スタジアム整備検討に基づく構想書 ~スタジアム整備検討の基本的骨格について 「スタジアムは地域活性化の新たな起爆剤」~ 新スタジアム構想検討委員会 スタジアムの検討について 1.これまでの経緯など ○ モンテディオ山形は、Jリーグ加盟に加盟した 1999 年(平成 11 年)以降、県内所 在施設で最も競技運営規模が整っている「山形県総合運動公園陸上競技場」(ND ソフトスタジアム山形)をホームスタジアムとしてきた。 ○ しかし、山形県総合運動公園陸上競技場は、1992 年(平成 4 年)のべにばな国体の 開閉会式主会場、陸上競技会場として整備されたもので、サッカー競技を念頭に 置いたものではなかったため、Jリーグ開催規格を満たすため改修等が必要とさ れ、これまでも施設設置者である山形県より、建設後 20 年余が経過した湿雪設備 の改修工事に合わせ、芝生のバックスタンド、サイドスタンド(ゴール裏)の座 席化、ホーム側バックススタンド増設、ナイター照明設備設置、運営諸室の改修 等が実施され、その充実図られてきた。 ○ また、2013 年シーズンから J リーグクラブライセンス制度が施行され、5 分野の 審査基準項目(競技、施設、人事組織、法務、財務)が設定された。特に施設項 目の競技場における屋根の設置については、これまで「スタジアムに観客席の 3 分の1以上(B基準:具備が必要とされるものの期限については今後検討を続け ていく条件)」と設定されていたものが、「観客席すべてを覆う屋根を備えること (C基準:具備することが望まれる条件)」に統一された。 ○ 2013 年 2 月 22 日、山形市はホームスタジアム移転も視野に入れて、山形県など と共同で山形市内に新しいスタジアムを建設したい旨を表明した。3 月 5 日、天 童市議会は本拠地の存続などを求める要望書を山形県知事に提出する旨の議案を 全会一致で可決し、それぞれ要望が関係者に提出された。 ○ こうした動きの中で、主たる運営主体となるであろうクラブとして、スタジアム 整備の考え方を求められ、自らも主体的に考え方を整理していく必要があると認 識した。 2.今後の方向性 ○ 構想検討委員会としては、専用スタジアムの必要性について認識しつつも、地域 間競争となるような流れは好ましくないと判断。 「本県に必要なスタジアムのあり 方、モンテディオを愛するサポーターが望むスタジアムのあり方、新たな地域活 性化の起爆剤、街づくりに貢献できるスタジアムのあり方」を幅広く検討すべき と考える。 ○ 検討にあたっては、自らは整備主体にはなれない立場であっても、実現した際に 主たる利用者の一人となる(株)モンテディオ山形がまずそのアウトラインを提 示することにより、設置者の意思のもとで多様な関係者、有識者から提起された 意見をもとに“基本的骨格”が策定されることが望ましいと考える。 ○ この検討を進めるにあたっては、国内はもとよりサッカー先進国である欧州のス タジアムの事例なども分析しながら進めることが望ましい。 1 ○ 検討する項目は以下の通りと考える。 ・スタジアム建設の国内・国外動向 ・スタジアム建設基本戦略(案)の策定 ・基本戦略に基づく必要機能の整理 ・施設の多目的利用、収益事業のビジョン ・整備、管理運営手法の検討 ・事業計画の策定 ○ 他地域等の事例をみても、スタジアム整備の検討にあたっては、設置予定者が多 くの関係者からなる検討委員会を設置して議論を進めることが必要不可欠である。 この議論を前進させるためにも、そのアウトラインの検討を進めることにより熟 度を高め、関係者に引き継いでいくことが肝要と考える。 3.構想検討委員会が“スタジアムの基本的な考え方”を提示する目的 ○ クラブライセンス取得に求められる運営の基本となる基準を周知、徹底する。 ○ スタジアム整備に向けた議論を活性化させる。 ○ 単なる専用スタジアム整備の視点にとどまらず、まちづくりなどの活性化施策と しての有効性を展開する。 ○ 新設されるスタジアムの管理運営を通して、㈱モンテディオ山形の設立理念の具 体化を図る。 (参考)株式会社モンテディオ山形 経営理念 『山形の未来を切り拓こう。』 1. 夢と楽しみ、新たな価値の創造 プロサッカーチーム「モンテディオ山形」の力強い躍動をとおして、地域の人々 に夢と楽しみを提供するとともに、地域と連携した選手やスタッフの活動をと おして、山形の新たな価値を創造します。 2. スポーツ振興による魅力ある地域づくり スポーツ施設の機能拡充・利用者ニーズに合致した施設運営、スポーツ教室開 催等を行い、スポーツ振興の場を創造します。スポーツ参加をきっかけとして、 地域の人々の交流を深め、地域活性化を実現します。 3. 健全経営の展開 常に中長期的な見通しを掲げ、幅広いご支援のもと、健全で安定した運営に努 めます。 2 1 サッカースタジアムの国内・国外動向 (1)2015 シーズン J クラブのホームスタジアム 陸上トラック あり なし J1 10 9 J2 15 7 J3 6 6 合計 31 22 収容人数 40,000~ 20,000~ 15,000~ 5 10 4 2 7 12 0 2 6 7 19 22 図 1 J クラブホームスタジアム一覧(2015) 3 5000~ 0 3 2 5 ~5,000 0 0 2 2 引用:J LEAGUE NEWS 2015 特別版「スタジアムの未来」 (2)国内における他地域の動向(各Jクラブの動向) 国体などを通じて全国に整備された競技場は、多種目を包含でき利便性が非常に高 い一方、スポーツを「観る」「魅せる」という観客の視点においては、配慮に欠ける 点も多い。世界的な潮流を見ても、サッカー競技場は“スタジアム”へと進化し、ス ポーツを「観る」「魅せる」空間に生まれ変わりつつある。そのような流れは我が国 においても例外ではなく、国内各地で様々な取り組みが行われつつある。 表 1 スタジアム建設計画一覧(抜粋) クラブ 内容 AC 長野パルセイロ(J3) 球技場建替(2015 年 2 月完成) ガンバ大阪(J1) スタジアム新設(2015 年 10 月完成) ギラヴァンツ北九州(J2) 球技場新設(2017 年 3 月完成予定) 京都サンガ F.C.(J2) 球技場新設(2018 年 3 月完成予定) FC 琉球(J3) 球技場新設(2021 年 3 月完成予定) 表 2 (参考)施設基準に則った改善事例(2015 ライセンス判定) クラブ 内容 (再掲)ガンバ大阪(J1) 市立吹田サッカースタジアムが竣工、入場可能数 39,694 人。VIP 席 1,248 席、車椅子席 414 席、いずれもJリーグ最大 洋式トイ レ充足率の No.1 FC岐阜(J2) 岐阜メモリアル長良川競技場がJ1クラブライセンス基準を満 たす改修(入場可能数 16,300 人)を実施。 レノファ山口FC(J3) 維新百年記念公園陸上競技場がJ2クラブライセンス基準を満 たす改修(ピッチ常緑化)を実施。 その他(スタジアム関連) 7つのスタジアムでトイレが洋式化(横浜FM:日産スタジアム、 横浜FC:ニッパツ三ツ沢球技場、柏レイソル:日立柏サッカー 場、松本山雅FC:松本平広域公園総合球技場、名古屋グランパ ス:パロマ瑞穂スタジアム、FC岐阜:岐阜メモリアルセンター 長良川競技場、愛媛FC:ニンジニアスタジアム) その他(トレーニング施設) クラブハウスの新設が6クラブ(FC栃木、松本山雅FC、ツエ ーゲン金沢、FC岐阜、愛媛FC,Vファーレン長崎) この他にも、天然芝練習場・クラブハウスの新設等が多くのクラブで予定されている。 4 (3)海外におけるサッカースタジアムの潮流 競技場はその地域におけるスポーツ文 化の維持・発展という大きな役割を担って おり、公共財であるため、「公設公営で設 置し、公的支援が必要」と長年捉えられて きた。 一方で、特にサッカーが盛んな欧州では、 競技場のスタジアム化が顕著であり、この ことがサッカーをスポーツビジネスとし スタジアムの目の前がトラムの駅となっており、併設のショッピング て大きく拡大させていると認識されてい センター利用にも便利(ベルン/スイス) る。スタジアムは、スポーツをエンターテ vol.216 J LEAGUE NEWS より イメントと捉え、「観る」「魅せる」機能を重視するだけでなく、地域の企業間を繋ぐ ビジネスポイントとして機能しつつ、多機能複合施設化によりプロフィットセンター となり、また地域の防災拠点としての機能をも併せ持つ、街のランドマーク的存在と なるべきという考え方が定着してきた。具体的な特性は以下のとおりである。 ○ 文化として ~もっとピッチに近く!~ ○ シンボルとして ~スタジアムは、街の誇り。設計思想は、一貫して「ホームのた めに」~ ○ コミュニティができる ~性別、年齢、ハンディを超えて、誰もが安心して楽しめ る空間。交通アクセス、屋根のある個席、夜間照明、バリアフリー~ ○ ホスピタリティ ~「ホーム」の感情を共有し、他者とつながる社交場~ ○ ○ ○ ○ ○ 街の集客装置 ~中心市街地活性化の新たな求心力~ 多機能複合型 ~365 日、試合のない日も人を呼ぶ 環境にやさしい ~経済成長と環境政策の両立を実現~ プロフェッショナル ~各分野の専門家集団による~ 防災拠点 ~災害時の大規模ベースキャンプや住民の避難場所として「街なかスタ ジアム」が活躍する~ 引用:J LEAGUE NEWS 2014 特別版「スタジアムの未来」 5 表 3 具体的な取り組み例(抜粋) 項目 資金調 達・運 営体制 全 体 傾 向 出 資 者 の 優 遇 措置 100 % 公 費 で の 建設 施設要 件 全 体 傾 向 ホ テ ル 運 営 に よ る 収 益向上 高 齢 者 用 住 居 運 営 に よ る 収 益向上 取組事例 • 民間資金、公的資金、金融機関からの借入によって建 設されているケースが多い。民間資金については出資 に対する物理的なメリット(利用権等)を与えるケー スが多い(*1) • スタジアムの建設と貸与を行う管理会社の損益を、ス タジアム開業後数年間の減価償却費による赤字決算と して税制面での優遇措置を実施(出資者のリスク低減) (*1) • 民間出資を確保するため、クラブの年間指定席の権利 がセットになっている。また PR 権とセットにした資金 拠出を得ている。また、スタジアムを建設し、保有す る法人を設立し、官民共同出資が行われている。(PPP 方式の採用)当該スタジアムは開業後 5 年で黒字経営 となり、その後 7 期連続で黒字を達成している(*1) • ユーロ 2008 を招致するため、100%公費で建設された。 資金は、国、州、市が 3 分の 1 ずつ負担。運用は市が 100%出資する会社(*1) • 6 万人~8 万人収容の大規模スタジアムでは、オールシ ーター、カバーシート(75%)、室内レストラン・バー、 会議室、企業用 VIP 席(12 人~50 人) 、ハイエンドケ ータリング、商品販路、10%のプレミアムシート(専 用通路から移動可)、小売店舗、レジャー施設、美術館 は大半のスタジアムで設置されている。VIP 用地下駐 車場、ホテル、特別席(4 人~12 人) 、コンサートアリ ーナ、企業用 VIP 席・プレミアムシート・特別席を兼 ね備えた企業用の特別室は次いで多い。開閉式屋根や ナイトクラブ、オフィスの設置はほとんどみられない (*2) • 集客力・収益力向上のため、スポーツの試合がなくて も他の用途に使える多機能化、様々な施設が併設され る複合化が進んでいる。また、スポーツの試合とコン サート等のイベントの切替を柔軟に行える機能も重視 されている(*1) • 減価償却、借入金返済などの負担はあるが、ホテル事 業によって売上の 20%を獲得しており、黒字基調の経 営を実施している。ホテル運営が事業継続のカギとな っている(*1) • VIP ラウンジは試合のないときに数分でホテルの客室 に切り替えられる(*3) • アリーナ内に、カジノ、フィットネスクラブ、ツーリ スト・インフォメーション・センター、カンファレン ス施設、展示場、ホテルがあり複合施設を形成してい る。地域の新規雇用、家計所得の伸びにも貢献(*1) • 収益はショッピングモールやオフィスのテナント料が 全体の 25~30%、高齢者用住居が 18~22%)、広告収 入が 10~15%、サッカーや VIP ラウンジでのプライベ ートディナーの収入が 25~30%となっている(*3) (※高齢者用住居は超高齢化が進む日本においては有 効な施設と考えられる) 6 スタジアム例 - MSV アレナ(ドイツ・ デュイスブルグ) (31,000 人) アムステルダム・ア レナ(オランダ・ア ム ス テ ル ダ ム ) (51,628 人) ヒポ・グループ・ア レナ(オーストリ ア・クラーゲンフル ト)(32,000 人) - リーボック・スタジ アム(イングラン ド ・ ボ ル ト ン ) (28,000 人) リコー・アリーナ(イ ングランド・コベン トリー)(32,500 人) ザンクト・ヤコブ・ パルク(スイス・バ ーゼル)(36,000 人) 項目 障 が い 者対応 • 柔 軟 な 設 備 切 替 • • • 利 用 者 の 利 便 性向上 その他参 ネ ー ミ 考 ン グ ラ イツ • 取組事例 車椅子席、視覚障がい者のための実況サービスつきの 席を用意している。専用トイレも設置し、座席から食 事も注文可能(*1) ゴールラインとスタンドの間にステージを設置できる ようにするなど、イベント設営を支援する設計を実施 (*1) 開閉式の屋根を備え、フィールドを 2 分割し、積み重 ねて収納することで、下の床面を出して 3 万人収容の アリーナとして使える(バスケットボールやハンドボ ールなどが開催可能)(*3) 縦 120m、横 80m、高さ 1.5m、総重量 1,100t の芝生フ ィールドを移動し、外部に搬出可能。サッカーで利用 する時のみスタジアム内に入れる。コンサートを開く 場合、フィールド内に 2 万人が収容できるため、60,000 人と合わせて、83,500 人が収容可能(*3) 施設内での買い物は、専用カードを購入してキャッシ ュレスで行うことができる(*1) • ネーミングライツは施設全体のライツだけでなく、ス タンド毎のライツやラウンジなど設備毎のライツなど に分割してスポンサーに販売している(*1) スタジアム例 MSV アレナ(ドイツ・ デュイスブルグ) アムステルダム・ア レナ(オランダ・ア ムステルダム) グラン・スタッド・ メトロポール(フラ ンス) (50,000 人) ヴェルティンス・ア レナ(ドイツ・シャ ルケ) (61,481 人) アムステルダム・ア レナ(オランダ・ア ムステルダム) - 出典 (*1)欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査(2008 年 7 月 (*2)European Stadium Insight 2011 社団法人日本プロサッカーリーグ) KPMG (*3)J リーグ規格スタジアム整備基礎調査事業報告書(2011 年 沖縄県) (4)クラブライセンス制度から見る現状の課題 ア 現本拠地の状況・課題(機能面、施設設備面) J リーグ加盟以降、モンテディオ山形は山形県総合運動公園陸上競技場をホーム スタジアムとしている。これまで、関係各所の多大なご支援のもと、利便性や機能 性向上に関する対応(座席の増設、バックスタンドの個席化、大型映像装置の更新 及び音響設備の更新、ロッカールームの拡充など)を講じていただいている。 一方で、県総合運動公園陸上競技場は建設後 20 年が経過し老朽化がかなり進行 していること、国体の主会場として建設され、陸上トラックが併設された環境であ り、サッカーを「観る」「魅せる」という臨場感に欠けることなどの課題を抱えて いる。また、2013 年シーズンからクラブライセンス制度が施行され、5 分野の審査 基準項目(競技、施設、人事組織、法務、財務)が設定された。特に施設項目につ いては、2015 シーズンより「観客席すべてを覆う屋根を備えること(C基準)」な どが設定されており、これらに対応する具体策を検討することが課題である。 イ 2015 クラブライセンス決定における制裁措置 2015 クラブライセンス(2015.9.30 決定)において、「J1基準」を得られたもの の、「観客席を覆う屋根」及び「衛生施設(洋式トイレ)の設置数」の不足が指摘さ れ、次のような制裁措置を受けた。 7 ・2015.12.31 まで ・2016 クラブライセンス申請時 ・・・ ・・・ 整備計画及び活動計画 活動実績 表 4 2015 年度のスタジアム検査要項(抜粋) 必要とされる設備 内容 検査基準 1.入場可能者数 J1 では 15,000 人以上、J2 は ○ クラブライセンスの現状 20,772 席 10,000 人以上(芝生席はカウント (内訳) しない) 観客席:20,664 席 VIP 席:48 席 車椅子席:60 席 2 . 座 席 観客席 椅子席で 10,000 席以上の座席が ○ 観客席:20,664 席 全席個席であること C 個席 どの席からも、ピッチ全体が見渡 ○ 見渡せる あること(ベンチシートは 1 席あ たりの幅を 45cm 以上とする) せること すべての座席に番号を分かりや ★★★ 座席番号あり すく付けること 車椅子席 介助者の椅子を備えること ○ あり 観戦の際の安全が確保されてい ○ 安全確保済 ること VIP 席 メインスタンド中央席でスタジ ★★★ VIP 席:52 席 アム全体が見渡せる位置に屋根 付きで個席 50 席以上設置するこ と 80 席以上設置すること C マッチコミ メインスタンド中央部でスタジ ○ 見渡せる ッショナー アム全体が見渡せる位置に屋根 席(含・アセ 付きで設置すること ッサー) 机付きで 4 名着席でき、ピッチの ○ あり C モニターのみあり 笛が聞こえること(マッチコミッ ショナー、補助員、審判アセッサ ー、副審アセッサー) テレビモニター(共聴回線)、LAN 回線を設置すること 記者席 メインスタンド中央席でスタジ アム全体が見渡せる位置に屋根 付きで個席 50 席以上設置するこ と 8 ★★★ あり 必要とされる設備 内容 検査基準 クラブライセンスの現状 ノートパソコン、ノートがおける ○ あり ○ 一部のみ屋根があり、雨(雪) 十分な広さの机と電源を確保す ること 3.屋根 新設及び大規模改修を行うスタ ジアムについては、原則として屋 を防ぐことができない。(3 分 根はすべての観客席を覆うこと の 1 以下であり制裁措置対象) すべての観客席を覆うこと C 屋根又は照明に避雷針を備えて ○ 備えている ○ 備えている ○ あり いること 4.照明 ピッチ内のいずれの個所におい てお照度 1,500 ルクス以上の明る さを保持し、均一であること 5 . ト イ レ トイレ どの席からもアクセス可能な場 所に設置すること 1000 人の観客に対し、少なくとも ★★★ 洋式トイレ 5 台、男性の観客 1000 満たしていない。(制裁措置対 象) 人に対し、男性用小便器 8 台を備 えること 洗面台が設置されていること ★★★ あり ハンドドライヤー、おむつ替えベ ★★★ 満たしていない。(制裁措置対 ッドを設置すること 象外) 多目的トイ 車椅子席からアクセス可能な場 レ 所に、席数に応じた数を設置する ○ こと 場外のトイ 開門前に使用できるトイレが観 レ 客用ゲート付近にあること ★★★ あり (検査基準) ○ – 必ず具備しなければならない条件 B – 2017 年 6 月までに必ず具備しなければならない条件 ★★★ – 具備が必要とされるものの、期限については今後検討を続けていく条件 C – 具備することが望まれる条件 9 2 スタジアム建設基本戦略の策定 (1)スタジアム整備の位置づけ ア サッカーの確立と日本におけるサッカーの普及 スポーツは人類が誕生してから、祭事や遊戯として行われてきたが、中には日本 の“蹴鞠”やイタリアでの“カルチョ”など、サッカーに似たものも各地で行われ ていた。その後、現在のような競技として体系化されたのは 19 世紀のイングラン ドであったと言われており、ボール一つで手軽に遊べ、ルールが簡単なことから、 サッカーは地域の歴史に裏付けられたアイデンティティやナショナリズムを高揚 させるスポーツとして人気を博した。今日では最も人気の高いスポーツして世界中 の人から親しまれている。 サッカーが日本に紹介されたのは明治時代に入ってからで、学校教育の一環とし て取り組まれるようになった。日本においてプロスポーツやオリンピックなどトッ プスポーツの振興は、長年、企業が企業スポーツとして担ってきたが、強化政策が 企業の業績に左右されるなど、課題も多かった。 こうした現状に新たな可能性を示したのが、1993 年の J リーグの開幕である。J リーグが地域密着のクラブ運営を成功させたことで、一つのビジネスモデルとなり、 バレーボールやバスケットボールなど、他のスポーツがプロ化するきっかけとなっ た。また、プロ野球が地域を意識するようになったのも、J リーグの与えた影響が 大きい。J リーグに加盟するクラブ数も年々増加し、着実に成長するとともに海外 リーグで活躍する日本人選手の姿は、多くの人に夢と希望を与えている。 イ 山形県におけるサッカー 山形県では、べにばな国体をきっかけにスポーツの強化が図られた。山形銀行で は女子バスケットボールのライヤーズ、東北パイオニアではパイオニアレッドウィ ングス、NEC 山形ではモンテディオ山形の前身であるサッカー部が強化された。そ の後、J リーグ唯一の社団法人が運営するプロサッカークラブとなり、2008 年、2014 年にはJ1昇格を達成することができた。2 度のJ1昇格などで、他クラブのサポ ーターが山形県に訪れる交流人口の増加など、県外に山形をアピールする機会を創 出でき、地域活性化のひとつのモデルとして成立している。 ウ 山形県におけるスタジアムのあり方 山形県におけるプロサッカーは、山形県に訪れる交流人口を増やし、夢と希望を 与えるための重要なコンテンツとなっている。地元から愛されるチームが素晴らし いプレーを展開することで、人々の心をつなぎ、地域への貢献を増していく。こう したプレーの舞台となる山形県のスタジアムは、“地域の象徴となるスタジアム” となることが望ましい。 スタジアムが存在することによって、地域への誇りとアイデンティティが高揚す る。また、交流が活性化し、コミュニティが醸成されたり、スポーツに対する関心 が高まったり、観光が振興されるとともに新たな経済効果が創出され、地域経済が 活性化するなどの効果が期待される。 10 (2)スタジアム建設基本戦略(案) ア 新スタジアム構想検討委員会が考える、スタジアムのあるべき姿 Jリーグは百年構想のもと、着実に歩みを進め、地域社会における位置付けをよ り確固たるものとしている。これからもこの歩みに沿った展開を図るためには、時 代の潮流にあった変革を受容することから始める必要がある。Jリーグが発足して 20 年が経過し、この間日本代表はワールドカップベスト 16 への進出を果たすなど、 サッカーのレベルは飛躍的に向上した。またJリーグのクラブ数は、当初の 10 か ら 52 を数えるまでとなり、地域に欠かすことのできない存在にまでなっている。 しかしながら、20 年前と比較して社会を取り巻く環境は大きく変化しており、特 に地方都市は少子高齢化、過疎化と都市への一極集中、地域産業の衰退など、課題 を多く抱える。そのような環境の中で「スタジアム」の位置付けを考えた時、ただ 単にスポーツを「観る」「魅せる」という目的に留まらず、地域の住民がそのスタ ジアムを誇りと感じ、地方文化と人々、ビジネスの交流拠点の中核を担い、その地 域に脈々と根付き、街のランドマークとして確立する必要があると考える。 <スタジアムが提供する価値・方向性> 都市課題解決(地域・まちづくりに対する貢献)の起爆剤となるスタジアム ・複合型施設による収益基盤の確立 → 多角的利用の促進による地域活性化、公 的資金に依存しない経営の実現 ・災害時の地域における防災機能としての役割 → 危機管理、安心安全な街づく りの推進 ・街のランドマークとしての役割 → 地域住民の意識高揚、地域愛の醸成 地域の産業活性化に寄与できるスタジアム ・ビジネスコミュニケーションの機会提供 → 新たなビジネス創出 ・アウェイツーリズムの展開 → 観光立県を推進する山形ならではのホスピタリ ティの向上 ・多機能複合施設化 → スポーツ観戦のみならず住民の生活拠点として確立(試 合がなくても、何か楽しみがある、多様な交流を生む) スポーツ文化振興へ持続的に寄与できるスタジアム ・スタジアムを拠点としたスポーツ、文化振興→未来の担い手の育成(する・観る・ 支えるが揃った) 11 3 基本戦略に基づく必要機能の整理 (1)スタジアム規模 スタジアムを建設する上で収容人数は、敷地条件やコスト等に直接影響し、建築計画 そのものに与える影響が大きい。JFAのスタジアム標準においては、開催する試合に 応じてクラスSからクラス4まで設定しており、当検討委員会においては、Jリーグ規 格のスタジアムを対象としているため、クラスS(ワールドカップ)、クラス1(J1)、 クラス2(J2)が検討対象となる。 収容人数の設定にあたっては、開催する試合に加え、地域性・市場性等を勘案し、適 正な観客動員数を想定する必要がある。収容人数が小さい場合、それが制限となって、 観客数を増やすことができず、成長の制限となっている例がある。反対に収容人数を過 剰に設定した場合、観客数が多いにも関わらず、場内が閑散として盛り上がらないとい うスタジアムもある。客席が満員に埋まり、観衆の声援や興奮がスタジアム全体を「渦 巻く」環境こそ、サッカー観戦の魅力であり、顧客満足度を高めることができる。 表 5 スタジアムのクラスと対象となる大会(リーグ)一覧 クラス 収容人数 対象となる大会(リーグ) クラス S 40,000 人以上 FIFA ワールドカップ、AFC チャンピオンズリーグ(決勝トー ナメント)、日本代表(A代表)公式試合等 クラス 1 20,000~40,000 人 AFC チャンピオンズリーグ、日本代表(オリンピック)公式試 合、J1 等 クラス 2 15,000~20,000 人 日本代表(U20)公式試合、J2 等 クラス 3 5,000~15,000 人 日本代表(U17)公式試合 クラス 4 ~5,000 人 地域リーグ決勝、JFL ※対象となる大会(リーグ)は上位のものは下位の大会を含む。 ※上記は日本サッカー協会の施設基準であり、Jリーグ基準とは異なる。Jリーグの開催基準は、J1 (15,000 人以上) 、J2(10,000 人)となっている。 12 表 6 (参考)モンテディオ山形の年度別入場者数(出典:http://footballgeist.com/より抜粋) 14,000 12,057 12,000 11,710 10,031 10,000 9,326 8,000 6,000 4,000 7,356 7,020 6,349 6,421 6,273 5,949 5,086 4,391 4,371 4,244 3,755 3,468 2,981 2,000 0 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 図 2 各年度の平均入場者数 表 7 モンテディオ山形観客動員トップ 10 13 2014 2016 (2)スタジアムの用途(対象競技) 新スタジアムを建設する上で、どういった競技が実施できるスタジアムとするのか、 サッカー専用、サッカー・ラグビー兼用、陸上兼用と大きく 3 つに分けた。 一般的に、スタジアムは汎用性が高まることで、活用頻度が向上する。そうすると、 要望する人々や団体が相対的に増加することから、建設に向けた理解も得やすい。し かし、この度のスタジアム整備の方向性においては、現在の陸上競技場併設では、臨 場感がなく、サッカーを観戦する上でのダイナミックさに欠けること、山形県に第 1 種の陸上競技場がすでに存在すること、芝生管理の面から、現在の ND ソフトスタジア ム山形の年間のピッチ部分の使用限度は 50 日となっており(サッカー関連の使用がお よそ 3/5 を占めている)、その他競技者の使用を限定していることなどから、サッカー 専用、またはサッカー・ラグビー兼用の球技場に絞ることとする。 表 8 各分類における特徴など 対 象 サッカー専用 105m×68m 仕 様 サッカー・ラグビー兼用 陸上兼用 118m×71m(キンチョウスタ トラック(400m)等様々な設 ジアムの例:芝生部分) 備が必要。 サッカー、ラグビー、アメ フト可 IAI スタジアム日本平 キンチョウスタジアム ND ソフトスタジアム山形 清水エスパルス HP より セレッソ大阪 HP より J リーグ HP より 写 真 ( イ メ ー ジ ) メ リ ッ ト トラックがなく、客席との距離が 近い。 選手の息遣い、指示、交錯する音 が感じられ、臨場感が高い。 スタンドの角度が高く、劇場とい う趣。 屋根が設置され、ホスピタリティ が高い。 見やすい。臨場感がある。 陸上競技の大会が開催でき ラグビー・アメフト等の大 る。 会も開催できる。 デ メ リ ッ ト サッカー以外での活用が難しい。 ラグビー・アメフトの大会 トラックがあり、客席との を開催すると、芝が荒れる。 距離が遠い サッカー、ラグビー、アメ 臨場感が少ない。 フト以外の活用が難しい スタンドの角度が低い。 多くは屋根がない(少ない) 現 状 山形には J リーグが開催できる 専用施設は存在しない 山形には J リーグが開催で 山形に存在する きる兼用施設は存在しない サッカー専用スタジアムと、サッカー・ラグビーが兼用できるスタジアムの違いは、 サッカースタジアムより兼用のスタジアムの方がトライするためのインゴールのスペ 14 ースがあることである。サッカーの場合は、105m×68m とフィールドのサイズが決ま っており、ボールボーイが行き交うスペースや看板の設置などに対応するため、105m ×68m にピッチの外側 5m を余剰にとる必要がある。その他に芝刈り機の折り返しスペ ースとして 3m ほどをタータンや人工芝で舗装しているところが多いため、フィールド のサイズとしては 121m×84m 以上がベースとなる。一方、ラグビーの試合を実施する 場合は縦 100m以内+インゴール 22m以内×2、横 70m以内と特に定まった規格がある わけではない。2015 年に開催されたラグビーワールドカップでは、ほとんどがサッカ ースタジアムで開催されたことを鑑みても、105m×68m のピッチでラグビーの試合を 開催できないわけではないが、インゴール部分と芝生部分と芝刈り機が折り返すため の舗装部分を考えると、サッカー専用スタジアムよりも一回り大きいサイズであるこ とが多い。そのため、よりダイナミックで臨場感溢れるスタジアムにするためには、 サッカースタジアムが望ましい。 また、スタジアムを活用する対象競技が増えると使用頻度は増加するが、同時に芝 生のメンテナンスにも気を使うこととなる。サッカー・ラグビーが兼用できる球技場 はその通りで、ラグビー、アメフトなどは、サッカーよりもボディーコンタクトが激 しく、芝生への影響が大きいものとなる。 前述のとおり、対象競技が増えることで、よりスタジアムの整備に向けた理解が得 やすいものとなるが、球技場よりも近くで観戦できるダイナミックな臨場感、芝生の メンテナンスの難しさ等を鑑み、当検討委員会としては、サッカー専用スタジアムを 整備するべきであると結論付けた。一方、サッカーのみを対象競技とすることで、ス タジアムの使用頻度が低下することを考えると、スタジアム自らが収益を生み出す方 向性を探る必要がある。 図 3 スタジアム規模等の方向性 15 (3)基本機能に基づいた施設整備 ア 機能配置と動線計画 スタジアムを整備する上での重要な検討事項として「機能配置」と「動線計画」 が挙げられる。サッカーの試合には多くの観客や関係者が訪れ、セキュリティ等の 関係から、人によって立ち入りを制限しなければならない場所がある。スタジアム を利用する人を大きく区分すると、 「観客」、 「選手・運営スタッフ」、 「報道関係者」 になり、これらの利用者は、それぞれの目的や利用内容が異なるため、必要とする 機能や施設が異なり、混在させることはできない。特に観客とそれ以外の利用者に ついては、安全管理の問題から明確に分ける必要がある。関係者についてはパスや ビブスなどを着用させ区別する必要があり、「選手・運営スタッフ」と「報道関係 者」についても、セキュリティの関係から、立ち入りを制限する必要がある。その ような点で、動線についても重ならないように配慮しなければならない。 さらに観客については、一般の観客と VIP に分類することができる。VIP は、 スポンサー等が含まれるため、一般の観客と入口や動線を分けることが必要であり、 入場から退場まで、十分なホスピタリティを提供することが重要である。 図 4 スタジアム諸機能の関連性(機能配置と主要動線) 出典:JFA「スタジアム標準」をもとに当クラブにて作成 16 ○競技機能 J リーグの試合が開催できるスタジアムは天然芝で、平坦性、常緑、水はけがよく、 ピッチ全体を覆っていることが求められる。現状は以下のとおりである。 表 9 ND スタジアム山形における現状の競技機能 競技機能 機 能 ND スタの状況 ピッチの広さ(105m×68m)、ゴール、チームベンチ、第 4 の審判員ベンチ、ス あり コアボード、時計(45 分 計)、メンバー掲示板、掲揚ポール 場内放送システム あるが臨場感に乏し い ピッチ周囲の広告等看板 LED 広告が主流 ピッチの規模は長さ×幅=105m×68m となり、これに選手の安全を守る芝生面の余 幅がサッカー・球技兼用の場合 5m 以上と定められている。他にも芝刈り機が折り返す ための幅 3~5m のタータンや人工芝ゾーンを設ける必要がある。方位については、観 客・関係者、テレビカメラ等が西日の影響を受けないよう、メインスタンドを西側に 配置することが基本となる。 通常、プレーレベルが高くなるにつれて施設への要求も高くなるが、サッカーとい う競技の特性上、芝の状態によってボールの走りが異なり、イレギュラーの原因とな ることもあるため、品質と密度の高い芝生が必要である。 ピッチと芝刈り機折り返し用の人口芝切り替え部分 (南長野) 芝生に風を送る手動式ルーバー(南長野) また、スタジアムは観客席が周囲を取り囲みことになる。夏暑く、冬寒いという特 徴のある山形県の風土(ホームゲームを開催するため、毎年 2 月からほぼ人力で行っ ている除雪作業、3 月のホームゲーム時の 0℃に近い気温で降る冷たい雨、30℃を超え る真夏の西日など)にとって、スポーツを観戦するにはハードな山形の天候を和らげ てくれる屋根とスタンドの横から吹く風を防ぐ防風壁も当然整備される必要がある。 こうした点は、2016 シーズンが 2 月に開幕する点、シーズンが春秋制から秋春制に 移行される可能性があることからも、十分に配慮されなければならない。また気温、 17 降雪は芝生の生育にも影響するため、アンダーヒーティングなどの融雪機能、地表温 度を低下させるクーリングシステムなどの導入も検討するべきである。また、近年、 天然芝よりも 3 倍もの耐久性のある、天然芝を人工芝と同時に活用したハイブリッド ターフなども開発されており、Jリーグにも認可される可能性があるため、今後の動 向を注視する必要がある。 屋根や防風壁が整備されるべきであること はすでに述べたが、一方で、明るく風通しの 良い環境を好むスポーツターフにとっては、 その環境が生育の制限要素となっている。国 内のいくつかのスタジアムは、スタンドと屋 根によって芝の生育が芳しくないスタジアム が存在するため、採光性、通風、散水方法等 も踏まえ、スタジアムデザインを検討する上 で配慮すべきである。 外壁が開閉式のため、天然芝の育成のための通風が確保 されている(バーゼル) vol.216 J LEAGUE NEWS より ○選手関連機能 選手のためのチーム更衣室やシャワー室、審判、監督室の他、室内ウォーミングア ップエリア、専用のマッサージ室が必要である。これらは、ホーム、アウェイ両チー ムのものが必要であり(1日で2試合などする場合はチーム更衣室を4つ配置するな どの工夫が必要)、各機能はセキュリティの関係上、報道関係者や観客が立ち入れない ようにする必要がある。また、ドーピング検査が実施されるため、ドーピング対象の 選手や医師、ドーピングコントロールオフィサーが試合後に待機できる諸室も必要と なる。 表 10 ND スタジアム山形における現状の選手関連機能 競技機能 機 能 ND スタの状況 チーム更衣室、トイレ・シャワー室 あり 審判員更衣室、マッチ・コーディネーション・ミーティング室、室内ウォー あるが問題あり ミングアップエリア、ドーピングコントロール室 監督室、バスタブ なし 18 監督室(南長野) チーム更衣室(吹田) 温水シャワーだけでなく、バスタブも完備(リスボン) J リーグ スタジアムの未来より 室内ウォーミングアップエリア(南長野) ○運営管理機能 運営本部室は、試合やイベントの進行、安全管理や公式記録などすべての情報が集 まる運営の要となる。そのため、管理や不慮の際に動きやすいよう、ピッチへのアク セスに優れた場所に整備する。 照明は 1500 ルクスの照度が必要であり、大型映像装置をはじめ、スタジアムは多く の電気を使用している。このため、万一の電源喪失などに備え、非常電源を用意する ことが必須である。 表 11 ND スタジアム山形における現状の運営管理機能 競技機能 機 能 ND スタの状況 運営本部室、場内放送室、医務室、警察・消防指令室兼控室、大型映像操作 あり 室、照明設備、予備電源、報道関係者PC用電源 トイレ、待合室、セキュリティモニター監視室 あるが数が足りない など問題あり 放送機器用配管 なし 19 医務室(南長野) 運営本部室(南長野) 場内放送室(南長野) ○広報(メディア)関連機能 Jリーグの開催試合には中継やニュース放送、出版のために多くの報道関係者が訪 れる。これらは、試合の注目度によっても、要求される機能が異なる。特に国際試合 については、海外からの報道関係者も来場するため、対応できるようにサインなどの 準備が必要である。 表 12 ND スタジアム山形における現状の広報(メディア)関連機能 競技機能 機 能 ND スタの状況 記者席、テレビニュース関連 ENG カメラ設置スペース、伝送用機材設置スペース あり 記者室、記者会見室、ミックスゾーン、フラッシュインタビューポジション、テレ ビカメラ設置スペース、ケーブル設置スペース、中継用実況放送室(テレビ、ラジ あるが問題あり オ) 、カメラマン室 メディア専用入口・受付、オフサイドカメラ なし 20 記者会見室(南長野) 記者席(アルウィン) ○観戦機能 サッカーをエンターテイメントとして楽しむ時に、重要な機能が観戦機能である。 非日常感を煽り、観客の観戦満足度を高めるためには快適な観戦環境が必要であり、 「全席個席であること」や「ゆったりとした座席の幅」、「背もたれの設置」等の基準 が定められ、さらに快適性を高めるため、 「できるだけ多くの観客席を屋根で覆うこと」 が定められ、「すべての観客席を屋根で覆うこと」が推奨されている。 試合には多くの観客が訪れるため、その安全確保は重要な要素である。特に観客は 時として、重大な事故を招きやすいため、円滑な動線を確保することが重要である。 ピッチとスタンドの高さが同じというゼロタッチのスタジアムは、災害時にピッチへ の避難が容易であり、ハイレベルな観戦環境も備えるため、新スタジアム建設の潮流 となっている。 また、サッカーの場合は、休憩が試合のハーフタイムに集中するため、飲食や休憩 を行うコンコースは十分な広さが必要である。コンコースを開閉式強化ガラス窓で外 と仕切ると見晴らしも良く、ラウンジやサロンとして利用できる。トイレも十分に確 保する必要があり、南長野運動公園総合球技場のように、混雑時にもスムーズに利用 できるよう入口から出口までを一方通行としたり、空いたトイレが一目でわかるよう サインを取り付けるなどの工夫が必要である。近年は男子トイレついても乳児対応(お むつ替えベッド)のニーズが高く、バリアフリーの概念が定着しているため、身障者に も十分に対応する必要がある。 表 13 ND スタジアム山形における現状の観戦機能 競技機能 機 能 ND スタの状況 入場券売り場、入場ゲート、喫煙スポット、飲食売店、総合案内所、グッズ売 あり り場等 観客席(個席)、屋根、授乳室、救護室、トイレ、コンコース、入退場者待機 あるが問題あり スペース カップホルダー なし 21 一方通行のトイレ(南長野) カップホルダー付のシート(南長野) ラウンジなどとしても利用できる快適 なコンコース(スイスのザンクトガレン) 4 つのスタンド全て、一層目と二層目の間にビジネスラウ ンジを備え、もちろん屋根もついている(エスパニョール) vol.216 J LEAGUE NEWS より ○安全管理機能 スタジアムには万を超える規模の人が集まるため、安心、安全に観戦できることが 特に重要であり、選手や関係者とファンが接触することは避ける必要がある。 また、災害が起きた場合の避難誘導や緊急医療対策、テロ対策等、様々な事態が想 定されるため、それぞれの対策が必要である。 表 14 ND スタジアム山形における現状の安全管理機能 競技機能 機 能 ND スタの状況 非常用トイレ、非常用電源/非常用照明、警備本部室、フェンス、避難経路、 あり 侵入防止柵、テレビ監視システム、避難所、火災警報装置、AED、貯水槽 ヘリポート、情報関連施設、備蓄倉庫等 なし ○VIP 対応機能 VIP の満足度は、クラブを持続的に運営していく上で重要な要素となっており、そ のホスピタリティを向上させることで、支援の輪が広がることが考えられる。 VIP 用エントランスを設けるなど、一般の観客と違う動線を利用し、観客席も一般 と明確に分かれている必要がある。特に最高位の VIP には、ホストがもてなし、お酒 を飲みながら食事をして、試合を観戦するなど、心から楽しんでもらうことでコミュ ニケーションがスムーズになり、クラブをより大きく支援してくれるようになったり もする。 また、こうした施設は試合を行っていない日でも会議や集会、レストラン、スタジ アム結婚式など多目的な利用も可能となるため、ニーズの把握と活用しやすい環境を 整備することで、収益をあげることが可能となる。 22 表 15 ND スタジアム山形における現状の VIP 対応機能 競技機能 機 能 ND スタの状況 VIP 用駐車場 あり VIP 席、VIP ラウンジ、VIP 用入口 あるが問題あり スカイボックス なし VIP ラウンジ(南長野) VIP ラウンジ(マインツ) VIP ラウンジ(ザンクトガレン) ○その他諸室 モンテディオ山形の試合では、少なくとも数百人の関係者が携わり運営している。 そうした関係者の控室やイベント時の待合室などが必要となる。 表 16 ND スタジアム山形における現状のその他諸室機能 競技機能 機 能 ND スタの状況 ボランティアスタッフ控室、ボールパーソン控室、エスコートキッズ控室、 あるが問題あり マスコット・演出関係控室 セキュリティスタッフ控室、前座試合用チーム更衣室、現金管理室 23 なし 図 5 スタジアム諸機能配置イメージ 24 (出典:JFA「スタジアム標準」より抜粋) (4)観戦者のホスピタリティ向上策 基本的な機能以外にスタジアムの価値をより向上させ、素晴らしい観戦経験をもた らすためには、競技者、運営者だけでなく、観戦者にとっても居心地がよく、まさに ホーム(自宅)のようなスタジアムが求められる。年代、性別、国籍など多種多様な観 戦者が来場するスタジアムにおいては、それぞれの立場での使いやすさは異なるため、 特に女性、子供、シニア世代、障がい者にとって優しいスタジアムが、山形という地 域にマッチしたものと考える。 ○ハイレベルかつダイナミックな観戦環境 スタジアムが非日常的な空間であるには、山形県民のほとんどがかつて経験したこ とのない、まさに欧州で「アリーナ」(劇場)と呼ばれるような、選手の息遣い、指示、 交錯する音が感じられる臨場感の高い観戦環境であることが求められる。 客席からピッチが可能な限り近いこと 可能な限り、ピッチから観客席までの距離を近くすることで、より高い臨場感 を味わうことができる。ただし、選手とサポーターとの距離(大旗)など、安全 に競技できることは大前提。最新のスタジアム(南長野、吹田、北九州)は従来 のスタジアムより、ピッチとの距離が近く設計されているため、その辺の情報 を入れながら検討する必要がある。 スコットランドリーグでは毎シーズン、 「最も雰囲気の良いスタジアム」が表彰 される。エジンバラのタインキャッスルスタジアムは、2 年連続で受賞した。 その理由は、スタンドとピッチの距離の近さだった。 市立吹田サッカースタジアム イメージ図 ピッチとスタンドの距離参考(推測値) カシマ・・・メイン・バック 15m、サイド 15m 埼スタ・・・14m 南長野・・・メイン・バック 11m、サイド 11.5m 吹田・・・メイン・バック 7m、サイド 10m 25 客席最前列がピッチ目線(ゼロタッチ)でスタンドの傾斜が高いこと 客席の最前列がピッチと同じ高さ(ゼロタッチ)であることは、選手と同じ目線 でサッカーを観戦することができる。ゼロタッチは災害時の避難誘導の際に観 客をピッチに逃がすことにも役立つ。また、スタンドの傾斜が高いことで、ピ ッチから離れることなく、俯瞰で観戦することができるため、観客のニーズに 応えやすい。しかし、観客との安全な距離や乱入防止、傾斜が高い場合の柵な どの対策を講じる必要がある。 最前列の席はピッチと同じ目線に(スイスのバーゼル) J リーグ スタジアムの未来より 傾斜が高い(豊田スタジアム) 豊田スタジアム HP より 全席屋根付、防風壁が備わっていること 全席に屋根がつき、防風壁を備えていることで観客が雨、雪、風にさらされるこ となく、観戦することができる。この屋根、防風柵は観戦環境を向上させるだけ でなく、声援をスタジアム内に反響させ、応援に一体感と更なる興奮を与えるこ とができる。 26 ハイレベルな観戦環境 全て個席で、ドリンクホルダーが付いているというような、ゆったりと観戦でき るシートが備えられること。通常のシート以外にも、テラスシート、ボックスシ ートなど顧客のニーズに沿った様々な観戦スタイルを提供することで、満足度を 向上させることができる。そのほか、コンコースからピッチが見渡せるように設 計されていると、プレーの決定的瞬間を逃さずに済む。 また、最近のスタジアムには「ともに食べる」ことを楽しむ社交ラウンジが増え ており、VIP のラウンジ以外にも、ビジネスラウンジ、一般向けラウンジ、スカイ ボックスなどがあり、バーカウンターを備えるものもある。 <ビジネスラウンジ> ビジネスラウンジはスポンサーが顧客を招待したり、特別な日を過ごしたい人の ために「ホスピタリティー・パッケージ」として販売されている。お酒を飲みな がら、試合の興奮にほほを染め、できたての食事に舌鼓をうち、サッカー談議に 花を咲かせる。まさに大人の社交場である。 写真は J リーグ スタジアムの未来より ラウンジの円形テーブルに集い、キック オフ前の時間を楽しむ(エジンバラ) ゲストに満足してもらえるような雰囲気を 醸し出す(エジンバラ) 試合後のティーサービス(英国のシェフィ ールド・ユナイテッド) 一般向けラウンジ メインスタンドの観戦チケット、ビュッフェ形式の食事とティーサービスが付き、 日本円で一人約 1 万 4000 円。ラウンジ運営には、充実したケータリング設備とサ ービスが前提である。(マクデブルク)コンコースをガラスで仕切り、テーブル、 イスを置くだけで簡易的なラウンジにもなる。 写真は J リーグ スタジアムの未来より 一般客向けのラウンジ(マクデブルク) 27 シンプルなラウンジ(デュイスブルク) スカイボックス(個室) スカイボックスは年間契約した企業が、独自の室内インテリアを施した 10 人前後 収容の試合のない日も商談や会合に自由に利用できる。 写真は J リーグ スタジアムの未来より J リーグ スタジアムの未来より スカイボックス。契約企業は独自にインテリアをデザイン(ともにヴォルフスブルク) 100m の長さのビジネスラウンジ。地元企業がピッチをイベント利用し、これ から会食が始まる(ルツェルン/スイス) vol.216 J LEAGUE NEWS より メインスタンド一段目は客席、2 段目はまるごとビジネスラウンジ、3 段 目はスカイボックスと VIP ラウンジとなっており、ホスピタリティ、非日常 感が高い(ホッフェンハイム) 28 ビジネスチャンスが広がる名刺ボックス(ベルン) J リーグ スタジアムの未来より 相撲の升席のようなマルチボックスとテラスデッキ(南長野) 6 か所のラウンジと 20 か所の個室には 2000 人が入る(吹田) 臨場感と楽しさを向上させる演出が行き届く映像と音声装置 試合前のイベントや、選手紹介やハイライト 映像以外にも、スタジアムの演出を盛り上げる ためには、映像と音をフル活用できる機材とそ の配置が必要となる。プロジェクションマッピ ングなど、新たな演出ができるような環境も検 討の価値がある。また、コンコースや授乳室、 キッズスペースなど、ピッチを見渡せない所に、 テレビ映像の放送などハイレベルなメディア 環境を整備することで、決定的プレーを見逃さ ず、観戦を楽しむことができる。 客席 1 ブロックごとにあるスピーカーが臨場感を向 上させる(南長野) ○みんなに優しく、安心安全なスタジアム スタジアムは、多種多様な人々が集まる場所であり、そうした人々に対し優しさ と安心と安全を提供できるスタジアムというのが、山形に合ったスタジアム像では ないかと考える。みんなに優しく、安心安全なスタジアムとは、子どもからお年寄 りまでが安全で快適に、多様な観戦スタイルに対応でき、ユニバーサルデザインに 配慮した、次世代型のおもてなし空間を提供できることである。 有事の際の避難動線が考えられ、安全で 安心なスタジアムであること。 バリアフリー化され、高齢者に優しい施 設であること。 トイレがきれいで、パウダールームを備 えるなど、女性に優しい施設であること。 充分な数の多目的トイレ、障がい者用駐 車場、点字案内図があり、車いすでその パウダールームが備えられている(刈谷ハイウェイオアシス) 写真は刈谷ハイウェイオアシス HP より まま席まで移動できたり、視覚障がい者が 実況を聞きながら、観戦できるなど、障がい者に優しい施設であること。車い す席は、ゴールシーンなどで、前の観客が立ち上がった際に見えなくならない ように配慮する必要がある。 29 J リーグ スタジアムの未来より J リーグ スタジアムの未来より 車椅子用の専用リフト(マクデブルク) 視覚障がい者のための実況放送(ヴォルフスブルク) 国際サインが分かりやすいなど、外国人に向けたサインの充実 子育て世代が夫婦や友人と、または一人で 子どもと来場しやすいよう、授乳室や託児 所を各スタンドに設けるなど、設備を充実 させる。それぞれの部屋からは試合が見ら れるように窓付きにしたり、専門のスタッ フが付くなど、環境を向上させることで、 子連れでは来にくいという要素をなくすこ とが重要である。平日でも利用できるよう、 オシャレなカフェを設けたり、遊具をとも なったキッズスペースを機能させると、よ り効果的である。 ピッチが見渡せる託児所(南長野) スタジアム内の託児施設(ヴォルフスブルク) 保護者も安心のキッズスペース (ヴォルフスブルク) 赤い看板の下のブロックがファミリースタンド(ドレスデン) 3 枚の写真は J リーグ スタジアムの未来より インナーコンコースを設置し、夏の日差し、冬の寒風から観客を守る。コン コースは開閉式強化ガラス窓でピッチ側を仕切ると試合も観戦でき、ラウン ジやサロンとして利用できる。また、イベントやフリーマーケット等で活用 できるようにすることで、楽しみの提供が可能となり、試合のない日でも活 用することが可能となる。 30 ○「山形」の特色を生かしたローカルスタジアム J リーグでもトップクラスのスタジアムグルメ 現在でも、モンテディオ山形のスタジアムグルメは、山形を代表する名店が 軒を連ね、J リーグ関係者、サポーターなどを中心に高い評価を得ている。 名物、特産物などを生かしたグルメゾーンを充実させ、スタジアムだけで「山 形の食を満喫」できるようにすることで、縁日やお祭り気分を味わうことが できる。その際、ホーム側のサポーターだけでなく、ビジターサポーターも 堪能できるよう、導線に注意した店舗配置等の配慮が必要となる。 温泉地「山形」の特色を生かした施設 足湯につかりながら試合を観戦したり、温泉を活用した融雪設備を採用した り、地中熱を活用した冷暖房設備を導入するなど、温泉地山形の特色を生か した施設を整備することで、内外に「温泉地山形」を PR できる。 ○環境にやさしいエコスタジアム 人だけでなく、環境に優しいというのは、新しいものを創造する上で、必要不可 欠なキーワードである。 太陽光発電の設置(スイスにあるベルン・ ヤングボーイズのホームスタジアム、スタ ッド・ドゥ・スイスの屋根の全面に設置さ れたソーラーパネルは、4,500 ㎡と世界一 の面積。年間 150 万 kw(約 500 世帯分) の電力を生産して地元電力に供給する。太 陽光発電に関する「体験学習センター」が 屋上に設けられている。) 屋根のほとんどがソーラーパネル(ベルン) 写真は京セラ(株)提供 雨水の再利用(トイレや芝生への散水など) LED 照明や LED 大型映像装置、有機 EL 照明などの積極採用 LED 照明(カシマ) 山形県知事室の有機 EL 照明 31 リユースカップや食器を使用するなど、ゴミ削 減やリサイクル促進を図る。 飲み物購入の際に は、リユースカップの保証金を預け、カップを 返却すれば戻る仕組み。カップはクラブ独自の デザインで、そのまま家に持ち帰ることもでき る。フライブルク(ドイツ)で初めて導入され、 年間約 100 万個の紙コップのゴミが消滅した。 リユースカップはクラブ独自のデザイン(左は アイントラハト・フランクフルト、右はボルシア・ ドルトムント。ともにドイツ) J リーグ スタジアムの未来より 温暖化ガス削減のために、徒歩や自転車、アク セスの良い公共交通の利用を促進する。 ○防災拠点となるライフスタジアム スタジアムは万単位の収容能力があるため、それに伴う生活施設(トイレ、シャワ ー室、更衣室、厨房、外気を遮断したコンコースなど)が充実していることや、情報 や通信の設備が完備されていること、医療施設が整備されていることから、地域にお ける防災拠点として活躍できる。そのほか、自立性のある施設(エネルギー、備蓄倉 庫、貯水槽)が整備されることで、より安全で快適な防災拠点となることができる。 特に街なかにある場合は、ここまでの収容能力がある施設は皆無に等しいため、地域 住民にとって大きな心の支えとなる。 災害対策の拠点に欠かせない情報収 集機能(英国のウェストブロムウィッチ) 避難者への情報提供、告知、誘導 機能も果たす(英国のボルトン) 負傷者の応急手当て、医療機関への誘導の中核と なる医務室、救護室。ドイツのバイエルン・ミュンヘン の施設 3 枚とも J リーグスタジアムの未来より 32 (5)諸機能の複合化による収益向上 サッカーでの利用は年間 20 試合程度であることから、施設使用料だけでは必要な管 理費を捻出することが難しい。一方で、芝生のコンディションを保つためには、無制 限に利用を増やすこともできない。そのため、スタジアムにどういった機能を付帯さ せることで、収益の向上を図れるかを考える必要がある。 図 6 スタジアムにおける収益確保イメージ ○複合施設化、または多機能なまちづくり(スタジアムはまちづくり) スタジアムは 2 週に一度、多いときには万人単位の巨大集客装置となる。千人単位 となるビジターファンやサポーターも、試合の前後は「観光客」であり、交流人口が 増えることで地域に活性化と経済効果をもたらす。街なかにあれば、アクセスが徒歩 中心となるため、滞留時間が増え一層の経済効果が考えられる。 街づくりの観点で考えると、街なかにスタジアムを建設し、それ自体に収益の向上 を図れる施設を複合化するパターンと、郊外の再開発プロジェクトの核として、スタ ジアムを建設し、面開発の複合型の街づくりが行われるような 2 つのパターンがある。 前者はスタジアム内に施設を複合化するため、建設コストが高いがどういった施設を 入れるかという部分でコントロールはしやすく、後者はスタジアム単体の建設となる ため、それ自体のコストは低く済むが、周りに何を併設するかという部分では、コン トロールしにくいという関係となる。そうした関係を考慮しながら、スタジアム整備 を進めていくべきである。 スタジアム内 複合施設化 高 建設コスト 低 易 コントロール 難 図 7 複合施設化、施設併設のイメージ 33 スタジアム外 施設併設 ○収益の向上が図れる機能事例 テナント貸出(オフィス、ショップ等) ショッピングセンター・シアター・スポーツアミューズメント等、大規模施設 の誘致やテナント貸出。山形は遊ぶ場所が少ないという意見があり、そうした 点をクリアすることで、全世代の誘客を図る。また、ホテルや住居なども考え られる。 来県したビジターサポーター向け観光案内施設 J1 では平均 1,000 人のビジターサポーターが来県する。そうした県外の方に山形 の魅力を余すところなく伝えられる施設の整備も必要である。観光案内施設やラ ーメン博物館のような「そば博物館」、産地直送の店など、山形県ならではの観光 訴求施設が必要である。 大型 MICE 機能 有名アーティストのコンサートや大型のイベント誘致、展示場、会議室を備え貸 し出す。様々な全国的な大会や会議を誘致することで、使用頻度を向上させ、交 流人口と共に収益を生み出す。 高齢者用住居などの高齢者施設 日本全国で高齢化が進んでいる中、山形 県も例外ではないが、スタジアムに高齢 者住宅を複合化した例もある。バーゼル のザンクト・ヤコブ・パルクには、107 戸 の介護付き高齢者用集合住宅が併設され ている。居住者専用観戦ラウンジは、サ ッカーファンの孫や家族との団らんの場 になっており、コミュニティを生み出す と共に、なくてはならない存在となって いる。 バーゼルのザンクト・ヤコブ・パルク おいしい山形を取りそろえたレストラン スポーツ施設ならではの健康食やアスリート食、女性が喜ぶオシャレなカフェや、 子供と一緒に来やすいレストラン、スポーツバーを備えることで、平時から人々 が回遊できるようにする。 子供たちが自由にのびのびと安全に遊べる子育て支援施設 山形市児童遊戯施設「べにっこひろば」や天童市子育て未来館「げんキッズ」な ど、親子が自由にのびのびと安全に遊べる場というのは、人々が集いやすい場と なる。そうした場所を整備し、モンテディオ山形とコラボレーションさせること で、よりクラブを好きになってくれる人が増える。 34 県民が気軽にスポーツに取り組める健康増進施設 県民が気軽にスポーツに取り組めるように温水利 用型健康運動施設(フィットネスと複合した温浴施 設)を整備することで、毎日の来場者を増加させる。 ※ カシマサッカースタジアム 3F のコンコー スを活用したウォーキングスペース トップアスリートを対象とした合宿支援施設 有酸素系マシン等が備えられたジム・フィットネスクラブやスポーツ医科学セン ター(スポーツ科学・リハビリ) 温水利用型リラクゼーション施設、酸素カプセ ル等の設備を導入することで、トップアスリートの合宿に活用してもらえるよう にする。 ギャラリー、ミュージアム等 クラブの歴史を彩るギャラリー、ミュージアム等を設置することで、スタジアム のシンボルとして応援意識を醸成することができる。 文化施設(図書館等) 商用施設だけでなく、住民が常に集まる集客効果を鑑みると、公共文化施設の併 設は非常に大きな効果をもたらす。地方都市では、集客施設として図書館を中心 とした再開発に取り組む自治体も多い。商用施設だけではなく公共文化施設の併 設も検討される必要がある。 収益向上策の検討にあたっては、既に事例のある取り組みも多い。そのため各クラ ブやスタジアム等で実施されている収益向上策の効果検証を踏まえて、山形県にふ さわしい施策を採用する必要がある。 35 (6)アクセスと機能分散 スタジアムのアクセスは、観戦行動をとる際の大きな検討事項となる。前述する機能 の複合化や収益向上策の効果を最大化させるアクセスの利便性や、山形県における車社 会の進展、高齢化社会における移動手段のあり方、公共交通の整備(高速道路、基幹道 路、鉄道網、都市交通など)を視野に入れてあるべき姿を検討する必要がある。 また、スタジアム、クラブハウス、フロントオフィス及び練習場などを一箇所に集約 することは用地確保の面等から困難であることが想定されるため、各機能を効率的に分 散しながら検討することが求められる。 ア 一定規模の自動車を駐車できる駐車場が近隣にあること 山形県では自家用車で移動する人が多い。そうした際に、一定規模の自動車を駐 車できる駐車場が必要である。しかしながら、導線を考えない駐車場の整備は混乱 と事故を招くため、駐車台数に合わせた動線計画が必要となる。また渋滞への対応 も考慮すべきで、様々なアクセスの方法があることが渋滞を緩和させる要件となる。 イ 最寄り駅から徒歩圏内であること 駅から徒歩圏内にスタジアムが存在することで、電車・バス等での利用促進につ ながり、温室効果ガスの削減につながる。 ウ パーク&ライド等の活用 駐車場の台数が十分でない場合には、まとまった数の自動車が駐車できる駐車場 からシャトルバスを運行させることで補う等、パーク&ライド等の活用も考えられる。 エ 効率的な各種機能の配置 現在は、スタジアム、クラブハウス、フロントオフィス及び練習場が一箇所に集 中しており、非常に利便性が高くなっているが、用地確保等の観点を鑑みると、広 大な用地が必要となり非現実的である。スタジアムは街なか、練習場は郊外など、 効率的に機能を分散することで、一定の利便性を確保しながら、地域貢献の面的な 広がりを実現する配置が望ましい。 また、街なかスタジアムを想定する場合、その騒音対策なども重要となる。観点とし ては新スタジアムを建設することを目的とするのではなく、新たな地方創生を担う街づ くりと捉え、その中のランドマーク的存在がスタジアムになるという考え方が望ましい。 36 (7)複合機能選定の基本方針 ○複合施設における多目的利用の可能性 ヨーロッパにおけるサッカースタジアムは、地域の象徴として大きな集客力があり、 様々なビジネスチャンスが広がっている。以下に例を 3 つ挙げる。 リコー・アリーナ(イングランド) ク ラ ブ:コヴェントリー・シティ FC 建 設 費:120 億円 ※スタジアム部分 収容人数:32,500 人 スタジアム、ファンショップの他、売上高世界第 3 位のテスコのショッピングセンター、カジノやホテ ル、フィットネスクラブ、市内に不足していたコン ベンションセンターやカンファレンスルームなどを 併設した。さらに地元の子どもを対象とした教育指 導、IT 教育、16~18 歳程度のハイティーン向けのス ポーツビジネスプログラムも行っている。 ザンクト・ヤコブ・パルク(スイス) ク ラ ブ:FC バーゼル 建 設 費:CHF2 億 2,000 万(154 億円) ※スタジアム部分のみの建設費は、 CHF1 億 1,500 万(80 億 5,000 万円) 収容人数:38,512 人 ショッピングセンターが地下にあり、他にオフィス ビルや高齢者用住居が複合している。特に高齢者用 住居は人気の高い施設。 スタッド・ピエール=モーロワ(フランス) ク ラ ブ:LOSC リール・メトロポール 建 設 費:380 億円 収容人数:50,186 人 ホテルや住居を建設する予定があり、また、フィールドを移動することで、ヨーロ ッパ最大のアリーナとしても利用できる。 ○複合機能選定の方針 スタジアムと併用でき、かつスタジアムの機能を損なわないこと 地域が必要としている機能であること スタジアムと相乗効果を発揮し、複合機能の運営にも良い影響を与えられること 社会貢献に寄与し、スタジアムのイメージを高められること 複合機能自体の自立的な運営が可能であること 37 (8)多目的利用実現のための機能 スタジアムを多目的に利活用するためには様々な課題がある。中でも大きな課題が、 騒音問題と芝生問題である。万を超える観客が集まるスタジアムでは、騒音は近隣地域 に配慮すべきであるし、特にコンサートなど大きな音がでるイベントの場合は、ドーム のような屋根ですっぽり蓋をされる場合を除き、より注意が必要となる。また、フィー ルドでのイベントを実施するためには、芝生のダメージを解決する方法を考えなければ ならない。方法は以下の 3 点が主流となっている。 1. 芝生を張り替える 豊田スタジアムなどで実施されている方法。夏芝と冬芝を張り替える時期にコ ンサートを入れるイメージとなる。張替経費は 2 億円程度(年 2 回) 2. フィールドを可動式にする。 札幌ドームのようにピッチを移動させて 養生する(ホヴァリングサッカーステー ジ)。特にドームなどで日光や風が十分に 当てられない場合の手法。ステージを出 して入れるのに一回 200~250 万円の費 用が掛かる。導入時のイニシャルコスト もかかる。 ホヴァリングサッカーステージ(札幌ドーム) 写真は札幌ドーム HP より 3. 芝生養生材(テラプラス)で保護する 芝生養生材(テラプラス)で保護すると いう手法は、スタジアムコンサートを実 施する上で、一般的な方法として活用さ れる。味の素スタジアムなどでも使用さ れた。芝生の上から、芝生養生材(テラ プラス)を敷設する。ただし、敷設して から最長 3 日ぐらいで回復させなければ、 芝生のダメージが深刻化してしまう。一 回の実施でおよそ 3,000 万円の費用が掛 かる、イベント主催者にとっては、負担 増となる。 38 テラプラス敷設風景 コウフ・フィールド株式会社 HP より 4 機能複合化による経営資源の拡充 モンテディオ山形の事業は、現在①サッカー事業、②その他指定管理事業によって成 り立っている。スタジアムが完成した場合、その指定管理者となることで、③管理収入 を得て、さらに④スタジアムの多目的利活用による収益により、チームの強化につなげ ることを目標とする。 その際、これまでに挙げた様々な収益向上モデルが存在するが、これらをどのように 取り込むか(スタジアム内部複合化、スタジアム外部複合化)が課題となる。 図 6 モンテディオ山形収益事業構想 39 5 事業手法の検討 (1)事業手法の多様性と選択 事業手法については、公設公営、公設民営、民設民営等の手法がある。その中で、 通常の公設公営とは別に、行政と民間などが連携してサービスを提供する PPP(官民連 携手法)という手法がある。 PPP の中でも、公設民営の手法としては、資金調達、建設・設計は行政、運営を民 間に委託する、指定管理者制度、管理運営委託と、資金調達は行政、建設、設計、運 営を民間が主体となる DBO 方式がある。また、資金調達から建設、設計、運営まで全 てを民間が主体となり進める、PFI という手法がある。 図 7 公設公営、公設民営、民設民営手法イメージ <PPP(官民連携手法)> これまでの行政主体による公共サービスを誰が最も有効的で効率的なサービスの担い 手になり得るのかという観点から、行政と多様な構成主体(市民、自治会、各種団体、 NPO、企業、大学など)との連携により提供していく考え方であり、民間委託、指定管 理者制度、DBO、PFI、民営化などの事業手法の総称。 <指定管理者制度> 地方公共団体やその外郭団体に限定していた公の施設の管理・運営を、株式会社をはじ めとした営利企業・財団法人・NPO 法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的 に代行させることができる(行政処分であり委託ではない)制度である。 <DBO(Design Build Operation)> 公共が資金調達、施設の所有権を有したまま、民間事業者に設計、建設、維持管理及び 運営業務を一体的に委ねる。設計と建設の承認を議会に上げる必要がないため、全体的 な工期の短縮を図ることが可能となる。 <PFI(Private Finance Initiative)> 公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用し て行う手法。「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI 法)に基づき、実施される。 40 (2)本県における最適な事業手法の検討 スタジアムの建設に際しては、株式会社モンテディオ山形が SPC(特別目的会社)を設 立し、建設するというという方式(PFI)も考えられ、この場合、大きく以下の 3 つに分 けられる。こうした場合、②の混合型がスポーツ施設に適しているが、山形という地域 においては、特にスポンサー(株主)の確保が課題となる。 図 8 PFI の三類型(出典:株式会社日本政策投資銀行資料より事務局で作成) そうした点を踏まえると、クラブとして建設主体となる選択は厳しいものとなるが、 整備された施設の運営を自ら実施すべきという考えに立てば、公設民営の PPP を活用 した手法で、且つ建設時に運営する目線で意見を取り込める、DBO が最善の建設手法 ではないかと考える。 41 興行で利用されている 593 施 設のうち、市区町村や都道府 県といった公共所有が 94% (555 施設)を占めている。 回答を得た 287 施設のうち、 公共事業による整備手法で あった施設が、94%(269 施 設)を占めている。 回答を得た 287 施設のうち、 民間の株式会社が2割程度 であり、第三セクターや財団 法人といった地方公共団体 の外郭団体が最も多い。 回答を得た公共所有の 269 施 設のうち、8割以上(215)の 施設が指定管理者制度を採 用。施設別にみても、全ての 施設種別において7割以上の 施設が指定管理者制度を採 用。 収入が公共からの委託費を 上回っている施設は、全体 の 14%である。 図 9 (参考)スポーツ施設等の所有などに係るアンケート 出典:日本政策投資銀行「スポーツ施設への民間活力導入について」より事務局で作成 42 (参考)新スタジアム構想検討委員会 検討経過 新スタジアム構想検討委員会(Dream Rush YAMAGATA) ~夢へ向かって、みんなで考えよう新スタジアム~ 実施日: 5 月 15 日 6 月 17 日 7 月 25 日 金 水 土 7 月 31 日 9月4日 金 金 第一回 新スタジアム構想検討委員会 第二回 新スタジアム構想検討委員会 新スタジアムシンポジウム (株式会社モンテディオ山形が主催) 第三回 新スタジアム構想検討委員会 第四回 新スタジアム構想検討委員会 9 月 16 日 10 月 14 日 水 水 第五回 第六回 新スタジアム構想検討委員会 新スタジアム構想検討委員会 場 所:山形県総合運動公園内会議室ほか 参加者:下平 裕之 山形大学人文学部法経政策学科教授 立松 潔 山形大学名誉教授 岸 慎一 特定非営利活動法人山形県サッカー協会 専務理事 阿部 芳敬 株式会社でん六 企画開発部商品企画課係長 城戸口 亮 JA全農山形 農業支援統括部山形ブランド推進課 佐藤 信之 山形西部モンテディオサポーターズクラブ会長 水戸部 光昭 半田 大介 高橋 健司 本間 悠美 井苅 奈帆 村上 陸 天童市公民館連絡協議会 天童商工会議所青年部 会長 山形商工会議所青年部 会長 La piccola 編集長 東北芸術工科大学 山形大学 43 (留意事項) なお、本書は新スタジアム構想検討委員会第六回委員会にて各委員に確認いただいた 原文のままでありますが、公表にあたり以下の点につきまして修正を行っておりますこ とを申し添えます。 ① ② ③ タイトルに「スタジアム整備検討に基づく構想書」を追加 著作権者の使用許諾が得られない画像等の削除 誤字・体裁、文字送り等の修正 (版数) 1.0 版(2015 年 12 月 15 日公表 初版) 1.1 版(2015 年 12 月 17 日公表) ・表 4 のタイトル 「現状」を「クラブライセンスの現状」に変更 ・表 4 5.トイレ ハンドドライヤーの項の「クラブライセンスの現状」欄に ついて、制裁措置対象外に変更 44
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