レーザライトショーのレーザ安全 レーザの構造

レーザライトショーのレーザ安全
2005年6月
㈱テクノソリューションズ
磯部 皖一
レーザの構造
全反射ミラー
レーザ媒質
部分透過ミラー
励起(エネルギー注入)
1
レーザの種類
媒質の種類
•
–
–
–
–
ガスレーザ
固体レーザ
液体レーザ
半導体レーザ
HeNe, Ar, CO2, Cu蒸気、エキシマー
Nd:YAG、Er:ガラス
色素
InGaAs、GaAsP、 GaAsAl、InGaP、InGaN、GaN
発振形態の種類
•
– 連続発振
– 単一パルス発振
– 繰り返しパルス発振
エネルギーの与え方
•
– 放電
(ガスレーザ)
– 光励起 (フラッシュランプ励起、半導体レーザ励起)
– 電流注入 (半導体レーザ)
レーザの種類(波長)
280
UVC
315
UVB
400
430
490
590
640
700 nm
近赤外
UVA
銅蒸気
エキシマ
YAG
THG
ArF 193
355
KrCl 222
550
KrF 248
青色半
導体
XeBr 282
405
511
YAG
SHG
遠赤外
HeNe
YAG
1064
633
532
Ar
Kr
488
647
CO2
10.6μm
515
XeCl 308
2
レーザ光の特徴
•
単色性
•
•
•
•
•
•
•
可干渉性(コヒーレンス) 時間的コヒーレンス 空間的コヒーレンス
偏光の純粋性
高指向性
大気の乱れ(温度分布等)がなければ、直進する
高収束性
加工機、光ディスク(780Æ650Æ405nm)、ICの露光光源
波長可変性
通信の多重化(WDM)
大きなパワー 加工機
短パルスの発生
光ファイバー通信
現在の長さ標準はHeNeレーザ(3.39μm)の波長
レーザ光の人体への影響
部位
眼
皮膚
熱
視力低下
潰瘍
瘢痕
肥厚性瘢痕
衝撃波
視力低下
潰瘍
瘢痕
肥厚性瘢痕
非熱反応
(光化学反応等)
雪眼
(遅発性)
色素沈着
発ガンの原因
要因
3
眼の構造
小澤哲麿、レーザ安全ガイドブック第3版(2000、新技術コミュニケーションズ)
事故例
出血
直後
出血
パルスYAGレーザ誤照射
誤照射部位
1週間後
瘢痕組織
6ヶ月後
小澤哲麿、レーザ安全ガイドブック第3版(2000、新技術コミュニケーションズ)
4
皮膚
ヒートスポット
炭化焼却および蒸化(100℃以上)
血液凝固(68℃以上)
蛋白変性(40℃以上)
発赤
光生物学的活性化反応(〜40℃)
皮膚表面から250μm以下の変化は完全に治癒する
250μm以上の変化は潰瘍形成→瘢痕、厚肥性瘢痕(非可逆的変化)
眼の障害例
職業
使用レーザ
発生年
最終矯正視力
職業
使用レーザ
発生年
最終矯正視力
大学講師
ルビー
1965
1.5
大学院生
YAG
1992
1.0
研究員
Ar
1973
1.2
大学院生
YAG
1993
1.0
研究員
YAG
1975
0.06
研究員
YAG
1993
0.2
大学院生
YAG
1979
1.2
研究員
チタンサファイア
1993
1.5
研究員
YAG
1980
0.8
研究員
チタンサファイア
1993
1.2
大学院生
YAG
1982
0.3
大学生
YAG
1994
0.4
研究員
YAG
1982
0.1
研究員
チタンサファイア
1995
1.2
技術員
Ar
1982
0.2
大学講師
YAG
1995
0.9
大学院生
YAG
1983
0.1
研究員
YAG
1996
0.1
大学生
YAG
1984
0.6
研究員
チタンサファイア
1996
0.8
研究員
YAG
1984
1.2
大学生
YAG
1997
0.06
研究員
YAG
1987
0.1
大学院生
YAG
1997
1.0, 0.01
技術員
Ar
1988
0.9
大学院生
YAG
1997
2.0, 1.5
技術員
Ar
1988
0.9
大学院生
YAG
1997
1.2, 1.5
研究員
YAG
1989
1.2
大学院生
YAG
1997
1.5, 1.5
大学院生
YAG
1990
1.5
大学院生
YAG
1997
1.2, 0.4
技術員
Ar
1991
1.2
大学院生
YAG
1998
1.5
研究員
チタンサファイア
1992
0.5
研究員
チタンサファイア
1999
1.5
小澤哲麿、OplusE、2001年7月号他
5
レーザーポインター
レーザーポインター
6
脱毛機
苦情相談の増加から、東京都で規制を検討中
エステでの施術、家庭用とも
【メコニス情報(東京都内の消費生活センターへの相談情報)から】
危害発生に伴う相談件数39件(平成13 年4 月〜平成16 年3 月受付)
(内訳)危害の程度
○ 受傷内容
○ 治療期間
皮膚障害
22 件
1ヶ月以上
9件
熱傷
15 件
3週間〜1ヶ月
1件
感覚機能の低下
1件
1〜2週間
7件
凍傷
1件
1週間未満
6件
不明
5件
医者にかからず
11 件
使用レーザー 出力は1W程度
エステ:アレキサンドライト、YAG、ダイオード
家庭用:ダイオードが多い
光以外の危険要素
事故事例
•
高電圧
– 死亡事故多し
•
加工機
– 死亡事故あり
– 珪肺
•
ガス
7
レーザ安全規格制定の経緯
年
通産省
労働省
厚生省
国際機関
1973
1976
1980
IEC/TC76
JISC6801
CDRH
薬審第524号
1984
IEC60825:1984
1986
レーザスクール
1988
JISC6802:1988
基発第39号
1990
1991
米国
ANSI Z136.1
IEC60825A1:1990
レーザ機器取扱技術者資格
認定試験
JISC6802:1991
1993
IEC60825-1:1993
1995
1997
JISC6802:1997
1998
JISC6802:1998
2001
レーザポインタ規制
2005
JISC6802:2005
IEC60825-1:1993/Amd.1:1997
IEC60825-1:Amd.2
法的拘束力
•
JISは工業標準であり、法的な拘束力はない
•
労働安全衛生法 違反すると罰則あり。
•
「消費生活用製品安全法」
•
レーザー脱毛機について、東京都が規制を検討中。厚生労働省が規制を開始。
8
用語
•
最大許容露光量 MPE
•
被ばく放出限界 AEL
•
限界開口
•
レーザ安全管理者
通常の環境のもとで、人体に照射しても有害な影響を
与えることがないレーザ放射レベルの最大値。
レーザ製品の各クラスで定めた最大被ばく放出レベル。
放射輝度または放射露光の安全度の確認のための測定で、
全面積にわたり平均化することができる最大円形領域。
レーザの危険性の評価と管理をするに足る知識を持ち、
レーザの安全管理のための責任者。
クラス3B以上のレーザが運転される場合は任命されること。
MPEは原則として、レーザ放射による障害発生率が50 %のレベルの1/10のレーザ光
強度である。厳密な人体の障害のスレッショールドを与えるものではない。
人体に対するレーザ放射の露光の管理値として用いる。
MPEは人間での事故例、動物実験の結果などから決められている。データが豊富なわけではなく、非常に限られたデータを
ベースとしている。また、できる限り規制を緩めようとする産業界の要請の下で、余裕を大きくとっている値ではない。
安全係数10は十分な安全性があるように受け取られがちであるが、ベースとなっているデータがばらついていれば(標準偏差
が大きければ)安全係数10であっても安全とは言い切れない。「MPEとは100人に照射して、3人に障害が出る。」という説もある。
これは標準偏差が平均値の約1/2であれば統計的に出てくる結論である。人体の障害のスレッショールドが人種、年齢を問わず
ほとんど一致するということは考えられず、十分あり得ることである。ある技術者は自分のホームページで、安全係数が10だか
らMPEで障害が発生する可能性は1億分の1よりも小さいといっているが、これは誤りである。
MPEはこれ以下ならば安全という見方ではなく、これを目安として、いかに露光量を下げるかという判断材料として使うべきも
のである。
クラス分け(2005年から変更)
•
クラス1 ビーム内観察での光学機器の使用を含め、合理的に予見できる運転条件の下で
安全。
•
クラス1M 302.5−4000nmの範囲で、合理的に予見できる運転条件の下で安全。しかし、
ビーム内で光学機器を使用すると危険の可能性あり。
•
クラス2 400−700nmの範囲で、目の嫌悪反応により、光学機器の使用を含め安全。
•
クラス2M 400−700nmの範囲で、目の嫌悪反応により、光学機器の使用を含め安全。し
かし、ビーム内で光学機器を使用すると危険の可能性あり。
•
クラス3R 302.5nm−1mmの範囲で、ビームの直接観察は危険性はあるが、クラス3Bより
安全で、安全対策は簡易でよい。クラス1又はクラス2のAELの5倍以下。
•
クラス3B ビームの直接観察は危険。反射散乱光は安全。
•
クラス4 反射散乱光も危険。皮膚障害、火災の危険あり。
9
レーザの改造
• JISC6802に準拠したレーザ製品は適切にクラス分けされ、そのクラスに
応じて技術的対策(ラベル貼付を含む)が施されている。
• このレーザを改造する場合は、改造するものは改造後の状態に対して、
再クラス分けを行い、適切なラベルを貼付しなければならない。他の技術
的対策は要求されていない。
• したがって、ユーザが業者に改造させた場合は、ユーザがラベル以外の
必要な技術的対策を行うことに責任がある。
その他ライトショーに適用される規定
•
監視されていない区域での実演、ディスプレーまたは催し物では、クラス1またはクラス2
レーザ製品だけを使わなければならない。このような目的に、もっと高いクラスのレーザを
使用するためには、経験を積んだ、よく訓練を受けた操作員の管理下にあるとき、および/
または観客が相応するMPEを超えたレベルの露光から予防されているときだけ認められる
べきである。
•
走査に対する安全防御:走査の故障、走査速度または走査振幅の変化があっても該当した
クラスのAELを超えるレーザ放射を人体に与えることがあってはならない。
すなわち、走査が止まって、固定したスポットになった時の安全対策が必要
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JISC6802の指針
使用者の予防手段(1)
クラス1
クラス1M
要求項目
クラス2
クラス2M
クラス3R
クラス3B
クラス4
リモートインターロック
コネクタ
不要
部屋又はドア回路に
接続
鍵による制御
不要
不使用時には鍵を抜く
ビーム減衰器
不要
使用時に不注意な露
光を防止する
放出警告デバイス
不要
レーザ運転中であるこ
とを表示
警告標識
不要
警告標識の注意に従
う
ビーム光路
不要
必要な光路の端で終端する
鏡面反射
不要
予期しない反射を防止する
JISC6802の指針
使用者の予防手段(2)
要求項目
クラス1
クラス1M
クラス2
クラス2M
クラス3R
クラス3B
クラス4
眼の保護
不要
技術上及び管理上の
方法が実行できないと
き並びにMPEを超える
とき必要
保護着衣
不要
必要な場
合あり
訓練
不要
特定の指
示が必要
全ての運転員及び保守要員に必
要
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レーザ保護眼鏡
レーザの種類
種類
波長nm
EXCIMER
200〜400
Ar
488〜515
He-Cd
レーザ保護具の種類と使用範囲
レンズカラー
適用波長範囲
O.D値
400nm以下
7
325、442
365nm以下
及び
395〜515nm
4.4
Ar
514.5
514.5
3
4.4
Ar
488
488
2
2nd YAG
533
480〜550nm
4.5
He-Ne
633
Kr
647
He-Ne
633
ルビー
694
半導体
780
4.5
340nm以下
及び
580〜700nm
4.5
2
4.5
750〜800nm
5
半導体
830
780〜830nm
5
YAG
1,060
1,000〜1,500nm
4.5
CO2
10,600
5,300〜
10,600nm
10以上
ILDAのホームページから(1)
•
•
非走査効果
– 回折格子、ルミア
停止速度が遅いスキャナー
– ミラーボール、円錐状スキャナー、多面体スキャナー
これらは故障検出が容易で、シャッター作動が容易なため、比較的安全
•
停止速度が速いスキャナー
– ガルバノスキャナー、音響光学(AO)偏向器、
これらは故障検出後シャッターが動作したのでは遅く、危険性が高い。超高速のシャッターが必要
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ILDAのホームページから(2)
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
パルスレーザをスキャンしないこと
30m以内の距離ではレンズを用いてビーム拡がり角を大きくすること。この方がショーの効果も
大きくまた安全である。
単一ビーム(分離してないビーム)を観客に向けないこと。もし単一ビームが安全なら、どのよう
なスキャンをやっても安全である。
扇形ビームやトンネル形ビームを照射するときには固定せず、移動させること
スキャン速度を早くしても安全性は高くならない。
スキャンパターンの大きさに応じて、パワーを変え、小さいパターンではパワーを絞ること
スキャンの固定点では速度が遅くなり露光量が増加するので、可能ならば、点滅にすること
走査欠陥検出インタロックを使用すること。固定ビームが観客の目に照射される可能性は小さ
いとしてもそれが発生したときの影響の大きさを考えること。
観客エリア外の人に照射されたときに、眼が回復する時間を与えるために、10秒以上のビーム
を出さない時間をプログラムすること
放射照度を測定すること。一般的には 10 mW/cm2、もしくは100 W/m2 を超えてはならない。
観客席のビーム出射口に最も近い位置に立ち、レーザを緑または白色にしてプログラムをラン
してみる。もしまぶしくて目を背けたいと感じたら、たぶんMPEレベルに非常に近いかまたは超
えている。
観客の全ての人が明るい光が眼に入るのを楽しんでいるわけではない。観客はショーが安全
な物であると主催者を信用している。
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