側 - 富士レークホテル

2013.2.1No.767
INFORMATION
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COMMUNICATION
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ジャンル:業務運営
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品質向上に
品質向上につなげる
「現場業務改善」作戦
新しい聖光・レンャーを副燈す昼
'《瞳ii》蕊リョb一三I
③企画編集旅研くらぶ
●発行株式会社リョケン
〒413-0024静岡県熱海市和田町16参1
TELO557(83)2120(代)
FAXO557(81)6246
URLhttp:〃www.『yoken-jp・com
maiIinfb@ryoken-jp・com
1
RY○KEN−CLUB
経営」壁]i皿
厳しい経営環境の中で勝ち残るためには、コストの管理の徹底、無駄な経費
の見直しや削減などは当然のことですが、同時にいかにリーズナブルかつ商質
な商品を提‘供できるかが問われます。
経費コントロールと品質アップという相反する課題を乗り越えて経営を維持
していくためには接客・サービス部門に限らず、あらゆる現場で仕事の効率
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化、生産性向│その努力が求められます。
本レポートでは消蹄・リネン、設備管理部門の業務改善活動について実際の
取組み事例を交えながら考えてみたいと思います。
今回参考事例としてご紹介するのは、山梨県河口湖畔にある富士レークホテ
ル様(以下、岱士レーク様)です。昭和7年創業の歴史あるホテルで、平成11
年頃から施設にユニバーサルデザインの考え方を導入しはじめ、平成18∼20年
にかけて全客室の約30%にあたる23室をバリアフリー化するなど「ひとにやさ
しいホテル」づくりを秋極的に進めていらっしゃいます。
このような活動が認められ、平成23年12月には内閣府よりバリアフリー・ユ
ニバーサルデザイン推進功労優良賞を受賞されています。
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業務改善の取組みにも熱心で、部門ごとに改善活動方針を策定し、業務の効
率化・高質化に全社を挙げてチャレンジしています。
今回のレポートをまとめるにあたり、画像や図表の提供など全面的にご協力
ただきました。紙面をお借りして御礼を申し上げます。
いただきました。
(塩越)
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品質向上につなげる「現場業務改善」作戦
1.業務改善は5Sの徹底から
①5S活動の意義と効果
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「5S活動」は品質管理、能率向上、危険防止などの観点から特に製造業や
建設業では職場環境の維持・改善を推進するスローガンとして重要視されてい
ますが、5Sの考え方はサービス業においても同様に+分通用するものです。
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の頭文字の「S」をとったものです。
5Sの定義は一般的に以下のように説明されます。
1)整理…必要なものと不要な物を区別し、不要なものは処分すること
2)整頓…必要なものをすぐ取り出せるように置き場所や置き方を決め、
その表記を行なうこと
3)清掃・・・清掃を行ない、ゴミや汚れのない状態を保つと同時に、細部
まで点検を行なうこと
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4)清潔…整理・整頓・清掃を徹底し汚れのない清潔な職場を維持すること
5)膜け・・・約束したことを約束した通りに実行する習慣をつけること
5S活動の導入や進め方についてはさまざまな専門書に詳しく解説されてい
ます。製造現場を想定しているケースがほとんどですが、内容を旅館業に置き
換えても効果は十分期待できるのではないでしょうか。
旅館が5S活動を導入した場合、以下のような成果が生まれると考えれられ
ます。
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仕事のムダの減少・・・物を探すムダの減少、運搬・搬送のムダの減少
品質のムラの減少…間違いの減少、作業基準;吃j:どによるムラの減少
安全・安心の確保…通路の確保による安全、表示の徹底による安心
納期の確保…計画管理による指示の明確化、管理の徹底による統制化
モラールの向上…綾による時間管理の徹底、服装の徹底、挨拶の徹底
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②5S活動でサービス評価向上
富士レーク様では数年前から5S活動を本格的に開始しています。
当初は清掃・リネン部署からのスタートでしたが、今では全部署にこの考え
方が浸透し、フロントや接客サービス部門の活動方針にも反映されるように
なっています。
下の写真①から④は清掃・リネン部署の現場風景写真です。
写真①業務用通路にはセンターラインがあり、ヒトやカートがスムーズに
行き違いできるように工夫されています。
写真②リネン用カート置き場の床には駐車ラインが引かれ、館。フロアご
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とに所定の駐車位置に必ず置く・戻すことで所在が一目で分かる
ようになっています。
写真①
写真②
写真③貸出し備品類は全て定位置が決まっていて出庫・在庫状況がすぐに
わかり、探し回る手間がいらないように工夫されています。
写真④引き継ぎノートを活用し、翌日の担当者に情報を伝え、作業のミス
ロスを起こさないようにしています。
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写真③
写真④
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5Sの定義を実践したさまざまな工夫・アイデアはバックヤード事務所まわり
に限らず、各階のパントリーや物置など、館内のいたるところに見られま式
写真⑤客室階の物置スペースには清掃用具類が整然と並べられ、必要なもの
が常に定数揃えられています。
写真⑥ドライバー、ハサミ、ネジ。ナット類、テープなど、緊急時にこの
ケースひとつ持っていけば迅 速に応急処置ができるよう工夫された
キットボックスです。
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写真⑤
写真⑥
このような地道な改善の積み重ねによって、作業にとりかかる段取り時間が
短縮されたり、作業そのもののスピードアップや精度の向上など、業務の合理
化・効率化に大きく貢献しています。
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業務改善の効果は接客サービス部署にとってもメリットがあります。たとえ
ば、お客様への貸出し備品やサービス用品をあちこち探し回るといったムダを
なくし、迅速にお届けできるようになれば、直接的にサービス評価向上に繋が
ります。清掃不良やメンテナンス不備などの苦情やクレームが減少すれば、旅
館全体の評価アップにもつながります。
5Sの導入・実践は結果的にお客様に対するサービスレベルの向上にも一役
買う有効な改善手段といえるでしょう。
2.清掃。・クレームゼロヘの挑戦
①清掃のスケジュール化と実施管理
旅館の消州業務を大別すると、州除機がけや客室の 〃 付け∼洗浄・清拭き∼
補充・セットなどのルーチンな「通常清掃」と、季
節
季節の節目や一定の期間を慨
いて行なう「特別清掃」に分けられます。
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経営雌l迦i2
特別清掃は一例を挙げれば、浴場カランのスケール除去やエアコンフィル
ターの清掃、ベッドの下のホコリ消掃、冷蔵庫の霜取り、照明器具の小虫除去
などで、その作業の規模や難易度、必要作業時間は多岐にわたります。
特別清掃を確実に実行し、整備・点検・調整・注油などを定期的に行なうこ
とは施設・設備を合理的に維持していくために欠かせない重要な‘仕事です。
写真⑦は特別清掃の計画群です。特別浦掃はその都度の思いつきではなく、
年間でスケジュール化することでタイミングを逸しないように管理します。そ
のためにはこのような計画書を作成しておくと便利です。
画像では分かりにくいですが、一番左側に作業名、その右側に適用期間、実施
頻 度、対象範囲、実施方法と注意事項、点検担当者名などが書かれています。
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写真⑦
年間実施日をあらかじめ想定したり、閑散日に作業する項目をリスト化・ス
ケジュール化しておくことが、計画清掃を無理なく実施するうえで大切なポイ
ントです。
図表①は月次レベルに落とし込んだチェック表の一部を抜粋したものです。
このように見やすくチェックリスト化して記録することによって、実施漏れ
などを起こさないよう、管理することができるようになります。
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図表①
富士レーク様では、社員・パートの出退勤と休日調整を週単位のミーティン
グで行なっています。お客様の入込状況によって、勤務者の人数や業務の割り
振りは部門長が調整し、客数が少なく比較的人手に余裕がある日を利用して、
特別清掃などの業務を、事前に計画的に組み込むようにしています。
これにより閑散日にも手待ち時間を作ることなく、繁忙時期にやりきれない
清掃や整理・整頓などを計画的に実施することができるようになりました。
、
*
〆
②情報フィードバックでミス再発防止
浦掃不良や備品のセットミス、臭いの問題など客室消拙に関わる品質向l己は
どこの旅館にとっても改善したい課題のひとつであろうと思います。
一般的に行なわれている対策には清掃作業を担当した係とは別の社員が仕上
がりのチェックをして回る、などの方法が多いようですが、いったん終了した
作業の不備をチェックしてもう一度やり直しをさせるというのは、労力のムダ
が発生しコストアップにもなってしまいます。
この問題を解決するには、チェックの強化だけでは不十分です。その前のプ
ロセスである清掃・セット業務そのものの精度を高め、品質をキープしていく
管理体制が必要になります。
富士レーク様では、客室清掃・当日セッティングは自前のパート社員が担当
しています。それを同じ部署の別のスタッフが、1室ずつ仕上がりをチェック
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し、問題点を発見した場合は業務シートに記録しておいて、翌日のミーティン
グで全員にフィードバックするようにしています。
これによって、指摘を受けた本人の業務取組み意識も改善され、チーム全体
のミスの再発防止にも大きな効果を発揮しています。
また、フィードバック件数は項目ごとに集計され、どのような不備が多いの
か、問題がどこにあるのかが一覧化され、清掃品質改善のデータとして活かさ
れています。
フィードバックによる情報共有は簡単な方法ですが、同じ作業のやり直し
や、クレームを未然に防ぐのに有効な手段であると思います。
3.施設管理。"突発事故撲滅への取組み
−.望
①事後保全から計画保全へ
施殻や設備の保守管理不徹底によって発生する突発的な故障や事故は、営業活
動に及ぼす影響も大きく、お客様のクレームを引き起こす要因にもなります。
設備故障や事故が原因で臨時休業などになれば、その被害はさらに甚大です。
このような突発的なアクシデントを未然に防止し、営業上のリスクを軽減する
ためには、計画的な自主保全の取り組みが欠かせません。
計画的な自主・保全を導入することによって、設・備の更新時期や部品交換サイ
クルなどが把握でき、ゆとりを持った発注交渉、適正価格での資材調達ができ
るようになります。
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一方、事後保全の場合、いったん施設や設備にトラブルが発生すると、緊急
対応を必要とするケースがほとんどであり、見積り合わせをする余裕もないま
まに言いなりの価格で発注せざるを得ない、といった状況も考えられます。
また、計画的な自主保全は、必要な予備部品をメーカーの保管期間内に入手
しておいて修理可能期間を延長したり、オーバーホールをやり易くするなど、
資産維持コストの軽減効果も期待されますので、経営的にも大きなメリットが
生まれ、安心。安全な経営にもつながります。
②自主保全計画の構築
鱈士レーク様では施設管理の効率化・高質化を推進するための手段として自
主保全の徹底に力を入れています。
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1)設備全般にわたる中期保全計画
2)ボイラーなど重点インフラに関わる保全計画
3)給排水、空調、冷暖房に関わる保守交換。必要最低限の予備品在庫管理
4)故障発生時のミニマムストップ(故障停止期間を最小限にする)対応手順
これらの保全計画や保守手順に従って突発事故撲滅
などが細かく定められ、
に取り組んでいます。
③データの記録と活用による精度アップ
モ エ
計画保全・自主・保全の精度を高め、コスト削減と品質向上の貢献度をより一
層高めていくためには、日常の,保守管理業務で積み重ねられた、さまざまな
データの分析と活用も大切です。
図表②は設備別の故障発生件数を一覧化したものです。
これによりどのような投伽でどのような故障が起きやすいのか傾向をつかむ
ことができるようになります。
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図表②
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また図表③は月別の故障発生件数と予防保全によるトラブル回避の推移をグ
ラフ化したものです。
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図表③
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このように、故障や不備の傾向や頻度を継続的に記録・収集し、分析・把握
することで、より粘度の商い保全計llI1iを検討する際の参考にしたり、自部門の
業務貢献度を計るモノサシとして活用することもできるようになります。
4.全員参加の業務改善活動
①現場主体の提案活動の実施
業務の改善を継続的に進化させていくためには、日々現場で働く社員から出
される提案を職極的に取り入れ、全社員参加で効率化・高質化に取り組んでい
くのだ、という社風づくりとルール化も大切です。
富士レーク様では「改善メモ」と「気づきメモ」の2種類のシートを作成
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し、全社員を対象に改善の意見をくみ上げるようにしています。
●改善メモ
1)改善前の問題点、2)改善したこと、3) 具体的な改善説明、
4)その効果を−表にまとめて記入、提出
●気づきメモ
1)現状の問題点・課題、2)こうすれば良し 1 と い う ア イ デ ア を − 表 に
まとめて記入、提出
提案された気づきメモのうち検討に‘''11〔するものはQc会I雛で採否を検討し、
優秀なものは即時採ルlして改善に役立てています。このアイデアはもともとお
ごと温泉の湯元舘様からいただいたものですが、開始から2年目に入り徐々に
定譜しつつあります。
②クレームに即対応する体制づくり
富士レーク様では、
冨士レーク様では、クレーム改善対策やお客様満足度向上のための情報源と
して、お客様アンケートをフル活用しています。
チェックアウト時に受け取ったお客様アンケートは、その日の夜に全ての情
報がナイトフロント係によってパソコンでエクセル表に入力されます。
そしてそのデータは翌朝一番に社長が月を通し、その後朝8時30分には全て
の社員に配信されるようになっています。
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つまり宿泊翌々日の朝にはお客様アンケートの内容を全社員が共有している
ということなります。
アンケートにクレームや不満などのコメントがあった場合、現場で直接解決
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つながりますし、教訓を活かして再発防止対策の徹底化を図ることで作業精度
向上効果も得られます。
③PDCAサイクルで改善推進
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業務改善活動はガンバレの掛け声だけでは長続きしません。
成功させるためには、自分たちの努力の成果を客観的に評価できる基準(数
値目標)を設けておく必要があります。
達成・未達成の判定には客観的な数値データが欠かせません。お客様アン
ケートの点数やクレーム件数を数値化すれば判定材料として有効に利用できま
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。また、数値化することによって、前年同月比較や月別推移、諸比率比較な
ども容易になります。
そして改善の推進には、目標に対する達成度合いを自己評価し、未達成の部
分に対して次にどのような手を打っていくのか、軌道修正しながら目標に近付
けていく、PDCAサイクルの仕組みづくり(例えば月例の目標管理ミーティ
ングなど)が大切です。
寺ざ
5.おわりに
ひげ
以上、本レポートでは業務改善と品質向上について実際の取組事例を交えな
がら書かせていただきました。
ひとつひとつはささやかな改善でも、積み重なっていくことで、大きな価値
を生むことに繋がるのだと思います。
乾いた布を絞るようなものだと諦める前に、もう-度絞る努力をしてみてく
ださい。まだ絞り切れていない事実が見つかるかもじれません。
9