日本の海運 SHIPPING NOW 2012-2013 CONTENTS 暮らしと経済の原点を支える海上輸送 私たちの生活と産業 を支える海運 日本の貿易物資のほぼ 100% (重量ベース)が「船」 で運ばれていることをご存じでしょうか。 現代の私たちの暮らしは、資源・エネルギーの大 量消費の上に成り立っています。その、 「衣・食・住」 に必要な食料・原材料をはじめ、原油、天然ガスな 暮らしと経済の原点を支える海上輸送 2∼ 6 暮らしを運ぶ・・・・・・・・・・・・・・・4 どのエネルギー資源のほとんどは外国からの輸入に 頼っています。 私たちの身近にある電化製品、家具、衣類やガス エネルギーを運ぶ・・・・・・・・・・5 コンロなどどれをとっても元をたどれば外国の製品 産業を運ぶ・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 や原材料でできているのです。 日本は島国のため、これらの大量な必要物資はす 内航海運の活躍 7 日本海運の現況と課題 8 また、日本は輸入した工業原料を加工し製品にし 安全運航への取り組み 9 た。 環境問題への取り組み 10 現在では、日本企業の海外進出が拡大し、海外で 船員育成への取り組み 11 が、日本の海運はこれら海外進出した日本企業の輸 べて船で運ばれてきます。 て輸出する加工貿易により経済成長を遂げてきまし の現地生産が進むなど、貿易形態は変化しています 日本と世界をつなぐ日本の海運 12∼13 送ニーズに応えて地球規模のグローバル輸送ネット ワークを形成しています。さらに、中国やインドを 国内輸送においても、長距離・大量輸送の利点を 運の重要性が再認識されました。 船のいろいろ はじめアジアの新興国の経済発展に対応して増大す 生かして暮らしを運ぶ大動脈として貢献しています。 日常あまり目にすることのない「船」は、私たちの る輸送ニーズにも応え、今では世界の産業や生活に 特に平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災に 暮らしと産業に欠かせない物資を輸送するという重 必要な物資を輸送する重要なインフラストラクチャ おいては、いち早く救援隊や救援物資の輸送に従事 要な役割を担っています。 ーとして貢献しています。 し、被災者をはじめ関係者から高い評価を受け、海 14∼18 海運用語集 19 わが国の海上荷動き量が世界に占める割合(2011年) 日本商船隊※によるわが国の物資の積取比率(2011年) 輸出 輸入 全体 100% 28.4% 100% 全 体 原 油 日本籍船 日本籍船 6.0% 0.7% 出典:国土交通省海事局 ※は巻末の「海運用語集」参照 国際貨物輸送における海上輸送と 航空輸送の割合(2010年、重量ベース) 鉄鉱石 12.1% 9.6% 12.2% 世界 原油 8,023 1,905 海上輸送9億1,500万トン (99.6%) 出典:日本船主協会「日本海運の現状」 石 炭 穀 物 18.7% 7.7% 出典:国土交通省海事局 8,238 1,903 780 鉄鉱石 779 841 石炭 752 302 776 323 その他 日本商船隊 による 輸送量 3,505 833 2007 3,599 866 2008 8,947 8,591 7,838 1,858 1,793 796 石油製品 穀物 航空輸送400万トン (0.4%) SHIPPING NOW 2012-2013 主要品目別海上荷動き量 単位:100万トン 出典:Clarksons 「SHIPPING REVIEW DATABASE」 国土交通省海事局 全体 日本商船隊58.0% 日本商船隊 2 ▲日本の豊かな生活と産業を支える外航海運(写真はLNG船) 812 771 992 898 317 824 2009 3,693 819 2010 205 67 14 69 14 139 140 石炭 186 192 穀物 28 28 327 322 LNG 1,053 775 915 203 (液化石油ガス) 3,935 2011 原油 837 344 338 日本 (液化天然ガス) 938 898 778 3,281 1,840 970 964 LPG 鉄鉱石 その他 2007 2008 833 180 65 12 105 181 177 70 12 79 12 134 162 26 283 2009 903 2010 128 185 175 27 26 306 306 2011 SHIPPING NOW 2012-2013 3 暮らしを運ぶ 船が運ぶ私たちの「衣・食・住」 ▲国際定期航路の主力として多種多様な貨物を運ぶコンテナ船 デパートやスーパーマーケットの衣料品売り場。 は外国からの贈り物であふれています。 並んでいる商品を手に取ってつい生産地を見るとメ 住まいはどうでしょう。マンションなどの建設用 イドインチャイナとかベトナムとか、外国製品が所 鋼材、木造家屋の木材、内装の板、フローリング、 狭しと並んでいます。もちろん航空機で運ばれるア テーブル、プラスチックの容器まで考えてみればど パレル製品もありますが、その多くは 「船」 で運ばれ れも外国から運ばれた製品だったり国内製でも原材 ます。 料は外国産です。 食料品も同様です。冷凍エビやウナギなどは外国 このように、私たちの身近にあるものの多くは、 で養殖されたものが大量に運ばれてきます。肉類も 「船」 で遠い外国から運ばれた来たものであり、 「船」 国内産と言ってもその飼料となるトウモロコシなど がなければ私たちの日々の暮らしは成り立たないと はほとんど輸入品です。パンや麺類に至っても原料 いっても過言ではないでしょう。 の小麦は輸入がほとんど。このように私たちの食卓 主な「衣・食・住」関連物資の輸入依存度(2010年) 100% 100% 綿花 羊毛 3% 米 91% 94% 100% 小麦 大豆 とうもろこし 19% 野菜 62% 44% 74% 果実 肉類 砂糖類 46% 74% 魚介類 木材 0 50 100(%) 出典:「食料需給表」平成22(2010)年度版 「木材需給表」平成22(2010)年 他 4 SHIPPING NOW 2012-2013 「衣・食・住」関連物資の主な輸入先(2011年) 衣 食 14.3% 3.9% インド 4.4% シリア 6.8% 住 その他 インドネシア 綿花 輸入量12万t 米国 33.8% その他 0.4% オーストラリア 20.3% 小麦 輸入量621万t 米国 58.1% インドネシア 4.5% 中国 4.1% オーストラリア 17.3% 英国 3.5% フランス ブラジル 4.9% 6.7% オーストラリア マレーシア 8.2% カナダ 羊毛 25.0% 輸入量1万t 12.5% ブラジル 18.9% 14.8% 12.0% 中国 1.6% その他 0.1% チリ 9.1% 大豆 マレーシア 7.3% 輸入量283万t ロシア 台湾 19.5% ニュージーランド 20.2% カナダ 14.7% 輸入量5,202万㎥ ニュージーランド 中国 14.9% 木材 カナダ 19.5% 21.2% その他 オーストラリア その他 米国 66.9% 米国 11.2% 欧州 9.6% 5.3% 4.5% (注)木材のみ2010年 出典:財務省貿易統計、「森林・林業白書」平成24(2012)年版 生活に欠かせない電気、ガスはもちろん、ガソリ 原子力発電所の事故により、電力の不足が大きな ンや重油など全ての産業にとってエネルギーは不可 問題になっていますが、石油・天然ガスの供給がス 欠です。 トップすれば私たちの生活は根底から崩れてしまい しかし、日本のエネルギー資源の自給率はわずか ます。都市ガスに使用される天然ガスやプロパンガ 4%です。原油の 99.6%、天然ガスの 96.7%、石炭 スも同様に外国からの輸入です。 は 100%を海外からの輸入に依存しています。 これらエネルギー資源を日本に安定的に運んでい 近年、電力では太陽光・風力・バイオマスなどの るのが船です。外航海運は、エネルギー資源国と日 再生可能エネルギーの導入も進められていますが、 本をつなぐ欠くことのできないパイプラインといえ その供給率は、石油、天然ガス、石炭のそれに遠く るのです。 エネルギーを運ぶ エネルギー資源国と 日本を結ぶパイプライン 及びません。 ▲ 日本の暮らしと産業に欠かせな い原油を運ぶタンカー エネルギー原料の輸入依存度(2010年度) エネルギー 全 体 エネルギー原料の主な輸入先(2010年度) クウェート 7.0% 96% その他 14.4% サウジアラビア ロシア 7.1% イラン 原 油 99.6% 9.8% カタール 11.6% 29.2% 原油 中国 アラブ首長国連邦 20.9% 輸入量2億1,433万キロリットル ロシア 石 炭 100% カナダ 5.6% 6.1% 3.5% アメリカ 2.0% その他 1.5% 石炭 一般炭及び ( ) 無煙炭 オーストラリア 62.3% インドネシア 19.0% 輸入量1億8,664万トン ブルネイ LNG 96.7% 0 50 100(%) 出典:「エネルギー白書」2011年版 アラブ首長国連邦 その他 8.4% 7.2% LNG 7.2% マレーシア 20.7% オーストラリア ロシア 8.5% カタール 10.9% 輸入量7,056万トン 18.8% インドネシア 18.3% SHIPPING NOW 2012-2013 5 国境を越えて活躍する日本商船隊 ※ 産業を運ぶ ▲世界の港に日本製の自動車を運ぶ自動車専用船 従来、日本の経済は、外国から工業原料を輸入し され、輸出産業を中心に製造業の海外移転が急速に これを加工して製品にし、輸出することで外貨を獲 進展しつつあります。 得し、生活必需品やエネルギーを輸入して成り立っ この日本の企業の海外進出に呼応して海外の生産 ていました。この工業原料の輸入も製品の輸出も船 拠点から直接外国の消費地に運ぶ「三国間輸送」も による輸送です。 日本海運の活躍する場となっています。 原料の調達先も製品の輸出先も、日本の産業界と 海運は、海洋でつながった世界の国々と国境を越 一緒に世界中に広げています。 えてつながっているのです。 近年、日本は「円」の過大評価による円高に悩ま ※は巻末「海運用語集」参照 日本の地域別海上貿易量の内訳(2011年) 主な工業原料の輸入先(2011年) インド 2.7% 欧州 中南米 4.8% その他 2.7% 南アフリカ 3.6% アフリカ 2.2% 鉄鉱石 ブラジル 28.5% 6.8% フィリピン 62.5% 輸入量 1億2,840万t 30.6% 7.9% 10.7% パプアニューギニア 大洋州 25.2% インドネシア 5.7% 8.3% カナダ 8.8% 銅鉱 輸入量439万t インドネシア その他 21.4% 6.0% チリ 47.5% 9.2% 6 SHIPPING NOW 2012-2013 ニッケル鉱 その他 2.4% 原料炭 53.4% ニューカレドニア 26.9% オーストラリア 輸入量6.866万t インドネシア 輸入量365万t 53.5% マレーシア 中国 インド 4.3% 13.5% 3.9% その他 1.1% アルミニウム鉱 輸入量99万t オーストラリア 77.2% オーストラリア 出典:国土交通省海事局 3.7% カナダ 中東 22.5% 米国 8.3% アジア 北米 19.7% ロシア オーストラリア ペルー 14.5% 出典:財務省貿易統計 四面環海の日本では、国内の物資輸送でも船が積 また、国内の他の輸送機関であるトラックや鉄道 極的に活用され、港と港を結んで海上輸送する内航 などに比べて、長距離・大量輸送に優れているのも 海運が活躍しています。 内航海運です。陸上輸送と比べ二酸化炭素の排出量 内航海運は鉄鋼や石油、セメントなど国内の産業 も少ないため、トラック輸送からエネルギー効率の 基礎物資の約 8 割以上を輸送しています。さらに、 よい内航海運へ、貨物輸送を振り替える 「モーダル 私たちの暮らしに身近な新聞用紙などの紙材、生鮮 シフト」 が進められています。最近では、より環境 食品や牛乳など、さまざまな物資がその製品輸送に にやさしく経済的な電気推進船 (スーパーエコシッ 適した船によって運ばれています。 プ) も就航しています。 一方、内航海運は災害時にも重要な役割を果たし 日本列島の大動脈を航行する内航海運は、さまざ ます。東日本大震災の際も、内航船が救援物資を被 まな面で私たちの生活を守る役割を果たしているの 災地にいち早く輸送しました。 です。 内航海運の活躍 暮らしを運ぶ日本の大動脈 ※ ▲ スピーディーな荷役で雑貨輸送に 活躍するRORO船 ※は巻末「海運用語集」参照 ※ 主要品目別内航輸送量(2010年度) 輸送機関別にみる国内貨物輸送トンキロ(2010年度) 出典:国土交通省「交通関連統計資料集」 20.2% 石灰石・原油等非金属鉱物 36,263 内航 39.5% 自動車 55.8% (1,799億トンキロ) (2,541億トンキロ) 石油製品 41,359 航空 0.2% 23.0% (10億トンキロ) 鉄道 内航海運の船別船腹量(2012年) 特殊タンク船 自動車専用船 211(322)6.0% 土・砂利・石材専用船 249(408)7.1% セメント専用船 369(140)10.5% 96(20)2.8% 合計 3,502 (5,357) その他貨物船 1,723(3,482) 49.2% 油送船 853(985)24.4% 2012年3月31日現在/単位千総トン ( )内は隻数 出典:国土交通省海事局 数値については四捨五入しているため、合計と内計が一致しない場合がある。 鉄鋼等金属 23,907 セメント 16,831 13.3% 4.5% (204億トンキロ) 化学薬品・肥料・その他 9,814 9.4% 5.5% 砂利・砂・石材 5,549 3.1% 1.4% 4.1% 石炭 2,567 輸送用等機械 7,435 その他 36,173 20.0% 単位:100万トンキロ %は国内全輸送量に占める割合 出典:「内航船舶輸送統計総括表」平成22(2010)年度 SHIPPING NOW 2012-2013 7 日本海運の現況と課題 国際競争条件の均衡化に向けて ▲各国の原料生産地と日本の生産拠点をダイレクトに結ぶばら積み船 外航海運企業は、世界単一市場の中で熾烈な国際 しかしながら、諸外国の制度は外国籍船を含むす 競争にさらされています。 べての船舶を対象にしており、わが国の制度と比べ、 このため海運主要国では、自国海運企業、自国籍 きわめて有利な条件であることから、わが国におい 船の国際競争力維持の観点等から、税制をはじめと ても対象の拡充についての検討がなされ、現在、一 する様々な海運政策を講じています。 定の要件を満たす外国籍船にも拡充する方向で準備 特に 1990 年代後半から、トン数標準税制(船舶 がすすめられています。 のトン数に応じて法人税額を決める制度)の導入が わが国外航海運企業活動の国際競争条件が、諸外 世界で相次いだため、わが国においても 2008年に日 国と真に同等となるための努力が続けられています。 本籍船を対象とする同税制の導入が決定されました。 世界船腹量に占める日本商船隊の割合(2011年) 日本商船隊の構成の推移(各年央) ■隻数の推移 世界船腹量 億 万総トン 10 4,308 100% IHS統計による 100総トン以上の貨物船 ■船腹量の推移 外国用船 2,128 95 2,214 92 全体2,223隻 2,306 2,555 98 2,428 107 2,623 119 2,672 136 2,653 2,535 日本商船隊 億 万総トン 約 % 1 2,034 12 (2,000総トン以上の外航貨物船) 出典:IHS (旧ロイド船級協会)「WORLD FLEET STATISTICS」 国土交通省海事局 8 SHIPPING NOW 2012-2013 日本籍船 2,742 2,808 日本籍船 2006 2007 2008 2009 2010 2011 735 727 718 788 1,011 1,119 外国用船 8,153 全体8,888万総トン 8,582 9,309 9,781 10,499 10,092 10,880 10,829 11,840 10,915 12,034 出典:国土交通省海事局 (注)対象船舶は2000総トン以上の外航貨物船 安全運航への取り組み 船舶の安全運航確保と海賊対策の推進 ▲ 安全運航支援センター ▲船舶を護衛する護衛艦 ▲ ソマリア沖・アデン湾に赴く 海上自衛隊を見送る 船舶の安全運航の確保は、海運会社にとって当然 城設備を設置するなど、商船における自衛対策等が の責務であり、また事故等に起因する環境破壊を防 功を奏したものとみられています。 ぐための最重要課題でもあります。わが国外航海運 しかしながら、海賊事件はさらに凶悪化するとと は、国民生活に不可欠な物資を安定的に輸送してい もに、各国艦艇による護衛・哨戒活動が及ばないイ くため、国土交通省をはじめとする関係省庁や、さ ンド洋およびアラビア海の全域にまで拡大していま まざまな国際機関と連携し、安全運航の徹底に努め す。 ています。 このため、欧州諸国を含む多くの国々が、公的も ソマリア沖・アデン湾において航行中の船舶を襲 しくは民間の武装保安要員の乗船を許容するように 撃する海賊事件は依然として頻発しており、2011 なっていますが、日本籍船では民間人による武器の 年は前年 (219 件 ) からさらに増加し 237 件にのぼ 所持が禁止され、武装保安要員を乗船させることが りました。 できません。 一方、同海域における 2011 年のハイジャック件 日本の海運会社は、日本籍船とその乗組員の安全 数は、2010 年の 48 件から 28 件へと大幅に減少し を確保するため、公的もしくは民間の武装保安要員 ました。これは日本の海上自衛隊をはじめとする各 を乗船させることができるような措置の導入・実施 国海軍による海賊対処のための活動や、船舶内に篭 を求めています。 SHIPPING NOW 2012-2013 9 環境問題への取り組み 安定輸送と環境保全の両立へ 長距離・大量輸送に適した外航海運は、最も地球 ュールに配慮しつつ低速で航行することで燃料消費 に優しい輸送モードですが、世界経済の成長にとも 量とCO₂ 排出量を抑える運航上の工夫を行ったり、 ない、国際的に物流量の増大が見込まれているため、 太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用した CO₂ 等の温室効果ガス (GHG)の排出増加など地球 次世代の船舶を開発するなど、さまざまなGHG排出 環境への負荷が懸念されています。国際海運からの 削減対策を実施しています。 GHG排出削減は、海上輸送で世界経済を支え続けて このほか、船の構造や設備などの国際基準を満た いる海運業界の責務といえます。船舶からのGHG排 していない基準以下船 (サブスタンダード船)の排除、 出削減対策については、国際海事機関(IMO) におい 老朽化した船舶を環境に影響を与えずに解体するた て検討が行われており、関係条約の改正を行うなど めのシップ・リサイクル方法の検討なども行われて 着実に成果を上げています。 います。 また、それぞれの海運会社としても、運航スケジ 海運業界は、今後も船舶による環境負荷の低減に ※ ※ 向けたルール作りや技術開発、さまざまな工夫を続 地球環境保護のための海運の対策 けることにより、地球環境保全に貢献していきます。 船体形状の改善 プロペラ・船尾形状の改善 船体重量の軽減 ※は巻末「海運用語集」参照 省エネの推進と 地球温暖化対策 省エネ・低公害エンジンの開発 地球に 優しい海運 タンカーの二重構造化 サブスタンダード船の排除 シップ・リサイクルの促進 海洋環境の保全 海洋での排出物規制 安全な船底塗料の使用 航路環境整備の促進 ▲ 2012年竣工予定ハイブリッド 自動車専用船(商船三井) タンカーのダブルハル化 1トンの貨物を1km運ぶために必要なエネルギー (2008年度) 航空(国内線) 21,072 自家用自動車 営業用自動車 シングルハル 鉄道 437 従来型 単位:キロジュール/トンキロ 出典:「交通関連統計資料集」 10 SHIPPING NOW 2012-2013 外板 内板 燃料タンクの二重構造化 2,128 543 原油 原油 10,734 内航海運 ダブルハル 燃料タンク 新型 バラストタンク 燃料タンク 船員育成への取り組み グローバルに活躍する 優秀な海技者を育成 ▲次世代の優秀な日本人船員の確保に向けて 職務体制 (注)総乗組員24人の場合 ▲日本の海運会社では外国人船員の育成に努めている 一等航海士 二等航海士 三等航海士 甲板部員6人 機関長 一等機関士 二等機関士 三等機関士 機関部員6人 船長 通信長 事務部員3人 ▲最新の高機能操船シミュレータ(商船三井) 安全運航を達成し、維持するためには、船舶の運 プをとる能力が期待されています。 航に直接関わる優れた船員 (海技者) の育成は欠かす 他方、外国人船員も日本商船隊にとっては欠かせ ことのできないものです。将来の優秀な日本人船員 ない存在です。海運各社は世界各国の商船系大学と を確保するため、日本の海運会社は国や海事教育機 提携、海外に船員養成施設を設置し、外国人船員を 関と協力し、中学生を対象としたガイダンスの実施 将来の幹部候補として、積極的に養成しています。 など、さまざまな活動を展開しています。これから 船上での定期的な事故対応訓練、陸上での最新の の日本人船員には海上現場の中核としてだけではな シミュレータを利用した研修を実施し、高い技術力 く、グローバルで活躍する、海運界でリーダーシッ と安全運航への意識向上を図っています。 SHIPPING NOW 2012-2013 11 ヤクタート ランゲル モスクワ ヒューストン ニューヨーク フィラデルフィア ボルチモア ノーフォーク ウイルミルトン チャールストン サバンナ ジャクソンビル アトランタ マイアミ グァイマス サイパン サンダカン コタキナバル バタンガス サンファン プエルトケツアル アカジュトラ コリント グアム セブ トラック カガヤン マンタ グアヤキル マカパ ムングバ マナウス ホニアラ アボットポイント ワイラ ラウトカ カラオ マタラニ アリカ スパ ニューカレドニア イキケ カルデラ グアヤカン バルパライソ サンアントニオ バーニー 見えないライフラインに乗って船で運ばれてきます。 ます。 また、原料や部品の調達から、生産や販売、さら 生活に欠くことのできない穀物や羊毛・綿花をは には在庫保管からデリバリーまでの企業ニーズに応 じめとする生活物資、日本に欠くことのできない原 えるため、日本の海運は効率的かつ的確な物流サー 油や天然ガスなどのエネルギー資源が、今日も目に ビスの実現をめざし、日々努力を続けています。 コロネル ウェリントン ナピア リッテルトン ポートチャルマーズ プエルトマドリン 生活物資の輸入経路(物・羊毛・綿花・木材等) 凡 例 四面環海である日本は海で世界中とつながってい シドニー ポートケンブラ オークランド セペティバ ブリスベーン ニューキャッスル エデン アントファガスタ メルボルン ジーロング グラッドストーン リオグランデ モンテビデオ ブエノスアイレス マッケイ ヘイポイント アピア パゴパゴ サントス パラナグア ワイハ アデレード グルートアイランド アードロサン ダーウィン ポートヘッドランド ポートウォルコット ポートダンピア ポートカビア フリーマントル バンバリー エスペランス タウンズビル ポートモレスビー レシフェ サルバドル ツバロン ビトリア リオデジャネイロ パナマ運河 ベレン タラワ ブエルトカベヨ カルタヘナ クリストバル ブエナベンツラ ラエ ゴーブ スラバヤ セマラン コタバル マカッサル ロンボク海峡 マジュロ ポナペ タワウ タラカン ポンタン バリクパ パン ハリファックス ボストン ケベック モビール ニューオーリンズ ダラス セドロス ビューモント オークランド ロサンゼルス アルバニー 12 SHIPPING NOW 2012-2013 カンザスシティ ロングビーチ ルムット スンダ海峡 ジャカルタ レユニオン ポンチアナ バンジェルマシン モントリオール トロント デトロイト トリード シカゴ サンフランシスコ マニラ クーチン ペナン ポートレイス マラッカ・シンガポール海峡 タマタブ ポートエリザベス ケープタウン サルダナ リチャードベイ ダーバン イーストロンドン ポートサラザール シンガポール ロスマウエ ルアンダ ダナン ニャチャン ホーチミン コロンボ モンバサ タンガ ダルエスサラーム 釜山 仁川 コルカタ チッタゴン バンコク バンクーバー シアトル ポートランド クースベイ エウレカ 基隆 高雄 香港 ハイフォン トリンコマリー アデン湾 ソマリア沖 バブ・アル・マンデブ海峡 タコマ 上海 寧波 厦門 深 カンファ チェンナイ アビジャン モンロビア ラゴス/アパパ コトノウ ロメ テマ ジェッダ 青島 カンドラ ドバイ アブダビ クウェート ダンマン ラスタヌラ バーレーン ラスラファン ドーハ ホルムズ海峡 アバダン バンダルホメイニ カーグ ブシェール バンダルアバス ダス島 カラチ マンガロール モルムガオ ムンバイ ポートサイド スエズ運河 ボストーチニー ナホトカ ウラジオストック ポチ イスタンブール バスラ タンジール カサブランカ マデイラ 大連 ピレウス リスボン スチュワート プリンスルパート ノボシビルスク チェリヤビンスク ハンブルク アムステルダム ロッテルダム アントワープ ウィーン ルアーブル ミュンヘン パリ チューリッヒ ミラノ ジェノバ オデッサ トリエステ フォス セブンアイランズ セントジョン サンクトペテルブルク コペンハーゲン マルセイユ バルセロナ 日本と世界をつなぐ日本の海運 ヘルシンキ ストックホルム ゴーテボルク オスロ フェリクストウ サザンプトン 日本と世界をつなぐ日本の海運 日本を中心とする海上物流ルート エネルギー資源の輸入経路(石油・石炭・LNG・LPG等) 工業原料の輸入経路(鉄鉱石・原料炭・銅鉱石・ニッケル鉱石等) 国際定期航路(製品等の輸入航路) ●この地図は、わが国の代表的な輸出入品目の主な積揚港をもとに、 日本船主協会が作成したものです。 なお、地図の経路は実際の航路ではありません。 ランドブリッジ・サービス SHIPPING NOW 2012-2013 13 船のいろいろ 個性豊かな船たち 船はさまざまな貨物を運んでいます。原油、LNG (液化天然ガス)、鉄鉱石、穀物、自動車、雑貨など、 船が生まれました。また、大量輸送を効率的に行う ための大型化も進んでいます。 液体があれば固体もあり、その形や大きさも千差万 今の時代のニーズに応えながら、暮らしや産業を 別。それぞれの貨物の特徴に合わせて、もっとも安 支え続ける海上輸送のエキスパート。ここにご紹介 全で効率的な輸送方法を追求した結果、多彩な専用 したのは、そんな個性豊かな船のプロフィールです。 水を積むバラストタンク 積荷スペース 荷役装置 暮らしを運ぶ船 コンテナ船 貨物船の中では最速を誇る雑貨輸送の専用船。 衣類や電気製品などの生活雑貨から危険品ま で多種多様な貨物を国際規格のコンテナに収 納して運ぶ。コンテナ化された貨物はトラッ クや鉄道などへの積み替えが容易なため、荷 役の迅速化とともに海陸一貫によるドア・ツ ー・ドアの輸送を実現。国際定期輸送に画期 的な変化をもたらした。 NYK VIRGO(8,600TEU) 97,825総トン/103,207重量トン/全長338.17m ばら積み船 穀物や石炭などのばら積み貨物を運ぶ。貨物 の流動を防ぐため、船倉上部に傾斜をつけ、 トップサイドタンクという三角形のバラスト タンクを設置している。本船自体に荷役装置 を持つものと持たないものがあるが、穀物の 揚げ荷役には、通常、陸上に設けられたニュ ーマチックアンローダーというバキューム方 式の荷役装置が使われる。 SANKO TITAN 30,051総トン/52,514重量トン/全長189.99m 木材専用船 木材を専門に運ぶ船。貨物は船倉内だけでな く甲板上にも積まれ、甲板積みの木材は両舷 に建てられたスタンションと呼ばれる支柱で 左右を押さえ、丈夫なワイヤーで固定される。 荷役施設の不備な積み地が多いため、ほとん どの船がクレーンを装備する。積み荷役は、 筏に組んで運ばれた木材を沖合いで積み取る 方法が一般的である。 FRAGRANT ISLAND 19,885総トン/33,362重量トン/全長177m チップ専用船 製紙原料となるチップ(木材を砕いた小片) を専門に運ぶ。チップは比重がきわめて小さ いため、船倉容積を最大限にして大量に積み 込むとともに、バラストスペースを船底部に 設けている。積み荷役は、陸上のニューマー (空気圧送式荷役装置)で行われ、揚げ荷役 には、本船装備のベルトコンベヤーとバケッ トクレーンが使用される。 14 SHIPPING NOW 2012-2013 SHIN CHUETSU 22,601総トン/25,331重量トン/全長162.0m 野菜や果物、冷凍肉、鮮魚などの生鮮食品を 船のいろいろ 暮らしを運ぶ船 冷凍運搬船 低温輸送する。野菜や果物のように常温に近 いものからマイナス 50 ℃ という超低温が必 要な冷凍マグロまで、さまざまな条件に対応 できるよう船倉内の温度は広範囲に調整が可 能。温度も適切にコントロールできる。船倉 は中甲板で何層かに仕切られ、輸送温度の異 なる貨物を積み分けて運べる。 CROWN OPAL 10,519総トン/10,316重量トン/全長151.99m エネルギーを運ぶ船 原油タンカー 原油を運ぶ専用船。複数の区画に仕切られた タンク状の船倉を持ち、事故時の原油流出を 最小限に抑えるため船側と船底を二重構造化 している。荷役用のパイプラインとポンプを 持ち、積み荷役には陸側のポンプを、揚げ荷 役には本船装備のポンプを使う。50万重量 トンを超す大型の船も出現したが、現在は30 万重量トン級のVLCCが主力。 ENEOS TOKYO 160,062総トン/300,976重量トン/全長333m LPG船 プロパンやブタンなどを液化した LPG(液化 石油ガス)を運ぶ。輸送方式には常温で加圧 して液化する加圧式、常圧で冷却して液化す る冷却式及び半冷加圧式があるが、大型 L P G 船はすべて冷却式。防熱材はばら積み船の ような船倉内に防熱を施した低温 L P Gタン クを設置している。輸送中に気化したガスを 液化する再液化装置も備えている。 YUYO 45,966総トン/49,999重量トン/全長230m LNG船 天然ガスをマイナス162℃の超低温で液化し たL NG(液化天然ガス)を運ぶ。超低温輸送 のための特殊な材質のタンク、荷役時の事故 を防ぐ緊急遮断装置、輸送中に気化した天然 ガスを燃料として使うタービンエンジンなど、 先端技術を駆使したハイテク船。船価が高い ため、特定の天然ガス輸入プロジェクトの専 用船として建造されることが多い。 MUSCAT LNG 118,219総トン/77,351重量トン/全長289.5m 石炭専用船 石油代替エネルギーとして近年比重が高まる 電力用石炭の効率輸送に活躍する専用船。国 内の石炭専焼発電所の専用バースサイズに合 わせた船型や喫水、バースに備え付けられた 揚炭機の可動範囲に合わせたハッチ構成など、 日本の発電所向けの輸送に最適な船として設 計されている。現在、日本とオーストラリア などを結んでいる。 SHOHO 48,950総トン/87,996重量トン/全長235m SHIPPING NOW 2012-2013 15 船のいろいろ 原料を運ぶ船 鉱石専用船 鉄鉱石を専門に運ぶ船。鉄鉱石は比重が極端 に大きいため、積荷スペースを狭くし、船体 中央部に積荷を高く積み上げられるようにな っている。戦後、日本の製鉄業の発展にとも なって登場し、スケールメリットの追及から タンカーに次いで大型化した船種。最大級の ものでは30万重量トンに及ぶものもある。 NSU INSPIRE 132,868総トン/250,813重量トン/全長329.95m 鉱炭兼用船 製鉄原料の石炭と鉄鉱石を運ぶ。鉱石専用船 同様、大型化が進んだ船種で、最近は製鉄原 料輸送の主力。鉄鉱石と比べてはるかに比重 の小さい石炭も運ぶため、鉱石専用船より積 荷スペースは広い。石炭の場合は全船倉に満 載されるが、比重の大きい鉄鉱石の場合は船 倉 1つおきに積み込むジャンピングロードと いう方法を採用する場合もある。 FIRST EAGLE 90,111総トン/180,199重量トン/全長288.93m ケミカルタンカー プラスチックや化学繊維の原料となる石油化 学品や燐酸、硫酸など液状の化学品を運ぶ。 多種類の貨物を積み合わせるため、数多くの タンクを持ち、タンクごとに独立したポンプ とカーゴラインを備えている場合が多い。腐 食や貨物同士の汚染を防ぐため、ステンレス を用いたり、特殊なコーティングを施すなど、 タンク内も工夫されている。 CHEMROUTE BRILLIANT 16,360総トン/25,594重量トン/全長159.03m 製品を運ぶ船 自動車専用船 自動車を専門に運ぶ船。貨物となる自動車を 専門のドライバーが運転し、船側のランプウ ェイから船内に積み込む。船内は何層ものデ ッキに分かれ、バスなど大型車両を積むため のデッキは車高に合わせて上下する。全体に 屋内駐車場のような構造をしている。最大級 のものでは13層ものデッキを持つ6,500台 積みの大型船もある。 LONDON HIGHWAY 55,600総トン/17,765重量トン/全長199.94m 重量物船 プラント部品や大型建設機械など重量物を専 門に運ぶ。構造は一般貨物船に似ているが、 重い貨物を自力で積み降ろせるよう、強力な 荷役装置を備えている。船倉内に入らない大 きな貨物は甲板上に積んで運ぶので、甲板は 強固に建造されている。重量物の荷役中に船 体が大きく傾斜するのを防ぐため、大容量の バラストタンクを両舷に設置している。 16 SHIPPING NOW 2012-2013 KAMO 8,145総トン/9,433重量トン/全長120m 鋼材、機械、家具、食料、衣類などのばら積 船のいろいろ 国内貨物を運ぶ船 一般貨物船 み貨物を運ぶ、最もオーソドックスな内航貨 物船。船倉内に雑貨を混載し、さまざまな貨 物に対応できるよう汎用性のある構造になっ ている。699総トン型、499総トン型 、199 総トン型が輸送効率の高い船型として多く建 造されている。 豊竜丸 499総トン/1,600重量トン/全長74.86m 油タンカー 石油製品を運ぶ油送船。重油用の黒油船(ダ ーティー・タンカー)とガソリン、ナフサ、 灯油、軽油用の白油船(クリーン・タンカー) に分類される。黒油船はタンク内が鉄板のま まなのに対し、白油船はコーティングされて いるのが特徴。タンク内は壁で仕切られ、船 体が揺れても、油が片側に移動しないようバ ランスが保たれている。 鶴宝丸 3,869総トン/4,999重量トン/全長104.94 m ケミカルタンカー(内航) 合成樹脂やポリウレタンなどの原料となる石 油化学品をはじめ、液体化学品を専門に運ぶ 船。油タンカーの構造と似ているが、タンク 内を細かく区切っているのが特徴である。有 害な液体物質を運ぶことが多いため、タンク 内をコーティングしたり、ステンレス製のタ ンクを用いるなど、腐食や汚染防止、環境保 全が考慮されている。 のじぎく 499総トン/1,199重量トン/全長64.8m LPG船(内航) LPG(液化石油ガス)を国内輸送するための 専用船。冷却式の外航LPG船に対して、内航 LPG船は常温で加圧して液化する加圧式を採 用。球形または円筒形の圧力タンクを持つ。 常温で輸送できるので断熱材は持たない。加 圧式はタンクの大型化に限界があるため、小 型船に限られるが、貨物の取り扱いは冷却式 よりはるかに容易である。 第三十二雄豊丸 749総トン/960重量トン/全長67.9 m セメント専用船 工場でつくられたセメントをばら荷の状態で 全国の流通基地まで運ぶ。軽い粉末であるセ メントの特徴を利用し、積み降ろしには空気 圧で搬送する方式がとられ、そのための荷役 装置を装備している。流通基地で荷揚げされ たセメントはセメントサイロに格納され、そ の後、袋詰めまたはばら荷のままタンクロー リーに積まれて搬送される。 第六芙蓉丸 3,610総トン/5,477重量トン/全長98.02m SHIPPING NOW 2012-2013 17 船のいろいろ 国内貨物を運ぶ船 石灰石専用船 鉄鋼業界やセメント業界向けの石灰石を専門 に運ぶ。ばら積み船のような構造の船もある が、最近はセルフアンローダー型の船型が増 えている。これはベルトコンベヤー方式の揚 げ荷役装置を船底部に持ち、ホッパー状の船 倉から落とされた石灰石をそのまま陸上に運 び出す方式で、荷役に人手がほとんどかから ないという特徴を持つ。 名友丸 4,734総トン/7,400重量トン/全長105.63m RORO船 船の前後のランプウェイからトラックやトレ ーラー、フォークリフトによって直接貨物を 積み降ろしするRORO(ロールオン/ロール オフ)方式の貨物船。クレーンで荷役する方 式はLOLO(リフトオン/リフトオフ)方式 と呼ばれる。主に定期航路に就航し、雑貨輸 送に活躍。荷役の迅速化とともにモーダルシ フトの受け皿としても注目される。 ほくれん丸 13,950総トン/6,597重量トン/全長173.34m 自動車専用船(内航) 自動車を専門に運ぶ船。専門のドライバーが 自動車を運転して船内に積み込む。船内は床 を広くとり、5層以上の多層構造になってい る。バスやトラックなど車高の高さに合わせ て床の一部を上下することもできる。海上雑 貨輸送の需要増加にともない、トレーラーな どの大型車両を同時に運べる構造の船も増え しゃとるえーす 8,280総トン/5,271重量トン/全長161.52m ている。 プッシャーバージ 貨物を積むバージ(はしけ)とそれを押すプ ッシャー(押船)を組み合わせた水上輸送シ ステム。バージの船尾に造られたノッチ(切 り欠き部)にプッシャーの船首部分をはめ込 んで連結し、プッシャーの推進力でバージを 運航する。波やうねりのある沿岸でもある程 度活動できるように改良が加えられ、近年、 大型化も進んでいる。 プッシャー:鉱翔丸 全長24m/幅15.72m 石灰石バージ:鉱翔 全長117.4m/幅21m レジャーを楽しむ船 外航客船 レジャークルーズのための客船。5 ∼6層に 分かれたデッキには、客室やレストラン、ラ ウンジ、シアターなど贅沢な設備が整えられ、 航海中はショーやイベントなどが開催 される。単なる移動手段を超えて、 船旅そのものを楽しむために、設 備とサービスの充実をめざす。新 しい時代のレジャーとして人気を高めている。 18 SHIPPING NOW 2012-2013 飛鳥Ⅱ 50,142総トン/全長241m 海運 用語集 シップ・リサイクル】 老朽船を解体し、資源を再利用すること。船舶は解撤による鋼 材や部品の再利用/再使用率が90%以上と、自動車や家電と比 較しても極めて高く、解徹の促進は、海洋環境の保全とともに 資源の有効活用という点でも意義が大きい。 当直】 日本商船隊】 日本の外航海運会社が運航する船隊全体を指し、日本籍船と外 国船主から用船した外国籍船によって構成される。近年は、日 本商船隊全体に占める日本籍船の割合は減少し、隻数で4.8%、 トン数で9.3%(2011年)となっている。 24時間休みなく運航される船舶では、航海士と部員(甲板手) のペアによって構成される当直員が交替で船橋に立ち、運航状 況や周囲の船舶の動きなどを監視する。これが航海当直で、通 常は 1日を4 時間ごとの6 つの時間帯に分け、一等から三等の各 航海士が甲板手1名と組み、それぞれが4時間当直して8 時間休 むというサイクルで当直を行う。同様に機関室の当直も機関士 と部員によって行われるが、最近では自動運転され、機関当直 を行わない船も多くなっている。 トンキ口】 輸送トン数に輸送距離 (km) を乗じた単位で、船舶など輸送機 関の活動量を表すために用いる。 モーダルシフト】 地球環境問題や道路混雑、労働力問題など、制約要因が顕著に なってきたトラックから低公害で効率的な大量輸送機関である 船舶などへ輸送モードをシフトさせることをいう。 総トンと重量トン】 総トン数は、船舶の大きさ(容積)を表す単位。重量トン数は、 満載喫水線の限度まで貨物を積載した時の全重量から船舶自体 の重量を差し引いたトン数であり、燃料・水・食料などの重量 を含むが、船が積める貨物の重量を示す目安となる。 船員になるには 船員になるには、様々な方法がありますが、外航 サブスタンダード船】 構造・設備・人員等の面で、国際条約による安全基準に達して いない船舶。海上交通の安全からも海洋汚染防止の観点からも、 国際海運市場から排除する必要がある。また、寄港国(港が所 在する国)は、入港船舶に対し、船舶設備や船員の資格等につ いてIMO(国際海事機関)などが定めた国際条約に適合してい るか検査を行うことが認められており、これをポートステート コントロール(PSC)という。このPSCによって、サブスタンダ ード船については、条約の基準を満たすまで改善措置(場合に よっては航行停止)をとらせることができる。 船員になるためには、中学校卒業後に商船高等専門 学校へ進学する道と、高校卒業後に専門部のある大 学へ進学する道が一般的です。資格を得て、乗船す ると航海士・機関士としてスタート。乗船履歴を積 みながら、上のクラスへ試験にパスしていくと、や がて船長・機関長として船を運航するチャンスがや ってきます。 また、国内の貨物輸送に携わる内航船員になるた めには、別の教育機関があります。 SHIPPING NOW 2012-2013 ●協力● (一社)日本船主協会 http://www.jsanet.or.jp ●編集・発行● (公財)日本海事広報協会 http://www.kaijipr.or.jp 〒104-0043 東京都中央区湊 2-12-6 TEL03-3552-5033 FAX03-3553-6580
© Copyright 2024 Paperzz