2009年度 HDD業界展望 堀内義章 ストレージアナリスト IDEMA JAPAN 協賛会員・HORI Technology Office 1 はじめに サブプライムローンに始まった米国発の金融危機は、全世界に波及し、11 月以降急激に米国の生命保険、証券会 社、自動車ビッグ 3(GM、クライスラー、フォード)の破綻、購買力の低下、好調だった IT 業界、携帯電話業界 がシュリンク状態になり、加えて円高(対ドルとユーロ)により、急激に市場が回らなくなった。特に完成品から 裾の広い部品に至るまで、米国に依存していないと言いながら、EU、中国、日本、アジアの各国々が生産減になり、 一挙に不況のどん底に陥った。今までは、ストレージ業界のみを追っていたが、経済活動を無視できなくなり、今 回は、筆者の専門外ではあるが、発表された資料をもとに経済の見通しの見解を示し、2009 年度の HDD 業界と今 後について展望してみる。 2 世界の経済状況と対策 米国に依存していないと言いながら、米国が不況になると一挙に購買力が落ち、世界各地から米国向けに輸出し ていた製品にストップがかかり、あっという間に全世界の製造業が麻痺した。特に日本は、その基幹となる重要部 品を製造しており、数量がかさむだけに、あの好調な日本電産や TDK なども 09 年 3 月期の下方修正決算の発表(純 利益が黒字から赤字へ)およびリストラや賃金のカット、ワークシェアリングなどによりこの場をしのぐ政策が出 されている。表1の GDP(国民総生産)でも分かるように、確かに GDP の米国依存度は、1985 年に比べると 10% 程減少しているが、それでもまだ世界の 4 分の 1 は、人口約 3 億人(世界人口は 64 億人)の米国が背負っている。その為に、 表1 主要国の1985年と2007年の GDP 比較(資料:IMF) 国家の基幹となる銀行や証券会社、生命保険が破綻すると、そ 1985 年 2007 年 米国 35.8 25.6 EU 17.9 22.5 果となり、いち早い米国の立ち直りに期待したいが、 現状では、 日本 11.6 8.1 サブプライムローン問題は根が深く、また自動車業界ビッグ3 中国 2.6 6.0 英国 3.8 5.1 ブラジル 1.9 2.4 ロシア ― 2.4 インド 1.8 2.1 の屋台骨が揺らぎ、不安のどん底に陥る。 結局、米国が立ち直らなければ世界全体の製品が回らない結 や銀行、証券会社の経営破綻で、そう簡単に行かないのが現状 である。幸いなことに、この 1 月 20 日に、次期大統領のオバマ 氏が、米国市民の 80%以上の支持を得て就任するので、それに かける期待度は大きい。既に就任前から人事を発表し、自動車 ビッグ 3 への支援、また、世界的には、中国や EU、など主要 国が、金融への大幅支援策、金利の下げなどを行い、100 年に 1 度と言われる大不況に世界的規模で対応がなされ てきている。また、表 2 は、世界の経済成長率(GDP)の予測であるが、残念ながら先進国は、ほぼマイナス成長 となっているが、新興国・途上国は、成長は落ちるものの、プラス成長であり、その意味では、この 2009 年を底に、 2010 年以降は、急上昇するものと予測される。ただ日本の企業にとって困ることは、円高(対ドル、対ユーロ)で ある。輸出産業であるだけに企業にとっては、1㌦で 20 億~40 億円の売上高や純利益に影響を及ぼす(09 年 1 月 13 日現在、1㌦=89 円台、1ユーロ=118 円台) 。逆に消費者は、輸入品の物価が安くなるので歓迎だが、企業の 立場と消費者の立場は異なるので致し返しである。 1 IDEMA Japan News Vol.88 表2 世界の経済成長率(GDP)予測(資料:IMF) そこで、 今後の世界経済の見通しとしては、 筆者なりに判断すると、 年度 国・地域 ① ② 米国のオバマ次期大統領の思い切った 経済政策で、米国の銀行や証券、自動 車業界の救済と経済の活性化による雇 用の拡大失業率の低下への期待度。と にかく現状では、米国が活性化しない と世界の立ち直りは、難しいこと。 世界の主要国が国の政策として、公的 資金の投入を惜しまない政策を打ち出 し、また雇用対策や金融緩和により、 企業が比較的動きやすい環境を作り出 していること。 中国は、これまでの二桁成長から、1 桁成長に落ちるが、それでも国策とし て、国内生産で 8%の経済成長率のベ ースを立てており、上海万博を考える と、まだ高度の経済成長は期待できる こと。特に内需拡大に 2 年間で 4 兆元 (約 57 兆円)の投資を行う施策を打ち 出していること。 ④ IT 化関連は、その投資が延期や中止で 減少しているが、現状が回復すれば情 報化社会は益々活発になっていくので、 現状は一時耐えざるを得ない。 07 年 08 年 09 年 実績 実績 見込み 予測 世界全体 5.1 5.0 3.7 2.2 先進国 3.0 2.6 1.4 ▼0.3 日本 2.4 2.1 0.5 ▼0.2 米国 2.8 2.0 1.4 ▼0.7 ユーロ圏 2.8 2.6 1.2 ▼0.5 英国 2.8 3.0 0.8 ▼1.3 その他 4.5 4.7 2.9 1.5 NIEs 5.6 5.4 3.9 2.1 7.9 8.0 6.6 5.1 9.8 10.0 8.3 7.1 中国 11.6 11.9 9.7 8.5 インド 9.8 9.3 7.8 6.3 ASEAN-5 5.7 6.3 5.4 4.2 アフリカ 6.1 6.1 5.2 4.7 中東欧 6.7 5.7 4.2 2.5 CIS 8.2 8.2 6.9 3.2 ロシア 7.4 8.1 6.8 3.5 中東 5.7 6.0 6.1 5.3 中南米 5.5 5.6 4.5 2.5 ブラジル 3.8 5.4 5.2 3.0 新興・途上国 アジア ③ 06 年 ⑤ 企業の決算が、各社下方修正や赤字決算が発表され、また非正規社員の契約打ち切りや正社員の一部 解雇などが続き、失業率も増加しているが、政府はこれらのセーフティーネットを構築することが必 要。 ⑥ 企業は、今回は一企業だけでは不可抗力であり、これを機会に現状での企業体質の見直しとスリム化 を実施し、来るべき回復時の急激な生産立ち上げに対応できるような企業内強化を行うこと。 などが挙げられる。 3 HDDのトレンド 好調に推移していた HDD 業界もこの経済 不況のあおりを受けて、IT 関連の製品受注が 減少し、また主要製品であるパソコンや IT 投資、携帯電話、自動車などが生産調整に入 り、それに付随した日本の強みである部品メ ーカーにも大きく影響している。各社 HDD の調査会社は、大きく今後 HDD のトレンド を下方修正している。今後の HDD 業界のト レンドは、予測が難しいが、大きな流れとし 図1 インチ別 HDD のトレンド 2 IDEMA Japan News Vol.88 ては、08Q4(10~12 月)~09 年 Q1(1 月~3 月) 、Q2(4~6 月)は、前期比マイナスの傾向で、08 年度の見込み は 5 億 4,892 万台(前年比9.5%増)に留まる。09Q3(7~9 月)~Q4(10~12 月)で、前年並みに近づき、10 年 から徐々に立ち直る動きとなると予測する。従ってトータル的には、09 年度は、前年比 8.5%増の 5 億 9,585 万台で、 10 年で回復基調(10.7%増)の流れである。図 1 に HDD のタイプ別トレンドを示す。後退はしないが、成長率は 低くなっている。 4 HDD業界の動向 HDD の業界の動きや新製品は、生きもので日にちを得るに従って内容が変化してくる。今回は、2009 年 1 月 14 日現在での大きな動きと近々に発生した製品または動向を示している。やはり話題は、企業の統廃合、買収や経済 不況による 09 年 3 月期の決算の下方修正、従業員のリストラ(非正規社員、正社員) 、設備投資の延期または中止 などである。また、SSD に台頭により、各製品の中身も容量帯によって変化し、HDD と SSD の互換性のある製品 やハイブリット化などが出て来ている。また、サーバー系にも SSD がハイブリットで入りはじめ、一時の情報蓄積 には SSD、そして大容量の HDD へ保存のスタイルができつつある。また、大量に生産されているデジタル音楽プ レーヤーのような役割を果たすのが、リムーバブル HDD である iVDR や PDA タイプの携帯電話、ワンセグビデオ レコーダー、映像を含めた UMPC などが挙げられ、現状では、世界の経済の収縮により消費が控えられているが、 情報量は益々膨大になっていく世界であり、今年1年我慢すれば 2010 年以降は、大きく飛躍すると思われるので、 今年は、企業体質強化と飛躍へのパワーの蓄積の1年になるだろうと思われる。以下に、企業の統廃合・買収、HDD 業界の話題、部品業界の話題、新製品関係の動きを示す。 4-1 企業の統廃合・買収 ① Western Digital の富士通買収の話は、結果的には両者が折り合わず、東芝との話が急浮上し、買収 交渉に入った。早ければ、本年 1 月末に合意を得られる方向。買収金額は明らかにっていないが、数 百億円の見込み。富士通のタイ工場とフィリッピン工場の2工場、山形富士通の開発部門が対象で、 HDD 部品を生産する長野工場や山形富士通の HDD 生産部門は除外の方向。媒体部門(ディスク)は、 昭和電工へ打診中。 ② 東芝は、富士通の HDD 部門に興味ありとの発言。また、サンディスク買収の話から、共同メモリ設備 の一部購入(三重県の四日市工場) 。10 年には HDD の代替に SSD 使用を積極的に進めている(4 万個/ M→60 万個/M)。 ③ 欧州の富士通シーメンスの合弁解消(シーメンスのパソコン事業の撤退により)による、富士通が株 式を買い取り(シーメンス全株取得で約 630 億円) 。富士通のパソコン生産の 890 万台中の 600 万台を 占める 。しかし、富士通の買収がなされると、この分野も支配会社が異なってくる可能性がある。 ④ Samsung 電子のサンディスク買収の仕掛け。サンディスクは、評価が低いと拒否。これにより、Samsung 電子も買収撤回を発表。ただし、サンディスクも NAND 型フラッシュメモリは、経営的に苦戦。 ⑤ レノボ(中国)が複数のパソコンメーカーの買収にアプローチしており、併せて、現在、デルと競っ てブラジルのパソコンベンダーである Positivo Informatica(08Q3 の出荷台数ベースの市場シェアは 13.2%)の買収へアプローチ中。 ⑥ パナソニックの三洋電機の買収と子会社化。電機業界の大型合併で、電機業界では、日立製作所に次 ぐ売上高規模となる。ただし、業種が同じなため、相当に製品の整理と人員整理が行われるものと思 われる。三洋電機の強みは、エネルギー関係と部品関係(コンデンサー、光ピックアップ、空調関係 など) 。 3 IDEMA Japan News Vol.88 4-2 HDD業界の話題 ① 日立 GST は、IBM から 03 年に買収以来、09 年 3 月期で初めて、HDD で営業黒字 200 億円を見込むが、 11 月からの急激な世界的不況と円高で、この決算は厳しいものになろう。 ② Seagate が 08Q4 を下方修正し、リストラの発表のあり。また Western Digital も 08Q4 の下方修正し、 リストラと工場の一部閉鎖、設備投資の縮小を発表。 ③ 東芝も半導体等の不振により、09 年3月期の収益は、赤字決算の見込み。また、同社は、HDD の静音 技術を開発し、読み書きに騒音を 10~20%削減。12 月に量産を開始している 2.5 型「MK2555GSX」な どに採用。新技術のポイントは、磁気ヘッドを納めた部品である HGA を制御するソフトで、HGA が HDD 上を移動する際に自らの位置を推定できるようになった。 ④ 部品メーカーも、08Q4(10~12 月)は、受注が大幅に落ち、09 年以降の HDD の生産に大幅なマイナス が見込まれている。それに伴い、09 年 3 月期の決算に下方修正の発表が相次ぐ。 ⑤ 08Q3(7~9 月)の世界のパソコン出荷台数統計(米調査会社アイサプライまとめ)によると、ノート 型(3,860 万台<前同期比 40%増>)の出荷台数がデスクトップ型(3,850 万台<同 1.3%減>)を始 めて上回ったと発表。ノート型は低価格化が急速に進み、世界的な売れ筋となっているのが、約 500 ㌦以下の機種で、画面は 9 インチ程度。パソコン全体の瀬シェアは、HP は 18.8%、デルが 13.9%、 エイサー(宏碁)が 12.3%。 ⑥ Seagate の CEO であるビル・ワトキンス氏(56)が、CEO を交代(2009 年 1 月 12 日付) 。後任には、 スティーブ・ルソー会長(51)が会長・社長兼 CEO に就任。また、デビッド・ウィッカーシャム最高 執行責任者も同日退任。 4-3 部品業界の話題 ① 昭和電工は、HOYA とハードディスク事業を統合。 09 年 1 月中に共同出資の新会社を設立し、事業を 移管。出資比率は昭和電工:HOYA=75:25。なお、HOYA のガラス基板事業は本体に残す。今後、3.5 インチ HDD から 2.5 インチ HDD へのシフトに伴い、研究開発等の共同化が大きな狙い。 ② 富士電機デバイステクノロジーは、磁気ディスクの生産体制を再編。年内に国内 2 事業部の生産を縮 小し、設備も含めてマレーシアへ(キャパは1千万枚/M)移管。松本事業所(長野)のディスク事業 停止、研究開発・設備、人員は山梨事業所(アルプス市)へ。また、ECC 媒体の生産開始 。ただし、 やはり研究開発部門は松本事業所へ残す方向。 ③ HOYA は、中国の HDD 用ガラス基板事業を買収(東洋鋼鈑と丸紅の共同出資する投資会社) 。なお、Kaifa 社(中国)分は、そのまま残す。 ④ 古川電工がガラス基板に参入。設備投資 20 億円。キャパは、08 年は 100 万枚/M、09 年は 250 万枚/ M、10 年は 500 万枚/M の計画 。本来、古川電工は、アルミ基板のブランク材のみを生産していたが、 3.5 インチ HDD から 2.5 インチ HDD へのシフトが始まり、2010~11 年には 2.5 インチ以下が増えるの で、ガラス基板が中心になり、その対策。 ⑤ 日本電産は、中国・蘇州の子会社へ HDD のベースプレートの新工場建設(第 1 期の投資金額 30 億円) 。 ダイキャストからの一貫生産で、キャパは 200 万台/M(09 年4月稼働) 、400 万台/M(10 年 9 月末) 、 第 3 期で 11 千万枚/M。HDD のベースプレートの内製化で、モーターシェアの更なる拡大を狙う。 ⑥ ニッパツのサスペンション事業は、富士通には全面納入しているため、富士通の買収先によっては、 販売先を失うので、その動きには注目。また、09 年春にタイ工場で増産。10 年には、キャパを 2.4 倍へ(現状のキャパは 4,700 万個/M) 。投資金額 53 億円。07 年度(8 億 8 千万個)のサスペンション のシェアは、ハッチンソン~45%、ニッパツ~31%、 TDK(Magnecomp)~21%、サンコール~3% 。 4 IDEMA Japan News Vol.88 ⑦ NOK(日東電工)は、タイに HDD 用基板(サスペンションのヘッドスラーダーと回路を繋ぐフレキシブル 基板)の新工場。投資金額は約 45 億円。生産拠点4ヵ所(日本、タイ、台湾、中国)での一貫生産体 制。シェアが 50% 。 ⑧ アルプス電気は,水冷方式のノート PC に向けた圧電ポンプ(ピエゾ・ポンプ)の量産品「30 型」を 開発。2008 年 12 月の量産開始予定。 グリーンITで、PCの冷却による省エネの一貫。 ⑨ TDK は、Seagate へハイエンドのヘッド納入開始(富士電機のメディア使用)。また、中国の自動化・ 省力化により大幅人員削減。 ⑩ Seagate、Western Digital がヘッドウエファーの大きさにφ8 インチを使用。ウエファーの基盤材は、 京セラ製(セラミック)は TDK と富士通、日立金属製(アルティク)は、Seagate、Western Digital。 4-4 新製品関係 ① 昭和電工は、1.8 インチ HDD 用(1.89 インチ)媒体で 120GB/枚の量産を開始。80GB 用媒体の磁気層 に改良を加えたもの(ECC 媒体採用)。さらに 2.5 インチで 250GB/枚(垂直磁気媒体)の量産開始。 3.5 インチで 500GB/枚も準備中。 ② Seagate は 3.5 インチ HDD で、500GB/枚(面記録密度 329Gb/in2)を発表。 ③ パナソニックは、動画有効画素数が世界最高(1,060 万画素)のビデオカメラ 「HDC-HS300(120GB)」 (16 万円前後)および高性能とコンパクト化した SD/HDD ビデオカメラ「SDR-H80(60GB)」 (オープン) を 2 月 5 日から発売。 ④ 工人舎は、ウルトラモバイル PC で新しく 8.9 型液晶「ML6KL12F(120GB)」 (5 万 9,800 円)を発売開 始。B5 ノートサイズで、重さは.108kg、駆動時間は約 4.7 時間。 ⑤ NEC は、ノート PC「ラビィ L LL 750(320GB)」 (17 万 5 千円前後)を販売。デジカメのメモリカード を差し込むと自動的にスライド形式で表示。 ⑥ 大和ハウス工業は、TOTO と共同開発し、尿の成分や温度、体重などを自動的に測定・分析して健康状 態が確認できる「インテリジェンストイレⅡ」 (1畳タイプで税別 47~65 万円で程度)を発売。6週 間分のデータがトイレ内の表示パネルで確認できる他、無線で別室のパソコンに転送し、月単位や年 単位で健康状態の変化グラフ化する機能もある。 ⑦ 米アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」が酒気帯び検知器を搭載。米国で販売され話題を呼んでい る。息を吹きかけて、基準値以上のアルコールを検出すると、液晶画面で警告を発する応用機器「iBreath」 (79 ㌦)。日本での販売も検討。また iPod の下部に差し込んで使用する。多機能型携帯電話機にも対 応。 ⑧ EMC ジャパンは、ローソン(9,400 店舗、1 日平均 800 万人が来店、購入金額は約 6,900 万円)が現在 構築中の次世代 IT システムで、中核となる IT センター基盤へストレージ・ソリューションを導入し、 システムの全体最適化に取り組む。08 年 12 月より順次導入開始。ポイントの交換システム切り替え、 KIOSK 端末「Loppi」や POS レジの一新などを、この 1 月より段階的に行っていく予定。 ⑨ NEC は、米ユニシスからメインフレーム(大型汎用機)などサーバー上位機種(国内価格は、500 万円 以上の製品)の開発・生産を全面的に受託。2009 年以降は、すべて OEM 供給する。生産量の拡大で、 1台当たりの開発費用を抑制し、競争力を高める。 5 IDEMA Japan News Vol.88 5 面記録密度の今後の動き 昨年後半になって面記録密度が大幅に更新され、開発・実用化とも一気に増加した。特に、最近、フラッシュメ モリによる SSD(Solid State Silicon)の大容量化(128GB、256GB、512GB など)により、HDD に対しては、更な る大容量化(1TB/枚)の要望が強くなっている。技術開発の現状では、可能な範囲で、TMR-PMR の垂直磁気記 録技術で、1TB まで伸ばしていき、後は CPP-GMR、DTM(Discrete Track Media)や BPM(Bits Patterned Media) そして、HAMR(Heat Assist MR)等への方向へ進んでいる。以下に、現状で発表されている主な面記録密度の状況 を示し、図 2 に面記録密度の推移(開発と実用化)と表3にタイプ別容量の現状と目標について示す。 ① TDK は、 ディアに DTM(Discrete Track Media)を用い、業界最大の面記録密 度 803Gb/in2(1,771kBPI×454kTPI) を発表、および熱アシスト方式によ る1Tb/in2 の可能性の発表。光源 (レ ーザーダイオード)をインテグレー トした極低浮上対応の HGA を開発し、 集光されたレーザー光を磁極近傍か ら照射する。光導波路内に近接場光 発生素子を組み込むことで、50nm 幅 の最小光スポット生成に成功。 ② 日立製作所の現行の垂直磁気記録で、 612Gb/in2(1606kBPT/381kTPI)発 表。主に Graded 媒体と WAS(Wrap Around Shield)ヘッドの開発。1 Tb/in2 可能。 図2 面記録密度の開発と実用化の推移 ③ 東芝が、2.5 インチ HDD で、250GB/ P の発売と 1.8 インチ HDD の 120GB の量産開始(378.8Gb/in2) 。実用化 では、最大の面記録密度。 ④ 富士電機デバイステクノロジーは、 ECC 媒体出荷開始。 また 09 年中に DTM を用いて 2TB を生産導入予定。TDK はこの DTM 用磁気ヘッドの生産はい つでも OK とのこと。 表 3 タイプ別容量の現状と目標 発表・ インチ別 現状(GB) 導入方向(GB) 目標(GB) 1.3 インチ 30~40 80 120 1.8 インチ 120 200 250 2.5 インチ 250 320 500 3.5 インチ 500 716 1,000 ⑤ パイオニアが 3.6TB を可能な HDD 製造装置を開発。露光装置で必要な型である原盤を加工。その原盤 から金型を作り、磁気ディスクに押しつけ原盤表面の凹凸を再現。 6 コンシューマ応用製品の今後 コンシューマ応用製品では、既存の製品の殆どが HDD に置き換えられている。デジタル音楽プレーヤーみたい な数量が多く出る製品は、 あまりないがそれでも HDD&DVD レーコーダーや HDD 内蔵液晶インターネットテレビ、 ゲーム機器、STB など好調な製品も多い。これらを見てみると、 ・好調な機器・業種としては、ゲーム機器、監視カメラシステム、エネルギー関連、軽自動車、UMPC、 SSD、 データセンター、省エネ関連、電池関係、センサー関係、サーバー、外付け HDD ・陰りが見え出した機器・業種は、デスクトップ、普通乗用車、携帯電話、デジタルカメラ 6 IDEMA Japan News Vol.88 ・今後が期待できる機器・業種は、デジタルフォトフレーム、HDD 内蔵液晶テレビおよびインテーネット テレビ、iVDR カセット、パソコンを用いたインターネット診療・自己健康管理システム、ホームサーバ ー、各種サーバー、外付け HDD、海外旅行、 輸入製品、IDC(データセンター) 、グリーン IT、地球環境 ・今後の主な世界的な行事は、 ・2009 年~米国新大統領・民主党 オバマ氏 就任(1 月 20 日) 第 2 回 G20 金融サミット(4 月 20 日) ・2010 年~上海万博、ワールドカップサッカー(南アフリカ) ・2011 年~日本のアナログ放送終了(7 月 24 日) ・2012 年~ロンドン、夏期オリンピック ・2014 年~冬季オリンピック(ロシアのソチ)、 ~ワールドカップサッカー(南アメリカ・ブラジル) これらの行事を目標に、各種コンシューマ製品が開発されていくものと思われる。 7 HDDとSSDの問題点と今後の見通し フラッシュメモリの大容量化で、デジタル音楽プレーヤーやデジタルカメラ、そして HDD 互換の SSD も大容量 化製品が続々と登場していて、HDD の得意分野であるノート PC やサーバー、コンシューマ分野でも入り始めてい る。表4に SSD と HDD の特徴の比較を示す。フラッシュメモリの傾向としては、 フラッシュメモリ(NAND 型)価格が月毎に安くなっていること(1GB~480 円、2GB~680 円、4GB~980 円、8GB~1,680 円 、16GB~3,580 円) 表4 SSD と HDD の特徴の比較 SSD の HDD コンパチ製品が増えて来ていること (32GB、64GB、128GB、 256GB<出荷が始まる>、512GB 予定) サーバーや産業用にも一部入りはじめていること 放送機器関係では、サーバーやカメラ用として使用 PND 型カーナビ、音楽用、フォトフレーム等に使用中 問題点は、信頼性と寿命。現在、サンディスク等が寿命評価方法の 標準化への動き (◎特に優れる ○優れる △やや劣る ×劣る) SSD HDD 処理速度 ◎ ○ 容量 △ ◎ 消費電力 ◎ ○ 寿命 △ ○ 耐衝撃性 ◎ △ 軽計化 ◎ △ 価格 × ◎ 今後は、用途に応じて中容量は SSD(256GB) 、大容量は HDD へと棲み分けし、製品によっては、ハイブ リット使用となる 最近の製品の傾向としては ① 日立製作所の米国法人 Hitachi Data Systems(HDS) は、ディスクアレイ・サブシステム 「Hitachi Universal Storage Platform(USP)V」および「同 VM」に SSD を採用すると発表。73GB と 146GB の SSD を用い, 09 年第 Q1(1~3 月)より利用可能予定。 ② 初の SSD を採用した富士通製モバイルノート PC12.1 型液晶「FMV-BIBLO LOOX R/C70(SSD128GB)」(28 万円前後、重さ 1.27kg) 、FMV-BIBLO LOOX R/C50(HDD320GB)」(23 万円強、重さ 1.3Kg)を発売。 ③ 東芝が、512GB の 1.8/2.5 型多値 SSD を PC に搭載して 09 年 Q1(1~3 月)にサンプル出荷、Q2(4~ 6 月)に量産開始。多値 NAND を高速・並列動作させ、従来製品に比べてデータ処理速度を2倍以上高 速化した。容量は 64/128/256/512GB、読み出し速度 240Mbps、書き込み速度 200Mbps。 ④ グリーンハウスは、SSD「GH-SSDE64 GU-M(60GB) 」(2 万 2,800 円)を発売。書き込み速度は 18Mbps。 SSD の 32GB(1 万 2,800 円)も発売中。 7 IDEMA Japan News Vol.88 ⑤ ソニーは、インターネットが出来るデジタルカメラ・サイバーショット「DSC-G3(有効 1,010 万画素、 4GB メモリ) 」 (5 万 5 千円前後)を発表、1 月 16 日から発売。無線 RUN(Wi-Fi)通信機能とフルブラ ウザ(Net Front3.4)の搭載によりカメラ本体で写真・動画のアップロードや PC サイトの閲覧ができ る。 ⑥ フォトフレーム関連で、価格は 1 万円前後で各社から発売。撮影したデジカメ写真をパソコンがなく ても直ぐに見られるのが、特徴。メモリは 1~4GB。 ⑦ 米サンディスクは、世界最速の SSD(MLC)を発表。2.5 型「C25-G3」、1.8 型「C18-G3」 。SATAⅡインタ ーフェースで、容量は 60GB(149 ㌦)/120GB(249 ㌦)/249GB(499 ㌦)。連続読み込み速度 200Mbps、 書き込み速度 140Mbps。工場出荷から故障するまでの書き込みできるデータの総容量は 160TBW(テラ バイト・ライト)。一般的な使用で 10 年以上使用可能。新 SSD コントローラを集積。今年半ばにリリ ース開始予定。 8 まとめと今後の展望 経済の変動期で、業界の動きは絶えず変動している。今後の動きがどうなるかは予断を許さないが、今回の世界 不況は、企業経営の範囲を超えており、今年1年はじっくりと耐えながら、企業の体質強化をしていくしかない。 恐らく 2010 年には、上向きの傾向が出てくると思われので、そのための準備が期間。ユビキタスネットワーク社会 を迎えた IT 社会は、益々増加する情報量とペーパーレス社会を迎えるために、必要不可欠な大容量機器である HDD は、更に発展していくものと思われる。今後の展望としては、 ・ 2009 年度は、景気後退により、前半はマイナス成長で、2010 年から上昇機運になるとものと思われる。 HDD 業界も 2009 年度は前年比マイナスで、2010 年に前年以上の伸びになるものと思われる。 ・世界経済は、米国の立ち直り次第になっており、本年 1 月 20 日の次期オバマ大統領の就任による手腕よ っており、今の流れからすると、強力なリーダーシップが発揮されると予測している。 ・世界的にも各国協調して、金融支援や金利の利下げ、雇用対策、経済対策を打ち出しており、特に中国 は、2010 年に上海万博を控えているのと、内需で成長率 8%を確保しようとしており、その手腕に期待。 特に中間層が数億人いると言われているので。 ・製品関係は、ナンバー2 以内にシェアがないと生き残れない社会情勢になっているので、更に企業の統 廃合・買収は、継続して行われるものと思われる。 ・情報量の年々の増大により、サーバー系は益々小型・大容量になり、省エネを考えると 3.5 インチ HDD から 2.5 インチ HDD へのシフトが進み、2010 年頃には 2.5 インチ HDD の方が多くなると思われる。 ・ HDD 用の面記録密度の高容量化開発は更にヒートアップし、SSD の追随を許さない開発が必要である。 また SSD と HDD は用途に応じ棲み分け、1.8 インチ HDD は厳しくなる。 ・コンシューマ応用製品は、ホームサーバー、リムーバブル HDD(iVDR、外付け HDD 等)、車載サーバー、 HDD 内蔵液晶インターネットテレビ、ワンセグレコーダー、携帯電話と PDA の融合モバイルなどが有力。 ・医療機器、高齢者や児童向け機器、ペーパーレス、ロボット関連、無線 IC タグ関連、グリーン IT、省 エネ、地球環境関連などが新規分野。 (作成:2009 年1月 14 日) 8 IDEMA Japan News Vol.88
© Copyright 2026 Paperzz