米潮流から見る注目キーワード

数年後の SP 手法をガラリと変える!?
米潮流から見る注目キーワード
数々のグローバル企業で新規マーケット参入・商品開発の経験を持ち、現在は複
数の大手企業のアドバイザーを担う射場瞬氏が、アメリカでの調査をもとに、日
本の販促担当者が知っておくべき SP 分野のキーワードを解説します。
No.02
アップルペイ(Apple Pay)
2014 年 10 月からアメリカで導入されたアップルの新しい決済機能。
Apple Pay 機能のついた iPhone を読み取り装置にかざし、指紋認証をするだけで支払
いができる。Apple Pay へのカード登録には、カードの写真を撮影するかカード情報を入
力し、Passbook アプリに登録するだけ。
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IBA カンパニー 代表取締役
射場 瞬
氏
いば・ひとみ/日本コカ・コーラ副社長、アメリカン・エキスプレス・カンパニー U S 本社
ディレクターなどを経て独立。約 20 年間の米国などでの最前線の実務経験と人脈を活か
し、データドリブンマーケティングの領域を中心にコンサルティングを手がける。
<聞き手>
プロモーション業務を担当して 5 年目
販促太郎
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------太郎:アップルが新決済方式「 Apple Pay」を発表しました。何ができるようになるのでし
ょうか。
射場:スマートフォンで Apple Pay を搭載しているのは現状 iPhone6と iPhone6 Plus
のみ。その他 iPad Air2、 iP admini3や、 15 年発売予定の Apple Watch にも搭
載される見通しです。米国では、 10 月より実際の店頭での使用も開始されました。
特徴は NFC(近距離無線通信)を使った支払いができること。日本で言うおサイフ
ケータイのような機能が iPhone に内蔵されるということですね。おサイフケータ
イに比べ、優れている点は二つ。一つ目は安全性が高いこと。指紋認証で本人確認が
できるため非常に安全です。決済の際、カード番号はその都度トークン(暗号)化さ
れて送信されるため、カード情報の流出による不正使用も防げます。二つ目は、レジ
を通さずにアプリ内で支払いができるインアプリ決済機能が使用できる点。例えば
レストラン予約アプリ「 Open Table」を利用すると、予約した店で食事を済ませた
後、支払いはレジに行かずスマホ上で済ませられます。また、 Apple Pay で一度登
録すれば、インアプリペイに対応する全てのアプリでこの機能が使えるため、各アプ
リでの登録が不要で便利です。
太郎:Apple Pay で店頭での購買行動はどう変わりますか。米企業はどんな取り組みを始め
ていますか?
射場:素早く手軽な支払いが消費者にとって一般的になるでしょう。インアプリ決済でレジ
に並ばず指紋認証で、一瞬で支払いする感覚に、消費者が慣れていくと思います。ま
た米国では消費者の持つカードのほとんどが Apple Pay に対応しました。Visa、
Master、 American Express の3大カードのほか、83%の銀行が自社発行のカード
で Apple Pay を受け入れ、店舗側でも、 10 月の導入時には大手流通を含む約 22 万
店舗で使用できると発表されています。過去のデジタルウォレットと比較しても、格
段に対応店舗数が多く、評判が良ければ店舗数は急増すると見られています。現在の
ところ、アップルは集客・販促に対する特別なサービスは提供していませんが、今後
開発するのではという期待はあります。もちろん現状でも ApplePay でのインアプ
リ決済を可能にすることで、購買履歴のデータからターゲットを絞ったマーケティ
ングの仕組みは作れます。
太郎:日本にもこの流れが来るとすれば、今から調べておかないとヤバイですね。
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レジに並ばない決済方法が一気に普及する予測
14 年 9 月 9 日、アップルは全く新しい決済機能、Apple Pay を発表しました。Apple Pay
は、同月発売された iPhone6 と iPhone6 Plus に新たに搭載された NFC 技術により決済を
行うもので、消費者にとっても、店舗にとっても、これまでの決済の常識を覆すものになる
と考えられています。
消費者が Apple Pay を利用するためには、まず、iPhone 上の Passbook アプリにクレジ
ットカードやデビットカードの情報を登録します。 iTunes に登録済みのカードは、セキュ
リティーコードを入力するだけで登録が完了します。新たに追加するカードについても、カ
ードの写真を撮影するか、カード情報を入力するだけで簡単に登録できます。 Passbook ア
プリは初期インストールされているアプリのため、新たなアプリのインストールの手間も
ありません。Apple Pay は、10 月 20 日より、米国内の店頭で実際の運用が開始されてお
り、既に大手デパートやスーパー、ファーストフード店等、全米の 22 万店舗で使用できま
す。
Apple Pay を利用することによっての消費者にとってのメリットは、財布を持ち歩く必
要がなくなったり、簡単に支払いを済ませたりできるだけでなく、購買履歴がデジタルに一
括管理できるために家計の管理を容易にしたり、決済データの暗号化によるセキュリティ
面の向上も挙げられます。
またアップルは、これらの決済に関する一切の情報(購入者 /購入場所 /購入商品など)
を保管・利用せず、第三者への提供もしないと発表しているため、個人情報の流出や自らが
意図しない場面で購買情報が利用されるといったリスクを軽減することもできます。
15 年 10 月には、米国でクレジットカードへの IC チップの追加、決済時のピンコード
(4 桁の暗証番号)入力が必須となる EMV( Europay、 MasterCard、Visa)仕様の導入
が予定されており、その際には店舗のレジも新仕様への対応が求められます。この店舗のレ
ジの買い替え時期と Apple Pay 機能を搭載した iPhone6/6 Plus の普及時期がちょうど重
なることもあり、Apple Pay に対応する機器を導入する店舗が増え、 15 年中には Apple
Pay が決済の方法として、アメリカ国内で一気に普及するのではと予測されています。今ま
でも「デジタルウォレット」として、スマホを使用した決済方法が存在してきましたが、消
費者がアプリをダウンロードする手間があったり、利用できる場所が限られたりと爆発的
な普及は見られませんでした。 Apple Pay は、これらの障壁を超え、未来の決済方法とし
て定着する可能性があるのです。日本への導入が行われる際には、スムーズに導入できるよ
う、今から注目しておきたいですね。
Apple Pay に採用された通信技術
NFC(Near Field Communication)
近距離無線通信。 ISO 基準を満たす。NFC の通信規格を搭載する機器同士は双方向に通
信できるため、 PC やテレビ、デジカメなどとのデータ通信が可能。かざすだけでデータの
送受信が可能なため、取り扱うデータを暗号化するなどのセキュリティ対策が必要。
Apple Pay とデジタルウォレットの違いは?
デジタルウォレット
「Google Wallet」や「Yahoo! ウォレット」などオンライン上に財布を仮想化したものを
指す。クーポン、レシート情報も管理できる。各アプリのダウンロード・専用アカウントへ
の情報登録の手間や、クレジットカード利用と比べ大幅な節約にならないこと、また利用で
きる銀行や店舗が制限られていることから爆発的な普及は進んでいない。
※記載の情報は、2014 年 9 月 9 日発表時点のもの