World Bank Document

Public Disclosure Authorized
日本社会開発基金
JSDF
2009 年度
Public Disclosure Authorized
年次報告
Public Disclosure Authorized
Public Disclosure Authorized
58039
譲許性資金・グローバル・パートナーシップ担当副総裁室
世界銀行
1818 H Street, NW
Washington, DC 20433 USA
Cover photo by Amy Janel Pickering
日本政府
世界銀行
譲許性資金・グローバル・パートナーシップ担当副総裁室
日本政府
セネガル ̶ 知識共有のためのワークショップに参加した斎藤駐セネガル日本大使、地方分権担当大臣、世銀セネガル担当局長。
ジャマイカ ̶ 2009年5月14日に行われたジャマイカ初のJSDFプロジェクト「 コミュニティ犯罪・暴力防止プロ
グラム
」の調印式。吉本徹也駐ジャマイカ日本大使館一等書記官、バドラル・ヘイク世銀ジャマイカ代表、高嶋
俊政 JICA ジャマイカ事務所長。写真撮影:Alty Benjamine、ジャマイカ社会投資基金(受益機関)
日本社会開発基金
JSDF
2009年度年次報告
世界銀行
日本政府
JSDF運営委員会
委員長からのメッセージ
日本社会開発基金( JSDF )が設立されてから
9年目となる2009年度、同プログラムは様々な開発
実務者、支援対象国、ドナー、日本政府との連携
を積極的に進めてきました。 JSDF は引き続き、
コミュニティ主導の参加型開発をシビルソサエティ
を巻き込みながら支援する、他に例を見ないプロ
グラムとして評価を得ました。2009年度は、新規
プロジェクトに対し過去最高額の4880万ドルが承
認されました。また、 39 件の JSDF プロジェクト
が完了し、社会から取り残された人々を支援する
活動が大きな結果を出しました。本報告書では、
インドネシア、セネガル、タンザニア、ベトナム
における5件のプロジェクトを紹介します。
JSDF プロジェクトが達成した結果と得られた
教訓を広く情報発信することは、本プログラムの
優先課題です。 2009年度、JSDFチームがグロー
バル・ディベロップメント・ラーニング・ネットワー
ク(GDLN )と共にインドネシアとセネガルで開
催した地域レベルの知識共有のためのワークショ
ップには、NGO、受益コミュニティ、政府実施機
関、日本政府関係者、メディア等が数多く参加し
ました。いずれも、東アジア、アフリカの国々を
テレビ会議で結んで行われました。この2件のプロ
ジェクトで用いられた、紛争後の荒廃した村落に
おいてあらゆる分野で信頼と社会を再建するため
の革新的な手法について学ぶ機会は、参加者にと
ても喜ばれました。今後も、JSDFの特長である参
加型の形式で、プロジェクトの結果を発表してい
きたいと思います。
先般実施されたJSDFプロジェクトの評価では、JSDFが社会で最も貧しく弱い立場の人々の生活の
向上に大きな結果を出し、人々の暮らしが実際に改善されていることが確認されました。革新的で参加
型、というJSDFプロジェクトの特長からは多くの教訓が得られるので、日本政府から、JSDFの結果を
記録するためのオンライン・ライブラリーの設置に対し支援をいただいています。2000年の設立以降に
完了した計125件のプロジェクトの経験に基づき、膨大な知識が蓄積されてきました。完了したプロジェ
クトの実施経験をまとめることが、来年度の JSDFユニットの重要な仕事となるでしょう。こうした知
識からは、キャパシティ・ビルディング、社会インフラ、生計創出活動を通じて当事者自身が主体になる
JSDFの参加型アプローチが浮き彫りになります。JSDFの活動は、基本的な権利さえも保証されていない
人々が、政府の活動に参加して自分たちの問題を解決し、生活を改善できるようにしてきました。JSDF
の結果を広く発信することにより、本プログラムの認知度が高まるでしょう。また、世銀の職員や支援
対象国によるシビルソサエティの参加促進や、草の根レベルでのコミュニティへの働きかけの効果拡大
にも役立つでしょう。
JSDFプログラムはこれまで、東アジアの津波やパキスタンの地震などの被害復興プログラムで緊急の
ニーズに対応してきました。2009年度、日本政府は、2件の新たなイニシアティブ支援の検討を開始し
ました。一つ目のイニシアティブは、緊急JSDFです。これは、今回の世界的金融危機の影響を受けた貧
困層を支援し、開発成果を上げたプロジェクトのスケール・アップに資金を拠出するものです。二つ目の
グローバル・ディベロップメント・ネットワーク(GDN)との新たな連携は、社会から取り残され不利な
立場にある人々を対象とする、特に革新的なプロジェクトを見出そうという試みです。我々は、この2つ
のイニシアティブを通じてJSDFの規模と対象範囲を拡大していきます。
JSDFは貧しい人々の生活向上に類まれな貢献をしています。日本政府に対し、そのリーダーシップと
本プログラムへの支援に、幹部を含む世銀職員一同、JSDF運営委員会、支援を享受する途上国を代表し
て謝意を表します。
ジュンフイ・ウー
グローバル・パートナーシップ・信託基金業務局(CFPTO)局長 兼 JSDF運営委員会委員長
iii
目 次
略語
ix
第1章: JSDFの目的とプログラムの概要
1
沿革と目的
1
JSDFプログラムの対象分野
2
JSDFプログラム資金の拠出・配分・実行
3
2009年度のプログラム概要
4
第2章: 2009年度のプログラム実績
6
2009年度に承認されたグラント
6
プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラント
8
JSDF通常プログラム・グラントの地域別配分
9
2009年度のアフリカ向け特別配分
10
JSDF通常プログラム・グラントのセクター別配分
11
アフガニスタン特別プログラム
13
シード基金
14
JSDFプロジェクト持続可能性基金
15
シビルソサエティとの協働
16
2009年度のJSDFグラントの構成– 実施中のグラント
16
ベトナム:幼児教育開発事業
17
タンザニア:コミュニティ・ベースの沿岸資源管理と持続可能な生計
21
日本政府との協議
24
第3章: JSDFの知識の普及
26
JSDF地域知識共有ワークショップ・シリーズ
26
インドネシア – 母子家庭のエンパワーメント・プログラム
28
セネガル – 社会開発基金庁
32
第4章: JSDFプログラムの管理
37
報告
37
現地視察
37
外部からの問い合わせ
38
JSDFについての詳細情報
38
v
囲み一覧
囲み1:JSDFグラント・プロポーザルへの資金提供基準
2
囲み2:アフガニスタン国家連帯プログラム
13
囲み3:ベトナム−幼児教育開発事業
17
囲み4:タンザニア−コミュニティ・ベースの沿岸資源管理と持続可能な生計
21
囲み5:インドネシア−母子家庭のエンパワーメント・プログラム
28
囲み6:セネガル−社会開発基金庁−カサマンス・プログラム
32
図一覧
図1:拠出額・配分額・実行額
3
図2:年度・種類別グラント承認件数
7
図3:主要3プログラム分野への年度別JSDFグラント承認額
8
図4:各年度の通常プログラム・グラント種類別件数
9
図5:通常グラントの種類別金額と割合−2006−2009年度合計
9
図6:2005−2009年度の通常プログラム・グラント地域別配分額
9
図7:2009年度の通常プログラム・グラント地域別配分
10
図8:2009年度の通常プログラム・グラントのセクター別配分(金額と割合) 11
図9:2005−2009年度に承認された通常プログラム・グラントのセクター別配分額
11
図10:ベトナム−JSDFプロジェクト実行前と完了時における3−4歳児の就学率
17
表一覧
表1:JSDFグラントの種類別承認額と件数
4
表2:2009年度のマルチセクター・プロジェクトと
キャパシティ・ビルディング・グラント
表3:2009年度に実施中のアフガニスタン向けグラント
12
14
表4:承認されたグラントの実施機関の種類別件数(2005年度−2009年度) 16
付表
1 2009年度に承認されたJSDF通常プログラム:
プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラント
39
2 JSDF通常プログラム・グラントの地域別配分額(2001年度−2009年度) 44
vi
3 2009年度に承認されたシード基金グラント
46
4 2009年度に承認されたのその他のJFDFグラント
47
5 JSDF2009年度方針ガイドラインおよびプログラム配分
48
写真
表紙:彫像に寄りかかる少女(ベトナム、ニャチャン)
第1章:野菜市場近くの路上に子供と座る母親(ラオス、ルアン・パバン)
第2章:観光客向けバリ島伝統舞踊団家族の少年(インドネシア)
第4章:乳児を連れて施しを求める父親(タイ、バンコク)
撮影:Amy Janel Pickering(水資源専門家)
第2章:囲み4、漁業で生計を立てる人々
撮影:Shehzad Noorani
第3章:牡蠣養殖作業に従事する女性(インドネシア、ブトン島ランブサンゴ)
撮影:Bryoni Morgan
(東アジア地域生物多様性チーム・ジュニア・プロフェッショナル・アソシエート)
vii
略 語
AFR
Africa Region
アフリカ地域
AHF
Asian Heritage Foundation
アジア・ヘリテージ財団
CCT
Conditional Cash Transfers
条件付現金給付
CDCs
Community Development Councils
コミュニティ開発協議会
CDD
Community Driven Development
コミュニティ主導型開発
CFP
Concessional Finance and Global Partnerships
譲許性資金・グローバル・パートナーシップ
CSOs
Civil Society Organizations
シビルソサエティ組織
EAP
East Asia and the Pacific Region
東アジア・大洋州地域
ECA
Europe and Central Asia Region
ヨーロッパ・中央アジア地域
ECCD
Early Childhood Care and Development
幼児教育開発事業
ECD
Early Child Development
早期幼児開発
FY
Fiscal Year (July 1 to June 30)
会計年度(7月1日∼6月30日)
GDLN
Global Development Learning network
グローバル・ディベロップメント・
ラーニング・ネットワーク
GDN
Global Development Network
グローバル・ディベロップメント・ネットワーク
GFRP
Global Food Crisis response Program
世界食糧危機対応プログラム
GOJ
Government of Japan
日本政府
GRM
Grant Reporting and Monitoring
グラント報告・モニタリング
JICA
Japan International Cooperation Agency
国際協力機構
JSDF
Japan Social Development Fund
日本社会開発基金
LCR
Latin America and the Caribbean Region
ラテンアメリカ・カリブ海地域
MIC
Middle Income Countries
中所得国
MNA
Middle East and North Africa Region
中東・北アフリカ地域
MOE
Ministry of Education
教育省
MOF
Ministry of Finance
財務省
MOFA
Japan Ministry of Foreign Affairs
日本外務省
NFE
Non-Formal Education
非公式教育
NGOs
Non-Governmental Organizations
非政府組織
NSP
National Solidarity Program
国家連帯プログラム
PEKKA Program Pemberdayaan Perempuan Kepala Keluarga
母子家庭エンパワーメント・プログラム
ix
RSR
Rapid Social Response Program
社会的セーフティネット強化支援
SAR
South Asia Region
南アジア地域
SC
Steering Committee
運営委員会
TFAST Trust Fund Accelerated Support Tools
信託基金支援促進ツール(前e信託基金)
(former e-Trust Funds)
TICAD Tokyo International Conference of African Development アフリカ開発会議
x
TTL
Task Team Leader
タスクチーム・リーダー
VFF
Vulnerability Financing Facility
脆弱層支援ファシリティ
WBI
World Bank Institute
世界銀行研究所
第1章
JSDFの目的とプログラムの概要
沿革と目的
日本社会開発基金 ( JSDF )は日本政府と世界銀行によって
2000年6月に設立されました。設立当初の目的は、1990年代後
半に起きた東アジア金融危機の深刻な影響に対処することと、危
機の影響を受けた弱者層に支援を提供することでした。その後、
プログラムは拡大され、支援対象の途上国で最も不利な立場にあ
る人々の利益となる革新的活動を支援する、世銀でも類を見ない
プログラムとなりました。JSDFグラントの対象は、「世界開発
報告」最新版が定義するすべての低所得国で、各グラントの規模
は100万∼300万ドルです。設立後9年の間に、同プログラムは支
援対象となる約 74 の低所得国に対して 300 件を超えるグラント
(総額3億6000万ドル)を提供してきました。
JSDFプログラムの目的は、世界銀行グループの支援対象国の
貧困緩和に役立つ革新的な活動に対してグラントを提供すること
です。この目的を達成するため、JSDFは様々なプロジェクトを通
じて、途上国の中央政府と地方政府 、非政府組織(NGO)、シビル
ソサエティ組織(CSO)を支援しています。グラントはある一定
の基準(囲み1参照)を満たすものとします。大多数の世銀
プロジェクトが中央政府によって実施されるのに
「JSDFのプログラムは、
対し、JSDF グラントは CSO や地方政府によっ
て実施されます。こうした特長が、JSDFプロ
貧困層こそが、彼ら自身の生活に変化を
もたらす潜在能力をもっており、
グラムのユニークかつ迅速な対応を可能に
開発問題の解決に重要な役割を果たすという
しています。さらに、JSDF プログラムが
理解に基づいています。
開発プロセスで NGO など現地のステー
市民のボイス強化と地元コミュニティの
クホルダーと協力する基盤を提供して
エンパワーメントが、JSDFの核となる理念です」
いる点も、他に余り例を見ない優れた特
フィリープ・ル・ウェルー
世界銀行ヨーロッパ・中央アジア地域担当副総裁
長と言えます。こうした点が、これまで中
央政府レベルで進められる世銀の活動には
あまり関連がなかった分野での有意義な展開
につながっています。
1
囲み1
JSDFグラント・プロポーザルへの資金提供基準
革新性 – 開発に新しいアプローチやアイデアを導入するものであること。
貧困層に対応 – 取り残され不利な立場に置かれた弱者層のニーズに直接働きかけるプロジェクト。
迅速な対応を促進 – 速やかに結果を出し、対象とするステークホルダーに利益をもたらす可能性のあるプロ
ジェクト。
コミュニティのキャパシティ・ビルディング – 現地コミュニティ政府、NGO、および権利を奪われた人々
のエンパワーメントを図ると共に、企画・活動へのステークホルダーの参加・オーナーシップを促進するプロ
ジェクト。
JSDFプログラムの対象分野
JSDFプログラムは現在、次の種類のグラントを提供しています。
i)通常プログラム・グラントは、恵まれないコミュニティに直接利益をもたらす活動に資金を提供する
ものであり、以下のいずれかの形をとります。
• プロジェクト・グラント。一般的プログラムのサービスが十分行き届かない貧困層を対象とし、
短期間に結果を出す革新的プログラムを用いて提供される。
• キャパシティ・ビルディング・グラント。現地コミュニティ当局、NGO、ステークホルダーが実地
学習を通じて開発に参加することにより、これらのグループのエンパワーメントと強化を図る。
専門家との契約のためチーム・リーダーに提供される小規模なグラント。主
ii)シード基金グラントは、
にプ ロ ポ ー ザ ル を 準 備 し 、ス テ ー ク ホ ル ダ ー と 受 益 者 が 協
議ワークショップを通じてプログラムの組成に関わることによ
り、彼らのニーズがオーナーシップをもって迅速に対応される
ことを目指しています。
iii )特別プログラム・グラントは、自然災害などの緊急事態
が発生した場合や紛争後のニーズが生じた場合に、プロジェク
ト・グラントやキャパシティ・ビルディング・グラントを支援す
るものです。現在、アフガニスタンで 1 件の特別プログラムが
日本政府の支援により実施されています。アフガニスタン特別
プログラムは、コミュニティによる実施とコミュニティ・ガバ
ナンスを促進しながら、社会サービスや生産的インフラ・プロジ
土地使用許可証を得たことにより、コミュニティ内での地位が向上したと
話すティグレ(エチオピア)の女性。政府の土地分配プログラムにより、
女性の土地所有が進められている。
写真撮影: Klaus W. Deininger(DECRGリード・エコノミスト)
2
ェクトを通じて復興を支援し、
コミュニティ・レベルで政府の基
盤を築くものです。
この他、日本政府からの追加拠出はありませんが、災害への対応を目的とする次の2件の特別プログラ
ムがそれぞれ実施されました。
(i)津波被害復興グラントは、2004年12月26日に東南アジアおよびイン
ド洋地域の数か国を襲った津波の被害からの復興を支援するもの、そして(ii)パキスタン地震被害復興
グラントは2005年10月に起きた地震の被災地域の復興を支援するものです。津波被害復興グラントと
して日本政府が承認した2000万ドルは、インドネシア、モルディブ、セーシェル、ソマリア、スリランカ、
タイの6か国を支援するためのグラント(合計14件)として活用されました。また、日本政府によりパキ
スタン地震被害復興に当初配分された500万ドルは、4件のプロジェクト・グラントとして645万ドルに
増額されました。
JSDFプログラム資金の拠出・配分・実行
JSDFプログラムの出資者として日本政府は、2000年の設立以来、総額4億560万ドルを拠出してきま
した。2009年度には26件のグラントが承認され、実施中のグラント数(小規模なシード・グラントを
除く)は合計149件となりました。同プログラムはスタッフや受益者から「現地政府のプログラムが行
き届かない不利な立場のコミュニティにサービスを提供するという優れた特長をもつ融資制度」と評価
されており、出資要請が途切れることはありません。出資要請が相次いでいることは、手続き処理済み
グラントに対する配分額が6040万ドル1と平均を上回っていることからも分かります。2009年度の日本
政府からの拠出額は980万ドルでしたが、現在の残高と前年度までの多額の拠出を考慮すると、これは
同年度のプログラム実行に十分なレベルでした。JSDFを引き続き重視し、その効果を評価する日本政府
は、2009年度のグラント配分額を8000万ドルまで引き上げましたが、同年度のグラント承認額は、い
くつかのプロポーザルがプログラムの基準を満たしておらず却下されたこともあり、これを下回りまし
た。実行額は2590万ドルと、ポートフォリオ規模を維持しました。
図1 拠出額、配分額、実行額
70
60
50
百万ドル
40
30
20
拠出額
10
配分額
0
実行額
2001-2005
年度平均
1
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
この数字はJSDFプログラムの下で新たに承認されたグラントの「会計記録」を反映している。「配分額」は当該年
度中に信託基金会計ユニットが手続きを処理したグラント合計額で、日本政府が前年度中に承認したグラントが含ま
れていることがある。手続き処理済みグラントの2009年度配分額には、2008年度末に承認されたアフガニスタン向
けグラント2件(1500万ドル)が含まれる。
3
2009年度のプログラム概要
JSDFプログラムの下で2009年度に承認されたグラントの総額は5020万ドルでした(表1参照)。
通常プログラムとして承認されたグラントは、プログラム設立後7年間の平均22件を上回る26件で、合
計金額は4880万ドルでした。シード基金はグラントの需要が過去最高となり、21件の新規申請が承認さ
れ、2009年に実施中のシード・グラントは42件となりました。シード基金グラントは、参加型アプロー
チを通じてオーナーシップと迅速かつ適切な対応を確保するため、現地コミュニティのJSDFプロジェク
ト組成への参加促進を目的としています。2009年度には、新たにJSDF持続可能性基金が導入されまし
た。これはプロジェクト活動を受益者に引き継ぐ際のつなぎ融資で、別の資金源への移行を容易にする
ものです。持続可能性グラントとしては、セネガルとシエラレオネのJSDFプロジェクトに対する 2件が
承認されました。また初めての補足グラントが、金融危機によるドル安で生じた資金不足に対応するた
め、タンザニアのコミュニティ・ベース条件付現金給付(CCT)のJSDFプロジェクトに対して承認さ
れました。その他、同プログラムには2009年度、以下のような進捗がありました。
• 2009年度、JSDF通常プログラム・グラントの上限額が300万ドルに引き上げられました。200万ド
ルを超えるグラントが同年度には4件承認され、また、第28次拠出(プロポーザル募集)で新上限額
に達するグラント・プロポーザルが 8 件提出されましたがこれらも 2010 年度に承認される見通しで
す。このように上限額が柔軟に引き上げられたことにより、対象範囲と投資効果の拡大につながる歓
迎すべき展開でした。
表1:JSDFグラントの種類別承認額と件数
2001-2007年度平均
グラントの種類
2008年度
2009年度
グラント
金額
グラント
金額
グラント
金額
件数 (単位:100万ドル) 件数 (単位:100万ドル) 件数 (単位:100万ドル)
通常プログラム
プロジェクト・グラントおよび
キャパシティ・ビルディング・グラント
22
$27.57
13
$18.3
26
$48.8
シード基金
11
$0.45
18
$0.9
21
$1.0
2
$8.95
2
$15.0
0
$0.0
持続可能性基金
−
−
−
−
2
$0.2
補足グラント
−
−
−
−
1
$0.3
N/A
N/A
33
$34.1
50
$50.2
特別プログラム
アフガニスタン
その他のグラント
合計
• JSDF設立以来ほとんど活用が見られなかった中東・北アフリカ地域が、2009年度にはポートフォリオ
の19%を占めました。同地域は過去3年間、JSDFの活用がまったくありませんでした。
• 日本の財務省は、
金融危機に対応するため緊急JSDFを導入して今後3年間に2億ドルを同イニシアティブ
支援に充てると発表しました。
4
• 日本政府(GOJ)は、JSDF促進イニシアティブを支援するための109万ドルの拠出を承認しました。
このプログラムは、完了したプロジェクト・グラント125件の結果を検証し、得られた教訓やグラン
トの結果を幅広く発信する活動を支援します。
• 日本政府の提案で、グローバル・ディベロップメント・ネットワーク(GDN)とJSDFの協力の可能
性が協議されています。GDNの「最も革新的な開発プロジェクト」のいくつかが、プロジェクトのス
ケール・アップのためのJSDFグラントによって支援される可能性があります。
• インドネシアとセネガルで、JSDFチームが知識共有ワークショップを開催しました。JSDFグラント
実施機関と現地のグローバル・ディベロップメント・ラーニング・ネットワーク(GDLN)の共催で
行われたこの2件のワークショップは、大きな成功を収めました。JSDFプロジェクトのための新しい
ウェブサイトも立ち上げられ、得られた結果と教訓が紹介されました。ワークショップには NGO、
報道関係者、ドナー、日本政府関係者、JICA代表者などが
シビルソサエティ(CSO)、民間セクター、
参加しました。インドネシアのワークショップでは、NGOのPEKKAを通じて実施された女性世帯主を
支援する活動の目覚しい結果が、カンボジア、インド、スリランカ、ベトナムをテレビ会議で結んで
紹介されました。セネガルのワークショップは、ベナン、コートジボワール、中央アフリカ共和国、
コンゴ民主共和国、ニジェール、セネガルのGDLNセンターを結んで行われ、社会開発基金実施団体
向けにJSDFプロジェクトで得られた教訓が紹介されました。ワークショップの後、他の国の参加者も
同様のプロジェクトを進めることに高い関心を示しました。
• 2009年度、グラントの手続きは新しいグラント申請(GFR)とグラント年次進捗状況報告・モニタリン
グ(GRM)の両方の機能を持つ世銀の信託基金支援促進ツール(TFAST)に移され、クライアント・
コネクション・ウェブサイト 内に設けられた
ドナー・センターを通じてドナーが連絡をとれる
ウェブベース環境が構築されるなど、モニタリ
ングと報告について改善が図られました。
• コロンビアのカルタヘナで JSDF グラントの支
援により NGO が運営する、恵まれない若者の
ためのモダンダンスと芸術の学校「身体学校
(El Colegio del Cuerpo)」が2008年10月に
来日し、日本・コロンビア外交樹立100周年記
念行事の一環として、日本の皇族臨席の下で公
演が行なわれました。
皇族臨席の下で公演を行うコロンビアの若者(東京にて)。
5
第2章
2009年度のプログラム実績
JSDF通常プログラムの日本政府承認済み配分額は、2008年度
の5000万ドルから60%増額されて8000万ドル(アフガニスタン
を除く)となりました(付表5「2009年度方針ガイドラインおよ
びプログラム配分」参照)。この配分額の内、以下3つの優先的
テーマに対しアフリカ地域に2000万ドルが配分されました。
• 農業開発
• 参加型学校管理
• 保健管理と保健サービスの向上
このように優先された結果、2009年度はアフリカ諸国支援の
ために提出されたグラント・プロポーザルの件数が大幅に増え、
第 26-28 次拠出( 2009 年度は 3 回の募集)では 9 件( 2150 万ド
ル)のアフリカ向けグラント・プロポーザルが提出されました。
そして2008年度のわずか2件
この件数は過去8年間の平均3.8件、
を大幅に上回りました。2009年度方針ガイドラインの承認に伴い
導入された JSDFプログラムのもうひとつの新しい特徴として、
グラント上限額が 200 万ドルから 300 万ドルに引き上げられた
ことと、活動の正当性が認められた場合、例外的に400万ドルを
上限とするプロポーザルを認める可能性が生じたことが挙げられ
ます。
2009年度に承認されたグラント
2009 年度は合計 50 件( 5020 万ドル)のグラントが承認され
ました(前出の 表 1 参照)。グラント種類の内訳は、通常プロ
グラム・グラント26件、シード基金グラント21件、持続可能性
グラント 2 件、補足グラント 1 件でした。 2009 年度、アフガニ
スタン向けに承認されたグラントはありませんでした。2005年
度−2007年度に利用可能だった津波被害復興とパキスタン復興
緊急の両グラントの大半はすでに完了しています。JSDF通常プ
ログラムの承認件数は、2001年度−2005年度の平均を上回り、
特に、承認件数の少なかった直前の3年度を大幅に上回るものとな
りました(図2「年度・種類別グラント承認件数」参照)。2009年
度の通常プログラム・グラントの件数は、2005年度までの平均
件数をわずかに上回りました。 2009 年度に新しく導入された
6
持続可能性基金で、アフリカ地域の2件のJSDFプロジェクト(「セネガル社会開発基金カザマンス・プロ
グラム」と「シエラレオネの社会資本強化のための能力開発」)に対し2件のグラントが承認されました。
また、タンザニアで実施するコミュニティ・ベースの条件付現金給付(CCT)パイロット・プロジェクト
を支援するため、初の補足グラントが承認されました。このプロジェクトは、支援効果を高めるためコミュ
ニティ主導型開発(CDD)アプローチを採用した革新的プロジェクトです。このJSDFプロジェクトでは、
やはりコミュニティが自ら運営するCCTプログラムの実施に初めて社会基金機関が活用されます。金融
危機による物価上昇に伴う資金不足を補うため、追加出資が承認されました。
2009 年度、 JSDF 通常プログラムではプロポーザルの募集が 3 回行われました。 2008 年 9 月 18 日に
発表された第 26 次拠出では 8 件( 1770 万ドル)、 2009 年 1 月 16 日に発表された第 27 次拠出では 7 件
(1600万ドル)のグラントが承認されました。また2009年5月6日に発表された第28次拠出では、8月
に11 件( 2690 万ドル)のグラントが日本政府に提出され、2010 年度に審査の結果が出る予定です。
2008年度の募集で提出されたグラントが、2009年度に承認されました。付表1には、2009年度に承認
された26件の通常プログラム・グラント(4880万ドル)が掲載されています。通常プログラム・グラント
の承認件数は、同プログラムへの需要が改めて増大していることを反映して、最近3年間に比べて大幅に
増加し、設立当初5年間の平均件数に匹敵する数となりました。
2009年度のシード基金グラントの件数は、過去最大の21件となり、これを受け、総グラント件数は
実に50件に上りました(表1と図2参照)。シード基金プロポーザル増加という最近の傾向は、JSDFプロ
グラムの今後にとって良い兆しであると同時に、持続可能性基金の支援効果を高めます。シード基金へ
のプロポーザル合計額も100万ドルと、近年の平均値を大幅に上回り、プログラムの歴史上最大となり
ました。このこともまた、JSDFプログラムに対する需要と評価の大きさを反映しています。また、同プロ
グラムが、NGOを通じた活動や、正規のサービス提供範囲の外にいる社会から最も取り残された不利な
立場の人々に働きかける活動によって、世銀のプロジェクト融資を補完する存在と認識されていること
も反映しています。
図2 年度・種類別グラント承認件数
30
25
グラント件数
20
通常プログラム
アフガニスタン
15
津波被害復興
シード基金
10
パキスタン復興
持続可能性基金
5
0
補足グラント
2001-2005
年度平均
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
7
2009年度で注目すべき点は、通常プログラムのグラント承認件数がプログラムの歴史上最高の総額
4880万ドルに達したことです。図3「年度別JSDFグラント承認額」を見ると、平均値を下回った最近
3年間と比べて、グラント承認額が目に見えて増加したことがはっきりと分かります。この増加の理由の
ひとつとして、グラントの上限が200万ドルから300万ドルに引き上げられたことが挙げられます。200万
ドルを超えるグラントは4件が承認されました。これら4件の合計額は1050万ドルで、2009年度の通常
プログラム・グラント承認額4880万ドルの22%を占めています。今年度、アフガニスタン向けに新規に
承認されたグラントはありませんでしたが、新規のプロポーザルが現在準備されており、2010 年度は
アフガニスタン向けグラントが含まれる見通しです。合計26件のプロジェクト・グラントとキャパシティ・
ビルディング・グラントには、第23次拠出からのグラント1件と第24次拠出からのグラント5件が含まれ
ていました。いずれも、長い審査期間を要したため日本政府からの承認が2009年度になったものです。
付表1には、承認された通常プログラム・グラントとその目的が記されています。
図3 主要3プログラム分野への年度別JSDFグラント承認額
60
50
百万ドル
40
30
20
通常プログラム
アフガニスタン
10
0
津波被害復興
2001-2005
年度平均
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラント
JSDFの中核プログラム分野(アフガニスタン向けや津波被害復興特別プログラムなど、日本からの、
特別な目的のための配分を含む)には、プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラント
の2種類のグラントがあります。2009年度のプロジェクト・グラント承認件数は17件と最近3年間の水
準を大きく上回り、それ以前の年の平均も上回りました。図4が示す通り、プロジェクト・グラントの件
数は、歴史的に少なかった2008年度に比べ3倍近くに増えました。一方、キャパシティ・ビルディング・
グラントはプロジェクト・グラントに比べてこれまで比較的安定して推移しており、平均9件でした。図5
を見ると、平均すると、2006-2009年度の基金の66%に当たる7240万ドルがプロジェクト・グラント
として承認されていることが分かります。
8
図4 各年度の通常プログラム・グラント種類別件数
20
17
16
プロジェクト・グラント
グラント件数
キャパシティ・ビルディング・グラント
15
11
10
7
5
0
9
9
9
6
7
図5 通常グラントの種類別金額と割合
2006−2009年度合計額:1億930万ドル
4
2001-2005
年度平均
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
キャパシティ・
ビルディング・
グラント
3690万ドル
34%
プロジェクト・
グラント
7240万ドル
66%
JSDF通常プログラム・グラントの地域別配分
図6は、過去5年間に承認されたグラントの地域別配分を示しています。2009年度は全体として際立っ
た年であり、いくつもの地域で拠出に大きな変化がありました。2009年度に最も配分が高かったラテン
アメリカ・カリブ海地域(LCR)は過去4年間と比べて著しく増加し(1270万ドル、26%)、各年の
配分額も過去4 年間の 2.5 倍に近くに上りました。ラテンアメリカ・カリブ海諸国は、大半が中所得国
(MIC)ではあるものの、従来から貧困と格差に苦しんできたため、弱者層や取り残された人々のため
の経済的機会の拡大が地域の優先課題と位置づけられています。同地域では各国の内外で測定可能な指
標に対する進捗状況をモニターするための人間機会指数の開発が進められており、JSDFはこの優先課題
を支援するため資金を提供しました。同地域向けのプロポーザルでは、初のジャマイカ向けグラントで
ある「コミュニティ犯罪・暴力防止プログラム 」が承認されました。アフリカ地域(AFR)も、JSDFがア
それ以前の配分額が少なかった3年間から大幅に増加し、配
フリカ大陸を特に重視した結果、2008年度や、
図6 2005−2009年度の通常プログラム・グラント地域別配分額
18
16
百万ドル
14
アフリカ地域
12
東アジア・
大洋州地域
10
ヨーロッパ・
中央アジア地域
ラテンアメリカ・
カリブ海地域
8
6
4
中東・北アフリカ地域
2
0
南アジア地域
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
9
図7 2009年度の通常プログラム・グラント地域別配分
南アジア地域
アフリカ地域
8%
400万ドル
中東・
北アフリカ地域
19%
東アジア・
大洋州地域
JSDFプログラムで注目に値する点です。世銀融資や技術
9%
460万ドル
26%
1270万ドル
目に配分額が多かったのは中東・北アフリカ地域(910万
ドル、19%)でした。同地域向けの承認グラントがそれま
ヨーロッパ・
中央アジア地域
ラテンアメリカ・
カリブ海地域
述の「2009年度のアフリカへの特別配分」を参照)。3番
24%
1190万ドル
14%
660万ドル
910万ドル
分額が2番目に多い1190万ドル(24%)となりました(後
でわずか4件であったことを考えると、これは2009年度の
協力プログラムが極めて限られており、この地域で取り組
みを進めることが難しいことを反映して近年申請が行われ
てこなかったのですが、その状況が一転したのです。承認さ
れた中東・北アフリカ地域向けグラントの内 3 件は、イエ
メンで社会から取り残されたコミュニティに社会経済的
支援を提供するもの、1件はモロッコの教育セクターにお
いて貧困層の学校教育へのアクセス向上を目指すものでした。こうしたJSDFグラントにより、同地域で
顧みられることのなかった弱い立場の人々の多くに手が差しのべられる機会が開かれるでしょう(図7も
参照)。
地域別に見た2009年度のその他の傾向としては、東アジア・大洋州地域と南アジア地域におけるプロ
ジェクトの減少が挙げられます。東アジアでは4件のグラントで総額660万ドルが提供され、この内2件
は女性のエンパワーメントを支援するものでした。南アジア地域ではパキスタンとネパールに対する2件
のグラント(計400万ドル)が提供されました。両国とも、JSDFグラントの恩恵に預かったのは今回が
初めてでした。ヨーロッパ・中央アジア地域は 2009年度も安定した水準を維持し、3件で460万ドルの
グラントが提供されました。この内1件はアルバニアにおける青少年のエンパワーメント、2件はモルドバ
における保健プロジェクトと紛争後地域のコミュニティに対するサブ・プロジェクトでした。
2009年度のアフリカ向け特別配分
日本政府と世界銀行グループは、5か年計画である「元気なアフリカ支援に向けた協力枠組み(2008
−2013)」および「第4回アフリカ開発会議(TICAD
IV)横浜行動計画」で表明されてい
る通り、アフリカにおける持続可能な成長と開発のための支援のスケールアップに取り
組んでいます。この枠組みの中で、日本政府はアフリカに対する開発援助および民
特にインフラおよび農業に重点を置いてい
間投資を5年間で倍増させる目標を定め、
「参加型の学校管理」、
「保健管理の強化と保健サービ
ます。また、
「農業・農村開発」、
スのモニタリング」という3つの重点分野を支援するためのJSDFプログラムに3年
間で5000万ドルが配分されました。通常プログラムの下、外務省は上記の3つの
重点分野におけるJSDF通常プロジェクト・グラントを支援するため、2000万ド
ルの「アフリカ(大陸)への特別配分」の 2009 年度内第 1 回目の拠出を承認しま
した。2009年度、特別配分としてエチオピア、モロッコ、スワジランドに対する3件
のプロポーザルが承認されました。第27・28次拠出での追加プロポーザルは日本政
シエラレオネ。カッサバの葉を売ろうと、大き
なたらいを頭に載せて微笑む少女。
写真撮影:Lianqin Wang (MNSHE)
10
府の承認待ちで、承認されれば総額で 2000万ドルとなります。この金額は、図6に
示した、これまでのアフリカに対する配分額を大きく上回るものです。
JSDF通常プログラム・グラントのセクター別配分
JSDFグラントは社会サービスや不利な立場の人々を対象とするものであるため、これまで多くのプロ
ポーザルが弱者層対象でマルチセクターに分類されています。2009年度は、通常プログラムへの拠出総額
の39%に相当する合計1910万ドルがマルチセクター・グラント
でした(図8、図9、表2参照)。これらのグラントは、貧しい
コミュニティの社会からの脆弱層、特に紛争後の地域の若者
や女性、ならびに暴力防止のニーズに対応するものでした。
この中でも独自の革新的なグラントが、フィリピンの「 現
地調達改革を通じた貧困コミュニティへの公共支出の質と
対応力の向上 」です。これは、12以上の不利な立場にある自
治体における貧困削減プログラム実施のための透明で参加型
の調達メカニズムの採用を推進するものです。単独で2番目に
承認額が高かったセクターは教育(1090万ドル、23%)で、
農業・漁業・林業セクター(1070万ドル、22%)が僅差で続
図8 2009年度の通常プログラム・グラントのセクター
別配分(金額と割合)総額 4880万ドル
上下水道
農業・漁業・林業
4%
22%
1070万ドル
200万ドル
マルチセクター
39%
1910万ドル
教育
23%
1090万ドル
保健その他
サービス
12%
600万ドル
きました。
図9 2005−2009年度に承認された通常プログラム・グラントのセクター別配分額
25
20
農業・漁業・林業
百万ドル
教育
15
保健その他
サービス
10
運輸
法と司法
5
0
マルチセクター
上下水道
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
教育、農業の両セクターでは、過去3年間と比べて3倍近い著しい増加が見られました。それ以外のセク
ターへの配分は、保健セクターが600万ドルで12%、上下水道が200万ドルで4%でした。法と司法セク
ターおよび運輸セクターは、コミュニティや社会開発の分野であまり大きな動きがなく、2009年度には
配分がありませんでした。
11
表2:2009年度のマルチセクター・プロジェクトとキャパシティ・ビルディング・グラント
国
グラント名
コロンビア
「 コロンビアの若者の機会アクセス改善 」 若者( 14 ∼ 26 歳)の教育、労
金額
$1,787,385
働、政治参加の機会へのアクセスを拡大する。
ブラジル
「ブラジル北東部の元逃亡奴隷ラコミュニティのための公平な環境づくり」 ブラジル北東部の僻地にある貧しい元逃亡奴隷コミュニティへのエンパワーメ
ントのため、社会資本を構築し、官民セクターの既存資源を活用しやすくする。
$1,986,932
モルドバ
「紛争後地域におけるコミュニティ参加」紛争で疲弊した地域の市民が紛争解決
後に自らの復興と開発に参加するための態勢づくりをするための環境を整える。
$2,000,000
インドネシア
「パプア人女性のエンパワーメント・プロジェクト」 貧しいパプア人女性へ
のエンパワーメントが、コミュニティ主導の開発プログラムの実施と意思決定
のプロセスにより積極的に参加し、開発プログラムからより大きな恩恵を受け
られるようにし、また、そうした女性のニーズや優先課題にも対応する。
$1,803,443
ホンジュラス
「公共政策や公共機関に対する信頼の構築」 ガバナンスや透明性の向上を目
指して予算編成プロセスへの市民の参加や監視を拡大することにより、公共政
策や公共機関に対する市民の信頼を高める。
$861,110
イエメン
「社会から取り残されたコミュニティの社会経済的統合の促進」 特に女性お
よび青少年に重点を置いて、被差別コミュニティが自分たちの幸福実現のため
に積極的に寄与する手段を提供し、そうしたコミュニティの社会経済的統合を
進め、発言権が与えられるようにする。
$1,957,515
フィリピン
「現地調達改革を通じた貧困コミュニティへの公共支出の質と対応力の向上」
不利な境遇にある12以上の自治体で、貧困削減プログラム提供での透明性のあ
る参加型調達メカニズムの採用を促進する。
$1,011,060
イエメン
「社会から取り残され危機的状況にある青少年への第2のチャンスの提供」 シビルソサエティ組織、非政府組織、政府組織の制度面の能力を高めることに
より、社会から取り残された弱い立場の青少年に第2のチャンスを与えるシス
テムの構築を支援する。
$1,939,400
アルバニア
「コミュニティ開発を通じた青少年のエンパワーメント」 教育、雇用、市民
参加、コミュニティ開発への若者のアクセスを促進する。
$1,175,700
ジャマイカ
「ジャマイカのコミュニティ犯罪暴力防止プログラム」 ジャマイカ社会投資
基金が、極めて危険で脆弱な都心部コミュニティにおける犯罪や暴力の発生率
を低下させるよう支援する。
$2,700,000
インドネシア
「女性のリーダーシップ維持」 インドネシアの最貧困地域において女性が世
帯主である家庭の貧困と脆弱性を低下させ、貧しい州における女性世帯主に利
益をもたらす。
$1,918,105
2009年度マルチセクター・グラント合計:
12
$19,140,650
アフガニスタン特別プログラム
2002年、JSDFプログラムは、アフガニスタンの復興と
社会・経済の安定化に向け、アフガニスタン向け特別資金
配分の制度を設立しました。2009 年度、アフガニスタン
向けに新たに承認されたグラントはありませんでした。実
施中のグラントは4件で、そ の 内 2 件 は 200 9 年 度 中 に 完
了 し ま し た( 表 3 参照)。その他の 2 件は国家連帯プログ
ラムを支援する新グラントです。これら実施中のグラント
は、世銀のモニタリング報告「GRM」でその目的達成度
が「満足できる」と評価されました。特に紛争後の状況で
のJSDFグラントの実施から得られた教訓のひとつは、コ
ミュニティを関与させることの重要性です。
アフガニスタン:村の重要課題について議論するマイダン・ワルダック州のコミ
ュニティ開発協議会(CDC) のメンバー。
シード基金
囲み2
アフガニスタン国家連帯プログラム
2009年度末、アフガニスタンの国家連帯プログラム(NSP)支援のため2008年度に承認された2件の新規
グラントが実行されました。特別復興プログラムで承認されたアフガニスタン向け計10件のグラントの、4件
がNSPを支援するものです。この内2件はすでに完了し、世銀のモニタリング報告で完了時の目的達成度およ
び実施状況が「満足できる」と評価されました。NGOを活用したことにより、政府は、NSPを迅速に展開し
てコミュニティ動員について専門知識を提供することができました。現地NGOはもとより、国際的NGOや国
連人間居住計画などで構成される合計24の促進パートナーがNSPの実施を支援しています。
最初に始まった 2 件の NSP グラントは、コミュニティ・レベルでのガバナンス強化の基盤を築き、コミュニ
ティが選挙を通じて万人を取り込んだコミュニティ制度を確立し、コンセンサスを形成して優先課題にサブ・
プロジェクトとして取り組めるようにするための支援を促進しました。キャ
パシティ・ビルディング活動およびトレーニング活動は、コミュニティ
「30年にわたり紛争が続き
が管理するサブ・プロジェクトの実施に役立ち、主に社会・生産イン
今なお不安定な状態にある国が、
フラやサービスのアクセス改善のための復興に貢献しました。
政府に対する信頼を取り戻し
その重要な特長のひとつに、
コミュニティの選出するコミュニティ
開発協議会( CDC ) の設置への支援があります。優先対象州の
サービスの提供を確保するには、
CDC をまとめることによって CDC の能力や持続可能性がさら
コミュニティレベルでの
に強化され、 CDC 間の結束や地元当局との連携が促進されると
介入がおそらく最も効果的な
期待されます。その上で、 CDC がコミュニティの人々と協議の上
方法であろう」
で コミュニティ開発計画を策定し、上下水道、運輸、灌漑、電力、教育、
生計機会など優先的なサブ・プロジェクトを実行することになります。国家
連帯プログラムに対するグラントにより、24地区の1,000以上の村落において約160件のコミュニティ開発計画
が策定・実施されました。
これらのグラントにより、約80のCDCが設置される予定であり、そのメンバーは紛争解決、財務・プロジェ
クト管理などのトレーニングを受けることになります。数千件の開発活動が実施され、上下水道や電力などの
サービスが改善され、人々の生活の質が向上しました。
13
表3:2009年度に実施中のアフガニスタン向けグラント(世銀実施分の金額を除く)
TF番号
グラント名
グラント額
実行額合計
TF052446
「 若者を対象とした将来の潜在的起業家
の育成 」 戦争が続いたために生計手段
を得ることができなかったアフガニスタ
ンの若者の社会経済的立場を向上させ、就
業により継続して所得を創出できるように
するための態勢を整える。
$2,837,800
$2,784,814
2009年2月28日
TF053414
「 武装解除・動員解除・社会復帰ならび
に農村生計のための国家緊急雇用プログ
ラム」 正規の収入源と雇用、職業訓練、
業務管理能力などにより元戦闘員の社会復
帰を促進するほか、ケシ栽培に代わる生計
手段の採用を促進する。
$19,600,000
$19,600,000
2008年8月27日
TF092433
「第二次国家連帯プログラムの展開支援」
コミュニティ・レベルでのガバナンス強化
と社会的・生産的インフラやサービスへ
の農村コミュニティのアクセス向上を目指
し、これまで対象となっていなかった地区
における第二次国家連帯プロジェクトの実
施を支援する。
$4,812,500
$2,000,000
2012年10月5日
TF092435
「 第二次国家連帯プログラムの一環とし
てのコミュニティ開発協議会の組織化 」
プロジェクトの対象コミュニティにおけ
る生活の質を高めることを目的に、コミュ
ニティ開発協議会( CDC )の能力、持続
可能性、結束を強化し、より効率的かつ効
果的な地区開発計画の準備を促進する。
$9,587,480
$0
$36,837,780
$24,384,814
合計:
完了年月日
2012年12月30日
JSDFプログラムには、グラント活動の準備や計画のための支援ファシリティがあり、タスクチームが示
す正当性に基づいてグラント付与が判断されます。グラントは、現地コミュニティ・レベルで受益者と
の協議プロセスのために充てられますが、対象となるのは、遠く離れた農村部や都市周縁部に住む不利
な立場の人々です。JSDFの目的は対象となる受益者の喫緊のニーズへの対応であることから、グラント
を財源とする投資の計画や選定において特別な働きかけや参加型アプローチ促進が必要です。計画・準
備段階で現地NGOやその他のコミュニティ組織が関与することが、最大限の効果と持続可能性を確保す
るために不可欠です。タスクチームは最高 5 万ドルのシード・グラントを申請することができます。グ
ラントはコンサルタント・サービスや世銀職員の交通費・日当などに充てることができます。中間進捗
報告書がグラント承認後 6か月以内に提出されます。シード基金を受け取ったタスクチームは、JSDFグ
ラント・プロポーザルをシード・グラントの承認後12か月以内に提出するよう期待されています。
14
2009年度には、21件のシード・グラントが承認されました。それ以前の2年間におけるそれぞれ13件
と18件のいずれも上回り、シード基金設立以来最多となりました( 図2:年度・種類別グラント承認件数
を参照)。2009 年度に承認された新規シード・グラント 21 件は総額 100 万ドルに上りました(付表 3 :
2009年度に承認されたシード基金グラントを参照)。2009年度に承認された26件のプロポーザルの内
12件がシード基金グラントを得て準備されたものでした。
2009年度に実施中のシード・グラントは42件で、すべての地域、すべてのセクターに及びました。
この内、12件のグラントは2009年度に完了し、JSDFプロジェクトのプロポーザルが間もなく提出される
予定です。この内4件のシード・グラントは、アフリカ諸国におけるプロポーザルの準備のためのもので
した。具体的には、ガンビアの「幼児育成」、ケニアの「コミュニティ・ベースの農林業」、ブルキナ
ファソの「女性の割礼根絶のためのコミュニティの能力強化」、スワジランドの「弱い立場の母子に対
する医療の提供」です。現在実施されているその他のシード基金グラントの内11件がアフリカに対する
ものであり、3分の1以上がこの重点地域に向けられていることになります。
JSDFプロジェクト持続可能性基金
2009年4月、
日本政府はJSDFプロジェクトの将来の持続可能性促進のための基金を設立するため100万
ドルの配分を承認しました。この持続可能性基金は、JSDFのプロジェクト活動の別の財源への移行、
あるいは現在進行中のグラント活動の将来の持続可能性を促進するであろう、これまで予期されていな
かった活動を支援することを目的としています。プロジェクト持続可能性グラントは、10万ドルを上限
とし、受益国または世銀により最長12か月にわたって実施されます。このグラントの対象となる活動は、
次の3種類です。
i)次の要件を満たすつなぎ融資:(a)活動の長期的な持続可能性に貢献し、(b)他の援助財源により
後続グラントが得られた場合の撤退/持続可能性/再現可能性/キャパシティ・ビルディング戦略の
設計を支援し、(c)別の資金源への移行を可能にする。
ii)プロジェクト活動が受益者に適切に移譲されるようにするためのプロジェクト完了時のレビューで、
次のいずれかに関わるもの:(a)プロジェクトの目的に照ら
評価、(b)是正措置の特定、(c)得られた教訓が文
iii)
プロジェクト活動の結果を他のドナーなど潜
在的な資金提供者に提示するコミュニケー
「社会から取り残され、
規模の大きな世銀のプロジェクトでは
書化され、活動再現の場合に活かされるようにす
ること。
した結果の
対応が難しい人々のニーズに応える
JSDFプログラムに感謝している。
さらにJSDFグラントは、開発に重要な役割を
ション・パッケージをいかに準備するかにつ
いてのトレーニング・ワークショップ(対象
は、プロジェクト完了まで約1年の実施機関)
。
2009年度、アフリカでの2件のプロジェクトの持
果たすにもかかわらず、これまで
見過ごされがちだったシビルソサエティや
現地当局の声を取り入れる上でも
重要な役割を果たしている」
イクバル・カウール
社会保護スペシャリスト、MNSSP
続可能性のために、セネガルの「社会開発基金庁−カザ
15
マンス・プログラム」とシエラレオネの「社会資本強化のための能力育成」の2件のグラント(合計20
万ドル)が承認されました。
シビルソサエティとの協働
JSDFは、NGOやシビルソサエティ組織がグラントの計画立案や準備、実施に参加することを奨励し
ています。これまでの経験から、有能な NGOの場合、政府プロジェクトにはできない形で貧困層に働
きかけることが可能であることがわかっています。JSDFの下、NGOやCSOは受領者にも実施機関にも
なることができます。ただし、各国の法律や政府の意向によっては、政府機関が受領者となりNGOや
CSOが実施機関となる場合もあります。さらにNGOやCSOと受益国政府が共同で実施に当たる場合も
あります。
2009 年度は、58 %に当たる 15 の実施機関が NGO/CSO でした。次の表は、承認された通常プログ
ラム・グラントの実施機関の種類別内訳です。
表4:承認されたグラントの実施機関の種類別件数(2005年度−2009年度)
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
合計
政府
13
4
8
4
11
40
NGO/CSO
15
5
11
9
15
55
2
2
1
0
0
5
30
11
20
13
26
100
政府/NGO/CSO合同
合計:
2009年度のJSDFグラントの構成:実施中のグラント
2009 年度に実施中であった JSDF プロジェクトは 114 件( 1 億 8190 万ドル)でした。これまでに、
実施中のグラントの 85 %が JSDF 「 プロジェクト開発目標 」の達成で「 満足できる 」と報告されて
います。実施中のプロジェクトの内、 39件のグラント(総額 6790万ドル)が 2009年度に完了しまし
た。配分が最も多かったのは東アジア・大洋州地域でした。これは、JSDFプログラムが東アジア諸国
の金融危機を受けて設立されたため、当初は同地域の国々が優先されたためです。本報告書では、完
了した次の5件のプロジェクトを取り上げ、その結果と教訓を紹介しています:ベトナムの「幼児教育
開発事業」(TF052939)、タンザニアの「コミュニティ・ベースの沿岸資源管理と持続可能な生計」
(TF053440)、インドネシアの「女性世帯主の家庭エンパワーメント・プログラム」(TF053442お
よびTF055749)、セネガルの「社会開発基金庁−カザマンス・プログラム(TF054216)」
16
ベトナム
幼児教育開発事業:完了時の結果
(TF052939)
囲み3
ベトナム−幼児教育開発事業
目的。本プロジェクトの目的は、最も貧しく脆弱なコミュニティで能力を発揮できる環境を整え、山間部の
少数民族の幼い子供たちの潜在能力が十分に発達するような環境を作るためベトナムを支援することでした。
困難な環境でのグラント実施であったにもかかわらず、この目的は満足のいく水準で達成されました。完了時
点における外部機関の評価は、コミュニティと政府との間の強力なパートナーシップ、モニタリングと監督
も含めた集中的なトレーニング・プログラム、国・地方政府の政策に対する望ましい影響の 3点を挙げ、この
JSDFプロジェクトが成果を上げたと結論付けました。
グラント実行額:1,910,800ドル
実施期間:2005年1月5日∼2008年4月30日
実施NGO:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
JSDFプロジェクトの結果:
• 幼児教育の就学数増加:このプロジェクトの大きな結果のひとつが、幼児(4∼5歳児)の就学数が増
加したことです。幼稚園に通う子供(3∼4歳児)がプロジェクト前の30%からおよそ60%へと大幅
に増えました。特にムオンチャでは33.9%が76%に増えました(下の図10参照)。
図10 ベトナム−JSDFプロジェクト実行前と完了時における3−4歳児の就学率
60
76
75
80
46.6
就学率
37.7
40
33.9
21.4
20
プロジェクト前
0
終了時
ルックイエン
ダクロン
ムオンチャ
17
健康状態の改善。プロジェクト対象地区に住む子供たちの健康状態が著しく改善し、5歳未満の低体重児
の割合が平均39%から19%へ低下しました。
就学前児童用施設と基本的保健サービスの質が向上。校舎やコミュニティ保健センターの新築/改築、
基本的機器の提供、カリキュラム改善、キャパシティ・ビルディングにより、サービスの質が向上し、
保護者や生徒の満足度が改善しました。
少数民族の子供のための就学前カリキュラムの改善。現地のニーズに対応すべく政府の政策を改革した
結果、少数民族の子供のための幼児教育プログラムが改善され、教師や保健医療従事者が現地の状況に
より対応できるようになりました。
ECCDサービスの活用促進能力が向上。コミュニティECCDネットワーキング・グループの設置、保護
者のための学習講座、医療従事者や教員によるカウンセリングのための家庭訪問、給食、情報・教育・
コミュニケーション(IEC)キャンペーンなどの結果、コミュニティで幼児教育の利点に対する認識が
高まりました。
保護者や教師の参加促進。 読み聞かせや村落ごとの
「唯一、教育よりも重要なのは
図書館、施設改善へのコミュニティの貢献、教師を
幼児教育であると確信している。
村のイベントに取り込むことなど、子供の学習・知識
このプロジェクトでセーブ・ザ・チルドレンと
共有活動へのすべてのステークホルダーの積極的関
協力できたことを嬉しく思う」
与 を 促 進 し た 結 果 、保 護 者 や 教 師 の エ ン パワー
エデュアルド・ベレツ・ブスティロ
教育セクター・マネージャー(EASHE)
メントとなり、コミュニティや子供の生活が改善され
ました。
得られた教訓
分野横断的な包括的アプローチがECCDの効果を高める。家庭レベル、コミュニティ・レベル、制度レ
ベルでECCDを支援する複合的なマルチセクターの介入の方が、単独で行われる介入よりも子供の発育
により良い影響を与えるとの示唆があります。子供たちの包括的発達のためには、保健、栄養、教育、
保護、物理的・社会的活動が極めて重要です。複数のセクターにまたがる質の高い実施能力が必要であり、
このプロジェクトではECCD従事者のキャパシティ・ビルディングのための短期研修コースに様々な方
法がとられました。3件のプロジェクトのいずれの現場においても、現地政府と教育当局が、幼児教育と
子供の発育のための包括的なマルチセクターの戦略を策定しています。
施設改善のための三者パートナーシップ。 本プロジェクトは、社会から取り残された多くの人々に
ECCDを拡大する実際的なモデルとなっています。大半のプロジェクト・モデルは縦割りになっていま
すが、政府/現地パートナー/国際NGOの三者によるパートナーシップは、従来のプログラムでカバー
されなかった貧困層へのサービス提供の障害を解消する効果的なモデルであることが証明されてい
ます。このモデルでは、プログラムの提供に影響を及ぼす政策や慣行を変更するため、知識共有や相互
の影響が強調されており、コミュニティにとってエンパワーメントのプロセスとなっています。
18
ベトナムでのECCD
JSDFプロジェクト。上の写真は、保育園帰りの子供たちと補助
教員です。右側後方に見える赤いブリキ板の屋根の建物が、JSDFグラントにより新築
された教室です。この新教室によって教育環境が大きく改善されました。通常は約30
人の5∼6歳児が毎日通園していますが、教室が新築されてからは3∼4歳児も通園でき
るようになりました。JSDFプロジェクトによりムオンチャ県では32の保育園教室が新
築され、6つのコミュニティで合計約1500人の子供たちがその恩恵を受けています。
下の写真が、JSDFプロジェクトよりも前に使われていたかつての教室です。
写真撮影:Bin Than Vu、
上級教育専門
官兼JSDFタスクチーム・リーダー
19
コミュニティのオーナーシップや結果達成のための計画立案とモニタリングを目指すボトムアップ型
アプローチ。参加型計画立案プロセスの中で、プロジェクト介入が進められました。地区のプロジェクト
管理委員会が、コミュニティ管理委員会の参加を得て、プロジェクト・スタッフやアドバイザーの技術
協力を受けながら、月次計画、四半期計画、年次計画を策定し、オーナーシップと結果を最大化しました。
保護者やコミュニティ、指導者たちのオーナーシップと認識により、よりよい結果が実現し、ECCDへ
の需要が拡大しました。
家庭訪問やコミュニティ・ガバナンスで教師が果たす役割 。教師は親や保護者に ECCD の知識を提供
し、村の会合でECCDのメッセージをコミュニティ・ガバナンスに取り入れるために重要な役割を果た
すことができます。
栄養不良の防止。特に食糧難の際に貧困層を中心に国民の栄養状態を高めることは、厳しい時期に栄養
不良を防止するのに役立ちます。
コミュニティ・プロジェクト管理委員会の設置。コミュニティ・プロジェクト委員会が、村レベルでの
すべてのプロジェクト活動の実施とモニタリングにおいて最も重要な役割を果たしました。同委員会
は、コミュニティの人民委員会の委員長が議長を務めました。メンバーには、女性連合、保健・教育関
係の職員、人口・家庭・子供問題の委員会などが含まれています。
NGOへのプロジェクト立ち上げ前の研修。NGOが受領機関となる場合、調達と財務管理に関する世銀
ガイドラインについて事前研修を行うことが、プロジェクト立ち上げの遅れを防ぎ、タイミングよく受
益者の期待に応えるために不可欠です。
20
タンザニア
コミュニティ・ベースの沿岸資源管理と持続可能な生計−完了時の結果
(TF053440)
囲み4 タンザニア−コミュニティ・ベースの沿岸資源管理と持続可能な生計
タンザニア。漁業で生計を立てる人々。写真撮影:Shehzad Noorani
目的:このグラントは、天然資源に依存して生計を立てているザンジバル地区およびキルワ地区の最も貧しい
沿岸コミュニティの貧困および資源劣化の問題を克服することが目的でした。このプロジェクトは(i)貴重で
希少な沿岸資源に対する沿岸コミュニティの認識を高め、資源保護に向けた活動を支援し、(ii)そうした資源
の持続可能な開発のためのコミュニティ計画を立案し、(iii)事業開発を刺激する活動を特定し、強化するこ
とにより、生計を改善し貧困を削減することを意図したものでした。完了時点における目的達成度は「満足で
きる」と評価されました。
グラント実行額:170万ドル
実施期間:2004年7月6日∼2009年6月30日
実施NGO:ZAZOSO、MICA、ANGOZA、およびWWF
JSDFプロジェクトの結果:
本プロジェクトにより、対象となった沿岸コミュニティへの支援が大きく拡大されました。具体的に
は、本土で、実績のある60以上のマイクロファイナンス団体で構成されるネットワークの構築、106団
体の1600人以上への事業支援の提供、そして40団体が関わる2つの形の海中養殖の試験的実施が行われ
ました。ザンジバルでは、合計136のコミュニティ団体(ペンバ島で83団体、ウングジャ島で53団体)
を支援しています。
生計の改善。本土の29の村にある100の事業グループのために設備や資材が調達されました。キルワ、
マフィア、ルフィジからの参加者91人に対するサバヒー養殖トレーニング、37人への事業トレーニング、
女性団体のメンバー 64 人への生計トレーニングなどのトレーニング活動も実施されました。コミュニ
ティの人々は収益が増加した結果、より快適な住居を建て、子供を学校に通わせ、網を購入できるよう
になりました。
21
知識共有。このプロジェクトは、コミュニティ間
での知識の共有を促し、
漁師と漁業省との協力を
強化し、生計手段の多様化をもたらし、コミュニ
ティの動員やモチベーションを高めるとして評
価されています。JSDFプロジェクトの実施状況
を文書として記録する一環として、また、経験や
ベスト・プラクティスを実際に役立つよう広め
るための方法として、ビデオ・ドキュメンタリー
が製作されました。このビデオはすでに100団
体の代表者が観ており、海洋・沿岸環境管理プロ
ジェクトを実施中のすべての沿岸地区でも上映
される予定です。
NGOのパフォーマンスおよびシビルソサエティ
タンザニア JSDF −ザンジバル諸島では、海草の養殖は貧しい家庭に収入をもたらす生命線と
とのパートナーシップ の強化。特にコミュニ
なっている。海草養殖業は成長と多様化を続けており、すでに村の経済に大きく貢献している。
ティの動員および政府のイニシアティブに対
写真撮影:Nicodemus Odhiambo Marcus、タンザニア事務所
するコミュニティの信頼回復において強化さ
れました。パートナーシップの好例として挙げられるのが漁業管理における水産局と世界自然保護基金
(WWF)の協力であり、これにより海浜管理ユニットが設立され、強化されました。
コミュニティの脆弱性の低下 。このプロジェクトは現地の生産
システムの多様化に広く寄与しており、外的ショックに対する
コミュニティの脆弱性が緩和されました。事業開発トレーニン
グにより、成果を上げている70以上の貯蓄信用団体のネットワー
クづくりが順調に進み、120団体の1700人以上に事業支援が提供
され、約50団体が関係する2つの形の海中養殖が試験的に実施さ
れました。
天然資源に対するオーナーシップの強化。共同漁業管理計画の構
築、ならびに漁業関連の法律や規則に関するトレーニングにより、
漁業コミュニティの間で資源管理に対するオーナーシップの意識
タンザニアJSDF−沿岸部ルフィジでの受益者アセスメントの際に、コ
ミュニティ・ベースの沿岸資源管理と持続可能な生計プロジェクトの経
が植え付けられました。本土では、試験的に海浜管理区域/共同
験を披露する受益者たち。
漁業管理区域が設定されています。いくつかの村では資源の持続
写真撮影:Nicodemus Odhiambo Marcus、タンザニア事務所
可能な活用のための規約が定められているほか、そうした規約を
現在策定中の村もあります。
22
得られた教訓
受益者のエンパワーメントと統合は、開発イニシアティブを達成し持続可能なものとするために極めて
重要です。参加型アプローチを通じてエンパワーメントを行えば、貧しい沿岸コミュニティが自分たち
の生計の改善に参加して成果を上げることができます。当初は動員やグループ形成で難題に直面したこ
のJSDF活動も、そうしたグループがいくつものアイデアを生み出し、支援に対しシンプルな形でアクセ
スし、個別の課題に集団的行為として取り組み、後発者に意欲を起こさせ、新たなグループにとって刺
激となることを証明しました。
トレーニング・普及サービスへの投資。広範囲にわたるトレーニングは介入策の成功を増幅するもので
あり、ひいては持続可能性の基礎となります。グループのリーダーや代表者へのトレーニングを実施し
たとしても、他の参加者への浸透効果があるとは限りません。JSDF の下でのコミュニティへの取り組
トレー
みから得られた経験では、イニシアティブが効果を上げるためにはコミュニティに十分な資源、
ニング、定期的な普及サービスを提供してから物品や新技術を委ねるべきであることが示されています。
持続可能性の促進。受益者には、プロジェクトへの介入に伴い発生する責任、あるいは完全かつ独立
したオーナーシップを終点とする出口戦略など、プロジェクトのあらゆる詳細情報が提示されるべき
です。持続可能性を生み出すための努力をしたとしても、さらなる支援が提供されず、また新たなグルー
プを継続的に支援する責任をNGOに委譲しなければ、多くのグループが成果を上げられないかもしれま
せん。
所得創出活動の評価は、サブプロジェクトの適切性、市場の有効性、実施者の能力を確保するために極
めて重要です。市場の存続可能性や受益者の能力について、グラントの徹底的な評価を行う必要があり
ます。
ダルエスサラームで手洗いと下水道整備を促進する校内健康増進クラブのイベントにて。
写真撮影:Amy Pickering、水資源専門官
23
日本政府との協議
グラントの審査・承認はすべて、日本の財務省( MOF)が、外務省(MOFA)および国際協力機構
(JICA)と協議の上で進めます。日本政府内部で行われるこうした協議は、調和を図ることで重複を避
け、開発を促進して援助効果を高めることで持続的な結果の達成に役立ちます。こうした観点から、受
益国の日本大使館と JICA の現地事務所代表は、グラントの設計段階から十分な助言を行い、グラント
調印式(通常、世銀の現地事務所で開催)にも参加します。2009年度の第26∼28次拠出では、44件の
JSDFプロポーザル(総額1億1190万ドル)が提出されました。そして、その63%に当たる30件のグラン
ト(総額6960万ドル)がプログラム基準を満たすと判断され、日本政府に承認申請が提出されました。
プロポーザルの提出は世銀の日本理事(ED)室を通じて行われ、日本理事室の職員は本プログラムの監
督責任も負っています。
調和化の精神と、「オーナーシップ・協調・調和化・結果・相互説明責任の強化をめざす、援助効果
向上に関するパリ宣言」の目的にのっとり、世銀とJICAは国レベルで協力しながら、重複の可能性を回
避しつつ、協調を進め、受益国のオーナーシップを高めています。準備中のJSDFプロジェクトについ
て、また個々のプロジェクト・グラントの承認について、日本側当事者が確実に把握できるようコミュ
ニケーションが図られてきました。グラント設計段階、特に、JSDFシード基金で賄われるステークホル
ダーとの協議のためのワークショップでは、世銀のプロジェクト・チームとJICAの代表が定期的に会議
を開きます。また、日本側当事者は、進捗状況視察や知識共有のためのイベントにも招かれます。2009
年度、JICAと日本大使館の関係者は、セネガルとインドネシアで行われた知識共有ワークショップに参
加しました(第3章参照)。
2009年度、日本政府は、社会から疎外された不利な立場の人々のための開発プロジェクト実施に革新
的方法を適用するため、JSDFプログラムとグローバル開発ネットワークとの協調の可能性を探る話し合
いをJSDFチームと始めました。GDNは世銀が立ち上げ、現在インドのニューデリーにある国際的な研
究・政策機関で、開発を目的とした知識の普及に努めています。新設される賞は、JSDFの目的にかなっ
た革新的な開発プロジェクトを支援し、プロジェクトの拡大も対象となる可能性があります。GDNとの
協力について討議するため、JSDF担当官がニューデリーで会合を開きました。2010年度中に何らかの
決定が行われる見通しです。
今般の金融危機に対処するため、日本政府は2009年度緊急JSDFを設立し、今後3年間で2億ドルの支
援を行うこととし協議を開始しました。こうしたグラントは、金融危機による影響に苦しむ脆弱層を支
援するためのものです。
24
緊急JSDFは、革新的で先駆的なプロジェクトを支援すると同時に、
プロジェクト承認手続きを合理化したり、開発効果の高さが証明された
革新的アプローチを用いたプロジェクトの拡大に力を入れることによ
り、危機にすばやく対応できるよう設計されます。緊急JSDFのグラン
トは、世銀の脆弱層支援ファシリティ(VFF)を補完し、緊急弱者対策
プログラム(RSR)や国際食糧危機対応プログラム(GFRP)といっ
た世銀のイニシアティブと緊密に連携します。そのため、対象となる
活動がRSR 、GFRP 、VFF の要件を満たし、かつ金融危機に対応する
ものであることが、緊急 JSDF のグラント適格性基準の 1 つとなるで
しょう。
2008年度、緒方JICA理事長とゼーリック世銀総裁が東京で会談
し、アフリカ諸国の経済成長や蔓延する貧困削減に向けた支援
などの分野で緊密に協力することに合意しました。2009年度に
は、JSDFにアフリカ向けの特別配分が盛り込まれました。
25
第3章
JSDFの知識の普及
JSDFプロジェクトの実施からこれまでに培われた貴重な教訓
は、取りまとめられ発信されています。こうした知識はキャパシ
ティ・ビルディングに役立ち、ひいては成長、安全、そして貧困
層のエンパワーメントにつながります。学習とキャパシティ・ビ
ルディングを促進するという世銀のコミットメントの下、JSDF
チームは2009年度、知識普及のための様々なイベントを実施す
ると共に、プロジェクト・チームに国やプロジェクトの垣根を越
えて経験が共有されるよう促しました。JSDFプログラムは、世
界銀行研究所(WBI)が事務局となって支援する独立した教育機関
ネットワークであるグローバル・ディベロップメント・ラーニン
グ・ネットワーク(GDLN)と提携しました。WBIは、JSDFプロ
ジェクトから得られた知識の収集で貢献すると共に、個々のウェ
ブサイトやイベントの企画・実施を支援しました。こうした知識
を各国政府やその他の開発実務者が容易に入手できるようにする
ことで、開発のスケールアップには何が功を奏するかについて実
際的な学習を、世銀の内外で促進することができます。
JSDF地域別知識共有ワークショップ・シリーズ
JSDFチームは昨年開始した一連の地域別知識共有ワークショッ
2009年度はインドネシアとセネガルでワークショッ
プを継続し、
プを実施しました。これらのワークショップは、複数の途上国同
士が知識を交換する場として企画され、グラント実施機関、現地
のGDLN 事務所、世銀、日本政府、実施NGO の共催で行われま
した。その主な目的は、( i)プロジェクトから得られた教訓を開
発実務者や政策担当者と共有、(ii)そうした教訓の有意性を他の
地域の事情に照らして議論、(iii)そうした教訓の適用可能性につ
いて意見を述べ合う、の3点でした。ワークショップの準備に協
力するため世銀のチームがプロジェクトの現場を訪れ、直接の受
益者や元兵士から地元の町長や村落の専門家に至る様々なステー
クホルダーの意見を聞きました。この様子はビデオなどのマルチ
26
メディアに収められ、プロジェクトの実施から得られた教訓を
把握する一助となりました。
インドネシアで開催されたワークショップでは、 NGO の
PEKKA により実施されたJSDF プロジェクト(女性世帯主が主
導し、成果を上げた貧困削減プログラム)の設計・実施方法を学ぶ
ことに焦点が当てられました。セネガルで行われたワークショッ
プでは、社会開発基金庁の下で実施されたJSDFプロジェクトか
ら得られた教訓が紹介されました。これらのワークショップは大
規模な地域イベントであり、膨大な準備を要しました。東アジア
(カンボジア、スリランカ、ベトナム、東京、インド、ワシントン
インドネシア−伝統織物を通じた経済的エンパワーメント。
D.C.)、アフリカ(ベナン、コートジボワール、中央アフリカ共
和国、コンゴ民主共和国、ニジェール、セネガル、ワシントン D.C.)など、複数のGDLN・世銀事務所
がテレビ会議で結ばれ、各国からの積極的な参加が実現しました。日本大使館とJICAの代表者が参加し
た他、ドナー、NGO、民間セクター、シビルソサエティ、メディアも参加することができました。これ
らのワークショップは成功裡に終わり、プロジェクト結果の発表に現地受益者が積極的に関与したこと
が高く評価されました。日本は、インドネシアとセネガルのJSDFプロジェクトを成功例として、2009年
10月21日に東京で開かれる授賞式において表彰する予定です。その際には、プロジェクト実施機関、受益
者代表、世銀タスクチーム・リーダーの 3者から成るプロジェクト・チームが来日してJSDFプロジェクト
の結果を発表し、共同で表彰を受けます。
グラントの結果を紹介するため、「 インドネシアにおける
ジェンダー・エンパワーメント 」と「セネガル社会開発基
金」の2件のプロジェクトについてそれぞれウェブサイトが
作られました。どちらのプロジェクトも、紛争後の環境下
で生活を向上させ、長期失業者の再就職の難しさ、住宅・
インフラの破壊、農業生産性の低さ、観光収入の不足、信
頼の回復といった問題に対処する事例です。こうしたプロ
ジェクト活動は、経済と社会の再始動をあらゆる面で支援
しました。参加者はこれらのJSDFプロジェクトの経験から
学び、その特徴をいかにして適合させ、同様に実施するか
について話し合いました。
セネガル−コミュニティのメンバー全員を関与させて、ニーズ、優先事項、プロ
ジェクト設計、モニタリング実施を決定。
27
インドネシア
母子家庭のエンパワーメント・プログラム(PEKKA)
(TF053442/TF055749)
囲み5 インドネシア−母子家庭のエンパワーメント・プログラム
「社会の変化をめざして人々の能力を向上させる過程では、個人・集団の力と資質を拡大する必要がありま
す。PEKKAのエンパワーメント活動は、社会から疎外された特定の集団に特別な注意を払う積極的アプローチ
を基に組成されています。こうした原則の下で、個々の女性世帯主が個別にアプローチを受け、コミュニティ
内部で構成員を限定したグループを結成することによって集団の力を高めるよう奨励されます。このアプロー
チを用いることで、多くの利益が得られます」
ナニ・ズルミナルニ(PEKKA事務局長)
目的:このプログラムの目的は、紛争地域の母子家庭に影響を及ぼす下向きの貧困スパイラルを反転させる
ことです。女性が世帯主となった家庭(大半が紛争で夫を亡くしたため)は、村落の中で疎外され孤立していま
す。貧困が深刻化すると、未亡人だけでなくその子供以降の世代にも影響が及びます。
グラント総額:520万ドル
実施期間:2004年7月1日から現在まで
実施機関:PEKKA
このJSDFプロジェクトは、母子家庭の経済状態を安定・回復・向上させるため、こうした世帯に少額
の資金のほか、零細事業の経営・設立に必要なスキルを提供し、支援を促進しました。また、こうした
女性がコミュニティ内での実施・意思決定プロセスにより積極的に参加し、自身のニーズや優先事項に
対処できるようエンパワーメントを行いました。このプログラムは、既存の女性団体・ネットワークの
強化と、女性に指導力、トレーニング、権利擁護を村落レベルで提供することにより男女平等を促進す
ることを主な活動としており、以下の通り、大きく2つの分野の活動を支えてきました。
• 特に貧しい母子家庭グループによるプロポーザルにブロック・グラントを配分。このグラントは生産的
28
目的のために使われ、返済条件として、グループ内での他受益者への資金循環が認められています。
資金の大半は、母子家庭が零細事業を開始または改善するためのマイクロファイナンスとして利用さ
れましたが、もう1つの重要な用途は、子供を学校に通わせるための費用でした。ブロック・グラント
の平均金額は5,000ドルでした。
• マイクロファイナンス、小規模事業経営、権利擁護に関するトレーニング。トレーニングの結果、女
性は基本的な簿記と現金出納を習得し、利息・営業費用・利益を計算できるようになり、読み書きの
能力を高めたケースもありました。また、トレーニングによって村の指導者と未亡人グループとの対
話が促進された結果、未亡人グループは村落の意思決定組織や地方自治体に活発に関与するようにな
りました。
JSDFプロジェクトの結果
活動範囲:PEKKAは、貧困ライン以下の特に貧しい人々と社会から最も疎外された人々に的を絞った点
が適切だったと評価されました。このプログラムは8州と50郡の252の村落で実施され、約1万5000人
の未亡人にトレーニングを実施し、その家族(約8万人)にも利益をもたらしました。
生活の向上 :プロジェクトに参加した女性の収入は 10 ∼ 20 %
増え、悪徳な高利貸しから融資を受けなくても済むようになり
ました。プロジェクトの活動によって女性世帯主の経営技術は向
上し、その結果、収益力を高めると同時に、世帯・コミュニティ
の貧困削減計画の策定能力が向上しました。ただし、インフレ率
が高く、女性が事業で競争することが困難なため、収入が増えて
もこうした世帯が直ちに裕福になることはありませんでした。
金融・法的資源へのアクセス:母子家庭のエンパワーメントは、
金融資源の利用機会開放に貢献したほか、家族や結婚に関する
インドネシア−PEKKAの支援で実現した養魚事業について説明する女性
世帯主。(写真撮影:Steffen Janu、WBI知識担当官)
問題を解決するためにプロポーザルを作成したり法制度を利用
したりする能力を育成しました。
指導力と市民の義務の強化:このプログラムは、特に市民/政治参加や、民主主義と地方分権化を利用し
て開発や生活水準向上を実現する方法について学ぶトレーニングに多大な投資をしました。これらが成
功したことは、多数の未亡人が地方自治体の公職に立候補したことや、彼女たちの批判的思考技術と、紛
争調停で一定の役割を果たす能力とが向上したことにより裏付けられています。このプログラムによっ
て女性はコミュニティに参加するようになり、今では、女性が地区の予算配分協議や開発プロセスにも
参加するようになりました。
社会への参加:プログラムが実施されるまで、母子家庭は社会の中で最も貧しく、公共の活動に積極的
に参加することは決してありませんでした。女性世帯主が受けたトレーニングはエンパワーメントを重
29
視したもので、社会に参加して、世帯・コミュニティのリーダーになる自信と勇気を高めました。
女性世帯主たちは、社会に溶け込むためには、自らのグループの決定を支配しようとするのではなく、
むしろ共同責任(例:集団債務不履行)を負う必要があることも教えられました。
オーナーシップ強化:ステークホルダー、受益者、政府機関を対象に参加型の活動を進めたことにより、
オーナーシップ強化とプログラムの成功が実現しました。
グループとネットワークの結合:草の根レベルでの女性グループの集団の力によって、グループ間のネッ
トワークやNGO団体とのネットワークが積極的に構築されました。結びつきが強まった結果、ステーク
ホルダーは自身の生活や開発プロセスに対するコントロールを強化することができました。これはプロ
グラムの重要な成果です。
マイクロクレジットの持続可能性:マイクロクレジットの返済率は
98%でした。シード資本と利息を合わせると、当初のグラント資金
より20%増えました。このプログラムのアチェ支部には、アジア財
団とムスリム・エイドが追加支援を提供しています。
プログラムの主流化 : PEKKA のグループは、地方自治体や中央政
府、コミュニティ・グループから注目されるようになり、独自のアイ
デンティティを築きました。女性のエンパワーメント省は、PEKKAの
事務所と、政府への助言協力に参加したチームに助成を行いました。
この他にも、女性グループが、追加的なトレーニングやその他の開
インドネシア−JSDF PEKKAがラジオ局で働く女性を支援。
発援助(他プログラムからの食糧援助やグラント、地方自治体から
の財政支援など)を受けました。
NGOの会計ソフト:NGOに適した会計システムである「セントラル・オペレーショナル・サービス・
ユニット(COSU)」のソフトウェアが導入されたことで、記録作成と十分な遵守監査が促進されました。
プロジェクト実施中、PEKKAは財務管理技術などの人的資源の能力を強化しました。独立機関による監
査とCOSUを使った審査の結果、適切な財務管理が行われていることが確認されました。また、PEKKA
は業務手順をより有効なものとするための改善も行いました。
得られた教訓
受益者が特権者に:プログラムの受益者は例外なく特権者となります。限りある資金と能力では、同様
の状況にある他のグループ全てにまでは行き渡らないからです。他グループの代表者とも知識を共有す
ることにより、コミュニティ内の他の貧困者に対し間接的に恩恵をもたらすことが可能です。
透明性と社会的弱者への配慮:閉鎖的なグループはパートナーを残したまま急速に発展し、たとえば自
身の利益のために資源を利用するなど、せっかくの信頼を不当に活用する可能性があります。公正な代
30
表制と意思決定に対する信頼を守るため社会的弱者への配慮と透明な行動とを促進し、資金の乱用やえ
こひいき、私利追及、エリートの占有といった行為を防ぐためには、トレーニングとワークショップが
必要です。
ブロック・グラント回転資金の利用資格:回転資金の利用範囲を明確にすれば、活動の効果を高め受益
者を増やすことに役立ちます。資金は常に同じグループに対するものでなければならないと広く誤解さ
れていたため、援助に値する他のコミュニティが資金を利用できずにいました。
経済活動を社会運動への入り口として活用:母子家庭グループの中でも確立した団体は、社会の根本的
変化に影響を与える社会的集団力になる可能性があります。経営・指導力養成トレーニングが、コミュ
ニティ運動に応用できる手段を提供したことで、社会運動への転換が促され、女性の抱える貧困関連の
根深い問題に対する取り組みの支援となりました。
シビルソサエティとのパートナーシップ ̶ それ自体が目的:シビルソサエティや地元組織と協力する
には、柔軟性と追加的なトレーニング・支援が必要です。これは、NGOやシビルソサエティの能力を構
築し、効率性と説明責任を向上させるという意味においても重要です。
行政手続き簡素化の必要性:NGOの場合、行政手続きが障害とならないことが重要です。政府は本質的
に比較的硬直した枠組みの中で活動しているため、NGOにとって政府との協力は往々にして難しいもの
です。
31
セネガル
社会開発基金庁 − カザマンス・プログラム
(TF054216)
囲み6 セネガル−社会開発基金庁− カザマンス・プログラム
ウスーイの女性の小規模事業協同組合が、世銀の JSDF 担当官ヨレイン・ジョセフと会合を持ちました。
ウスーイのコミュニティの人口は約1,500人で、そのほとんどがキリスト教徒かイスラム教徒です。女性協同組
合のメンバーは38人で、小規模な農業関連事業で働いています。このプロジェクトは売り上げと収入を伸ばし、
マーケティングや生産量拡大の技術に関するトレーニングを実施しました。
目的:このJSDFプロジェクトの目的は、紛争後の地域に適した有効なコミュニティ主導型開発(CDD)アプ
ローチを用いて、カザマンス地方の紛争で疲弊した貧困コミュニティのために基本的な社会インフラと経済的
支援サービスを拡大することでした。紛争のため村を追われた数千人の村民が 1世代後に戻ってきた村では、
生活とコミュニティの再建が必要でした。このプロジェクトは、世銀のCDD戦略に沿ってコミュニティや村落
レベルに資源や意思決定の管理を委ねることにより、コミュニティの能力、社会の結束力、そして信頼を強化
しました。
グラント総額:200万ドル
実施期間:(持続可能性グラントと並行して)2005年3月29日から現在まで
実施機関:社会開発基金庁
このグラントは以下の2つの主要分野の活動を支援しました。
• コミュニティが自ら特定・準備した基本的な社会開発・収入創出活動。資金はプロジェクトの実施に
全責任を負う村落の運営委員会に供給され、地元レベルでのオーナーシップと透明性の意識が高まり
ました。対象となる村落は、貧困度、紛争後地域、安全にアクセス可能であることを基準に決められ
ました。サブプロジェクトは、小規模かつ低コストで複雑な技術を要しない、参加型の現地投資計画
であることが条件でした。
32
• 対象コミュニティの村落運営委員会の能力を開発するためのコミュニティ円滑化と草の根運営の
トレーニング。紛争後状態での活動経験を持つNGOが、参加型サブプロジェクトの特定・準備・活動
実施を促進しました。収入創出活動を行うにあたり、受益者は事業計画の策定、資金調達、回転資金
の管理、財政支援・零細事業サービスの利用などで支援を受けました。
JSDFプロジェクトの結果
「カザマンス地方の人々は、
4年かけて実施される世銀の社会開発プロジェク
トと異なり、このJSDFプロジェクト活動の実施
地元のコミュニティに日本が単独で平和を
もたらせないことも、世銀がこの地域の開発を
期間は2年でした。受益者によるプロジェクト
保証できないこともよく分かっています。
のオーナーシップが極めて高かったため、速
やかに実施される結果となりました。
彼らは自身の夢を実現するためには、
自らを動員し、自らを頼りに、力を合わせなければ
平和構築への貢献:最も大きな成果は、プロ
ジェクトが平和構築に貢献したことでした。
サブプロジェクトの準備と実施は、コミュニティ
ならないことを十分承知しています」
斉藤隆志駐セネガル日本大使、
地域別知識共有ワークショップでの基調講演
内外の結びつきを再建する有効な手段となりました。
プロジェクトは、戦闘のために放棄されるなど、紛争の影響
を大きく受けた村落で実施されました。人々が自分の村に戻りやすくなるよう、プロジェクトは戦争で
故意に破壊された基礎インフラ(学校や保健施設など)を提供しました。援助は、障害者(特に地雷に
よる障害者)にも配分されました。
平和構築ワークショップ:20年に及んだ紛争の終結後、故郷の村に戻ってコミュニティに参加すること
に関心を持ってもらうため、平和構築技術および紛争に代わる選択肢について 3日間のワークショップ
が開催されました。このワークショップには( i)信頼構築、(ii)将来へのビジョンの構築といった、
カザマンス地方に適した特別なトレーニング要素が組み込まれました。参加者全員が経験や情報を共有
するよう地元の進行役から促され、熟考のプロセスも取り入れられました。トレーナーはワークショッ
プの内容を現地の実情に合わせて調整し、参加者には、地元のことわざや逸話を使って状況を説明する
よう求めました。また小グループに分かれて、ロールプレイングや歌などで参加者間の交流が図られま
した。対象となる受講者が紛争後地域の脆弱な人々であったため、成人向けのこうした特別な教育方法
が不可欠でした。
• コミュニティ劇場を通じた平和の促進:プロジェクトのメッセージを伝えるために用いられた有効な
コミュニケーション方法が、現地の事情に即した形で平和を促進するためコミュニティ劇場で行われ
た地元グループによる寸劇です。せりふには地元の方言が使われ、コミュニティの資源と実情が反映
されます。JSDFは、コミュニティが抱える数多くのニーズの一部が満たされるという希望をもたらす
でしょう。
• 地域の村落地図を作成:地形や交通路、放棄されたり地雷が敷設されたりした村落、脆弱層、プロジェ
クト現場、紛争が残る地域、資源の場所、治安部隊、難民キャンプ、反乱地域、平和を促進する組織
33
などの主要地点が書き込まれた略地図をコミュニティ・グループごとに作成する作業は有益でした。
こうした地図は、地域の警戒システム案について話し合う際に特に役立ちます。
• 平和への階段:この活動は、一連の段階を経ることによってコミュニティが平和に近づくことを意図
したもので、コミュニティの人々に、彼らこそが和平プロセスの中心にいることと、暴力の再燃を防
ぐために以下のプロセスを踏む必要があることを示しました。第 1段階は、コミュニケーションがほ
とんどなく、ニーズが不明な、紛争後の状況です。第2段階でコミュニケーションの兆しが現れ、村に
プロジェクトが生まれます。第3段階では、村落プロジェクトが実施されて平和構築への取り組みが現
実化し、人々には望みがあります。そして第4段階で、コミュニティ構築が進み、紛争状態に後戻りし
ないことが約束され、夢がかないます。
セネガル−平和への階段。JSDFコミュニティ・ワークショップ。
基本的インフラの改善:紛争後の環境下で合計91件のサブプロジェクトが完了し、その内74件がコミュ
ニティ・プロジェクトへの投資を支援するもの、17 件が個人の収入創出プロジェクトを支援するもの
でした。プロジェクトのセクター別内訳は、教室の建設(38%)、保健(21%)、成人向け職業訓練
(12%)、給水(10%)、零細事業支援(8%)、女性の労働負担軽減(2%)、その他(住宅供給、
農業、養魚業、女性・若者の協同組合など計7%)でした。
住民のプロジェクト管理能力の強化。サブプロジェクトや零細事業の計画・実行・維持に対するコミュ
ニティの責任能力を比較的短期間に向上させるため、カザマンス地方に適した専門のツールキット・
トレーニング「グラスルーツ・マネジメント・トレーニング(GMT)」が実施されました。GMTプロ
グラムには約1,000人が参加し、その内712人は村落ベースのサブプロジェクト管理委員会のメンバー
でした。このトレーニング・パッケージは( i )村落のガバナンス、( ii )参加型貧困アセスメント、
(iii)参加型ニーズ・アセスメント、(iv)参加型サブプロジェクトの立案・運営、(v)参加型零細事
業の立案・運営、(vi)コミュニティ主体の調達契約と財務管理、および(vii)草の根コミュニティの分
散型資金運用、といった内容でした。
34
村落レベルでのパートナーシップ:プロジェクト実施機関は、構想段階から完了まで受益者とそのプロ
ジェクトにファシリテータを付けることによって、コミュニティとのパートナーシップを強化しまし
た。ステークホルダーは、読み書きのできない人々のための適切なツールによるコミュニケーションに
焦点が当てられたことを高く評価しました。
村落プロジェクト・コーディネータ ̶ 「はだしの専門家(Expert aux pieds nus)」:このプロジェク
トでは、零細事業やサブプロジェクトの実施についてコミュニティ住民の関心を持続させ動員する役割
を担う村落プロジェクト・コーディネーターを、村落ごとに1、2名養成しました。この村落コーディネー
ターは、代表者またはリーダーとしての信頼性、コミュニケーション技術、プロジェクトへの参加の可否、
職業を基準に、地元コミュニティの住民によって選ばれました。村落コーディネーターの具体的な責任
としては、プロジェクトとコミュニティの受益者とのコミュニケーションの促進、平和構築手段に関す
る知識の普及、インフラ保護のためのセキュリティ警報システムの維持・監視、収入創造活動に関する
助言などがあります。
プロジェクト契約:コミュニティの受益者へのオーナーシップ・財政・プロジェクト実施に関する説明
責任は、地元コミュニティの代表と社会開発基金庁の間で締結された契約書に明示されました。これに
よって、コミュニティが開発と意思決定の主体となり、基金の分散が進みました。
国別プログラムとの調和化:コミュニティ・プロジェクトに助言を行う、各セクター担当省庁の地域代表は、
サブプロジェクトがセクターの目的と基準に沿ったものとなるよう政策を見直す役割を果たしました。
地元の行政機関は情報キャンペーンにも関与し、サブプロジェクトや零細事業を承認する専門的検討パネ
ルのメンバーも務めました。これらの機関は他プログラムとの重複を防ぎ、調和化を図りました。
得られた教訓
コミュニティへの信頼とエンパワーメント:参加型CDDアプローチは、プロジェクトのオーナーシップ
を最大化させ、実施を加速させるなど、成功をもたらしました。コミュニティは優先事項の決定やサブ
プロジェクトの選定、資金の管理を任されました。
セネガル−ファシリテータと協力してサブプロジェクト案を掲げるコミュニティの住民。
35
中央政府から現地コミュニティへのこうした権限の移転は、紛争後の環境において、政府に反逆した
かつての戦闘員と協力するに当たって重要な信頼構築に役立ちました。
紛争解決に向けコミュニティの能力を強化: 平和構築トレーニングをグラスルーツ・マネジメント・
トレーニング(GMT )と組み合わせることで、村落の安定化が促され 、サブプロジェクトや零細事業を実
施するための能力開発と技術協力とを通じて、犠牲になった個人に自信を持たせました。コミュニティ
には、平和構築プロセスへの参加者としての責任が与えられました。平和への階段と村落地図を利用する
ことにより、
コミュニティは平和構築プロセスでの自身の役割の重要性を認識することができました。
テ ー マ 別 地 元 委 員 会 の 設 立 : さまざまな機能
(技術、管理、環境、公衆衛生とHIV/エイズ、平
和構築、調整と動員、関心喚起と動機づけ、財政な
ど)を担う複数の地元委員会を設立するため、ス
テークホルダーに働きかけ、手助けをし、
トレー
ニングを実施することは、プログラム成功の重要
な要素でした。
対象の絞込み: 対象となる地区・村落は、初期
の参加型貧困/ニーズ・アセスメントを基に選
セネガル社会開発基金プロジェクト−参加型ニーズ・アセスメントによってトレーニングの
ばれ、結果的に、最脆弱層(女性、若者、紛争犠牲
ニーズを特定するため集まったコミュニティ住民。
者)主導でプロジェクトが実施されました。成人
男性がプロジェクトの実施に果たした役割は、こうした脆弱層に比べ、
さほど大きくありませんでした。
都市部への人口移動の需要の軽減:農村地域と村落の開発を支援することにより、難民となった紛争犠
牲者が農村地域に戻らず都市部に移動するという事態を防ぐことができました。その結果、村落住民の
生活水準が向上し、都市部の貧困悪化を食い止めることができました。
36
第4章
JSDFプログラムの管理
報告
世界銀行はJSDFプログラムの受託者として、信託基金から拠
出される全グラントはプログラムの目的に沿い、発生する費用
は JSDFプロジェクトの目的のみに使われ、経済性と効率性に細
心の注意を払っています。世銀は日本政府に年次報告書を提出し
て、1年間に承認された新規グラントとその年の実績を報告して
います。報告書は、JSDFウェブサイトで一般にも公開されてい
ます。また世銀は、未監査財務諸表を四半期ごとに、監査済み財
務諸表を年1回、日本政府に提出しています。日本政府はドナーと
して、受託者責任の遵守に説明責任を負うTTLが作成した、実施中
グラントの年次進捗状況報告書を閲覧することができます。さら
に2年に1度、完了したJSDFグラントについて報告書が作成され
ます。2008年度と2009年度に完了したグラントについての報告
書は2010年度に完成し、JSDFウェブサイトに掲載の予定です。
現地視察
2009年度、JSDF担当幹部は、特定のプロジェクトの実施状況
調査を行うため、マリ、フィリピン、タンザニア、ベトナムを
訪問しました。現地ではコミュニティを訪れ、そこに住むグラン
ト受益者と会って、特に JSDFプロジェクトの実施について参加
型の対話を持つと共に、受益者やステークホルダーの意見も聞
きました。また、 JSDFプログラムの資金提供者およびステーク
ホルダーである日本の貢献に対する認知度向上についても取り
組みました。また、国レベルでのドナー協調の重要性に鑑み、日
本大使館関係者や JICA との協議も開催されました。チームは、
まだJSDFグラントを受領したことのないコートジボワールを訪
問し JSDF プログラムを NGO とシビルソサエティ組織に紹介し
たほか、潜在的ステークホルダーのプロポーザル準備に協力し
37
ました。 JSDF 担当官はこれら 5 か国で世銀の国別担当局長と
も会い、 JSDF プログラムの活用、国別パートナーシップ戦略
(CPS)との整合性、申請時の品質を向上させオーナーシップ
確保を図るための国別チームによるプロポーザル審査、および
協調に向けた戦略的アプローチを探りました。
外部からの問い合わせ
プログラムを運営するJSDFチームには、JSDFグラントに応
募を検討中で詳細を知りたいとする外部からの問い合わせが頻
繁に寄せられます。JSDFチームでは、こうした問い合わせの件
フィリピン、サブタン町−先住民族を社会に取り込むための革新的アプ
ローチ。飲料水システムの集水装置。
数を把握すると共に問い合わせをしてきた組織の名称を記録し
ています。JSDFチームは問い合わせをしてきた組織に世銀の現
地事務所を紹介し、どの世銀プロジェクトで新規JSDFグラント
が実施される可能性があるかを確認するよう勧めています。また、グラント・プロポーザルについて当
該世銀プロジェクト担当のタスクチーム・リーダーと話し合い、その活動がCPSに合致するか否かを確
認することも勧めています。2009年度、JSDFチームは107件の問い合わせに対応しました。
JSDFについての詳細情報
JSDFについての情報はいくつかのウェブサイト上で提供されていますが、JSDFウェブサイトは世界
銀行ホームページ上にあります。
http://www.worldbank.org/jsdf
世銀東京事務所のホームページにもJSDFについての情報が掲載されています。
http://www.worldbank.org/japan/about(英語)
http://go.worldbank.org/QYJDU42D80(日本語)
38
付表1:2009年度に承認されたJSDF 通常プログラム:
プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラント
国
グラントの名称
グラント額
(単位:ドル)
グラントの開発目標
第23次拠出
1
パキスタン (C)
タッタ沿岸部の環境変化の中での農民の
生活条件改善
$1,977,650
地方政府と連携し、コミュニティのさらなる参加を可
能にする環境づくりを通じて貧しく弱い立場の地元コ
ミュニティを支援するための制度化されたプロセスお
よび手段を主流化する。
ニカラグア (C)
ニカラグア北大西洋自治区の先住民族お
よびアフリカ系住民のための代替的な持
続可能型農林管理
$1,992,500
先住民族およびアフリカ系住民の組織や企業の能力を
強化し、より経済的で環境的にも持続可能な方法によ
る良質なココアの生産・販売を行う。プロジェクト活
動は地方レベル、国家レベル、国際レベルでの介入か
ら成り、(a)1,000以上のココア農場を対象とする総
合的な農林管理システムの開発、
(b)国際的なフェア
トレードを行う持続可能なチョコレート会社との取引
の拡大、(c)対象となる受益者の社会・商業・環境
管理面の能力の強化を図る。
コロンビア (C)
コロンビアの若者の機会アクセス改善
$1,787,385
若者(14∼26歳)の教育、労働、政治参加の機会へ
のアクセスを拡大する。プロジェクト活動は、受益者
が既存の機会を見出して活用し、そうした機会を活用
する準備を整え、もしくはそのために学習するのを支
援し、新たな機会創出を促進する。
ブラジル (P)2
ブラジル北東部の元逃亡奴隷コミュニティ
における公平な環境づくり
$1,986,932
ブラジル北東部の僻地にある貧しい元逃亡奴隷コミュ
ニティのエンパワーメントを行うため、社会資本を構
築し、官民セクターの既存資源を活用しやすくする。
このグラントは特に、僻地にあるこうした元逃亡奴隷
コミュニティの状況改善を妨げる以下の主な障壁の解
消を図る。(a)集団行動のために必要で、多数のプロ
グラムへのアクセスの前提条件ともなっている地元コ
ミュニティ組織がない、または弱いこと、(b)あら
ゆる種類の情報へのアクセスの不足、(c)適切な参
加型技術協力の欠如、(d)外部からの資金調達のた
めのコミュニティのイニシアティブ準備の経験不足。
マダガスカル (P)
環境的に持続可能なオーガニック・コッ
トン栽培の促進
$1,875,650
環境的に持続可能なオーガニック・コットン栽培の革
新的なアプローチを試行し、綿花から衣服までつなが
るバリューチェーンを構築する。マダガスカルで最も
貧しい農村コミュニティの一部に経済面および生計面
での直接的な利益をもたらすことにより貧困の緩和を
図る。また、さらなる森林伐採や環境面できわめて重
要な地域の劣化を防止するものとして期待される。
第24次拠出
「C」はキャパシティ・ビルディング・グラントを意味する。
「P」はプロジェクト・グラントを意味する。
注:通常プログラムは、別途計上されるアフガニスタン向けグラントを含まない。2009年度にはアフガニスタンに対する新規グラン
トの承認はなかった。
1
2
39
付表1:2009年度に承認されたJSDF 通常プログラム:
プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラント(つづき)
グラント額
(単位:ドル)
国
グラントの名称
グラントの開発目標
ネパール (P)
貧困家庭の子供を対象とした中等学校
奨学金制度
$1,999,867
このJSDFプロジェクトは、(a)第9および第10学年
(14∼15歳)の就学に対する財政支援により、社会
から疎外された最も貧しい人たち(不利な立場に置か
れた人々や少女)の公立中等学校(コミュニティの援
助を受けているものと受けていないものがある)への
アクセスおよび学習成果を改善し、(b)現地でキャ
パシティ・ビルディングを行い、政府が効果的に貧困
層にターゲットを絞ることができるよう支援すること
を目的とする。
紛争後地域におけるコミュニティの参加
$2,000,000
紛争経験地域の市民が紛争解決後に自らの復興と開発
に参加するための態勢づくりをする。これを実現する
ため、グラントを受けるサブプロジェクトの選定や運
営に市民が関わる。さらに、
職業訓練、コミュニティセン
ター、調停に関する教育などの活動を通じてドニエスト
ル川両岸の市民の間で親善や協力関係を構築すること
により、復興への幅広い参加のための態勢を整える。
ベトナム国内の不利な境遇に置かれた
$1,859,000
ベトナムの 3 つの省の少数民族コミュニティに住む
5∼14歳の子供たちが質の高い初等教育を修了して前
期中等学校に進むのを支援する。
$1,803,443
貧しいパプア人女性へのエンパワーメントに向け、
コミュニティ主導の開発プログラム( RESPEK )の
実施と意思決定へのそうした女性の参加を拡大し、
開発プログラムの恩恵をより多く受けられるように
する。また、( a)村レベルで女性にリーダーシップ
とトレーニングを提供し、彼女たちを擁護するために
既存の女性団体やネットワークを強化し、
(b)個々の
女性の能力を育成し、
(c)ジェンダー平等を促進する
ために RESPEK プロジェクトのスタッフならびに村
のリーダーや政府職員など主な関係者の意識や能力を
高めることを通じて、そうした女性のニーズや優先課
題に取り組む。
$861,110
公共政策や公共機関に対する市民の信頼を築くため、
(a)特に貧しいコミュニティが情報アクセスの権利を
行使して社会的監査や政策アドボカシーのツールを活
用するための能力を強化し、
(b)予算編成プロセスへ
の市民の参加や監視を拡大し、
(c)貧困削減のために重
要なセクターにおいて公共情報システムの改善やそう
したセクターを対象として現地で計画された具体的な
イニシアティブを通じて社会的な説明責任を果たし、
(d)ガバナンスや透明性の向上を目指した全体的な政
策対話やコンセンサス形成のプロセスを促進する。
第25次拠出
モルドバ (P)
ベトナム (C)
3 つの省で少数民族の子供に対する質
の高い基礎教育の改善
インドネシア (P)
パプア人女性のエンパワーメント・
プロジェクト
ホンジュラス (C)
公共政策や公共機関に対する信頼の構築
「C」はキャパシティ・ビルディング・グラントを意味する。
「P」はプロジェクト・グラントを意味する。
注:通常プログラムは、別途計上されるアフガニスタン向けグラントを含まない。2009年度にはアフガニスタンに対する新規グラン
トの承認はなかった。
1
2
40
グラント額
(単位:ドル)
国
グラントの名称
グラントの開発目標
イエメン (P)
社会から取り残されたコミュニティの
社会経済的統合の促進
$1,957,515
( a )被差別コミュニティが自分たちの幸福実現に積
極的に寄与するための手段を提供し、既存の都市居住
地内での社会経済的統合を進め、(b)被差別コミュ
ニティが持続可能な生計、能力開発、所得創出へと移
行できるよう、女性および青少年に重点を置いてキャ
パシティ・ビルディングのニーズに対応し、(c)専
門職化を促進し、被差別コミュニティ組織の役割を強
化し、(d)こうしたコミュニティに発言権が与えら
れるよう、被差別コミュニティと現地政府などしかる
べき組織との関係を強化する。
ケニヤ (P)
ケニア半乾燥地におけるコミュニティ・
ベースの農林業事業体の支援
$1,992,875
農林事業体および支援活動ならびに社会経済的な農場学
校ネットワークの強化を通じて、ケニア半乾燥地の貧し
い農民の持続可能な生計の改善を実現するための支援を
提供する。
フィリピン (C)
現地調達改革を通じた貧困コミュニ
ティへの公共支出の質と対応力の向上
$1,011,060
不利な境遇下にある少なくとも 12 の自治体で、貧困
削減プログラム提供での透明性のある参加型調達メカ
ニズムの採用を促進する。
イエメン (C)
社会から取り残され危機的状況にある
青少年への第2のチャンスの提供
$1,939,400
青少年の固有かつ多様なニーズを満たすプログラムの
構築や機会創出のためにシビルソサエティ組織、非政
府組織、政府組織にまたがる制度面の能力を高めるこ
とにより、社会から取り残された弱い立場の青少年に
第2のチャンスを与えるシステムの構築を支援する。
ガンビア (P)
コミュニティ・ベースの保育・幼児教育
$1,449,567
コミュニティ・ベースの保育・幼児教育プログラムの
実行可能性と有効性を評価する。
モザンビーク (P)
コミュニティ・ベースの沿岸資源管理と
持続可能な生計
$1,973,000
資源保全の観点から、モザンビークにおける貧困を緩
和する。これを実現するため、(a)資源利用の限度
および気候変動に対して資源利用をどのように適合さ
せていく必要があるかに関するコミュニティ教育、
( b )持続可能な集団的漁業管理、( c )零細漁業や
その他の海洋活動への民間セクターの参加により、中
南部沿岸地域の各州(イニャンバーネ−ガザ−マプト
地区)における貧困層の所得創出の向上を図る。
モルドバ (P)
モルドバにおけるB型・C型肝炎の予防
$1,409,760
リスクが高く弱い立場の人々、特に移民、青少年、同性
愛の男性、薬物使用者のB型・C型肝炎の感染防止を支
援する。この目的のため、行動の変化を促すコミュニ
ケーション、
ウイルス性肝炎に関する自発的カウンセ
リングとテストのためのサービス確立、自発的献血を
推奨するシステムの支援、グラント管理に関するキャ
パシティ・ビルディングを支援する。
「C」はキャパシティ・ビルディング・グラントを意味する。
「P」はプロジェクト・グラントを意味する。
注:通常プログラムは、別途計上されるアフガニスタン向けグラントを含まない。2009年度にはアフガニスタンに対する新規グラン
トの承認はなかった。
1
2
41
付表1:2009年度に承認されたJSDF 通常プログラム:
プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラント(つづき)
グラント額
(単位:ドル)
国
グラントの名称
グラントの開発目標
アルバニア (P)
アルバニアにおけるコミュニティ開発
を通じた青少年のエンパワーメント
$1,175,700
教育、雇用、市民参加、コミュニティ開発への若い男
女のアクセスを促進する。本プロジェクトの具体的な
開発目標は、対象となるグループについて、(a)中
等教育レベルから労働力や一人前の市民へと移行する
ため様々な能力を向上させ、(b)青少年の起業活動
を支援するグラントを通じて生計や雇用の機会へのア
クセスを拡大し、(c)コミュニティ開発グラントを
通じて市民活動に青少年をこれまで以上に取り込むこ
とにある。
コロンビア (C)
暴力の被害者であるコロンビアの若い
女性へのエンパワーメント:持続可能
な社会経済的取り込みに向けた革新的
アプローチ
$1,557,165
トレーニングと財政援助を組み合わせた革新的モデルを
導入することにより、コロンビアで暴力の被害にあった
若い女性(15∼25歳)が通常の生産的な生活を取り戻
すのを支援する。本プロジェクトでは、
最も困窮してい
る女性たちが社会的にも経済的にも独立するための基本
的なツールを提供することを目指す。このプロジェクト
は、
新しい実り豊かな季節である春を告げる鳥、
ツバメに
ちなんで「スワロー(ツバメ)プロジェクト」と呼ばれ、
困窮する若い女性の生活に豊かな変化をもたらすことを
目指している。
ジャマイカ (P)
コミュニティ犯罪・暴力防止プログラム
$2,700,000
ジャマイカ社会投資基金が、極めて危険で脆弱な都
心コミュニティにおける犯罪や暴力の発生件数を減
少させるよう支援を行う。
スワジランド (P)
弱い立場の母子に対する医療の提供
$2,698,000
( a )孤児や弱い立場の子供たちなどに基本的な母子
医療を提供するための革新的アプローチを試行し、
(b)コミュニティ・レベルでの妊婦・新生児・小児医療
のアクセス性と質を改善し、手頃な価格を維持する。
エチオピア (P)
深刻な急性栄養失調に対するコミュニ
ティ・ベースの試験的管理
$1,895,434
本プロジェクトでは、エチオピアの5歳未満児の深刻な
急性栄養失調の罹病率および死亡率の低下を目指す。
これを実現するため、エチオピアのNGOが人道危機の
観点から発展させた革新的なコミュニティ・ベース急
性栄養失調管理へのアクセスの拡大を図る。こうした
サービスがルーチン・システムを利用して広く実施さ
れるのは、開発という状況においては初めてとなる。
モロッコ (C)
貧困層の学校教育を改善するための
キャパシティ・ビルディングと管理
$2,279,410
(a)モロッコ農村部で最も貧しく最も僻地にある初
等学校での中途退学者を減少させ、( b )最も貧しく
弱い立場に置かれた家族が子供を学校に通わせるため
の財政的負担を減少させ、
(c)保護者会へのエンパワー
メントを通じて最貧コミュニティの高校における学校
管理を改善する。
第26次拠出
「C」はキャパシティ・ビルディング・グラントを意味する。
「P」はプロジェクト・グラントを意味する。
注:通常プログラムは、別途計上されるアフガニスタン向けグラントを含まない。2009年度にはアフガニスタンに対する新規グラン
トの承認はなかった。
1
2
42
グラント額
(単位:ドル)
国
グラントの名称
ホンジュラス (P)
ホンジュラス社会の弱い立場のコミュニ
ティのための新たな形のコミュニティ
管理型教育の試行
$1,800,015
PROHECOと呼ばれるホンジュラスのコミュニティ管
理型学校の枠組み(K-6)を、PROHECOの初等学校の
あるコミュニティおよびPROHECOプログラムのない
僻地コミュニティで前期中等学校(7-9)まで試験的に
拡大する。
インドネシア (P)
母子家庭の維持
$1,918,105
インドネシアの最も貧しい地域において女性が世帯主
となっている家庭の貧困と脆弱性を低下させる。提案
では、女性世帯主に対する訓練を行う他、地元女性組
織が貧しい州における女性世帯主に利益をもたらす特
別プログラムを構築する能力を育成する。
イエメン (P)
家庭・コミュニティ主導のプログラム
を通じた無力な人々の支援
$2,875,635
イエメンにおいて、環境の劣化や不健康な習慣の問題
など、食糧価格の高騰や貧困による影響を受けている
貧しく弱い立場の人々(特に女性、若者、子供)の生
活の質を改善する再現可能なモデルを試行する。
2009年度承認額合計:
グラントの開発目標
$48,776,178
「C」はキャパシティ・ビルディング・グラントを意味する。
「P」はプロジェクト・グラントを意味する。
注:通常プログラムは、別途計上されるアフガニスタン向けグラントを含まない。2009年度にはアフガニスタンに対する新規グラン
トの承認はなかった。
1
2
43
付表2:JSDF通常プログラム・グラントの地域別配分額(2001年度−2009年度)
地域
アフリカ
東アジア・大洋州
ヨーロッパ・中央アジア
ラテンアメリカ・カリブ海
44
年度
グラント件数
グラント額(単位:ドル)
FY 01
3
$2,225,780
FY 02
3
$2,634,949
FY 03
1
$649,450
FY 04
5
$6,668,582
FY 05
8
$10,330,121
FY 06
3
$4,087,593
FY 07
6
$7,704,774
FY 08
2
$2,011,710
FY 09
6
$11,884,526
小 計
37
$48,197,485
FY 01
17
$19,483,034
FY 02
6
$5,573,889
FY 03
6
$10,146,014
FY 04
9
$12,218,002
FY 05
10
$17,265,779
FY 06
3
$3,033,992
FY 07
4
$6,008,407
FY 08
5
$5,784,555
FY 09
4
$6,591,608
小 計
64
$86,105,280
FY 01
5
$3,036,500
FY 02
5
$7,037,175
FY 03
4
$5,430,500
FY 04
0
$0
FY 05
5
$7,405,084
FY 06
2
$3,834,285
FY 07
4
$5,906,618
FY 08
2
$3,948,506
FY 09
3
$4,585,460
小 計
30
$41,184,128
FY 01
3
$4,270,075
FY 02
2
$2,538,500
FY 03
2
$2,409,300
FY 04
3
$4,063,500
FY 05
6
$5,333,345
FY 06
2
$2,900,000
FY 07
4
$4,647,400
FY 08
3
$5,186,571
FY 09
7
$12,685,107
小 計
32
$44,033,798
地域
中東・北アフリカ
南アジア
通常プログラム・グラントの年度別合計:
通常プログラムのグラントの総計:
年度
グラント件数
グラント額(単位:ドル)
FY 01
0
$0
FY 02
3
$1,569,295
FY 03
0
$0
FY 04
1
$1,952,487
FY 05
1
$1,128,200
FY 06
0
$0
FY 07
0
$0
FY 08
0
$0
FY 09
4
$9,051,960
小 計
9
$13,701,942
FY 01
3
$3,686,923
FY 02
4
$2,951,900
FY 03
5
$4,023,106
FY 04
6
$6,758,255
FY 05
0
$0
FY 06
1
$1,370,539
FY 07
2
$2,735,013
FY 08
1
$1,334,750
FY 09
2
$3,977,517
小 計
24
$26,838,003
FY 01
31
$32,702,312
FY 02
23
$22,305,708
FY 03
18
$22,658,370
FY 04
24
$31,660,826
FY 05
30
$41,462,529
FY 06
11
$15,226,409
FY 07
20
$27,002,212
FY 08
13
$18,266,092
FY 09
26
$48,776,178
196
$260,060,636
45
付表3:2009年に承認されたJSDF シード基金グラント
グラント額
(単位:ドル)
承認年月日
弱い立場の人々への母子医療(MCH)提供の準備プロジェクト
$49,600
2008年7月29日
モーリタニア
都市部の青少年雇用促進プログラム
$49,920
2008年7月29日
ニカラグア
女性、若年障害者、先住民族のための生産およびビジネスの多様化
$49,980
2008年8月4日
ベトナム
世代間ろう教育の支援活動
$45,000
2008年8月11日
ホンジュラス
ホンジュラスのサン・マヌエルにおけるコミュニティ・ベース
の水産養殖
$50,000
2008年9月4日
エジプト
エジプトの干拓農地における青年協同組合のエンパワーメント
$43,500
2008年9月4日
イエメン
イエメンにおける食糧危機に対応した持続可能な都市−都市近
郊農業(UPA)および支援活動の促進
$50,000
2008年9月4日
ギニア
ギニアでの世銀プロジェクトに対する社会的監視
$49,800
2008年9月9日
ブルキナファソ
ブルキナファソでの世銀プロジェクトに対する社会的監視
$49,950
2008年9月9日
エジプト
上エジプトのエルミンヤにおける現地雇用・社会開発(LESD)
のパートナーシップ
$43,200
2008年9月10日
モロッコ
モロッコのコミュニティにおける失業中の青年のための自営機
会の創出
$48,200
2008年10月23日
ニカラグア
カリブ海沿岸におけるコミュニティ・ベースの持続可能な観光開発
$49,800
2008年10月28日
ホンジュラス
先住民族およびアフリカ系住民のためのコミュニティ・ベース
の持続可能な観光開発
$49,800
2008年10月28日
ナイジェリア
貧困層の司法アクセス
$48,500
2008年11月10日
エジプト
エジプト農村部におけるITC
$49,900
2008年11月10日
ケニア
ケニアにおける平和の創出・維持のための対話におけるコミュ
ニティ支援
$46,100
2008年11月13日
インド
バングラデシュ、インド、ネパールにおけるグッド・ガバナンス
および不正対策への貧困層の関与
$50,000
2008年11月26日
シエラレオネ
コミュニティ開発と持続可能な小規模生計の多様化
$48,980
2009年1月14日
ブータン
環境に配慮した農業の促進および国内の辺鄙なコミュニティの
農業のための売り込み機会の促進
$29,612
2009年3月4日
スリランカ
高齢者と障害者のためのコミュニティ・ベースのサービス
$50,000
2009年4月23日
インド
インドにおける貧血症減少のための二倍強化塩
$46,910
2009年5月5日
国
グラント・プロポーザルの名称
スワジランド
2009年度のシード・グラント合計:
46
$998,752
付表4:2009年度に承認されたその他のJSDFグラント
国
グラント・プロポーザルの名称
グラント額
(単位:ドル)
承認年月日
持続可能性プログラム・グラント
セネガル
セネガル社会開発基金局(AFDS)−カザマンス・プログラム
$100,000
2009年3月18日
シエラレオネ
社会資本強化のための能力開発
$100,000
2009年6月10日
タンザニアにおけるコミュニティ・ベースの条件付現金給付の
試行
$252,415
2008年8月6日
その他のグラント合計:
$452,415
補足的グラント
タンザニア
47
付表5:JSDF 2009年度方針ガイドラインおよびプログラム配分
1.目的。世界銀行グループ1の融資適格国における生産性の向上、社会・コミュニティ・サービスやイン
フラへのアクセス拡大、貧困層・弱者層の生活水準の向上に資するコミュニティ主導の開発・貧困削減
プログラムに対するグラントの提供。JSDFプログラムの下で承認されるグラントは、本ガイドラインで
定められた基準に沿うものとする。
2.重点分野。JSDFグラントは、世銀の国別援助戦略(CAS)、貧困削減戦略文書(PRSP)、またはセ
クター戦略の貧困削減エレメントの開発目標と整合性があり、かつ世銀が資金を提供しているプロジェ
(i)最も
クトやプログラムを試行・補完することを意図している。JSDFグラントが重点を置く活動は、
貧しく弱い立場に置かれた人々のニーズに直接働きかける活動、(ii)プロジェクト・レベル、国レベル、
地域レベルでの新たな又は代替的なアプローチ、新たなパートナーシップの促進、あるいは新たなター
ゲット層を支援する革新的な手法の試行を促す活動、(iii)世銀が資金を提供しているプロジェクト、
受益国政府の活動、その他の活動を通じてパイロット・プロジェクトを採択もしくは規模拡大すること
により、持続可能な結果をもたらすイニシアティブを支援する活動、(iv)現地のコミュニティ、非政
府組織(NGO)や他のシビルソサエティ組織のオーナーシップ、キャパシティ・ビルディング、エンパ
ワーメント、および参加を促進し、世銀が資金を提供するプロジェクトへの参加を促進する活動、であ
る。JSDF資金の約50%は、東アジア、南アジア、中央アジアの対象国に配分されるものとする。
3.アフリカへの特別配分。2009年度からアフリカへの特別配分が導入された。こうした資金は、農業
開発、参加型の学校管理、健康管理や保健サービスの強化に充てられる。この配分により行われるグラン
トも、他のJSDFグラントと同じガイドライン(下記)に従う2。
4.グラントの種類と適格性。JSDFグラントには2つの種類がある。
(i)プロジェクト・グラント:このグラントが支援するのは、(a)貧困層に直接働きかけ、貧困層
向けのサービスや施設の改善を支援し、社会的セーフティーネットを強化/活性化する活動、あるい
は(b)革新的な活動と新たなアプローチの試行(特に社会セクターを対象としたもの)である。
(ii)キャパシティ・ビルディング・グラント:このグラントが支援するのはキャパシティ・ビルディン
グや能力向上を目的としたもので、たとえば、実地訓練を通じた現地コミュニティやNGOの強化、社
会基金タイプの組織の能力または対象範囲の拡大、コミュニティと共に取り組みを進める現地政府の
支援といった活動である。
2008年の「世界開発報告」で低所得国および低位中所得国と定義された国々は、プロジェクト・グラン
トとキャパシティ・ビルディング・グラント両方の対象となる3。アフリカへの特別配分は、アフリカ大陸
に位置する、JSDFグラントの適格国すべてが対象となる。
世界銀行グループには、国際復興開発銀行、国際開発協会、国際金融公社が含まれる。以下、これらすべてを総称
して世銀という。
2
これら3つの対象分野への5年間の配分額は、農業開発が2000万ドル、参加型学校管理が1000万ドル、健康管理お
よび保健サービスが2000万ドルである。
3
シード基金グラントが承認された場合、当該国が後続のグラントを受ける資格があるかどうかは、シード基金グラン
トが承認された時点の適格性に基づいて判断される。
1
48
5.金額。JSDFグラントの規模は、20万ドル∼300万ドルである。例外的な状況下で、譲許性資金・グロー
バルパートナーシップ総局( CFP)による事前の承認が得られた場合には、最大400万ドルのグラント・
プロポーザルを提出して審査を求めることができる。300万ドルを超えるプロポーザルは、JSDF運営委
員会によって特に厳密に審査される。運営委員会は、プロポーザルに記載された活動の妥当性および実
行可能性と共に、活動費が厳正なプロセスに沿って見積もられたのかどうかを検証するため専門家の協
力を求める場合もある。
6.ファンディング・プロポーザル。日本政府は既定の1ページから成るファンディング・プロポーザルを
基に、グラント供与の可否を決定する。このプロポーザルには基本情報、グラントの全体的な開発目標、
支出項目などが記載されている。グラントを申請する際はファンディング・プロポーザルに加えて、融
資の対象となる活動の詳細、総合的な実施プラン、予想される結果、詳細な予算計画が含まれる申請書
を提出しなければならない。また、グラントの実施に影響を及ぼすようなリスク(たとえば、政治的、
環境的、実施機関の問題、内戦、紛争後の状況など)も含まれている。
7.プロポーザルの審査。世銀の関連ユニットがそのプロジェクトのスポンサーとなり、タスクチーム・
リーダー(TTL)を任命する。TTLはJSDFプロジェクト監督のための準備(会計など)を示さなければ
ならない。プロポーザルの内容は、国別担当局長が承認した国別援助戦略(CAS)の目的とセクター・マ
ネージャーが承認したセクター・アプローチに沿ったものでなければならない。提出されたプロポーザル
は業務担当の各副総裁が検討した後、日本信託基金運営ユニット経由でJSDF運営委員会に提出される。
プロポーザルは、可能な限り、現地NGOおよび国際NGO、特に日本のNGOやシビルソサエティ組織と
の連携を促進するものとする。
8.対象となる支出。物品、小規模な土木工事、サービス(NGO諸経費に必要なものを含む)、
トレーニング、
ワークショップなどの支出はいずれもJSDFが100%賄うことができる支出である。監査の費用もこれに
含まれる。十分な正当性が認められれば、通常の運営予算で対応しきれない数の世銀職員やコンサルタン
トが必要となる複雑な案件、革新的な案件、あるいはコミュニティ参加の案件に伴う追加費用を賄うた
めに、グラント総額の5%を超えない範囲で追加費用を申請することができる。
9.対象とならない支出。次の支出はJSDFの資金で賄うことはできない。(i)世銀が支援するプロジェク
(iii)政府職員の給与、
(iv)海外研修または視
トと何ら関係のないパイロット・プログラム、
(ii)学術研究、
察旅行、
(v)自動車の購入4。
10.グラントの実施。グラントは、当該国により実施されなければならない。グラントの受領機関となる
のは、政府(中央政府、地方政府)、国際NGO、現地NGO、または現地のコミュニティ・グループであり、ど
の組織が受領機関となるかは、タスクチーム・リーダーが各組織の財務健全性、実績、およびグラント資金
の活用・管理能力に基づいて決定する。受領機関あるいは実施機関がNGO または現地のコミュニティ・
グループである場合、中央政府あるいは地方政府がその旨に同意することが必要となる。国連機関は
JSDF グラントの受領機関となることはできない 5 。いずれの場合も、グラントの実施期間はグラン
ト・アグリーメントに調印してから 4 年を超えてはならない。いかなる例外も、それが認められるには
4
5
プロポーザルに記載された理由に正当性があると認められたときは、自動車の購入が例外的に許可される場合がある。
世銀ガイドラインに従って選ばれた場合、国連機関もコンサルタントとしてJSDFグラントの活動に参加することが
できる。
49
十分正当な理由があり、かつCFPの許可が必要である。グラントのタスクチーム・リーダーは、世銀の
基準に基づき、かつ調達ガイドラインに従って世銀のグラント監督の受託者責任を果たす。
11.進捗報告。開発の結果をモニタリングするに当たり、
グラント申請書に基づいて、グラント・アグリー
メントが拘束力を持つ文書となる。タスクチーム・リーダーは年に一度「グラント状況報告」を作成し、
100万ドルを超えるグラントの場合は、
グラント実施状況を評価し、成果物と結果を記録する責任を負う。
グラント実施期間中に投入された資源の総量と実績、結果を記載した「実施完了覚書」(ICM)を完了
時に作成し、ドナー国にも報告する。100万ドル未満のグラントの場合、最後の「グラント状況報告」
にグラント活動の結果に関する追加情報を記載する。いかなる場合も、TTLはグラント活動の結果をス
テークホルダーと共有することが推奨される。
12.支出(実行)分野別または活動別の資金の再配分。支出の種類またはグラント活動の資金の再配分
は、適格な新規の支出分野またはグラント活動を除外・追加する場合を含め、セクター・マネージャー/
局長の承認を必要とする。法務部やCFPに助言を求める場合もある。何らかの修正が必要な場合は、法
務部と協議し、国別担当局長の承認を得なければならない。
13.グラント目的の変更。グラントの開発目的を大幅に変更する場合は、CFPに申請書を提出し、CFPは
日本政府の承認が必要かどうかを判断する。日本政府はCFPからの申請書受領後4週間以内に、承認また
は却下の判断を下す。この変更に伴うグラント修正通知書は、世銀の手続きに従い法務部が承認する。
14.取消条項。次の場合、グラントの未実行分は取消の対象となる。(i)グラントの正式な承認日から6カ
月以内にグラント・アグリーメントに調印がなされていない場合、(ii)グラント・アグリーメント調印
から6カ月が経過してもグラントが実施されなかった場合(支出が一切なかった場合を含む)、または
( iii)CFPにより進捗していないと判断された場合。CFPは納得のいく説明が行われた場合、例外措置
を認めることがある。
15.現地日本当局との協議。調和化と調整を確実に行うため、世銀タスクチームは、譲許性資金・グロー
バルパートナーシップ総局(CFP)にプロポーザルを提出する前に、作成中のJSDFグラント申請書に
ついて受益国にある日本大使館と協議することが求められる。タスクチームによるそうした協議や情報
共有は、意思決定プロセスの促進に役立つ。さらにタスクチームは、JSDFプロジェクトの進捗や結果に
関する情報を日本大使館や現地の日本の援助機関と共有することが求められている。
16.日本の貢献への認知度向上。タスクチームは、次のような種類の活動を通じてJSDFの活動に対する
認知度や受益国での認識を高めることが求められる。
(a)JSDFグラントの資金による刊行物、トレーニング・プログラム、セミナー、ワークショップは、
その活動が日本政府から支援を受けたものであることを明確に示す。
(b)JSDFプログラムの資金による刊行物、あるいはJSDFグラントによるセミナーやトレーニング・
プログラムのバナーや教材などには、ロゴ(通常は日本国旗)を使用する。
(c)JSDFグラントに関する世銀のすべてのプレスリリースは、日本政府からの資金拠出に言及する。
50
(d)受益国は、JSDFグラントによる活動が地元の報道や電子メディアで十分に取り上げられ、そう
した資金が日本から拠出されたものであることをあらゆる広報資料、公式通知、レポート、刊行物等
で明確に示すことが推奨される。
(e)現地でグラント調印式典を開催することが推奨される。受益国は、調印式に日本大使館職員を
招き、国内外の報道関係者も参加するよう努める。
さらに、CFPは次のような形でJSDFの活動に対する認知度向上に努めることができる。(i)調印式
典が、日本政府関係者にとって、また一般市民がJSDFの支援に対する理解を深める上で、重要な役割
を果たすことを国別担当局長に伝える、(ii)JSDF年次報告を引き続き広く配布し、世銀の関連文書に
JSDFに関する情報を記載し、日本の組織を対象としたセミナーを折に触れて開催する。日本の貢献への
認知度向上のためのその他の方法については、添付のガイダンス・ノートを参照されたい。
17.文書の管理。業務担当の各部門は、世銀の事務管理・文書保管の各方針に従って、JSDFグラントに
関する文書、特に委任事項、コンサルタント契約、コンサルタントが作成した報告書などの文書、状況
報告書などの写しを保管する。
18. 配分。2009年度の配分は8000万ドルで、このうち2000万ドルがアフリカへの特別配分である。
19.スケジュール。JSDF運営委員会は、日本政府に年に2∼3回プロポーザルを提出する。日本政府が、
申請内容に問題がないと判断した場合、プロポーザルを受領後4週間以内に可否の決定が下される。日本
政府が追加説明を求めた場合、プロポーザルの最終決定にはさらに時間がかかることがある。
51
日本社会開発基金
日本の貢献に対する認知度向上に関するガイダンス・ノート
はじめに
日本政府(GOJ)は、2000年以降、世界銀行グループの融資適格国における貧困緩和を支援するため、
日本社会開発基金(JSDF)を通じて革新的な社会プログラムにグラントを提供してきた。本ガイダンス・
JSDF支援における日本の貢献が広く認識されるようにするための施策に関する指針を示す。
ノートでは、
日本の貢献に対する認知度向上に関する規定
年度方針文書は、現地日本当局の関与および日本の貢献に対する認知度向上に関して次のように規定
している。
現地日本当局の関与。調和化と調整を確実に行うため、タスクチームは、譲許性資金・グローバルパー
トナーシップ総局(CFP)にプロポーザルを提出する前に、作成中のJSDFグラント申請書について受益
国にある日本大使館と協議することが求められる。タスクチームによるそうした協議や情報共有は、
意思決定プロセスの促進に役立つ。さらにタスクチームは、JSDFプロジェクトの進捗や結果に関する
情報を日本大使館や現地の日本の機関と共有することが求められている。
日本の貢献に対する認知度向上。タスクチームは、次のような種類の活動を通じてJSDFの活動に対する
認知度や受益国での認識を高めることが求められる。
(a)JSDFグラントの資金による刊行物、トレーニング・プログラム、セミナー、ワークショップは、
その活動が日本政府からの支援を受けたものであることを明確に示す。
(b)JSDFプログラムの資金による刊行物、あるいはJSDFグラントによるセミナーやトレーニング・プ
ログラムに使うバナーや教材などには、ロゴ(通常は日本国旗)を使用する。
(c)JSDFグラントに関する世銀のすべてのプレスリリースは、日本政府からの資金拠出に言及する。
(d)受益国は、JSDFグラントによる活動が地元の報道や電子メディアで十分に取り上げられ、そうし
た資金が日本から拠出されたものであることをあらゆる広報資料、公式通知、レポート、刊行物等
で明確に示すことが推奨される。
(e)現地でのグラント調印式典を開催することが推奨される。受益国は、調印式に日本大使館職員を
招き、国内外の報道関係者も参加するよう努める。
52
さらに、CFPは次のような形でJSDFの認知度向上に努めることができる。(i)日本政府関係者と一
般市民のJSDFへの拠出に対する認識と支援を確保する上で、署名式典が重要な役割を果たすことを国別
担当局長に伝える、(ii)JSDF年次報告を引き続き広く配布し、世銀の関連文書にJSDFに関する情報を
記載し、日本の組織を対象としたセミナーを折に触れて開催する。
JSDFプログラムのロゴ
JSDFのウェブサイトでロゴ(通常は日本国旗)を使用する。各地域総局に対するグラント承認通知
には必ず、本ガイダンス・ノート、ならびに世銀およびグラント受領機関が使用できるよう、ロゴの
「Word」バージョンおよび「PDF」バージョンを添付する。世銀は、(i)JSDFグラントの資金による刊
行物、トレーニング・プログラム、セミナー、ワークショップにおいて、その活動が日本政府からの支援を
受けたものであることを明確に示し、(ii)JSDFグラントに関する世銀のすべてのプレスリリースが、
日本政府からの資金拠出に言及し、(iii)JSDFプログラムの資金による刊行物、あるいはJSDFグラント
によるセミナーやトレーニング・プログラムのバナーや教材などにロゴが使用されるよう極力努める。
現地での広報の機会
ロゴの使用に加え、世銀職員は適切なあらゆる措置をとり、JSDFグラントによる活動が地元の報道や
電子メディアで十分に取り上げられ、そうした資金が日本から拠出されたものであることをあらゆる広
報資料、公式通知、レポート、刊行物等で明確に示すよう受益国に奨励する。広報資料を作成する際には、
以下の文言を添えることが望ましい。「この(活動の名称)のためのグラントは、日本政府が資金を拠
出する日本社会開発基金から提供されました」
世銀現地事務所の多くは定期的にニュースレターを発行している。そうしたニュースレターの中で、
新規のグラント承認や調印を紹介する。
ほとんどの現地事務所には広報担当者がいる。タスクチームは、JSDFグラントに関する日本の貢献に
対する認知度を向上させる方法について、そうした広報担当者と協議するとよいだろう。JSDFグラント
によるプロジェクトで注目度の高いものに関する記事を発表する機会を探り、そうした機会を活用すべ
きである。
タスクチームは、JSDFプロジェクトの監督業務に当たり日本大使館と随時連絡を取り合い、そうした
プロジェクトの進捗状況を伝えることが望ましい。また、日本大使館に対して視察に同行してプロジェ
クトの現場を訪問し受益者に会うことを勧めるべきである。
タスクチームは、JSDFグラントの実施状況に関してカントリー・マネージャー/国別担当局長へのブ
リーフィングを行うよう努める。そうした情報は、現地事務所が会合の席上あるいはセミナーやワーク
ショップでの発表において日本の貢献を強調するために役立つであろう。
53
式典
国別担当局長にも、タスクチームと同時にグラント承認が通知され、日本政府関係者や一般市民に
とって署名式典が重要であることが伝えられる。グラント調印式典など広報のイベントで、
世銀の現地職
員は、
ドナーとしての日本の立場が十分に認識される形で日本大使館職員が出席・参加することを促す。
そうした式典の開催はグラント受益国が主導し、可能な場合は正式な招待状を送る。こうした式典は、
マスコミや電子メディアにも伝える。
本部への周知
世銀の現地職員は、プレスリリース、新聞や雑誌の記事、写真(キャプションを含む)など、日本の
貢献に対する認知度向上にかかわるすべての資料を本部宛てに下記まで送付する。
JSDF Unit
Mail Stop H3-305
Trust Fund Operations
Concessional Finance and Global Partnerships
The World Bank
Washington, DC 20433
USA
54
アゼルバイジャン ̶ JSDFグラント「 国内避難民の若者支援プロジェクト
」(TB090489)。プロジェクト
実施に伴う入札等の意思決定に責任を担う選定委員会。バクーにある日本大使館職員松澤幸太郎氏が委員長
を務め、政府や国際パートナーからの代表者が委員として参加。写真撮影:Joanna De Berry、社会開発専
門官(ECSS4)
セネガル ̶ JSDFプロジェクト「 社会開発基金
」
知識普及ワークショップ
には、日本大使館の代表が出席し、基調講演を行った。