m?C?

技術解説資料
1.今日のノイズ問題
電気通信は19世紀前半に始まりましたが、その頃の歴史
をちょっと振り返ってみましょう。
1837年:有線電信の発明・・・・・モールス(米)
1876年:電話の発明・・・・・・・・・ベル(英)
1895年:無線電信の発明・・・・マルコーニ(伊)
1920年:世界初のラジオ放送開始(米)
1925年:初のテレビ実験成功・・・ベアード(英)
実は、今日のノイズ問題はこの電気通信の始まりとともに
スタートしています。ベルの電話は初め、交換手の声が
聞き取りにくいという問題が発生しました。つまり当時の
電話回線は周波数帯域が狭く、大人の音声ではノイズが
のりやすかったためです。そこで、とりあえずの対策として
交換手に10才代の少年を起用しました。少年の音声は周波
数が高くシャープだからです。また、マルコーニの発明に
より規律性の無い中で無線局が急増し混信障害が問題に
なりました。
このように、古くは通信障害から始まったノイズ問題も
今日においては多様化し、電子回路の誤動作という新たな
問題が発生してきました。
動作電圧の低下
高集積化
アナログからデジタル
耐ノイズ性の悪化
ノイズの発生源
高速化
図1-2 真空管からLSIに変わって
現在、電子機器の発達・普及は著しく、産業機器や事務
機器はもちろんのこと、家庭電化製品、おもちゃ用品、
あるいは自動車などあらゆる分野でエレクトロニクス化が
進みました。そして、それが使われる領域は限られた場所
から公共の場、各家庭へと広がり完全に庶民の生活に溶け
込んできています。従って、ある日突然、これらが正常に
動作しなくなった場合、それが及ぼす影響は大きく庶民の
生活を不安なものにします。
たとえば、身近な例ではテレビの近くでパソコンを動作さ
せるとテレビの画面が乱れたりしますが、これはパソコンか
ら出ているノイズがテレビに悪影響を与えている結果です。
さらに深刻な例は、ロボットの暴走による人身事故、TV
ゲーム機による電車無線への妨害、その他コンピューター・
オンラインシステムの誤動作、交通信号の誤動作など、実
例が多くあります。
今後ますます電子機器が氾濫し、電波需要が増大するな
かで、このようにノイズ障害の問題は深刻さを増し今やノ
イズ公害とまで言われ、世界的にその対策が論じられ実施
に移されています。
図1-1 通信障害
電子回路の主役は真空管からトランジスタへ、そしてIC
へ、さらに高集積化されてLSIへと移り変わり、その動作電
圧は数百Vから数Vに、またアナログからデジタルに変わり、
さらに高速・高周波化されてきました。その過程において、
電子回路はノイズ発生源となり、また同時にノイズの影響を
受けやすくなってきました。
図1-3 パソコンから出るノイズでテレビの画面が乱れる
C-3
2.ノイズとは
1
2
ノイズの定義
辞書によれば、「ノイズ(雑音)」は次のように書かれ
ています。
・さわがしい音、不快な感じを起こさせる音
・電話、ラジオなどの聴取を妨げる音
・電気通信の回路または機器において、信号の邪魔に
なる電気的擾乱
電気・通信・情報の分野で問題とするノイズは次のよう
に定義できます。
ノイズの発生源
私達の周囲には図2-3にしめすように多種多様なノイズの
発生源が存在しています。自然ノイズは自然界で発生する
ノイズで、地域や時期で周期的に変化して機器に影響を
及ぼすものです。そして、人工ノイズは私達、人間が作っ
た機器から発生するものです。これは機器の増加に伴ない
時代とともに増え続けてきました。
このなかで、近年ますます増加して問題となっているのが
ON/OFFノイズ(断続ノイズ)です。これは単発的に、あるいは
連続的にON/OFFする素子または機器から発生しますが、そ
の代表的なものを図2-1に示してあります。
トランジスタ
FET
ダイオード
SCR
ノイズとは目的とする信号(情報)が正確に伝わる
のを妨げる要因である。
ここではこのように簡単に言い表しましたが、実際の
ノイズとなると様態は多種多様で、その正体をつかむのは
容易ではありません。
信号(情報)の伝達においては、必ず「発信源」と「受信元」、
そしてそれをつなぐ「伝達経路」があります。ノイズの影響
度はこれらのいろいろな条件によって変わってきます。
たとえば、発信源から出る信号が強ければ多少のノイズが
入り込んでも支障はないでしょうが、それが弱い場合はノ
イズに妨害されて受信元でその信号を正確にキャッチでき
なくなります。また、受信元の感度が良すぎると目的とし
ない信号まで一緒に受信し、これがノイズとなります。
このように、ノイズは絶対的なものではなくあくまでも
相対的なものであることを理解しておく必要があります。
スイッチ
リレー
図2-1 ノイズ発生素子
これらのON/OFFでノイズが発生する原因は次の通りです。
ところで、ノイズによる障害は次に示す3つの要素がそろっ
てはじめて成り立ちます。このどれ1つが欠けてもそれは
生じません。
・急速な電圧・電流の断続
・それに伴うON/OFF素子周辺の配線等が持つLC
成分によって増大された電圧、電流の振動
・急峻な立ち上がり、立ち下がりによる高周波成分
・機械接点の開閉時の火花放電
リレー
発生源
伝達経路
装置
障害元
また、障害のレベルは発生源での「発生エネルギーの強さ」、
伝達経路での「伝達のしやすさ」、障害元での「障害の受け
やすさ」によって変わってきます。従って、ノイズ対策は
この3要素に対して行うことになり、基本は以下の通りです。
装置
配線による
LC回路は必ず
火花
共振する
図2-2 ノイズの発生(機械接点の場合)
発生源・・・・発生エネルギーを弱くする
伝達経路・・・伝達しにくくする
障害元・・・・障害を受けにくくする
自然ノイズ
ノイズ
(雑音)
大気内ノイズ(雷放電、熱雑音)
宇宙空間ノイズ(惑星電波、太陽電波、銀河電波)
連続振動ノイズ(無線装置、デジタル回路、高周波加熱炉)
スイッチングノイズ(半導体、IC、スイッチング電源)
人工ノイズ
グロー放電(ネオンサイン、蛍光灯)
断続ノイズ
放電ノイズ
コロナ放電(超高圧送電線、オゾン発生器)
摺動接触(電車、整流子電動機)
火花放電
開閉接点(リレー、スイッチ)
点火接点(自動車、バイク)
図2-3 ノイズの体系図
C-4
3
ノイズの伝わり方
ノイズの伝達経路は空間を飛ぶか、物質を伝わるか、の
2通りです。そして空間へは磁界、電界、あるいは電磁波
(電波)といった形で飛び出し、物質については電気を通す
導体(金属、大地など)を伝わります。また、空間を伝わった
ノイズは最終的に導体を通して障害元へ伝わります。図2-4
にそれらの関係を示します。
(放射)
空間
磁界の影響は1本の線よりループになった線の方がより
強力になります。またそのループが大きければ大きいほど
強力です。出す方も受ける方もこれは同じです。また
電流の変化量が大きいほど強力です。
大
き 受ける側も
い 出す側も
小
さ
い
磁界
電磁誘導
で導体へ
電界
ループの面積が大きい
電流の変化が大きい
電磁波
大きい影響
伝達
図2-6 伝達しやすい条件(磁界)
ノーマルモード
導体
コモンモード
(伝導)
図2-4 ノイズの伝達
図でもわかるように空間を伝わったノイズは結局、導体を
伝わり障害箇所に行きます。
●電界による伝達
向かい合った2つの導体間に電圧が加わるとその間に電界
が発生します。電界はお互いの導体に電荷を誘起させ、
それによって電流が流れます。図2-7のように近接して
向かい合った2枚の導体板の一方にノイズ電圧が発生する
と、電界を介して他方にもノイズ電圧が誘起されます。
このように電界は電圧と密接な関係をもっています。
(1)空間を伝わる
空間を伝わる3つの形態、磁界・電界・電磁波について
少し詳しく説明します。
●磁界による伝達
導体に電流が流れると、その周りに磁界(磁束)が発生
します。また逆に磁界(磁束)の中に導体をおくとそれに
電流が流れます。従って、導体が近接していると相互に
影響しあいます。図2-5のように並行した2本の導体の
一方にノイズ電流が流れるとそれによって発生した磁界を
介して他方にもノイズ電流が誘起されます。このように
磁界は電流と密接な関係をもっています。
電界によるノイズの源は電圧
電界による伝達は、実際には半導体と絶縁板をはさんで
それが取り付けられている放熱器との間、あるいはトラ
ンスの1次巻線と2次巻線との間などでで行われます。
電界によって伝達しやすい条件は次の通りです。
1.
2.
3.
4.
磁界によるノイズの源は電流
発生源の導体面積が大きい
発生源の電圧変化が大きい
伝達先の導体面積が大きい
発生源と伝達先が近接している
e
i
ところで電流は流れ出たところに必ず戻る性質があり
ます(キルヒホッフの法則)。従って、ノイズ源となる
回路はノイズ電流が流れ出て戻ってくる1つの閉ループを
形成します。実際には線材による配線、プリント基板上の
パターンなどでそれが形成されます。
磁界によって伝達しやすい条件は次の通りです。
1.
2.
3.
4.
板が向き合いeがかかるとiが流れる
(a)電界の発生
発生源のループ面積が大きい
発生源の電流変化が大きい
伝達先のループ面積が大きい
発生源と伝達先が近接している
e
A
d
物質
平行線の場合
電流を流す
誘起される電流
磁束
ループの場合
電流を流す
dが小さいほど
よく通る
Aが大きいほど
eが大きいほど
(b)伝達しやすい条件
図2-7 電界による伝達
誘起される電流
●電波(電磁波)による伝達
電波は電磁波の一種です。
磁界または電界を出すところに高周波の電流または電圧を
かけると電波が出ます。また電波は光速で伝わる波です
が、これは水の波と同じく強く
(高く)
なったり弱く
(低く)
なったりとサイクルを繰り返します。
一方に電流が流れると他方にも誘発する
図2-5 磁界による伝達
C-5
一つのサイクルの長さを波長と言いますが、これは電波
(光)の速さと周波数によって決まります。図2-8にこの
関係を示します。
石
水面
波の進行方向
波
t
1サイクル
1波長=
1/6波長以上離れないと電波とならない
電
界
発
信
源
電圧引加によるノイズ源
磁
界
発
信
源
電流ループによるノイズ源
ex: 1/6波長とは、300MHzで約17cmの距離
光の速さ
3×108
=
f
周波数
図2-11 電波の放射する条件(その2)
300MHzでは1波長=1m
図2-8 電波と波長
磁界、電界による伝達では発生源の強さと伝達先との
距離が重要な要因でしたが電波でもこれは同様です。
しかし電波による伝達では、この他に波長との関連が大
きな要因となります。電波を発射する側もそれを受ける
側もその導体の長さが波長の1/4の整数倍でないと伝達は
うまくいきません。アンテナはこの性質を利用してエレ
メント長を波長に対応させています。
(2)導体を伝わる
導体を伝わるノイズは図2-12に示すようにその伝わり方
によって次の2つに分けられます。
・ノーマルモードノイズ
・コモンモードノイズ
電子機器
ノイズ源
1波長
(a)ノーマルモードノイズ
1/4波長
電子機器
図2-9 波長とアンテナ
ここで具体例をあげますと、たとえば、問題になって
いるノイズの周波数が300MHzとします。300MHzの1波
長は1mですから、1/4波長は25cmです。従って、ノイズ
の発生源にこの整数倍、つまり、25cm、50cm、
75cm、・・・・・の長さの導体があるとこのノイズは放
射しやすくなります。また受け側でもこの長さの導体が
あるとノイズを受けやすくなります。このように波長の
整数分の1、または整数倍の長さで強調されるのが電波の
特徴です。ここでの導体は、実際には配線(磁界の発生源)
や筐体・放熱板(電界の発生源)などになります。
電源
基板
80cm
L
1/4波長の長さ
(25cm)
300MHzが強調される
波長の1/4の長さが
決め手!
L=25、50、75cm...
図2-10 電波の放射する条件(その1)
また、電波はその放射源と受け側との距離が近すぎると
波にならず、電界・磁界に留まります。その距離は1/6波
長です。
C-6
ノイズ源
(b)コモンモードノイズ
図2-12 ノーマルモードノイズと
コモンモードノイズ
図2-13上で電源線・信号線は行きと帰りの2本の線でかかれ
ます。ノーマルモードノイズの通り道はこの2本の線です。
ところがノイズに関してはもうひとつ別の隠れた経路が
あります。それは回路周辺にある導体(接地線、きょう体、
大地)を通る経路です。これがコモンモードノイズの通り道
です。本来この通り道がなければノイズの問題もかなり
楽なのですが、装置の多くは金属きょう体でおおわれ、
また大地に接地されたりしているため、この経路はどうし
ても存在します。また、装置のきょう体・接地線などは
一般的に高周波でのインピーダンスが電源線や信号線(配線
やプリント基板のパターン)に比べて非常に低くノイズの
良い通り道になります。
Rs
ノーマルモードノイズ
enn
PCB
電源・信号線
RL
Rs
装置
N
コモンモードノイズ
ecn
接地線・筐体・大地
Rg
筐体
浮遊容量
enn: ノーマルモードノイズ電圧
ecn: コモンモードノイズ電圧
Rs : 電源線・信号線のインピーダンス
Rg : きょう体・接地線等のインピーダンス
RL : ノイズを受けるインピーダンス
図2-14 実際の回路
図2-13 導体を通るノイズ
3.ノイズ対策
ノイズ対策はさきに述べたように発生源、伝達経路、障
害元にそれぞれの特徴性質に応じた対策を施します。ここ
では対策の基本的な考え方について述べます。方針無しで
無手勝つ流に対策に走ると当たるに八卦で、当たると早い
がほとんどの場合時間の浪費で終わってしまうのがこのノ
イズ対策です。対策に走る前に基本を見直して取り掛かる
ことが大切です。
1
はじめに
電子機器でノイズを問題とする場合、次の二つがあげられ
ます。
(1)外来ノイズにより機器が誤動作する。
(2)機器自身からノイズが発生する。
これらの問題に対して、最近は各国でノイズ規制が活発化し
ています。代表的なものとしては、受信機における外来ノイ
ズの排除能力を規制した西ドイツのFTZ規制、又、機器自身
からの発生ノイズを規制したCISPR(国際無線障害特別委員
会)
、FCC(アメリカ:連邦通信委員会)
、VDE(西ドイツ:
電気技術者協会)があります。このような状況下で、我が国
においても以前よりノイズ規制が検討され続けてきましたが、
その結果としまして、昭和61年4月からCISPRに準拠した規
制内容でVCCI(情報処理装置電波障害自主規制協議会)が発
足しました。
発生のノイズの規制には、伝導ノイズによる雑音端子電圧
と、輻射ノイズによる雑音電界強度があり、雑音端子電圧
では10KHz∼30MHz、雑音電界強度では10KHz∼1000MHz
程度の周波数範囲で各国共規制値を決めています。
なお、この様な各国のノイズ規制は、現在、電子機器の輸出
において一つの障害にさえなっています。
今後は、これらの規制及び現実の複雑なノイズ問題を考え
合わせた場合、電子機器において入ってくるノイズと出て
いくノイズのどちらか片方について対策すれば良いという
ことではなく、両者同時に対処していかなければならない
というのが現状です。
2
ノイズの伝達経路
問題となるノイズの伝達経路には次のものがあります。
(1)電子機器が誤作動する場合
①電源ラインを伝わって入ってくる
②輻射・誘導によりラインに誘起する
③輻射・誘導により機器に直接誘起する
④機器自身が内部にノイズ発生源をもつ
(2)電子機器自身からノイズが発生する場合
⑤電源ラインを伝わって出ていく
⑥機器自身から輻射される
⑥
ノイズ源
電子機器
ノイズ源
④
③
②
①
⑤
図3-2 ノイズの伝播経路
3
発生源での対策
基本方針は
☆発生エネルギーを最小に抑える − もとを断つ
☆そこから外部に出づらくする − 臭いものには蓋
の2点が重要です。
幅射ノイズ
電子機器
伝導ノイズ
図3-1 入ってくるノイズと出ていくノイズの
両者について対処しなければならない。
C-7
4
伝達経路での対策
ノイズを受けるところRLの両端にコンデンサを
つけてノイズをコンデンサに通してバイパスを
させRLには行かないようにする。
(1)導体を伝わる場合
もう一度、導体を通るノイズの回路を見てみましょう。
Rs
enn
ノーマルモードノイズ
RL
Rs
ecn
コモンモードノイズ
Rg
これも有効ですが、これが信号ラインの場合必要帯域を
確保しなければならな事から制限があります。電源ライン
では有効ですが。ノーマルのノイズに対してはさらに、上
の線にコイルを入れてノイズを通しずらくし、それでも通
ってきたものをコンデンサで帰してやるとより効果があり
ます。フィルターの原理です。
図3-3 導体を通るノイズ
Rs
enn
ここで回路上で打てる対策は次の5通りとなります。
グランドの線のインピーダンスを最小にする。
Rs
先輩が常日頃グランドは太く短くといっていることです。
これをやると、コモンモードの電流はここを通って帰って
行くのでR Lを経由しないことになりノイズとしてでてこな
い。しかしこの対策には限度があります。線路の長さを0に
できない、太さもそこそこにしかできない。従って必ずし
もインピーダンスはゼロになりません。
ecn
Rg
図3-6 ノイズのバイパス
コモンを通すライン、一番下側の線を切れば
コモンノイズがカットできる。
Rs
enn
RL
太く短く
グランド
ecn
回路のフローテング方式です。確実なのはプラスチック
等の電気を通さない筐体で囲う方法ですが、今度は放射ノ
イズが素通しとなります。金属筐体でフローテング方式を
すると今度はリーク電流による感電に対する安全確保を十
分考えなければなりません。
Rs
Rg
図3-4 グランドは太く短く
enn
RL
コモンのノイズ源とノーマルのノイズ源を
ショートして出たところへ帰す。
Rs
交流的にショートする事はコンデンサを接続する事です。
これもよくやられる事ですが、余り効きません。図3-3の
enn,ecnはノイズ源を示していますがこれが厄介です。効
かないのはまずそれぞれのノイズ源は出力のインピーダン
スが低い場合が多くコンデンサをいれても効かない場合が
多いからです。さらに理屈では容量の大きいコンデンサは
効きがよいはずなのに、現実では容量が大きいコンデンサ
は高い周波数では効きが悪くなります。
Rg
(グランド
インダクタ)
図3-7 コモンカット
上と真ん中の線を同時にカットするとコモン
電流が流れなくなります。
コモントランス
フォトカップラー
光ケーブル
RL
ノイズショート
Rs
ecn
ecn
奇異に聞こえますが、下記の方法があります。
Rs
enn
RL
ノイズバイパス
コモンチョーク
差動増幅器
これらは2本の線を同時にカットします。
Rs
ノイズショート
enn
RL
Rg
図3-5 ノイズ源ショート
Rs
ecn
Rg
トランス
フォトカプラ
コモンチョーク
図3-8 コモンカット
C-8
差動アンプ
(2)空間を伝わる場合
●磁界による伝達
●電界の場合
コンデンサと同等の問題ですから図3-11のように出て
くる側につながっているノイズ源の反対側の電極から受
けるための板を用意します。これはノイズ源に帰す簡単
なコンデンサとなります。このための板は導電性の良い
ものでなければなりません。
(A)消費させる
(B)シールドする
(C)ループをなくす
金属等の導体に磁界を通り抜けさせるとその金属に渦
巻き状の電流(渦電流)が流れます(渦電流)この電流
が導体の持つ抵抗で消費されます。
面実装されたトランジスタの場合
トランジスタ
シールド層
ベースプレート
抵抗
磁束
渦電流
等価回路
金属
シールド層
図3-9 渦電流
磁束
ノイズのリターン回路
浮遊容量
ベースプレート
金属
図3-13 静電シールド
磁束は通り易い所を通る
磁束が通り易い金属で回路を覆う
また受ける側では導電性の良い導体で覆います。これ
が静電シールドです。この場合注意しなければならない
のが図3-12のようにその回路のコモン側に1点のアースを
します。つまり出す側に対して受ける側の電位が違いま
すからこのシールド用の導体には電圧が誘起され、電流
が流れます。この電流を余計なところに流さないように
するためです。
金属が向き合うと
コンデンサになる
1. 同じ電位にする
2. 余計な所に電流を
流さない!
箱の中には磁束が入り込まない
図3-10 磁気シールド
磁束が通り易い金属で覆うとその金属にのみ磁束が通り
覆われた中には入ってこない。これが磁気シールドです。
磁界が発生しずらいように、電流のループになっている
ところをできるだけ小さくする。
FG
図3-14 静電シールドのアース
この対策をするときに十分注意しなければならないのは
電気的に浮いた金属を作らない事です。
信号線
生き別れ配線
面積を最小に
短く!
図3-11 ループをなくそう
この対策の効果と発生箇所の発見方法は、図3-10のよ
うな小さなループアンテナを作りこのループに入ってく
る磁界の方向で確認できます。
磁界の元が分かる
電子回路、装置
FG
スペアナ、
オシロスコープ
●電波(電磁波)の場合
電波の場合先に述べた様に、電界と磁界両方の性質を
持ちますので基本的には電界、磁界両方について対策を
取らなければなりません。そしてその上で電波の波の性
質に対応した対策を加えることです。
電界、磁界の対策が始め。
この波は波長と関連し、1/4波長の整数倍が電波の強調
点となります。従って出す側も受ける側もこの周波数の
線材の長さ、筐体の大きさ、板金等の風穴、隙間の長さ、
回路基板の形状に対応した周波数の電波が強調されます。
この対策には次の2通りがあります。
機器内部周波数に対応した物理的な形状を避ける。
機器の物理的形状に合う周波数の電流または電圧
を筐体または、外部の配線に流さない。
もう一つの特徴は、電波の場合周波数が高くなるほど
反射が起きやすい事です。
フローブの方法
同軸ケーブルの方法
図3-12 磁気フローブ
金属による反射を利用する。
(電波と関連する大きさであってはならない)
C-9
通常、電界を源とするノイズ電波は出す側も、受ける
側もコモンモードノイズです。磁界を源とするノイズ電
波はノーマルモードノイズが主体です。
機器の外部に出る導体のノーマルモード、コモン
モードを低く押さえる。(筐体、配線)
5
障害元での対策
ノイズ障害は電子回路の至る所が可能性として考えられ
ます。しかしノイズの障害は必要としている信号と不要な
信号が紛らわしい大きさになったときに起こります。
ノイズ障害が発生しているところは必ず信号と対等な不要
信号があるはずです。この不要信号のレベルを必要な信号
に対して十分低くするのが対策です。
下記は分離と分割を計画的に設計しておくことが大切です。
リセット回路、リセットライン
クロック回路、クロックライン
バスライン
制御線
信号、ケーブルの入出力−−出入口の強化
入れない出さない
信号ので入り口は外来、または外部に出ていくノイズの1
番の通路です。この入出力ラインは主に電源ラインと信号
ライン、FGの3つです。各ラインとも共通しているのは入出
力のノイズの伝搬方法はノーマルモードとコモンモードの2
通りです。そしてこの対策はどちらも
弱いところを抑える。
まず基本はあらかじめわかっている回路の弱い箇所を十
分吟味することです。
整理に徹する・・・・・・回り道防止、出た所に戻す。
次に示すような回路の場合特に回路の分離を行い、回路
ブロックの整理が大切です。ここで1つの原則として信号の
出た所かならず信号を帰すことです。アナログ回路では重
要なことです。不要信号の回路が近くにありこの信号が回
路を通り抜けるとノイズとなります。整理の原則は信号の
発生源に最短のループで帰し、よけいな回り道を作らない
ことです。
高圧、低圧、高速、低速
入力、出力、ドライブ回路
大電力、小電力、大電流、小電流
電源、フィルターブロック
高ゲイン回路、低ゲイン回路
アナログ、デジタル、パルス
高インピーダンス、低インピーダンス
基準回路の強化・・・相対的な安定化
・・・同じ土俵に乗せる。
回路の信号を送るには必ず2本以上の線が必要で、どれか
の線を基準にして入力の信号を判断します。この基準にな
る線(レファレンス)が不安定であると信号の受取に誤り
が生じます。信号の送り手と受けての基準が必ず同じにな
るようにしなければなりません。特に次に示すような回路
のレファレンスに注意をしてくだい。
A/D,D/Aコンバータのレファレンス
オフセットレファレンスグランド
コンパレータレファレンスグランド
共通回路の強化−−共死にの防止−−
クリーン化と孤立化。
回路には共通にしなければならない場合があります。リ
セット回路や、クロック回路と言った回路です。これら回
路は線路が長く、いろいろな所を通りますからノイズの受
信器になり易い欠点を持っています。このラインにノイズ
が乗ると全システムがエラーを起こします。またラインが
長くこれが逆にノイズの発生源となります。特にクロック
はパワーが大きい場合が多く最後まで残る輻射ノイズの発
生源となります。
C-10
通り易くして、内部のノイズは発生源に戻
す、外部のノイズは外部に帰す。
伝搬をしづらくし、内部から出て行かない、
外部からは入らないようにする。
の2通りです。
回路のバランス・・・周波数帯域、レベルの
整合性同じものを使う
回路と回路素子は各々の周波数帯域を持ちます。回路の
設計ではこれを利用して必要な信号の処理を行います。デ
ジタル、パルス回路にしても同じです。この周波数帯域と
ノイズの周波数成分との兼ね合いを考慮することが大切で
す。必要以上に帯域を広げたり必要以上に早いロジック回
路を使うことは危険です。
4.ノイズフィルタとは
1
ノイズフィルタの作用
ノイズが伝わる経路はライン(電源線、信号線)と空間
に大別されます。ところでノイズフィルタはわかり易く言
えば、その名の通り「ノイズをろ過して取り除く」もので
すが、それは上記2つの経路の内、ラインに設置されてその
作用をします。ノイズがろ過されたとき、それを減衰効果
があったと言います。また、ろ紙にも目の粗いものと細か
いものがあって使い分けるように、ノイズフィルタにもろ
過したいノイズにより選択が必要です。
(2)の実際例として方形波インパルスノイズの減衰例を図4-4
に示します。方形波インパルスノイズを注入する試験は装置
の耐ノイズ性試験として一般化してきました。ノイズフィル
タはこのようなノイズに対しても減衰効果を発揮します。
方形波インパルスノイズ
試験機
NF
装置
N.F.
図4-1 ノイズのろ過
2
必要性と役割
今日の電子機器はその動作がデジタル化・高周波化され、
そのほとんどが大なり小なりノイズを発生し、またノイズの
影響を受けやすくなっています。前項で述べましたようにそ
れは社会問題化し、そしていろいろな規制が実施されつつあ
ります。ノイズフィルタはこれらの問題を解決するひとつの
手段として電子機器には必要不可欠なものです。ノイズフィ
ルタの具体的な役割としては、下記の2つがあります。
(1)
装置内で発生し、ラインを通じて外に出る
ノイズを阻止する。
(2)
外で発生し、ラインを通じて装置内に入って
くるノイズを阻止する。
装置からの発生ノイズ
外からの外来ノイズ
図4-2 ノイズフィルタの役割
(1)の実際例としてスイッチング電源の雑音端子電圧の減衰
例を図4-3に示します。スイッチング電源はその動作原理上、
内部で高周波ノイズを発生し、その一部は入力電源線を通
じて外にでます。雑音端子電圧はこのノイズの大きさを表
しますが、これはノイズフィルタをスイッチング電源の前
段にいれることにより、減衰させることができます。
図4-4 方形波インパルスノイズの減衰例
3
基本原理
ここで扱うノイズとは高周波の電気信号です。高周波の電気
信号を考えるにはインピーダンスの概念が必要となります。
直流回路で電圧E、抵抗R、電流Iとしたとしたときに
I = E / R (オームの法則)
の関係式が成り立ちます。交流回路においても同様に電圧e、
抵抗R、電流iとしたときに
I=e/R
の関係式が成り立ちます。これは電圧が一定のとき抵抗が
大きくなると電流はそれに反比例して減少することを表し
ています。
それでは、交流回路の抵抗をコイルやコンデンサに置き
換えたらどうなるでしょう。その結果は抵抗と同様に電流
を制限する働きはしますが、抵抗との違いは電圧の周波数
によってそのレベルが変化するところにあります。つまり、
コイルやコンデンサは周波数によって変化する抵抗分をもっ
ていると考えられ、これをインピーダンスと言います。そ
して、その大きさは次式で表されます。
コイルの場合・・・・・ZL=2πfL
コンデンサの場合・・・ZC=1/2πfC
f:周波数
L:コイルのインダクタンス
C:コンデンサの静電容量
〔
〕
これより、次のことがわかります。
スイッチング電源単体
スイッチング電源+ノイズフィルタ
120
120
100
100
雑
音 80
端
子 60
電
圧
40
(dB)
1. コイルは周波数が高くなるほどインピーダンスが
大きく
(高く)
なり、電流を通しにくくなる。
2. コンデンサは逆に周波数が高くなるほどインピー
ダンスが小さく
(低く)
なり電流を通しやすくなる。
80
コイルの場合
60
40
20
20
ZL
0
コンデンサの場合
0.05
0.1 0.15
0.3
0.5
1
3
5
10
30
ZC
0
周波数(MHz)
図4-3 スイッチング電源の雑音端子電圧減衰例
周波数
周波数
図4-5 インピーダンスの周波数特性
C-11
従って、コイルをノイズ源に直列に入れることにより高周
波のノイズ電流をおさえることができます。
L
装置
ノイズ電流
これまでは理想コイルおよび理想コンデンサで考えてきま
したが、実際にこれらでノイズフィルタの回路を構成しま
すと、いくつかの問題が生じてきます。それは、これらに
高周波信号を加えますと、回路図上には明記されないイン
ダクタンスや静電容量が存在することです。
巻線
ノイズ源
磁芯(コア)
図4-6 コイルはノイズ源に直列に入れる
また、コンデンサをノイズ源に並列に入れることにより高
周波のノイズ電流をバイパスさせることができます。
装置
ノイズ電流
図4-9 高調波でのコイルの等価回路
ノイズ源
図4-7 コンデンサはノイズ源に並列に入れる
ノイズフィルタは基本的にコイルおよびコンデンサのこのよ
うな性質を利用して高周波のノイズを低減するよう構成され
ています。一般的なノイズフィルタは低い周波数の信号を通
し、高い周波数の信号を阻止するローパスフィルタです。
コイルとコンデンサの組み合わせによる構成回路はいろ
いろと考えられていますが、最適な回路構成はノイズ源お
よび負荷のインピーダンスの大きさにより変わってきます。
図4-8にそれを示します。
1
Z1
図4-9に示すように、コイルは磁芯に巻線を施したもので
あり、隣接する巻線間には静電容量(巻線の分布容量)が
形成されます。従って、高周波でのコイルはインダクタン
スに並列にコンデンサを接続した形と等価になります。前
述したように、コンデンサのインピーダンスは高周波で低
くなりますから、高周波のノイズはコンデンサを介して通
過してしまい、ノイズフィルタとしての特性を悪化させま
す。一般に数百KHzから影響が出ます。
2
フィルタ
Z2
3
ノイズ源
Z1:ノイズ源のインピーダンス
Z2:装置のインピーダンス
ノイズ源の
インピーダンス
(Z1)
装置の
インピーダンス
(Z2)
小
小
図4-10 高調波でのコンデンサの等価回路
最適なフィルタ回路
1
2
1
2
3
小
大
1
2
3
大
小
1
2
3
1
2
3
大
大
1
2
3
図4-8 最適なフィルタ回路
C-12
一方、コンデンサは図4-10に示すように、電極にリード
線が付いていますが、これはインダクタンスを形成します。
従って、高周波でのコンデンサは直列にコイルを接続した
形と等価になります。コイルのインピーダンスは高周波で
高くなりますから高周波のノイズは通り難くなり、これも
また特性を悪化させる原因になります。一般に数MHzから
影響が出ます
4
構成素子
ノイズフィルタを構成する素子はコイルとコンデンサが
基本ですが、その他に感電防止用のブリーダ抵抗を接続す
ることがあります。各素子の使用例を図4-11に示します。
ノーマルモード
チョークコイル
コモンモード
チョークコイル
ここでノーマルモードチョークコイルはライン電流によ
ってコア内に磁束が生じますので、コアが磁気飽和しな
いよう注意が必要です。コインモードチョークコイルは
行きと帰りのライン電流によって同様にコア内に磁束が
生じますが、それぞれの発生方向は逆向きでお互いに打
ち消しあいますので、それによる磁気飽和の心配はあり
ません。また、各コイルの特徴は表4-1の通りです。
ノーマルモード
チョークコイル
ノーマルモード
ノイズ
1つのコアに
1つの巻線
金属圧粉
フェライト
50∼500μH
主な減衰ノイズ
コイル構造
コア材質
インダクタンス
コモンモード
チョークコイル
コモンモード
ノイズ
1つのコアに
2つの巻線
フェライト
アモルファス
0.5∼50mH
表4-1 ノーマルモードチョークコイルと
コモンモードチョークコイルの特徴
アクロス・ザ・
ラインコンデンサ
(2)
コンデンサ
コンデンサも用途別に区別しますと、アクロス・ザ・
ラインコンデンサとラインバイパスコンデンサがあり、
それらに要求される特性は以下の通りです。
ラインバイパス
コンデンサ
図4-11 ノイズフィルタの構成素子
(1)
コイル
コイルは用途別にノーマルモードチョークコイルとコ
モンモードチョークコイルがあり、それらに要求される
特性は以下の通りです。
1.ライン電流によりコアが磁気飽和しない
2.ノイズ電流によりコアが磁気飽和しない
3.対象とするノイズの周波数でインピーダンスが
高い
4.巻線の分布容量が小さい
ノーマルモードチョークコイルとコモンモードチョー
クコイルの動作原理を図4-12に表します。それぞれノイ
ズ電流によってコア内に磁束が発生しインダクタンスと
して作用します。
ノイズ電流による磁束
1.対象とするノイズの周波数でインピーダンスが
低い
2.リード線のインダクタンスが小さい
3.電圧印加時の静電容量変化率が小さい
4.耐電圧が高い
ここでアクロス・ザ・ラインコンデンサは電源ライン
相互間に、ラインバイパスコンデンサは電源ラインとケー
ス(アース)間に接続されるコンデンサを言います。
図4-13にそれぞれのノイズ電流のバイパス作用を示します。
ノイズ電流
装置
ノイズ源
(ノーマルモードノイズ)
(a)アクロス・ザ・ラインコンデンサ
装置
ノイズ電流
ノイズ電流
ノイズ源
(ノーマルモードノイズ)
装置
ノイズ源
(a)ノーマルモードチョークコイル
ノイズ電流
(コモンモードノイズ)
ノイズ電流による磁束
(b)ラインバイパスコンデンサ
図4-13 コンデンサによるノイズ電流のバイパス
装置
また、各コンデンサの特徴は表4-2の通りです。
主な減衰ノイズ
ノイズ源
(コモンモードノイズ)
(b)コモンモードチョークコイル
図4-12 コイルの動作原理
コンデンサ
の種類
静電容量
アクロス・ザ・
ラインコンデンサ
ノーマルモード
ノイズ
メタライズド
フィルムコンデンサ
0.1∼2.2μF
ラインバイパス
コンデンサ
コモンモード
ノイズ
セラミック
コンデンサ
1000∼10000pF
表4-2 アクロス・ザ・ラインコンデンサと
ラインバイパスコンデンサの特徴
C-13
(3)
ブリーダ抵抗
装置において、ノイズフィルタの後段のスイッチを切
るなど負荷側をオープンにした状態で、前段のプラグを
コンセントから抜いた直後にプラグの先端に触れると感
電することがあります。これは、ノイズフィルタ内のア
クロス・ザ・ラインコンデンサに残っていた電荷による
ものです。こういう事故を未然に防ぐため、アクロス・
ザ・ラインコンデンサの容量が大きい場合はこれと並列
に放電用の抵抗を接続します。これをブリーダ抵抗と言
い、一般的には470KΩ∼1MΩ程度が使用されます。
ノイズフィルタ
装置
(5)
絶縁抵抗
ライン相互間またはライン・ケース(アース)間に直
流電圧を印加し、コンデンサの誘電体や絶縁材料(特に
プラスチックケース)に流れる微少電流を測定し、絶縁
の強度を抵抗値で表したものです。印加電圧は通常
DC500Vです。
(6)
漏洩電流
漏洩電流はノイズフィルタを電源ラインに接続し定格電
圧を印加したとき、それぞれのラインからケース(アース)
に漏洩する電流です。この値は主にラインバイパスコン
デンサの静電容量(C)および電源電圧(E)とその周波
数(f)によって決まり、次式で表されます。
漏洩電流=2π fCE
これが大きいとノイズフィルタのケースあるいはアース
端子が接地されていない場合、感電事故につながる可能
性があります。
R
R:ブリーダ抵抗
ノイズフィルタ(非接地)
図4-14 ブリーダ抵抗
5
仕様・特性項目
(1)
定格電圧
使用温度範囲内において使用できる最大のACライン電
圧(実効値)を言います。最近はAC250V定格が一般的で
すが一部、AC400V系もあります。また、送配電線系統か
らは単相と三相に大別できます。
(2)
定格電流
使用温度範囲内において流し得る最大の負荷電流(実効
値)を言いますが、これは内部素子の耐熱性によって決ま
ります。市販品は0.5A∼150A程度が標準的で、それ以上
はオーダーメイド的になります。また、周囲温度が高い場
合はそれに応じて図4-15に示すように負荷電流をディレー
ティングして使用します。この例では周囲温度70℃のと
き負荷電流は定格の約70%で使用しなければなりません。
大地
図4-16 漏洩電流の流れる経路
(7)
直流抵抗
直流抵抗はノイズフィルタ内の抵抗分の総和です。
これはほとんどがコイルの巻線抵抗ですが、端子部との
接続抵抗なども含まれます。また、この直流抵抗に負荷
電流を乗じた値はそのノイズフィルタで生じる電圧降下
分となります。
(8)
温度上昇
ノイズフィルタに定格電流を流したときのケース表面
の温度上昇分を言います。尚、一般的には空気中に放置
した状態での値であり、金属板に取り付けた場合やファ
ン等により強制冷却される場合は、もっと小さい値にな
ります。
120
100
電
流
(%)
フレーム
80
60
40
20
0
-25
-10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
周囲温度 (°C)
図4-15 高荷電流のディレーティング例
(3)
電源周波数
一般に、電源電圧の周波数は50または60Hzですが、特
殊用途でそれ以上のことがあります。例えば、航空関係
では400Hzです。このような場合は、内部のアクロス・
ザ・ラインコンデンサの自己発熱が問題となり、印加電
圧のディレーティングが必要になることがあります。ま
た、漏洩電流が周波数に比例して増加しますので注意が
必要です。
(4)
試験電圧(耐電圧)
地絡事故などの異常時を想定してライン相互間または
ライン・ケース(アース)間に定格電圧の何倍かの高電
圧を短時間印加し、異常の有無を確認する試験を耐電圧
試験と言います。試験電圧はこのときの印加電圧ですが、
市販品はAC1500V,2000V,あるいは2500Vが一般的です。
C-14
(9)
減衰特性(静特性)
ノイズフィルタの減衰効果を表す基準として周波数を横
軸に、減衰量を縦軸にしてデータプロットしたものです。
図4-17-1にその測定方法および図4-17-2に特性例を示し
ます。
T.G.
バラン
ノイズ
フィルタ
バラン
S.A.
e1: ノイズフィルタを接続した場合のレベル
e2: ノイズフィルタを接続しない場合のレベル
減衰量=20Log ee21(dB)
(注1)バランは特定の周波数領域にてインピーダンス
を安定化させるものです。
(注2)e1, e2 はS.A.で測定される値です。
図4-17-1 減衰特性(静特性)の測定方法
ノーマルモード
ノーマルモード
コモンモード
100
減
衰
量
(dB)
100
80
80
60
60
40
40
20
20
100
100
80
80
出
力 60
電
圧
40
(V)
60
40
20
0
0
0.05
0.1 0.15
0.3 0.5
1
3
5
10
0
30
周波数 (MHz)
図4-17-2 および特性データ例
(10)
パルス減衰特性
ノイズシミュレータを用いてノイズフィルタの入力に
方形波状の高電圧パルスを印加したとき、どのくらい減
衰されて出力されるかを表した特性です。
図4-18-1, 図4-18-2にその測定方法および特性例を示します。
500
1000
入力電圧(V)
領域 A
1500
2000
0
領域 B
ここで入力電圧に対して出力電圧がリニアに微増して
いる領域Aはコモンモードチョークコイルが高インピーダ
ンス状態にあり、パルス電圧を阻止している領域です。
急峻に出力電圧が立ち上がる領域Bはコモンモードチョー
クコイルが高電圧パルスエネルギーによって磁気飽和を
生じパルス電圧を阻止できなくなりつつある領域です。
ノイズ
フィルタ
R
V0
Vi
R
入力パルス
R
R=50Ω
800nS ∼1μS
Vi
0
図4-18-2 および特性データ例
ここで、減衰量が20dBということはノイズのレベルが
1/10に減衰することであり、40dBは1/100、60dBは
1/1000になることを示します。
ノイズ
シミュレータ
20
Vo
出力パルス
図4-18-1 パルス減衰特性の測定方法
5.ノイズフィルタの効果実例
1
雑音端子電圧の低減
(1)
低い周波数領域のノイズレベルが大きい場合
低周波領域のノイズレベルを小さくするのに適したノイ
ズフィルタの条件は以下の通りです。
・コモンモードチョークコイルのインダクタンス が
大きい
・アクロス・ザ・ラインコンデンサの静電容量が
大きい
・ラインバイパスコンデンサの静電容量が大きい
図5-1に減衰効果の実例を示します。(a)はスイッチング
電源(スイッチング周波:25KHz)単体の雑音端子電圧
データです。(b)はこれに弊社のノイズフィルタ(MBS1205-22)を接続したときのデータです。
(b)MBS-1205-22を使用
図5-1 雑音端子の低減例(その1)
1MHz以下の低周波領域で40∼50dBと大きな減衰効果が
得られています。
(2)
高い周波数領域のノイズレベルが大きい場合
高周波領域のノイズレベルを小さくするのに適したノ
イズフィルタの条件は以下の通りです。
・コンモードチョークコイルの巻線分布容量が
小さい
・ラインバイパスコンデンサのリード
インダクタンスが小さい
(a)スイッチング電源単体
C-15
図5-2に減衰効果の実例を示します。
(a)はスイッチング電源(スイッチング周:200KHz)単
体の雑音端子電圧データです。
(b)はこれにノイズフィルタ
(シャフナー社:FN9222R-6-06)を接続したときのデータ
です。
(b)MXB-1206-33を使用
図5-3 雑音端子の低減例(その3)
2
(a)スイッチング電源単体
外来ノイズによる誤動作の防止
デジタルボルトメータの電源ラインにインパルスノイズ
試験機(ノイズシミュレータ)を用いて高電圧パルスノイ
ズを重畳させ、この影響による誤動作の状況を試験しまし
た。試験結果は図5-4の通りです。
ノイズ
シミュレータ
ノイズフィルタ
(MZS-1206-33)
デジタル
ボルトメータ
1μs
50Hz
Vp
ノイズフィルタなし
(b)FN9222R-6-06(シャフナー社)を使用
図5-2 雑音端子の低減例(その2)
10MHz以上の高周波領域で大きな減衰効果が得られてい
ます。
(3)
低周波から高周波まで広帯域にわたってノイズレベルが
大きい場合
広帯域のノイズレベルを小さくするのに適したノイズ
フィルタは上記の両方の条件を満足している必要があり
ます。図5-3に減衰効果の実例を示します。(b)は弊社の
ノイズフィルタ(MXB-1206-33)を接続したときのデー
タです。低周波から高周波まで広帯域にわたって一様に
大きな減衰効果が得られています。MXBシリーズはコモ
ンモードチョークコイルに高透磁率のコアを用いインダ
クタンス値を大きくし、コイルを2段構成とすることで広
帯域な減衰特性が得られています。
ノイズフィルタ使用
・Vp=600(V)にて
下1桁目がふらついて誤表示
・Vp=1,100(V)にて
下2桁目もふらついて誤表示
・Vp=2,000(V)にて
正常に表示
図5-4 デジタルボルトメータの
インパルスノイズ試験
弊社のノイズフィルタ(MZS-1206-33)を前段に接続した
場合2KVのパルスノイズを重畳しても誤動作は生じません。
MZSシリーズはコモンモードチョークコイルに飽和磁束密
度の高いアモルファスコアを用いているため、図5-5に示す
ように良好なパルス減衰特性が得られます。
120
120
100
100
80
80
出
力
電 60
圧
(V) 40
60
40
20
20
0
0
0
500
1000
1500
入力電圧(V)
図5-5 MZS-1206-33のパルス減衰特性
(a)スイッチング電源単体
C-16
2000
6.ノイズフィルタの選定
最近では、市販のノイズフィルタもその種類が多くなり、
選定に困ることが多々あります。ここでは、その選定手順
について以下にまとめてみました。
手順1 現状分析
まず、実使用状態の現状を十分につかむことが重要です。
具体的なポイントは下記の通りです。
1.問題となるノイズの正体は・・・
周波数は? レベルは? インパルス性か?
2.装置の電気定格、その他要求事項は・・・
電源電圧とその周波数は? 単相か三相か?
電源電流は? 耐電圧は? 漏洩電流は?
安全規格は? コストは?
3.ノイズフィルタの取り付けは・・・
空きスペースは? 方法は? 端子形状は?
手順2 ノイズフィルタの選択
これらの情報をもとにメーカーのカタログなどを活用し
て適合しそうなものをいくつか選択します。
手順3 実装評価
選択したものを実際に装置に組み込んで、その効果を確
認し、再度、現状分析の内容と照らし合わせながら、最終
的に目的のノイズフィルタを決定します。また、組み込み
時は後述の「効果的な実装方法」を参考にして下さい。
以上が選定手順の概要ですが、ここで戸惑うのは「ノイ
ズの正体の見きわめ」と「それに見合ったノイズフィルタ
をどのように選定するか」ということです。これについて
もう少し具体的に説明します。
まず、ノイズフィルタを使用する目的を明確にして下さい。
・雑音端子電圧を小さくする
・外来ノイズによる装置の誤動作を防止する
(1)雑音端子電圧を小さくしたい場合
◆小さくしたいノイズの周波数領域はどこですか?
・低周波領域(150K∼5MHz)
・高周波領域(1M∼30MHz)
・低周波から高周波にわたる広帯域
(補足)スイッチング電源の場合、雑音端子電圧の周波数
成分はそのスイッチング周波数に関係波しており、それ
が20∼50KHzならば低周波領域に集中し、100KHz以上な
らば広帯域に分布します。また、デジタルICを搭載した
装置はそこからクロックノイズが発生し、それは高周波
領域に分布します。
◆ノイズのレベルをもうどのくらい小さくしたいのですか?
・10∼20dB
・20∼30dB
・30dB以上
以上の2項目が確認できましたら、ノイズフィルタのカ
タログに記載されている特性データ、
「減衰特性(静特性)」
あるいは「雑音端子電圧減衰例」を参考に、その周波数
領域での減衰量に見合ったものを選択します。弊社ノイ
ズフィルタの推奨品は以下の通りです。
低域高減衰タイプ・・・MBW、MBS、MC12
高域高減衰タイプ・・・MYW、FN9222R(シャフナー)
広帯域高減衰タイプ・・MXB、MB、MX13
(2)
外来ノイズによる装置の誤動作を防止したい場合
◆外来ノイズの波高値および幅、あるいはノイズシミュ
レータにより試験する場合はその印加パルスの電圧およ
び幅はどのくらいですか?
・500V
・1KV
・2KV
・100nS
・500nS
・1μS
これが確認できましたら、カタログに記載されています
「パルス減衰特性」を参考にそれに見合った特性のものを
選択します。弊社ノイズフィルタの推奨品は以下の通り
です。
パルス高減衰タイプ・・・MYB、MZS、MZ12
これらは、いずれも良好なパルス減衰特性が得られます。
7.ノイズフィルタの効果的な実装方法
ノイズ対策の具体例として次の様なものがあげられます。
●ノイズフィルタを用いる
●機器をシールドする
●機器内部のノイズ発生源をシールドする
●ノイズ発生源との距離を離す
●筺体にノイズ電流を流さない
●ノイズが重畳したラインと他のラインを近づけない
●ノイズが重畳したラインでループをつくらない
●ラインをツイストする
●ラインをシールドする
ノイズフィルタは電源ラインを通って入ってくるノイズ、
機器から出ていくノイズの低減対策用として、広く用いられて
います。しかし、その使い方を誤るとせっかくのノイズフィ
ルタもその本来の特性が得られず無駄な対策となります。
これから述べますことは、ノイズフィルタを使用する上でぜひ
とも考慮しなければならない基本事項です。そして、これは
各社ノイズフィルタメーカーのカタログ等に必ず書かれている
内容ですが、実際の機器をみてみますとなかなかその通りに
なっていないのが現状のようです。これはノイズによるトラ
ブルの経験が少ないためと思われますが、製品が市場にでて
からのノイズトラブルはその再現性も難しく、原因追及・
対策に苦慮します。「転ばぬ先の杖」ではないですが、簡単
な事柄ばかりですからぜひ実行することをおすすめします。
ノイズ源
シールド源
ノイズ
フィルタ
機器
図7-1 対策1:ノイズフィルタを用いる。
機器及びノイズ源をシールドする。
ノイズ源
ノイズ源から離す
図7-2 対策2:ノイズ源を近づけない。
C-17
分離する
入力ライン
出力ライン
N.F.
ノイズ電流
図7-6
ノイズフィルタの入力ラインと出力ラインを一緒に束線し
たり、あるいはお互いを近づけて配線したりしますと、高
周波領域でノイズフィルタの入出力が結合し、十分なノイ
ズ防止効果が得られません。やむを得ず入出力ラインが近
づく場合は、両ラインについてツイスト配線するか、ある
いはシールドする必要があります。
図7-3 対策3:筐体にノイズ電流を流さない。
ノイズフィルタが無い場合の雑音端子電圧例
100
雑
音
端
子 50
電
圧
[dBuV]
ループ
0
0.15
ツイスト
0.5
1
5
10
30
周波数 [MHz]
ノイズフィルタを付けた場合の雑音端子電圧例
図7-4 対策4:ループをつくらない。
●入出力ケーブルが近接し
適正なEMI減衰効果が得られない例
100
雑
音
端
子 50
電
圧
[dBuV]
図7-5 対策5:ラインをシールドする。
※ラインでループをつくるとそこに磁束が発生し、他
のライン及び機器などにノイズを誘導することにな
り、誤動作などの問題が生じやすくなります。この
ためラインは出来るだけツイストすることが望まし
く、ラインをツイストすることは磁束を発生させな
いことと、他の磁束からノイズを誘導されないとい
う利点があります。
(A)
ノイズフィルタの入出力ラインと
出力ラインは確実に分離する。
ノイズ
0
0.15
0.5
1
5
10
30
周波数 [MHz]
この様な場合、下記例の様に入出力配線を分離したりシールド
ケーブルを使用すると適正な効果が得られます。
●入出力ケーブルを分離し
適正なEMI減衰効果が得られた例
100
出力ライン
入力ライン
N.F.
雑
音
端
子 50
電
圧
[dBuV]
入力―出力ラインの分離が不安全
0
0.15
0.5
1
5
周波数 [MHz]
C-18
10
30
(B)
ノイズフィルタまでの入力ラインの
配線は短くする。
ノイズフィルタに至るまでの入力ラインを機器筺体内で長
く引き回しますと、入力ラインと筺体内部の素子あるいは
ラインが高周波領域で結合する結果となります。ノイズフ
ィルタの入力側にヒューズやスイッチを接続するなど、や
むを得ず入力ラインを引き回す場合は、ツイスト配線する
かあるいはシールドする必要があります。
ノイズフィルタのアース線が長いと機器筺体との間にイン
ダクタンスが入ることになり、ノイズフィルタの高周波特
性を劣化させます。ノイズフィルタが金属ケースでアース
されている場合は、機器筺体に直接取付け、又取付け面は
金属接触を良くするため塗装などは取除いて下さい。金属
ケース製でもケースにアースされていない場合、あるいは
プラスチックケースの場合など、機器筺体にリード線でアース
する場合はその長さをできるだけ短くして下さい。
(L=アース線の長さ)
(C)
電源はすべてノイズフィルタの
出力部から取る。
ファン
L=0cm
ノイズ
N.F.
ファン
ノイズフィルタの
出力側から分岐!
短く!
L=10cm
N.F.
図7-7
ノイズフィルタの入力部から電源を取ることは、(B)と同様に、
ノイズの重畳した入力ラインを機器筺体内に引き回す結果
となります。
(D)
ノイズフィルタのアース線は、
出来るだけ太く、短く接続する。
L=20cm
金属ケース
N.F.
機器筺体に直接取付ける。
図7-9 アース線の長さによる減衰効果の違い
(スイッチング電源の雑音端子電圧)
N.F.
アース線は短く!
アース線はできるだけ短かくする。
図7-8
C-19
(E)
ノイズフィルタと機器筐体の
接地点間の距離は、短くする。
(F)
ユニット毎にノイズフィルタを入れる。
ユニット1
N.F.
筺体のアース
N.F.
ユニット2
N.F.
ノイズフィルタのアース点
ノイズフィルタA
ユニット3
N.F.
漏洩電流、ノイズ電流を匡体に流さない
N.F.
各ユニットごとにノイズフィルタを入れる。
図7-8
図7-10
N.F.
ノイズフィルタのアース点と筺体のアース点との距離
はできるだけ短くする。
図7-9
図7-7
1つの筺体内に複数のユニットが組込まれており、各ユ
ニットごとに電源を持っている場合は、それらのユニット
を1つの独立した装置と考え、各ユニットごとにノイズフ
ィルタを入れる必要があります。これらのノイズフィルタ
がないと、各ユニットで発生したノイズが筺体内の他のユ
ニットに伝導する結果となります。
ノイズフィルタのアース点と機器筺体のアース点とが異
なると、筺体のこの2点間にノイズフィルタによりバイパ
スされた商用周波数の漏洩電流及びノイズ電流が流れるこ
とになり、その結果筺体内部の素子あるいはラインにノイ
ズが誘導される要因となります。
8.ノイズフィルタの安全規格
ノイズフィルタは電源ラインに直接つながれていること
が多く、その安全性が不十分な場合はそれによって感電あ
るいは火災といった事故が発生します。従って、これを未
然に防ぐため、各国でノイズフィルタについて以下のよう
な安全規格を設け、その構造、構成部品あるいは各種安全
性試験の方法および判定などを規定しており、最近のノイ
ズフィルタはこれらの規格認定を受けたものが、多くなっ
ています。
1.米国 ・・・UL1283
2.カナダ・・・CSA C22.2
3.欧州 ・・・EN133200
NO.8
ここで注意を要する点は、上記規格ではあくまでノイズ
フィルタ単体についての規格であり、これを実装した装置
については別に規格が設けられており、それが適用される
ということです。従ってこの場合のノイズフィルタはこれ
ら両方の規格を満足する必要があります。
9.ノイズフィルタの今後の技術動向
ノイズフィルタは前述の通り、基本的にはコイルとコン
デンサで構成されているため、おのずとこれらの技術動向
に深く関連します。今後、期待されるノイズフィルタの技
術動向およびその対応は次の通りです。
1
減衰領域の低周波化
低周波領域(500KHz以下)での減衰特性はコイルのイン
ダクタンスの大きさによりほとんど決定され、コイルのイン
ダクタンスはそれを構成するコアの透磁率
(μ)
に依存します。
従って、減衰領域の低周波化は高透磁率コアの開発にかかっ
ており、従来のフェライトあるいは新素材のアモルファスで
一部それに対応した材質が商品化されています。
2
減衰領域の高周波化
高周波領域(5MHz以上)ではコイル巻線の分布容量および
コンデンサリードのインダクタンスが減衰特性に悪影響を与
えます。これは極力小さいことが望ましく、コイルの巻線構
造およびコンデンサのリード構造を工夫する必要があります。
3
減衰領域の広帯域化
前述の(1)項及び(2)項の両方を満足することにより、減
衰領域の広帯域化が可能になり、その結果、ノイズの周波
C-20
数によりノイズフィルタを使い分ける必要もなくなります。
また、最近は電子機器から発生するノイズが多様化してい
ることもあり、今後このようなノイズフィルタは非常に有
効です。
4
インパルスノイズ減衰特性の向上
特に問題となるコモンモードのインパルスノイズ減衰特
性はコモンモードチョークコイルを構成するコアの磁気飽
和特性に大きく依存します。このコアは飽和磁束密度が高
いほど、そしてB-Hカーブの傾きが緩い(μが小さい)ほど
良い特性を発揮します。アモルファスは従来のフェライト
に比べ、飽和磁束密度が高いため、最近、この用途に多く
使われ始めています。
5
漏洩電流の低減化
ノイズフィルタの漏洩電流を小さくするためには、内部
のラインバイパスコンデンサの静電容量を小さくする、あ
るいはそれをなくすことが必要です。
しかし、単純にそれをしたのでは高周波領域のノイズ減衰
効果が悪化してしまうため、それに代わる手段を打たなけ
ればなりません。この手段としては(2)項への対応と同じこ
とが考えられます。