`……欠陥だらけの製造プロセス

'……欠陥だらけの製造プロセス
巨大な食器棚組立工場に足を踏み込んだ途端、慌ただしい作業の様子が音や
臭いなどと一緒に襲いかかってくる。空中も床もおが屑だらけ。天井まで届く
ような高さの部品棚には、埃まみれの合板ドアや窓枠部品が折り重なっている。
複数のフォークリフトが工場内を走り回り、空の容器を運搬している。また、
新しい部品の木枠が空いているスペースに放置されると、そこは大量の仕掛品
を保管する場所に変身する。
塗料や接着剤のスチームの刺激で目はチカチカし、衣服に蒸気や埃がまとわ
りつく。鼻はつまり、くしゃみまで出始める始末だ。細かな微粒子が工場内を
漂っている。
シフト交替の時には、作業者はエアコンプレッサーで機械についたおが屑を
吹き飛ばすが、その数時間後には足元がスッポリと埋まってしまう。清掃担当
者が、新たに発生したおが屑や合板の切れ端を片づける。清掃担当者はいつも
と同じやり方で、工場中で山のように溜まっている切り屑を片づけていく。昨
日も先週もやったことだ。先月も同じことをやった。終わりのない作業を淡々
と繰り返している。
外にある出荷場では、トラックが 1 時間ごとに重い何層もの薄板や合板の荷
下ろしを行う。納入業者が金具や引き出し備品を入庫する一方で、出荷係は次
から次へとやって来る伝票やフォークリフト、出荷指示に閉口しながらも、あ
ちこちの作業場を忙しく動き回っている。
フロアではフォークリフトが何箱もある原材料を運んでは、切断機に材料を
投入する。大型切削機が出す大騒音のおかげで、作業者たちがいくら大声を出
しても、その内容は聞き取ることができない。この工場ではすべてが忙しく、
騒々しく、汚くて、重苦しい。とても21世紀の北米に存在している巨大製造工
場とは思えない。
この工場には、大量生産されている高級木製家具の最終組立ラインがある。
これは複雑な工程ではあるが、ブームとなっている建設ラッシュに煽られた強
い需要と相まって、ラインは毎日フル回転の状態だ。
2 : 第1章 リーンシグマ・トランスフォーメーション
どのような設備であっても、仕事の内容とリズムを理解する一番よい方法は、
1 つの製品の原材料受け入れからさまざまなプロセスを経て、最終組立・荷作
り・出荷場所までを一貫して辿ることである。しかし、この工場では、それを
簡単に把握することができない特別な事情を抱えている。なぜならば、この工
場にある最終組立ラインは、複数の下請けによる組立前工程やその他の製造準
備工程から、実に多種多様な物の供給を受けているからである。最終組立ライ
ンに供給されている主な前工程の様子を見て回ると、あらゆるところが驚くよ
うな状況となっている。
向かい側にはドアを製造するラインがある。ここで作業者たちは、 1 シフト
に一度は止まる巨大な薄板製造機に日々、悩まされている。ここでの作業停滞
は下流工程に影響を与える。今もその 1 人しかいないテーブル・ソー(机状の
台座に切断機が装備してあるもの)の作業者の周りに、最終組立からやって来
た 4 人の配送係が集まっている。テーブル・ソー担当のラリーは 6 年目のベテ
ランで、次々にくる特急注文、さらにそれを急かす声にも対応している。配送
係たちは、もう我慢ならないという様子で、頻発する部品不足を記録した紙切
れをラリーの面前にちらつかせていた。「ラインが止まっているんだ」
「分かっ
ているよ」「わけが分からないんだ」「大のお得意様向けなんだよ」「もう、待
ってくれないよ」と彼らの要求に力が入る。
緊急で 4 つのオーダーが入った。ラリーは黙って自分の小さな仕事場に行き、
部品を 1 つ 1 つ切断し始める。これは、絶望的な仕事に対するラリーの無言の
抵抗だ。毎日毎日、ラインが止まる。未完成のキャビネットを脇に投げ出して
は、ひたすら不足部品を待ち続けるだけの次工程から、断続的に繰り返される
気が狂ったような一連の督促。それをこなすのがラリーの標準的日課となって
いる。
本来ここは、すべてを見渡すことができるスムーズな組立ラインとなるよう
に設計されていた。にもかかわらず、ドアが不足したり、窓枠部品の損傷など
次々と見まわれる悪夢のようなプロセスが、たびたび中断されるラインへと変
貌させていた。そしてこれが、一連の「顧客オーダー未達成」を引き起こして
いたのだった。すべての工程が待ち状態であり、何も流れない。結果として最
終組立工程は、すべての間違い、すべての納期遅れ、品質問題、設計問題など、
A Better Way : 3
あらゆる問題が姿を現す場となっていたのである。作業者は時として、奇跡の
ような仕事を期待されることもあるが、部品がなくてはラインを動かすことは
できない。ヘンリー・フォードはこの事実を把握していた。多くの家電、エレ
クトロニクス、コンピュータ工場でも同じことが起こっていた。もちろん、競
争相手もまた同じ状況であった。
こうしたことは、どんなオペレーションを担当する管理者にとっても悪夢の
ような出来事である。どんな顧客にとっても欲求不満のもとになるし、またラ
リーの問題でもある。しかし、この「急いでは、待つ」という生産のやり方は、
何も異常というものではない。世界中の何千という工場が同じように、規則的
ではないペース、非人間工学的作業、欲求不満の顧客に日々苦労しているのだ。
これ以外にもこの工場では、至る所でまずいオペレーションの兆しが現れて
いる。コンピュータによって高度にコントロールされている機械がある一方で、
稼働率は高いものの、小型で、手作業が必要となる設備が存在するというアン
バランス。ラインの停滞は、ミスマッチな部品の仕掛り、達成見込みのないペ
ースを必死で守ろうとする作業者、そして複数の工程を動き回る作業者などに
よって発生しているのである。 1 日の仕事が終わっても、今日は一体何を生産
したのか、重要な企業ミッションをどのように達成したのかといった疑問は解
消されないままであった。
ここ数年、セミカスタムの製品を注文する顧客が増えてきていた。それはオ
ーク、メイプル、カンバ材など、素材が選べる家具で、さらにいろいろなサイ
ズや高さの型式があるものだった。そして納品は 6 週間から 8 週間と約束され
ている。いくつかのオーダーについては指定納期を守ることができていたが、
ほとんどは納期どおりとはなっていなかった。マーケティング部門は顧客に対
して、確実な納期を約束できない状況にあったが、製造部門はこのことを理解
してはいない。
カスタム・キッチン・キャビネット社は、ここのところ、ある企業から激し
い競争を挑まれている。その競合企業では、ほとんどの製品を 2 週間で納品す
ることを約束できるリーン生産を確立していた。このこともあって、経営陣は
リードタイムの改善、生産を拡大する必要性は理解していた。しかし、実際に
は残業や作業者の増員、高速裁断機を 7 台も投入することでしのいでいるだけ
4 : 第1章 リーンシグマ・トランスフォーメーション
であった。しかも依然として、生産は安定していない状況にある。
こんなことではいけない。これまでの150年間、さまざまな製造プロセスを
統合して、プロセス、材料、作業者を 3 つのバランスがとれたスムーズな流れ
へと変える努力が続けられてはきた。しかし今もなお、リーン生産方式をさら
に強化しようとする競合企業は、最適な方法を求めて日々、改革を続けている
のである。
なぜ、リーンを目指すのか?
・顧客フォーカス
・品質のよい製品とサービス
・顧客対応レベルの向上
・従業員への権限委譲
・競争の激化
・ムダの排除
・行動と結果の重視
・スピード
カスタム・キッチン・キャビネット社が狙っていること、つまり「金を稼ぎ
出し、ビジネスを成長させること」は、すべての産業において、物づくりに関
わるすべての企業が同じく目指すものである。しかしカスタム社は、あらゆる
マーケティング努力や戦略的計画にもかかわらず、欠陥だらけの製造プロセス
で、従業員に給料を払うのがやっとの状態だ。お粗末な製造システムが、獲得
すべき利益と成長を犠牲にしているのである。
カスタム社の主組立プロセスのレイアウトは、バッチ方式、つまりプッシュ
型生産のリスクを表している。大型の自動設備に過度に依存しているため、物
の流れはスパゲティのように頻繁に円を描いたり、双方に行ったり来たりして
いる。このような流れでは、目を行き届かせた物づくりなどできるわけがない。
A Better Way : 5
図1-1' スパゲティ・ダイアグラム
代表的な作業サイクルは、たくさんのムダな動作と余分な移動を含む
1
3
13
2,5,7,9,12,15,17
14
10
11
4
16
6,8
さらにカスタム社では、山のような仕掛りと原材料の在庫を抱えている。こ
うした仕掛りや在庫、そしてそのための作業に資金をつぎ込んでいるような状
態であった。特に市場がライフサイクル上、成熟期から衰退期に入りつつある
現状では、このような工場の状況で新製品やより早い納入に注力することなど
できない。カスタム社が変化する顧客ニーズへの適切な対応を実現するには、
eコマースが役立つだろう。顧客がオンラインで発注した時に、カスタム社の
確立された製造システムが反応して、すばやく生産をスタートすることができ
れば、19世紀のやり方でもナノセカンドで急増する需要に対応できるだろう。
そうは簡単にいくことではないだろうが。
バッチ生産方式は非効率的なうえに高価な代物だ。リーン生産、特にリーン
シグマ・トランスフォーメーションのような総合的なシステムは、従来よりも
少ない作業者で、より少量の材料、低コストで、より賢く生産する機会を企業
に与える。このようなプル型システム、つまりワークセルごとでの生産、一個
流しのように再現性があり、均一な品質を特徴とするシステムに移行するため
6 : 第1章 リーンシグマ・トランスフォーメーション
には、経営的な意思決定とリーダーシップ、さらにトップの目に見える形での
支援が必要である。
'……最適な方法を求めて
洗練されたリーン生産プロセスの驚異的な効果は、ワイヤモールド社、ラン
テック社、ペラ社、メイタグ社、メルセデスベンツ社、バーミア・マニュファ
クチャリング社などのパイオニアに新しい成長の機会を与え続けている。これ
らは早期にリーン生産方式の導入に着手した企業である。これら企業の経営陣
は、リーン生産とそのデザイン手法の採用によって得られる可能性をすばやく
嗅ぎとったのだった。
北米での最初の導入から14年以上、これらの企業はカイゼン・ブレークスル
ー方法論とリーンシグマ・トランスフォーメーションを利用して、物づくりの
革新を成し遂げている。彼らは素晴らしく高度でありながらも、シンプルな情
報システムを構築した。そして、そのシステムでコストを監視・コントロール
し、成長する企業へと変革してきたのである。
ランテック社はカイゼンの視点を活用して、設計プロセスを再構築した。コ
ネチカット州ハートフォードのワイヤモールド社は潤沢なキャッシュフローで、
12の小さな製造業者の買収を実現した。またペラ社は、かつては大きな市場に
存在する小さな、特に欠点もない企業であったが、成長市場で主導権を握るた
めに変革を行った。たった 6 年間で、ペラ社は比較的成長が緩やかな業界で、
その売上げを2倍以上に増やすことに成功した。同時に、新たな資本投下をす
ることなく、また、レイオフにも頼らずに利益を250%も伸ばした。ブラジル
にあるメルセデスベンツのトラック工場は、伝統的な自動車産業のプレッシャ
ーを受けながらも、物づくりの卓越性は文化の違いを問わないことを証明した。
メイタグ社は、発展途上諸国の労働者の人件費や大量生産方法と競争するため
に、革新的なプロセスを構築中である。バーミア社は、既存の製造を改善する
だけでなく、リーンシグマのコンセプトを使って、新製品を開発・設計している。
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挑戦
一部のCEOにとっては、製造やエンジニアリング、マーケティングといっ
た社内プロセスの改革に取り組むことは、熱の入るものではないかもしれない。
特に製造現場は一般的に汚く、騒々しいうえに危険な場所なので、敬遠されが
ちだ。しかし、実際には生産現場で利益が創られ、それによって顧客を確保、
維持することができるのである。プロセスに欠陥があっても、マーケティング
部門は顧客を呼び込み、取引をまとめられるかもしれない。しかし、高品質・
低価格の製品が納入できなければ、顧客は失望し、売上げは落ちる。この挑戦
は、複雑でも、高価なものでもない。シンプルにやればよいのだ。現在稼働中
のシステムがプッシュ型であったり、重厚な組立ラインであるのだとすれば、
リーン・プロセスは、大きな転換ステップとなるに違いない。これまでとはま
ったく異なる、シンプルなシステムに移行するためには、伝統と居心地のよい
現状から決別しなければならない。変革の痛みを経験することが必要だ。これ
が経営陣にとって最も困難なテーマとなる。なぜならば、これは本質的に、こ
れまで機能していたプロセスをバラバラにすることになるからである。
変化する事業環境における物づくり
1950年代、60年代が安定と成長の20年と言える一方で、80年代と90年代はビ
ジネスに大きな転換をもたらした。マーケティング、情報システム、労務管理
などは、マネジメントの考え方の中でも、極めて大きな転換を経験することに
なった。これは、市場を拡大し、顧客を獲得する方法などについても同様であ
る。もし工場が、「単に『製品』として十分なものを生産すればよい」という
ことであれば、話は別だが。
ニュージャージーのベル研究所で、エレクトロニクス・プロセスをコントロ
ールする、より優れた方法への探求は始まった。そして、それがあらゆる分野
で活用できる基本的な生産プロセスとして実を結んでいった。生産は関心の対
象となる領域ではあったが、その当時はまだ、売上げの源泉とは見られていな
かった。生産はあくまでもコストセンターであり、むしろ市場や利益の無限の
成長に対する障害になるものとされていた。
8 : 第1章 リーンシグマ・トランスフォーメーション
生産が顧客ニーズに対応する手段として認知され始めた一方で、MBAの講
座では依然として、古典的なマーケティングやプッシュ戦略を教えていた。ビ
ジネススクールが生み出してきたのは、消費者が買う気になるまで市場を煽り
続け、そしてひたすら待つという方法だけを理解したエグゼクティブたちであ
った。テレビCMや印刷物などのマスメディアによる販促が消費者をリードし、
市場を創造するための投資として重要視された。長い間、こうした安全で確実
なアプローチが、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に代表されるシ
リアルメーカー、ゼネラルモーターズ(GM)、それにIBMといった数多くの
偉大な企業でうまくいってきたのだ。
変わる消費者行動
変化する市場の中では、昔ながらの物づくり、生産のやり方は、新たな顧客
の要求に対して機能することができない。また同様に、顧客は生産現場が慣れ
ている長いリードタイムや予測可能な対応に価値を認めない。消費者行動は変
わったのである。それはティーンエイジャーのファッションセンスと同様に予
測不可能なものだ。
新車や新しいエンターテインメント、パーソナルな製品などには、コンピュ
ータ産業が技術デバイスをギッシリ積み込んでいるのと同様に、たくさんの技
術が搭載されている。多くのハイテク製品のライフサイクルが 1 か月程度であ
ることから、クルマやトラック、芝刈り機のような大型の消費財でも、エレク
トロニクス産業と並行する形で、ライフサイクルが短縮化する傾向にある。今
日はもてはやされていても、明日にはガラクタと化す。「普通」あるいは「伝
統的」な生産システムで操業している製造業は、そのような市場に「プッシュ」
戦略で参入することはできる。しかし、たとえ参入できたとしても、毎月繰り
返される製品の再設計には、首尾よく対応していくことはできない。
新しい技術で新しい市場を創造していく場合、勝者のパターンは1つである。
支配的なプレイヤーが勝つためのルールは、他のすべてのプレイヤーに対して、
参入障壁を高く設定することだ。成功は成功を呼び、そして新たな激しい競争
レベルは、その厳しさを増加させる。このことは、「ウチは特許権や商標権法
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で何とか保護されている」と信じている企業に対しても同様である。ヒューレ
ット・パッカードが最初に開発した小型計算機は、高機能で素晴らしい設計で
あったが、高価でもあった。しかし、データ入力方式が旧式になった途端に、
何十もの競合が低価格の製品で市場に参入してきた。その値段は、最初の機器
が1000ドル前後で登場してから約10年で、50ドル以下にまで下がった。これは、
向上した生産システムとコストがもつパワーの驚くべき教訓となったのである。
'……リーンシグマ誕生
物づくりに関する多くの問題に対して、私たちは解答をもっている。また、
生産者は無意識ながらもすでに、消費者の移り変わるニーズを満たすため、よ
り柔軟に顧客に対応できる方法を身につける必要性を認識している。CEOに
とって幸運なことは、すでに述べたランテック社やワイヤモールド社のサクセ
ス・ストーリーを生んだ、リーン生産のよいモデルが、今では世界中に存在し
ていることである。ブラジルやトルコには素晴らしいリーン生産による自動車
組立工場があり、メキシコや中国には家電工場、そしてスコットランドにはカ
メラ工場がある。さらに自動車・エレクトロニクス・航空機産業に納入してい
る二次、三次下請けの、小規模ながら俊敏なベンダーがたくさん存在している。
以下に、大量生産とリーン生産の違いを浮き彫りにする例を示してみよう。
万年筆は、約12の金属とプラスチック部品の組立、 1 つの補助組立品からで
きている。 1 本の赤い万年筆を昔ながらの大量生産方式で作るためには、たく
さんの大型設備による加工と、多くの人手に頼った組立作業が同時に行われる
ことになる。また、本体、カートリッジ、クリップ機構部品の大量の調達が必
要である。組立プロセス全体は、切断に始まって、成形、塗装、外部から調達
したカートリッジ部品の挿入、テスト、包装などの24のプロセス工程を踏む。
たとえば、ある顧客が赤い万年筆 1 ダースと黒い万年筆 2 ダースを注文した
とする。そのオーダーを満たすには、在庫がなければ数日、もしくは数週間が
必要だ。
材料の切断から始まる一連の生産の流れは、個々の部品の大きなバッチ(ロ
ット)が各種工程を経由し、最後に組立工程で合体することになっている。そ
10 : 第1章 リーンシグマ・トランスフォーメーション
の途中で、これらの半製品は何度も仮倉庫に戻され、そこで何度か数量を確認
され、再び払い出されるのを待つことになる。すべてのプロセス工程における
実際の製造数は、不良が発生することで変化する。これは代表的なバッチ方式
のプロセスである。
実際の付加価値時間は、材料切断、機械加工、塗装、包装工程などで、ほん
の数分にすぎない。しかしバッチ方式プロセスでは、全体のプロセスにかかる
時間は流動的だ。つまり生産側の都合によって、納期は長くなる傾向にある。
セルベース・リーン生産
これに対してリーン生産方式は、実際の所要に基づいたシンプルなフロー生
産方式である。顧客も含めて、生産に従事するすべての人が、何がいつ出荷さ
れるかを把握している。なぜならば、全体のプロセスが目に見えるようにレイ
アウトされ、実行されているからだ。作業者は、顧客のニーズに合うように作
業を進める。人と材料はワークセル内で配置を即座に、自由に変えることがで
き、トラブルが生じた場合でも問題を的確に突き止め、解決することができる。
万年筆の生産セルにはほとんど作業者はいない。自動化されたコンベアも倉
庫システムもないが、設備投資と自動化は適切なレベルにコントロールされて
いる。 1 ダースの赤い万年筆と 2 ダースの黒い万年筆は数分で製造され、たち
どころに梱包され、そして出荷される。
どちらの方法がより管理しやすいか?→セル生産
どちらの方法が簡単に拡張できるか?→セル生産
どちらの方法がより少ないムダで、より高い品質を生むことができるか?
→セル生産
そしてどちらの方法がeコマースに適した正しいやり方であり、そしてウェ
ブを活用した需要と生産を結びつけることができるか?
→もちろん、セル生産である。
セルごとの生産ライン、つまりセル生産は企業にとって強力な味方だ。しか
し、それをパーフェクト ・ エンジンとするには、企業が対応しなければならな
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