ソーシャルビジネス実現に向けた 新たなパートナーシップ 企業とNGOの戦略的連携 2013年10月31日 認定NPO法人 国際協力NGOセンター(JANIC) 事務局次長 富野 岳士 NGOとは 国際協力NGO=「国際協力」を行う非政府・非営利の市民組織 ※「国際協力」とは、海外・国内を問わず、地球的規模の課題(開発・ 人権・平和・環境・緊急救援など)にとりくむこと 出典:『国際協力NGOダイレクトリー』 組織の性格 目的:地球的規模の諸問題の解決 特徴:非営利・非政府・ボランタリズム(自発性) NGOとNPOの違いは? 組織の特徴は基本的に同じ。ただし、日本では次の傾向が・・・ NGO=国際協力を行う市民組織 NPO=国内の地域社会の課題解決を目的に活動する市民組織 日本のNGOの総数は? 約500団体 *特定非営利活動法人(NPO法人)の認証数:48,110法人 (平成25年8月31日現在) 2 日本のNGOの活動地域 北米 (1 %) 欧州 (7%) 中東 (12%) アフリカ (25 %) アジア (80 %) 中南米 (14%) オセアニア (5%) 世界に広がるNGOの活動地域 (世界92カ国以上) 3 出典:『NGOデータブック2011』 日本のNGOの活動分野(33分野 上位10位) 教育 64% 保健医療 41% 農村開発 40% 教育(国内) 31% 植林・森林の保全 29% 自然災害 28% 職業訓練 28% 環境教育 20% 給水・水資源 19% 食料・飢餓 15% 都市(スラム)開発、住居 15% (※複数回答、n=223) 人権全般 15% (※複数回答、n=223) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% NGOの事業分野を海外・国内それぞれ9分類33分野に細分化した際に、最も注 力している活動の上位10位までを表示。 出典:『NGOデータブック2011』 4 企業とNGOの関係の変化 <一方通行の関係> 対峙型: NGOが企業行動を監 視・批判、時には敵対的に行動。 支援型:NGOの活動理念の達 成と企業の社会貢献活動の理念 を合致させる目的で企業から NGOへ支援や協力。 <双方向の関係> 地球規模の課題解決に向 けて、対話、コミュニケーション、 連携をする関係に。 コミュニティ、政府、その他 のグループなど多様なステー クホルダーの関わりも重要に。 <外部環境の変化> 地球規模課題が深刻化。地球全体の持続性を脅かす共通課題として認識。単独の セクターだけでは解決困難。 →MDGs(ミレニアム開発目標) 影響力を増した企業の社会的責任(CSR)。 企業、政府だけでなく、NGOや市民社会にも、社会的責任(SR)を果たし互いに連携 や協力をして解決にあたることが求められてきた。 →ISO26000 5 連携とは 辞書によると 【協力】 力を合わせて事にあたること 【連携】 同じ目的を持つもの同士が、協力し、 物事に取り組む事 <参考> 協働:異種・異質の「組織」同士が、対等に協力して社会的な活動を行うこと。 参加:個人が責任を持って組織の企画や活動にかかわること。 日本NPOセンター発行『知っておきたいNPOのこと・3【協働編】』より 6 企業とNGOの連携とは 「持続可能な社会の実現に向けた地球規模の課題解 決を目的として、お互いの特性を認識し、資源や能力 等を持ち寄り、対等な立場で協力して活動すること」 連携は目的達成のための「手段」であって連 携そのものが「目的」であってはならない 7 連携の意義 企業 NGO 経済的利益を追求しながらも社 会的問題も同時に解決していく 姿勢が求められている。 NGOと連携することで、社会的 課題への専門性や現地コミュニ ティ・人々のエンパワーメント等 の視点を取り入れる事ができる。 企業の持つ技術力、組織力、営 業力、マーケティング力などを 地球規模の課題解決に活かそ うという動きが活発に。 企業 × NGO 複雑化する地球規模の課題は一国や一 機関の努力だけでは解決が困難。それぞ れのアクターが連携することが重要。 互いの強みを活かし win-win 関係が築け るなら、これまで困難とされてきた地球規 模の課題解決にも大きく近づけるはず。 8 連携のあるべき姿 共通の目的 (地球規模課題の解決) 企業にとっての効果 NGOにとっての効果 • ブランド価値向上 • 企業ノウハウの活用 • 企業評価向上 • 認知度向上 • 新規事業展開のヒント • 新規支援者獲得 • ロイヤリティ向上 • 課題共有の機会獲得 (普及・啓発) • リスクマネージメント • 売上・利益向上 • 資金獲得 • 信頼性向上 9 連携のパターン 1. フィランソロピー(チャリティ)型 一方通行の関係。企業のNGOの活動への関与度は相対的 に低く、NGOは企業に対して感謝する姿勢が見られる。 – – – – 寄付や助成金 施設の提供や商品の貸出(無償提供) ボランティア、専門家(理事などのマネジメント含む)の派遣 各種キャンペーンへの参加や協力 Austin, J.E.(ジェームズ・オースティン), 「The Collaboration Challenge」 Jossey-Bass Publisher, 2000年 10 連携のパターン 2. トランザクション(取引関係)型 企業とNGOの間に相互理解と信用が生まれる連携。ミッション や価値観において類似点が見られる。リーダーシップを持った 個人レベルでの強いつながりがある。 – – – – 社員教育 CSR調達コンサルティング ステークホルダーダイアログへの参加 アドバイザリー(助言委員会)や社外取締役として企業のガバナンスへ の参加 Austin, J.E.(ジェームズ・オースティン), 「The Collaboration Challenge」 Jossey-Bass Publisher, 2000年 11 連携のパターン 3. インテグレーション(事業統合)型 事業に統合された連携。ミッションや価値観が共有され、組織 同士の関与度が高まる。相互に組織文化へ影響。 – コーズ・マーケティング(寄付つき商品) – 共同事業(商品開発、BOPビジネス、ソーシャルビジネス等) Austin, J.E.(ジェームズ・オースティン), 「The Collaboration Challenge」 Jossey-Bass Publisher, 2000年 12 連携のレベル I フィランソロピー 連携・協働の段階 II トランザクション III インテグレーション →→→→→→→→→高 関与のレベル 低 ミッションの重要性 周辺・末端 → → → → → → → 戦略的 資源の規模 小 →→→→→→→→→ 大 活動領域 狭い → → → → → → → → 広い 双方向性 弱い →→→→→→→ 経営の複合度 単一的 → → → → → → → → 複合的 戦略的価値 低い → → → → → → → → → 高い 強い Austin, J.E.(ジェームズ・オースティン), 「The Collaboration Challenge」 Jossey-Bass Publisher, 2000年 13 連携の実践 1. 連携する目的の明確化 2. 互いの特性を把握する 3. 連携相手を探す 4. 連携相手を選ぶ 5. 具体的な連携の目標を設定する 6. Plan Do 役割分担を確認する 7. 規模を決める 8. スケジュールを立てる 9. 人員体制を整える Action Check 10. 書面によって確認する(覚書、契約書など) 11. 評価・報告を行う 12. 改善に向けた取り組み 14 連携における留意点 1. 目的を共有すること 連携による地球規模の課題解決は、開発途上国の住民といった第三者の 利益を目的とする。まず、連携の目的が何であるかを双方が理解し、確認 しておくことが必要。 2. お互いを理解すること 連携相手の特性を十分に理解し、価値観を尊重することはより良い関係 構築の第一歩。異なる組織形態や文化を持つ企業とNGOが、互いの違い を認めた上で共感できる目的や課題を共有し、信頼関係を築いていくこと が重要。 3. 正直であること 連携の実施にあたり、双方に想定されるリスクなどのマイナスの情報を事 前に共有し、問題を予防することが重要。また、万が一問題が発生した時 も、このような姿勢があることで問題を円滑に解決しやすくなる。 15 更なる連携促進に向けた課題 二者間の連携にとどまらない多様なステークホルダーと の関わり 企業にとっての消費者、 NGOにとっての支援者を巻き 込んだ連携 企業の本業に近いところでの連携 連携を推進し得る人材の育成 16 BOP(Base of Pyramid)ビジネスとは 途上国の低所得者層(年間所得3 千ドル/人以下の層:Base of Pyramid)が抱える社会的課題の 解決に資するビジネス ビジネスサイドから見ると ビジネスを通じて途上国 ビジネスを通じて途上国 の貧困(BOP)層の社会 の貧困(BOP)層の社会 的課題も解決 的課題も解決 開発サイドから見ると ≒ 途上国の貧困(BOP)層の 途上国の貧困(BOP)層の 社会的課題解決のための 社会的課題解決のための 1つのアプローチ 1つのアプローチ 17 BOPビジネスの本質 BOP<層のための社会的責任>ビジネス (Responsible Business for the Base of the Pyramid) BOP層が抱える様々な社会的課題を解決するための経済・ 社会・環境のバランスのとれた持続可能なビジネス。 単にBOP層をマーケットと捉える「途上国ビジネス」とは異なり、 貧困削減などBOP層の抱える社会課題の解決に資するビジ ネスを指す。→ Needs first. その地域の社会的課題は何か? BOP層の人々が奪われている様々な権利を回復すると共に、 本来持つ能力を発揮していくことが期待される。 ※ここでいう「BOP層」とは、経済的な貧困層だけでなく、教育を受けられない 人、女性、少数民族、障害者、様々な権利を剥奪された人なども含むもの と考える。 <「地球規模の課題解決に向けた企業とNGOの連携ガイドライン Ver.2 11頁参照> 18 http://www.janic.org/ngo_network/ 19 地球×未来、あなたと今できること。 www.janic.org
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