ネットで遊ぶ、クラシック!

ネットで遊ぶ、クラシック!
Vol.8 圧縮音源ってなに?
文・飯尾洋一
「Jupiter」2014 年 4・5 月 第 145 号 掲載
¥有料
POINTS!
■配信に便利
■音質に大差なし
飯尾洋一
音楽ジャーナリスト。
著書に『R40のクラシック』(廣済
堂新書)、『クラシック BOOK』
(三笠書房・王様文庫)、他。
雑誌、放送、ウェブなどで幅広
く活動。
クラシック音楽サイト CLASSICA
にてブログ発信中。
http://www.classicajapan.com/
iTunes Store や Amazon MP3 など音楽配信の世界では、音声
データのフォーマットとして様々な種類の「圧縮音源」が用い
られている。同じ音源を扱うにも音楽 CD と比べてデータのサ
イズが半分から十分の一以下にまで小さくできるので、インタ
ーネットを通じた配信には便利だからだ。
なぜそんなにデータ量が元の CD より小さくなるのだろう
か。
「圧縮音源」には大きく分けて 2 つの方式がある。
「可逆圧
縮」と「不可逆圧縮」
(非可逆圧縮)だ。
「可逆圧縮」には FLAC、Apple Lossless(ALAC)
、WMA ロ
スレスなどの方式があり、単に「ロスレス」などとも呼ばれる。
データのサイズは元の半分くらいにしかならない代わりに、音
質の劣化がない。オリジナルの CD と完全に同一データを復元
できる。
どんな複雑な音楽であれ、デジタル録音である以上、音源は
数値の連続によって記録されている。大ざっぱなたとえだが、
仮に「11111111」という 8 文字の情報(中身は音楽だ)があ
ったとしよう。これを「1×8 回」と表現すれば、情報量は劇
的に減る。しかも情報の損失はいっさいない。「12121212」
という 8 文字も、
「12×4 回」と表現すれば、やはり文字数を
節約できる。
こんなふうに、元のデータの内容を 100%保持しながら、デ
ータのサイズを減らすのが「可逆圧縮」だ。
もうひとつの「不可逆圧縮」には、MP3 語句解説 や AAC
など多数の方式がある。実は現在主流となっているのはこちら
の「不可逆圧縮」のほう。データのサイズを十分の一程度にま
で小さくすることができる代わりに、オリジナルの CD と比べ
ると情報の損失がある。主に人間の耳には聞こえづらい領域の
情報がカットされているのだ。したがって理論上、音質は劣化
するのだが、なるべく聴感上の劣化が少なくなるように技術的
な工夫が凝らされている。
この「不可逆圧縮」には、圧縮の度合いによっていくつもの
段階がある。同じ MP3 でも、320kbps や 256kbps、128kbps
……などがあり、数字が大きいほど音質はよい(=情報の損失
が少なく、圧縮率が小さい)
。
iTunes Store をはじめ多くの音楽ストアでは、不可逆圧縮音
源のみが売られていることが多いが、マニア向けのサイトでは
同じ音源を不可逆圧縮と可逆圧縮の 2 種類で販売しているこ
ともある(後者のほうがやや価格が高くなる)
。ただし、両者
の音質の差は驚くほど小さい。先入観を持たずに聴き比べれ
ば、MP3 で十分と感じる人が多いのではないだろうか。
■圧縮音源の種類
可逆圧縮
FLAC、
Apple Lossless (ALAC)、
WMA ロスレスなど
不可逆圧縮
MP3、
AAC、
WMA(Windows Media Audio)
など
■Presto Classical
http://www.prestoclassical
.co.uk/r/DG/4791041#do
wnload
[英語]
イ ギリ スの ショッ プ 、Presto
Classical でのドゥダメル指揮
ベルリン・フィルのR・シュトラ
ウス「ツァラトゥストラはかく語
りき」のダウンロード販売ペー
ジ。MP3 (320 kbps)と FLAC
を選んで購入できるようにな
っている。価格は FLAC のほ
うが 3 割ほど高い。
語句解説
? MP3(えむぴーすりー、
○
MPEG Audio Layer–3)
パソコン、携帯音楽プレーヤ
ー、インターネットラジオ等で
最もよく使われている音声フ
ァイルの規格。