LTSP (Linux Terminal Server Project) 1.LTSP とは

LTSP (Linux Terminal Server Project )
- 古いマシンをシンクライアントに活用 (財)松本ソフト開発センター
髙砂 康司
1.LTSP とは
LTSP というのは、Linux Terminal Server Project の略で、プロジェクトそのものや、LTSP で構築したシス
テム、あるいはその技術を指します。Terminal Server(ターミナルサーバー)というのは、シンクライアントシ
ステム(Thin Client System)の一つで、大きな特徴としては
• クライアントは最低限の機能、装備
ディスプレイ、キーボード、マウス、PC 本体(HDD 不要)
• 処理(の大部分)はサーバーで行う
というものがあります。ターミナルサーバー、あるいはシン・クライアントは専用の製品を利用して構築する
1
場合もあります が、LTSP ではちょっと強力な PC をサーバーに、クライアントには古くて使われなくなった PC
を利用してターミナルサーバーのシステムを構築できます。
LTSP システムのクライアントは次のように起動し
ます。
1. 電源 ON
2. PXE (Pre-eXecution Environment)というプ
ロトコルでブートする
3. PXE が DHCP サーバーから IP アドレスを取得
4. DHCP サーバーは追加の情報をクライアントに
渡し、TFTP でクライアントの RAM ディスクに
起動用のファイルシステム・イメージ(Linux
initramfs filesystem image)を読み込ませ
る
5. クライアントは上記システムイメージで起動
し、ハードウェアを探査し、LTSP サーバーの
X window システムとのセッションを確立する
これ以降、全ての操作はサーバー側で扱われ、全ての
グラフィカルな情報がクライアントに転送されます。
LTSP のシステムには次のようなメリットがありま
す。
• クライアントに高性能を要求しない
10 年ほど前の PC でも十分使用に耐え
ます。
2
「LTSP Manual 」によると推奨は
533MHz 以上の CPU、256MB メモリのよ
うですが、VMwarePlayer で作成した
72MB メモリの仮想マシンでも起動し
ました。
• HDD など記憶装置がいらない
図 1:起動プロセス(WIKIPEDIA COMMONS より)
1 PC メーカー各社もシン・クライアントを用意しています。NEC、HP、IBM、富士通などにも製品があります。
2 https://sourceforge.net/projects/ltsp/files/Docs-Admin-Guide/LTSPManual.pdf/download
•
•
•
PC の故障の大半を占める HDD が必要ない分、クライアントの信頼性も上がります。コストは下
がります。
FD、USB メモリなどの使用を不可に出来る
リムーバブルメディアの利用を制限することにより、情報の持ち出し・漏洩をある程度防ぐこ
とができます。
サーバーだけメンテナンスしていればいい
クライアントはデータもアプリケーションも保持していないので、サーバーのみしっかりメン
テしておけば良い。アプリケーションのバージョンアップもサーバーだけ。
どのクライアントを利用してもいつも同じ環境
ユーザーデータはサーバー側にあるので、どのクライアントから利用してもいつも同じ環境で
作業できます。もし、クライアントが故障しても、すぐに他のクライアントで作業できます。
反面、デメリットも存在します。
• サーバーにある程度の高性能を要求する
CPU は速いに越したことはありません。目安としては 2GHz くらいは欲しいところです。メモリ
は「LTSP Manual」では
256+(192×ユーザー数)MB
となっていますが、実際試したところでは
512+(300×ユーザー数)MB
程度あれば快適に利用できるような気がします。
そして、サーバーとクライアントが頻繁に通信するので、なるべく高速な NIC とネットワーク
(ギガビット・イーサネット)も欲しいところです。
• 設定が難しい場合もある
環境次第ですが、ちょっと導入に手間取ることもあります。
3
現在、LTSP は多くのディストリビューションに取り込まれています が、独立したディストリビューションと
して存在するものもあります。Edubuntu, Skolelinux, KIWI-LTSP などのディストリビューションです。
3 K12Linux(Fedora)、Easy-LTSP(SuSE)など特定ディストリビューション用のプロジェクトもあるようです。
2.準備
LTSP を利用する前に次のようなことを検討しておいたほうが良いと思います。
• ネットワーク構成
(A)既存のネットワーク内に LTSP サーバーを立てる
(B)既存のネットワークの下に、分離した LTSP サーバー・クライアントを構築する
• ディストリビューションなどの選択
(a)既存のサーバーに LTSP 機能を持たせるか
(b)新たに LTSP サーバーを立てる場合、ディストリビューションはどれにするか
ネットワーク構成の(A),(B)の違いを下図に示します。(A)が図 2、(B)が図 3 となります。(A)の場合は LTSP
サーバーの NIC が 1 つで構成できますが、ルーターの DHCP 機能を停止する必要があります。(B)の場合、LTSP
サーバーにルーター機能を持たせることになるので NIC が 2 つ必要になります。
LAN
図 2: (A)既存ネットワーク内に追加
図 3: (B)既存ネットワーク下に構築
4
既存のサーバーを LTSP サーバーにする場合は、LTSP のサイト から「Download」リンクをたどって、それぞ
れのディストリビューションのパッケージを入手するなりしてください。その際、LTSP4.2 は古いので気をつけ
てください。最新は LTSP5 です。Ubuntu では APT で導入可能です。次のように実行します。
sudo apt-get install ltsp-server-standalone openssh-server
新規に LTSP サーバーを立てるのであれば、簡単に導入できるディストリビューションが良いでしょう。今回
は Ubuntu を利用します。ただ、Alternate CD を利用してインストール時に LTSP を構築します。
Alternate CD → http://www.ubuntu.com/download/ubuntu/alternative-download
5
amd64 版と i386 版がありますが、古い PC をクライントとして利用したい場合、i386 版を選択します。
4 http://www.ltsp.org/
5 7~8 年前の低価格機では 64bitCPU が載っていないことがあります。その場合、amd64 版のクライアントイ
メージでは起動できないので、そのまま利用できる 32bit 版を用いるのが楽。
3.インストール
元来、Ubuntu の Alternate CD はノーマルの CD で起動できないとか、メモリの少ない PC のためのインストー
ル用 CD ですが、起動時に選択することで LTSP ルーターを簡単に構築できるようになっています。具体的には
CD から起動した後、
1. 日本語を選択し
2. ファンクションキー[F4]を押し
3. メニューから「LTSP サーバーのインストール」を選択
とします。その後は質問などに適切に答えていけば OK で、次のような流れになります。
4. 場所の選択
5. キーボードの設定
6. ネットワークの設定
【NIC1 枚の場合】
あらかじめネットワーク上の DHCP サーバーは停止しておき、固定 IP を LTSP サーバーに割り当
てます。
【NIC2 枚の場合】
サーバーとして利用するので、内外 2 枚とも IP 固定で運用します。(外側は DHCP 割当てでも可)
画面のメッセージをよく読んで、2 枚の NIC のどちらが外(WAN)側になるか、間違えないように
注意しましょう。
7. ディスクのパーティショニング
8. ベースシステムのインストール
9. ユーザーとパスワードの設定
管理者になれる(sudo が使える)ユーザーの登録。その他の一般ユーザーは後で作る。
10. ホームディレクトリの暗号化の有無
11. プロキシの設定
12. ソフトウェアのインストール
途中で「言語サポートのダウンロード」について訊かれます。
13. クライアントイメージの作成
6
Building Thin Client system ...と表示され、クライアントが利用する chroot 環境 が作成さ
7
れます。インストールした OS のアーキテクチャと同じものしか作成されません 。
14. GRUB のインストール
外側
(一部抜粋)
15. システム時間の設定
auto eth0
UTC は使わない
iface eth0 inet static
16. インストール完了・再起動
address 192.168.0.150
netmask 255.255.255.0
3-1.インストール後の設定
network 192.168.0.0
インストールを終了して、再起動後に少々設定が必要となります。
broadcast 192.168.0.255
gateway 192.168.0.1
(1) ネットワークマネージャ(network-manager)の削除
内側
auto eth1
ネットワークマネージャがネットワークの設定を書き換える事がある
iface eth1 inet static
ので、それを防ぐためです。
address 192.168.2.1
sudo apt-get remove network-manager*
netmask 255.255.255.0
(2) IP アドレスの設定
network 192.168.2.0
/etc/network/interfaces を編集して、外側、内側の NIC を適切に設定
broadcast 192.168.2.255
6 Linux システムのディレクトリ構造の中に、別途、独立した Linux システムのディレクトリ構造を作ったも
の。chroot した後は、ログアウトするまでその環境の外には触れない。
7 サーバーが amd64 版ならクライアント環境も amd64 版が作成されるということ。後から別アーキテクチャの
クライアントイメージを作成することも可能。
します。
(3) DNS の設定
/etc/resolv.conf を適切に編集します。
(4) DHCP サーバーの設定
デフォルトだと、192.168.0.0/24 のネット
ワークを利用するようになって いますので、
実際のネットワークに合わせて修正します。
設定ファイルは、
/etc/ltsp/dhcpd.conf
です。
(5) クライアント環境の調整
以下を実行します。
sudo ltsp-update-ssykeys
sudo ltsp-update-image
sudo /etc/init.d/nbd-server restart
(6) ユーザーの追加
sudo adduser 〜
(一部抜粋)
subnet 192.168.2.0 netmask 255.255.255.0 {
range 192.168.2.20 192.168.2.250;
option domain-name "temari-net.or.jp";
option domain-name-servers 192.168.0.1;
option broadcast-address 192.168.2.255;
option routers 192.168.2.1;
option subnet-mask 255.255.255.0;
option root-path "/opt/ltsp/i386";
if substring( option vendor-class-identifier,
0, 9 ) = "PXEClient" {
filename "/ltsp/i386/pxelinux.0";
} else {
filename "/ltsp/i386/nbi.img";
}
}
3-2.その他の設定
このままでも問題なく利用できますが、日本語フォントの一部がキレイでないので、追加でフォントを導入
します。導入は「Ubuntu ソフトウェアセンター」から、「Japanese TrueType font, IPA font (meta
package)」をインストールすれば OK です。あるいは端末から、
sudo apt-get install ttf-ipafont
4.設定ファイル
以上でとりあえず LTSP の機能を利用できますが、クライアントに関する細かな設定も可能です。設定ファイ
ルは /opt/ltsp/i386/etc/lts.conf にあり、未だに有効ではありますが、今後は
/var/lib/tftpboot/ltsp/i386/lts.conf
になります。もし、旧設定ファイルにより設定を変更した場合、そのたびに ltsp-update-image を実行するこ
とが必要です。
設定ファイルのサンプルは、 /opt/ltsp/i386/usr/share/doc/ltsp-client-core/examples/lts.conf にあり
8
ます が、次のような記述方法になっています。
[default]
X_COLOR_DEPTH=16
LOCALDEV=True
SOUND=True
全てのクライアントに
対する基本設定
設定にラベルを付けておいて
他から参照することができる
[oldmachine]
X_COLOR_DEPTH=8
X_MODE_0=800x600
特定のクライアントに
対する設定
(MAC アドレスで区別 )
[01:23:DE:AD:BE:EF]
LIKE=oldmachine
SCREEN_02=shell
以下に、lts.conf の主要な設定項目をタイプ別に紹介しますが、詳細は「LTSP Manual」を参照してください。
4-1.全体設定
LTSP サーバー全体の設定項目です。
設定項目
初期値
説明
DNS_SERVER
DNS サーバーの IP アドレス。普通は必要ない。
SEARCH_DOMAIN
ドメイン名の指定。普通は必要ないが、DNS_SERVER を指定している場合は必要。
LOCAL_APPS
FALSE
HOSTNAME
クライアントでアプリケーションを実行するか否か。
クライアントのホスト名の指定。指定しなければ、ホスト名は自動で作成され
る。
HOSTNAME_BASE
ltsp
クライアントのホスト名のベースとなる部分の指定。
NBD_SWAP
FALSE
NBD スワップを有効にするか否か。有効にするなら、/etc/hosts.allow に
nbdswapd: ALL: keepalive
を加える必要がある。
NBD_SWAP_SERVER
SERVER
NBD スワップサーバーの指定。デフォルトでは SERVER の値が利用される。
SERVER
XDM_SERVER, TELNET_HOST,XFS_SERVER, SYSLOG_HOST の既定値に使われる。
SYSLOG_HOST
SYSLOG サーバーの指定。
USE_LOCAL_SWAP
TIMEZONE
8 Ubuntu の場合。
FALSE
クライアントに HDD が装備され、かつ、有効な SWAP パーティションがある場合
にそれを利用するか否か。
クライアントの利用するタイムゾーンの指定。
TIMESERVER
クライアントの利用する NTP サーバー。指定しないとクライアントは BIOS の時
刻を使う。
SHUTDOWN_TIME
クライアントの自動停止時刻を hh:mm:ss フォーマットで指定する。
LANGUAGE
言語設定。日本語なら ja_JP.UTF-8
4-2.ローカル・デバイスの設定
クライアントの装備するデバイス(記憶装置)に関する設定項目です。
設定項目
初期値
説明
LOCALDEV
TRUE
クライアントマシンの CD や USB メモリなどのローカルデバイスを
利用できるか否か。ただし、ユーザーが FUSE サブシステムにアク
セスできるようにしておく事。
LOCALDEV_DENY_CD
FALSE
クライアントマシンの CD ドライブを利用できないようにする。
LOCALDEV_DENY_FLOPPY
FALSE
クライアントマシンの FDD を利用できないようにする。
LOCALDEV_DENY_INTERNAL_DISKS
TRUE
クライアントマシンの内蔵 HDD を利用できないようにする。
LOCALDEV_DENY_USB
FALSE
クライアントマシンの USB デバイスを利用できないようにする。
4-3.プリンタの設定
クライアントの装備するデバイス(記憶装置)に関する設定項目です。
設定項目
初期値
PRINTER_0_DEVICE
PRINTER_0_PORT
説明
プリンタのデバイス名(/dev/lp0, /dev/usblp0, ...)を指定する。
FALSE
プリンタサーバーの TCP/IP ポート番号を指定する。
PRINTER_0_TYPE
プリンタの種類を指定する。P:パラレル U:USB S:シリアル シリアル以外は
自動認識される。
SCANNER
クライアントにスキャナーを利用可能にする。
4-4.キーボードの設定
クライアントのキーボードに関する設定項目です。設定しないと US キーボードとされてしまうので、日本語
キーボードに設定します。
設定項目
CONSOLE_KEYMAP
初期値
en
説明
TELNET_HOST セッションにおけるキーマップを指定する。
XKBLAYOUT
X window システムにおいて利用するキーボードレイアウトを指定する。
"jp”を指定する。
XKBMODEL
X window システムにおいて利用するキーボードの形式を指定する。
"jp106”を指定する。
4-5.サウンドの設定
クライアントのサウンドの設定項目です。
設定項目
初期値
説明
SOUND
TRUE
クライアントのサウンドを利用するか否かの指定。
SOUND_DEAMON
pulse
サウンドサーバーの指定。esd, nasd, pulse のいずれかを指定。
VOLUME
FALSE
0~100%の範囲でクライアントの音量を指定する。
4-6.X window システムの設定
クライアントの画面(X window system)に関する設定です。
設定項目
初期値
説明
CONFIGURE_X
X window システムの自動設定を利用せずに個別の X 設定ファイルを利用したい
場合に True にする。
X_CONF
X 設定ファイルの指定。設定ファイルは、/opt/ltsp/<arch>/etc/X11 ディレク
トリの下に置くが、chroot 環境のフルパスで指定する。
XSERVER
このパラメータは指定すべきでない。通常、ビデオカードは自動認識される。
何らかの理由で指定するなら以下の適切なものを指定する。
ark, ati, atimisc, chips, cirrus_alpine cirrus, cirrus_laguna, cyrix,
dummy, fbdev fglrx, glint, i128, i740, i810, imstt, mga, neomagic,
newport, nsc, nv, r128, radeon, rendition, riva128, s3, s3virge,
savage, siliconmotion, sis, sisusb, tdfx, tga, trident, tseng, v4l,
vesa, vga, via, vmware, voodoo
X_COLOR_DEPTH
24
X_MODE_n
ビット単位での色深度(色数)の指定。8, 16, 24, 32 が指定可能。
クライアントのディスプレイ解像度を指定する。n は 0~2。[Ctrl]+[Alt]+[+]/
[-]で解像度を切り替えられる。
例) X_MODE_0 = 1280x1024
X_MODE_1 = 1024x768
X_MODE_2 = 800x600
4-7.SCREEN SCRIPT
ユーザーインターフェースに関する(?)設定です。
設定項目
SCREEN_n
初期値
説明
ldm
n は 01~12 の数値を指定。但し、01 は予約済みなので指定しない方が良い。
Ctrl+Alt+F1~F12 でスクリーン(セッション)の切り替えを可能にする。指定可
能な値は、/opt/ltsp/i386/usr/share/ltsp/screen.d/ディレクトリ内のスク
リプト名。(下表)
kiosk
KIOSK 端末仕様(ブラウザのみ)
ldm
通常の LDM(LTSP Display Manager)セッション
menu
接続サーバーの選択メニューを表示
rdesktop
Windows のリモートデスクトップに接続 (-> xfreerdp)
shell
シェル
ssh
SSH サーバーに接続
startx
telnet
TELNET サーバーに接続
xdmcp
xfreerdp
リモートデスクトップに接続
xterm
X 端末
特に記述がない場合、LDM セッションが screen_07 で利用される。複数のスク
リーンを指定した場合は、数値の最も大きい設定がデフォルトとして利用され
るようです。
TELNET_HOST
クライアントが CUI の場合、telnet でログインするホストを指定。指定しない
場合、SERVER の値が利用される。
4-8.LDM の設定
LDM(LTSP Display Manager)の設定です。ログインに関するものだと思っていただければ・・・
設定項目
初期値
説明
LDM_AUTOLOGIN
FALSE
ユーザー名、パスワードの入力なしでログインするか否かの指定。True にし
た場合、ユーザー名、パスワードともに、ホスト名でのログインを試みるが、
LDM_USERNAME、LDM_PASSWORD でそれらを指定することも可能。
クライアントの停止ができなくなるので、設定しないほうが良い。
LDM_DIRECTX
FALSE
SSH による X 通信内容の暗号化をしないようにするか否か。セキュリティは
下がるが、反応は速くなる。(遅いクライアントでは有効)
LDM_GUESTLOGIN
FALSE
ゲストログインのボタンを表示する。ユーザー名、パスワードの指定も可能。
指定しなければ、ホスト名が利用される。
LDM_ALLOW_USER
ログインできるユーザーを制限する。
LDM_LOGIN_TIMEOUT
指定の時間が過ぎると、自動ログインする指定。これを使う際には、
LDM_AUTOLOGIN を指定しない。
LDM_USERNAME
自動ログインの際のユーザー名を指定する。
LDM_PASSWORD
自動ログインの際のパスワードを指定する。
LDM_LANGUAGE
ロケール設定を上書きする。
NETWORK_COMPRESSION
FALSE
LDM_SESSION
9
SSH の通信データ を圧縮する。ネットワークの負荷を減らすが、CPU の負荷
は上がる。
デフォルト・セッションを選択する。
例) LDM_SESSION = "gnome-session --session=ubuntu-2d”
4-9.ローカル・アプリケーションの設定
アプリケーションをサーバーではなく、シンクライアントで実行できるようにするもので、ネットワーク経由
でうまく動かないマルチメディアアプリケーションに向いているそうです。
設定項目
初期値
説明
LOCAL_APPS
TRUE
クライアントでローカルアプリケーションを利用可能にする。
LOCAL_APPS_MENU
FALSE
サーバーのアプリケーションメニューの上書きを可能にする。
LOCAL_APPS_MENU_ITEMS
.desktop ファイルに現れるアプリケーションリスト(カンマ区切り)
LOCAL_APPS_WHITELIST
ローカルアプリケーションとして実行できるコマンドを指定する。コマン
ドはフルパスで指定。このパラメータを指定しない場合、すべて実行可能。
9 LTSP5 では画面転送に SSH を利用している。
5.クライアント
最近の PC はほとんど NIC をオンボードで装備しており、さらに起動用の ROM(BootROM)も載っていますから、
あとはネットブート(PXE ブート、Etherboot)ができるようにするだけで準備は終わりです。多くの場合、BIOS
10
セットアップ画面で起動デバイスを設定できますから、Network か LAN を優先的な起動デバイスに設定します 。
また、BootROM を有効にすることも忘れないでください。
LTSP のシステムは必ずしもネットブートする必要はありません。PC によってはネットブートができないもの
もあり、それらは FD や CD から起動します。ROM-o-matic.net にそのような用途の FD データなどがあるので利
用してください。詳細は、http://cyclops.ddo.jp/recent/0707/ltsp/#5 をご覧いただきたいですが、簡単に
記すと
1. ROM-o-matic.net で gPXE Image Generator を利用
2. 適切なイメージフォーマットと NIC の種類を選択
3. 取得したイメージを FD あるいは CD にする
となります。
最近のノート PC は、殆どが無線 LAN を搭載しています。残念ながら無線 LAN の NIC は BootROM を搭載してい
ないため、ネットブートができません。よって、LTSP のクライアントとするには、有線 NIC を利用せざるを得
ませんでした。
しかし、無線 LAN でも BootROM の搭載されていない有線 NIC と同じ手法で LTSP のクライアントにすることが
可能なようです。Wirelessboot という技術ですが、残念ながら以下のチップを使ったものしかサポートされて
いません。
• Realtek 8180/8185
•
All Atheros cards that do not support 802.11n
詳細は、http://etherboot.org/wiki/wirelessboot をご覧ください。
5-1.ログインとシャットダウン
クライアントを起動するとログイン画面になります。サーバーに登録した
ユーザーでログインしますが、画面左下の[Preference]をクリックすると、
バックエンド、言語、セッションの選択ができるメニューが表示されます。
(右図) このメニューから、再起動、シャットダウンも可能です。
クライアントの利用を終了するには、画面上部右端のユーザー名をクリッ
クし、ログアウト、あるいはシャットダウンを選択します。すると再びログ
イン画面になりますから、[Preference]→[シャットダウン]とします。
10 起動時に一時的に起動デバイスを変更できる PC もあり、例えば DELL の多くの PC は起動時に[F12]を押すこ
とで起動デバイスの選択ができます。
6.クライアントの管理
PC 教室のような場所での PC の利用には、いろいろ難しい面があります。しかし、LTSP などのシンクライアン
トシステムにはうってつけの管理ツールがあります。
• Edubuntu menu editor と Edubuntu menu editor Profile manager
• iTALC
6-1.Edubuntu menu editor & Edubuntu menu editor Profile
manager
Edubuntu menu editor と同 Profile manager はアプリケーションメニューの編集を行い、各ユーザーがメ
ニューから実行できるアプリケーションを制限できます。パッケージ名は、edubuntu-menueditor です。
これらは使い方が独特というか、分かりにくいのですが、流れとしては
1. menu editor でメニューを制限したプロファイルを作成
2. Profile manager でユーザーグループごとに作成したプロファイルを適用
となります。
これらによってメニューの項目は制限できますが、直接コマンドを入力されるとアプリケーションは実行で
11
きます 。
6-2.iTALC
iTALC=Intelligent Teaching And Learning with Computers
Edubuntu menu editor と同 Profile manager はクライアントの操作に制限を加えるものですが、iTALC はクラ
イアントを集中管理するソフトウェアです。以下のようなことができます。
• クライアントの電源管理
• クライアントの画面監視
• クライアントへの画面配信
• クライアントの操作ロック
• クライアントへのメッセージ送信
• クライアントのデスクトップを操作 などなど
これらのことを行うのに、以前は Thin Client Manager(TCM)というソフトウェアが使われていましたが、現
在はこの iTALC に置き換えられています。
11 Gnome 端末をメニューに表示しなければ、コマンドも実行できませんね。
Ubuntu ではサーバー用、クライアント用のパッケージがそれぞれ、italc-master、italc-client として用意
されています。Edubuntu ではインストール時に LTSP オプションを選択すると最初から使える状態で導入されて
12
います。
6-3.クライアント環境のアップデート
LTSP サーバーをアップデートしたら、クライアント環境(chroot 環境)にもアップデートを適用します。最初
にやることは、サーバーとクライアント環境のパッケージリストを同じにすることです。Ubuntu、Debian であ
れば /etc/apt/sources.list をサーバー側からクライアント環境にコピーします。
sudo cp /etc/apt/sources.list /opt/ltsp/i386/etc/apt/
13
また、このままでは chroot 環境でアップデートできない(DNS が引けない)ので、以下を実行しておきます 。
sudo cp /etc/resolv.conf /opt/ltsp/i386/etc/resolv.conf
次にクライアント環境をアップデートします。
sudo chroot /opt/ltsp/i386/
mount -t proc proc /proc
export LTSP_HANDLE_DEAMONS=false
apt-get upgrade
umount /proc
exit で chroot 環境を抜ければ、アップデートは終了ですが、もし、アップデートにより Linux カーネルが新し
くなっていたら、次の操作も必要です。
sudo ltsp-update-kernels
最後にクライアントのブートイメージを更新します。
sudo ltsp-update-image
sudo /etc/init.d/nbd-server restart
これでクライアント環境のアップデートは完了です。
6-4.LTSP サーバーの IP アドレスを変更した時
何らかの理由で LTSP サーバーの IP アドレスを変更した際には、以下の操作が必要です。
sudo ltsp-update-sshkeys
sudo ltsp-update-image
sudo /etc/init.d/nbd-server restart
12 インストール時に選択する導入するアプリケーションのグループ「edubuntu−desktop」の中に入っています。
Ubuntu では、apt で italc-master をインストール後、
http://sourceforge.net/apps/mediawiki/italc/index.php?title=Installation#Setup_authentication_keys
に従って設定してください。
13 元のファイルは保存しておいた方が良いかもしれません。
7.Tips
7-1.クライアント環境が英語表示(Ubuntu)
LDM_LANGUAGE を ja_JP にします。これで駄目な時もあります(原因不明)が、ログイン時に言語を選択すれば、
問題ありません。ちなみに Edubutu のデフォルト設定では lts.conf(の言語設定部分)は、次のようになってま
す。
LANG=en_US.UTF-8
LANGUAGE=ja_JP.UTF-8
LDM_LANGUAGE=ja_JP.UTF-8
これで問題は出ませんでした。
7-2.クライアントのデスクトップが変(Ubuntu)
デフォルトでクライアント環境は Unity(3D)になってますが、クライアント PC が 3D 対応ビデオカードを装備
していないと悲惨なことになります。中途半端に Unity 環境になって、ダッシュはおろか、ログアウトや終了
のメニューさえ出せません。そうなってしまったら、[Ctrl]+[Alt]+[Delete]でログアウトします。次回から、
ログイン時にセッションを選択して「Ubuntu 2D」でログインしましょう。
しかし、これでは面倒ですからデフォルトセッションを変更しておきます。デフォルトセッションの設定は、
lts.conf の LDM_SESSION です。Ubunt 2D をデフォルトにするには、
LDM_SESSION="gnome-session --session=ubuntu-2d"
とします。
7-3.Unity 使いたくない(Ubuntu)
Edubuntu なら、クライアント環境はデフォルトで Gnome Classic です。Edubuntu を使ってください・・・
もし、Ubuntu で LTSP を構築して「やっぱり Unity は嫌」ということになったなら、gnome-session-fallback
パッケージをインストールしてください。クライアント起動時に「Gnome Classic」が選択できるようになりま
す。デフォルトセッションにするなら、
LDM_SESSION="gnome-session --session=gnome-fallback"
とします。
8.おまけ Edubuntu のインストール
Edubuntu は教育現場用にまとめられたディストリビューションです。インストールは最新版の Ubuntu とあま
り変わりませんが、Edubuntu に特有の点があります。
• Gnome 2.x のインストールが選択できる
• LTSP のインストールが選択できる(選択する)
• 教育現場で必要なソフトウェアが一括インストールできる
Unity を利用したくない場合は、Gnome 2.x を導入して、デフォルトセッションとすると良いでしょう。
【参考書】
「Linux Terminal Server Project Administrator 's Reference A Guide to LTSP Networ k」
http://sourceforge.net/projects/ltsp/files/Docs-Admin-Guide/LTSPManual.pdf/download?
use_mirror=jaist
今回の構成図
インターネット
ネットワーク: 192.168.0.0/24
DNS : 192.168.0.1
ゲートウェイ: 192.168.0.1
ブロードバンド
ルーター
LAN
eth0
192.168.0.150
eth1
192.168.2.1
ネットワーク: 192.168.2.0/24
DNS : 192.168.0.1
LTSP のネットワーク
LTSP サーバー
Core2Duo 3GHz
MEM:4GB
HDD:120GB
スイッチング・ハブ