高硬度高脆性材料切断を高能率に行う

派遣学生:材料工学専攻 第1学年
鶴田 好孝
研究題目:高硬度高脆性材料切断を高能率に行う薄刃砥石の開発
派遣期間:平成19年5月1日 ~ 平成19年9月28日
派 遣 先:株式会社 ナノテム
1.はじめに
私は、問題提案型リサーチインターンシップで平成19年5月から9月までの5ヶ月間“ものづくり”
を体験してきた。その内容は、薄刃砥石(ダイシング・ブレード)の作製技術を習得することにあった。
ダイシング・ブレードを任意の組成で作製することができれば、研究を通して得られた知見を直接ダイシ
ング・ブレードの性能向上に結び付けられると考えたためである。
今回、本インターンシップに参加しようと考えた理由は、学部のときに経験した研究所での、半年間の
実務訓練が大変勉強になり、同時に大きな刺激を受け、修士課程での研究活動のモチベーションとなって
いたためである。
学部のときの実務訓練と、今回のインターンシップでの違いは、期間中に行うテーマ設定にある。企業
側がテーマを用意する実務訓練に対し、本インターンシップでは、自らの研究活動についての問題を提案
し、その問題を解決するために企業へ行った。この経験は、問題解決能力は勿論、問題提案能力も養えた
ことが何よりも大きい。
私たちは、これから技術を創造する立場になる。そのときに、支えになるのは、授業で学ぶ“知識”だ
けでなく、研究活動を通じての“経験”も大きな割合を占めることになるだろう。新しいものを見たとき、
そこから一つでも多くのことを学べるように、日々生活することが大切であると再認識した。
2.目的
本インターンシップでは、加工中の砥粒突き出し高さを維持できるダイシング・ブレードを作製するた
めに、ダイシング・ブレードの作製法を習得することを目的とした。ダイシング・ブレードの作製法を習
得することで、高硬度高脆性材料切断を高能率に行うダイシング・ブレードを開発・作製する際に、ダイ
シング・ブレードの構成要素である、砥粒・結合剤・気孔の3要素を自由に調合し、各要素の役割を明ら
かに出来ると考えた。
本研究は、これまでのダイシング・ブレードにはない、砥粒突き出し高さを維持し、低研削力加工が可
能なダイシング・ブレードを作り(優れたものづくり)
、加工効率の向上によって資源を節約し(環境)
、
国内製造業の国際競争力を底上げ(国際的視野)するものである。同時に、今後さらなる応用が見込まれ
るセラミックス材料を低研削力でダイシング加工可能なダイシング・ブレードの開発を可能にすることは、
加工時間の短縮はもとより、歩留まりの向上、生産設備の縮小などにより、最終製品の価格を下げ国際競
争力を大幅に向上させることができる。また、被加工物の物性と砥石の設計指針を一般化することで、ダ
イシング・ブレードばかりでなく、研削加工における加工現象の解明につながる。
3.インターンシップでの経験
本インターンシップ期間中に経験・学んだことは、目的であるダイシング・ブレードの作製法の習得は
もとより、研削やラップ、ポリッシュといった平面加工技術の理解および現在の課題、大型多孔質セラミ
ックスの作製法など、焼結技術である。セラミックス製品の製造工程のうち、原料粉末を調合する配合の
作業風景を図1に、変面研削の作業風景を図2に示す。
図1 原料粉末の調合風景
図3 作製したダイシング・ブレード
図2 平面研削の作業風景
図4 ダイシング加工の様子
4.研究成果
実際に作製したダイシング・ブレードを図3に、ダイシング加工の様子を図4に示す。作製できたダイ
シング・ブレードは、砥粒・結合剤・気孔の3要素を自由に調合できる。現在、作製したダイシング・ブ
レードは試験中であり、今後各要素の役割を明らかにする。得られた結果を基に、既存のダイシング・ブ
レードにはない、砥粒突き出し高さを維持し、低研削力加工が可能なダイシング・ブレードの開発を行う。
また、ダイシング加工の前後工程である研削やラップ、ポリッシュといった平面加工技術についても、
実際に様々な材料を加工することで、それぞれの加工での研究テーマについても理解した。
5.感想
普段の生活と違う体験をすることは良い刺激になるので、
未知の場所へは、
進んで行くべきだと考える。
インターンシップも同様で、人々との触れ合い、体験、得られる知識などなど、参加する利点は、山ほど
ある。百聞は一軒に如かずとは良く言ったもので、実際に経験することで、産業界からの要求を、まじま
じと感じられた。事実、私が勉強している切断加工だけを取り上げても、産業界から要求されていること
は、山ほどあるが、切断加工だけを見ていては、見えてこない問題もある。例えば、ガラスなどのような
高脆性材料を切断したとき、切断面は損傷を受け、直後には見えないものであっても、後工程でガラスを
薄くした際に顕在化しることがある。どこで、何が役に立つかわからない。だからこそ多くの知識を得る
べく、普段とは違う場所に身をおく時間をつくることが大切だと思う。