魅力的な女性像日本 VS アメリカ 今井智美 20 歳になってアメリカ留学を

魅力的な女性像日本 VS アメリカ
今井智美
20 歳になってアメリカ留学を経験し、その後アメリカで貧困対策の仕事をしてきた。日本に帰ってみ
ると、空港を出て直ぐ社会の雰囲気に違和感をもった。いわゆる“カルチャーショック”というものだ。
カルチャーショックは海外など、生まれ育った文化と離れ、新しい文化に自分のアイデンティティや文化
の違いを感じ、孤独感や憂鬱になってしまうことだ。しかしながら、長い間アメリカの文化に慣れた後、
日本に帰ってくると自分の祖国でありながらも“自分の居場所ではない”疎外感に襲われた。特に自分の
アイデンティティに葛藤が生まれたのは“女性としての有り方”であった。
日本、又はアメリカの国での求められる女性像は大きく違う。まずアメリカの場合、経済的にも精神的
にも自立した女性が求められる。好き、嫌いをはっきり言う事も意志をしっかり持つ、賢く凛とした女性
の基本だ。見た目は、成熟した女性がセクシーで魅力的とされる。タイトな服で体のシルエットを出し、
女性的な胸元を強調するような服装が多いアメリカから帰ってきてまず感じた日本女性は、若さや幼さ
を強調する振る舞いや見た目が目立つこと。アメリカで買った T シャツとボディコンスカートを日本で
着て、かきあげバングに大きなピアス、ハイヒールを履いて足を組んでいたら、
「胸あきすぎじゃない?
オトコ誘ってるの?」と日本人の女友だちから陰口されたことがあった。階段の下から見上げたら下着見
えそうなひらひらのスカートは“カワイイ”といわれるのに、なぜ胸元とお尻のラインを強調した服を着
るのは不快感を与えるのだろうか。若さを求め、かわいらしい見た目になれるメイクや服装。前髪はみな
流行りのアイドルのようだ。しばらくは日本の洋服を着たいとは思えず、アメリカで着ていた服を日本で
も着ていた。
また話し方もアメリカ生活で変わってしまったらしい。議論や主張をするのが普通になり、それを日本
に帰ってきてすぐに開かれた同窓会でやってしまった。もちろんその場は白け、自分の発言がその場の空
気を読まず地雷を踏んだのはすぐにわかった。本音と建前を使い分ける事を忘れてしまっていた。その場
の調和を保ち、対立することを避けて話をしていたのを壊してしまったらしい。それに加え、男性を立て
るために女性は男性よりも主張しない暗黙のルールがある。日本人女性は、まだまだ男性社会であること
から謙虚で控えめであることが魅力的でなる。さらに“モテ”のためには、あえて無知や従順さをアピー
ルし、男性の支配欲、保護欲を刺激する。無意識に男性よりも知性や経験が劣っていると、自分を卑下す
ることで男性の優位を示す。アメリカ帰り、日本に馴染めない日本人女性としての自分のアイデンティテ
ィが揺らいだ。
“わたしは何者だ”アメリカ人として振舞えず、そして日本人にも成りきれない孤独、歯がゆさがあっ
た。
アイデンティティ=“自分とはなにか”郷に入れば郷に従うように、人はその場に適応して生きていく
しかない。グローバルの今日、国境を超え、変化を受け入れて寛容に生きている人は少なくない。複数の
言語話し、複数の文化で生活する人を“外人”や国籍で“何人”なのかと問うてほしくない。それぞれの
生き方やルーツに耳を傾け、受け入れる事、私はせめてそれができる“寛容な女性”でありたい。