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第2章 スロットアンテナと共鳴トンネル構造を用いた THz 帯発振素子の

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第2章 スロットアンテナと共鳴トンネル構造を用いた
THz 帯発振素子の特性解析
2.1. Introduction.......................................................................................................... 26
2.2. 発振素子構造における解析モデル ...................................................................... 27
1.2.1. RTD 発振素子の原理.................................................................................. 27
1.2.2. MIM リフレクター集積型スロットアンテナを用いた RTD 発振素子
................................................................................................................... 28
1.2.3. 発振素子構造における解析モデル ............................................................. 30
2.3. 発振素子を構成するパラメーターの導出............................................................ 33
1.3.1. RTD におけるパラメーターの見積もり ..................................................... 33
1.3.2. スロットアンテナの周波数特性................................................................. 39
2.4. 発振素子の理論解析 ............................................................................................ 40
1.4.1. RTD 発振素子における周波数の見積もり ................................................. 40
1.4.2. 出力の見積もりと発振素子構造の最適化 .................................................. 43
2.5. 結論 ..................................................................................................................... 47
参考文献 ....................................................................................................................... 48
2.1 Introduction
本章では、スロットアンテナと共鳴トンネル構造を用いた発振素子の特性解析
を行う。特性解析において、共鳴トンネルダイオード(RTD)とスロットアンテナの両
方を考慮した発振素子全体としての THz 帯発振の可能性を示す。外部共振回路を含ま
ない RTD のみの最大発振周波数および THz 帯発振の可能性については過去に検討さ
れてきたが[2-1], [2-2]、発振素子全体を考慮に入れて RTD 発振素子として THz 帯発
振可能であることを示し、同時に発振出力の見積もりを行ったのは本研究が初めてで
ある。
26
(a) RTD とスロットアンテナの集積構造
(b) RTD 発振素子の等価回路
(c) RTD における NDR の発現
図 2.1 RTD 発振素子の原理
2.2 発振素子構造における解析モデル
2.2.1RTD 発振素子の原理
本研究では RTD と外部共振回路としてスロットアンテナを用いた発振素子構
造を用いる。スロットアンテナは平面型のアンテナ構造であり、RTD との平面内での
集積がしやすく素子の小型化が可能であるため採用した。他の平面型アンテナの候補
としてパッチアンテナが挙げられる。パッチアンテナは基板上下方向への指向性が良
い。ただし、パッチアンテナの上下電極を RTD 電極として用いる場合、RTD メサが
200nm と非常に短いことから電極間距離も非常に小さくなってしまい、アンテナの損
失が大きくなる。メサを長くすることでこの問題を回避することが考えられるが、こ
の場合、RTD のメサ抵抗が大きくなってしまい解決にならない。以上のことから、RTD
27
のメサの高さが 200nm のまま用いられパッチアンテナに比べて損失の小さなスロッ
トアンテナを用いた。図 2.1(a)に発振素子の原理図を示す。平面金属板内に四角の穴
が開いているのがスロットアンテナで、そのスロットの中央に RTD が配置されてい
る。RTD は、有限量子井戸による共鳴トンネル効果を利用した量子効果電子デバイス
で、微分負性コンダクタンスを発現する(図 2.1(c))。これにより高周波電磁界がスロッ
ト内に生じる。この高周波電磁界がスロット内で共振され、出力としてスロットアン
テナの上下方向へ放射される。図 2.1(b)に発振素子の簡単な等価回路を示す。微分負
性コンダクタンスを発現する RTD は−Gd であり、スロットアンテナが並列共振回路を
形成しインダクタンス L およびキャパシタンス C を構成する。放射出力は損失に相当
し Gr となる。この発振回路全体のアドミッタンスを Y とすると、この時の発振開始条
件は
Re(Y ) ≤ 0
(2.1)
Im(Y ) = 0
(2.2)
である。 (2.1)式は出力条件であり微分負性コンダクタンスが放射損を補っていること
を示しており、(2.2)式により周波数が決定されスロットアンテナの LC 共振周波数で
決定される。ただし、実際の発振素子における発振特性の見積もりにおいては、上記
のパラメーター以外に RTD に含まれる寄生パラメーターおよびアンテナに含まれる
放射損以外の損失を考慮しなければならない。
2.2.2 MIM リフレクター集積型スロットアンテナを用いた
RTD 発振素子
実際に発振素子を作製するには、前節で示した理想的なスロットアンテナで
は、直流(DC)ショートであるために RTD にバイアスを印加することが出来ない。こ
のため、DC オープンである電極構造と高周波の共振構造が必要であることが分かる。
また、高周波は表皮効果により金属表面を導波しやすい性質を持っているため、RTD
から発生した高周波は電極表面(バイアス印加用電極)を導波して電極の長さ分の低
周波(λ=~mm)で共振してしまう問題点がある。このことは一方で RTD から発生し
た高周波は、RTD 電極を用いて閉じ込める構造が最も効率が良いとも言える。そこで、
本研究では RTD 電極を用いてスロットアンテナを形成し DC オープンでありながら、
高周波をスロット内に閉じ込める MIM リフレクター集積型スロットアンテナを提案
する。
28
Resistor for suppression
of parasitic osc. (Bi)
Left electrode
(Au/Pd/Ti)
Right electrode
(Au/Pd/Ti)
MIM Reflector
6µm
Slot Antenna
RTD (GaInAs/AlAs)
~2µm × 2µm
4µm
SiO 2
SI-InP
DC Bias
図 2.2 発振素子構造
図 2.3
RTD 層構造
29
図 2.2 に RTD 発振素子の素子構造を示す。スロットアンテナの中央部に半絶
縁性(SI: Semi-Insulating) InP 基板上にエピタキシャル成長した InGaAs/AlAs 2重
障壁 RTD メサを配置している。RTD メサの面積はおよそ 2×2µm2 である。左側電極
と右側電極はそれぞれ、RTD の上部と下部に接続されている。スロットアンテナの両
端において左側電極と右側電極で SiO2(100nm)を挟み込んだ構造になっている。この
金属/絶縁体/金属(MIM)構造により、スロットの両端において高周波を反射してスロッ
ト内で定在波を形成することを可能にしている。
左側電極と RTD 上部電極を接続する引き出し電極の大きさは幅 6µm、長さ
4µm である。引き出し電極の幅は RTD の大きさ 2µm よりも大きいが、これはヒート
シンクの役目も持たせているためである。電極金属は上から Au/Pd/Ti で形成されて
いる。
(今後の記述においても断りがない限り金属層の構成は上部層から示しているも
のとする。)左側電極の厚さは 700/20/20nm であり、右側電極はおよそ 450nm の
n+-InGaAs 層上に厚さ 70/15/10nm で形成されている。
RTD の層構造を図 2.3 に示す。上部層から n+-InGaAs(1019cm-3,30nm)/n-InG
aAs(1018cm-3,50nm)/spacer 層 InGaAs(undoped, 5nm)/barrier 層 AlAs(undoped,
1.5nm)/well 層 InGaAs (undoped, 4.5nm)/ barrier 層 AlAs(undoped, 1.5nm)/spac
er 層
InGaAs(undoped, 5nm)/n-InGaAs (1018cm-3, 50nm)/n+-InGaAs(1019cm-3,
400nm)
InGaAs 層は well 層以外 InP と格子整合であるが、well 層は歪み構造で、
材料組成は In0.8Ga0.2As である。
2.2.3 発振素子構造における解析モデル
図 2.4 に発振素子の等価回路を示す。等価回路には RTD の微分負性コンダク
タンス、RTD の寄生成分、アンテナのアドミッタンスを考慮している。微分負性コン
ダクタンスを-Gd として、RTD のキャパシタンスを Cd とする。Rc は接触抵抗であり、
Cc は接触によるキャパシタンスである。Rm は RTD メサによる抵抗成分と RTD メサ
から下部電極への拡がり抵抗を含んでいる。Lm は RTD メサによるインダクタンスを
表す。Ya はスロットアンテナのアドミッタンスである。Gd は図 2.4 に示す発振電圧
Va と RTD 内の走行時間に依存し下記で表される。
−Gd (Vac ) = −
{ (
cos ω τ rtd + τ dep/ 2
)} sin(ωτ
ωτ dep/ 2
30
dep/ 2)
Grtd (Vac )
(2.3)
図 2.4 RTD 発振素子における厳密な等価回路
ここでωは発振角周波数であり、τrtd は RTD 井戸内の滞在時間、τdep はコレクター層に
おける空乏層走行時間を表し、τ dep = ddep/vs で表される。d dep は空乏層距離であり、vs は
飽和速度を示す。 Grtd は低周波における微分負性コンダクタンスで、
Grtd (Vac ) = a −
3b 2
Vac
4
(2.4)
と表される。RTD の I-V 特性を3次までの多項式で近似することで、a と b は
a = (3/ 2)(∆I / ∆V ) 、 b = 2∆I / ∆V 3 = (4 / 3)( a / ∆V 2 ) で表される[2-3]。ここで、 ∆V と ∆I は
それぞれ NDR 領域における電圧と電流の幅である。 Cd は、
C d (Vac ) = C 0 + C rtd (Vac )
(2.5)
で与えられ、 C0 は ε S / d で与えられるキャパシタンスで ε は誘電率、 S は RTD の面積
であり、d は RTD 層、エミッター側蓄積層、コレクター側空乏層の距離を示す。Crtd は、
C rtd (Vac ) =
{ (
)}
sin ω τ rtd + τ dep/2 sin(ωτ dep/2)
2
ω τ dep / 2
31
G rtd (Vac )
(2.6)
で与えられる。 C rtd (Vac ) は小信号において、
τ dep 
C rtd (Vac ) τ rtd +
 Grtd (Vac ) .
2 

(2.7)
と表される。
発振の定常状態における条件を発振素子全体のアドミッタンス Y を用いて表
すと、
Y = −Gd (Vac ) + Y1 (Vac ) = 0
(2.8)
で表される。 Y1 はポート 1-1’から右側を見たときのアドミッタンスであり、
Y1(Vac ) = jωC d (Vac ) + Y2
(2.9)
で表される。 Y2 はポート 2-2’から右側を見たときのアドミッタンスであり、
Y2 =
(1/Rc + jωCc ) Ya / ( Rm + jLm )
(1/Rc + jωCc ) Ya + Ya / ( Rm + jLm ) + (1/Rc + jωCc ) / ( Rm + jLm )
.
(2.10)
で表される。式(2.3)-(2.6)と式(2.9)を用いると式(2.8)は実部と虚部に分られて次の2つ
の関係式を得る。
Im(Y2 ) + ωC0 + tan[ω (τ rtd + τ dep / 2)]Re(Y2 ) = 0 ,
Vac2 =

ωτ dep / 2
4 
Re(Y2 )  .
a −
3b 
cos[ω (τ rtd + τ dep /2)]sin(ωτ dep /2)

(2.11)
(2.12)
等式(2.11)は発振回路の共振条件を示している。この等式からωを求めることにより発
振周波数が見積もられる。式(2.11)の左辺第3項は RTD における遅延時間による項で
ある。式(2.12)は発振の出力条件を表す。これから発振電圧振幅を得る。右辺の第二項
Re(Y2 ) の係数は、遅延時間の上昇により増加してゆき、低周波の極限においてはほとん
ど影響を与えない。
発振出力は下記の式により与えられる。
32
2
1 Y2
P =
Gr ⋅Vac2
2 Ya
2

ωτ dep / 2
1 Y2
Re(Y2 ) 
 ∆V 2
Gr 1 −
=
a
2 Ya
cos[
(
/2)]sin(
/2)
+
ω
τ
τ
ωτ
rtd
dep
dep


(2.13)
ここで、 Gr は Ya における放射コンダクタンスである。
2.3 発振素子を構成するパラメーターの導出
2.3.1
RTD におけるパラメーターの見積もり
式(2.10)と(2.11)を用いて発振周波数を求めるために、等価回路におけるパラメ
ーターを次のように見積もった。
n+-InGaAs 上の Au/Pd/Ti の接触抵抗 Rc は、文献[2-4]
と測定結果[2-5]により 2.5Ω/µm2 と見積もられた。接触容量 Cc は金属半導体接触によ
り生じる空乏層から見積もった。この空乏層距離は 7.3nm と見積もられ、単位面積あ
たりの静電容量は 14fF/µm2 であった。メサによるインダクタンス成分 Lm は本素子構
造においてメサの高さが十分小さいためにほぼ 0 であり、無視している。Rm に含まれ
ているメサの抵抗はバルク抵抗を考慮している。素子の発振周波数における
n+-InGaAs 層の表皮効果による表皮の深さがメサ半径と同じであるため、バルク抵抗
として考慮している。1.8×1.8µm2 のメサにおけるメサ抵抗は、およそ 0.4Ωであった。
Rm において、メサ抵抗と同時に考慮されている拡がり抵抗は、1.8×1.8µm2 のメサに
おいて 0.4Ωと見積もられる。拡がり抵抗は、(ρ/πTn)ln(r/rmesa)で与えられる。ρと Tn
はそれぞれ n+-InGaAs 層の抵抗率とメサ直下の厚さである。r はメサの中心から下部
電極の端部までの距離を表し、rmesa はメサを面積から円と仮定した場合の半径である。
C0 は、本研究で用いている RTD 構造と非常によく似た構造の RTD のキャパ
シタンスを測定している文献[2-6]から見積もった。コレクター層の空乏層の厚さは、
エミッター層側蓄積層厚を無視して C0 から見積もっている。RTD 内の遅延時間
τrtd,τdep は、後に詳述するように式(2.4)を用いて次のように見積もった。まず、電子の
井戸内滞在時間と空乏層走行時間による静電容量 Crtd の見積もりを行った。文献[2-6]
におけるキャパシタンスの測定値において NDR 領域の中央点と NDR 外の部分にお
けるキャパシタンスとの差から求め、1.0fF/µm2 と見積もった。ここから見積もられ
た Crtd はスペーサー層厚に依存しない独立の値である。次に(2.4)式における a は、発
33
振測定結果における発振出力と I-V 曲線におけるにおけるΔI をもちいてこの方程式
にフィッティングさせることで求めた。NDR 領域は通常測定において非常に不安定
な領域であることと、I-V 特性の 3 次多項式による近似がピークとバレーを含む広い
領域において誤差が生じるために、NDR 領域の中心点における傾きから a を求める
ことは非常に困難である。実験値と理論値のフィッティングによる a の見積もりにお
いて、発振周波数 460GHz で 12µW の発振出力の値を用いた。この a を用いて見積も
られた発振出力は、後の実験の章にて詳しく述べるが、他の発振素子における発振出
力の値と良い一致が得られている。単位面積あたりの a の値は、−10mS/µm2 であった。
1.8×1.8µm2 では−32mS に相当する。この値は I-V 特性のピーク値とバレー値の間を
直線で引いた際の傾きのおよそ 2 倍に相当する。a は式(2.4)で分かるように小信号に
おいて Grtd と等しい。τrtd+τdep/2 は、Crtd と Grtd との間に式(2.7)関係があり、これを用
いて見積もった。τdep は電子飽和速度 vs=3×107cm/s と C0 から見積もられた空乏層距
離 ddep を用いて求めた。こうして、trtd と tdep は、図 2.3 で示された層構造では(ピー
ク電流密度 400kA/cm2、スペーサー層 5nm)それぞれ 40fs,42fs と見積もられる。ピ
ーク電流値の違う、バリア厚が異なる RTD 構造におけるパラメーターは後に詳しく
述べる。以下に RTD におけるパラメーターの導出について詳しく示す。
RTD のパラメーター導出
z 接触抵抗
接触抵抗は下記の式で決定される。
Rc =
ρc
Smesa
(2.14)
ここで、 ρc は Au/Pd/Ti と n+-InGaAs における接触抵抗率であり文献[2-4]お
よび測定結果[2-5]を参考にした。 ρc =2.5Ωµm2 とした。この値は、n+-InGaAs 上に
Au/Pd/Ti を堆積後に 250℃~450℃でアニール処理をした後の接触抵抗率を用いてい
る。本研究で用いる素子構造の素子作製プロセスでは、アニールを行ってはいない。
ただし、SiO2 堆積工程において 300℃で 10 分間程度放置するためにアニールと同等
の効果が得られていると考え、接触抵抗値をアニール後のパラメーターを用いた。
z 接触容量
接触容量は下記の式で決定される。
34
Cc = ε 0ε InGaAs
Smesa
dc
(2.15)
ε 0 は真空の誘電率、ε InGaAs は InGaAs の比誘電率である。d c は金属半導体接触
により生じる空乏層幅を示す。 d c は下記の式で決定される。
dc =
2ε 0ε InGaAs (Vbi − V )
Nne
(2.16)
Vbi は拡散電位であり、 V は接触部分に印可される電圧である。 V は、接触抵抗値と
RTD のピーク電流値から見積もった。 N n は n+-InGaAs のドープ量で 1×1019 (/cm-3)
である。e は電子の素電荷である。 ε InGaAs は文献[2-7],[2-8]からグラフを外挿すること
でおよそ ε InGaAs =11 と見積もった。
z メサのインダクタンス成分の考察
本研究に用いるデバイス構造では無視しているが、インダクタンスの見積もり
は下記の式を用いて見積もった。
Lm =
µ 0 d mesa
2d
3
(log mesa − )
2π
4
rmesa
(2.17)
µ 0 は真空の透磁率、 d mesa はメサの高さで 150nm とした。 rmesa は RTD メサの面積に等し
い円の半径で、およそ 1µm である。この式は円柱形導線の断面を電流が一様に流れた
場合の自己インダクタンスの式である。高周波電流を考慮する際、表皮効果により断
面積に電流が一様に流れなくなることが考えられる。しかし、表皮の深さδは
δ =
2 ρ InGaAs / ωµ 0 で与えられ、1THz における表皮の深さはおよそ 5µm とメサ面積
より十分大きく、メサ断面積に高周波電流が一様に流れていると考えられる。ところ
で、この式からメサがインダクタンスとして見なせるかどうかを考える。インダクタ
ンスは Lm>0 であることが条件であり、メサ面積とメサの高さの関係に直すと条件は
d mesa > rmesa となる。ここで、本研究で用いているメサ構造は dmesa=150nm, rmesa=1µm
であり、メサの高さに比べてメサ半径がはるかに大きく d mesa
インダクタンスとは見なせず解析において無視している。
35
rmesa である。このため、
z 拡がり抵抗
メサ上部電極から下部電極へ電流が流れる際の拡がり抵抗は下記の式を用い
た。
Rm =
ρ
r
log
2π Tn
rmesa
(2.18)
ここで、Tn は n+-InGaAs 層の厚さ、r はメサ中心から下部電極までの距離で、メサ半
径にウエットエッチング量を加えたものにほぼ等しい。ここで、下部電極はメサの半分
を取り囲んでいるため、抵抗値は上の式の2倍として見積もった。
z RTD 容量の見積もり
RTD の静電容量は、下に示す式(2.7)から見積もられる。
τ dep 
C rtd (Vac ) τ rtd +
 Grtd (Vac ) .

2 
(2.7)
そこで、必要となるパラメーターは、微分負性コンダクタンス Grtd 、空乏層走行時間
τ dep 、RTD 井戸内滞在時間 τ rtd である。以下に、それぞれのパラメーター見積もりに
ついて記述する。
• 微分負性コンダクタンス Grtd
Grtd は式(2.4)より得られる。このとき、a および b の見積もりにおいて、∆I
と∆V を実験値から見積もった。ここで、∆I は測定値をそのまま用いても構わないが、
∆V は上述したような寄生抵抗が直列に接続されているために実験で得られた電圧値
をそのまま使うことは出来ない。そこで、ピーク電流値及びバレー電流値から寄生抵
抗にかかっている電圧を見積り、RTD の∆V を算出した。このとき、
∆V = (Vv − I v Rs ) − (V p − I p Rs )
(2.19)
であり、Vv,Iv,Vp,Ip,Rs はそれぞれ測定値におけるバレー電圧、バレー電流、ピーク電
圧、ピーク電流、寄生抵抗(接触抵抗、メサ抵抗)を表す。これにより、実験値にお
ける寄生抵抗分を差し引いた NDC 値が∆I および∆V を用いて得られる。ここから、a
は上述したように発振測定結果における発振出力と I-V 曲線におけるΔI をもちいて
(2.4)式にフィッティングさせることで求めた。この a は 460GHz で 12µW の実験結果
36
に合うようにフィッティングした結果であり I-V 特性のピーク値とバレー値の間を直
線で引いた際の傾きのおよそ 2 倍に相当する。
• 空乏層走行時間 τ dep
空乏層走行時間は RTD の空乏層領域を走行する時間であり、
τ dep = d dep / vs
(2.20)
で表される。ddep は空乏層幅、 vs は InGaAs 内における電子の飽和速度を表し、vs=3
×107cm/s とした。RTD の蓄積層と空乏層の間に生じる静電容量は、文献[2-6]から見
積もった。ここから、RTD の障壁による静電容量、井戸部分による静電容量を削除し、
空乏層部分のみの静電容量を見積り、空乏層幅を見積もった。これを式にすると、下
記になる。
d dep = ε 0ε InGaAs Smesa (
2d b
d well
1
−
−
)
C0 ε 0ε AlAs Smesa ε 0ε InGaAs Smesa
(2.21)
ここで、db は RTD の障壁層の厚さ、dwell は井戸層の厚さをあらわす。ε AlAs は AlAs 層
の誘電率で、 ε AlAs =8.4 とした。コレクター側スペーサー層厚が 5nm であるとき、空
乏層幅はおよそ 13nm で、空乏層走行時間は 42fsec である。
•
RTD 空乏層による静電容量 C0
RTD の蓄積層と空乏層の間に生じる静電容量 C0 は、文献[2-6]の実験値から見
積もった。文献における静電容量の測定値は3つのコレクター側スペーサー層につい
て記述してあり、NDR 領域の中央のポイントの静電容量 Cd を用いた。こうして得ら
れた3つのデータからスペーサー層厚と Cd の依存曲線をフィッティングした。
Cd ( spacer ) = [0.001284 × ( spacer − 60) 2 + 1.8] × 10−3 fF/µm2
(2.22)
ここで、spacer はコレクター側スペーサー層厚である(単位は nm)。次に、RTD 内
遅延時間によるキャパシタンス Crtd は NDR 領域左外側と NDR 中心点における静電容
量の差を見積もった。3つのスペーサー層において共通で 1.0 fF/µm2 である。これは、
3つの素子における I-V 特性が均一でありバリア層厚が同じであるため井戸内滞在時
37
間が変わら無いためである。こうして求めた Cd から Crtd を引くことで、空乏層による
静電容量 C0 が得られる。
C0 ( spacer ) = Cd ( spacer ) − Crtd
•
(2.23)
RTD 井戸内滞在時間 τ rtd
RTD 井戸内滞在時間 τ rtd は、次のようにして求めた。井戸内滞在時間と空乏層走
行時間による遅延時間 τ rtd + τ dep / 2 は、式(2.7)から小信号における Crtd と Grtd から求めら
れる。Crtd は前述したように本研究で用いる RTD は、文献[2-6]より 1.0fF/µm2 であり、
NDR 領域の中心部分の値を用いた。Grtd は前述した方法で求めた値を用いている。本
研究で用いている Jp=400kA/cm2、1.8×1.8µm2 のとき Grtd =−32mS であり、コレクタ
ー 側 ス ペ ー サ ー 層 厚 が 5nm の RTD の 井 戸 内 滞 在 時 間 を 見 積 も る 。
τ rtd + τ dep / 2 = Crtd Grtd =62fsec が得られる。このとき、τ dep は前述のように 42fsec であ
ったから、 τ rtd はおよそ 40fsec であることが分かる。以上から、Jp=400kA/cm2 でコ
レクター側スペーサー層厚 5nm の RTD における井戸内滞在時間はおよそ 40fsec と見
積もられた。
•
ピーク電流密度が異なる場合の τ rtd の見積もり
ピーク電流密度の異なる RTD を仮定して発振特性の解析を行う場合、τ rtd の変
化を見積もった。RTD のピーク電流密度は障壁層の厚さに依存しており、また、障壁
層厚により電子の滞在時間も依存しているためである。そこで、ピーク電流密度の異
なる RTD の井戸内滞在時間を見積もるために以下のようにして見積もった。
まず、ピーク電流密度における RTD 障壁層の厚さを見積もる。ピーク電流密
度と障壁層の厚さの関係は、おおよそ
db ∝ logJ p
(2.24)
の関係にある[2-12]。このことから、本解析で仮定する Jp における障壁層厚 db を求め
た。 db と Jp の依存曲線を求めるために、本研究で用いている RTD、障壁層厚
1.5nm,Jp=400kA/cm2(コレクター側スペーサー層厚 5nm)の RTD と本研究で用いて
いる RTD 層構造がほぼ同じである RTD に関する文献値を用いた。文献より参考にし
38
た RTD 層構造は 2 点で、Jp=680kA/cm2,db=1.1nm[2-9], Jp=100kA/cm2,db=2.0nm[2-6]
の値を用いた。
次に、電子の透過率の半値全幅Γとバリア層厚 db には
db ∝ log Γ
(2.25)
の関係があり、また、井戸内滞在時間 τ rtd とΓは
τ rtd ∝ / Γ
(2.26)
の関係がある。以上から、
db ∝ log
1
τ rtd
(2.27)
である。 τ rtd を求めるために上記で見積もった、Jp=400kA/cm2、コレクター側スペー
サー層厚 5nm の RTD の障壁層厚 1.5nm の τ rtd =40fsec および、本研究で用いている
層構造ときわめて近い RTD 遅延時間によるキャパシタンスと空乏層によるキャパシ
タンスを測定している文献[2-6]の値から求めた τ rtd =320fsec を用いた。この2点から
db と τ rtd の依存曲線を求め、Jp=600kA/cm2 の時 17fsec と見積もった。
2.3.2 スロットアンテナの周波数特性
アンテナのアドミッタンス解析は、3 次元電磁界シミュレーション(Ansoft
HFSS)を用いて実際のアンテナ形状で行った。計算リソースの制限のために解析は
実際の電極の大きさよりも小さく設定して行ったが、全体の電極の大きさはスロット
における等価共振波長の少なくとも 3 波長分で設定して行った。電極金属は Au を設
定し、コンダクタンスの周波数依存は無視した。SI-InP と SiO2 の屈折率はそれぞれ
3.48,1.97 であり、コンダクタンスは 0 とした。また、屈折率の周波数による変化は無
視している。RTD を含んだ実際の素子の発振周波数は、RTD がキャパシタンスを持
つためにアンテナの共振周波数より低くなる。アンテナアドミッタンス Ya の実部に
は、放射コンダクタンス、導体損、MIM リフレクター内への浸み込み損が含まれてい
る。放射コンダクタンス Gr は、実際のアンテナ構造における実部アドミッタンスとア
ンテナの電極を完全導体に置き換えた場合のアドミッタンスを比較することで求め
た。
39
S =1.3×1.3µm2
−24mS
Jp = 600kA/cm2
Real Part of RTD Admittance (mS)
40
Spacer=30nm
20
45nm
0
−20
Spacer=5nm
−40
0.5
1.0
15nm
1.5
2.0
2.5
3.0
Frequency (THz)
3.5
4.0
図 2.5 RTD の実部アドミッタンスの周波数依存特性
2.4 発振素子の理論解析
2.4.1
RTD 発振素子における周波数の見積もり
まず、RTD 単体における発振能力の見積もりとして、RTD の実部アドミッタ
ンス周波数依存特性を求めた。このアドミッタンスは、図 2.4 に示される等価回路の
ポート 3-3’から見たアドミッタンスに等しい。図 2.5 に面積 1.3×1.3µm2、ピーク電流
密度 Jp=600kA/cm2、小信号におけるコンダクタンス−Grtd(=−a)=−24mS である RTD
のスペーサー長毎のアドミッタンス周波数依存特性を示す。スペーサー層厚の変化に
よる−Grtd の変化は、コレクター側空乏層への電荷注入による空間電荷効果を仮定し無
視した。このことは、異なるスペーサー層をもつ RTD について行われた I-V 測定の結
果と一致していて、NDR 領域の電圧の幅がスペーサー層厚にかかわらず一定である。
空間電荷効果により、NDR 領域において空乏層における電圧降下はスペーサー層厚の
変化に対して非常に小さい。実部アドミッタンスが 0 となる周波数が RTD の最大発
振周波数を示す。最大発振周波数は、コレクター側空乏層厚とキャパシタンス C0 がス
40
Oscillation Frequency (THz)
1.5
=20µm
−Gd = −10mS/µm2
=10µm
−32mS (S=1.8×1.8µm2)
1
=50µm
0.5
0
1
2
3
Mesa Side Length of Square RTD (µm)
4
図 2.6 発振周波数の RTD 面積依存特性
ペーサー層厚により変化することから、スペーサー層厚に強く依存している。スペー
サー層厚とコレクター側空乏層厚の関係は、前節で述べた方法を用いて見積もった。
スペーサー層厚が 5,15,30,45nm のとき、空乏層厚はそれぞれ 13,20,41,80nm と見積
もられる。
この図から分かるように、スペーサー長 15nm において最大となり最大発振周
波数が 3.1THz であることが分かる。式(2.6)から分かるように、スペーサー長が増大
するとともにスペーサー層走行時間が増大するために、最適値を越えてから最大発振
周波数は減少してゆく。しかしながら、スペーサー層厚が増大することでキャパシタ
ンスは減少してゆくので RTD のアドミッタンスの虚部は減少するので、RTD とスロ
ットアンテナを組み合わせた場合、式(2.12)における出力条件 Vac2 が正である限り発
振周波数は上昇してゆく。
図 2.6 に RTD とスロットアンテナを組み合わせた発振素子構造の発振周波数
と RTD の面積の関係を示す。アンテナの長さは =50,20,10µm である。スペーサー層
厚は 5nm である。発振の限界周波数における RTD の面積は、スロットアンテナ長が
短くなるほど大きくなる。これは、小さなアンテナ長のスロットアンテナほど MIM
リフレクター内への浸み込みによる損失が大きいためである。1THz を超える発振周
波数は、図 2.6 より RTD の面積 1.3×1.3µm にアンテナ長 =10µm のスロットアンテ
41
Oscillation Frequency (THz)
1.4
−Gd = −7.2mS/µm2
−23mS (S=1.8×1.8µm2)
30nm
1.2
Spacer Layer
45nm
1.0
60nm
0.8
Osc.limit
0.6
15nm
5nm
0.4
0
10
20
30
Antenna Length (µm)
40
50
図 2.7 スペーサー層厚毎における発振周波数とアンテナ長依存特性
100
S=1.8×1.8µm 2
Output Power (µW)
Spacer 30nm
600kA/cm 2
10
30nm
400kA/cm 2
Exp.
5nm
400kA/cm 2
1
0
0.5
1.0
Oscillation Frequency (THz)
1.5
図 2.8 ピーク電流密度、スペーサー層厚毎における発振出力の解析結果
42
ナを集積した構造か、面積 0.8×0.8µm アンテナ長 =20µm の素子構造において可能で
あることが分かる。
図 2.7 にスペーサー層厚毎のアンテナ長による発振周波数依存特性を示す。面
積 1.8×1.8µm2、ピーク電流密度 400kA/cm2、小信号における−Grtd(=−a)=−32mS の
RTD について解析を行った。図 2.6 で示したスペーサー層厚の最適点までスペーサー
層厚の増加によりコレクター側空乏層の増加により Cd が減少するために、発振周波数
は増加してゆく。ただし、スペーサー層厚最適点の 15nm を超えるとコレクター側空
乏層走行時間の増大により Cd の減少による効果を打ち消してしまい、発振周波数の増
加は頭打ちになる。ただし、1THz 程度の発振周波数では低周波領域であり、後に述
べる理由によりスペーサー層幅 30nm で発振周波数が最大となる。図 2.7 より =7µm
のスロットアンテナとスペーサー層厚 30nm で面積 1.8×1.8µm2 の RTD を用いるこ
とで 1.3THz までの発振が可能であることが分かった。この解析により、初めて RTD
を外部共振回路と組み合わせた発振素子全体としての THz 帯発振の可能性を明らか
にできた。
2.4.2 出力の見積もりと発振素子構造の最適化
図 2.8 に RTD 面積 1.8×1.8µm2 に固定し、スペーサー層およびピーク電流密
度 Jp を変化させた場合の発振出力の解析結果を示す。ピーク電流密度は、400kA/cm2
と 600kA/cm2 のものであり、それぞれ単位面積あたりのコンダクタンスはピーク電
流密度に比例するとして−10mS/µm2 と−7.2mS/µm2 に相当する。
スペーサー層は 5nm
と 30nm の場合において計算している。前節にてスペーサー層厚の最適値は 15nm と
述べたが、1THz 程度の発振素子構造では 30nm 程度のスペーサー層厚がアドミッタ
ンスが大きく発振素子としては最適値となる。これは、図 2.6 の曲線をみると、低周
波領域(~1THz 程度)における実部アドミッタンスは 5nm,15nm 程度の短いスペー
サー層厚に比べて、30nm 程度の厚いスペーサー層厚の方が小さいためである。1THz
を超える発振周波数を狙う発振素子においては、RTD の最大発振周波数がピーク値
となる 15nm がスペーサー層厚である RTD を用いなければならない。図 2.8 には後
の章にて詳述する 587GHz の基本波発振の出力測定結果を同時にプロットしてあり、
実験と理論のとても良い一致が得られている。
43
20
=10µm
Admittance (mS)
15
Conduction loss
10
5
0
Penetration loss
Radiation loss
0.1
0.5
1.0
Oscillation Frequency (THz)
1.5
図 2.9 MIM リフレクター構造を用いたときの導体損、浸み込み損、放射損
におけるアドミッタンス周波数依存特性
70
60
Conduction loss
=10µm
Ratio (%)
50
40
Penetration loss
30
20
10
0
0.1
Radiation loss
0.5
1.0
Oscillation Frequency (THz)
1.5
図 2.10 MIM リフレクター構造を用いたときの導体損、浸み込み損、放射
損の割合の周波数依存特性
44
図 2.8 を見て分かるように、発振出力にはピーク点となる発振周波数が存在す
る。ピーク点より高い周波数において、アンテナ長が小さくなることにより放射コン
ダクタンスが小さくなることから発振出力が減少してゆく。また、ピーク点より低い
周波数において、発振周波数が下がれば下がるほどコンタクト抵抗の値が無視できな
くなり、発振素子全体の負性コンダクタンスが減少して行くため発振出力が減少して
いる。第1章で述べた平面型スロットアンテナを用いた発振素子[2-10]の出力の報告
値が小さかったのはこれが原因であると考えられる。発振出力が分かっているのは
290GHz で 1µW であったが、この付近が発振周波数の左端であったのではないかと
考えられる。発振のスペーサー層厚の大きい発振素子は、Cd が小さいために虚部ア
ドミッタンスが小さくなるため大きなアンテナ長を用いることが出来るために、結果
として放射コンダクタンスが大きくなり、同じ発振周波数における発振出力が大きく
なる。ピーク電流密度 600kA/cm2,スペーサー層厚 30nm の RTD を用いることで、
1THz において 15µW の発振出力が得られることが分かった。
図 2.9 および図 2.10 にアンテナ長 =10µm のアンテナ構造における放射コンダ
クタンス、導体損、MIM リフレクター内への浸み込み損による損失および、その割
合の周波数依存特性を示す。放射コンダクタンス、導体損、MIM リフレクター内へ
の 浸 み 込 み 損 に よ る 損 失 の 割 合 は 、 1THz の 発 振 周 波 数 に お い て そ れ ぞ れ
4%,58%,38%と見積もられた。放射損は周波数が増大するとともに増大している。こ
れは、アンテナ長が周波数に対して小さいためであり、周波数が大きくなり波長が小
さくなるに従って放射損が大きくなっている。浸み込み損における割合は周波数によ
らずほぼ一定の割合であるが、およそ 200GHz のところに極小点、450GHz におい
て極大値をとる。これらの周波数における実効波長は、200GHz においておよそ
400µm、450GHz において 200µm である。これは、スロットアンテナ外の折り曲げ
部分の長さ 100µm にそれぞれ、λe/4、λe/2 と対応している。これは、アンテナ外の
折り曲げ部分がスタブとして作用していることによる。スタブについては、4章にて
詳しく述べるが、スロットアンテナからの浸み込み波と折り曲げ部分からの反射波が
互いに干渉し合うことによって等価的にスロットの両端が等価的にλe/4 のときは、透
過波と反射波が互いに弱め合うためにショートされて浸み込み損が抑圧されている
のに対し、λe/2 の時は互いに強め合っておりスロットの両端において等価的にオープ
ンになっていることから浸み込み損が大きくなっている。このことから、導体損およ
び浸み込み損は周波数にさらに高い発振周波数と高出力を得るためには、MIM リフ
レクター内への浸み込み損を抑圧すればよいことが分かる。これを解決する方法とし
45
Oscillation Frequency (THz)
2.4
Osc.limit
15nm
2.2
2.0
−Gd = −14mS/µm2
−24mS (S=1.3×1.3µm2)
Spacer Layer
30nm
1.8
1.6
1.4
45nm
1.2
5nm
1.0
0.8
0.6
60nm
0
10
20
30
Antenna Length
40
(µm)
60
50
図 2.11 Stub 型 MIM リフレクター構造を用いた際のスペーサー層厚毎に
おける発振周波数とアンテナ長依存特性
Output Power (µW)
100
15nm
600kA/cm 2
1.0µm 2
15nm
600kA/cm 2
1.7µm 2
10
15nm
400kA/cm 2
1.7µm 2
5nm
400kA/cm 2
1.7µm 2
1
0.5
1.5
2.0
1.0
Oscillation Frequency (THz)
2.5
図 2.12 Stub 型 MIM リフレクター構造を用いた際のスペーサー層厚,ピーク電流密
度毎における発振周波数と発振出力存特性
46
て、DC バイアスをかけるための電極のスリットの位置を最適化するか[2-11]、MIM
リフレクターの形状を最適することが考えられる。後の章において詳しく述べるが
MIM リフレクターを Stub 型にすることで、MIM リフレクター部分を等価的にショ
ートさせ MIM リフレクターにおける反射率を向上させることの出来る、Stub 型
MIM リフレクター構造を用いる方法を提案する。図 2.11 に Stub 型 MIM リフレク
ター構造を用いた場合のスペーサー層厚毎の発振周波数とアンテナ長の依存特性と、
図 2.12 にそれぞれの RTD 構造における発振周波数と発振出力特性の関係を示す。図
を見て分かるように MIM リフレクターへの浸み込み損を低減することにより、各ス
ペーサー層厚における発振周波数が上昇している上に 2.4THz までの発振が可能であ
り、出力特性のグラフを見ると 1THz において 70µW の発振出力が得られることが
分かる。
2.5 結論
本章では RTD 発振素子における THz 帯発振の可能性について考察してきた。
発振特性における解析において、RTD と外部共振回路であるスロットアンテナを集積
した発振素子全体としての発振特性の解析を行った。等価回路において RTD におけ
るすべての寄生パラメーターを考慮し、スロットアンテナの解析において3次元電磁
界シミュレーターを用いて実際のアンテナ形状について行った。解析結果により、
RTD は層構造の最適化により 3.1THz まで発振可能であり、スロットアンテナを集積
した実際の発振素子では、RTD 層構造の最適化で 1.3THz までの発振が可能であり、
発振出力は 1THz において 15µW で発振可能であることが分かった。また、MIM リ
フレクター内への浸み込み損は全体の損失の 38%程度を占めており、発振周波数及び
発振出力向上の妨げとなっている。MIM リフレクター構造の最適化により発振周波
数および発振出力のさらなる向上が見込め、後の章で詳しく述べるが MIM リフレク
ターを Stub 型にした Stub 型 MIM リフレクターを用いることで、2.4THz 間での発
振が可能であり、1THz における発振出力は 70µm と見積もられた。以上により、RTD
と外部共振回路を集積した発振素子全体としての発振特性解析を初めて行い、RTD 発
振素子が THz 帯で発振可能であることを示した。
47
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49
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