直管LED照明の現状について 特集2……● ●…… 直管LED照明の現状について 経済産業省商務情報政策局 情報通信機器課 山岡直樹課長補佐に聞く 省エネ・節電に関する社会の関心が高まるなか、当協会においても デマンド監視装置による最大デマンド値の抑制に電気料金の低減、遮熱断熱塗装による室温上昇の抑制、 高効率照明の導入などさまざまな提案をお客さまへ行っておりますが、今回は経済産業省の山岡課長補佐から 直管LED照明の現状と問題点などについてお聞きしましたので、 その内容を紹介します。 の価格などの比較表です。白熱電球 60W相当品と同程 ランプの寿命が長く器具の寿命とほぼ同じため器具ごと設 度の光量のある製品の比較です。 置するものです。 各種ランプの性能比較 機器類には耐久材と消費材の考え方がありますが、 LED照 白熱電球 価格 約100∼200円 エネルギー効率 15 (注1) (54W, 810lm) 寿命 1000時間 電球形蛍光ランプ LEDランプ 約700∼1200円 約1000∼3000円 90 68 (12W, 810lm) (9.4W, 850lm) 40000時間 6000∼ 10000時間 下図は、白熱電球・電球形蛍光ランプ・LEDランプのそ 明器具は従来の照明と違い寿命が 40,000 時間と長いので 耐久材の概念が導入されています。 LED照明の分類 ── LED照明器具 器具と光源 (LEDパッケージ) が一体化しており、器具ごと交換して設置するも の。従来型の照明器具のように、 ランプの交換は前提としない。 シーリングライト れぞれのコスト比較です。 新成長戦略とエネルギー基本計画 電気冷蔵庫 れました。ご存知のように日本は資源小国ですが、省エネ 2009年 その他 ビデオテープ レコーダー 43.1% 0.6% 技術に関しては世界最高水準の技術を持っています。 DVDレコーダー 環境関連技術を武器にしたグリーン・イノベーション大国へ ネットワーク機器1.1% 4,618 約 [kWh/世帯] 世帯あたり 電気使用量 ダウンライト (廊下・ トイレ等で使用) 力消費量が大きいので5ヶ月程度でLED に逆転されます。 14.2% 2010 年 6月に、「新成長戦略」でグリーン・イノベーショ ンによる環境・エネルギー大国を目指すことが閣議決定さ ベースライト (オフィス等で使用) 白熱電球は、電球が安価なため初期投資は少額ですが電 照明器具 白熱電球・電球形蛍光ランプ・LED電球のコスト比較 13.4% テレビ 8.9% エアコン7.4% 電気便座3.7% 電子計算機2.5% ジャー炊飯器2.3% 電子レンジ1.8% 1.0% 出展:資源エネルギー庁 の道筋は、日本が更なる発展を遂げるための成長戦略で 防犯灯 (円) 10000 LEDランプは、電球形と直管タイプに分類されます。 『白熱電球』 と 『LED電球』 →約5か月 (820時間) 程度でコスト逆転 LED電球 白熱電球 (購入価格) 2000円 電球形LEDランプの口金は既設の口金に使用できますの 『電球形蛍光ランプ』 と 『LED電球』 →約3年 (6000時間) 程度でコスト逆転 LED照明の分類 ── LEDランプ 5000 既設の従来型照明器具を活用し、光源部分 (白熱電球、蛍光灯) をLEDに置き 換えることを目的としたもの。 電球形蛍光ランプ 電球形 蛍光ランプ (購入価格) 800円 でそのまま交換することが可能です。 す。 ました。 成長戦略の中には、太陽光・風力・小水力などの再生 LEDの発光効率(注 1)は近年飛躍的に向上して、白熱 可能エネルギーの普及拡大から家庭用高効率給湯器の全 電球の6 倍、蛍光ランプの1.3 倍、将来的には蛍光ランプ 世帯への普及など幅広く盛り込まれていますが、大幅な省 の2 倍程度まで可能と考えられています。 エネ性能の向上が見込まれるLED照明や有機EL照明の 下図はLEDランプと白熱電球の発熱比較で、ほぼ同じ光 高効率次世代照明を2020 年までにフローで100%普及さ 量のランプを比較していますが、 LEDランプは、白熱電球 LEDランプは、3 年で電球形蛍光ランプをコスト面で逆転し せる目標を立てています。 の1/6の消費電力量です。発光面温度は、ランプトップ面 て10 年で2,500 円程度の差がでます。 また、2012 年 7月に閣議決定された「日本再生戦略」では、 はほぼ室温と同じですが白熱電球は80℃と非常に高いの 1日の点灯時間を5∼6 時間と想定して年間 2,000 時間、電 2020 年までに公的設備・施設の照明はLED等高効率照 が見て取れます。 気代 22/kWhで計算してありますが、点灯時間が長時間 直管LEDランプは、 LED専用の口金のものと既設の蛍光灯 明の導入率 100%の方針が示されています。 LEDと白熱電球の発熱比較 の場合や電気代が上昇すれば更に効果が大きくなります。 照明器具に取付け可能なものがあります。 これらからLEDランプの優位性を整理すると 既設の蛍光灯照明器具に取り付ける場合は、そのまま取 高効率次世代照明の現状 白熱電球 (810lm(注2), 54W) LED電球 (810lm, 9W) (3分間点灯後) 右上図は家庭における消費電力量を現しており、最大 80℃ 発光温度 は冷蔵庫で14.2%、次に照明器具の 13.4%となっておりま す。このような状況から、照明器具の消費電力量を抑制 110℃ 側面温度 26℃ (室内と ほぼ同じ) 55℃ LEDは発熱量が少なく、 空調の効率化に節電に寄与 してきています。 エジソンが白熱電球を実用化してから約 130 年、蛍光ラン 次の表は、白熱電球、電球形蛍光ランプ及びLEDランプ (注1) エネルギー効率 広義には投入したエネルギーに対して回収できるエネルギーとの比をさす。 54Wの白熱電球は810 lmの光束がありますので、 エネルギー効率は810 lm÷54 W=15となります。 数値が高いほどエネルギー効率が良くLED電球は白熱電球の6倍になります。 を表すものでlmという単位で表します。 (注2) lm(ルーメン) 光源から出る可視光線の量(光束) 12 電気と保安 2 013 年 5・6月号 白熱電球 (購入価格) 0 10000 100円 ※年間点灯時間:2000時間 20000 (時間) 直管蛍光灯形LEDランプ 既設の白熱電球とそのまま交換する 既設の蛍光灯は安定器を使用してい ことが可能。 るため、安定器を切断するなど、既設照 明器具を改造したり、器具ごと交換する ものが多い。 ※電気代:22円/kWh ※消費電力:白熱電球54W、電球形蛍光ランプ12W、LED電球9W LED専用の口金 (電球工業会が規格策定) のもの 既設の蛍光灯と同一の口金のもの。 電気の消費量が少なく省エネ・省マネー 付ける場合と安定器を切断したりして改造する場合があり ランプの購入金額は高いが長寿命につき安価となる ます。 長寿命につき取替えが困難な高所設置に適している LEDランプや電球形蛍光ランプは、発光面温度が低 く空調効率がよい。 することは、きわめて重要であり次世代照明の必要性も増 プが普及して約 60 年。21 世紀の灯りとしてLEDが登場し 電球形LED (LED電球) LED電球 『白熱電球』 と 『電球形蛍光ランプ』 →約4か月半 (750時間) 程度でコスト逆転 などの利点があります。 LED照明の分類 蛍光灯照明器具の仕組み 従来の蛍光灯照明器具の仕組みには、始動及び点灯 方式の違いにより、幾つかのタイプがあり、整理をすると次 のようになります。 A スタータ式蛍光灯照明器具 LED照明器具は、右上図のようなシーリングライトのよう 次頁図のように点灯管が付いていて、この点灯管が先 に、器具と光源が一体化したもので従来の照明器具のよう に動作して蛍光灯ランプが点灯するタイプ。 にランプの交換は前提としていません。 スイッチを入れてから蛍光ランプが点灯するまで、タイム 2 013 年 5・6月号 電気と保安 13 直管LED照明の現状について 特集2 ラグが生じる弱点があります。 蛍光灯器具 の仕組み LED 照明器具 の仕組み AC100V 点灯管 安定器 LEDモジュール LED 管 フィラメント AC100V B ラピッドスタート式蛍光灯照明器具 AC100V いため、日本電球工業会などが安全かつ品質・性能の優 あります。 れたLED製品の普及の為にLED照明の製品や性能評価 なお、既設の蛍光灯照明器具に取付ける場合は次の点に 方法などの標準化に取り組んでいます。 注意が必要です。 これらの現状を踏まえて、特に直管蛍光ランプを代替する 直管LEDランプの性能が不十分であると日常生活の安全 ①LEDランプ両端に交流 100V が加わる。 とLEDランプの併用不可。 性や作業性を損なう危険性があるため、 LED光源の性能を ②ランプに内蔵した制御装置で、交流 100V から直流 24V 器具の改造などは、火災や漏電の原因になることが 確保するための要求項目の制定への動きがあります。 ありますのでメーカーと相談の上実施。 性能項目に対する要求項目は次のような内容となっています。 に変換する。 ランプ効率 を止め、安定器とランプの専用設計によって、すぐに点 ③直流がLEDランプに流れ発光する。 従前の器具に安定器を接続せず LEDランプを使用し 灯するように改善したものです。 この原理を受けて次のタイプに分類されます。 た器具には、従来の蛍光ランプの使用は絶対に不可。 A 両側両ピン電圧印加方式は、蛍光ランプの片側の両 安定器が接続されたままの場合、安定器に不具合が ランプ効率の試験方法を全光束測定方法(注 4)や消費 インバータ回路を採用して、高周波点灯させるもので、 方のピンにプラス電圧、もう片側の両方のピンにマイ 発生してもそのまま点灯している可能性ある。 電力の測定方法の基準を定める。 発光効率(1ワット当りの明るさ)が高く、ちらつきがない ナス電圧を印加する方法です。 のが特長です。また、スイッチを入れるとすぐ点灯します。 交換工事には、安定器を外す必要があります。 C インバータ式蛍光灯照明器具 A 及び B 方式と比較すると、明るく、調光(光量を調節) 出来るタイプもあり、省エネにも効果的です。 1 灯用 AC100V/AC200V いずれのタイプも安定器を使用しており、交流電源で発光 B します。 直管 LEDランプを使用した LED 照明器具の仕組み 幾つかのタイプがあり、整理すると次のようになります。 蛍光ランプと同じG13 口金・ソケットを持つもので、 片側電圧印加方式は、蛍光ランプの片側のピンにそ するもので、器具改造を伴うタイプ。 A-2 蛍光灯照明器具にそのまま装着し使用するも ので、器具改造を伴わないタイプ。 LED 専用の新規口金・ソケットを持つタイプ B-1 GX16t-5 口金・ソケット及び LED 専用の制御 装置をもつタイプ。 B-2 R4 口金・ソケット及び LED 専用の制御装置を 持つタイプ。 以下に、A-1タイプ(交流電源直結タイプ)について紹介 定格寿命は40,000 時間以上であって、定格寿命の1/4 安定器が完全に壊れた場合、LEDランプは正常でも の点灯時間における光束維持率(注 5)が 91.5%以上で 点灯しない。 あること。 工事不要型の LEDランプにも、様々な種類があり、既存 の蛍光灯器具に適応できるタイプもさまざまです。 安全性 安全性はJEL801 規格(注 6)またはJEL802の規格に適 スタータ形・ラピッドスタート形のみ適応 などのほか光源色の区分、演色性や試験の実施主体など ランプの装着には方向性があります。 インバータ形のみ適応 この規程の安全性のポイントについて、規定する内容を見 1 灯用 合すること。 適応違いのタイプを使用すると事故の可能性があります、 るとランプの口金の接着強度や誤使用による不安全の回避 これらの事故防止には、適応可能な蛍光灯照明器具を使 として、新口金(GX16t−5)の採用。 用する必要があります。 AC100V/AC200V C 商務情報政策局 山岡課長補佐 両側片ピン電圧印加方式は、蛍光ランプの片側の1 ピンにプラス電圧、もう片側の1ピンにマイナス電圧を 印加する方法です。 給電側 1 灯用 接地側 また、温度変化による長さの変化や“たわみ”によるラン AC100V/AC200V 直管形 LEDランプへの変更工事には、それぞれのランプ タイプに適した工事を行う必要があります。 LEDランプへの交換 LED 照明器具を取付けて、LEDランプへ交換する方 このタイプのLED 照明器具は電源スイッチをいれると次の 法のほかに、既設の蛍光灯照明器具内部にある安定器 ような順で発光します。 を取り外してLED 照明器具に適した配線に変更する工事 が必要なのが一般的です。また、この変更工事をしなくて 2 013 年 5・6月号 つく可能性あり。 交換工事には、安定器を外す必要があります。また、 します。 電気と保安 寿命 スタータ形のみ適応 既設の蛍光灯照明器具に取付けるタイプ。 A-1 既設の安定器を外し、ランプに交流電源を直結 そのため故障に気がつかずに使用し続け事故に結び ランプ効率が 80(lm/W)(注 3)以上であること れぞれ+−の電圧を印加する方法です。 このタイプには電源外付けの方式もあります。 現在、直管 LEDランプを使用したLED 照明器具には、 14 も、今の安定器を接続したままで使用できるLEDランプも 2 灯式及び 3 灯式の器具の場合は従前の蛍光ランプ A方式は点灯に時間がかかるため、点灯管による点灯 B + DC24V 交流から直流へ − 蛍光灯 フィラメント A 電源装置 LED光源の性能要求指針 現状のLEDランプはJ IS規格によって仕様規定されていな プの落下防止として、ランプの形状変化の制限値を規定。 これらについて定めた「高品質照明用LED光源における 性能要求指針(案)」が制定される予定です。 光源の効率を表すもので、消費電力1Wあたりどれくらいの量の光が出るのかを表す効率の単位です。数値が高いほど省エネということになります。 たとえば、従来の 40W蛍光ランプでは3000lmが得られるため、1Wでは 3000lm÷40W =75lm/W 40Wの白熱電球では500lmが得られるので1Wでは 500lm÷40W =12.5lm/W となります。同じ40Wならば蛍光ランプの方が数値が高いため効率が良いと言えます。 光束とは、放射束(光の物理エネルギー量) を人間の目の感度である分光視感効率と最大視感効果度に基づいて評価した値です。全光束とは、光源から全ての方 (注4) 全光束 向に発される光束のことで、 ランプや照明器具の明るさの尺度として使用され、単位はlmになります。光の量をあらわす単語としまして「照度」や「輝度」があります。 こ の「度」 という漢字が入りますが、 これは、方向性があるということを示しています。従い、全光束は方向性の概念がないものになります。光源の全光束を測定する方式 としまして、積分球方式と配光測定方式の2通りがあります。 (光束) は、点灯時間の経過に伴って減退する。 この光束減退の程度が経過時間に伴って初期の値がどの程度に維持されているかを示す割合です。 (注5) 光束維持率 ランプの明るさ (注6) JEL801規格 日本の大手ランプメーカーが参加している業界団体「日本電球工業会」が制定した規格。 既設の蛍光ランプを使用していた照明器具を流用できる直管LEDランプは、価格の安さで人気ですが、照明器具の改造を必要とする場合があります。 しかも改造方 法はメーカーによって異なる。蛍光ランプと各直管LEDランプの相互の誤使用による不安全性を問題視した業界団体が作った直管LEDランプシステムの統一規格 が「JEL 801」です。 (注3) lm/W 2 013 年 5・6月号 電気と保安 15
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