20-30 歳代における スポーツ実施と価値意識の関連の検討 藤原 琢太郎

2013 年度
修士論文
20-30 歳代における
スポーツ実施と価値意識の関連の検討
An Examination of relationship between Sport Participation
and Value Consciousness among 20’s and 30’s Japanese
早稲田大学
大学院スポーツ科学研究科
スポーツ科学専攻
スポーツビジネス研究領域
5012A048-8
藤原
琢太郎
Fujiwara,Takutaro
研究指導教員:
間野
義之
教授
目次
研究小史
1.
日本におけるスポーツ振興と成人のスポーツ実施率 ............................................. 2
2. スポーツ行動を規定する要因―スポーツの価値観―............................................... 4
3.スポーツの価値に関する研究 .................................................................................. 6
4.日本人におけるスポーツの価値 .............................................................................. 9
5.スポーツの価値の形成および変容に関する研究 ................................................... 10
6.スポーツの価値と実施に関する研究 ..................................................................... 12
7.
まとめ .................................................................................................................. 13
引用・参考文献 .......................................................................................................... 14
修士論文
1.
2.
緒言 ...................................................................................................................... 21
1-1.
背景と目的 .................................................................................................... 21
1-2.
分析枠組 ........................................................................................................ 24
1-3.
先行研究および仮説提示 ............................................................................... 26
方法 ...................................................................................................................... 28
2-1.
データ ........................................................................................................... 28
2-2.
調査項目 ........................................................................................................ 28
2-2-1.
過去 1 年間のスポーツ実施状況 .............................................................. 28
2-2-2.
人口統計学的要因 ................................................................................... 29
2-2-3.
スポーツの価値意識................................................................................ 29
2-3.
統計解析 ........................................................................................................ 30
3.
結果 ...................................................................................................................... 31
3-1.
結果① ........................................................................................................... 31
3-1-1. 「禁欲―即時」志向における対象者の特徴 .............................................. 31
3-1-2. 「禁欲―即時」志向とスポーツ実施の関連 .............................................. 32
3-2.
結果② ........................................................................................................... 33
3-2-1. 「遊戯―世俗」志向における対象者の特徴 ............................................... 33
3-2-2. 「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施の関連 ............................................... 34
3-3.
4.
結果③ ........................................................................................................... 35
3-3-1.
四類型における対象者の特徴 ................................................................. 35
3-3-2.
四類型とスポーツ実施の関連 ................................................................. 36
考察 ...................................................................................................................... 37
4-1.
考察① ........................................................................................................... 37
4-1-1. 「禁欲―即時」志向における対象者の特徴 .............................................. 37
4-1-2. 「禁欲―即時」志向とスポーツ実施の関連 .............................................. 38
4-2.
考察② ........................................................................................................... 39
4-2-1. 「遊戯―世俗」志向における対象者の特徴 ............................................... 39
4-2-2. 「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施の関連 ............................................... 39
4-3.
考察③ ........................................................................................................... 41
4-3-1.
四類型における対象者の特徴 ................................................................. 41
4-3-2.
四類型とスポーツ実施の関連 ................................................................. 41
5.
結論 ...................................................................................................................... 44
6.
研究の限界および今後の課題 ............................................................................... 46
引用・参考文献 .......................................................................................................... 47
研究小史
1
1.
日本におけるスポーツ振興と成人のスポーツ実施率
近年,スポーツ政策をめぐる議論が活発化し,平成22年にスポーツ立国戦略が策定され,
平成23年にスポーツ基本法が施行,翌年にはスポーツ基本法の規定に基づき,スポーツ基
本計画が策定された.文部科学省はスポーツ基本計画の政策課題の1つとして,ライフス
テージに応じたスポーツ活動の推進を掲げており,政策目標を「ライフステージに応じた
スポーツ活動を推進するため,国民の誰もが,それぞれの体力や年齢,技術,興味・目的
に応じて,いつでも,どこでも,いつまでも安全にスポーツに親しむことができる生涯ス
ポーツ社会の実現に向けた環境の整備を推進する.そうした取組を通して,できるかぎり
早期に,成人の週1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度),週3回以上のスポー
ツ実施率が3人に1人(30%程度)となることを目標とする.また、健康状態等によりスポ
ーツを実施することが困難な人の存在にも留意しつつ、成人のスポーツ未実施者(1年間
に一度もスポーツをしない者)の数がゼロに近づくことを目標とする.」と設定している.
内閣府の「体力・スポーツに関する世論調査」(2013)によると,日本における成人のス
ポーツ実施率は,週1回以上が平成12年では37.2%,平成18年では44.4%,平成25年では
47.4%と,緩やかな上昇傾向にある(図1).平成12年のスポーツ振興基本計画の「できる
限り早期に,成人の週1回以上のスポーツ実施率が2人に1人に(約50%) になることを目
指す.」という数値目標には近づいていたが,平成24年のスポーツ基本計画で掲げられた
新たな数値目標を達成するためには,一層のスポーツ振興推進に向けた支援が必要となっ
てくる.そこでスポーツ実施率向上に向けて,スポーツ実施を規定する要因を明らかにす
ることが求められる.
2
(%)
65
60
55
50
44.4
45
40
45.3
37.2
47.4
38.5
週1回以上
週3回以上
35
30
25
20
18.2
20.0
21.7
23.5
24.3
平成21年
平成25年
15
平成12年
図1
平成16年
平成18年
内閣府「体力・スポーツに関する世論調査」より作成
3
2.
スポーツ行動を規定する要因―スポーツの価値観―
従来,スポーツ行動について,スポーツ行動の有無といった行動結果に基づいた意識比
較について数多くの考察がなされてきたが,これらはスポーツをどう位置付けた結果とし
て行ったのか,また,行いたくなかったのかという行動を生み出す根源部分について考察
しきれていなかった.この問題を探る研究として,商品の動向を探るための消費者行動研
究の成果を応用した形が体育学の分野でも試みられ,運動行動者や運動生活を決定づける
要因として価値観が注目された(久湊,1993).これは,それぞれ持っている価値観の違
いによって,現れる行動パターンは変わってくるはずであり,その価値観の傾向を把握す
ることで現状行動と比較しながら次に現れてくる近い将来の行動を推定し,対処しようと
するものである.
見田ら(1992)によると,価値とは「主体の欲求を満たす,客体の性能」である.すな
わち,価値とは,第一に人々の欲求に最終的な基礎をおくものであって,なんらかの神秘
的なもの,超経験的なもののうちに基礎を持つものではない.第二に,主体の欲求の相関
概念であって,対象自体に内在しているものではない.第三に,価値は主体の属性ではな
く,「客体側の」属性である.第四に,価値とは客体それ自体ではなく,客体の「属性」
(性能,性質)である.つまり価値とは,主体(個人であれ集団であれ)の欲求を満たす
限りにおいて「のぞましきもの」the desirableではなく,「のぞましさ」desirabihty(そ
の程度)であると定義している.一方,価値意識とは,ある主体が世界の中のさまざまな
客体に対して下す価値判断の総体である.すなわち,それは客体の側の属性である「価値」
の主体側の対応物である.つまり,ある客体の属性を望ましいと考える主体の意識である
4
と定義している.このように定義された価値及び価値意識の概念に関する基本的な立場に
従い,スポ一ツの価値及び価値意識について考えてみると,スポーツの価値とは「主体に
対するスポーツの望ましい属性」と定義される.つまり,スポーツの価値とは個人または
集団の欲求を満たすことで望ましいとされるスポーツの性能・性質であり,スポーツの価
値意識とは,個人または集団がスポーツを望ましいと考える意識であるといえる.
スポーツ行動は,意識的であれ,無意識的であれ,価値の選択に基づく行動であり,行
為者の内部における価値選択のメカニズムを経て発現される行動である(上杉,1977).
つまり,スポーツの多様化は,個人や集団がスポーツを実施するにあたり,多様な価値選
択を行う結果あらわれる現象と考えることができる.このスポーツの多様化の問題を解決
するために,スポーツ実施者の価値選択過程を明らかにすることが必要であり(小泉ら,
2003),上杉(1987)は「スポーツ行動を分析する1つの方法は,行動の背後にあるスポ
ーツの価値意識を知ることである.」と述べている.また,価値観は評価基準である故,
現在および今後の運動の実施や継続性に大きく関与することが挙げられている(今野ら,
2007).
5
3.スポーツの価値に関する研究
Kenyon(1968)は社会心理学的視点から,現代のスポーツに実際に宿っている 6 つの
価値要素(健康・体力,社会的経験,眩暈の追求,美的経験,ストレス解消,競争・苦行)
を摘出しており,それぞれを現代のスポーツに内在する独立した副次的領域であるとして
いる.そして,川辺(1980)はこの研究をモデルに日本人のスポーツ観の内にある特徴と
考えられる要素として「健康・体力」「楽しさ」「ストレス解消」「勝利主義」「根性」
「集団主義」「権威主義」「心身二元論」の 8 つを挙げている.Webb(1969)は「遊び」
「相手を倒す」「フェアプレイ」から成るスポーツ態度専門度尺度を開発しているが,こ
れに対して,上杉(1987)は,価値判断は取捨選択の過程であると指摘し,この 3 つの価
値項目は共存できるスポーツ属性であると批判している.上杉は「日本人のスポーツ観(ス
ポーツ価値意識)とは何か」を明らかにすることを究極的な目標に据えながら,スポーツ
観に関する先行研究を参照し,「苦しみの受容」という観点からこれを体系化して,理念
型としての「苦しみのスポーツ価値意識」を構築し,スポーツの価値意識を「世俗内禁欲
型」「アゴン型」「レジャー型」「レクリエーション型」の四類型に分類している.さら
に,浅沼(1990)はこの四類型の分析枠組に基づき,体育専攻の学生を対象に調査した結
果,
「アゴン型」や「レジャー型」のパターンは明確に捉えられず,
「世俗内禁欲型」
「中庸
型」のパターンがみられたとしている.上杉の四類型のようなモデルは他にもあり,佐伯
(1986)の「スポーツ快楽主義―禁欲主義」の軸と「スポーツ目的論―スポーツ手段論」
の軸による類型モデル,荒井(1979)の個性化と組織化からみたスポーツ類型,小谷(1988)
の個人主義と集団主義の 4 極構造モデル,日下ら(1986)の H.J.アイゼンクの社会態度理
6
論に準拠した「娯楽指向―勝利指向」の軸と「スポーツ保守主義―スポーツ進歩主義」の軸
の 2 軸を直行させたスポーツの社会態度モデルなどがある.また,今村ら(1982)はパー
ソンズの AGIL 図式を援用して体系的把握を試み,作田の「充足価値」
「和合価値」
「献身
価値」「業績価値」を基準として「充足価値」を「普遍主義的かつ性質本位」,「和合価値」
を「個別主義的かつ性質本位」,
「献身価値」を「個別主義的かつ成就本位」,普遍主義的か
つ成就本位」とし,それぞれ遊戯要素,連帯,競争,身体活動というスポーツの構成要素
と対応すると述べている.
スポーツの価値意識に関する研究において,上杉や浅沼のほかに,永吉ら(1980)はス
ポーツ価値態度尺度を作成し,「性格形成因子」「苦しみ受容因子」「集団性因子」の 3
因子を抽出し,若者のスポーツ価値意識として,肉体的苦しさを乗り越えることによって
精神力を高め,人間形成を目指す「苦しさ受容・陶冶性」,スポーツは勝つことに意義があ
り,そのためにはコーチや集団に対する権威―服従の人間関係をも肯定しなければならな
いとする「勝利志向・権威主義」を明らかににしており、鳥居ら(1986)は,「陶冶性因
子」
「勝利主義・集団主義」
「運動・遊戯価値因子」の 3 因子を抽出した.さらに,佐藤ら
(1995)は「専門種目」と「スポーツ全般」に関する価値観および価値態度の調査を実施
し,専門種目では,肉体的苦しさに耐えることで精神力を高め,人間形成の道へ繋げる価
値を高く認め,スポーツ全般においては,楽しさや喜びといった価値を高く認めていると
する分析結果を得ている.亀田ら(2006)はスポーツ競技者の専門競技種目の価値観を測
定する競技価値観尺度の構成を目的に,競技を行うことで他者との相互関係やチーム・集
団への帰属意識を育む価値となる「社会性育成因子」,競技が好きで競技を行うこと自体が
7
目的であり価値となる「競技への愛着因子」,競技により自身を鍛えることが人間形成に寄
与する価値となる「修練による人間形成因子」,競技を行うことで,勝利の喜びを得て,自
尊心も満たし他者から認められる価値となる「勝利志向・承認希求因子」,競技を行うこと
で,調和や躍動の美を生むことや,生命や自然の尊さを感じることが価値となる「生命尊
重・美的因子」
,競技を行うことが,心身の健康を維持増進する価値となる「健康志向因子」
から構成されていることを明らかにした.これらのスポーツの価値に関する研究の多くは,
「基準としての価値」と「特性としての価値」のいずれの立場を取るかについて曖昧さを
残しているが,Lee et al.(2000;2008)は「基準としての価値」の立場を明確にし,英
国の 11 歳から 17 歳のスポーツを習慣的に行っている生徒を対象に「道徳」
「能力」
「地位」
の 3 因子からなる Youth Sport Values Questionnaire(YSVQ)を開発しており,山村ら
(2007)は YSVQ の日本語版を作成している.一方で,これらがスポーツそのものに内
在する意味・価値やスポーツ実施上の態度・価値意識に主に焦点を当てていることに対し
て,青木(2003)はスポーツ観について相対的・比較対象的な評価を行うことを目的とし,
「スポーツの価値性」
「スポーツの卓越性」
「スポーツの非低俗性」の 3 因子から成るスポ
ーツ観測定尺度を作成している.
このように,スポーツの価値に関する研究は散見されるが,佐伯,荒井,小谷,上杉,
日下らのモデルは,準拠枠がそれぞれ異なっており,同じ地平で論ずることはできないが,
スポーツの人間意味とそのゆくえを社会や文化との関連でとらえようと試みている点では
共通している(日下,1993).
8
4.日本人におけるスポーツの価値
日本人におけるスポーツの価値(スポーツ観)は,過度な精神主義,勝利主義,集団主
義などが特徴として語られてきた(木下,1970;中村,1981).鬼塚ら(1986)は,日本
と西ドイツの大学生を対象に調査した結果,スポーツに対する価値意識では,
「精神・鍛練
主義」「国家主義」
「全力主義」で日本の男女ともに高い値となり,スポーツにおける日本
的価値では,
「甘え主義」
「恥・義理意識」
「タテ社会主義」などで日本が高く,両国の差が
顕著であったとしている.一方で,多々納ら(1986)は,日韓のジュニア代表選手を対象
に調査し,全体として韓国が日本以上に「日本的」意識が強く,特に,甘え意識・タテ社
会意識・集団主義などが著しい結果であったと述べている.山下ら(1990)は,スポーツ
クラブに所属する北欧と日本の若者を対象にスポーツ観を比較調査し,北欧人は日本人に
比べて自己主張が強い傾向にあり,チームへの忠誠心は強く,また,権威主義的であった
とし,日本人は北欧人に比べてスポーツは楽しむための遊びであるとしながらも勝利志向
的・形式主義的な傾向が強かったと報告している.浅沼(1992)は,日本・中国・韓国の
体育専攻学生を対象に調査し,日本の体育専攻学生は中国・韓国と比較して「世俗内禁欲
型」の価値意識が一元的に支配的で,
「レジャー型」の価値意識が非常に低く,韓国では「世
俗内禁欲型」と「レジャー型」がパターン分類され,中国では日本と同様の価値意識の形
態を示していたが,日本よりも「手段性」志向が低く,
「自己目的性」志向が高い傾向であ
ったとしている. しかしながら,近代においてそのようなスポーツに関する文化や価値観
も大きく変わり,個人の目的に合わせてスポーツが実施され,スポーツすることに関する
価値観の多様化が定着している(中村,2005).
9
5.スポーツの価値の形成および変容に関する研究
吉井ら(1991)は,スポーツ観の形成には,中学の運動部活動に対する評価や高校の運
動部活動の活動特性や,その運動部での活動状況,性別などが関わってくることを明らか
にしており,鳥井ら(1987)は,永吉らの尺度を参考に,
「苦しさ受容・陶冶性」
「勝利志
向・権威主義」のスポーツ価値意識は,高校時代の運動クラブの強さによって規定される
ことを明らかにしている.また,山本ら(1981)は少年期において年齢が進むにつれてス
ポーツの勝利志向は強化されると述べている.
小椋ら(1977)は,中学生と成人を対象に勝利志向と加齢および他の関連要因の検証を
行なっており,北村ら(1981)は,スポーツに対する価値意識を大人と子供の間で比較分
析し,子供は感情や感覚に係わり,かつ事実確認が容易なスポーツ価値を支持するのに対
し,大人は人間相互の望ましさに係わる抽象的,理念的な特性を持つスポーツ価値を支持
していることを明らかにしている.浅沼(1992)は,上杉の四類型枠組を援用して,大学
生に調査を行った結果,加齢によって「世俗内禁欲型」が低下し,
「レジャー型」の上昇と
いう変容がみられたと報告しており,上杉は運動部経験が過去に遠ざかるほど即時志向を
強めると述べ,日下ら(1988)は加齢とともに「快楽主義」的スポーツ観の割合が高くな
る傾向を示している.逢坂ら(1996)はマスターズ陸上参加者を対象に,
「遊戯―世俗」志
向については,50 歳以上 60 歳未満よりも若くなるほど,あるいは年齢が高くなるほど遊
戯志向の割合が高くなる傾向があり,50 歳以上 60 歳未満では遊戯志向の割合が最も低く,
年齢が高くなるほど健康を目的としてスポーツを行う傾向が見られ,50 歳以上 60 歳未満
よりも若くなるほど,あるいは年齢が高くなるほど勝利を目指す傾向が見られたと報告し
10
ている. つまり,これらを踏まえると,少年期において,年齢を重ねるにつれて勝利志向
が強化され,それは運動部活動の特性や状況によって規定される.しかし,さらに年齢を
重ねるにつれて運動部経験が過去に遠ざかるほど,気軽にスポーツをしようとする考え方
や健康を目的としてスポーツを行う傾向が見られ,50 歳頃を機に再び勝利志向が強まって
いくと思われる.
11
6.スポーツに対する価値とスポーツ実施に関する研究
Webbと同様の方法を用いたMantel et al(1974)の組織的スポーツ参加者と非参加者の
スポーツに対する価値志向を比較した研究では,組織的スポーツ参加者は勝利やスキルを
重視する傾向が強いのに対し,非参加者はフェアプレイを重視する傾向が強いことが明ら
かにされており,これと同様の結果もいくつか報告されている(Maloney,T.et al,1972;
Kidd,T.et al,1975).我が国においては,吉井ら(1991)がスポーツ観と運動者行動の
関連において,業績志向が強く,集団志向が強い生徒ほど運動部活動の継続がなされ,遊
戯志向が強い生徒ほど運動部活動を継続しなかったり,所属しないと報告しており,山本
ら(1992)は運動部所属の学生においてスポーツ継続の意図をもつ群は継続意図をもたな
い群に反して,運動部参加の重要な理由としてスポーツ的達成やその他スポーツにまつわ
る二次的な価値を重視していることを明らかにしている.また,浅沼ら(1991)は,体育
専攻学生は世俗内禁欲型が多く,相対的に世俗内禁欲,アゴン,レクリエーション,レジ
ャータイプの順に競技動機が高い傾向を示している.しかし,筒井ら(1995)はスポーツ
に積極的な参加を希望する者は勝利志向性もレクリエーション志向性も高いのに対し,現
在と同程度の参加を希望する者はレクリエーション志向性が高く,勝利志向性は低いこと
を明らかにし,さらに,消極的に参加を希望する者は勝利志向性が高く,レクリエーショ
ン性は低い結果であったと述べている.他に,小泉ら(2003)はスポーツに関する価値に
ついては,大学入学後スポーツを行った学生もそうでない学生も同様の価値意識を持って
いるが,スポーツを行った学生の方がスポーツを行わなかった学生より平均得点について
は高い値を示したと報告している.
12
7.
まとめ
これまで,スポーツの価値に関する研究は数多くの研究者によってなされてきた.しか
しながら,スポーツ実施との関連について検討した研究は少ないと思われる.また,生徒
や学生を対象としたものが多く,一般の成人を対象にしたものは見受けられない.加齢に
よってスポーツの価値意識は変容することが示唆されており,年齢・世代は価値意識の大
きな要因と考えられていることから,スポーツ実施と価値意識の関連において検討する際
に考慮する必要がある.
13
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筒井清次郎(1995)大学生のスポーツ参加・継続意識を規定する心理学的要因について,
愛知教育大学研究報告,芸術・保健体育・家政・技術科学 44,25-36
19
修士論文
20
1.
緒言
1-1.
背景と目的
近年,スポーツ政策をめぐる議論が活発化し,平成22年にスポーツ立国戦略が策定され,
平成23年にスポーツ基本法が施行,翌年にはスポーツ基本法の規定に基づき,スポーツ基
本計画が策定された.文部科学省はスポーツ基本計画の政策課題の1つとして,
「成人の週
1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度),週3回以上のスポーツ実施率が3人に
1人(30%程度)となることを目標とする.また、健康状態等によりスポーツを実施する
ことが困難な人の存在にも留意しつつ、成人のスポーツ未実施者(1年間に一度もスポー
ツをしない者)の数がゼロに近づくことを目標とする.」と設定している.内閣府の「体
力・スポーツに関する世論調査」(2013)によると,日本における成人のスポーツ実施率
は,週1回以上が平成12年では37.2%,平成18年では44.4%,平成25年では47.4%と,緩や
かな上昇傾向にある.平成12年のスポーツ振興基本計画の「できる限り早期に,成人の週
1回以上のスポーツ実施率が2人に1人に(約50%) になることを目指す.」という数値目
標には近づいていたが,平成24年のスポーツ基本計画で掲げられた新たな数値目標を達成
するためには,一層のスポーツ振興推進に向けた支援が必要となってくる.そこでスポー
ツ実施率向上に向けて,スポーツ実施を規定する要因を明らかにすることが求められる.
久湊ら(1993)は従来,スポーツ行動について,スポーツ行動の有無といった行動結果
に基づいた意識比較について数多くの考察がなされてきたが,これらはスポーツをどう位
置付けた結果として行ったのか,また,行いたくなかったのかという行動を生み出す根源
部分について考察しきれていなかったと指摘し,この問題を探る研究として,商品の動向
21
を探るための消費者行動研究の成果を応用した形が体育学の分野でも試みられ,運動行動
者や運動生活を決定づける要因として価値観が注目されたと述べている.スポーツ行動は
意識的であれ,無意識的であれ,価値の選択に基づく行動であり,行為者の内部における
価値選択のメカニズムを経て発現される行動である(上杉,1977).また,価値観は評価
基準である故,現在および今後の運動の実施や継続性に大きく関与することが挙げられて
いる(今野ら,2007)ことから,その人のスポーツに対する価値を知ることはスポーツ行
動を分析する方法の一つであるといえる.
これまで,スポーツの価値に関する研究は,Kenyon(1968),川辺(1980),Webb(1969),
小谷(1988),亀田ら(2006),Lee et al.(2000,2008),上杉(1987),浅沼(1990),
今村ら(1982)
,永吉ら(1980),鳥居ら(1986)
,佐伯(1986),荒井(1979),日下
ら(1986),青木(2003)など多くの研究者によってなされてきたが,これらはスポーツ
実施との関連についてまでは触れていない.一方で,小泉ら(2003)はスポーツ実施と価
値意識との関連について,スポーツ実施者と非実施者は同様の価値意識を持っていること
を明らかにし,スポーツは健康・体力づくりの手段として,また,スポーツの技術も楽し
みながら修得できるものと考えていることを示唆している.しかし,上杉(1987)は健康
や体力づくりなどスポーツを手段的に意義づける「世俗」志向と,スポーツそのものを楽
しむとする自己目的的な「遊戯」志向は一対になることを裏付けており,また,スポーツ
の多様化の問題を解決するために,スポーツの多様化は個人や集団がスポーツを実施する
にあたり,多様な価値選択を行う結果あらわれる現象と捉え,日本人の行動がその目的・
方法などにおいて多様化している現状を整理し,分析枠組みとしてスポーツ価値意識の四
22
類型枠組を構築している.このモデルは佐伯,荒井,小谷,日下らなどのモデルと準拠枠
がそれぞれ異なるが,スポーツの人間意味とそのゆくえを社会や文化との関連でとらえよ
うと試みている点では共通している(日下,1993)
.さらに,上杉のモデルは大学生を対
象としているが,一般のスポーツ参加者のスポーツ行動が多様化する現状をスポーツ価値
意識の分析によって明らかにできることを示している.逢坂ら(1996)は,上杉のスポー
ツ価値意識の四類型を用いて年齢によるスポーツ価値意識の違いを明らかにしているが,
中高年者を対象としたものであり,20-30 歳代といった若年層のサンプル数は少ない.ま
た,スポーツ基本計画(2012)では若者のスポーツ参加機会の拡充を課題の一つとしてい
ることから,20-30 歳代におけるスポーツの価値意識を知ることは,スポーツに関する政
策立案の一助となるであろう.
一方,これまでスポーツ行動を規定する要因を探求した研究に関して,徳永ら(1985)
はスポーツ実施を規定する要因を「基礎的諸要因」「社会的・経済的・文化的要因」「スポ
ーツ関連要因」
「身体的要因」
「心理的要因」の 5 要因にまとめているが,スポーツの価値
意識は動機・態度などとともに,心理的要因の一つの説明変数に過ぎず,スポーツに対す
る好嫌や意見・態度の実態を報告する程度であり,十分に検討されているとはいえない.
若者のスポーツ参加機会の拡充への政策立案のためにはスポーツ行動の背後にある価値
意識を知ることは重要である.また,スポーツに対する価値観の多様化が定着している(中
村,2005)ため,価値意識の違いがスポーツ行動へ及ぼす影響を明らかにすることが必要
である.そこで本研究では,20-30 歳代を対象に,上杉が構築したスポーツの価値意識の
四類型枠組を用いて,スポーツ実施との関連を明らかにすることを目的とした.
23
1-2.
分析枠組
上杉(1987)は,一般のスポーツ参加者のスポーツ行動が多様化する現状をスポーツ価
値意識の分析をすることによって明らかにできることを示していることから,本研究では
上杉が構築したスポーツ価値意識の四類型を分析枠組みとして援用した.
まず,スポーツへの取り組み方に関する軸の両極には「禁欲性志向」と「即時性志向」
が対置する.「禁欲性志向」は,卓越性を求めて自己の能力を高めようとする意識であり,
記録達成や勝利獲得の欲求を充足するためにたちどころの欲求充足(厳しい鍛錬を避けよ
うとする欲求)を抑えて鍛錬を積み重ねようとする意識である.これに対して「即時性志
向」は,勝利の獲得や記録の達成という評価にとらわれずに,現在の自己の能力でできる
範囲で気軽に試合を楽しんだり,身体を動かす楽しさを味わおうとする意識であり,スポ
ーツ活動への欲求を即時的に充足する志向である.
一方,スポーツの意義づけ方に関する軸の両極には「世俗志向」と「遊戯志向」が対置
する.
「世俗志向」は健康増進や性格育成などスポーツの果たす諸機能によってスポーツを
意義づけようとする意識であり,スポーツを手段的に意義づける志向である.これに対し
て「遊戯志向」は,スポーツを何かの目的の手段と特定しないで,スポーツを行うことそ
れ自体を目的とする意識であり,スポーツを自己目的的に意義づけようとする志向である.
上杉は「禁欲性志向」と「即時性志向」,「世俗性志向」と「遊戯性志向」の二軸の妥当
性を検証し,それぞれ一対のものであることを裏付けた.これは「禁欲性志向―即時性志
向」
,
「世俗性志向―遊戯性志向」
(以下,
「禁欲―即時」志向,
「世俗―遊戯」志向と表記す
る)のそれぞれ二軸を,独立した軸として分析枠組に用いることができることを示してお
24
り,二つの変数を直交的にとらえたスポーツの価値意識の四類型モデルを構築した(図 1)
.
世俗性
即
時
性
レクリエーション型
即時的なスポーツ欲求の充足過程を通し
て何らかの世俗的目的を達成しようとす
るスポーツ価値意識
世俗内禁欲型
禁欲的鍛錬を経たスポーツ欲求の充足過
程を通して何らかの世俗的目的を達成し
ようとするスポーツ価値意識
レジャー型
即時的にスポーツ欲求そのものを充足し
ようとするスポーツ価値意識
アゴン型
禁欲的鍛錬を経てスポーツ欲求そのもの
を充足しようとするスポーツ価値意識
遊戯性
図1
スポーツ価値意識の四類型(上杉,1987)
25
禁
欲
性
1-3.
先行研究および仮説提示
まず,「禁欲―即時」志向に関して,吉井ら(1991)は,スポーツ観と運動者行動の関
連において,業績志向が強く,集団志向が強い生徒ほど運動部活動の継続がなされ,遊戯
志向が強い生徒ほど運動部活動を継続しない,あるいは所属しないと報告しており,山本
ら(1992)は,運動部所属の学生においてスポーツ継続の意図をもつ群は継続意図をもた
ない群に反して,運動部参加の重要な理由としてスポーツ的達成やその他スポーツにまつ
わる二次的な価値を重視していることを明らかにしている.したがって,自分の力を伸ば
すために,厳しい練習をして自分を鍛えようとする「禁欲」志向の者においても,継続的・
定期的にスポーツを実施していると考えられる.
一方,「世俗―遊戯」志向に関して,丹羽(1982)はホイジンガに依拠しながら,遊戯
性の中心は「自己目的的」な行為にあるとしており,北村(2000)は,この自己目的性は
スポーツのリベラルアーツたるゆえんであり,リベラルアーツとしてのスポーツが提供す
る楽しさや解放感,感動は“快”価値実現行為として位置づけられ,スポーツや運動の継
続へのエネルギーとなるのに対し,
「健康のため」といった考え方は,スポーツを手段とし
て捉えており,この時のスポーツの価値基盤は“利”価値に置かれ,その人がスポーツを
実践するなかで“快”価値を発見できなければ,その人にとって,スポーツ実践は健康の
ためにしなければならないスポーツとなり,自己目的性を失ってしまうと述べている.ま
た,山内(1990)は,外的報酬は内的報酬型動機づけを低下させ,その結果,スポーツを
継続していこうとすることに対してはマイナスの効果を及ぼすことが予想され,短期的な
ものになることも考えられると述べている.したがって,スポーツを自己目的的に意義づ
26
けている「遊戯」志向の者は,スポーツを手段的にとらえている「世俗」志向の者に比べ
て,定期的にスポーツを実施していると考えられる.
最後に,四類型においては,上記より「禁欲」かつ「遊戯」志向である「アゴン型」の
者は定期的にスポーツを実施しており,
「即時」かつ「世俗」志向である「レクリエーショ
ン型」の者は定期的にスポーツを実施していないと考えられる.
以上より,作業仮説は以下のとおりに設定した.
①「禁欲」志向の者は「即時」志向の者より,定期的にスポーツを実施している者が多い
②「遊戯」志向の者は「世俗」志向の者より,定期的にスポーツを実施している者が多い
③ 定期的にスポーツを実施している者は,
「アゴン型」が多く,
「レクリエーション型」が
少ない
27
2.
方法
2-1.
データ
本研究では『ライフステージに応じたスポーツ活動の推進のための調査研究
20 代・30
代全国調査』
(日本レクリエーション協会)の二次分析を行った.本データは全国の 20 歳
代男女各 300 名,30 歳代男女各 300 名の計 1200 名を対象として,階層化二段無作為抽出
法(全国市区町村を 11 地区に分類し,さらに都市規模によって層化)による抽出を行い,
訪問留置法による質問紙調査を実施している.回答者数が 1200 名となるまで実施され,
調査期間は 2011 年 8 月 17 日~2011 年 9 月 4 日であった.
2-2.
2-2-1.
調査項目
過去1年間のスポーツ実施状況
過去1年間のスポーツ実施状況は,過去1年間に行ったスポーツ種目および個々の種目の
実施頻度である.実施頻度は,①スポーツは行わなかった,②年に1~3日,③3か月に1~
2日(年4日~11日),④月に1~3日(年12日~50日),⑤週に1~2日(年51日~150日),
⑥週に3日以上(年151日以上)の6段階で調査し,①をスポーツ非実施群(以下,非実施
群),②~④を不定期的スポーツ実施群(以下,不定期群),⑤~⑥を定期的スポーツ実
施群(以下,定期群)として分類した.
28
2-2-2.
人口統計学的要因
人口統計学的要因は性別,年齢,婚姻状況(配偶者の有無),扶養中の子どもの有無,
学歴,職業,前年の世帯年収に関するデータを用いた.
2-2-3.
スポーツの価値意識
スポーツの価値意識は上杉が作成した質問項目内容を参照している(表1).それぞれ
の軸に対置する二つの志向をA,Bとし,「Aに近い」「どちらかといえばAに近い」「ど
ちらかといえばBに近い」「Bに近い」の4段階尺度により回答を求めている.
表 1 スポーツの価値意識に関する質問項目
「禁欲―即時」志向に関する質問項目
A.自分の力を伸ばすために、厳しい練習をして自分を鍛えようとするやり方 …禁欲性
B.今の自分の力に合わせて、気軽にスポーツをしようとするやり方
…即時性
「遊戯―世俗」志向に関する質問項目
A.スポーツは、そのものの面白さを味わうことが大切である
…遊戯性
B.スポーツは、何かの目的(健康増進、仲間づくりなど)をもって行うこと
が大切である
…世俗性
29
2-3.
統計解析
本研究では,全回答者1200名のうち,過去1年間のスポーツ実施状況,スポーツ価値意
識についての設問が完全回答でなかった調査票を除外した結果,有効回答数は1192通とな
り,有効回答率は99.3%であった.
分析手順は以下の通りである.
1)「禁欲―即時」志向とスポーツ実施頻度(非実施群,不定期群,定期群)をクロス集
計し,カイ2乗検定および残差分析を行った.
2)「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施頻度(非実施群,不定期群,定期群)をクロス集
計し,カイ2乗検定および残差分析を行った.
3)スポーツ価値意識の四類型(アゴン型,世俗内禁欲型,レジャー型,レクリエーショ
ン型)とスポーツ実施頻度(非実施群,不定期群,定期群)をクロス集計し,カイ2乗検
定および残差分析を行った.
なお,統計解析パッケージはIBM SPSS Statistics21を使用した.
30
3.
結果
3-1.
3-1-1.
結果①
「禁欲―即時」志向における対象者の特徴
「禁欲―即時」志向における対象者の特徴を表 2 に示した.全体で「禁欲」志向が 253
人,
「即時」志向が 939 人であった.性別において,
「禁欲」志向は「男性」
(71.9%)が多
く,
「即時」志向は「女性」
(54.4%)が多かった.また,職業において「禁欲」志向は「勤
め人」(58.5%)が多く,「即時」志向は「専業主婦・主夫」(16.7%)が多かった.
表2 「禁欲―即時」志向における対象者の特徴
禁欲性
即時性
n
%
n
%
253
100.0
939
100.0
全体
性別
男性
女性
年齢
20-24歳
25-29歳
30-34歳
35-39歳
婚姻状況
配偶者有
配偶者無
子どもの有無
いる
いない
学歴
中学・高校卒
専門・短大卒
大学・大学院卒
職業
自営業・家族従業者
勤め人
専業主婦・主夫
パート・アルバイト
学生
無職
世帯収入
~299万円
300~499万円
500~699万円
700~999万円
1000万円~
182
71
71.9
28.1
428
511
45.6
54.4
58
60
66
69
22.9
23.7
26.1
27.3
189
219
203
328
20.1
23.3
21.6
34.9
144
109
56.9
43.1
530
408
56.5
43.5
128
125
50.6
49.4
463
473
49.5
50.5
119
61
73
47.0
24.1
28.9
403
267
264
43.1
28.6
28.3
34
148
16
28
24
3
13.4
58.5
6.3
11.1
9.5
1.2
95
477
157
124
60
25
10.1
50.9
16.7
13.2
6.4
2.7
47
86
47
16
10
22.8
41.7
22.8
7.8
4.9
191
285
167
55
24
26.5
39.5
23.1
7.6
3.3
31
3.1.2.
「禁欲―即時」志向とスポーツ実施の関連
「禁欲―即時」志向とスポーツ実施の関連をカイ 2 乗検定によって検討した結果(表 3),
有意差が認められた(χ²(2)=15.451,p<0.001).残差分析を行なった結果,「禁欲」志向
では「定期的スポーツ実施群」が有意に多く,
「即時」志向では「スポーツ非実施群」が有
意に多かった.
全体
スポーツ実施状況
非実施群
不定期群
定期群
表3 「禁欲―即時」志向とスポーツ実施の関連
禁欲性
即時性
n
%
n
%
253
100.0
939
100.0
χ ²
15.451***
23
87
143
9.1
34.4
56.5
-++
注1)+,-は調整済み残差が1.96以上で有意であることを示す
2)++,--は調整済み残差が2.58以上で有意であることを示す
32
152
376
411
16.2
40.0
43.8
++
--
* p<.05,** p<.01,*** p<.001
+ p<.05,++ p<.01
- p<.05,-- p<.01
3-2.
3-2-1.
結果②
「遊戯―世俗」志向における対象者の特徴
「遊戯―世俗」志向における対象者の特徴を表 4 に示した.全体で「遊戯」志向が 703
人,
「世俗」志向が 489 人であった.性別において「遊戯」志向は「男性」(54.9%)が多
く,
「世俗」志向は「女性」
(54.2%)が多かった.
表4 「禁欲―即時」志向における対象者の特徴
遊戯性
世俗性
n
%
n
%
703
100.0
489
100.0
全体
性別
男性
女性
年齢
20-24歳
25-29歳
30-34歳
35-39歳
婚姻状況
配偶者有
配偶者無
子どもの有無
いる
いない
学歴
中学・高校卒
専門・短大卒
大学・大学院卒
職業
自営業・家族従業者
勤め人
専業主婦・主夫
パート・アルバイト
学生
無職
世帯収入
~299万円
300~499万円
500~699万円
700~999万円
1000万円~
386
317
54.9
45.1
224
265
45.8
54.2
145
164
148
246
23.3
23.3
21.1
35.0
102
115
121
151
20.9
23.5
24.7
30.9
403
300
57.3
42.7
271
217
55.5
44.5
356
345
50.8
49.2
235
253
48.2
51.8
309
185
206
44.1
26.4
29.4
213
143
131
43.7
29.4
26.9
78
384
93
85
49
13
11.1
54.7
13.2
12.1
7.0
1.9
51
241
80
67
35
15
10.4
49.3
16.4
13.7
7.2
3.1
135
233
131
41
21
24.1
41.5
23.4
7.3
3.7
103
138
83
30
13
28.1
37.6
22.6
8.2
3.5
33
3-2-2.
「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施の関連
「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施の関連をカイ 2 乗検定によって検討した結果(表 5),
有意差が認められなかった(χ²(2)=0.045,n.s.).
全体
スポーツ実施状況
非実施群
不定期群
定期群
表5 「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施の関連
遊戯性
世俗性
n
%
n
%
703
100.0
489
100.0
χ ²
0.045
104
274
325
14.8
39.0
46.2
注1)+,-は調整済み残差が1.96以上で有意であることを示す
2)++,--は調整済み残差が2.58以上で有意であることを示す
34
71
189
229
14.5
38.7
46.8
* p<.05,** p<.01,*** p<.001
+ p<.05,++ p<.01
- p<.05,-- p<.01
3-3.
3-3-1.
結果③
四類型における対象者の特徴
四類型における対象者の特徴を表 6 に示した.全体で「アゴン型」が 165 人,「世俗内
禁欲型」が 88 人,「レジャー型」が 538 人,「レクリエーション型」が 401 人であった.
性別において「男性」は「アゴン型」(72.7%)と「世俗内禁欲型」(70.5%)が多く,「女
性」は「レクリエーション型」
(59.6%)が多かった.また,職業において「専業主婦・主
夫」が「アゴン型」
(7.3%)と「世俗内禁欲型」
(4.5%)で少なく,
「レクリエーション型」
(19.0%)で多かった.
表6
アゴン型
n
全体
性別
男性
女性
年齢
20-24歳
25-29歳
30-34歳
35-39歳
婚姻状況
配偶者有
配偶者無
子どもの有無
いる
いない
学歴
中学・高校卒
専門・短大卒
大学・大学院卒
職業
自営業・家族従業者
勤め人
専業主婦・主夫
パート・アルバイト
学生
無職
世帯収入
~299万円
300~499万円
500~699万円
700~999万円
1000万円~
四類型における対象者の特徴
世俗内禁欲型
n
%
88
100.0
165
%
100.0
120
45
72.7
27.3
62
26
39
38
39
49
23.6
23.0
23.6
29.7
97
68
レジャー型
レクリエーション型
n
%
401
100.0
538
%
100.0
70.5
29.5
266
272
49.4
50.6
162
239
40.4
59.6
19
22
27
20
21.6
25.0
30.7
22.7
106
126
109
197
19.7
23.4
20.3
36.6
83
93
94
131
20.7
23.2
23.4
32.7
58.8
41.2
47
41
53.4
46.6
306
232
56.9
43.1
224
176
56.0
44.0
92
73
55.8
44.2
36
52
40.9
59.1
264
272
49.3
50.7
199
201
49.8
50.3
84
36
45
50.9
21.8
27.3
35
25
28
39.8
28.4
31.8
225
149
161
42.1
27.9
30.1
178
118
103
44.6
29.6
25.8
20
98
12
17
17
1
12.1
59.4
7.3
10.3
10.3
0.6
14
50
4
11
7
2
15.9
56.8
4.5
12.5
8.0
2.3
58
286
81
68
32
12
10.8
53.3
15.1
12.7
6.0
2.2
37
11
76
56
28
13
9.2
47.6
19.0
14.0
7.0
3.2
27
61
32
8
6
20.1
45.5
23.9
6.0
4.5
20
25
15
8
4
27.8
34.7
20.8
11.1
5.6
108
172
99
33
15
25.3
40.3
23.2
7.7
3.5
83
113
68
22
9
28.1
38.3
23.1
7.5
3.1
35
n
3-3-2.
四類型とスポーツ実施の関連
四類型とスポーツ実施の関連をカイ 2 乗検定によって検討した結果(表 7),有意差が認
められた(χ²(6)=17.472,p<0.01)
.残差分析を行なった結果,「アゴン型」では「定期
的スポーツ実施群」が有意に多く,
「スポーツ非実施群」が有意に少なかった.「世俗内禁
欲型」では「定期的スポーツ実施群」が有意に多く,
「レジャー型」は「スポーツ非実施群」
が有意に多かった.
アゴン型
n
全体
スポーツ実施状況
非実施群
不定期群
定期群
165
%
100.0
表7 四類型とスポーツ実施の関連
世俗内禁欲型
レジャー型
n
%
n
%
88
100.0
538
100.0
レクリエーション型
n
%
401
100.0
χ ²
17.472**
13
61
91
7.9 -37.0
55.2 +
10
26
52
11.4
29.5
59.1 +
注1)+,-は調整済み残差が1.96以上で有意であることを示す
2)++,--は調整済み残差が2.58以上で有意であることを示す
91
213
234
16.9 +
39.6
43.5
61
163
177
15.2
40.6
44.1
* p<.05,** p<.01,*** p<.001
+ p<.05,++ p<.01
- p<.05,-- p<.01
36
4.
考察
4-1.
4-1-1.
考察①
「禁欲―即時」志向における対象者の特徴
「禁欲―即時」志向における対象者の特徴は,全体で「禁欲」志向が 253 人,「即時」
志向が 939 人であった.上杉(1987)は運動部経験が過去に遠ざかるほど即時志向を強め
ると述べており,日下ら(1988)は加齢とともに割合が高くなる傾向を示していることか
ら,
「即時」志向の割合が高い結果になったといえる.
次に,性別において「禁欲」志向は「男性」(71.9%)が多く,「即時」志向は「女性」
(54.4%)が多かった.日下ら(1988)は「勝利―快楽」主義的スポーツ観(日下らはこ
の軸と上杉の「禁欲―即時」志向の軸は重なり合うことを述べている)において,「快楽」
主義的スポーツ観は男子よりも女子の割合が多かったと報告しており,本研究はこれを支
持する結果となった.また,職業において「禁欲」志向は「勤め人」
(58.5%)が多く,
「即
時」志向は「専業主婦・主夫」
(16.7%)が多かった理由としては性別の割合が影響してい
ると考えられる.
37
4-1-2.
「禁欲―即時」志向とスポーツ実施の関連
「禁欲―即時」志向とスポーツ実施の関連をカイ二乗検定によって検討した結果,有意
差が認められ,さらに残差分析を行なった結果,
「禁欲」志向では「定期的スポーツ実施群」
が有意に多く,
「即時」志向では「スポーツ非実施群」が有意に多かった.したがって,
「禁
欲」志向の者は,
「即時」志向の者より定期的にスポーツを実施している者が多いという仮
説①を支持する結果であったといえる.
先行研究(吉井ら,1991;山本,1992)では,生徒や学生を対象としてスポーツの継続
意図との関連について明らかにしているが,本研究より一般成人においても同様の結果が
得られた. Duta(1988)は,新しい技能や技を獲得すること,あるいは以前できなかっ
たことができるようになることを目標とする課題志向性の高い人は,長い間運動を継続し
て行なっていることを報告しており,工藤ら(1993)は,課題志向性の場合,運動に対す
る自信に影響を与えていると考えられる有能さの認知の高低に関わらず一定の継続意思を
示している.つまり,本研究は,自分の力を伸ばすために,厳しい練習をして自分を鍛え
ようとする「禁欲」志向が課題志向性と同様に,定期的なスポーツ実施を規定する要因で
あることを示唆する結果であったといえる.
一方で、
「即時」志向においてスポーツ非実施群が有意に多い結果であったため,
「即時」
志向は「禁欲」志向と比べて,スポーツ実施にネガティブに関連していることが示唆され
たといえる.
38
4-2.
4-2-1.
考察②
「遊戯―世俗」志向における対象者の特徴
「遊戯―世俗」志向における対象者の特徴は,全体で「遊戯」志向が 703 人,「世俗」
志向が 489 人であり,「禁欲―即時」志向の軸と比べて偏りがみられなかった,逢坂ら
(1996)は,
「遊戯―世俗」志向について,50 歳以上 60 歳未満よりも若くなるほど,あ
るいは年齢が高くなるほど遊戯志向の割合が高くなる傾向があったと示しており,本研究
では 20 代と 30 代において大きな差はみられなかったものの,全体では「遊戯」志向の割
合が高い結果であった.
次に,性別では「遊戯」志向は「男性」
(54.9%)が多く,
「世俗」志向は「女性」
(54.2%)
が多かった.内閣府の体力・スポーツに関する世論調査(2013)によると,運動・スポー
ツを行った理由として,1 位は男女ともに「健康・体力つくりのため」と回答しているが,
2 位では男性が「楽しみ,気晴らしとして」であるのに対して,女性は「運動不足を感じ
るから」であり,他にも「美容や肥満解消のため」の割合が高く占めていることから,本
研究においてこのような結果が得られたと考えられる.
4-2-2.
「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施の関連
「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施の関連をカイ二乗検定によって検討した結果,有意
差が認められなかった.したがって,
「遊戯」志向の者は「世俗」志向の者よりも定期的に
スポーツを実施している者が多いという仮説②は支持されなかった.
先述したように,遊戯性あるいは自己目的的な行為は,スポーツが提供する楽しさや解
39
放感,感動といった“快”価値実現行為として位置づけ,スポーツや運動の継続へのエネ
ルギーとなるのに対し,「健康のため」といった考え方は,スポーツを手段として捉えて
おり,この時のスポーツの価値基盤は“利”価値に置かれ,その人がスポーツを実践する
なかで“快”価値を発見できなければ,その人にとって,スポーツ実践は健康のためにし
なければならないスポーツとなり,自己目的性を失ってしまう.つまり,
“利”という外的
報酬は“快”という内的報酬型動機づけを低下させ,その結果,スポーツを継続していこ
うとすることに対してはマイナスの効果を及ぼし,短期的なものになることが予想される.
一方で,山本ら(1992)はスポーツの継続理由にスポーツのもつ手段的価値が重要である
と述べており,Scanlan et al.(1993a;1993b)は,スポーツ傾倒モデルを提唱し、スポ
ーツ傾倒に対する予測因子として楽しさのほかに,「他にやりがいのある活動」「個人的
な投資」「社会的な制約」「参加する利点」があると仮定する加算的モデルを想定した.
つまり,スポーツ参加によって友人や家族などと楽しい関係を育んだり,体調管理ができ
たりするといった参加の“利”価値はスポーツ実施を促す要因であると考えられる.また,
スポーツ傾倒モデルでは,スポーツ参加への欲求や意志とその背後にある感情的な楽しさ
というものを重視している(久崎ら,2012)ことから“利”価値を重視している者におい
ても中核に“快”価値が存在していると思われる.同様に,日野ら(2011)は「手段的価
値」と「目的的価値」の関係性は「目的的価値」ありきの「手段的価値」で成り立ってい
ると述べている.したがって,“利”価値を重視する「世俗」志向においても,“快”価
値を重視する「遊戯」志向と同様に,スポーツや運動の継続へのエネルギーとなる“快”
価値が中核に存在するため,有意差が認められなかったと解釈することができる.
40
4-3.
4-3-1.
考察③
四類型における対象者の特徴
四類型における対象者の特徴は,全体で「アゴン型」が 165 人(13.8%),「世俗内禁欲
型」が 88 人(7.4%)
,「レジャー型」が 538 人(45.1%),「レクリエーション型」が 401
人(33.6%)であった.上杉(1987)が大学生に行った調査では,「アゴン型」(21.0%),
「世俗内禁欲型」(14.8%)
,「レジャー型」(39.4%),「レクリエーション型」(24.8%)で
あり,本研究の結果と合わせると,年齢を重ねるにつれて「禁欲」志向から「即時」志向
へと推移することが示唆され,①で述べた上杉(1987),日下ら(1988)を支持する結果
となった.
「遊戯―世俗」志向の軸においては,あまり変化が見られなかったため,②で述
べた逢坂ら(1996)を支持しない結果となった.しかし,逢坂らは中高年者を対象として
いるため,本研究の結果は 20・30 歳代の特徴を示したものといえる.
性別において,「男性」は「アゴン型」(72.7%)と「世俗内禁欲型」(70.5%)が多く,
「女性」は「レクリエーション型」
(59.6%)が多かった.また,職業では「専業主婦・主
夫」が「アゴン型」
(7.3%)と「世俗内禁欲型」
(4.5%)に少なく,
「レクリエーション型」
(19.0%)に多かった.
「アゴン型」
「世俗内禁欲型」は「禁欲」志向であることから,こ
の結果の考察に関しては「禁欲―即時」志向における対象者にて先述したとおりである.
4-3-2.
四類型とスポーツ実施の関連
四類型とスポーツ実施の関連をカイ二乗検定によって検討した結果,有意差が認められ,
さらに残差分析を行なった結果,
「アゴン型」では「定期的スポーツ実施群」が有意に多く,
41
「スポーツ非実施群」が有意に少なかった.そして「世俗内禁欲型」では「定期的スポー
ツ実施群」が有意に多く,
「レジャー型」は「スポーツ非実施群」が有意に多かった.した
がって,定期的にスポーツを実施している者は「アゴン型」が多く,
「レクリエーション型」
が少ないという仮説③は,前者は支持されたが「世俗内禁欲型」も多く,後者は支持され
ず,
「レジャー型」がスポーツを実施している者が少ないという結果になり,本研究は仮説
よりもむしろ,相対的に世俗内禁欲型,アゴン型,レクリエーション型,レジャータイプ
型の順に競技動機が高い傾向を示した浅沼ら(1991)を支持する結果であった.
四類型をそれぞれ比較してみていくと,まず「アゴン型」
「世俗内禁欲型」において,定
期的なスポーツ実施群が有意に多いという結果から,「遊戯―世俗」志向に関係なく,「禁
欲」志向は定期的なスポーツ実施を規定する要因であることが示唆された.また,
「アゴン
型」はスポーツ非実施群が有意に少ない結果であったため,
「禁欲」志向のなかにおいて「遊
戯」志向はスポーツ実施にポジティブに関連していると考えられる.筒井ら(1995)は,
スポーツに積極的な参加を希望する者は,勝利志向性もレクリエーション志向性(ここで
のレクリエーションとは,スポーツそのものを楽しむといった意味であり,本研究で扱う
レクリエーションと同義ではなく,むしろ「遊戯」志向に近いものである)も高いのに対
し,消極的に参加を希望する者は,勝利志向性が高く,レクリエーション性は低い結果で
あったと報告している.つまり,「アゴン型」はスポーツ参加に積極的であり,「世俗内禁
欲型」は消極的であるといえ,本研究の結果を支持するものである.
次に,「レジャー型」においてスポーツ非実施群が有意に多いという結果であるが,「レ
クリエーション型」に有意差は認められなかったため,
「即時」志向のなかにおいて「世俗」
42
志向はスポーツ実施にポジティブに関連していることが示唆された.内閣府の体力・スポ
ーツに関する世論調査(2013)によると,運動・スポーツを行った理由として,「健康・
体力つくりのため」のほかに,「運動不足を感じるから」「友人・仲間との交流として」な
どの割合が高く,気軽にスポーツをしようとする「即時」志向の者はこういった「世俗」
的な理由によってスポーツを実施していると思われる.一方で,先述したように「禁欲」
志向のなかにおいて「遊戯」志向はスポーツ実施にポジティブに関連していると考えられ
る.つまり,
「遊戯―世俗」志向とスポーツ実施の関連において有意差は認められなかった
ものの,
「禁欲―即時」志向によって「遊戯―世俗」志向は正負に関連していることが示唆
されたといえる.
43
5.
結論
本研究は,20-30 歳代におけるスポーツ実施と価値意識の関連について明らかにするこ
とであった.その結果,以下のことが明らかとなった.
①「禁欲」志向の者は,
「即時」志向の者と比べて定期的にスポーツを実施している者が多
かった.
②「遊戯」志向の者と「世俗」志向の者のスポーツ実施頻度に差は認められなかった.
③「アゴン型」は定期的なスポーツ実施者が多く,スポーツをしていない者が少なかった.
「世俗内禁欲型」は定期的なスポーツ実施者が多く,
「レジャー型」はスポーツを実施し
ていない者が多かった.
まず,①の結果から「今の自分の力に合わせて,気軽にスポーツをしようとするやり方」
よりも「自分の力を伸ばすために,厳しい練習をして自分を鍛えようとするやり方」は定
期的なスポーツ実施を規定する要因であることが示唆された. しかし,ここで留意しなけ
ればならないことは,
「禁欲」志向=「勝利」志向ではないということである.「禁欲」志
向に近いものとして課題志向性というものがある.これは,能力を伸ばすことや技術を熟
達させることを目標とする志向であり,目標志向性の一つである.そしてもう一方は,相
手に勝つことや他者より優れていることを目標とする自我志向性であり,細田ら(1999)
は,課題志向性は有能さの認知,内発的動機づけ,持続性,行動の強度などの動機づけを
高め,適応的な行動を生じさせるが,一方,自我志向性はそれらの動機づけを低下させ,
不適応な行動を生じさせることが示唆されていると述べている.つまり,
「禁欲」志向はス
44
ポーツ実施にポジティブに関連しているのに対し,
「勝利」志向はネガティブに関連する可
能性を示唆している.本研究では「禁欲」志向を課題志向性に近い意味合いとして捉えた
が,用いた質問内容では自我志向性を含んだ目標志向性として捉えることも可能であるた
め,今後はこれらを明確にした研究が期待される.
次に,②の結果から「スポーツは,そのものの面白さを味わうことが大切である」とす
る考え方と「スポーツは,何かの目的をもって行うことが大切である」とする考え方の違
いはスポーツ実施に影響していないことが示唆された.これは“利”価値を重視する「世
俗」志向においても,“快”価値を重視する「遊戯」志向と同様に,スポーツや運動の継
続へのエネルギーとなる“快”価値が中核に存在するため,有意差が認められなかったと
考えられるが,先述したように「世俗」志向の者はスポーツを実践するなかで“快”価値
を発見できなければ,その人にとって,スポーツ実践は健康のためにしなければならない
スポーツとなり,自己目的性を失い,スポーツを継続していこうとすることに対してマイ
ナスの効果を及ぼす可能性は否定できない.
そして,③の結果から「遊戯―世俗」志向に関係なく,
「禁欲」志向は定期的なスポーツ
実施に関連していることが示唆された.また,②の結果では差が認められなかったが,
「遊
戯」志向は「禁欲」志向のなかにおいてスポーツ実施にポジティブに関連し,
「即時」志向
のなかにおいてネガティブに関連していることが示唆され,
「禁欲―即時」志向によって「遊
戯―世俗」志向は正負に関連していると考えられる.つまり,気軽にスポーツを行おうと
する者にとっては,健康のためや仲間との交流といった世俗的理由がスポーツを実施する
理由となっているが,自分の力を伸ばすために厳しい練習をして鍛えようとする者にとっ
45
ては,
これらの理由はスポーツ実施を阻害する要因になりうることが示唆されたといえる.
最後に,本研究はスポーツ実施と価値意識の関連について明らかにすることを目的とし
たものであり,どのような価値意識が良い,悪いかというわけではない.しかしながら,
自分の力を伸ばすために厳しい練習をして自分を鍛えようとする意識や,気軽にスポーツ
を行おうとする者には健康のためや仲間との交流,厳しい練習をして鍛えようとする者に
はスポーツそれ自体の面白さを意識させることがスポーツ実施を促進することが示唆され
たといえる.また,体育の授業場面等において児童・生徒期から意識させることが将来の
スポーツ実施に有効であると考えられる.
6. 研究の限界および今後の課題
本研究の限界は以下の点が挙げられる.まず,本研究は横断研究であり,因果関係につ
いては言及できない.次に,20-30 歳代を対象としたため,スポーツ実施と価値意識の関
連に年齢が影響している可能性が考えられるため,今後は幅広い世代と比較分析し,スポ
ーツ実施と価値意識の関連を明らかにする必要がある.また,他の心理的要因や身体的要
因などといったスポーツ実施を規定する要因は検討していないため,今後は基礎的諸要因,
スポーツ関連要因,社会的・経済的・文化的要因などの要因を含めた研究が期待される.
他にも,考察で触れたように「世俗」志向は「遊戯」志向と同様の価値を持っている可能
性や,同じ志向でもどの程度重視しているかによってスポーツ実施との関連が異なること
が考えられる.しかしながら,スポーツ行動は価値の選択に基づく行動であるという観点
から価値意識に着目した点においては評価できるであろう.
46
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久崎孝浩・石山貴章(2012)スポーツに参加する子どもの心理的発達に及ぼす大人の影響:
その研究動向と今後の方向性,応用障害心理学研究11,45-67
日野晃希・長見真(2011)生涯スポーツを志向する体育学習における「手段的/目的的価
値」の取り扱いに関する研究:
「楽しい体育」論を手がかりとして,仙台大学大学院スポー
ツ科学研究科修士論文集12,159-165
浅沼道成・森司朗(1991)体育専攻学生のスポーツ価値意識に関する研究(II):競技動機
との関連から研究紀要6,111-118
筒井清次郎(1995)大学生のスポーツ参加・継続意識を規定する心理学的要因について,
愛知教育大学研究報告,芸術・保健体育・家政・技術科学44,25-36
細田朋美・杉原隆(1999)体育の授業における特性としての目標志向性と有能さの認知が
動機づけに及ぼす影響,体育学研究44(2),90-99
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謝辞
本論文を作成するにあたり,ご指導を頂いた指導教員の間野義之教授に心より感謝致し
ます.また,本論文をご精読頂き,有用なコメントを頂きました木村和彦教授,作野誠一
准教授に深謝致します.
そして,大阪で親身にして頂きました庄子博人先生,論文の執筆にあたって具体的かつ
的確にご指導を頂きました間野研究室の舟橋さん,本データをご提供して頂きました間野
研究室 OB の石部さん,濱田さん,ゼミ合宿等で有用なコメントを頂きました間野研究室
OB・OG の皆様,日頃より大変お世話になりました二年制修士 8 期生,10 期生,社会人
修士 7 期生,8 期生の皆様,同じスポーツビジネス領域のメンバーとして切磋琢磨し合え
る存在であった木村研究室,原田研究室,平田研究室,松岡研究室の皆様に心より感謝し
ております.
最後に,間野研究室の同期である石下君,小林さん,鄭君,松本君,守山君,この二年
間,公私ともに時間を過ごし,切磋琢磨,叱咤激励できる存在が私の支えとなっておりま
した.ありがとうございました.
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