ビールは人類五千年のテクノロジーと ノウハウの結晶です。 さあ、ビールをおいしく楽しみましょう。 Head Beer ビールを楽しむための ガイドブック ビアライター 著者 ビア テイスター/アドバンス ド ジャッジ 藤浦 一理 こんな本を出したい出版社募集中! アウトプレス刊 8月10日発売 定価1200円 http://www.mmjp.or.jp/TEN-FORWARD/ ビールを楽しむための ガイドブック ビアライター ビア テイスター/アドバンスド ジャッジ 藤浦 一理 イマジネーションは知識より重要である. ―Albert Einstein 1879∼1955 目次 はじめに 1. ビールの材料について 1.1 大麦、小麦 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1-1 1.2 副材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1-3 1.3 ホップ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1-5 1.4 水 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1-10 1.5 イースト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1-14 2. ビアスタイルの基礎知識 2.1 ラガー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-1 2.2 エール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-15 2.3 ミックスドスタイル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-25 2.4 ベルギースタイル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2-28 3. オフフレーバーについて 3.1 醸造工程で生まれるオフフレーバー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3-1 3.2 ビールの劣化に起因するオフフレーバー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3-4 2.1 ビアスタイルの基礎 ラガー ラガーの起源はドイツで、低温の洞窟で長期貯蔵(ラガー リング)による熟成を行ったことから名付けられています。 一般には下面発酵イーストを使用するスタイルとしてエー ルと区別されます。 このスタイルにはボック、ミュニック デュンケル、ミュン ヘナー ヘレス、ピルスナー、アメリカン ラガー、ヴィエ ンナ、ドルトムントなどに分類されます。 初期比重1.044∼50、最終比重1.006∼12、アル コール度数3.6∼4.2%w/w(4∼5%v/v)、苦み 30∼40IBU、色3∼4SRMとされています。 クラシック ピルスナー アメリカンラガー ピルスナーは比較的歴史の浅いビアスタイルですが、 またたくまに全世界にコピーされた人気のあるビア スタイルです。 ピルスナーの歴史はチェコのピルゼンで1842年に 始まり、この記念すべきビールこそ現在も作られ続 けているピルスナーウルケル(Pilsner Urquell)で す。 ピルスナーは薄い色、中程度のアルコール、華やか でスパイシーなホップアロマが特徴のビールです。 伝統的には非常に色の薄いヨーロッパ産の2条モラ ビアンバーレイモルトを使用しトリプルデコグショ ンマッシュを行います。 使用されるホップは伝統的にはザーツですが、ハラ タウ、スパルト、テトナンガまたはババリアノーザ ンブルワーも使用します。 アメリカンラガーはピルスナーから派生したもので すが、非常に低いホップレート(5∼23IBU)と、 とてもライトはボディが特徴です。ライトなボディ はコーンや米を副材料として使うためで、フレーバ ーやアロマも非常に軽いものです。 アメリカンラガーのサブカテゴリーとして以下の物 があります。 このスタイルには2つのサブカテゴリーがあります。 ボヘミアンピルスナー(チェコピルスナー) Bohemian Pilsener (Czech Pilsener) ボディはライトからミディアムで初期比重1.044∼ 56、最終比重1.014∼20、アルコール度数3.2∼ 4%w/w(4∼5%v/v)、苦み35∼45IBU、色3∼ 5SRMとされています。 代表的市販品例としてはピルスナーウルケル (Pilsner Urquell)があります。 ジャーマンピルスナー German Pilsner 主に北部ドイツで造られるスタイルでボヘミアンピ ルスナーより若干ドライでホップの効いたスタイル です。 代表的市販品例としてはベックス(Becks) 、イェ ーバー(Jeva)があります。 アメリカンラガー American Lager 初期比重1.040∼46、最終比重1.006∼10、アル コール度数3.2∼3.8%w/w(3.8∼4.5%v/v)、苦 み5∼17IBU、色2∼5SRMとされています。 アメリカンスタイル ライト ラガー American-Style Light Lager アメリカンラガーのさらに軽いバージョンで、より 低いアルコール、より軽いボディ、少ない苦みにな っています。アメリカンラガーを水で薄めて造る場 合と特殊な高発酵イーストを使用して極力ボディに なる糖分をビール内からなくすように造られている 場合があります。 初期比重1.024∼40、最終比重1.002∼08、アル コール度数2.8∼3.5%w/w(3.5∼4.4%v/v) 、苦 み8∼15IBU、色2∼4SRMとされています。 アメリカンスタイル プレミアム ラガー American-Style Premium Lager これは逆に水で薄めないスタイルといえます。アメ リカンラガーより少ない副材料と、若干多めのホッ プで、ほんのちょっとボディとアルコール度数を上 げ、ちょっとだけ良い香を付けた、少しだけリッチ なアメリカンラガーです。 初期比重1.046∼50、最終比重1.010∼14、アル コール度数3.6∼4.5%w/w(4.3∼5%v/v)、苦み 13∼23IBU、色2∼8SRMとされています。 3.2 ビールの劣化に起因するオフフレーバー 酸素と光による劣化 現代科学の粋を集めたような大企業の近代的ビール工場で は、醸造工程に原因があるオフフレーバーはおそらく出来 ません。 たとえ出来たとしても、大企業の品質管理の網を潜り抜け て出荷される事はあまり考えられません。 したがって、大企業の市販ビールのオフフレーバーはビー る糖分を添加し瓶内でイーストによって炭酸ガスを 溶け込ませる方法を取ることがあります。これはボ トルコンディションと呼ばれ、この場合おそらくビ ール内の酸素はイーストの代謝によってプライミン グと供に消費されるので酸化臭は発生しにくいと思 われます。 ルの劣化による物と考えてもほぼ間違いではないでしょう。 日光臭 Lightstruck 瓶づめ後の劣化に起因する代表的なオフフレーバー は2つあります。 スカンキーフレーバーと言われるとんでもないひど い匂いになります。 光による劣化はビールのなかのイソフムロン(イソ α酸)の化学構造の一部が光分解して3-メチル-2-ブ テンを作り、タンパク質、アミノ酸が光化学作用を 起こした結果発生する硫化水素が結合して作られる 3-メチル-2-ブテン-1-チオールという物が原因です。 この光化学作用400∼500nmの波長の光で起きま す。ですから、これは別に紫外線とかではなく可視 領域で、青から紫というような色です。したがって、 メーカーの注意書きでは『直射日光を避け』となっ ていますが、別に日光でなくてもこのあたりの波長 の光で劣化は起きます。 酸化臭 Oxidized 酸化臭は“紙のような” 、 “ぬれた段ボール”または “Papery”といったフレーバーや“Catty” (ネコの におい?)といったフレーバーがあります。 酸化臭の本体は高級アルコールのメラノイジンによ る酸化、イソフムロン(イソα酸)の酸化崩壊によ って生じるアルカナールがアミノ酸の存在を介して アルドール縮合して反素数6∼12のアルケナールや アルカジエナールとなって構成され、中でもトラン ス-2-ノネナールは酸化臭の代表的な化合物です。 酸化臭は紙のような匂いと紙のようなひどい味で口 のなかにはりつくような感じがします。 ビールの瓶の色はこのあたりの波長をフィルタリン グするため伝統的に青から紫の補色である茶色から 緑色になっています。 酸化を促進するには、乱暴にあつかってビンをよく ゆする。高温で保存する。温度変化を与える。など があります。 市販の特に缶ビールでとても頻繁にこの酸化臭が付 いているビールに遭遇することがあります。 かってな想像ではビンより缶のほうがより乱暴に扱 われるからではないかと思っています。 では、透明瓶を使っているコロナなどではどうなっ ているのでしょうか。これらのビールではイソフム ロンの化学構造の光分解する部分に水素をくっつけ たテトラハイドロイソフムロンや、イソフムロンの カルボニル基を水酸基に還元したρイソフムロンを イソフムロンの代わりに使用します。これによって 3-メチル-2-ブテンの生成がなされず日光臭の原因が なくなるわけです。 この酸化臭はビール中の酸素による酸化によって起 こるわけですが、一部のビールでは熱処理、または フィルタリングによってイーストを除去せずイース トが生きたまま瓶詰めされ、プライミングと呼ばれ もっとも、市販ビールの究極の日光臭対策は缶ビー ρイソフムロン Rho-Isoalpha acid イソフムロン Isoalpha acid O R HO O O O R HO OK テトラ ハイドロ イソフムロン Tetra-hydro-Isoalpha acid O HO R HO OK O OK ルやケグ詰めにして完全に遮光することです。 瓶ビールを買う場合にはできるだけ光が当たりにく い所で保存されていたもの、輸入ビールなどでは段 ボール箱に入ったままになっているものを購入する ことをおすすめします。 酸化臭、日光臭といった劣化は冷蔵庫という遮光、 および低温という環境下では起きにくいと思われる ので、購入したビールはかならず冷暗所、そんな場 所がなければ冷蔵庫にいれておきましょう。
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