調査報告書 - TRY 北海道から海外教育旅行

マレーシア海外教育旅行現地調査事業
報告書
札幌啓北商業高校
札幌藻岩高校
札幌大通高校
札幌清田高校
札幌新川高校
札幌開成中等教育学校
教諭 稲津 正巳氏
教諭 三関 直樹氏
教諭 大畑 真人氏
教諭 新ケ江 りえ氏
教諭 追久保 いつみ氏
教諭 飯野 修一氏
2016年9月
北海道海外旅行促進事業実行委員会
1.はじめに
北海道海外旅行促進事業実行委員会では、北海道民の海外旅行需要拡大を図ることを目
的に各種事業を実施しており、特に、海外教育旅行は、国際理解の促進、自国文化の再認識、
グローバル人材の育成といった教育的観点からも有意義であることから、海外教育旅行セ
ミナーの開催や教職員の現地派遣調査事業に重点的に取り組んできました。
一方、北海道における海外修学旅行実施校数はピーク時から減少したまま伸び悩んでい
ますが、希望者のみを対象とした語学研修など、修学旅行以外の海外教育旅行の実施校数は、
平成22年度の9校と比較し、平成25年度には30校と3倍以上となっており、今後さら
に増加の可能性が高く、将来的に海外修学旅行の実施にもつながればと考えております。
今年度、当実行委員会の構成員でもあり、海外教育旅行の促進に積極的に取り組んでいる
マレーシア政府観光局が主催する事業として、札幌市立高校の教職員を対象とした現地派
遣調査について、札幌市立高等学校・特別支援学校長会にご提案したところ、6名の教職員
の参加による事業の実施が実現いたしました。
今回の訪問国であるマレーシアは、海外教育旅行の目的地として、多民族国家ならでは
の多彩な文化から豊富な学習素材があり、教育現場から高い関心がもたれている国の一つ
です。昨年10月に、エアアジアXによる新千歳とクアラルンプールとの定期直行便が就航
したことで、より一層の相互の交流も期待されております。
さて、本報告書は、参加者より、海外教育旅行の一つの方面として、実施可能性や課題に
ついて、教職員の見地から考察していただき、まとめたものです。
マレーシアへの海外教育旅行の実施を検討する際にご活用いただけましたら幸甚です。
2. マレーシア海外教育旅行現地調査事業概要
マレーシアへの教育旅行の実施の可能性や課題等について、実際に現地を訪れ、教育
的観点からご考察いただく。
(1) 日
程:平成28年7月30日〜8月3日 (3泊5日) *行程別紙
(2) 参加者:札幌啓北商業高校
教諭 稲津 正巳氏
札幌藻岩高校
教諭 三関 直樹氏
札幌大通高校
教諭 大畑 真人氏
札幌清田高校
教諭 新ケ江 りえ氏
札幌新川高校
教諭 追久保 いつみ氏
札幌開成中等教育学校 教諭 飯野 修一氏
(計6名)
(3)企画・実施:マレーシア政府観光局
(4)協力:北海道海外旅行促進事業実行委員会
(5)旅行手配会社:㈱エイチ・アイ・エス
(6)引率者:マレーシア政府観光局 マーケティングマネージャー 徳永
誠氏
*マレーシア国内のみ対応し、新千歳空港から旅行手配会社の添乗員が同行。
㈱エイチ・アイ・エス 北海道法人・団体イベント営業所
所長 石川 広大、 坂梨
好(サブ添乗員)
1
3.行程表
日
月日
次
曜日
都市名
時間
新千歳空港 07:30
交通
行程
機関
エアアジア・チェックイン・カウンターに集合
09:20 D7551 空路、クアラルンプールへ
1
7/30
(土)
クアラルン 17:00 専用車 クアラルンプール国際空港到着後、市内ホテルへ
プール
19:00
食事
朝:各自
昼:○
夕:○
レストランで夕食
朝: ○
08:30 専用車 クアラルンプール市内視察(新王宮・国家記念碑・国立モスク・ 昼: ○
2
7/31
(日)
クアラルン 12:00
プール
午後
KLシティギャラリー・バティック店・チョコレート工場など) 夕: ○
ランチ
近郊の村落でホームステイ・プログラム体験
19:00
夕食
朝: ○
09:00 専用車 各自チェックアウト後、プトラジャヤ(新行政都市)視察
3
8/1
(月)
クアラルン 10:00
プール
マレーシア政府観光局(観光文化省)訪問
14:00
マラヤ大学訪問
17:00
英語学校協会(ENGLISH MALAYSIA)と懇談会
19:00
夕食
昼: ○
夕: ○
朝: ○
4
8/2
(火)
09:00 専用車 日本大使館訪問
昼: ○
10:30
夕: ○
クアラルン 12:30
プール
マレーシア日本国際工科院(MJIIT)訪問
ランチ
午後
各自、自由視察(フリー)
18:30
夕食
クアラルンプール国際航空到着、搭乗手続き
23:35 D7550 空路、帰国の途へ
5
8/3
(水)
新千歳空港 08:10
新千歳空港到着後、解散
【利用ホテル】
7/30~8/1
セリ パシフィック ホテル クアラルンプール
8/1~8/2
ルネッサンス クラルンプール
2
マレーシア教育研修旅行現地調査報告書
北海道札幌啓北商業高等学校
教諭
稲津
正巳
1.はじめに
本 校 は 昭 和 16 年 の 札 幌 市 立 商 業 学 校 に 始 ま り 、現 在 全 日 制 6 間 口 の 札 幌 市 立 商 業 高 校 で
す 。平 成 17 年 度 に 多 様 な 生 徒 や 社 会 の ニ ー ズ に 対 応 し て 商 業 科 か ら 未 来 商 学 科 に 学 科 転 換
し 、1 年 生 で 商 業 科 の 基 礎 科 目 を 学 習 し た 後 に 、2 年 生 で 興 味 関 心 と 適 性 に 応 じ て 3 コ ー ス
( 会 計・情 報・国 際 )か ら 選 択 し 、専 門 を 深 化 さ せ る 特 色 あ る 商 業 教 育 を 展 開 し て い ま す 。
卒業後の進路は、進学者と就職者(公務員を含む)の割合が2対1で推移しています。
本校は伝統ある商業高校として、広く産業界に有為な人材を輩出してきました。さらに
未来に向けた社会構造の変化に対応するため、次年度入学生より 2 年生の全コースで経済
科 目 を 必 修 と す る な ど の カ リ キ ュ ラ ム 整 備 を 行 っ た と こ ろ で す が 、さ ら に 平 成 29 年 度 文 部
科学省のSPH(スーパープロフェッショナルハイスクール)指定に向け課題の解決にも
取り組んでおり、この中で国際化の対応をより充実発展させるため、語学研修はもとより
海外職業高校との交流や姉妹校締結、海外教育研修旅行の導入等を検討しています。
今 回 、 平 成 28 年 7 月 30 日 か ら 8 月 3 日 ま で 現 地 調 査 の 機 会 を 得 ま し た の で 、 マ レ ー シ
ア教育研修旅行の有用性と実施可能な研修プログラムの内容について、以下に報告させて
いただきます。
2.調査内容
(1)留学
①マラヤ大学
1949 年 に マ レ ー シ ア 初 の 国 立 大 学 と し て 設 立 さ れ 、質 の 高 い 教 育 を 目 指
し 発 展 し て い ま す 。Q S 世 界 ラ ン キ ン グ で 146 位( 北 海 道 大 学 139 位
早 稲 田 大 学 212 位 )
にランクされるなど、マレーシア国内で一番優秀な大学です。英語、マレー語、中国語で
講 義 を 受 講 す る こ と が で き ま す 。 図 書 館 ( 職 員 150 名 ・ 蔵 書 数 100 万 冊 以 上 ) と 美 術 館 を
視察させていただきましたが、学生の学習環境は十分に整備されていました。
大学から概要説明
閲 覧 スペース
② マ レ ー シ ア 日 本 国 際 工 科 院 ( MJIIT)
ディジタル対 応
時価数億円の展示も
2011 年 9 月 、
国 際 工 科 大 学 の 設 置 提 案 か ら マ レ ー シ ア 工 科 大 学 ( UTM)
内に、資材調達は円借款による日本型の工学系教育を行う
大学として設立されました。
大学院に重点を置いた学術機関で、校舎の新設費用と本邦
派遣教員分の給与はマレーシア政府が負担しています。外務
省 を 事 務 局 と し て 日 本 の 23 大 学 が 教 員 を 含 め 支 援 を し て い ま
す。マレーシアでの学位を取得することができます。
3
実験環境
(2)語学留学
英 語 学 校 協 会 ( ENGLISH MALAYSIA) と 懇 談 で き ま し た 。
クアラルンプールへの語学留学の場合、ショートステイ、ロン
グステイともに本人の習熟度(入門・初級・中級・上級)や学
習目的(ビジネス英語・発音矯正・TOEFL・IELTS)、
学習時間(午前・午後・夜間)を組み合わせて多様な学習形態
が可能なカリキュラムが用意されています。多言語履修も可能
学習環境と価格優位
で、英語・マレー語をはじめフランス語・ドイツ語・日本語・
中国語・韓国語・スペイン語・イタリア語と9カ国語に対応
しており、日本人教師がいるため日本語での対応も可能です。
授業料は日本の語学学校と比較して安価であり、住まいも
ホテル・サービスアパート・ルームシェアから選択可能で、
安価(物価が日本の約1/3)な滞在が可能だとのことでした。
英語指導法について
(3)ホームステイ・プログラム体験
クアラルンプール近郊、東ジャワ州のパチタン村でホームステイを視察しました。この
プ ロ グ ラ ム で あ る ホ ー ム ス テ イ ・ パ チ タ ン は 、 マ レ ー シ ア 観 光 ・ 文 化 省 よ り 2014/ 2015
年度最優秀国内ホームステイ賞を受賞するなど、体験と学びが詰まったマレーの伝統的な
体験プログラムです。今回の視察で体験学習として用意されたのは、新郎側披露宴参列、
養蜂見学、パームヤシ・ゴム採取体験、バティック絵付け体験(記念品としてお土産)、
民族衣装試着(写真撮影)、レクリエーションとして、コンカ(伝統的な数学的遊び)、
民族楽器体験でした。マレーシアの農村の暮らしと伝統的文化を十分に体験できる環境が
整備され、宿泊場所の民家も二つ星ホテル以上のシャワー付き部屋を連想できるものでし
た 。郊 外 で は あ り ま す が 、医 療 体 制 に つ い て も 10 分 以 内 に 24 時 間 対 応 可 能 な 医 院 が あ り 、
緊急時の対応も安心して滞在が可能とのことでした。
披露宴参列
ゴムの 採 取
ランブータン
民族衣装試着
宿 泊 部 屋 と 付 属 し た ユーティリティ設 備
4
ココナッツ
コンカ( 数 的 ゲーム)
絵付け
民族楽器演奏
昼 食 ( マレー料 理 )
(4)宿泊施設(ホテル)
五つ星ホテルのセリパシフィックホテルクアラルンプールとルネッサンスクアラルンプ
ールホテルを利用させていただきました。両ホテルとも日本のホテルと比較すると、かな
り格安に感じます。団体旅行においても日本のホテルと同等の対応が可能であり、かつ日
本からの団体予約時においては優先した受け入れが可能とのことです。食事はビュッフェ
形式でアジア料理や多国籍料理に対応しており、生徒が食事で困ることはないと思われま
す。
①セリパシフィックホテルクアラルンプール
特 長 と し て 、LRT の PWTC 駅 に 近 く 、徒
歩で道路2階のアーケードを通り安全に移動が可能です。また、向かいにはサンウェイ・
プトラ・モールがあり、生徒を自由行動で買い物させることも可能です。客室では電圧が
対応する電子機器であれば、変換アダプターがなくても一台分は使用可能でした。
ツイン客 室
朝食会場
②ルネッサンスクアラルンプールホテル
ショッピングモール
駅 へ 続 く アーケード
特 長 と し て 、LRT の ブ キ ッ・ナ ナ ス 駅 に 近 く 、
徒歩で移動が可能です。団体用バスの発着やホテルの出入りについては一般客用とは別に
対 応 可 能 な 構 造 と な っ て い ま す 。 ま た 、 大 団 体 用 に 連 結 可 能 な 400 名 収 容 の ホ ー ル を 2 室
持 ち 、 ま た 小 団 体 用 に 200 名 以 下 で も 対 応 可 能 な ホ ー ル を 1 室 持 ち ま す 。 こ の た め 、 団 体
で の 使 い 勝 手 は 非 常 に 良 い と 思 い ま す 。 ま た 、 大 規 模 な 大 屋 外 プ ー ル お よ び 100 名 前 後 は
収容できるフィットネスクラブ等の施設設備が充実しており、運動部員の筋力維持トレー
ニ ン グ が 可 能 で す 。こ ち ら の ホ テ ル で は 変 換 ア ダ プ タ ー が な く て も 一 台 分 は 使 用 可 能 な 他 、
さらに、変換アダプターの一人一台無料貸し出しが可能です。
ツイン客 室
朝食会場
エントランスホール
大 規 模 屋 外 プール
小団体用
フィットネスクラブ
大団体用
フィットネスクラブ
(5)クアラルンプール市内見学
・新王宮
・国家記念碑
・チョコレート工場
・国立モスク
・KLシティギャラリー
・バティック店
・ペトロナスツインタワーの夜景などを視察しましたが、いずれの
施設も生徒が文化を学び景観を観賞するには十分な感動と満足を得られると思います。ま
た 、市 内 を 散 策 す る 機 会 が 得 ら れ れ ば 、多 民 族 国 家 と し て の 文 化 を 感 じ る こ と が で き ま す 。
5
新王宮
KL シティギャラリー
国家記念碑
独立広場
国 立 モスク
I LOVE KL の 看 板
バティック店
ペトロナス・ ツイン・ タワー
3.マレーシアの教育研修旅行現地視察のまとめ
①マレーシアの治安と感染症について
当初、周囲からトルコのテロが気にかけられま
した。また、デング出血熱やジカ熱報道等から感染症が危惧されました。このイメージの
先行は、北海道ではマレーシアの情報に接する機会が十分ではなかったためなのかもしれ
ません。実際に空港の入国検疫は日本同様の対応がされていました。また、ホテルやホー
ム ス テ イ 先 で の 緊 急 時 の 医 療 体 制 は 、日 本 人 看 護 士 や 日 本 の 医 学 部 出 身 医 師 の 配 置 も あ り 、
十分安心できるものでした。治安においても、ホテル周辺にて早朝や深夜の一人歩きをし
てみましたが、不安になるようなことはみられませんでした。
②マレーシアでの滞在について
他民族国家であるマレーシアは、同時に多文化国家で
もあります。街中にさまざまな民族文化、宗教文化、食文化等があふれています。さらに
日 本 人 や 日 本 文 化 を も 調 和 し て お り 、様 々 な 視 点 か ら の 文 化 を 学 べ る 魅 力 を 持 っ て い ま す 。
③マレーシアへの教育研修旅行の意義について
日本国大使館一等書記官(文部科学省
出向)の解説によると、マレーシアの高校にとって日本の高校との英語での交流はマレー
シア側にメリットが少ないそうです。理由は日本の高校生の英語レベルは、マレーシアの
小学生レベルだからだそうです。しかし、マレーシア人との英語でのコミュニケーション
は、相手のレベルに合わせた会話が可能な国民性を感じ安心できました。その点で英会話
で は や や シ ャ イ な 道 産 子 高 校 生 の 度 胸 試 し に は 、も っ て こ い の 国 で は な い か と 思 わ れ ま す 。
今後の世界経済の状況から、アジア地域が発展の中心となる期待が高まっています。そ
の視点で将来性を考えると、欧米に留学する以上にアジアでの留学の価値が高まってきて
います。マレーシアは、その評価の中心に位置する存在です。また、成長・発展する地域
は活気に満ちあふれ、滞在するだけで良い刺激を受けることができます。これを高校生の
う ち に 経 験 で き れ ば 、多 様 な も の の 見 方 や 価 値 観 を し 、良 い 変 化 を 受 け る こ と が で き ま す 。
前 マ ハ テ ィ ー ル 首 相 時 代 の Look East 政 策 に よ り 、 マ レ ー シ ア 人 の 約 86% が 親 日 で 日 本
から多くを学ぶ機運を高めました。しかし、現在は就職時のことを考え日本の学位よりも
英国の学位の方が好まれつつあるそうです。このことから、日本企業の人事体系や給与体
系がグローバル化を求められています。以上を学ぶべく、未来の北海道や札幌市を担う高
校生が、将来のビジネスパートナーとなるであろうマレーシア人との共有環境を体験する
のに十分な理由であると結論し、報告させていただきます。
今回のマレーシア教育研修旅行現地調査に派遣していただき、私自身多くを学ばせてい
ただきました。今回の調査に関わったすべての方々に感謝申し上げます。
6
マレーシア海外教育旅行現地調査報告書
北海道札幌藻岩高等学校
教諭
1.はじめに
三 関 直 樹
~現地調査参加の目的
このたびの「マレーシア海外教育旅行現地調査」では、本校における「異文化理解の深化」
として、国際的な生徒との交流や海外における体験的な活動を軸としての海外教育旅行が
可能かどうかを調査することを目的に参加させていただきました。
本校の国際理解教育の課題は「学習活動の一貫性を持たず単発性であること」にあります。
その解決策として、たとえば、国際理解教育と本校の環境教育、キャリア教育やシティズン
シップ教育を連動させ、教育課程において各教科との融合性や総合的な学習の時間での系
統立てた学習活動を構築したいと思っています。その学習活動の中に海外教育旅行を導入
できないかを検討したいと考えています。
2.現地調査の概要と海外教育旅行実施にあたっての課題
現地調査の旅程と訪問地・視察地の概要から、本校で海外見学旅行を企画・計画する場合
の課題点を検討していきます(以下では「クアラルンプール」を「KL」とします)。
【実施時期、日程、移動手段・手続き】
1) 実施時期
本校の見学旅行は 10 月中旬~下旬で例年設定しています。マレーシアへの海外教育旅
行を計画する場合、10 月という時期があっているのかを検証する必要があります。たと
えば、学校訪問などの学校交流やホームステイ、B&S プログラムの実施が可能なのかどう
かの調整や学習テーマの設定などの検討が必要であると思います。
2) 実施日程の設定
本校の旅行地は関西・首都圏の 4 泊 5 日で設定しています。今回の教育旅行現地調査
での 3 泊 5 日(機内泊 1 日)では、実質 4 日間を確保できる点から、国内見学旅行と研修
日程は大きな差異はないと思われます。ただし、KL 以外の見学地(マラッカなどの)訪
問や宿泊を伴うホームステイの実施などを組み入れると実質 5 日間となるような日程設
定が必要であると考えます。
3) 移動手段・入国審査など
本校規模(1 学年 320 名)の学校が海外見学旅行を企画・計画するにあたって、移動手
段は重要な検討課題になります。今年度の本校の見学旅行では、羽田経由の 2 団で移動し
ます。海外見学旅行で 320 名を輸送する場合は、航空機の定員や経由地などから、2 団に
よる移動、さらに 1 日日程をずらすなどして旅行日程を検討する必要があります。
入国審査では KLIA でのかなりの混雑が見られました。入国審査自体も旅行経験の一つ
ではありますが、入国審査の際には、見学旅行(団体専用)レーンの設定などの工夫があ
ればいいなと感じました。
【宿泊ホテル、食事・衛生面、健康管理・医療機関】
1) 宿泊ホテル
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宿泊した2つのホテル(Seri Pacific Hotel KL/Renaissance KL Hotel)は国内の見
学旅行での宿泊ホテルと同等(それ以上)のクオリティであると思いました。アメニティ
も整っており、日本からの持ち込みを考える必要はないほとんどありません。電源コンセ
ントは日本とは違いますが、アダプターは各ホテルの貸し出しがあり、(特に高校生が心
配する)スマートフォンなどの使用上に問題はないようです。またフリーの WIFI 環境も
整っています(海外設定しなければ帰国後に膨大な料金の支払いの可能性があり注意が
必要)
。Renaissance KL Hotel には日本人スタッフも常駐しており、日本語でのコミュニ
ケーションは心配ありません。また、両ホテルとも片言の英語でもコミュニケーションが
とれるので、気兼ねなく英語を発することができると思います。
2) 食事・衛生面
ホテルの食事は、マレーシアの一般的な朝食のほかに、通常の日本国内ホテルで提供さ
れるような食事もありメニューが豊富でした。また、昼食、夕食で案内していただいたレ
ストランも、高校生が満足するような食事内容だと思います。ニョニャ料理をはじめ、中
華料理、マレー料理、インド料理を楽しむことができ、また、客家飯店のオープンテラス
から見る KL の夜景や、サロマ・シアターで郷土芸能を楽しむことができるのも、多民族
の国であるマレーシアを体感できるものとしての満足度は高いと思います。
ただし、アレルギーを持つ生徒が増えてきており、食事の内容について、事前に食材リ
ストを提示してもらうなど、あらかじめアレルギー対策をとる必要であると思います。
3) 健康管理・医療機関
医療機関への搬送マニュアルを準備しておくことが必要だと思います。日本とは違う
環境の中で、急病が発生した場合の段取りは、保護者が関心を持つ内容でもあります。日
本人スタッフがいる医療機関(個別ケースの場合は診療科など)のリストアップと対応の
仕方などを確認しておくことが必要であると考えられます。
【研修・学習内容、見学地・自主研修の設定など】
1) 上級学校訪問・大学生との交流
マレーシアの最高学府であるマラヤ大学、日本型の工学系教育を行うマレーシア日本
国際工科院の 2 つの大学を訪問させていただきました。2 大学の訪問では、高校生と学生
との交流学習の期待、研究室訪問等の学問的交流を検討、文化的資源との接触など、有意
義な学習活動が実施できることを確認できました。実施に向けて、たとえば、学問的交流
や研究室訪問で「学問的な興味・関心を明確にし、それに向け何を取り組まなければなら
ないのか」といった課題設定を、事前学習として(高校の教育課程や教科指導に組み込ん
で)十分に行なう必要があるという課題があります。
英語学校協会(English Malaysia)とのミーティングでは、
「英語がコミュニケーショ
ンツールであることを実感・体感できる」ということや、語学留学におけるマレーシアの
有効性(多民族を結ぶツールとしての英語)について紹介していただきました。
今回の調査の目的を「高校生との交流の可能性を模索」を課題設定しました。日本大使
館の書記官から、
「英語に実践的に接するという目的の交流には、マレーシアの中等教育
学校がいい印象を持っていないのではないか」というコメントがあり、英語研修以外での
学習目的(共通の学習テーマの設定)がないようでは、双方の学校が効果的で持続可能な
交流をしていくのは難しいのではという印象を受けました。
しかし、英語をコミュニケーションツールとして使うことによる、高校生・大学生との
8
学習体験的な交流は、限られた時間において有意義な経験になると考えられます。また、
生徒の海外留学など、将来海外に目を向けるきっかけづくりになると思います。
2) カンポンビジット
現地の結婚の儀式・披露宴に参列させていただく貴重な経験をさせていただきました。
伝統的な風習・文化を体験することは、自分の今の文化的立ち位置を考える(文化を比較
による自身の考えを深める)材料になると思います。その意味でも、マレーシアの長閑な
風景の中に身を寄せて過ごす時間は、国内教育旅行ではなかなか体験できません。マレー
シア政府観光局が認定しているホストファミリーは、英語である程度のコミュニケーシ
ョンが取れるので受け入れには大きな問題はないと思います。また、ランブータンやヤシ
の実の収穫、ゴムの採取、バティック体験、地域伝統芸能を地域の人たちと楽しむ体験な
どのプログラムも充実していました。生徒には、ホスピタリティの視点が考えられるよう、
日帰りではなく、宿泊での体験を日程に組み込みたいと思っています。
3) 見学地の設定
マレーシアの政治・文化・宗教を考える視点では、新王宮、国立モスク、ピンクモスク、
プトラジャヤのような計画都市の見学を設定できると思います。また、歴史的な背景(イ
ギリス植民地時代、日本の占領時代、戦後のマレーシア)をたどる見学地(国家記念碑、
独立広場など)からマレーシアと日本の歴史を対比し、マレーシアの発展を考えるような
見学地(KL シティギャラリ、プトラジャヤ)の設定ができると考えました。
バティックギャラリー、チョコレート工場では、バティックは伝統工芸であり、カカオ
はマレーシアでも産地であることから、マレーシアの文化体験、産業の一端を考える見学
地として設定できると思います。また、日本とマレーシアの経済的な結びつきを見せるこ
とができる見学地の設定も考えられます。マレーシア政府観光局では、
「時期に応じて多
様なイベントが開催されており、そのイベントも文化体験として活用できる」というお話
もあり、イベントの開催に合わせた見学地の設定も検討できると思います。
4) 自主研修の設定
自主研修としての KL は、治安面での心配はほとんどなく、また、ショップなどでは辛
抱強く言いたいことを親身に聞いてくれる人が多いと感じており、コミュニケーション
面でも、大きな心配はないと感じています。研修スポットとして、KLCC、ブッキ・ビンタ
ン、KL 中心部の歴史的建造物など、事前学習で魅力的な見学地があると感じられ、旅行
の楽しみにつながると思います。また、コミュニケーションや地理的な不安を少なくする
ために、B&S プログラムを取り入れることも選択肢の一つだと思います。
また、自主研修を実施する場合は、国内のときと同じように、研修範囲の制約、緊急連
絡の手段と方法を決めておくことが必要です。たとえば、研修範囲をどこまで広げるのか、
非常時対応の本部をどこに置くのか、引率教員の巡回や配置、緊急連絡用の携帯電話・通
信手段の確保など、非常時の対応マニュアルを作成する必要があります。
3.教育旅行としてのマレーシアの有効性
マレーシアの多様性社会の特性や自然環境を理解・体得し、地域に見る国際的な課題と比
較し、自国文化が再認識できるよう、グローバルな考え方をもてる生徒の育成を視点とした
学習活動の検討することが必要です。ここでは、キャリア教育の連動を軸に「異文化受け入
れの準備はできている?」という視点で考えてみました。
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【検討した交流プログラム】
1) 異世代間の交流
将来のインバウンド層である、中学生・小学生との交流を検討することができるのでは
ないかと考えました。親日的であるマレーシアの小学生・中学生に、日本の伝統や今を、
わかりやすく伝えるかといったコミュニケーションの実践や、日本についてのイメージ
を逆にインタビューしながら交流していくことが大切なのではないかと思いました。
高校生や大学生の交流に目が向きがちですが、中学生・小学生との交流に目を向けるの
は、今後のインバウンド増加に対応する異文化理解の受け入れの視点をコミュニティ・ベ
ースとして養えるのではないかと考えたからです。
2) キャリア形成
今回の調査では、マレーシア政府観光局の徳永マネージャーをはじめ、ホテルスタッフ、
Air Asia X の日本人クルー、英語学校スタッフ、マレーシアにかかわる日本の方々に接
する機会をいただきました。マレーシアで仕事に就いたきっかけやエピソード、KL での
生活実態などについて生徒に紹介していただく機会をプログラムに加えることができれ
ばいいなと思いました。海外で働くことという視点で将来のキャリアを考えるきっかけ
づくりになると思います。
4.おわりに
今回の現地調査では、KLIA に到着したときの他民族の賑わい、湿潤な熱気の体感、KL の
摩天楼が林立する発展や郊外の農村文化の穏やかさ、マレーシアに発展をもたらした歴史
的な時空の流れなど、マレーシアのエネルギッシュな興味深い側面をうかがい知ることが
できました。海外教育旅行において、マレーシアの都市部や農村部と札幌市・北海道との対
比で得られる子どもたちの経験は、グローバル人材の育成において有効な視点であり、マレ
ーシアへの海外教育旅行はそれだけでも有意義だと感じました。
すでに海外教育旅行を実施している高校の事例を参考にさせていただきながら、本校な
らではの海外教育旅行を企画・計画したいと考えています。まずは、教育活動への位置づけ
の検討、教育課程や各教科との関連、国際理解教育と環境教育やキャリア教育、シティズン
シップ教育との接続など、実施に向けて整理するべき課題が多いです。課題は多いですが、
できるだけ早くに課題を整理し、海外教育旅行の実施に向けて校内での働きかけをしてい
きたいと思っています。
【謝辞】
現地調査では大変密度の濃い内容から、マレーシアのよさを体感でき、海外教育旅行での
マレーシアでの実施の可能性を確認できました。このような素晴らしい機会を与えていた
だきましたことに感謝申し上げます。
マレーシア政府観光局の徳永様、現地ガイドのファイズ様、添乗員の H.I.S 石川様・坂梨
様には、今回の視察先についてのコーディネートのすばらしさに感謝申し上げます。ありが
とうございました。
また、現地調査でご一緒させていただきました 5 名の先生方には旅行中、大変よくしてい
ただき、感謝申し上げます。
10
マレーシア海外教育旅行現地調査報告
市立札幌大通高等学校
教諭
大
畑
真
人
平成28年7月30日(土)~8月3日(水)に「マレーシア海外教育旅行現地調査事
業」が行われました。この度、この事業に参加する機会を得ましたので、そこで見聞きし
た海外教育旅行先としてのマレーシアの魅力について報告します。
●海外教育旅行の価値
今回の研修で感じたことで最も大きいもの一つが「高校生のうちに海外で貴重な経験を
することが何物にも代えがたい大きな価値を生む」ということです。私は今回の研修で、
そのような経験が世界観、人生観の転機となり、学習に対するモチベーションを大きく変
え 、そ の 生 徒 の 生 き 方 を 大 き く 変 え た と い う 例 を い く つ も 耳 に し ま し た 。例 え ば 、今 回 我 々
を引率してくださったマレーシア政府観光局の徳永氏は、高校の時に海外派遣団としてマ
レーシアを訪れ、代表として「東南アジアと日本の発展に力を尽くす」とスピーチしたこ
とがその後の人生の転機になったと語ってくださいました。現地ガイドのファイズ氏はマ
レーシア政府のルックイースト政策で鳥取県の米子高専を卒業し、日本に恩返しをしたい
という思いで現在のお仕事についています。HIS添乗員の坂梨さんも高校時代の海外研
修が大きな転機になったとおっしゃっていました。まさに「鉄 は熱いうちに打て」です。
●経済成長を続ける国家
日本の経済成長は停滞して久しいのですが、マレーシアは今も目覚ましい発展を続けて
います。クアラルンプール市内にはかつて世界一の高さを誇ったツインタワーをはじめ、
多くの超高層ビルが立ち並んでいます。また、市内のいたるところでさらに多くの建設中
で超高層ビルを目にすることができます。原油価格の下落や人件費の高まりによって国際
競争力が落ちているとはいえ、日本よりも競争力で上位に位置しており、今も発展を続け
ています。国家戦略として日本をはじめとする海外資本を積極的に取り入れ、発展してき
たマレーシアの様子は世界経済のダイナミックな動きを感じることができます。
●多様な文化が共存
マレーシアは68%がイスラム教徒のマレー系、仏教徒の中国系が24%、ヒンズー教
徒のインド系が7%と多民族・多文化国家です。国教はイスラム教と定められており、国
立のモスクも多数ありますが、他の宗教についても信仰の自由が認められており、それぞ
れの寺院が建てられています。食文化も民族・宗教によって異なり、マレー料理はココナ
ッツミルクと唐辛子を多用しますが豚は一切使わずアルコールも口にしません。イン ド料
理は、基本カレー味で牛は一切使いません。中華料理はおなじみの味で何でも食べます。
今回の現地調査でも様々な文化の料理を口にし、その違いを知ることができました。 マ
レーシアでは、このように信仰する宗教も食文化も異なる人々が、お互いを尊重すること
で大きな発展を遂げている様子を肌で感じることができます。マレーシアは、異文化交流
や国際理解を学ぶのに非常に適した国であると思います。
11
●ツールとしての英語
マレーシアの第一言語はマレー語ですが、多様な民族が共存していることやかつてイギ
リスの植民地となっていたこともあり、英語が第二言語となっています。 また、家庭では
中国語やヒンズー語を話したり、マレー系の学校ではアラビア語も学習するため、バイリ
ンガルで当然、トリリンガルも珍しくないという状況です。このことが、多くの外国資本
や高等教育、観光客を受け入れる土壌になっていることは間違いありません。母国 語が英
語の国では英語が話せるのは当然と受け止めてしまう生徒にも、マレーシアで あれば、国
際的な教育・研究やビジネスにおける英語の必要性を肌で感じさせることができます。
●大学教育
今回の視察旅行では、マラヤ大学とマレーシア日本国際工科院を訪問させていただ きま
した。
マラヤ大学はマレーシアで最も古く権威のある大学で国際ランキング でも150位以内
に入っている超名門校です。他のマレーシアの大学同様、ほとんどの講義は英語で行われ
ており、世界52か国から800名程度の留学生、60か国以上の国から850名程度の
研究者が集まっています。留学生のための寮や下宿、英語合宿プログラムも用意されてお
り、ぜひ日本の高校生にも進路先として考えてほしいとおっしゃっていました。
マレーシア日本国際工科院は、マレーシアの大学教育に日本の優れた技術と教育および
研究の手法を取り入れることを目的にマレーシア政府と日本政府の共同事業としてマレー
シア工科大学内に2011年に開学しました。現在26名の教授陣が日本から派遣されて
おり、66億円の円借款によって最新の研究機材が揃えられているそうです。 こちらも講
義はもちろん英語で行われており、2~3週間程度の日本の大学生の語学研修も受け入れ
ているそうです。また、日本のSSHの訪問を年5組以上受け入れており、こちらでテー
マ発表を行うこともあるそうです。なお、こちらに留学するには、公式でTOEFLで5
50点以上、それ以下の場合は集中英語コースを受ける必要があるそうですが、学費、生
活費も比較的安く、日本人スタッフが常にいるのでぜひ留学先として考えてほしいとのこ
とでした。
これは日本大使館で伺った話ですが、日本の大学で世界ランキング200位以内に入っ
ているのは旧7帝大と東工大の8校です。これに対しマレーシアはマラヤ大学の1校のみ
ですが、これ以外に世界ランキングで東大よりも上位のシンガポール国立大学をはじめ2
00位以内の5校がマレーシア国内に分校を置いたり、編入の受け入れやマレーシア国内
で学位を取得できる「ツイニングプログラム」の提携校になっています。マレーシアの人
口が3000万人と日本の約4分の1であることを考えると、もはや教育大国といってい
い状況です。世界各国から多くの留学生を集めているのは単に英語で講義を行っているか
らだけではありません。マレーシアはこのように積極的に外部の力を取り入れることで発
展を続けています。なお、日本からも東京理科大が分校を設置する動きがあったそうです
が、採算の問題とマレーシアの法律上、現地法人として大学を置く必要があり、その場合
日 本 の 法 律 上 、日 本 の 大 学 の 学 位 が 出 せ な い と い う 問 題 が 解 決 で き ず に 断 念 し た そ う で す 。
このような教育のグローバル化の現実を知ることは進路選択の視野を広げるのに非常に
有益であると思いました。
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●ブラザー&シスタープログラム
教育旅行でマレーシアを訪れた日本の高校生に現地の大学生がついて小グループで市内
観光をするというプログラムがあるということです。心理的な安心感や安全確保、英語で
のコミュニケーション能力の向上などに効果的なプログラムだと思いました。
●日本に対する目
かつてマレーシアは急速に経済成長を遂げた日本に学ぶために「ルックイースト政策」
を打ち出し、多くの留学生を日本に送りました。現在、かつての留学生は様々な場所で活
躍しており、日本とマレーシアをつなぐパイプ役がいたるところにいるという状況になっ
ているそうです。また、日系企業の進出も著しく日本は最大の対マレーシア直接投資国だ
そうです。このため国全体が非常に親日的で、日本人が住みたい国9年連続1位になって
います。
一方、マレーシアから見た日系企業は社員研修は良くても給与が低く、あまり魅力的に
は映っていないようです。そのため、新入社員研修が終わった時点で待遇のいい外資系企
業に転職する人も多いそうです。日系企業について、マレーシア日本国際工科院も日本大
使館も同じ見解を持っているのが印象的でした。
●カンポンビジット(農村体験)プログラムとマレー式結婚式
マレーシアの代表的な体験プログラムにカンポンビジットがあります。 このプログラム
は農村で宿泊を伴うホームステイをするのが基本ですが、今回、日帰りで実際の結婚披露
宴に参列し、ホームステイ先の視察を行いました。
マレー式の結婚披露宴は、新郎側、新婦側のそれぞれの実家で800名~1000名程
度の人を招いて行われます。来客は特に招待されていなくても結婚相手の顔を見にやって
きてビュッフェ式の食事を食べて食事代相当のお金を置いて自由に帰っていいというスタ
イルのようです。今回、我々が参列した結婚披露宴は、新郎側の実家で行われたものでし
た。まずは、民族衣装に身を包んだ新郎・新婦とともに太鼓を打ち鳴らす人々とともにパ
レ ー ド を し ま す 。こ こ で 驚 い た の が 我 々 を 新 郎 新 婦 の す ぐ 後 ろ に 並 ば せ た こ と で す 。正 直 、
縁もゆかりもない外国人なのでパレードを横から眺めるくらいでよかったのですが、恐れ
多 く も 最 前 列 で の 参 加 に 戸 惑 っ て し ま い ま し た 。そ の 後 も 新 郎 の 両 親 に「 よ く 来 て く れ た 」
と握手を求められたりと、日本では考えられない歓迎ぶりでした。このようなことはよく
あるそうで、我々以外にもシンガポールから観光客が披露宴に参加していました。
ホームステイ先の視察で分かったことですが、ホームステイを受け入れることのできる
家庭はマレーシア政府の認可を受けており、安心して生徒を任せることができるというこ
とです。特に我々が訪れた家庭は、表彰も受けているような家庭でリゾートのコテージの
ようなところでした。
また、ゴムの樹液の採取やアブラヤシの収穫を見学させていただきました。 マレーシア
の主要産業はすでにサービス業と製造業にシフトしていますが、天然ゴムは世界6 位、パ
ーム油は世界2位の生産量を誇ります。特にアブラヤシは、国土の15%を占めるほど盛
んに栽培されており、マレーシアを代表する作物となっています
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●イスラム教に対するイメージ
最近の世界的なテロに関する報道によって、イスラム教徒に対して排他的で危険なイメ
ージを持っている人も多いと思います。しかし、マレーシアで現地の人と接すれば、その
イメージはすぐに払拭できると思います。これはマレーシアの人々にお互いを尊重する気
質があったということと合わせて観光立国となるために国が啓蒙活動を行ったこと、ルッ
クイースト政策として日本に多くの留学生を派遣したこともあり、極めて親日的であるこ
となども影響していると思います。
●宿泊施設
今回、1・2泊目はセリ・パシフィックホテル、3泊目はルネッサンスホテルに宿泊し
ました。どちらも日本の高校生の見学旅行を受け入れた経験が豊富で部屋も広く、エクス
トラベッドなしのツインルームを保障してくれます。日本ならば見学旅行で使うには豪華
すぎるホテルですが、物価の違いから一泊5~6千円から宿泊できるそうです。また、市
内には24時間の救急病院も日本語の通じる病院もあり、日本の見学旅行で宿泊するホテ
ルと同等のサービスはすべて受けられるということです。
●現地高校生との交流
今回は、見学することができませんでしたが、見学旅行や研修旅行で訪れた高校の中に
は現地の高校生との交流を行っているところもあるそうです。ただ、日本の高校生の英語
レベルは、現地の小学校4年生程度しかないため討論などは難しいということでした。
●気候
熱帯雨林気候なのでかなり蒸し暑く、長時間の外での活動は熱中症の危険があります。
逆に、室内は、クーラーを効かせることが「おもてなし」という考えもあるようで半袖で
は肌寒く感じるほどです。雨が日中に降ることはほとんどなく、夕方に激しいスコールが
あったとして20分~30分で止んでしまいます。
●衛生面
ホテルやレストランで食事をする分には、全く問題はありません。もちろん水道水は飲
めません。屋台で食べるときは、その場で火を通すものなら問題ありませんが、作り置き
のものには注意が必要です。また、カンポンビジットでは特にゴム農園で大量の蚊が発生
していました。また、場所によってはデング熱が多発しているところもあるそうなので虫
よけは必須です。
●コスト
今回、お世話になったHISの話ではマレーシアでの海外研修は最低12万円から実施
の可能性があるそうです。15万円の予算があれば、今回のように充実した研修を実施で
きるそうです。個人的には費用対効果を考えた時に10万円で実施する国内の見学旅行と
比較して生徒の意識改革の大きさなどを考慮するとそれ以上の 価値があると思いました。
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マレーシア海外教育旅行現地調査報告
北海道札幌清田高等学校 教諭 新ヶ江 りえ
1.視察目的
視察目的は以下の2点である。1つ目に、マレーシアの語学学校の内容・現状を視察する
ことである。本校では隔年で海外語学研修を実施しているが、年々普通コースの生徒の参加
が減少している。その要因として研修の価格が高いこと、語学学校外の活動が十分ではない
ことがあげられている。そこで、比較的安価で治安も良く、教育大国として力を入れている
マレーシアでの語学研修の可能性を検討したい。語学学校と共に学校外でのアクティビテ
ィを視察し、言語と多様な人種・文化・宗教などの事柄を複合的に学ぶことができるかを検
討したい。
2つ目に、現地の高校・大学における教育活動を視察することである。マレーシアは東南
アジアの中心国であり、グローバルに活躍できる人材の育成に力を入れている。多様な他者
を認めながらリーダーとしてマネージメントする能力、発信する能力をいかに育んでいる
のかを視察したい。この事業への参加を通して、より多くの生徒が他国に興味を持ち、将来
世界で活躍していく素地を形成できる機会につなげていきたい。
2.教育旅行地としてのマレーシア
①語学研修として
英語学校協会(English Malaysia)の方々(4 校の語学学校のスタッフ)と懇談会に参加
させていただいた。マレーシアは語学研修の候補地として英語研修とその価格、多文化理解
の2点で魅力的であることがわかった。
まず1つめに英語研修についてである。マレーシアの語学学校では他国の語学学校と同
様に様々なプログラムがある。内容面ではビジネス英語、アカデミック英語、資格
(TOEFL,TOEIC 等)
、プレゼンテーション、コミュニケーション重視のコースなどがある。
さらに、Education Program として環境や自然を学ぶプログラムなども用意されている。
形態面では 10 名程度の少人数クラスや、1対1で学べるコースなど、個人の目的に応じた
コースを選択できる。価格は$470/month(一例)とリーズナブルである。また、授業の質
について、各講師は英語を教育するための研修を受けており経験豊富で責任感があるので
心配する必要はないとのことだった。また、研修中の宿泊施設はホテルやアパートメント、
シェアアパートメント(他国の生徒と組み合わせるようにしている)
、学生寮、ホームステ
イなどを斡旋している。ホームステイは一般的ではなく、シェアアパートメントの学生が多
いようだ。学校を出れば日常的に英語が使用されており、語学学校で学んだことを学校外で
24 時間練習できる環境である。今回訪問させていただいた英語学校協会は 20 校以上の語
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学学校で成り立つ組織である。ニーズに応じて他の語学学校に繋いでいただくこともでき
るとのことだった。そして、高校生が将来実際に英語を運用している場面を考えると様々な
地域の発音やアクセントを持った人々とコミュニケーションを取っていくこととなる。グ
ローバルな視点で活躍する人材を育てることを目標とするときに語学面・多文化理解の側
面の両面で語学研修を行う第一歩としてとても魅力的な国である。
(英語学校協会のスタッフからの説明)
(情報・意見交換の様子)
次に、語学研修においてその地域の文化や風習、日本との関係性や違いを学ぶ事も大切な
目的の一つである。今回の訪問では、カンポン・ビジット(近郊の村落でのホームステイプ
ログラム)の視察を行った。カンポン・ビジットでは村の結婚式に参列させていただき、現
地の結婚式の風習を体験することができた。現地の方々はとても親和的に暖かく迎えてく
ださった。ゴムの木の樹液採取を実際に見せてもらい、民族衣装や伝統的な遊びを体験した。
また、日本国大使館とマレーシア政府観光局の訪問からは、マレーシア経済の発展や日本の
関係性を学ぶことができた。主要産業が第一次産業から製造業やサービス業へと変化して
おり、観光業の発展や MICE(meeting, incentive, convention, exhibition)を誘致するこ
とにも力を入れている。また、マレーシアは多民族国家・イスラム国家としての優位性を生
かして「イスラム金融」や「ハラル製品」のハブとなることを目標にしている。1959 年か
らは観光業にも力を入れ、今では観光業はマレーシア経済を支える第2位の分野であり観
光客の数は年々増え続けている。また、クアラルンプール市内には日本によるインフラ整備
を見ることができた。クアラルンプール新国際空港(大成建設、竹中工務店等)
、首都のラ
ンドマークであるペトロナスツインタワーのタワー1(間組)
、シンガポールとの連絡橋(清
水建設)や首都圏の水不足を解消するための導水事業(東電設計等)にも日本企業が関わっ
ている。日本の建設会社が海外でこれだけの
インフラ整備に関わっていることに触れる
ことは高校生にとって日本の魅力や誇りを改めて感じる機会になる。
(民族舞踊鑑賞)
(新王宮見学)
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(独立記念碑見学)
(バティック染め見学)
(カンポンにて結婚式に参列)
(ペトロナスツインタワー)
②大学訪問から
2つめの視察目的は大学における教育活動を視察することであった。マレーシアで最も
長い歴史があるマラヤ大学とマレーシア日本国際工科院を訪問させていただいた。マラヤ
大学は 12 以上の学部を持つ総合大学であった。50 以上の国々からの留学生を受け入れて
いる。中心地からのアクセスも良く、自然に溢れたキャンパスであった。世界の大学ランキ
ングでも 146 位であり(QS 世界大学ランキング)
、世界の様々な大学と共同研究を進めて
いる。また、マレーシアに分校を設置している世界の有名大学も多い(Monach University、
The university of Nottingham、University of Southampton、Newcastle University など)
。
マレーシア日本国際工科院は日本型の工学系教育を行い、日本の労働倫理も学ぶ事ができ
る大学である。円借款により最先端の研究設備が整っていた。日本の大学の教授や准教授が
派遣されて教育をしている。インターンシップが必修である。日本の大学生の語学研修や、
SSH 高校の訪問も受け入れている。工学系の大学でありながら女子学生が全体の 50%程度
を占めている点は日本の工学系大学との大きな違いである。工学部系で女子学生がこれほ
ど少ないのは日本くらいかもしれないという話もあった。また、マレーシアの学生にとって
日系企業の魅力は落ちてきているように感じるとのことだった。労働時間やノルマが厳し
いわりに報酬が少ない。新入社員のトレーニングはしっかり行われるのでトレーニングを
受けて(日本から見て)外資の企業に転職していく学生も少なくないとのことで、マレーシ
ア日本国際工科院も学生獲得には苦戦中とのことだった。見学旅行や語学研修の中でマレ
ーシア現地の大学を訪問することは高校生にとって進路を考える上で大きな刺激となるか
もしれない。
(マラヤ大学訪問)
(マラヤ大学アートギャラリー)
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(マレーシア日本工学院の女子学生)
(マレーシア日本工学院訪問)
(イラン人留学生が作成した研究装置)
③修学旅行(全員参加)としてのマレーシア
ここまで述べてきたように、マレーシアはマレー系・インド系・中国系の 3 民族、イスラ
ム教・ヒンズー教・キリスト教・仏教の 4 宗教が共存しており、文化的宗教的なダイバーシ
ティに富んでいる。世界の縮図ということができる。高校生は世界状況を見据えながらまさ
にこれからの自分の生き方を考えて進路選択をしていく時期にある。その多感な時期の高
校生が、東南アジアの中心国として多様な他者を認めながら生活し発展しているマレーシ
アという国を訪問し、直接世界と関わる経験をすることは大変意義深い。
一学年 300 名程度の修学旅行であれば、安全性をはじめ宿泊先や観光時の移動などの心
配が出てくる。宿泊先に関しては今回滞在したホテル(セリパシフィック、ルネッサンス)
であれば国内旅行と同等かそれ以上に良い環境である。荷物を置くスペースがあり、ツアー
デスクも作ることができ、必要に応じて広い部屋を借りて食事をし、ミーティングをするこ
とも可能である。見学旅行の受け入れ実績もある。観光時の移動についても主要な施設は観
光バスの停車場所もあるし、クラス毎に見学順路を組み替えていけば移動の問題も特にな
い。そして最重要な点が安全性である。健康面では水や食事に気をつけることはもちろんだ
が、万一の場合は市内には高度な医療施設もがある。そして、事件事故に関しては、基本的
なことであるが現地の状況や情報を学び危険な地域には行かないこと、食事はホテル内で
取るなどで対応できることもある。100%安全とは言えないがそれは国内旅行においても同
じである。今回の現地視察ではマレーシアの人々は大変親日的で危険を感じることはなか
った。そして、マレーシアは多民族が共存し続けてきた歴史があり、イスラム国家の中でも
先進国であることを付け加えておきたい。
3.最後に
今回のマレーシア海外教育旅行現地視察を企画運営してくださった北海道海外旅行促進
事業実行委員会の三浦様を始め、札幌市立高等学校長会、マレーシア政府観光局の徳永様、
HIS 石川様、坂梨様、現地ガイドのファイドさんにこのような貴重な機会を与えていただ
いた事に心より感謝を申し上げます。
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マレーシア海外教育旅行現地調査報告
札幌新川高等学校 教諭 追久保いつみ
視察内容
2016 年 7 月 30 日(土)から 8 月 3 日(木)の 5 日間、マレーシアに滞在した。訪問先は、首都ク
アラルンプール市内、近郊の農村でのホームステイ先、マレーシア政府観光局、マラヤ大学、英語学
校協会、日本大使館などである。マレーシアの実質滞在時間は 3 日間であったがとても充実した研修
であった。
視察目的
今回の私の視察目的は、
「見学旅行の際、マレーシアではどのようなことを学ぶことができるのか、
それらの経験は高校生にとって充実したものとなるかどうか」である。
我々教員にとっても、マレーシアはどのような国なのかは分からないことが多く、不安も多い。
また大人数の生徒を引率する以上、治安、交通の利便性、宿泊施設、食事、訪問施設など、観光客用
にきちんと整備されているのかどうかが非常に気になるところであった。また、わざわざお金をかけ
てマレーシアに行くのであるから、他の国との違いは何か、マレーシアに行ったからこそ学べること
は何か知りたいと考えてこの研修に参加した。
教育旅行地としてのマレーシア
実際にマレーシアに行ってみての感想は、見学旅行の訪問先として適していると感じた。安全で、
交通機関も整っており、ホテルも清潔感がある。食事も日本人の私たちにとって大きな問題はない。
さらに市内はさまざまなビルが立ち並び、大都会だ。物価も日本の 3 分の 1 で安い。そして、少し車
を走らせれば、
村落に行くことができ、
そこではホームステイをしながら自然を楽しむことができる。
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この研修を通して私が考えるマレーシアの 1 番の魅力は、多民族国家であるということだ。ここが
日本と大きく違うことであり、他の国とも差別化できるところだ。町を歩いていれば、中国語、マレ
ー語、英語などの言語が溢れている。中国に行かなくても、中国の文化が、インドに行かなくてもイ
ンドの文化を、マレーシアに行くだけで、一度に体験することができる。食べ物も宗教も服装もそれ
ぞれみんな異なっている。どこの国に行く時でもそうだが、海外で最初に学ぶことは、文化の違いで
ある。初めて触れる文化にカルチャーショックを受け、日本人としての自分を見直すきっかけにもな
る。高校生の多感な時期にこれらの経験ができることは、今後の進路にも良い意味で大きく影響して
いくことと感じる。
もちろん、英語を学ぶ環境も整っている。大学では英語での授業もあり、語学学校も充実している。
さらには親日で、あたたかく迎えてくれることもとても安心できる。
課題としては、大人数の生徒を引率したとき、空港での入国審査、ホテルの安全、移動がスムーズ
にいくのかどうか、教員側の引率に際しての知識や経験などが挙げられる。また、観光はいいが、長
期間、生徒が英語を学ぶためにマレーシアに行くかといったら、その可能性は低いと感じる。やはり
生徒は、英語は英語圏の国で学びたいという気持ちが強い。人生で初めて行く国にマレーシアを選ぶ
生徒は多くないと感じる。教員側が興味を持たせる工夫が必要だと感じる。
新川高校の生徒(159 人)のマレーシアに対する考え
マレーシア帰国後、生徒はマレーシアのことをどう思っているのか、興味があるのか疑問に思い、
夏休み明けの 8 月 17 日(水)
、18 日(木)
、19 日(金)の 3 日間、英語の授業において、マレーシア
について授業を行った(3 年生 79 人、2 年生 80 人)
。授業では、写真やビデオを見せながら、プリン
トを配布し、以下の質問に答えてもらった。
プリントの質問は以下の 4 問である。これらの質問をしながら授業を行った。以下に生徒の回答を
載せる。
質問1. マレーシアはどこにある? マレーシアを塗りつぶそう。
質問2. マレーシアのイメージは?(言語、宗教、食べ物、通貨は)
質問3. 授業を終えて、マレーシアにどんなイメージを持ちましたか? 授業前と変わりました
か?
質問4. マレーシアは多民族国家であり、特に都市部においては英語が多く使われています。
マレーシアで英語を学ぶ環境も整っています。もしチャンスがあればマレーシアに留
学してみたいと思いますか?
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質問1. マレーシアはどこにある? マレーシアを塗りつぶそう。
生徒に世界地図の白地図を配布し、マレーシアの場所を塗りつぶしてもらった。
結果、マレーシアの位置を正確に答えた生徒は 159 人中 0 人であった。西側のみをマレーシアとす
る生徒が多く、また、シンガポールと勘違いしている生徒も多かった。フィリピンやインドネシアを
塗る生徒も多かった。東南アジアということは理解しているようだが、正確な位置は曖昧なようだっ
た。
質問2. マレーシアのイメージは?(言語、宗教、食べ物、通貨は)
地図を塗りつぶした後、
マレーシアについて何も情報を与えずに、
マレーシアのイメージを聞いた。
マレーシアには以下のようなイメージがあるようだ。
暑い、日焼けしそう、民族のイメージ、静かそう、海、きれい、シンガポールに似ている、マンゴ
ー、米、手でご飯食べる、スコール、建物低い、仏教、ヒンドゥー教、カレー、治安がよさそう、自
然に囲まれている、都市部は洗練、郊外は大自然、大きなカブトムシやクワガタがとれる、密林、湿
度が高くてよく雨が降っていそう、バナナ、バドミントン、ゾウ、マーライオン、なにもない国、食
べ物おいしくなさそう、マレーシアに対して認識がなかった、目立った観光名所がない、発展途上国
のイメージ、怖そう、戦争、田舎、少し汚い、茶色っぽい、どこにあるか分からない、特にイメージ
はない
暑い、あまり発展していない、衛生面が整えられていないのではないかという解答が非常に多かっ
た。上記のことから、マレーシアに対しては、ぼんやりとしたイメージしか持っていないことが分か
る。東南アジア全体がごちゃ混ぜになっているようだ。
質問3. 授業を終えて、マレーシアにどんなイメージを持ちましたか? 授業前と変わりましたか?
授業では、25分間ほど、マレーシアの宗教、お金、食べ物、文化などを、研修の際の写真を交え
て説明した。その後、マレーシアに対してどのようなイメージを持ったのか回答してもらった。
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・ 思ったよりもきれいで、近代的な中にも、伝統的な文化もあって、一度行ってみたいと思った。
・ こんなにキレイなことに驚いた。マレーシアはインドとの関わりが深そうなので興味を持った。
ごはんもおいしそう。
・ カラフル、きれいな町、服装が派手(色)
、日本と文化が全然違う。
・ 思っていたよりもお金のある国なんだと思った。意外に栄えていた。
・ イスラム教とは知らなかった。物価が日本の 3 分の 1 なのもすごい。
・ すごくきれい。町という感じと村という感じがまざっている。
・ みんな仲良さそう。
・ 今までマレーシアに対してイメージがなかったし、場所もあいまいだったけど、授業を終えて良
い印象をもつことができた。
・ 都会だから安心。旅には向いてる。
・ 多民族国家だということが分かった。いろいろな民族が混ざって住んでいることに驚いた。英語
が話されているイメージがなかった。
・ 日本と文化の違いが大きくて楽しかった。伝統的で自然が多く、行ってみたくなった。親近感が
わいた。
・ ホテルがキレイで、旅行に行きやすい環境だということが分かった。
・ (結婚式の様子をみて)にぎやか、カラフル、陽気で楽しそう。
・ アジアっぽい雰囲気と発展した雰囲気が融合している感じ。
・ 想像していたイメージと変わらなかった。
・ きれいにみえたけど、暑そうだから虫がたくさんいそう。
「意外にきれい」
「意外に都会」という解答がとても多かった。結婚式のビデオをみせたが、それ
がとても印象に残った様子であった。
質問4. マレーシアは多民族国家であり、特に都市部においては英語が多く使われています。マレ
ーシアで英語を学ぶ環境も整っています。もしチャンスがあればマレーシアに留学してみたいと思い
ますか?
最後には上記の質問に、
「はい・いいえ」で答えてもらった。この質問に対して、全生徒 159 人中、
半数以上の 98 人の生徒が「はい」と答えた。授業前、マレーシアのことは何も興味がなく、何も知ら
なかったという生徒が多い中で、この結果は驚きであった。
重要なことは、ここで持った興味を実際に行動に移すことである。生徒の中には、マレーシアに限
らず、海外に興味はあるけど、1 人で行くのは勇気がいる、怖い、今は部活を優先したい、金銭面、
などの理由があるためなかなか実行に移せないでいるという意見があった。興味を持つことと、実際
にいくこととは大きく違うということである。確かに、日々新川高校の生徒と接している中で、積極
的に海外に行きたいと思っている生徒は少ないように感じる。また北海道から出たくないという気持
ちも強い。今回の授業を通して、生徒が少しでも海外に目を向けてくれれば嬉しい。海外に目を向け
るきっかけがマレーシアであればとても嬉しいことだ。そのきっかけを作るのは我々教員の役目だと
今回の研修で感じた。
最後に、このような研修に参加できとても勉強になりました。ありがとうございます。
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マレーシア海外教育旅行現地調査報告
市立札幌開成中等教育学校
教諭
飯野 修一
視察目的
今年(2016 年)10 月 19 日~24 日に予定している本校 5 年生のマレーシア・シンガポール見学旅行
の下見と、来年度以降の研修地・日程作成の参考とするため。
教育旅行地としてのマレーシア
1.今回の現地調査の概況
今までに 3 回私的な旅行でマレーシアを訪問したが、今回は生徒を引率しての教育旅行という観点で
参加し、10 月の見学旅行の訪問地のうち、ホテルを除いてすべて回ることができた。また、観光局、大
使館、マラヤ大学、語学学校、マレーシア日本国際工科院(MJIIT)の方々から説明を聞き、質問にも
答えていただき、名刺も交換して、今後どこに何を問い合わせればよいのか大体把握できた。見学旅行
に加え、マレーシアでの語学研修や大学進学も検討する価値があると感じた。案内していただいたガイ
ドのファイズ氏は一流で、マレーシアに対する理解が深まり、HIS 手配の食事もバラエティに富みおい
しく、カンポンビジットの教育的価値も確認できた。自由時間で出かけたスリア KLCC とセントラルマ
ーケットは、いずれも生徒を1~2時間自由行動をさせるのに最適な場所であった。何よりも、マレー
シア政府観光局徳永氏のマレーシアに対する熱い思いと、ファイズ氏の日本に対する熱い思いに心を動
かされた旅であった。
2泊したスリ・パシフィック・ホテル付近からのクアラルンプル(KL)市街の様子
2.多民族国家としてのマレーシア
札幌からの海外見学旅行先として一般的な韓国、中国、台湾、オーストラリアなどと比較して、マレ
ーシア・シンガポールの最大の教育的価値は「多文化共生」であろう。マレーシアはマレー系 67%、中
国系 24%、インド系 7%と 127 の少数民族から成り立っており、イスラム教が国教で、イスラム圏の中
で生徒を連れていける国を考えた場合、ほぼ唯一の訪問先といえ
る。高校生という頭の柔らかい時期に、他の民族の文化や言語を尊
重して共存している社会を体験し、学校を訪問して同年代の生徒
と交流し、カンポンビジットで実際の生活の様子を体験する中で、
他民族やイスラムに対する正しい理解を深めることは、何物にも
代えがたい経験となるであろう。
カンポンビジットという農村のホームステイプログラムは日本
人が主な対象で、今回はパチタン村にお邪魔した。屋外では、パー
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結婚披露宴で菓子をまく様子
ムヤシの実の収穫、ゴムの木からゴムの採取法、ココヤシの収穫とジ
ュースの試飲に加え、今回は村の結婚式の披露宴に参加する機会を
得た。屋内では伝統的なおやつを食べ、マレーの伝統衣装の体験、ビ
ー玉を出来るだけ多く集める「チョンカッ」という遊び、バティック
(ろうけつ染め)体験を行った。またガムラン(伝統音楽の合奏)の
楽器の演奏も体験することができた。生徒も十分楽しめそうである。
食事も多様で、マレー料理、中華料理(広東・福建・客家・海南)、
ガイドのファイズ氏が盛り付けを指導
インド料理(タミル系)
、ニョニャ料理(マレーと中華の混合)の 4
ホームステイ受入れ家屋の外観
民族衣装体験。右の二人がホストのご夫婦
種類を楽しむことができる。ホテルの朝食バイキングでもこれらがもれなく提供されていた。また新王
宮や国立モスクなどイスラム圏を強く意識する建築物を見たり、モスクの内部を見学したり(今回はプ
トラジャヤのモスクで見学)
、セントラルマーケットで国内各地から集まった民芸品を見たりすること
も異文化理解に役立つと思われる。
左より新王宮、プトラジャヤのモスク、その内部
3.マレーシアの国家計画・都市計画から学ぶ
日本とマレーシア・シンガポールの関わりで生徒に必ず押さえさせたいことは、1942 年~45 年の日
本占領時代の存在である。マハティール首相のルックイースト政策の前には「日本占領時代にマレーシ
アの経済は停滞した」
(KL シティギャラリーの展示より)歴史があったことを、当時の世界史の文脈の
中で理解させたい。1982 年開始の同政策により、これまで約 16,000 人の留学生・研修生が日本で学び、
今マレーシアで一定の地位についていることは日本にとってアドバンテージである(日本大使館黒沼一
等書記官の説明)
。ガイドのファイズ氏自身、鳥取県米子市の高専へ留学していたとのこと。首都行政機
能のプトラジャヤへの移転、クアラルンプル(KL)の再開発、国を挙げての観光立国の方針などから、
高校生が学ぶことは多い。KL 国際空港のとんでもなく大きな施設、KL のペトロナス・ツインタワーを
はじめとした高層ビル、2020 年までに 300 の高層ビルを建設し、人口を 600 万人から 1,000 万人に増
加させることを目指して進められる、KL のいたるところで見かける建設工事などからその発展の様子
を実感できるであろう。マレーシアの発展モデルは、先進国の海外製造拠点が設置されることにより、
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当初から輸出志向型の工業化の状態が実現される「プラットホーム型」とされ、今や日本の大学に留学
するメリットが少なくなっている(黒沼氏)。
「2 年ほど前に、シンガポールの大学生の人気企業 100 社
に日本企業は入っていないという記事を読んだ。初任給が安すぎる、日本語は汎用性がない、外国人は
役員になれないなどのデメリットから敬遠されるということだが、マレーシアではどうか?」と黒沼氏
に質問したところ、「同じです」という回答であった。
MJIIT の教授によると、マレーシアの教え子が日本企
業に就職しようと思っても親が反対するので、
「給料は
年々上がっていくから」と説得してようやく納得して
もらった。ただし役員になるのが難しいので、ほとん
どは 10 年ほどで転職していく。もっとも日本企業の
現地法人の社長の年収が 1,500 万円では日本人以外は
誰もやってくれないとのこと。このような視点も、現
ペトロナス・ツインタワーを望む夜景スポットで
地へ来て、見て、聞いて初めて持てるものといえよう。
4.観光立国の視点
東アジア・東南アジアの国々を旅行していて感じるのは、現地人ガイドの優秀さである。みな日本の
大学や専門学校に留学し、流暢な日本語を身に着け、日本文化や日本人のことをよく理解しており、こ
ちらが知りたい、してほしいと思うことを自然にやってくれる。もちろん自国の文化に対する知識も豊
富で、自国を理解してほしい、楽しんでもらって日本に恩返ししたいという強い気持ちを感じる。翻っ
て日本は、総じて観光に携わる人々が正当に評価されていない面がある。数年前から、中国・台湾・香
港など中国語圏の観光客が大挙して北海道に押し寄せているが、日本人で中国語のガイドや対応ができ
る人はたいへん限られている。北海道は経済政策の中でも、インバウンドによる経済の活性化が最も現
実的な方策の一つであり、観光にかかわる政策や産業振興を担う人材育成が求められる。
マレーシア政府観光局の説明によると、現在の目標は、①外国人観光客の増加、②滞在日数と出費の
増加、③国内旅行の成長への刺激、④MICE(Meeting 企業の会議など、Incentive Travel 報奨旅行、
Convention 大型会議・学会、Exhibition・Event 展覧会・文化/スポーツイベント)の振興、の 4 つで
ある。KL の再開発計画に MICE の大型施設も計画されているかとの質問には、具体的な計画の回答は
なかったが、現存の施設に加え大規模な MICE を誘致できる、集約的な施設が必要になるとのこと。
以上のような観点は、グローバルな視点でローカルの問題を考えるスーパー・グローバル・ハイスク
ール(SGH)のテーマの一つとしても重要であり、同事業の指定校である本校生徒にとって、教育的意
義は高いと考える。
5.語学研修・大学留学
マラヤ大学と英語学校協会(English Malaysia)を訪問し、語学研修と大学留学について話を聞くこ
とができた。
マラヤ大学は大学生の語学研修の受け入れを積極的に実施しており、3 週間の授業料(食費・滞在費込)
は 1,500 米ドルである。受け入れは International Student Centre が窓口となっている。留学生は学
部・大学院合わせて 3,500 名おり、90 日を超える短期留学と交換留学は学生ビザが必要だが、夏季プロ
グラムは不要である。授業は基本的に英語で行われるが、マレー語の授業であっても、大学の方針とし
て「一人でも留学生がいれば必ず英語で教える」ことになっている。
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英語学校協会には 20 以上の語学学校が加盟しており、一クラス 20 人未満で、一対一の授業もある。
1 週 16 時間、3 か月で 200 時間が最低基準で、最長で 1 年間の学習となる。ICLS という語学学校は日
本人が設立し 9 か国語を教えているが、英語には大学英語、集中コース、一般コースの三つがあり、東
京と KL に日本人コーディネーターを置いている。KL の窓口は森さん [email protected] である。授
業と宿泊がパッケージで提供され、安くて大学生の利用が多い学生寮、1~3 か月向きのアパート(ルー
ムシェア…リビングを共有し、カギ・バストイレ付きの個室)、セキュリティの確かなホテルの 3 つの
タイプから選ぶことができる。ホームステイはあまり一般的ではない。
滞在費が安いことなどから、マレーシアは日本人のロングステイ希望滞在国の 1 位を継続しており、
また英語を身に着けさせるため長期親子留学の話も聞く。本校では以前実施していた語学研修を SSH
や SGH の事業に振り替えているが、前期課程を主な対象に実施する場合、費用対効果という観点から、
マレーシアでの語学研修を検討してみたい。
6.自然観察・探求
今回の調査とは少し外れるが、マレーシアは熱帯雨林をはじめ、マングローブ林、サンゴ礁、高原、
山地などの自然環境が豊かで、動植物の多様性の宝庫である。タマン・ヌガラ国立公園、ペナン島、ラ
ンカウイ島、キャメロン・ハイランド、マラッカなどを組み合わせて、自然観察・世界遺産等の文化財
見学・現地との交流などを、SGH やスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の事業の一部として実施
することも検討したい。
7.まとめ
様々な料理:左から飲茶、スティームボート、ニョニャ料理
マレーシアでの教育旅行の優位性としては、以上の6点のほか、①時差が1時間、②英語が通じる、
③親日的で穏やかな国民性、④ホテルの教育旅行受入れの実績があり料金も安い、⑤食事の内容が豊富
で生徒の口にもあう、⑥公共施設で WiFi がつながる、⑦病院も充実している、⑧両替を現地で用意し
やすい、などがあげられる。
デメリットとしては、①移動に往復各1日かかる、②トイレの習慣にとまどう、③屋外と屋内・バス
の中の温度差、くらいしか思いつかない。いずれも事前指導で対応できるレベルである。
大きな課題としては、保護者の理解を得ることである。マレーシアはボルネオ島の一部を除き、治安
はよく安全と理解しているが、イスラムに対する誤解(なぜこの時期にイスラム圏の国に行くのか?イ
スラム=危険)
、7 月の KL 郊外での爆破テロ事件(万一何かあったら学校は責任を取ってくれるのか)
、
市内のある高校が今年はマレーシアをやめて訪問先をシンガポールだけにしたことなどで、保護者から
不安の声が上がることが危惧される。本校としては、予定通り実施したいと考えており、今回の現地調
査も踏まえて丁寧に説明し、理解を得たい。
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5.おわりに
以上のとおり、大変有意義な現地調査が行われ、様々な視点からの報告がまとまりまし
た。マレーシア政府観光局マーケティングマネージャー徳永様のコーディネートならびに
当事業にご協力賜りました関係者の皆様のご尽力に感謝申し上げます。
今回の事業が、北海道からマレーシアへの教育旅行実施にむけて一助となることを願っ
てやみません。
なお、北海道海外旅行促進事業実行委員会では、北海道から海外教育旅行を促進するた
めのホームページを運営しています。平成26年度から実施している海外現地調査事業の
報告など、様々な情報を提供していますので、ぜひご活用下さい。
http://try-kaigai.com
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