中国語学習のための基礎知識

中国語学習のための基礎知識
ー 社会生活編ー
動物に対するイメージも国や地域によって違ってく
る。それは、その国や地域の歴史、風土などによって形
作られてきたものだ。そういう従来あったイメージに、
現在では絵本、漫画、アニメ、さらにメディアの影響も
無視できない。中国では長い歴史のなか、動物に対して
独自のイメージを築いてきた。その代表的ないくつかを
見てみよう。
◆ 縁起のよい動物
コウモリ、“蝙蝠” biãnfú 。“蝠”
が「福」と通ずることから縁起の
よい動物になった。典型的には皇
后が着用する礼服のひとつ “朝袍”
cháopáo には紅色のコウモリ、いわ
ゆる“红蝠” hóngfú 、赤いコウモリ
が描かれているが、これが “洪福 ”
hóngfú と通ずることによって、大きな幸せを意味する。
オシドリ、“鸳鸯” yuãnyãng。仲の良い夫婦をたとえる
言葉で、枕カバーなど新婚の祝いの品によく使われる図
案だ。
カカサギ、“喜鹊” xœquè。その名の如く、朗報を知ら
せてくれる鳥として、よ
く絵の題材になる。とく
に朝 “喜鹊” が枝にとまっ
て鳴くと、その日何かよ
いことが起ると信じられ
ている。
龍、“龙” lóng。想像上の動物だが皇帝専用に使われた
ことで、“天子” tiãnzœ のイメージと重なり縁起がよい。
“二月二龙抬头” èryuè èr lóng táitóu という諺があり、春
を迎え農事がスタートする活気に溢れる旧暦のこの時期
に散髪に行く習慣が残っている。2000年の時は “千禧年”
qiãnxœniánと称され、閏年でもあり“龙年” lóngniánであっ
たため、中国で大量に子どもが生まれたことはまだ記憶
に新しい。またロンドン五輪では選手のユニホームは赤
地に黄色い龍の図案で,中国の “好龙” hào lóng(龍好き)
を物語っている。
◆ 縁起がよくない動物
カラス “乌鸦” wÆyã、黒猫 “黑猫” hëimão は色のイメー
ジから嫌われる。とくに早朝に遭遇すると一日中不運だ
と言われる。
“虎” hŒ、“狮子” shïzi。凶暴なイメージがあるため、“凶”
xiõng をもたらす恐れがあり商売繁盛を願う場には相応し
くない。これらの動物が描かれている絵をビジネス相手
に贈ったり自分の部屋に飾るなどはご法度とされる。
◆ 身近な動物のイメージ
“狗” göu :ペットとしては強い人気を誇るが、中国語
Topics
動物のイメージ
の言い回しの中では必ずしもよいイメージがあるとは言
えない。例えば:
“走狗” zöugöu=悪人の手先。
“落水狗” luòshuœgöu=水中に落ちた犬、失脚した悪人
の喩え。
“疯狗” fënggöu=狂った犬、けんかをして相手に食っ
てかかるような気勢の喩え。
“鸡鸣狗盗” jïmínggöudào=つまらない技能、ちょっと
した技術を持っている人の喩え。
“狼心狗肺” lángxïngöufèi=残忍非道で、恩知らずな人
の喩え。
ウサギ、“小兔子” xiäo tùzi は純粋で
かわいいイメージがある。中国では知
らない人がいない国産アニメ《雪孩
子》xuå háizi のなかに登場する。おか
あさんの “兔妈妈”tù mãmaと一緒に暮
らし、話をよく聞くよい子である。
一方 “狡兔三窟” jiäotù sãn kÆ(ずるい
ウサギは三つの巣をもっている)という成
語もあり,あらかじめ逃げ道を用意しておく喩えになっ
ている。“兔子不吃窝边草” tùzi bù chï wõ biãn cäo(ウサ
ギは巣のまわりの草を食べない) は悪人も自分の隣人には
悪いことをしない意だし,“兔子尾巴长不了” tùzi wåiba
chángbùliäo (ウサギのしっぽ→長くない,短い)は長続きし
ない喩えになっている。
ずるいというイメージをもつ動物は他には “鼠” shŒが
あり、都合が悪いと逃げてしまうとか、讒言を告げる
小人のことを喩えるのにも使われる。成語 “獐头鼠目”
zhãngtóushŒmù は,鼠の目が小さくて丸いことから醜く
ずるい顔つきの喩えになっている。
“牛” niú については“老黄牛” läohuángniú は「こつこつ
と働き人民に奉仕する人」の喩えである。反面、“牛脾
气” niúpíqiというと「頑固で強情な性質」を表す。また
“钻牛角尖” zuãn niújiäojiãn は「つまらない小さな問題を
議論する」といった意味になる。
また“啄木鸟” zhuómùniäo(キツツキ)は木の中の害虫を
駆除することから,“森林医生” sënlín yïshëng(森のお医者
さん)の異名がある。
最後に十二支のなかのイノシシだ
が,中国では“猪” zhÆ といい「イノシ
シ」ではなく「ブタ」になる。“猪”
は太っていてなまけものというイ
メージがあり,嫌われ気味だったが、最近は金運がよい
とされ,ぽっちゃりしたかわいい形の貯金箱をうちに飾
ることが多い。イメージの良し悪しは時代の流れともか
かわっていると言えそうだ。
2012© ASAHI e-text 編集委員