状態吸収を利用した高い効率での UC 発光が可能になる。この二波
3+
3+
長励起 UC の例として、図4.に Tm の UC 機構を示す。Tm の場合、フ
ッ化物ガラス中において 800 nm と 1120 nm の 2 つの赤外光を励起波長
3
H6
とした 1G4→3H6 遷移による 480 nm の青色 UC 発光を示し、この現象を利
用した 3 次元カラーディスプレイが報告されている。また、UC 発光を高効 図4. Tm3+の準位と UC
率で得るためには、中間励起準位の寿命が長いホスト材料の選択が必
要になる。そこで本研究では、Tm3+をドープした種々のホスト材料 YF3、NaYF4、Y2O3、LaOCl、LaCl3 に
おいて吸収スペクトルの測定を行い、二波長励起 UC のための二つの励起波長を決定し、さらに、中間
励起準位(3H4)の蛍光寿命の測定により UC 発光に適したホスト材料の検討を行うことを目的とした。
YF3、NaYF4、Y2O3、LaOCl、LaCl3 粒子を La3+または Y3+に対する Tm3+のモル比が 99:1 になるように
Tm3+をドープした試料を作製し、第一励起準位(3H4)と第二励起準位(1G4)の光吸収スペクトルを、積分
球を設置した自記分光光度計を用いて測定した。さらにこれらの試料について YAG-OPO レーザーを励
起光源として分光光度計、光電子倍増管とオシロスコープを用いて Tm3+の第一励起準位(3H4)の蛍光
寿命の測定を行った。
各ホスト材料中の Tm3+の光吸収スペクトルのピークから第一励起波長を、第一励起準位の最も低エネ
ルギー側のシュタルク項からの励起波長として第二励起波長を決定し、図5.に示した。各ホスト材料中
の Tm3+の第一励起波長は 770 から 800 nm の範囲に、第二励起波長は 980 nm から 1110 nm に渡って
分布することがわかった。
表に各ホスト材料中の Tm3+の第一励起準位(3H4)の蛍光寿命の測定結果を示した。Tm3+を NaYF4 に
ドープした場合は 13 µsec であるのに対し、LaCl3 にドープしたときには 290 µsec であり、ホストによって大
きく異なることがわかった。これはホストによって Tm3+イオンの励起状態の多フォノン緩和が異なるためで
あると考えられる。
ホスト材料
第2励起波長
・ 第1励起波長
第一励起波 H 第二励起波長
YF3
表
NaYF4
Tm3+の第一励起準位(3H4)の蛍光寿命
励起波長
発光波長
蛍光寿命
(nm)
(nm)
(μs)
YF3
770
800
110
NaYF4
775
805
13
Y2O3
775
815
94
LaOCl
770
800
170
LaCl3
800
805
290
Y2O3
ホスト材料
LaOCl
LaCl3
800
900
1000
1100
Wavelength(nm)
図5. 吸収スペクトルから求めた励起波長
5.結論
炭酸沈殿法を用いてイットリアナノ粒子の前駆体を合成する際にポリアクリル酸ナトリウム
を用いると数十 nm のサイズのイットリアナノ粒子が合成可能であることが分かった。またアル
カリ沈殿法で水酸化イットリウムを前駆体としたイットリアナノ粒子を合成する際には、尿素の
酵素による分解を用いた酵素沈殿法により、通常の均一沈殿法では数百 nm となる粒子サイズを、
数十 nm まで減少可能であることが分かった。炭酸沈殿法において前駆体粒子析出後にリン酸塩
を添加すると、析出後の添加にも関わらず前駆体の粒子サイズが数十 nm となることがわかった。
さらに Tm の二波長励起アップコンバージョンの励起過程に関する検討を行った結果、ホストに
よってその最適波長や蛍光寿命が大きく異なることが明らかになった。
参考文献
1) 応用物理学会 2006 年秋季第 67 回応用物理学会学術講演会(東理大基礎工)○曽我公平「微小発光粒
子のバイオメディカル分野への応用」シンポジウム「微小球フォトエレクトロニクスの新展開」招待
講演(2006/8/29-9/1, Kusatsu, Shiga).
2) 日本物理学会第 62 回年次大会(東理大基礎工)○曽我公平「バイオイメージングのためのナノ粒
子応用-各種欠陥の発光への影響-」招待講演(2007/3/18-21, Kagoshima, Kagoshima).
3) 日本セラミックス協会第 19 回秋季シンポジウム(東理大院基礎工)○清水和明・永田浩康・齋藤
悠・山田真義・小西智也・曽我公平「ポリアクリル酸ナトリウムを用いた酸化イットリウムナノ粒子
分散体の調製」(2006/9/19-21, Kofu, Yamanashi).
4) 日本セラミックス協会第 19 回秋季シンポジウム(東理大院基礎工)○齋藤悠・清水和明・山田真
義・小西智也・曽我公平「酵素による尿素分解を利用した酸化イットリウムの作製」(2006/9/19-21, Kofu,
Yamanashi).
5) 第 15 回日本バイオイメージング学会学術集会(東理大・基礎工, 筑波大・学際物質科学研究セ)曽
我公平,斎藤悠,清水和明,小西智也,長崎幸夫「近赤外蛍光バイオイメージングのためのアップコ
ンバージョン蛍光プローブの開発」(2006/10/31-11/1, Morioka, Iwate) .
6) 6th Asian BioCeramics Symp. (ABC2006), Kohei SOGA, Tomoya KONISHI, Yu SAITO,
Kazuaki SHIMIZU, “Application of Ceramic Nano-Phosphors for Bio-Imaging,” (Nov. 7 - 10, 2006,
Bangkok, Thailand).
7) 日本セラミックス協会ガラス部会第 47 回ガラスおよびフォトニクス材料討論会 (東理大)○亀山雄
司, 清水雅大, 曽我公平「NH4Cl を用いた希土類含有無水塩化ランタンの合成と評価」(2006/11/21-22,
Noda, Chiba)
8) 2006 MRS Fall Meeting, Symposium E, Kohei SOGA, Yu SAITO, Kazuaki SHIMIZU, Hiroyasu
NAGATA, Tomoya KONISHI and Yukio NAGASAKI, “Surface modification of rare-earth doped
ceramic nano-phosphors for fluorescence bio-imaging,” (Nov. 27- Dec. 1, 2006, Boston, MA, USA).
Er ドープリン酸塩発光粒子
ドープリン酸塩発光粒子の
酸塩発光粒子の作製と
作製と評価
東京理科大学
東京理科大学
基礎工学部
基礎工学部
材料工学科
生物工学科
曽我公平
千葉 丈
2. 背景
近赤外(NIR)励起・蛍光を用いた新たな NIR 蛍光バイオイメージング(FIB)は、近赤外光の利用
によりシステムを構成する物質へのダメージの低減や、励起、蛍光における光散乱の低減により、
将来的に in vivo イメージングにおける深い観察深度への展開が期待される。本研究では、希土
類含有セラミックナノ粒子(RED-CNP)を蛍光体とした、新たな NIR 用 FBI マーカーの開発
を基点として、新たな NIRFBI システムを開発し、生物工学に応用することを目的としている。
本報告では RED-CNP を FBI に応用することを念頭に、FBI システム内で十分な発光強度が得
られるよう、発光体を設計することを課題として、Er ドープセラミックスとしてこれまでにアッ
プコンバージョン(UC)発光体として研究実績のある Y2O3 粒子とリン酸塩粒子に Er をドープ
した場合の近赤外発光について検討を行った。
2.Er3+の
Er3+の UC 発光と
発光と NIR 発光
NIR 励起 FBI に関しては、特にこれまでに NIR 励起-可視発光であるアップコンバージョン
(UC)発光の応用について精力的に研究が行われている。我々の研究チームでも UC 発光体として
有望な Er 含有 Y2O3 ナノ粒子についてその設計と合成を進めてきている 1)。UC 発光を利用した
FBI は、現在用いられているイメージングシステムに、半導体励起レーザーを搭載するだけで、
可視 CCD を用いて簡便な装置改造によって実現するメリットがある。
しかし、光散乱や RED-CNP
の発光効率を考えると、本来は NIR に感度を持つ CCD の導入により通常蛍光によって NIR 励起
-NIR 発光を利用した方が断然有利であり、長時間・低光散乱の革新的な FBI のために NIR 励起
-NIR 発光を高い効率で示す FBI マーカーの開発が期待される。本研究では Er を 980 nm 半導体
Er3+
4F
Energy (cm
7/2
2H
4F
11/2
-1
)
UPCONVERSION
20530
19211
18455
9/2
4S
3/2
980 nm
ESA or ET
980 nm
ESA or ET
15329
540 nm
4I
9/2
12485
650 nm
4I
11/2
4I
13/2
10253
6591
980 nm
GSA
4I
15/2
1.5µ
µm
980 nm
GSA
1.5µ
µm
0
high phonon energy host
low phonon energy host
図1.Er 含有 RED-CNP の設計指針。左側は 1.5µm 発光準位に効率良
く多フォノン緩和する近赤外発光に適した系。右側は多フォノン緩和を
起こしにくく中間準位寿命が長い UC 発光に適した系である。
レーザーで励起したときに発現する 1.55 µm の NIR 発光と、550 および 660 nm における UC 発光
についてホスト材料選択の指針についてまず検討を行った。希土類イオンの発光に対するホスト
の影響としては、主に非輻射的に励起状態の緩和をもたらす多フォノン緩和と、発光遷移を支配
する輻射遷移が挙げられるが、輻射遷移速度はホストによってせいぜい一桁程度しか変化しない
のに対し、多フォノン緩和速度はホストのフォノンエネルギーや電子フォノン結合強度に応じて
数十桁変化するため、まず第一には多フォノン緩和に基づくホストの選択を行う必要がある 2)。
図1.に 980 nm 光で励起を行った場合の NIR 発光および UC 発光の遷移過程を示す。NIR 発光
の場合は 4I11/2 準位に励起された後に、発光準位である 4I13/2 へは多フォノン緩和によりできるだ
け効率よく緩和することが望ましいが、4I13/2 準位からの多フォノン緩和は発光効率を下げるだけ
であるのでできるだけ少ないほうが望ましい。ところが図1.右の UC 発光の場合は、多段階励
起のために中間準位寿命ができるだけ長いことが望ましい。これらの励起スキームの相違によっ
て選ぶべきホストは異なることになる。様々なホストにおいて半経験的に計算した多フォノン緩
和速度を図2.に示す。上方の枠は一般的な輻射遷移速度を示しており、輻射遷移速度に比べて
他フォノン緩和速度が様々なホストのフォノンエネルギーに応じて大きく変化することがわか
る。上記の議論により UC 発光のために選ぶホストは Y2O3 をはじめとする低フォノンエネルギー
のホストであるのに対し、NIR 発光に好適なホストは、4I11/2 の多フォン緩和速度は大きいが 4I13/2
準位の多フォノン緩和速度は、輻射遷移速度に対して小さいホストということになる。図よりそ
のために望ましいフォノンエネルギーは 1200 cm-1 程度であり、該当するホストはリン酸塩ホスト
であると言える。そこで本研究では希土類イオンを高濃度でドープ可能なリン酸塩結晶ホストと
して YPO4 を選び、Er ドープ試料を作製してその 1.55 µm 発光の観測を試みた。
3.Er ドープ YPO4 発光粒子の
発光粒子の作製と
作製と発光スペクトル
発光スペクトル
4 mol%の Er をドープした YPO4 発光粒子は、リン酸アンモニウムを沈殿剤とした共沈法により
作製した。得られた粒子に対して XRD を行った結果、試料は単相の YPO4 結晶であることがわか
った。得られた粉末に対し 980 nm 半導体レーザーを励起光として、InGaAs-NIR 検出器を備えた
分光器を用いて蛍光スペクトルを測定した結果を図3.に示す。本方法により得られた粉末から
明るい 1.55 µm を中心とする発光が狙い通り観測された。
4.結論
NIR-FBI のためのホストとしては Er ドープ YPO4 結晶が好適であることを半経験的な計算により予測し、
共沈法により Er ドープ YPO4 結晶粉末を作製し、980 nm 励起の 1.55 µm 発光スペクトルを観測した。今
後、この粉末について粒径制御と表面修飾を行い、本プロジェクトにおいて開発された NIR マイクロバイ
オイメージングシステムにおけるマーカーとして供給を行う予定である。
参考文献
1) Kohei Soga, Ryo Koizumi, Masayoshi Yamada, Daisuke Matsuura and Ykio Nagasaki,
“Preparation of Polymer Composite Upconversion Phosphor from Inorganic Particle,” J.
Photopolymer Sci. and Tech., 18 [1] (2005) 73-74.
2) Kohei Soga, Wenzhong Wang, Richard E. Riman, J. Bryan Brown and Kurt R. Mikeska,
“Luminescent properties of nanostructured Dy3+ and Tm3+-doped lanthanum chloride prepared by
reactive atmosphere processing of sol-gel derived lanthanum hydroxide, Journal of Applied
Physics, 93 [5] (2003) 2946-2951.
×
4I
15/2
borate
silicate
phosphate
□
4I
13/2
WR
germanate
4I
11/2
-1
108
104
100
10-4
10-8
10-12
10-16
10-20
10-24
0
LaCl3 LaF
3
SrF2 sulphide
YAlO3
Y2O3 fluorozirconate
Y3Al5O12 tellurite
Er3+
Multiphonon relaxation rate (sec )
 ∆E 
WMPR = B exp −

 hω 
500
1000
1500
-1
Phonon energy (cm )
強度(a.u)
図2.種々のホストにおける Er:4I11/2、4I13/2 準位からの多フォノン緩和速度の計算結果。
45
YPO4:4%Er
40
35
30
25
20
15
10
5
0
1400 1450 1500 1550 1600 1650 1700
波長(nm)
図3.Y0.96Er0.04PO4 粉末の 980 nm 励起光による発光スペクトル
バイオイメージングのための
バイオイメージングのための無機発光
のための無機発光ナノ
無機発光ナノ粒子
ナノ粒子の
粒子の表面機能化
東京理科大学 基礎工学部 材料工学科
筑波大学 学際物質科学研究センター
曽我公平
長崎幸夫
3. 背景
生体内物質を可視化するバイオイメージング(BI)において、現在の有機系蛍光色素や量子ドッ
トを蛍光プローブとした蛍光 BI では、励起光である紫外光による蛍光プローブ自体の退色や、
生体へのダメージ、強い光散乱が問題となっている。そこで近年、赤外光を励起光源として可視
発光が可能な希土類含有セラミックス微粒子によるアップコンバージョン(UC)発光を BI に応用
する試みがなされている。UC-BI では励起光が赤外光であることから生体へのダメージが軽減さ
れ、無機物であるため退色しにくく、光散乱が低減するため、蛍光 BI における多くの問題の解
決が期待される。
セラミックスである UC 発光粒子を生体内でプローブとして利用する際、粒子同士の凝集の抑
制、タンパク質等への非特異的な吸着の防止、観察したい部位との特異的結合性の付与が必要と
なる。元来多くのセラミックス粒子表面はこれらの機能を有していないが、これまでの研究で、
上記のような機能をポリエチレングリコール(PEG)による表面修飾により付与できることが知ら
れている。PEG は生体に対して毒性を示さないため、生体機能材料として利用が期待されている
高分子である。本研究では、UC 発光セラミックス粒子である Er 含有 Y2O3 粒子表面に PEG を修
飾することで、上記の生体機能性を付与することを目的としている。Y2O3 粒子表面は pH7 付近
では正に帯電しているため、本研究では、PEG 鎖の末端にポリアクリル酸(PAAc)のブロック構造
を持つことで末端部分が負に帯電している PEG-b-PAAc を、静電相互作用により Y2O3 粒子表面
に吸着させ、PEG 修飾された Y2O3 粒子の分散安定性を評価した。
さらに、既存のヘテロ官能基を有する PEG の応用を前提として、表面電荷が正の Y2O3 粒子に
対し、まずアニオン性の高分子であるポリアクリル酸(PAAc)により一次修飾を行い、さらにカ
チオン性の生体機能高分子(N6-PEG または PEG-PAMA)によって二次修飾を行った。
2.アップコンバージョン
2.アップコンバージョン発光粒子
アップコンバージョン発光粒子の
発光粒子のポリアニオン鎖
ポリアニオン鎖を持つ PEG 修飾による
修飾による表面機能化
による表面機能化
PEG-b-PAAc(分子量=5000/3200)を 0, 0.1, 0.5, 1.0, 5.0 g/l の割合で Tris バッファー(10mM, pH7.0)に添
加し、濃度 0.1g/l の Y2O3 粒子を加えて撹拌(48h, 4℃)し、粒子の PEG 修飾を行った。得られた試料に
ついて、粒子上に修飾された PEG の立体反発による凝集阻害の効果を、動的光散乱(DLS)による粒径
分布測定により評価した。さらに Y2O3 粒子への PEG-b-PAAc の吸着性を確かめるため、Tris バッファー
で遠心洗浄(20000G, 15min, 3 回)後の粒子への PEG-b-PAAc の残留の有無を、FT-IR により確認した。
DLS による粒径分布の測定の結果、Y2O3 粒子を修飾する PEG-b-PAAc の量が増加すると粒子の凝集
が阻害されて、粒径が小さくなることが確認された。また、図に示すように、Y2O3 粒子の遠心洗浄後の
FT-IR の測定結果をみると、1750 cm-1 付近に PEG-b-PAAc の C=O 結合に由来するピークが確認される
ことから、遠心洗浄後も、Y2O3 粒子表面に PEG-b-PAAc の吸着されていることが確認された。
3.アップコンバージョン
3.アップコンバージョン発光粒子
アップコンバージョン発光粒子の
発光粒子のポリアニオン-
ポリアニオン-ポリカチオン二重修飾
ポリカチオン二重修飾による
二重修飾による PEG 修飾
本研究では希土類イオン含有 Y2O3 ナノ粒子を BI プローブへ応用することを目指し、イオン性の高分子
及び生体機能性高分子により粒子表面の修飾を行った。修飾方法は表面電荷が正の Y2O3 粒子に対し、
まずアニオン性の高分子であるポリアクリル酸(PAAc)により一次修飾を行い、さらにカチオン性の生体
機能高分子(N6-PEG または PEG-PAMA)によって二次修飾を行った。FT-IR およびζ電位測定の結果、
高分子が遠心洗浄後も粒子表面に修飾されていることが確認された。また、修飾後の粒子に対して耐酸
性の評価を行ったところ、耐酸性に乏しい Y2O3 ナノ粒子の耐食性が著しく向上することがわかった。さら
に、TGA により吸着した高分子の量を評価した(図2.)。
高分子により修飾を行った Y2O3 では、200~600℃で高分子が燃焼し重量が減少する。図より PAAc を
添加した場合、Y2O3 のみのときに比べ、重量が減少していることから、Y2O3 の PAAc による修飾が行えて
いることがわかった。また、同様に PAAc 上に PEG-PAMA、N6-PEG が修飾できたこともわかった。この結
果より、粒径 200 nm の Y2O3 粒子に対し PAAc は 1.3×103chains/粒子、PEG-PAMA は 7.5×102 chains/
粒子、N6-PEG は 3.8×103 chains/粒子 吸着していることが分かった。
4.結論
4.結論
ポリアニオン鎖をもつ PEG または PAAc と PEG-PAMA、N6-PEG による二重修飾によりイットリアナノ粒子
に生体機能高分子を静電的な吸着を用いて修飾できることが分かった。
図 1. PEG-b-PAAc を吸着させた Y2O3 の FT-IR スペクトル
kyuu
Weight loss (%)
100
98
96
Y2O 3
Y2O 3+PAAc
Y2O 3+PAAc+PEG-PAMA
Y2O 3+PAAc+N6-PEG
94
200
300
400 500
Temp. (℃)
600
700
図2.Y2O3 粒子に対して PAAc および
Fig. TGA または
curve ofN6-PEG
Y 2O3 prepared
PEG-PAMA
により二重
by
some
polymers
修飾を施した試料の TGA 結果。
近赤外蛍光顕微鏡システム
近赤外蛍光顕微鏡システムの
システムの開発
東京理科大学基礎工学部生物工学科
東京理科大学基礎工学部材料工学科
辻
曽我
孝
公平
1.背景
蛍光物質や画像解析システムの開発によって、バイオイメージングは生物・医学研究において非
常に有用な研究手法として用いられている。特定の分子の細胞表面や細胞内における分子局在を理
解することによって、従来の生化学的な手法だけではわからなかった分子の機能を理解することが
できるようになり、生物・医学研究は飛躍的に進展した。
しかしながら一般に、蛍光物質は蛍光強度が弱い上に、光によって退色し易いなどの問題点を有
する。またそれぞれの蛍光物質間でクロストークがあるために、複数の蛍光物質を一度に利用する
には画像解析システムによる補正が必要であるなど、更なる蛍光物質や画像解析システムの開発が
期待されている。
2.目的
われわれは、無機希土類化合物を近赤外励起(800-1000nm)によって近赤外発光(1000-2000nm)
する蛍光物質の開発を進めている。本研究課題は、この近赤外励起・発光に対応可能な近赤外蛍
光顕微鏡システムを開発して、新たなバイオイメージング技術を開拓することを目指している。
3.結果
1)蛍光物質の現状と課題
バイオイメージングで利用される蛍光物質の特性と用途を表1にまとめた。現在の蛍光物質は、
可視光領域の 458-633nm で励起するものがほとんどである。これらの蛍光物質の中で、目的のタ
ンパク質と融合させる蛍光タンパク質の励起と発光のスペクトルを図2にまとめた。バイオイメ
ージングのために励起させた蛍光タンパク質の発光線幅は広いため、発光線幅が近接すると発光
のクロストークが起こるために光学的に分離することが困難である。この問題は、共焦点レーザ
ー顕微鏡システムでは、それぞれのスペクトルをとってクロストークする領域を取り除く処理を
することで対応しようとの努力がなされているが、実際には正確さに欠けるなど問題が残ってい
る。
表1 蛍光物質の特性と用途
Ex
L ase r
Ex L am bda
UV
U V A rgo n
351, 364
V
B lu e D io d e
405
VB
B
458
V is A r g o n
BG
G
R
IR
488
514
G ree n H e N e
543
A rg o n - K ry p to n
R ed H eN e
T i- S a p p h ir e
568
633
710-920
F L P ro b e s
D A P I, H o e c h s t
In d o - 1
D A P I, H o e c h s t
P A -G F P , K aede
L u c if f e r Y e llo w
CFP
Y e llo w C a m e le o n
F IT C , B O D IP Y - F L ,
A le x a 4 8 8 , C y - 2
R h o d a m in e 1 2 3
B O D IP Y - c e r a m id e
GFP
F lu o - 3
F lC R h R
D iI
SNARF-1
YFP
R h o d a m in e , C y - 3
TMRE
R - r h o d a m in e
C y-5
U V - V is R a n g e
A p p lic a t io n
Nc
C a lc iu m
Nc
S ig n a l T r a n s d u c t io n
N e u r it e
F o r L iv in g C e ll, T is s u e
C a lc iu m
Im m u n o F lu o r e s c e n c e
M it o c h o n d r ia
G o lg i A p p a r a t u s
F o r L iv in g C e ll, T is s u e
C a lc iu m
C y c lic - A M P
M e m b ra n e
pH
F o r L iv in g C e ll, T is s u e
Im m u n o F lu o r e s c e n c e
M it o c h o n d r ia
Im m u n o F lu o r e s c e n c e
Im m u n o F lu o r e s c e n c e
図1 蛍光タンパク質の励起(a)と発光(b)の
スペクトル
励起光のクロストークは、458nmではECFP, EGFP,
DsRED, EYFPが強く、同様に488nmではEGFP, EYFP,
DsRED, ECFP、514nmではEYFP, DsRED, EGFPで起こる。
曽我らは、近赤外領域で励起・発光する無機希土類化合物を新たな蛍光物質として開発するプ
ロジェクトを進めている(曽我ら、報告書参照)。これまでの蛍光物質は、紫外領域とほとんど
が可視光領域で励起・発光させるものの(表 1)、この領域を近赤外領域に広げることにより、
多種類の蛍光物質をバイオイメージングに利用することが可能である。無機希土類化合物は、近
赤外(800-1000nm)で励起させると、近赤外発光(1000-2000nm)する多様な物質が知られてお
り、その特性は、退色しにくく、発光線幅が狭いため、 退色やクロストークの問題を解決する
ことが期待される。また光散乱が少ないため、体内の蛍光物質の移動を動的に解析する in vivo
イメージングに有効であると考えられる。
2)近赤外蛍光顕微鏡システム
近赤外領域で励起・発光する無機希土類化合物を新たな蛍光物質として利用するには、バイオ
イメージングに適した顕微鏡システムを新たに開発することが必要である。そこでわれわれは、
近赤外蛍光顕微鏡システムを開発している(図2)。このシステムは、細胞観察に適した倒立型
生物顕微鏡に 980nm のレーザー光源を接続し、近赤外検出のために InGaAs CCD を使用して、シ
ステムを構築して検討を進めている。
NDフィルタ
ランプ
Hal (IR用)
DM1:ダイクロイックミラー1
980nm反射、1550nm±30nm透過
550nm±25nm透過、670nm±20nm透過
ポラライザ
DICプリズムin-out
コンデンサレンズ
IX2-LWUCD
個注対物レンズUPLSAPO60XOコート
UPLSAPO20XOコート
ステージ
980nmLDシステム
DICプリズムin-out
DM1
マルチレングスファイバ
BP2:550nm±25nmバンドパス
BP3:670nm±20nmバンドパス
LDドライ
バ
アナライザ
ミラー
NIR結像レンズ
InGaAs
C-CCD
BP1:1550nm±30nmバンドパスフィルタ
CCD
倒立顕微鏡IX71
本体
TVレンズユニット
PC
図2 開発中の近赤外蛍光顕微鏡システムの概要図
現在までに、システムの基本構築と、近赤外発光検出系のためのバンドパスフィルターや CCD
を入手し、試験段階へと移行した。今後、無機希土類化合物を用いて、近赤外蛍光顕微鏡システ
ムによる検出を確認した後、小生物への無機希土類化合物の投与による解析や、細胞を用いたバ
イオイメージングを実施し、実用可能な近赤外蛍光顕微鏡システムの開発を進めていく予定であ
る。
参考文献
(1) Yuko Nukada, Naokazu Okamoto, Katsunari Tezuka, Kazumasa Ohashi, Kensaku Mizuno, Shu
Konakahara & Takashi Tsuji. AILIM/ICOS-mediated polarization of activated T-cells is regulated by both
The PI3-kinase/Akt and Rho family cascade. Int. Immunol.18, 1815-1824, 2006.
(2) 近赤外蛍光顕微鏡システムの開発, 辻 孝、福田隆一、曽我公平, 第 1 回ポリスケールテク
ノロジーワークショップ, 2006 年 1 月 15 日
近赤外バイオイメージング
近赤外バイオイメージングの
バイオイメージングの癌細胞検出への
癌細胞検出への応用
への応用
東京理科大学生物工学科 米能
秋田農林水産技術センター
孝、川崎 靖、田代 文夫
総合食品研究所 戸松 誠
1.背景
癌の治療法の進歩は目覚しく早期診断法の確立と外科的治療の進歩により、胃癌をはじめとす
る多くの癌の治癒率と予後は向上している。その一方で、死因の第1位は依然として悪性新生物
であり、日本人の約 3 人に 1 人は癌で死亡している。外科的治療、放射線療法に加えて様々な抗
癌剤が化学療法として用いられているが、未だに完治は難しく、抗癌剤による副作用も患者に対
して大きな負担となっている。近年、発癌に関わる詳細な分子機構の解明により、癌の原因分子
を標的とした抗癌剤の開発や、ゲノム解析技術を用いた遺伝子多型解析によるオーダーメイド医
療など新たな治療法の確立が進められている。現在、癌の予防および早期診断に向け、癌細胞を
特異的に認識する抗体やリガンドといった、生理活性因子の探索が盛んに行われている。これら
癌細胞認識に関する生物学的な研究成果と、ナノテクノロジーによる新規蛍光プローブとその可
視化技術の開発といった研究成果の融合により、新たな癌診断技術の開発が期待されている。
2.目的
抗腫瘍タンパク質 aralin はタラノキ(Aralia elata)から単離された糖タンパク質であり、癌細胞選
択的にアポトーシスを誘導することから、副作用の少ない抗癌剤として期待されている 1)。Aralin
は A 鎖と B 鎖からなるヘテロタンパク質で、A 鎖は細胞傷害に関わる N-glicosidase 活性を、B 鎖
は癌細胞の特異的認識に関わるレクチン活性を有しており、galactose (Gal)およびその誘導体を認
識して細胞を傷害することが報告されているが、その詳細な分子機構は不明である 2)。本研究で
は新たな癌診断技術への応用に向けて、aralin によるアポトーシス誘導機構と癌細胞を特異的に
認識するメカニズムの解析を行った。
3.結果
Aralin がどのような癌細胞に強く作用するのかを明らかにするために、ヒト正常肺繊維芽細胞
WI-38 とその SV40 形質転換細胞 VA-13、ヒト肝癌 HepG2 細胞、ヒト大腸癌 HCT-116、ヒト子宮
頸癌 HeLa 細胞、ヒト扁平上皮癌(HSC-2、HSC-3 および SCC25) ラット肝癌 (AH66tc、dRla74、
dRlh84、K1、K2)、ラットグリオーマの C6 細
胞、マウス胚性腫瘍 P19 細胞、マウス肺癌 LL2
細胞およびサル腎癌 COS-7 細胞の 17 種の細胞に
対し、各濃度の aralin を 36 時間処理し、トリパ
ンブルー排除法により細胞死を判定した(Fig.1)。
その結果、ラット、マウスおよびサル由来の癌細
胞と比較し、ヒト由来の癌細胞において aralin 低
濃度で細胞死が誘導された。このことから、aralin
はヒト癌細胞に対して強い選択性を示すことが
明らかとなった。
Ricin やトウアズキ由来の abrin などの毒性タンパク質は総称して Ribosome inactivating protein
(RIP)といわれる。これら RIP は RNA N-glycosidase 活性を有しており、28S rRNA の特定のアデニ
ンを加水分解し、リボソームの不活性化を誘導する 3)。Aralin の A 鎖は ricin と相同性があること
から、RNA N-glycosidase 活性が存在することが考えられた。そこで、rRNA Depurination Assay に
より aralin がリボソームに傷害を与えるか解析した。Aralin を種々濃度、時間で投与した SCC-25
細胞の RNA を調製し、aniline 処理後、尿素を含むポリアクリルアミドゲルで電気泳動を行い、
EtBr 染色後 UV 下で RNA を検出した。その結果、aralin 濃度依存的に RNA の断片が検出され、
aralin 投与後、3 時間から6時間の間に 28S rRNA が障害されていることが明らかとなった(Fig.2)。
リボソームは細胞内で蛋白質の合成に関わる重要な細胞内小器官であり、aralin によるリボソー
ム傷害はタンパク質合成過程に影響を与えると考えられた。Aralin によりタンパク質の合成阻害
が生じるかどうかを調べるために、aralin 存在下における経時的な 35S-Met、35S-Cys の取り込み量
を調べ、タンパク質の合成能を解析した。その結果、SCC-25 細胞において aralin 存在下で経時的
にタンパク質の合成阻害が誘導され、3 時間において 35S-Met、35S-Cys の取り込み量がコントロ
ールに比べ約 67%抑制された(Fig.3)。また、WI-38 細胞、VA-13 細胞および HeLa 細胞について
も同様に aralin 存在下におけるタンパク質の合成能を調べた。その結果、VA-13 や HeLa 細胞に
おいて SCC-25 細胞と同様に aralin 1 ng/ml 以上で有意にタンパク質の合成阻害が確認されたが、
WI-38 細胞においては aralin 10 ng/ml においても有意な合成阻害が認められなかった。以上から、
aralin は癌細胞選択的にタンパク質の合成を阻害していることが明らかとなった。
(A) rRNA Depurination Assay
(SCC-25 cells, Dose)
(B) rRNA Depurination Assay
(SCC-25 cells, Time course)
Aralin (ng/ml)
0 1 2 5
0 1
0 1 2 5
Time (h)
2 3 6 12 24
28S
28S
18S
18S
RNA fragment
RNA fragment
5.8S
EtBr staining
5.8S
EtBr staining
Northern blotting
Fig. 2. Aralinと
とaniline処理
処理による
rRNAの
の切断
処理による28S
による
(A) 左:
:SCC-25を各濃度のaralinで24時間処理後、RNAを調製し、total RNAをanilineで氷上、
30 min反応させ、4.5%ポリアクリルアミド-ウレアゲルで電気泳動した。右:左図と同様にして
泳動後、RNA fragmentを認識するプローブを用いてノーザンブロッティングを行った。
(B) SCC-25を5 ng/mlのaralinで各時間処理し、RNAを調製し、(A)と同様にして解析を行った。
Aralin が 癌 細 胞 に 選 択 的 に 結 合 す る メ カ ニ ズ ム を 解 析 す る た め に 、 aralin を 蛍 光 物 質
Tetramethylrhodamine (TAMRA)で標識した TAMRA-aralin を作製し、SCC-25 細胞下での局在変化
を調べた。その結果、TAMRA-aralin (8×10-10 M)を4℃で添加し、15 分後に TAMRA-aralin の蛍
光が細胞表面に確認された (Fig.4)。対照群として TAMRA で標識した bovine serum albumin (BSA)
(TAMRA-BSA)を作製し同様に行ったところ、細胞表面に蛍光が確認されなかった。また、
TAMRA-aralin とその 10 倍量の未標識 aralin (8×10-9 M)を同時に細胞に処理したところ、
TAMRA-aralin のみ処理した場合と比較し細胞表面の蛍光が有意に抑制された。以上より、aralin
は細胞表面に特異的に結合することが考えられた。さらに、TAMRA-aralin を SCC-25 細胞に投与
し経時的に観察したところ、15 分では細胞表面に蛍光が見られたのに対し、2 時間後では細胞内
の核周辺に局在することが確認された (Fig.5)。また、細胞内のオルガネラのゴルジ体および小胞
体について、それぞれの蛍光標識マーカーを用いて局在を比較した。その結果、TAMRA-aralin
の局在はゴルジ体および小胞体に局在していることが明らかとなった。これらのことから、aralin
は細胞表面の何らかのレセプターを介して細胞内に取り込まれ、2 時間後にはゴルジ体や小胞体
へ局在することが示唆された。
Fig. 4. Aralinは
は細胞表面に
細胞表面に結合する
結合する
48時間培養したSCC-25細胞をhoechst33342で核を染色後、
TAMRA-aralin (8×10-10 M)を氷上で15分処理し、局在をみ
た。また、コントロールとしてBSAをTAMRAで蛍光標識 した
TAMRA-BSA (8×10-10 M) を用い、蛍光顕微鏡下で観察
した。 さらに、TAMRA-aralinとその10倍量の蛍光標識 を
していないaralin(Cold-aralin、8×10-9 M)を加えて同様に反
応させた。
Hoechst
Merged
B
Golgi
Hoechst
Merged
ER
Hoechst
Merged
15 min
TAMRA
120 min
TAMRA-Aralin
A
C
15 min
Merge
TAMRA-BSA
Hoechst
TAMRA-aralin
+ Cold aralin
(500 ng/ml) TAMRA-aralin TAMRA-BSA
TAMRA
Fig. 5. Aralinは
は細胞内に
細胞内に取り込まれる
A.
48時間培養したSCC-25細胞をhoechst33342で核を染色後、TAMRAaralin (8×10-10 M)を氷上で15、120分処理し、局在を蛍光顕微鏡下で観
察した。また、コントロールとしてBSAをTAMRAで蛍光標識 した
TAMRA-BSA (8×10-10 M)を用いた。
B,C. 細胞内のゴルジ体(ゴルジ体マーカーのBODIPY TR ceramide)および小
胞体(pEF/myc/ER/GFPベクターをトランスフェクションした) の局在を蛍
光顕微鏡下で観察した。
次に、aralin 低感受性のヒト正常肺繊維芽細胞 WI-38 および aralin 高感受性の VA-13 細胞およ
び SCC-25 細胞を用いて Gal の有無による TAMRA-aralin と細胞表面との結合について調べた。そ
の結果、SCC-25 および VA-13 細胞において Gal 非存在下では細胞表面に TAMRA-aralin 蛍光が確
認されたのに対し、Gal の存在下では濃度依存的に細胞表面の蛍光が抑制された (Fig.6)。一方、
aralin 低感受性の WI-38 において Gal 非存在下においても TAMRA-aralin の細胞表面上での蛍光が
確認されなかった。したがって、aralin は癌細胞選択的に発現する Gal を含むレセプターを認識し
ていることが予想された。
Aralin が認識する癌細胞に特異的に発現するタンパク質を解析するために、aralin をプローブと
したファーウェスタンブロットを行った。WI-38、VA-13、SCC-25 および HeLa 細胞より調製し
た膜タンパク質を SDS-PAGE で分離後、ニトロセル
(A)
(B)
ロース膜に転写し、ニトロセルロース膜と aralin
(4×10-8 M)を 4℃で 1 時間反応させ、α-aralin 抗体によ
り検出した。その結果、aralin 高感受性の VA-13 およ
び HeLa 細胞において 30 および 57 kDa のタンパク質
が確認された (Fig.7)。一方、SCC-25 および WI-38
細胞においては確認されなかった。また、このタン
パク質は aralin の 100 倍量の Gal 存在下において検出
されなかった。以上のことから、aralin は Gal を含む
Fig. 7. Aralinが
が認識する
認識するレセプター
するレセプター様分子
レセプター様分子が
様分子が存在する
存在する
レセプター様分子と結合することにより癌細胞を認
(A) 各細胞の膜分画をSDS-PAGEで分離し、メンブレンに転写した。メンブレンはaralin (4×10 M)を
含む溶液中で4℃、1時間反応させた後、一次抗体反応:α-Aralin抗体(A; 上段)、α-Normal
rabbit serum(A; 下段)で反応後、 二次抗体反応:α-HRP-rabbit IgG抗体を用いてaralinと結合
識し、癌細胞選択的アポトーシスを誘導することが
する分子の検出を行った。
(B) (A)と同様にメンブレンに転写後、aralinとその100倍量のGalを含む溶液中で4℃、1時間反応させ
明らかとなった。
た。その後、一次抗体反応:α-Aralin抗体、 二次抗体反応:α-HRP-rabbit IgG抗体を用いてaralin
Cytozol
α-Aralin
(kDa)
Ar
ali
n
W
I-3
8
VA
- 13
SC
C25
He
La
Ar
al
W in
I-3
VA 8
- 13
SC
C
He -25
La
W
I-3
VA 8
-13
SC
CH e 25
La
Membrane
57
(kDa)
57
30
α-Aralin
30
(kDa)
57
Normal
Rabbit
Serum
α-Actin
42
30
-8
と結合する分子の検出を行った。
4.考察
本研究では、aralin が認識する癌細胞特異的なタンパク質を探索する中で、正常細胞の WI-38
に比べ、癌細胞の VA-13 および HeLa 細胞にのみ、aralin が結合する 30 と 57 kDa の糖タンパ
ク質が存在することを明らかとした。癌細胞では細胞表面のタンパク質の組成、性質および機能
の変化が報告されており 4)、それに伴い、癌細胞特異的な糖鎖を認識する抗体やリガンドの探索
が盛んに行われている。
BALB/c3T3 細胞をマウス肉腫ウィルスで形質転換した細胞(3T3/KiMSV)
にはアシアリル-ガングリオトリアオシルセラミド(Gg3)が出現することが報告されており、
3T3/KiMSV を移植したマウスに抗 Gg3 ポリクローナル抗体を投与することで、肉種の成長阻害
と延命効果が得られている 5)。また、糖鎖を認識する性質は癌の診断として癌細胞マーカーの検
出にも有用であり、
乳癌と大腸癌の細胞株検出に HPA(食用カタツムリ Helix pomatia lectin)や、
ある種の黒色腫の検出に PNA(ラッカセイ Arachis hypogaea lectin)が有用であることが報告され
ている 6,7) 。Aralin は B 鎖のレクチン活性を介して、癌細胞の認識に関わると共に、A 鎖の
N-glicosidase 活性を介して細胞傷害に関わることから、癌の検出と治療を同時に行える抗癌剤と
して効果が期待される。さらに、aralin が認識する糖タンパク質を同定することで、癌関連糖鎖
抗原としてより特異性の高い抗体や物質の開発が可能となる共に、糖鎖による癌細胞選択性に対
して重要な知見が得られると期待される。
5.結論
本研究により aralin は癌細胞の細胞表面に特異的に存在する Gal を含む糖タンパク質を認識す
ること、細胞内に取り込まれた aralin は RNA N-glycosidase 活性によりリボソームを不活性化
し、タンパク質の合成阻害を引き起こすこと、これらが引き金となりアポトーシスが誘導される
ことが明らかとなった。今後、生体内において吸収が少ない赤外領域で励起される希土類蛍光物
質をもちいて aralin を標識することで、生体内における癌細胞の早期診断や癌の転移メカニズム
の解析への応用が期待される。
参考文献
(1) M. Tomatsu, M. Ohnishi-Kameyama, N. Shibamoto, Aralin, a new cytotoxic protein from Aralia elata,
inducing apoptosis in human cancer cells. Cancer Lett., vol.199, p19-25, 2003
(2) M. Tomatsu, T. Kondo, T. Yoshikawa, T. Komeno, N. Adachi, Y. Kawasaki, A. Ikuta, F. Tashiro, An
apoptotic inducer, aralin, is a novel type II ribosome-inactivating protein from Aralia elata, Biol.
Chem., vol. 385, p819-827, 2004
(3) Y. Endo, K.Tsurugi, RNA N-Glycosidase activity of ricin A-chain, J. Biol. Chem., vol. 262,
p8128-8130, 1987
(4) 太田邦夫, 山本正, 杉村隆, 菅野晴夫, 癌の科学 第 1 巻, 南光堂, p157-160, 1980
(5) 神奈木零児, 抗糖鎖抗体による癌の診断と治療, グリコバイオロジーシリーズ 6, グリコバ
イオロジー, 箱守仙一郎、永井克孝、木幡陽 編, 講談社サイエンティフィック, p88-130
(6) U. Schumacher, E. Adam, Lectin histochemical HPA-binding pattern of human breast and colon
cancers is associated with metastases formation in severe combined immunodeficient mice, Histochem.
J., vol 29, 677-684, 1997
(7) A.J. Cochranj, D.R. Wen, O. Berthier-Vergnes, C. Bailly, J.F. Dore, F. Beraed, G. Moulin, L. Thomas,
Cytoplasmic accumulation of peanut agglutinin-binding blycoconjugates in the cells of primary
melanoma correlates with clinical outcome, Hum. Pathol., vol 30, p556-561, 1999
国内会議発表
1) 応用物理学会 2006 年秋季第 67 回応用物理学会学術講演会(東理大基礎工)○曽我公
平「微小発光粒子のバイオメディカル分野への応用」シンポジウム「微小球フォトエレクトロ
ニクスの新展開」招待講演(2006/8/29-9/1, Kusatsu, Shiga).
2) 日本物理学会第 62 回年次大会(東理大基礎工)○曽我公平「バイオイメージングのた
めのナノ粒子応用-各種欠陥の発光への影響-」招待講演(2007/3/18-21, Kagoshima,
Kagoshima).
3) 第 23 回希土類討論会 (東京理大基礎工・東工大応セラ研*・筑波大 TIMS**)○小西智
也・曽我公平・渡辺友亮*・長崎幸夫**「希土類発光ナノ粒子のバイオイメージングへの応
用」(2006/5/30-31, Tokyo)
4) 第 22 回日本セラミックス協会関東支部研究発表会(東理大,*物材機構,**東京大) ○
河道正泰,鈴木美羽,曽我公平,吉田英弘*,山本剛久*「焼結体への遷移金属の添加効
果」(2006/7/20-21, Chikuma, Nagano).
5) 第 22 回日本セラミックス協会関東支部研究発表会(東理大,*東京大) ○渡辺麻衣,伊
藤政之,曽我公平,城殿啓介*,井上博之*「アルミノシリケート透明結晶化ガラスの分光特
性」(2006/7/20-21, Chikuma, Nagano).
6) 日本セラミックス協会第 19 回秋季シンポジウム(東理大院基礎工)○清水和明・永田浩
康・齋藤悠・山田真義・小西智也・曽我公平「ポリアクリル酸ナトリウムを用いた酸化イットリ
ウムナノ粒子分散体の調製」(2006/9/19-21, Kofu, Yamanashi).
7) 日本セラミックス協会第 19 回秋季シンポジウム(東理大院基礎工)○齋藤悠・清水和
明・山田真義・小西智也・曽我公平「酵素による尿素分解を利用した酸化イットリウムの作
製」(2006/9/19-21, Kofu, Yamanashi).
8) 第 15 回日本バイオイメージング学会学術集会(東理大・基礎工, 筑波大・学際物質科学
研究セ)曽我公平,斎藤悠,清水和明,小西智也,長崎幸夫「近赤外蛍光バイオイメージン
グのためのアップコンバージョン蛍光プローブの開発」(2006/10/31-11/1, Morioka, Iwate) .
9) 日本セラミックス協会ガラス部会第 47 回ガラスおよびフォトニクス材料討論会 (東理大
A, 東工大 B)○小西智也 A, 曽我公平 A, 谷口貴章 B, 渡辺友亮「ソルボサーマル法による
Er3+含有 ZrO2 および HfO2 ナノ粒子の作製とアップコンバージョン発光特性」
(2006/11/21-22, Noda, Chiba)
10) 日本セラミックス協会ガラス部会第 47 回ガラスおよびフォトニクス材料討論会 (東理
大)○亀山雄司, 清水雅大, 曽我公平「NH4Cl を用いた希土類含有無水塩化ランタンの合
成と評価」(2006/11/21-22, Noda, Chiba)
11) 日本セラミックス協会ガラス部会第 47 回ガラスおよびフォトニクス材料討論会 (東理
大)○清水雅大, 亀山雄司, 小西智也, 曽我公平「希土類含有 LaOCl アップコンバージョン
発光ナノ粒子の作製と評価」(2006/11/21-22, Noda, Chiba)
12) 第 17 回日本 MRS 学術シンポジウム(東理大院・基礎工)○鈴木美羽、曽我公平、河道
正泰、(NIMS)吉田英弘、(東大院・新領域)山本剛久「粒界破壊を用いたセラミックスナノ粒
子の作製」(2006/12/8-10, Tokyo, Tokyo).
13) 第 17 回日本 MRS 学術シンポジウム(東理大院・基礎工)○伊藤政之、曽我公平「希土
類含有フッ化ランタンナノ粒子の粒径と形状の制御」(2006/12/8-10, Tokyo, Tokyo).
14) 第 45 回セラミックス基礎科学討論(東理大基礎工)○菊池政己、永田浩康、山田真義、
曽我公平、「アップコンバージョン発光粒子の有機色素による表面機能化」(2007/1/21-22,
Sendai, Miyagi).
15) 第 45 回セラミックス基礎科学討論(東理大基礎工)○永田浩康, 山田真義, 曽我公平,
(理研)座古保, 前田瑞夫「共有結合で PEG 修飾した酸化イットリウムナノ粒子の分散安
定性」(2007/1/21-22, Sendai, Miyagi).
16) 日本セラミックス協会 2007 年年会(東理大基礎工、NIMS*、東大新領域**)○河道正泰、
曽我公平、吉田英弘*、山本剛久**「希土類・遷移金属添加イットリア焼結体の緻密化挙
動」(2007/3/21-23, Tokyo, Tokyo).
17) 日本化学会第 87 春季年会(東理大基礎工、筑波大 TIMS*)○斎藤悠、上村真生、小西
智也、曽我公平、長崎幸夫*「バイオイメージングのための酸化イットリウムナノ粒子の表面
機能化」(2007/3/25-28, Suita, Osaka)
国内会議発表
第 65 回 日本癌学会学術総会 平成 18 年 9 月 28 日-30 日 パシフィコ横浜(横浜)
新規 NCBP1 遺伝子による
遺伝子による中心体
による中心体および
中心体および造腫瘍性
および造腫瘍性の
造腫瘍性の制御メカニズム
制御メカニズム
倉部誠也、古宮裕子、川崎靖、杉山晶規、田代文夫(東理大・生物工)
当研究室において K2 細胞の足場非依存的増殖、造腫瘍能さらに肺転移能を制御する因子として
NC33 を以前単離した。本研究では、その分子メカニズムを解明する目的で Yeast two-hybrid 法を行
い、NC33 結合因子の探索を試みた。その結果、機能未知の新規遺伝子を同定し、NCBP1 (NC33 binding
protein 1)と命名した。NCBP1 は 670 残基からなり、ロイシンリッチリピート構造とコイルド-コイル
構造を有す。NCBP1 mRNA の発現は正常なラット肝臓では低いが K2 細胞やその他の癌細胞で高か
った。また、GFP 融合 NCBP1 の局在は中心体とその周辺であった。Rat1 細胞にセンス NCBP1 RNA
を安定発現する細胞株を樹立したところ、増殖に変化がないが中心体数の異常が確認できた。さらに、
アンチセンス NCBP1 RNA を安定発現する K2 細胞株を樹立したところ、単層培養では増殖に変化は
見られないが、ソフトアガー中でのコロニー形成能とヌードマウス皮下での造腫瘍能が低下した。以
上の結果から、NCBP1 は中心体の複製を制御し、細胞の癌化や癌の悪性化に関与している可能性が示
唆された。
14-3-3β
β-FBI1 複合体は
複合体はルイス肺癌細胞
ルイス肺癌細胞の
肺癌細胞の腫瘍形成能及び
腫瘍形成能及び転移能を
転移能を制御する
制御する
古宮裕子、倉部誠也、川崎靖、杉山晶規、田代文夫(東理大・生物工)
当研究室では、アフラトキシン B1 誘導ラット肝癌 K2 細胞で 14-3-3βが高発現し、細胞増殖や癌化
に関与していることを明らかにしてきた。また、14-3-3β結合因子として新規遺伝子 Fourteen-three
three beta interactant 1 (FBI1)を単離した。FBI1 は 14-3-3βと同様に K2 細胞や他の癌細胞において
過剰発現が認められ、K2 細胞のソフトアガー上でのコロニー形成能や in vivo における腫瘍形成能、
転移能を促進していることが明らかとなっている。そこで本研究では、高転移能性のルイス肺癌細胞
である LLC1 細胞を用いた FBI1 の機能解析を行った。LLC1 細胞にアンチセンス FBI1 (AS-FBI1)発
現ベクターを導入し FBI1 タンパク質の発現を抑制したところ、ソフトアガー上のコロニー形成率や
ヌードマウス皮下における腫瘍形成能が低下した。一方で単層培養時の増殖速度に AS-FBI1 発現の影
響は認められなかった。また、これらの細胞株をヌードマウスの尾静脈より移植し転移能を比較した
結果、親株は移植 3 週間後に肺に多くの転移巣を形成したが、AS-FBI1 発現細胞株を移植した場合は
全く転移巣を形成しなかった。これらのことより FBI1 は LLC1 細胞の腫瘍形成や転移に重要な役割
を果たしていると考えられる。
国内会議発表
20th IUBMB International Congress of Biochemistry and Molecular Biology and 11th
FAOBMB Congress, June 18-23 2006, Kyoto International Conference Hall and Kyoto
Takaragaike Prince Hotel (Kyoto)
Deregulated expression of a novel gene, NC33, contributes to the tumorigenicity and lung metastasis of
aflatoxin B1-induced rat hepatocellular carcinoma K2 cells.
Nobuya Kurabe, Yuko Komiya, Seiichi Mochizuki, Kumiko Katagiri, Akinori Sugiyama, Yasushi Kawasaki,
Fumio Tashiro.
Department of Biological Science and Technology, Tokyo University of Science
Aflatoxin B1 (AFB1) is known to be one of the most potent hepatocarcinogens and causes hepatocellular carcinomas in various experimental
animals. We have previously reported that AFB1-induced rat hepatocellular carcinoma K2 cells overexpress 14-3-3β and c-myc genes which
are the key regulators of in vitro and in vivo growth of K2 cells. Nonetheless, it has been speculated that in addition to these genes, some
other genes also implicate in AFB1 hepatocarcinogenesis, because AFB1 induces genomic alterations. Here, we report the cloning of cDNA
encoding rat nuclear protein NC33 (nuclear coiled-coil protein 33 kDa) as a new candidate responsible for AFB1 hepatocarcinogenesis. The
expression level of NC33 mRNA in K2 cells was higher than that in normal rat liver and was also detected at a high level in proliferative
tissues such as thymus, spleen and testis, in addition to lung. Some other rat hepatocellular carcinomas also overexpressed NC33 mRNA.
There were no differences in the proliferation rate in mono-layer culture between the control vector and sense NC33 RNA expressing
BALB/3T3 cells or between the control vector and antisense NC33 RNA expressing K2 cells. Although forced expression of sense NC33
RNA in BALB/3T3 cells did not confer the colony formation ability in soft agar, downregulation of NC33 in K2 cells lowered their
colony-forming ability in soft agar, lung metastases and tumorigenicity. Thus, it is likely that the deregulated expression of NC33 gene takes
part in AFB1 hepatocarcinogenesis in cooperation with deregulated expression of c-myc and 14-3-3β genes.
Implication of physical and functional interaction between 14-3-3β
β and its novel binding factor FBI1 in
tumorigenicity and metastasis.
Yuko Komiya, Ryuji Sakumoto, Nobuya Kurabe, Tomokazu Oshiki, Tetsuo Uchida, Akinori Sugiyama, Yasushi
Kawasaki, Fumio Tashiro.
Department of Biological Science and Technology, Tokyo University of Science
Previously we found the deregulated expression of 14-3-3β gene participates in wide variety of neoplastic transformations. Here, we report
the implicaiton of a novel 14-3-3β binding factor, fourteen-three-three beta interactant 1 (FBI1), in tumorigenicity and lung metastasis. FBI1
cDNA was isolated by yeast two-hybrid screening using 14-3-3β as a bait. FBI1 possessed two nuclear localization signal (NLS) sequences
and five 14-3-3 recognition sites and existed in the nuclei. Luciferase reporter assay revealed that FBI1 could function as a transcriptional
repressor through the cooperation with the 14-3-3β. Dysregulated expression of FBI1 gene was observed in various tumor cell lines as well
as 14-3-3β gene. Forced expression of antisense FBI1 RNA evoked the curtailment of activated periods of mitogen-activating protein (MAP)
kinase ERK1/2 and the robust reduction of tumorigenicity and lung metastasis of tumor cells, accompanying the diminution of motility or
matrix metalloproteinase-9 (MMP-9) activity. Furthermore, in two cell lines established from lung metastases formed by antisense FBI1
cDNA transfectant, antisense RNA expression was disappeared. Thus, these results indicate that the physical and functional interaction
between FBI1 and 14-3-3β takes part deeply in malignant transformation.