宮古島神経科学カンファレンス2013 プログラム

第1回宮古島神経科学カンファレンス 2013 開催にあたり
国内開催される医学系の学会、研究会は年間 2000 件を超え、開催トピックスは多岐にわたり、
その多くは都市部で開催されています。宮古島のような離島地区での開催機会は極めて少ないのが
現状です。このような環境の中、このほど国内外の第一線で活躍されている多くの研究者や臨床家
をお招きして、ここ宮古島で第1回宮古島神経科学カンファレンス 2013
(Miyako Island
Conference on Neuroscience: MICONS 2013:11 月 22−23 日:ホテルブリスベイマリーナ)を
開催することになりました。
わが国は急速な高齢化に伴い、認知症、脳卒中、神経難病患者が増加しており、これら疾患の予
防・治療・介護などは、医学的見地のみならず、社会・経済的な面からも重要性が増しています。
現在、それら疾病の医療環境整備は確実に進歩してきておりますが、その恩恵は都市部に集中して
おり、離島や遠隔地との格差は今なお社会問題として根強く残っています。こうした背景から、多
様化し増加する様々な神経精神疾患について、臨床医学に加えて、基礎医学、医用工学、心理学、
さらには介護・福祉・行政までも含めた包括的な視野で議論し生活環境整備をすることが望まれて
いることは、日本全国はもとより、沖縄を含め離島である宮古島でも例外ではありません。
このカンファレンスでは、神経内科学、脳神経外科学、精神医学、リハビリテーション医学など
の臨床医学分野に加えて、神経生理学、神経心理学、認知神経科学、心理学、障害医学、教育学、
看護学、医用工学、電子工学、環境科学などの多種多様な分野の関係者の方々に、活発な討論をし
ていただけるように参加を募りました。また、台湾國立成功大学神経内科 Ming-Chyi Pai 教授をお
招きする事もできました。最新の課題をこのカンファレンスを通して異分野の研究者の皆様が、個々
の研究領域の垣根を越えた忌憚のない意見情報・意見の交換し、神経科学の理解を深め、包括的な
観点から疾病に対峙します。ぜひ、この機会を通してご参加頂く皆様の日常診療にお役立ていただ
ければ幸いです。
最後に、離島で行われるこのようなカンファレンスが、今後の地域医療と住民の皆様のうむやす
(安全、安心)生活の向上に寄与することができれば、主催者一同これに勝る喜びはありません。
たんでぃがあたんでい。(ありがとうございます)
第 1 回宮古島神経科学カンファレンス
会長
竹井
太
宮古島神経科学カンファレンス 2013 参加案内
1.参加受付
1)参加登録受け付けは 11 月 22 日(金曜日)午前 10 時より会場の前にて行います。
プログラム(本誌)、ネームカード等を渡します、会期中はネームカードを着用して下さ
い。
2)参加登録費は以下の通りです。
一般
5,000 円
学生
2,000 円
2.一般演題のご発表
1)講演時間は、口演 8 分、質疑 2 分の計 10 分です。
液晶プロジェクターを事務局でご用意しております。
2)ご発表はメモリーなどの記憶媒体でも、ご自身のノートパソコンでも可能です。
Macintosh および Windows-PC が映写可能です。
Microsoft Office PowerPoint 2003 以降に対応しています。
3.試写
参加受付の隣に設置しますので、発表 30 分前までにお済ませください。
4.休憩時間
コーヒー類や菓子類など、会場後方に無料で設置いたします。
5.懇親会
1)会場: ホテルブリーズベイマリーナ
2)日時:2013 年 11 月 22 日
※
コンベンションホール (研究会会場と同じ部屋です)
午後 6 時より
カンファレンス 参加登録者の懇親会費は無料です。
6.事務局
〒906-0013 沖縄県宮古島市平良下里 1477-4
うむやすみゃあす・ん診療所(竹井太)
電話:0980-73-3854、
ファックス:0980-73-3851
電子メール:
[email protected]
〒010-0874 秋田市千秋久保田町 6-10
秋田県立脳血管研究センター神経内科 (長田乾・前田哲也・田村美紗緒)
電話:018-833-0115、
ファックス:018-833-6006
電子メール:
[email protected]
7.会場 :ホテルブリーズベイマリーナ
コンベンションホール
〒906-0203 沖縄県宮古島市上野字宮国 784-1
電話:0980-76-3000、FAX:0980-76-3458
ホームページ:http://www.nanseirakuen.com/bbm/index.html
宮古空港からのアクセス
無料シャトルバス運行時刻表
宮古島神経科学カンファレンス 2013 実行委員会
大会長
竹井
太
うむやすみゃあす・ん診療所
事務局
長田
乾
秋田県立脳血管研究センター神経内科
前田
哲也
秋田県立脳血管研究センター神経内科
田村
美紗緒
秋田県立脳血管研究センター神経内科
委員
池村 眞
伊良皆
院長
宮古地区医師会会長・池村内科
啓治
九州大学大学院システム情報科学研究院情報学部門
内山
真一郎
東京女子医科大学神経内科
上田
由紀子
秋田大学教育文化学部
江田
英雄
光産業創成大学院大学光医療・健康分野
大澤
美貴雄
東京女子医科大学神経内科
大友
智
みやぎ県南中核病院脳神経外科
熊坂
義裕
盛岡大学栄養科学部(前宮古市長)
古賀
良彦
杏林大学精神神経科
小林
哲生
京都大学大学院工学研究科
佐藤
正之
三重大学医学部認知症医療学講座
鈴木
則宏
慶應義塾大学神経内科
諏訪園
秀吾
国立病院機構沖縄病院神経内科
綱島
均
日本大学生産工学部機械工学科
寺山
靖夫
岩手医科大学神経内科
渡嘉敷
崇
琉球大学第三内科部
冨本
秀和
三重大学大学院神経病態内科学分野
中川
雅文
国際医療福祉大学耳鼻咽喉科
服部
信孝
順天堂大学脳神経内科
平田
幸一
獨協医科大学神経内科
松浦
雅人
東京医科歯科大学生命機能情報解析学
水野
敏樹
京都府立医科大学神経内科
村山
伸樹
熊本大学自然科学研究科
本永
英治
沖縄県立宮古病院
山本
光利
高松神経内科クリニック
山本
聡
沖縄県立宮古病院脳神経外科
湯屋
博通
セセッカ診療所
吉田
一人
旭川赤十字病院神経内科
横山
絵里子
秋田県立リハビリ精神医療センター
11 月 22 日(金曜日)
開会の挨拶
11:50~12:00
竹井太 (うむやすみゃあす・ん診療所)
ランチョンセミナー 12:00~12:45
座長:
渡嘉敷
共催:第一三共
崇 (琉球大学第三内科)
変貌する脳卒中:心原性脳塞栓症に対する新たな治療戦略
Recent changes in Stroke: New therapeutic strategy against cardiogenic embolism
長田
乾
Ken Nagata
秋田県立脳血管研究センター神経内科
座長:
Coffee Break
12:45~12:55
一般講演 1
12:55~13:35
綱島
均 (日本大学生産工学部機械工学科)
1.神経発火確率を考慮した rTMS の刺激効果予測
Predicting rTMS Effect Considering Firing Rate of Neuron
野嶋 和久*, 片山 喜規**, 伊良皆 啓治
Kazuhisa Nojima, Yoshinori Katayama, Keiji Iramina
*九州大学大学院システム生命科学府
**九州大学大学院システム情報科学研究院
2.パーセレーションマップと MR-DTI を用いたアルツハイマー病患者の白質病変の解析と評価
An MR-DTI Study on the Disruption of White Matter Integrity in Alzheimer’s Disease
using Parcellation Map
久田
祥史*, 小林 哲生*, 山崎
貴史**, 長田
乾**
Akifumi Hisada, Tetsuo Kobayashi, Takashi Yamazaki, Ken Nagata
*京都大学大学院工学研究科、** 秋田県立脳血管研究センター
3.ニューロフィードバックにおける NIRS 信号の特徴評価指標の提案
Proposal of feature evaluation method for NIRS signal in neurofeedback
栁澤
一機*、綱島
均*、酒谷
薫**
Kazuki Yanagisawa, Hitoshi Tsunashima, Sakatani Kaoru
*日本大学生産工学部
**日本大学工学部・医学部
4.呼名刺激時における脳波を用いた脳活動計測
Measurement of brain activity responded by subjects’ own name using EEG
田村
かおり、加留部
ちひろ、水場
太陽
伊良皆 啓治
Kaori Tamura, Chihiro Karube, Takaaki Mizuba, Keiji Iramina
九州大学システム生命科学府
一般講演 1
座長:
13:35~14:05
中川 雅文(国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科)
5.喉頭全摘出患者の代用音声獲得経過、および電気式人工喉頭オーラル機能についての検討
難波文恵 、川崎聡大
1)
、古西隆之 、藤田隼平 、鵜木あゆみ
2, 3)
1)
1)
1)
千田益生 、小野田友男 、木股敬裕
1)
岡山大学病院
4)
5)
総合リハビリテーション部
1)
岡山大学大学院医歯薬総合研究科
脳神経外科
2)
富山大学人間発達科学部発達教育学科
3)
発達福祉コース
岡山大学病院頭頸部がんセンター耳鼻咽喉科・頭頸部外科
4)
岡山大学病院頭頸部がんセンター形成再建外科
5)
6.全市一斉全児童への直接検査による学習不振児および学習障害傾向を持つ児童の出現率
-地域リソースに制限のある過疎地域での特別支援教育・児童発達支援の在り方‐
川﨑聡大
、奥村智人 、中西
1), 2)
3)
誠 、多田智絵 、若宮英司
3)
1)
、竹田契一
3, 4)
3)
富山大学 人間発達科学部
1)
岡山大学医学部
2)
脳神経外科
大阪医科大学 LD センター
3)
藍野大学
4)
7.聴覚と発声の連携ループを使った脳活性化に関する研究
Studies about the Activation of The Audio Vocal Loop
今井宏美
Hiromi Imai
特定非営利活動法人 IMAI 研究所
NPO Institute for Integrated Methods of Audio-verbal Intercommunications
Coffee Break
教育講演 1
座長:
松村
14:05~14:15
14:15~14:45
美由起 (東京女子医科大学附属成人医学センター)
小児における発達性読み書き障害(発達性 dyslexia)と後天性失読失書
Japanese Speaking Children with Developmental Dyslexia and Acquired Alexia with
Agraphia
宇野 彰
Akira Uno
筑波大学人間系
Department of Human Science, University of Tsukuba
教育講演2
座長:
松浦
14:45~15:15
雅人 (東京医科歯科大学生命機能情報解析学)
食品の効果の脳機能画像による評価
古賀 良彦
Yoshihiko Koga
杏林大学医学部神経内科精神科
招待講演
座長
竹井
15:15~16:00
太 (うむやすみゃあす・ん診療所)
Neuroscience on human spatial navigation
Ming-Chyi Pai
Department of Neurology, National Cheng Kung University Hospital, Tainan, Taiwan
Coffee Break
特別講演 1
座長:
佐藤
16:00~16:10
16:10~17:00
共催:バイエル薬品
雄一 (秋田県立脳血管研究センター神経内科)
心房細動患者における NOAC による脳卒中予防:リバーロキサバンの有効性と安全性
Stroke Prevention by NOAC in Patients with Atrial Fibrillation:
Efficacy and Safety of Rivaroxaban
内山 真一郎
Shinichiro Uchiyama
東京女子医科大学医学部神経内科学講座主任教授
Professor and Chair, Department of Neurology, Tokyo Women’s Medical University
懇親会 18:00~20:00
コンベンションホール
11 月 23 日(土曜日)
一般講演 3
座長:
吉田
08:30~09:00
一人(旭川赤十字病院神経内科)
8.Sagamihara Keio Apathy Scale (SKAS)
-パーキンソン病患者におけるアパシーの客観的評価尺度-
-The objective apathy scale to assess apathy in PD公文 彩
Aya Kumon
独立行政法人国立病院機構 相模原病院神経内科
9.パーキンソン病患者に対する従来のリハビリテーション介入前後での歩行特性の検討
Comparison of the walk characteristic on usual rehabilitation in Patients with Parkinson’s
diseases
田名網 恵 、堀川 拓海 、小林 友美 、木脇 悟 、
1)
1)
1)
1)
丸谷 龍思 、中村 聖悟 、長谷川 一子
1)
2)
2)
Megumi Tanaami, Takumi Horikawa, Tomomi Kobayashi, Satoru Kinowaki,
Ryuushi Marutani, Seigo Nakamura, Kazuko Hasegawa
独立行政法人国立病院機構相模原病院リハビリテーション科
1)
独立行政法人国立病院機構相模原病院神経内科
2)
10.血管性認知障害における MMSE および HDS-R 下位項目の検討
Analysis of the Mini-Mental State Examination and the Hasegawa Dementia
Scale-Revised Subscales in Patients with Vascular Cognitive Impairment
村岡玲奈、齊藤真由美、篠田智美、佐藤雄一
前田哲也、山﨑貴史、高野大樹、長田乾
Rena Muraoka, Mayumi Saito, Tomomi Shinoda, Yuichi Sato
Tetsuya Maeda, Takashi Yamazaki, Daiki Takano, Ken Nagata
秋田県立脳血管研究センター
神経内科
一般講演 4
座長:
諏訪園
09:00~09:40
秀吾(国立病院機構沖縄病院神経内科)
11.統合失調症における陽性症状と弓状束との関連について
Relationship with positive symptoms in schizophrenia and white matter integrity of
the arcuate fasciculus
佐々木
仁
Hitoshi Sasaki
京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座(精神医学)
12.ICF に基づいた覚醒下言語野マッピングにおける術中課題の構成と周術期神経心理学的評価
のあり方 -当院での実践事例を基に-
古西 隆之 、川崎 聡大
1)
、 市川 智継 、藤田 隼平 、難波 文恵 、
2, 3)
2)
1)
1)
鵜木 あゆみ 、千田 益生 、黒住 和彦 、伊達 勲
1)
岡山大学病院
1)
1)
2)
2)
総合リハビリテーション部
岡山大学大学院医歯薬総合研究科
脳神経外科
2)
富山大学人間発達科学部発達教育学科
3)
発達福祉コース
13. アルツハイマー病患者における神経心理学的評価と局所脳血流の相関:
脳血流 SPECT 画像の三次元統計解析による検討
Correlation between neuropsychological performance and cerebral blood flow in patients
with Alzheimer’s disease: 3D statistical analysis of Brain SPECT images
高野 大樹、村岡 玲奈、山﨑 貴史、前田 哲也、佐藤 雄一
藤巻 由実、篠田 智美、齊藤 真由美、長田 乾
Daiki Takano, Reina Muraoka, Takashi Yamazaki, Tetsuya Maeda, Yuichi Satoh
Yumi Fujimaki, Tomomi Shinoda, Mayumi Saitoh, Ken Nagata
秋田県立脳血管研究センター
神経内科
14. 老健に潜む遅発性の聴覚の廃用症候群のリスク
High Nursing care level Seniors will facing the risk for the Late Onset Auditory Deprivation
中川
雅文
Masafumi Nakagawa
国際医療福祉大学病院
教育講演 3
座長:
伊良皆
耳鼻咽喉科
09:40~10:10
啓治(九州大学大学院システム情報科学研究院情報学部門)
光学的磁気計測法:新たな MEG と MRI を目指して
Optical magnetometry toward novel MEG and MRI systems
小林 哲生
Tetsuo Kobayashi
京都大学大学院工学研究科
教育講演4
座長:
大友
10:10~10:40
智(みやぎ県南中核病院脳神経外科)
うつ病、双極性障害、認知症の鑑別画像診断のトピックス
(MRI の VSRAD と DTT の応用)
仁井田 りち
Richi Niida
南斗クリニック
Coffee Break
10:40~10:50
特別講演
座長:
山﨑
2
10:50~11:35 共催:エーザイ
貴史(秋田県立脳血管研究センター神経内科)
誤解される認知症
~ピック病は悪者か~
谷向
知
Satoshi Tanimukai
愛媛大学大学院医学系研究科
一般講演5
座長:
平山
精神神経科学
11:35~12:15
正昭(名古屋大学神経内科)
15.当科における事象関連電位の臨床応用の現状
諏訪園
秀吾
Shugo Suwazono
独立行政法人国立病院機構沖縄病院神経内科
16.筋ジストロフィー症の認知的特徴について
諏訪園
秀吾、上田 幸彦、前堂 志乃
Shugo Suwazono, Ueda Yukihiko, Maedou Shino
独立行政法人国立病院機構沖縄病院神経内科
沖縄国際大学
17.当院におけるイストラデフェリンの使用経験
吉田 一人、倉内 麗徳、河端 聡、黒島 研美、浦茂 久
旭川赤十字病院神経内科
18.STN-DBS 治療がパーキンソン病の音声と発話に及ぼす影響
Influence of STN-DBS on voice and speech in Parkinson's disease
渡辺 宏久、坪井 崇、田中 康博、伊藤 瑞規、千田 譲、原 一洋、
米山 典孝、熱田 直樹、中村 亮一、渡辺 はづき、
中村 友彦、平山 正昭、梶田 泰一、祖父江 元
Hirohisa Watanabe, Takashi Tsuboi, Yasuhiro Tanaka, Mizuki Ito, Joe Senda, Kazuhiro
Hara, Noritaka Yoneyama, Naoki Atsuta, Ryoichi Nakamura, Hazuki Watanabe,
Tomohiko Nakamura, Masaaki Hirayama, Yasukazu Kajita, Gen Sobue
名古屋大学神経内科
Coffee Break
12:15~12;25
ランチョンセミナー 12:25~13:10
座長:
前田
共催:日本ベーリンガー
哲也(秋田県立脳血管研究センター神経内科)
脳血管内科医にとっての心原性脳塞栓症
Caridioembolic stroke for Stroke Neurologists
古井
英介
Eisuke Furui
広南病院脳血管内科
閉会の挨拶
13:10~13:20
竹井太 (うむやすみゃあす・ん診療所)
招待講演
“Neuroscience on human spatial navigation”.
Ming-Chyi Pai
Department of Neurology, National Cheng Kung University Hospital, Tainan, Taiwan;
特別講演
1
心房細動患者における NOAC による脳卒中予防:リバーロキサバンの有効性と安全性
Stroke Prevention by NOAC in Patients with Atrial Fibrillation:
Efficacy and Safety of Rivaroxaban
内山 真一郎
Shinichiro Uchiyama
東京女子医科大学医学部神経内科学講座主任教授
Professor and Chair, Department of Neurology, Tokyo Women’s Medical University
非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳卒中予防には抗凝固療法が推奨されているが、ワルファリ
ンは血液凝固モニター、ビタミンK摂取制限、他剤との相互作用など多くの煩雑さ(unmet medical
needs)があるため本来適応がある患者の半数にしか使用されていない。これに対して新規経口抗
凝固薬(NOAC)は、これらの unmet medical needs を全て解消し、ワルファリンよりも頭蓋内
出血(ICH)のリスクが少ないことから、ワルファリンにとって代わる薬剤として使用頻度が増加
している。ワルファリンの場合には CHADS2 スコアが 0 または 1 だと、脳梗塞の減少が ICH の増
加により相殺されてしまうため、これら低リスクの NVAF 患者には積極的には推奨されてこなかっ
たが、NOAC の場合には ICH が少ないため CHADS2 スコア 0/1 の NVAF 患者にも NOAC が推
奨される。実際、J-ROCKET AF のサブ解析によれば、リバーロキサバンはワルファリンより net
clinical benefit が有意に優れていた。NVAF 患者において CHADS2 スコア 0/1の患者は半数を
占めており、脳塞栓症を発症してしまうと CHADS2 スコアにかかわらず重症の脳卒中になりやす
いことからも、これら低リスクの NVAF 患者にも NOAC 積極的な使用が推奨される。また、NOAC
はワルファリンと異なり、効果の発現が速いので脳塞栓症発症後に危険なヘパリンの橋渡しなしに
開始できることから在院日数短縮効果も期待できる。この他、NOAC は TTR(time in therapeutic
range)が低いワルファリン服用患者やワルファリン服用歴のない患者(warfarin naïve)にも推奨
される。
特別講演
2
誤解される認知症
~ピック病は悪者か~
谷向
知
Satoshi Tanimukai
愛媛大学大学院医学系研究科
精神神経科学
わが国は、4 人に 1 人が 65 歳の高齢者、そのうち 7 人に 1 人(15%)が認知症という時代を迎え
た。平成 24 年に発表された認知症推進 5 カ年計画(オレンジプラン)では、地域での生活を支え
る医療・介護サービスの構築のほか若年性認知症施策の強化が謳われている。ピック病は、アルツ
ハイマー型認知症や血管性認知症と比べると決して多い認知症とはいえない。しかし、常同行動、
我が道を行く行動、被影響性の亢進、脱抑制などといったがみられ、結果として道路交通法違反や
万引き、無銭飲食、不法侵入といった周囲に受け入れがたい反社会的な側面にのみ注目が集まり、
社会適応や介護面においても困難をきたす認知症としてマスコミなどで取り上げられることが少な
くない。認知症疾患治療ガイドライン 2010 において、認知症の治療は医学的アプローチ、ケアア
プローチ、リハビリテーションが挙げられてはいるものの、推奨レベル A を満たすものは、唯一ア
ルツハイマー型認知症に適用のある薬物による医学的アプローチしかない。しかし、ピック病にお
いては症候と病態を正しく理解し、その後の経過を視野に入れた対応(ルーチン化療法)やちょっ
とした発想の転換で対策を講じることで、社会的に容認され、地域の中で生活することができる可
能性を秘めた認知症であり、そのかかわり方を含めお話したい。
ランチョンセミナー
1
変貌する脳卒中:心原性脳塞栓症に対する新たな治療戦略
Recent changes in Stroke: New therapeutic strategy against cardiogenic embolism
長田
乾
Ken Nagata
秋田県立脳血管研究センター神経内科
Department of Neurology, Research Institute for Brain and Blood Vessels
かつては日本の死因の首位であった脳卒中は、癌、心臓病に抜かれて暫くの間は死因の第 3 位でし
たが、2011 年に統計では肺炎に抜かれて第 4 位になりました。これは、わが国の脳卒中急性期医
療が進歩して、急性期の死亡率が減少したことや、脳卒中全体が軽症化していることが主たる要因
と推測されています。一方、脳卒中病型では、脳出血が減少し、脳梗塞が増加する傾向が続いてい
ます。なかでも、人口の高齢化を反映して非弁膜症性心房細動を有する高齢者が増加し、その結果
として心原性脳塞栓が増加する傾向にあります。心原性脳塞栓は、ラクナ梗塞などと比較すると重
症で、死亡例や寝たきりに移行する割合が高く、予後不良の脳卒中と見做されています。心原性脳
塞栓の予防には、抗凝固療法が不可欠ですが、約 50 年前に登場したワルファリンが唯一の治療薬で
した。ワルファリン療法は有効な治療方法ですが、頭蓋内出血を含む出血性合併症の問題や、ビタ
ミン K を含む食品の摂取制限や頻回のモニタリングなどさまざまな問題点が指摘されております。
こうしたなかで、新規経口抗凝固薬(NOACs)として抗トロンビン薬と抗Ⅹa 薬が登場し、治療薬の
選択肢が広がり、抗凝固療法は大きく変貌しつつあります。新規経口抗凝固薬は、ワルファリンの
ような頻回のモニタリングが不要で、食事の影響を受けず、薬物の相互作用が少なく、ワルファリ
ンと比較して脳梗塞や全身塞栓症の予防効果は同等かそれ以上で、さらに頭蓋内出血は大幅に減少
するという特徴があり、海外のガイドラインでも新規経口抗凝固薬は、非弁膜症性心房細動に対す
る抗凝固療法の第一選択薬剤と指定されています。
ランチョンセミナー
2
脳血管内科医にとっての心原性脳塞栓症
Caridioembolic stroke for Stroke Neurologists
古井
英介
Eisuke Furui
広南病院脳血管内科
心原性脳塞栓症ほど一次予防が重要な疾患は多くない.心原性脳塞栓症では初回発作後に重い後遺
症が残存する場合が多く,入院中の死亡も決してまれではない.この点で,初発後に適切な抗血栓
療法および徹底したリスク管理を行えば,社会復帰も可能な場合が少なくないラクナ梗塞およびア
テローム血栓性脳梗塞とは,別の疾患ととらえた方がよいのかも知れない.
人口の高齢化およびリウマチ性心疾患の減少に伴い,塞栓源心疾患の大多数は非弁膜症性心房細動
(NVAF)が占めている.心原性脳塞栓症の予防とは,NVAF の管理であると言い換えることが出
来る.
NVAF からの脳梗塞予防に長らくワルファリンが使われてきた.ワルファリンは有効性が確認され
ているものの,種々の使用しにくい欠点もあり,十分には使用されない傾向にあった.ワルファリ
ン内服中に脳出血がひとたび起こると,心原性脳塞栓症以上に転帰不良となる場合もあり,ジレン
マがあった.新規経口抗凝固薬(NOAC)はワルファリンと同等以上の有効性と安全性が示され,
現在複数が使用可能となっている.特に NOAC ではワルファリンより明らかに頭蓋内出血が少ない
ことが明らかとなっている.心房細動からの脳梗塞を予防しつつ,脳出血も避けたい脳血管内科医
にとっては,真に待ちわびていた薬剤である.脳血管内科医としての心原性脳塞栓症への対応,特
に抗凝固療法を使う上で注意している点などにについて述べたい.
教育講演
1
小児における発達性読み書き障害(発達性 dyslexia)と後天性失読失書
Japanese Speaking Children with Developmental Dyslexia and
Acquired Alexia with Agraphia
宇野 彰
Akira Uno
筑波大学人間系
Department of Human Science, University of Tsukuba
発達性読み書き障害は、神経生物学的原因に起因する特異的学習障害である。全般的知能が正常で
あっても文字の習得が困難な障害であり、トムクルーズやスピルバーグがそうであることで有名で
ある。原因となる大脳機能の障害部位は、左側頭-頭頂領域や左側頭葉‐後頭葉領域とする報告が有
力だが、まだ見解は一致していない。日本語話者の発達性読み書き障害児・者を対象とした fMRI
を用いた研究に関して群研究では我々の研究報告のみであったが、NCNP グループが今年 BRAIN
誌に音韻処理障害のある発達性読み書き障害例の機能低下部位を報告したところである。しかし、
課題に依存しない VBM(Voxel Based Morphometry)を用いた大脳構造異常に関しての報告はま
だない。一方、先天性と考えられる発達性読み書き障害に対して、後天性大脳損傷後に失読失書を
示した小児例の報告はまれである。後天性小児失読失書例の限局病巣が、発達性読み書き障害例の
機能障害部位と共通であるのか異なっているのかを調べることは、どの段階で読み書きに関係する
大脳局在性が成立しているのか知ることができる。また認知神経心理学的特徴により脳の部位と認
知機能もしくは情報処理機能とを対応させることができる可能性がある。本講演では、日本語話者
の発達性読み書き障害例における大脳活動および構造について fMRI、SPECT(Single Photon
Emission Computed Tomography)、構造的 MRI、を用いて群研究にて検討した結果および小児
失読2例について報告する。
教育講演
2
食品の効果の脳機能画像による評価
古賀 良彦
Yoshihiko Koga
杏林大学医学部神経内科精神科
食品の脳機能改善効果が喧伝されるようになって久しいが、その評価の多くは官能評価をはじめと
する主観的方法によるものがほとんどであり、ヒトを対象とする客観的な方法による評価は殆んど
行われていない。
我々は以前より脳波解析や NIRS による食品の効果の評価を行ってきた。さらに食品の香りの効果
についても検討を進めてきた。これまでに得られた結果の中で、今回はとくに n-3 系および n-6 系
不飽和脂肪酸の効果を中心に紹介する。前者については DNA および EPA を含むオキアミオイルの
効果を ERP と NIRS の同時測定により検討した。その結果、オキアミオイルには前頭前野の機能を
賦活するとともに認知機能を高める効果があることが示された。また n-6 系については、ERP 測定
によってアラキドン酸が認知機能を高めるという結果を得た。香りに関しては、背景脳波活動の解
析によって、コーヒーの香りには豆の種類によってリラクセーション効果に差異のあることが分か
った。
食品の効果については、薬物のような厳密な評価法はまだ確立されていないが、これらのツールを
積極的に導入することにより、より客観的かつ詳細な評価が行えるものと期待される。
教育講演
3
光学的磁気計測法:新たな MEG と MRI を目指して
Optical magnetometry toward novel MEG and MRI systems
小林 哲生
Tetsuo Kobayashi
京都大学大学院工学研究科
ヒトの脳神経活動に伴って発生する極微弱な磁気信号を計測する脳磁図(MEG)と、脳内の血行動
態を反映する BOLD 信号を計測する機能的磁気共鳴画像(fMRI)は、ニューロイメージングの代
表的な手法である.MRI については、解剖画像に加え、水分子の拡散異方性の情報を捉える拡散テ
ンソル MRI に基づき神経線維のトラッキングを行うことなども可能であり、神経科学や臨床にとっ
て不可欠なシステムとなっている。MEG と MRI は、共に生体から発生される極微弱な磁気信号
(MRI の場合には核磁気共鳴信号)を計測するという共通点を有している。
これまで MEG システムには超伝導量子干渉素子(SQUID)が磁気センサとして用いられてきたが、
液体ヘリウムによって冷却する必要があるため、装置ならびにその維持費が高額になることが普及
を妨げる一つの要因となっている。一方、MRI では超伝導磁石で発生させる静磁場中にいる人体に
ラーモア周波数の回転磁場を与え、その後人体各組織から発生される核磁気共鳴信号を電磁誘導コ
イルにより計測する。しかし、ここ数年、液体ヘリウムの世界的な供給量不足に伴う価格の上昇が
MEG は勿論、MRI の運用にとっても大きな問題となりつつある。
このような問題を解消する有望な磁気センサとして,光ポンピング法により生成したアルカリ金属
原子のスピン偏極を用いて磁気信号を計測する超高感度な光ポンピング原子磁気センサに注目が集
まっている.本講演では、このセンサを用いた液体ヘリウムを必要としない光学的手法による磁気
計測法の基本的な原理と、それをコア技術とする新たな MEG と MRI システムの現状と展望を含め
て概説する.
教育講演
4
うつ病、双極性障害、認知症の鑑別画像診断のトピックス
(MRI の VSRAD と DTT の応用)
仁井田 りち
Richi Niida
南斗クリニック
脳の画像診断の進歩はめざましく、functional MRI、PET、SPECT の登場により、脳の活動を視
覚化できるようになった。今回 MRI の VBM(Voxel-Based-Morphometry)と DTT(diffusion
tensor tractography)の手法で、明日からでも臨床応用可能な画像診断の最新知見を紹介する。我々
は 12 年にわたる臨床症例と 2010 年からの VSRAD 実行例と DTT 実行例をもとにうつ病の脳局所
の萎縮の違い及び認知症の診断に有用と考えられる DTT 画像による前視床放線の描出能の違いに
ついて検討してきた。
「内因性うつ病」では MRI の VSRAD で膝下部帯状回(Brodmann 領野:BA
24、32、33 野)の萎縮が見られた。「血管性うつ病」では DTT 画像で前視床放線の描出不良があ
り、「血管性認知症」と同じ画像所見となり、その病態は同一である可能性が考えられた。「双極性
スペクトラムうつ病」では BA24 野と BA25 野が連続して萎縮していた。双極性障害の難治例では
BA25 野の萎縮がみられた。以上の結果から MRI の VSRAD による膝下部帯状回及び BA25 野の萎
縮の有無と DTT 画像による前視床放線の描出能を観察することでうつ病、双極性障害、認知症の診
断に有用な補助診断法となる可能性が示唆された。
参考文献
1. Niida R, Niida A, Motomura M, Uechi A. Diagnosis of depression by MRI scans with the use
of VSRAD - a promising auxiliary means of diagnosis: a report of 10 years research. Int J Gen
Med. 2011;4:377-387
2. Niida A, Niida R, Matsuda H, Identification of atrophy of the subgenual anterior cingulate
cortex, in particular the subcallosal area, as an effective auxiliary means of diagnosis for major
depressive disorder. Int J Gen Med. 2012;5:667-674.
3. Niida A, Niida R, Usefulness of visual evaluation of the anterior thalamic radiation by
diffusion tensor tractography for differentiating between Alzheimer's disease and elderly major
depressive disorder patients. Int J Gen Med. 2013;6:189-200.
一般演題
1
神経発火確率を考慮した rTMS の刺激効果予測
Predicting rTMS Effect Considering Firing Rate of Neuron
野嶋 和久*、片山 喜規**、伊良皆 啓治* **
,
Kazuhisa Nojima, Yoshinori Katayama, Keiji Iramina
*九州大学大学院システム生命科学府
**九州大学大学院システム情報科学研究院
頭皮上に設置したコイルに電流を流し,脳内に誘導した渦電流により,繰り返し神経を刺激する反
復経頭蓋磁気刺激(rTMS:repetitive transcranial magnetic stimulation)は,大脳皮質興奮特性
の変化を誘発することができる.この特性を利用して,rTMS は様々な疾患の治療に用いられてい
る.しかしながら,rTMS の臨床応用に関する報告では,治療における有効性は確認されているも
のの,客観的な刺激条件設定が行われていない.そこで,rTMS により誘導される大脳皮質興奮特
性の変化を予測するモデルを作成し,刺激条件設定に役立てることを試みた.
大脳皮質興奮特性の変化は,運動誘発電位(MEP:motor evoked potential)により評価できる.そ
こで,MEP が誘発されるまでをモデル化し,rTMS の刺激効果を組み込むことで刺激効果予測モデ
ルの作成を行った.モデルはニューロン発火確率分布が rTMS の刺激効果を受け変化すると仮定し,
作成した.rTMS の刺激効果は計測した MEP の振幅の変化から求めた.
rTMS の刺激前後における MEP の振幅変化の平均値の実測値と予測値の関係を調べた結果,予測誤
差が 0.65~10.96%であった.更に,各条件における実測値と予測値の MEP の分布の相関を解析し
た結果,全条件を平均して 0.52±0.05 (Mean±SE)の相関を示した. 今後,モデルの改良を行う必
要がある.
一般演題
2
パーセレーションマップと MR-DTI を用いたアルツハイマー病患者の
白質病変の解析と評価
An MR-DTI Study on the Disruption of White Matter Integrity in Alzheimer’s Disease using
Parcellation Map
久田 祥史*、小林 哲生*、山崎 貴史**、長田 乾**
Akifumi Hisada, Tetsuo Kobayashi, Takashi Yamazaki, Ken Nagata
*
京都大学大学院工学研究科
** 秋田県立脳血管研究センター
近年、認知症を始めとする神経疾患や精神疾患の脳画像解析・診断支援に対する関心が高まり、生
体医工学的研究が盛んになってきている。本研究では認知症の中でも最も患者数の多い、アルツハ
イマー病(Alzheimer's Disease: AD)について AD 患者 34 名(軽度 17 名・中等度 17 名)と年齢・
性別のマッチングがとれた健常者 17 名を対象とし、診断支援に繋がる定量的評価を目的とした解析
を行った。
最初に、各被験者の拡散テンソル画像を標準脳に合わせて変換(標準化)した。次に標準化された
各画像について、白質を「JHU_MNI_SS_WMPM_Type-II」と呼ばれるジョンズ・ホプキンス大学
提供のパーセレーションマップ(標準脳を各部位別に区画化した地図)を用いて 130 の部位に区分
けし、各部位での FA・MD 値の平均および標準偏差を算出した。その後、算出した4つの指標につ
いて各群(軽度 AD 群・中等度 AD 群・健常者群)を比較するために統計解析を行った。
結果として、健常者と軽度 AD 患者の間で 11 部位(海馬・帯状束・鈎状束など)について有意差
(p<0.05)が見られ、軽度 AD 患者と中等度 AD 患者間では 4 つの部位(海馬など)で、健常者と
中等度 AD 患者間では 13 部位(海馬・帯状束・鈎状束など)で有意差が見られた。さらに、本研究
では診断支援のため、有意差のみられた部位を標準脳 T1 強調画像に重畳し、可視化を可能とした。
以上の解析結果により、パーセレーション毎の FA・MD 値の解析が AD における白質病変の定量評
価に有用であることが示された。
一般演題
3
ニューロフィードバックにおける NIRS 信号の特徴評価指標の提案
Proposal of feature evaluation method for NIRS signal in neurofeedback.
栁澤
一機*、綱島
均*、酒谷
薫**
Kazuki Yanagisawa, Hitoshi Tsunashima, Sakatani Kaoru
*日本大学生産工学部
**日本大学工学部・医学部
【はじめに】近年,NIRS による脳活動計測は,BCI(Brain Computer Interface)や精神疾患
の診断補助など様々な分野で使用されているが,NIRS 信号はその原理上,相対変化の値であり,信
号の特徴を定量的に評価することが難しい.そこで,本研究では,oxy-Hb 信号とその微分値から
作成した特徴平面を用いて,NIRS 信号の特徴を評価する方法を提案する.前頭前野を対象にしたニ
ューロフィードバック訓練時の NIRS 信号を対象に,提案する評価方法の検討を行う.
【方法】本研究では,oxy-Hb 信号とその微分値に注目する.提案法では,oxy-Hb 信号とその微分
値から特徴平面を作成し,タスク時とレスト時の特徴平面上の軌跡の分布から,NIRS 信号の評価を
行った.
タスク時とレスト時の脳活動パターンが大きく異なる場合,特徴平面上ではタスクの軌跡とレス
トの軌跡が離れて表れる.反対にタスクとレストの脳活動がほとんど変わらないような場合,特徴
平面上ではタスクとレストの軌跡が混在する.そこで,タスクとレストそれぞれの軌跡の分散(特
徴平面上の軌跡の広がり)と軌跡同士の重心間距離(タスクとレストの軌跡同士の距離が離れてい
るか)の2つの値に注目し,これらの値の比から分離度という指標を定義した.
【まとめ】提案した指標を用いて,ニューロフィードバック訓練時の脳活動を対象に分離度による
評価を行った.その結果,訓練前と比較して,訓練後に前頭前野両外側部にて分離度が上昇してお
り,ニューロフィードバック訓練による脳活動の特徴の変化を定量的に評価できることを確認した.
一般演題
4
呼名刺激時における脳波を用いた脳活動計測
Measurement of brain activity responded by subjects’ own name using EEG
田村 かおり、加留部 ちひろ、水場 太陽、伊良皆 啓治
Kaori Tamura, Chihiro Karube, Takaaki Mizuba, Keiji Iramina
九州大学システム生命科学府
重度心身障害児とは、重度の肢体不自由および重度の知的障害が重複している子どもおよび成人
のことである。彼らの多くは幼少時に脳機能に障害を負っており、言語による意思疎通が困難なこ
とが多い。そのため、目に見えない知的機能や発達を評価することが極めて難しい現状がある。特
に、外界からの刺激をどれほど認知しているかということは、障害児らの家族や療育者がコミュニ
ケーションをはかろうとする上で重要な問題である。
本研究では、重度心身障害児の外界認知機能の評価を目標として、彼らの脳活動の計測および解
析を行っている。脳活動計測の手法は多岐にわたるが、なかでも簡便に行えるものとして、脳波を
用いた計測を用いている。
重度心身障害児らをとりまく外界刺激は様々なものがあるが、そのなかでも頻繁に使われる刺激と
して、「呼名」に着目した。介護現場において、重度心身障害児らに対して名前を呼びかけたとき、
発声・瞬目などの応答行動らしきものが観察されている。これらの報告は、重度心身障害児らが彼
ら自身の名前を認識している可能性を示唆しているものの、客観的にその事実を裏付けるものでは
ない。
我々は「名前」が重度心身障害児らにおいてどのような脳活動を誘発するか解明するため、呼名刺
激を含む聴覚刺激課題を用い実験を行った。本研究ではこれらの実験および解析から得られた結果
について発表する予定である。
一般演題
5
喉頭全摘出患者の代用音声獲得経過、および電気式人工喉頭オーラル機能についての検討
難波文恵 、川崎聡大
1)
、古西隆之 、藤田隼平 、鵜木あゆみ
1)
千田益生 、小野田友男 、木股敬裕
5)
2, 3)
1)
1)
1)
岡山大学病院
1)
4)
総合リハビリテーション部
岡山大学大学院医歯薬総合研究科
2)
富山大学人間発達科学部発達教育学科
3)
脳神経外科
発達福祉コース
岡山大学病院頭頸部がんセンター耳鼻咽喉科・頭頸部外科
4)
岡山大学病院頭頸部がんセンター形成再建外科
5)
【はじめに】喉頭全摘術後の代用音声獲得について、当院では言語聴覚士が術前から介入し、術後
は電気式人工喉頭の訓練を行っている。しかし術後早期は頸部の腫脹により、振動子を当てても十
分な声量・声質が得られず、音声コミュニケーションは困難な症例が多い。また放射線治療中も、
頸部皮膚状態が悪化し、振動子を当てるのを控えざるを得なくなる。上記問題に対して振動を頸部
から伝えるのではなく、直接口腔内に送り込む、オーラル機能の使用を試みた。今回、人工喉頭の
訓練を実施した喉頭全摘術後患者について、代用音声獲得までの経過を検討した。【対象と方法】
2012 年 3 月から 2013 年 6 月までに、下咽頭癌、頸部食道癌に対して喉頭全摘術・再建術を受け
た 11 例である。このうち 2 例には、人工喉頭のオーラル機能を試みた。術後、自由会話が可能に
なるまでの期間、また最終的な代用音声獲得状況について検討した。
【結果】7 例が人工喉頭で自由
会話が可能となった。2 例は会話困難な段階で訓練中断となった。これらは術後早期及び放射線治
療中に人工喉頭でのコミュニケーションが困難で、訓練意欲低下が生じていた。別の 2 例は現在オ
ーラル機能を用いて訓練継続中である。
【まとめ】人工喉頭オーラル機能を用いると、術後早期及び
放射線治療中にもコミュニケーションが可能となり、患者の訓練意欲を維持させ、代用音声獲得過
程において有用な方法であると思われた。
一般演題
6
全市一斉全児童への直接検査による学習不振児および学習障害傾向を持つ児童の出現率
-地域リソースに制限のある過疎地域での特別支援教育・児童発達支援の在り方‐
川﨑聡大
1), 2)
、奥村智人 、中西
3)
誠 、多田智絵 、若宮英司
3)
1)
1)
2)
、竹田契一
3, 4)
3)
富山大学 人間発達科学部
岡山大学医学部
3)
脳神経外科
大阪医科大学 LD センター
4)
藍野大学
平成 14 年、平成 24 年度文部科学省調査により「通常小学校に 6.5%の発達障害の疑いを持つ児童
の存在」が示され理解浸透が図られた。また「学習状況調査」必須化に伴い特に発達障害の中でも
頻度の高い学習障害や背景に様々な問題をもつ「学習不振児」は緊急性の高い具体的対処の検討が
必要な教育行政上の大きな課題である。しかしながら発達障害に関する文科省調査は教師を対象と
したあくまで「教員による検出率」に過ぎず発達障害の出現率を捉えたものではない。学習状況調
査の結果についても学習到達度に影響を及ぼす因子の分析が不十分であり、教育行政や療育の在り
方の根幹となる根拠となる「数字」が存在しない状況と言える。今回、人口 5 万人~10 万人規模の
一地方都市(A 市)において行政主導の基、児童発達支援に関する専門委員会を設置し本邦初の全
学年全児童を対象とした学習状況調査、学習不振ならびに学習障害の背景となる基礎的学習スキル
に関する直接検査を実施した。調査は A 市倫理委員会の承認をもって実施され同意率 99%であり今
回の報告では 2490 名が解析対象となった。
本調査結果に基づき①学習不振児童出現率②学習障害ハイリスク児の出現率③発達障害傾向(スペ
クトラム)が基礎的学習スキルや学習到達度に及ぼす影響について言及する。大阪や静岡といった
大都市圏での競争原理に依存した「砂鉄型」の教育行政とは対極となる地方の取るべき教育行政へ
の提言を行う。
一般演題
7
聴覚と発声の連携ループを使った脳活性化に関する研究
Studies about the Activation of The Audio Vocal Loop
今井宏美
Hiromi Imai
特定非営利活動法人 IMAI 研究所
NPO Institute for Integrated Methods of Audio-verbal Intercommunications
トマティスメソッドを使用し、聴覚と発声の連携ループを活性化することで、 神経システムの順応
性と柔軟性を引き出し、いかに生活に役立てる事が出来るか、2分野においての研究発表
①
第二外国語としての英語コミュニケーション力の改善に関する研究
英語の聴覚、発声連携ループを作る事により、情報受信の為の英語リスニング力と、情報発信の為
の英語発音、発話力がどのように改善されるか、
実例をもとに解説
②
老齢化に伴う認識力、注意力低下の改善に関する研究
聴覚、発声連携ループを作る事により、情報受信の為の聴く力と、情報発信の為の日本語発音、発
話力がどのように改善されるか、
実例をもとに解説
【概要】
1. トマティスメソッドとは (3min.)
ゲーティング・アクションを整える為のリスニングメソッドを解説
2. 聴覚、発声のループとは (2min.)
また、聴覚と発声の連携ループを活性化することで、 いかに神経システムの
順応性と柔軟性を引き出すのかを解説
一般演題
8
Sagamihara Keio Apathy Scale (SKAS)
-パーキンソン病患者におけるアパシーの客観的評価尺度-
-The objective apathy scale to assess apathy in PD公文
彩
Aya Kumon
独立行政法人国立病院機構
相模原病院神経内科
【はじめに】パーキンソン病(PD)においてアパシーは発症頻度の高い精神症状の一つである。ア
パシーの主観的な評価尺度としては『やる気スコア』が広く知られているが、多様な側面を持つア
パシーの評価には客観的な視点も有用と考えられる。そこで我々は PD におけるアパシーの客観的
評価尺度『Sagamihara Keio Apathy Scale (SKAS) 』 を策定、PD におけるアパシーについて、
やる気スコアと SKAS 両評価尺度を用いて調査を行った。
【目的】主観的アパシーと客観的アパシーについて、認知機能、抑うつ、QOL との関連を明らかに
する。
【方法】外来 PD 患者 70 名(男性 37 名,女性 33 名 年齢 39 歳から 89 歳
MMSE24 点以上 FAB8
点以上)を対象とし、やる気スコア・SKAS を実施、抑うつについて SDS、QOL について PDQ39、
ADL・運動機能について UPDRS partⅡ・Ⅲを用いて評価し、各検査の関連を分析した。
【結果】やる気スコアにおけるアパシー+群と-群の比較では SDS 得点に差が認められ、+群が有
意に高かった(p=.001)。SKAS における比較では SDS 得点に有意差はなく、アパシー+群は-群
に比べて MMSE 得点(p=.016)FAB 得点(p=.002)が有意に低く、PDQ39 下位項目「スティグ
マ」「認知障害」以外の全項目と UPDRS partⅡ・Ⅲで有意に得点が高かった(p=.000~.039)。
【結論】SKAS に反映されたアパシーの客観的側面は前頭葉機能、全般的な認知機能、ADL・運動
機能、QOL 全般と関連しており、これまでに言われている PD におけるアパシーの特徴と一致して
いた。SKAS は PD のアパシー評価に有用であると考えられる。
一般演題
9
パーキンソン病患者に対する従来のリハビリテーション介入前後での歩行特性の検討 Comparison
of the walk characteristic on usual rehabilitation in Patients with Parkinson’s diseases
田名 網恵 、堀川 拓海 、小林 友美 、木脇 悟
1)
丸谷 龍思 、中村 聖悟 、長谷川 一子
2)
1)
1)
1)
1)
2)
Megumi Tanaami, Takumi Horikawa, Tomomi Kobayashi, Satoru Kinowaki,
Ryuushi Marutani, Seigo Nakamura, Kazuko Hasegawa
独立行政法人国立病院機構相模原病院リハビリテーション科
1)
独立行政法人国立病院機構相模原病院神経内科
2)
【目的】小型 3 軸加速度計を用いてパーキンソン病(PD)患者のリハビリテーション(リハ)介入前後
での歩行特性の変化を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は PD 患者男性 2 名,女性 1 名で,平均年齢は 74.6±2.7 歳,Hoehn-Yahr 重症度分
類は 3 名ともⅢであった.平均リハ介入期間は 20.7±3.1 日であり,実施したリハプログラムは従
来行われている関節可動域訓練,筋力増強訓練,バランス訓練,歩行訓練であった.リハビリ実施
期間中は投薬内容の変更は無かった.評価項目はバランス機能の指標として Functional Balance
Scale(FBS)を,歩行の指標として小型 3 軸加速度計 (三菱化学メディエンス社製歩行分析計
MG-M1110)を用い 10m 歩行時間,歩行率,合成加速度,重複歩距離を算出した.
【結果】リハ介入前後で FBS は 33.0±21.1 点→48.3±5.0 点に増加した.10m 歩行時間は 16.0±1.8
秒→11.2±1.8 秒,歩行率は 111.2±12.5 歩/分→91.5±18.0 歩/分と減少した.合成加速度は 0.18±
0.03→0.23±0.09,重複歩距離は 0.62±0.1m→0.86±0.2m へ増加した.
【考察】対象はリハ介入前には高齢者の重複歩距離の平均値 1.16m と比べて,重複歩距離の減少が
みられた.石井は,PD 患者は歩幅を自動的に調節することが困難なため,歩幅の低下を歩行率の増
加で代償している,と報告しており,リハ介入後では歩幅が増加し,歩行率は減少し,歩幅の代償
が減少したと考えられる.しかし合成加速度,歩行時間は改善したものの変化量は少なかったこと
から,従来のリハプログラムの再考が必要であると考えられた.
一般演題
10
血管性認知障害における MMSE および HDS-R 下位項目の検討
Analysis of the Mini-Mental State Examination and the Hasegawa Dementia Scale-Revised
Subscales in Patients with Vascular Cognitive Impairment
村岡玲奈、齊藤真由美、篠田智美、佐藤雄一
前田哲也、山﨑貴史、高野大樹、長田乾
Rena Muraoka, Mayumi Saito, Tomomi Shinoda, Yuichi Sato
Tetsuya Maeda, Takashi Yamazaki, Daiki Takano, Ken Nagata
秋田県立脳血管研究センター
神経内科
【目的】血管性認知症(以下、VaD)および血管性軽度認知障害(以下、VaMCI)において、MMSE
および HDS-R の下位項目をアルツハイマー病(以下、AD)、軽度認知障害(以下、MCI)、健常高齢
者(以下、NC)と比較検討することを目的とする。
【方法】対象は、2009 年 1 月~2013 年 8 月まで
に当施設を受診した 65 歳以上の 78 名(平均年齢 76.3±6.49 歳)で、初診時の診断名ごとに AD 群
16 名、MCI 群 18 名、VaD 群 16 名、VaMCI 群 13 名、NC 群 15 名の 5 群に分類し、全ての対象
者に MMSE と HDS-R を実施した。
【結果】5 群間の MMSE 下位項目の比較では、
「見当識」で NC
群・MCI 群・VaMCI 群よりも AD 群・VaD 群が、「計算」と「遅延再生」では NC 群よりも他群
が、
「文章作成」では NC 群・MCI 群・VaMCI 群よりも VaD 群が、
「図形模写」では NC 群・MCI
群よりも VaD 群が有意に低下した。また、HDS-R 下位項目の比較では、「語想起」で NC 群より
VaMCI 群・AD 群・VaD 群が、MCI 群より VaMCI 群・VaD 群が有意に低下し、
「物品記銘」では
NC 群より VaMCI 群、AD 群、VaD 群が、MCI 群より AD 群・VaD 群が有意に低下した。
【考察】
AD と VaD では MMSE および HDS-R 下位項目の得点に有意な差が認められなかったが、VaMCI
は MCI よりも語流暢性が低下したことから、前頭葉機能がより顕著に低下することが示唆された。
一般演題
11
統合失調症における陽性症状と弓状束との関連について
Relationship with positive symptoms in schizophrenia and white matter integrity of the
arcuate fasciculus
佐々木 仁
Hitoshi Sasaki
京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座(精神医学)
MRI の登場と画像解析技術の飛躍的な発展によって近年、統合失調症の脳形態の研究が盛んに行わ
れている。従来は灰白質が研究の中心であったが、最近ではネットワークの障害という観点から白
質の病理に注目し、疾患の生物学的基盤を探索しようとする試みがなされている。白質の形態学的
評価については、拡散テンソル diffusion tensor image(DTI)データにおける拡散指標を用いる
ことで白質線維統合性の評価が可能になった。また、構造と疾患特有の症状や認知機能との関連の
解明も臨床的な観点から重要であるが、統合失調症に特異的な幻聴や妄想に関しても未だ不明な点
が多い。そこで今回、筆者らは幻聴や妄想が単一因子ではなく多因子からなることや病状に応じて
変動することに着目した。検査時の症状全般に関しては positive and negative syndrome scale
(PANSS)で評価し、幻聴に関しては多因子評価法である psychotic symptom rating scale
(PSYRATS)を用いて検査時に加え最重症時のスコアをとった。また、DTI データと fMRI of the
brain software library(FSL)を用いた probabilistic tractography を利用し白質統合性の指標と
なる異方性比率 fractional anisotropy(FA)を左側弓状束において算出し群間差を調べたところ、
統合失調症群と健常対照群において有意な差は認められなかったものの、FA は検査時と最重症時の
PSYRATS のスコアといくつかの逆相関を示した。しかし、データは予備的な段階であるため今後さ
らにサンプル数を増やして統合失調症における構造と臨床症状との関連を調べていきたい。
一般演題
12
ICF に基づいた覚醒下言語野マッピングにおける術中課題の構成と周術期神経心理学的評価のあり
方
-当院での実践事例を基に-
古西 隆之 、川崎 聡大
、 市川 智継 、藤田 隼平 、難波 文恵
1)
鵜木 あゆみ 、千田 益生 、黒住 和彦 、伊達 勲
2)
1)
2, 3)
2)
1)
岡山大学病院
1)
1)
1)
2)
総合リハビリテーション部
岡山大学大学院医歯薬総合研究科
2)
富山大学人間発達科学部発達教育学科
3)
脳神経外科
発達福祉コース
【はじめに】近年、言語野近傍脳腫瘍に対して機能温存を目的として術中覚醒下言語野マッピング
が行われている。課題の画一化簡素化を図るガイドライン策定の動きがある一方で、本院をはじめ
術後 QOL を従属変数と考える病院では ICF の概念に基づき、患者の希望する術後 QOL からトッ
プダウン的思考で術中課題や周術期評価を検討している。今回、術後 QOL の希望が異なる二症例
をもとに報告する。
【症例1】58 歳右利き男性。左側頭葉内側 glioblastoma。術前評価では明らか
な失語症状は認めず。視覚性・聴覚言語記憶課題で得点低下を認め、前者は術後顕著に改善を示し
た。術中タスクでは腫瘍首座近辺の白質領域についてはマッピング課題を限定して実施した。術後、
流暢性失語を呈したが、10 日で消失。
【症例2】18 歳右利き女性。左上側頭回後部 ganglioglioma。
術前評価では全て標準誤差範囲であるが軽い喚語困難、書称困難を認めた。術後 QOL を考慮し軽
微な言語所見も重要と判断し高次脳機能精査を行った。術中、皮質下では高感度で評価し一過性機
能低下についても綿密に聴取した。術後、新規脱落症状は認めず全ての評価スコアに改善を示した。
発症前の遂行を視野に認知リハビリテーションを実施し一定の効果を認めている。
【結語】術中課題
の構成や方針の決定では、術後 QOL に応じて画一的ではなく可変的に対応することが重要である
と考える。
一般演題
13
アルツハイマー病患者における神経心理学的評価と局所脳血流の相関:
脳血流 SPECT 画像の三次元統計解析による検討
Correlation between neuropsychological performance and regional cerebral blood flow in
patients with Alzheimer’s disease: 3D statistical analysis of Brain SPECT images
高野 大樹、村岡 玲奈、山﨑 貴史、前田 哲也、佐藤 雄一
藤巻 由実、篠田 智美、齊藤 真由美、長田 乾
Daiki Takano, Reina Muraoka, Takashi Yamazaki, Tetsuya Maeda, Yuichi Satoh,
Yumi Fujimaki, Tomomi Shinoda, Mayumi Saitoh, Ken Nagata
秋田県立脳血管研究センター
神経内科
アルツハイマー病(AD)において、Mini Mental State Examination (MMSE)やベントン視覚記
銘検査(Benton Visual Retention Test: BVRT)は言語および視覚記憶を評価するために幅広く用
いられているが、これらの神経心理評価と脳機能局在の関連性については十分な検討がなされてい
ない。そこでわれわれは、神経心理学的評価と脳血流 SPECT で観察される低灌流病変との関連性を
明らかにする目的で、任意の連続変数と局所脳血流(regional cerebral blood flow: rCBF)との相
関係数を標準脳上にプロットする三次元統計学的画像解析ソフトウエア(Correlation Imaging
Plots: CIPs)を新たに開発し、AD 患者における rCBF と MMSE および BVRT のスコアとの関係に
ついて調べた。対象は、
右利きの AD 患者 100 例で、全例に MMSE および BVRT を施行し、 Tc-ECD
99m
による脳血流 SPECT を撮像した。神経心理学的データと正規化した脳血流 SPECT データを CIPS
を用いて解析し、ピアソン相関係数を標準脳画像上にプロットした。ピアソン相関係数の解析では、
被験者の MMSE 総点と BVRT の誤謬数に有意な負の相関が見られた。さらに、CIPS の解析では
MMSE の総点数は両側側頭・頭頂葉および楔前部の rCBF と正の相関が認められた。MMSE 下位
項目についてでは、場所の見当識と模写課題のみが右半球優位の相関が得られたが、即時想起、と
物品呼称課題では左半球で強い正の相関が認められた。BVRT の正確数と誤謬数は右側頭・頭頂葉
とで有意の制の相関が見られ、下位項目でも省略のスコアは右側頭・頭頂葉で密な相関関係られた。
一方、歪みのスコアは両側頭頂葉とので相関が見られ、置き違いのスコアは両側眼窩前頭皮質との
で相関が見られた。以上の結果から AD 患者において、MMSE の成績は言語性記憶を含む両側側頭・
頭頂葉の機能に関連する言語性記憶を中心とした全般的認知機能を反映する一方で、BVRT は右側
側頭・頭頂葉に関連するを中心とする非言語性の視覚性記憶を反映することが伺われたことが示さ
れた。
一般演題
14
老健に潜む遅発性の聴覚の廃用症候群のリスク
High Nursing care level Seniors will facing the risk for the Late Onset Auditory Deprivation
中川 雅文
Masafumi Nakagawa
国際医療福祉大学病院
耳鼻咽喉科
【目的】介護福祉施設入所者 174 名に対して、親密度の高い単語に対する復唱と想起に関する能力
の変化を前向き調査として 3 ヶ月後、6 ヶ月後の 2 回追跡した。経時的な追跡によって、要介護度
のレベルの違いによって、単語復唱や単語想起などの聴覚の高次脳機能がどのような変化を示すか
を調査した。
【対象】対象は、近接する介護老人保健施設の入所者 174 名(女性 131 名、男性 43 名)とした。
【方法】聴覚チェッカー(JB-01、JB エレクトロニクス社製)を用い、1000Hz 純音での聴力検査
(簡易)および 70dB の検査音を用いて単語復唱および想起試験を行った。
【結果】1)1000Hz 純
音検査では、35dB 未満
27%、45dB 未満
32%、45dB 以上
41%であった。2)6 ヶ月後の
1000Hz 純音検査において要介護度3以下ではスコアの改善あるいは悪化を示す例がそれぞれ 15~
25%認めた。3)要介護度別に行った単語復唱および単語想起では要介護度3以上において、6 ヶ
月後の検査結果において有意差(p>0.05)のあるスコアの悪化を認めた。
【考察】1984 年 Silman
は、両側難聴の高齢者が補聴器を片耳のみに装用している場合、非装用側で語音了解度が低下する
ことを報告し、これを遅発性の聴覚の廃用と結論つけ、補聴器の両耳装用の重要性を説いた。また、
西脇らは地域介入研究によって高齢者が補聴器をつけないで生活を継続すると認知症のリスクが 5
年で約8%高まることを報告している(2009 年)。これらから、語音復唱や語音想起の能力は、音
への十分な曝露、おしして脳内処理資源としての語彙の有効活用(豊かな会話環境)が必要と考え
られている。今回の検討では、 調査期間中に脳血管障害の新規発症あるいは再発を認めた例は含ま
れて折らず、また高血圧や糖尿病の増悪化した例はなかった。 車いすあるいは寝たきりとなる要介
護度 3 以下の例において 1000Hz 純音検査の改善あるいは悪化を認めているが、6 ヶ月の短期間に
老人性難聴で 10dB 以上の悪化あるいは改善を示すことは考えがたく、介護の成否によって生まれ
た患者のやる気の変化が検査結果に愛嬌したものと考える。また要介護度 3 以上の例において 6 ヶ
月後の語音復唱および語音想起のスコアの有意な低下を認めた。要介護度が高いケースは、その行
動制限から音への積極的かつ能動的な接触が欠如するが、そうした日常的な音への曝露の不足が、
聴覚情報処理の機能的な低下を引きおこしたものと考えた。
【まとめ】中等度難聴以上の高齢者にお
いては、行動制限(要介護度)が高いほどにきこえに対する配慮が重要であると考えられる。介護
現場でのリーズナブルな補聴支援手段を取り入れることが重要と思われる。
一般演題
15
当科における事象関連電位の臨床応用の現状
諏訪園
秀吾
Shugo Suwazono
独立行政法人国立病院機構沖縄病院神経内科
【目的】当科における事象関連電位の臨床応用の現状を、症例を中心に提示し検討する
【方法】1)健忘を主症状とした原因不明の脳症を呈した 16 歳男性の回復過程を事象関連電位で検
討した。2)病的笑いのある 32 歳女性例における前頭葉機能と事象関連電位の関係を検討した。
【結果】16 歳症例では健忘が臨床的に認め難くなった後にも神経心理学的検査と事象関連電位の異
常が軽度残存し改善していく傾向を示した。32 歳女性例では前頭部からの事象関連電位の導出が不
良であった。
【考察】課題を症例にあったものに工夫することで事象関連電位は臨床応用が可能であり、fMRI
や賦活 PET などと同様に、単純な頭部画像では検討しにくい機能評価を行うことができる。当日は
施行する上での問題点についても考察していきたい。
一般演題
16
筋ジストロフィー症の認知的特徴について
諏訪園
秀吾、上田 幸彦、前堂 志乃
Shugo Suwazono, Ueda Yukihiko, Maedou Shino
独立行政法人国立病院機構沖縄病院神経内科
沖縄国際大学
【緒言】ジストロフィン異常症(以下 D 症)において高次脳機能障害が存在することが以前から指摘
されてきたが、集学的治療により生命予後が改善し今後機能予後を考える上で大きな問題となりつ
つある
【目的】筋ジストロフィー症における認知的特徴がどのようなものであるか検討する
【方法】1)顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー症(以下 FSH)の1例における高次脳機能検査を行っ
た結果を検討する
2)D 症 21 例における広範な高次脳機能検査を検討する
3)D 症 5 例におけるワーキングメモリー課題による実験心理学的検討を行う
【結 果】FSH1 例では前頭側頭型認知症としても矛盾のない結果が得られた。D 症 21 例における
検討では I)算数, II)絵画完成, III)記号探しなどが標準母集団平均の 1SD 以下であった。D 症 5 例
における検討では記銘語数が増えることにより反応時間がコントロール群より延長して いた。
【考 察】少なくとも筋ジストロフィー症の一部では前頭葉機能やワーキングメモリーの低下が起こ
る可能性があることが確認された。患者に関わる人々がこのことを 認識して対応することにより、
患者本人のみならず、意思疎通が思うようにいかないために周囲が困る事態も避けられる。
一般演題
17
当院におけるイストラデフェリンの使用経験
吉田 一人、倉内 麗徳、河端 聡、黒島 研美、浦茂 久
旭川赤十字病院神経内科
ウェアリングオフ現象を有するパーキンソン病患者に対し、アデノシン A2A 受容体拮抗薬であるイ
ストラデフェリンを使用し、良好な改善を認めたので報告する。対象:進行期パーキンソン病患者
10 名(男性 2 名、女性 8 名)年齢 73.6±10.2 歳、発症年齢 63.9±12.1 歳、罹病期間 9.8±4.3 年 使
用抗パーキンソン病薬剤数
3.3±0.8 剤、L-dopa 使用量 390±119mg である。方法:イストラデ
フェリン 20mg を 1 日 1 回投与し、症状日誌及び外来診察時の聞き取り調査により評価した。結果:
著効1例、有効5例、無効又は効果判定困難4例であった。副作用は1例にジスキネジア増悪を認
め、他の抗パーキンソン病薬の減量が必要であった。考察:イストラデフェリンは、幻覚等の重篤
な副作用が少なく、高齢者や認知症を伴いウェアリングオフ現象を有するパーキンソン病に使用し
易いと考えられた。しかし、新規薬で、経験症例数が少なく今後の症例蓄積が必要である。
一般演題
18
STN-DBS 治療がパーキンソン病の音声と発話に及ぼす影響
Influence of STN-DBS on voice and speech in Parkinson's disease
渡辺 宏久、坪井 崇、田中 康博、伊藤 瑞規、千田 譲
原 一洋、米山 典孝、熱田 直樹、中村 亮一、渡辺 はづき
中村 友彦、平山 正昭、梶田 泰一、祖父江 元
Hirohisa Watanabe, Takashi Tsuboi, Yasuhiro Tanaka, Mizuki Ito, Joe Senda,
Kazuhiro Hara, Noritaka Yoneyama, Naoki Atsuta, Ryoichi Nakamura, Hazuki Watanabe
Tomohiko Nakamura, Masaaki Hirayama, Yasukazu Kajita, Gen Sobue
名古屋大学神経内科
両側視床下核脳深部刺激術(STN-DBS) を受けたパーキンソン病 72 例の音声と発話の特徴を検討
した。神経診察、高次脳機能評価に加え、音声と発話は、経験豊富な ST 3 名が独立して評価した。
さらに Multi dimensional voice program (MDVP) による客観的音声評価も実施した。刺激電極
の位置は CT と術前の MRI の fusion 画像を作成して評価した。同意の得られた例では、刺激中止
前と中止後 30 分の音声を評価した。音声では、様々な指標の悪化を女性優位で認め、特に音の途切
れ(DUV) の悪化が顕著であり、刺激をオフにすることにより著明に改善した。喉頭内視鏡によ
る観察では、DUV 悪化例では声帯持続閉鎖困難、声帯周囲〜喉頭筋群の過緊張と考えられる所見を
認めた。発話では、標準ディサースリア検査、嗄声(GRABAS)尺度、持続発声時間、吃音の尺度
を因子分析し、その特徴を 5 群に区別できた。刺激オンとオフ時の評価が可能であった 33 例では、
5 群全てにおいて刺激オフにより発話指標の有意な改善、もしくは改善傾向を認めたが、パーキン
ソニズム悪化による発話増悪例も認めた。STN-DBS は、発声では DUV の増悪、発話では錐体路刺
激による痙性構音障害、発話のリズム障害による吃などを引き起こしうる。運動と言語両面からの
治療が必要で、刺激の程度、薬剤、リハビリのバランスが大切である。
ご協賛・ご協力を賜った企業・団体の皆様に心より感謝申し上げます
第一三共株式会社
バイエル薬品
エーザイ株式会社
ベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社
ヤンセンファーマ株式会社
武田薬品工業株式会社
アサヒフードアンドヘルスケア
MSD
富士フイルム RI ファーマ株式会社
医師のとも(株)
ノバルティス ファーマ株式会社
小野薬品工業株式会社
持田製薬株式会社
田辺三菱製薬株式会社
興和株式会社
アストラゼネカ
アボット ジャパン株式会社
スターキージャパン株式会社
エフピー株式会社
グラクソ・スミスクライン株式会社
協和発酵キリン株式会社
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社
大日本住友製薬株式会社
株式会社ツムラ
株式会社 秋田情報プリント
秋田ファイバー 株式会社
株式会社 那波伊四郎商店
ジャスト
(順不同、敬称略)