経腸栄養に必要な器具

第2章 経腸栄養
Chapter2
第9節 経腸栄養に必要な器具
経腸栄養
9.経腸栄養に必要な器具
2015 年 10 月 20 日版
田無病院 院長 丸山道生
1.経腸栄養療法を行うために必要な器具
経腸栄養に必要となる器具は、
①養剤を体内に送り込むアクセスルートとしての経腸栄養
カテーテル(経鼻栄養カテーテルや PEG の胃瘻カテーテ
ルなど)
②経腸栄養剤を入れる容器、コンテナ(ボトル、バッグ、イル
リガートルなど)
③カテーテルと栄養剤をいれたコンテナをつなぐ接続チュ
ーブ
④経腸栄養用の注入ポンプ
⑤経腸栄養用のシリンジ
などがある(図1)(①の経腸栄養カテーテルに関してはそ
れぞれの項目を参照のこと)
2.経腸栄養器具の接続部(コネクター)
経腸栄養用のカテーテルや接続チューブ、シリンジなどの
接続は、静脈ラインとの誤接続を防止するために、広口タイ
プのカテーテルチップ型(日本工業規格 JIS、医薬発第
1)
888 号)となっている(図2,3) 。また、接続部を黄色など
のカラーリングを施し、輸液ラインとの識別を可能にしている。
従来型の接続部のものが変更されずに経腸栄養に使用さ
れている場合は、事故防止のために、誤接続防止用のカテ
ーテルチップ型に変更する必要がある。
①経鼻経腸栄養チューブの Y ポートコネク
図1 経腸栄養療法に必要な器具
経腸栄養ルートのコネクターはシングルタイプとダブルタ
イプのものがある。ダブルタイプの接続部は Y ポートコネク
ターとも呼ばれ、主なルートを外すことなく水によるフラッシ
2)
ュや薬剤投与を行うことが可能となっている(図3) 。
2017 年 に は 世 界 標 準 化 の 誤 接 続 防 止 コ ネ ク タ ー
(ISO80369-3)が本邦にも導入される予定である。オス・メ
ス逆転タイプの誤接続防止タイプのコネクターである。現在、
新旧のコネクターのスムースな入れ替えが検討されている。
②誤接続防止用のシリンジ
③誤接続防止用コネクター
ター
図2 誤接続防止タイプのカテーテルチップ型コネクター
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第2章 経腸栄養
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①誤接続防止用コネクターのついた ②誤接続防止タイプのコネクターのついた経腸栄養接続チューブ付き経腸栄養
経腸栄養チューブ
バッグ
図3 カテーテルチップタイプの誤接続防止用コネクター
3.コンテナ(ボトル、バッグ、イルリガートル)
栄養剤を入れる容器のコンテナには、ボトルやイルリガー
トルなどの硬質のコンテナと。バッグなどの柔軟性のコンテ
ナがある(図4)。硬質コンテナはプラスチック製のものが多
い。重くて割れやすいガラス製のものはほとんど使われなく
なっている。柔軟性コンテナには、ビニル製のバッグ型のも
のがあり、落下する雑菌の混入を防ぐために、蓋が付いてい
る。接続チューブとの接続に関しては、コンテナの下の突起
と接続チューブのゴム管をつなげる場合や、専用のスクリュ
2)
ーキャップ付きの接続チューブをつなぐ場合などがある 。
コンテナは原則的にはディスポーザブルであるが、実際は
洗浄、消毒を繰り返して使用されることが日常的である。正
しい洗浄法に従い、経腸栄養の細菌性の合併症を起こさな
いことに心がける必要がある。
最近は、滅菌された経腸栄養のバック製剤で、そのまま
専 用 の ラ イ ン に 接 続 し て 投 与 で き る RTH
(ready-to-hang)製剤も普及してきている(図5)。RTH
製剤は細菌汚染を最小限にすることができ、1バックを 24
時間で投与しても細菌性の合併症の危険が少い。この方
法はクローズドシステムと呼ばれることがある。
図5 RTH(ready-to-hang)の経腸栄養剤
②硬質コンテナボトルタイプ
図4 コンテナの種類
①柔軟性コンテナバッグタイプ
4.経腸栄養用注入ポンプ
経腸栄養剤の注入は重力式の自然滴下法でも可能だが、
より正確な注入量が要求される場合には注入ポンプを使
用する。注入ポンプを用いることで経腸栄養の合併症であ
る下痢や嘔吐、誤嚥、および誤嚥性肺炎発症の頻度が低
下すると考えられている。経腸栄養用の注入ポンプは、本
邦では数種類市販されている(表1)。最近は、定期的に水
でカテーテルを自動的にフラッシュする機能がついたポン
プも発売さている。
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表1 経腸栄養用注入ポンプ各種
腸瘻や幽門後のアクセスルートを使用する場合は、注入
ポンプの使用を原則とする。空腸への経腸栄養は少量持
続が標準で、重力式ではいっぺんに大量の栄養剤が入っ
3)
て下痢を起こす可能性がある 。
誤嚥の危険性のある患者には、ボーラス投与ではなく栄
養剤を少量持続で投与することが望ましく、注入ポンプの
適応になる。水分量の制限や、術後などの厳重な投与量の
管理が必要な場合も、注入ポンプを用いる。注入ポンプを
使うと、体動や体位による注入速度の変化をきたしにくいた
め、注入量が多い場合や夜間就眠時に注入する場合、ある
いは重力式では注入が困難なジャケットやショルダバックを
使用する在宅経腸栄養などの場合にも、注入ポンプが使
用される。
注入ポンプの適応をまとめると、
①下痢の回避(消化管機能低下時や腸瘻からの経腸栄養
時)
②嘔吐の回避(消化管運動低下など)
③持続投与が必要な場合(腸瘻など)
④手術侵襲の大きい術後の経腸栄養
⑤腸瘻からの在宅経腸栄養
⑥意識障害や嚥下反射の低下がある場合
4)
などが挙げられる 。
文献
1) 丸山道生:腸瘻からの経腸栄養、医歯薬出版編、目でみ
る臨床栄養学 update、p284-289、医歯薬出版、東京、
2007 年
2) 鷲沢尚宏:投与システム:チューブ、ボトル、ポンプなど、
丸山道生編、経腸栄養バイブル、p145-150、 日本医事
新報社、東京、2007 年
3) 丸山道生:経腸栄養療法の管理、東海林徹編、Q&A
で学ぶ栄養療法と薬学管理、p99-109、南山堂、東京、
2008 年
4) 大谷幸子:経腸栄養ポンプの使い方、東口高志編、
NST 完全ガイド改訂版、p108-109、照林社、2009 年
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