精神保健の課題と支援 大項目 1.精 神 の健 康 と、精 神 の健 康 に関 連 する要 因 及 び精 神 保 健 の概 要 2. 精 神 保 健 の 視 点 か ら 見 た家 族 の課 題 とアプローチ 中項目 1)社会構造の変化と新しい健康観 2)ライフサイクルと精神の健康 3)生活習慣と精神の健康 4)ストレスと精神の健康 5)精神の健康に関する心的態度 6)予防の考え方 7)自殺予防 8)さまざまな活動 9)精神保健活動の三つの対象 1)現代日本の家族の形態と機能 2)結婚生活と精神保健 3)育児や教育をめぐる精神保健 3. 精 神 保 健 の 視 点 か ら 見 た学 校 教 育 の課 題 とアプローチ 4. 精 神 保 健 の 視 点 か ら 見 た勤 労 者 の課 題 とアプローチ 5. 精 神 保 健 の 視 点 か ら 見 た現 代 社 会 の課 題 とアプローチ 6.精 神 保 健 に関 する対 策 と精 神 保 健 福 祉 士 の役 割 出題基準 小項目(例示) ・健康の定義 ・発 達 課 題 ・破 綻 の現 れ方 、バーンア ウト、心 の傷 ・否 認 、受 容 、回 復 ・カプランの考 え方 ・高 齢 者 の精 神 保 健 ・支 持 的 精 神 保 健 ・合 計 特 殊 出 生 率 ・非 婚 、ドメスティック・バイ オレンス(DV) ・子 育 て不 安 、児 童 虐 待 4)病気療養や介護をめぐる精神保健 ・発 達 障 害 ・家 族 の介 護 負 担 、高 齢 者 虐待 5)社会的ひきこもりをめぐる精神保健 6)家庭内の問題を相談する機関 7)グリーフケア 8)保健所等の精神保健福祉士の役割 1)現代日本の学校教育と生徒児童の特徴 ・自 死 遺 族 支 援 ・いじめ、学校における暴力、自 殺 ・不登校、学級崩壊 ・非行問題 ・バーンアウト ・学校保健法 2)教員の精神保健 3)関与する専門職と関係法規 4)スクールソーシャルワーカー 5)保健所等の精神保健福祉士の役割 1)現代日本の労働環境 2)うつ病と過労自殺 ・職場復帰支援 3)飲酒やギャンブルに関する問題 4)心身症と生活習慣病 5)職場内の問題を解決するための機関及び関 ・労働基準法、労働安全衛生法 係法規 6)保健所等の精神保健福祉士の役割 1)災害被災者、犯罪被害者の精神保健 ・心のケアチーム ・支援者のケア 2)ニートや貧困問題と精神保健 3)ホームレスと精神保健 4)性同一性障害と精神保健 5)他文化に接することで生じる精神保健上の 問題 1)アルコール問題に対する対策 2)薬物依存対策 1 7. 地 域 精 神 保 健 に 関 す る 諸 活 動 と精 神 保 健 に関 する偏 見 ・差 別 等 の課 題 8. 精 神 保 健 に 関 す る 専 門 職 種 ( 保 健 師 等 ) と国 、 都 道 府 県 、市 町 村 、団 体 等 の役 割 及 び連 携 9.諸 外 国 の精 神 保 健 活 動 の現 状 及 び対 策 3)うつ病と自殺防止対策 4)認知症高齢者に対する対策 5)社会的ひきこもりに対する対策 6)災害時の精神保健に対する対策 1)関係法規 2)ネットワークづくり 3)資源開発 4)精神保健に関する調査 5)精神保健に関わる人材育成 6)国民の精神障害観 7)施設コンフリクト 1)国の機関とその役割 2)精神保健に関係する法規 3)保健師等の役割と連携 4)地域精神保健に係わる行政機関の役割及び 連携 5)学会や啓発団体 6)主なセルフヘルプグループ 1)世界の精神保健の実情 2)WHO などの国際機関の活動 3)諸外国の精神保健医療の実情 ・地域保健法、母子保健法 ・精神保健福祉センター、保健所、 市町村(保健センター) ・いのちの電話、日本精神衛生会 ・家族会、当事者の会 ・障害調整生命年(DALY) 出題傾向 (財)社会福祉振興・試験センターが示す、国家試験の「出題基準」に従って第 18 回国家試験の『精神保健の課題と支援』 で出題された問題を分析すると以下のような傾向が見られた。ただし、設問によっては項目の内容が他の項目と重複するの で注意をしてほしい。 「1.精神の保健と、精神の健康に関連する要因及び精神保健の概要」では、中項目「ライフサイクルと精神の健康」 、小項 目「発達課題」 (問題 12)からの出題であった。また、中項目「予防の考え方」 (問題 18)に関連する出題であった。 「2.精神保健の視点から見た家族の課題とアプローチ」では、中項目「育児や教育をめぐる精神保健」 (問題 14)からの出 題であった。 「3.精神保健の視点から見た学校教育の課題とアプローチ」では、中項目「現代日本の学校教育と生徒児童の特徴」 、小項 目「いじめ、学校における暴力、自殺」 (問題 13)からの出題であった。また、中項目「スクールソーシャルワーカー」 (問 題 15)からの出題であった。 「4.精神保健の視点から見た勤労者の課題とアプローチ」からは、中項目「職場内の問題を解決するための機関及び関係 法規」 、小項目「労働衛生安全法」 (問題 16)からの出題であった。 「5.精神保健の視点から見た現代社会の課題とアプローチ」からは、中項目「災害被害者、犯罪被害者の精神保健」 (問題 19)からの出題であった。 「6.精神保健に関する対策と精神保健福祉士の役割」では、中項目「うつ病と自殺防止対策」が(問題 17)に関連して出題 された。 「7.地域精神保健に関する諸活動を精神保健に関する偏見・差別等の課題」では、中項目「精神保健に関する調査」が(問 題 17)と(問題 18)に関連する出題であった。 「8.精神保健に関する専門職種(保健師等)と国、都道府県、市町村、団体等の役割及び連携」では、中項目「主なセルフ ヘルプグループ」 (問題 20)からの出題であった。 「9.諸外国の精神保健活動の現状及び対策」では、 「WHO などの国際機関の活動」 (問題 11)からの出題であった。 最近の傾向として、自殺に関する問題、アルコール関連問題、薬物乱用防止対策、児童生徒の精神保健の問題、認知症対 策、災害時・犯罪被害における精神保健、関係法規、WHO や諸外国の精神保健活動、厚生労働省の調査から精神障害者の 数的動向や精神科医療施設の状況など精神保健医療の統計に関する出題頻度も高くなっているので十分な理解が必要となっ てくるであろう。 対策としては、新版精神保健福祉士養成セミナー第 2 巻『精神保健の課題と支援』へるす出版などを精読することはいう 2 までもないことである。また『国民衛生の動向』 、 『精神保健福祉白書』等による統計、厚生労働省のホームページで公開し ている統計表のデータベース(精神保健福祉資料(国立精神・神経医療研究センター「改革ビジョン研究ページ」に掲載) 、 医療施設(静態・動態)調査・病院報告、 衛生行政報告例) などの資料から最新の傾向や動向を把握しておくことが必要である。 わが国の精神科医療の現状 ・ 精神障害者数:2014 年(平成 26)年「患者調査」によると、392.4 万人(入院 31.3 万人、外来 361.1 万人) 、入院 者数は横ばい、外来患者数は増加傾向 ・ 精神病床入院患者数:統合失調症圏 171 万 7 千人、アルツハイマー病 27 万5千人、気分障害25万 5 千人、統合 失調症圏はわずかながら減少傾向だが、アルツハイマー病と気分障害は増加傾向。 ・ 平均在院日数 2013(平成 25)年には 285 日。毎年減少傾向。 ・ 入院期間(平成 25 年)では、新規入院患者のうち、3 か月未満で退院 58%、3 か月以上 1 年未満で退院 29%、1 年 以上入院が 13%入院期間は入院患者の長期化と短期化の二極化が生じている。 ・ 精神科病院の入院形態別患者数(平成 25 年厚労省 約 30 万人) 入院形態 人数 措置入院 1670 人 医療保護入院 13 万 7 千人 任意入院 15 万7人 ・ 入院患者の入院分布:65 歳以上が 50%を占め、増加傾向にある。高齢化の問題。 ・ 在宅通院患者数は約 287.8 万人、そのうち、障害者自立支援医療利用者数は、2008(平成 20)年約 128 万人⇒2012 (平成 24)年 162 万増加傾向。 1.精神の健康と、精神の健康に関連する要因及び精神保健の概要 1.健康の定義 WHO憲章 1946 年 ・ 健康とは、身体的、精神的社会的に完全な良好な状態(Well-being)であり、単に病気や虚弱がないことではな い。 ・ 到達できる最高水準を享受することは、人権、宗教、政治的信条、経済的ないし社会的状態のいかんを問わず、す べての人間の基本的人権である。 2. 精神保健とは(予防の考え方、カプランの考え方) ・ 精神的健康に関する公衆衛生 ・ カプラン(Caplan,G)予防精神医学の立場 第一次予防:生活の環境改善を図り、相談及び介入を図ることで精神障害者の発生を予防する。 第二次予防:精神障害の早期発見と早期治療に務める。 第三次予防:精神障害者のリハビリテーションや社会復帰を推進する。 ・ 狭義:精神疾患を予防し、治療する ・ 広義:精神的健康の保持と増進を目的とする諸活動 3.公衆衛生 ウィンスロウ(Winslow.C. )の公衆衛生の定義によれば、 「公衆衛生とは、組織化された地域社会の努力をとおして 行なわれる疾病の予防や寿命の延長、身体的及び精神的健康の向上のための科学と技術である」とされている。公衆衛 生活動の範囲は、感染症予防、母子保健、成人保健、老人保健、精神保健、食品衛生、環境衛生(大気、上下水道、放 射線、廃棄物、衣服、住居・建築物、悪臭、振動、騒音など) 、産業保健(労働衛生) 、学校保健など広く人々の健康に かかわる領域が含まれている。また業務も予防接種、防疫活動、健康診査、健康教育、栄養教育、様々な衛生監視業務 や検査・調査などである。 2.精神保健の視点から見た家族の課題とアプローチ 1. 現代家族の特徴 3 ・少子化と高齢化:合計特殊出生率=女子の年齢別出生率の合計でひとりの女子が一生の間(15 歳~49 歳)に生む平均子ど も数。1989(平成元)年 1.57⇒2005(平成 17)年 1.26⇒2010(平成 22)年 1.39⇒2015(平成 27)年 1.46 で、前年を 0.04 ポイント上回って2年ぶりに上昇した。 ・ドメスッティック・バイオレンス: 内閣府男女共同参画局の「配偶者暴力相談支援センターにおける配偶者からの暴力 が関係する相談件数等の結果」 によると、 相談総件数では、 平成20年度68,196件、 平成21年度72,792件、 平成25年度 99,961、 平成 26 年度 102,963 であった ・発達障害:発達障害者支援法 ・虐待:児童虐待件数の推移:全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数 平成 20 年 21 年 22 年 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 件数 42,664 44,211 56,384 59,919 66,701 73,802 88,931 103,260 ・ひきこもり 定義: 「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」 (2010)より。 「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を 含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には 6 ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続 けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。なお,ひきこもりは原則として統 合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが,実際には確定診断 がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである。 」 推計値と対策:約 26 万世帯に、20 歳以上、49 歳以下で現在ひきこもりの状態の人がいる。 約 70 万人、ひきこもり期間 3 年以上と長期化、平均年齢は 30 歳を超え、就労支援なども含めた支援対策が必要。近年「ひきこもり地域支援センター」 (2009)が精神保健福祉センター内などに設置された。 3.精神保健の視点から見た学校教育の課題とアプローチ 平成 25 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」から 1.不登校 (1)不登校の状況(平成 26 年度文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」から) ①、小学校 25,866 人(前年度 24,175 人) 、中学校 97,036 人(前年度 95,442 人)の合計 122,902 人(前年度 119,617 人)で、在籍者数に占める割合は小学校 0.39%(前年度 0.36%) 、中学校 2.76%(前年度 2.69%)の合計 1.21%(前 年度 1.17%) 。 不登校になったきっかけと考えられる状況は、不安など情緒的混乱 29.8%、無気力 25.9%、いじめを除く友人関係 をめぐる問題 14.5%など。 ②高等学校における、 不登校生徒数は 53,154 人 (前年度 55,655 人) であり、 不登校生徒の割合は 1.59% (前年度 1.67%) である。 ・高等学校における、不登校生徒のうち中途退学に至った者は 15,058 人(前年度 16,454 人) 。 ・不登校生徒のうち原級留置となった者は 4,494 人(前年度 4,779 人) 。不登校になったきっかけと考えられる状況は、 無気力 30.8%、不安など情緒的混乱 18.0%、あそび・非行 10.4%など。 2.いじめ 「平成 26 年度 文科省 児童生徒の問題行動など児童生徒指導上の諸問題に関する調査」 ・定義: 「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感 じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない」 ・いじめの状況:平成26年度:いじめの認知件数:18万8,057 人(前年度19万8108人) 、1校当たり認知件数: 4.9 3.小・中・高等学校における、暴力行為の発生件数は 54,242 件(前年度 5 9,345 件)であり、児童生徒1千人当たりの発 生件数は 4.0 件(4.3) 件である。 4.子どもの自殺 小・中・高等学校から報告のあった自殺した児童生徒数は230人(前年度240人)である。 5.学校保健安全法 この法律は、学校における児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るため、学校における保健管理に関し必要な事項を 定めるとともに、学校における教育活動が安全な環境において実施され、児童生徒等の安全の確保が図られるよう、学校 における安全管理に関し必要な事項を定め、もって学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することを目的として、 昭和 33 年に制定され、最近は平成 20 年 6 月に改正されている。 6.スクールソーシャルワーカー: スクールソーシャルワーク 4 4.精神保健の視点から見た勤労者の課題とアプローチ 1. 職場内の問題を解決するための機関及び関係法規 ①1974 年 労働基準法(伝染病や金属中毒の予防) ②1972 年 労働安全衛生法(2006(平成 18)年に改正:過重労働及びメンタルヘルス対策を充実するため、長時間労働 者への医師による面接指導の実施が事業者の義務) ③ストレスチェック制度:平成 27 年 12 月より施行。定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその 結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるととも に、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげる取組。 労働者数50人未満の事業場は、当分の間努力義 務。一定の研修を受けた看護師や精神保健福祉士などが実施できる。 ④産業医:心身の健康管理はもとより、作業環境を良好な状態に保つため、事業所を巡回し指導。従業員 50 人以上を超 える事業所では産業医を置かなくてはならない。従業員 1000 人以上を超える事業所では専属の産業医を置かな ければならない。 ⑤健康日本 21 4 つのケア ・2006(平成 18)年3月に厚生労働省から出された「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、 「四つのケア」①セルフケア(労働者自らの心の健康のために行うもの)、②ラインによるケア(職場の管理監督者が労 働者に対し行うもの)、③事業場内産業保健スタッフによるケア(事業場内の産業保健スタッフ、心の健康づくり専門ス タッフ)、人事労務管理スタッフ等が行うもの、④事業場外資源によるケア、をあげている 2. うつ病と過労自殺 3. 2010 年1月厚生労働省「自殺・うつ病対策プロジェクト」の報告書:職場におけるメンタルヘルスの対策 ・職場復帰支援の充実 ・リワーク・プログラム:医療機関:うつ病対象の復職支援⇒リラクゼーション、アサーショントレーニング ・リワーク支援:地域障害者職業センター ・ストレスマネジメント:保健所・精神保健福祉センター ・EAP 機関(employee assistance program) ①企業内に EAP スタッフが常駐、②独立した EAP 会社が企業から委託を受 ける 4. 飲酒やギャンブルに関する問題 アルコール依存とギャンブル依存の特性を理解⇒労働安全衛生法上の安全に問題を生じ、仕事に影響を与える 5.心身症と生活習慣病:厚生労働省「労働者健康状況調査」 (2007 年)⇒ ストレスや職場での相談相手など 5.精神保健の視点から見た現代社会の課題とアプローチ 1.災害時の精神保健 ①災害被災者の精神保健 平成23年6月3日に都道府県各 政令指定都市、保健所設置市に対して、厚生労働省健康局総務課地域保健室 から「避 難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン」が出された。項目としては、一般的留意事項(生活・ 身の回りのことについて 、病気の予防、こころの健康保持)、ライフステージ等に応じた留意事項 、避難所管理者 のための健康管理チェックリストなどとなっている。 ② 急性ストレス反応、PTSD、抑うつ反応などへの対応 ③ 危機介入 ④災害にともなうサービス提供 2.犯罪被害者の精神保健 (ア) 2004 年犯罪被害者等基本法: 「犯罪被害者とは、犯罪およびこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為の被害 者、およびその親族、もしくは遺族」としている。 (イ) PTSD、不安障害、うつ病、パニック障害、社会恐怖 (ウ) 支援窓口:都道府県政令指定都市の「犯罪被害者等相談窓口」 、各県警の被害者相談、検察庁の「被害者相談支 援員制度」 、 「法テラス犯罪被害者支援ダイヤル」 、民間被害者支援団体「全国被害者支援ネットワーク加盟団体」 (エ) 二次的外傷性ストレス反応(支援者の傷つき体験) 3.ニート・ホームレス ・二―ト「学校へも行っていない、仕事もしていない、職業訓練を受けているわけでもない若者」 ・ニートの動向: 「子ども・若者白書(H23) 」15 歳~34 歳の若年無業者は H22 に 60 万人いた。35~39 歳の年齢層も無 5 業者は緩やかに増加傾向 ・ホームレス: 「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅 舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。 注)平成 24 年 6 月 27 日特別措置法の有効期限を平成 29 年 8 月 6 日まで 5 年間延長された。 ・貧困問題と精神障害者⇒生活保護制度の活用 4.性同一性障害(性別違和) :2004(H16)年「性同一性障害特例法」⇒性別変更を認める法律。5 つの要件がある。 6.精神保健に関する対策と精神保健福祉士の役割 1. アルコール問題に対する対策 ・現状:成人飲酒人口 6700 万人⇒内、大量飲酒人口 227 万人(1999 年)推計 久里浜式アルコール症スクリーニングテスト:2003(H15)年調査:重篤問題飲酒者は、男性の 7.1%(367 万人) 、 女性の 1.3%(73 万人)=全体 440 万人。 ・アルコール依存症:男性の 1.9%、女性の 0.1%、全体の 0.9%で、80 万人と推計 ・未成年者、女性、高齢者のアルコール問題が増加傾向 ・健康障害:アルコール精神病、アルコール依存症のほか、肝障害、膵障害、脳卒中、高血圧などの身体 疾患 があり、飲酒に関する労働災害や交通事故飲酒運転、犯罪、家庭崩壊など多くの社会問題を含む。 ・うつ病と自殺:アルコール依存症とうつ病は関連性が強い。うつ症状から依存症に移行するものがある。 また、自殺した人の 1/3 が自殺の直前に飲酒が認められ依存症の自殺率は高い。 ・共依存:依存症の配偶者など飲酒行動に巻き込まれ、飲酒問題の後始末や過剰な世話をする状態をさす。 その結果飲酒の継続に繋がる。 ・否認の病気:アルコール依存症は罪悪感から過去のいやな記憶を忘れようとしたり、断酒の必要性など を理解しないなど、否認の病気といわれる。 ・社会的費用の課題 直接費用:医療費や支援にかかるもの 間接費用:志望により失われる生産力や労働不能による損失 関連費用:自動車事故による物的損害、犯罪、対応する社会福祉プログラムの費用 ・対策:一次予防:健康教育により適正飲酒や未成年の飲酒の禁止の啓発・普及活動 二次予防:アルコール問題の早期発見・早期治療⇒リハビリテーションへ 三次予防:外来治療を継続しつつ、社会復帰プログラムや断酒会、AA、Al-Anon(アラノン)などの自助グル ープ活動の参加につなげる(再発予防) ・健康日本 21:アルコール対策として、①アルコール関連問題の早期発見、早期治療、②未成年者の飲酒禁止、③国民 一般への情報提供,④アルコールを取り巻く環境整備などを目標として、①多量飲酒者の減少、② 未成年の飲酒をなくす、③節度ある適度な飲酒の知識の普及など。 2. 薬物依存対策 ・依存性薬物:有機溶剤、覚せい剤、大麻、睡眠薬、一般薬(鎮痛剤・感冒薬) 、ヘロイン、コカイン、 アルコール、LSD,エクスタシー(MDMA) 、脱法ドラッグ(マッシュルーム) ・法の規制:麻薬及び抗精神病薬取締法、覚せい剤取締法、毒物及び劇薬取締法、大麻取締法、あへん法 など。 ・薬物依存:生態と薬物の相互作用で、薬物接収を止めたくとも止められない状態。 依存=精神的依存(高揚感、不安や恐怖を取り除くため) 身体的依存(長期の使用で急に摂取を止めると離脱症状が生じる) ※ 耐性:薬剤の継続使用で同じ量では効き目が減少するため量が増える ・日本の薬物乱用:未成年には有機溶剤が多い。成人では覚せい剤が多い。乱用により幻覚妄想状態をともなう行動異常 や脳障害を起こす。わが国の重要な社会問題であり、青少年の乱用者の急増から、 (ア) 最近では政府は、2008(平成 20)年「第三次薬物乱用防止5か年戦略」を策定し、①青少年による薬物乱用の根 絶および薬物乱用を拒絶する規範意識の向上、②薬物依存・中毒者の治療・社会復帰の支援及びその家族への支援 の充実強化による再乱用防止の推進、③薬物密売組織の壊滅及び末端乱用者に対する取締りの徹底,④薬物密輸阻 止に向けた水際対策の徹底、国際的な連携・強力の推進の 4 点が挙げられた。2010(平成 22)年には「薬物乱用 6 防止戦略加速化プラン」が策定された。 (イ) 2014(平成 26)年 12 月からは、 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 (医薬 品医療機器等法の改正により、指定薬物に加えて、 「指定薬物と同等以上に有害な疑いがある薬物」 (医薬品医療機 器等法)第 76 条「指定薬物と同等以上に精神毒性を有する蓋然性が高い物) 」も規制の対象となった。厚生労働 大臣が「指定薬物と同等以上に有害な疑い」があると認めた場合、その物品について指定薬物として、医療等の用 途に供する場合を除いて、その製造、輸入、販売、所持、使用等が禁止された。 (ウ) 薬物乱用の現状:2009(平成 21)年薬物事犯の検挙人員 1 万 5417 人のうち覚せい剤事犯 1 万 1873 人で、全体の 77%を占める。それ以外では、麻薬、抗精神病薬、あへん、大麻が増加。大麻は急増。MDMA などの合成麻薬事 犯も急増。危険薬物対策 (エ) 自助グループ:NA(Narcotics Anonymous) (12 のステップ)141 グループ ダルク(DARC) 60 施設 3. うつ病と自殺予防 ・うつ病と自殺の関連が明らかになってきた。⇒2002(H14) 「自殺予防に向けての提言」 (自殺防止対策有識者懇談会) ・自殺予防の考え方:プリベンション(予防:自殺予防教育、いのちの電話など) 、インターベンション(現に起こってい る自殺に介入し自殺を防ぐ) 、ポストベンション(自殺が生じた場合他人に与える影響を最小限にし、新たな自殺を防 ぐ、自死遺族支援など) ・2006(平成 18)年 「自殺対策基本法」 ・2008(平成 20)年「自殺総合対策大綱」 :基本認識、①自殺は追い込まれた末の死、②自殺は防ぐことができる、③自 殺を考えている人はサインを発している ・2009(平成 21)年「地域自殺対策緊急強化基金」の交付 ・2010(平成 22)年「いのちを守る自殺対策緊急プラン」 ○ 「自殺総合対策大綱の見直し」 (平成 24 年 8 月閣議決定)①めざすべき社会を提示=誰もが自殺に追い込まれるこ とのない社会の実現をめざす。②若年層への取り組みの必要性重要性の記述、③自殺対策の数値目標=平成 28 年 までに、自殺死亡率を 17 年と比べて 20%以上減少させる。など ・自殺統計:50 歳代の中高年の自殺者数は全体の約 60%を占め、中高年の自殺者数が多い。 自殺の原因は、健康問題、経済・生活問題、家庭問題の順となっている。その原因のうち、うつ病40%、 他の精神疾患20%、全体の 60%が精神疾患 (ア) 自殺の危険因子: 1. 自殺未遂の既往 2. 心理・身体的ストレス、育児・介護問題、いじめなど 3. 社会システムのゆがみ:不況やリストラなど経済・雇用問題 4. 多重債務:うつ病 5. 家族システムの崩壊: (サポートの不足、喪失体験) ・ゲートキーパーの養成 4. 認知症高齢者に対する対策 ・認知症の中心症状:記憶障害、見当識障害、抽象能力や判断力の障害、失語、失行、失認などがある。 ・認知症の高齢者の将来推計:2002 年(平成 14)年 9 月現在、149 万人、2015 年(平成 27)250 万人、2025(平成 37)年 323 万人。 ・若年性認知症:ピック病(得意な人柄や情動の変化をともなう) ・2005(平成 17)年「高齢者虐待防止法:高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援などに関する法律」 ・権利擁護:2007(平成 19)年~日常生活自立支援事業:判断能力が不十分な人のために、情報取得、契約、日常金銭管理 を行なう。 ・認知症サポーター:地域における正しい知識の普及のため。認知症サポーターは、約 713 万人(平成 27 年 12 月末現在) 、 キャラバン・メイト数 126,401 人(平成 28 年 6 月 30 日) 。 ・「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム 第2ラウンド(知症と精神科医療)とりまとめ」(平成22年 12月22日) ・「居住先・支援が整えば退院可能性がある」認知症入院患者の退院可能性は6割で、「状態の改善が見込まれず、住居先・ 支援を整えても近い将来(6ヶ月以内)の退院の可能性はない」が約4割である。 ・入院を前提と考えるのではなく、地域での生活を支えるための精神科医療とし、その際、アウトリーチ(訪問支援)や外 来機能の充実を図る。 7 ・ 統合失調症の入院患者同様、認知症患者の入院も「社会的入院」が再び繰り返される可能性が指摘されている。 ・このとりまとめでは、他に、①現在入院している認知症患者への対応及び退院可能と判断された患者が地域で暮らすため の取り組み、②認知症を考慮した目標値などが記されている。 ・高齢者虐待: 「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」 (以下「高齢者虐待防止法」という。 ) に基づき、平成 26 年度「高齢者虐待の対応状況等を把握するための調査」が実施された。増加傾向にある。 養介護施設従事者等によるもの 養護者によるもの 年度 虐待判断件数 相談・通報件数 虐待判断件数 相談・通報件数 26 25 24 23 22 21 300件 221件 155件 151件 96件 76件 1,120件 962件 736件 687件 506件 408件 15,739件 15,731件 15,202件 16,599件 16,668件 15,615件 25,791件 25,310件 23,843件 25,636件 25,315件 23,404件 7.地域精神保健に関する諸活動と精神保健に関する偏見・差別等の課題 1.関係法規 2.ネットワークづくり ・ネットワークの目的は、地域が持っている課題を解決するためにつくられる。 ・ネットワークの目的は、地域の福祉的課題を明確にし、その対策を検討し、施策化することにより、地域全体の課題 への対応機能を高めることである。 ・ネットワークの範囲は、対象となる地域の決定、ネットワークを構成する人間、機関、施設、団体等の決定、ネット ワークを維持する期間の決定がある。 ・ネットワークをつくるきっかけは、日常の相談や支援業務の中から生じることが多い。支援のゆきづまり、家族から の要望、関係者との出会いなどである。 ・地域における福祉的ニーズは固定的なものではなく、時間とともに変化し、必要とされる社会資源や施策も変化する。 3.資源開発 4.精神保健に関する調査 5.精神保健福祉にかかわる人材育成:ボランティアの育成 6.国民の障害者観 7.施設コンフリクト 8.精神保健に関する専門職種(保健師等)と国、都道府県、市町村、団体等の役割及び連携の機関とそ の役割 1.精神保健に関する法規 2.保健師等の役割と連携 3.地域精神保健にかかわる行政機関の役割及び連携 (ア) 精神保健福祉センター 精神保健福祉センターは1965(昭和40)年の精神衛生法改正によって保健所や地域精神保健の後方支援のための 総合的技術支援機関として創設された。精神衛生法、精神保健法、精神保健福祉法の改正や障害者自立支援法の 制定によりその名称や役割も変化をしてきた。1999(平成11)年の精神保健福祉法(以下法)改正では、精神医 療審査会の事務、通院医療費公費負担申請および精神障害者保健福祉手帳交付申請に対する専門的審査が追加さ れた(2002(平成14年4月1日施行)。現在の精神保健福祉センターは、 「精神保健および精神障害者の福祉に関する 法律」第6条に基づき、精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための機関であり、すべての都道府県・ 政令都市に設置されている。精神保健福祉センターの主な業務は、市町村を含む関係機関への技術指導及び技術 援助、組織の育成などとされおり、関係機関の精神保健福祉従事者への専門的教育研修を行う。 (イ) 保健所 8 ・保健所の特徴は、精神保健福祉相談員が措置入院や移送などの精神保健福祉法の施行事務からメンタルヘルス 相談まで幅広く活動をしている。 ・第 17 回国試より(保健師の役割の出題) 問 4:地域保健法では、保健所は、公衆衛生における広域的、専門的、技術的な拠点として、保健医療情報の 収集、整理、調査・研究のほか、市町村に対する技術的助言、職員研修、市町村相互の連絡調整を行ってい る。一方、市町村保健センターは、健康相談、保健指導、健康診査など、地域保健に関する事業を地域住民 に行っている。 問 5:地域保健法第 4 条では、保健所長は医師でなければならないという規定がある。 (ウ) 市町村(保健センター) 5. 学界や啓発団体 (ア) いのちの電話 (イ) 日本精神衛生会 6. 主なセルフヘルプグループ (ア) 家族会 (イ) 当事者の会 9.諸外国の精神保健活動の現状及び対策 1.世界の精神保健の実情 ・障害調整生命年(DALY) DALY(障害調整生命年)は、死亡が早まることによって失われたであろう寿命(生命年) (PYLL)の概念を、健 康でない状態、すなわち障害によって失われた「健康」寿命換算の年数を含めることで拡張した健康ギャップ指標で ある。2002 年WHOによると、 OECD(経済協力開発機構)加盟国における DALY 値総数に占める各傷病のシェア (%)上位は、うつ病・躁うつ病(9.7%) 、虚血性心疾患(6.3%) 、脳血管疾患(4.7%) 、また、がん全部位(13.2%) となっている。HIV/AIDS は 0.5%であった。 2.WHOなどの国際機関の活動 ・WHO(世界保健機関)は 2010 年5月 20 日に開いた年次総会で、 「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦 略」を採択した。同戦略は、①飲酒運転への対応:飲酒検問の強化、飲食店終了後の代替交通の整備など、②販売制 限:販売場の数と立地の制限、販売できる日数や時間の制限など、③広告制限:広告内容と量の制限、スポンサー活 動の規制など、④価格設定方針:割引販売、原価割れ販売、飲み放題均一料金、大量販売の禁止、または制限、アル コールの最低価格の設定など、アルコール問題を 10 項目の領域に分類し、これらの領域に対する対策を加盟国に求め ている。しかしこれらは、 「加盟国の宗教的、文化的背景、公衆衛生に関する国の優先事項などそれぞれの状況を考慮 し、国レベルで適切に実施すること」としており強制力はない。 (13 回) ・第 17 回国試: 「メンタルヘルスアクションプラン 2013-2020」からの出題。 アクションプランは WHO の精神保健の格差に関する行動プログラム(WHOʼS mental health gap action programme(mhGAP) )をもとに作成されている。 3.諸外国の精神保健医療の実情 イギリス、アメリカ、 9
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