松本清張 野村芳太郎傑作選

松本清張◉野村芳太郎傑作選
6月8日
(土)
∼28 日
(金)特別料金 600 円
砂の器
70 歳以上は 500 円
1974年・松竹映画
脚本…橋本忍・山田洋次/音楽…芥川也寸志/撮影…川又昻
出演…丹波哲郎、森田健作、加藤剛、加藤嘉、春田和秀、島田
陽子、佐分利信、山口果林、緒形拳、松山省二、内藤武敏
カラー/スコープ・サイズ/2時間23 分
日本映画史に残る名作『砂の器』の完成までの道のりは
決して平坦ではなかった。
『ゼロの焦点』
(61 年)に引き続い
て、橋本忍・山田洋次の二人は『砂の器』の脚本化を進める
が難渋し、原作の中にある「福井県の田舎を去ってからどう
やってこの親子二人が島根県までたどり着いたかは、この
6月8日
(土)
∼14 日
(金)
午前 10:15 ∼12:38
親子二人にしかわからない」という一節を作品の肝とするこ
とで打開する。ハンセン病によって故なき差別を受けた少
年が成長して大作曲家となり自らの過去を消し去るために
殺人を犯し、その真相を二人の刑事が追う…。この映画の
製作に、当初松竹は難色を示し、十年以上を経て橋本忍が
設立した橋本プロとの提携によってようやく製作にこぎつけ
る。かくして、
みごとな撮影と芥川也寸志による交響曲
「宿命」
の力も相俟って、人間の深い業を描いた壮大な作品として
完成した『砂の器』は空前の大ヒットを記録したのだった。
張込み
1958年・松竹映画
脚色…橋本忍/音楽…黛敏郎/撮影…井上晴二
出演…大木実、宮口精二、菅井きん、高峰秀子、田村高広、内
田良平、高千穂ひづる、清水将夫、藤原釜足、浦辺粂子
モノクロ/スコープ・サイズ/1時間56 分
「小説新潮」1955年 12 月号にて発表された松本清張の
短編小説を野村芳太郎監督が映画化した、清張・野村コン
ビの記念すべき第一作。
東京で起きた強盗殺人事件の犯人・石井を追って、二人
の刑事が、石井の昔の恋人・さだ子の嫁ぎ先の九州・佐賀
6 月 15 日
(土)
∼17 日
(月)
午前 10:00 ∼11:56
へとやって来る。さだ子は石井と別れた後、二十歳以上も
年上の銀行員の後妻になっていた。もの静かで、熱烈な恋
愛経験の持ち主にはとても見えないさだ子のもとに、ほんと
うに石井は現れるのか。二人の刑事は、うだる暑さの中、張
込みを続ける。刑事の一人、柚木には、肉体関係までありな
がら結婚に踏みきれずにいる弓子という女がいたが、その関
係は微妙なところにあった。やがて張込み開始から1週間
が過ぎ、柚木が一人で見張っていた時、さだ子が裏口から
●東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
出かけ、事態は大きく動き始める……。
鬼畜
1978年・松竹映画
脚本…井手雅人/音楽…芥川也寸志/撮影…川又昻
出演…緒形拳、岩下志麻、小川真由美、大滝秀治、加藤嘉、田
中邦衛、蟹江敬三、穂積隆信、大竹しのぶ、浜村純、鈴木瑞穂
カラー/ビスタ・サイズ/1時間50 分
松本清張が実際の事件をもとに書き下ろした原作を、清
張の『点と線』
(58 年)を脚色したこともある名脚本家・井手
雅人が脚色して映画化した作品。主演した緒形拳は、この
作品で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など、数々の賞
を受賞している。
6 月 15 日
(土)
∼21 日
(金)
午後 12:30 ∼2:20
印刷屋を営む宗吉は妻のお梅にかくれて外に妾を囲い、
三人の子どもをつくっていたが、商売が左前になって手当を
払えなくなってしまう。ある日、妾の菊代が三人の子どもを
連れて印刷屋に怒鳴り込んできて、宗吉に子どもを押し付
け蒸発してしまう。妻のお梅は子どもたちと宗吉に激しく当
り散らし、地獄の日々が始まるが、小心者の宗吉は、お梅の
迫力にたじろぐばかり。やがて衰弱した末の子が事故死し、
宗吉は、さらに真ん中の娘を置き去りにし、長男を崖から突
き落とすのだったが……。
影の車
1970年・松竹映画
脚色…橋本忍/音楽…芥川也寸志/撮影…川又昻
出演…加藤剛、岩下志麻、小川真由美、岩崎加根子、滝田裕介、
近藤洋介、岡本久人、小山梓、永井智雄、芦田伸介
カラー/ビスタ・サイズ/1時間38 分
松本清張の連作短編集「影の車」の中の一篇「潜在光景」
を映画化した心理ミステリー。撮影の川又昂が、主人公の
幼少期のトラウマを当時不可能と言われていた多層分解処
理という特殊技術によって描いた異様な色彩が印象的。
団地で妻と二人で暮らす平凡なサラリーマンの浜島は、
6 月 18 日
(火)
∼22 日
(土)
午前 10:00 ∼11:38
ある日、幼なじみの泰子とばったり出会い、やがて親密な仲
になってゆく。泰子には死別した夫との間にできた六歳の息
子・健一がいるが、
無口で暗い健一の眼が、
浜島には気になっ
て仕方がない。どうやっても手なづけられない健一を相手す
るうちに、浜島は、健一の中に自分自身の幼少時代を見るよ
うになる。夫を亡くした母と親密な関係にあった伯父に殺意
を抱いていたことを…。そうして浜島は、健一が自分を殺そ
うとしているのだ、という妄想に取り憑かれてゆくのだった
……。
疑惑
1982年・松竹=富士映画/脚色…松本清張/音楽…芥川
也寸志/撮影…川又昻
出演…桃井かおり、岩下志麻、鹿賀丈史、柄本明、真野響子、
仲谷昇、森田健作、小沢栄太郎、北林谷栄、内藤武敏
カラー/ビスタ・サイズ/2時間07分
1974年に別府で起きた「別府三億円保険金殺人事件」
(別府市国際観光港で車が海に転落し、運転していた夫の
み助かり、妻と二人の娘が溺死。その後、夫が三億円の保険
金を手にしたことから殺人の容疑で逮捕された事件)を題
材にした松本清張の原作の映画化。容疑者は女に変えられ
6 月 22 日
(土)
∼28 日
(金)
午後 12:10 ∼2:17
ているが、その名前や性格によって犯人に決めつけられて
ゆく様が描かれ、最後に思わぬドンデン返しが待っている。
富山県新港湾埠頭で車が海中に転落し、乗っていた地元・
財閥が死亡、しかし同乗していた後妻の球磨子は無傷で助
かる。球磨子が夫に三億円の保険をかけていたことで、彼
女に疑惑の目が向けられる。物的証拠がないまま逮捕、起
訴されるが、国選弁護人として女性弁護士・律子が選任さ
れて裁判が始まり、やがて球磨子と律子の間には女同士の
確執がめばえてくるのだった……。
ゼロの焦点
1961年・松竹映画
脚色…橋本忍・山田洋次/音楽…芥川也寸志/撮影…川又昻
出演…久我美子、高千穂ひづる、有馬稲子、南原宏治、西村晃、
加藤嘉、穂積隆信、十朱久雄、高橋とよ、沢村貞子、桜むつ子
モノクロ/スコープ・サイズ/1時間35 分
北陸地方を舞台に、太平洋戦争直後に端を発する時代の
傷痕が生んだ連続殺人事件を描いた松本清張の代表的な
長編ミステリー『ゼロの焦点』を、
『張込み』を脚色した橋本
忍と監督デビュー前の山田洋次の二人で脚色し、野村芳太
郎が監督した、清張・野村コンビの第二作。
6 月 23 日
(日)
∼28 日
(金)
午前 10:00 ∼11:50
新婚七日目にして失踪した夫・憲一を探して、禎子は金
沢へとやって来る。憲一はかつて広告代理店の金沢出張所
に勤務し、その後東京に栄転したのだが、後任の事務引き
継ぎに金沢に出かけ、そのまま行方がわからなくなったのだ。
消息はおろか、金沢で憲一が暮らしていたはずの下宿の所
在もわからず一旦帰京した禎子は、憲一が広告代理店に勤
める以前に立川署の巡査をしていたことを知り、その時売春
婦の取り締まりに携わっていたことが今回の失踪と何か関
係があるのではないかと直感するのだった……。