第30回日本外傷学会総会・学術集会 プログラム(PDF)

第30回日本外傷学会
プログラム・抄録
会長 東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野 大友 康裕
会期 2016年 5 月30日(月)~31日(火)
会場 ソラシティカンファレンスセンター
(東京都千代田区神田駿河台 4 丁目 6 番)
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
会 長 挨 拶
「外傷学30年 さらなる飛躍に向けて」
このたび,皆様のご支援をいただき,第30回日本外傷学会学術集会を平成28年 ₅ 月30日から ₂ 日
間にわたり主催させていただきます.ちょうど30周年の節目になる本学会学術集会を,当教室で担
当できますことは大変名誉なことであり,教室をあげてこの重責を果たしたいと考えております.
この30年間,日本外傷学会は,臓器損傷分類の開発・定着化,JATEC コースの開発・普及,日
本外傷データバンク(JTDB)の整備などを通して,わが国の外傷診療の向上に大きく寄与して参
りました.その成果は,わが国の交通事故死の激減や JTDB の科学的データ解析による治療成績改
善など,さまざまな形で示されております.さらにこれから30年,わが国の外傷学・外傷診療のさ
らなる革新的な進化を目指して,今回の学術集会の主題を「外傷学30年 さらなる飛躍に向けて」
といたしました.
本学会は,日本医科大学救急医学教室と済生会神奈川県病院外科との外傷診療カンファランス(外
傷症例検討会)を前身としております.学会設立から今日に至るまでの30年の歴史を振り返る特別
展示を企画いたしました.
最近の外傷学で注目を集めているトッピックに「外傷後急性凝固障害」があります.これを「DIC
が基礎病態である」とする日本の研究者の主張と,
「DIC ではない別の病態である」とする欧米の
研究者の間で,学術雑誌上での論争が続いております.本学術集会では,日本の研究者の代表であ
る北海道大学の丸藤教授と欧米の研究者の代表である Queen Mary University of London の Brohi 教
授の直接対決を企画致しました.また,同様のテーマで,パネルディスカッション「外傷性凝固障害 最新の知見」もあります.是非,ご期待下さい.
学会メインテーマに沿う形で,シンポジウムのテーマを「わが国の Preventable trauma death は
減少できたのか? ― これまでの取り組みと今後の望むべき姿」と致しました.またパネルディ
スカッションで「わが国における外傷センターとは?」も企画しております.
₄ つのテーマで企画した Cross Fire Session でも白熱したディスカッションにご期待ください.
また来る2020年東京オリンピックに向け,オリンピック組織委員会・日本集団災害医学会とのジョ
イントセッションも企画いたしました.
会場は,東京は山手線の真ん中,御茶ノ水に新規に建設された御茶ノ水ソラシティです.初夏の
東京を楽しみつつ,外傷診療の未来について大いに議論しましょう.
多くの皆様のご参加をお待ちしております.
第30回日本外傷学会学術集会会長
東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野
大友 康裕
― 59 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
日本外傷学会会長
会 場
回数
開 催 日
1回
1987年 5 月29日~30日
東條会館
小林 國男
帝京大学医学部附属病院
救命救急センター
2回
1988年 5 月27日~28日
日本都市センター
大塚 敏文
日本医科大学救命救急センター
3回
1989年 6 月 1 日~ 2 日
札幌市教育文化会館
金子 正光
札幌医科大学救急集中治療部
4回
1990年 4 月19日~20日
大阪商工会議所
吉岡 敏治
大阪大学医学部救急医学
5回
1991年 5 月30日~31日
石橋文化センター
加来 信雄
久留米大学救命救急センター
6回
1992年 5 月21日~22日
福島県文化センター
元木 良一
福島県立医科大学第一外科
7回
メルパルク OKINAWA
1993年 5 月20日~21日
(郵便貯金会館)
真栄城優夫
沖縄県立中部病院院長
8回
1994年 5 月19日~20日
倉敷市芸文館
藤井 千穂
川崎医科大学救急医学
9回
1995年 5 月17日~19日
スクワール麹町
前川 和彦
東京大学医学部救急医学
10回
1996年 5 月29日~30日
千里ライフサイエンスセンター
ビル
太田 宗夫
大阪府立千里救命救急センター
11回
1997年 5 月29日~30日
スクワール麹町
島崎 修次
杏林大学救急医学
12回
1998年 5 月 7 日~ 8 日
東京ガーデンパレス
鈴木 忠
東京女子医科大学救急医学
13回
1999年 5 月27日~28日
日本教育会館
山本 保博
日本医科大学救急医学
14回
2000年 5 月25日~26日
新横浜プリンスホテル
大和田 隆
北里大学医学部救命救急医学
15回
2001年 5 月25日~26日
日本海運倶楽部/赤坂プリンス
ホテル
辺見 弘
国立病院東京災害医療センター
16回
2002年 5 月16日~17日
スクワール麹町
岡田 芳明
防衛医科大学校救急部
17回
2003年 5 月15日~16日
国立京都国際会館 中谷 壽男
関西医科大学医学部救急医学
18回
2004年 5 月20日~21日
札幌プリンスホテル
国際館パミール
浅井 康文
札幌医科大学医学部救急治療部
19回
2005年 5 月26日~27日
新横浜プリンスホテル
吉井 宏
済生会神奈川県病院院長
20回
2006年 5 月25日~26日
全日空ホテルズ
ホテルグランコート名古屋
荒木 恒敏
藤田保健衛生大学救急部
21回
2007年 5 月24日~25日
ホテルニューオータニ幕張
葛西 猛
医療法人鉄蕉会
亀田総合病院救命救急センター
22回
2008年 5 月29日~30日
沖縄コンベンションセンター
平安山英盛
沖縄県立中部病院院長
23回
2009年 5 月28日~29日
スイスホテル南海大阪
坂田 育弘
近畿大学医学部救急医学
24回
2010年 5 月27日~28日
ホテルニューオータニ幕張
益子 邦洋
日本医科大学千葉北総病院
救命救急センター
25回
2011年 5 月19日~20日
リーガロイヤルホテル堺
横田順一朗
市立堺病院副院長
26回
2012年 5 月24日~25日
リーガロイヤルホテル東京
木村 昭夫
27回
2013年 5 月23日~24日
ホテルマリターレ創世
坂本 照夫
久留米大学医学部救急医学
28回
2014年 6 月25日~26日
東京ビッグサイト TFT ホール
横田 裕行
日本医科大学大学院医学研究科
救急医学分野
29回
2015年 6 月11日~12日
札幌コンベンションセンター
新藤 正輝
帝京大学医学部附属病院
救急科・外傷センター
30回
2016年 5 月30日~31日
ソラシティー
カンファレンスセンター
大友 康裕
東京医科歯科大学大学院救急災害
医学分野
31回
2017年 6 月 1 日~ 2 日
パシフィコ横浜
北野 光秀
済生会横浜市東部病院救命救急
センター
― 60 ―
会 長
(※第 1 回~第 8 回までは研究会)
所 属
(独)国立国際医療研究センター
病院救命救急センター
日外傷会誌 30巻₂号(2016)
交通のご案内
― 61 ―
日外傷会誌 30巻₂号(2016)
会場のご案内
ソラシティ( 1 階・2 階)
ワテラスコモンホール 3 階
― 62 ―
日外傷会誌 30巻₂号(2016)
第30回日本外傷学会 諸会議日程
会 長:大友 康裕
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科救急災害医学分野)
会 期:2016年 5 月30日
(月)~31日
(火)
会 場:ソラシティカンファレンスセンター
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台 4 丁目 6 番
■ 主要会場
総 合 受 付:ソラシティホール 2 階 ホワイエ
口 演 会 場:第 1 会場 ソラシティホール 2 階【EAST】
第 2 会場 ソラシティホール 2 階【WEST】
第 3 会場 ソラシティ 1 階 Room C
第 4 会場 ソラシティ 1 階 Room B
第 5 会場 ソラシティ 1 階 Room A
第 6 会場 ソラシティ 2 階 テラスルーム
ポスター会場:ワテラスコモンホール 3 階
企 業 展 示:ソラシティホール 2 階ホワイエ
P C 受 付:ソラシティホール 2 階ホワイエ
日本外傷学会創立30周年記念企画 パネル展示:ソラシティホール 2 階ホワイエ
カリスマ博学外傷医決定戦:ワテラスコモン 懇親会会場
■ 主な会議と日時場所
事
理
会:
(昼食付)
(日)11:30〜14:00 東 京医科歯科大学医歯学総
5 月29日
合研究棟Ⅱ期棟 M&D タワー
18階小会議室 1
社
員
総
会:
評 議 員 セ ミ ナ ー: 新
理
事
会:
(朝食付)
評 議 員 選 出 委 員 会:
(朝食付)
(日)14:30〜16:30 ソラシティホール 2 階
5 月29日
5 月29日
(日)16:30〜18:00 ソラシティホール 2 階
(月) 7 :30〜 8 :30 ソラシティ 1 階 Room D-2
5 月30日
5 月30日
(月) 7 :30〜 8 :30 ソラシティ 1 階
ミーティングルーム
国
際
委
員
会:
(昼食付)
外傷研修コース開発委員会
(昼食付)
:
5 月30日
(月)12:00〜13:00 ソラシティ 1 階 Room A
(月)12:00〜13:00 ソラシティ 1 階 Room 5 月30日
D1+D2
会
員
総
会:
(月)13:10〜13:40 ソラシティホール 2 階 5 月30日
第 1 会場
専 門 医 検 討 委 員 会
(合同)
:
5 月31日
(火) 7 :50〜 8 :50 ワテラスコモン 3 階
研修カリキュラムプログラム委員会
(合同)
:5 月31日
(火) 7 :50〜 8 :50 ワテラスコモン 3 階
試 験 作 成 委 員 会
(合同)
:
(火) 7 :50〜 8 :50 ワテラスコモン 3 階
5 月31日
専門医研修施設認定委員会
(合同)
:
(火) 7 :50〜 8 :50 ワテラスコモン 3 階
5 月31日
専 門 医 認 定 委 員 会
(合同)
:
(火) 7 :50〜 8 :50 ワテラスコモン 3 階
5 月31日
外傷研修コース開発委員会
(合同)
:
5 月31日
(火) 7 :50〜 8 :50 ワテラスコモン 3 階
臓器損傷分類委員会:
(昼食付)
(火)12:00〜13:00 Room D-1
5 月31日
― 63 ―
日外傷会誌 30巻₂号(2016)
トラウマレジストリー検討委員会:
(昼食付)
5 月31日
(火)12:00〜13:00 Room D-2
広 報 ・ I C T 委 員 会:
(昼食付)
5 月31日
(火)12:00〜13:00 ソラシティ 1 階
ミーティングルーム
■ ランチョンセミナー
ランチョンセミナー 1 : 5 月30日
(月)12:00〜13:00 第 1 会場+第 2 会場
(ソラシティホール 2 階)
(共催:一般社団法人 日本血液製剤機構)
ランチョンセミナー 2 : 5 月30日
(月)12:00〜13:00 第 3 会場
(ソラシティホール 1 階 Room C)
(共催:スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント株式会社)
ランチョンセミナー 3 : 5 月30日
(月)12:00〜13:00 第 4 会場
(ソラシティホール 1 階 Room B)
(共催:ノルメカ・エイシア)
ランチョンセミナー 4 : 5 月31日
(火)12:00〜13:00 第 1 会場
(ソラシティホール 2 階 EAST)
(共催:東レ株式会社/東レ・メディカル株式会社)
ランチョンセミナー 5 : 5 月31日
(火)12:00〜13:00 第 3 会場
(ソラシティホール 1 階 Room C)
(共催:東京エレクトロニツクシステムズ株式会社)
(ソラシティホール 1 階 Room B)
ランチョンセミナー 6 : 5 月31日
(火)12:00〜13:00 第 4 会場
(共催:日本製薬株式会社)
― 64 ―
第30回日本外傷学会総会・学術集会
日程表
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第30回日本外傷学会総会・学術集会 日程表
第 ₁ 日目 ₅ 月30日
(月)
8:00
9:00
10:00
11:00
12:00
第 ₂ 会場
第 ₁ 会場
ソラシティ2F
ソラシティ2F
(ソラシティホール
【EAST】
)(ソラシティホール
【WEST】
)
8 :55〜
第 3 会場
ソラシティ1F
(Room C)
第 ₄ 会場
ソラシティ1F
(Room B)
開会式 優秀演題セッション ₁
( 9 :00-10:00)
座長:横田順一朗
横田 裕行
外傷登録・統計・疫学
( 9 :00-10:00)
座長:廣瀬 保夫
優秀演題セッション ₂
(10:00-11:00)
座長:坂本 哲也
木村 昭夫
外傷診療体制 ①地域
(10:00-11:00)
座長:清田 和也
Cross Fire Session ₁
(11:00-12:00)
Coagulopathy in Trauma. Is it DIC ?
座長:Raul Coimbra
久志本成樹
外傷教育
(11:00-11:45)
座長:佐藤 格夫
ランチョンセミナー2
ランチョンセミナー ₁
(12:00-13:00)
共催:一般社団法人 日本血液製剤機構
(12:00-13:00)
共催:スミス・アンド・ネフュー
ウンドマネジメント株式会社
13:00
ランチョンセミナー 3
(12:00-13:00)
共催:ノルメカ・エイシア
会員総会
(13:10-13:40)
14:00
会長講演
(13:40-14:10)
司会:北野 光秀
15:00
シンポジウム
(14:10-15:40)
わが国の Preventable Trauma Death は減少できたのか?
︲ これまでの取り組みと今後の望むべき姿
司会:益子 邦洋
横田順一朗
16:00
17:00
特別講演 ₁ ※
(14:10-15:10)
非骨傷性頚髄損傷-原因と治療法
司会:井口 浩一
演者:吉井 俊貴,筑田 博隆
Case Conference
あなたならどうアプローチする?
(15:40-16:20)
司会:松島 一英
大友 康裕
招待講演 ₂
(15:10-16:00)
司会:村尾 佳則
演者:Prof. Mark Bowyer
特別講演 ₂ ※
(16:00-16:50)
日本における外傷に起因する
死因究明の現状
司会:猪口 貞樹
演者:岩瀬博太郎
Cross Fire Session ₂
(16:20-17:20)
Non Responder に CT は有益か有害か?
座長:森村 尚登
渡部 広明
18:00
19:00
20:00
21:00
※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定
― 66 ―
腹部外傷 ①膵損傷
(14:10-15:10)
座長:金 史英
腹部外傷 ②腸間膜・腸管
(15:10-16:10)
座長:疋田 茂樹
腹部外傷 ③刺創・血管損傷
(16:10-17:10)
座長:金子 直之
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第30回日本外傷学会総会・学術集会 日程表
第 ₁ 日目 ₅ 月30日
(月)
8:00
第 ₅ 会場
ソラシティ1F
(Room A)
第 ₆ 会場
ソラシティ2F
(テラスルーム)
病院前外傷診療
( 9 :00-10:00)
座長:水島 靖明
骨盤外傷 ①出血への対応
( 9 :00-10:00)
座長:大泉 旭
頸部外傷,その他
(10:00-11:00)
座長:清水 敬樹
骨盤外傷 ②機能予後
(10:00-11:00)
座長:原 義明
第 ₇ 会場
コモンホール3F
(ワテラスコモン)
9:00
10:00
11:00
四肢外傷 ④その他 ₂
(11:00-11:50)
座長:松岡 哲也
12:00
13:00
14:00
外傷初期診療
(14:10-15:00)
座長:林 寛之
15:00
頭部外傷
(15:00-16:00)
座長:三宅 康史
16:00
脊椎・脊髄外傷
(16:00-17:00)
座長:加藤 宏
多発外傷
(16:00-17:00)
座長:北川 喜己
17:00
18:00
19:00
ポスターセッション ₁ 頭頸部・顔面 座長: 荒木 尚,石川 秀樹
ポスターセッション ₂ 胸腹部外傷 座長: 井上 潤一,山村 仁
ポスターセッション 3 骨盤・四肢 座長: 岸本 正文,岩瀬 弘明
20:00
ポスターセッション
(17:10-18:20)
飲み物,軽食をご用意しています
ポスターセッション ₄ 多発外傷・その他
座長: 関根 和彦,織田 順
21:00
― 67 ―
会員懇親会
カリスマ博学外傷医決定戦
(18:30-20:30)
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第30回日本外傷学会総会・学術集会 日程表
第 2 日目 5 月31日
(火)
8:00
第 1 会場
第 2 会場
ソラシティ2F
ソラシティ2F
(ソラシティホール
【EAST】
)(ソラシティホール
【WEST】
)
第 3 会場
ソラシティ1F
(Room C)
第 4 会場
ソラシティ1F
(Room B)
9:00
Joint Session 3
腹部外傷 ④肝・膀胱・その他
委員会企画 1
( 9 :00-10:20)
( 9 :00-10:00)
(
9
:00-10:30)
外傷医と脳外科医の効率的連携を
( 9 :00-10:50)
座長:小川 太志
考える:Beyond
the
standard
見えてきた
JETEC
コースの全貌
わが国における外傷センターとは?
座長:高里 良男
司会:田中 裕
司会:松下 隆
横田 裕行
木村 昭夫
松本 尚
腹部外傷 ⑤その他 2
指定講演:John Cook-Jong Lee
委員会企画 3
(10:00-11:00)
招待講演 1
(10:20-11:40)
座長:岡田 一郎
(10:30-11:20)
JTDB を用いた外傷疫学研
Cross Fire Session 3
司会:藤田 尚
究の成果と課題
(10:50-11:50)
演者:Prof. Kenneth Boffard
画像診断
座長:齋藤 大蔵
CT で腸管損傷は診断可能か?
委員会企画 2
(11:00-11:50)
白石 淳
CT 画像を用いた新臓器損傷分類
座長:松田 潔
座長:岩瀬 史明
(11:20-11:50)
萩原 章嘉
パネルディスカッション 1
10:00
11:00
司会:北野 光秀
12:00
ランチョンセミナー 5
(12:00-13:00)
共催:東京エレクトロニツク
システムズ株式会社
ランチョンセミナー 4
共催:東レ株式会社/
東レ・メディカ株式会社
13:00
14:00
15:00
16:00
特別講演 3 (13:00-13:50)※
Cross Fire Session 4
大量出血症例に対する血液製剤の
(13:00-14:00)
適正使用ガイドライン
頭部外傷に対する穿頭 vs. 大開頭
司会:嶋津 岳士
座長:木下 浩作
演者:松下 正
並木 淳
Joint Session 1
(13:50-16:00)
動画セッション
東京オリンピック,
パラリンピック特別企画
(14:00-15:00)
(共催:東京オリンピック・
座長:今 明秀
パラリンピック競技大会組織
委員会,日本集団災害医学会)
基調講演
パネルディスカッション 2 ※
司会:坂本 哲也
(15:00-16:20)
演者:赤間 高雄
外傷性凝固障害 最新の知見
司会:小井土雄一
司会:久志本成樹
本間 正人
Joint Session 2
JAST/JSACS/KSACS Joint Conference
(13:00-14:30)
司会:溝端 康光
村田 希吉
Jung Chul Kim
Suk-kyung Hong
小倉 裕司
16:20 閉会式
17:00
18:00
19:00
20:00
21:00
※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定
― 68 ―
教育講演※
(14:30-15:30)
司会:坂本 照夫
演者:白石 淳
ランチョンセミナー 6
(12:00-13:00)
共催:日本製薬株式会社
胸部外傷 ①大血管その他
(13:00-14:00)
座長:本竹 秀光
胸部外傷 ②肺損傷その他
(14:00-15:00)
座長:西海 昇
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第30回日本外傷学会総会・学術集会 日程表
第 ₂ 日目 ₅ 月3₁日
(火)
8:00
第 ₅ 会場
ソラシティ1F
(Room A)
第 ₆ 会場
ソラシティ2F
(テラスルーム)
四肢外傷 ①血管損傷
( 9 :00-10:00)
座長:黒住 健人
基礎研究・病態生理
( 9 :00-10:00)
座長:増野 智彦
四肢外傷 ②コンパートメント症候群・
その他
(10:00-11:00)
座長:峰原 宏昌
IVR・Non︲operative management
(10:00-11:00)
座長:西巻 博
四肢外傷 ③手術・その他
(11:00-12:00)
座長:王 耀東
胸部外傷 ③胸壁・横隔膜損傷
(11:00-12:00)
座長:河野 元嗣
輸液・輸血療法
(13:00-14:00)
座長:井上 貴昭
Damage Control Surgery
(13:00-14:00)
座長:阪本雄一郎
9:00
10:00
11:00
12:00
13:00
14:00
外傷診療体制 ②院内
座長:中野 実
15:00
16:00
17:00
18:00
19:00
20:00
21:00
― 69 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
<参加者へのお知らせ>
■ 参加受付
1 .受付場所:エントランスホール(1F)
※第 1 会場と第 2 会場の間
2 .参加費受付時間: 5 月30日
(月)
8 :00〜18:00
5 月31日
(火)
8 :00〜15:30
3 .演者は本会会員に限ります.未入会の方は,速やかに日本外傷学会事務局にて入会手続きをお取り
ください.
<日本外傷学会事務局>
〒169-0072 東京都新宿区大久保2-4-12 新宿ラムダックスビル 9 階
(株)
春恒社 学会事業部内
TEL:03-5291-6259 FAX:03-5291-2176 E-mail:[email protected]
4 .参加費 医師
15,000円 研修医・看護師等コメディカル・その他
5,000円(要職員証)
※学生は,学生証の提示あるいは施設長の証明があれば参加費を免除といたします(但し,大学
院生は除く)
.
※受付時に参加証と名札をお渡しいたします.名札はわかりやすい位置にお付けください.名札
を着用のかたのみ入場できます.
※当日受付にて,
e 医学会カードにて参加登録を行いますので,
忘れずにカードをお持ちください.
登録詳細につきましては,巻頭のご案内をご確認ください.
5 .懇親会費 2,000円
■ 懇親会のご案内
・ 5 月30日
(月)18:30より,ワテラスコモンで行います.多数のご参加をお待ちしております.
■ 呼び出し
・会期中の呼び出しは行いません.総合受付付近に設置いたします掲示板を適宜ご確認ください.
■ 駐車場
・車でのご来場は台数に限りがありますので,ご遠慮くださいますようお願いいたします.
駐車料金のサービスはございません.
■ 喫煙
・会場内は禁煙となっておりますので,ご協力をお願いいたします.
■ 抄録集販売
・日本外傷学会事務局受付にて抄録集を 1 部2,160円(税込)で販売いたします.
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
■ 救急科領域専門医更新ポイントセッション予定
【30日】特別講演 1 :非骨傷性頚髄損傷-原因と治療法
特別講演 2 :日本における外傷に起因する死因究明の現状
【31日】特別講演 3 :大量出血症例に対する血液製剤の適正使用ガイドライン
パネルディスカッション 2 :外傷性凝固障害 最新の知見
教育講演:初歩から理解できる傾向スコアマッチング法
■ 企業展示
・企業展示は,下記の場所にて開催されます.
会場:ソラシティ(2F)ホワイエ
時間: 5 月30日
(月) 9 :00〜18:30,31日
(火) 9 :00〜15:00(予定)
■ 書籍展示
・書籍展示は,下記の場所にて開催されます.
会場:ソラシティ(2F)
第 1 会場前ホワイエ
時間: 5 月30日
(月) 9 :00〜18:30,31日
(火) 9 :00〜15:00(予定)
■ 報道関係の方々へ
・会場内の取材は原則として自由ですが,総合受付にて報道許可を受けてください.
取材時間は,受付にてお渡しする名札を必ず着用してください.
・発表内容については,患者プライバシーに抵触する可能性のあるものは「患者及び関係者からのイ
ンフォームド・コンセントを得た上で,患者個人情報が特定されないように留意して発表する旨」
を会員に公布しておりますが,学会会場以外のメディア上で公表される可能性についての同意は不
定となります.報道の際は,演者ならびに総会会長への連絡を通じて,患者関係者からの事前承諾
を必ず得るようご注意ください.
・講演中のフラッシュ撮影は固くお断りします.また,撮影時にシャッター音がする機器の使用はご
遠慮ください.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
<座長・演者の方へのお知らせ>
■ 座長の先生方へ
・座長受付はございません.
・担当セッション開始15分前までに会場担当スタッフにお声かけいただき次座長席にお着きください.
・セッションの開始・終了のアナウンスはありません.定刻になりましたら,開始してください.
・予定時間通りの進行を厳守してください.
■ 一般口演演者の先生方へ
・演者の方は,発表時間を厳守するようお願いいたします.
−口演発表−
発表: 6 分 質疑応答: 4 分
・発表はすべて Power Point による PC プレゼンテーションで行います.
・映写面は各会場とも 1 面です.
・発表の 1 時間前までに(早朝のセッションは30分前)
,PC 受付にて発表データのご登録をお願い
いたします.
・ 2 日目の午前中にご発表のある先生は,前日の午後に登録されることをお勧めいたします.
− PC 受付時間−
5 月30日
(月)
8 :30〜18:00
5 月31日
(火)
8 :30〜15:30
− PC 環境について−
・事務局でご用意する PC 環境は以下の通りです.
OS:Windows 7
プレゼンテーションソフト:Power PointVer.2010・2013
動画:Windows Media Player
−データ作成について−
・データ作成は Microsoft Power Point 2010/2013にてお願いします.
・文字化けを防ぐため,標準インストールされているフォントをご使用ください.
日本語:MS ゴシック,MS P ゴシック,MS 明朝,MS P 明朝
英 語:Arial,Arial Black,Century,Century Gothic,Times New Roman
・発表データは,USB フラッシュメモリーに保存してお持ちください.また,バックアップデータ
もお持ちください.
・発表データのファイル名は「演題番号(半角)氏名(全角漢字)
」を記入してください.
例:O-1-1_ ○○太郎 .ppt
・動画を使用する場合は,必ず Windows Media Player で動作する形式で作成してください.
・動画を使用する場合は,同じフォルダに Power Point の発表ファイルと動画ファイルを入れて保
存してください.
・音声の使用はできません.
・作成されたデータは,作成した以外の PC で事前に動作確認をしてください.
・Macintosh をお使いの先生は,
PC 本体をご持参ください.また,
PC をお持ち込みいただく際には,
D-Sub15ピンディスプレイ端末に対応した変換コネクターと AC アダプターは必ずお持ちください.
・会場では,各演者ご自身で演台上のマウスを使用してスライドの操作をしていただきます.
・お預かりしたデータは,学術集会終了後事務局にて責任を持って消去いたします.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
利益相反
・利益相反に関する記載を発表スライドの冒頭に入れてください.
例:利益相反はない
本研究会は○○より資金提供を受けた
○○より測定装置の提供を受けた
■ パネルディスカッション・優秀演題等の発表時間
パネルディスカッション 1 発表 7 分
優秀演題セッション 発表 7 分,指定討論者の質問 2 分,質疑応答 5 分
※他のセッションの進行は,座長に一任します.時間厳守でお願いします.
■ 一般演題(ポスター)の座長の先生方へ
・セッション開始10分前までにポスター会場へお越しいただき,会場スタッフにお声かけください.
■ 一般演題(ポスター)の演者の先生方へ
−発 表−
発表: 4 分 質疑応答: 3 分
・セッション開始時間の10分前には,担当ポスター前でご待機ください.
−貼付・撤去時間−
・ポスターは下記の日時で貼付・撤去してください.
貼付: 5 月30日
(月) 9 :00〜15:00 撤去: 5 月31日
(火)15:30〜17:00
※撤去時間を過ぎても掲示されているポスターは,事務局にて処分いたしますので,ご了承ください.
−展示要項−
・ポスターパネルは,図の要領で準備いたします.
演題番号と貼付用の画鋲は,会場にご用意いたします.
・ポスターパネルのサイズは,横90cm ×縦210cm となります.
・本文は,
横90cm ×縦190cm に収まるように作成してください.演題番号が隠れないように,
ポスター
サイズをご検討ください.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
20cm
70cm
演題
番号
演題名・演者名・所属
利益相反
20cm
発表スペース
90cm
190cm
−利益相反−
・利益相反に関する記載を演題名の下に入れてください.
例:利益相反はない
本研究会は○○より資金提供を受けた
○○より測定装置の提供を受けた
−諸注意事項−
・患者個人に抵触する可能性のある内容は,患者あるいはその代理人からのインフォームド・コンセン
トを得た上で患者個人が特定されないように十分留意して発表をしてください.個人情報が特定され
る発表は禁止いたします.
外科関連学会協議会のプライバシー保護ガイドラインを参考にしていただきますようお願い申し上げ
ます.
http://www.jssoc.or.jp/other/info/privacy.html
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第30回日本外傷学会総会・学術集会
メインテーマ:外傷学30年 さらなる飛躍に向けて
特別プログラム
■ 会長講演
司会:済生会横浜市東部病院救命救急センター 北野 光秀
「防ぎえる外傷死への取り組み」
演者:第30回日本外傷学会総会・学術集会会長 大友 康裕
■ 招待講演
司会:帝京大学医学部附属病院救命救急センター 藤田 尚
1 .「Goal-Directed Administration of Haemostatic Products and Medicine」
演者:Witwatersrand University, Johannesburg Prof. Kenneth Boffard
司会:近畿大学医学部附属病院救命救急センター 村尾 佳則
2 .「Transforming Trauma Training with Simulation: Next Revolution」
演者:Uniformed Services University Prof. Mark Bowyer
■ 特別講演
1 .非骨傷性頚髄損傷−原因と治療法(※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定)
司会:埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 井口 浩一
a)頚椎後縦靭帯骨化症による頚髄損傷
演者:東京医科歯科大学医学部附属病院整形外科 吉井 俊貴
b)非骨傷性頚髄損傷に対する早期手術と待機手術のランダム化比較試験(OSCIS 試験)の現状
演者:東京大学医学部附属病院整形外科 筑田 博隆
2 .日本における外傷に起因する死因究明の現状(※救急科領域専門医更新ポイントセッション)
司会:東海大学医学部外科学系救命救急医学 猪口 貞樹
演者:千葉大学大学院医学研究科法医学 岩瀬博太郎
3.
大量出血症例に対する血液製剤の適正使用ガイドライン
(※救急科領域専門医更新ポイントセッション)
司会:大阪大学大学院医学系研究科救急医学 嶋津 岳士
演者:名古屋大学医学部附属病院輸血部 松下 正
■ シンポジウム
「わが国の Preventable Trauma Death は減少できたのか?−これまでの取り組みと今後の望むべき姿」
司会:南多摩病院 益子 邦洋
堺市立総合医療センター 横田順一朗
演者:東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 遠藤 彰
八戸市立市民病院救命救急センター 吉村 有矢
富山大学大学院危機管理医学(救急・災害医学) 奥寺 敬
公立豊岡病院但馬救命救急センター 小林 誠人
済生会横浜市東部病院救命救急センター 折田 智彦
日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 横堀 將司
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
■ パネルディスカッション
1 .わが国における外傷センターとは?
指定講演
「The new trauma system/trauma centers in Korea」
演者:Ajou University School of Medicine John Cook-jong Lee
司会:福島県立医科大学外傷学講座 松下 隆
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 松本 尚
演者:札幌徳洲会病院 上田 泰久
済生会横浜市東部病院救急科 清水 正幸
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 井口 浩一
長崎大学病院外傷センター 宮本 俊之
湘南鎌倉総合病院外傷センター 土田 芳彦
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 松本 尚
2 .外傷性凝固障害 最新の知見(※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定)
司会:東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学 久志本成樹
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 小倉 裕司
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 吉矢 和久
福岡大学病院救命救急センター 星野 耕大
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター重症外傷センター 石井 健太
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 遠藤 彰
北海道大学病院先進急性期医療センター救急科 早川 峰司
東京医科歯科大学医学部付属病院救命救急センター 村田 希吉
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学 久志本成樹
■ Cross Fire Session
1 .Coagulopathy in Trauma. Is it DIC ?
座長:University of California, San Diego Raul Coimbra
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学 久志本成樹
演者:北海道大学病院先進急性期医療センター救急科 丸藤 哲
Queen Mary University of London Karim Brohi
2 .Non Responder に CT は有益か有害か?
座長:横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター 森村 尚登
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座 渡部 広明
演者:大阪府立急性期総合医療センター 木下 喬弘
亀田総合病院救命救急科 白石 淳
3 .CT で腸管損傷は診断可能か?
座長:日本医科大学武蔵小杉病院救命救急センター 松田 潔
国立国際医療研究センター 萩原 章嘉
演者:聖マリアンナ医科大学病院救急医学 松本 純一
山梨県立中央病院救命救急センター 井上 潤一
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
4 .頭部外傷に対する穿頭 vs. 大開頭
座長:日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野 木下 浩作
慶應義塾大学医学部救急医学 並木 淳
演者:花と森の東京病院脳神経外科 高山 泰広
りんくう総合医療センター脳神経外科 萩原 靖
■ Case Conference 司会:University of Southern California, LAC+USC Medical Center, USA 松島 一英
東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野 大友 康裕
■ 教育講演 (※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定)
司会:久留米大学病院 坂本 照夫
「初歩から理解できる傾向スコアマッチング法 –The Journal of Trauma and Acute Care Surgery 誌に
採択された論文を題材として」
演者:亀田総合病院救命救急センター 白石 淳
■ Joint Session
Joint Session 1 東京オリンピック,パラリンピック
特別企画(共催:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会,日本集団
災害医学会)
基調講演
司会:帝京大学医学部救急医学講座 坂本 哲也
「オリンピック・パラリンピックの医務体制」
早稲田大学,
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会メディカルディレクター 赤間 高雄
司会:国立病院機構災害医療センター救命救急科 小井土雄一
鳥取大学医学部救急災害医学 本間 正人
九州大学大学院医学研究院災害・救急分野 永田 高志
警視庁警務部 奥村 徹
日本医科大学救急医学 布施 明
山梨県立中央病院救命救急センター 井上 潤一
横浜市立大学附属市民総合医療センター 森村 尚登
Joint Session 2 JAST/JSACS/KSACS Joint Conference
司会:大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター 溝端 康光
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 村田 希吉
President of KSACS, Chonnam National University Jung Chul Kim
University of Ulsan, Asan Medical Center Suk-Kyung Hong
演者:日本医科大学医学部付属病院高度救命救急センター 金 史英
堺市立総合医療センター救命救急センター 臼井 章浩
済生会横浜市東部病院救命救急センター 船曵 智弘
Yonsei University Jae Gil Lee
Korea University Nam Ryeol Kim
St. Mary’s Hospital Hang joo Cho
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 3
「外傷医と脳外科医の効率的連携を考える:Beyond the standard」
(共催:日本脳神経外傷学会)
司会:国立病院機構災害医療センター脳神経外科 高里 良男
日本医科大学大学院医学研究科外科系救急医学分野 横田 裕行
亀田総合病院救命救急科 白石 淳
奈良県立医科大学脳神経外科 朴 永銖
東海大学脳神経外科 本多ゆみえ
千葉県救急医療センター脳神経外科 宮田 昭宏
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座 渡部 広明
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 阪本 太吾
■ 委員会企画
委員会企画 1 見えてきた JETEC コースの全貌(外傷研修コース開発委員会)
司会:順天堂大学浦安病院救急診療科 田中 裕
国立国際医療研究センター病院救命救急センター 木村 昭夫
順天堂大学浦安病院救急診療科 田中 裕
国立国際医療研究センター病院救命救急センター 木村 昭夫
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座 渡部 広明
日本医科大学付属病院高度救命救急センター 横堀 将司
大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター 溝端 康光
帝京大学医学部附属病院救命救急センター 藤田 尚
委員会企画 2 CT 画像を用いた新臓器損傷分類(臓器損傷分類委員会)
司会:済生会横浜市東部病院救命救急センター 北野 光秀
演者:済生会横浜市東部病院救命救急センター 北野 光秀
済生会横浜市東部病院救命救急センター 船曵 知弘
東邦大学医療センター大森病院救命救急センター 豊田幸樹年
委員会企画 3 JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題(トラウマレジストリー検討委員会)
司会:防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門 齋藤 大蔵
亀田総合病院救命救急科 白石 淳
演者:亀田総合病院救命救急科 白石 淳
筑波メディカルセンター病院 阿部 智一
松戸市立病院救命救急センター 庄古 知久
国立国際医療研究センター病院救命救急センター 木村 昭夫
■ 優秀演題セッション
優秀演題 1
座長:堺市立総合医療センター 横田順一朗
日本医科大学大学院医学研究科外科系救急医学分野 横田 裕行
香川大学医学部附属病院 一二三 亨
指定討論者:熊本大学医学部附属病院救急・総合診療部 笠岡 俊志
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Department of Surgey, Massachusetts General Hospital 山際 武志
指定討論者:順天堂大学浦安病院救急診療科 田中 裕
埼玉医科大学総合医療センター 大饗 和憲
指定討論者:国立病院機構災害医療センター救命救急センター 加藤 宏
日本医科大学千葉北総病院 益子 一樹
指定討論者:豊岡病院但馬救命救急センター 小林 誠人
優秀演題 2
座長:帝京大学医学部救急医学講座 坂本 哲也
国立国際医療研究センター 木村 昭夫
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター 中田 孝明
指定討論者:福岡大学医学部救命救急医学講座 石倉 宏恭
公立豊岡病院但馬救命救急センター 前山 博輝
指定討論者:沖縄 ER サポート 林 峰栄
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター 福間 博
指定討論者:千葉大学医学部附属病院救急科 渡邉 栄三
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター 中尾 彰太
指定討論者:済生会横浜市東部病院救命救急センター 船曳 知弘
■ 動画セッション
座長:八戸市立市民病院救命救急センター 今 明秀
演者:独立行政法人国立病院機構災害医療センター救命救急センター 岡田 一郎
さいたま赤十字病院救命救急センター・救急医学科 佐藤 啓太
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 松田 真輝
日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター 服部 陽
■ 日本外傷学会創立30周年記念企画 パネル展示
■ 評議員セミナー
座長:大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター 溝端 康光
“Why We Need a World Coalition for Trauma Care”
University of California, San Diego, USA Raul Coimbra
“Trauma system in UK”
Queen Mary University of London Karim Brohi
■ カリスマ博学外傷医決定戦
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第30回日本外傷学会日程表
第 1 日目 5 月30日(月)
第 1 会場+第 2 会場(ソラシティホール)
8 :55~ 9 :00
開会式
第30回日本外傷学会総会・学術集会会長 大友 康裕
9 :00~10:00
優秀演題セッション 1
座長:堺市立総合医療センター 横田順一朗
日本医科大学大学院医学研究科外科系救急医学分野 横田 裕行
OE1-1. 外傷性脳損傷患者の来院時カリウム値による Targeted Temperature Management と転帰
香川大学医学部附属病院救命救急センター 一二三 亨
指定討論者:熊本大学医学部附属病院救急・総合診療部 笠岡 俊志
OE1-2. ミトコンドリア標的抗酸化ペプチド(SS31)は熱傷後インスリン抵抗性を改善する
Department of Surgey, Massachusetts General Hospital 山際 武志
指定討論者:順天堂大学浦安病院救急診療科 田中 裕
OE1-3. 非骨傷性頚髄損傷に対する早期除圧術の検討
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 大饗 和憲
指定討論者:国立病院機構災害医療センター救命救急センター 加藤 宏
OE1-4. 外傷センターを中心とした広域外傷システム構築の効果
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 益子 一樹
指定討論者:豊岡病院但馬救命救急センター 小林 誠人
10:00~11:00
優秀演題セッション 2
座長:帝京大学医学部救急医学講座 坂本 哲也
国立国際医療研究センター病院救命救急センター 木村 昭夫
OE2-1. 鈍的外傷における初期診療時血中 IL-6濃度と重症度・転帰の関連
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター 中田 孝明
指定討論者:福岡大学医学部救命救急医学講座 石倉 宏恭
OE2-2. 病院前外傷診療における EFAST(extended FAST)は有効である
公立豊岡病院但馬救命救急センター 前山 博輝
指定討論者:沖縄 ER サポート 林 峰栄
OE2-3. 病院前診療における乳酸値測定の意義
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター 福間 博
指定討論者:千葉大学医学部附属病院救急科 渡邉 栄三
OE2-4. NOM を施行した肝損傷に伴う胆道系損傷への対応 〜 DIC-CT による早期診断の有用性〜
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター 中尾 彰太
指定討論者:済生会横浜市東部病院救命救急センター 船曳 知弘
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
11:00~12:00
Cross Fire Session 1 :Coagulopathy in Trauma. Is it DIC ?
座長:University of California, San Diego Prof. Raul Coimbra
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学 久志本成樹
「YES」:「Trauma, Shock, and Disseminated Intravascular Coagulation」
北海道大学医学部付属病院先進急性期医療センター 丸藤 哲
「NO」:「Coagulopathy in Trauma:Is it DIC ?」
Queen Mary University of London Karim Brohi
12:00~13:00
ランチョンセミナー 1(共催:一般社団法人 日本血液製剤機構)
「外傷性凝固障害の考え方,診断,治療」
司会:日本大学医学部 救急集中治療医学分野 木下 浩作
演者:北海道大学大学院医学研究科 救急医学分野 丸藤 哲
13:10~13:40
会員総会
13:40~14:10
会長講演
司会:済生会横浜市東部病院救命救急センター 北野 光秀
「防ぎえる外傷死への取り組み」
第30回日本外傷学会総会・学術集会会長 大友 康裕
14:10~15:40
シンポジウム:「わが国の Preventable Trauma Death は減少できたのか?−これまでの取り組みと
今後の望むべき姿」
司会:南多摩病院 益子 邦洋
堺市立総合医療センター 横田順一朗
S1-1.
我が国の11年間の外傷診療成績の検討(JTDB における PTD 症例数の推移から)
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 遠藤 彰
S1-2.
Preventable Trauma Death の客観的な peer review が必要である
八戸市立市民病院救命救急センター 吉村 有矢
S1-3.
JTAS:Japan Triage and Acuity Scale による外傷の緊急度分類
S1-4.
地域外傷診療システムの構築は外傷診療の質を向上させる
富山大学大学院危機管理医学(救急・災害医学) 奥寺 敬
公立豊岡病院但馬救命救急センター 小林 誠人
S1-5.
重傷外傷初期診療での REBOA としての IABO Strategy
済生会横浜市東部病院救命救急センター 折田 智彦
S1-6.
治療標準化の流れは頭部外傷関連多発外傷の Preventable Trauma Death を減らせたのか?
日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 横堀 將司
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
15:40~16:20
Case Conference
司会:University of Southern California, LAC+USC Medical Center, USA 松島 一英
東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野 大友 康裕
「あなたならどうアプローチする?」
指定討論者
近畿大学医学部附属病院救命救急センター 村尾 佳則
八戸市立市民病院救命救急センター 今 明秀
帝京大学医学部救急医学講座 藤田 尚
弘前大学医学部救急・災害医学講座 山村 仁
日本医科大学高度救命救急センター 金 史英
帝京大学医学部附属病院救命救急センター 石川 秀樹
16:20~17:20
Cross Fire Session 2 :Non Responder に CT は有益か有害か?
座長:横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター 森村 尚登
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座 渡部 広明
「有益」:「Hybrid ER は重症外傷の転帰を改善するか ~新たな trauma work flow の提案~」
大阪府立急性期総合医療センター 木下 喬弘
「有害」:「体幹の緊急手術を要する重症外傷例への CT は低血圧か昏睡を伴えば危険かもしれない」
亀田総合病院救命救急センター 白石 淳
第 3 会場(Room C)
12:00~13:00
ランチョンセミナー 2(共催:スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント株式会社)
総合テーマ:「重度四肢外傷治療の更なる飛躍を目指して」
座長:帝京大学医学部附属病院外傷センター 新藤 正輝
演題 1 :「Traumatic Disability をつくらないために〜重度四肢外傷治療の飛躍をめざして〜」
順天堂大学医学部附属浦安病院整形外科外傷再建センター外傷再建センター長 工藤 俊哉
演題 2 :「重度四肢外傷治療における陰圧閉鎖療法の役割〜救命センターに伝えたいこと」
京都第一赤十字病院第一整形外科副部長 奥村 弥
14:10~15:10
特別講演 1 :非骨傷性頚髄損傷−原因と治療法(※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定)
司会:埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 井口 浩一
講演 1 :頚椎後縦靭帯骨化症による頚髄損傷
東京医科歯科大学医学部附属病院整形外科 吉井 俊貴
講演 2 :非骨傷性頚髄損傷に対する早期手術と待機手術のランダム化比較試験(OSCIS 試験)の現状
東京大学医学部附属病院整形外科 筑田 博隆
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
15:10~16:00
招待講演 2
司会:近畿大学医学部附属病院救命救急センター 村尾 佳則
「Transforming Trauma Training with Simulation:The Next Revolution」
Uniformed Services University Prof. Mark Bowyer
16:00~16:50
特別講演 2(※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定)
司会:東海大学医学部外科学系救命救急医学 猪口 貞樹
「日本における外傷に起因する死因究明の現状」
千葉大学大学院医学研究科法医学 岩瀬博太郎
第 4 会場(Room B)
9 :00~10:00
一般口演 1
外傷登録・統計・疫学
座長:新潟市民病院救急科 廣瀬 保夫
O1-1. 防ぎ得た外傷死にピアレビューの代わりとなる新たな基準の検討
徳島県立中央病院外科 森 勇人
O1-2. 亜急性期に血腫が増大する急性硬膜下血腫症例の要因分析
飯塚病院救急部 山田 哲久
O1-3. 頭部体表外傷で出血性ショックとなった 5 例
中頭病院救急科 間山 泰晃
O1-4. 地方救命救急センターにおける重症外傷症例の入院診療体制の検討
飯塚病院集中治療部 安達 普至
O1-5. 当院における過去 6 年間のジェットスキー,バナナボートによる外傷の検討
亀田総合病院救命救急センター 今本 俊郎
O1-6. 四肢・骨盤骨折の症例登録制度 -RODEO study について横浜労災病院運動器センター 三上 容司
10:00~11:00
一般口演 2
外傷診療体制① 地域
座長:さいたま赤十字病院救命救急センター 清田 和也
O2-1. 兵庫県南部における救命センター増加と外傷症例集約化の現状
兵庫県災害医療センター高度救命救急センター 松山 重成
O2-2. 演題取り下げ
O2-3. 田舎で生じた重症外傷患者は救命できているか?〜地方におけるトラウマバイパスの意味〜
熊本赤十字病院総合救命救急センター外傷外科 林田 和之
O2-4. ER 型救命救急センターにおける外傷診療体制の検討
熊本赤十字病院外傷外科 堀 耕太
― 83 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O2-5. Trauma Center Maturity Measured By Potentable Death Analysis
University of California, Department of Surgery, Division of Trauma,
Surgical Critical Care, Burns and Acute Care Surgery Matsumoto Shokei
O2-6. 地方都市で理想の外傷センターを創る:鹿児島からの報告
社会医療法人緑泉会米盛病院救急科 冨岡 譲二
11:00~11:50
一般口演 3
外傷教育
座長:京都大学大学院初期診療・救急科 佐藤 格夫
O3-1. 救急外来における外傷外科処置の実態 看護師のアンケート調査
北九州総合病院救急救命センター 高間 辰雄
O3-2. 外傷外科修練に適した「救急外科」がある当院救命救急センターの特徴
堺市立総合医療センター救急外科・救命救急センター 天野 浩司
O3-3. 高齢者の交通事故外傷の特徴
滋賀医科大学社会医学講座法医学部門 古川 智之
O3-4. 外傷症例の手術に関する off-the-job training コースの対比
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 吉川 俊輔
O3-5. 外傷外科医修練 南アフリカ共和国外傷センター臨床留学の経験
徳島県立中央病院外科救急科 大村 健史
12:00~13:00
ランチョンセミナー 3(共催:ノルメカ・エイシア)
14:10~15:10
一般口演 4
腹部外傷① 膵損傷
座長:日本医科大学附属病院高度救命救急センター 金 史英
O4-1. 膵内胆管引き抜き損傷をきたしたⅢa(Ph)B型膵損傷の一例
兵庫県立加古川医療センター救命救急センター 板垣 有亮
O4-2. 膵体部鋭的損傷に対し迅速な診断および治療によって良好な経過をたどった一例
大崎市民病院救命救急センター 前澤 翔太
O4-3. 膵損傷に対する内視鏡的膵管ドレナージ術の経験
大阪市立大学救急医学 晋山 直樹
O4-4. Ⅲb 型外傷性膵損傷に対する膵温存治療の試み
国立国際医療研究センター外科 須田竜一郎
O4-5. 非手術的治療により軽快した膵損傷の 2 症例
平塚市民病院救急外科 葉 季久雄
O4-6. 外傷性膵炎と外傷後膵仮性嚢胞について
札幌東徳洲会病院外科 向井 信貴
― 84 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
15:10~16:10
一般口演 5
腹部外傷② 腸間膜・腸管
座長:久留米大学病院高度救命救急センター 疋田 茂樹
O5-1. 鈍的外傷受傷後 8 病日に判明したS状結腸穿孔の 1 症例
横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター 加藤 真
O5-2. 腸間膜損傷に起因したS状結腸動脈閉塞で虚血壊死を来し敗血症性ショックに至った 1 例
関西労災病院救急部 高松 純平
O5-3. だんじりに挟まれ受傷した外傷性十二指腸損傷の一例
神戸市立医療センター中央市民病院救急部 小森 大輝
O5-4. 外傷性腸間膜損傷症例の検討
北九州市立八幡病院救命救急センター外科 山吉 隆友
O5-5. 外傷性十二指腸損傷症例の検討 〜十二指腸損傷における術式選択
新潟大学医歯学総合研究科消化器・一般外科 滝沢 一泰
O5-6.
5 ヶ月間で経験した小児における鈍的外傷性十二指腸穿孔の 3 例
和歌山県立医科大学附属病院高度救命救急センター 那須 亨
16:10~17:10
一般口演 6
腹部外傷③ 刺創・血管損傷
座長:深谷赤十字病院救命救急センター 金子 直之
O6-1. 鈍的外傷による下大静脈損傷の治療の課題
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 中山 文彦
O6-2. 腹腔内出血に対し大動脈遮断バルーンカテーテル留置と DCS を同時に施行し救命した一例
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 家城 洋平
O6-3. REBOA で術中出血コントロールを行った腹部刺創ショックの 2 例
八戸市立市民病院救命救急センター 昆 祐理
O6-4. 当院における腹部刺創症例の検討
高知赤十字病院救命救急センター 山本祐太郎
O6-5. 当院における腹部刺創46例における検討
兵庫医科大学救急部 西村 健
O6-6. TAE から開腹コンバートした外傷性中結腸動脈損傷の 1 例
刈谷豊田総合病院消化器・一般外科 犬飼 公一
第 5 会場(Room A)
9 :00~10:00
一般口演 7
病院前外傷診療
座長:りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター 水島 靖明
O7-1. 病院前情報でのクッシング現象は脳ヘルニアを伴う重症頭部外傷を示唆するか?
岡山大学病院高度救命救急センター 湯本 哲也
O7-2. 当センターの Preventable Trauma Death は減少したか?
山梨県立中央病院救命救急センター 岩瀬 史明
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O7-3. 重症外傷症例に対するドクターカー出動の有用性
兵庫県災害医療センター 橘高 弘忠
O7-4. 意識障害を伴う外傷傷病者に対する他動的 Mallampati test の有用性
University of Pittsburgh School of Medicine, Department of Emergency Medicine
内藤 宏道
O7-5. 戦場における救護のガイドラインから事態対処医療へ
自衛隊中央病院 後藤 浩也
O7-6. 地域を網羅した救急活動記録からみた交通事故患者の受傷機転と予後の関係性
大阪大学大学院医学系研究科救急医学 片山 祐介
10:00~11:00
一般口演 8
頸部外傷,その他
座長:東京都立多摩総合医療センター救命救急センター 清水 敬樹
O8-1. 頚髄損傷に対する急性期手術における周術期合併症の検討
帝京大学医学部附属病院外傷センター 稲垣 直哉
O8-2. 顔面外傷後の遅発性咽頭後隙血腫による上気道閉塞の 1 例
亀田総合病院救命救急科 北井 勇也
O8-3. 最近経験した喉頭外傷の 5 例
済生会熊本病院救急総合診療センター 尾崎 徹
O8-4. 肝硬変・腎不全・COPD を合併した頸椎胸椎骨盤損傷 DISH 患者に対する治療戦略
岡山市立市民病院整形外科 木浪 陽
O8-5. Scapulothoracic dissociation に横隔膜神経麻痺を合併した 1 例
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 小西 良一
O8-6. 脊髄損傷の加療中に発症した本態性血小板血症の一例
近畿大学医学部附属病院救命救急センター 濱口 満英
16:00~17:00
一般口演 9
脊椎・脊髄外傷
座長:国立病院機構災害医療センター救命救急センター 加藤 宏
O9-1. 外傷性心肺停止の原因究明 〜頚椎損傷を死後 CT で検討する〜
高知医療センター整形外科 多田圭太郎
O9-2. 術中 CT 撮影が可能な Hybrid 手術室を利用した脊椎破裂骨折手術の小経験
堺市立総合医療センター救命救急センター 川本 匡規
O9-3. 外傷性胸腰椎損傷に対し後方固定術を行った症例の検討
関西医科大学附属滝井病院救命救急センター救急医学科 齊藤 福樹
O9-4. 脊髄外傷に対する高圧酸素療法を併用した少量ステロイド投与の効果
自治医科大学附属さいたま医療センター救急科 海老原貴之
O9-5. 脱臼を伴う頸髄損傷おける脱臼整復時間と神経学的予後の関連
神戸赤十字病院整形外科 武田 和也
O9-6. spinal damage control を考慮した脊髄外傷治療の経験
関西医科大学附属滝井病院救命救急センター 岩瀬 正顕
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第 6 会場(Terrace Room)
9 :00~10:00
一般口演10
骨盤外傷① 出血への対応
座長:明理会中央総合病院整形外科 大泉 旭
O10-1. 当院における骨盤外傷22例の検討
健和会大手町病院外科 花木祥二朗
O10-2. 寛骨臼・骨盤輪損傷に対する経カテーテル動脈塞栓術後合併症の検討
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 八幡 直志
O10-3. 骨盤輪骨折における創外固定の止血効果-日本外傷データバンクによる検討高知医療センター救命救急センター 大森 貴夫
O10-4. 本院での骨盤骨折に対する IVR の検討
巨樹の会新武雄病院総合救急科 堺 正仁
O10-5. 骨盤骨折に対する血管造影術における外腸骨動脈領域損傷に関する検討
福井県立病院救命救急センター 谷崎 眞輔
O10-6. 当院に搬送された骨盤骨折についての検討
東海大学医学部外科学系救命救急医学 平良 隆行
10:00~11:00
一般口演11
骨盤外傷② 機能予後
座長:日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 原 義明
O11-1. 股関節脱臼整復困難症例の検討
帝京大学医学部附属病院外傷センター 菱川 剛
O11-2. 麻酔下ストレステストによる外側圧迫型骨盤輪骨折の不安定性の評価
福山市民病院救命救急センター整形外科 小川 健一
O11-3. IVR-CT を活用し,早期退院できた高齢者骨盤骨折(AO C type)の治療経験
都立墨東病院救命センター 西村 健
O11-4. 当院における骨盤骨折に対する取り組みと効果
製鉄記念広畑病院姫路救命救急センター救急科 谷口 智哉
O11-5. 殿筋壊死を合併し治療に難渋した Morel-Lavallee Leision の 1 例
山梨県立中央病院救命救急センター 木下 大輔
O11-6. 後部尿道外傷の初期治療における primary realignment の功罪
防衛医科大学校泌尿器科学講座 堀口 明男
11:00~11:50
一般口演12
四肢外傷④ その他 2
座長:りんくう総合医療センター救命診療科 松岡 哲也
O12-1. 呼吸状態の悪化を伴わなかった脂肪塞栓症候群の 2 例
岐阜大学医学部附属病院高度救命救急センター 水野 洋佑
O12-2. MATILDA 法による足関節骨折における Joint distraction と Non-distraction の比較
秋田大学医学部整形外科 野坂 光司
― 87 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O12-3. 高齢者足関節周辺骨折における内固定と Ilizarov 創外固定の治療成績の比較
秋田大学医学部整形外科 野坂 光司
O12-4. 転位の少ない骨粗鬆症性骨折に対するイリザロフ式創外固定器の有用性
秋田大学医学部附属病院整形外科秋田イリザロフ法グループ 柴田 暢介
O12-5. ハンドセラピィを実施した両上肢重度挫滅損傷例より useful hand 獲得の可能性を学んで
湘南鎌倉総合病院湘南外傷センター 馬場 有香
14:10~15:00
一般口演13
外傷初期診療
座長:福井大学医学部附属病院総合診療部 林 寛之
O13-1. 硬膜損傷を伴う脊椎外傷は遅発性小脳出血を合併しうる
佐賀県医療センター好生館救命救急センター 屋良 卓郎
O13-2. 高エネルギー外傷に対する Trauma Pan Scan CT の意義を考える
公立陶生病院救命救急センター 市原 利彦
O13-3. 外科治療を要する体幹外傷患者への大動脈遮断手技の比較
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 白石 淳
O13-4. 外傷初期診療における全身 CT 撮影の有効性についての検討
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 中川 雄公
O13-5. JRC 蘇生ガイドライン2015・脳神経蘇生における頭部外傷および Spinal Emergency の新設
富山大学大学院危機管理医学(救急・災害医学) 奥寺 敬
15:00~16:00
一般口演14
頭部外傷
座長:昭和大学病院救急医学科 三宅 康史
O14-1. 電話救急相談における小児頭部外傷のオーバートリアージ
東京消防庁救急相談センター実務委員会 石川 秀樹
O14-2. 両側前頭側頭大開頭による外減圧術の一例
大阪府立中河内救命救急センター 奥田 和功
O14-3. 重症頭部外傷に対する神経内視鏡手術
福岡東医療センター脳神経外科 重森 裕
O14-4. 外傷性くも膜下出血における血液凝固異常の検討
高知医療センター救命救急センター 野島 剛
O14-5. 外傷性くも膜下出血の CT 分類と予後予測についての検討
済生会滋賀県病院救急集中治療科 越後 整
O14-6. 外傷性髄液漏に対して脊髄ドレナージ中に緊張性気脳症をきたした一例
神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター 井上 彰
16:00~17:00
一般口演15
多発外傷
座長:名古屋掖済会病院救命救急センター 北川 喜己
O15-1. 重症多発外傷患者における脳脂肪塞栓症の検討
北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野 澤村 淳
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O15-2. 大動脈ステントグラフトを併用した胸腹部多発外傷の治療経験
宮崎大学医学部消化管・内分泌・小児外科学 河野 文彰
O15-3. 当院における高所墜落外傷113例の検討
健和会大手町病院外科 三宅 亮
O15-4. 左横隔膜損傷及び胃前壁穿孔を認めた胸部刺創の 1 例
慶應義塾大学病院 拜殿 明奈
O15-5. 広範囲後腹膜欠損により止血に難渋した重症骨盤骨折・腹部臓器損傷の一例
独立行政法人国立病院機構災害医療センター救命救急センター 米山 久詞
O15-6. 小児重症外傷の治療経験
横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター 高橋 航
第 7 会場(ワテラスコモン)
17:10~18:20
ポスターセッション 1
頭頸部・顔面
座長:日本医科大学付属病院高度救命救急科 荒木 尚
帝京大学救命救急センター 石川 秀樹
P1-1.
頭部外傷後の皮膚欠損創に対し,陰圧閉鎖療法及び植皮術を用い良好な経過を得た 1 例
東京都立多摩総合医療センター 笠原 道
P1-2.
積極的平温療法を施行した重症頭部外傷の一症例
高知赤十字病院救命救急センター 原 真也
P1-3.
遅発性に外傷性脳動脈瘤破裂をきたした一例
横浜市立大学付属市民総合医療センター高度救命救急センター 日下恵理子
P1-4.
切迫心停止となった顔面外傷の救命例
P1-5.
仙骨骨折により一過性の低髄液圧症状を呈した仙骨嚢胞の一例
鳥取県立中央病院救命救急センター 岡田 稔
誠心会井上病院外科 中塚 昭男
P1-6.
神経症状を伴った仙骨横骨折の 1 例
大阪府立中河内救命救急センター 岡本 潤
P1-7.
頸椎を貫通し神経根損傷をきたした頸部刺創の一例
兵庫県立西宮病院救命救急センター 南 和伸
P1-8.
鈍的甲状腺損傷の 1 例
P1-9.
頸椎骨折を伴わない後咽頭血腫の 1 例
獨協医科大学越谷病院救命救急センター 速水 宏樹
さいたま赤十字病院救命センター・救急医学科 鈴木 源
P1-10. 墜落による外傷性椎骨動静脈瘻の 1 例
大分市医師会立アルメイダ病院救急・集中治療科 稲垣 伸洋
17:10~18:20
ポスターセッション 2
胸腹部外傷
座長:山梨県立中央病院救命救急センター 井上 潤一
弘前大学救命救急センター 山村 仁
― 89 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P2-1.
来院時ショック状態であった多発外傷患者に対し,救命および機能温存に成功した 1 例
香川県立中央病院救命救急センター 佐々木和浩
P2-2.
外傷性血胸に対し胸腔鏡補助下に横隔膜損傷を同定し止血し得た一例
医療法人徳洲会東京西徳州会病院 澤村 直輝
P2-3.
肺分画症に肺損傷を合併した鈍的胸部外傷の 1 例
京都第二赤十字病院救急科 平木 咲子
P2-4.
左背側肋骨骨折の胸部大動脈刺入に対し準緊急で開胸術を行った 1 例
深谷赤十字病院救急科 中込圭一郎
P2-5.
心肺停止蘇生後に ICU で緊急開胸術を施行するも救命し得なかった重症胸部外傷の一例
兵庫医科大学救急災害医学 白井 邦博
P2-6.
鈍的外傷による網嚢内出血の一例
岐阜大学医学部附属病院高度救命救急センター 加藤 久晶
P2-7.
当院における外傷性副腎損傷 2 例の検討
国保直営総合病院君津中央病院救急・集中治療科 岩瀬 信哉
P2-8.
外傷性肝損傷に対する TAE 中に増悪する右季肋部痛にて診断しえた胆嚢動脈損傷の 1 例
神戸市立医療センター中央市民病院 栗林 真悠
P2-9.
胸骨圧迫による外傷性肝損傷による出血性ショックの 1 例
武蔵野赤十字病院救命救急センター 安田 英人
P2-10. 腹部外傷の Damage control surgery 後,Morel-Lavallee Lesion に感染をきたした一例
長崎大学病院救命救急センター 山野 修平
17:10~18:20
ポスターセッション 3
骨盤・四肢
座長:大阪府立中河内救命救急センター 岸本 正文
山梨県立中央病院救命救急センター 岩瀬 弘明
P3-1.
自傷行為による陰茎切断の一例
国立病院機構東京医療ンセンター 上村 吉生
P3-2.
不安定型骨盤骨折で TAE と内固定により良好な転帰をとった 1 症例
東邦大学医療センター大森病院救命救急センター 芹澤 響
P3-3.
尿道損傷と直腸損傷を合併した骨盤骨折の 1 例
鹿児島市立病院 野口 航
P3-4.
遅発性に臀部コンパートメント症候群をきたした 2 例
山梨県立中央病院整形外科 岩瀬 弘明
P3-5.
会陰部開放創管理目的に人工肛門造設術を施行した開放性骨盤輪骨折の 1 例
新潟大学医歯学総合病院高次救命災害治療センター 普久原朝海
P3-6.
当院で経験した杙創の 2 例
横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター 江口 英人
P3-7.
感染性偽関節に対して Masquelet 法で骨癒合を得た 1 例
岡山赤十字病院整形外科 土井 武
P3-8.
脂肪塞栓症候群による意識障害を認めた下腿骨骨幹部骨折の 1 例
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科運動機能修復学講座整形外科学 救仁郷 修
P3-9.
抗凝固療法中,外傷性皮下血腫によりコンパートメント症候群様病態を呈した一例
加古川西市民病院初期研修医 平位 恵梨
― 90 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P3-10. 骨盤骨折に対する両側内腸骨動脈塞栓術と殿筋壊死の関連性
北里大学医学部救命救急医学 丸橋 孝昭
17:10~18:20
ポスターセッション 4
多発外傷・その他
座長:東京都済生会中央病院救命救急センター 関根 和彦
東京医科大学病院救命救急センター 織田 順
P4-1.
外傷出血性ショックに対する緊急開腹術にて救命し得たものの,術中覚醒を訴えた 1 症例
日本医科大学武蔵小杉病院救命救急センター 菊池 広子
P4-2.
背部からの鈍的外傷から大動脈損傷を来し CPA となった一症例
順天堂大学医学部附属静岡病院整形外科 三宅 喬人
P4-3.
出血性ショックに対し TAE 施行後,筋壊死を合併し治療に難渋した多発外傷の一例
東京女子医科大学救急医学 鈴木 秀章
P4-4.
出血性ショックを伴う多発刺創の一例
東海大学医学部外科学系救命救急医学 迫田 直樹
P4-5.
不安定型骨盤骨折に対し血管塞栓術後,広範囲の殿筋壊死と膀胱壊死を合併した一例
富士重工業健康保険組合太田記念病院救急科 飯塚 進一
P4-6.
爆発損傷の一例
市立砺波総合病院整形外科 金澤 芳光
P4-7.
軽症頭部外傷で来院,異所性妊娠が判明した 1 例
日本医科大学総合診療センター 佐々木晶子
P4-8.
診断が遅れた大腿骨骨折後の下肢仮性動脈瘤の一例
京都医療センター放射線科 濱中 訓生
P4-9.
10階以上から墜落し生存した 2 症例
神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター 蛯名 正智
P4-10. 受傷場所の環境菌による急性肺炎を来たした頚髄損傷の一例
大分大学医学部附属病院高度救命救急センター 竹中 隆一
18:30~20:30
会員懇親会 カリスマ博学外傷医決定戦
― 91 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第30回日本外傷学会日程表
第 2 日目 5 月31日(火)
第 1 会場(ソラシティ EAST)
9 :00~10:50
パネルディスカッション 1 :わが国における外傷センターとは?
司会:福島県立医科大学外傷学講座 松下 隆
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 松本 尚
指定講演
「The new trauma system/trauma centers in Korea」
講演:Ajou University School of Medicine John Cook-Jong Lee
PD1-1. 民間病院の整形外科外傷センターの現状と課題
札幌徳洲会病院 上田 泰久
PD1-2. 外傷センターにおける外傷外科医の必須条件
済生会横浜市東部病院救急科 清水 正幸
PD1-3. 外傷センター開設直前 1 年間の診療体制
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 井口 浩一
PD1-4. 長崎大学病院における外傷センターの役割
長崎大学病院外傷センター 宮本 俊之
PD1-5. 日本における外傷センターのあり方
湘南鎌倉総合病院外傷センター 土田 芳彦
PD1-6. 重症体幹部・四肢外傷の診療成績と外傷センターとしての要件
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 松本 尚
10:50~11:50
Cross Fire Session 3 :CT で腸管損傷は診断可能か?
座長:日本医科大学武蔵小杉病院救命救急センター 松田 潔
国立国際医療研究センター救命救急センター 萩原 章嘉
「YES」:「CT で腸管損傷は診断可能か:Revenge 編」
聖マリアンナ医科大学病院救急医学 松本 純一
「NO」:「DPL は CT の限界をカバーする最強の診断ツールでもある」
山梨県立中央病院救命救急センター 井上 潤一
12:00~13:00
ランチョンセミナー 4(共催:東レ株式会社/東レ・メディカル株式会社)
「これからの外傷診療に生かすバイオマーカー迅速測定システム」
座長:筑波大学医学医療系救急・集中治療医学 井上 貴昭
演者:千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学 中田 孝明
東レ株式会社 先端融合研究所 小林 道元
― 92 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
13:00~14:00
Cross Fire Session 4 :頭部外傷に対する穿頭 vs. 大開頭
座長:日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野 木下 浩作
慶應義塾大学医学部救急医学 並木 淳
「穿頭」:「頭部外傷に伴う凝固線溶系障害からみた穿頭術の有用性について」
花と森の東京病院脳神経外科 高山 泰広
「大開頭」:「頭部外傷の穿頭 vs. 大開頭」
りんくう総合医療センター脳神経外科 萩原 靖
14:00~15:00
動画セッション
座長:八戸市立市民病院救命救急センター 今 明秀
MS1-1. 心刺創(右室前壁全層性損傷)の緊急手術―Clamshell Incision でのアプローチ―
国立病院機構災害医療センター救命救急センター 岡田 一郎
MS1-2. ウェアラブルカメラを用いた外傷手術シュミレーション
さいたま赤十字病院救命救急センター・救急医学科 佐藤 啓太
MS1-3. 腹部外傷に対する Definitive surgery
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 松田 真輝
MS1-4. 頸部血管中枢側への経胸腔的アプローチ
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 服部 陽
15:00~16:20
パネルディスカッション 2 :外傷性凝固障害 最新の知見
(※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定)
司会:東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学 久志本成樹
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 小倉 裕司
PD2-1. 頭部外傷後の凝固線溶障害に対する治療戦略
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 吉矢 和久
PD2-2. Massive transfusion 発動評価にフィブリノーゲン迅速測定器(CG02N)は有用である
福岡大学病院救命救急センター 星野 耕大
PD2-3. 外傷におけるクリオプレシピテート製剤の適応と投与開始基準の検討
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター重症外傷センター 石井 健太
PD2-4. 線溶異常は外傷性凝固障害を早期に反映し,治療戦略の指針となり得るか
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 遠藤 彰
PD2-5. 外傷急性期のフィブリノゲン
北海道大学病院先進急性期医療センター救急科 早川 峰司
PD2-6. J-OCTET 報告:病院前輸液は外傷性血液凝固機能のリスク因子である
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 村田 希吉
PD2-7. 重症外傷に対する抗凝固障害治療:J-OCTET からの知見を臨床へ
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学 久志本成樹
16:20~
閉会式
東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野 大友 康裕
― 93 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第 2 会場(ソラシティ WEST)
9 :00~10:30
委員会企画 1(外傷研修コース開発委員会)
見えてきた JETEC コースの全貌
司会:順天堂大学浦安病院救急診療科 田中 裕
国立国際医療研究センター病院救命救急センター 木村 昭夫
「JETEC コースの概要について」
順天堂大学浦安病院救急診療科 田中 裕
「新専門医制度における JETEC コース」 国立国際医療研究センター病院救命救急センター 木村 昭夫
「JETEC」総論
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座 渡部 広明
「外傷初療における頭部外傷治療戦略」 日本医科大学付属病院高度救命救急センター 横堀 将司
「チームワークの構築」
大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター 溝端 康光
「Decision making
(多発外傷)」
帝京大学医学部附属病院救命救急センター 藤田 尚
10:30~11:20
招待講演 1
司会:帝京大学医学部附属病院救命救急センター 藤田 尚
「Goal-Directed Administration of Haemostatic Products and Medicine」
Witwatersrand University, Johannesburg Prof. Kenneth Boffard
11:20~11:50
委員会企画 2(臓器損傷分類委員会)
CT 画像を用いた新臓器損傷分類
司会:済生会横浜市東部病院救命救急センター 北野 光秀
「CT 所見を加味した臓器損傷分類」
済生会横浜市東部病院救命救急センター 北野 光秀
「肝損傷における新臓器損傷分類」
済生会横浜市東部病院 船曵 知弘
「CT 所見を加味した脾損傷分類と治療法について」
東邦大学大森病院救命救急センター 豊田幸樹年
13:00~13:50
特別講演 3(※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定)
大量出血症例に対する血液製剤の適正使用ガイドライン
司会:大阪大学大学院医学系研究科救急医学 嶋津 岳士
「科学的根拠に基づく血液製剤の適切な使用指針」
名古屋大学医学部付属病院輸血部 松下 正
― 94 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
13:50~16:00
Joint Session 1
東京オリンピック,パラリンピック 特別企画(共催:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組
織委員会,日本集団災害医学会)
司会:帝京大学医学部救急医学講座 坂本 哲也
基調講演
「オリンピック・パラリンピックの医務体制」
早稲田大学,東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会メディカルディレクター
赤間 高雄
司会:国立病院機構災害医療センター救命救急科 小井土雄一
鳥取大学医学部救急災害医学 本間 正人
「アトランタオリンピック爆弾テロ」 九州大学大学院医学研究院災害救急分野 永田 高志
「ロンドン同時多発テロ」
警視庁警務部 奥村 徹
「あらためて秋葉原無差別殺傷事件の医療対応をふりかえる」
日本医科大学付属病院救命救急科 布施 明
「ボストンマラソン爆弾テロ」
山梨県立中央病院救命救急センター 井上 潤一
「パリ同時多発テロ事件における医療対応の実際」
横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター 森村 尚登
第 3 会場(Room C)
9 :00~10:20
Joint Session 3
「外傷医と脳外科医の効率的連携を考える:Beyond the standard」
(共催:日本脳神経外傷学会)
座長:国立病院機構災害医療センター脳神経外科 高里 良男
日本医科大学大学院医学研究科外科系救急医学分野 横田 裕行
「頭部手術を要する多発外傷への対応に向けて—日本外傷データバンクからの解析と自施設の経験から」
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 白石 淳
「重症頭部外傷に対する“All in one”型の治療方針の検討」
奈良県立医科大学脳神経外科 朴 永銖
「救命救急センターにおける脳神経外傷の治療・管理-プレホスピタルを含めた初期診療について-」
東海大学脳神経外科 本多ゆみえ
「独立型 3 次救急施設における重症頭部外傷への取り組み - 脳神経外科医と外傷医との連携体制維持の
ために -」
千葉県救急医療センター脳神経外科 宮田 昭宏
「重症頭部外傷を伴う多発外傷における脳神経外科医と外傷医とのチーム連携
~ Beyond the standard:スタンダードを超えたハイブリッド初療連携~」
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座 渡部 広明
「外傷医と脳外科医の連携に関する北総モデルの提案」
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 阪本 太吾
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
10:20~11:40
委員会企画 3(トラウマレジストリー検討委員会)
JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題
座長:防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門 齋藤 大蔵
亀田総合病院救命救急科 白石 淳
「In-Hospital Trauma Mortality Has Decreased in Japan Possibly Due to Trauma Education」
亀田総合病院救命救急科 白石 淳
「日本の成人重症外傷患者の搬送方法の違い(ドクターヘリ搬送と救急車搬送)と予後の関係」
筑波メディカルセンター病院 阿部 智一
「外傷患者の入院後死亡率に関わる基礎疾患の影響の研究論文」
松戸市立病院救命救急センター 庄古 知久
「中等~重症意識障害のある鈍的外傷患者において,全身 CT
(WBCT)は死亡割合を低下させるのか?」
国立国際医療研究センター病院救命救急センター 木村 昭夫
12:00~13:00
ランチョンセミナー 5(共催:東京エレクトロニツクシステムズ株式会社)
「災害医療情報の標準化に関する国内・国際動向熊本地震における J-SPEED 運用を含めて」
座長:国立病院機構災害医療センター 小井土雄一
演者:産業医科大学 久保 達彦
13:00~14:30
Joint Session 2 JAST/JSACS/KSACS Joint Conference
司会:大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター 溝端 康光
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 村田 希吉
President of KSACS, Chonnam National University Jung Chul Kim
University of Ulsan, Asan Medical Center Suk-Kyung Hong
演者:日本医科大学医学部付属病院高度救命救急センター 金 史英
堺市立総合医療センター救急外科 臼井 章浩
済生会横浜市東部病院救命救急センター 船曵 智弘
Yonsei University Jae Gil Lee
Korea University Nam Ryeol Kim
St. Mary’s Hospital Hang joo Cho
14:30~15:30
教育講演(※救急科領域専門医更新ポイントセッション予定)
司会:久留米大学病院 坂本 照夫
「初歩から理解できる傾向スコアマッチング法 - The Journal of Trauma and Acute Care Surgery 誌
に採択された論文を題材として」
亀田総合病院救命救急センター 白石 淳
― 96 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
第 4 会場(Room B)
9 :00~10:00
一般演題16
腹部外傷④ 肝・膀胱・その他
座長:川口市立医療センター救命救急センター 小川 太志
O16-1. 当院における重症肝損傷・脾損傷・膵損傷の開腹手術症例についての検討
兵庫県立淡路医療センター外科 坂平 英樹
O16-2. 経過中に自然消失した外傷後肝仮性動脈瘤の一例
大阪府三島救命救急センター 木下 直彦
O16-3. 外傷に伴い胆管内に多量の気腫を認めた症例
総合大雄会病院救急科 三宅 央哲
O16-4. 遅発性に発症した外傷性脾破裂に対して脾臓摘出術を施行した 1 例
茨城県立中央病院茨城県地域がんセンター外科 高尾 幹也
O16-5. 外傷性膀胱破裂の臨床的検討
岐阜大学医学部附属病院高度救命救急センター 中野 志保
O16-6. 子宮広間膜損傷および腹膜内膀胱破裂を来した腹部鈍的外傷の一例
済生会宇都宮病院救急科 鯨井 大
10:00~11:00
一般演題17
腹部外傷⑤ その他 2
座長:国立病院機構災害医療センター救命救急センター 岡田 一郎
O17-1. 外傷性横隔膜破裂に対する腹腔鏡下横隔膜修復術の有用性
済生会熊本病院外科 小川 克大
O17-2. 腹腔内出血をきたした外傷性小腸 GIST 破裂の 1 例
東海大学医学部外科学系救命救急医学 青木 弘道
O17-3. 鈍的損傷による外傷性胃破裂 4 例の検討
千葉県救急医療センター外傷外科 潮 真也
O17-4. 診断確定が遅延した外傷性腸管損傷の 3 例
菊名記念病院救急部 高橋 哲也
O17-5. 鈍的腹部外傷に対するチーム医療・多職種連携の検討
岩手県立久慈病院救命救急センター 皆川 幸洋
O17-6. 腹部鈍的外傷後に生じた遅発性後腹膜血腫の 1 例
埼玉医科大学国際医療センター救命救急科 大谷 義孝
11:00~11:50
一般演題18
画像診断
座長:山梨県立中央病院救命救急センター 岩瀬 史明
O18-1. REBOA 使用下での CT 検査について
八戸市立市民病院救命救急センター 昆 祐理
O18-2. 鈍的肝損傷の治療戦略
北里大学医学部救命救急医学 樫見 文枝
― 97 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O18-3. Trauma Panscan の在り方を再考する
聖マリアンナ医科大学放射線医学 三浦 剛史
O18-4. 画像上同定しえた腎静脈分枝損傷の一例
北里大学医学部救命救急医学 丸橋 孝昭
O18-5. 来院時 CT および腹部所見にて診断できなかった腸管・腸間膜損傷症例
北里大学医学部救命救急医学 花島 資
12:00~13:00 ランチョンセミナー 6(共催:日本製薬株式会社)
「Lactate -信頼できる蘇生の指標か?」
座長:東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野 大友 康裕
演者:東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学 久志本成樹
13:00~14:00
一般演題19
胸部外傷① 大血管その他
座長:沖縄県立中部病院 本竹 秀光
O19-1. TEVAR を施行した鈍的大動脈損傷症例の検討
信州大学附属病院心臓血管外科 中原 孝
O19-2. 重複大動脈損傷を有した多発外傷の一救命例
山梨県立中央病院救急科 川島 祐太
O19-3. 鈍的大動脈損傷症例の検討
大分大学医学部附属病院高度救命救急センター 重光 修
O19-4. 外傷性大動脈損傷の治療方針〜当院での経験から〜
済生会横浜市東部病院外科 萩原 一樹
O19-5. 重症肺損傷に対し V-V ECMO 導入し肺切除・経動脈的塞栓術を行い救命し得た 1 例
前橋赤十字病院高度救命救急センター集中治療科・救急科 増田 衛
O19-6. 屠殺銃暴発による爆発外傷の 1 例
熊本大学医学部附属病院救急・総合診療部 金子 唯
14:00~15:00
一般演題20
胸部外傷② 肺損傷その他
座長:小田原市立病院呼吸器外科 西海 昇
O20-1. 外傷性仮性肺嚢胞が臨床経過におよぼす影響の検討
奈良県立医科大学高度救命救急センター 川井 廉之
O20-2. 外傷性気胸に対しての胸腔チューブ穿刺位置の検討
群馬大学大学院医学系研究科救急医学 青木 誠
O20-3. 外傷性血気胸に対する胸腔ドレーンの挿入肋間と先端位置
手稲渓仁会病院救命救急センター 清水 隆文
O20-4. 脾・腎損傷 TAE 後,肺損傷に対し肺部分切除術を施行した一例
愛知医科大学病院救命救急科 富野 敦稔
O20-5. 気道出血のリスク因子の検討- pneumatocele は気道出血のリスク因子である
国立病院機構災害医療センター救命救急センター 井上 和茂
― 98 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O20-6. 肝損傷,横隔膜損傷からの出血が流入して心嚢液貯留となった前胸部刺創の 1 例
長崎大学病院救命救急センター 猪熊 孝実
第 5 会場(Room A)
9 :00~10:00
一般演題21
四肢外傷① 血管損傷
座長:帝京大学医学部附属病院救急科・外傷センター 黒住 健人
O21-1. 膝窩動脈損傷を合併した Floating Knee Fracture の 1 例
近畿大学医学部附属病院救命救急センター 濱口 満英
O21-2. 左上下肢不全切断に対し上肢のみ救済可能であった 1 例
東京慈恵会医科大学附属柏病院救急部 平沼 浩一
O21-3. 飛んできたカッターの刃により大腿動静脈損傷を来たしバイパス術を行った一例
北里大学医学部救命救急医学 増田 智成
O21-4. 高齢者の下肢開放性主要血管損傷の治療経験
佐久医療センター整形外科 田野 敦寛
O21-5. 膝窩動脈損傷28例の検討
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 芝山 浩樹
O21-6. Mangled foot 治療の小経験
兵庫県立淡路医療センター整形外科 大江 啓介
10:00~11:00
一般演題22
四肢外傷② コンパートメント症候群・その他
座長:北里大学医学部整形外科 峰原 宏昌
O22-1. 下腿コンパートメント症候群を合併した下腿骨骨折の治療経験
岐阜大学医学部附属病院高次救命治療センター 神田 倫秀
O22-2. 前腕コンパートメント症候群症例の検討
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 古賀 陽一
O22-3. 軟部組織損傷を伴う足関節周辺骨折は MATILDA 法によりどこまで閉鎖的に整復可能か
秋田大学医学部整形外科 野坂 光司
O22-4. 当院において筋膜切開を施行した外傷性コンパートメント症候群の筋壊死関連因子の検討
九州大学病院救命救急センター 籾井 健太
O22-5. 広範囲軟部組織欠損に分節状骨欠損を伴う重度下腿開放骨折の一例
湘南鎌倉総合病院外傷センター 綾部 真一
O22-6. 当科入院中に行ったマイクロサージャリー手術の検討
大阪警察病院救命救急科 北山 淳一
11:00~12:00
一般演題23
四肢外傷③ 手術・その他
座長:東京医科歯科大学大学院整形外科学分野 王 耀東
― 99 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O23-1. 脂肪塞栓症候群発症後に髄内釘固定を施行した大腿骨骨幹部骨折の検討
福岡県済生会福岡総合病院救命救急センター救急科 中村 周道
O23-2. 大腿骨骨幹部骨折髄内釘治療後の回旋変形
岡山大学病院整形外科 小松原 将
O23-3. すべての開放骨折に即時手術が必要か?
札幌徳洲会病院整形外科外傷センター 上田 泰久
O23-4. 足部と趾外傷の再建
沖縄県立中部病院形成外科 今泉 督
O23-5. Gustilo ⅢB 下腿骨骨折における有茎皮弁,有茎筋弁の治療経験
東海大学外科学系整形外科学 小林 由香
O23-6. 高エネルギー外傷における大腿骨骨幹部骨折と輸血施行率の検討
岡山赤十字病院整形外科 近藤 宏也
13:00~14:00
一般演題24
輸液・輸血療法
座長:筑波大学附属病院救急・集中治療部 井上 貴昭
O24-1. 急性期バイオマーカーによる外傷凝固障害予測
山梨県立中央病院救命救急センター 松本 学
O24-2. mTBSS(modified Traumatic Bleeding Severity Score)で骨盤骨折の大量輸血を早める
東京都立墨東病院 岡田 寛之
O24-3. Traumatic Bleeding Severity Score(TBSS);高齢先進国における大量輸血療法の予測
前橋赤十字病院高度救命救急センター集中治療科・救急科 小倉 崇以
O24-4. 鈍的外傷患者の輸血に関する検討
群馬大学大学院救急医学 萩原 周一
O24-5. 重度の凝固障害を伴う大量出血に対しフィブリノゲン製剤を投与した外傷患者 6 例の検討
さいたま赤十字病院救命救急センター・救急医学科 五木田昌士
O24-6. 重症外傷に対するクリオプレシピテートによる早期フィブリノゲン補充戦略の可能性
東北大学大学院医学系研究科救急医学分野 工藤 大介
第 6 会場(テラスルーム)
9 :00~10:00
一般演題25
基礎研究・病態生理
座長:日本医科大学付属病院救命救急科 増野 智彦
O25-1. レーザー誘起衝撃波を用いたマウス胸部爆傷モデルは脳機能障害を発症する
防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門 宮崎 裕美
O25-2. 対照的な転帰を辿ったプロテインS活性低下/欠損症を持つ外傷性頭蓋内出血の 2 例
慶應義塾大学医学部救急医学教室 上倉 英恵
O25-3. レーザー誘起衝撃波を用いたマウス軽症頭部爆傷モデルの開発研究
防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門 戸村 哲
O25-4. 搬入直後の FDP 値は軟部組織損傷出血に起因する高度貧血の予測因子となりうるか? 加古川西市民病院救急科 切田 学
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O25-5. 重症外傷患者において白血球のアディポネクチン運搬能は低下する
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 梅村 穣
O25-6. 外傷治療における耳介迷走神経電気的刺激の可能性
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター 八木 雅幸
10:00~11:00
一般演題26
IVR・Non-operative management
座長:聖マリアンナ医科大学心臓血管外科 西巻 博
O26-1. 外傷後の脾仮性動脈瘤の特徴に関する検討
さいたま赤十字病院救急医学科 佐藤 啓太
O26-2 多発外傷患者におけるハイブリッド手術室を用いた治療経験
高知医療センター整形外科 田村 竜
O26-3. 血管造影検査時にのみ造影剤漏出を認める骨盤内血腫を伴う骨盤骨折についての検討
済生会宇都宮病院放射線科 中間 楽平
O26-4. Hybrid concept をもって救命し得た Ps1.7% の多発外傷の 1 例
八戸市立市民病院救命救急センター 小野寺隆太
O26-5. 骨盤骨折に対する TAE 試行中に脾仮性動脈瘤破裂により出血性ショックをきたした 1 例
嶋田病院救急集中治療科 島田 裕史
O26-6. 重症腹部骨盤外傷に対する IVR の有用性と問題点
北里大学医学救命救急医学 片岡 祐一
11:00~12:00
一般演題27
胸部外傷③ 胸壁・横隔膜損傷
座長:筑波メディカルセンター病院救命救急センター 河野 元嗣
O27-1. 外科的修復術後に陽圧呼吸管理を加えて治療した多発横隔膜損傷の 1 例
兵庫県立西宮病院救命救急センター 杉野 達也
O27-2. 肋骨骨折の保存治療
岡山大学大学院医歯薬総合研究科地域医療学講座 山川 泰明
O27-3. 緊急手術を必要とした外傷性横隔膜損傷 9 例の検討
和歌山県立医科大学附属病院高度救命救急センター 上田健太郎
O27-4. 当センターにおける胸骨骨折例の検討 -脊椎外傷の合併を中心に-
都立墨東病院救命センター 西村 健
O27-5. 肋骨骨折の胸腔鏡所見
日本医科大学付属病院高度救命救急センター 石井 浩統
O27-6. 多発肋骨骨折患者における入院後呼吸状態悪化を防ぐ
堺総合医療センター救命救急センター救急外科 蛯原 健
13:00~14:00
一般演題28
Damage Control Surgery
座長:佐賀大学救急医学講座 阪本雄一郎
O28-1. DCS 後腹壁閉鎖困難症例に対する OAM:チュラロンコン大学での方法を学んで
佐賀大学医学部附属病院高度救命救急センター 永嶋 太
― 101 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O28-2. ハイブリッド手術室で DCS,TAE を施行し救命し得た重症鈍的肝損傷の一例
富士重工業健康保険組合太田記念病院 澤本 徹
O28-3. 時間を意識した Damage Control Resuscitation の重要性
公立豊岡病院但馬救命救急センター 番匠谷友紀
O28-4. enteroatmospheric fistula の管理に難渋した多発外傷の 1 例
佐賀大学医学部附属病院高度救命救急センター 岩村 高志
O28-5. 腹部鈍的外傷による肝損傷・腎損傷に対し DCS と IVR の併用により救命し得た 1 例
近畿大学医学部救急医学 石部 琢也
O28-6. Wittmann Patch を用いた重症外傷患者の Open Abdominal Management の検討
済生会横浜市東部病院救命救急センター 齋田 文貴
14:00~15:00
一般演題29
外傷診療体制② 院内
座長:前橋赤十字病院 中野 実
O29-1. 救命センターでの外傷診療体制の整備外傷診療チームが整形外傷診療にもたらす効果
熊本赤十字病院外傷外科 岡野 博史
O29-2. 当院重症外傷センター開設後の現況
横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター 加藤 真
O29-3. 当センターにおける小児外傷診療の現況と課題
横浜市立大学付属市民総合医療センター高度救命救急センター 問田 千晶
O29-4. 当院における骨盤骨折の臨床的検討
勤医協中央病院救急科 田口 大
O29-5. 頭部外傷を含む多発外傷に対する ICP モニタリング下運動器外傷手術の経験
奈良県立医科大学高度救命救急センター 林 智志
O29-6. アルカリ誤飲により腐食性食道炎を発症した 2 例
慶應義塾大学医学部救急医学 増澤 佑哉
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抄 録
評 議 員 セ ミ ナ ー
5 月29日 16:30 (ソラシティホール 2 F)
座 長 大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター
溝端 康光 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
評議員セミナー
Why We Need a World Coalition for Trauma Care
The Monroe E. Trout Professor of Surgery
Surgeon-in-Chief UCSD Medical Center - Hillcrest Campus
Executive Vice-Chairman Department of Surgery
Chief Division of Trauma, Surgical Critical Care, Burns, and acute CareSurgery
University of California San Diego Health Sciences
Raul Coimbra, MD, PhD, FACS
Trauma remains a major public health problem worldwide. Intentional and unintentional injuries
occur in high- as well as in low- and middle-income countries, leading to deaths and millions of disabled
individuals. No other disease has had such an impact on individuals, on families, and in society.
Interestingly enough, recognizing traumatic injury as a disease, using a disease management model, and
providing organized and comprehensive care through the development of trauma systems decreases
mortality by 25 % and markedly reduces the burden of the disease.
No other disease process has been affected so much by the organization and implementation of care
systems. Although we all recognize trauma as the number one killer between the ages of 1 and 45 years
worldwide, it was only until recently(August 2012)that the world came together during the first
World Trauma Congress to learn, debate, and discuss not only modern management strategies, but also
to acknowledge our individual and the collective responsibility of many international trauma societies to
advance knowledge, clinical care, prevention, strategies, and systems development.
A collective decision was made that our professional trauma organizations should remain engaged
and continue the work initiated in the first World Trauma Congress by creating the World Coalition for
Trauma Care(WCTC)
(http://www.worldcoalition- trauma-care.org), with the intent to organize
and promote the WTC in perpetuity. The agreement was to gather every 2 years around the WTC,
always linked to the annual meeting of one of our participating trauma organizations. There are
currently more than 50 national trauma professional organizations participating in the WCTC. Our
commitment is to continue advancing and disseminating knowledge, implementing prevention strategies,
developing trauma systems, and, more importantly, sharing with each other our experiences and
successes. In addition, WCTC member societies recognize their responsibility in helping and supporting
low-income countries in their regions to advance trauma care.
― 105 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
評議員セミナー
Trauma System in the UK
Queen Mary University of London
Karim Brohi
Trauma in England and Wales is organised into regional trauma networks based on the inclusive
trauma system model. Scotland and Northern Ireland are in the process of regionalising care, and are
at different stages in this regard. Each region has a hub and spoke organisation, and acute hospitals are
designated as major trauma centres(MTCs), trauma units(TUs)or local emergency hospitals. The
individual hospitals and networks have a set of service specifications and performance targets that they
are assessed against, using data submitted to the central Trauma Audit and Research Network
(TARN)and by local and national quality surveillance programmes.
Trauma care in London was regionalised in 2010 with the rest of the country following in 2012.
Several national reports on issues with the provision and quality of trauma care had been published
prior to this, including‘Trauma:Who Cares’from the National Confidential Enquiry into Perioperative
Outcomes & Deaths(NCEPOD)in 2007 and a report from the National Audit Office in 2010. Previous
similar reports had not been acted upon, but there was now a political desire to centralise specialist
services as well as public acceptance that such a change was necessary. There was good clinical
evidence to support the regionalisation of trauma, stroke and cardiac services and these were pushed
ahead in the first wave.
At present data on over 18,000 trauma patients are submitted to TARN every year and this number
increases consistently as data capture and quality improves. Road traffic incidents comprise about one
third of all injuries, with falls being the most common(and increasing)mechanisms of injuries.
Nationally penetrating injuries constitute only around 2% of the case load, although in inner city areas
this can rise to 25%. Data suggests that there has been a 60% increase in the odds of survival for
trauma patients over the last 7 years. Data from the London Major Trauma System suggests that not
only has there been a reduction in mortality but that there have also been large improvements in the
overall quality of care experienced by patients.
The majority of improvements appear to have been made in major trauma centres, and further
developments need to take place to support and develop local trauma units. Most improvements have
also been achieved at the front end of care, and timely access to high quality rehabilitation remains an
issue in most parts of the country. However with on-going data acquisition and analysis the issues for
trauma patients are easier to expose and work on than previously and this evidence can be used to
strengthen public policy and opinion.
Overall England and Wales have seen the fastest, most comprehensive regionalisation of trauma care
of any comparable country. This has led to large improvements in the quality of care and outcomes for
trauma patients in a very short period of time.
― 106 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Karim Brohi
Biography
Karim Brohi is Professor of Trauma Sciences at Barts and the London School of Medicine, and
Consultant in Trauma & Vascular surgery at the Royal London Hospital Major Trauma Centre. He
attended medical school at University College London and has trained in London, Oxford, Cape Town
and San Francisco General Hospital. He is a Fellow of the Royal College of Surgeons of England and
Fellow of the Royal College of Anaesthetists of Great Britain and Ireland.
Karim leads an active research programme at Queen Mary University of London and is the director of
the Centre for Trauma Sciences. He has particular academic interests in acute translational trauma
care, and in particular the management of severe bleeding.
He is the director of the London Major Trauma System, which provides injury care for a population of
over 15 million people. He chaired the guideline development group for the NICE Major Trauma
Guidelines and is a member of the national clinical reference group for trauma.
Karim is also the founder of the Trauma. org web site and Trauma-list email discussion group.
― 107 ―
抄 録
招 待 講 演 1
5 月31日 10:30 第 2 会場(ソラシティ 2 F WEST)
司 会 帝京大学医学部附属病院救命救急センター
藤田 尚 先生
招 待 講 演 2
5 月30日 15:10 第 3 会場(Room C)
司 会 近畿大学医学部附属病院救命救急センター
村尾 佳則 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
招待講演 1
Goal︲Directed Administration of Haemostatic Products
and Medicine
Witwatersrand University, Johannesburg
Prof. Kenneth Boffard
Professor Ken Boffard is Head of the Department of Surgery at Johannesburg Hospital and the
University of the Witwatersrand. He was previously Head of the Johannesburg Hospital Trauma Unit.
He qualified in Johannesburg, and trained in Surgery at the Birmingham Accident Hospital and Guy’s
Hospital.
He is immediate President of the International Society of Surgery(ISS)in Lupsingen in Switzerland,
and Past President of the International Association for Trauma Surgery and Intensive Care(IATSIC),
and the Trauma Society of South Africa.
His passion is surgical education, and various aspects of trauma resuscitation, intensive care, and
regional planning of Trauma Systems. His interests include flying(he is a licensed fixed wing and
helicopter pilot), scuba diving, and aeromedical care. His research interests include coagulation,
haemostasis and critical bleeding.
He is a Colonel in the South African Military Health Service.
He is a Freeman of the City of London by redemption, and an elected Liveryman of the Guild of Air
Pilots and Air Navigators of London.
― 111 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
招待講演 1
司会の言葉
帝京大学医学部附属病院救命救急センター
藤田 尚
最新の DSTC マニュアル第 4 版では,大量出血後の補充療法について Thromboelastgram を用いた
coagulopathy の原因検索を奨励しており,凝固因子欠乏,フィブリノーゲン欠乏,血小板欠乏,線溶亢
進の 4 つの病態ごとに“Goal-Directed Administration of Haemostatic Products and Medicine”を提唱
している.
しかし本邦で現在使用可能な製剤は FFP と血小板のみで,クリオプレシピテート,人遺伝子組み換え
第 7 因子(rFVIIa),フィブリノーゲン製剤,トラネキサム酸(TXA)大量投与は保険診療上制限されて
いる.そのためわが国では,フィブリノーゲン欠乏に足しても FFP を使用するほか方法がなく,FFP 使
用量を制限できていない.
今回 DSTC コースのため来日される Boffard 教授には,rFVIIa に関し過去(J Trauma 2005:59:
8-15)(J Trauma 2010:69:489-500)を振り返っていただき,現在(k time とαangle 測定と rFVIIa
投与)そしてその未来についてお話しいただく.また,Ly-30による線溶亢進と fibrinolysis-shutdown 鑑
別,Ly-30による TXA 投与にも言及していただく予定である.
― 112 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
招待講演 2
Transforming Trauma Training with Simulation:
The Next Revolution
Ben Eiseman Professor of Surgery; Chief of Trauma and Combat Surgery
Surgical Director of Simulation Education and Training
The Norman M. Rich Department of Surgery
Uniformed Services University and Walter Reed National Military Medical Center
Bethesda, Maryland, USA
Mark W. Bowyer, MD, FACS, DMCC
For a variety of reasons, most surgeons are not current or proficient in the management of
polytraumatized patients. Traditional training utilizes live porcine and human cadaver models to teach
with the limitations inherent to each. Though animals are good for teaching the management of bleeding
tissue they are not faithful representations of important human anatomy, and there is huge pressure to
find suitable alternatives. Cadavers are much better for human anatomy, but they are often poorly
represent the tissue of the typical young trauma patient, are expensive, and have greatly variable.
There is a real need for realistic models of human tissue that represent realistic combat wounds and
allow standardized and evaluable training using actual surgical instruments. The technology to create
these models exists and we have been developing models that can be used for training surgeons to care
for the victims of trauma. The current status of these training modalities and the anticipated future
development and application will be presented.
CURRICULUM VITE
Retiring after 22 years of active duty military service as a Trauma and Combat Surgeon, Dr. Bowyer
remains the Chief of Trauma and Combat Surgery at the Uniformed Services University of the Health
Sciences(the military medical school)in Bethesda, MD. In this role, he is responsible for the training of
current and future military doctors learning to care for those in harms way. As a faculty member of
Advanced Trauma Life Support, Definitive Surgical Trauma Care, Definitive Surgical Trauma Skills,
Emergency War Surgery, Advanced Trauma Operative Management, and Advanced Surgical Skills for
Exposures in Trauma(ASSET)
, Dr. Bowyer is an international force in trauma education. His active
practice of trauma surgery at the Washington Hospital Center in Washington DC, one of the busiest
trauma centers in the United States, and experiences as“Trauma Czar”in Iraq, provide him with
credible real life experiences that he enthusiastically brings to the classroom. Additionally, as Surgical
Director of the world renowned National Capital Area Medical Simulation Center, Dr. Bowyer has been
on the forefront of developing and adopting the use of surgical simulators for teaching of advanced
trauma and surgical skills.
― 113 ―
抄 録
特 別 講 演 1
「非骨傷性頚髄損傷-原因と治療法」
5 月30日 14:10 第 3 会場(ソラシティ 1 F Room C) 司 会 埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター
井口 浩一 先生
特 別 講 演 2
「日本における外傷に起因する死因究明の現状」
5 月30日 16:00 第 3 会場(ソラシティ 1 F Room C) 司 会 東海大学医学部外科学系救命救急医学 猪口 貞樹 先生
特 別 講 演 3
「大量出血症例に対する血液製剤の
適正使用ガイドライン」
5 月31日 13:00 第 2 会場(ソラシティ 2 F WEST) 司 会 大阪大学大学院医学系研究科救急医学 嶋津 岳士 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
特別講演 1
頚椎後縦靱帯骨化症による頚髄損傷
東京医科歯科大学医学部附属病院整形外科
吉井 俊貴
近年,高齢者の増加に伴い,非骨傷性脊髄損傷の発生が増加している.非骨傷性脊髄損傷患者は頚椎症
による脊柱管狭窄もしくは頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)による脊柱管狭窄を受傷前から有していること
が多い.このような症例では,転倒などの比較的低エネルギーの受傷機転で脊髄損傷がひきおこされる.
厚生労働省脊柱靱帯骨化症研究班(2014年〜研究班事務局:東京医科歯科大学)では,これまで頚椎
OPLL と外傷の関係を調査してきた.非骨傷性頚髄損傷患者の中に頚椎 OPLL を有する症例が高率に含
まれることが知られており,OPLL を合併する場合,受傷後保存治療よりも手術治療成績が優れているこ
とが報告されている.一方で,頚椎 OPLL の自然経過の中で,外傷により発症する症例は限られており,
頚椎 OPLL 患者に対する予防的手術の正当性はいまだ明らかでない.本講演では,厚労省研究班で行っ
てきた頚椎 OPLL と外傷に関する研究結果を紹介する.また具体的な症例も交えて,頚椎 OPLL に伴う
頚髄損傷の診断と治療に関して概説する.
略 歴
1999年
東京医科歯科大学医学部卒業 同大学整形外科教室入局
2000-2003年 同教室関連施設で研修
2004-2007年 東京医科歯科大学院 2007年
Tennessee 州 Vanderbilt 大学 整形外科
2009年
済生会川口病院整形外科,医長
2010年
東京医科歯科大学整形外科,助教
2015年
東京医科歯科大学整形外科,講師
学位 1999年 医師免許取得 2007年 医学博士取得
学会 日本脊椎脊髄病学会評議員,東日本整形災害外科評議員
国際学会 Orthopaedic Research Society(ORS)active member
Cervical Spine Research Society(CSRS)corresponding member
― 117 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
特別講演 1
非骨傷性頚髄損傷に対する早期手術と待機治療の
ランダム化比較試験(OSCIS 試験)の現況
東京大学医学部附属病院整形外科
筑田 博隆
非骨傷性頚髄損傷は,脊椎の骨折,脱臼を行わない頚髄損傷をさし,本邦の頚髄損傷例の約 7 割をしめ
ている.高齢者に多く,転倒などの低エネルギー外傷によることが多い.ほとんどの例で,後縦靭帯骨化
や脊椎変性による脊柱管狭窄を合併する.
非骨傷性頚髄損傷では,麻痺の自然回復がある程度みられることから,保存治療や待機的な除圧手術が
選択されることが多い.しかし,その予後は必ずしも良好とはいえず,さらなる治療成績の向上が求めら
れている.受傷直後に除圧手術を行うことによって,神経学的な予後を改善できる可能性については,こ
れまでも長く論じられてきた.しかしエビデンスレベルの高い研究はなく,早期除圧手術をすべきかどう
かについての結論はえられていない.
OSCIS 試験は,脊柱管狭窄をともなう非骨傷性頚髄損傷に対して,早期除圧手術が有効か否かをみる
多施設ランダム化比較試験である.OSCIS とは,Optimal treatment for Spinal Cord Injury associated
with cervical canal Stenosis の略称である.OSCIS 試験では,AIS C の運動不全麻痺例を対象としている.
症例がエントリーされると,Web 上で早期手術群(24時間以内)または待機治療群( 2 週間以降の手術)
に即時に割付が行われる.主要評価項目は受傷一年後の麻痺の回復である.受傷一年後の ASIA motor
score,自立歩行可能となった割合,Spinal Cord Independence Measure(SCIM)によって評価する.ま
た副次的評価項目として Walking Index for Spinal Cord Injury(WISCI),SF36,EQ-5D,Neuropathic
Pain Symptom Inventory を用い,それぞれ歩行能力,QOL,効用値,神経障害性疼痛について評価する.
OSCIS 試験は,2011年12月から開始され,これまで44名がエントリーされている.全国42施設が参加
しており,現在も参加施設を募集中である.救急搬送症例を対象としたランダム化試験は,大きなチャレ
ンジであるが,OSCIS 試験は,最適な治療指針を確立するための,重要な一歩となると思われる.
略 歴
筑田 博隆(ちくだ ひろたか)
山形県出身
平成 7 年 東京大学医学部医学科卒業
東京大学整形外科学教室に入局後,水戸赤十字病院,埼玉医科大学総合医療センター,横浜労災病院等で
研修
平成24年 東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科 講師
平成27年 東京大学医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座整形外科学 准教授
専門分野 脊椎脊髄外科(日本脊椎脊髄病学会指導医)
東京大学医学部附属病院脊髄損傷ボード事務局
日本整形外科学会頚椎症性脊髄症診療ガイドライン改訂委員
日本整形外科学会プロジェクト研究 OSCIS 試験主任研究者
― 118 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
特別講演 2
日本における外傷に起因する死因究明の現状
千葉大学・東京大学大学院法医学教室
岩瀬博太郎
適切な死因究明は,国民の安全や権利維持のために必要不可欠であり,そのためには,考えうる全ての
医学的検査を実施し,また,捜査機関と連携し,死亡までの経緯を調査し,これら情報を総合的に判断し
た上で死因が判定されるべきである.諸外国においては,死因が明らかな病死とは言えない事例は,殆ど
が法医学研究所と呼ばれる施設において,解剖,薬物検査,組織学的検査等が実施され,極力正確に死因
が判定される.一方,日本では,そのような施設は無く,法医学に従事する人材が不足していることから,
適切な死因究明が実施されているとは言えない.警察に届け出のあった死亡事例についての法医解剖実施
率を指標とすれば,イギリスやオーストラリアが50%程度,スウェーデンとフィンランドが90%程度であ
るのに対して,日本は11%程度に過ぎない.そのため,日本においては,死因が明らかでない死亡事例に
ついて,他国では禁止されている臨床医による CT 撮影や簡易薬物検査等が実施され死因が判定される.
簡易薬物検査では検出できない薬物が多く,また CT 上仮に病死と憶測されるクモ膜下出血,肺炎等の病
変を認めたとしても,死亡までの経緯次第では他殺や事故死,中毒死となる場合があるが,そのような法
医学的考察をせずに安易に死因が判定されることから,犯罪や事故の見逃しが発生している.2007年に発
生した相撲部屋力士暴行死事件は CT の結果から医師が病死と判断したことで犯罪を見逃した事例である.
外傷による死亡について見てみると,多くの国において,殆ど全ての事例について法医学研究所におけ
る解剖を含めた法医学的検査が実施される.明らかに自殺や事故死による転落死と思われる事例でも,薬
物摂取によって発生した事故死や他殺であったり,病死であったりする場合があり,各種法医学的検査に
よる確認が必要と考えるためである.しかし日本においては,交通事故死や転落死でさえ解剖されないこ
とが多々あり,また福知山線列車事故,御嶽山噴火,熊本・新潟の震災等における災害死については,殆
ど全く解剖が実施されない.そのため,実際は交通事故死ではないのに,交通事故死とされ,関係者の権
利侵害が発生していたり,災害時に発生する予防可能な死を予防できないなどの問題が発生している.こ
のような状況は国民の安全や権利を脅かすと考えられるので,国として改善すべきであると考えられる.
略 歴
昭和42年 7 月 千葉県木更津市生まれ 平成 5 年 3 月 東京大学医学部医学科卒業
平成 7 年 4 月 東京大学医学部法医学教室助手
平成11年 1 月 東京大学医学部法医学教室講師
平成12年 6 月 東京大学医学部法医学教室助教授
平成15年 4 月 千葉大学大学院医学研究院法医学教室教授
平成26年 4 月 東京大学大学院医学系研究科法医学教室教授併任
著 書
「焼かれる前に語れ」,「法医学者死者と語る」いずれも WAVE 出版,「死体は今日も泣いている〜日本
の「死因」はウソだらけ」光文社新書
― 119 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
特別講演 3
科学的根拠に基づく血液製剤の適正な使用指針
名古屋大学医学部附属病院輸血部
松下 正
厚生労働省では平成17年以降「血液製剤の使用指針」(以下指針)を策定し,小規模な改訂を経て現在
に至っている.一方,診療の方針は科学的根拠に基づいたものであることが望ましく,他の多くの診療場
面と同様に科学的に作成された「ガイドライン」により可視化されたかたちで提供されることが望ましい.
血液製剤を使用する目的は,「血液成分の欠乏あるいは機能不全により問題となる症状に対してその成分
を補充して症状の軽減を図ること(補充療法)」であるが,その際の「問題となる症状」に対しては,「エ
ビデンスに基づいた」標準的な治療法によるのがのぞましい.日本輸血・細胞治療学会のガイドライン委
員会(松本雅則委員長)では,赤血球,血小板,FFP,アルブミン,小児輸血の 4 つの課題に対応したタ
スクフォースを立ち上げ,2013年度から検討を行ってきた.日本医療研究開発機構(AMED)研究開発「科
学的根拠に基づく輸血ガイドラインの策定等に関する研究」(松下班)ではこのガイドライン委員会の活
動をサポートしつつ,指針に Massive Transfusion Protocol(MTP)を新しい項目として追加する事を目
的に,ガイドライン委員会の「大量輸血プロトコール検討タスクフォース(宮田茂樹リーダー)および
AMED「大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン作成に関する研究」(宮田班)と共
同作業を行っている.
赤血球,血小板,FFP の三製剤については,それぞれ周術期の赤血球輸血療法と予後,主として造血
器悪性腫瘍に対する血小板輸血のトリガーとターゲット値,FFP 輸注のトリガーと凝固検査といった近
年の話題を包含した Clinical question(CQ)をたて,文献の収集作業を行い,一次スクリーニング,二次
スクリーニング(三次スクリーニング),エビデンスの統合,統合されたエビデンス総体の評価を行って
推奨度の設定が終了した.今回,これまで大規模な改定が行われていない「指針」について,ガイドライ
ン策定の方法として採用されている標準的な手法を用いて批判に耐えうる改訂を行い,ひいては血液製剤
の国内自給を原則とした適正使用及び安定供給の推進に役立てたいと考えている.
― 120 ―
抄 録
会 長 講 演
5 月30日 13:40 第 1 ・第 2 会場(ソラシティ 2 F EAST・WEST)
司 会 済生会横浜市東部病院救命救急センター 北野 光秀 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
会長講演
防ぎえる外傷死への取り組み
東京医科歯科大学大学院医学総合研究科救急災害分野
大友 康裕
米国では,1966年(昭和41年)National Academy of Sciences-National Research Council 報告書「不
慮の事故死と後遺症:現代社会における無視されている疾患」が発表され,大きな社会問題となり,米国
トラウマシステムが整備され,それまで多発していた Preventable Trauma Death(PTD)を激減させる
ことに成功した(詳しくは,本号の総説論文参照).わが国の PTD への取り組みは,2001年の第15回日
本外傷学会学術集会 シンポジウム「日本の外傷医療の問題点と今後の課題 ─21世紀へ向けての展望─」
での10項目の提言(以下,「提言」)から始まったと言える.同年の厚生科学特別研究「救命救急センター
における重傷外傷患者への対応の充実に向けた研究」で,全国の救命救急センターで死亡した外傷症例の
実に「38.6%」が PTD である可能性が高いという驚きの結果が出された.「提言」では a)外傷に対する
病院前医療の標準化,b)速やかな搬送手段(航空搬送)の確保,c)外傷医療施設の条件とその認定,d)
外傷患者登録制度,e)外傷診療の標準化した教育」などが提示された.a)に関しては,2000年の
PTCJ,その後2003年の PTEC(後に JPTEC)協議会の設立とその後の発展によって解決されたと言える.
b)も現在のドクターヘリの全国での普及により満足できる状況となった.d)は,日本救急医学会・本
学会が,日本外傷データバンク事業を2003年から開始しており,これを活用した数多くの学術論文が著明
な学術雑誌に掲載されている.しかし外傷診療の向上に活用されているとは言えない(本号の総説論文参
照)
.e)は,本学会が開発した JATEC コース(2002年ガイドライン出版および2003年 JATEC 正式コー
ス開始)の全国開催によって,わが国の外傷診療成績が,統計学的にも明らかな改善効果をもたらしてい
る.しかしながら,この外傷診療成績の改善は,
「開胸や開腹などの手術を要する症例」には認められず,
「外傷外科」の診療体制向上が,今後の課題である.さらに c)に至っては,全くの手つかず状態である.
講演では,これまでの取り組みの歴史を振り返ると共に,今後に向けての課題を提示し,引き続き開催さ
れるシンポジウム「わが国の Preventable Trauma Death は減少できたのか?−これまでの取り組みと今
後の望むべき姿」へと繫げたい.
略 歴
昭和59年 3 月
日本医科大学医学部 卒業
平成 6 年 1 月
日本医科大学付属千葉北総病院 救命救急部医局長
平成 7 年 7 月
国立病院東京災害医療センター 第 2 外科医長,日本医科大学兼任講師
平成14年 4 月
同 救命救急センター長
平成18年 1 月
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 救急災害医学教授
平成19年 4 月
同 救命救急センター長
学 会
平成20年 2 月
日本集団災害医学会理事
平成20年 5 月
日本外傷学会理事
平成22年 7 月
日本外科学会専門医制度委員会委員
― 123 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
平成24年 1 月
Editorial board, Journal of Trauma and Acute Care Surgery
平成25年11月
日本 Acute Care Surgery 学会理事
平成26年 3 月Editorial board, the Journal of Disaster Medicine and Public Health Preparedness.
平成27年 2 月
日本救急医学会理事
平成28年 3 月
Associate Editor, Trauma Surgery and Acute Care Open Journal(TSACO)
― 124 ―
抄 録
シンポジウム
「わが国の Preventable Trauma Death は減少できた
のか? -これまでの取り組みと今後の望むべき姿」
5 月30日 14:10 第 1 ・第 2 会場(ソラシティ2F EAST・WEST)
司 会 南多摩病院 益子 邦洋 先生
堺市立総合医療センター 横田順一朗 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
S1-1
我が国の11年間の外傷診療成績の検討(JTDB における PTD 症例数の推移から)
東京医科歯科大学医学部
附属病院救命救急セン
ター
遠藤 彰
白石 淳
本藤 憲一
大友 康裕
S1-2
Preventable Trauma Death の客観的な peer review が必要である
八戸市立市民病院救命救
急センター
吉村 有矢
今 明秀
野田頭達也
S1-3
【目的】我が国の11年間の外傷診療成績の推移を,Preventable Trauma Death(PTD)の
症例数から検討した.【対象と方法】2004年 4 月から2014年12月までに JTDB に登録され
た Probability of Survival(Ps)>0.5の症例を対象とした.転院搬送症例と AIS 6 を有す
る症例は除外した.転帰は「Ps>0.5の症例における死亡」と定義した PTD とし,前期
群(2004-2009)と後期群(2010-2014)を比較した.解析は TRISS で重症度を調整した
Logistic 回帰分析で行った.感度分析として年齢,性別,ISS,RTS を用いて死亡を予測
する傾向スコアを算出し,これを 1 : 1 でマッチさせた患者群で転帰を比較した.またマッ
チングで重症度を調整した患者群でサブグループ解析を行い,交互作用を有する群を検討
した.【結果】後期群(69160例)では前期群(25713例)と比較して PTD は有意に減少
していた(Odds Ratio 95%CI=0.72[0.66-0.79],p<0.001).感度分析も同様の結果で
あった(0.77[0.69-0.86],p<0.001).サブグループ解析では AIS 3 以上の重症腹部お
よび骨盤外傷で有意に PTD が減少していた(p for interaction=0.021, 0.025).「Ps≦0.5
の症例における生存」と定義した Unexpected Survival についての検討結果と併せて報告
する.
【背景】日本の外傷診療は進歩している.Preventable Trauma Death(PTD)の減少は外
傷診療の究極の目標の 1 つである.【目的】当院の PTD を調査し,外傷診療の問題点を
抽出する【対象と方法】対象は2010年 4 月 1 日〜2015 年 9 月31日に当院を受診した外傷
死亡例.TRISS 法と他施設からの評者を含めた peer review により PTD を判定した.
【結
果】外傷死亡158例.予測生存率が0.5を超える受傷 1 ヶ月以内の予測外死亡は20例.死因
の最多は頭部外傷12例(60%).peer review で 6 例(3.7%)を PTD と判定した.その
原因は救急室の初期治療の遅れが 4 例,病院前が 2 例.一方,予測外死亡が Non-Preventable とされた理由は,既往症 4 例,重症頭部外傷 4 例,高齢 2 例,死因不明 2 例,
合併症 2 例であった.【考察】TRISS 法のみの PTD 判定には限界がある.日本では peer
review による PTD の報告は少なく,その実態は不明である.当院の PTD の原因は主に
病院前と初期治療の人為的過誤であり,外傷診療が進歩しても PTD は存在しうる.外傷
診療の質のさらなる向上のためには,客観的な peer review による PTD の検討を通じ,
外傷診療の具体的な問題点の把握と改善に基づいた戦略が必要である.【結語】当院の
PTD は3.7%.初期治療の遅れと病院前に課題がある.
JTAS:Japan Triage and Acuity Scale による外傷の緊急度分類
富山大学大学院危機管理
医学(救急・災害医学)
奥寺 敬
若杉 雅浩
松井恒太郎
【目的】JTAS Japan Triage and Acuity Scale は,カナダ全土で用いられている CTAS
Canadian Triage and Acuity Scale に改訂を加え開発した救急外来の緊急度判定支援シス
テムである.JTAS の外傷統計での可能性を検討した.【方法】CTAS の統計は,外傷・
非外傷の区分から始まっており外傷における緊急度判定の比重は大きい.JTAS への改訂
作業では,外傷病院前救護ガイドラインの高エネルギー外傷の導入,外傷初期診療ガイド
ライン,日本外傷学会の臓器別損傷分類等を参照し改訂・追加・削除を行った.【結果】
JTAS の外傷関連の項目,テンプレート,補足因子等を全面改定したことにより,JTAS
による外傷の緊急度判定は,国内における外傷診療と整合性を持つシステムとなった.
2010年より全救急告示病院へ導入した富山県では,総務省消防庁の悉皆調査である救急患
者収容時間(現場からの搬送開始から医療機関への収容修了までの時間)の延長の差分が,
全国平均の延長を,2010年 1.5/1.8(富山県/全国平均 単位:分),2011年 2.1/2.6 2012
年 2.5/3.1 と下回った.【考察】JTAS は救急患者に客観的な指標としての緊急度を提供
する.外傷症例の統計に緊急度を加えることでより客観的な分析が可能となる.
― 127 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
S1-4
地域外傷診療システムの構築は外傷診療の質を向上させる
公立豊岡病院但馬救命救
急センター
小林 誠人
松井 大作
番匠谷友紀
岡 和幸
星野あつみ
門馬 秀介
蕪木 友則
S1-5
重傷外傷初期診療での REBOA としての IABO Strategy
済生会横浜市東部病院救
命救急センター
折田 智彦
山崎 元靖
船曵 知弘
清水 正幸
佐藤 智洋
明石 卓
小林 陽介
吉田 浩輔
廣江 成欧
風巻 拓
中道 嘉
倉田 早織
北野 光秀
S1-6
【目的】外傷診療における Preventable Trauma Death(PTD)の減少および救命率向上
のための方策を提唱する.【対象・方法】2010年度以降の 5 年間(現体制)と 2010年度以
前の 3 年間(旧体制)に日本外傷データバンクに登録された当施設の症例(旧体制672例,
現体制1692例)を対象に,PTD および Unexpected Survivor(UES)の割合,外傷診療
体制を検討した.UES は現場あるいは搬入時心肺停止症例は除いた.【結果】病院前外傷
救護の教育は旧体制,現体制共に消防職員に対しなされていた.ドクターヘリ(DH),ド
クターカー(DC)は旧体制は未整備,現体制は整備され UES の85%に関与していた.病
院内外傷診療体制は旧体制は各科対応,現体制は救急医による damage control resuscitation,massive transfusion が一貫して行われていた.検証体制は旧体制は未整備,現体制
は高エネルギー外傷全例検証が行われ,当施設への集約が行われていた.PTD は旧体制
37%,現体制 0 %,UES は旧体制 5 %,現体制44%(救急車17%,DC 27%,DH 55%)
であった.【考察】救急医,救命救急センターを中心とした病院前から病院内までのシー
ムレスな外傷診療システムの構築,普及,検証体制が外傷診療の質の向上に資するものと
示唆された.
【背景/目的】近年大動脈遮断バルーンによる蘇生的 IABO=REBOA が世界的に注目され
ている.現時点では日本の各外傷センターでの適応,戦略等が先進的かつ具体的と思われ,
当センターでの IABO 戦略が PTD 回避に寄与しえるか検討した.【対象/方法】院内外
trauma call,24時間 OM and/or IVR,MTP 対応体制で,体幹部外傷を伴う出血性ショッ
ク症例への迅速な動脈アクセス確保,大動脈遮断実施,DCS/DCIR,凝固障害管理の基本
戦略で,初期輸液での循環蘇生不成功で蘇生的 IABO(REBOA)実施症例を対象.
REBOA での循環蘇生成否と救命率,根本的止血処置までの時間と救命率,IABO 実施中
の遮断法(間歇的灌流を行う完全遮断管理法と permissive hypotension を基本とする部分
遮断管理法)と有効性や合併症の関連性,細径デバイスの有効性や下肢虚血リスクの差異
等を検討した.【結果/結論】REBOA 実施から25.0分(median)で根本的止血処置(OM/
IVR)開始し,60.5分(同)で遮断解除を達成できれば Ps0.38(同)の重傷外傷でも
54%が救命可能であり,部分遮断管理法は生理学的重症度の低い場合に選択でき,細径デ
バイス使用で下肢虚血発生は回避された.REBOA は遮断実施から止血処置までの戦略と
遮断管理の適正化でより有効な救命手段となり得る.
治療標準化の流れは頭部外傷関連多発外傷の Preventable Trauma Death を減らせたのか?
日本医科大学大学院医学
研究科救急医学分野
横堀 將司
金谷 貴大
恩田 秀賢
桑本健太郎
荒木 尚
増野 智彦
布施 明
横田 裕行
【はじめに】外傷診療標準化が浸透しているが,治療成績は向上したか経時的評価が必要
である.日本頭部外傷データバンク(以下 JNTDB)登録症例から多発外傷合併頭部外傷
における治療成績の変遷につき検討した.【対象及び方法】JNTDB(P1998:1002例,
P2004:1101例,P2009:1091例)において CPA 症例,転院搬送及びヘリ搬送症例を除く
多発外傷症例(AIS 3 以上の損傷が他部位にも存在するもの)に対し,全搬送時間,来院
時 GCS,AIS,ISS,在院日数,退院時 GOS を比較した.また Revised Trauma Score 及
び予測生存率(Ps)を算出し比較した.【結果】欠損データ症例を除いた対象は P1998が
136例,P2004が140例,P2009が195例であった. 3 群間で GCS は有意な上昇を示したが
ISS に有意差はなかった.退院時転帰良好群(GOS で GR・MD)の割合は P1998群で
22%,P2004群で30%,P2009群で26%と一定しなかった.Ps>0.5であった死亡症例の割
合は P1998で42%であったのに対し,P2004では33%,P2009では24%と有意に減少して
いた.【考察,結語】外傷診療標準化の流れの中で Preventable Trauma Death(PTD)
の可能性がある死亡症例は減少しつつあることが明らかとなった.治療標準化は頭部外傷
患者の PTD 減少に貢献したと主張したい.
― 128 ―
抄 録
パネルディスカッション 1
「わが国における外傷センターとは?」
パネルディスカッション 2
「外傷性凝固障害 最新の知見」
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
指定講演
The new trauma system/trauma centers in Korea
Chairman of Trauma Center
School of Medicine, Ajou University
John Cook-Jong Lee, M.D., Ph.D.
The need for a trauma system seems obvious and intuitive in Korean Peninsula. However, a nationwide
trauma care system in South Korea has been just started to set up these days and it had been an not-organized
approach to badly injured patients.
The regional structure for an optimal care and that is integrated with the local or regional emergency
medical service system is so important in terms of setting up the nationwide trauma care system. Although
there are many controversies and opinions for the model of trauma care, Ajou Trauma Center is following the
classic model of trauma care which covers from the prehospital sectors to the rehabilitation phase.
Because the regionalization is an important aspect of trauma, South Korean Government has recently assigned 12 trauma centers spreaded out in each province and big cities. Each center is being supported by government with about 6.7million dollars for the 20 beds ICU and 40 beds general ward hardware facilities and
followed by annual supplementary financial support with about 1 million dollars for paying the hired medical
staffs for the trauma care. A couple of centers, Pusan National University Trauma Center and Ajou University
Trauma Center, have been getting much more support to build a bigger trauma centers since depending on
their lack of hardware resources contrary to tough clinical activities. In terms of doctors, each center has to
have mandatory trauma team organization consists of General Surgeons, Cardiovascular Surgeons, Orthopedic
Surgeons, Neurosurgeons, Emergency Physicians, Radiologists and Anesthesiologists. The gate keeping role
goes to General Surgeons, Cardiovascular Surgeons and Emergency Physicians.
These new approach to the trauma care has been based on lessons learned in not only the United States
but also Japan. Very brave and enthusiastic Japanese trauma surgeons, such as Professor Mashiko et al, has
proven the effectiveness of the trauma care system in Japan which has been motivating South Korean pioneers
in the field of trauma surgery to follow the very classic Japanese style trauma care model which covers from
the accident scene to the rehabilitation. Not only limited in the operating theatre but covering the accident
scene with the doctor-Heli system model has been greatly influencing on the South Korean Trauma Care System.
In this session, I would like to express my sincere gratitude to all of Japanese doctors devoting the field of
trauma and talk about South Korean experience to set up the nationwide trauma care system mainly focusing
one of the trauma centers which is still under construction.
― 131 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
CURRICULUM VITAE
John Cook-jong Lee, M.D., PhD.(South Korea)
• Professor, Department of Surgery, Ajou University School of Medicine
• Chief, Division of Trauma Surgery, Ajou University School of Medicine
• Medical Director, Ajou Trauma Center
Dr. Lee entered the School of Medicine, Ajou University, in March 1988 and graduated from the same with
a BA degree in medicine in February, 1995. He entered Graduate School of medicine, Ajou University, in March,
1997, was awarded a Master degree in Medicine, 1999, and a Ph.D. degree in Medicine, 2002. He completed a
1-year internship course on Ajou University Hospital, 1995 and 4-year residency course in Department of General Surgery, Ajou University Hospital, 1996-2000. He received special training from the San Diego Microsurgical institute & Training Center at Mercy Hospital La Jolla, California, U.S.A., in October, 1997 and Trauma Center of UC San Diego Medical Center, Hillcrest San Diego, California, U.S.A., in January, 2003. He did his
Fellowship Training in General Surgery in 2001 and Trauma Surgery in 2002. Dr. Lee enlisted in the Republic
of Korea Navy in March, 1992 and was discharged from service and placed on the reserve list afterwards.
He was employed as a faculty member of Ajou University Medical Center & School of Medicine as an instructor in September, 2002 and promoted to be an Assistant Professor of Ajou University Medical Center &
School of Medicine in September, 2004. He worked at the Royal London Hospital in the United Kingdom as an
Honoary Consultant Trauma Surgeon from 2007 to 2008.
Dr. Lee has received numerous awards, including the 2010 Recognition in National Emergency Medical
System by Ministry of Health and Welfare, and Civil Merit Medal in 2011 for his devotion to a Trauma Care
System in South Korea.
Dr. Lee was awarded certificate of appreciation two times from White House Medical Unit of the United
States in 2009 and 2010 due his outstanding support for the US troops stationed in South Korea and lots of
American Citizens.
― 132 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
PD1-1
民間病院の整形外科外傷センターの現状と課題
札幌徳洲会病院
上田 泰久
辻 英樹
斉藤 丈太
坂 なつみ
佐藤 和生
PD1-2
【はじめに】日本には未だ,いわゆる 2 次,3 次四肢外傷をすべて治療可能な外傷センター
は存在しない.我々の所属する施設は民間病院に属する四肢外傷に特化した外傷センター
だが,基本的に二次外傷と四肢切断を対象としている.【目的】民間病院に属する整形外
科外傷センターの現状と課題を述べること【対象と方法】2015年 1 月から2016年 1 月まで
当センターで手術加療した症例,また病床数や手術室使用体制などのシステムを調査した.
【結果】ほとんどが四肢単独外傷あるいは多発骨折であったが,多発外傷や多発肋骨骨折
などの胸郭損傷も少数含まれた.また近隣 3 次救命センターで初期治療後に骨盤骨折ある
いは四肢骨折の治療目的で転院した症例が一定数みられたが,明らかな頭部外傷や腹部外
傷合併症例はなかった.センターでは全病床数の約1/3のベッドを使用し,手術室は平均
して 3 室を占有し自由度の高い診療を行っていた.【結論】四肢外傷としては集約し質と
量を担保した診療を行っていたが,多発外傷治療をほとんど行えていないことが大きな欠
点であり課題である.
外傷センターにおける外傷外科医の必須条件
済生会横浜市東部病院救
急科
清水 正幸
明石 卓
小林 陽介
折田 智彦
船曳 知弘
山崎 元靖
北野 光秀
PD1-3
【はじめに】重症外傷を受け入れる外傷センターでは,初期診療より外傷外科医が関与し,
手術適応の際には迅速に開胸開腹手術を施行することが必須といわれている.一方,実際
に外傷外科医が常駐する必要性や,どの程度の技量があればよいのかは不明である.【対
象と方法】対象は2010年 4 月から2014年 3 月までに搬送された ISS≧16の重症外傷患者
493例,外来にて手術決定してから 1 時間以内の手術症例(超緊急手術)の手術領域を検
討した.
【結果】期間中の超緊急手術は30例,平均年齢は50歳,平均 ISS は30であった.
手術領域は多い順に腹部:11例,頭部:10例,胸部: 6 例であり, 2 領域以上の手術を要
したのは 5 例であった.また,腹部外傷手術においては,消化管・腸間膜: 7 例,肝: 4
例,膵: 3 例,横隔膜: 3 例,脾: 2 例,腎: 1 例と多岐にわたっていた.【まとめ】超
緊急手術は体幹部外傷(胸腹部外傷)に多く,外傷外科医は初期診療から関わる必要があ
る.超緊急手術は年間 6 例と低頻度であるため,外傷外科医は多種多様な体幹部外傷手術
に対応するには,実際の重症外傷手術以外に手術のトレーニングを積む必要がある.
外傷センター開設直前 1 年間の診療体制
埼玉医科大学総合医療セ
ンター高度救命救急セン
ター
井口 浩一
福島 憲治
大饗 和憲
森井 北斗
八幡 直志
芝山 浩樹
古賀 陽一
米本 直史
杉山 聡
20床の外傷 ICU,32床の外傷 HCU,30床の後方病床, 3 室の外傷専用手術室などの設備
をもつ外傷センターが平成28年 3 月に開設される.開設前は旧施設を使用しながら医師と
患者の集約・手術件数の増加などの実績を上げつつ,新施設にスムーズに移行するのが望
ましく,工夫を要する.突破口として整形外科医を増員した.現在救命センター専従医師
29名中14名が整形外科医である.通常の四肢外傷のみならず骨盤,脊椎脊髄の体幹部外傷
を執刀できる医師を増やした.この体制により東京・群馬・栃木を始め,近隣の都・県か
ら救命センター経由で重症整形外傷患者が搬送されてくるようになった.また他の施設へ
出向して体幹部外傷の手術を支援することも積極的に行い,状況に応じた柔軟な対応を
取ってきた.平成27年の救命センター外傷手術件数は約900件で,その 8 割以上が整形外
科手術であった.他の施設に出向して行った体幹部外傷の手術は70件,サテライト病院で
行った四肢外傷の手術は100件を超えた.医療の質向上のため,trauma manual を作成す
ることで治療戦略を明文化し,また,頚髄損傷,四肢・骨盤骨折の 1 年後の機能予後調査
の多施設研究が 3 つ始まっており,外傷センターの治療成績を前向き試験で発表する体制
も整えた.
― 133 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
PD1-4
長崎大学病院における外傷センターの役割
長崎大学病院外傷セン
ター1),長崎大学整形外
科2),長崎大学病院救命
救急センター3)
宮本 俊之1)
福島 達也1)
田口 憲士1)
尾崎 誠2)
田崎 修3)
PD1-5
日本における外傷センターのあり方
湘南鎌倉総合病院外傷セ
ンター1),東京西徳洲会
病院外傷センター2)
土田 芳彦1)
松村 福広2)
伴 光正2)
西田 匡宏1)
小島 安弘1)
対比地加奈子1)
佐藤 亮1)
佐々木 淳1)
PD1-6
【はじめに】人口54.8万人の医療圏の唯一の 3 次救命センターとして2010年に長崎大学病
院救命救急センターは設立され,2011年に外傷センターを併設した.地方都市における外
傷センターのモデルとして当院の治療現状を調査した.【対象及び方法】2012年から 3 年
間に日本外傷データバンクに登録した症例で ISS 4 点以上の症例と,Pape らの提唱した
polytrauma に相当する AIS 3 点以上が 2 ヵ所以上で 5 つの生理学的兆候(70歳以上,血
圧90mmHg 以下,GCS8点以下,BE-6.0以下,INR1.4以上もしくは APTT40以上)のう
ち 1 つ以上を有する症例を抽出し,外傷センターの行った治療を調査した.【結果】ISS
4 点以上の症例は456例で,188例(41%)に骨折手術を行った.Polytrauma の症例は75
例あり,救命し得た53例中23例(43%)に骨折手術を行った.【考察】近年 polytrauma
における脊椎,骨盤,四肢長管骨に対する早期の骨折治療は人工呼吸器や ICU 入室期間
の短縮や,感染症の減少等に繋がると報告されている.当院でも救命後,早期に骨折治療
を行っている.地方都市における外傷センターは骨折治療を主体としたチームを救命救急
センターに併設することが治療の需要も高く,全身状態を改善させる手段となり得るため
一つのモデルとして考えられる.
重症外傷医療において「避けられた外傷死」と「避けられた外傷後遺障害」を回避するた
めには,大きく 2 つの医療体制が必要である.一つは生命を脅かす「重症多発外傷」の救
命処置と ICU 管理であり,これらは日本に既存する279箇所の「救命救急センター」が充
実することで達成される.もう一つは運動機能を脅かす「多発外傷に合併する四肢骨折」
と「重症四肢外傷」の治療体制である.「多発外傷に合併する四肢骨折」の治療は技術的
に難しくはなく,
「救命救急センター」に専属の整形外科医が勤務していれば,症例の多
くは標準的に治療される.問題なのは「重症四肢外傷」のなかでも挫滅四肢と称せされる
傷病の治療であり,その治療には「外傷学」と「骨折治療学」,さらに「手外科・マイク
ロサージャリー」の知識と技術が必要である.それらを駆使できる外傷整形外科医を雇用
し次世代医師を育成するには,「四肢再建外傷センター」を設立し症例を集約することで
ある.その規模はスタッフ数10名以上,手術症例数1000例以上であり,人口200万人に 1
箇所の設立が適切である.そして最も重要なことは,救命救急センターサイドが当該患者
を「四肢再建外傷センター」に速やかに転送する判断をすることである.
重症体幹部・四肢外傷の診療成績と外傷センターとしての要件
日本医科大学千葉北総病
院救命救急センター
松本 尚
原 義明
八木 貴典
益子 一樹
齋藤 伸行
飯田 浩章
本村 友一
中山 文彦
岡田 一宏
安松比呂志
阪本 太吾
黒柳 美里
瀬尾 卓生
近田 祐介
久城 正紀
服部 陽
五味 基央
太田黒崇伸
市川 頼子
【背景】「外傷センター」について議論する際には,診療結果,特に多発外傷に対する治療
成績が示され,論じられなければならない.今回,AIS≧ 3 の体幹部(胸腹骨盤)外傷+
四肢外傷例の手術成績を検討し,外傷センターに求められる要件を考察した.
【対象と方法】
過去 8 年間で外科手術(開胸,開腹,後腹膜 packing)が行われた体幹部外傷は434例で,
このうち来院時心肺停止と AIS= 6 の症例を除いた265例中,AIS≧ 3 の四肢外傷を合併し
ていた61例を対象に,damage control resuscitation(DCR)導入と初療室手術(urgent
resuscitative surgery:URS)体制の完成前 4 年(n=21)と完成後 4 年(n=40)に分けて,
治療成績を実生存率(actual survival rate:As)と予測生存率(probability of survival:
Ps)を用いて比較検討した.【結果】全体の Ps の平均は42.7%であったのに対して As は
49.2%(30/61)であった(p=0.142).両群間には RTS,ISS,頭部 AIS≧ 3 で差は無かっ
たが,前期は As:33.3% vs. Ps:39.8%(p=0.286),後期は As:57.5% vs. Ps:44.2%
(p=0.024)であった.【結論】外傷外科医と外傷整形医の協働は外傷診療に対する教室の
基本方針である.これに加えて,DCR 導入と URS によって,体幹部 + 四肢外傷に対す
る極めて良好な治療成績が得られた.「外傷センター」は単純な施設要件を満たすだけで
はなく,少なくともこの程度の治療成績を示すことが求められる.
― 134 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
PD2-1
頭部外傷後の凝固線溶障害に対する治療戦略
大阪大学医学部附属病院
高度救命救急センター1),
大阪脳神経外科病院脳神
経外科2)
吉矢 和久1)
射場 治郎1)
中村 洋平2)
塩崎 忠彦1)
大西 光雄1)
小倉 裕司1)
嶋津 岳士1)
PD2-2
Massive transfusion 発動評価にフィブリノーゲン迅速測定器(CG02N)は有用である
福岡大学病院救命救急セ
ンター
星野 耕大
仲村 佳彦
入江 悠平
金山 博成
田中 潤一
西田 武司
石倉 宏恭
PD2-3
頭部外傷治療において,来院後に進行する二次性脳損傷による神経症状悪化の阻止は極め
て重要な課題である.そのためには,神経症状悪化の要因を明らかにし,その病態・機序
に即した治療戦略を考える必要がある.特に頭部外傷後に問題となる凝固線溶系の異常は
外傷性頭蓋内血腫増大に大きく関わっており,頭部外傷後の凝固線溶異常の機序を解明し
これを制御することができれば頭部外傷症例の予後改善につながる可能性がある.我々は,
外傷性頭蓋内血腫増大に関して頭部外傷138例を対象とした検討を行い,CT angiography
における血腫内の造影剤漏出像と血中の d-dimer 値の高い症例で優位に血腫が増大し症
状悪化を示すことが明らかとし,頭部外傷後の頭蓋内血腫増大に凝固線溶異常が重要であ
ることを示してきた.また,頭部外傷を合併した外傷27例においてトロンボエラストグラ
フィーを用いた検討を行い,大量輸血を要するような頭部外傷合併症例においては,来院
時の外因系凝固機能(EXTEM),ならびにフィブリノーゲンとその機能が優位に障害さ
れていることを示した.本演題では,これまでの知見をもとに,頭部外傷後の凝固線溶障
害について病態別検討も含めた新たな治療戦略を提案する.
はじめに:当センターは外傷患者における大量輸血予測因子としてフィブリノーゲン
(Fbg)値の有用性を報告してきた.Massive transfusion(MT)発動には迅速性が求めら
れるが,既存の Clauss 法による Fbg 測定は約30分を要し,point of care testing(PCT)
としては課題があった.目的:CG02N による Fbg 測定時間は約 2 分であるが,クエン酸
採血管を用いるのが一般的である.そこで今回,血液ガス検体用のヘパリン含有採血管で
得られた検体で Fbg を測定し,既存の測定法による Fbg 値との相関を検証した.方法:
2014年11月から2015年 6 月までの間に当センター入院となった患者血液検体を用いた.高
濃度ヘパリン含有血液ガスシリンジ(70.5U/mL)(高濃度群)と低濃度ヘパリン含有血
液ガスシリンジ(7U/mL)(低濃度群)の検体を用いて CG02N で測定した Fbg 値と既存
の Clauss 法により測定した Fbg 値を比較した.結果:低濃度群は59例,高濃度群は60例
であった.Clauss 法を用いて測定された Fbg 値と CG02N で測定した Fbg 値の相関係数
は低濃度群0.968(P<0.0001),高濃度群0.970(P<0.0001)であった.結語:低・高濃
度ヘパリン含有血液ガスシリンジの検体は CG02N で測定可能であり,外傷患者の MT 発
動の PCT に使用可能である.
外傷におけるクリオプレシピテート製剤の適応と投与開始基準の検討
りんくう総合医療セン
ター大阪府泉州救命救急
センター重症外傷セン
ター
石井 健太
福間 博
井戸口孝二
水島 靖明
松岡 哲也
【目的】当センターで導入を検討しているクリオプレシピテート製剤(以下:クリオ)の
投与開始基準を定めること.
【方法】2013〜2015年に当センターへ直送となり,来院24時
間以内に輸血を行った外傷182例を対象とした.来院24時間以内に Fibrinogen 150mg/dl
未満,または FFP を20単位以上輸血した症例をクリオ適応群と定義し,適応群の予測因
子を求め,投与開始基準を決定した.【結果】182例中クリオ適応群は89例(49%)であっ
た.適応群を目的変数としたロジスティック回帰分析で,病院前での( 1 )呼吸数30回/
分以上(OR 2.79),( 2 )GCS8点以下(OR 4.27),( 3 )FAST 陽性(OR 4.72),来院
時の( 4 )Fibrinogen 200mg/dl 以下(OR 6.68),
( 5 )Hb 12.5g/dl 以下(OR 2.19)
(
,6)
D-dimer 50μg/ml 以上(OR 3.00)が独立した予測因子であった.病院前で( 1 )〜( 3 )
いずれか陽性でクリオを投与すると適応群に対して感度75%であった.( 1 )〜( 3 )が
陰性であっても,病着後( 4 )または,( 5 )かつ( 6 )陽性でクリオを投与すると,最
終的に感度93%,特異度45%となった.【結論】病院前での呼吸数30回/分以上,GCS8点
以下,FAST 陽性,または来院時 Fibrinogen 200mg/dl 以下,Hb 12.5g/dl 以下かつ Ddimer 50μg/ml 以上をクリオ投与開始基準とした.
― 135 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
PD2-4
線溶異常は外傷性凝固障害を早期に反映し,治療戦略の指針となり得るか
東京医科歯科大学医学部
附属病院救命救急セン
ター
遠藤 彰
白石 淳
大友 康裕
村田 希吉
PD2-5
我々は以前 J-OCTET のデータ解析により,治療方針を決定するための指針と成り得る
新たな「外傷死の三徴」を提案した(Critical Care Medicine, In press).この際,凝固線
溶系の異常についてもっとも鋭敏に28日死亡を予測するのは凝固系指標である PT-INR
や fibrinogen 値よりも,線溶系指標である FDP であり,さらにこれが三徴の中でも中心
的役割となっていることを示した.この検討は2012年 1 年間に15施設の救命救急センター
に搬送された症例を対象にした後ろ向き観察研究であり,その研究デザインから内部コ
ホートに over fitting している可能性が考えられた.今回当院の2006年から2011年,2013
年から2015年の重症外傷症例を外部コホートとした validation study を行った.外傷性凝
固線溶異常の指標としてもっとも有用な指標,および提案した新たな「外傷死の三徴」の
妥当性の検証結果について報告する.
外傷急性期のフィブリノゲン
北海道大学病院先進急性
期医療センター
早川 峰司
【初めに】Fibrinogen(Fbg)は,別名,
凝固第Ⅰ因子とも呼ばれ,フィブリンの
基質となる凝固因子である.Fbg が欠乏
した状態では,他の凝固因子が潤沢に
あったとしてもフィブリン血栓は十分に
形成されず,止血機能異常を呈すること
は明らかである.このため,近年,外傷
急性期における Fbg の重要性が注目され
ている.【日本外傷学会将来計画委員会 後ろ向き多施設共同研究】後ろ向きに収
集した ISS≧16の重症外傷796症例を対象
とした.予後不良を「24時間以内の死亡
もしくは RCC10単位以上の大量輸血」と
定義した.Fbg と D-dimer の予後不良に
対する ROC 曲線から,その閾値は,それぞれ190mg/dL と38μg/mL なった.この閾値
に基づき,(1)D-dimer 低値& Fbg 高値,(2)D-dimer 低値& Fbg 低値,(3)D-dimer
高値& Fbg 高値,(4)D-dimer 高値& Fbg 低値の 4 群に分けて比較したところ,24時間
死亡率は,それぞれ,(1)1.9%,(2)3.8%,(3)9.7%,(4)25.6% であった.KaplanMeier 法による検討では,(4)は他の 3 群より予後が不良であり,(3)も(1)や(2)よ
りも予後不良であった(図).搬入時の D-dimer は予後を反映しており,Fbg が高値であっ
ても,D-dimer が高値であれば,予後は不良である.【北大単独 後ろ向き研究】ISS≧
16,の鈍的外傷患者80名を対象とした.搬入後24時間以内に,止血関連検査は 3 (2-4)
回測定されていた(中央値(IQR)).PT-INR=1.5,Fbg=150mg/dL,血小板数= 5 万/
L を閾値値とし,カプランマイヤー法での異常値の発生状況を比較したところ,Fbg 値が
早期かつ高頻度に異常値を示していた.異常値を来たすまでの時間は,Fbg=19.2±2.6h,
PT-INR=26.5±1.8h,血小板=27.1±1.6h,(P=0.016, Log Rank)であった.【追加解
析】北大症例のうち搬入時 Fbg>190 mg/dL の33症例を対象とした.搬入時の D-dimer=
38μg/mL を閾値として低値群と高値群にわけ,カプランマイヤー法での Fib の低下のタ
イミングを比較したところ,D-dimer 高値群(16.0±2.8h)では低値群(32.0±2.1h)
と比較して早期かつ高頻度に Fbg の低下を認めていた(P=0.034, Log Rank).【結語】①
搬入時の Fbg 低値は予後不良である.② Fbg は他の止血関連検査よりも早期かつ高頻度
に異常値を示す.③搬入時に Fbg が高値であっても D-dimer が高値であれば Fbg が低下
する可能性が高く予後不良である.
― 136 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
PD2-6
J-OCTET 報告:病院前輸液は外傷性血液凝固機能のリスク因子である
東京医科歯科大学医学部
附属病院救命救急セン
ター1),日本外傷学会将
来計画委員会2)
村田 希吉1)
大友 康裕1)
白石 淳1)
加藤 宏2)
佐々木淳一2)
小倉 裕司2)
松岡 哲也2)
植嶋 利文2)
森村 尚登2)
石倉 宏恭2)
早川 峰司2)
萩原 章嘉2)
武田 宗和2)
金子 直之2)
齋籐 大蔵2)
久志本成樹2)
PD2-7
【目的】重症外傷患者における病院前輸液と生命予後,大量輸血および凝固異常との関連
について明らかにする.【対象と方法】J-OCTET で後ろ向きに収集した ISS≧16の重症
外傷796例について,28日生存,大量輸血,外傷性血液凝固障害の 3 つを評価項目として,
病院前輸液施行の有無の影響を検討するために多変量解析を行なった.さらに年齢(65歳
以上/未満)
,性別,重症頭部外傷合併の有無,止血介入(手術または IVR)の有無で層
別化し,検討を行った.【結果】病院前輸液施行85例,非施行711例であった.両群間で年
齢,性別,大量輸血率,止血介入率,生存率(24時間/48時間/28日)に有意差を認めなかっ
た.病院前輸液群では ISS(中央値22 vs 25,p=0.001),Trauma Induced Coagulopathy
(TIC:PT-INR>1.2と定義)(14.5% vs 29.4%,p<0.001)が有意に高くなっていた.評
価項目を従属変数,年齢,性別,病院前輸液の有無,ISS を独立変数とする Logistic 回帰
分析では,病院前輸液は28日生存,大量輸血の独立した規定因子ではなかったが,TIC
発症については病院前輸液(オッズ比(OR)1.98,95%CI1.14-3.42,P=0.015)と ISS( 1
点増加による OR 1.08,95%CI 1.06-1.10,
P<0.001)が独立した規定因子であった.また,
層別解析では65歳未満(OR 3.24,95%CI 1.60-6.55),男性(OR 2.29,95%CI 1.20-4.39),
頭部外傷合併(OR 3.04,95%CI 1.44-6.42),止血介入群(OR 3.99,95%CI 1.40-11.4)
において,輸液は独立した TIC リスク因子であった.【結語】病院前輸液は TIC 発症の
独立したリスク因子である.特に65歳未満(3.2倍),男性(2.3倍),頭部外傷合併例(3.0
倍)止血介入を要する症例(4.0倍)において,病院前輸液は TIC リスクを増大する.
重症外傷に対する抗凝固障害治療:J-OCTET からの知見を臨床へ
東北大学大学院医学系研
究科外科病態学講座救急
医学分野1),日本外傷学
会 将 来 計 画 委 員 会
J-OCTET study group2)
久志本成樹1)2)
J-OCTET Investigators
日本外傷学会将来計画委員会は,1 )外傷急性期凝固異常の病態解明,2 )病態把握に基
づく hemostatic resuscitation の構築を目標とし,多施設共同後向き観察研究:Japanese
Observational study for Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma を実施した.対
象と解析方法:2012年 1 〜12月に15施設へ入院した,年齢18歳以上,ISS≧16の外傷症例.
他院紹介,妊娠中,肝硬変合併,来院時心停止,高エネルギー外力によらない脊髄損傷,
熱傷は除外した.担当解析テーマに基づき,各メンバーが統計学的検討を施行し,解析方
法,結果およびアウトカムに関する相互評価と検証により結論を導いた.結果:796例の
データを収集し,年齢59歳(38-72),男性589例(74%),鈍的外傷790例,ISS 24(17-27),
Ps 0.918(0.767-0.967),頭部外傷合併 481例(60.4%)であった.治療・転帰をみると,
24時間以内止血術 93例(11.7%),IVR 110例(13.8%),3 時間以内トラネキサム酸投与
281例(35.3%), 6 時間以内輸血施行 207例(26.0%),24時間以内 RBC≧10単位 125例
(15.7%),6 時間以内輸血施行例中24時間以内 RBC≧10単位施行率 58.5%,28日死亡 117
例(14.7%)であった.1 )傾向スコアを用いた解析により,受傷後 3 時間以内のトラネ
キサム酸投与は,24時間以内の輸血量を減少させないが,28日死亡率低下させることを示
した(12.7% vs 20.6%, 95% 信頼区間[-14.2%,-1.6%]).2 )頭部単独外傷に対する受
傷後 3 時間以内のトラネキサム酸投与は,生存率を上昇し(P=0.033),初期 D ダイマー
値40μg/ml 以上の患者でその効果を明らかにした.3 )24時間以内に赤血球輸血を要す
る患者では, 6 時間以内に FFP/RBC 比≧ 1 の輸血施行患者の死亡ハザード比は約0.4で
あり,死亡リスクは約60% 減少した.重症外傷患者の転帰を改善するためには, 6 時間
以内に FFP/RBC 比≧ 1 となる輸血により死亡率が低下することを示した.4 ) 6 時間以
内輸血症例の60% は,24時間以内赤血球10単位以上の大量輸血を要し,FFP/RBC 比≧ 1
となる輸血が死亡率低下に関連する.わが国補外傷診療において,受傷後 3 時間以内のト
ラネキサム酸の投与,蘇生のために輸血を要する患者に対する 6 時間以内の FFP/RBC
比≧ 1 達成は,死亡率低下を期待できる抗凝固障害治療戦略である.
― 137 ―
抄 録
Cross Fire Session 1
「Coagulopathy in Trauma. Is it DIC ?」
5 月30日 11:00 第 1 ・第 2 会場(ソラシティ 2 F EAST・WEST)
座 長 University of California, San Diego Prof. Raul Coimbra
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学
久志本成樹 先生
Cross Fire Session 2
「Non Responder に CT は有益か有害か?」
5 月30日 16:20 第 1 ・第 2 会場(ソラシティ 2 F EAST・WEST)
座 長 横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター
森村 尚登 先生
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座 渡部 広明 先生
Cross Fire Session 3
「CT で腸管損傷は診断可能か?」
5 月31日 10:50 第 1 会場(ソラシティ 2 F EAST) 座 長 日本医科大学武蔵小杉病院救命救急センター 松田 潔 先生
国立国際医療研究センター救命救急センター
萩原 章嘉 先生
Cross Fire Session 4
「頭部外傷に対する穿頭 vs. 大開頭」
5 月31日 13:00 第 1 会場(ソラシティ 2 F EAST) 座 長 日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野 木下 浩作 先生
慶應義塾大学医学部救急医学 並木 淳 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Cross Fire Session 1
Coagulo pathy in Trauma. Is it DIC?
Trauma, Shock, and Disseminated Intravascular Coagulation
Division of Acute and Critical Care Medicine
Department of Anesthesiology and Critical Care Medicine
Hokkaido University Graduate School of Medicine
Gando Satoshi
Following trauma, local hemostasis and thrombosis act to induce physiological wound healing and
innate immune responses, respectively, to impede the dissemination of damage-associated molecular
patterns(DAMPs)into the systemic circulation. However, if overwhelmed by systemic inflammation
caused by extensive tissue damage and tissue hypoperfusion, both of these processes cause pathologic
changes of systemic disseminated intravascular coagulation(DIC). The Scientific and Standardization
Committee(SSC)on DIC of the International Society on Thrombosis and Haemostasis(ISTH)defines
DIC as an acquired syndrome characterized by the intravascular activation of coagulation with loss of
localization arising from different causes. It can originate from and cause damage to the
microvasculature, which if sufficiently severe, can produce organ dysfunction. The most important
aspects of this definition are the“activation of coagulation with loss of localization”and“damage to the
microvasculature”, referring in turn to thrombin generation and activation in the circulation and to
extensive damage to the microvascular endothelial cells that results in insufficient coagulation control.
In DIC, high levels of DAMPs and inflammatory cytokines activate both extrinsic and intrinsic
coagulation pathways. Impaired anticoagulation pathways induce insufficient control of coagulation,
leading to systemic thrombin generation and activation, and ultimately consumption coagulopathy.
Fibrin(ogen)olysis due to tissue-type plasminogen activator is highly activated in the early phase of
trauma by shock-induced endothelial hypoxia in DIC with the fibrinolytic phenotype, and it contributes
to severe oozing-type bleeding. Persistently high levels of plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)
expressed in the endothelium change DIC with the fibrinolytic phenotype into the thrombotic
phenotype, which is followed by microvascular thrombosis and then multiple organ dysfunction
syndrome. Microvascular thrombosis has been observed in both types of DIC, but especially in the
fibrinolytic phenotype, where it becomes more prominent during antifibrinolytic therapy. DIC should be
diagnosed by DIC scoring systems, and key to managing DIC is treating the trauma itself and traumainduced shock. The mechanisms of hemostatic change in trauma are multifactorial, but DIC is the
predominant and initiating pathogenesis of the coagulopathy. The coexistence of hypothermia, acidosis,
and dilution aggravate DIC and lead to so-called trauma-induced coagulopathy.
PROFESSIONAL DEVELOPMENT
Present:
1999-present:Professor and Chairman, Division of Acute and Critical Care Medicine,
Department of Anesthesiology and Critical Care Medicine, Hokkaido University Graduate
School of Medicine, Sapporo, Japan
1999-Director, Emergency and Critical Care Center(Intensive Care Unit and Emergency
Room),Hokkaido University Hospital
― 141 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Past:
1980-1983:Department of Emergency and Critical Care Medicine, Osaka Prefecture Hospital,
Osaka, Japan
1983-1994:Department of Emergency and Critical Care Medicine, Sapporo City General
Hospital, Sapporo, Japan
1994-1997:Vice-Director, Department of Emergency and Critical Care Medicine Sapporo City
General Hospital, Sapporo, Japan
1997-1999:Vice-Director:Intensive Care Unit, Hokkaido University Hospital, Sapporo, Japan
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Cross Fire Session 1
Coagulopathy in Trauma. Is it DIC ?
Coagulopathy in Trauma:Is it DIC ?
Queen Mary University of London
Karim Brohi
Coagulopathy is common in trauma patients and is multifactorial in origin. It is present in up to one
quarter of patients on arrival at hospital, and incidence and severity increases during bleeding and
resuscitation.
Patients who are coagulopathic and survive are more likely to get thrombotic
complications than those without coagulopathy. There is therefore an interplay between the severity of
injury, the degree and duration of shock, the nature of resuscitation and underlying patient factors that
lead to a complex pattern of coagulopathies. Different pathophysiologies can lead to different
coagulation disorders at different times in the same patient. The term‘Trauma Induced Coagulopathy’
has been used as an umbrella term for all these clotting abnormalities which may be experienced by a
trauma patient.
The two primary types of coagulopathy experienced by a trauma patient are that induced by the
injury itself(known by various names including Acute Traumatic Coagulopathy - ATC)and that due
to resuscitation - which is primarily dilutional in origin.
Current paradigms of resuscitation
(haemostatic resuscitation or damage control resuscitation)avoid crystalloid solutions and aim to
replace blood loss with a transfusion mixture that approaches that of whole blood(usually described as
1 unit of plasma and platelets for each 1 unit of red blood cells). These strategies reduce but do not
abolish the dilutional coagulopathy seen during active bleeding. Importantly however they do not
address any previously established coagulopathy - and therefore do not treat acute traumatic
coagulopathy.
There is some debate about the underlying pathophysiology of acute traumatic coagulopathy. There
are components of consumption and loss in some patients with an associated mild fibrinolysis. In others
the fibrinolysis is more severe and associated with a profound loss of fibrinogen, possibly through
fibrinogenolysis. The mechanisms for this remain unclear, but there appears to be dysfunction of
clotting control mechanisms of anticoagulation and fibrinolysis - and activated protein C may play a
central role in this. In the most severely injured and shocked patients these coagulopathies are likely to
coexist.
This debate focuses on the question of whether TIC - or more specifically ATC - is a form of
Disseminated Intravascular Coagulation(DIC). This is primarily a question of nomenclature rather
than pathophysiology. If by DIC one means a systemic activation of the haemostatic system, then ATC
must be a form of DIC. However, the term DIC was originally coined to describe the widespread
inappropriate generation of thrombi - and in general this is what people understand when they hear the
term DIC.
These microthrombi have never been observed in the acute phases of trauma.
‘Disseminated intravascular coagulation’implies that an appropriate treatment might be the
administration of anticoagulants. This is clearly not the case and indeed excessive anticoagulation
appears to be a primary pathology. In medicine, labels and classifications should enable understanding
― 143 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
and guide treatment. The use of the term DIC to describe the pathophysiologies of TIC is unlikely to
be helpful in the management of this important disease state.
Karim Brohi
Biography
Karim Brohi is Professor of Trauma Sciences at Barts and the London School of Medicine, and
Consultant in Trauma & Vascular surgery at the Royal London Hospital Major Trauma Centre. He
attended medical school at University College London and has trained in London, Oxford, Cape Town
and San Francisco General Hospital. He is a Fellow of the Royal College of Surgeons of England and
Fellow of the Royal College of Anaesthetists of Great Britain and Ireland.
Karim leads an active research programme at Queen Mary University of London and is the director of
the Centre for Trauma Sciences. He has particular academic interests in acute translational trauma
care, and in particular the management of severe bleeding.
He is the director of the London Major Trauma System, which provides injury care for a population of
over 15 million people. He chaired the guideline development group for the NICE Major Trauma
Guidelines and is a member of the national clinical reference group for trauma.
Karim is also the founder of the Trauma. org web site and Trauma-list email discussion group.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Cross Fire Session 2
Non Responder に CT は有益か有害か?
Hybrid ER は重症外傷の転帰を改善するか
~新たな trauma work flow の提案~
大阪府立急性期・総合医療センター救急診療科
木下 喬弘
【背景】
外傷診療において,CT は治療戦略を構築するうえで極めて有用なツールであることは論を俟たない.しか
し,特に循環動態が不安定な重症外傷において,CT 検査に要する時間や移動は大きな問題となる.このた
め,JATECTM のガイドラインにおいても,primary survey での CT の施行を推奨するには至っていない.
我々は2011年 8 月に世界で初めて,初療室内に IVR-CT システムを設置することにより,CT による“診
断”と,手術や TAE による“治療”を移動することなく同じ寝台で行える Hybrid ER の運営を開始した.
今回,Hybrid ER を用いた外傷初期診療が重症外傷の転帰に与える影響を論じたい.
【方法】
2008年 1 月から2015年 8 月までに高度救命救急センターに搬送された ISS ≧16の外傷を対象とし,転院症
例や心肺停止例などは除外した.2011年 8 月以前に搬送された Conventional 群(C 群)と,それ以後に
搬送された Hybrid ER 群(H 群)に分けて比較した.主要評価項目は28日死亡率とし,TRISS 法による
予測生存率 Ps で調整した.副次評価項目として出血死亡,頭部外傷死亡などを比較した.
【結果】
対象症例は702例のうち,C 群が336例,H 群が366例であった.C 群と H 群で年齢(48[33-63]vs 48
[32-65], p=0.71),ISS(26[21-35]vs 26[21-38], p=0.26),RTS(6.9[6.0-7.8]vs 7.1[6.0-7.8],
p=0.52),Ps(0.88[0.65-0.97]vs 0.88[0.65-0.95], p=0.40)に有意差は認めなかった.28日死亡率
に両群間で有意差は認めなかった(21% vs 16%, p=0.06)が,Ps を共変量としたロジスティック回帰分
析の結果,Hybrid ER は死亡率の低下と有意な関連を示した(OR=0.50;95%CI, 0.31-0.80;p<0.01).
C 群は H 群に比較し,出血死亡が有意に多く(8.6% vs 3.0%, p<0.01),頭部外傷死亡(11% vs 10%,
p=0.61)に有意差は認めなかった.
【考察】
Hybrid ER を用いた外傷初期診療は,出血による死亡率を低下させることで,重症外傷の転帰を改善す
る可能性がある.
木下 喬弘(きのした たかひろ)
所 属:大阪府立急性期・総合医療センター救急診療科
役 職:医員
専 門:救急医学,神経外傷
略 歴
2010年大阪大学医学部卒業
2010年大阪府立急性期・総合医療センター臨床研修センター
2012年 同 救急診療科
2013年 大阪脳神経外科病院 脳神経外科
2015年より現職
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Cross Fire Session 2
Non Responder に CT は有益か有害か?
体幹の緊急手術を要する重症外傷例への CT は
低血圧か昏睡を伴えば危険かもしれない
亀田総合病院救命救急科1)
東京医科歯科大学医学部救急災害医学2)
白石 淳1),大友 康裕2)
【背景】体幹の緊急手術を要する重症外傷例に,術前の CT 撮影(CT 優先)とその逆順(手術優先)と,
どちらが有利なのか未だ科学的根拠に乏しい.Huber-Wagner らは重症鈍的外傷例への外傷室での全身
CT は未撮影と比較し,Trauma Injury Severity Score(TRISS)法での標準化死亡率で調整後に17スキャ
ンに 1 例の生命転帰を改善したと報告した(Lancet 2009)が,循環不安定例は少なく,非手術例を含み,
CT 優先と手術優先の優劣の臨床疑問に答えていない.本研究は,両者の転帰を直接比較した.
【方法】日本外傷データバンクの登録症例から,16歳以上,現場から直接搬送され,搬送後 2 時間以内の
胸腹部緊急手術が行われ,CT と手術の時間記録があるものを対象とした.来院時心肺停止例は除外した.
介入は手術優先とした.説明変数には TRISS 値と介入の有無を用い院内死亡を応答変数としたロジステ
ィック回帰分析を行った.更に対象のベースライン特性で 2 群に分割したサブ解析を行った.
【結果】手術優先(N=230)は CT 優先(N=900)と比較して院内死亡の調整後オッズを改善しなかった
が( オ ッ ズ 比(OR)0.80, 95% 信 頼 区 間(CI)
[0.53, 1.21]), サ ブ 解 析 で, 低 血 圧 群( 収 縮 期 血 圧
<90mmHg, OR 0.51, 95%CI[0.30, 0.87])はそれ以外(収縮期血圧 ≥ 90mmHg, OR 1.85, 95%CI[0.95,
3.60])より(P=0.003),昏睡群(GCS ≤ 8, OR 0.51, 95%CI[0.28, 0.93])は,非昏睡群(GCS ≥ 9, OR
1.19, 95%CI[0.69, 2.06])より(P=0.041),それぞれ手術優先は院内死亡の調整後オッズを生存側に改
善する有意な交互作用を示した.
【解釈】本研究は低血圧か昏睡を伴う重症外傷に CT を行わず緊急胸腹部手術を行うことと高い生存との
関連を示唆した.しかし,介入前情報で群分けができない選択バイアスと,CT と手術の両者が行いえた
例のみが選択される生存者バイアスが存在する.本研究の結果は前向き研究の推奨にとどまる.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
略 歴
白石 淳(しらいし あつし)
1966/12
福岡県豊前市生まれ
1994/3
東京医科歯科大学医学部卒業
1994/4
東京医科歯科大学神経内科入局
1994/4-1995/3
東京医科歯科大学神経内科
1995/4-9
東京都立広尾病院循環器科
1995/10-1996/3
長野県リハビリテーションセンター鹿教湯(かけゆ)病院神経内科
1996/4-1998/3
取手協同病院神経内科
1998/4-1999/3
武蔵野赤十字病院神経内科
1999/4-2004/3
東京医科歯科大学大学院生
うち2001/2-2004/2
国立循環器病センター内科脳血管部門任意研修生
2004/3
医学博士
2004/4-2005/3
取手協同病院神経内科科長
2005/4-2006/1
東京医科歯科大学大学院脳神経病態学(神経内科)助教
2006/2-
東京医科歯科大学災害救急医学(救命救急センター)助教
2015/4-
東京医科歯科大学災害救急医学(救命救急センター)医学部内講師
2016/4-
亀田総合病院救命救急科 部長
医学博士
日本内科学会認定医
日本神経学会指導医
日本救急医学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本救急医学会 学会主導多施設共同研究委員会 委員
日本救急医学会 救急統合データベース活用管理委員会 委員
日本外傷学会 トラウマレジストリー委員会 委員
所属学会
日本内科学会
日本救急医学会
日本集中治療医学会
日本外傷学会
日本集団災害医学会
日本病院前救急医学会
日本神経学会
日本脳卒中学会
日本神経感染症学会
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Cross Fire Session 3
CT で腸管損傷は診断可能か
CT で腸管損傷は診断可能か:Revenge 編
聖マリアンナ医科大学救急医学
松本 純一
MDCT(Multi-detector row CT)の導入により,迅速に全身の CT 検査が行えるようになり,外傷診
療における CT の位置づけは大きく変わった.最近では Hybrid ER として外傷患者を受け入れる外来に
CT を設置し,CT 台の上で診療を開始する方法もみられるようになり,CT の位置づけがますます高く
なろうとしている.このような状況の中,外傷診療を担当する者にとって,CT を適切に利用する能力は,
他の診療技能同様,必須のものである.「適切な利用」には,1 )適切な適応判断,2 )適切な検査施行,
3 )適切な読影,さらに 4 )適切な画像情報の利用,が含まれる.放射線科医は画像に情報を求め過ぎる
傾向がある一方,診療担当医は画像情報を蔑ろにしがちであり,その価値を十分に理解しているとは言い
難いと感じる場面にしばしば遭遇する.実際のところ,外傷診療において本当に CT を適切に利用できて
いる施設は極めて少ないと思われ,外傷診療における CT の位置づけは,Hybrid ER の導入とは関係なく,
心ある診療担当医・放射線科医の努力により,まだ上げられると考える.これを達成するには,外傷診療
と放射線診療の双方の考え方を基にした「Trauma Radiology」という概念を理解する必要がある.今回
の Cross Fire Session では,Trauma Radiology の観点から,CT の「適切な利用」について解説し,さ
らに,今回のテーマである腸管損傷の診断に迫りたいと思う.「CT で腸管損傷は診断可能か?」の問い
への挑戦は,第22回日本外傷学会(沖縄)での自らの発言から,東京医科歯科大学大友康裕教授に一度機
会を頂いている.この時は惨敗を喫することとなったが,今回,Trauma Radiologist として DPL(Diagnostic
Peritoneal lavage)に勝負を挑み,revenge を果たす所存である.
松本 純一(まつもと じゅんいち)
略 歴
1995年:聖マリアンナ医科大学卒業.同,放射線医学入局.
1999年:メリーランド大学 ショック・トラウマセンター画像診断部,短期研修.
2004年:メリーランド大学 ショック・トラウマセンター画像診断部,リサーチフェロー.
2005年:聖マリアンナ医科大学,救急医学へ.
2008年:救急医学 講師.現在に至る.
現在 7 病院(聖マリアンナ医大,慈恵医大,慈恵医大柏病院,国立災害医療センター,横浜市西部病院,
川崎市多摩病院,川崎市立協同病院)で救急カンファレンスを担当.
専 門
外傷画像診断,ICU Radiology
北米放射線学会 Emergency Radiology 部門:審査員
米国雑誌「Emergency Radiology」
:編集委員,査読者
米国雑誌「Radiographics」査読者
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Cross Fire Session 3
CT で腸管損傷は診断可能か
DPL は CT の限界をカバーする最強の診断ツールである
山梨県立中央病院救命救急センター
井上 潤一,小林 辰輔,河野 陽介,岩瀬 史朗
この20年,CT の驚異的な高性能化に伴い外傷の診断手法は大きく変化している.とくに腸管損傷に関
して CT はこれまでは描出できなかった直接・間接の所見を様々な断面や立体像などから明らかにするこ
と が 可 能 と な っ た. そ の た め 腸 管 損 傷 の も う 一 つ の 診 断 手 法 で あ る 診 断 的 腹 腔 洗 浄(Diagnostic
Peritoneal Lavage :DPL)が行われる機会は大幅に減っている.
では DPL はこのまま消えていくのであろうか? 腹部所見が正確に取れない場合や,画像所見に迷う
場合も全て CT で診断可能となるのだろうか.
DPL は1965年に初めて腹腔内臓器損傷の診断に用いられて以来使用されてきたが,腸管損傷に対する
40 % 近い negative laparotomy が大きな問題であった.これを劇的に改善したのが1998年の大友の基準
であり,正診率99%(感度99.6%,特異度99.4%)にまで向上させた.
では CT の正診率はどうだろうか? Atri らの研究では,開腹診断がついている96症例の MDCT を,
画像診断のレジデント,専門医,スタッフ医師の 3 人に読影させたところ感度・特異度がそれぞれレジデ
ント(86%,51%),専門医(81%,66%)
,スタッフ医師(70%,88%)となり,疑い例には12時間後の再
検査を提案している.また前任施設で同様に放射線専門医 3 名に過去の腹部外傷80例の MDCT を提示し
た結果では,腸管損傷は全て正しく診断され見逃しもなかった一方,腸管損傷がないものをあると読んだ
り判断保留となったものが経験の浅い医師ほど多かった.
このように数字のうえでは腸管損傷に対する DPL の優位性は明白である.さらに CT では被爆の問題
が必ず発生する.また CT の感度は受傷 8 時間以降で上がるという報告があるが,5 時間以上の診断遅延
は死亡率が 3 倍になるという報告もある.一方 DPL は繰り返しベッドサイドでできること,被曝がない
こと,受傷 3 時間以降から診断できること,そして施行者によらず結果が数値で定量的に判断されるとい
う大きな利点がある.
CT の高性能化により腸管損傷の確定診断に DPL を必要としないケースが増加しているが,読影を含
む CT の限界は依然として解消されていない.DPL にも開腹既往では使えないことや 1 % 程度の合併症
リスクはあるが,現時点では CT の限界をカバーする最強の診断手法であり,腸管損傷の有無に確信が持
てない場合は必ず DPL を行うべきである.
職 歴
弘前大学医学部卒
1991年 日本医科大学 救急医学教室・同救命救急センター
1992年 済生会神奈川県病院 外科・交通救急センター
1995年 国立病院東京災害医療センター 救命救急センター
2008年 米国テキサス大学南西医療センター 救急科 客員教授
2013年 山梨県立中央病院救命救急センター
資格等
日本救急医学会指導医・専門医,日本外傷学会専門医,日本航空医療学会 認定指導者
山梨県災害医療コーディネーター,統括 DMAT
論 文
Inoue J, Shiraishi A, Otomo Y, et al. Resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta might
be dangerous in patients with severe torso trauma : a propensity score analysis. J Trauma Acute
Care Surgery. 2016;80:559-567.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Cross Fire Session 4
頭部外傷に対する穿頭 vs. 大開頭
頭部外傷に伴う凝固線溶系障害からみた穿頭術の有用性について
花と森の東京病院脳神経外科
高山 泰広
【はじめに】
頭部外傷における外科的治療が必要となる病態は,脳圧亢進状態となる病変が占拠する場合に適応にな
る.硬膜外血腫・硬膜下血腫,脳挫傷などの局所脳損傷が主な病変であるが急性脳腫脹などのびまん性脳
損傷も脳圧次第で適応になる.しかしながら,未だに予後へ影響を与える外科的処置は確定されておらず
穿頭術 vs 開頭術において予後のみを比較し,どちらの手術療法が適切であるかを導くことは困難と考え
る.穿頭術,開頭術をどのような症例で,どのようなタイミングで施行するか,その手法が重要である.
【対象・方法】
1.自験例において AIS3 以上の頭部外傷247例における凝固線溶系障害について過去に報告をした①凝
固線溶系障害と予後の関係について②脳圧と受傷 1 時間以内の D-dimer 値の関係について③受傷後の凝
固線溶系障害の推移について考察をしつつ穿頭術の適応症例の条件やタイミングについて報告する.
2. 1 で穿頭術を施行された頭部外傷の自験例68例について穿頭術単独群,開頭術単独群,穿頭術と開
頭術併用群に分けて比較検討する.
【結果】
1.①年齢,初回 GCS,受傷 1 時間以内の D-dimer 値が独立した予後決定因子であった.②脳圧を測
定された77例の脳圧25mmHg の症例数について D-dimer<25(μg/ml 以下省略)で0/24例( 0 %),
25≦D-dimer<75では 4/25例(16%),75≦D-dimer では24/28例(86%)となり D-dimer 値は脳圧上昇
を予測できる.
③.TAT,PIC は受傷直後がピーク(p<0.01)となり,FDP,D-dimer が 3 時間後にピーク(p<0.05)
となった.tPA-PAI1complex は 6 時間後にピーク(p<0.05)となった.
2.それぞれの群で予後良好群(GOS にて MD 以上)は16/24例(67%)
,
16/29例(55%)
,
6/15例(40%)
となり有意差は認めないが,多変量解析によるオッズ比では穿頭術単独群で高かった.
【考察】
穿頭術の定義として穿頭血腫除去術・穿頭脳室ドレナージ・両方の併用などを提唱する.その上で脳損
傷の形状によって使い分ける必要がある.条件として 1 .重症頭部外傷で線溶亢進が著しく出血傾向が予
測される状態 2 .脳圧測定目的で穿頭術をする場合 3 .受傷から 3 時間以内で開頭術も念頭に治療される
場合などがあげられる.例としてびまん性脳損傷で脳腫脹の場合は脳室ドレナージ術,硬膜下血腫では穿
頭血腫除去術+脳室ドレナージ術などの組み合わせなどがある.上記目的としては開頭術前のダメージコ
ントロール的に行うことであるが,結果として開頭術へ移行しない症例もあるため,そのような症例が穿
頭術で有用になるものと考える.症例提示し考察する.
― 150 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
-略歴-
日本医科大学医学部卒業
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 救急医学 助教
川口市立医療センター 救命救急センター医長 会津中央病院 救命救急センター 医長
花と森の東京病院 救急科・脳神経外科 部長
-主な役職-
埼玉県救命士養成学校専任講師 川口市看護学校講師
バイオメディカルフォーラム事務局長 埼玉県急性期治療フォーラム事務局長
日本救急学医会 DIC 委員会 日本重症頭部外傷治療・管理ガイドライン作成委員
日本脳神経外傷学会学術評議員 日本脳代謝モニタリング学会評議員など
-専門医-
日本救急医学会認定 救急専門医
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医
感染制御認定医
-主な論文-
- 脳神経外科コングレス機関誌 Pathophysiology, Mortality, Treatment of Acute Phase of Haemotatic Disorders of Traumatic Brain
Injury
- 脳神経外傷学会機関誌 「Haemostatic disorders of head injury :Clinical significance of plasma D-dimer level
-バイオメディカル機関誌-
「頭部外傷早期に伴う凝固線溶系異常」
「敗血症性ショックを伴う重症敗血症の予後予測と抗凝固療法の検討」
「敗血症性 DIC と外傷に伴う凝固線溶系障害の違いについて」
-日本臨床-
「脳蘇生と頭蓋内圧モニタリングの現状について」日本臨床 69(4),708-715, 2011-04
「広範囲デブリードメントを必要としたガス壊疽の一例」など
-主な著書-
「DIC の治療とそのトピックス 低分子へパリン」 Surgery Frontier 誌
「低体温療法」 特異な経過をたどった症例・事例から学ぶ!-救急医学-
「外傷による意識障害」-原因疾患を迷う症例より-救急医学-
「頭部外傷に伴う凝固線溶系障害からみた治療戦略」-救急医学-
「頭部外傷に伴う凝固線溶系障害」-救急医学-
「頭部外傷に伴う凝固線溶系障害からみた輸液・輸血療法について」-救急医学-
「救急医,外傷医に必要な頭蓋内圧モニターの手技」-救急医学-
「聴性脳幹反応の意義」-集中治療-
「DIC の基礎疾患の治療と補充療法」-集中治療-
「脳卒中の危険因子 - 脳卒中予防の視点より -」-集中治療-
「神経外傷を伴う多発外傷と凝固線溶系異常への対処-多発外傷合併の頭部外傷の診療・治療-」-脳
神経外科診療プラクティス-など
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Cross Fire Session 4
頭部外傷に対する穿頭 vs. 大開頭
頭部外傷の穿頭 VS 大開頭
りんくう総合医療センター脳神経外科
荻原 靖
【はじめに】
重症頭部外傷による頭蓋内圧亢進に対する治療として大開頭による減圧開頭術が最も有効である事は,
外傷外科医や脳神経外科医の間ではほぼ一致した意見と思われる.しかしながら DECRA study で減圧開
頭術に対して否定的な結果が示されるなど,その効果には未だ評価の確立していない面が残されている事
も否めない.
【当施設での頭部外傷治療の実際】
当院救命センター(大阪府泉州救命救急センター)に過去 7 年間に搬送された AIS 3 点以上の頭部外傷
は942例,その中で頭部手術を施した患者は280例(29.7%)であった.初回手術が開頭であったものは
164例(58.6%),穿頭術116例(41.4%)であり,穿頭術を行ったものの中で脳圧コントロール不良のた
め開頭術へ移行した例は22例(19%)であった.穿頭直後に開頭に移行した例は 9 例,ICU 管理中に開頭
になったものが13例であった.
【急性硬膜下血腫】
急性硬膜下血腫(SDH)に限れば,穿頭術を行ったものは32例,そのうち穿頭のみで治療を完結した
ものは16例(50%),開頭術に移行したものは16例(50%),救命率は87.5%,穿頭のみでも87.5%であっ
た.開頭群151例での救命率は77.5%,穿頭後に開頭に移行したものも含めると,開頭術での総救命率は
79.3% で,開頭,穿頭ともに救命率はほぼ同程度であった.【手術法選択】重症頭部外傷手術のうち72%
は最終的に開頭され,その救命率も76.2% と高かった事から,頭部外傷手術の最も大きな柱が大開頭術
であることは明らかである.ただし SDH で穿頭術のみで治療が完結した群でも救命率は遜色がなかった
事から,穿頭のみで脳圧コントロール可能な症例が存在することも確かである.また穿頭術と開頭術を組
み合わせた治療を行ったものの救命率も同様に高く,特に穿頭術後に一旦 ICU 管理を行い,その後開頭
した13例は救命率76.9% であった.
【考察】
言うまでもなく穿頭術と大開頭術はどちらかがどちらかの代替となり得る治療手段ではない.むしろ穿
頭と大開頭はどちらも重症頭部外傷に立ち向かうための重要なオプションであり,どのような治療戦略を
立て,どのように組み合わせるかが重要である.今回のセッションでは,大開頭と穿頭の外傷治療戦略に
おける位置付けについて議論し,より洗練された頭部外傷の外科的治療戦略について考えていきたい.
略 歴
1992年 3 月 福井医科大学(現福井大学医学部)医学部医学科卒業
同年 5 月 大阪大学付属病院脳神経外科研修医
1993年 4 月 大阪府立成人病センターレジデント
― 152 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
1995年 6 月 行岡医学研究会行岡病院脳神経外科
1996年 6 月 掖済会神戸病院脳神経外科
1997年 4 月 大阪大学院大学医学系研究科
2001年 3 月 医学博士号取得
同年10月 大阪府立泉州救命救急センター
2013年 4 月 りんくう総合医療センター高度脳損傷・脳卒中センター長
2015年11月〜
りんくう総合医療センター脳神経診療部長,脳神経外科部長 兼任
資 格
日本脳神経外科学会専門医
日本救急医学会専門医
日本脳神経外傷学会評議員
日本 DMAT 隊員
賞 罰
2000年 日本脳神経外科学会奨励賞
2012年 日本脳神経外科学会総会会長賞
― 153 ―
抄 録
Case Conference
5 月30日 15:40 第 1 ・第 2 会場(ソラシティ 2 F EAST・WEST)
司 会 University of Southern California, LAC+USC Medical Center, USA
松島 一英 先生
東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野
大友 康裕 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Case Conference
Challenging cases:あなたならどうアプローチする?
Division of Acute Care Surgery,
University of Southern California,LAC+USC Medical Center, USA
松島 一英
外傷診療は近年著しく進歩しており,それに伴って診断,治療内容も多様化している.より多くのエビ
デンスが存在し,様々なガイドラインが出されている現在においても外傷,特に重症外傷に対するアプロー
チの仕方は各施設,各外傷診療医によって異なる.
今回,我々は診療方針において意見が分かれるであろう 2 症例を提示し,“外傷診療のエキスパート”
達からそれぞれのアプローチを提案していただき,その違いについて議論を進めていく予定である.
OFFICE ADDRESS
LAC + USC Medical Center
Division of Acute Care Surgery
Department of Surgery
2051 Marengo, Inpatient Tower, C5L100,
Los Angeles, CA 90033
EDUCATION
Mie University School of Medicine, Mie, Japan
MD, March 2001
RESIDENCY
General Surgery Residency Program
Okinawa Prefectural Chubu Hospital
Uruma, Okinawa
Japan
May 1, 2001-March 30, 2005
Program director:Masao Maeshiro, MD
General Surgery Residency Program
Penn State Milton S. Hershey Medical Center
Penn State College of Medicine
Hershey, Pennsylvania
July 1, 2010-June 30, 2013
(2 years of surgical credit approved by the American Board of Surgery)
Program director:Peter W. Dillon, MD
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
FELLOWSHIP
Fellowship in Trauma/Burn/Surgical Critical Care
University of Texas Southwestern Medical Center / Parkland Memorial Hospital
Dallas, Texas
July 2008-August 2009
Program director:Heidi L. Frankel, MD
Fellowship in Acute Care Surgery
Penn State Milton S. Hershey Medical Center
Hershey, Pennsylvania
October 2009-June 2010
Program director:Heidi L. Frankel, MD
Fellowship in Surgical Critical Care
LA County + USC Medical Center
University of Southern California, Keck Medical Center
Los Angeles, California
July 2013-June 2014
Program director:Kenji Inaba, MD
Fellowship in Trauma Surgery
LA County + USC Medical Center
Los Angeles, California
July 2014-June 2015
Program director:Kenji Inaba, MD
LICENSURE
Japanese medical license(2001)
California(A123950)
BOARD CERTIFICATION
The American Board of Surgery-General Surgery, Surgical Crinical Care
Japan Surgical Society-General Surgery
Japan Association of Acute Medicine-Acute care physician:December 2007
― 158 ―
抄 録
Joint Session 1
「東京オリンピック,パラリンピック特別企画」
5 月31日 13:50 第 2 会場(ソラシティ 2 F WEST)
司 会 帝京大学医学部救急医学講座
司 会 国立病院機構災害医療センター救命救急科
鳥取大学医学部救急災害医学
坂本 哲也 先生
小井土雄一 先生
本間 正人 先生
Joint Session 2
「JAST/JSACS/KSACS Joint Conference」
5 月31日 13:00 第 3 会場(ソラシティ 1 F Room C)
司 会 大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター
溝端 康光 先生
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター
村田 希吉 先生
President of KSACS, Chonnam National University
Jung Chul Kim
Division of Trauma and Surgical Critical Care, University of Ulsan
Suk-Kyung Hong
Joint Session 3
「外傷医と脳外科医の効率的連携を考える:
Beyond the standard」
5 月31日 9 :00 第 3 会場(ソラシティ 1 F Room C) 座 長 国立病院機構災害医療センター脳神経外科
高里 良男 先生
日本医科大学大学院医学研究科外科系救急医学分野
横田 裕行 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
基調講演
オリンピック・パラリンピックの医務体制
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会メディカルディレクター
赤間 高雄
ロンドンオリンピックには,選手,選手団員,IOC,IF,メディア,大会スタッフなどの公式 AD カー
ド保持者数が172,000,観客が約700万人の合計約720万人が参加し,ロンドンパラリンピックには合計約
160万人が参加した.夏季オリンピック・パラリンピックは超巨大なスポーツイベントである.大会の医
療サービスでは,選手村や大会会場における公式 AD カード保持者に対しての医療,および大会会場で
の一般観客の応急処置と救急搬送だけでなく,開催都市への訪問者の集中による mass gathering に対す
る医療体制が必要になる.ここでは,大会組織委員会が整備すべき大会公式 AD カード保持者に対する
医療サービスについて概説する.オリンピック・パラリンピック競技大会では,AD カードの有無,さら
に AD カードの種類によってアクセス可能区域が明確に区分けされるので,例えば,同一会場であって
も選手用医務室と観客用医務室は別々に設置する必要がある.選手と選手団員に対する医療は選手村
Polyclinic が中心であり,Polyclinic と選手用医務室からは必要な場合に大会公式病院へ搬送される.
Polyclinic には内科,整形外科,眼科,歯科,理学療法,画像検査,臨床検査,薬局などの部門がある.
― 161 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 1
東京オリンピック・パラリンピック特別企画
アトランタオリンピック爆弾テロ
九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座災害救急分野1)
日本医師会総合政策研究機構2)
下関市保健所3)
日本医師会4)
永田 高志1)2),長谷川 学3),橋爪 誠1),石井 正三4)
アトランタオリンピックは,1996年 7 月19日から 8 月 4 日までアメリカのアトランタで行われた第26回
夏季オリンピックであり近代オリンピック開催100周年記念大会であった.事件の概要だが,大会 7 日目
の 7 月27日午前 1 時20分頃にオリンピック公園の屋外コンサート会場で爆破事件が発生し死者 2 名,負傷
者111名多数傷病者事案となった.死者 2 名のうち 1 名は爆発物の釘による頭部外傷によるものであり,
もう 1 名は心不全で会った.111名の傷病者のうち96名は事件発生後30分以内に爆発地点から半径 5 km
以内の 4 つの病院に搬送された.外傷センターに搬送された35名中10名に対して緊急手術が行われ,市中
病院に搬送された61名のうち 4 名に対して手術が実施され,すべて救命することが出来た.2020年東京オ
リンピックを控える日本にとってアトランタオリンピック爆弾テロから 3 つの教訓が得られる.まず,オ
リンピックに先立ち組織委員会は米国疾病予防センターそして地元の医療機関と連携し,大会会場の救護
所運営,感染症サベーランス,熱中症,外国人観光客,各種テロ等様々な想定に対する医療公衆衛生対策
を進めてきた.次に1995年の東京地下鉄サリン事件やオクラホマ州連邦政府ビル爆破事件などオリンピッ
ク直近の事件をもとに対策を進めていた.最後に,犯人は爆破30分前に犯行を通知したため,観客避が避
難することが可能であったことが挙げられる.
2020年東京オリンピックでは爆弾テロを含めた様々な事案が起こるという最悪の想定のもとで,限られ
た時間と予算,資源の中で準備を進める必要がある.
経 歴
1997年 3 月 九州大学医学部卒業
1999年 5 月 聖マリア病院医員(整形外科,救急診療科)
2000, 2001年 パキスタン・アフガニスタン出張
2004年 6 月 ハーバード大学公衆衛生大学院武見プログラム留学
2006年 8 月 聖マリア病院救命救急センター 医長
2007年〜現在 ハーバード大学人道援助機関との交流
2007〜2009年 ベトナム,ハノイ(交通事故研究)
2008〜現在 米国外科学会外傷外科手術研修 ATOM コース開催
2009〜2014 カロリンスカ研究所 交通事故研究
2006年 9 月 日本医師会総合政策研究機構客員研究員
救急災害医療対策委員会,災害小委員会,国際保健委員会
2010年 3 月 医学博士号習得(九州大学)
2012年 7 月 九州大学大学院医学研究院先端医療医学部門災害・救急医学助教
資 格
救急専門医,Certified Emergency Manager(米国危機管理者協会公認 日本人 1 号)
著 書
ICS 緊急時総合調整システムガイドブック(東京法規出版 2014年)
国際マラソン医学協会(Internal Institute of Race Medicine)医療救護マニュアル(東京法規出版 近
日公開)
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 1
東京オリンピック・パラリンピック特別企画
ロンドン同時多発テロ
警視庁警務部理事官
奥村 徹
ロンドン同時多発テロは2005年 7 月 7 日に起こった,地下鉄 3 箇所,バス 1 箇所が爆破され,56名が死
亡したテロ事件である.グレンイーグルズ G8サミット開催中のテロであり,警備の最も厳重な開催地を
避けて首都を狙ったテロであった.前日夜にロンドンオリンピック開催決定したこともあり,喜びにあふ
れたロンドン市民を恐怖に陥れた.英国は,それまで IRA(Irish Republican Army:アイルランド共和軍)
による1980年代からの爆弾テロ対応の経験があったが,それでも,同時多発的な爆弾テロは当初,一連の
事件であると認識するまでに時間がかかり,主たるテロ現場が地下であったこともあり,初期には,地下
鉄の電気系統の火災とされた.この事件以降,一つの場所で 1 人の要救助者が出れば通常の対応をとるが,
2 人の要救助者が出ればテロを疑い, 3 人の要救助者が出れば,テロとして対応するという,STEP
1-2-3が取られることとなった.外傷医療的には,この事件をきっかけに爆傷治療の特異性が注目される
ようになったが,戦陣医学でその有用性が認識されていた CAT などのターニケットのプレホスピタル領
域への積極的な導入に関しては,さらにボストンマラソン爆弾テロ事件,パリ同時多発テロ事件を待たね
ばならなかった.東京オリンピック・パラリンピックを 4 年後に控える今,万が一にも起こってはならな
い爆弾テロであるが,万が一起こった際には,最善の医療体制で臨むのが国際的な使命である.
略 歴
福岡県立修猷館高等学校,順天堂大学医学部卒業.沖縄県立中部病院ハワイ大学卒後研修プログラムイ
ンターン課程修了.順天堂大学医学部救急・災害医学研究室助教授,佐賀大学医学部危機管理医学講座
教授,内閣官房首相官邸 NBC 災害対策専門官(企画官待遇)を経て警視庁警務部理事官.
― 163 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 1
東京オリンピック・パラリンピック特別企画
あらためて秋葉原無差別殺傷事件の医療対応をふりかえる
日本医科大学付属病院救命救急科
布施 明,横堀 將司,荒木 尚,横田 裕行
【はじめに】
秋葉原無差別殺傷事件の概要を振り返り,その教訓をもとにクライムシーンでの医療支援活動のあり方
について報告する.
【秋葉原無差別殺傷事件の概要】
2008年 6 月 8 日(日)12:30頃,歩行者天国交差点付近で,犯人は自ら運転するトラックで通行人数名
をはねたうえ,降車後,さらに刃物で通行人を刺し,計17名が死傷した事案である.同事案に対して東京
DMAT が現場に出動し,消防組織と連携しながらトリアージ,現場応急治療等の活動を行った.傷病者
は13医療機関に分散搬送された.
【秋葉原無差別殺傷事件の教訓】
• 事件現場にはじめて出動したが,医療チーム出動のあり方に関する検討が必要である.
• 衆人環境における現地医療活動においては,警察との協力体制を強化し災害援助者にも配慮する必要が
ある.
• 傷病者の集積・搬出方法などにおいてカウンターパートである救急機関と一層の連携が必要である.
【ボストンマラソン爆破テロとの比較】
2013年のボストンマラソン爆破テロでは,負傷者264名にも上ったが,死亡は現場での 3 名で留まった.
刃物殺傷と爆発事象という相違点はあるが,現場では四肢の止血処置を優先させ,現場で搬出順位を決め
ることなく,迅速に病院搬送させたこと,1 施設あたり27.3名の負傷者を短時間に収容させた.
【クライムシーンでの医療支援活動】
• 秋葉原無差別殺傷事件では,現場で負傷者の搬出順位を決定し,赤タグを優先させて病院へ分散搬送さ
せた.事件現場で短時間に大量の負傷者が発生した際にどのような手順で搬出させるべきか,今後,議
論を要する.
• 法執行機関からの情報については現場に入る医療チームに遅滞なく伝達される必要がある.この課題を
解決するには法執行機関と医療機関が事件現場における双方の活動内容,必要性を把握する必要があり,
現在,その取り組みが始まっている.
• テロ対応の必要性が高まる中,交戦中の救護についても検討が始まっている.
【おわりに】
秋葉原無差別殺傷事件の教訓をふまえて,我が国で始まっている取り組みについて概説した.今後も法
執行機関と医療機関の連携を深化させることが必要である.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 1
東京オリンピック・パラリンピック特別企画
ボストンマラソン爆弾テロ
山梨県立中央病院救命救急センター
井上 潤一
東京オリンピックを控えテロ対策は喫緊の課題である.2013年に発生したボストンマラソン爆弾テロか
ら,わが国の救急医療体制のあり方を述べてみたい.ボストンでは重症患者は発生から 1 時間以内に全例
が搬送され,最終的に25医療機関に分散搬送された281例は全例救命された.対応が成功した理由は,1 )
平時からの計画・準備と頻回の多機関連携訓練,2 )これを可能にする連邦の予算措置,3 )医療情報セ
ンター(Medical Intelligence Center ; MIC)の存在,4 )マラソン関連傷病者に対し予め準備された救急
医療体制,5 )医療テント近くでの発生と by-stander による迅速な対応,6 )タニケットによる外傷性切
断に対する現場止血,7 ) 6 つの外傷センターの存在と,救急外来および手術室の迅速な空床確保,8 )
シフト交替時間前後での発生による豊富なマンパワー,があった.爆弾テロに対しては地域全体の緊急医
療体制を迅速に起動するシステム,戦闘下の救急医療 tactical emergency medical support(TEMS)を
取り入れた現場活動,ER と手術室の空床確保を基本とした surge capacity building,爆傷患者の標準的
な診療手法の修得が必要である.オリンピック等のイベントに対しては予め訓練した当該地域外の
DMAT を会場周辺に待機させておくことも必要である.
略 歴
弘前大学医学部卒
1991年 日本医科大学 救急医学教室
1992年 済生会神奈川県病院 外科レジデント
1995年 国立病院機構災害医療センター 救命救急センター
2008年 テキサス大学南西医療センター 救急・災害部門
2013年〜現職
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 1
東京オリンピック・パラリンピック特別企画
パリ同時多発テロ事件における医療対応の実際
横浜市立大学大学院医学研究科救急医学
森村 尚登
【はじめに】2015年11月,フランスのパリ市街中心部と郊外競技場においてテロリストによる銃撃と爆発
が同時多発的に発生し大惨劇となった.パリ公立病院連合(APHP)と SAMU(公立救急医療支援組織)
からの情報提供に基づき,テロ時初期対応を報告する.【概要】 1 )パリの救急災害医療体制:欧州屈指
のドクターカーネットワークシステムを有し,38病院を統括運営する APHP が病院間連携を強固にして
いる.災害対応計画には病院前,病院内・病院間,同時多点対応がある.トリアージは絶対緊急と相対緊
急の 2 類型.爆傷・銃創時の現場対応として,ターニケット等による外出血制御,制限的輸液 / 血管収縮
薬,トラネキサム酸,簡易な気道・呼吸管理,低体温是正,手術室直接搬入を重視. 2 )実際の対応:45
のドクターカーが出動.現場死亡129人.多くは警察や救助隊到着前死亡で,頭部か胸部,または多部位
銃創によった.現場医療チーム判断で「 1 か所の穿通性胸部銃創」と「腹部と下肢双方の銃創」を絶対緊
急とし,5-8 人を 1 グループにして地区ごとに事前に決められた計18病院に356人を搬送(絶対緊急76,
相対緊急226)
,1 週間後死亡率1.3%.内容と時間を規定したプロトコルに基づく現場診療と迅速な分散
搬送は実現.医療従事者を含む安全対策と情報伝達手段の強化等を課題として挙げた.今後本邦で,同時
多数穿通性外傷例発生時における関連部門の対応の体系化を図るうえで重要な情報と考え報告する.
略 歴
横浜市立大学大学院医学研究科救急医学主任教授
1986年横浜市立大学医学部卒業.日本医科大学付属病院救命救急センター,国立横浜病院,帝京大学医
学部附属病院等を経て2010年10月より現職に至る.日本外傷学会専門医.
― 166 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 2
JAST/JSACS/KSACS Joint Conference
JAST/JSACS/KSACS Joint Conference
外傷学30年の間に Acute Care Surgery という概念が米国より発信され,Acute Care Surgery を学ぶ学
術団体,Japanese Society of Acute Care Surgery(JSACS)が発足しています.今回は JSACS に加えて,
お隣韓国の Korean Society of Acute Care Surgery(KSACS)の会員の皆様もお招きし,JAST 会員とと
もに外傷症例について Discussion を行います.Resuscitation,IVR,
Damage control などの戦略について,
学会間の考え方の違いを明らかにし,Consensus の得られている領域・得られていない領域を再認識し,
今後の課題を考えてゆくセッションです.
― 167 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 3
日本神経外傷学会 Joint Session
頭部手術を要する多発外傷への対応に向けて
-日本外傷データバンクからの解析と自施設の経験から
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター
白石 淳
本研究ではこの現状を日本外傷データバンクの登録データから多発外傷診療における脳神経外科医の診
療の記述統計を行った.
日本外傷データバンクに登録され,転帰と AIS コードが明らかな158,932例のうち50,458例(31.7%)
が重症頭部外傷を有し,8,032例(5.1%)には頭部手術が行われていた.この頭部手術を行われた8,032
例のうち,2,133例(26.6%)は頭部以外に重症外傷を有する多発外傷であった.多発外傷患者の外傷重
症度は単独外傷よりも高く(中央値 36[四分位範囲 29−43]vs. 中央値 25[四分位範囲 16−25],
P<0.001), 死 亡 率 は 高 く(35.0% vs. 23.7%,P<0.001), 体 幹 の 同 時 手 術 が 多 い(27.0% vs. 3.4%,
P<0.001).頭部外傷手術例の99.0% を救急科または脳神経外科で診療していた.多発外傷例で脳神経外
科で主に入院診療しているものが25.5%,単独外傷では51.3% であり,多発外傷でも約1/4が脳神経外科
で入院診療を受けていた.これらの結果を踏まえると,頭部外傷を含む多発外傷はより重大で,脳外科チ
ームだけでなく一般外科チームと共同しての緊急診療を必要だった.
― 168 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 3
日本神経外傷学会 Joint Session
重症頭部外傷に対する“All in one”型の治療方針の検討
奈良県立医科大学脳神経外科1)
奈良県立医科大学高度救命救急センター2)
朴 永銖 ,古家一洋平1),中瀬 裕之1),至田 洋一2),奥地 一夫2)
1)
【緒言】重症多発外傷治療においては,“的確な判断”と“迅速な行動”が求められるが,脳損傷に対す
る最善の治療タイミングを失う場合も存在する.我々は選択し得る全ての治療を初期段階から施行する
“All in One”型の方針で重症頭部外傷の治療を行ってきので報告する.【方法】重症 ASDH 例を中心に,
速やかな減圧を図るべく外来穿頭を施行し,神経徴候の改善が得られた症例は,広範囲減圧開頭術を追加
施行し,術直後より低体温 - バルビツレート併用(H-B)療法を3-5日間導入した.小児・若年者を中心
に脳圧制御不能例に,積極的に内減圧術も追加した.【対象】07年 4 月から15年11月に当院へ搬送された
外傷性頭蓋内損傷439症例のうち手術治療を施行した158例.【結果】外来穿頭を97例に施行,46例には引
き続き減圧開頭,12例には内減圧も追加した.56例に H-B 療法を導入し集中治療を行った.退院時 GOS は,
GR:25,MD:28,SD:33,PVS:9,D:63となった.両側瞳孔異常を呈した76症例の34% が救命可能
であり,内減圧施行例の約半数は自力歩行可能なまで回復した.【結語】“All in One”型の治療方針は,
最重症頭部外傷症例の一部に転帰を改善させた.減圧開頭術+HB 療法にても治療困難な症例には,若年
者を中心に積極的内減圧術の追加施行も選択すべき治療手段の一つと考える.
― 169 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 3
日本神経外傷学会 Joint Session
外傷学30年 さらなる飛躍に向けて
外傷医と脳外科医の効率的連携を考える:Beyond the standard
救命救急センターにおける脳神経外傷の治療・管理
-プレホスピタルを含めた初期診療について-
東海大学脳神経外科1)
東海大学救命救急医学2)
本多ゆみえ1)2),反町 隆俊1),松前 光紀1),中川 儀英2),猪口 貞樹2)
頭部外傷のプレホスピタルでの治療の基本は,気道・呼吸・循環であり,これらを安定化させ頭蓋内の
二次的損傷が回避する.プレホスピタルの治療効果が著明なものに小児の頭部外傷がある.小児の頭蓋内
はタイトで ICH 等が生じると急速に ICP が亢進し症状が増悪するが,小児の脳神経は可塑性に富み,発
生した損傷部は将来的に回復する見込みがある.すなわち,迅速に専門家の下で適切な治療が開始できれ
ば,その機能予後は大いに期待できる.小児を含む重症頭部外傷例に対し,我々はプレホスピタルでマン
ニトールを使用しており,その適応基準について呈示する.
ER でバイタルが安定していれば,CT を施行し頭部外傷の評価と他臓器の活動性出血の有無の確認・
外傷性脳血管障害の否定をし,加えて外傷性てんかんの治療の適応を評価する.造影 CT を施行する際,
頸部外傷(骨傷や頚損)があればルチーンで大動脈弓から頭蓋内血管までの3DCTA を撮影し,解離や閉
塞の所見が確認されれば抗凝固療法を考慮し,不可能な場合は浸透圧製剤を使用する.
手術は,頭部外傷は凝固線溶系障害が生じ受傷直後は D-dimer 値が有意に高く線溶優位で受傷後約 3
時間がピークで,この間は穿頭術を選択,開頭術を選択せざるを得ない時は十分な新鮮凍結血漿や血小板
を準備する.
略 歴
1983 東海大学医学部入学
1988 ニューヨーク医科大学留学
1989 東海大学医学部卒業
1991 東海大学医学部付属病院脳神経外科学
1995 ヴァンダービルド大学
1996 東海大学医学部附属病院脳神経外科学
2004 東海大学医学部付属病院高度救命救急センター
2009 海上保安庁医務官
2011 東海大学医学部付属病院高度救命救急センター
現在に至る
― 170 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 3
日本神経外傷学会 Joint Session
独立型 3 次救急施設における重症頭部外傷への取り組み
︲脳神経外科医と外傷医との連携体制維持のために︲
千葉県救急医療センター脳神経外科1)
千葉県済生会習志野病院脳神経外科2)
宮田 昭宏1),木島 裕介1),松浦威一郎1),山内 利宏1),小林 繁樹1),中村 弘2)
【緒言】当施設は数少ない独立型 3 次救急施設として初療から多科合同診療を特徴としてきた.これま
での重症外傷に対する取り組みを紹介し,体制維持のためのポイントを考察する.【概要】 3 次救急患者
を中心に24時間体制で受け入れる目的で設立された.一般的 ER 型救命センターと異なり,初療から神経
系,外科系,内科系,麻酔・集中治療科が合同で直接診療を開始する.外傷治療は JATEC を踏襲し,夜
間当直体制も外傷リーダーが不在とならぬよう調整する.この診療体制は多発外傷に限らず,単独外傷の
初療においても実践される.維持期においては当該科と麻酔・集中治療医との連携が治療に大きく貢献し
ており, 1 日 3 回の全診療科カンファレンスにて情報を共有する.更に合同外傷カンファレンスでは初療
時の予測生存率(Ps)をもとに治療の改善点を議論し,初療対応における意識の統一を図っている.
【考察】
マンパワーが必要な外傷初期診療において,多科合同治療は迅速な専門的治療や,画像評価などの相互補
完の点で多くのメリットを有する.一方で各診療科の共通認識が極めて重要で,意識の統一に多くの時間
を要する.人的資源の非効率性などから,傷病者を限定した特定の施設において効率的運用が可能なシス
テムと思われる.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 3
日本神経外傷学会 Joint Session
重症頭部外傷を伴う多発外傷における脳神経外科医と外傷医とのチーム連携
~ Beyond the standard:スタンダードを超えたハイブリッド初療連携~
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座1)
りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター重症外傷センター2)
りんくう総合医療センター脳神経外科3)
渡部 広明1),比良 英司1),井戸口孝二2)
萩原 靖3),水島 靖明2),松岡 哲也2)
JATEC では primary survey における A・B・C の蘇生が D の評価と安定化より優先するとされるが,
それでは必ずしも救命できない症例が存在する.今回,C と D の致死的異常を同時に伴う症例に対する
治療戦略を提示し,新たな取り組みであるハイブリッド初療連携について紹介する.病院前診療では二次
性脳損傷を早期から防止し,現場から基地病院の脳神経外科医をコールする.病着後は,原則 JATEC に
基づく診療を行うが,D の異常以外の致死的異常を認める場合には,これらを並行して蘇生する.一例を
示す.症例は 6 歳の男児.交通外傷で急性硬膜下血腫と診断され転院となった.頭部 CT で左急性硬膜下
血腫と脳腫脹,両側前頭葉の脳挫傷拡大のため開頭血腫除去術を行った.開頭術中,FAST 陽性のショ
ック状態となり,開頭術と並行で開腹止血術を行った.肝裂傷であったが第60病日自宅退院となった.ま
た,近年では血管造影室でのハイブリッド初療治療を行っている.初療早期からの脳神経外科医の介入は
重要であり,これを外傷医がコーディネートする.重篤な C と D の異常は同時蘇生が重要であり,これ
を脳神経外科医と外傷医が共通認識の中で連携することが求められる.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
Joint Session 3
日本神経外傷学会 Joint Session
外傷医と脳外科医の連携に関する北総モデルの提案
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター1)
日本医科大学救急医学2)
阪本 太吾1)2),齋藤 伸行1)2),八木 貴典1)2),益子 一樹1)2),飯田 浩章1)2),本村 友一1)2),
中山 文彦1)2),岡田 一宏1)2),瀬尾 卓生1)2),安松比呂志1)2),杉中 宏司1)2),近田 祐介1)2),
久城 正紀1)2),服部 陽1)2),後藤 美咲1)2),柴田 あみ1)2),原 義明1)2),松本 尚1)2),
横堀 將司2), 横田 裕行2) 当院では,重症外傷診療に重点をおいた診療システムを確立させ,全国でもトップクラスの外傷センタ
ーとして機能している.重症外傷診療は,20名の救急科専従医(うち,救急科専門医15名,外傷専門医 4
名)と脳神経外科医11名(うち,脳神経外科専門医 9 名)が“効率的に連携”しながら行っている.
当院ではドクターヘリなどを駆使して現場から診療を開始し,早期から脳神経外科医へのコール,緊急
手術などの初期治療の準備を整えている.
重症頭部外傷診療においては,脳外科医による「手術」が最も重要な根治的治療になるが,同時に呼吸,
循環,凝固機能などの「蘇生」治療を救急医が担い,これらが診療の両輪として回ることが重要である.
集中治療室入室後は Systemic Intensive Care を救急医が,脳圧管理などの Brain Intensive Care は脳
外科医が主導し行っている.更に脳機能予後を考慮した高次脳機能障害の評価,リハビリテーション,就
労・復学に向けた支援も重要な課題である.
重症外傷診療には,豊富な経験と確立したシステム,十分なマンパワーが必要であるが,この様な脳外
科医との連携なしには成立し得ず,当院の体制は良いモデルであると考える.
― 173 ―
抄 録
教 育 講 演
5 月31日 14:30 第 3 会場(ソラシティ 1 F Room C)
座 長 久留米大学病院 坂本 照夫 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
教育講演
初歩から理解できる傾向スコアマッチング法
–The Journal of Trauma and Acute Care Surgery 誌
に採択された論文を題材として
亀田総合病院救命救急科
白石 淳
ランダム化比較試験は 2 群間の背景因子を調整して介入の効果のみを因果関係として示すことのできる
唯一の方法である.しかし,患者の状態の変化と複数の介入が初期診療の短時間で折り重なる外傷初期診
療では実現困難である.傾向スコアマッチング法とは,観察研究のデータから観測可能な背景因子を一致
させた 2 群を抽出することで,ランダム化試験を模する研究デザインである.Rubin の因果モデルに基づ
くと,本法は因果関係を示しうるモデルであり,後ろ向き研究での最良の手法の一つであるため,本法を
用いた論文が近年急増している.
本講演では,本法の理論的背景のみならず,本法を採った論文[ 1 ]を題材にして,具体的な解析手順を
統計ソフト R[ 2 ]とパッケージ’ Matching’[ 3 ]での操作に沿って解説することにより,学習者に本法を使
った論文の批判的吟味を行うことと,本法を用いて研究に着手することができることをゴールとする.
1) Inoue J, Shiraishi A, Yoshiyuki A, Haruta K, Matsui H, Otomo Y. Resuscitative endovascular balloon
occlusion of the aorta might be dangerous in patients with severe torso trauma:A propensity
score analysis. J Trauma Acute Care Surg. 2016;80:559-567.
2) R Core Team(2016). R:A language and environment for statistical computing. R Foundation for
Statistical Computing, Vienna, Austria. URL:https://www.R-project.org/.
3) J asjeet SS. Multivariate and Propensity Score Matching Software with Automated Balance
Optimization:The Matching Package for R. J Stat Softw. 2011;42:1-52.
略 歴
白石 淳(しらいし あつし)
1966/12
福岡県豊前市生まれ
1994/3
東京医科歯科大学医学部卒業
1994/4
東京医科歯科大学神経内科入局
1994/4-1995/3
東京医科歯科大学神経内科
1995/4-9
東京都立広尾病院循環器科
1995/10-1996/3
長野県リハビリテーションセンター鹿教湯(かけゆ)病院神経内科
1996/4-1998/3
取手協同病院神経内科
1998/4-1999/3
武蔵野赤十字病院神経内科
1999/4-2004/3
東京医科歯科大学大学院生
うち2001/2-2004/2
国立循環器病センター内科脳血管部門任意研修生
2004/3
医学博士
2004/4-2005/3
取手協同病院神経内科科長
2005/4-2006/1
東京医科歯科大学大学院脳神経病態学(神経内科)助教
― 177 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
2006/2-
東京医科歯科大学災害救急医学(救命救急センター)助教
2015/4-
東京医科歯科大学災害救急医学(救命救急センター)医学部内講師
2016/4-
亀田総合病院 救命救急科 部長
医学博士
日本内科学会認定医
日本神経学会指導医
日本救急医学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本救急医学会 学会主導多施設共同研究委員会 委員
日本救急医学会 救急統合データベース活用管理委員会 委員
日本外傷学会 トラウマレジストリー委員会 委員
所属学会
日本内科学会
日本救急医学会
日本集中治療医学会
日本外傷学会
日本集団災害医学会
日本病院前救急医学会
日本神経学会
日本脳卒中学会
日本神経感染症学会
― 178 ―
抄 録
委 員 会 企 画 1(外傷研修コース開発委員会)
「見えてきた JETEC コースの全貌」
5 月31日 9 :00 第 2 会場(ソラシティ 2 F WEST)
司 会 順天堂大学浦安病院救急診療科 田中 裕 先生
国立国際医療センター病院救命救急センター
木村 昭夫 先生
委 員 会 企 画 2(臓器損傷分類委員会)
「CT 画像を用いた新臓器損傷分類」
5 月31日 11:00 第 2 会場(ソラシティ 2 F WEST)
司 会 済生会横浜市東部病院救命救急センター
北野 光秀 先生
委 員 会 企 画 3(トラウマレジストリー検討委員会)
「JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題」
5 月31日 10:20 第 3 会場(Room C) 座 長 防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門
齋藤 大蔵 先生
亀田総合病院救命救急科
白石 淳 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 1
見えてきた JETEC コースの全貌
見えてきた JETEC コースの全貌
司 会:田中 裕 順天堂大学浦安病院救急診療科 木村 昭夫 国立国際医療研究センター病院救命救急センター
演 者:田中 裕 順天堂大学浦安病院救急診療科 「JETEC コースの概要について」
木村 昭夫 国立国際医療研究センター病院救命救急センター
「新専門医制度における JETEC コース」
渡部 広明 島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座
「JETEC 総論」
横堀 将司 日本医科大学付属病院高度救命救急センター
「外傷初療における頭部外傷治療戦略」
溝端 康光 大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター
「チームワークの構築」
藤田 尚 帝京大学医学部附属病院救命救急センター
「Decision making(多発外傷)」
外傷研修コース開発委員会では外傷診療の標準化と研修コースの開発について整備を行ってきた.外
傷初期診療の標準化を目的に「外傷初期診療ガイドライン JATEC」が2002年に上梓され,同時に
JATEC コースがスタートし,すでに12,000人がコースを受講した.一方,JATEC で指導する初期診療
を引き継ぎ,チームとして質の高い根本治療と患者管理が行えることを一般目標として,「外傷専門診療
ガイドライン JETEC」が2014年に刊行された.当初,JETEC のコース開催は考えていなかったが,多
くの会員からコース開催の希望が強く,昨年より JETEC コースの開催に向けて検討を重ねてきた.この
度,JETEC コースの概要を明らかにし,会員の皆様のご意見をいただきたいと考えている.
コースプログラムとして以下の構成からなる.最初に JETEC 総論としての座学を行う.次に頭部外傷
や胸腹部外傷,整形外傷,IVR 等の治療戦略を座学やハンズオン,ビデオなどを用いて講義する.さら
にチームワークの構築や,Decision making などをテーマとしてグループワークを行う.
本ワークショップでは,コース全体の概要や,新専門医制度における JETEC コースの位置付け,各
プログラムの概要について,演者の先生方に報告してもらう.是非,会員の皆様の活発なご討議を期待
する.
― 181 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 2
CT 画像を用いた新臓器損傷分類
CT 所見を加味した臓器損傷分類
日本外傷学会臓器損傷分類委員会
北野 光秀
【背景】日本外傷学会では,本邦で外傷を取り扱う医師が使用できる全国統一的な臓器損傷の分類の作成
をおこなっている.この学会分類は学会発足当初から“肉眼的所見に基づいた分類”という点に重点がお
かれ,ほぼ体幹部臓器損傷の分類は網羅されるに至った.一方,本邦の臓器損傷はそのほとんどが鈍的外
傷で,また治療の90%以上は非手術的治療が施行される.その際,治療方針の決定に大きな影響を与える
のが CT 画像で,臓器損傷分類も CT 画像に基づいておこなわれることが多い.以上のような背景から,
多くの医師から CT 画像に基づいた臓器損傷分類の必要性の指摘をうけ,学会として作成にふみきった.
【作成主旨】1 )新たな臓器損傷分類をつくるのではなく,あくまでも外傷学会分類2008を基礎とし,
Extravasation,仮性動脈瘤などの所見を追加したものとする.2 )可能な限り治療と関連のある分類に近
づける.3 )記載は,従来の分類と新たな CT 分類の 2 つを併記するのではなく,1 つの記載とする.4 )
腹腔内出血量に関する記載は追加しない
【CT 所見を加味した臓器損傷分類】対象臓器は,現時点で,実質臓器損傷のうち肝・脾で,今後,他臓
器に拡大してゆく.
記載方法
1 .外傷学会分類の前に,非手術のときは“CT”をいれる
CT がないとき(従来の記載)は,肉眼所見,手術所見となる
2 .非手術のとき,以下の所見のあるときは接尾語をつける
造影 CT で extravasation
実質内出血のとき,
“extra 1”
腹腔内出血のとき
“extra 2”
仮性動脈瘤
“仮性瘤+”
動静脈瘻
“動静脈瘻+”
3 .記載例:肝損傷 CT Ⅲb(AP)extra 1
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 2
CT 画像を用いた新臓器損傷分類
肝損傷における新臓器損傷分類
済生会横浜市東部病院
船曵 知弘,北野 光秀
日本外傷学会臓器損傷分類は,元来,肉眼的に損傷を評価して分類したものであるが,CT が発達した
現在,開腹せずに損傷を治療することが多くなってきた.これにより,損傷を肉眼的に評価できなくなっ
た.したがって損傷を正確に評価するためには,CT を正しく評価しなくてはならない.そして,CT で
の評価の際には血管外漏出像の有無が治療方針を決定する際に重要な所見の一つとなる.さらに血管外漏
出像が存在する際,肝被膜の損傷を伴っている場合は,出血が遊離腹腔内に広がり,より緊急性が高くな
る.肝被膜損傷を伴っていない場合は,出血がそれ以上広がらずに自然止血が得られる可能性が高い.損
傷分類の目的は,治療方針の決定に役立つことであり,予後の予測に役立つことである.今回,具体的に
症例を通して,損傷分類を提示し,治療方針に関しても例示できれば良いと考えている.今後の症例集積
により損傷の程度と予後との関連がより密接なものになるであろう.
― 183 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 2
CT 画像を用いた新臓器損傷分類
CT 所見を加味した脾損傷分類と治療法について
東邦大学大森病院救命救急センター
豊田幸樹年
【背景】日本外傷学会で脾損傷の分類はあるが損傷形態ごとの明確な治療法が確立されていない.最近は
脾摘後の重症感染症の問題から保存療法や TAE が選択されるようになってきている.【目的】当院の外
傷性脾損傷に対して,CT で造影剤の血管外漏出所見を加味した臓器損傷分類を用いて治療の選択に関連
するかを検討する.【対象】2009年 1 月から2015年12月までの外傷性脾損傷48症例【方法】診療記録調査
による後ろ向き検討.CT で造影剤の血管外漏出所見を加味した日本外傷学会分類(案)で治療との関連
を検討した.【結果】 1 .Ⅰa 1 例保存治療.Ⅰb 5 例で仮性瘤 + に対して IVR 1 例.Ⅱ型15例のうち脾臓
内血管外漏出を認めた症例(extra 1)は 6 例で IVR 6 例施行,脾臓外まで血管外漏出を認めた症例(extra
2)は 2 例で手術を選択した.Ⅲa 型 6 例では血管外漏出を認めた症例はなくすべて保存療法を選択.Ⅲb
型22例のうち血管外漏出を認めた症例は11例(extra 1:2 例,extra 2:9 例)で,保存 8 例,IVR 5 例,
手術 9 例.IVR による再出血,感染の合併は見られなかったが IVR →手術へ移行した症例が見られた.
Follow up CT で仮性瘤の形成された症例 5 例(Ⅲa 1 例,Ⅲb 4 例)は保存的治療を選択していた.【結語】
CT を加味した分類(案)は治療との関連性があったが,多臓器合併損傷では開腹となった症例が混在し
ていた.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 3
JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題
委員会企画「JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題」
防衛医科大学校
齋藤 大蔵
日本外傷データバンク(以下,JTDB)は,日本外傷学会と日本救急医学会が2003年10月に設立し,
2004年 1 月から正式な運用を開始した本邦の外傷患者登録制度(トラウマレジストリー)である.現在で
は日本外傷診療研究機構(以下,JTCR)が JTDB の管理・運営を行っているが,日本外傷学会トラウマ
レジストリー検討委員会が実質的な企画・活動を担当している.設立の趣旨と目的は,日本全国における
外傷治療の詳細な臨床データを収集し,診療の実態や標準的な治療成績を明らかにすることで外傷治療の
質的な評価を可能にし,本邦の診療の質向上に貢献することである.
JTDB では2008年10月に2004年から2007年までの全20,257症例の洗浄データを初めて参加登録施設
(JTCR 団 体 施 設 ) に 開 示 し,2009年度29,563例,2010年度42,336例,2011年度60,767例,2012年度
94,664例,2013年度123,462例,2014年度159,157例,2015年には2004年から2014年までの198,744症例を
開示した.現在では JTDB 登録症例は20万例を突破している.また,JTDB の洗浄データが開示されたこ
とで,多くの施設で JTDB データを利用した研究活動が行われ,学会発表や論文掲載がなされている.
日本外傷データバンクでは,Medline,Scopus,医学中央雑誌,CiNii,J-Stage,Science Linkes,Google
Scholar 等のデータベースを用いて検索し,業績をまとめている.この文献リストは,JTDB のホームペ
ージ(HP)https://www.jtcr-jatec.org/traumabank/dataroom/dataroom.htm から自由にダウンロー
ドできる.本委員会企画では JTDB の成果として,上述の業績の中から優れた論文を抽出し,その著者
にご依頼してご講演いただく.
一方,JTDB のデータベースとしての質に関しては,専門医委員会等からその改善を求められている.
特に正確な AIS コーディングはデータベースの根幹に係わるので,JTDB 設立当初から AIS コーディン
グ講習会を開催し,昨年度もセミナー等を実施した上でコーディングの要点とピットフォールに関する資
料を HP にアップロードした.今後も委員会として努力していきたい.JTDB は今後も参加登録施設に連
結不可能匿名化データを開示していくが,本委員会報告では各演者から要望をお聞きするとともに,会場
の先生方から忌憚のないご意見を伺い,外傷疫学の研究発展の基盤を整えていく所存である.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 3
JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題
In︲Hospital Trauma Mortality Has Decreased in Japan Possibly Due
to Trauma Education
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター1)
亀田総合病院救命救急センター2)
防衛医科大学外傷研究部門3)
白石 淳1)2),本藤 憲一1),藤江 聡1)
齋藤 大蔵3),大友 康裕1)
【目的】JATEC の普及期間の外傷診療成績の推移を明らかにする.【方法】日本外傷データバンク20042011の登録例を,JATEC の普及期間を鑑み,2004-6年(初期),2007-8年(移行期),2009-11年(普及期)
の 3 つに分割した.転帰は入院中死亡とした.TRISS 法による調整後に,移行期・普及期の初期コホー
トに対する相対死亡リスクを算出した.更に,重症度別,外科治療の有無による層別化解析と,初期診療
成績の変化を生存分析で解析した.【結果】全94,664例中,47,096例を抽出した.重症度調整後死亡リス
クは移行期(OR 0.77, P<.001)から普及期(OR 0.68, P<.001)にかけて経時的に改善した.層別化解
析で,予測生存率0.5以上の群が0.5未満より普及期の改善が大きく(OR 0.67 vs. 0.71),2 日以内の死亡
リスクは普及期で改善し(HR:0.58),3 日目以降(HR:0.74)より優れていた.胸腹部の外科手術非
施行例は施行例と比して普及期での改善が大きかった(OR:0.68 vs. 0.83).【結語】軽症例,初期診療
の外傷診療成績の経時的改善は,防ぎ得た外傷死の克服を掲げた JATEC の成功であろう.一方で重症例,
外科手術例の改善が乏しく,新たな外傷外科教育プログラムの開発が期待される.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 3
JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題
日本の成人重症外傷患者の搬送方法の違い
(ドクターヘリ搬送と救急車搬送)と予後の関係
筑波メディカルセンター病院1)
聖路加国際大学臨床疫学センター2)
防衛医科大学校3)
地域医療機能推進機構4)
阿部 智一1),高橋 理2),齋藤 大蔵3),徳田 安春4)
はじめに:我々の目的は日本の成人重症外傷患者の搬送方法の違い(ドクターヘリ搬送と救急車搬送)と
予後の関係を明らかにすることである.
方法:
2004-11年に JTDB に登録された24,293の患者(15歳以上,ISS15以上)を対象とした.主要転帰は生存
退院.暴露因子は搬送方法の違いである.
結果:2,090例がヘリ搬送,22,203例が救急車搬送であった.ヘリ搬送の546例(26.1%),救急車搬送の
5,765例(26.0%)が死亡退院であった.ヘリ搬送症例の方が ISS が高かった.年齢,性別,受傷機転,
外傷のタイプ,初療時バイタルサイン,ISS,院外治療を多変量ロジスティック回帰を用いて調整した結果,
ヘリ搬送の生存退院率は救急車搬送と比較し,odds ratio(OR)1.277(95% CI, 1.049-1.556)であった.
傾向スコアマッチを用いても(OR, 1.446;95% CI, 1.220-1.714),条件付きロジスティック回帰で院外
治療を調整しても同様の結果であった(OR, 1.230;95% CI, 1.017-1.488)
.
結語:日本の重症外傷患者において,
ヘリ搬送は様々な交絡因子を調整した結果,
予後改善と関連があった.
― 187 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 3
JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題
救急外来の外傷院内死亡を予測する改訂版外傷スコアリングシステム:
Glasgow Coma Scale, Age, and Systolic Blood Pressure score(GAP)
ハーバード大学1)
筑波メディカルセンター病院2)
地域医療機能推進機構3)
ハーバード大学公衆衛生大学院4)
琉球大学5)
近藤 豊1),阿部 智一2),徳田 安春3),
E Francis Cook4),久木田一朗5)
はじめに:我々は Mechanism,GCS,Age,Arterial Pressure(MGAP)スコアリングシステムを更に
簡単に改定した GAP スコアリングシステムが外傷死を予測する既存のスコアリングシステムより勝るか
どうかを検討した.
方法:2004-09年に JTDB に登録された35,732人の成人(≧15歳)を対象とした.うち,重要な変数に欠
損のない27,154(76%)人を解析した.我々は13,463人を抽出群として用い,ロジスティック回帰を用い
て GAP の点数を決定した.また,既存のスコアも抽出群にてキャリブレーションを行い,13,691人の確
証群で C 統計値と再分類表を用いて比較した.
結果:GAP は GCS の点数( 3 から15点)に年齢と SBP の点数を加えた総和で評価する.年齢>60歳:3
点,SBP>120 mmHg:6 点,60-120 mmHg:4 点である.GAP の C 統計値は長期死亡率では0.933,短
期は0.965であり,他のスコアと同等もしくはそれ以上に正確であった.再分類表ではほとんどにおいて
他のスコアよりも正しい方向にリスクを再分類した.
結語:我々が開発した GAP は既存のスコアリングシステムよりも正確である.
― 188 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 3
JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題
外傷患者の入院後死亡率に関わる基礎疾患の影響の研究論文
松戸市立病院救命救急センター1)
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター2)
庄古 知久1),白石 淳2),加地 正人2),大友 康裕2)
我々が2010年に発表した論文の要旨は以下の通りである.
<要旨>日本は急激に高齢化社会が進んでおり,これに伴い外傷患者に占める高齢者も増加している.外
傷死亡率は高齢者で高く,この原因は高齢者の肉体的な老化の問題だけでなく有している基礎疾患および
受傷前の健康状態(Pre-existing Medical Conditions:以下 PMCs)の問題もある.我々は日本の高齢者
の外傷死亡率と PMCs との関係について,日本外傷データバンクの2004—07年の登録データ20,257例を
用いて解析した.対象は16歳以上の入院患者で11,590例(57.2%).入院後死亡率と23項目の PMCs との
関係についてロジスティック回帰分析を実施.死亡率は全年齢で10.8%,75歳以上で17.7%.何らかの
PMCs が存在していた患者は41.0%.PMCs の項目として肝硬変,治療中の悪性腫瘍,慢性閉塞性肺疾患,
血液疾患,抗凝固剤の使用,痴呆/精神発達遅延の患者は死亡率が有意に増加する.PMC の存在が 1 つで
は死亡率は増加しないが,PMCs の存在が 2 つ以上あると死亡率が有意に増加する.これには50-74歳の
中年層のみが影響している . 日本の高齢者の外傷死亡率の増加には,PMCs の存在は影響していない.
― 189 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
委員会企画 3
JTDB を用いた外傷疫学研究の成果と課題
中等~重症意識障害のある鈍的外傷患者において,
全身 CT(WBCT)は死亡割合を低下させるのか?
国立国際医療研究センター救命救急センター
木村 昭夫,鈴木 貴明
2007〜2010年の日本外傷データバンク(JTDB)における来院時収縮期血圧75mmHg かつ GCS score
12以下の鈍的外傷例を用いて,WBCT を施行した群と施行していないで Standard mortality ratio(SMR)
を比較し,WBCT 施行群で低いこと示すことで,因果関係までは証明できないものの WBCT の有効性を
明らかにした.SMR は実死亡割合を予測死亡割合で除したもので,予測死亡割合は,1 から TRISS 法に
よる予測生存確率を引いて求めた.しかし TRISS 法は,1980年後半〜1990年前半の米国の外傷患者デー
タから作成されたものであり,今なお有効な重症度評価ではあるが,現在の日本の状況を反映していると
は言いがたくなってきている.そこで我々は最近の JTDB から我が国に合うように修正した生存予測式
(JTRISS)作成した.JTRISS による予測生存確率から同様に SMR を求め,前述の両群を比較したところ,
やはり WBCT 施行群で低かった.TRISS 法に含まれない交絡因子としては,重症頭部外傷の割合を考慮
した.WBCT は生死に関与する独立した因子であることを明らかにしたが,他の交絡因子がないという
保証はない.
― 190 ―
抄 録
動 画 セ ッ シ ョ ン
5 月31日 14:00 第 1 会場(ソラシティ2F EAST)
座 長 八戸市立市民病院救命救急センター 今 明秀 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
MS1-1
心刺創(右室前壁全層性損傷)の緊急手術―Clamshell Incision でのアプローチ―
独立行政法人国立病院機
構災害医療センター救命
救急センター
岡田 一郎
霧生 信明
米山 久詞
井上 和茂
小井土雄一
加藤 宏
MS1-2
ウェアラブルカメラを用いた外傷手術シュミレーション
さいたま赤十字病院救命
救急センター・救急医学
科
佐藤 啓太
田口 茂正
早川 桂
勅使河原勝伸
五木田昌士
清田 和也
MS1-3
鋭的心損傷は早急な手術が予後を決定する.適切な初期診療,緊急手術により救命した心
刺創の 1 例を供覧する.【症例】49歳男性【現病歴】夫婦喧嘩で包丁が胸に刺さり救急要請.
救急隊現着時包丁抜去後で,ショックであった.【現症】胸部正中から約10cm 左外側,
第 6 肋間に3cm 大の刺創を認め,Primary Survey で FAST 陽性(心嚢液貯留).冷感湿
潤有り,橈骨動脈触知微弱【経過】心刺創・心タンポナーデによるショック.直ちに気管
挿管,救急初療室にて緊急開胸術の方針とした.【手術所見】刺創は左胸腔内へも達して
いる可能性が有り,clamshell incision にて開胸.視診上,左胸腔内に損傷を疑わせる出血
は認めず.心外膜は緊満し,切開すると凝血塊が噴出し,血圧上昇.心タンポナーデは一
気に解除せず,徐々に心外膜を切開し心嚢内を解放.右室前壁に1cm 大の全層性損傷を
認め,心拍動とともに噴出性の出血を認めた.左手示指で出血をコントロールしながら,
3-0モノフィラメント糸で刺創部を水平マットレス縫合し止血した.その他の損傷がない
ことを確認し,ドレーン留置し閉胸した.【術後経過】第 3 病日人工呼吸器離脱.第 4 病
日食事開始.第15病日独歩退院.
近年,事故予防対策に伴う外傷重症度の低下,Interventional Radiology の技術進歩に伴
う non-operative management の増加などにより,外傷症例手術が減少している.外傷手
術の特徴として,< 1>定時手術に比べ圧倒的に症例数が少ない< 2>スピードが求められ
る手技< 3>術前診断が乏しい< 4>外傷手術に特有の手技の存在,などが挙げられる.
こうした特徴から,術前トレーニングやシュミレーション教育が非常に難しいと考える.
外傷外科を志す若手医師のための off-the job training が国内外で盛んに開催されているの
もこうした背景が一つの要因であると思われる.ウェアラブルカメラは小型カメラ本体を
体に着用することでハンズフリーを実現し,つり下げ式の術野カメラでは撮影できない角
度からの録画が可能である.術者目線での映像と音声の記録ができるため,手技の検討や,
他人の手術の追体験を通して効率よく外傷手術を学ぶ事ができる.活用方法の工夫とその
効果,定点カメラとの比較について,アンケート結果とともに,ウェアラブルカメラを用
いた外傷手術シュミレーションの方法について考察を行なった.
腹部外傷に対する Definitive surgery
埼玉医科大学総合医療セ
ンター高度救命救急セン
ター
松田 真輝
澤野 誠
大河原健人
佐川 幸司
【はじめに】当救命センターは外傷症例の high volume 施設であり,収容患者の約半数が
外傷症例であり,そのうち ISS16以上の症例が半分を占める.体幹部外傷については,救
命センター専従の外科医 4 名によって積極的に手術を行っており,一期的な Definitive
surgery を基本としている.【手術手技】肝損傷に対しては肝切除・肝縫合を基本として
いる.肝離断はリガシュアーを使用し,crush & sealing を one device のみで行い時間短
縮を図っている.積極的にグリソン一括処理を行っており,離断面からの出血については
ソフト凝固で対応している.肝縫合に使用するプレジェットはニューニットを使用し, 1
号バイクリルの水平マットレス縫合で強力な止血を得られる.IVC 損傷合併の際は,全
肝血流遮下で IVC repair を行っている.脾損傷については極力温存を目指しており,脾
縫合,脾部分切除に留め,oozing に対してはソフト凝固で十分対処可能である.膵体尾
部損傷に対しての膵離断は自動縫合器を用い手術時間短縮を図っている.また腸管損傷の
みの場合は積極的に腹腔鏡手術を導入している.これら手術手技をビデオで供覧し紹介す
る.
― 193 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
MS1-4
頸部血管中枢側への経胸腔的アプローチ
日本医科大学千葉北総病
院救命救急センター
松本 尚
原 義明
八木 貴典
益子 一樹
齋藤 伸行
飯田 浩章
本村 友一
中山 文彦
岡田 一宏
安松比呂志
阪本 太吾
黒柳 美里
瀬尾 卓生
近田 祐介
久城 正紀
服部 陽
五味 基央
太田黒崇伸
市川 頼子
【背景】頸部刺創による血管損傷はしばしば致死的であり,迅速な止血の可否が生死を分
ける.特に,鎖骨裏面の中枢側血管損傷は損傷部位への到達さえままならならず,出血制
御までには多くの時間を割かざるを得ない.【症例】27歳女性.包丁で左頸部,左前胸部,
腹 部, 腰 部 を 刺 さ れ 受 傷. 来 院 時, 血 圧58/38 mmHg, 脈 拍146/分, 呼 吸 数40/分,
GCS15,腸管脱出(+).気管挿管後,頸部の創より噴出性の出血を認め,切迫心停止となっ
たため蘇生的開胸(resuscitative thoracotomy: RT)+ 大動脈遮断を施行した.【手術】
出血部位方向を用指的に圧迫しつつ中枢側深部にアプローチを試みたが,損傷部位の同定
困難のため,胸腔内からの観察と血管確保を目的に clamshell thoracotomy(CT)とした.
左総頸動脈,左鎖骨下動脈にテーピングし血管を確保後,頸部より止血操作を行った.【結
論】血管損傷が鎖骨裏面に位置する場合,損傷部位への到達は容易ではない.CT は上縦
隔の観察や血管処理のための視野展開が良く,本例のような場合には有用であると考えら
れた.RT が先行していない場合に CT を実施するのは過剰な侵襲を与えることになりか
ねないが,頸部の中枢側血管損傷に対しては,鎖骨切除による術野の展開を含め,複数の
option を持つことが外傷外科医に求められる.
― 194 ―
抄 録
優 秀 演 題 セ ッ シ ョ ン 1
5 月30日 9 :00 第 1 + 第 2 会場(ソラシティホール) 座 長 堺市立総合医療センター 横田順一朗 先生
日本医科大学大学院医学研究科外科系救急医学分野
横田 裕行 先生
優 秀 演 題 セ ッ シ ョ ン 2
5 月30日 10:00 第 1 + 第 2 会場(ソラシティホール) 座 長 帝京大学医学部救急医学講座 坂本 哲也 先生
国立国際医療センター病院救命救急センター
木村 昭夫 先生
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
OE1-1
外傷性脳損傷患者の来院時カリウム値による Targeted Temperature Management と転帰
香川大学医学部附属病院
救命救急センター1),徳
山中央病院救急科2),山
口大学医学部附属病院先
進救急医療センター3),
東京慈恵医科大学附属病
院救急部4),山口県立総
合医療センター5)
一二三 亨1)
河北 賢哉1)
黒田 泰弘1)
山下 進2)
小田 泰崇3)
土肥 謙二4)
前川 剛志5)
OE1-2
ミトコンドリア標的抗酸化ペプチド(SS31)は熱傷後インスリン抵抗性を改善する
Department of Surgey,
Massachusetts General
H o s p i t a l1), S h r i n e r s
Hospitals for Children,
Boston2),Harvard Medical School3), 東 海 大 学
医学部救命救急医学4)
山際 武志1)2)3)
Yu Yong-Ming1)2)3)
Fischman Alan2)
猪口 貞樹4)
Tompkins Ronald1)3)
OE1-3
背景:B-HYPO study では軽度低体温療法(32-24℃)と体温管理療法(35.5-37.0℃)
群の 2 群間で転帰に差を認めなかった.頭部外傷患者における血清カリウム値と転帰との
関連が報告されているので,来院時のカリウム値によって Targeted Temperature Management の設定温度を決定できる可能性があると仮定した.方法:今回の post hoc BHYPO study では来院時のカリウム値で低カリウム群(<3.5mEq/L)と正常カリウム群
(3.5 to 5 mEq/L)に分け,それぞれで軽度低体温療法と体温管理療法群間で基礎背景,
治療の詳細,6 か月後の死亡率,および神経学的予後を比較した.結果:130症例を解析
した.正常カリウム群では,軽度低体温療法(N=34)と体温管理療法群(N=23)間で
背景因子に有意差はなく,神経学的予後は体温管理療法群が有意に改善し(68.2%vs.
35.3%,p=0.03),相対的に死亡率を改善した(21.7%vs. 35.3%,P=0.38).一方,低
カリウム群では,軽度低体温療法(N=50)と体温管理療法群(N=23)間,軽度低体温
療法が相対的に神経学的予後を改善したが(52.0% vs 39.1%,P=0.33),有意とはなら
なかった.結論:来院時,正常カリウム群では体温管理療法が軽度低体温療法よりも選択
されうる.
【目的】ミトコンドリア由来の活性酸素種(ROS)は熱傷後インスリン抵抗性の主原因と
考えられている.本研究の目的はミトコンドリア標的抗酸化ペプチド(SS-31)のインス
リン抵抗性に対する効果を評価することである.【方法】C57BL6マウスに30%TBSA の
3 度熱傷(B群),sham burn(S群)を体幹に作成し,pair feeding とし,生理食塩水(NS),
又は SS31( 5 mg/kg/day)の腹腔内投与を行った.熱傷 1 日後に腓腹筋における DHE
染色,MDA,GPx activity にて ROS level を評価した.熱傷 3 日後に hyperinsulinemic
isoglycemic clamp(HIC)及び immunoblotting を行い,全身のインスリン抵抗性,末梢
組織における glucose disposal rate(Rd),腓腹筋におけるインスリンシグナルを評価した.
【結果】B+SS31群は B+NS 群と比較し ROS level(p<0.05),全身インスリン抵抗性(AUC
glucose infusion rate 3481±698 vs 5987±521mg/kg/min, p<0.05),Rd(35.0±8.6 vs
61.4±3.9mg/kg/min, p<0.05)の優位な改善を認めた.また,B+SS31群は B+NS 群と
比べ,骨格筋における IRS-1 Tyr612のリン酸化を68.0%,Akt Ser473を44.3%上昇させ
た(p<0.05).【結語】SS-31はミトコンドリア由来 ROS を除去し,骨格筋における熱傷
後インスリン抵抗性を改善する.
非骨傷性頚髄損傷に対する早期除圧術の検討
埼玉医大総合医療セン
ター高度救命救急セン
ター
大饗 和憲
井口 浩一
福島 憲治
森井 北斗
八幡 直志
乾 貴博
吉田 理
米本 直史
芝山 浩樹
石塚 京子
上村 直子
【目的】非骨傷性頚髄損傷に対する早期除圧術の有効性を明らかにすること.
【対象・方法】
対象は除圧術を施行した非骨傷性頚髄損傷42例で,平均年齢63歳,ASIA A 5 例,B 7 例,
C 30例であった.これらに対し,除圧までの時間と麻痺の改善度を後ろ向きに調査した.
【結果】ASIA A 5 例中,ASIA 2 段階以上改善したのは 3 例(60%)であった.手術まで
の時間は 3 ,
5 ,24時間で,改善の見られなかった 2 例はそれぞれ 4 ,7 時間であった.
ASIA B 7 例中,改善例は 6 例(86%)で,除圧までの時間は中央値11時間であった.改
善のなかった 1 例は148時間を要していた.ASIA C 30例中23例(77%)で改善が見られ,
除圧までの時間は中央値22時間であった.改善のなかった 7 例は中央値25時間であった.
また,8 時間以内に除圧が行えた 9 例では全例改善が見られており,8 時間以上要した21
例では14例(67%)しか改善が見られなかった.【考察】当院では ASIA ABC の非骨傷
性頚髄損傷に対し,早期除圧術を基本としている.本調査では一般的に報告されている保
存療法での麻痺改善度に比して格段に良好な結果が得られた.特に 8 時間以内での除圧で
良好な成績が得られると考えている.
― 197 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
OE1-4
外傷センターを中心とした広域外傷システム構築の効果
日本医科大学千葉北総病
院救命救急センター
益子 一樹
安松比呂志
飯田 浩章
本村 友一
斎藤 伸行
八木 貴典
原 義明
松本 尚
OE2-1
鈍的外傷における初期診療時血中 IL-6濃度と重症度・転帰の関連
大阪府泉州救命救急セン
ター
中田 孝明
谷口 昌志
松岡 哲也
水島 靖明
OE2-2
【はじめに】我々はこれまで,ドクターヘリ(DH),ラピッドレスポンスカー(RC)が描
く医療圏を対象に,県,MC 協議会の枠を超えた広域外傷システム構築を目指してきた.
具体的には,DH,RC を中心としたトラウマバイパスシステムの構築,JPTEC,MCLS,
事例検討会などへの積極的参加と運営,当センター対応事案に対する個別検証などを行っ
ている.【検討】今回,隣県に属する A 消防に対し,我々が介入を強化した H22〜25の 4
年間の搬送事例をもとに,その効果の検証を行った.A 消防は対象人口約16万,管内に
救命救急センターを持たず,当院とは直線距離で約50km 離れている.【結果】 1 )総搬
送数は5780例から6397例に増加.2 )重症外因傷病者は119例から128例と大きな変化なし.
3 )外傷センター収容数は 3 例から42例と激増.4 )4 年間に収容した99例中,「防ぎえた
外傷死」を認めず,7 例の予測外生存例を得た.5 )予測外生存例のうち 3 例は DH 運航
時間外であった.6 )近隣 2 次病院への搬送数は経年的に減少,特に夜間の重症収容数が
減少した.【まとめ】大都市圏以外においては,広域に多角的な外傷システムの整備を行
うことで,外傷診療成績を向上できる可能性がある.
【目的】鈍的外傷による全身性免疫応答は臨床経過に重要な役割を果たす.全身性免疫応
答の指標として IL-6血中濃度を初期診療時に迅速測定し,重症度・転帰の予測に有用な
指標となり得るか検証した.【対象・方法】鈍的外傷患者208症例.初期診療時に IL-6血
中濃度を迅速測定し,転帰(28日死亡率/長期[ 7 日以上]ICU 滞在)の予測能を ROC
curve 解析し,重症度(AIS/ISS/TRISS)との相関を解析した.【結果】初期診療時 IL-6
血中濃度は ICU 長期滞在(P<0.0001, AUC 0.75, 95%CI 0.66-0.84),
28日死亡(P=0.021,
AUC 0.76, 95%CI 0.49-1.02)に関して高い予測能を有した.IL-6血中濃度は重症度スコ
ア(ISS/TRISS)と有意に相関し(相関係数 0.459[ISS],-0.453[TRISS]),多重線形
回帰解析では胸部,腹部,四肢,体表 AIS と有意に相関した.標準化相関係数は胸部/腹
部 AIS が四肢/体表 AIS に比して高く,胸部/腹部外傷は IL-6血中濃度に与える影響が大
きいことが明らかとなった.【結語】初期診療時 IL-6血中濃度は各種重症度スコアと相関
し,高い転帰予測能を持つ指標であることが明らかとなった.初期診療開始時に IL-6血
中濃度を迅速測定することは外傷の初期評価を補助する fast screening tool となる可能性
が示唆された.
病院前外傷診療における EFAST(extended FAST)は有効である
公立豊岡病院但馬救命救
急センター
前山 博輝
番匠谷友紀
岡 和幸
星野あつみ
門馬 秀介 蕪木 友則
小林 誠人
【背景】外傷性気胸は緊張性気胸へ進展する可能性もあり速やかな診断が必要とされるが,
病院前診療においてはレントゲン,CT 撮影が行えず診断が困難である.【目的】病院前
診療時の外傷性気胸診断に対する EFAST(Extended FAST)の有用性を証明する.【対
象・方法】2013年10月から2015年12月の期間に病院前診療において EFAST を施行した外
傷症例を対象に患者背景,EFAST の所見,気胸の有無等を後ろ向きに検討した.【結果】
対象症例は215例,平均年齢55.9±23.0,男女比(男159:女56),受傷機転(交通外傷118
例,墜転落75例,スポーツ外傷 6 例,労災 3 例,その他12例)で,21症例が外傷性気胸と
確定診断された.21症例中12例が EFAST で病院前診断され 1 例が偽陽性であった.
EFAST 感度0.75(95%CI 0.428-0.945)特異度0.995(95%CI 0.97-1.00)陽性的中率0.90
(95%CI 0.56-0.99)陰性的中率0.985(95%CI 0.958-0.99)であった.【考察】過去の多
くの報告と同様に高い感度特異度を認めた .EFAST 施行部位に気胸がない場合診断でき
ない,皮下気腫等の存在により制限を受ける事もあるが,病院前診療において身体所見に
加え EFAST を用いる事で気胸の診断が容易かつ確実になることが示唆された.【結語】
病院前診療における EFAST は有用である.
― 198 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
OE2-3
病院前診療における乳酸値測定の意義
りんくう総合医療セン
ター大阪府泉州救命救急
センター
福間 博
成田麻衣子
中田 孝明
中尾 彰太
井戸口孝二
水島 靖明
松岡 哲也
OE2-4
【背景】血中乳酸値は外傷患者において出血による循環不全の指標となる.病院前診療で
の血中乳酸値は治療を要する出血をより早期に予測できると仮説をたてた.【方法】対象
はドクターカーで当院へ搬送され,病院前で血中乳酸値を測定した外傷患者219例(けい
れん・ドクターカー到着前心停止症例は除外)
.来院24時間以内の輸血または止血術施行
を「治療を要する出血」と定義し,血中乳酸値・血圧,脈拍の治療を要する出血の予測能
を ROC curve 解析した.【結果】治療を要する出血患者は44例(20%)で,予測能に関す
る AUC は病院前乳酸値(0.79, 95%CI, 0.69-0.84)が最も高く,収縮期血圧(0.67, 95%
CI 0.57-0.76),shock index(0.64, 95%CI 0.53-0.73)脈拍(0.56, 95%CI 0.45-0.66)
と続いた.また病院到着時乳酸値の AUC(0.76, 95%CI 0.69-0.84)は病院前と同程度で
あった.治療を要する出血患者44例の接触から病院到着までの時間は23.6±8.7分であり,
治療を要する出血の予測は短縮されることが示唆された.【考察】治療を要する出血に関
して,病院前血中乳酸値は血圧・脈拍より高い診断能を示した.また病院前・病着時血中
乳酸値は同等の診断能を有し,より早く治療が必要な出血の存在を予測しえた.
NOM を施行した肝損傷に伴う胆道系損傷への対応 〜 DIC-CT による早期診断の有用性〜
りんくう総合医療セン
ター大阪府泉州救命救急
センター1),りんくう総
合医療センター2)
中尾 彰太1)
井戸口孝二1)
福間 博1)
比良 英司1)
成田麻衣子1)
石井 健太1)
水島 靖明1)
松岡 哲也2)
【背景】当院では NOM を施行した肝損傷に対し,DIC-CT を用いた胆道系損傷のスクリー
ニング,および major leak 例に対する積極的なドレナージを試みている.【目的】肝損傷
NOM 症例に伴う胆道系損傷の診断における DIC-CT の有用性について検討する.
【対象
と方法】当院で NOM を施行した肝損傷のうち,胆道系損傷の評価に DIC-CT を用いた
19例を対象に,診断内容や治療経過について検証した.DIC-CT の診断は,胆管からの胆
汁漏出や遊離腹腔内への胆汁漏出,肝損傷実質内への大量の胆汁漏出が描出された場合を
major leak とした.
【結果】胆汁漏無しもしくは minor leak と診断した14例は保存的加療
を施行し,全例治療不要で軽快退院した.major leak の診断で治療介入した 5 例(CT 群)
については,同時期に DIC-CT を用いずに胆道系損傷を診断し治療介入した 5 例(non-CT
群)と比較すると,来院から治療介入までの日数や治療期間は短く,胆道系感染症合併例
は少なかった(CT 群 vs. non-CT 群:介入日; 6 日 vs. 12日,期間;37日 vs. 58日,感染;
1 例 vs. 4 例).【考察】肝損傷 NOM 症例に対し,DIC-CT を用いて胆道系損傷をスクリー
ニングすることは,治療の必要性判断や早期介入が可能となる点で有用である.
― 199 ―
抄 録
一 般 演 題
(口 演)
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O1-1
防ぎ得た外傷死にピアレビューの代わりとなる新たな基準の検討
徳島県立中央病院外科1),
徳島県立三好病院2)
森 勇人1)
大久保祐希1)
大村 健史1)
三村 誠二1)
奥村 澄枝2)
O1-2
亜急性期に血腫が増大する急性硬膜下血腫症例の要因分析
飯塚病院救急部1),飯塚
病院脳神経外科2)
山田 哲久1)
名取 良弘2)
今本 尚之2)
O1-3
中頭病院救急科
間山 泰晃
粟国 克己
【背景と目的】本邦の防ぎ得た外傷死(以下 PTD)の割合は,予測外死亡数から「GCS 5
以下の急性硬膜下血腫」「80歳以上」を除外した修正予測外死亡数を用いて計算されたも
のである(以下 rPTD).正式には,症例毎に診療経過を複数の医師によって審査するピ
アレビュー(以下 PR)を行う事が理想であるが,膨大な手間が必要という問題がある.
今回,我々は PR で算出された PTD(以下 pPTD)の代わりとなりうる新たな修正予測
外死亡の基準(以下 TC)を作成し,そこから導かれた PTD(以下 nPTD)を検討した.
【方法】2012〜14年度の予測外死亡例に当院の外傷診療に携わる複数医師で PR を行い,
pPTD を判定した.そこから複数の因子を検討し,TC での PTD 除外例を次のように決
定した.「85歳以上」「AIS 5 頭部外傷 +GCS 8 以下」「AIS 5 頭部外傷 +75歳以上」「AIS5
頭部外傷 + 抗血栓薬内服中 or 既知の凝固障害疾患」
「Child-PughC 肝硬変」
「維持透析中」
「救急外来での DNAR」とした.【結果】予測外死亡数33人,rPTD 17人,pPTD 7 人,
nPTD 7 人であった.ただし,pPTD と nPTD の症例間では 2 例相違があった.【考察・
結語】PTD の判定に TC は有用と考えるが,臨床現場での予後判定として使うものでは
ない.判定症例数を増やして,今後も TC の妥当性を検討したい.
【背景】急性硬膜下血腫には保存的に加療する症例もある.その中で亜急性期に血腫が増
大する症例が存在しこれまでも報告されている.当院で経験した亜急性期に血腫が増大し
た急性硬膜下血腫症例の要因を分析をした.【対象・方法】2003年〜2014年に当院脳神経
外科で入院加療した急性硬膜下血腫で急性期に手術を行った症例および積極的治療を行わ
なかった症例を除外,脳挫傷や急性硬膜外血腫を合併していない262症例を対象.亜急性
期に血腫が増大した症例としなかった症例に分けて年齢,性別,抗血栓療法の有無,血小
板数,凝固能,受傷機転,受傷から来院までの時間,来院時意識レベル,元々の ADL,
既往歴(高血圧症,糖尿病,肝疾患,腎機能,心疾患,脳卒中),血腫幅,正中線偏位,
血腫吸収値を比較した.【結果】亜急性期に血腫増大43例,血腫増大なし219例.統計学的
に有意差がみられたのは,年齢,受傷から来院までの時間,血腫幅,正中線の偏位であっ
た.【考察・結語】高齢者で脳萎縮の場合ある程度の血腫が存在しても症状が軽微で受傷
から受診までに時間を要し治療も保存的に加療すると考えられる.ある程度の血腫が存在
するが亜急性期まで保存的加療可能であった症例が亜急性期に血種が増大すると考えられ
た.
頭部体表外傷で出血性ショックとなった 5 例
頭部体表外傷からの出血性ショックは比較的まれであり,今回当院で認めた 5 例に対して
発生に関わる要因,治療経過などを報告する.2010年 1 月から2016年 1 月に当院救急搬送
された頭部体表外傷からの出血性ショックを認めた 5 例を対象とした.5 例中 4 例は男性
で年齢は38歳から67歳であった.受傷機転は 2 例が交通外傷,2 例が転倒,1 例は不明であっ
た.全例でアルコール摂取を認めた.救急隊接触時 3 例でショックを認めた.2 例では正
常血圧であったが,1 例は搬送中に,1 例は処置中に血圧低下を認めた.圧迫以外の止血
開始までに来院後10から60分の経過を要した.交通外傷の 2 例,原因不明であった 1 例で
特に長い経過であった.処置時間は最大105分を要した.処置の遅れの原因としては他の
部位の出血源検索が最も大きな要因と考えられた.頭部体表外傷は出血性ショックをきた
しうる外傷であり,早期の止血介入が必要であり,全身検索を行う場合は確実な圧迫止血
を行う必要があると考えた.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O1-4
地方救命救急センターにおける重症外傷症例の入院診療体制の検討
飯塚病院集中治療部1),
飯塚病院救命救急セン
ター2)
安達 普至1)
奥山 稔朗2)
O1-5
当院における過去 6 年間のジェットスキー,バナナボートによる外傷の検討
亀田総合病院救命救急セ
ンター
今本 俊郎
不動寺純明
鈴木 利直
近藤 夏樹
北井 勇也
中山恵美子
大橋 正樹
伊藤 憲佐
二宮 宣文
葛西 猛
O1-6
当院は筑豊地域唯一の救命救急センターで,年間救急車搬入台数は約8000台,うち約1400
症例が外傷患者である.2015年 3 月までは外傷患者の入院担当科は主に救急部であったが,
2015年 4 月からは救急部が ER 専従となったため外傷病態の主たる科が入院担当科となっ
て診療を行っている.
【目的】重症外傷患者の入院診療において,入院担当科のシステム
変更が予後に影響を及ぼすか検討すること.【対象】救急部が主で入院担当科となってい
た2014年 4 月〜 9 月に当院で入院加療した重症外傷患者(E 群)と,救急部以外の主たる
病態の科が入院担当科となった2015年 4 月〜 9 月に入院加療した重症外傷患者(S 群)の
2 群を診療録やデータベースを使って遡及的に比較検討した.主要評価項目は院内死亡率
で,副次評価項目は病院入院期間および ICU 在室期間とした.
【結果】E 群69例,S 群72例.
ISS,ICU 在室期間,病院入院期間の中央値はそれぞれ E 群20:S 群20,E 群 4 日:S 群
5 日(p=0.551),E 群15日:S 群14日(p=0.292)で 2 群間に差はなかった.院内死亡
者数も E 群13名(19%):S 群14名(19%)と 2 群間に差はなかった(p=1.000).【結語】
重症外傷患者の入院診療において,入院担当科は転帰に影響を及ぼさなかった.今後更な
る研究が必要である.
【目的】本邦のマリンスポーツにおける外傷の疫学は海上保安庁の報告のみしかない.症
例報告は散見されるものの,後方視的に検討した研究は少ないため,ここに報告する【方
法】対象は当院の救急外来を2010〜2015年の 7 〜 9 月までに受診された外傷患者のうち,
マリンスポーツ関連の受傷を診療記録より抽出.抽出した症例に対して,年齢や性別,外
傷部位,受傷機転について検討を行った.【結果】対象症例は 8 例.平均年齢は30.5歳(中
央値)で男性が62.5%( 5 人)であった.受傷機転は波に煽られた結果,ジェットスキー
自体に接触したのが 3 例.ジェットスキーから投げ出された結果の受傷が 3 例.牽引され
るゴムボートからの転落が 1 例.バナナボートで他の搭乗員との接触が 1 例であった.外
傷箇所は,骨盤骨折が 2 例,顔面骨骨折が 2 例,手指切断が 1 例,脊椎外傷が 1 例,長管
骨骨折が 1 例,腹腔内臓器損傷が 1 例であった.【結語】ジェットスキーにおける外傷は
乗物自体との接触による顔面外傷が多く,転落すると骨盤骨折を主とする下半身への外傷
が多い傾向にある.バナナボートによる受傷は頭部外傷や脊椎外傷が多い傾向にある.受
傷機転と外傷箇所から予防策を講じる必要があると考える.
四肢・骨盤骨折の症例登録制度 -RODEO study について -
横浜労災病院運動器セン
ター1),横浜労災病院運
動器外傷センター2),横
浜労災病院整形外科3),
関東労災病院整形外科4),
カリフォルニア大学サン
フランシスコ校整形外傷
研究所5)
三上 容司1)
山本 真一2)
中元 秀樹3)
岡崎 裕司4)
石井 桂輔5)
日本骨折治療学会の主導で2015年より四肢長管骨開放骨折の登録事業(DOTJ:Database
of Orthopaedic Trauma by JSFR)が開始された.われわれは,この DOTJ の登録項目を
基盤にして,対象を開放骨折も含む四肢長管骨骨折,骨盤骨折に拡大,患者立脚型アウト
カム,リハビリテーション,医療経済,社会復帰に関する登録項目を追加した登録票を作
成した.この登録票をもちいて,労災病院を中心とする10病院で新たな運動器外傷登録事
業を開始し,これを RODEO(Rosai Orthopaedic trauma Database for Exploratory Outcome)study と名付けた.RODEO study では DOTJ と同様,携帯端末を用いて web 上
で登録可能な患者登録システムを構築し,DOTJ との互換性を持たせた.RODEO study
における症例登録が,2015年12月より開始された.データベースとして運動器外傷の診療
に関する基本情報だけでなく,リハビリテーション,医療経済,アウトカム,社会復帰の
項目も含んでおり,運動器外傷診療の標準化と質向上への寄与が期待される.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O2-1
兵庫県南部における救命センター増加と外傷症例集約化の現状
兵庫県災害医療センター
高度救命救急センター1),
兵庫医科大学救急災害医
学講座2),兵庫県立西宮
病院救命救急センター3),
神戸市立医療センター中
央市民病院救命救急セン
ター4),兵庫県立加古川
医療センター救命救急セ
ンター5)
松山 重成1)
井上 明彦1)
中山 晴輝1)
橘高 弘忠1)
石原 諭1)
中山 伸一1)
山田 太平2)
鵜飼 勲3)
蛯名 正智4)
板垣 友亮5)
外傷診療の質の向上には症例数の確保が求められ,ISS≧15の重症例が日本外傷学会によ
る外傷センター整備に関する提言では150例/年,アメリカでのレベル 1 外傷センターの要
件では240例/年必要とされている.しかし交通事故による死者が年々減少の一途をたどっ
ていることが示すように重症外傷症例は減少傾向にあるため,各施設は症例の集約化によ
り外傷センターとしての必要症例数の確保を目指している.その一方で近年,救命センター
の整備が進み,施設数が増加している現状がある.兵庫県災害医療センターは2005年に設
立され,兵庫県唯一の高度救命センターとして域外も含めた重症外傷に対応してきた.し
かし県下の救命センターは当センター設立時の 5 施設から現在 9 施設に増加し,当セン
ターにおける ISS≧15の重症症例数は2014年の253例をピークに2015年は216例に減じた.
施設数の増加に加えて,さらに最近は近隣他施設もドクターカーやドクターヘリによる病
院前診療を開始している.兵庫県南部における救命センターの増加と外傷症例の集約化の
現状を近隣他施設の症例数の推移も併せて報告・検討する.
O2-2
演題取り下げ
O2-3
田舎で生じた重症外傷患者は救命できているか?〜地方におけるトラウマバイパスの意味〜
熊本赤十字病院総合救命
救急センター外傷外科1),
熊本赤十字病院総合救命
救急センター救急科2),
熊本赤十字病院総合救命
救急センター集中治療
部3),熊本赤十字病院小
児外科4)
林田 和之1)
岡野 博史1)
堀 耕太1)
菊川 元博1)
岡野 雄一2)
原富 由香2)
吉元 和彦4)
桑原 謙2)
奥本 克己2)
井 清司2)3)
近年 JPTEC/JATEC などの外傷教育の効果もあり,これらが PTD(防ぎえた外傷死)の
減少に寄与しているといわれて久しい.この評価に関しては他に譲るとして,外傷医らが
積極的に病院前からの早期医療介入を進めてきた結果,根本的治療までの時間短縮が可能
となった患者は救命出来る機会が得られたのも事実である.ところが,依然として救命困
難な重症外傷患者が存在しているのを認識している.田舎で生じた重症外傷患者は,根本
的治療可能な病院までが遠距離のため,治療開始が遅れ救命困難となっていることが多い.
一部はドクターヘリやヘリ搬送で解決できてはいるものの,夜間や悪天候などでまだ十分
とは言えない実情がある.そこで我々の地方におけるトラウマバイパス変法症例について,
過去 6 年(2010〜2015)の896例を調査し,重症度,前医滞在時間,初期外傷蘇生処置内容,
搬送距離,予測生存率,転帰について比較検討した.重症度が高いほど,前医滞在時間が
短くなる傾向にあり,緊急処置が行われていることが多かった.これらより,地方の中核
病院での初期外傷蘇生のみの介入および根本的治療可能な病院への早期転院判断を教育す
ることで,時間短縮効果ひいては救命率向上に寄与できる可能性が示唆された.
― 205 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O2-4
ER 型救命救急センターにおける外傷診療体制の検討
熊本赤十字病院外傷外
科1),熊本赤十字病院救
急科2)
堀 耕太1)
菊川 元博1)
岡野 博史1)
寺住 恵子2)
岡野 雄一2)
原富 由香2)
林田 和之1)
奥本 克己2)
井 清司2)
O2-5
Trauma Center Maturity Measured By Potentable Death Analysis
University of California,
Department of Surgery,
Division of Trauma, Surgical Critical Care, Burns
and Acute Care Surgery
Matsumoto Shokei
Smith Alan
Coimbra Raul
O2-6
【背景】当院は ER 型救命救急センターであり,初療を救急科が行い引き続き専門科が治
療を行う体制をとっている.外傷においても同様の体制であったため質の担保が難しく,
外傷の成績向上を目的とし初療から集中治療まで一括して管理を行う外傷外科を2015年 4
月に立上げた.【目的】外傷外科立上げ前後での成績を比較し,その効果を検討する.【方
法】2013年 4 月から2015年 9 月までの30か月間で,ICU に入室した外傷患者のうち ISS≧
16の患者を対象とし,このうち Ps<0.5の症例のみを抽出し,外傷外科関与あり群( 1 群),
関与なし群( 2 群)で分け比較検討を行った.【結果】外傷外科立上げ前の期間では予測
外生存(Ps<0.5)は24例中 6 例であったのに対し,立上げ後では10例中 7 例と増加して
いた.1 群では輸血の使用頻度が高く(95% vs 58%),輸血開始までの時間も短かった(22
分 vs73分).また,凝固能の評価がきちんと行なわれている症例は 1 群で多かった(100%
vs 38%).【考察】外傷外科立上げにより重症例の救命率向上が得られ,その要因として,
凝固能を含めた適切な患者評価,および迅速かつ適切な輸血管理が考えられた.【結語】
ER 型救命救急センターにおいて重症外傷を ER 型とは別に管理する体制は,成績向上に
つながると考えられる.
INTRODUCTION:Trauma-related mortality rate is usually used as a measure of performance of care delivery in trauma centers. Herein, we sought out to establish the preventable death rate in a mature trauma center.METHODS:Data from the UCSD Level-1 Trauma Center Registry was analyzed during a fifteen-year period(2000-)
.
Deaths were adjudicated as PD, PPD, and NPD following a strict external peer-review
process.RESULTS:874(2.5%)deaths were identified. Most deaths were due to blunt
trauma(83%),male sex predominated(74%),mean age 53.4, mean ISS 34, mean GCS
6.3, PS by TRISS was 39%and 24%were DOA. There were 15 deaths(1.7%)PPD
and 6PD(0.7%). PD and PPD had lower ISS, higher TRISS and GCS. Most PPD happened either in the trauma bay or in the ICU. 5 out of 6PD were due to an error in judgment and one due to an error in diagnosis. CONCLUSIONS:Although the number of
PD and PPD are extremely low, there are significant lessons to be learned from errors
in judgment which led to deaths.
地方都市で理想の外傷センターを創る:鹿児島からの報告
社会医療法人緑泉会米盛
病院救急科
冨岡 譲二
畑 倫明
榮福 亮三
伊地知 寿
佐藤 満仁
倉田 秀明
米盛 公治
当施設は整形外科単科の医療機関であったが,新築移転にあたり地方の実情に合った全く
新しい外傷センターを立ち上げた.主な戦略は以下の三つである.1. 外傷診療に特化した
ハードウェア:傷病者の移動の時間とリスクを最小限にすべく,救急外来は自走式 CT と
Hybrid OR を統合した Advanced Hybrid ER とした.2. ロジスティックスの充実:ドク
ターカー,ドクターバイク,民間救急ヘリを導入.屋上に格納庫と給油設備を備えたヘリ
ポートを設置した.民間ヘリは県ドクターヘリを補完する運用を行っている.更に,ロジ
スティックス要員として救急救命士 9 名を雇用した.3. 人材育成:約300人収容の大講義
室に加え,JATEC 定点開催を視野に入れた 8 室の小講義室,各種シミュレーターを備え
たラーニングセンターを併設した.外傷センター運用開始に当たっては,整形外科医師を
はじめとするスタッフとの軋轢もあったが,議論を積み重ねることによって解決していっ
た.地方都市では,医療にかかわるリソースの絶対的な不足や,若手医療者の都会への流
出など,外傷診療を巡る環境には問題点が多い.今回のわれわれの試みは,そのような状
況への一つの提言となると考えている.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O3-1
救急外来における外傷外科処置の実態 看護師のアンケート調査
北九州総合病院救急救命
センター1),北九州総合
病院看護科2)
高間 辰雄1)
井上 大介2)
梅田 幸希1)
吉田 龍平1)
黒田 亮太1)
鳴海 翔悟1)
佐道 康次1)
衛藤真由美1)
賀久 道明1)
坂本 喜彦1)
O3-2
外傷外科修練に適した「救急外科」がある当院救命救急センターの特徴
堺市立総合医療センター
救急外科・救命救急セン
ター
天野 浩司
川田 真大
尾崎 貴洋
蛯原 健
常俊 雄介
臼井 章浩
中田 康城
横田順一朗
O3-3
重症外傷患者に対する,緊急的な外科的処置は,時間との戦いである.刻一刻と変化する
重症外傷患者の状態を,チームとして多職種で対応しなくては「防ぎえた外傷死(Preventable trauma death)」を増やすばかりである.その中で,看護師は患者の全体像を把
握して,医師の素早い処置を補助し,かつ視野狭窄になりがちな現場において,患者に寄
り添った全人的な看護を実践しなくてはならない.しかし,日本において,系統的な緊急
外科的処置に対する,具体的な看護教育システムは JNTEC や SSTT コース以外確立され
ておらず,多くの看護師が,緊張と不安の中で処置の介助についているのが現状である.
本研究の目的は,救急外来看護職が,重症外傷に対する緊急的な外科的処置について,ど
の様に理解し,実践しているかを検討し,そこで不足しているリソースは何か,よりよい
緊急的な外科的処置に対する看護を行うには何が必要かを,検討することとした.また,
その中で,緊急的な外科処置に関する研究会,勉強会を開催し,その効果を検討したので,
若干の文献的考察を加えここに報告する.
外傷手術の減少に伴い,全国の救命救急センターでは非手術症例や内因性重症疾患が病床
を占める割合が増えていると考えられる.当院救命救急センターは堺市(人口84.3万人)
の唯一の 3 次救急施設として,2015年 7 月に新設された.当院には外科,脳外科,整形,
IVR などの修練を受けた救急専従医14名で構成される「救急外科」が設置されている.
センターの運営は救急外科が行い,主に外因性及び手術を要する救急症例を担当している.
この中で外科の修練を受けた 6 名で Acute care surgery(ACS)チームを編成した.主
に体幹部外傷と急性腹症及びその集中治療を担当することで,十分な手術症例数を経験で
きることを目的とした.センター開設 6 ヵ月(7-12月)で ACS チームは151症例に対し
て計219件の手術を行った.そのうち外傷手術は19症例(48件)であった.内訳は,頚部
血管2,心2,胸腔5,腎1,肝3,膵2,腸管2,膀胱1,骨盤 1 となっている.我々は救急の
現場で外傷手術のスキルを高めていくためには,日頃から外科診療に特化し,acute care
surgeon としての立場を維持すべきと考えている.このような体制により,担当患者のほ
とんどは自ら手術を行った症例である.救急外科として診療対象を明確にしたことで,当
センターは外傷外科修練に適した環境を創り出している.
高齢者の交通事故外傷の特徴
滋賀医科大学社会医学講
座法医学部門
古川 智之
【方法】心拍がある状態で病院へ救急搬送され,当大学で剖検を行い交通事故死とした事例,
15年間の40例について検討した.【結果】65歳以上は23例(57.5%)であった.受傷から
死亡までの経過時間の平均は33.5時間で,受傷後死亡までの経過時間 3 時間以上が12例で
あった.受傷時の状況では,歩行・作業中が13例,自転車運転中が 3 例,バイク運転中が
2 例,乗用車・トラック運転中が 5 例であった.【考察】40例全体と比較すると,受傷か
ら死亡までの平均経過時間は変わらないが,歩行・作業中の割合が高く,二輪車・乗用車・
トラック運転中の割合は低かった.歩行・作業中の13例についてみると,脳挫傷の504時
間 1 例を除けば,受傷から死亡までの経過時間の平均は2.8時間と短い結果であった.ま
た65歳以上の交通事故死でも防ぎ得た死が存在した.
【結語】現場の即死でなく病院に搬
送された高齢者でも防ぎ得た死が存在し,特に歩行・作業中の受傷状況では,死亡までの
経過時間が短い傾向であった.これは既存の疾患や服薬により軽微な外傷でも出血性
ショックに至る点,外傷侵襲に対する耐容能力の差があると考えられる.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O3-4
外傷症例の手術に関する off-the-job training コースの対比
東京医科歯科大学医学部
附属病院救命救急セン
ター
吉川 俊輔
森下 幸治
本藤 憲一
岡 智
遠藤 彰
村田 希吉
加地 正人
大友 康裕
O3-5
外傷外科医修練 南アフリカ共和国外傷センター臨床留学の経験
徳島県立中央病院外科救
急科1),Department of
Surgery, Charlotte Maxeke Johannesburg Academic Hospital2),東京医
科歯科大学救急災害医
学3)
大村 健史1)2)
松本 松圭2)
行岡 哲男3)
大久保祐希1)
森 勇人1)
三村 誠二1)
O4-1
日本では外傷手術症例数が少なく,多くの施設で外傷症例に対する手術の経験不足が指摘
されている.このような経験不足を補い,実際の診療に役立てるために,外傷症例の手術
に関する各種 off-the-job training コースが開催されている.これらのコースとして Advanced Trauma Operative Management(ATOM),Definitive Surgical Trauma Care
(DSTC),献体による外傷手術臨床解剖学的研究会,Advanced Surgical Skills for Exposure in Trauma(ASSET),外傷外科手術指南塾などが存在し,それぞれに特徴があり,
目的や得られる経験が異なる.各コースを受講し,対比を行うことで off-the-job training
コースの理想的な形式を探った.
外傷初期診療のレベルアップに伴ってその次,すなわち,手術による根本的外科治療の重
要度が増しており,どのようにして外科医を育成していくか議論が活発である.国内で修
練体制を確保し,次世代にむけ習熟した外傷外科の専門課家を育成できる施設は限られて
おり,選択肢の一つとして海外の high volume center での手術研修という方策が挙げら
れる.外傷手術の研修を目的に,2015年度前半 6 か月間,外傷治療で有名な南アフリカ共
和国 Charlotte Maxeke Johannesburg Academic Hospital に臨床留学を行った.留学にあ
たり予め書類手続きを済ませると現地での医療行為が可能となる.病院は外傷例が多いヨ
ハネスブルグの中心部に位置する.外傷患者専用 ER があり軽傷から最重傷まですべての
外傷例を診療する.刺創・銃創といったいわゆる穿通性外傷,それに伴う血管損傷等が多
い.ER での初療に引き続き手術治療,外傷 ICU 管理に至る一連の治療に参加することが
できた.110例の外傷手術を経験し,うち85例で術者あるいは助手として参加することが
できた.短期間で多くの外傷手術,日本でまれな穿通性外傷手術を重点的に経験すること
ができた.外傷外科医の修練として海外の外傷センターへの臨床留学は有用である.
膵内胆管引き抜き損傷をきたしたⅢa(Ph)B 型膵損傷の一例
兵庫県立加古川医療セン
ター救命救急センター1),
兵庫県立加古川医療セン
ター外科2)
板垣 有亮1)
田中 祐太1)
伊藤 岳1)
川嶋 太郎1)
高橋 晃1)
佐野 秀1)
当麻 美樹1)
常見 幸三2)
Ⅲa(Ph)B 型膵損傷(膵内胆管引き抜き損傷)に胃十二指腸動脈(GDA)根部損傷,
Ⅲb 型肝損傷を合併し,経過中に総肝動脈閉塞による広範囲肝壊死を来して治療に難渋し
た症例を経験したので報告する.【症例】49歳,男性.乗用車走行中の自損事故で搬入さ
れた.搬入時ショックバイタルで,fluid resuscitation 下に CT 検査を施行し GDA よりの
massive extravasation と肝・膵損傷を認めた.GDA 損傷に対する TAE が不成功に終わり,
緊急開腹した.開腹所見では GDA 根部の断裂と膵頭部背側Ⅲa 損傷に加え,膵内胆管部
で引き抜かれた総胆管の腹腔内逸脱を認めた.GDA 縫合止血,総胆管の外ドレナージ,ガー
ゼパッキングで初回手術を終了し,Day2に ENPD,Day5に胆管外瘻化と小腸瘻を造設し
た.以後膵液瘻・胆汁漏・横隔膜下膿瘍の管理に難渋したが,小腸瘻よりの胆汁潅流が確
立され全身状態も安定した Day175に,当院外科の協力下に総胆管十二指腸吻合術を施行
した.【結論】膵内胆管引き抜き損傷は極めて稀な外傷である.DCS をはじめとした的確
な外傷初期診療に加え,根治術を視野に入れた早期からの綿密な治療計画(総胆管拡張を
目的とした bougie dilation など),外科をはじめとした複数科の協力体制が肝要と考える.
― 208 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O4-2
膵体部鋭的損傷に対し迅速な診断および治療によって良好な経過をたどった一例
大崎市民病院救命救急セ
ンター
前澤 翔太
山内 聡
O4-3
膵損傷に対する内視鏡的膵管ドレナージ術の経験
大阪市立大学救急医学
晋山 直樹
山本 啓雅
溝端 康光
O4-4
【はじめに】外傷性膵損傷は鋭的腹部外傷の約 1 %と稀であり,解剖学的に重要臓器と近
接していることから単独損傷は極めて稀である.膵体部単独鋭的損傷に対し,膵修復術と
洗浄ドレナージを施行し良好な経過をたどった 1 例を経験したため報告する.【症例】88
歳女性.うつ病の既往があり,以前より自傷行為を繰り返していた.ナイフで上腹部を刺
している所を発見され救急搬送.来院時ショックバイタルであったが,輸液に反応したた
め腹部造影 CT を施行.膵体部に造影剤の血管外漏出像を認め,外傷性膵損傷と診断し緊
急開腹手術を施行した.開腹時,小網に損傷を認め背側からの出血を認めた.網嚢を解放
し膵臓を観察すると膵体部実質より持続性の出血を認めた為,膵損傷部3-0 Prolene 3 針
で縫合し repair した.術中明らかな膵液瘻の所見を認めなかった為,膵管造影は施行せ
ず腹腔内洗浄ドレナージ後,ドレーンを留置し手術を終了した.術後は合併症なく経過し,
精神科病院に転院となった.【考察】外傷性膵単独損傷は本邦のみならず,国際的にも稀
な疾患である.本症例では術前の造影 CT 検査によって出血部位が特定できたため,過大
侵襲を回避し,迅速に出血コントロールが得られ良好な経過をたどった症例であった.
【症例 1 】33歳男性.自己転倒し受傷.CT で膵頭部損傷を疑う所見があり,ERCP では
明らかな主膵管リークを認めなかったが,急性膵炎の予防と,分枝膵管からのマイナーリー
ク軽減目的に膵管ドレナージチューブを留置した.その後の悪化無く,第 8 病日にチュー
ブを抜去し,第12病日に軽快退院となった.【症例 2 】43歳女性.腹部を殴打され受傷.
CT で深在性の膵実質損傷を疑い,ERCP で主膵管からのリークを認め,膵管ドレナージ
チューブを留置した.直後に腹痛が軽減したため NOM の方針としたが,第 2 病日に腹膜
炎と急性膵炎の急激な増悪を認めたため,同日,膵体尾部切除術を施行した.術後に被包
化壊死や腹腔内膿瘍を生じ,現在も加療中である.
【考察】膵損傷では,主膵管損傷を伴
わない場合は保存加療が可能とされる.主膵管損傷を伴う場合は従来から手術の絶対適応
とされているが,近年内視鏡的膵管ドレナージにより保存加療可能であった症例の報告が
ある.自験例では症例選択に課題を残す結果であり,特に症例 2 では手術の遅延を招き,
反省すべきであった.内視鏡的膵管ドレナージは,適応を吟味すれば,症例によっては手
術を回避できることもあり,腹部外傷診療においても内視鏡的治療の重要性は高いと考え
られた.
Ⅲb 型外傷性膵損傷に対する膵温存治療の試み
国立国際医療研究セン
ター外科
須田竜一郎
堀江 智子
枝元 良広
矢野 秀朗
<はじめに>日本外傷学会によるⅢb 型膵損傷に対する治療は膵体尾部切除が一般的であ
るとされるが,膵実質切除を伴う治療は膵内外分泌能障害などの長期合併症の問題もある.
当院では,循環動態の安定しているⅢb 型膵損傷に対しては,外科的・内視鏡的・IVR な
どのアプローチを問わない至適なドレナージと,経腸栄養を中心に据えた膵温存治療を
行っている.上記方針に則り,Ⅲb 型外傷性膵損傷に対して膵温存治療を行った 4 例を経
験したので報告する.<症例>年齢は22歳から37歳,男性 2 例,女性 2 例.受傷機転は,
交通外傷 2 例,暴行 2 例.膵損傷部位はそれぞれ Ph 1 例,Pb 2 例,Pt 1 例.損傷
部位が Ph,Pb であった計 3 例に対しては,外科的アプローチ(開腹 2 例,鏡視下 1 例)
による胆嚢外瘻,腸瘻造設を行い,1 例に膵胃吻合を行った.損傷部位が Pt であった 1
例には内視鏡的経胃ドレナージによる NOM:Non operative management を行った.術
後,2 例に仮性膵嚢胞,SSI(表層),1 例に膵液瘻を認めたが,全例軽快退院.また,中
央値52ヶ月の観察期間中,糖尿病の発症,膵仮性嚢胞の再発は認められなかった.<結
語>Ⅲb 型膵損傷においても,膵温存治療は一つの選択肢となりうる.
― 209 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O4-5
非手術的治療により軽快した膵損傷の 2 症例
平塚市民病院救急外科1),
平塚市民病院外科2),平
塚市民病院放射線診断
科3)
葉 季久雄1)
金子 靖1)
金井 歳雄2)
井上 政則3)
屋代 英樹3)
秋好 沢林2)
赤津 知孝2)
山本聖一郎2)
中川 基人2)
O4-6
外傷性膵炎と外傷後膵仮性嚢胞について
札幌東徳洲会病院外科
向井 信貴
前島 拓
深堀 晋
笠井 章次
吉川大太郎
唐崎 秀則
河野 透
O5-1
【はじめに】非手術的治療により軽快した 2 症例を経験したので報告する.【症例 1 】 9 歳
の男児.自転車乗車中に転倒し受傷.肝損傷Ⅲa(M)に対し,A4の塞栓術を施行した.
他に膵頭部周囲に低吸収域を認め,身体所見とあわせ膵損傷の存在が疑われた.小児であ
り MRCP を施行したが,主膵管の評価はできなかった.腹部所見が弱く,非手術的治療
を行い軽快退院した.【症例 2 】15歳の男性.野球の練習中にダイビングキャッチをし損
ねたボールを上腹部と地面で挟み込み受傷.近医にて腹部打撲と診断され経過観察してい
たが,症状は軽快せず,受傷27日目に急性膵炎の診断にて当院を紹介受診した.CT にて
膵頭部に膵離断像を,5cm,14cm 大の嚢胞をそれぞれ膵頭部,体尾部に認めた.ERP に
て主膵管と嚢胞の連続を認めⅢb 型膵損傷と診断した.末梢膵管の選択が不可能であり,
経皮経胃的にドレナージした.内瘻化を目指したが,膵体尾部は萎縮し,ドレーンが自然
脱落した.現在外来にて経過観察中であるが,膵内分泌機能に異常はない.【考察】主膵
管損傷を伴う膵頭部損傷に対しては,手術が標準治療とされてきた.しかしながら主要血
管損傷ならびに腹膜炎を呈さない症例に対しては,非手術的治療を第一選択とする可能性
が示唆された.
腹部外傷における膵損傷により急性膵炎を起こすことがある.さらに食事開始後から膵炎
を繰り返すこともしばしば認められる.繰り返す中で仮性膵嚢胞を生じることもある.今
回,当科で外傷性膵炎後に膵炎の再発を認めた症例を経験したが,その管理・評価法や栄
養摂取法について判断するにあたり明確な基準がないことに苦労した.この際に検討する
材料となった,外傷後膵炎とその反復や,外傷後仮性膵嚢胞についての文献などの考察と
その検討について報告する.
鈍的外傷受傷後 8 病日に判明した S 状結腸穿孔の 1 症例
横浜市立大学附属市民総
合医療センター高度救命
救急センター1),横浜市
立大学大学院医学研究科
救急医学2),横浜市立大
学大学院医学研究科外科
治療学3)
加藤 真1)3)
山口 敬史1)2)
高橋 航1)3)
中村 京太1)2)
益田 宗孝3)
森村 尚登1)2)
【はじめに】鈍的外傷後の消化管穿孔は受傷時に発症することが多く,遅発性の結腸穿孔
は稀な病態である.我々は,受傷後 8 病日に判明した S 状結腸穿孔の 1 例を経験したの
で報告する.【症例】68歳男性.高所墜落より受傷.来院時,脈拍数146回とショック状態
であった.蘇生処置を行いつつ,画像検索を施行.右腸骨骨折,右寛骨臼骨折など骨盤骨
折を認め,動脈塞栓術の方針とした.右内腸骨動脈への塞栓術を施行.3 病日に骨盤骨折,
右大腿骨骨折に対して観血的整復固定術を施行.8 病日,熱源精査のため CT を施行した
ところ,腹腔内に free air を認め,同日緊急で開腹術を施行した.所見は,S 状結腸に穿
孔を認め,吻合部縫合のみ施行し,仮閉腹の状態で帰室とした.10病日,S 状結腸部分切
除,腸管吻合を施行した.術後は,リハビリに時間を要したが,経過良好であり,72病日
に近医へ転院となった.【考察】遅発性に穿孔する機序としては,以下の 2 つの機序が報
告されている.粘膜下血腫などにより腸管内腔が閉塞し,内圧上昇により穿孔する場合.
腸間膜損傷などによる循環障害が生じる場合.しかし,本症例では明らかな腸間膜損傷や
瘢痕性狭窄を認めず,穿孔寸前であった腸管が 8 病日付近に delayed rupture したものと
推測した.
― 210 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O5-2
腸間膜損傷に起因した S 状結腸動脈閉塞で虚血壊死を来し敗血症性ショックに至った 1 例
関西労災病院救急部
高松 純平
福原 彩
O5-3
症例は28歳,男性.バイクで走行中,乗用車と接触しそうになり回避したが道路傍の鉄柱
に衝突し受傷した.来院時意識レベルは清明で神経学的異常所見を認めなかった.呼吸回
数は24回/分,血圧は78/35mmHg,明らかな外出血はなし.CT にて脾損傷による腹腔内
出血を確認したが持続する出血を認めなかったため経過観察とした.2 日目貧血が進行し
たために撮影した CT で下腸間膜動脈根部の造影不良を認めたが,明らかに腸管虚血を示
す所見を認めず腹部所見もなかったため経過観察とした.6 日目,腹膜刺激症状の増悪を
認め,CT にて穿孔性腹膜炎と診断し緊急開腹術を行った.虚血壊死に陥り穿孔した S 状
結腸を切除したが,すでに敗血症性ショックを来たし循環動態が不安定であったため開腹
管理とした.術直後に一時心停止に陥ったが,蘇生し PMX を行った.その後感染をコン
トロールし循環が安定し術後14日目に閉腹を行った.本症例では腸間膜損傷に起因した S
状結腸動脈閉塞で虚血に陥ったが,検索した限りでは比較的稀な損傷であると思われる.
今回は症状では来院時より明らかな増悪を認めず,突然症状の悪化を認めたことから手術
に至った.しかし発熱などの臨床所見と血液検査,CT 所見から早期に診断することが重
要と思われた.
だんじりに挟まれ受傷した外傷性十二指腸損傷の一例
神戸市立医療センター中
央市民病院救急部
小森 大輝
蛯名 正智
栗林 真悠
井上 彰
有吉 孝一
O5-4
【症例】40歳男性.祭りに使用するだんじりを車庫に収納する際,だんじりの丸太と車庫
の壁との間に腹部を挟まれ受傷.すぐに挟圧から解放された後に救急要請された.病院到
着時には顔面蒼白と末梢冷感を認めた.身体所見上,腹部全体に著明な圧痛があり,
FAST 上,モリソン窩と膀胱直腸窩に echo free space を認めた.腹部造影 CT では十二
指腸下降脚の破裂に加え,右後腹膜血腫と造影剤血管外漏出像を認めた.緊急開腹術を行
い,術中所見では少量の血性腹水と副右結腸静脈の損傷,十二指腸下降脚右壁の断裂を認
めた.膵損傷は無く,十二指腸壁小腸パッチ縫縮並びに幽門側胃切除を施行した.術後 9
日目で胃内容排泄遅延を疑い,一時絶食を要した以外に合併症なく経過し,術後20日目で
退院した.
【考察】外傷性十二指腸損傷はハンドルやシートベルトによる損傷の報告が多い.
また後腹膜穿破の場合は理学所見に乏しく早期発見が困難であることに加え,治療開始の
遅れは重篤な合併症を来し致死的となりやすい.本症例はだんじりと壁に腹部を挟まれた
という稀な受傷機転であったが,直達外力が腹部から脊柱方向に加わるような受傷機転で
あれば常にその可能性を念頭におき,治療に当たることが重要である.
外傷性腸間膜損傷症例の検討
北九州市立八幡病院救命
救急センター外科
山吉 隆友
岡本 好司
野々村 遼
上原 智仁
田口 健蔵
野口 純也
新山 新
井上 征雄
木戸川秀生
伊藤 重彦
【目的】外傷性腸間膜損傷症例における治療および病態につき検討した.【対象と方法】
1998年 1 月から2015年12月までに当院にて経験した外傷による腸間膜損傷19例に対し,臨
床的因子を検討した.【結果】男性17例,女性 2 例,平均年齢45.1歳.鈍的損傷14例,鋭
的損傷 5 例.鈍的損傷は交通外傷10例,挟圧 2 例,転落 1 例,叩打 1 例.鋭的損傷は自損
4 例,他損 1 例.自損は包丁 3 例,ナイフ 1 例,他損は銃創であった.鈍的損傷中 6 例は
画像上腸間膜損傷が明らかであったが保存的に観察,手術を施行した 8 例は日本外傷学会
分類でⅡa(M)5 例,Ⅱb(M)NE 2 例,Ⅱb(S)NE1例.鋭的損傷は全て緊急手術を
行いⅠ型 2 例,Ⅱa 型 3 例.手術では,鈍的損傷は損傷部修復のみ 5 例,血流障害に伴う
腸管切除 3 例.腸間膜損傷と関係なく併発した腸管損傷に対しては部分切除 5 例,縫合閉
鎖 7 例.鋭的損傷は全例損傷部腸間膜の縫合修復のみを施行したが銃創では別に併発した
空腸損傷を部分切除.死亡例は 1 例であった.【考察】外傷性腸間膜損傷は同部に対する
処置のみで治療可能な場合もあるが,合併する腸管損傷や血流障害等に対する処置を念頭
におく必要である.
― 211 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O5-5
外傷性十二指腸損傷症例の検討 〜十二指腸損傷における術式選択
新潟大学医歯学総合研究
科消化器・一般外科1),
新潟大学医歯学総合病院
高次救命災害治療セン
ター2)
滝沢 一泰1)
相馬 大輝1)2)
石川 博輔1)2)
三浦 宏平1)2)
高野 可赴1)
坂田 純1)
小林 隆1)
若井 俊文1)
渡邊 要2)
普久原朝海2)
O5-6
5 ヶ月間で経験した小児における鈍的外傷性十二指腸穿孔の 3 例
和歌山県立医科大学附属
病院高度救命救急セン
ター1),東北大学病院高
度救命救急センター2)
那須 亨1)
上田健太郎1)
川副 友2)
岩崎 安博1)
山添 真志1)
川嶋 秀治1)
國立 晃成1)
加藤 正哉1)
O6-1
【はじめに】外傷性十二指腸損傷は全腹部外傷の0.2〜0.3%程度と稀な病態で,それぞれ
の施設が経験する症例は少ない.近年,当院で経験した外傷性十二指腸損傷症例をもとに,
同期間で経験した医原性十二指腸損傷例と比較し検討した.【対象と症例】2006年 1 月か
ら2016年 1 月までに当院で経験した外傷性十二指腸損傷は 2 例で,医原性十二指腸損傷は
7 例であった.【結果】外傷症例は26歳男性および18歳女性.ともに交通外傷にて受傷.
手術までの時間はそれぞれ20時間,7 時間.前者は,十二指腸第 3 部に 2 か所の穿通を認
め,直接縫合閉鎖,空腸漿膜パッチを行った.術後経過は順調であった.後者は,十二指
腸第 2 部〜 3 部で1/3周程度の穿孔/穿通を認め,trimming して縫合閉鎖し,胃瘻,胆嚢
管外瘻とした.術後は 3 週間におよぶ胃内容排泄遅延を認めた.医原性十二指腸損傷に対
して施行された術式は,単純縫合閉鎖 4 例,十二指腸部分切除+吻合 1 例,膵頭十二指腸
切除(PD)2 例であった.単純閉鎖した 1 例で,再穿孔をきたし,後腹膜膿瘍から敗血症・
多臓器不全となり救命できなかった.【結語】十二指腸損傷において,vital が安定してお
り AAST grade 2 程度であれば単純縫合閉鎖で対応可能であるが,再穿孔には注意が必
要である.
小児の鈍的腹部外傷における受傷部位の大部分は実質臓器であり,腸管が損傷を受けるこ
とは少ない.さらに十二指腸損傷のうち,穿孔にまで至る例はまれである.5 ヶ月間に小
児の鈍的外傷性十二指腸穿孔を 3 例経験した.症例 1 は10歳,女児.軽乗用車の助手席で
シートベルトを着用した状態で衝突事故により受傷.腹部造影 CT で肝周囲に血腫を認め
るも Free Air はなく経過観察入院.翌日の CT で Free Air を認め緊急手術施行.下十二
指腸曲の 8 mm の穿孔部に対し大網被覆術および洗浄ドレナージ術施行.症例 2 は14歳,
男児.空手の試合中に回し蹴りにより右側腹部を打撲.腹部造影 CT で右腎周囲に血腫を
認めるも Free Air はなく経過観察入院.翌日の CT で Free Air を認め緊急手術施行.下
十二指腸曲の 3 mm の穿孔部に対し単純閉鎖術および洗浄ドレナージ術施行.症例 3 は14
歳,男児.空手の練習中に心窩部を打撲.翌日,右側腹部痛が増強し当院へ救急搬送.腹
部造影 CT で Free Air を認め緊急手術施行.十二指腸球部の 3 mm の穿孔部に対し大網
被覆術および洗浄ドレナージ術施行.いずれも十二指腸憩室化手術は行わず,経過良好で
術後12日以内に退院または転院した.文献的考察を加えて報告する.
鈍的外傷による下大静脈損傷の治療の課題
日本医科大学千葉北総病
院救命救急センター1),
日本医科大学大学院医学
研究科救急医学分野2)
中山 文彦1)2)
益子 一樹1)2)
本村 友一1)2)
安松比呂志1)2)
服部 陽1)2)
阪本 太吾1)2)
原 義明1)2)
齋藤 伸行1)2)
八木 貴典1)2)
飯田 浩章1)2)
瀬尾 卓生1)2)
近田 祐介1)2)
岡田 一宏1)2)
松本 尚1)2)
横田 裕行2)
【目的】鈍的外傷による下大静脈(IVC)損傷の治療の課題を探る.【方法】2007年から
2015年に自施設で治療した IVC 損傷について後方視的に解析した.【結果】 9 年間に自施
設で治療した外傷症例は8036例で,手術所見または画像所見から20例が鈍的外傷による
IVC 損傷と診断された.胸腔内 IVC 損傷は12例で,全例に大量血胸または心タンポナー
デを認め医師接触前心停止例 7 例を含め救命例は無かった.腹腔内 IVC 損傷は,医師接
触前心停止例 2 例を含め 8 例中 7 例が致死的出血で 5 例が生存退院していた.鈍的外傷に
よる IVC 損傷の救命率は25%(20例中 5 例)だった.【考察】胸腔内 IVC 損傷は短時間
で大量出血に至るため約 6 割が医師接触時心停止状態であり超早期の開胸止血術が不可避
と考えられた.腹腔内 IVC 損傷は 8 例中 6 例で心停止前に医師が接触でき,1 例を合併
症で失ったが全例失血死を回避したことから,腹腔内 IVC 損傷自体は止血までの時間的
余裕があったか非致死的だったと考えられた.【結語】致死的 IVC 損傷の治療はそれを如
何に早く推測し止血できるかが最優先課題であり,大量血胸,心タンポナーデや大量腹腔
内出血に対して間髪を入れず止血術を行う以外に救命の道は無い.
― 212 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O6-2
腹腔内出血に対し大動脈遮断バルーンカテーテル留置と DCS を同時に施行し救命した一例
独立行政法人国立病院機
構大阪医療センター
家城 洋平
石田健一郎
曽我部 拓
高端 恭輔
岩佐 信孝
上尾 光弘
木下 順弘
定光 大海
O6-3
REBOA で術中出血コントロールを行った腹部刺創ショックの 2 例
八戸市立市民病院救命救
急センター
昆 祐理
長谷川将嗣
山内 洋介
栗原 祐太
伊沢 朋美
野田頭達也
今 明秀
O6-4
腹部の外傷診療においては,DCS や IVR などの治療戦略を選択し,各々の症例に対する
戦術をより迅速で適切に実行することが必要である.今回,腹腔内出血に対して大動脈遮
断バルーン(intra-aortic balloon occlusion;IABO)カテーテルの留置と開腹止血術を同
時に施行し救命した症例を報告する.症例,71歳男性.乗用車を運転中に電柱と衝突し受
傷.来院時腹腔内出血による出血性ショックであり初療にて開腹術を開始した.同時に右
鼠径部より IABO 留置を開始.開腹すると腹腔内には血液が多量に貯留しており視野の
確保に難渋した.IABO 留置しバルーン閉塞下に出血源の検索をすすめると,良好な視野
が得られ,小腸腸間膜損傷(外傷学会分類 Ⅱb,AAST gradeⅤ)
,S 状結腸損傷(外傷
学会分類 Ⅱa,AAST gradeⅡ)を認め小腸腸間膜からの動脈性,静脈性出血を確認し
止血術,小腸切除術を施行した.本例は心停止が切迫した出血性ショックの状態であり,
蘇生的 IVR としての IABO と同時に,IABO 併用により術中の出血がコントロールされ,
より良好な術野の展開が可能となり,止血操作が容易となったと考える.こうした術前あ
るいは,術中の IABO の戦略について当院での体制とともに現況を報告する.
腹部刺傷によるショックの手術中に REBOA で血圧・出血コントロールを行った症例を
2 例経験したため報告する.【症例 1 】62歳男性.腹部と胸部を自傷.【病院前情報】
BP60/30mmHg HR130bpm RR42回.Dr car ドッキング.左胸腔液体貯留有り左胸腔開放.
【来院後経過】ER で右大腿動脈より REBOA 留置.来院30分後に手術室へ移動.IVC 損
傷と小腸損傷あり.部分遮断と間欠遮断を併用し血圧コントロールした所,損傷部からの
出血量もコントロール可能であった.術後経過は良好で第69病日に自宅退院.【症例 2 】
54歳男性.第 3 者に腹部を刺され受傷.
【病院前情報】Dr car ドッキング.BP60/30mmHg
HR80bpm RR30 2 か所刺創より腸が脱出.
【来院後経過】脱出腸管から活動性出血あり,
ER で右大腿動脈から REBOA 留置.来院24分後に手術室へ移動.手術では小腸損傷と
十二指腸,膵頭部損傷あり.REBOA 部分遮断と間欠遮断を併用し手術施行.術後縫合不
全などを併発したが,その後は経過良好で第123病日自宅退院.【考察・まとめ】REBOA
を留置することに時間を浪費してはならないが,結果として留置したことで術中の血圧コ
ントロールや出血コントロールは容易となり救命につなげることが出来たと考える.
当院における腹部刺創症例の検討
高知赤十字病院救命救急
センター
山本祐太郎
原 真也
本多 康人
安岡やよい
藤本 枝里
村上 翼
廣田 誠二
西森久美子
島津 友一
山崎 浩史
西山 謹吾
【はじめに】腹部刺創症例では,腹腔内臓器損傷の可能性を念頭に置く必要がある.わが
国では腹部刺創患者が少なく,診断方法や治療方針に難渋することがある.【対象・方法】
2005年 7 月から2015年11月までの期間,当院の腹部刺創症例22例を対象とし,性別,年齢,
受傷機転,診断方法,治療方針について後方視的に検討した.【結果】男性14例,女性 8 例,
平均年齢45.2歳(20-70歳).精神科疾患を有するものが11例,自傷18例,他傷 4 例であっ
た.診断方法は,全例単純 CT 検査を行い,うち12例で造影 CT,2 例で刺創路造影 CT,
3 例で創部試験的切開を併用した.治療方針は,開腹11例,保存的加療11例であった.開
腹症例では,腹膜のみの損傷 4 例,臓器損傷を伴う症例 7 例であった.腹膜のみの損傷症
例のうち,1 例は審査腹腔鏡を行った.臓器損傷症例の臓器別内訳は,横隔膜 1 例,胃 1 例,
肝臓 3 例,小腸 2 例,膵臓 1 例,大綱・腸間膜 2 例,門脈 1 例であった(重複あり)
.死
亡症例はなく,全例生存退院した.【考察・結語】当院での開腹症例には,手術が不必要
と思われた臓器損傷を伴わない症例が含まれていた.このような症例をなくすことが今後
の課題である.臓器損傷の可能性が低い症例では,審査腹腔鏡が有用であると示唆された.
― 213 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O6-5
当院における腹部刺創46例における検討
兵庫医科大学救急部
西村 健
坂田 寛之
山田 太平
寺嶋真理子
白井 邦博
山田 勇
中尾 篤典
小谷 穣治
O6-6
2007年から2015年までに当センターにおいて経験した腹部刺創患者46例( 1 名は 2 度受診
歴あり)について後方視的に検討を行った.男性は25名,女性は20名であった.年齢は21
歳から85歳であり平均年齢は47.1歳であった.受傷起点不明であった 1 名を除き,自傷行
為で搬送となった33名のうち28名は何らかの精神疾患を有していた.5 例が来院時から心
肺停止状態であり,4 例が軽傷と判断され外来帰宅となっていた.自傷による受傷部位別
の検討では心窩部と臍周囲に集中しており,成器は包丁やナイフなどの刃物によるものが
大多数であった.自傷33例の内腹腔内到達例は17例と約半数であったのに対し,他傷によ
る12例の内10例が腹腔内に到達していた.腹部以外の損傷を有している患者は約半数の24
名 で あ り, 四 肢 の 合 併 損 傷 が 最 多 で あ っ た. 受 診 患 者 の 平 均 ISS(Injury Severity
Score)は9.5であり,入院患者の平均 APACHE(Acute Physiology and Chronic Health
Evaluation)2 スコアは12.78であった.腹部刺創は早期の治療介入により良好な予後が期
待できる疾患である.本検討が腹部外傷を扱う臨床医にとって有用なものであると思われ
たため報告する.
TAE から開腹コンバートした外傷性中結腸動脈損傷の 1 例
刈谷豊田総合病院消化
器・一般外科
犬飼 公一
早川 俊輔
O7-1
症例は38歳男性.酩酊状態で喧嘩し,暴行を受けて倒れているところを発見され救急要請.
ER にて,バイタルサインは安定していたが,造影 CT にて胃背側の血腫と大網動脈から
と思われる造影剤血管外漏出像を認めた.CT 上穿孔などの腸管損傷を疑う所見はなく,
緊急で TAE の方針となった.腹部血管造影にて上腸間膜動脈起始部より分岐する中結腸
動脈からの出血を認めたが,血管解剖上選択困難であり,循環動態も不安定化しつつあっ
たため,緊急開腹止血術へ移行となった.術中所見では横行結腸間膜損傷を認め,中結腸
動脈の離断および横行結腸被膜損傷も認めた.離断血管を結紮止血し,横行結腸の損傷部
を切除吻合し手術は終了した.手術時間は121分,総出血量は4190g であった.術後は合
併症なく経過し,受傷から 7 日後に独歩退院した.腸間膜動脈の損傷については TAE に
て止血が得られたとする報告も増加しているが,本症例のように血管解剖上,TAE 施行
不可能な症例が存在すること,また腸管の損傷程度についての予測は困難であるため,躊
躇なく開腹術に移行することが重要であると再認識した示唆に富む症例であり,若干の文
献的考察を踏まえて報告する.
病院前情報でのクッシング現象は脳ヘルニアを伴う重症頭部外傷を示唆するか?
岡山大学病院高度救命救
急センター1),川崎医科
大学救急総合診療医学2)
湯本 哲也1)
松尾 瑞恵1)
山川 泰明1)
飯田 淳義1)
塚原 紘平1)
寺戸 通久1)
山内 英雄1)
佐藤 圭路1)
鵜川豊世武1)
氏家 良人2)
【目的】病院前情報でのクッシング現象(CR)が脳ヘルニアを伴う重症頭部外傷(BH)
を予測できるかを検討した.【方法】2010〜2014年に JTDB に登録された139,847例から
16歳以上,鈍的外傷,現場直送例で,来院時心停止を除きデータ欠損がない64,935例を対
象とした.開頭,穿頭術を要した,または頭部 AIS が 5 かつ ISS が33以下で死亡退院し
た症例を BH とした.【結果】対象の年齢は58±22,男性62%,ISS は15±10,BH は3,803
例( 6 %)であった.BH と non-BH の比較では年齢の中央値は66 vs. 62,男性の割合69
vs. 62%,病院前 JCS(pJCS)3 桁の割合55 vs. 8 %,病院前収縮期血圧(pSBP)149 vs.
136mmHg, 病 院 前 脈 拍 数(pPR)82 vs. 84bpm,( 何 れ も P<0.001) で あ っ た. 次 に
pJCS 3 桁かつ pSBP150mmHg 以上を CR とした場合,CR2,300例のうち1,074例が BH で
あった(感度47%).更に CR のうち開胸,開腹術または TAE を要したものは,pSBP に
有意差はないものの(170 vs. 173mmHg, P=0.217),年齢が低く(64 vs. 69, P<0.001),
pPR が高かった(93 vs. 84bpm, P=0.001).【結語】pJCS 3 桁かつ pSBP150mmHg 以上
では47%の患者が脳ヘルニアを呈しており,その中でより若年で頻脈であれば,開胸,開
腹あるいは TAE が必要となる可能性に留意すべきである.
― 214 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O7-2
当センターの Preventable Trauma Death は減少したか?
山梨県立中央病院救命救
急センター
岩瀬 史明
O7-3
重症外傷症例に対するドクターカー出動の有用性
兵庫県災害医療センター
橘高 弘忠
井上 明彦
中山 晴輝
松山 重成
石原 諭
中山 伸一
O7-4
【はじめに】当センターの重症外傷への取り組みは,血液型未確定のうちに O 型赤血球輸
血の投与,トラウマコール,初療室開腹開胸手術,ドクターカー導入,AB 型新鮮凍結血
漿の投与,ドクターヘリ導入等により,迅速に対応できるようなった.このような体制の
変遷により,当センターに搬送された患者の予後が改善したかを検証する.【対象と方法】
2009年度から2014年度までの当センターに搬送された外傷症例を診療録から後ろ向きに検
討した.【結果】2012年度からドクターヘリの運航が開始となり,当センターに搬入され
る外傷症例が増加した.修正予測外死亡率は減少していたが,総数は年度毎に変化はなかっ
た.Unexpected survival は年度ごとに増加しており,ドクターカーあるいはドクターヘ
リにて医師が現場に出動していた.【結語】医師が現場に出動することにより重症外傷の
予後を改善する可能性がある.
当センターは神戸市人口150万人をカバーする独立型 3 次高度救命救急センターで,病院
前救急診療・根治的治療・集中治療を 3 本柱とした自己完結型救急診療を行っている.
2015年は搬入件数約1149件のうち463件が外傷患者で,そのうち ISS15以上の重症外傷は
47%を占めた.病院車運用方式による365日24時間のドクターカー運用を展開しており,
高エネルギー外傷症例,複数傷病者事案等に対して医師 1 名,看護師 1 名,病院研修救命
救急士 2 名,専従運転士 1 名が乗車したドクターカーが出動し病院前救急診療活動を開始
する.ショック症例では根治的止血術までの時間短縮のため早期に現場を離脱しつつ院内
体制整備のため院内待機医に連絡し情報共有を図るが,短時間で preventable trauma
death に直結する気道の異常や緊張性気胸・心タンポナーデによる閉塞性ショックに対し
ては現場で迅速な対応を行う.今回,直近 5 年間にドクターカーが出動した外傷症例の活
動内容を検証するとともに,現場もしくは搬送途中に輪状甲状靭帯穿刺・切開,胸腔ドレ
ナージ,心嚢ドレナージのいずれかを行った症例を対象としてドクターカー出動の有用性
を検討した.
意識障害を伴う外傷傷病者に対する他動的 Mallampati test の有用性
University of Pittsburgh
School of Medicine, Department of Emergency
Medicine
内藤 宏道
【背景】気管挿管困難の予測を行う方法として Mallampati test(MT)が使用され,特異
度に優れることが報告されている.MT は被験者の覚醒が前提であり意識障害傷病者には
適応できない.意識障害を伴う外傷傷病者で“他動的 Mallampati test”の有用性を検討
した.【方法】通常の MT は座位で自発的に開口し舌を突出することを要するが,本研究
の他動的 MT では臥位で他動的に開口した状態で従来の MT の分類を適応した.Pittsburgh 大学の病院前救急搬送システムの活動報告書を検索し,2009年12月から2012年 7 月
に,意識障害を呈する外傷で搬送され,他動的 MT を施行,気管挿管(術者:救命士,
看護師)を試みた傷病者を対象とした.MT Class 1・2 を(挿管)容易予想群,MT
Class 3・4 を(挿管)困難予想群と定義し,2 群の実際の病院前挿管の成否を比較,検査
の感度,特異度を求めた.【結果】524名の傷病者を解析し(全体の挿管成功率95%),容
易予測群の成功率:97%(375/385)であり,困難予測群の成功率:89%(124/139)と有
意な差があった(P<0.001).他動的 MT の感度は0.60,特異度は0.75であった.【結語】
従来の MT により,特異度に劣るものの,他動的 MT は意識障害傷病者の挿管困難予測
の補助になる可能性がある.
― 215 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O7-5
戦場における救護のガイドラインから事態対処医療へ
自衛隊中央病院1),防衛
医科大学校2)
後藤 浩也1)2)
齋藤 大蔵2)
竹島 茂人1)
O7-6
地域を網羅した救急活動記録からみた交通事故患者の受傷機転と予後の関係性
大阪大学大学院医学系研
究科救急医学1),大阪大
学大学院医学系研究科環
境医学2),京都大学健康
科学センター3),大阪市
消防局救急課4)
片山 祐介1)
北村 哲久2)
石見 拓3)
林田 純人4)
小倉 裕司1)
嶋津 岳士1)
O8-1
【はじめに】戦場での救命活動は,十分な医療資源がなく,また敵の攻撃で救護者自身が
危険にさらされるため,通常の救急医療とは異なる発想と行動が必要となる.米軍は,戦
場での病院前治療である Tactical Combat Casualty Care(以下 TCCC)を確立させ,世
界各地の軍隊にも普及しつつある.
【TCCC の概要】TCCC は 3 つの状況に対応したフェー
ズに分かれており,危険な受傷地点での Care Under Fire,比較的安全な場所まで後退し
て行う Tactical Field Care,車両や航空機により速やかに後方の安全な地域へ後送する
Tactical Evacuation がある.TCCC のガイドラインは,米軍が実戦を通して収集した外
傷登録の分析結果や内外の医学研究成果から毎年改定されており,それぞれのフェーズで
実施すべきこと,実施すべきではないことが明確に示されている.【今後の発展性】戦場
でなくとも,オリンピックなどのビッグイベントはテロの標的となる可能性があり,救護
者そのものの安全を図りつつ多数の負傷者を救護しなくてはならない.そのためには,医
療システムの改善と,医療の発想を変えることが必要であり,TCCC が参考になる
【背景】近年,交通事故件数は減少傾向にあり交通事故死者数についても減少している.
国際的に比較しても欧米と比べ日本の単位人口当たりの交通事故死亡者数は少ない.しか
し,その死亡率の低下に寄与している要因については明らかではない.本研究では交通事
故死亡には受傷機転が影響すると考え,救急活動記録を用いて交通事故の実態を記述疫学
的に解析した.
【方法】大阪市消防局が2013年に救急搬送した交通事故患者を対象に,年齢・
性別・発生場所・単独事故かどうか・負傷者(歩行者・自動車乗車・自転車乗車・単車乗
車・その他に分類),衝突相手(負傷者と同様に分類)といった要因と(搬送時死亡)と
の関係性について検討した.【結果】研究期間に搬送された14983例のうち,受傷起点不明・
分類不能などを除いた14764例を対象とした.単独事故の搬送時死亡例は3612例のうち 6
例(自動車 3 例,自転車 3 例)で,単独事故でない搬送時死亡例は11152例中のうち24例(歩
行者 6 例,自転車 7 例,自動車 5 例,単車 6 例))で,単独事故でない搬送時死亡例での
事故相手は全例自動車であった.【結語】本邦の都市部における交通事故死亡の実態につ
いて記述疫学的に明らかにした.
頚髄損傷に対する急性期手術における周術期合併症の検討
帝京大学医学部附属病院
外傷センター1),埼玉医
科大学総合医療センター
高度救命救急センター2),
帝京大学附属病院整形外
科学講座3)
稲垣 直哉1)
井口 浩一2)
佐藤 健二3)
菱川 剛1)
黒住 健人1)
鈴木 卓1)
新藤 正輝1)
【背景】頚髄損傷に急性期手術が積極的でない理由として待機的手術や保存的加療と比較
して周術期合併症が多いという先入観があるが,周術期合併症に関して両者を比較する報
告は少なく,明らかでない.【目的】急性期手術が待機的手術より周術期合併症が多いか
明らかにする.【方法】2012年 1 月 1 日〜2014年12月31日に当院へ搬送された頚髄損傷者
のうち,AIS が A 〜 C で,24時間以内の死亡,意識障害例,CPA 例を除いた28例におい
て,受傷から12時間以内に手術例と12時間以降の手術例で,出血量,手術時間,人工呼吸
器装着期間について後ろ向きに検討した.【結果】12時間以内に手術を行った群は13人(男
12人女 1 人),平均年齢59.5才,12時間以上に手術を行った群は15人(男12人女 3 人),平
均年齢は61.2才だった.出血量,手術時間,人工呼吸器装着期間はそれぞれ,69〜853(平
均317.8)ml,64 〜 1337( 平 均372.4)ml,78 〜 369( 平 均197.5) 分,86 〜 315( 平 均
195.7)分,0 〜10(平均2.77)日間,0 〜37(平均7.8)日間で,いずれも有意差はなかっ
た.【結論/考察】12時間以内の急性期手術の周術期合併症は多いとはいえず,急性期手術
例の方が,神経学的予後に改善傾向がみられ麻痺改善に有用な可能性があるため,前向き
研究が必要である.
― 216 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O8-2
顔面外傷後の遅発性咽頭後隙血腫による上気道閉塞の 1 例
亀田総合病院救命救急科
北井 勇也
葛西 猛
不動寺純明
大橋 正樹
伊藤 憲佐
田中 研三
中井 智子
中山恵美子
今本 俊郎
近藤 夏樹
鈴木 利直
二宮 宣文
鈴木 信哉
山本 良平
南 三郎
O8-3
最近経験した喉頭外傷の 5 例
済生会熊本病院救急総合
診療センター1),済生会
熊本病院外科センター2)
尾崎 徹1)
川野雄一朗1)
小川 克大2)
中山雄二朗1)
菊池 忠1)
前原 潤一1)
O8-4
【背景】軽微な頭頸部外傷後に出現した咽頭後隙血腫によって呼吸困難をきたした症例の
報告はあるが,受傷後は症状なく,画像上血腫も明らかなでない場合に遅発性に血腫の増
大を認め気道閉塞に至った症例の報告は少ない.【症例】75歳男性.2.5m の高さで木の
伐採中,はしごが外れ木に顔面をぶつけた後に膝から落下し,受傷後約 1 時間30分で当院
救急搬送となった.Vital signs は安定しており,意識清明であった.顔面の擦過傷と後頚
部に圧痛を認めたため,受傷から約 2 時間30分後に画像評価を行ったが明らかな頭蓋内の
出血や頭蓋骨骨折はなく,C5椎体前方成分の骨折はあるものの血腫は認めなかった.受
傷から約 6 時間後より嚥下困難および喀痰の増加を認め,受傷から約 8 時間後に急激な前
頸部の腫脹が出現し,stridor が聴取されたため気道閉塞が疑われた.緊急気管挿管を行
い造影 CT 施行したところ C6椎体前面を中心に extravasation を伴う血腫を認めた.経時
的に血腫は消退し,第 6 病日に抜管となった.その後,気道閉塞なく経過している.
【考察】
初回画像検査の時点で明らかな血腫を認めない場合でも,遅発性に extravasation を伴う
出血を起こす可能性が示唆された.
当救命センターにて2015年 1 月 1 日〜12月31日の 1 年間で 5 例の喉頭外傷を経験したので
文献的考察を加え報告する.年齢は25〜83歳,男性 4 例,女性 1 例で原因は交通事故 4 例
(機序は自動車のハンドル 2 例,ヘルメットのひも 2 例),転落 1 例であった.喉頭単独損
傷はなく全てが多発外傷であった.搬送時の症状は,無症状から嗄声,嚥下痛,頸部痛な
ど様々であったが,無症状の 2 例中 1 例は搬送中に心肺停止状態となっている.2 例で緊
急気道確保(心肺停止状態の 1 例は外科的気道確保,1 例は搬送時無症状であったが 5 時
間後に呼吸苦を認めため経口気管挿管)
,また 1 例で多部位の手術時に気道確保が行われ
た.他 2 例は保存的に経過観察可能であった.気道確保が行われた 3 例中 2 例で最終的に
気管切開術が必要であった.2 例で嗄声,嚥下障害といった機能障害が残存したが,1 例
は後遺症なく軽快した.喉頭外傷は,稀であるため施設毎の経験数が少ない上に,症例に
より緊急性・重症度も異なるため統一された治療方針はない.保存的に対応する場合,時
間の経過とともに,気道閉塞を起こす可能性もあるため,気道緊急に備えた十分な準備が
必要であり,機能予後のためには早期から耳鼻科医との連携を図ることが重要である.
肝硬変・腎不全・COPD を合併した頸椎胸椎骨盤損傷 DISH 患者に対する治療戦略
岡山市立市民病院整形外
科
木浪 陽
【症例】77歳男性,脚立よりの転落で受傷し当院救急搬送,ショックバイタルを蘇生しつ
つ全身 CT 施行した.C5/6高度狭窄(頸髄損傷),第11胸椎骨折,骨盤骨折,恥骨部 extravassation(+),び漫性特発性骨増殖症(DISH)であった.即日全身麻酔下に,IVR
で両内腸骨動脈塞栓,骨盤創外固定を施行した.翌日抜管し,アルコール離脱症状予防,
高カロリー輸液と GFO 投与および大量輸血と BF 吸痰で全身状態改善を待機した.受傷
後 8 日目に手術施行,全身麻酔・腹臥位,頸椎椎弓切除後方固定・胸椎後方固定・骨盤後
方固定,手術時間 9 時間・出血1000ml であった.術後 ICU で鎮静・人工呼吸器管理し,
大量輸血の除水のため CHDF4日間施行した.術後 1 週で抜管し ICU 退室,クレメジン内
服・リーナレン経管栄養に移行,気道管理・水分管理に難渋したが,受傷後 1 ヵ月で車い
す移乗可能・会話可能となった.【考察】DISH 患者の脊椎骨盤損傷は不安定性が大きく,
早期起座位のためには手術が必須である.本症例は長年の喫煙による COPD+喀痰排出
困難があり,肝硬変と腎不全を合併していたが早期手術に踏み切り,術後合併症管理に難
渋したものの何とか救命しえた.
― 217 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O8-5
Scapulothoracic dissociation に横隔膜神経麻痺を合併した 1 例
大阪大学医学部附属病院
高度救命救急センター
小西 良一
古家 伸介
森 宣人
入澤 太郎
中川 雄公
大西 光雄
嶋津 岳士
O8-6
脊髄損傷の加療中に発症した本態性血小板血症の一例
近畿大学医学部附属病院
救命救急センター
濱口 満英
植嶋 利文
丸山 克之
松島 知秀
木村 貴明
太田 育夫
中尾 隆美
石部 琢也
村尾 佳則
O9-1
【背景】Scapulothoracic dissociation(以下 STD)は上肢への強い牽引力により肩甲胸郭
関節が破綻し肩甲骨が外側に転位することで生じる.機能予後が不良であることから
closed forequarter amputation とも呼ばれる.今回,下位頚髄損傷と STD に右横隔神経
麻痺を合併し,呼吸器離脱困難となった症例を経験したので報告する.【症例】24歳女性,
交通事故で C6/7脱臼骨折・頚髄損傷,右 STD(右鎖骨下動静脈損傷・右腕神経叢損傷・
右胸鎖関節脱臼・肩甲帯周囲の筋断裂),右前腕開放骨折,右大腿・下腿開放骨折,左足
部不全断裂,骨盤輪骨折を受傷した.ショック状態で救急搬送され,緊急手術(右下肢創
外固定・頸椎前方固定術など)を施行した.術後経過は良好で頚髄損傷は下位であり早期
に呼吸器離脱可能と評価した.第 5 病日に抜管したが,右下葉無気肺を伴う呼吸状態の悪
化を認め再挿管となった.後日,透視下で右横隔神経麻痺を診断した.【考察】STD に合
併する骨性損傷は肩鎖関節,鎖骨,胸鎖関節の 3 部位に分類できる.文献を渉猟した範囲
では,肩関節損傷を伴う STD には横隔神経麻痺の合併報告は無く,鎖骨や胸鎖関節損傷
を伴う場合に横隔神経麻痺が散見された.STD には横隔神経麻痺を合併することがあり
注意を要する.
【背景】本態性血小板血症は末梢血中の血小板増加による血栓症状や血小板の機能の異常
や凝固因子の欠乏による易出血症状などで発見される.脊髄損傷の加療中に発症した本態
性血小板血症の一例を経験したので報告する.【症例】67歳女性,階段から転落し四肢の
運動麻痺を認め当院に救急搬送となる.来院時,四肢の運動麻痺を認め MRI にて C2-4に
脊髄損傷と診断した.入院時より深部静脈血栓症の予防のため下肢のフットポンプを使用
した.翌日に呼吸状態が悪化し人工呼吸器管理となる.受傷12病日に頚椎椎弓形成術,気
管切開術を施行した.術後,徐々に血小板の増加を認めたが術後による炎症や人工呼吸器
管理による感染などによる二次性血小板増加症と考えて経過観察した.血小板が100万/
µL を超えたためは抗血小板剤などの投与を開始した.また血液内科に紹介し本態性血小
板血症と診断された.血小板増加に関して精査加療中に深部静脈血栓症を発症した.
【考察】
脊髄損傷のため,めまいや頭痛などの自覚症状を確認することが困難な状態であった.血
小板増加に関しては,多くは二次性血小板増加症であるが本態性血小板血症も念頭におき
血栓症のリスクを考えながら精査加療する必要があると考えられる.
外傷性心肺停止の原因究明 〜頚椎損傷を死後 CT で検討する〜
高知医療センター整形外
科
多田圭太郎
大森 貴夫
田村 竜
井上 智雄
松本 俊之
【はじめに】頚椎損傷は多発外傷において,外表所見に乏しいため,見逃されている可能
性がある.近年,救急搬送時の心肺停止症例に対して原因究明目的に Autopsy imaging(Ai)
として Post Mortem Computed Tomography(PMCT)を施行する施設が増加し,当院
でも死後画像検索として行っている.今回,外傷性心肺停止症例に対して施行した
PMCT での頚椎損傷の有無について検討した.【対象および方法】対象は2005年 3 月から
2014年12月に当院へ救急搬送された外傷性心肺停止症例101例のうち PMCT を施行した95
例で,性別は男性66例,女性29例だった.年齢は平均57.5( 2 〜99)歳であった.検討項
目は受傷機転,死因,頚椎 CT の有無,頚椎損傷の有無とした.【結果】受傷原因は交通
事故54例と墜落転落26例が多く,死因は外傷性ショックが74例と大半を占めていた.15例
(15.8%)で頚椎損傷を認め,そのうちの 8 例(8.4%)で死因に関与した可能性があった.
【まとめ】上位頚椎損傷は即死の可能性があり,PMCT によって頚椎損傷が死因に関与し
ている可能性が示唆された.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O9-2
術中 CT 撮影が可能な Hybrid 手術室を利用した脊椎破裂骨折手術の小経験
堺市立総合医療センター
救命救急センター1),堺
市立総合医療センター整
形外科2)
川本 匡規1)
河野 譲二2)
中田 康城1)
横田順一朗1)
O9-3
外傷性胸腰椎損傷に対し後方固定術を行った症例の検討
関西医科大学附属滝井病
院救命救急センター救急
医学科1),関西医科大学
附属滝井病院整形外科2),
関西医科大学附属枚方病
院高度救命救急セン
ター3)
齊藤 福樹1)
石原 昌幸2)
金山 周史1)
岩村 拡1)
和田 大樹1)
北元 健1)
早川 航一1)
中森 靖1)2)
齋藤 貴徳2)
岩瀬 正顕1)
鍬方 安行3)
O9-4
【はじめに】脊椎破裂骨折は神経麻痺,不安定性,後湾変形,脊柱管への骨片突出が強い
ものが手術適応とされるが,手術体位や ligament otaxis による整復で脊柱管の骨片占拠
率は変化するため除圧の要否は判断が難しい.【目的】脊椎破裂骨折で術中 CT による脊
柱管占拠率の再評価が有効か検討すること.【方法と結果】当院では脊椎破裂骨折に対し
2015年 7 月より TOSHIBA 社製 INFX-8000H による術中 CT 撮影が可能な手術室を導入
し,ligament otaxis を用いた後方固定術中の CT 評価で除圧の要否を判断している.術中
CT 評価を行った 3 症例 4 椎体(L1,L2,L1+L5)を検討した.症例は男性 2 名,女性
1 名,平均年齢は47歳であった.脊柱管占拠率は L1椎体で術前53%から術中24%,63%
から40%,L2椎体で52%から38%,L5椎体で69%から63%へ整復された.整復不良と判
断した L5椎体に対し除圧を追加した.後湾変形・疼痛はほぼ残存しなかった.【考察】除
圧の適応に関しては脊柱管占拠率50%以上とする報告が多い.しかし術中体位や ligament otaxis による整復の結果,除圧適応とならない症例があると推測される.本症例で
は75%で術中に CT 評価を行い除圧不要と判断した.【まとめ】脊椎破裂骨折手術に術中
CT 評価が有効となる可能性がある.
【目的】近年,経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を用いた後方固定術が急速に広まり,外
傷領域での報告も散見される.我々の施設においても,当院脊椎外科チームとコラボレー
トし外傷症例への適応を広げてきた.今回,外傷性胸腰椎損傷に対して後方固定術を行っ
た症例に検討を加えたので,これを報告する.【方法】2014年より当院救命センターで加
療した胸腰椎骨折に対して脊椎後方固定術を行った32例を検討対象とした.【結果】症例
は男性24例,女性 8 例.年齢は平均45.1歳.固定方法は経皮的椎弓根スクリューを用いた
ものが20例であった.人工骨(HA)による椎体形成術は17例に行われていた.損傷高位
は第 1 腰椎が 7 例と最も多く,複数椎体損傷を14例に認めた.骨折形態は,AO 分類
typeA が23例,typeB が 4 例,typeC が 5 例 で あ っ た. 出 血 量 は 平 均422ml(PPS 群;
130ml)で,手術時間は平均123分(PPS 群;108分)であった.手術待機日数は平均5.1
日(PPS 群;2.1日)であった.PPS 施行症例で,出血量は少なく,手術時間・手術待機
日数は短い結果となった.
脊髄外傷に対する高圧酸素療法を併用した少量ステロイド投与の効果
自治医科大学附属さいた
ま医療センター救急科
海老原貴之
守谷 俊
【背景】脊髄外傷の高圧酸素療法(HBO),ステロイド治療はエビデンス不足である.
【目的】
非骨傷性頸髄損傷,脊髄損傷(SCI),中心性脊髄損傷(CCS)に対する,HBO とステロ
イドの効果を検討すること.
【対象】2009年から2.5年間で,HBO を行なった 3 疾患23症例.
【方法】 3 疾患に対し HBO を導入し,ステロイドを NASCISⅡか,少容量で計20例に投
与した.検討項目は,入院日数,麻痺改善度,Barthal index(BI)などで,2 つの検討を
行った.【検討 1 】NASCIS 群(N 群)と non-NASCIS 群(non-N 群)間比較.【検討 2 】
MRI T2WI 髄内高信号のある群(H 群)と等信号群(I 群)間比較.
【結果】麻痺は,AIS
C 17例,D 4 例,E 2 例.入院日数,AIS 改善度,BI は治療前36.5 vs 48.3,退院時81.0
vs 86.4,獲得点数 44.5 vs 35.8 で有意差なし.H 群(10例)vs I 群(10例)比較では,
BI の獲得点数33.8 vs 48.8と,Ⅰ群で大きい傾向だった.AIS 悪化例はなく,6 例(治療
前 AIS D と E)は不変だった.有害事象は,HBO で耳痛が 4 例,ステロイドは有意差なし.
【考察/まとめ】HBO 併用ステロイド治療により74%の症例が改善した.ステロイド投与
量による差異はなく,比較的少量のステロイド投与でも NASCISⅡと同様の改善が見込め
るものと思われた.
― 219 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O9-5
脱臼を伴う頸髄損傷おける脱臼整復時間と神経学的予後の関連
神戸赤十字病院整形外
科1),兵庫県災害医療セ
ンター2)
武田 和也1)
水田 宜良2)
矢形 幸久2)
松山 重成2)
石原 諭2)
中山 伸一2)
伊藤 康夫1)
O9-6
spinal damage control を考慮した脊髄外傷治療の経験
関西医科大学付属滝井病
院救命救急センター1),
関西医科大学救急医学講
座2),関西医科大学脳神
経外科学講座3)
岩瀬 正顕1)
中森 靖1)
斉藤 福樹1)
早川 航一1)
和田 大樹1)
岩村 拡1)
鍬方 安行2)
淺井 昭雄3)
O10-1
【背景】脱臼を伴う頸髄損傷に対する脱臼整復は可及的早期が望ましいという報告が多い
が,理想的な時期は明確でない.我々は頸椎脱臼に対し可及的早期にハローリングを使用
した徒手整復を行っている.【対象と方法】2007年からの2015年に当施設で治療を行った
頸椎・頸髄損傷のうち,Asia Impairment scale(AIS)A 〜 D,Allen 分類 DF の中下位
頸椎脱臼で徒手整復可能であった29例(男21例,女 8 例,平均年齢60.3歳)を対象として,
受傷 1 か月後の麻痺の推移を AIS で評価し受傷から整復までの時間(以下整復時間)と
の関係を調査した.【結果】整復時間は平均9.7時間,中央値5.5時間であった.麻痺が改
善した14例(以下改善群),麻痺が変わらなかった15例(以下不変群)を比較すると改善
群は整復時間平均6.1時間,中央値4.5時間,不変群は平均13時間,中央値 7 時間であり,
改善群で整復時間が短い傾向にあった(p=0.09).不変群には他院からの転送,救急搬
送の遅れ,診断の遅れが原因で整復時間が 1 日を超えた症例が 3 例あった.【考察】これ
までの結果を踏まえ当施設では 6 時間以内を一つの目安とし早期整復を心掛けている.完
全麻痺であっても麻痺の改善が得られる症例があり,時間を意識した対応が肝要と考える.
【目的】脊椎脊髄外傷・多発外傷の患者では,循環不安定,既往症などで,一期的手術で
生じる過大侵襲を回避する目的で,spinal damaage control:SDC を考慮する患者が存在
する.我々は,多発外傷治療・脊椎脊髄損傷例を経験したので文献的考察を加え報告する.
【方法】我々の医療圏域では,救命救急センター 2 施設が,脊椎脊髄損傷・多発外傷の緊
急手術に対応している.【結果】救命センターに運ばれた脊髄損傷は過去 5 年間で年平均
24人で,直接搬送72%,域内二次医療機関から 8 %,域外三次医療機関から12%であった.
3 症例が SDC・治療工夫を要した.骨盤骨折・出血性ショックと腰椎損傷 1 例で,救急医
と脊椎外科医が連携し蘇生と腰椎骨盤固定を行った.動揺胸部外傷・脊椎損傷例では,早
期脊椎固定・気管切開/胸郭内固定を施行した.頸椎損傷に伴う外傷性 CPOA 蘇生後 1
例では頸椎固定と神経蘇生を平行して施行した.【考察】脊髄損傷例の 6 %で SDC の概念
を用いた治療を要した.【結語】 1 .SDC の概念を用いて治療計画に工夫を要する脊椎脊
髄損傷治療例を経験した.2 .脊椎脊髄損傷の分類に応じた治療推奨レベルを考慮し,
SDC の概念を共有しつつ複数診療科と連携した治療の必要性を再確認した.
当院における骨盤外傷22例の検討
健和会大手町病院外科1),
救急科2),麻酔科3)
花木祥二朗1)
村田 厚夫2)
山本 康之2)
中沼 寛明1)
吉村真一朗3)
三宅 亮1)
古城 都1)
西中 徳治2)
【はじめに】当施設は放射線科医が在住しておらず,体幹部外傷に対する緊急 IVR は
Acute care surgeon が行っている.また初療室から外科医,麻酔科医,整形外科医,研
修医からなる外傷チームでの一連の診療を行っている.骨盤骨折に対しては循環動態が不
安定な症例に対しても積極的に IVR を先行させた治療戦略を行っている.【目的】当院の
骨盤骨折 IVR 症例の現状を明らかにし,治療戦略について考察する.【対象】2014年 1 月
〜2015年12月に当院に搬送され IVR を施行した骨盤骨折23症例のうち,搬入時 CPA 症例
を除いた22症例を対象とし比較検討した.【結果】男/女:11/11,平均年齢68.7歳(21歳
〜91歳).墜落・転落 7 例,交通外傷14例,挟圧外傷 1 例.循環動態 Stable: 5 例,Responder: 6 例,Transient Responder: 8 例,Non-responder: 3 例. 搬 入 か ら IVR 開
始までの平均時間は95分(32分〜184分).平均 RTS/ISS は6.929/22.5(ISS15点以上15例).
平均 Ps0.791. 転機は全例生存に至った.臀部筋壊死や皮膚壊死などの術後合併症は認め
なかった.【考察】22症例全例において救命できた.循環動態が不安定である症例におい
てもチームによる循環管理のサポートのもと,また常に開胸・開腹に移行できる万全の体
制を整えた上での TAE は有効であると考えられる.
― 220 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O10-2
寛骨臼・骨盤輪損傷に対する経カテーテル動脈塞栓術後合併症の検討
埼玉医科大学総合医療セ
ンター高度救命救急セン
ター
八幡 直志
井口 浩一
三浦慎次郎
安藤 光宣
米本 直史
乾 貴博
中川 誉之
古賀 陽一
吉田 理
芝山 浩樹
森井 北斗
大饗 和憲
福島 憲治
上村 直子
石塚 京子
O10-3
骨盤輪骨折における創外固定の止血効果 - 日本外傷データバンクによる検討 -
高知医療センター救命救
急センター1),高知医療
センター整形外科2)
大森 貴夫1)
喜多村泰輔1)
松本 俊之2)
田村 竜1)
野島 剛1)
山本浩太郎1)
多田圭太郎2)
O10-4
【目的】出血性ショックを伴う寛骨臼・骨盤輪損傷で,CT 画像上血管外漏出像がある場
合に,我々は原則的に経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を行っており,その合併症につ
いて調査した.【対象と方法】2005年12月から2015年12月まで当院に搬送され TAE を行っ
た寛骨臼・骨盤輪損傷126例のうち,合併症を発症した 4 例を対象とした.男性 1 例,女
性 3 例,受傷時平均年齢は76.5歳(70〜84歳).全て ISS を算出した.X 線,CT 画像,
動脈造影画像を調査し,その他の合併損傷,塞栓血管,骨折型を評価した.骨折型は AO
分類に従って分類した.【結果】合併症の発症率は3.1%で,臀筋壊死 3 例,直腸潰瘍 1 例
であった.骨折型は typeA 1 例,typeB 2 例,typeC 1 例であった.ISS は平均38(29〜
48).塞栓血管は全て両側内腸骨動脈で,塞栓材料は全てゼラチンスポンジであった.直
腸潰瘍は完治し臀筋壊死は 2 例で創が閉鎖した.【考察】TAE 後合併症には,死亡例の報
告もあり見逃せない.我々の調査で死亡例はなかったが,臀筋壊死では受傷時の臀筋損傷
や引き続く臀部コンパートメント症候群など TAE 以外の要因も複雑に影響していると考
えられ,注意深い観察と処置が必要である.
【はじめに】骨盤輪骨折における創外固定は,初期治療の止血処置として広く行われている.
しかし,骨盤輪骨折の安定化による止血効果を述べた報告は多く認めるが,有効性におい
て一致した見解は得られていない.この研究では,日本外傷データバンク(JTDB)のデー
タベースを用いて,単独骨盤輪骨折おける創外固定の有効性を検討した.【対象と方法】
2004年から2014年までのデータを使用した.他の部位からの死亡原因を除外するため,単
独重度骨盤輪骨折(AIS が 4 以上)のみを対象とした.15歳以下,来院時心肺停止,救急
外来での早期死亡,データがそろっていない症例は除外した.死亡例は 7 日以内の早期死
亡とした.【結果】単独骨盤輪骨折は818例だった.創外固定群は286例,非創外固定群は
532例だった.死亡例は創外固定群は 9 例,非創外固定群は53例でオッズ比0.33[95%信
頼区間,0.12-0.76]と有意差を認めた.さらに,交絡因子の調整を傾向スコアを用いて行っ
た結果でもオッズ比0.38[95%信頼区間,0.15-0.96]となり有意差を認めた.【考察】骨
盤輪骨折における創外固定は止血効果により死亡率を減少させる効果があることが示唆さ
れた.
本院での骨盤骨折に対する IVR の検討
巨樹の会新武雄病院総合
救急科
堺 正仁
本院で経験した骨盤骨折の検討を IVR を施行した高齢者症例を中心におこなった.平成
22年 8 月から平成27年12月までで,総数50例,男26女24平均年齢76.6歳であった.血管造
影のみが30例,IVR 塞栓術施行例14例,創外固定併用 6 例であった.合併損傷は骨関節
系が80%と最多で腹部,胸部,頭部の順であった.来院時心肺停止 1 例,IVR 成功後 3
例を失った.IVR 施行後血圧安定し ICU で管理し死亡した 3 例につき検討した.3 例の
年齢は89歳,91歳,85歳といずれも高齢で ISS は30前後と低値であったが,ICU 入室後
線溶系亢進による凝固系破綻と血小板減少による外傷性凝固傷害で失った.本院は地方都
市の救急病院で血液製剤のストックも乏しく外傷患者受け入れシステムにも多くの問題を
抱えている.本症例を検討後病院内で重篤な外傷患者の対応を病院内で話し合い改善策を
模索中であり報告する.
― 221 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O10-5
骨盤骨折に対する血管造影術における外腸骨動脈領域損傷に関する検討
福井県立病院救命救急セ
ンター
谷崎 眞輔
前田 重信
又野 秀行
O10-6
当院に搬送された骨盤骨折についての検討
東海大学医学部外科学系
救命救急医学
平良 隆行
大塚 洋幸
上畠 篤
守田 誠司
中川 儀英
猪口 貞樹
O11-1
【背景】骨盤骨折に対する動脈塞栓術は止血の一方法として確立されており,内腸骨動脈
塞栓術は広く施行されている.その反面,外腸骨動脈やその分枝損傷の合併率は低く,そ
れに関する検討はこれまで十分になされていない.【方法】対象は2005〜2015年までの10
年間に当院救命救急センターにて骨盤骨折に対する血管造影術を施行された90症例.血圧,
脈拍,Non-responder,ISS,死亡率,骨折形態分類,骨折部位などを検討項目とし,外
腸骨動脈損傷群(損傷群)と非損傷群とを比較検討した.【結果】外腸骨動脈本幹,分枝
損傷は10例(11%)に認められた.損傷動脈は外腸骨動脈( 2 例),浅腸骨回旋動脈( 1 例),
深腸骨回旋動脈( 3 例),下腹壁動脈( 2 例),外側大腿回旋動脈( 1 例),閉鎖動脈( 1 例)
であった.生理学的指標,重症度に関する検討では,non-responder のみが損傷群で有意
に多かった(p=0.03).骨折形態分類,骨折部位については,二群間に有意差を認める
項目はなかった.【結語】骨折形態,部位にかかわらず,バイタル不安定な場合には,外
腸骨動脈領域損傷合併の可能性を考慮するべきであると思われた.
近年,骨盤骨折の治療は多様化しており,特にショックを来した骨盤骨折に対して,緊急
血管内治療(以下 IVR)での治療が行われる機会も多いが,その適用,および合併症の
頻度,危険因子について明確な報告は少ない.今回,我々は当院に搬送された骨盤骨折45
例に対して,治療選択,合併症頻度,転帰を含め検討したので報告する.【対象】当院に
2011年 4 月から2015年 3 月までに搬送された骨盤骨折203例中36例.【方法】対象の来院時
バイタルサイン,採血結果,画像所見,創外固定および観血的整復固定術,IVR の有無,
血栓塞栓術の有無,入院後の合併症頻度,死亡率,退院時の安静度を診療録に記載された
内容を元にデータベース化し検討した.【結果】年齢は平均60.6±23歳,女性47.2%,
RTS7.467±1.04,ISS20.2±11.8であった.来院後,全例 CT 検査が施行されており,そ
のうち血腫の大きさの平均は59.17ml,IVR が行われたのは16例(44.4%),骨折の形態
は安定型23例(46.3%),不部分不安定型 7 例(16.4%),安定型 6 例(16.7%)であった.
合併症は17例であり,死亡率は5.6%であった.入院後の合併症を IVR の有無で比較した
が,有意差はなかった(p=0.54).【結論】IVR 施行により,入院後の合併症が増加する
とはいえない.
股関節脱臼整復困難症例の検討
帝京大学医学部付属病院
外傷センター
菱川 剛
黒住 健人
鈴木 卓
新藤 正輝
【目的】股関節脱臼で徒手整復困難な症例は 2 %-15%と言われているが,徒手整復困難例
にどのような特徴があるかは不明である.本研究の目的は整復困難例の特徴を知ることで
ある.【方法】2010年 1 月 1 日より2015年12月31日までの 6 年間に当センターで加療した
保存治療を含む股関節脱臼36例を対象とした.受傷時の単純 X 線画像,受傷機転,脱臼
方向,脱臼整復までの時間,合併骨折などと徒手整復との関係を検討した.【結果】受傷
機転は17例がバイク事故の高エネルギー外傷であった.脱臼方向は後方が30例,前方(閉
鎖孔含む)が 6 例であった.脱臼整復までの時間は 6 時間以内が83%であった.整復困難
例は36例中 5 例(13%)あり,4 例に緊急手術を行った.残りの 1 例は脱臼整復を行わず,
後日 THA を行った.受傷機転,脱臼方向,脱臼整復までの時間は,整復の困難さとは関
係しなかった.徒手整復困難な原因としては,残存骨頭の後壁陥入,後柱転位,転位した
頚部骨折合併などであった.【考察】股関節脱臼における徒手整復の困難さは脱臼方向や
脱臼整復までの時間の影響は少なく,合併骨折型の影響が大きいと考えた.特に,後壁に
残存骨頭が嵌入した症例,後柱転位例,転位した頸部骨折合併例では観血的整復を最初か
ら考慮すべきである.
― 222 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O11-2
麻酔下ストレステストによる外側圧迫型骨盤輪骨折の不安定性の評価
福山市民病院救命救急セ
ンター整形外科1),大阪
大学医学部附属病院高度
救命救急センター2)
小川 健一1)
小西 良一2)
O11-3
IVR-CT を活用し,早期退院できた高齢者骨盤骨折(AO C type)の治療経験
都立墨東病院救命セン
ター
西村 健
横山 太郎
岡田 寛之
藤田 英伸
杉山 和宏
浜邊 祐一
O11-4
【はじめに】外側圧迫型骨盤輪骨折(以下 LC)は手術適応の判断が困難である.我々は
麻酔下ストレステストを行い,手術適応を決定しているので報告する.【対象と方法】対
象は麻酔下ストレステストを行った不安定型骨盤輪骨折18例のうち,LC の 8 例とした.
男性 3 ,女性 5 例,平均年齢57.5歳で,平均 ISS は33であった.ストレステストは全身麻
酔下に行ない,不安定性の程度をストレス前とストレス中のいわゆる tear drop 間の距離
の差で数値化した.骨折型から手術群と非手術群を比較し,不安定性の大きくなる症例の
骨折型を検討した.【結果】不安定性は 4-35mm,平均16.8mm であった.手術は 3 例
(37.5%)に施行され,その不安定性は平均29.3mm であった.骨折型は,手術群では恥
骨の骨折型が斜骨折で,非手術群ではアライメントを保ったまま粉砕していた.【考察】
骨盤輪は受傷後周囲の筋肉の緊張によりほぼ正常な形態に戻ることがあり,一見不安定性
がないように見えてもストレステストで大きく転位する症例がある.不安定性の大きな骨
折は,疼痛のため全身管理に制限がでやすいため手術が望ましい.不安定性の大きくなり
やすい骨折型は恥骨肢の斜骨折で,アライメントを保ったまま粉砕している症例は不安定
性が小さかった.
【背景】当院では2014年 7 月より IVR-CT を導入し,予後改善に役立てている.【症例】
85歳 女 性. 歩 行 中 に 乗 用 車 に 跳 ね ら れ, 当 院 救 命 セ ン タ ー に 搬 送 さ れ た. 病 着 時
E4V4M5, HR132/分,BP 80/52mmHg とショックバイタルと意識障害を認めた.気管挿
管後,病着後22分で pan scan CT を撮像した.AO C type の骨盤骨折と多発肋骨骨折・
両側肺挫傷を認めた.病着後26分で輸血を,病着後43分で TAE を開始した.その後,初
療室で創外固定術を行った.左上腕骨骨幹部骨折・右橈骨遠位端骨折・右脛骨天蓋骨折も
認めた.左下腿・足部のコンパートメント症候群に対して減張切開も行った.クリオプレ
シピテートを含む大量輸血を行った.受傷14日目に左仙腸関節脱臼骨折に対して仙腸関節
プレートを用いた観血的手術,受傷20日目に骨盤輪骨折に対して internal anterior fixation と左上腕骨骨折に対して髄内釘手術を実施した.受傷後21日目に車いす乗車が可能と
なった.受傷49日目に生存退院した.【考察】当院では IVR-CT を導入し,輸血量の減少
ひいては生存率および機能予後の改善を図っている.救命しえなかった高齢者重症多発外
傷でも種々の取り組みで生存退院が期待できる.
当院における骨盤骨折に対する取り組みと効果
製鉄記念広畑病院姫路救
命救急センター救急科1),
製鉄記念広畑病院整形外
科2)
谷口 智哉1)
中村 雅彦1)
圓尾 明弘2)
【目的】重症骨盤骨折症例に対してはシームレスな初期診療が要求され,関係する全職種
間で治療戦略を共有する必要がある.今回我々は整形外科と共同で TAE や創外固定など
の止血処置に迅速に繋げるための取り組みを行ったので,その効果について考察する.【方
法】2013年 1 月〜2015年12月の 3 年間に当センターへ搬送された骨盤骨折を伴う外傷症例
193例中,骨盤骨折が原因でショックに至った23例について検討した.取り組みは全職種
を対象に2014年 7 月までに行い,初期診療アルゴリズムの共有化を図った.2014年 7 月以
前を前期(12例),2014年 8 月以降を後期(11例)とし,搬入から止血処置開始までの時
間とショック離脱に要した時間について検討した.【結果】止血処置開始までの時間は平
均で前期群101.1分,後期群93.3分,ショック離脱までの時間は平均で前期群32.3時間,
後期群29.1時間であった.TAE は前期群 9 例,後期群10例,創外固定は前期群 7 例,後
期群 8 例に実施した.平均 ISS は前期群23.7,後期群32.6,平均 Ps は前期群0.87,後期
群0.71であった.【考察】後期群において止血処置開始までの時間,ショック離脱に要し
た時間の両者とも短縮しており,我々の取り組みが早期のショック離脱に寄与した可能性
が示唆された.
― 223 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O11-5
殿筋壊死を合併し治療に難渋した Morel-Lavallee Leision の 1 例
山梨県立中央病院救命救
急センター1),山梨県立
中央病院整形外科2)
木下 大輔1)
池田 督司1)
加藤 頼子1)
河野 陽介1)
松本 学1)
宮崎 善史1)
小林 辰輔1)
井上 潤一1)
岩瀬 史明1)
定月 亮2)
岩瀬 弘明2)
O11-6
後部尿道外傷の初期治療における primary realignment の功罪
防衛医科大学校泌尿器科
学講座
堀口 明男
新地 祐介
O12-1
【はじめに】Morel-Lavallee leision(以下 MLL)は,骨盤周囲の外傷に伴い,剪断力によっ
て生ずるデグロービング損傷で,頻度は稀である.今回,殿筋壊死を合併し治療に難渋し
た MLL の 1 例を経験した.【症例】63才男性.大型バイクにて時速80km で走行中に左側
へ転倒,数10m 引きずられたとのことで救急搬送.不安定型骨盤骨折にて緊急動脈塞栓,
創外固定.左臀部に皮下血腫あり後日ドレナージを検討とし ICU 入室.左臀部皮下血腫
は増大傾向にあり MLL と診断されたが,第 2 病日に出血性ショックから全身状態は安定
せず,早期の手術に踏み切れなかった.その後殿筋壊死を疑わせる皮膚の色調悪化を来た
しており,第 7 病日に左臀部血腫ドレナージ施行するも,残存血腫及び殿筋壊死に伴う感
染が疑われ,第36病日に再度血腫ドレナージ及び壊死した殿筋のデブリドマン施行.術後
より持続陰圧吸引療法施行.第63病日に創閉鎖,第84病日に自宅退院となった.【考察】
MLL に殿筋壊死を合併している場合,その感染率は上昇する.早期のデブリドマンが有
効とされるが,本症例では全身状態が安定せず早期の手術に踏み切れなかった.本症例で
の反省を踏まえ,文献的考察をもとに MLL の治療適応及び手法について考察する.
【目的】骨盤骨折に伴う後部尿道外傷の初期治療には,膀胱瘻(suprapubic tube,SPT)
造設,カテーテルにより尿道の連続性を確保する primary realignment(PR)の選択があ
る.PR は SPT に比べて尿道狭窄症が続発しにくく,続発しても重症化しないことが利点
と認識されてきた.後部尿道外傷における PR の意義を検討した.【方法】後部尿道外傷
後の尿道狭窄症に対して尿道形成術を施行した63例を対象に,受傷後14日以内に選択され
た治療法と臨床経過の関連を検討した.【結果】SPT 施行例は49例(77.8%,SPT 群),
SPT に PR を追加,もしくは PR のみ施行された例は14例(22.2%,PR 群)であった.
尿道形成術前に経尿道的治療歴を有した例は SPT 群10例(20.4%),PR 群 7 例(50.0%)
で,PR 群で有意に多かった(p=0.0278).受傷から尿道形成術までに要した期間は,
SPT 群が平均47ヶ月,PR 群が平均133ヶ月で,PR 群が有意に長かった(p=0.0356).両
群間で尿道狭窄長,手術時間,出血量,手術成功率に有意差はなかった(順に,p=0.1346,
p=0.727,p=0.4709,p=0.4913).【考察】PR の選択は尿道狭窄症の軽症化には寄与し
ておらず,成功率の低い経尿道的治療を選択するきっかけになり,罹患期間を無用に延長
させていた.
呼吸状態の悪化を伴わなかった脂肪塞栓症候群の 2 例
岐阜大学医学部附属病院
高度救命救急センター
水野 洋佑
神田 倫秀
山路 文範
鈴木 浩大
田中 卓
中島 靖浩
中野 志保
橋本 孝治
加藤 久晶
吉田 省造
吉田 隆浩
豊田 泉
小倉 真治
【はじめに】脂肪塞栓症候群は,呼吸器症状,中枢神経症状,点状出血を主症状とする.
今回,呼吸状態の悪化を伴わないが,中枢神経症状の発症を契機として同症候群を診断し
得た多発外傷の 2 例を経験した.【症例 1 】20歳代女性,交通外傷.来院時 GCS E3V5M6
(頭部外傷なし)
,両側大腿骨骨幹部骨折,左外傷性気胸,頸椎骨折,ISS27を認めた.同
日右大腿骨髄内釘固定術,左下肢創外固定術を施行した.受傷36時間後に意識障害と眼瞼
結膜の点状出血を認め脂肪塞栓症候群と診断した.呼吸状態の悪化はなかった.
【症例 2 】
50歳代男性,交通外傷.来院時 GCS E4V5M6,右大腿骨転子下骨折,右肺挫傷,脳挫傷,
ISS27を認めた.受傷翌日,右大腿髄内釘固定術を施行した.受傷30時間後に覚醒不良,
受傷54時間後に眼瞼結膜の点状出血を認め脂肪塞栓症候群と診断した.呼吸状態の悪化は
なかった.【考察】多発外傷の 2 例において,呼吸器症状を伴わない脂肪塞栓症候群の合
併を経験した.外傷患者では,頭部外傷の合併や鎮静・鎮痛薬の影響により意識レベルが
修飾されるため,同症候群診断の為には,より注意深い観察,評価が必要である.
― 224 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O12-2
MATILDA 法による足関節骨折における Joint distraction と Non-distraction の比較
秋田大学医学部整形外科
野坂 光司
島田 洋一
宮腰 尚久
山田 晋
齊藤 英知
木島 泰明
O12-3
高齢者足関節周辺骨折における内固定と Ilizarov 創外固定の治療成績の比較
秋田大学医学部整形外科
野坂 光司
島田 洋一
宮腰 尚久
山田 晋
齊藤 英知
木島 泰明
O12-4
【背景】高齢者の足関節骨折は,外傷性足関節症になりやすい.変形性足関節症に対して
創外固定器を用いて牽引をかけることにより,機能的改善がみられるが,足関節骨折に対
して,牽引をかけることによる効果は不明である.Ilizarov 創外固定器は,靭帯牽引法を
用いて閉鎖的に骨折部を整復する MATILDA 法(Multidirectional Ankle Traction using
Ilizarov external fixator with Long rod and Distraction Arthroplasty of Pilon fracture)
により,軟部の合併症を減少させ,早期荷重を可能にする.【目的】足関節骨折に対して
distraction をかけて治療した群(Joint distraction 群;以下 D 群)と distraction をかけな
いで治療した群(Non-distraction 群;以下 N 群)を比較することである.【対象】60歳
以上の足関節周辺骨折(足関節単果骨折は除外)42例,D 群15例,N 群28例.荷重は術直
後から許可した.【結果】平均矢状面可動域:D 群38.9°,N 群45.3°.アメリカ足の外科
学会スコア:D 群平均94.2点(72〜100),N 群平均70.2点(42〜100).【考察】高齢者足
関節周辺骨折において,創外固定を用いて Joint distraction を併用することは,治療の有
用なオプションのひとつになる可能性がある.
【背景】高齢者の足関節周辺骨折では,老人性皮膚萎縮があり bulky な内固定材により皮
膚障害をきたしやすい.また骨脆弱性から術後荷重開始時期が遅れ,入院が長期化する.
【目的】高齢者足関節周辺骨折における内固定と Ilizarov 創外固定の治療効果を比較する
こと.【対象】脛骨遠位部骨折など60歳以上の36例,内固定群19例,Ilizarov 創外固定群
17例.平均年齢:内固定群68.4歳,Ilizarov 群69.2歳.荷重:内固定群は術後 6 〜 8 週か
ら全荷重.Ilizarov 群は術後 1 日から全荷重.【結果】入院期間:内固定群79.2日,Ilizarov 群29.2日(P<0.05).矢状面可動域:内固定群45.9°,Ilizarov 創外固定群43.3°.
骨密度 YAM:内固定群62.9%,Ilizarov 群56.0%.AOFAS スコア:内固定群平均86.2点,
Ilizarov 群平均90.3点.外科的追加処置を要した皮膚障害:内固定群:21.1%,Ilizarov
創外固定群: 0 %.【考察】高齢者足関節周辺骨折において,Ilizarov 創外固定は治療の
有用なオプションのひとつになりうる.
転位の少ない骨粗鬆症性骨折に対するイリザロフ式創外固定器の有用性
秋田大学医学部附属病院
整形外科秋田イリザロフ
法グループ
柴田 暢介
野坂 光司
阿部 秀一
富岡 立
千田 秀一
青沼 宏
土江 博幸
益谷 法光
島田 洋一
【はじめに】近年骨粗鬆症高齢者の増加に伴い軽微な外傷によって生じる転位の少ない脆
弱性骨折も増加している.ギプスによる保存療法を選択した場合,免荷とそれに伴う入院
が必要になることが多い.一方,イリザロフ式創外固定器による手術を選択すると短時間
で出血量も少ない手術が可能であり,さらにその強固な固定力により術直後から全荷重で
の歩行ができる.
【目的】軽微な外傷によって生じる転位の少ない骨粗鬆症性骨折に対す
るイリザロフ式創外固定器の有用性を検討すること.【対象と方法】対象は2008年以降,
イリザロフ式創外固定器による definitive external fixation を行った170例のうち,若年症
例や皮切を要した症例を除いた37例(男性 9 例,女性28例).調査項目は手術時間,出血量,
骨癒合率,骨癒合までの期間,合併症の有無とした.
【結果】平均手術時間は88.8分,出
血量は全例記録上は0ml, 骨癒合率は97.3%,骨癒合までの期間は平均102.4日,合併症は
膝関節の拘縮を生じたのが 2 例のみであった.【結論】転位の少ない骨粗鬆性骨折に対し
てのイリザロフ式創外固定器による definitive external fixation は,低侵襲かつ簡便に行
うことができ,術直後より全荷重できることからも有用な治療法である.
― 225 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O12-5
ハンドセラピィを実施した両上肢重度挫滅損傷例より useful hand 獲得の可能性を学んで
湘南鎌倉総合病院湘南外
傷センター1),東京西徳
洲会病院外傷センター2)
馬場 有香1)
対比地加奈子2)
佐々木 淳1)
佐藤 亮1)
小島 安弘1)
伴 光正2)
西田 匡宏1)
松村 福広2)
土田 芳彦1)
O13-1
硬膜損傷を伴う脊椎外傷は遅発性小脳出血を合併しうる
佐賀県医療センター好生
館救命救急センター
屋良 卓郎
牟田 隆則
中村 覚粛
吉富 有哉
甘利 香織
松本 康
小山 敬
佐藤 友子
平原 健司
O13-2
【諸言】両上肢重度挫滅損傷例において,搬送翌日よりハンドセラピィを実施し useful
hand を獲得できたので報告する.
【症例】40歳代女性.交差点で車に衝突され横転し受傷.
近医を経て当センターへ Dr ヘリ搬送された.右上肢は肘関節を含んだ前腕手部の挫滅開
放骨折で,重度の神経・血管損傷と広範囲軟部組織欠損を呈していた.また左手部は広範
囲軟部組織欠損を伴った挫滅開放骨折であった.機能的再建は困難であったが,血行再建
術,遊離組織移植術,神経・腱再建術など延べ 5 回の手術が施行された.セラピィはスプ
リント作製,関節可動域・つまみ動作・ADL 訓練を行った.受傷後 1 ヶ月で食事と電話
操作が自立し,調理練習も行い受傷後 4 ヶ月半で自宅退院,受傷後 1 年で車の運転を再開
した.受傷後 1 年 6 ヶ月の終了時の後遺障害等級は右上肢機能全廃 5 級,左手指機能全廃
7 級であるが,右手は残存した尺骨神経領域の筋と知覚で物を押さえられ,左手は母指と
環指,小指で物を把持でき有用な上肢となった.ADL は FIM 112点,DASH は55点だった.
【考察】後遺障害等級的には機能全廃であるが患者とセラピスト,外科医の一貫治療によ
り useful hand 獲得の可能性を見出せたと考察する.
【背景】頚椎脱臼骨折後に 2 度の遅発性小脳出血を認めた50代女性の症例を経験した.1
度目は入院後 2 日に診断.開頭減圧術にて意識回復し術後経過は良好であった.しかし約
2 ヶ月後に 2 度目の小脳出血を認め脳幹の高度圧迫により死亡に至った.【目的と方法】
2 度の小脳出血の原因を文献的に考察し脊椎外傷時の診療方針について再検討すること.
【結果】MRI にて頚部硬膜損傷および髄液漏の所見を認めた.1 度目の原因は髄液漏によ
る低頭蓋内圧症により出血性脳梗塞を生じたと考えられた.2 度目は受傷後から続く低頭
蓋内圧症に加え水頭症に対する脳室ドレナージが更に頭蓋内圧を低下させ出血したと考え
られた.なお入院時の CTA では鈍的頚部血管損傷は認めなかった.【考察】脊椎損傷後
の遅発性小脳出血の原因を髄液漏と関連付けた報告は渉猟し得た範囲ではない.しかし整
形外科領域では術中の医原性硬膜損傷後に小脳出血を起こす症例の報告が散見される.つ
まり脊椎外傷に硬膜損傷を合併した場合,髄液漏により頭蓋内圧は低下し小脳出血をきた
すと考えられる.
【結論】硬膜損傷を伴う脊椎外傷を認めた場合,遅発性小脳出血により
致死的となる可能性があり十分な説明と可及的早期の修復を検討すべきである.
高エネルギー外傷に対する Trauma Pan Scan CT の意義を考える
公立陶生病院救命救急セ
ンター
市原 利彦
中島 義仁
川瀬 正樹
【目的】いわゆる JPTEC,JATEC における高エネルギー外傷の概念として搬送された外
傷症例の対応のうち全身 Trauma Pan Scan C(PCT)を必要とした症例の妥当性とその
予後について検討し報告する.【対象】救命センターになった後当院で経験した JPTEC
及び JATEC の範疇に相当する高エネルギー外傷533例であり,そのうち PCT 施行例は87
例(16%)を対象とし,その予後を検討した.ISS はすべて16以上であった.【結果】
PCT を行ったうち11例は帰宅,入院73例であった.高度救命センター搬送は 1 例であった.
手術,IVR 等の処置を有したものは14例であり,2 例の死亡を認めた.来院時 CPA を除
き PCT 未施行例では死亡例はなかった.【考察】PCT 不要例には死亡例を認めず,PCT
施行例は重症外傷が多く,緊急手術等処置を要するものが多かった.PCT 導入のタイミ
ングは SS 後で,その判断は初療医であり早期に対応が必要な症例を多く認めた.【結語】
高エネルギー外傷搬送例の中で PCT を必要と判断された症例は重症例が多く,その適応
に関して判断は許容される範囲であり,高エネルギー外傷における PCT の施行は妥当で
あることが示唆された.
― 226 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O13-3
外科治療を要する体幹外傷患者への大動脈遮断手技の比較
東京医科歯科大学医学部
附属病院救命救急セン
ター
白石 淳
八木 雅幸
大友 康裕
O13-4
外傷初期診療における全身 CT 撮影の有効性についての検討
大阪大学医学部附属病院
高度救命救急センター1),
兵庫県立西宮病院救命救
急センター2)
中川 雄公1)
鵜飼 勲2)
大西 光雄1)
小倉 裕司1)
嶋津 岳士1)
O13-5
【背景と目的】本研究では,外科治療を要する体幹外傷患者での蘇生的大動脈バルーン閉
塞術(Resuscitative endovascular occlusion of the aorta, REBOA)と大動脈クランプ術
(Aortic Cross Clamping, ACC)を比較した.【対象と方法】本研究では日本外傷データバ
ンクに登録された外傷症例のうち,REBOA または ACC のいずれかの施行後に体幹の手
術を試行された対象を選択した.来院時収縮期血圧が0mmHg の対象は除外した.TRISS
法による予測死亡率で調整した線形回帰分析で,群間の入院中死亡率を算出し,更に操作
変数法(二段階最小二乗法)を用いて未調整危険因子の調整も試みた.【結果】選択され
た644例の体感外傷症例のうち,459例に REBOA が,152例に ACC が行われ,入院死亡
はそれぞれ60.8%と82.2%に認めた.TRISS 法での予測死亡率で調整後も REBOA 群の
死亡リスクは低く(-14.6%95%CI[-22.2, -6.9]),操作変数法でもこの結果が覆ること
は無かった(-29.8%,95%CI[-77.2, 17.5]).【結語】本研究の結果から,大動脈遮断と
引き続く手術を要する体幹外傷患者で,REBOA は ACC と同等以上の臨床的有効性を備
えていることが期待される.さらなる前向き研究が行われるべきである.
【背景】我々は2010年 4 月より primary survey(PS)に並行して全身 CT(trauma panscan)を撮影してきた.【目的】全身 CT(trauma pan-scan)の有効性を明らかにするこ
と.【方法】当院に直送された外傷患者について来院から全身 CT 撮影開始までの時間及
び緊急手術までの時間を抽出した.2010年 4 月から同年12月までの症例(初期症例)と
2014年の症例を比較した.【結果】症例数は,初期症例147例,2014年症例200例であった.
全身 CT は,初期症例の23.0%,2014年症例の81.0%に実施されており,来院から全身
CT 開始までの平均所用時間は,それぞれ,22.7分から13.2分と短縮された.全身 CT が
撮影され,かつ,来院 3 時間以内に緊急手術が開始された症例について来院から緊急手術
までの平均所用時間を比較すると,初期症例119分,2014年症例51分と大きく短縮されて
いた.2014年の緊急手術症例では予測生存率0.5未満の症例が12例存在していたが,その
うち 4 例(33.3%)を救命した.【考察】全身 CT の導入後,全身 CT の撮影開始までの
時間は短縮され,緊急手術が早期に開始されることで重症外傷の救命に寄与したこと考え
られた.【結語】PS に並行して実施する全身 CT は重症外傷の救命率向上に繋がる可能性
がある.
JRC 蘇生ガイドライン2015・脳神経蘇生における頭部外傷および Spinal Emergency の新設
富山大学大学院危機管理
医学(救急・災害医学)1),
日本医科大学附属病院高
度救命救急センター2),
日本医科大学多摩永山病
院救命救急センター3),
国際医療福祉大学熱海病
院神経内科同脳卒中・神
経センター4)
奥寺 敬1)
荒木 尚2)
畝本 恭子3)
永山 正雄4)
【目的】JRC(日本蘇生協議会:Japan Resuscitation Council)蘇生ガイドライン2015は日
本発の蘇生ガイドラインとして,ILCOR(International Liason Committee On Resuscitation)の CoSTR(Consensus on Science and Treatment Recommendarions)をもとに開
発され,AHA(American Heart Association),ERC(European Resuscitation Council)
と同じレベルのガイドラインとして公開されている.【方法】国際的には,神経蘇生は
PCAS(Post Cardiac Arrest Syndrome)を主な対象としているが,JRC ではガイドライ
ン2010において「神経蘇生」を独立した章として公開した.ここでは成人の救急・集中治
療を要する症候と疾患・病態が含まれている.2015では,第 6 章脳神経蘇生の症候と病態
に,新規項目として「頭部外傷」と「Spinal Emergency」を追加した.
【結果】この「頭
部外傷」と「Spinal Emergency」脳神経蘇生の観点からのガイドラインであるが,外傷
初期診療ガイドライン日本版および外傷病院前救護ガイドラインに準拠する形で作成され
た.【考察】蘇生と外傷病院前救護・外傷初期診療は密接な関わり合う.外傷医療をさら
に発展させるためにも蘇生ガイドラインとの連携は重要である.
― 227 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O14-1
電話救急相談における小児頭部外傷のオーバートリアージ
東京消防庁救急相談セン
ター実務委員会
石川 秀樹
石原 哲
三浦 邦久
金 史秀
森村 尚人
太田 祥一
O14-2
両側前頭側頭大開頭による外減圧術の一例
大阪府立中河内救命救急
センター1),東大阪市立
総合病院脳神経外科2)
奥田 和功1) 杉本 正2)
升井 淳1) 玉置 亮2)
岡本 潤1) 横山 和弘2)
田中 淳1)
岡田 昌浩1)
中川淳一郎1)
日野 裕志1)
中條 悟1)
遠山 一成1)
島津 和久1)
岸本 正文1)
加藤 昇1)
塩野 茂1)
白 隆英2)
岸 文久2)
渡邉 敦彦2)
O14-3
救急車利用や病院受診の緊急度に関する一般市民の相談窓口として全国に先駆け開設され
た東京消防庁救急相談センターは 9 年が経過した.看護師が電話で98のプロトコールに沿
い相談を受け,交代で常駐する医師が助言しているが,頭部外傷は外傷関連の相談中最多
で小児(15歳以下)のそれは全相談中でも 2 番目に多い.しかし,2011年中の小児頭部外
傷4,873件のうち671件がプロトコール上「赤(即時救急搬送)」と判断されたが救急搬送
後の入院が13件に留まることを,以前本学会で報告した.「赤」と判断されたが医師助言
を加え最終的に「青(受診不要)」となった相談が2015年 1 〜 6 月の半年間で304件あり,
小児頭部外傷が30件含まれていた.「赤」の比率や入院率から,小児頭部外傷は成人のそ
れより相対的に軽症の相談例が多いと推察された.オーバートリアージを容認して作成さ
れたプロトコールではあるが,医師助言を加え最終判断で「赤」を絞り込んでも救急搬送
後の入院不要例が多く含まれた.【結語】小児頭部外傷の場合,「受傷時から相談時まで無
症状」「経過観察できる十分な環境下にある」「虐待を疑う不自然な要素が感じられない」
の全てを満たすなら,『受診不要・経過観察』へ緊急度を下げることも考慮に値する.
【はじめに】両側前頭葉脳挫傷など一部の外傷形態では CT 所見上正中変位を認めず,片
側大開頭術を適用することが困難で,頭蓋内圧コントロールに難渋することがある.
【症例】
17歳男性.自転車事故により頭部を受傷した.救急搬入時は GCS:E2V3M5の不穏状態
であり,頭部 CT 上,両側前頭葉脳挫傷に加え,右急性硬膜下出血により 8 mm の右→左
正中偏位を伴っていた.全身麻酔下に右穿頭血腫除去術と ICP センサーを留置し,
30mmHg 弱の値を確認,34℃の低体温療法とバルビツレート療法を開始した.第 2 病日
に ICP が30mmHg を超えたため,右脳室ドレナージ術を行い,集中治療を継続した.と
ころが,第 4 病日に再び ICP が30mmHg を超え,CT で正中変位のない脳腫脹が確認さ
れたため,両側前頭側頭開頭による外減圧術を施行した.術後の ICP は18mmHg まで低
下し,速やかに集中治療を終了できた.入院数週間を経て遷延性意識障害は徐々に改善し,
第44病日に頭蓋形成術を施行,第67病日にリハビリ目的で転院した.【まとめ】低体温療
法など治療が長引くと,電解質異常や呼吸障害といった合併症への対処に難渋する.今回,
こういった集中治療中の頭蓋内圧亢進に対し,両側前頭側頭大開頭による外減圧術を施行
し,良好な転帰を得ることが出来た.
重症頭部外傷に対する神経内視鏡手術
福岡東医療センター脳神
経外科1),福岡大学医学
部脳神経外科2)
重森 裕1)2)
涌田 尚樹1)2)
野中 将2)
岩朝 光利2)
大城 真也1)2)
井上 亨2)
【はじめに】TBI の手術は,通常広範囲減圧開頭術が施行される.一方 ASDH など症例に
よっては極小開頭下手術でも予後が良いとの報告がある.今回我々は,TBI に対する内
視鏡下手術の適応について検討を行った.【対象と方法】2010年 1 月〜2014年12月までに
当院救命救急センターにて手術を行った TBI 255症例のうち,神経内視鏡下手術を行った
TBI 症例について retrospective に検討を行った.【結果】対象は ASDH 10症例,SASDH
4 症例,AEDH 2 症例,ICH 10症例の26症例.平均年齢は ASDH 79.9歳,SASDH 86.5歳,
AEDH 22.5歳,ICH 49.6歳.入院時平均 GCS は,ASDH 11.3,SASDH 10.0,
AEDH 7.0,
ICH 8.6. 平 均 手 術 時 間 お よ び 平 均 入 院 期 間 は,ASDH 100分 お よ び9.2日,SASDH
112.5分および11.3日,AEDH 145.5分および35日,ICH 149.9分および27.3日.ICH 症
例に対する小開頭内視鏡手術症例に比べて,穿頭内視鏡手術症例では,手術時間および平
均入院期間が短かった.退院時 GCS は死亡例を除いてすべて改善した.【結語】TBI 症例
に対する神経内視鏡手術は早期に頭蓋内コントロールを可能とし,手術時間を短縮するこ
とが可能な低侵襲手術である.TBI に対する神経内視鏡手術は,術後管理負担を軽減す
る治療法として有効であると考えられ
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O14-4
外傷性くも膜下出血における血液凝固異常の検討
高知医療センター救命救
急センター
野島 剛
喜多村泰輔
村西謙太郎
山本浩大郎
田村 竜
徳丸 哲平
齋坂 雄一
石原 潤子
大森 貴夫
大西 広一
O14-5
外傷性くも膜下出血の CT 分類と予後予測についての検討
済生会滋賀県病院救急集
中治療科1),久留米大学
高度救命救急センター2)
越後 整1)
塩見 直人1)
加藤 文崇1)
岡田美知子1)
野澤 正寛1)
高須 修2)
山下 典雄2)
坂本 照夫2)
O14-6
【はじめに】意識障害を伴った外傷患者の初期治療では,まず頭部外傷を考慮して対応する.
その際に CT を施行し,くも膜下出血を認めた際には外傷性くも膜下出血を考えることが
多いが,中には受傷前に脳動脈瘤破裂による内因性くも膜下出血が意識障害の原因である
こともある.それぞれの治療方法が異なるため,その判断が重要となる.画像検査以外の
判断材料があれば,外傷性・内因性の判断に利用できる可能性がある.【対象】2012年10
月から2015年10月までに当院に発症後24時間以内に搬送されたくも膜下出血患者のうち,
抗凝固薬内服患者を除いた146例(内因性:98例・外因性:48例)を対象とした.【方法】
内因性と外因性の入院時の凝固線溶系検査(PT-INR,APTT,フィブリノーゲン,
FDP,D ダイマー)を比較検討した.【結果】FDP と D ダイマーは外傷患者が内因性患
者と比較して上昇していた.【考察】近年の報告では,頭部外傷患者の血液凝固検査にお
いて FDP と D ダイマーが上昇している報告が散見される.外傷による凝固線溶系の異常
を考慮しつつ,これらの入院時の検査が判別に利用できるかを,文献的考察を交えつつ報
告する.
【目的】外傷性くも膜下出血の頭部 CT 所見から CT 分類を作成し,予後との相関関係に
ついて検討した.
【方法】598例の外傷性くも膜下出血を以下の 4 つのグループに分類した.
Group1:Localized SAH in one or two cistern without mass lesion, Group 2 :Diffuse
SAH without mass lesion, Group 3 :Localized SAH in one or two cistern with mass lesion, Group 4 :Diffuse SAH with mass lesion.【結果】Group1:119例,Group 2 :14例,
Group 3 :280例,Group 4 :176例で,予後良好群は,それぞれ98.3%,85.7%,80.7%,
44.9%と Group 1 と 2 ,Group 3 と 4 の間で有意差を認めた.症候性の脳血管攣縮は全体
の3.3%に認めたが,Group 2 と 4 で有意に多かった.また水頭症は全体の4.8%に認め,
脳血管攣縮と同様に Group 2 と 4 で有意に多かった.以上から mass effect 合併の有無に
関わらず,diffuse SAH を呈する症例では localized SAH と比べ有意に予後不良であり,
また脳血管攣縮や水頭症の出現を予測する因子であることが明らかとなった.【結語】我々
の作成した CT 分類は簡便なものであるが,外傷性くも膜下出血の予後を予測するのに有
用であると考えられた.
外傷性髄液漏に対して脊髄ドレナージ中に緊張性気脳症をきたした一例
神戸市立医療センター中
央市民病院救命救急セン
ター
井上 彰
蛯名 正智
有吉 孝一
【症例】63歳男性.バイク乗車中に車と接触して受傷し,頭蓋底骨折・髄液漏・気脳症・
大動脈解離などの多発外傷で入院となる.頭部外傷安定後に大動脈解離に対して手術予定
としたが,保存的加療で髄液漏の改善認めず第11病日に脊髄ドレナージを開始した.髄液
漏は改善傾向だったが第15病日に意識レベルが低下し,頭部 CT にて前頭葉を圧排する多
量の気脳症を認め緊張性気脳症の診断で緊急開頭修復術施行.術後は意識も改善し第55病
日にリハビリ転院とした.
【考察】緊張性気脳症の発生機序として Ball-valve mechanism
と Inverted bottle mechanism が考えられている.本症例は入院時より頭蓋底骨折に伴い
髄液漏と軽度の気脳症を認めており Ball-valve mechanism の要素が当初から存在してい
たと考えられ,髄液漏に対しての脊髄ドレナージがさらに頭蓋内圧を低下させ Inverted
bottle mechanism により緊張性気脳症に至ったと考えられる.緊張性気脳症は極めてま
れな合併症ではあるが,持続する髄液漏に対して脊髄ドレナージを行う事は決して稀な治
療ではなく,緊張性気脳症に至るリスクは常に考慮すべきである.【結語】髄液漏に脊髄
ドレナージを行う際は合併症として緊張性気脳症が発生しうる事を認識する必要がある.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O15-1
重症多発外傷患者における脳脂肪塞栓症の検討
北海道大学大学院医学研
究科侵襲制御医学講座救
急医学分野
澤村 淳
小館 明
定本 圭弘
村上 博基
水柿明日美
方波見謙一
前川 邦彦
宮本 大輔
小野 雄一
和田 剛志
早川 峰司
丸藤 哲
O15-2
大動脈ステントグラフトを併用した胸腹部多発外傷の治療経験
宮崎大学医学部消化管・
内分泌・小児外科学1),
宮崎大学医学部心臓血管
外科2),宮崎大学医学部
救命救急センター3)
河野 文彰1)
田代 耕盛1)
中尾 大伸1)
落合昂一郎1)
石井 廣人2)
遠藤 穣治2)
松山 正和2)
安部 智大3)
長嶺 育弘3)
中村 栄作2)
落合 秀信3)
中村 都英2)
O15-3
【緒言】重症多発外傷で長幹骨骨折合併の際には,脳脂肪塞栓症に注意が必要である.臨
床症状として12〜72時間の無症状期間が存在し,意識障害,呼吸不全,皮下出血で発症す
る.今回我々は重症多発外傷患者における脳脂肪塞栓症の検討を行い,文献的考察を加え
て報告する.【方法】北海道大学病院先進急性期医療センターに救急搬送された外傷患者
を対象とした.期間は2006年 1 月 1 日から2015年12月31日まで,診療録ベースで検索した.
【結果】 6 例の患者が抽出された.男性 2 名,女性 4 名で平均年齢は45.8歳であった.全
例が高エネルギー交通外傷であった.ISS の平均が22.5点であった.初期無症状期間の平
均が約 3 時間であった.APACHE2スコア平均が25.8点であった.脳 MRI では DWI,
T2WI,FLAIR ともに高信号域を認めた.平均 ICU 在室日数は15.5日,平均入院日数は
32.3日であった.【考察】外傷患者での脳脂肪塞栓症候群は非常に稀である.また,脳
CT では異常が認められないことが多い.MRI は最も鋭敏な診断機器である.【結語】重
症多発外傷患者において脳脂肪塞栓症を見逃さないことが重要である.重症外傷患者にお
いて意識レベルの増悪が認められた場合は,早急に脳 MRI の精査を行うべきである.
【緒言】大動脈ステントグラフトの普及に伴い外傷領域での使用症例も増加している.今
回はステントグラフト併用した胸腹部多発外傷手術症例を経験したので報告する.【症例
1 】63歳,男性.5 m からの転落外傷にて当院救急部に搬送となった.来院時に腹腔内出
血による出血性ショックであったため緊急開腹手術(ダメージコントロール手術)を施行
した.その後に造影 CT での評価を行い,左腎損傷に対しては腎動脈の TAE を施行した.
また弓部大動脈損傷も gradeⅢであったため引き続きステントグラフト内挿術を施行し
た.術後63日目に独歩退院された.【症例 2 】68歳,男性.自動車運転中の衝突事故にて
搬送になった.来院時の造影 CT で弓部大動脈の損傷と腹腔内の free air と extravasation,左大腿動脈の造影不良を認めた.治療優先度を検討した後に左下肢の血行再建術を
先行し,その後開腹操作にて消化管再建と止血操作を行った.GradeⅢの大動脈損傷に対
してはステントグラフト内挿術を施行した.急性期を脱しリハビリ中である.【結語】大
動脈損傷に対するステントグラフトは低侵襲かつ迅速な対応が可能である.胸腹部多発外
傷に対する当科の治療方針も含めて報告する.
当院における高所墜落外傷113例の検討
健和会大手町病院外科1),
救急科2),麻酔科3)
三宅 亮1)
村田 厚夫2)
花木祥二朗1)
中沼 寛明1)
吉村真一朗3)
古城 都1)
西中 徳治2)
【背景・目的】墜落外傷は高エネルギーで予後不良である場合が多い.また交通外傷は減
少しているが墜落外傷は自殺企図もあり減少傾向ではない.今回当院で経験した墜落外傷
について検討する.【対象】2011年〜2015年の 5 年間で当院搬送となった 3 m(≒2 階)
以上からの高所墜落外傷を対象,現場不詳・ER 退院・水面への墜落症例は除外した.【結
果】全113例,男/女:67/46,平均年齢42.5歳( 3 〜86歳),明らかな自殺企図は59例(52.2%),
来院時 CPA24例(12.2%,全例死亡),AIS3以上の頭部外傷47例,骨盤骨折48例,緊急
DSA19例,緊急手術は39例施行されていた.転帰は生存/死亡:79/34例(死亡率30.1%)
で あ っ た.CPA/nonCPA の 比 較 で は, 平 均 高 さ18.8m/7.38m, 目 撃 者 な し50%
/29.2%,自殺企図73.1%/44.9%と有意差が認められた.nonCPA89例の平均 RTS/ISS
は6.968/23.6(ISS15点以上51例),死亡例は10例(出血 DIC 7 ,敗血症 2 ,頭部外傷 1 )
であった.【考察】墜落症例は重症多発外傷である事が多く,外傷・Acute care surgery・脳外科・整形外科・集中治療などの多種チームの初期診療からの参加が必要であ
り,また prehospital の時点で人員確保に加え,DSA 室や手術室などの確保が不可欠であ
る.
― 230 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O15-4
左横隔膜損傷及び胃前壁穿孔を認めた胸部刺創の 1 例
慶應義塾大学病院
拜殿 明奈
渋沢 崇行
増澤 佑哉
泉田 博彬
佐々木淳一
並木 淳
堀 進悟
O15-5
【症例】脳梗塞後遺症により左上下肢不全麻痺のある63歳の男性.明らかな精神疾患は指
摘されていなかった.刃渡り約25cm の包丁による左側胸部刺創を主訴に自宅から当院へ
搬送された.胸部単純レントゲンで左外傷性血胸を認め,ショックに陥ったため胸腔ドレ
ナージを施行した(初回排液量400mL).CT で左外傷性血気胸,左胸壁内の造影剤血管
外漏出像,腹腔内遊離ガスを認めた.左横隔膜損傷,胃穿孔,左肋間動脈損傷と診断し,
緊急開腹手術の方針とした.胃体部前壁及び横隔膜にそれぞれ約 2 cm の切創を認め,縫
合閉鎖および洗浄ドレナージを施行した.皮膚刺入部については,創を延長して観察した
ところ,活動性出血を認めず,明らかな気漏も認めないため,壁側胸膜を縫合し閉胸した.
術後,左胸腔内の残存血腫による炎症反応遷延を認めたが,膿胸に進展することなく,胸
腔ドレナージのみで軽快し,第15病日に独歩退院した.本症例は胸腹部移行帯の刺創で,
胸腔と腹腔の両者に損傷を認めた.鋭的損傷の際の手術の優先順位や術式,開胸の適応に
ついて文献的考察を加え報告する.
広範囲後腹膜欠損により止血に難渋した重症骨盤骨折・腹部臓器損傷の一例
独立行政法人国立病院機
構災害医療センター救命
救急センター
米山 久詞
霧生 信明
岡田 一郎
井上 和茂
加藤 宏
O15-6
30歳男性,3 m の高さより 1 トンの鉄板が落下し受傷,当院搬送.Primary survey で C
の異常(FAST 陽性:モリソン窩,脾周囲,不安定型骨盤骨折)を認め,初期輸液療法,
気管挿管,骨盤簡易固定を施行.Trauma Pan Scan で血管外漏出像を伴う腸間膜からの
出血および後腹膜出血を認めた.外傷外科医と IVR チームの協議で,TAE を優先するこ
ととし,まず両側内腸骨動脈塞栓術を実施.その後初療室にて緊急開腹止血術を施行.小
腸損傷(Ⅱa),S 状結腸損傷(Ⅰa),腸間膜損傷(Ⅱb(M),Ⅱb(S)),腸管内容物流出,
後腹膜破綻・仙骨前面からのびまん性出血を認め,小腸部分切除,S 状結腸部分切除施行.
腹腔内 Towel packing 後,Open Abdominal Management とし,骨盤簡易固定継続し,
ICU 管理.2nd look operation では後腹膜(仙骨骨折部)からの出血が持続,3rd look operation でも改善認めず,骨盤創外固定+経皮的仙腸関節スクリュー固定施行.後腹膜出
血減少し,4th look operation にて人工肛門造設,閉腹を行うことが出来た.下肢神経損
傷由来の疼痛管理に難渋したが,全身状態は良好となり第110病日リハビリ転院となった.
小児重症外傷の治療経験
横浜市立大学附属市民総
合医療センター高度救命
救急センター1),横浜市
立大学大学院医学研究科
救急医学2),横浜市立大
学大学院医学研究科外科
治療学3)
高橋 航1)3)
加藤 真1)3)
山口 敬史1)2)
問田 千晶1)2)
六車 崇1)2)
濱田 幸一1)
春成 伸之1)2)
中村 京太1)2)
森村 尚登1)2)
益田 宗孝3)
【症例】 5 歳,男児.自宅マンションのベランダより転落し受傷,前医に搬送され脳挫傷
および右血気胸の診断で気道確保後胸腔ドレナージ後経過観察していたがドレーンからの
出 血 が 持 続 し た た め 当 セ ン タ ー に 転 院 搬 送 と な っ た. 来 院 時 JCS300,GCS3, 血 圧
65/32mmHg,脈拍数127/分,呼吸数26/分,100%酸素10l/分投与下で SpO2:100%,体
温35.6℃であった.ドレーン流出はなく換気音はほぼ聴取できず,間もなく CPA となっ
たため開胸心臓マッサージを開始,直ちに右側開胸を追加するとドレーンは閉塞し凝血塊
が大量に貯留しており,除去後間もなく自己心拍が再開した.出血は滲出性でガーゼパッ
キングし仮閉胸後 CT を撮影,脾被膜破綻と腹水貯留を認め開腹ガーゼパッキングおよび
IVR 後手術室に移動し右肺底部の裂創を確認,縫合止血し閉胸した.硬膜下血腫および
脳浮腫が出現し開頭減圧・血腫除去を追加,以降状態は緩徐に改善し閉腹・創処置・頭蓋
形成を行って第68病日に ICU を退室した.【結語】鈍的外傷に伴う緊張性血胸の CPA 症
例に対し,緊急開胸血腫除去によって蘇生し得た一例を経験した.心停止の速やかな認知
と初期診療における的確な加療順序の決定および変更が重要であり,文献的考察を加えて
報告する.
― 231 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O16-1
当院における重症肝損傷・脾損傷・膵損傷の開腹手術症例についての検討
兵庫県立淡路医療セン
ター外科
坂平 英樹
宮永 洋人
金本 義明
吉岡 佑太
関根 沙知
澤田隆一郎
上村 亮介
高橋 応典
大石 達郎
宮本 勝文
小山 隆司
O16-2
経過中に自然消失した外傷後肝仮性動脈瘤の一例
大阪府三島救命救急セン
ター
木下 直彦
秋元 寛
三上 高司
本田浩太郎
根来 孝義
O16-3
近年,腹部外傷において Non operative management(NOM)が増加しているが,重症
外傷においては依然開腹手術を要するものが少なからずある.今回,過去 5 年間の当院に
おけるⅢ型肝損傷・脾損傷・膵損傷の治療方針について,開腹手術適応を中心に検討した.
対象となる患者総数は19名(CPAOA を除く),うち肝損傷Ⅲa 2 名・Ⅲb 6 名,脾損傷
Ⅲa 3 名・Ⅲb 6 名,膵損傷Ⅲa 2 名・Ⅲb 2 名であった.合併損傷に関しては,肝損傷
Ⅲb+膵損傷Ⅲa と肝損傷Ⅲa+脾損傷Ⅲa を 1 名ずつ認めた.上記19名の患者の中で開腹
手術になったものは10名,そのうちバイタル不安定や腸管損傷合併のために開腹となった
ものが 7 名であった.残り 3 名はすべてⅢ型膵損傷であり,1 名は主膵管損傷を伴うⅢb
型膵損傷,1 名は刺創によるⅢa 型膵損傷であり,開腹手術適応に異論はない.最後の 1
名は肝損傷Ⅲb+膵損傷Ⅲa の合併損傷で,CT にて肝静脈損傷と膵頭部の重度の挫滅が疑
われる症例であった.肝静脈損傷合併時は NOM の成功率が低いことが報告されており,
また膵頭部周囲にもドレーン留置が望ましいことから,TAE と ENPD 留置のうえ開腹手
術施行とした.この症例について詳しく検討したい.
【緒言】外傷性肝損傷後の仮性動脈瘤は1.2%と報告されている.治療としては経カテーテ
ル的動脈塞栓術(以下,TAE)が一般的であるが,経過観察中に自然消失した症例報告
もあり定まっていない.【症例】45歳,男性.バイク走行中に転倒し右側腹部を打撲,高
エネルギー外傷として当院に搬送された.造影 CT 検査にて肝後区域に広範囲の造影不良
域を認め,肝損傷Ⅲb 型と診断した.造影剤の血管外漏出像は認めず,バイタルは安定し
ており保存的加療の方針とした.第 7 病日に合併症精査のために造影 CT 検査を施行した.
肝 S6領域の 2 箇所に約10mm の仮性動脈瘤の形成を認めたが,1 週間後の造影 CT 検査で
は仮性動脈瘤は自然消失した.【考察】1.10mm 以下,2. 大きさに関わらず一部が血栓化
している,3. 瘤数が 3 箇以内,4. 胆汁性嚢胞・動脈門脈瘻などの合併症がない,仮性動脈
瘤は自然消失したとの報告がある.経過観察中に破裂した報告は 2 例認め,瘤径が10mm
以上であるか胆汁性嚢胞の合併を認めていた.厳重な経過観察の下,瘤径10mm 以内で合
併症を認めない仮性動脈瘤は保存的に治療し得る可能性がある.
【結語】外傷後肝仮性動
脈瘤の治療は TAE が一般的であるが,症例を選べば自然消失を期待して経過観察も可能
である.
外傷に伴い胆管内に多量の気腫を認めた症例
総合大雄会病院救急科1),
愛知医科大学救命救急
科2),愛知医科大学地域
救急医療学寄附講座3)
三宅 央哲1)2)
津田 雅庸1)2)
富野 敦稔2)
高木 省治2)
井上 保介1)3)
寺島 嗣明2)
竹中 信義2)
武山 直志2)
今回,高エネルギー外傷に伴い胆管内に多量の気腫を認めたが,保存的に軽快した症例を
経験したので報告する.症例は62歳男性.歩行中に40km/hr で走行してきた乗用車が背
部から衝突し受傷.来院時,GCS4-5-6,ABCD に大きな問題なし.FAST は陰性であった.
外表所見としては,右眼周囲に腫脹と裂創.左足関節部に腫脹を認めた.胸部,腹部とも
自発痛,圧痛所見は認められなかった.来院時の画像診断で,上顎洞前壁骨折,頬骨骨折,
左腓骨骨折と共に肝臓のグリソンの領域に多量の air 像を認めた.既往歴に総胆管結石に
伴うファター乳頭切開を認めた事,腹部所見に乏しかった事,中枢性に分布していた事よ
り胆管の気腫像と判断した.外傷に伴う腹圧上昇で十二指腸内の空気が逆流したものと考
え,保存的加療を行なった.第 3 病日には消失を確認し,腓骨,頬骨骨折の手術を行った.
ファター乳頭切開後の胆管気腫は時として観察されるが,今回の症例のように外傷後に多
量に認める症例は少なく,また門脈気腫との鑑別も非常に重要である.外傷後の胆管気腫
について文献的考察と共に報告する.
― 232 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O16-4
遅発性に発症した外傷性脾破裂に対して脾臓摘出術を施行した 1 例
茨城県立中央病院茨城県
地域がんセンター外科
高尾 幹也
佐々木和人
加賀谷英生
川崎 普司
阿部 秀樹
吉見 富洋
永井 秀雄
O16-5
外傷性膀胱破裂の臨床的検討
岐阜大学医学部附属病院
高度救命救急センター
中野 志保
加藤 久晶
山路 文範
水野 洋佑
鈴木 浩大
中島 靖浩
神田 倫秀
吉田 隆浩
土井 智章
豊田 泉
小倉 真治
O16-6
症例は32歳男性.腹痛を主訴に前医を受診した.血圧94/68mmHg,脈拍数140回とショッ
クバイタルを呈しており,Hb6.4g/dl の貧血,腹水貯留を認めたため,腹腔内出血を疑わ
れ当院紹介搬送となった.当院の造影 CT で外傷性脾破裂(日本外傷学会脾損傷分類Ⅲb 型)
の診断となり,緊急で脾臓摘出術を行なった.患者背景として発達障害があり,以前より
職場の同僚より暴行を受けており,多数の陳旧性骨折を認めていた.正確な受傷日時は不
明であったが,受傷後 1 ,2 週間程度経過しているものと考えられた.輸血を要したものの,
術後経過は良好で術後13日で独歩退院となった.鈍的腹部外傷において脾損傷の頻度は高
く,TAE や脾温存手術などにより脾機能温存できることが多いが,損傷範囲や循環動態
によっては脾臓摘出術を要する.また脾機能温存後には遅発性脾破裂を呈することがあり
厳重な経過観察を必要とする.文献的考察を含め報告する.
【対象と方法】2008年 1 月〜2015年12月に当センターに入院した外傷性膀胱破裂 8 例を対
象に臨床的特徴を検討した.【結果】全例骨盤骨折を伴う鈍的多発外傷であり,ISS の中
央値は41であった.膀胱の破裂形式は腹膜内破裂と腹膜外破裂が各 4 例であった.診断方
法は,造影 CT 検査で診断し得た 6 例のほか,腹膜外破裂 1 例を骨盤骨折に対するガーゼ
パッキング時に肉眼的に診断し,開放性骨盤骨折に合併した腹膜外破裂 1 例を膀胱造影で
診断した.治療は全例に尿道カテーテル留置または膀胱瘻造設が行われた.腹膜内破裂 4
例においては,3 例で修復術が行われ,minor leak であった 1 例は保存的加療を選択し自
然閉鎖した.腹膜外破裂 4 例においては,1 例は受傷当日に修復術を行い,1 例は診断の
ついた25日目に修復術を行った.他の 2 例は保存的加療が選択され,1 例は自然閉鎖した
が,1 例は損傷部が大きく自然閉鎖しなかったため,最終的に修復術を必要とした.転帰
は,生存退院・転院が 6 例,死亡が 2 例で,死因は胸部大動脈損傷と肺血栓塞栓症であっ
た.【考察】鈍的外傷に伴う膀胱破裂は重症度の高い多発外傷に合併していた.尿道カテー
テルや膀胱瘻によるドレナージを行ったうえで,個々の症例毎に手術要否の検討が必要で
ある.
子宮広間膜損傷および腹膜内膀胱破裂を来した腹部鈍的外傷の一例
済生会宇都宮病院救急
科1),済生会宇都宮病院
集中治療科2),済生会宇
都宮病院救命救急セン
ター3)
鯨井 大1)
佐藤 幸男1)
小林 敏倫1)
阿野 正樹2)
加瀬 建一1)
小林 健二3)
【症例】64歳の女性.道路横断中に左側から乗用車に跳ねられ受傷,当院に救急搬送された.
CT 検査で急性硬膜外血腫,小脳脳挫傷,左第 1 肋骨骨折,肺挫傷,腹腔内出血,左卵巣
腫瘍およびその周辺動脈からの造影剤血管外漏出像,右坐骨骨折,左恥骨骨折,右鎖骨骨
折を認めた.レントゲン検査にて左脛腓骨骨折を認めた.また,尿道カテーテルを留置し
たところ肉眼的血尿を認めた.緊急開腹止血術を施行し,腸間膜 2 箇所に裂孔と血腫,左
側子宮広間膜の断裂と同部からの動脈性出血,膀胱破裂の所見を認めた.子宮広間膜断裂
部を含めた左卵巣腫瘍摘出および膀胱修復術を施行した.第 5 病日に抜管して ICU を退
室し,第 7 病日より食事を開始した.第12病日に右鎖骨骨折および左脛腓骨骨折に対して
観血的整復術を施行した.第14病日に膀胱造影を施行し,造影剤の漏出を認めなかった.
卵巣腫瘍の病理診断は粘液腺腫であった.経過良好で,リハビリテーション目的で転院し
た.【考察】鈍的外力による婦人科的損傷の報告例は少ない.本症例においては損傷の機
転として卵巣腫瘍に鈍的外力が加わることで子宮広間膜が引きちぎれるようにして断裂
し,また膀胱を圧排したことで膀胱破裂を来たしたと考えられた.
― 233 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O17-1
外傷性横隔膜破裂に対する腹腔鏡下横隔膜修復術の有用性
済生会熊本病院外科1),
済生会熊本病院救急総合
診療センター2)
小川 克大1)
梅崎 直紀1)
八木 泰佑1)
林 洋光1)
尾崎 宣之1)
生田 義明1)
田中 秀幸1)
緒方 健一1)
土居 浩一1)
中山雄二朗2)
尾崎 徹2)
前原 潤一2)
高森 啓史1)
O17-2
腹腔内出血をきたした外傷性小腸 GIST 破裂の 1 例
東海大学医学部外科学系
救命救急医学
青木 弘道
西野 智哉
平良 隆行
澤本 徹
大塚 洋幸
中川 儀英
猪口 貞樹
O17-3
【はじめに】横隔膜破裂は比較的希な外傷であり近年では交通事故による鈍的腹部外傷に
より発生する事が多い.横隔膜破裂を伴う多発外傷に対して腹腔鏡下手術を施行した症例
を経験した.【症例】70歳女性,交通事故にて当院へ搬送された.来院時ショック状態で
あり気管挿管,大量輸血を施行した.画像検査にて脳挫傷,大動脈損傷,多発肋骨骨折,
両側血胸,不安定型骨盤骨折を認め ICU へ入室した.7 日目に骨盤骨折に対する内固定
術が施行され14日目に抜管施行.抜管後の CXP にて左胸腔内に腸管ガス像を認め胸腹部
CT 検査を施行.左胸腔内に横行結腸の陥入を認め左横隔膜破裂と診断した.28日目に腹
腔鏡下横隔膜修復術を施行した.6 ポートを用いて脱出した横行結腸を整復した.左横隔
膜に 6 cm の破裂を認め3-0モノフィラメント非吸収糸を用いて縫合閉鎖した.術後合併
症無く術後24日目に転院となった.【考察】来院直後の画像検査では陽圧換気下の為腹腔
内臓器の胸腔内脱出を認めず抜管後胸腔内が陰圧になった時点で腸管脱出が明らかとなっ
た.急性期の横隔膜破裂に対する腹腔鏡下手術の報告は本邦では 2 例のみであった.外傷
性横隔膜破裂に対する腹腔鏡手術はバイタルサインが安定していれば低侵襲で有用なオプ
ションである.
【はじめに】Gastrointestinal stromal tumor(以下 GIST)は自然破裂により腹腔内出血を
きたすことが稀にあるが,今回我々は外傷を契機に破裂した小腸 GIST の症例を経験した
ので報告する.【症例】46歳,男性.既往なし.自転車で転倒し受傷.近医に救急搬送さ
れ腹腔内出血の診断にて当院に転送となった.腹部の著明な膨隆,圧痛を認めた.腹部造
影 CT にて腹腔内の巨大な腫瘤と造影剤の血管外漏出像を認め,腫瘍破裂による腹腔内出
血の診断にて緊急手術を施行した.開腹すると多量の血性腹水を認めた.腫瘍は Treitz
靭帯より29cm からの小腸を巻き込む28×3cm の巨大腫瘍で一部破裂していた.腫瘍を含
め小腸部分切除した.切除標本では腫瘍は小腸漿膜側にみられ,一部被膜は破綻し,内部
は出血,壊死により空洞化していた.病理組織学的検査で小腸 GIST と診断された.核分
裂像は2/50HPF であった.術後合併症なく経過は良好で第18病日に退院となった.外来
にてイマチニブ400mg/日の内服開始し現在術後 2 年経過し無再発である.【まとめ】腹腔
内出血をきたした外傷性小腸 GIST 破裂の報告は非常に稀であり,文献的考察を加え報告
する.
鈍的損傷による外傷性胃破裂 4 例の検討
千葉県救急医療センター
外傷外科
潮 真也
向井 秀泰
嶋村 文彦
三宅 建作
鈍的損傷による外傷性消化管損傷は主に小腸に認められるが,胃に関する報告は非常に稀
である.我々は当センターで経験した,鈍的損傷による外傷性胃破裂 4 例に対して,受傷
機転,性別,年齢,破裂部位,合併損傷,術式,受傷から手術までの時間,術式,合併症
について検討した.【結果】2007年から2014年までの 7 年間で 4 例の鈍的損傷による外傷
性胃破裂を経験した.全例交通事故により受傷.全例に対して外科的に介入し,3 例は救
命したが 1 例は周術期に敗血症により死亡した.全例男性で,年齢は17歳から53歳(平均
32歳)であった.破裂部位は胃噴門部 1 例,胃体部 3 例であった.損傷分類では2a 3 例,
2b 1 例であった.受傷から手術までの時間は 2 時間から 3 時間55分(平均 2 時間50分)
であった.合併損傷は食道 1 例,肝 2 例,脾 1 例,十二指腸 1 例,腸間膜 1 例であった.
術式は破裂部縫合閉鎖 3 例,食道胃吻合 1 例であった.合併損傷に対してガーゼパッキン
グを 2 例に行い,後日ガーゼ除去を行った.ガーゼパッキングを行った 1 例に創感染を,
1 例に腹部コンパートメント症候群と縫合不全と敗血症を認めた.【結語】当センターで
経験した外傷性胃破裂 4 例に対して検討し,文献的考察を含めて報告する.
― 234 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O17-4
診断確定が遅延した外傷性腸管損傷の 3 例
菊名記念病院救急部1),
横浜市立みなと赤十字病
院救命救急センター2)
高橋 哲也1)
伊藤 敏孝2)
中山 祐介2)
武居 哲洋2)
O17-5
鈍的腹部外傷に対するチーム医療・多職種連携の検討
岩手県立久慈病院救命救
急センター
皆川 幸洋
O17-6
【症例 1 】32歳,男性.バイクで走行中に転倒した.来院時生理学的異常所見なし.腹部
全体に強い圧痛あり,腹膜刺激症状なし.CT で近位小腸に壁肥厚と膀胱直腸窩に液体貯
留を認めた.保存的治療を行ったが来院44時間後の CT で free air を認めた.開腹所見で
小腸穿孔を認めた.【症例 2 】72歳,男性.自動車運転中に壁に衝突,ハンドルに上腹部
を打撲し,近医から転送された.来院時生理学的異常所見なし.腹部は右季肋部から臍周
囲に自発痛と強い圧痛あり,腹膜刺激症状なし.CT で腸間膜内に血腫を認めたが free
air なし.保存的治療で腹痛はなかった.第 7 病日の CT で小腸周囲に少量の free air を
認めた.開腹所見で小腸穿孔を認めた.
【症例 3 】69歳,男性.歩行中に自動車と衝突した.
来院時 GCSE3V4M6,呼吸25/分,SpO298%(酸素マスク10L),血圧72/51mmHg,脈拍
93/分.腹部全体に強い圧痛あり,腹膜刺激症状なし.不安定型骨盤骨折に対し TAE を
施行し,経過中に多発肋骨骨折・外傷性血気胸により呼吸不全となり人工呼吸管理を要し
た.受傷から 8 時間後の CT で腹腔内の液体が増加しており,穿刺吸引したところの膿性
であったため開腹術が行われ小腸穿孔を認めた.【結論】腸管損傷の早期診断には更なる
方針の検討が必要である.
わが国における全国の救命救急センターでの Preventable Trauma Death(PTD)の発生
率の高さから取り組みとして JATEC が開発され,現在,全国でコースが展開され,着実
にその成果をあげている.JATECTM の普及により,それまで初期診療の段階で PTD
となっていた症例の多くが,それに引き続く根本治療へ回ってくる.すなわち初期診療の
誤りから緊急手術に至らなかった重症胸腹部外傷が,救命のチャンスを残しつつさらなる
外傷センターおよび救急センターの手に渡される機会は確実に増加する.今後,救命率を
上げるためには多職種の緊密な連携を伴った外傷チームの育成が急務と考えられる.担当
地域で発生する最重症外傷患者を診療することが制度上定められている救命救急センター
であるにもかかわらず,十分な外傷診療体制が無いのが現状の大きな問題点である.重症
外傷を扱うチーム医療体制をいかに整備するかが,次の課題と考える.適切な外傷診療を
推進すること,外傷医療を活性化させるために,IVR を含めた専門的外傷診療が可能な
有能な外傷専門医を養成し,さらに多職種の緊密な連携を伴った外傷チームの育成が必要
と考えられる.
腹部鈍的外傷後に生じた遅発性後腹膜血腫の 1 例
埼玉医科大学国際医療セ
ンター救命救急科
大谷 義孝
根本 学
【症例】20代男性.【現病歴】午前 9 時頃,オートバイ運転中に自動車と衝突し,ハンドル
バーエンドが腹部に食い込む形で受傷して当院へ救急搬送.初診時,バイタルサイン,血
液検査,各画像検査で異常所見なく,腹痛等の自覚症状もないため16時過ぎに帰宅となっ
た.しかし,同日23時頃から腹痛が出現したため近医を独歩受診したところ,腹部 CT で
後腹膜血腫が疑われ当院紹介となった.【再診時現症】意識清明.血圧:152/78mmHg,
脈拍:64/分・整,呼吸数12/分.右腹部に擦過傷がみられた.【CT】十二指腸壁内血腫,
膵損傷.【経過】絶食とし,保存的加療となった.当初,十二指腸の通過障害のため嘔吐
が頻回であったが,第 5 病日より飲水を開始.第21病日,消化管造影では十二指腸に狭窄
がみられたが完全閉塞はなく経管栄養開始となった.第30病日より全粥食が可能となり,
第36病日に自宅退院となった.【考察】本症例は当初症状がなかったが,遅発性に十二指
腸血腫が増大し症状が出現したと考えられた.後腹膜臓器の損傷は腹部所見が乏しく理学
的所見のみでの診断は困難であることが多い.受傷機転から後腹膜臓器の損傷が疑われる
症例では積極的に CT 等の画像診断を行い,経過観察入院をためらってはならないと考え
る.
― 235 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O18-1
REBOA 使用下での CT 検査について
八戸市立市民病院救命救
急センター
昆 祐理
長谷川将嗣
山内 洋介
栗原祐太朗
野田頭達也
今 明秀
O18-2
鈍的肝損傷の治療戦略
北里大学医学部救命救急
医学1),聖マリアンナ医
科大学心臓血管外科2)
樫見 文枝1)
丸橋 孝昭1)
山谷 立大1)
増田 智成1)
花島 資1)
片岡 祐一1)
浅利 靖1)2)
西巻 博2)
O18-3
【はじめに】外傷ショックに REBOA を使用し CT を撮像しなければいけない状況を経験
することがある.しかし,ショック症例に CT を撮像することは限定的であり,REBOA
による見かけ上のショック離脱で CT 撮像が許容されるかどうかは検討が必要である.
【方
法】当センターで2012年 4 月 1 日から2015年12月31日の間に REBOA 使用下で CT を撮
像した外傷症例を後方視的に検討した.【結果】REBOA 使用下に CT を撮像した症例 7
例のうち 6 例は partial occlusion,1 例は full occlusion であった.死亡症例は full occlusion を含む 4 例であり平均 Ps は6.5%,生存例は 3 例で平均 Ps は60%であった.partial
occlusion 下ではバルーン以遠の造影効果は保たれており,CT は診断に有用であった.【考
察・まとめ】外傷診療における CT の有用性が高まっているが,そのために時間を浪費す
るべきではなく,REBOA を使用しなければいけないようなショック症例においては言う
までもない.Partial occlusion では CT の造影効果は保たれており診断に有用であったが,
その撮像時間や読影に許されている時間は少ない.CT の撮像方法や読影方法を含めた
チーム戦略を立てることで,REBOA 使用下でも CT を撮像することが有用である可能性
が考えられる.
外傷に対する TAE は低侵襲で止血が可能であり,近年では CT の性能向上や IVR の発展
に伴い,TAE の適応は拡大されつつある.今回,DCIR やハイブリッド治療を取り入れ,
循環動態が不安定な症例にも積極的に TAE を行っている当施設の鈍的重症肝損傷の治療
成績や予後,合併症を検討した.【対象】2005年 1 月から2015年12月までに当院で加療さ
れた鈍的肝損傷で後述する重症の定義を満たす99例.重症の定義は,循環動態不安定また
は造影 CT にて造影剤の血管外漏出像または日本外傷学会分類 Ib 型 or Ⅲ型のいずれかを
認めるものとした.【治療のプロトコール】non-responder かつ FAST 陽性例は緊急開腹
手術.それ以外は NOM とし,CT にて前述の所見を認めた場合血管造影を施行し,血管
外漏出を認めた場合 TAE,認めなかった場合には保存的治療とした.【結果】緊急開腹手
術は10例(肝損傷による失血死 1 例),NOM は83例(肝損傷による失血死はなし).
NOM の 1 例で TAE 後も循環動態が安定化せず,血管造影にて門脈損傷を認め外科的治
療へ転換した.NOM の合併症は仮性動脈瘤 4 例,biloma 12例,肝梗塞 5 例,下大静脈血
栓症 1 例を認めたが,手術を要した症例はなかった.
【結論】NOM 症例で肝損傷による
失血死はなかった.
Trauma Panscan の在り方を再考する
聖マリアンナ医科大学放
射線医学1),聖マリアン
ナ医科大学救急医学2)
三浦 剛史1)
松本 純一2)
高橋麻里絵1)
平 泰彦2)
中島 康雄1)
MDCT の普及や外傷初期診療ガイドラインなどでの FACT による読影の推奨により,外
傷全身 CT(Trauma Panscan)は必須とまではいわないまでも,重要な診療プロセスの
一部であるとの認識が広まっているようにみえる.Trauma Panscan は多くの施設で行わ
れるようになった一方で,その濫用は重症患者において貴重な時間を失うだけでなく,患
者予後にも影響を与えかねない.本来,外傷診療では受傷から止血完了までの時間を短く
することが重要であり,CT 検査の施行においても時間を意識した活用が必要なことは言
うまでもない.我々は,CT 室入室から検査施行,(読影),退出までの時間(CT 室滞在
時間)を短縮することで,CT を有効活用した外傷診療が可能になると考え,様々な取り
組みを行ってきた.今回,平均 CT 室滞在時間の短縮や 5 分以内での CT 室滞在時間(Sub
Five Scan)も可能となってきたため,その取り組みの紹介をし,Trauma Panscan のあ
り方について再考したい.
― 236 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O18-4
画像上同定しえた腎静脈分枝損傷の一例
北里大学医学部救命救急
医学1),聖マリアンナ医
科大学心臓血管外科2)
丸橋 孝昭1)
樫見 文枝1)
山谷 立大1)
花島 資1)
片岡 祐一1)
西巻 博2)
浅利 靖1)
O18-5
来院時 CT および腹部所見にて診断できなかった腸管・腸間膜損傷症例
北里大学医学部救命救急
医学
花島 資
片岡 祐一
浅利 靖
O19-1
【症例】39歳,男性.フォークリフトから転落し救急搬送された.右側背部に打撲痕・圧
痛を認めるが,意識清明,初診時バイタルは安定していた.造影 CT 検査で右腎被膜外に
流出する造影剤の血管外漏出像(Extravasation:以下 Ev)を伴う腎損傷3b 型(日本外傷
学会分類)と診断した.動脈相では Ev はなく,静脈相で腎裂傷に接する部位に淡く広が
る Ev を認める特異な画像所見を示した.続けて血管造影検査を行い,Ev を認めた領域
の腎動脈分枝を選択造影したところ,静脈相での Ev であり腎静脈分枝損傷と判断した.
同部位に血管塞栓術(以下:TAE)後,Ev は消失した.【考察】外傷性腎損傷に対する
TAE の有用性は確立されているが,あくまで動脈性出血の制御であり,静脈損傷に関し
ては Gerota 筋膜に囲まれた解剖学的特徴からタンポナーデ効果で止血可能とされる.本
症例は,腎動脈分枝が腎裂傷の接線方向となり腎静脈分枝のみ損傷された可能性,また
Gerota 筋膜の破綻によりタンポナーデ効果が減弱したことから腎静脈分枝損傷のみが描
出される特異な画像所見を呈したと考えられる.【結語】腎静脈分枝損傷を同定でき,腎
動脈に対する TAE で止血が得られた腎損傷の一例を経験した.
近年 IVR の発達により腹部外傷において非外科的治療が大幅に増加している.しかし非
出血性腹部臓器損傷に対する delayed laparotomy という問題が生じやすく,腹部所見や
画像による診断がより重要となる.今回,来院時の CT,腹部所見で診断のつかなかった
鈍的外傷による腸管・腸間膜損傷症例を報告する.【症例 1 】23歳男性.飲酒後路上に横
たわり車にランオーバーされ受傷.不安定型骨盤骨折に対して TAE と創外固定施行.来
院時意識障害あり腹部所見はとれず,CT でも腹腔内臓器損傷の所見は認めなかった.翌
日腹膜刺激症状が生じ,緊急開腹術施行.腸間膜断裂と小腸損傷を認めた.【症例 2 】44
歳男性.自転車走行中車にはねられ受傷.腹膜刺激症状無し.骨盤骨折に対して TAE 施
行.CT 上,腸管損傷の所見は無かったが,腸間膜損傷所見があり審査腹腔鏡施行.腸間
膜損傷部とは離れた小腸に1/3周の穿孔を認めた.【結語】CT による腸管損傷の診断は,
画像が発達した昨今でも false negative となる場合がある.また腹部所見は,意識障害や
他部位損傷などにより症状がマスクされる場合がある.受傷機転が高エネルギーの多発外
傷で非外科的治療の場合,集中治療管理下,診察および画像のリピートが重要と考えられ
る.
TEVAR を施行した鈍的大動脈損傷症例の検討
信州大学附属病院心臓血
管外科
中原 孝
福井 大祐
小松 正樹
浦下 周一
市村 創
五味渕俊仁
大橋 伸朗
大津 義徳
和田 有子
瀬戸達一郎
岡田 健次
鈍的大動脈損傷(Blunt Aortic Injury:BAI)は死亡率,合併症率が高く,非常に重篤な
疾病である.BAI に対してステントグラフト内挿術(Thoracic Endovascular Aortic Repair:TEVAR)を施行した 3 例を報告する.平均年齢は43歳(18-62歳),全例男性,併
存する外傷としては外傷性クモ膜下出血及び骨盤骨折合併が 1 例,右大腿骨開放骨折が 1
例,両側血気胸胸及び多発肋骨骨折に腰椎多発圧迫骨折合併例が 1 例であった.ISS は平
均33.3(24-41)であり,AIS(胸部)は4.0(3-5)であった.BAI の重症度としては
Vancouver 分類の grade2が 1 例,grade3が 2 例,受傷から手術までは受傷後34日,1 日,
2 日であった.術式としては全例 TEVAR を行い,中枢側 landing zone は全例 zone2であっ
た.手術時間は平均104分(62-131分),術中出血は70ml(30-150ml)であった.術後合
併症としてはアダムキュービッツ動脈の閉塞による脊髄梗塞,対麻痺を 1 例に認めたが,
全例リハビリ目的に転院となり,入院死亡は認めなかった.BAI にて救急搬送される患
者の多くは何らかの合併損傷を認めるため,体外循環を避け,低侵襲に治療を行える
TEVAR はよい適応と考えられる.ISS,及び Vancouver 分類を考慮し,治療の優先順位
を決定することで良い結果を得たので報告する.
― 237 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O19-2
重複大動脈損傷を有した多発外傷の一救命例
山梨県立中央病院救急科
川島 祐太
小林 辰輔
岩瀬 史明
井上 潤一
宮崎 善史
松本 学
河野 陽介
木下 大輔
池田 督司
岩瀬 弘明
O19-3
鈍的大動脈損傷症例の検討
大分大学医学部附属病院
高度救命救急センター1),
心臓血管外科2)
重光 修1)
和田 伸介1)
竹中 隆一1)
宮本 伸二2)
和田 朋之2)
O19-4
【症例】高血圧の既往のある50歳男性が,交通外傷にて来院した.胸郭動揺,ショック,
不穏あり,初回 CT で外傷性くも膜下出血,胸部下行大動脈損傷(Is3a),肝損傷(3b),
脾損傷(3a),動揺胸郭,胸骨骨折,骨盤骨折(右臼蓋)と診断された.Day0に気管挿管
と TAE(脾臓のみ塞栓,肝は造影剤漏出なく経過観察)Day1に下行大動脈損傷に対する
胸部下行大動脈ステントグラフト留置術を施行した.Day6に施行した確認 CT で,上行
基部の限局性解離所見がみられたが,(初回 CT では見落とし)拡大が軽だったため経過
観察した.Day14に出血性ショックとなったが,肝仮性動脈瘤破裂のためであり,TAE
で止血した.Day28施行の CT で解離腔の拡大所見がみられたため,上行置換術及び胸骨
固定術が行われ,Day65に独歩退院した.ISS41予測生存率0.9であった.【考察】非 CPA
例の胸部大動脈損傷で上行大動脈損傷は,珍しく重複例はまれである.治療法の選択含め
文献的考察をする.
【はじめに】鈍的大動脈損傷(BAI)は,外傷現場にてその80〜85%は死亡し,医療機関
に搬送された生存者のうち40〜50%は24時間以内に死亡する致死的な外傷である.多発外
傷の一部として見られることも多い.【対象】2013年より2015年までに当救命センターに
て経験した同症例のうち確診のついた計 7 例について検討した.【結果】年齢は24歳から
80歳(平均56歳)で,交通外傷 6 件で脚立からの3m 転落が 1 件であった.交通外傷は高
速での衝突や10m 墜落など高エネルギー外傷が多かった.診断は全例 CT で診断された.
大動脈損傷の分類では仮性動脈瘤が 5 例,壁内血腫(解離様)2 例であり,部位は遠位弓
部小弯側が 5 例と多く,壁内血腫型は下行大動脈が 2 例であった.緊急大動脈ステント留
置術を 3 例に行い,4 例は厳重な血圧コントロール下に保存的治療を行った.いずれも生
存退院した.【考察】多発外傷を伴う BAI の生存搬送例に対して厳重な血圧管理と治療の
適切な選択により良好な成績が期待される.
外傷性大動脈損傷の治療方針〜当院での経験から〜
済生会横浜市東部病院外
科1),済生会横浜市東部
病院救急科2),済生会横
浜市東部病院心臓血管外
科3)
萩原 一樹1)
船曵 知弘2)
伊藤 努3)
北野 光秀2)
【緒言】鈍的外傷による大動脈損傷(BAI)の死亡率は高く治療戦略は非常に重要である.
当院における BAI の治療戦略を検討した.【方法】2007年 8 月から12316;2015年12月に
搬送された15例のうち来院時 CPA を除く13例を後方視検討.【結果】平均年齢48.0歳,
男性12例,平均 ISS 32.7.損傷部位(日本外傷学会分類2008)は峡部小彎:峡部大彎:
弓部:腹部=10: 1 : 1 : 1 .損傷形態はⅠa:Ⅱa:Ⅱb:Ⅲa:Ⅲb=1 : 2 : 1 : 8 :
1 .BAI の治療に先行し TAE を 2 例,開腹手術を 2 例に施行した.初期治療方針は TEVAR 6 例(Ⅱb:Ⅲa=1 : 5 ),人工血管置換術 5 例(Ⅰa:Ⅲa:Ⅲb=1 : 3 : 1 ),保
存的治療 2 例(Ⅱa).手術時間は TEVAR 87.3分,人工血管置換術344分.手術時期は受
傷後1.7日.生存退院11例,死亡 2 例(手術室入室直前胸腔内出血→ CPA1例,術後敗血
症 1 例).【考察】手術を施行し得た症例は全例生存退院した.保存的治療群も治療を完遂
できた.近年は TEVAR の選択が多いが術後合併症はなく,手術時間の短さや低侵襲性
から考慮すべきと考える.先行して治療すべき他部位合併損傷があれば,BAI の治療は
全身状態の安定化を待ってからでも可能であると考えられる.
― 238 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O19-5
重症肺損傷に対し V-V ECMO 導入し肺切除・経動脈的塞栓術を行い救命し得た 1 例
前橋赤十字病院高度救命
救急センター集中治療
科・救急科
増田 衛
鈴木 裕之
中村 光伸
宮崎 大
高橋 栄治
原澤 朋史
星野江里加
劉 啓文
O19-6
屠殺銃暴発による爆発外傷の 1 例
熊本大学医学部附属病院
救急・総合診療部
金子 唯
入江 弘基
O20-1
【症例】21歳男性,バイクで走行中にトラックと衝突し受傷.両側血気胸,肺挫傷の診断で,
気管挿管,人工呼吸器管理を行うも,気道出血・著しい 2 型呼吸不全を認めたため,V-V
ECMO 導入を行った.呼吸状態安定後,Clamshell 切開・第 5 肋間開胸で右下葉切除術,
両側血腫除去・止血術を行い ICU へ入室した.第 2 病日,第 4 - 8 肋間動脈へ経動脈的塞
栓術を追加.その後は循環動態が安定.経過中に 2 回の ECMO 回路交換を行い,第 8 病
日に ECMO 離脱,第10病日に抜管,第18病日には酸素投与から離脱した.【考察】1972
年の Hill らの報告以降,多発外傷での ECMO 管理救命例が多数報告されている.重症肺
損傷による呼吸不全に対して,ECMO 導入は有用であり,さらに肺切除後等の気道内圧
管理においても有用であると考える.最近は,デバイスの進歩により低用量の抗凝固剤の
使用で管理が可能となってきている.【結語】重症胸部外傷に対する ECMO 導入による
蘇生・呼吸管理という治療戦略は,有用であると考える.
【はじめに】本邦において,爆発損傷の頻度は低く,損傷形態に関する報告も少ない.今回,
魚処理作業中に屠殺銃が暴発し,爆発外傷の受傷起点につき示唆的な症例を経験したので
報告する.【症例】57歳男性,屠殺銃(エアスタナー)で魚肉処理の作業を行っていたと
ころ,暴発し爆発外傷を負った.重症熱傷疑いでドクターヘリ要請され,現場で気管挿管・
胸腔ドレーン挿入の後,当院にヘリ搬送された.損傷部位は前胸壁・両上肢多発挫創,両
側多発肋骨骨折・胸骨骨折・肺挫傷,外傷性気胸であった.気道出血持続したため ICU
入室し,人工呼吸管理を継続した.受傷後,第 2 病日には鼓膜損傷が診断された.気道出
血・外傷性気胸軽快の後に第 8 病日に人工呼吸器離脱,第22病日にリハビリ目的に独歩転
院となった.【考察】今回の爆発規模は重大なものではなかったが,一次から二次の爆発
損傷を呈していた.屠殺銃暴発飛散の二次爆発損傷が目立ち,感覚器損傷の診断が数日後
となったことは反省点である.ただし感覚器の大きな後遺症は認めていない.本例の経験
から,小規模な爆発であっても,系統的な爆発損傷の診断が必要なことが示唆された.
外傷性仮性肺嚢胞が臨床経過におよぼす影響の検討
奈良県立医科大学高度救
命救急センター
川井 廉之
林 智志
中野 健一
倉 知彦
前川 尚宣
奥地 一夫
【はじめに】外傷性仮性肺嚢胞(以下:TPP)は胸部鈍的外傷において稀に認められる損
傷である.若年者に多く認められ,大部分は自然軽快するが初診時に所見を認めた場合の
臨床的意義が明らかとは言えない.【目的】鈍的外傷症例における TPP が臨床経過におよ
ぼす影響を検討する.【対象】過去100ヶ月間に来院時に胸部 CT が撮影された鈍的外傷症
例のなかで開胸手術が先行された症例を除いた1149例.【方法】来院時胸部 CT で TPP を
認めた TPP 群と肺挫傷を認めた肺挫傷群を,診療録をもとに後ろ向きに比較検討した.
【結
果】TPP 群75例,肺挫傷群223例.両群で ISS,RTS,Ps に有意差なし.TPP は年齢が
若年であり,人工呼吸の適応が多く,腹腔内実質臓器損傷を有意に多く伴っていた.
【結語】
鈍的外傷症例の来院時胸部 CT にて TPP を認めた場合には腹腔内実質臓器損傷の合併の
可能性を考慮するべきと考えられた.
― 239 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O20-2
外傷性気胸に対しての胸腔チューブ穿刺位置の検討
群馬大学大学院医学系研
究科救急医学
青木 誠
萩原 周一
村田 将人
金子 稔
中島 潤
木下 優美
一色 雄太
大嶋 清宏
O20-3
外傷性血気胸に対する胸腔ドレーンの挿入肋間と先端位置
手稲渓仁会病院救命救急
センター
清水 隆文
奈良 理
森下 由香
大西 新介
内藤 祐貴
大城あき子
羽岡 健史
石田 正高
森 幸野
O20-4
【背景及び目的】外傷性気胸に対しては,前腋窩線もしくは中腋窩線より肺尖部に向けて
のチューブ留置が一般的であるが,葉間内に迷入しドレナージ効果が不十分となり追加処
置を要する場合も経験する.今回,外傷性気胸と診断された後にチューブ留置を行った症
例について,前腋窩線と中腋窩線のどちらから挿入した方がより適切な位置にチューブ先
端が誘導されるかを後方視的に検討した.【方法】2012年 1 月から2015年11月までの間に
救急外来を受診し,胸部 CT で外傷性気胸と診断された後にチューブを挿入された20例を
対象とした.20例を前腋窩線からアプローチした群(A 群)と中腋窩線からアプローチ
した群(M 群)の 2 群に分けた.検討項目についてはチューブが適切な位置に留置され
ているか・追加治療の有無とした.尚,チューブ先端位置として適切な位置とは,肺尖部
と定義した.【結果】A 群12例,M 群 8 例であった.A 群におけるチューブ先端が適切な
位置に向かない症例数は 3 例(25%)であり,M 群では 4 例(50%)であった.追加治
療については,A 群で 1 例(8.3%),M 群で 4 例(50%)であり有意確率0.035で有意差
を認めた.【結論】外傷性気胸に対してのチューブ留置は前腋窩線からのアプローチの方
が追加治療を要さない傾向がある.
【目的】外傷性血気胸に対する胸腔ドレナージにおいて,胸腔ドレーンの先端の位置や挿
入肋間の高さなどが初回ドレナージ後の追加ドレナージに与える影響を検討した.
【方法】
2010年 1 月から2015年10月まで,当センターに来院した外傷性血気胸患者のうち,同日中
に胸腔ドレナージを施行し,胸部 CT でドレーン先端の位置を確認しえた症例を対象とし
た.両側胸腔ドレナージを施行した症例は 2 症例として検討した.【結果】69名77症例に
ついて検討した.追加ドレナージを必要としたのは19症例で,ドレーン先端の位置が肺尖
部以外にある症例や,第 7 肋間から挿入された症例で有意に多かった(オッズ比:12.9,
5.3).第 7 肋間から挿入されたドレーンの先端は75%が肺尖部以外に位置し,追加ドレナー
ジとの関連性が疑われた.【結論】第 7 肋間以下からの挿入は避け,ドレーンの先端は肺
尖部に留置することが望ましいことが示唆された.
脾・腎損傷 TAE 後,肺損傷に対し肺部分切除術を施行した一例
愛知医科大学病院救命救
急科
富野 敦稔
津田 雅庸
武山 直志
【症例】17歳,男性.【現病歴】高速道路路側帯でバイクを降りて友達と会話中に,突っ込
んできた乗用車に跳ね飛ばされて受傷し,当院に救急搬送された.【来院時所見】意識
E2V4M6,血圧130/70mmHg,脈拍160回/分,呼吸数30回/分.【治療経過】胸部 XP 検査
で左多発肋骨骨折と血気胸を認めた.胸腔ドレナージを施行後,造影 CT 検査を行い,肺
損傷(1b),肝損傷(1a),脾損傷(3c),腎損傷( 2 ),骨盤骨折(2a)を認め,さらに肺,
脾臓からは造影剤の血管漏出像を認めた.CT 検査時から血圧は低下したが輸血で維持で
き,すぐ施行可能であったため IVR をまず行った.脾動脈分枝および腎動脈分枝からの
血管漏出像と仮性動脈瘤を認め,塞栓術を施行した.気管支動脈や肋間動脈からの出血は
認めなかったが,胸腔内の出血が続いており,肺実質からの出血と判断し開胸手術を行っ
た.上葉の肺尖部と下葉下縁の 2 カ所の挫創から,静脈性の持続性出血を認め,2 カ所と
も GIA で部分切除術を施行した.術後は再出血なく経過し,18日目に抜管,35日目に独
歩退院となった.【結語】多発外傷での出血性ショック症例に対しては,手術と IVR の連
携が重要である.
― 240 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O20-5
気道出血のリスク因子の検討 - pneumatocele は気道出血のリスク因子である -
国立病院機構災害医療セ
ンター救命救急センター
井上 和茂
加藤 宏
米山 久詞
金村 剛宗
吉岡 早戸
岡田 一郎
霧生 信明
長谷川栄寿
O20-6
肝損傷,横隔膜損傷からの出血が流入して心嚢液貯留となった前胸部刺創の 1 例
長崎大学病院救命救急セ
ンター1),長崎大学大学
院移植・消化器外科2),
長崎大学病院心臓血管外
科3)
猪熊 孝実1)
井山 慶大1)
上木 智博1)
山野 修平1)
田島 吾郎1)
平尾 朋仁1)
野崎 義宏1)
山下 和範1)
井上 悠介2)
曽山 明彦2)
黒木 保2)
三浦 崇3)
谷川 和好3)
江口 晋2)
田崎 修1)
O21-1
【目的】胸部鈍的外傷患者における気道出血のリスク因子を明らかにする.【方法】2011年
1 月〜2014年12月に当院へ救急搬送され,胸部 CT 検査にて肺挫傷を認めた症例を対象と
し,対象患者の診療録から後ろ向きに検討した.第 7 病日までに気道出血を認めた群を出
血群とし,来院当日の死亡症例や第 1 病日に転院した症例は除外した.年齢・性別・搬送
時間・体温・RTS・Plt・FDP・Fbg・BE・pneumatocele・ISS を変数とし,stepwise logistic 回帰分析により気道出血のリスク因子を検討した.【結果】123例が該当し,出血群
40例・非出血群83例の 2 群に分け比較検討した.RTS(OR 0.192,95%CI 0.0649-0.568,
p=0.003),pneumatocele(OR 7.110,95%CI 2.130-23.70,p=0.001)が独立したリス
ク因子であった.【考察】pneumatocele は合併症として感染・膿瘍形成が挙げられている
が,一般的には自然軽快するとされており,出血について言及する報告は少ない.しかし,
本検討から気道出血のリスクが示された.【結語】pneumatocele は気道出血のリスク因子
であり,胸部 CT 検査にて認めた際には出血・気道緊急の可能性を念頭に置く必要がある.
【症例】35歳の男性.刃渡り15cm ほどの包丁で前胸部正中を刺されて受傷.救急隊接触時,
包丁はすでに抜かれていた.来院時,意識清明,呼吸数24回/分,心拍数96回/分,血圧
154/101mmHg,体温35.8度.胸骨右縁第 6 肋間付近に約2.5cm 長の刺入創を認めたが,
活動性出血は認めなかった.造影 CT では心嚢液貯留,右血胸,肝外側区域の損傷,腹腔
内出血を認めたが,造影剤漏出像は認めなかった.造影 CT 撮影後も循環は安定しており,
心タンポナーデや出血性ショックには至らなかった.心損傷の可能性があるため,人工心
肺を準備して胸骨正中切開をまず行い心損傷の有無を評価した後,肝損傷に対する開腹術
を行う方針として手術を開始した.開胸したところ心嚢に損傷を認めたが心臓には損傷を
認めなかった.横隔膜に貫通創を認め,腹腔から心嚢内に血液が流入していた.刺創は肝
外側区域に達していたが,肝を貫通してはいなかった.肝の損傷部を凝固止血し横隔膜,
心嚢を縫合閉鎖し手術を終了した.【結語】肝損傷,横隔膜損傷からの出血が流入して心
嚢液貯留となった前胸部刺創の 1 例を経験した.
膝窩動脈損傷を合併した Floating Knee Fracture の 1 例
近畿大学医学部附属病院
救命救急センター
濱口 満英
植嶋 利文
丸山 克之
松島 知秀
木村 貴明
太田 育夫
中尾 隆美
石部 琢也
村尾 佳則
【はじめに】外傷による膝窩動脈損傷では,膝関節周囲骨折や筋損傷を合併し治療に難渋
することが多い.今回,膝窩動脈損傷を合併した Floating Knee Fracture を経験したの
で文献的考察を加えて報告する.【症例】32歳男性,バイク転倒にて受傷し夜間に当院に
救急搬送となる.来院時意識レベル清明であり呼吸・循環は安定していた.画像検査にて
右気胸,右鎖骨骨折,右肋骨骨折,左大腿骨骨折・左脛骨腓骨骨折(Floating Knee Fracture)を認めた.左膝窩動脈は触知可能であった.左足背動脈は,ドプラー血流は認めた
が触知は困難であった.第 2 病日に左膝窩動脈損傷に対し血行再建を行い,その後左大腿
骨骨折・左脛骨骨折に対し観血的骨接合術を施行した.第 3 病日に下腿のコンパートメン
ト圧が70mmHg まで上昇したため,減張切開し局所陰圧閉鎖療法を施行した.第17病日
に減張切開後の皮膚欠損創に対し植皮術を行い,第56病日にリハビリ加療のため転院と
なった.
【考察】外傷による膝窩動脈損傷は迅速に診断し,血行再建術を整復術に先行し
虚血症状を解除する必要がある.下肢への重度外傷の際には,初期診療における全身 CT
を足先まで行うことが望ましい.
― 241 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O21-2
左上下肢不全切断に対し上肢のみ救済可能であった 1 例
東京慈恵会医科大学附属
柏病院救急部1),東京慈
恵会医科大学救急医学講
座2),東京慈恵会医科大
学附属柏病院整形外科3)
平沼 浩一1)
卯津羅雅彦1)
奥野 憲司1)
三宅 亮1)
大瀧 佑平2)
近藤 達弥1)
麻植 一孝1)
小川 武希2)
湯川 充人3)
奥津 裕也3)
O21-3
飛んできたカッターの刃により大腿動静脈損傷を来たしバイパス術を行った一例
北里大学医学部救命救急
医学1),北里大学医学部
心臓血管外科学2)
増田 智成1)
朝隈 禎隆1)
熊澤 憲一1)
樫見 文枝1)
服部 潤1)
片岡 祐一1)
浅利 靖1)
大久保博世2)
O21-4
【はじめに】重度四肢外傷に対し,一期的切断をするか否かの判断には MESS が用いられ,
9 点以上では患肢の救済は困難とされている.今回 MESS 9 点であるが,下肢の救済を断
念し,上肢の血行再建を行い上肢のみ救済可能であった 1 症例を経験したので若干の文献
的考察とともにここに報告する.【症例】54歳男性,作業中約 5 トンの H 鋼の下敷きにな
り,左前腕と左大腿骨の血行障害を伴う開放骨折(不全切断状態)を受傷し,当院救命セ
ンターへ救急搬送された.MESS は 9 点であったが,当初血圧は保たれており,患肢の救
済目的に手術室に入室した.左大腿はそけい部から,広範囲のデグロービング損傷を呈し
ており,バイパス留置は困難と思われ,前腕の救済を優先し,1 期的に大腿切断を施行し
た.前腕は創外固定を設置し,尺骨動脈は端々吻合し,橈骨動脈は切断下肢から採取した
伏在静脈を利用し静脈移植により,血行再建した.その後大腿術野の感染を併発し,断端
の温存ができず,最終的に股関節離断術を施行し,感染は鎮静化した.【考察】切断肢に
対する装具は義足に比較し義手の機能は劣るため,可能な限り上肢の温存をはかるべきと
思われた.
カッターの刃による大腿動静脈損傷に対しバイパス術を行った一例を経験したので若干の
文献的考察を加え報告する.症例は40代男性.サンダーで研磨していたカッターの刃が折
れ,右大腿部に突き刺さり受傷した.ドクターカー要請となり,右大腿部に 2 cm 大の刺
創があり同部位より活動性の出血を認めた.ショックであり創部の圧迫止血と急速輸液を
開始し当院へ搬送となった.来院時,バイタルサインは改善したが,出血のコントロール
がつかなかったため,左大腿動脈からアプローチし,右外腸骨動脈にオクルージョンバルー
ンを留置し一時止血した.その後,手術の方針とした.全身麻酔下で創部を確認すると浅
大腿動静脈,大腿深動静脈の離断を認めた.また,右内転筋にカッターの刃の残存を認め
た.汚染が強く,離断した血管の吻合は困難である為に,右大腿動脈―膝窩動脈バイパス
術を行った.術後から再還流障害を認めた為に CRRT を開始.第 3 病日に人工呼吸器を
離脱し,また抗血小板・抗凝固療法を開始した.その後は右下肢の麻痺はなく,第 6 病日
より歩行を開始.第 7 病日に行った造影 CT 検査にて大腿深動脈の分枝に仮性動脈瘤を認
めたために,TAE を行った.その後は問題なく経過し退院となった.
高齢者の下肢開放性主要血管損傷の治療経験
佐久医療センター整形外
科1),東京医科歯科大学
大学院医歯学総合研究科
整形外科学分野2),佐久
医療センター救急科3)
田野 敦寛1)2)
王 耀東2)
岡田 邦彦3)
加来 拓実1)
大川 淳2)
【背景】下肢の開放性主要血管損傷は重篤な合併損傷を伴う場合も多く,全身状態を考慮
した治療が求められる.当院で相次いだ高齢者の下肢開放性主要血管損傷の治療経験を報
告する.【対象と方法】対象は2014〜2016年に当院で治療した高齢者の下肢開放性主要血
管損傷 4 例(男性 3 例,女性 1 例)で,平均年齢79.3歳(65-84歳).ISS は平均21点(9-34
点)で,3 例は ISS≧16点の重症多発外傷であった.損傷血管は大腿動脈 2 例,膝窩動脈
2 例で,全例完全断裂であった.手術開始時間(受傷〜手術開始),治療法,術中出血量,
総輸血量(受傷後24時間),予後を後ろ向きに検討した.【結果】手術開始時間は平均
156.5分(49-343分 ) で, 血 行 再 建 3 例, 即 時 切 断 1 例 で あ っ た. 術 中 出 血 量 は 平 均
1433ml(500-2580ml)で,総輸血量は平均33.5単位(16-66単位)であった.血行再建 3
例の予後は,患肢温存 1 例(ISS 9 点),壊死切断 1 例(ISS 34点),死亡 1 例(ISS 25点)
であった.即時切断の 1 例(ISS 16点)は救命され,断端トラブルもなかった.【考察】
死亡 1 例は多発外傷で術中出血量も多く DIC に至った.下肢単独の主要血管損傷の死亡
率は約10%と報告されているが,高齢者の場合,出血性ショックや DIC のリスクが非常
に高くなることを念頭に診療にあたる必要がある.
― 242 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O21-5
膝窩動脈損傷28例の検討
埼玉医科大学総合医療セ
ンター高度救命救急セン
ター
芝山 浩樹
森井 北斗
澤野 誠
松田 正輝
井口 浩一
福島 憲司
大饗 和憲
八幡 直志
吉田 理
O21-6
Mangled foot 治療の小経験
兵庫県立淡路医療セン
ター整形外科
大江 啓介
櫻井 敦志
O22-1
【背景】膝窩動脈損傷は緊急を要する外傷の一つであり,迅速な診断と血行再建が行われ
なければ,患肢切断のリスクが高まるだけでなく,再潅流症候群により患者を生命の危機
に晒す可能性もある.今回,当施設での膝窩動脈損傷症例の治療成績を調査した.
【対象
と方法】過去15年間に当施設へ入院した28例を対象とした.内訳は男性24例,女性 4 例,
年齢は中央値で41.5歳であった.切断率や阻血時間,合併症について診療録を後ろ向きに
調査した.【結果】28例中,切断に至ったものが 6 例で切断率は21.4%であった.阻血時
間は平均584±165分で,温存群が569±169分,切断群が697±157分と切断群が長い傾向に
あったが,有意差は認めなかった(p=0.18,Student’s-t 検定).なお,28例中16例が
他院からの紹介例であった.死亡例や術後に再潅流症候群による腎不全などを生じたもの
はいなかった.8 例に下腿コンパートメント症候群を生じ,そのうち 1 例に阻血後拘縮を
生じた.【考察】膝窩動脈損傷の切断率は文献上15〜37%とされているが,当施設も同程
度であった.これを改善させるためには阻血時間のさらなる短縮が必要と考えられるが,
搬入時にすでに時間が経過している症例も多く,早期に血行を再開する治療法が必要と考
えられた.
Mangled extremity に対する治療はわれわれ外傷整形外科医にとって難問である.症例は
30歳男性,車のサイドブレーキが故障し両下腿が車外へ出た状態で車が横転,両下腿が車
と地面に挟まれ受傷した.救急搬送時バイタルは安定,重要臓器の損傷は認めていなかっ
た.四肢の損傷は両下腿開放骨折(Gustilo1,2 ),左足関節脱臼および高度汚染を伴った
開放創から足根骨の脱出した足部脱臼骨折であった.解剖学的整復は困難であったが,足
部の血流および足底部の感覚は保たれていたため足部温存の方針とした.受傷日から洗浄,
デブリドマンを繰り返し,ピンニング,NPWT を行った.軟部組織欠損部は 8 日目に遊
離広背筋皮弁を用いたが失敗し,20日目に再度,遊離前外側大腿皮弁を用いて被覆した.
骨欠損部は中足部を短縮し,抗生剤含有骨セメントを留置した.炎症反応の鎮静化が得ら
れた術後12週に骨セメントを除去し自家骨移植を行った(Masquelet 法).受傷から 4 か
月の現在,感染兆候なく患肢非荷重歩行中である.Mangled foot 症例においては治療初
期に歩行可能な足部再建,つまり適切な軟部被覆と強固な骨安定性の獲得をより明確に計
画することが重要である.今後,注意深く本症例の経過を見守りたい.
下腿コンパートメント症候群を合併した下腿骨骨折の治療経験
岐阜大学医学部附属病院
高次救命治療センター
神田 倫秀
水野 洋佑
鈴木 浩大
中野 志保
名知 祥
加藤 久晶
吉田 隆浩
吉田 省造
豊田 泉
小倉 真治
下腿コンパートメント症候群(以下下腿 CS)を合併する脛骨骨折は 2 〜11%とも言われ
稀であり,その治療成績の報告は少ない.【目的】下腿 CS を合併し筋膜切開を行った下
腿骨骨折の治療成績を調査した.【対象】2014年 1 月から2015年 6 月の間,下腿 CS の診
断にて筋膜切開を行い下腿骨骨折に対して内固定を行った 5 肢を検討した.【結果】平均
年齢48歳.男性 3 例 4 肢,女性 1 例 1 肢.骨折型 AO 分類41 2 肢,42 2 肢,43 1 肢.
開放骨折 1 肢 Gustilo3a,血行再建を必要とした同側大腿動脈損傷 1 肢.全例受傷当日に
創外固定および筋膜切開を行った.筋膜切開を行った創は全例 KCI 社 VAC system を用
いて被覆し,3 肢にシューレース法を併用した.内固定方法は AO 分類42 2 肢が髄内釘
固定,他 3 肢はプレート固定を行った.筋膜切開を行った開放創は 2 肢が最終的に閉創可
能となり,3 肢は分層植皮術を行った.受傷から内固定までの期間は平均9.2日,筋膜切
開創の閉創までは平均8.8日であった.【考察】下腿 CS 合併の骨折に対する内固定方法と
時期,筋膜切開創の閉創時期については明らかではない.筋膜切開創の閉創時期は 2 週間
以内とすることで深部感染なく閉創可能であった.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O22-2
前腕コンパートメント症候群症例の検討
埼玉医科大学総合医療セ
ンター高度救命救急セン
ター
古賀 陽一
井口 浩一
福島 憲治
大饗 和憲 森井 北斗
八幡 直志
O22-3
軟部組織損傷を伴う足関節周辺骨折は MATILDA 法によりどこまで閉鎖的に整復可能か
秋田大学医学部整形外科
野坂 光司
島田 洋一
宮腰 尚久
山田 晋
齊藤 英知
木島 泰明
O22-4
【目的】本研究の目的は,当施設で経験した前腕コンパートメント症候群の特徴や治療法,
合併症などについて調査することである.【対象と方法】2011年から2014年までに当施設
で手術を行った 8 例を対象とした.男性: 6 例,女性: 2 例,年齢:18歳〜78歳であった.
骨折の有無,術前コンパートメント内圧,受傷から筋膜切開までの時間,筋膜切開を行っ
た区画,創閉鎖方法,術後合併症について調査した.【結果】 8 例中 6 例に前腕骨骨折を
合併していた.コンパートメント内圧は,前腕掌側が24-70(平均46)mmHg,前腕背側
が25-80(平均48)mmHg であった.筋膜切開を行った区画は掌背側が 6 例,掌側のみが
2 例であった.創閉鎖方法は 6 例で二次縫合,2 例で分層植皮を行った.受傷から筋膜切
開までの時間は 4 時間14分〜22時間48分であった.術後合併症は,手指の痺れのみ残存が
1 例,手指の拘縮のみ残存が 1 例,手指の拘縮及び感覚脱失の残存が 1 例,残り 5 例は合
併症なく経過は良好であった.【結語】筋内圧が上昇する時期は症例によってやや異なる
ため,絶え間ない観察を続ける必要がある.いわゆる Golden hour にとらわれず,コンパー
トメント症候群が完成する前に筋膜切開を行うことが重要であると考えている.
【背景】軟部組織損傷の強い足関節周辺骨折では,無理な内固定による皮膚障害がみられ
ることがあるが,足関節骨折に対して Ilizarov 創外固定で ligamentotaxis により整復
(MATILDA 法:Multidirectional Ankle Traction using Ilizarov external fixator with
Long rod and Distraction Arthroplasty in Pilon fracture)を行う際,閉鎖的整復を阻害
する因子は不明である.【目的】皮切有群と皮切無群の比較検討を行い,閉鎖的整復を阻
害する因子を調査すること.【対象】足関節周辺骨折に対して創外固定を使用した33例で,
ユニラテラール型使用例,陳旧例は除外し,Ilizarov を使用した新鮮例24例.【調査項目】
年齢,術前待期期間,転位量.【結果】年齢,術前待期期間は有意差なし,転位量:有群
35mm,無群13mm(p<0.05).【考察】閉鎖的整復のためには,術前待機期間の短縮より
も,術前転位量の減少のほうが重要であることが示唆される.現在我々は初めからリング
間にダミーリングを置き,手術時の ligamentotaxis による閉鎖的整復後,そのダミーリン
グを移動させ,そのまま definitive fixation を行う MATILDA 法で良好な結果を得ている.
【結語】骨折部術前転位量が13mm 以内ならば,整復に皮切を要さない可能性が高い.
当院において筋膜切開を施行した外傷性コンパートメント症候群の筋壊死関連因子の検討
九州大学病院救命救急セ
ンター
籾井 健太
久保田健介
桑原 正成
赤星朋比古
安田 光宏
前原 喜彦
【目的】コンパートメント症候群は早期診断が重要で,筋壊死を呈すると不良な予後転機
を辿る.当院で筋膜切開を行った外傷性コンパートメント症候群において筋壊死関連因子
を検討する.【対象・方法】2013年 4 月から2015年12月,11症例12肢,男/女9/2例,交通
事故/高所墜落9/2例,平均年齢33.1歳,平均観察期間8.7ヶ月,開放/閉鎖骨折9/3例,平
均 ISS23.3, 筋 壊 死 3 例. 壊 死 群 と 非 壊 死 群 に 対 し 患 者 因 子( 年 齢, 性 別,ISS, RTs,
TRISS, 血管損傷,開放骨折,ショック,臨床症状,血液データ,筋区画最大圧),治療因
子(待機期間,カテコラミン使用,陰圧閉鎖療法)を統計学的に検討した.【結果】血管
損傷を有すると有意に筋壊死を認めた(p=0.018).治療因子で有意差を認めなかったが,
手術待機期間は壊死群/非壊死群 平均16.3(SD19.7)/4.6(SD1.6)時間で非壊死群の待
機期間が短く,SD も小さかった.【考察】コンパートメント症候群の診断は臨床症状,
筋区画内圧測定が重要視され,血液データが参考になるという報告がある.陰圧閉鎖療法
の有効性が報告されているが,本研究においては血管損傷が筋壊死関連因子であった.【結
語】血管損傷を有する外傷性コンパートメント症候群は筋壊死に至る可能性が示唆された.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O22-5
広範囲軟部組織欠損に分節状骨欠損を伴う重度下腿開放骨折の一例
湘南鎌倉総合病院外傷セ
ンター
綾部 真一
土田 芳彦
O22-6
当科入院中に行ったマイクロサージャリー手術の検討
大阪警察病院救命救急科
北山 淳一
小川 新史
山田 知輝
中江 晴彦
岸 正司
山吉 滋
O23-1
【はじめに】広範囲軟部組織欠損に分節状骨欠損を伴う重度下腿開放骨折の治療は難しい.
今回我々は同症例に対して,肋骨付き遊離広背筋と Masquelet 法にて加療した症例を経
験したので報告する.【症例】症例は17歳女性,バイクにて転倒受傷し,近隣救命救急セ
ンターへ搬送された.左下腿開放骨折(Gustilo type3B),骨盤骨折,右大腿骨骨幹部骨
折に対して即日,左下腿・骨盤創外固定,右大腿骨髄内釘固定を施行.受傷 2 日目に当院
へ紹介転院となった.左下腿内側部を中心に約20cm×19cm 軟部組織欠損創を認め,下腿
骨幹部中央1/3に 7 cm 長の分節状骨欠損を伴う AO42-C3の粉砕骨折であった.同日追加
デブリードマンと骨セメント留置を施行,受傷 6 日目に下腿脛腓骨のプレート固定および
肋骨付き遊離広背筋皮弁を施行した.組織移植トラブルおよび感染症などの併発なく創治
癒が得られ,術後 7 週頃より PTB にて歩行訓練を開始した.術後12週で骨セメントを腸
骨に変更し骨癒合待機中である.【考察】広範囲軟部組織欠損と数 cm を超える分節状骨
欠損の両者を再建する場合,肋骨付き遊離広背筋皮弁術は大きな広背筋を採取する際に同
時に血管柄付き骨を採取でき,さらに Masquelet 法施行の容積を減らすことができる有
用な方法である.
救急領域においては,マイクロサージャリー手術は重症四肢外傷の血行再建に必要とする
ことがある.当センターでも積極的にマイクロサージャーリー手術を行うようになったた
め,救急医療の中での有用性について検討した.2014年10月から現在までの間,当センター
入院中にマイクロサージャリー手術を必要とした外傷患者は14例であった.指再接着が 4
例,指動脈・神経修復 7 例,大腿血行再建 1 例,下肢遊離皮弁術 2 例であり,この中の 1
例を紹介する.症例は80歳代,男性.交通外傷にて受傷し,多発肋骨骨折・血気胸・左股
関節脱臼・下腿熱傷と診断した.9 日間の呼吸器管理の後,受傷22日目から歩行開始.下
腿熱傷部は受傷29日目に遊離皮弁術(ALT flap)を行い,高齢ながら自立歩行まで回復
した.重症外傷患者の全身状態が安定したのち,組織再建は他科にて行うため入院期間が
長くなることが多い.当科では四肢単独外傷なら受傷当日に可能な限りの組織修復を行い,
多発外傷なら全身安定後速やかに組織再建を行う方針にしている.つまり急性期治療の一
環としてマイクロサージャリー手術を行うことにより,入院期間短縮や早期リハビリなど
外傷治療の質向上に寄与できる可能性が示唆された.
脂肪塞栓症候群発症後に髄内釘固定を施行した大腿骨骨幹部骨折の検討
福岡県済生会福岡総合病
院救命救急センター救急
科1),福岡県済生会福岡
総合病院救命救急セン
ター整形外科2)
中村 周道1)
松垣 亨2)
金城 昌志1)
牧園 剛大1)
柚木 良介1)
柳瀬 豪1)
前谷 和秀1)
則尾 弘文1)
【はじめに】大腿骨骨幹部骨折において脂肪塞栓症候群(FES)発症後に髄内釘固定を行
う時期及びリーミングの是非に関して一定の見解は得られていない.今回当院で FES 発
症後に髄内釘固定を施行した症例の検討を行った.【対象・結果】2001年 1 月から2015年
12月までの15年間に当院で大腿骨骨幹部骨折の術前に FES を発症した症例は 5 例 5 肢で
あった.年齢は19歳から42歳であり,全例男性であった.FES 発症は受傷後 1 〜 2 日目
であり,症状としては点状出血,神経症状,呼吸器症状を全例に認め,4 例で鎮静下の人
工呼吸器による管理を行い,1 例は酸素投与による管理を行った.人工呼吸器離脱後また
は酸素化の改善を認めた第10〜15病日に骨接合術を施行した.全例ともにリーミングを行
い,髄内釘による骨接合術を行ったが,術中術後に酸素化の低下や胸部レントゲン検査に
て肺陰影の増悪,意識レベル低下などの神経症状の再燃を来すことなく経過した.現在全
例とも社会復帰している.【結語】今回の症例の検討により FES 発症後であっても全身状
態が安定し十分に待機すれば大腿骨骨幹部骨折に対してもリーミングを行って髄内釘固定
を行うことが可能である可能性が示唆された.
― 245 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O23-2
大腿骨骨幹部骨折髄内釘治療後の回旋変形
岡山大学病院整形外科1),
岡山大学大学院医歯薬学
総合研究科地域医療学講
座2)
小松原 将1)
山川 泰明2)
吉村 将秀1)
上原 健敬1)
野田 知之1)
尾崎 敏文1)
O23-3
すべての開放骨折に即時手術が必要か?
札幌徳洲会病院整形外科
外傷センター
上田 泰久
辻 英樹
斉藤 丈太
佐藤 和生
坂 なつみ
O23-4
【はじめに】大腿骨骨幹部骨折で髄内釘による骨接合術において,透視下で正確な整復は
困難な場合が多い.今回,当院で大腿骨骨幹部骨折に対して閉鎖性整復手技による髄内釘
で骨接合術を施行した16例について術後回旋変形を中心に検討したので報告する.
【対象
および方法】対象は女性 5 例,男性11例で手術時平均年齢は42.8歳(17-81歳)であった.
平均経過観察期間は13ヵ月(1-84ヵ月)であった.これらの症例に対して受傷機転,合併
症,術後の ADL 制限の有無,回旋変形について調査した.【結果】受傷機転は交通外傷
12例,転落外傷 4 例であった.主な合併症は遷延癒合 6 例,深部静脈血栓症 2 例であった.
術後 ADL 制限は 3 例に認めた.健側と比較して10°以上の回旋変形を認めた症例は 9 例
であった.【考察】当院では健側大腿骨の単純 X 線正面像と術中透視画像を比較して整復
位の確認を行っている.今回,56%(9/16例)に回旋変形を認めたが,経過観察期間中に
回旋変形単独で歩容に影響するような問題はなかった.しかし,経過観察が短期間の症例
が多く,長期の経過では隣接関節障害などを発生するリスクは高いと考えられ,回旋転位
を正確に整復し固定,評価する工夫が必要であると考えられた.
【目的】当センターでの長管骨開放骨折症例を調査し手術室での洗浄処置施行までの時間
が術後感染に影響するか調査すること.【治療戦略】我々は開放骨折における緊急手術の
適応を阻血,汚染,Gustilo 3 以上(デブリドマンを要するか否か),創外固定を要する骨
折型としている.【対象と方法】2014年 1 月から2015年 7 月まで当センターで初期治療を
施行した18歳以上の長管骨開放骨折症例68例を対象とした.平均年齢は57歳,平均経過観
察期間は12ヶ月.内訳は上腕骨 9 例,前腕骨22例,大腿骨 5 例,下腿32例.当院搬送後緊
急手術としたものを E 群,Urgent operation としたものを U 群,初回手術が受傷後 2 日
以上であったものを D 群として術後感染発生の有無について調査した.【結果】対象症例
のうち E 群は31例,U 群は12例,D 群は25例だった.術後感染は E 群で 3 例9.6%,U 群
と D 群では創治癒遅延をそれぞれ 1 例ずつみとめたが感染は認めなかった.また,感染
を生じたものはすべて Gustilo 3B ないし3C の症例であった.【結論】術後感染という観点
からは,四肢長管骨開放骨折で Gustilo 2 以下とされるものに必ずしも緊急手術は要しな
いと考えられる.
足部と趾外傷の再建
沖縄県立中部病院形成外
科
今泉 督
石田 有宏
【はじめに】足部や趾外傷の治療ではしばしば切断術が選択される.しかし機能的には踵
のみならず,前足部や第一趾も重要な荷重部かつ足アーチ構造の一端を担う重要な部位で
ある.我々の足部や趾外傷の再建を検討した.【方法】2005年から2015年まで血行再建術
や急性期に組織移植術を行った足部や趾外傷例における,重症度,再建方法,合併症,機
能的予後を検討した.【結果】皮膚剥奪創や軟部組織欠損が 5 例,足部や趾の血行障害を
伴う開放骨折(不完全切断)は 2 例であり,そのうち 1 例は皮膚剥奪創も合併していた.
全例が下肢単独外傷であった.皮膚剥奪例では有茎皮弁が 1 例,遊離皮弁が 4 例に施行さ
れた.第一趾不完全切断例では血行再建術,前足部不完全切断に皮膚剥奪創を伴った症例
では血行再建術と遊離皮弁移植術が行われた.移植皮弁は全て生着し,血行再建術例にお
いては前足部不完全切断例の第 5 趾先端の壊死が生じたのみであった.切断例はなかった.
平均経過観察期間は 1 年 8 ヶ月間であった.長期的合併症としては 前足部不完全切断例
において足底に胼胝が生じ靴底の改良を要した.全例装具を必要とせず元職復帰した.
【結
論】下肢単独外傷等では積極的に足部や趾の再建術を考慮する価値がある.
― 246 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O23-5
Gustilo ⅢB 下腿骨骨折における有茎皮弁,有茎筋弁の治療経験
東海大学外科学系整形外
科学1),伊勢原協同病院2)
小林 由香1)
内山 善康1)
齋藤 育雄2)
渡辺 雅彦1)
O23-6
高エネルギー外傷における大腿骨骨幹部骨折と輸血施行率の検討
岡山赤十字病院整形外科
近藤 宏也
土井 武
O24-1
【はじめに】Gustilo ⅢB の足関節を含む下腿開放骨折において,広範囲な軟部組織損傷に
対しては遊離筋皮弁が適応となるが,限局する場合には有茎皮弁や筋弁が適応となる.当
院で加療した 8 例の治療結果について検討した.【対象】症例は,男 6 例,女 2 例,平均
年齢46歳.骨折型は AO 分類42A1: 1 例,A2: 1 例,B2: 1 例,B3: 1 例,C3: 1 例,
43 A2: 1 例,C1: 1 例,44B1: 1 例.有茎腓腹筋弁およびヒラメ筋弁が 5 例,逆行性腓
腹皮弁が 3 例であった.固定方法は LCP: 3 例,髄内釘: 3 例,創外固定: 2 例を行い,
このうち 1 例は髄内釘後イリザロフ創外固定に変更した.【結果】有茎皮弁および筋弁は
6 例で生着し,筋弁の 2 例に壊死を認めた.現在 6 例は骨癒合し荷重歩行,1 例は切断し
義足歩行,1 例は bone transport による治療を行っている.【まとめ】ⅢB の範疇には様々
な状態の軟部組織損傷が含まれており,損傷が及ぶ範囲を見誤るとマイクロサージャリー
を必要としない有茎の組織移植でも壊死することがあり,骨,皮膚だけでなく筋組織に対
する評価も重要であった.
【はじめに】大腿骨は人体最長の長管骨で,骨折により大量に出血するといわれている.
特に高エネルギー外傷では開放骨折や周囲軟部組織損傷を伴い輸血を必要とすることが予
想される.今回大腿骨骨幹部骨折と周術期輸血施行率の関係を retrospective に検討した.
【対象と方法】当院にて2010年から15年までに手術加療した大腿骨骨幹部骨折症例でカル
テから高エネルギー外傷と判断され症例を対象とした.16歳未満は除外した.対象は35例
(男性27例,女性 8 例)で,受傷時年齢は17から77歳(平均37.1歳)であった.輸血開始
の条件は Hct25%未満または主治医,もしくは麻酔科医の判断によるものとした.【結果
と考察】17例(48.5%)に輸血を行っていた.輸血群と非輸血群では年齢,性別に統計学
的有意差は認められなかった.骨折型(32-C タイプ,分節型),開放骨折,内臓器損傷,
他部位骨折の合併がリスクファクターと考えられた.しかし今回の症例中大腿骨骨幹部単
独損傷例では13例中 3 例(23.1%)にとどまっており,合併損傷の有無が大きく影響して
いるものと思われた.
急性期バイオマーカーによる外傷凝固障害予測
山梨県立中央病院救命救
急センター1),山梨県立
中央病院整形外科2),日
本医科大学付属病院高度
救命救急センター3)
松本 学1)
岩瀬 史明1)
井上 潤一1)
小林 辰輔1)
宮崎 善史1)
河野 陽介1)
木下 大輔1)
岩瀬 弘明2)
横田 裕行3)
【背景】重症外傷における凝固障害は高い死亡率と相関し,迅速かつ正確な予測方法は確
立していない.【目的】外傷性凝固障害を予測するバイオマーカーを調査する.【方法】当
救命救急センターに Load&Go の対象として搬送された鈍的外傷患者435症例を解析した.
血清フィブリノゲン150mg/dL 超,PT-INR 1.5未満を維持するように新鮮凍結血漿を輸
血し,24時間以内に10単位以上の新鮮凍結血漿輸血が必要となった場合を外傷性凝固障害
と定義した.【結果】外傷後凝固障害とされたのは全患者のうち7.6%であった.検討した
バイオマーカーの中で,pH,Base Excess,Fibrinogen の低値と,Glucose,Lactate,
PT-INR,FDP の高値が外傷後凝固障害と有意な相関を示していた.各項目の Area Under the Curve を調査すると Lactate 0.90,Glucose 0.85,PT-INR 0.84の 3 つが最も有
効なバイオマーカーであり,Cutoff はそれぞれ24mg/dL,167mg/dL,1.12であった.各
項目を 1 点としてスコアリングした場合の外傷性凝固障害の予測能は,2 点では感度97%
/特異度80%であった.【結論】測定が容易なバイオマーカーで外傷後凝固障害は予測可能
である.今後は本指標を用いた早期治療介入による有用性を検証する必要があると考えて
いる.
― 247 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O24-2
mTBSS(modified Traumatic Bleeding Severity Score)で骨盤骨折の大量輸血を早める
東京都立墨東病院
岡田 寛之
藤田 英伸
西村 健
横山 太郎
杉山 和宏
濱辺 祐一
O24-3
【背景・目的】当施設は2014年 8 月,IVR-CT を初療室に導入した.年齢,バイタル,血
液ガスデータに加え,造影 CT による詳細な解剖学的情報を加え,大量輸血必要のスクリー
ニングを行う.大量輸血プロトコール発動基準には,小倉らが2014年に提唱した TBSS が
ある.骨盤骨折 AO 分類の決定を CT で行い,より正確な骨盤骨折の重症度判定を行う.
大量輸血が速やかに行えているか検証した.【方法】2014年 1 月から2015年12月,当施設
に直接搬送された骨盤骨折40例を二期に分け後方視的に検討した.mTBSS により大量輸
血のリスクを判定した.高リスク群に対し,病院着から RCC ないし FFP 輸血開始まで
の時間を調べた.【結果】大量輸血高リスク群は,〔14年,15年〕の順に〔13例中 7 例,27
例中 9 例〕だった.mTBSS は〔16.7,16.5〕であり,ほぼ同等の重症度だった.そのう
ち実際に大量輸血を要したのは〔 6 例,8 例〕だった.輸血開始までの平均時間は〔92分,
63分〕であり,経時的に短縮する傾向が見られた.【考察・結論】初療室 CT で早期診断,
mTBSS で高リスク群の抽出,その結果,大量輸血開始は早まる.今後も症例を重ね,機
能予後改善につなげたい.
Traumatic Bleeding Severity Score(TBSS)
;高齢先進国における大量輸血療法の予測
前橋赤十字病院高度救命
救急センター集中治療
科・救急科
小倉 崇以
藤塚 健次
中村 光伸
高橋 栄治
宮崎 大
町田 浩志
雨宮 優
中野 実
O24-4
【背景】高齢先進国の本邦はで,外傷の高齢化が顕著である.TASH Score は世界的な大
量輸血療法予測スコアであるが,高齢者における予測精度が低い.TBSS は,患者年齢を
考慮した大量輸血療法スコアである.本研究では,高齢外傷における TBSS および
TASH Score の予測精度について検討する.【方法】2010年 4 月から2014年 3 月までに当
院に入院した成人重症外傷症例を後方視的に検討.対象患者を60歳以上の高齢群と59歳以
下の若年群に分類.来院時 TBSS および TASH を計算し,各群における各スコアの予測
精度を,ROC 曲線下面積により比較.【結果】295人が対象となり,高齢群184人,若年群
111人であった(ISS=30.5±13.5,大量輸血療法28.5%).全対象患者における TBSS の
大量輸血療法に対する AUC は0.940で,TASH の AUC(0.894)よりも高値であった(p<
0.01).高齢群における TBSS の AUC は0.967であり,TASH の AUC(0.910)よりも高
値であったが(p<0.01),若年群では両者の AUC に有意差は認めなった(TBSS vs
TASH;0.914 vs 0.873, p=0.134).【結論】TBSS は,高齢重症外傷における大量輸血療
法の予測において,TASH Score より優れる.外傷の高齢化を認める高齢先進国=日本に
おいては,重症外傷における大量輸血療法予測スコアとして TBSS を用いることを推奨
する.
鈍的外傷患者の輸血に関する検討
群馬大学大学院救急医
学1),群馬大学医学部附
属病院救命・総合医療セ
ンター2)
萩原 周一1)2)
村田 将人1)2)
青木 誠1)2)
中島 潤1)2)
金子 稔1)2)
木下 優美1)2)
一色 雄太1)2)
中村 卓郎1)2)
田村 遵一2)
大嶋 清宏1)2)
【目的】外傷患者搬送時のバイタルサイン・血液凝固検査から輸血の要否を予測できるか
検討する.【方法】研究に先立って本学倫理委員会の承認を得た.単一施設,前向き観察
研究.2013年 5 月から2014年 4 月の間に当院に救急搬送された鈍的外傷患者で,受傷機転・
症状から AIS3以上の損傷が疑われる患者に血液検査を行った.24時間以内に赤血球輸血
を行った群(輸血群)と対照群に分け,年齢,バイタルサイン,血算,凝固,FAST 所見,
ISS,RTS を比較検討した.除外基準:18歳未満,末期悪性腫瘍,妊婦,重度の肝障害・
腎障害,極度の栄養失調,血液疾患,熱傷,抗凝固療法中,CPA,後日除外を申し出た
もの.【結果】486名の鈍的外傷症例が受診し,うち347名が解析できた.輸血群14(男 8 )
名で平均年齢65.2±22.3歳,対照群333(男199)名で平均年齢57.6±21.7歳.両群間で単
変量解析により有意差がみられたのは GCS,Ht,PT-INR,APTT,FDP,Fib,D-dimer,
ISS,RTS,FAST 陽性率だった.多変量分析によるオッズ比(95%CI)は FAST 陽性:
16.289(2.13-124.4),GCS:0.731(0.549-0.974),Fib:0.985(0.974-0.995),FDP 1.007
(1.002-1.012).【考察】FAST 陽性,意識障害,Fib 低下および FDP 上昇は要輸血の予
測因子となり得る.
― 248 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O24-5
重度の凝固障害を伴う大量出血に対しフィブリノゲン製剤を投与した外傷患者 6 例の検討
さいたま赤十字病院救命
救急センター・救急医学
科
五木田昌士
勅使河原勝伸
小川 薫
鈴木 源
人見 秀
坂本 早紀
早川 桂
川浦 洋征
田口 茂正
清田 和也
O24-6
重症外傷に対するクリオプレシピテートによる早期フィブリノゲン補充戦略の可能性
東北大学大学院医学系研
究科救急医学分野1),東
北大学病院救急科・高度
救命救急センター2)
工藤 大介1)2)
野村 亮介2)
藤田 基生2)
川副 友2)
宮川乃理子2)
佐藤 哲哉2)
吉田良太朗2)
久志本成樹1)2)
O25-1
【背景】本邦では,重度の凝固障害を伴う大量出血例への凝固因子の補充として FFP のみ
適応が認められているが,欧米ではクリオプレシピテートやフィブリノゲン製剤の使用も
推奨されている.今回我々は当センターにてフィブリノゲン製剤を投与した外傷患者 6 例
について検討した.【方法】2015年11月(当院倫理委員会で承認)から2016年 1 月にフィ
ブリノゲン製剤を投与した外傷患者 6 例について遡及的に検討した.
【結果】男女比 2 : 1 .
年齢は中央値で43(17-76)歳.ISS は22(9-75).投与量は3g(1-6)であり,3g の投与
でフィブリノゲン値は約100mg/dl 上昇した.いずれも Deadly triad を 2 つ以上満たして
いたが 5 例で止血が得られた.転帰は死亡 2 例,高度障害残存例が 2 例,中等度障害残存
例が 2 例であった.副作用として血栓塞栓症やウィルス感染が知られているが,今回因果
関係ははっきりしないが経過中に脳梗塞を発症した症例が 2 例見られた.
【結論】大量出
血に対するフィブリノゲン製剤の使用は,輸血の量や副作用を減らすうえ輸血よりも早期
に凝固障害を改善することが期待される.また,副作用の検討に関しては今後症例の蓄積
が必要と思われる.
【目的】大量出血時の止血戦略として,早期フィブリノゲン(FBG)補充の有用性が注目
されている.しかし,フィブリノゲン製剤は本邦では出血時に対する保険適応がない.そ
こで,FFP から調整した凝固因子濃縮製剤(FBG も多く含有)であるクリオプレシピテー
ト(CRYO)を用いる止血戦略の今後の可能性を検討することを目的とした.【方法】
2014年 8 月から2015年11月までに CRYO を投与した外傷例を対象とし,投与までの時間,
FBG 値の変化,血栓性合併症などを検討した.【結果】全23(男性14)例,ISS 43(18-41),
来院時ショック19例,止血介入20例(手術 7 例,TAE 8 例,手術と TAE 5 例),来院24
時間の濃厚赤血球10単位以上投与16例,28日死亡 6 例(27.3%)(24時間以内の死亡 3 例)
であった.標準 CRYO 投与量は 3 パック(FFP480 3 袋から調整)とした.投与前 FBG
値99(60-120)mg/dL に対して,投与後は165(137-210)mg/dL であった.オーダーか
ら投与までの時間は44(31-73)分であった(投与時間は 1 分以内).投与後 1 週間以内の
静脈血栓塞栓症発症は 1 例であった.【結論】CRYO 投与により FBG 値の上昇が見込ま
れる.オーダーから投与終了までの時間は短い.転帰への効果や血栓性合併症については,
症例蓄積による検討が必要である.
レーザー誘起衝撃波を用いたマウス胸部爆傷モデルは脳機能障害を発症する
防衛医科大学校防衛医学
研究センター外傷研究部
門1),防衛医科大学校薬
理学講座2),防衛医科大
学校防衛医学研究セン
ター情報システム研究部
門3)
宮崎 裕美1)
佐藤 泰司2)
佐藤 俊一3)
瀬野宗一郎1)
戸村 哲1)
齋藤 大蔵1)
【背景・目的】爆発による衝撃波によって,外見には異常がないにもかかわらず,精神障害,
記憶障害など脳機能障害を発症することが問題視されている.また,頭部を保護していて
も爆風を受けると神経障害などを予防できないとの報告もある.本研究では,衝撃波によ
る胸部爆傷が脳機能の低下を引き起こすという仮説の検証と病態に関わる因子の探索を試
みた.【方法】麻酔下のマウスに胸部背側から YAG レーザーを照射することにより,衝
撃波による肺損傷モデルを作製し海馬の病理学的評価と遺伝子発現解析を行った.また,
受傷 7 ,28日後に行動学的評価を行った.【結果】衝撃波により酸素飽和度および脳血流
量の一時的な低下を認めた.頭部への直接的な損傷がないにもかかわらず,頭部外傷時に
みられるのと同様,海馬 CA3を中心とした細胞障害を認めた.さらに,受傷後には認知
機能の低下やうつ症状を呈することが明らかとなった.受傷直後には海馬で老化,細胞周
期調節,アポトーシス,あるいは神経活動に関わる遺伝子が変動していた.【結論】脳に
直接的な衝撃が加わらなくとも,胸部への衝撃波は脳機能の調節に関連する因子の遺伝子
発現を変化させ,認知機能の低下や抑うつなど脳機能障害をきたす可能性が示唆された.
― 249 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O25-2
対照的な転帰を辿ったプロテイン S 活性低下/欠損症を持つ外傷性頭蓋内出血の 2 例
慶應義塾大学医学部救急
医学教室
上倉 英恵
並木 淳
増澤 佑哉
拜殿 明菜
垣内 大樹
松岡 義
前島 克哉
鯨井 大
清水千華子
渋沢 崇行
上野 浩一
堀 進悟
O25-3
レーザー誘起衝撃波を用いたマウス軽症頭部爆傷モデルの開発研究
防衛医科大学校防衛医学
研究センター外傷研究部
門1),防衛医科大学校防
衛医学研究センター生体
情報・治療システム研究
部門2)
戸村 哲1)
瀬野宗一郎1)
宮崎 裕美1)
佐藤 俊一2)
齋藤 大蔵1)
O25-4
【はじめに】血栓性素因を持つ外傷患者の抗凝固療法再開方法に関してはコンセンサスが
得られていない.今回我々は,血栓性素因を持つ外傷性頭蓋内出血で対照的な転帰を辿っ
た 2 例を経験したため報告する.【症例 1 】 1 型プロテイン S 欠損症に対してワルファリ
ン内服中の30歳男性.交通事故による頭部外傷にて当院へ救急搬送された.意識は GCS
14,CT で少量の急性硬膜下血腫を認め保存的に加療した.経過中の CT で血腫の増量なく,
第 4 病日からヘパリン開始し第 8 病日にワルファリンを再開した.第 9 病日に突然意識レ
ベルが低下し硬膜下血腫の増加を認めたため,開頭血腫除去術を施行した.右半身不全麻
痺を残し第41病日に他院へ転院した.【症例 2 】プロテイン S 活性低下にてワルファリン
内服中の86歳女性.転倒による頭部打撲にて当院へ救急搬送された.来院時意識は清明,
CT で少量の急性硬膜下血腫を認め保存的に加療した.経過中に血腫の増量は認めず,第
4 病日にヘパリンを開始した.CT を再検して血腫増量のないことを確認し,第 6 病日か
らワルファリンを再開した.神経学的に異常なく第15病日に軽快退院した.【結語】血栓
性素因を持つ外傷性頭蓋内出血患者の抗凝固療法再開時は,慎重な CT フォローアップを
行うべきである.
爆風だけで脳内に特異な損傷を負い,高次脳機能障害や PTSD などの症状を呈すること
が知られている.いわゆる頭部爆傷(bTBI)であり,米軍等において潜在的な患者が非
常に多いことが問題になっている.特に bTBI の約 8 割が軽症頭部外傷であることから,
軽症頭部爆傷モデルの開発およびこれを用いた基礎研究は非常に重要な課題であるといえ
る.当学ではレーザー誘起衝撃波(LISW)を用いた爆傷モデルを開発し研究をおこなっ
ている.今回は LISW を用いたマウス軽症頭部爆傷モデルの開発について報告する.
LISW をマウスの頭部に照射した際に,肉眼的にあきらかな外傷性変化を認めないレー
ザー強度を決定した.この強度では受傷後の生理学的パラメーターにも有意な変動を認め
なかった.高次脳機能の評価では,受傷 7 日目には非受傷群との間に有意差を認めなかっ
たが,28日後に認知機能の低下およびうつ傾向を示す有意なスコアの悪化を認めた.また
HE 染色において,受傷28日後の海馬における神経細胞障害を示唆する所見を認めた.以
上より,LISW を頭部に照射することで,受傷直後にはあきらかな外傷性変化をきたさな
いものの,慢性期に高次脳機能障害を呈するような,マウスの軽症頭部爆傷モデルが作製
できる可能性が示唆された.
搬入直後の FDP 値は軟部組織損傷出血に起因する高度貧血の予測因子となりうるか?
加古川西市民病院救急
科1),加古川西市民病院
初期研修医2),加古川西
市民病院看護部3)
切田 学1)
平位 恵梨2)
丸山 澄美3)
抗凝固薬や抗血小板薬の服用例では,搬入時バイタルサインが安定していても,入院後持
続出血により遅発性出血性ショックや高度貧血を来すことがある.【目的】搬入直後の
FDP 値が軟部組織損傷出血に起因した高度貧血を予測する因子となりうるか否かを検証
する.【方法】救急科入院した15歳以上の外傷症例のうち,頭部,顔面を除く軟部組織出
血(皮下血腫,筋肉内血腫)を呈し,他の損傷からの大量出血はなく,搬入時に FDP が
測定された20例を対象とした.入院後 Hb 値が搬入直後 Hb 値に比して75%以下となった
症例を高度貧血例とし,搬入時の FDP 値( 2 〜 5 μg/ml)を高度貧血例(A 群)と非貧
血 例(N 群 ) 間 で 比 較 検 討 し た.【 結 果 】A 群 は 4 例 で FDP 値 は6.6,23.7,195.3,
240.9μg/ml,N 群は16例で FDP 値は1.71〜299.1μg/ml であった.A 群と N 群の搬入
時 FDP 値に有意差(ウイルコクソン U 検定)はなかった.抗凝固薬か抗血小板薬の服用
は A 群は全例,N 群は 5 例で,同じく搬入時 FDP 値に有意差はなかった.【まとめ】抗
凝固薬や抗血小板薬の服用にかかわらず,搬入直後 FDP 値は軟部組織損傷からの持続出
血に起因する高度貧血を予測する因子とは言えなかった.よって高齢者で抗凝固療法中の
外傷傷病者では厳重に経過観察するべきである.
― 250 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O25-5
重症外傷患者において白血球のアディポネクチン運搬能は低下する
大阪大学医学部付属病院
高度救命救急センター
梅村 穣
清水健太郎
小倉 裕司
嶋津 岳士
O25-6
外傷治療における耳介迷走神経電気的刺激の可能性
東京医科歯科大学医学部
附属病院救命救急セン
ター1),東京電機大学工
学部2)
八木 雅幸1)
森下 幸治1)
伊藤 裕一2)
植野 彰規2)
相星 淳一1)
大友 康裕1)
O26-1
【背景】アディポネクチンは脂肪細胞由来の生理活性物質の一種で,生体にとって重要な
修復因子として虚血性心疾患や 2 型糖尿病のような慢性疾患との関連が示されてきたが,
外傷のような急性侵襲下における役割は十分に検討されていない.近年,アディポネクチ
ンが白血球によって組織に運搬され,血管傷害を修復することが報告された.
【対象と方法】
重症外傷患者(Injury Severity Score:ISS 16以上)を対象とした.外傷急性期の血中単球,
リンパ球上に結合するアディポネクチン,および血球表面に発現する 3 種類のアディポネ
クチン受容体をフローサイトメトリー法を使って評価した.また対照群として健常ボラン
ティアにおいても同様の評価を行った.【結果】重症外傷 8 症例,健常ボランティア16名
を対象とした.外傷急性期の単球,リンパ球表面のアディポネクチンは,健常人に比べ有
意に低く,アディポネクチン受容体も総じて外傷患者で発現が低い傾向にあった.また外
傷患者において,単球表面のアディポネクチンは ISS と負の相関関係にあった(相関係
数:-0.65).
【結論】重症外傷急性期において,アディポネクチン運搬能は重症度に応じ
て有意に低下することが明らかとなった.組織修復能の低下をもたらす新たなメカニズム
となりうる.
【背景】頸部迷走神経の電気的刺激は難治性てんかんの治療法として以前より認知されて
いるが,近年,新たな作用としてコリン性の抗炎症作用が注目されており,ラット外傷出
血性モデルにおいても効果が示されている.現在,遠心性迷走神経への5V,5Hz の電気
的刺激は,マクロファージや樹状細胞におけるアセチルコリン受容体の発現とサイトカイ
ンの産生などの制御などに関与し抗炎症作用を示すと考えられている.近年,耳介の迷走
神経への電気的刺激にても非侵襲的に同様の効果が期待できると考えられている.
【目的・
方法】ラットの耳介の迷走神経に5V,5Hz の電気的刺激を与えその活動電位を頸部,腹
腔内の迷走神経等にて計測することにより電気的に伝導しているかを確認する.【結果】
ラットの耳介への電気刺激は直接頸部迷走神経へ電気的刺激した時と同様の変化が観察で
きた.【結語】耳介における迷走神経の刺激は頸部迷走神経の電気的刺激と比べ侵襲も少
なく,外傷後集中治療領域においても抗炎症作用の観点から新たな治療戦略の一つとなる
可能性あると思われた.今回,炎症制御における電気的迷走神経刺激の効果に関して最近
の知見も含め報告する.
外傷後の脾仮性動脈瘤の特徴に関する検討
さいたま赤十字病院救急
医学科
佐藤 啓太
早川 桂
五木田昌士
勅使河原勝伸
田口 茂正
清田 和也
【目的】脾損傷後の仮性動脈瘤(Splenic pseudoaneurysm;SPA)の発生や自然経過には
一定の見解はない.当院の脾損傷患者データから,仮性動脈瘤形成の特徴と自然経過に関
して後方視的に検討した.【方法】 4 年間の脾損傷患者63例のうち,NOM を行なった症
例を対象とした.仮性動脈瘤を形成した群(SPA+群)と未形成群(SPA- 群)にわけて
発生に関わる因子を検討した.また,瘤が自然消失した群(消失群)と治療介入した群(塞
栓群)とにわけ,消失に関わる因子の検討を行なった.【結果】SPA+群では SPA- 群に
比 べ て Injury Severity Score が 有 意 に 低 値 で あ り(17.1±2.99 vs 25.17±2.9;p=
0.047),外傷部位も有意に少なかった(0.72±0.19 vs 1.9±0.3;p=0.07).消失群と塞
栓群での差は認めなかった.
【考察】脾損傷後の仮性動脈瘤は,受傷機転が低エネルギーで,
ISS が低値な症例で形成される傾向が見られた.仮性動脈瘤を積極的に診断するためには,
受傷機転が軽微な症例であってもフォローアップの造影 CT 検査が重要である.
― 251 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O26-2
多発外傷患者におけるハイブリッド手術室を用いた治療経験
高知医療センター整形外
科1),高知医療センター
救命救急科2)
田村 竜1)
松本 俊之1)
大森 貴夫1)
多田圭太郎1)
喜多村泰輔2)
O26-3
血管造影検査時にのみ造影剤漏出を認める骨盤内血腫を伴う骨盤骨折についての検討
済生会宇都宮病院放射線
科1),済生会宇都宮病院
救急科2)
中間 楽平1)
佐藤 幸男2)
八神 俊明1)
河野 勲1)
荒川 和清1)
薄井 広樹1)
加藤 弘毅1)
谷村 慶一1)
本多 正徳1)
小林 敏倫2)
宮武 諭2)
加瀬 建一2)
小林 健二2)
O26-4
【はじめに】重度多発外傷患者においては多部位損傷による出血に対し各科連携しての止
血処置が重要となる.当院では2014年 7 月よりハイブリッド手術室の運用を開始しており
同手術室を用いて外傷初療時に整形外科的加療と血管内治療を連動して行った症例につい
て報告する.【対象】2014年 7 月〜2015年 8 月までの 5 症例.男性 3 例,女性 2 例,受傷
時平均年齢44歳(19〜81歳),ISS:平均47点(20〜59点).受傷機転は交通事故: 4 例,
墜落: 1 例.3D 装置は Siemens 社製 ARCADIS Obic 3D を使用.【結果】施行した処置・
手術は IVR: 3 例(受傷箇所:脾損傷 1 例,腎損傷 1 例,肋間動脈損傷 1 例,骨盤骨折
1 例,深大腿動脈損傷 1 例).骨盤創外固定(low route): 3 例,下肢創外固定: 2 例,
心臓血管外科 TIVA: 1 例.覚知から手術室搬入まで210.4分(143〜318分),覚知から手
術終了まで515.8分(437〜602分).4 例で救命に至り後日機能再建のための二期的手術を
行ったが,1 例で初療から 1 週後に多発性脳梗塞を発症し死亡した.【考察】止血処置完
了までの所要時間を短縮上で,関連する各科の間で連携を取り,状態に応じて臨機応変に
適切な止血処置を同一箇所で施行可能なハイブリッド手術室を用いた加療は多発外傷患者
の初療において有用である.
【はじめに】当院は骨盤内血腫を伴う骨盤骨折に対して TAE を行う方針としている.そ
の際,造影剤の漏出像が造影 CT 検査で明らかでないものの,血管造影検査では認める症
例をしばしば経験する.【目的】血管造影検査でのみ造影剤血管外漏出像を認める場合の
確定要因を検討すること.【対象】当院で2012年 1 月 1 日から2015年12月31日までに,造
影 CT 検査で造影剤漏出を認めなかったが TAE を施行した骨盤骨折患者.【方法】血管
造影時の造影剤漏出の有無で 2 群に分け,来院時の収縮期血圧,ヘモグロビン値,血小板
数,PT-INR,フィブリノゲン,D- ダイマーの各項目について Mann-Whitney の U 検
定で比較した.【結果】対象は17例で,7 例で造影剤漏出を認めた.2 群間で各項目に有意
差は認められなかった.【考察】血管造影時にのみ造影剤血管外漏出像が認められる原因
としては,血管攣縮による一時的な止血や,凝固系の亢進による再出血などが考えられる
が,それを事前に予測することは困難である.しかし,殿筋壊死や仮性動脈瘤の形成など
TAE による合併症なく安全に施行できており,CT では認められなかった動脈損傷を検
索し塞栓する意義はあるものと考えられた.
Hybrid concept をもって救命し得た Ps1.7%の多発外傷の 1 例
八戸市立市民病院救命救
急センター
小野寺隆太
昆 祐理
今 明秀
今野 慎吾
野田頭達也
【症例】66歳女性.【受傷機転】歩行者対車の交通事故.【既往歴】脳梗塞後遺症,バイア
スピリン内服.【来院後経過】血圧測定不能,HR64bpm,RR10回,GCSE1V1M3.気道
確保と同時に大腿動脈から REBOA(IABO)留置.balloon inflation により血圧上昇.胸
部 Xp で左気胸.骨盤 Xp で不安定型骨盤骨折不明瞭.REBOA partial occlusion で sBP100mmHg 前後にコントロールして CT 施行.【CT 所見】びまん性軸索損傷,右気胸・
左血気胸,骨盤骨折,後腹膜血腫,肝損傷( 2 型).【治療経過】Angio 室へ移動し,両側
胸腔ドレーンを留置.TAE と骨盤骨折に伴う左総腸骨静脈損傷に対しステント留置.
Angio と並行して ICP モニター,脳室ドレーンを留置.DPL 施行後に ICU 入室した.【入
院後経過】ショックの増悪や頭蓋内圧亢進は見られず,第20病日に ICU 退室.現在意識
レベルは GCSE4VtM3でリハビリ中である.【考察】ショックに対する CT 検査は限定的
であるが,REBOA を使用して CT を行ったことにより損傷の全貌を把握し適切な治療戦
略につながったと考えた.当センターに Hybrid ER はないが,Hybrid concept をもって
治療戦略を立てたことが救命につながったと考えた.【まとめ】Ps1.7%の劇的救命症例
を経験した.治療経過と戦略についてまとめて報告する.
― 252 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O26-5
骨盤骨折に対する TAE 試行中に脾仮性動脈瘤破裂により出血性ショックをきたした 1 例
嶋田病院救急集中治療科
島田 裕史
O26-6
重症腹部骨盤外傷に対する IVR の有用性と問題点
北里大学医学部救命救急
医学
片岡 祐一
花島 資
樫見 文枝
山谷 立大
丸橋 孝昭
峰原 宏昌
浅利 靖
O27-1
【症例】87歳女性.入院前日に自宅で転倒し体動困難で当院に救急搬入された.骨盤造影
CT 検査で骨盤骨折に伴う周囲の血腫増大を認め,緊急 TAE を施行した.TAE 終了後に
突然吐血し,ショック状態に陥った.気管挿管下に緊急上部消化管内視鏡検査を施行した
が,出血部位を同定できず再度血管造影を施行し,脾仮性動脈瘤破裂と診断し NBCA に
て塞栓を行い止血した.【考察】脾仮性動脈瘤は鈍的な外傷性脾損傷後に遅発性に認めら
れることがあるが,初診時の検査では骨盤周囲以外に腹腔内の血腫や脾損傷の所見は認め
なかった.既往症の胃潰瘍による炎症が脾動脈に波及し,形成した仮性動脈瘤が骨盤骨折
のストレスにより破裂したと考える.【結語】骨盤骨折に対する TAE 施行中に脾仮性動
脈瘤破裂をきたした 1 例を経験した.脾仮性動脈瘤の治療に対しては,IVR を優先とし
ているが,外科的治療を考慮すべき場合もある.タイミングを逸さず塞栓術や外科的治療
等の処置を行うことが救命に重要であると考える.
【目的】重症腹部骨盤外傷に対する IVR の有用性と問題点について検討した.【方法】
1999年〜2015年の期間,当施設で治療した腹部骨盤外傷症例のうち,救命治療として緊急
手術と IVR をともに施行した症例を診療録より後方視的に調査検討した.【結果】対象は
65症例で,平均 ISS42,TRISS 法による予測生存率55%,実生存率74%.初療時の救命治
療としての緊急手術と IVR の組合せと順序について,手術→ IVR は 9 例で生存率78%,
手術+IVR(ともに手術室で行うハイブリッド治療)は13例で生存率85%,IVR →手術は
43例で生存率70%.IVR 後に手術を施行した48例のうち(ハイブリッド治療症例を含む),
出血に対する手術は28例に施行し生存率57%.止血手術への移行理由は,IVR でコントロー
ル不成功 5 例,静脈系出血(腸骨静脈,門脈,腎静脈)8 例,他部位・他臓器の出血15例.
【考察】IVR は,外科治療に比べて少ない侵襲で出血をコントロールでき,さらに外科治
療と組み合わせることで重症外傷患者の救命率を高めることができる.しかし IVR への
依存により,手術への移行や静脈損傷および他部位・他臓器損傷への対応が遅れる可能性
があり注意を要する.
外科的修復術後に陽圧呼吸管理を加えて治療した多発横隔膜損傷の 1 例
兵庫県立西宮病院救命救
急センター
杉野 達也
南 和伸
松浪 周平
毛利 智好
鵜飼 勲
二宮 典久
高岡 諒
鴻野 公伸
【患者】66歳,男性.【現病歴】単車同士の衝突により受傷.左胸部不快感と胸痛を訴え,
ドクターカー出動し搬送.【初療】左胸部不快感,左呼吸音減弱を認め,胸部 X-p から左
横隔膜損傷を疑った.CT で横隔膜損傷部からの胃の脱出が確認され,緊急開腹術の方針
を決定した.
【手術】上腹部正中切開で開腹.左横隔膜ドーム付近に横方向10cm の全層
性損傷があり,胃の胸腔内脱出を認めた.胃を還納後,損傷部を縫合閉鎖した.その後腹
腔内を検索したところ,背側正中寄りにも約 5 cm の全層性損傷があり,ここから肋骨骨
折部を触知した.この時点で胸腔からの出血量が約2L に達し循環動態も不安定であった
ため,麻酔科医と協議の上,外科的修復の追加は断念,術後陽圧呼吸管理を行うことによ
り損傷部の安定化を図る方針とした.術後,挫傷に伴う左下葉無気肺が残存したが呼吸状
態は良好であったため,VAP などのリスクも考慮して 7 病日に抜管した.8 病日の CT
で左横隔膜の挙上が残存したがヘルニアの所見はなく,後日左寛骨臼骨折の手術・リハビ
リを経て胸腹部の愁訴なく退院となった.
【考察】横隔膜損傷には手術療法が必須であるが,
損傷形態や全身状態によっては陽圧呼吸管理の併用も有効な治療手段となり得る.
― 253 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O27-2
肋骨骨折の保存治療
岡山大学大学院医歯薬総
合研究科地域医療学講
座1),岡山大学病院高度
救命救急センター2),岡
山大学大学院医歯薬総合
研究科救急外傷治療学講
座3),岡山大学病院整形
外科4)
山川 泰明1)
芝 直基1)
寺戸 通久1)
松尾 瑞恵2)
湯本 哲也2)
飯田 淳義2)
塚原 紘平2)
佐藤 圭路2)
山内 英雄3)
鵜川豊世武3)
野田 知之4)
尾崎 敏文4)
O27-3
緊急手術を必要とした外傷性横隔膜損傷 9 例の検討
和歌山県立医科大学附属
病院高度救命救急セン
ター1),東北大学病院高
度救命救急センター2)
上田健太郎1)
岩崎 安博1)
那須 亨1)
川嶋 秀治1)
國立 晃成1)
川副 友2)
山添 真志1)
加藤 正哉1)
O27-4
【はじめに】近年欧米で肋骨骨折の手術治療が盛んに行われ,良好な治療成績が報告され
ているが,保存治療に関する報告は少ない.当センターにおける肋骨骨折の保存治療成績
を調査した.【対象】過去10年間当院に入院した肋骨骨折患者216人のうち保存的に治療が
行われ受傷後 3 ヵ月以上の CT で評価が可能であった26人を対象とした.男性18例・女性
8 例,平均年齢は54歳(11-85歳),受傷機転は交通事故18例,転倒・転落 6 例,労災 2 例
であった.【方法】肋骨骨折(分節骨折)本数,骨癒合の有無を評価した.また電話で聞
き取り調査を行い,臨床症状につき調査した.【結果】骨折本数は計122本(平均4.7本/人,
1 〜17本/人,分節骨折は計14本/6人),偽関節を11本/3人に認め,偽関節は分節骨折に
多く見られた.臨床症状は13人から聴取可能であり,2 人に疼痛・胸部絞扼感を認めたが,
いずれも骨癒合が得られている症例であった.偽関節例では臨床症状を認めなかった.
【考
察】従来言われているように肋骨骨折は保存治療でも良好な治療成績が得られていた.分
節骨折については偽関節を呈する割合が多いが,臨床症状とは直結しなかった.手術治療
による短期的な治療成績の改善が言われているが,長期的には保存治療でも良好な成績が
得られると考えられた.
【目的】横隔膜損傷は比較的稀な外傷であるが,呼吸不全や閉塞性ショックなど重篤な状
態に陥ることが多く,外傷診療時には念頭に置くべき疾患である.今回,当センターで経
験した本外傷症例について検討した.【方法】2007年 4 月から2015年 3 月までの 8 年間で
緊急手術を必要とした外傷性横隔膜損傷 9 例を対象とした.【結果】平均年齢は63歳で,
性別は男性 5 例,女性 4 例であった.受傷機転は交通外傷による鈍的外傷が 8 例,刺創に
よる鋭的外傷が 1 例であった.横隔膜損傷側は右側 5 例,左側 4 例であり,外傷学会分類
Ⅲa 1 例,Ⅲb 8 例であった.6 例は術前診断可能であったが,3 例は術中所見によって
診断された.緊急手術は開腹で 4 例,開胸で 1 例,開胸開腹で 4 例施行され,全例で横隔
膜縫合術が可能であった.RTS は平均6.59であり,
5 例は術前にショックバイタルを呈し,
また 6 例は B and/or C の異常のため術前に気道確保が必要であった.ISS は平均28で多
発外傷が 6 例と多く,TRISS は平均0.742で死亡症例は 1 例(肺門部損傷による出血死)
であった.【結語】外傷性横隔膜損傷は胸腹部に対する強い鈍的外力に伴う内圧の変化で
発症するため,多臓器損傷を伴う重症外傷あることが多いが,適切な診断・緊急手術で救
命率を向上できる.
当センターにおける胸骨骨折例の検討 -脊椎外傷の合併を中心に-
都立墨東病院救命セン
ター
西村 健
岡田 寛之
藤田 英伸
杉山 和宏
浜邊 祐一
【背景】胸骨は比較的稀な骨折である.脊椎外傷の合併に関する報告は散見されるが,ま
とまった報告は少ない.【目的】胸骨骨折の部位と脊椎外傷の関連性を後方視的に検討す
ること.【対象と方法】2006年 7 月から2015年 8 月までに当センターに搬送され,胸部を
含む CT を撮影した患者42例を対象とした.骨折部位は胸骨柄部と胸骨体部に分類した.
脊椎外傷は頸椎から腰椎の椎体骨折と定義し,棘突起骨折と横突起骨折のみのものは除外
した.受傷機転を墜落と交通外傷とその他に分類し,各受傷機転毎にも検討した.統計解
析には Chi square test を用い,有意水準は p<0.05とした.【結果】胸骨柄部骨折が14例,
胸骨体部骨折は28例であった.脊椎椎体骨折の合併例は24例,非合併例が18例であった.
受傷機転は,墜落が14例,交通外傷が25例,その他が 3 例であった.交通外傷例において,
胸骨柄部骨折(7/9例)が胸骨体部骨折(4/16例)に比べて脊椎椎体骨折を有意に多く合
併していた(p=0.033).【結語】交通外傷による胸骨柄部骨折は脊椎外傷の合併が多い
ため,全脊椎の評価を検討すべきである.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O27-5
肋骨骨折の胸腔鏡所見
日本医科大学付属病院高
度救命救急センター
石井 浩統
金 史英
松居 亮平
萩原 令彦
萩原 純
増野 智彦
新井 正徳
辻井 厚子
横田 裕行
O27-6
多発肋骨骨折患者における入院後呼吸状態悪化を防ぐ
堺総合医療センター救命
救急センター救急外科
蛯原 健
川田 真大
尾崎 貴洋
川本 匡規
常俊 雄介
亀岡 聖史
能勢 道也
小林 武弥
田原 憲一
臼井 章浩
森田 正則
中田 康城
横田順一朗
O28-1
【緒言】肋骨骨折に対するプレート固定術施行の際,当施設では胸腔鏡を併用しており,
胸腔鏡では癒着,破綻した壁側胸膜,脱落した骨片,胸腔内に突出したり肺に刺入してい
る骨折端・骨片,不安定化している胸郭構造,大量の血塊などさまざまな所見がえられ,
骨片・血腫除去を併施することもある.特徴的な胸腔鏡所見を呈した 2 例を経験したので
報告する.【症例 1 】39歳男性.交通事故にて両側多発肋骨骨折(右第 2 から11,左第 1
から11)を受傷,受傷 4 日目に右側に対し手術施行,胸腔鏡上,癒着,壁側胸膜は破綻し
第 6 ,7 肋骨骨折端が胸腔内に突出しており,癒着剥離,洗浄を行い,プレート固定術を行っ
た.受傷 7 日目に左側に対し同様に手術を施行,胸腔鏡上,癒着,胸郭の不安定性,壁側
胸膜の破綻を認め,癒着剥離,洗浄を行い,プレート固定術を行った.【症例 2 】71歳男性.
交通事故にて第 8 肋骨骨折を受傷,受傷 2 日目に手術を施行,胸腔鏡上,癒着,骨片の肺
への刺入を認め,癒着剥離,骨片除去,洗浄を行い,プレート固定術を行った.【考察】
多発肋骨骨折症例に対する胸腔鏡ではさまざまな所見が得られ,得られた所見が手術設計
に役立つこともあると考えられる.以上に文献的考察を加えて報告する.
【目的】多発肋骨骨折の治療は疼痛コントロールが主体となるが,呼吸状態の悪化をきた
す症例もある.今回当院での多発肋骨骨折患者において入院後,呼吸状態悪化から挿管管
理となった症例を検討し回避策を明らかにする.【対象と方法】2015年 7 月〜2016年 1 月
までの 7 ヶ月間に当院救命救急センターに入院した多発肋骨骨折患者のうち入院時人工呼
吸管理を要さなかった29例を後方視的に検討した.【結果】呼吸状態の悪化をきたし入院
後人工呼吸管理を要した症例は 3 例であった.人工呼吸管理を要さなかった症例と比較す
ると年齢,性別,肋骨骨折数,フレイルセグメントの有無,胸骨骨折の有無,胸部の AIS
に有意差は認めなかった.皮下気腫の有無,ISS,胸腔ドレナージの有無,フェンタニル
の持続静注で有意差を認めた.硬膜外麻酔を使用した症例は 1 例であり皮下気腫(+),
ISS32,胸腔ドレナージ(+)であったが呼吸状態の悪化をきたすことはなかった.【考察】
挿管管理を行った 3 例はいずれも肺炎を合併したことからも多発肋骨骨折における呼吸状
態の悪化は重篤な合併症につながる.疼痛コントロールの方法,薬剤選択には悩むことも
あるが鎮痛にフェンタニルを用いる重度外傷においては硬膜外麻酔の積極的使用を考慮す
べきである.
DCS 後腹壁閉鎖困難症例に対する OAM:チュラロンコン大学での方法を学んで
佐賀大学医学部附属病院
高度救命救急センター
永嶋 太
井上 聡
岩村 高志
阪本雄一郎
小網 博之
DCS 後,腹壁閉鎖困難症例を時折経験する.当院では,1 週間程度の Vacuum packing
closure による open abdomen management にて腹壁閉鎖困難と判断した症例では,非吸
収性 Mesh を腹壁に縫合し,Mesh tract VPC を約 1 ヶ月継続後,component separation+
腹直筋筋膜前鞘翻転法による腹壁閉鎖を考慮する.さらに腹壁閉鎖困難例には,結果的に
腸管露出のまま VPC による OAM を継続する.時折,腹壁感染と腸管瘻を合併し管理が
非常に管理が困難となる.今回,タイのチュラロンコン大学外傷センターで VPC 後の
OAM に関して見学と discussion の機会を得た.同施設では,planned re-operation 時に,
早期に吸収性メッシュであるバイクリルメッシュを腹壁に縫い付け,その上に穴のあけた
ビニールシートをおき,VPC にて約 1 ヶ月 OAM を行う.その上で植皮を行ない,ventral hernia とする.約 6 〜 8 ヶ月後に,component separation+ 腹直筋筋膜前鞘翻転法に
てヘルニア根治術を行う,といった管理であった.この方法にて腸瘻や重篤な腹壁感染な
どはほとんど起こっていないとのことであった.以上の経験を踏まえ,腹壁閉鎖困難症例
について文献的考察も踏まえ検討したので報告する.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O28-2
ハイブリッド手術室で DCS,TAE を施行し救命し得た重症鈍的肝損傷の一例
富士重工業健康保険組合
太田記念病院1),富士重
工業健康保険組合太田記
念病院外科2)
澤本 徹1)
秋枝 一基1)
飯塚 進一1)
河谷 雅人1)
金指 英明1)
富岡 義裕1)
林 浩二2)
高橋 剛志2)
O28-3
時間を意識した Damage Control Resuscitation の重要性
公立豊岡病院但馬救命救
急センター
番匠谷友紀
小林 誠人
蕪木 友則
星野あつみ
門馬 秀介
岡 和幸
松井 大作
O28-4
【はじめに】ハイブリッド手術室は X 線撮影装置と手術用ベッドを組み合わせ,血管内治
療と外科的手技を組み合わせた処置を可能にする.今回,重症鈍的肝損傷症例に対し,ハ
イブリッド手術室を用いてダメージコントロール手術(以下 DCS)後,迅速に経カテー
テル的動脈塞栓術(以下 TAE)を行い,救命し得たので報告する.【症例】36歳 男性.
【主訴】意識障害.【現病歴】中型バイクを運転中に交差点内で右折車と衝突し受傷.【既
往歴】特記事項なし.【現症】来院時バイタルサイン:JCS3R,呼吸数28/分,心拍数149/
分,血圧:総頸動脈微弱,SpO2:99%(酸素10l) 身体所見:右側胸部皮下気腫あり.腹
部所見は不穏状態であり正確な所見をとれず.
【臨床経過】胸部 X 線検査で縦隔偏位なく,
FAST で腹腔内出血を認め,出血性ショックと診断.末梢静脈路を確保し,急速輸液輸
血開始し BP111/97mmHg へ上昇したため,造影 CT 検査施行.深在性肝損傷を認め,そ
の後も血圧不安定であり,ハイブリッド手術室にて DCS(ガーゼパッキング)を行った
が血圧は安定せず,血管造影検査で血管外漏出像あり,TAE を施行し,血圧は安定化.
受傷 2 日目に腹部コンパートメント症候群に至り,緊急開腹手術施行.以後,順調に経過
し受傷33日目,独歩退院.
【目的】重症外傷の救命には Damage Control Surgery(以下 DCS)の適切かつ迅速な決
断が重要であるが,目標とすべき手術開始時間に定説はない.当センターの外傷手術症例
について検討し,救命率向上の為の方策を提唱する.【対象】2010年 4 月から2015年10月
の間に体幹部外傷に対し緊急手術を施行した55例を対象とし(外傷性心肺停止症例は除
く),治療成績と予後に影響する因子について検討した.【結果】実生存率は予測生存率よ
り高く,予測外生存は15例で,Preventable trauma death はなかった.DCS 開始時間は
来 院 後40分 で, う ち Trauma Injury Severity Score-Probability of survival( 以 下,
TRISS-Ps)<50%の症例では22分であった.TRISS-Ps<50%の生存群・死亡群の比較の
結果,20分以内の手術開始,18分以内の輸血開始,適切な輸血組成が予後に影響した.覚
知から搬入までの時間は50分で(85%がドクターヘリ搬入),病院前診療における搬送中
の処置(挿管等)完了が,早期手術開始に寄与した.【結語】20分以内の手術開始は golden hour の達成に近似しており,時間を意識した集学的治療が重症外傷の救命に繋がるこ
とが示唆された.
enteroatmospheric fistula の管理に難渋した多発外傷の 1 例
佐賀大学医学部附属病院
高度救命救急センター
岩村 高志
櫻井 良太
太田 美穂
小網 博之
永嶋 太
井上 聡
阪本雄一郎
症例は,43歳男性.バイク事故でドクターヘリにて当院救急搬送受診.初療時,GCS12(E4,
V3,M5),BP75/-mmHg,HR127/min,RR34/min,SpO2 99%(re-mask10L/min),
骨盤レントゲンにて65mm の恥骨結合離解を認め,気管挿管のうえ直ちに蘇生を開始した.
入院時診断は,出血性ショック,重症骨盤骨折・後腹膜出血,多発肋骨骨折,血気胸,肺
挫傷,腸間膜損傷・腹腔内出血,四肢骨折,脳室内血腫等であり,ISS57,RTS5.148,
TRISS Ps26%であった.damage control surgery 適応例と判断し,第 1 病日に内腸骨動
脈塞栓術,骨盤創外固定術,後腹膜ガーゼパッキング術,小腸部分切除術を施行し,
open abdominal management とした.第 3 病日2nd look にて小腸吻合術施行したが閉腹
は困難であった.第20病日トライツ靭帯より約200cm の小腸に enteroatmospheric fistula
を 1 か所発症した.陰圧閉鎖療法とストーマ管理としたが,腸液の漏れがコントロールで
きず,連日の創洗浄処置を要した.若干の文献的考察を踏まえ本症例をご報告させて頂く.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O28-5
腹部鈍的外傷による肝損傷・腎損傷に対し DCS と IVR の併用により救命し得た 1 例
近畿大学医学部救急医学
石部 琢也
植嶋 利文
丸山 克之
松島 知秀
太田 育夫
中尾 隆美
村尾 佳則
O28-6
Wittmann Patch を用いた重症外傷患者の Open Abdominal Management の検討
済生会横浜市東部病院救
命救急センター
齋田 文貴
北野 光秀
明石 卓
小林 陽介
清水 正幸
山崎 元靖
O29-1
症例:21歳,男性.某日,原付同士の衝突で受傷し当センター入院となる.意識 JCS-1,
脈拍117/分,血圧113/62mmHg,呼吸32/分.腹部 CT にて肝損傷,右腎損傷を認め,右
腎臓は血流が途絶していた.循環動態は不安定であったため緊急開腹手術施行,ガーゼパッ
キングにて静脈系の止血を行った.その後,血管造影を行い,肝動脈,右腎動脈からの出
血認めたため塞栓術施行した.術後,輸液・輸血にて循環動態安定させたのち,翌日にガー
ゼパッキング除去ならび右腎摘出術施行した.術後 CHDF を行いながら管理を行ったが
人工呼吸器からの離脱は第28病日と時間を要した.その後,第42病日に CHDF から HD
へ移行,第48病日には HD 離脱した.手術創感染,治癒遅延などみられたが全身状態は改
善し第66病日に軽快退院となった.以上,腹部多発臓器損傷に対して damage control
surgery と IVR の併用を行い良好な結果を得たので若干の文献的考察を加え報告する.
【背景】近年,重症外傷患者に対する Damage Control Surgery(DCS)の概念が広まり
Open Abdominal Management(OAM)は救命の為の必要手段となっている.OAM 後閉
腹困難症例に対して根治的閉腹を目指すデバイスの 1 つが Starsurgical 社が販売している
Wittmann Patch(WP)である.WP の筋膜閉鎖達成率は75-93%とされ,当院は OAM
後閉腹困難症例の全例に使用しており,その使用実績について報告する.また使用法を動
画で供覧する.【方法】本研究は2007年 3 月から2016年 1 月までの単施設後ろ向き観察研
究で,選択基準は WP 使用患者,除外基準は非外傷患者とした.主要評価項目は筋膜閉
鎖達成率,副次評価項目は合併症発生率とした.
【結果】対象は全体13例中の 7 例であった.
年 齢 は55歳[27-87], 男 性 が 5 例, 鈍 的 外 傷 が 5 例,ISS は34[10-66],APACHE2
Score は32[22-39]の背景因子であり,WP 導入までの日数は 6 日[1-12]であった.
死亡例は 2 例で認め,生存群では定型的閉腹までの日数は 7 日[2-9],筋膜閉鎖達成率は
100%であった.合併症発生は SSI が 1 例のみで腹壁瘢痕ヘルニアは認めなかった.
【考察】
当院の成績は過去文献と比較しても良好な成績であった.重症外傷患者の OAM は WP
にて良好な筋膜閉鎖達成率を挙げれる可能性がある.
救命センターでの外傷診療体制の整備 外傷診療チームが整形外傷診療にもたらす効果
熊本赤十字病院外傷外科
岡野 博史
林田 和之
堀 耕太
菊川 元博
奥本 克己
【はじめに】外傷診療では,蘇生における Damage control orthopedics による介入や,適
切な時期での機能再建が求められる.北米型 ER である当救命センターは,2009年より外
傷診療プロトコル,緊急招集体制の整備,外傷カンファレンス開催等の取り組みを行って
きた.昨年より外傷外科部を新設し,各診療科が分業する蘇生,集中治療,機能再建をシー
ムレスにコントロールしている.【目的】当院での外傷診療体制の整備が整形外傷診療に
もたらした変化を知る.【方法】2009年度以降の,整形外科外傷を含む ISS16以上の外傷
について,根治術開始までの期間,創外固定使用頻度,段階的根治術採用頻度を比較する.
【結果】根治術開始まで平均期間は11.67±1.69日から6.64±0.59日と有意に短縮された.
段階的根治術の選択は増加傾向にあった.創外固定使用頻度は有意な変化がなかった.
【考
察】蘇生や集中治療,機能再建をよく理解したチームの介在により,望ましいタイミング
での根治術の開始や手術侵襲のコントロールが可能となる.一方で予定手術症例との兼ね
合いは大きな制約となる.また旧来の慣習が合併症軽減を目的とした創外固定の使用の制
約となっている.
― 257 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O29-2
当院重症外傷センター開設後の現況
横浜市立大学附属市民総
合医療センター高度救命
救急センター1),横浜市
立大学大学院医学研究科
救急医学2)
加藤 真1)
古郡慎太郎1)2)
高橋 航1)
安部 猛1)
中村 京太1)2)
春成 伸之1)2)
森村 尚登1)2)
O29-3
当センターにおける小児外傷診療の現況と課題
横浜市立大学付属市民総
合医療センター高度救命
救急センター1),横浜市
立大学大学院医学研究科
救急医学2),横浜市立大
学医学部救急医学教室3)
問田 千晶1)3)
六車 崇1)3)
篠原 真史1)3)
白澤 彩1)3)
森村 尚登1)2)3)
O29-4
【背景】当該地域の重症外傷診療体制の強化を図るため,2015年 4 月から行政当該部局が
既存の救命救急センターの中の 2 ヶ所に重症外傷センター機能を付加し,その運用を開始
した.【目的】プロトコルにより当センターに救急搬送された重症外傷センター適応症例
の初期診療の現況と転帰について検討する.【方法】対象は,2015年 4 月〜2016年 1 月の
間に搬送された29症例.デザインは後ろ向き診療録調査.対象症例の Probability of survival(以下 Ps)と転帰について検討した.また,蘇生的止血術や輸血等の開始までに要
した時間,転帰等を前年同時期と比較検討した.【結果】運用開始後の生存例は,Ps>0.5
が19例全例,0.5≧Ps≧0.25が 3 例中 1 例,Ps<0.25が 5 例中 2 例(病着時心肺停止 2 例
を除く).Ps≦0.5の症例の運用開始前後における覚知から輸血開始までの時間は74.7分
VS 39.0分,病着から輸血開始まで43.0分 VS 14.2分.【考察】蘇生的止血術や他の緊急
処置,検査などに要した時間については症例数が少なく十分な検討ができなかったが,輸
血開始までの時間が大きく短縮される傾向にあった.今後は症例を集積し,重症外傷症例
の集約化に係わる検討を加えていく必要がある.
【背景】小児外傷診療では,成人との体格差や生理学的特徴の相違が診断や治療の障壁と
なり得る.【目的】当施設における重篤小児診療の現状を把握し課題を明らかにすること.
【対象/方法】2012年 1 月から2015年12月,当センターへ搬入した15歳以下の小児269例の
うち外傷例を対象とした.患者背景,重症度,転帰について,診療録を後方視的に検討し
た.【結果】以下,中央値(25-75%ile)で記載する.外傷症例は141例.直送/転送 98/43
例.男/女 108/33例.年齢 7 (3-11).重症度は,ISS 5 (1-16),RTS 7.84(7.55-7.84),
Ps 0.995(0.989-0.997)であった.転帰は,生存139例,死亡 2 例であった .TRISS 法で
算出した予測生存率が50%未満の症例 6 例のうち 4 例が生存退院していた.予測外死亡は
なく,死亡した 2 例とも来院時心停止の症例であった.【考察/結語】当施設の小児外傷診
療機能を評価した.救命救急センターを重篤小児外傷患者の診療拠点として整備する際の
課題を明らかにし,対策について考察する.また,重症外傷センター開設前後での比較に
ついても提示する.
当院における骨盤骨折の臨床的検討
勤医協中央病院救急科1),
勤医協中央病院整形外
科2)
田口 大1)
杉浦 岳1)
金沢 幸雄1)
石田 浩之1)
林 浩三1)
堺 慎2)
大川 匡2)
柴田 定2)
浅岡 隆造2)
山内 直人2)
【はじめに】骨盤骨折は生命徴候に影響を与え,時に致死的となりうる重症外傷であるが,
当院のような 2 次救急病院へ搬送となる骨盤骨折の統計的報告は少ない.
【目的】当院で
診療する骨盤骨折患者の臨床的特徴を把握し,今後の外傷診療向上に役立てること.
【方法】
2013年 5 月から2015年10月までの30ヶ月に87症例の骨盤骨折を後方視的に調査した.寛骨
臼蓋骨折単独症例は除外した.【結果】男:女=1 :2.3,平均年齢は71.5歳(17〜96歳),
受傷機転は転倒:転落:交通事故=70: 9 : 8 だった.重症度は日本外傷学会分類では,
1 型57例,2 型22例,3 型 8 例だった.合併損傷は,他部位骨折 9 例,小腸穿孔 1 例,血
気胸 3 例だった.当日の転帰としては当院入院53例,同日転院22例,帰宅12例だった.死
亡症例はなく,搬入当日に高次医療機関への転院が 6 例だった.当院入院例の平均入院期
間は23日( 2 〜87日)であり,当院での創外固定術および TAE 施行症例は認めなかった.
【考察】当院の骨盤骨折は軽症がほとんどであったが,重症例に対して過不足のない初療
を行い,速やかな Trauma bypass が行えるように,各科との連携強化が必要と考えられた.
― 258 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
O29-5
頭部外傷を含む多発外傷に対する ICP モニタリング下運動器外傷手術の経験
奈良県立医科大学高度救
命救急センター1),大阪
警察病院脳神経外科2)
林 智志1)
前川 尚宜1)
中野 健一1)
倉 知彦1)
川井 廉之1)
福島 英賢1)
至田 洋一1)
古家一洋平2)
奥地 一夫1)
O29-6
【目的】頭部外傷を合併した多発外傷の治療では,呼吸・循環を安定させて頭部外傷を治
療し安定すれば他の外傷の治療をしていくことになるが,一方で早期に治療を要する外傷
もある.今回我々は頭蓋内圧(以下 ICP)センサーを留置して頭部の状態をモニタリング
しながら運動器外傷の治療を 4 例に行ったのでその経験を報告する.【方法】対象は20132015年に ICP センサーを留置して骨折手術を施行した 4 例である.4 例とも男性で年齢は
5-82歳(平均44歳),頭部外傷は急性硬膜外血腫が 2 例,外傷性くも膜下出血 2 例であり,
体幹四肢外傷は骨盤輪骨折,腰椎破裂骨折,大腿骨複合骨折,大腿骨骨幹部骨折だった.
全例受傷日に穿頭または開頭血腫除去術を施行し,ICP センサーを留置し,モニタリング
しながら脊椎・骨盤・四肢骨折に対する手術を施行した.【結果】 4 例とも術中に ICP 上
昇を認めず,問題なく骨折手術を施行し術後 CT でも画像所見の変化も認めなかった.【ま
とめ】頭部外傷がある場合にその他の外傷手術をタイミングの判断が難しいが,ICP モニ
タリングをすることは頭部外傷合併例での運動器外傷手術の施行時のモニタリングの一つ
であり適切な時期に手術を行うことを可能にすると示唆された.
アルカリ誤飲により腐食性食道炎を発症した 2 例
慶應義塾大学医学部救急
医学
増澤 佑哉
佐々木淳一
前島 克哉
泉田 博彬
松岡 義
渋沢 崇行
並木 淳
堀 進悟
【はじめに】腐食性食道炎は酸・アルカリ等の組織傷害性の強い薬物誤飲により生じる.
アルカリによる腐食性食道炎の 2 例を経験したので報告する.【症例 1 】49歳の女性.エ
アコン掃除用のアルカリ溶剤を誤飲し当院へ救急搬送された.強い咽頭痛,心窩部自発痛
を認めた.上部消化管内視鏡検査(以下 GF)で喉頭蓋・披裂部の著明な腫脹と,食道か
ら胃に黒色の腐食性変化を伴うびらんを認めた.アルギン酸ナトリウム内服で加療し,
6PTD のフォロー GF で改善傾向であったが,26PTD に食道狭窄を認め内視鏡的拡張術
を施行した.【症例 2 】38歳の女性.自殺企図で家庭用アルカリ洗剤を飲み当院へ救急搬
送された.GF では食道から胃に出血性びらん・潰瘍が多発していた.徐々に嗄声が増悪
したため喉頭ファイバーで観察した所,喉頭蓋・披裂部の著明な腫脹を認め,経口気管挿
管を施行した.1PTD に気管切開を行い,保存的に加療した.72PTD に食道狭窄を認め
内視鏡的拡張術を施行した.【考察】アルカリによる腐食性食道炎では遅発性食道狭窄を
生じ,内視鏡的食道拡張術や食道亜全摘を余儀なくされる症例が多数報告されている.急
性期の上気道閉塞に対する airway management に加え,遅発性合併症のフォローアップ
が肝要と考えられた.
― 259 ―
抄 録
一 般 演 題
(ポスター)
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P1-1
頭部外傷後の皮膚欠損創に対し,陰圧閉鎖療法及び植皮術を用い良好な経過を得た 1 例
東京都立多摩総合医療セ
ンター1),昭和大学医学
部救急医学講座2)
笠原 道1)
清水 敬樹1)
萩原 祥弘1)
濱口 純1)
荒川 裕貴1)
鈴木茂利雄1)
小野 将平1)
光銭 大裕1)
金子 仁1)
森川健太郎1)
三宅 康史2)
P1-2
積極的平温療法を施行した重症頭部外傷の一症例
高知赤十字病院救命救急
センター1),高知赤十字
病院脳神経外科2)
原 真也1)
山本祐太郎1)
本多 康人1)
村上 翼1)
廣田 誠二1)
島津 友一1)
山崎 浩史1)
西山 謹吾1)
鈴江 淳彦2)
P1-3
【症例】70歳代,男性.【既往歴】特記事項無し.【臨床経過】受診 1 週間前に階段から転
落し,頭部を受傷.病院を受診せずにいたが,外出した際に動けなくなっているところを
通行人が発見し,救急要請.当初は ER へ搬送されたが,悪臭が著明で気管挿管下でのデ
ブリードマン及び抗菌薬を含む全身管理が必要と判断され,救命救急センター入室となっ
た.入室後,気管挿管下でデブリードマン施行.連日,電気メスと電動式パルス洗浄機を
用いてデブリードマンと洗浄を繰り返した.第12病日にトラフェルミン散布,人工真皮貼
付,陰圧閉鎖療法を行った.定期的な交換を行い,局所感染は認めなかった.良好な肉芽
の増生を得た後に,第39病日に分層植皮を行った.その後も陰圧閉鎖療法を継続し,第67
病日に陰圧閉鎖療法を終了とした.経過は良好で毛髪欠損に対しかつらを作成し,第83病
日に独歩で退院となった.【考察】陰圧閉鎖療法は近年急速に普及しており,施行できる
部位も多様である.肉芽の増生のみならず,植皮後の生着を促す tie-over としての効果
など様々な効果が期待されている.頭部への陰圧閉鎖療法で問題となり得る疼痛や騒音な
どへの工夫を行い,良好な経過を辿った.
【概要】重症頭部外傷に対する脳低温療法は,予後を改善しないだけでなくその合併症や
手技の煩雑さから現在のガイドラインでも推奨には至っていない.しかし高体温が脳組織
に悪影響を及ぼすことは異論のないところであり,各施設でも何らかの方法で体温調節を
行っているのが現状と思われる.当院でも症例に応じて血管内冷却装置(以下サーモガー
ドシステム®)を使用して体温調節を行っている.【症例】19歳の男性.軽四の後部座席に
乗車中に電柱に激突して受傷した.来院時の意識 E1V1M4,瞳孔両側 5 mm で対光反射
なし.頭部 CT で広範囲脳挫傷,外傷性くも膜下出血,気脳症,頭蓋骨骨折,頭蓋底骨折,
顔面骨多発骨折を認めた.ICU 入室後にサーモガードシステムを挿入し積極的平温療法
(36℃48時間)を導入,ICP モニターにより脳圧を管理した.徐々に意識レベルは改善し,
第10病日に抜管.第13病日より発語あり経口摂取を開始した.第16病日より指示動作に応
じるようになり,第25病日より歩行器訓練を開始した.意識は E4V4M6まで改善しリハ
ビリ病院へ転院した.【結語】重症頭部外傷に対する積極的平温療法は有効である可能性
がある.積極的平温療法を施行した重症頭部外傷の症例を提示し,体温管理の現状につい
て考察する.
遅発性に外傷性脳動脈瘤破裂をきたした一例
横浜市立大学付属市民総
合医療センター高度救命
救急センター1),横浜市
立大学大学院医学研究科
救急医学2),横浜市立大
学医学部救急医学教室3)
日下恵理子1)
問田 千晶1)3)
濱田 幸一1)
六車 崇1)3)
森村 尚登1)2)3)
【背景】外傷性脳動脈瘤の発症頻度は頭部外傷の約0.1%と稀だが,その致死率は30-50%
と報告されている.今回,頭部外傷後遅発性に脳動脈瘤の破裂をきたした一例を経験した
ので報告する.【症例】10歳の女児.交通外傷で当院へ救急搬送.診断は外傷性くも膜下
出血,急性硬膜下血腫,脳挫傷(ISS 26, RTS 4.739, Ps 0.77).ICU 入室後,気管挿管・
人工呼吸管理,ICP モニタリング下に脳圧管理を施行.第12病日 意識障害が遷延し気管
切開を施行.第18病日 ICU 退室.頭部 MRI で,びまん性性軸索損傷と診断.第23病日
瞳孔不同が出現,頭部 CT で midline shift を伴う右急性硬膜下血腫を認め,緊急開頭血腫
除去術/外減圧術を施行.術直後の頭部 CT で前大脳動脈遠位部に脳動脈瘤破裂を認めク
リッピング術を追加.第46病日 脳血管造影で脳動静脈瘻を認めたが,第60病日 自然消失.
第106病日転院.受傷後 7 か月現在,意識清明,嚥下,立位保持が可能である.【考察/結語】
外傷性脳動脈瘤は稀であるが,若年層の重症頭部外傷後2-3週間で破裂している症例が報
告されている.若年の重症頭部外傷症例では,遅発性の仮性脳動脈瘤を念頭に置く必要が
ある.
― 263 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P1-4
切迫心停止となった顔面外傷の救命例
鳥取県立中央病院救命救
急センター
岡田 稔
P1-5
仙骨骨折により一過性の低髄液圧症状を呈した仙骨嚢胞の一例
誠心会井上病院外科
中塚 昭男
P1-6
症例は71歳,男性.下り坂を自転車運転中,後方より乗用車に衝突されて前方に飛ばされ,
高度の顔面外傷にて緊急搬送された.口腔内から湧き出る出血により切迫心停止となり,
気管挿管,輸血を含む JATEC に則った初期診療で蘇生しつつ,尿道カテーテルにて鼻腔
からの出血を制御し,下顎骨骨折部固定術,両側顎動脈の TAE を施行した.第 2 病日に
は敗血症性ショックとなり,SSCG に則った集中治療を行い,第16病日に上顎骨骨折部固
定術を施行した.受傷 2 週間を経過した頃から出血が再燃し,外傷性または感染性の仮性
動脈瘤を疑って,第18病日に右後頭動脈の TAE を施行した.その後,顎骨壊死はあるも
のの全身状態は安定した.高度顔面外傷の文献的考察を加えて,本例の経過を報告したい.
【はじめに】仙骨骨折に伴い仙骨嚢胞から髄液漏を生じ,低髄液圧症状を呈した症例を経
験したので報告する.【症例】68歳,女性.8 月某日,山登りの帰りに沢を下っている際,
足を滑らせ臀部を打撲し当院受診.主訴は頭痛,嘔気,臀部痛.CT で仙骨 S2-4レベルの
脊柱管内に嚢胞性病変(35x40x50mm),仙骨骨折,および仙骨前面に液体貯留を認めた.
当初,頭痛・嘔気は熱中症による症状と思われたが,臥位で消失,頭部挙上で出現するこ
とから低髄液圧症状を考え,仙骨骨折による嚢胞からの髄液漏を疑い入院とした.翌日の
CT では仙骨前面の液体貯留は増加し,第 3 病日までは頭部拳上で頭痛・嘔気が出現した.
第4-5病日にベッドアップ30°可能,第 7 病日には坐位可能となった.第 7 病日に CT で仙
骨前面の液体減少を確認し,徐々に離床を開始したが,症状の悪化は見られなかった.そ
の後,軽度の頭痛は残存するものの,日常生活には問題ない状態に回復したため,第21病
日に軽快退院とした.
【考察】本症例は仙骨嚢胞により仙骨が菲薄化しており,軽微な外
傷で骨折,髄液漏を発症し,低髄液圧症状を呈したものと思われる.保存的治療により改
善が得られたが,難治性で手術に至った症例報告もあり,若干の文献的考察を加え報告す
る.
神経症状を伴った仙骨横骨折の 1 例
大阪府立中河内救命救急
センター
岡本 潤
岸本 正文
塩野 茂
【背景】高エネルギー外傷による仙骨骨折は日常臨床現場で遭遇することが多いが,見逃
される確率が高い.その中で仙骨横骨折は非常に稀であり,今回仙骨横骨折の治療経験を
得たので報告する.【症例】28歳男性,自動車走行中に停車していたトラックに接触し受
傷した.初診時,両側の前脛骨筋・腓腹筋の筋力低下,両臀部から下腿後面にかけての疼
痛・痺れ(両側 L5-S 神経障害)と膀胱直腸障害を認めた.CT では第 1 ・ 2 仙骨横骨折
を認め,近位骨片は後方に転位し,屈曲変形しており,仙骨管は高度に狭窄していた.
MRI では損傷部位で馬尾神経の走行が不鮮明になっていた.神経症状を伴っていたため,
受傷当日に緊急手術(除圧+固定術)を施行した.S1下方 -S3椎弓を切除し,iliosacral
screw にて固定を行った.同部位にて神経の損傷を認めた.術後,膀胱直腸障害は残存す
るも,両下肢の運動・感覚障害は改善を認めた.【考察】仙骨横骨折は仙骨骨折の3-5%と
稀な骨折であるが,96-100%で神経症状を呈すると報告されている.しかし仙骨骨折,特
に仙骨横骨折の診断は難しく,X 線像のみでは高率に見逃すと言われているため,本症例
の様に神経症状を認めた場合,早急に CT と MRI を撮影することで早期に診断すること
ができると考えられる.
― 264 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P1-7
頸椎を貫通し神経根損傷をきたした頸部刺創の一例
兵庫県立西宮病院救命救
急センター
南 和伸
松浪 周平
鵜飼 勲
二宮 典久
高岡 諒
鴻野 公伸
杉野 達也
P1-8
鈍的甲状腺損傷の 1 例
獨協医科大学越谷病院救
命救急センター
速水 宏樹
杉木 大輔
上笹貫俊郎
五明佐也香
池上 敬一
松島 久雄
P1-9
【はじめに】頸部刺創は頸動脈や気管,食道などの臓器損傷をきたし得る外傷であるが,
脊髄や神経根の損傷をきたした報告は少ない.今回我々は頸部刺創で神経根損傷をきたし
た症例を経験したので報告する.【症例】既往に身体表現性障害がある70歳男性で,自宅
内で刃渡り15cm の包丁を自身の頸部に刺したため,家族が救急要請した.当院から出動
したドクターカーが現着時,包丁は頸部正中からやや左寄りに長軸方向に刺さっており,
創部から活動性出血を認めた.ショックバイタルで意識障害を認めたため,気管挿管,末
梢静脈路確保し現場出発した.病院到着後,急速輸血によりバイタルは安定し,その時点
で行なった CT では気管や頸部の主要血管には明らかな損傷は認めなかったが,包丁が
C5から C7にかけて椎体を貫通していた.同日緊急手術施行し出血源の上甲状腺動脈を結
紮止血するとともに包丁を愛護的に抜去した.術後の MRI で頸髄 C6レベルの脊柱管内左
側中心に血腫を認めたが,頚髄そのものは比較的温存されていた.術後の神経評価で C5
から C7領域の神経根障害を後遺していた.【考察】頸部刺創による神経根損傷は非常に稀
である.それによる症状,治療,後遺症などについて文献的考察を踏まえ報告する.
【はじめに】甲状腺損傷は稀な外傷の 1 つである.今回我々は直達外力による鈍的甲状腺
損傷の治療にあたり,その診断のピットフォールを経験し,また甲状腺ホルモンの自然経
過を追跡できたため報告する.【症例】27歳,女性.業務用エレベーターに頚部を挟まれ
て受傷した.来院時の全身状態は安定していたが,頚椎骨折および由来不明の縦隔血腫を
認めた.同日,経過観察目的での造影 CT を撮影したところ甲状腺損傷と判明した.甲状
腺ホルモンは第 2 病日の遊離 T3 20.32pg/ml をピークに漸減し,第21病日には正常化し
た.症状は食欲不振などの消化器症状を認めたが,その他明らかな異常所見は経験されな
かった.治療は経過観察のみで行った.【考察】甲状腺損傷による縦隔血腫の報告例は少
ない.甲状腺周囲の軟部組織は粗であり,縦隔へ連続していることから甲状腺損傷による
血腫が縦隔へ波及することは十分にありうる.一方で,縦隔血腫から甲状腺損傷を想定す
ることは困難であり,由来不明の縦隔血腫を認めた場合には甲状腺損傷も鑑別疾患に含ま
れることには留意したい.甲状腺ホルモンの自然経過に関して報告したものは渉猟しえた
限り認めなかった.
頸椎骨折を伴わない後咽頭血腫の 1 例
さいたま赤十字病院救命
センター・救急医学科
鈴木 源
田口 茂正
人見 秀
伊藤 悠佑
野間未知多
坂本 早紀
早川 桂
川浦 洋征
五木田昌士
勅使河原勝伸
清田 和也
【症例】49歳男性.【現病歴】自転車走行中に急ブレーキをかけた際に前方に転倒し前医に
救急搬送となった.Primary survey では異常所見なく,Secondary survey では前額部挫創,
後頚部痛を認めた.挫創処置を行っている際に呼吸困難を訴え,SpO2 50%台まで低下.
マスク換気も困難であり気管挿管を試みたが困難であった.輪状甲状間膜切開を行い気道
確保とした.頸部造影 CT では中下咽頭の椎体前面に血腫を認め,気道閉塞していた.呼
吸管理目的に同日当院に転院.転院後気管切開を施行.保存的に経過をみる方針となった.
スピーチカニューレで気道開通確認後,入院19日に気切チューブ抜去.入院20日目の CT
では後咽頭血腫は完全に消失.入院第34日退院となった.【考察・結語】頸椎骨折を伴わ
ない後咽頭血腫の報告は散見されるが頻度は不明である.比較的高齢者に多く,受傷原因
は交通事故や転落,転倒が多い.受傷からの気道症状発症までの時間は報告により異なる
が,受傷直後は気道症状がないことが多い.治療は経過観察,気管挿管,血腫除去が行わ
れ適切に治療されれば予後良好であるとされる.外傷におけるレントゲン評価では骨のみ
ではなく,軟部の評価を行う必要があるという教訓的な症例を経験したので報告する.
― 265 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P1-10
墜落による外傷性椎骨動静脈瘻の一例
大分市医師会立アルメイ
ダ 病 院 救 急・ 集 中 治 療
科1),東京女子医科大学
救急医学2)
稲垣 伸洋1)
中島 竜太1)
矢口 有乃2)
P2-1
来院時ショック状態であった多発外傷患者に対し,救命および機能温存に成功した 1 例
香川県立中央病院救命救
急センター
佐々木和浩
P2-2
70歳代の男性,作業中に自宅の屋根 4 〜 5 m の高さより墜落,約 2 時間後に訪問客にて
発見されて救急要請となった.当院搬送時,呼吸循環は安定,FAST も陰性であった.
JCSII-10,GCS E3V4M6,左上下肢に有意な筋力低下あり(MMT2/5),体温35.7℃.後
頚部と右胸部に疼痛と圧痛あり,全身 CT 検査より C2 〜 3 椎骨骨折,右肺挫傷と軽度気
胸(ドレナージ不要),右第 3 〜 5 肋骨骨折を認めた.頚髄 MRI にて咽頭後壁の血腫形成
と C2 〜 3 レベルでの中心性脊髄損傷の所見があり,頚部の安定化を目的に同日,ハロー
ベスト固定を実施して重症室へ入室となった.入室後の呼吸状態は安定,意識レベルと左
麻痺も徐々に改善傾向となった.来院時 CT 検査にて C2骨折部の椎骨動脈損傷が疑われ
たため,第 3 病日に3DCT を実施した.同部の仮性動脈瘤形成も疑われたため,全身状態
の安定化を待って第10病日に脳血管造影を実施,同部の椎骨動静脈瘻の所見を得た.椎骨
動静脈瘻による症状を認めなかったため第21病日,コイル塞栓術による endovascular
trapping を施行した.その後も脳血管障害を発生することなく順調に経過,第30病日に
整形外科へ転科,第70病日にリハビリテーション目的に転院となった.今回の治療経験を
踏まえ,文献的考察を加えて報告する.
【症例】43歳男性.バイクで走行中に軽四自動車と衝突し,2 m 下の田んぼに転落して受
傷され,当院へ救急搬送された.【経過】来院時血圧56/30とショックバイタルであったが,
輸血ポンピングで血圧は一時的に改善された.FAST 陽性および造影 CT で腹腔内出血を
認めた.その他,外傷性大動脈解離,右脛腓骨近位部骨折,右下腿コンパートメント症候
群,右小指基節骨開放骨折を認めた.ISS は22点であった.同日緊急で腹部外科により腹
腔内出血に対する開腹止血術および小腸部分切除術,整形外科により右膝の創外固定およ
び下腿筋膜切開術,そして小指基節骨開放骨折に対して洗浄,デブリードメント,内固定
術が施行された.受傷後 5 日目に心臓血管外科によりステント留置術が施行された.受傷
後30日目に整形外科にて,脛腓骨近位部骨折に対して内固定術を施行した.受傷後 3 ヵ月
で回復期病院へ転院となった.受傷後 1 年 6 ヵ月の時点で,ほぼ痛みなく独歩可能で,右
膝可動域は伸展-10°,屈曲150°,右手指は可動域制限を認めず,経過良好である.【考察】
重症多発外傷では各科協力して適切な時期に適切な治療を施行する必要があり,今回の症
例は功を奏し,救命および機能温存に成功したと思われる.
外傷性血胸に対し胸腔鏡補助下に横隔膜損傷を同定し止血し得た一例
医療法人徳洲会東京西徳
州会病院1),医療法人沖
縄徳洲会湘南鎌倉総合病
院2)
澤村 直輝1)
池谷 佑樹2)
飯島 広和1)
【症例】75歳男性.【現病歴】心房細動で FXa 阻害薬内服中の患者.来院前日に転倒し胸
部を打撲,呼吸苦と胸痛を主訴に外来受診した.【経過】収縮期血圧70台 SpO2 85%,造
影 CT にて気胸と右第 9 肋骨の転移を伴う骨折及び骨折部近くに extravasation を認め外
傷性血気胸の診断となった.Chest tube 挿入し初回900ml,続いて360ml/2hr の血性排液
を認めた.急速輸液及び輸血療法行うも transient-responder であり外傷性大量血胸に対
し胸腔鏡補助下手術(Video-Assisted Thoracic Surgery, 以下 VATS)を施行した.CT
では肋間動脈の損傷が疑われていたが,術中所見にて横隔膜損傷からの活動性の出血を認
め縫合閉鎖により止血を得た.術後経過は良好で第 9 病日に独歩にて退院となった.
【考察】
横隔膜損傷は胸部外傷の中で比較的稀であり,腹腔内臓器の脱出を伴わない例は診断が困
難となる場合もある.欧米では外傷性血胸に対し VATS が盛んに行われているが,本邦
での報告はまだ少ない.外傷性血胸への VATS は低侵襲で原因検索と治療を同時に行え
るため非常に有用な方法である.外傷性血胸に対し VATS により横隔膜損傷による出血
を同定し止血し得た症例を経験したので若干の文献的考察を踏まえ報告する.
― 266 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P2-3
肺分画症に肺損傷を合併した鈍的胸部外傷の 1 例
京都第二赤十字病院救急
科
平木 咲子
荒井 裕介
石井 亘
岡田 遥平
榊原 謙
飯塚 亮二
P2-4
左背側肋骨骨折の胸部大動脈刺入に対し準緊急で開胸術を行った 1 例
深谷赤十字病院救急科
中込圭一郎
金子 直之
工藤 智博
長島真理子
P2-5
【はじめに】肺分画症は,体循環系の異常血管から血液を供給され,正常肺や気管支と交
通をもたない非換気性肺組織を有する比較的稀な疾患である.【症例】22歳男性.自転車
乗車中に転倒し,救急搬入された.搬入時の造影 CT で多発骨折と左上下葉肺損傷を認め
た.下行大動脈から分岐して左下葉を栄養する異常血管の枝に extravasation を認め,肺
損傷を伴う肺分画症と診断した.緊急血管造影で異常血管からの extravasation は認めな
かったが,胸腔ドレーンから血性廃液が継続して循環動態が不安定であったため,緊急開
胸術を施行した.左上葉と分画肺に出血を伴う裂傷を認めたが,分画肺切除は行わずに裂
傷部の縫合のみで閉胸とした.ICU 入室後も胸腔ドレーンからは少量の排液が継続したが,
分離肺換気下右片肺換気での呼吸器管理で止血を得た.【考察】外科手術を要する鈍的胸
部外傷は 2 %と多くはないが,分画肺は体循環系であり一般的な肺損傷に比し多量な出血
を来たす可能性がある.また,止血処置の必要な外傷性肺損傷に対し,多くは外科的止血
術が選択されるが,分画肺はその解剖学的特徴により外傷時の止血処置には一行を要する.
自験例を通し,肺分画症に肺損傷を合併した鈍的胸部外傷に対する治療指針を検討した.
肋骨骨折の大動脈刺入は稀であるが,今回我々は軽微な骨折が,蛇行した大動脈に遅発性
に刺入した症例を経験し,管理に注意しつつ救命しえたため報告する.症例は89歳女性.
自宅内で転倒し背部痛のため近医受診.CT で左下位肋骨骨折と少量血胸の診断で入院.
第 3 病日,食事のため起こしたところ急に意識レベルが低下し,CT で大量血胸を認めた
ため当院転院.来院時 BP 73/53 mmHg,HR 120 /分,RR 28 /分,SpO2 98%(O2リザー
バーマスク15L/min),GCS E1V1M4.前医 CT の血胸内に,蛇行した大動脈と連続した
高濃度領域を認め,大動脈損傷が起きたが一時的に止血されていると推察した.胸腔内に
陰圧がかかるのは危険と判断し,気胸がないことを確認しまず気管挿管,続いて胸腔ドレ
ナージを行い水封で管理した.造影 CT で,左10-11背側肋骨骨折が,同部で偶然背側に
蛇行している大動脈に刺入したものと診断した.ICU で低血圧管理,また骨折部に圧を
かけない体位で絶対安静とし,第 6 病日に第10肋間で開胸術施行.責任肋骨は第11で,大
動脈修復・肋骨観血的整復固定を行った.術翌日に抜管,POD2で食事開始,POD4で胸
腔ドレーン抜去,POD25でリハビリ転院となった.
心肺停止蘇生後に ICU で緊急開胸術を施行するも救命し得なかった重症胸部外傷の一例
兵庫医科大学救急災害医
学
白井 邦博
上田 敬博
山田 勇
藤崎 宣友
山田 太平
平井 康富
西村 健
小谷 穣治
【緒言】来院時心肺停止(CPA)で蘇生後に,大量血胸のため ICU で緊急開胸術を施行し
止血するも,繰り返す肺炎と大量気漏のため救命できなかった一例を経験した.【症例】
63歳男性.自転車走行中にトラックに衝突され近隣救命センターへ搬送,脳挫傷,頭蓋底
骨折,両肺挫傷と血気胸,多発肋骨骨折,胸骨骨折,右鎖骨骨折,左鎖骨下動脈解離,横
突起骨折,恥骨骨折の診断(ISS:38)で胸腔ドレーン挿入と輸血を行うも,持続出血た
め受傷 4 時間後に当院へ搬送された.来院時 CPA で CPR 施行し心拍再開(10分)した.
ICU 入室後に胸腔ドレーンからの持続出血で循環維持不可能のため,ICU で自動吻合器
にて肺部分切除術,deadly triad のため胸腔内と胸壁にガーゼパッキングを施行した.第
3 病日,止血と気漏が無い事を確認しガーゼ除去した.第 6 病日に胸腔ドレーンから少量
の気漏,第 7 病日,人工呼吸器関連肺炎(VAP)を合併して気漏は悪化した.第10病日
AKI にて CHDF 導入,その後,4 度の VAP と大量気漏を合併,第33日に癒着療法を試み
るも改善無く,多臓器不全へと進展して第48病日に死亡した.【考察】高濃度酸素や高い
プラトー圧の回避のため早期 ECMO 導入で人工呼吸器離脱,または繰り返す肺炎合併前
に肺切除など strategy に課題があった.
― 267 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P2-6
鈍的外傷による網嚢内出血の一例
岐阜大学医学部附属病院
高度救命救急センター1),
岐阜市民病院災害・救急
医療センター2)
加藤 久晶1)
田中 卓1)
菊池 俊介2)
水野 洋佑1)
池庄司 遥1)
鈴木 浩大1)
神田 倫秀1)
中野 志保1)
吉田 隆浩1)
波頭 経明2)
上田 宜夫2)
豊田 泉1)
小倉 真治1)
P2-7
当院における外傷性副腎損傷 2 例の検討
国保直営総合病院君津中
央病院救急・集中治療科
岩瀬 信哉
北村 伸哉
加古 訓之
大谷 俊介
大村 拓
岡 義人
P2-8
【はじめに】網嚢内出血はその発症初期において FAST で描出されない可能性があり,外
傷初期診療における盲点となり得る.【症例】85歳,男性.【現病歴】自転車走行中に徐行
車両と接触,転倒した.救急隊接触時,四肢のしびれを訴えたが自動運動は可能であった.
バイタルサインは安定しており,その他理学所見異常を認めず,直近救急指定病院へ搬送
された.同院では JATEC に準じて初期診療がなされ,FAST は陰性であった.しかし初
療中に徐々に左側腹部痛を訴えはじめ圧痛を伴ったため,腹部 CT 検査が実施された.結
果,網嚢内血腫貯留と造影動脈相での活動性出血を認め,当センターへ転送となった.【当
センター経過】当院来院時意識清明,ショックバイタルなし,FAST はモリソン窩で陽
性であった.前医造影 CT 検査で脾動脈分枝からの出血が疑われたため,血管造影検査・
塞栓術を実施した.血管造影検査で大膵動脈からの造影剤漏出像を認め,これを選択塞栓
した.造影検査中に一時的に血圧低下を認めたが,塞栓術終了後にはバイタルサインは安
定した.【まとめ】網嚢内出血は受傷初期に FAST 陰性として捉えられる可能性があり,
注意が必要である.
【背景】副腎損傷は稀な損傷で治療に難渋する事も多い.今回,活動性出血を伴う副腎損
傷に対して TAE で止血を得られた 2 例を経験したので考察を加え報告する.【症例 1 】
82歳 男 性. 耕 耘 機 に 体 幹 部 を 轢 か れ 受 傷, 当 院 に ヘ リ 搬 送 と な り 来 院 時 BP
63/41mmHg,HR 91/min とショック状態であった.全身 CT では右副腎損傷の他,肝損
傷(Ⅲb 型)と右多発肋骨骨折,左寛骨臼骨折を認めた.緊急輸血と TAE により止血が
得られ ICU に入室した.その後,敗血症性ショックにより ICU 管理が長期化したが,全
身状態は安定し第23病日に ICU 退室となった.【症例 2 】83歳女性.軽自動車に衝突され
受傷,当院にヘリ搬送となり来院時 BP 76/54mmHg,HR 85/min とショック状態であった.
全身 CT では左副腎損傷の他,外傷性 SAH,顔面骨骨折,両側多発肋骨骨折,肝損傷(Ia
型),右足舟状骨骨折を認めた.緊急輸血と TAE により止血が得られ ICU に入室した.
循環動態は安定し翌日に ICU 退室となった.【考察・結語】当院 1 年間の外傷症例の検討
では,副腎損傷は全外傷の0.68%であり発症頻度は低かった.副腎損傷は他の損傷に合併
している例が多く,外傷診療では常に念頭に置く必要がある.また,活動性出血を伴う副
腎損傷の止血術として TAE が有用と考えられた.
外傷性肝損傷に対する TAE 中に増悪する右季肋部痛にて診断しえた胆嚢動脈損傷の 1 例
神戸市立医療センター中
央市民病院
栗林 真悠
小森 大輝
井上 彰
蛯名 正智
有吉 孝一
【症例】63歳男性.走行中の乗用車の助手席に乗車中,乗用車同士の接触事故で受傷.搬
入時のバイタルサインは安定していたが全身 CT で右多発肋骨骨折,右気胸,外傷性肝損
傷を認めた.外傷性肝損傷に対し IVR を選択し,腹腔動脈造影を施行したところ肝両葉
に造影剤の血管外漏出がみられた.肝損傷に対する TAE 中に右季肋部に限局した腹痛が
増強したため,右肝動脈造影を行ったところ,胆嚢動脈からも造影剤の血管外漏出を認め
た.症状から胆嚢破裂,胆汁漏による胆汁性腹膜炎を疑い,循環が安定していたため胆嚢
動脈に対する TAE は行わず,試験開腹を選択した.開腹所見では,胆嚢床損傷及び胆嚢
動脈損傷があり,胆嚢漿膜下の血腫も強かったため胆嚢摘出術を施行した.術後,DICCT で胆嚢床に造影剤の漏出を認め,胆汁漏に対し ENBD 留置を行った.術後13日目に
ENBD 造影で造影剤の漏出はなく,胆汁漏は治癒したと考え退院とした.【考察】外傷性
胆嚢動脈損傷は比較的まれであるが,肝損傷に対する TAE 中に胆嚢動脈造影を行い,
DIC-CT を追加することで胆汁漏を含め適切に診断し治療を行うことができた.
― 268 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P2-9
胸骨圧迫による外傷性肝損傷による出血性ショックの 1 例
武蔵野赤十字病院救命救
急センター
安田 英人
須崎紳一郎
勝見 敦
原田 尚重
原 俊輔
三浪 陽介
東 秀律
平山 優
安達 朋宏
本澤 大志
岸原 悠貴
P2-10
腹部外傷の Damage control surgery 後,Morel-Lavallee Lesion に感染をきたした一例
長崎大学病院救命救急セ
ンター1),長崎大学病院
外傷センター2)
山野 修平1)
井山 慶大1)
猪熊 孝実1)
野崎 義宏1)2)
平尾 朋仁1)
田口 憲士2)
福島 達也2)
吉本 浩2)
宮本 俊之2)
田崎 修1)
P3-1
【症例】60歳代男性.ゴルフ練習場での練習中に突然倒れ,心肺停止により救急要請.スタッ
フらの目撃と bystander CPR があり,救急隊の到着時に Vf を呈し除細動を 2 度施行し,
心拍は再開.来院時は,意識レベル GCS E4V4M6,血圧151/106mmHg,心拍数117/分,
呼吸数27/分,体温34.8℃で,急性心筋梗塞を疑い緊急で CAG を施行.# 6 に99%の狭窄
を認め,PCI を施行した.術後は ICU にて循環管理を開始したが,その後急激に血圧低
下を来し心窩部痛や背部痛を訴えた.エコー上で心機能は比較的安定していたが,肝表面
に著名な血腫を認めた.腹部 CT を撮影し,肝左葉表面に造影剤の血管外漏出像を伴う腹
腔内出血を認め,緊急で TAE を施行.その後循環動態は安定し,経過は良好なため,第
22病日に退院となった.【考察】急性心筋梗塞により心肺停止となり,心肺蘇生時の CPR
による外傷性肝損傷及び出血性ショックを来した 1 例を経験した.心肺蘇生術に伴う外傷
性肝損傷の合併は比較的稀であるが,心肺蘇生後のショック状態の鑑別の一つに挙げるべ
きであると考えられた.
Morel-Lavallee Lesion は外傷による剪断力で皮下に生じる閉鎖性のデグロービング損傷
である.その多くは無症候性で診断は困難なことが多いが,感染や皮膚壊死を生じると治
療に難渋するため,早期の診断と治療介入が必要とされている.我々は腹部外傷に対する
Damage control surgery 後に合併した Morel-Lavallee Lesion に感染をきたした一例を経
験したので報告する.症例は,31歳男性.バイク運転中に転倒しガードレールに衝突して
受傷した.来院時の血圧は60/44mmHg.ポンピングで緊急輸血を行うも血圧を維持でき
ず,Damage control surgery を行った.損傷は複数箇所の小腸,S 状結腸の断裂と腸間膜
を認め,3 回の開腹手術で止血術と人工肛門の造設術を行った.術後数日して左側腹部に
発赤を認め,12病日に撮影した造影 CT で左側腹部の皮下に液体貯留と周囲の軟部組織に
炎症所見を認めた.直ちにドレナージを行ったが,改善に乏しく21病日に外科的デブリー
ドメントを行った.その後,経過は良好で51日病日に転院となった.
自傷行為による陰茎切断の一例
国立病院機構東京医療ン
センター
上村 吉生
尾本健一郎
荒川 立郎
石澤 嶺
木村 隆治
太田 慧
妹尾 聡美
鈴木 亮
菊野 隆明
【はじめに】陰茎切断は稀な外傷であり精神疾患の合併や異性関係のトラブルといった特
徴的な背景を有する.今回我々は統合失調症を発症後陰茎切断して緊急搬送された一例を
経験したため報告する.【症例】44歳男性.【現病歴】入院 1 週間前から本人が「生霊にと
りつかれて見張られている」と言っていた.入院当日自室にてハサミを用いて,自らの陰
茎を切断したところを弟が発見し救急要請.救急隊現着時陰茎断端から出血を認めたため
当院に搬送となった.【既往歴】糖尿病性網膜症.【入院時現症】Primary Survey では陰
茎部の外出血以外には異常なく,Secondary Survey では頸部浅い切創を認め,陰茎は恥
骨結合レベルで完全切断状態であり,多量の皮下血腫の形成を認めた.【入院経過】入院
時に切断された陰茎部の出血源である陰茎背動脈の断端を結紮し止血を得た.幻覚妄想状
態に伴う自傷行為であり,血糖コントロール不良であることなどを踏まえ,泌尿器科医と
緊急協議し断端形成術の方針とした.【考察】陰茎切断症例では,再接着を行うべきかど
うかを慎重に検討する必要があるが,症例数も少ないため明確な治療指針は確立されてい
ない.今回の症例の経過を文献的考察とともに報告する.
― 269 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P3-2
不安定型骨盤骨折で TAE と内固定により良好な転帰をとった 1 症例
東邦大学医療センター大
森病院救命救急センター
豊田幸樹年
一林 亮
渡辺 雅之
横室 浩樹
吉原 克則
本多 満
P3-3
尿道損傷と直腸損傷を合併した骨盤骨折の 1 例
鹿児島市立病院1),東海
大学医学部外科学系救命
救急医学2)
野口 航1)2)
吉原 秀明1)
伊福 達成1)
佐藤 雅紀1)
佐藤 満仁1)
稲田 敏1)
勝江 達治1)
下野 謙慎1)
猪口 貞樹2)
P3-4
【背景】不安定型骨盤骨折では TAE や packing,創外固定により止血を中心とした処置が
行われる.救命後は変形のない骨盤を再建する必要がある.以前は創外固定後安静が中心
であったが,内固定が行われるようになってきている.【症例】67歳女性,<主訴>高所よ
り墜落<現病歴>建物から飛び降り倒れているところを発見,搬救急送となった.<Primary Survey>A:開通 B:異常所見なし,C:末梢冷感あり,BP 90/60,HR 80/min ,
FAST 陰性,骨盤 Xp:不安定型骨盤骨折あり D:GCS E3V3M6 E:BT 36.9℃<whole
bodyCT>外傷性くも膜下出血,肝損傷(Ib),不安定型骨盤骨折,左側大腿骨骨折を認め
た<臨床経過>血圧低下を認め恥骨・腸骨付近の血腫量の経時的増大を認めたため TAE
を施行.両側内腸骨動脈を GS で塞栓,続いて創外固定を施行.第 9 病日に腸骨・恥骨を
プレート固定,両側 iliac screw を挿入.第13病日 ICU 退室.【考察】外傷患者は複数回
手術を必要とすることがあり適切な手術時期を選択する必要がある.骨盤骨折に対する初
期治療の方針,根治的手術のタイミングが今後の検討事項と考えられた.【結語】血管内
治療及び手術を組み合わせることで良好な転帰をとった症例を経験したため報告する.
【症例】37歳男性.【現病歴】滝の脇の岩場を下山中に滑落し受傷.防災ヘリにて救出され
前医へ搬送.対応困難で当院へ転院搬送【来院時現症】意識清明,呼吸20/分,脈97/分,
血圧95/66mmHg,SpO2:99%(room).左顔面挫創,下腹部皮下気腫,会陰部〜肛門周
囲に血腫腫脹あり.直腸診で血便と 9 時方向に粘膜断裂あり.左膝関節の変形あり.CT
検査で骨盤骨折(仙骨)と恥骨結合の離開,前医造影剤が後腹膜および直腸内への流出し
ており尿道損傷と直腸損傷と診断した.左脛骨高原骨折もあり.【経過】尿と便の diversion 目的に開腹膀胱瘻造設術と人工肛門造設術,骨盤骨折と左脛骨高原骨折に対して創外
固定を 1 期的に行った.抗生剤投与中の第 4 病日より発熱あり.第10病日の CT で後腹膜
に複数の膿瘍を認め抗生剤を変更.第13病日に膿瘍ドレーン挿入.第14病日に左脛骨高原
骨折に対する関節内骨折観血的手術を,第17病日に骨盤後方固定術を施行.術後再度発熱
があり左大腿部膿瘍に対して第21病日にドレーン入れ替えを行い解熱した.第40病日の膀
胱瘻からの尿道評価で保存的に治癒と判断,第48病日に抜去.第60病日には骨盤創外固定
抜去.直腸損傷部も治癒しており第87病日に人工肛門閉鎖術を行った.第101病日に独歩
退院
遅発性に臀部コンパートメント症候群をきたした 2 例
山梨県立中央病院整形外
科1),山梨県立中央病院
救命救急センター2)
岩瀬 弘明1)
鈴木 雅生1)
岩瀬 史明2)
井上 潤一2)
小林 辰輔2)
宮崎 善史2)
松本 学2)
木下 大輔2)
【はじめに】骨盤部外傷の数日後に,臀部コンパートメント症候群をきたした 2 例を経験
したので報告する.【症例 1 】25歳男性.バイクで走行中に 4 m 下の川に転落して受傷.
骨盤部痛・右下腿のしびれを認めた.骨盤輪骨折の診断にて入院.保存治療の方針となり
安静加療を行っていた.第 7 病日より右臀部に痛みが出現し,激痛となった.MRI にて
臀部の10×5 cm 大の血腫を認めた.第17病日局所麻酔下に血腫除去術を施行.術中に動
脈性出血があり止血困難となったため,ガーゼパッキングを行い緊急血管造影を施行.上
殿動脈からの出血に対して塞栓術を施行した.術後よりしびれ・臀部痛は改善した.【症
例 2 】25歳男性.スノーボードで転倒して臀部を打撲.同日救急外来を受診し,CT にて
骨折なし.臀部血腫の診断となる.受傷 3 日目に臀部痛が改善しないため外来受診.MRI
にて臀部血腫の診断.鎮痛薬にて痛みは自制内となり,経過観察となった.その後も臀部
痛が改善しないため,受傷 5 日目手術目的に入院.腰椎麻酔下に血腫除去術を施行.術中
に動脈性出血があり止血困難となったため,ガーゼンパッキングを行い緊急血管造影を施
行.下殿動脈からの出血に対して塞栓術を施行した.術後臀部痛は改善した.
― 270 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P3-5
会陰部開放創管理目的に人工肛門造設術を施行した開放性骨盤輪骨折の 1 例
新潟大学医歯学総合病院
高次救命災害治療セン
ター1),新潟大学大学院
医歯学総合研究科機能再
建医学講座整形外科学分
野2),新潟大学大学院医
歯学総合研究科生体機能
調節医学専攻器官制御医
学大講座救命救急医学3)
普久原朝海1)
渡辺 要1)
相馬 大輝1)
本多 忠幸3)
遠藤 裕3)
遠藤 直人2)
P3-6
当院で経験した杙創の 2 例
横浜市立大学附属市民総
合医療センター高度救命
救急センター1),横浜市
立大学整形外科2)
江口 英人1)
東 貴行1)
春成 伸之1)
高橋 航1)
辻 雅樹1)
小林 大悟1)
森村 尚登1)
齋藤 知行2)
P3-7
開放性骨盤輪骨折は出血と感染の危険を伴う.感染が生じると骨接合術が困難となり,大
きな機能障害を生じる.海水暴露を伴う会陰部開放創を生じた開放性骨盤輪骨折に対し,
創管理目的に即時人工肛門造設術を施行し,感染なく機能再建手術を施行できた 1 例を経
験したので報告する.【症例】23歳男性,ジェットスキーから投げ出されて受傷し前医へ
搬送された.開放性骨盤輪骨折(AO 分類:61-B3)および右寛骨臼骨折(Letournel 分類:
横+後壁)を認めた.会陰部の開放創より持続性出血が認められ,緊急手術目的に同日当
院へドクターヘリで搬送された.会陰部に約 4 cm の挫創を認め,創内から左坐骨骨折部
を触知できた.CT にて左恥坐骨周囲から小骨盤腔内に Air を認めた.同日整形外科・外
科・泌尿器科で緊急手術を施行した.尿道・前立腺および直腸に損傷を認めなかった.創
内の洗浄と,Modified Stoppa approach にて小骨盤腔内の洗浄を施行した.創部は閉創し
たが肛門に近く,感染リスクを考慮して人工肛門造設術を施行した.2 日後 2nd look を施
行し,14日後骨盤輪および寛骨臼の骨接合術を施行した.感染を生じずに経過し,前医へ
リハビリ目的に転院.転院先で人工肛門閉鎖術が施行された.現在独歩可能で ADL 自立
している.
杙創とは先端が鈍である長尺物により起こる穿通性損傷であり,比較的まれな外傷形態で
ある.今回,我々は杙創により大腿骨骨折・骨盤骨折をきたした 2 例を経験したので報告
する.症例 1 は39歳男性.建築現場で1m 転落し,臀部へ鉄筋が刺さり受傷した.鉄筋は
CT 上,骨盤を貫通し,先端は後腹膜に達していた.明らかな血管・臓器損傷は認めなかっ
た.同日緊急手術の方針とし,Ilioinguinal approach により後腹膜の鉄筋の先端を同定した.
腹膜に 5 mm 程度の孔を認めたが,明らかな腸管損傷はなく,腹膜を縫合した.逆行性に
鉄筋を抜去し,創閉鎖した.術後感染兆候なく第11病日に退院した.症例 2 は63歳男性.
自殺企図による10m の墜落により左大腿部へ鉄柵が刺さり受傷した.左大腿後面から鉄
柵が刺さっていたが血管損傷は認めなかった.左大腿骨開放骨折(Gustilo2)を認めた.
同日緊急で異物除去・洗浄デブリドマン・髄内釘による骨折観血的手術を施行した.創の
感染兆候なく,第31病日にリハビリ目的に転院した.臓器損傷を認めず,骨折を伴う杙創
は比較的まれであり,文献的考察を加えて報告する.
感染性偽関節に対して Masquelet 法で骨癒合を得た 1 例
岡山赤十字病院整形外科
土井 武
【はじめに】感染性偽関節は骨折治療で最も困難な疾患の一つである.大腿遠位部感染性
偽関節に対して Masquelet 法を施行した症例を経験した.【症例】40代男性.バイク自損
事故で受傷され当院へ救急搬送された.左大腿骨遠位部,膝蓋骨,脛骨近位部開放骨折
(GustiloⅢA)の診断で入院となった.同日洗浄,創外固定として後日観血的整復内固定
術を施行した.膝蓋骨,脛骨近位部は骨癒合が得られたが大腿遠位部は得られず,プレー
ト部分抜去の際に施行した創部培養検査で黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出された.左大
腿骨遠位感染性偽関節の診断で Masquelet 法を行った.骨セメントには VCM を混入した.
骨移植手術時の創部培養検査では陰性化していた.術後 8 ヶ月で偽関節部の骨癒合は得ら
れた.【考察】本法の長所は骨セメントに抗菌薬を含有させることで徐放性に局所感染制
御可能となることと同時に induced membrane を得ることができることである.しかし,
国内では allograft の使用が一般的ではないため 6 cm 以上の骨欠損では採骨量に限界があ
ると思われた.【結語】骨幹端部の感染性偽関節に対する治療では本法の適応を検討して
も良いと思われた.
― 271 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P3-8
脂肪塞栓症候群による意識障害を認めた下腿骨骨幹部骨折の 1 例
鹿児島大学大学院医歯学
総合研究科運動機能修復
学講座整形外科学
救仁郷 修
P3-9
抗凝固療法中,外傷性皮下血腫によりコンパートメント症候群様病態を呈した一例
加古川西市民病院初期研
修医1),加古川西市民病
院救急科2),加古川西市
民病院看護部3)
平位 恵梨1)
切田 学2)
丸山 澄美3)
P3-10
脂肪塞栓症候群(以下 FES)は長管骨骨折の重篤な合併症の一つであることは知られて
いる.今回,我々は下腿骨骨折に合併した FES の 1 例を経験したので報告する.【症例】
27歳男性,サッカーの練習中に接触し,受傷.緊急病院に搬送され,右下腿骨骨折の診断
にて,シーネ固定され,2 次施設に翌日紹介され,受傷翌々日に手術予定であったが,同
日意識レベル低下を認め,症状,画像所見より脂肪塞栓症疑われ,当院へ紹介される.頭
部 MRI にて拡散強調像にてびまん性の高輝度領域を認め,胸部 CT にてスリガラス陰影
及び小葉間隔壁を認め,脂肪塞栓症候群として矛盾しない所見であった.受傷後 4 日,発
症第 2 病日に骨折部を創外固定にて可及的に固定し,それぞれ呼吸器病変,中枢神経病変
に対しては対処的治療を行った.創部固定され,全身状態落ち着いたため,紹介医へ転院
し,骨折部に対しては髄内釘へのコンバーション行っている.【考察】FES の発生頻度は
低く全長管骨骨折の0.5%から 2 %との報告されている.FES 発症後の治療としては,症
状増悪を防ぐために,未固定の骨折があれば,早期の固定が望ましいが,本症例において,
第 2 病日に創外固定による固定が行われ,治療に有効であったと考えられる.
筋損傷を伴わない皮下血腫によりコンパートメント症候群様病態を呈した一例を経験した
ので報告する.【症例】50歳代男性(心房細動,糖尿病のためワルファリン,血糖下降剤
を服用),バイク運転中に転倒した.救急搬入時,意識清明で循環呼吸状態は安定していた.
左肘部手拳大腫脹,多部位擦過創を認め,PT-INR2.7であった.CT から,左上腕〜肘の
皮下血腫,左肋骨骨折・肺挫傷と診断した(ISS13,Ps95.5%).左上腕腫脹は経時的に
増大し,受傷 6 時間後には組織内圧が76mmHg に上昇し,皮膚の褐色変色,多数水疱形成,
手指の感覚低下を認めた.コンパートメント症候群様病態と診断し,受傷10時間後に局所
麻酔下に皮膚を切開し血腫約250g を除去した.創部は NPWT で管理した.水疱形成の増
悪はなく,疼痛,皮膚変色も改善したが,創部ポケットから微量出血が持続したため,第
14病日ポケットを切開開放した.その後の創部治癒は良好で第22病日退院となった.
【結語】
本例では抗凝固剤服用,糖尿病による末梢血管の脆弱性が,皮下血腫を増大させ,皮膚の
壊死様変色と水疱を生じさせたと考えられる.四肢では大きな皮下血腫により皮膚壊死を
来すこともあるので,減圧のタイミングを逸しないよう厳重に創部を観察すべきである.
骨盤骨折に対する両側内腸骨動脈塞栓術と殿筋壊死の関連性
北里大学医学部救命救急
医学1),聖マリアンナ医
科大学心臓血管外科2)
丸橋 孝昭1)
樫見 文枝1)
山谷 立大1)
花島 資1)
片岡 祐一1)
西巻 博2)
浅利 靖1)
【背景】殿筋壊死は骨盤骨折に対する血管内塞栓術(以下 TAE)の合併症として知られる
一方で,直達外力,ショックなど複合的な要素で発生するとの報告もあり確立していない.
【目的】1997年から2004年までの期間で,TAE 後発生した殿筋壊死症例を検討した当施設
での事前研究を踏まえ,2005年から両側内腸骨動脈本幹を cutting 法で作成したゼラチン
スポンジで塞栓する TAE 戦略を採用してきた.2005年以降の治療成績および合併症の頻
度を調査し妥当性を検討する.【対象と方法】2005年 1 月から2015年12月までの期間,当
施設で骨盤骨折に TAE を施行した症例を抽出し,TAE 後の殿筋壊死合併例を検討した.
【結果】対象症例は全120例,殿筋壊死発生例は 1 例のみ(0.8%)であった.この症例はショッ
クを伴う多発外傷であり,両側内腸骨動脈本幹が断裂,NBCA で塞栓した例であった.
他に殿筋壊死以外の TAE に伴う合併症は認めなかった.【考察】当施設の殿筋壊死発生
率は過去に報告された諸家と比較して極めて低値である.本幹塞栓による急性期止血後の
遅発性側副路の発達,迅速な TAE による早期ショック離脱が殿筋壊死発生の回避に関与
したと考えられる.【結語】骨盤骨折に対する両側内腸骨動脈塞栓術は殿筋壊死を増加さ
せない.
― 272 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P4-1
外傷出血性ショックに対する緊急開腹術にて救命し得たものの,術中覚醒を訴えた 1 症例
日本医科大学武蔵小杉病
院救命救急センター
菊池 広子
松田 潔
石丸 直樹
山村 英治
遠藤 広史
渡邊 顕弘
長谷川智宏
望月 徹
黒川 顕
P4-2
背部からの鈍的外傷から大動脈損傷を来し CPA となった一症例
順天堂大学医学部附属静
岡病院整形外科1),順天
堂大学医学部附属静岡病
院救急診療科2),順天堂
大学医学部附属練馬病院
救急・集中治療科3)
三宅 喬人1)
吉澤 俊彦2)
近藤 彰彦3)
柳川 洋一2)
P4-3
【はじめに】出血性ショック時には十分な鎮静・鎮痛薬を投与できない時がある.今回は
緊急開腹術にて救命できたものの,術中覚醒を訴えた症例を経験したので報告する.
【症例】
29歳男性,バイク事故にて受傷し,救急車にて来院.病着時橈骨動脈は触知不可で FAST
陽性.気管挿管後,緊急開腹し,大量の腹腔内出血を認めた.腸間膜動脈損傷部を結紮止
血し,循環が安定化しつつあることを確認して鎮痛・鎮静薬を投与し,肝,小腸損傷部を
修復した後に閉腹した.術後,CT にて他部位外傷の検索をした.鎮静下気管挿管,人工
呼吸管理を要したが第 6 病日に抜管.第10病日に術中覚醒の訴えがあり,経過を説明した.
精神科医,リエゾンナースと連携し,患者の訴えに傾聴するよう努めた.術後イレウスを
併発し,不安・不眠の訴えも多かった.第21病日には鎖骨骨折に対して全身麻酔下手術.
第35病日に軽快退院.その後外来では明らかな精神的後遺症は認められなかった.
【考察】
本症例では緊急挿管時の記憶はなかったものの,開腹時の記憶の訴えは実際の状況と合致
しており,術中覚醒と判断した.術中覚醒体験は精神的後遺症につながる可能性があり,
外傷医には予防対策と発生時の適切な対応が求められる.
【はじめに】一般的に背部からの直達外力で大動脈損傷を合併することは稀である.今回
背部からの鈍的外傷により心停止を呈した症例を経験したので報告する.【症例】73歳 男性.
【現病歴】某年某日,木の伐採中に直径25-30cm 程度の木材が背部より直撃して受傷.
救急要請となり,ドクターヘリ要請となった.ヘリポートから医療スタッフ送り込みとし,
救急車内で患者と接触.【現症】接触時心停止.救急隊により LT により気道確保済み.
左胸部中心に皮下気腫著明.心肺蘇生を継続しつつ,静脈路を確保し左胸郭に胸腔ドレー
ンを挿入.ドクターヘリにて基地病院へ搬送.【経過】当院搬送後,右胸郭周囲の皮下気
腫増加を認めたため,右胸腔にもドレーンを追加した.CT 検査を施行し,背側肋骨によ
る大動脈損傷を認め,それに伴う心停止と考えられた.蘇生できず同日死亡確認.【考察】
背側肋骨骨折に大動脈損傷を合併する報告は過去にも散見される.今回は残念ながら蘇生
することができなかったが,病院前救護の観点から,高エネルギー外傷に伴い背部からの
重度外傷を受傷した場合の対応について文献的考察を行う.
出血性ショックに対し TAE 施行後,筋壊死を合併し治療に難渋した多発外傷の一例
東京女子医科大学救急医
学
鈴木 秀章
島本 周二
金 児民
秋月 登
並木みずほ
武田 宗和
矢口 有乃
【症例】51歳男性.既往歴にうつ病あり.ビル 6 階から墜落し受傷,三次救急搬送にて来院.
来院時 JCS3,脈拍130bpm,血圧測定不能,呼吸回数20回/分,SpO2 96%(15L 酸素投与
下).来院時 Hb11.3g/dl,Ht33.3%.画像検査にて外傷性くも膜下出血,右上顎骨骨折,
第 2 胸椎椎体骨折,両坐骨骨折,右大腿骨開放粉砕骨折,右脛骨骨折,左膝関節脱臼骨折
と診断,右大腿動脈領域に造影剤漏出所見を認め,出血性ショックに対し右深大腿動脈,
右外側大腿動脈領域に TAE を施行.ISS は22点,初期輸血量は RCC36単位,FFP26単位,
血小板20単位を要した.右大腿動脈領域の止血が得られず,第 2 病日にも再度 TAE を要
した.右大腿腫脹に対し減張切開後,直達牽引,その後創外固定術を施行.経過中,右大
腿直筋の壊死を合併し,デブリードマン,持続陰圧療法後に大腿骨骨切り術,植皮術を施
行した.骨傷に対しは創外固定を継続とし,左膝関節脱臼骨折と靭帯損傷対して人工関節
置換術を施行後,リハビリ転院となった.【考察】本症例は外傷性出血性ショックに対し
TAE 施行後に大腿筋壊死を合併し,局所に対する長期加療を要し,治療に難渋した一例
であった.
― 273 ―
日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P4-4
出血性ショックを伴う多発刺創の一例
東海大学医学部外科学系
救命救急医学
迫田 直樹
大塚 洋幸
青木 弘道
櫻井 馨士
吉崎千恵美
中川 儀英
猪口 貞樹
P4-5
不安定型骨盤骨折に対し血管塞栓術後,広範囲の殿筋壊死と膀胱壊死を合併した一例
富士重工業健康保険組合
太田記念病院救急科
飯塚 進一
澤本 徹
河谷 雅人
金指 秀明
富岡 義裕
秋枝 一基
P4-6
【はじめに】acute care surgery(ACS)の到達目標については様々な検討がなされてい
るが,確立されていない.今回症例を通じて多発外傷患者に対する初期診療において外傷
外科医の重要性を改めて感じたので報告する.【症例】24歳,男性.自傷行為により,計
16ヶ所刺傷し当院救急搬送となった.来院時,収縮期血圧 60mmHg.ER 手術室でダメー
ジコントロール戦略をたて,蘇生処置を施行後手術室入室となった.頚部・腹部・胸部刺
創,陰嚢・両側眼瞼・左前腕・右大腿切創を認め,頚部刺創からは動脈性出血,腹部刺創
から腸管の脱出,陰部からは精巣の露出を認めていた.まず出血源である頚部,腹部を同
時手術.バイタルサインが安定した後,露出していた陰嚢は泌尿器科,眼瞼の切創は形成
外科にて処置し手術終了となった.術後経過に問題なく,POD6にドレーンは抜去.統合
失調症に伴う幻覚妄想状態強く,精神疾患 control 目的に POD17に転院となった.
【考察】
重症外傷患者の救命には初期診療医の即座の判断が求められるが,臓器別・領域別に特化
した診療科の分担的な治療では救命が困難なことが少なく外傷外科医の存在が重要とな
る.【結語】重症多発外傷診療において,外傷外科医の重要性を再認識した.
【はじめに】不安定型骨盤骨折に対する血管塞栓術の合併症として,殿筋や膀胱の壊死が
報告されている.今回我々は,不安定型骨盤骨折に穿孔性腹膜炎を合併した鈍的外傷症例
に血管塞栓術後,広範囲の殿筋壊死と膀胱壊死を合併した症例を経験したので報告する.
【症例】症例は47歳の男性.歩行中,軽乗用車に跳ねられ受傷した.当院搬送後,ショッ
ク状態となり,不安定型骨盤骨折に伴う出血性ショックに対し両側内腸骨動脈塞栓術を施
行した.術後,消化管損傷による外傷性腹膜炎の合併があり緊急開腹術を行った.術中所
見上,回腸から上行結腸に多発する消化管穿孔と腹腔内糞便汚染があり,消化管切除術と
洗浄ドレナージを行った.術後,敗血症性ショックに対し集中治療を行い改善した.しか
し,両側殿筋壊死を併発し,受傷後13日目にデブリードマンを施行した.また,膀胱壊死
に対し尿管カテーテルを挿入し,尿管皮膚瘻を形成した.殿部は洗浄デブリードマンによ
り徐々に肉芽形成がみられ,植皮術を行い創部の縮小を図っている.
【結語】不安定型骨
盤骨折に両側内腸骨動脈塞栓術を施行した場合,広範囲の殿筋壊死や膀胱壊死を合併する
ことがある.致死的な合併症となり得るため注意が必要である.
爆発損傷の一例
市立砺波総合病院整形外
科1),金沢大学整形外科2),
市立砺波総合病院外科3)
金澤 芳光1)
家接 健一1)3)
多田 薫2)
土屋 弘行2)
高木 泰孝1)
山田 泰士1)
江原 英文1)
爆発損傷は戦争やテロなどで生じることが多く,普段診療する機会のない外傷であるが,
今回労災事故で受傷した一例を経験したので報告する.症例は54歳男性.仕事中に左手で
持っていた試験管内のセメントなどの基板材料が爆発して受傷され,当院へ救急搬送と
なった.搬送時,意識は正常であったが,顔面も含めた全身に焦げた爆発片が付着してお
り,衣服も焼け焦げた状態であった.顔面の熱傷と多発刺創,両眼球破裂,両鼓膜破裂,
左上肢不全切断,全身の多発刺創・皮下異物,陰嚢内異物と診断し,気道損傷はなかった
ものの,全身管理目的に気道挿管し,当日に緊急手術で,前腕切断術,眼球異物摘出術,
陰嚢内異物摘出術を行った.全身状態が落ち着いてから第 5 病日に大学病院へ転院となっ
た.爆発は気圧,熱,破片など様々な要素で人体に損傷を及ぼし,特に眼球や鼓膜の損傷,
血気胸などの肺損傷を起こしやすいといわれ,その損傷形態に応じた対応が必要となる.
今回の症例では,受傷当初の救命,その後の感染コントロールなどが良好に経過したと考
えている.爆発損傷は,全身管理を中心とした初期対応が重要な外傷と考えられた.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P4-7
軽症頭部外傷で来院,異所性妊娠が判明した 1 例
日本医科大学総合診療セ
ンター1),日本医科大学
高度救命救急センター2)
佐々木晶子1)
宮内 雅人1)2)
須崎 真1)
荒木 尚1)2)
川井 真1)2)
横田 裕行2)
安武 正弘1)
P4-8
診断が遅れた大腿骨骨折後の下肢仮性動脈瘤の一例
京都医療センター放射線
科1),京都医療センター
救命救急センター2)
濱中 訓生1)
佐藤 敏之1)
浜崎 幹久2)
別府 賢2)
笹橋 望2)
P4-9
【はじめに】妊婦外傷において母体の外傷の評価とともに胎児の評価は大切である.
【症例】
18歳女性.知り合いの男性に素手で頭部に暴行を受け,直接当院総合診療センターに来院
した.来院時意識清明,血圧119/71mmHg,脈拍数78/min,呼吸数18/min,FAST は陰性,
一方でアルコール臭がみられた.頭頂部に約 2 cm 挫創見られたが活動性出血はみられず,
縫合処置を行った.しかしレントゲン施行の前に妊娠の可能性があるとのことにて,簡易
検査施行したところ陽性.女性診療科診察にて HCG 上昇,一方で正確な妊娠週数が判明
しない中,異所性妊娠の可能性もあり女性診療科入院となった.【考察】妊婦外傷におい
て母体診察と胎児評価は大切である.しかし救急外来などでは妊娠の可能性は十分評価で
きず,また妊娠が判明した場合において胎児評価は必要であるが,女性診療科を標榜して
いない救急病院も存在する.一方で外傷後,異所性妊娠による出血が起こった場合,外傷
との鑑別も困難な状況も考えられ,外傷においては妊娠の可能性について十分な注意と,
早急な対応が大切であると思われた
40歳代男性,4 階からの墜落で当院に救急搬送となった.下肢の変形及び開放創からの活
動性出血認めた.来院時,GCS E4V4M6,血圧118/63mmHg,心拍数 105/分であった.
頭頸部 CT 及び顔面〜骨盤底部までの造影 CT が撮像され,下顎骨や顔面骨の多発骨折を
認めたが,体幹部に臓器損傷認めなかった.下肢は Xp 写真で,両側大腿骨頸部,骨幹部
骨折,膝蓋骨骨折と診断した.下肢の開放創は洗浄後,縫合閉鎖し,活動性の外出血は消
失した.受傷24時間で赤血球20単位 新鮮凍結血漿20単位が必要であった.Hgb 低下に
対して適宜輸血を施行しながら,第 3 病日に下肢の固定術を施行した.その後も急激な
Hgb 低下は認めないが,緩徐な Hgb 低下及び輸血を繰り返し,第34病日までに赤血球輸
血が70単位必要であった.Hgb 低下の原因は不明で,慢性炎症に伴う貧血と評価されて
いた.第62病日,下肢腫脹部を穿刺したところ血性の排液を認め,下肢の造影 CT を撮影
した.巨大な血腫及び,血腫内の仮性動脈瘤を認め,血管造影及び塞栓術施行した.その
後,Hgb は上昇し,輸血は不要となった.当院の外傷における whole body CT では骨盤
部までを撮像範囲としているが,大腿骨の骨折が疑われる場合,骨折部まで撮影範囲に入
れるべきだと痛感させられた.
10階以上から墜落し生存した 2 症例
神戸市立医療センター中
央市民病院救命救急セン
ター
蛯名 正智
井上 彰
小森 大輝
栗林 真悠
有吉 孝一
【症例 1 】うつ病の既往がある35歳男性.マンションの13階から飛び降り,マンションの
下にあった駐輪場の屋根を突き破って受傷した.搬入時 GCS14点,血圧90/70mmHg,
HR113bpm.脳挫傷,左肺挫傷,血胸,骨盤骨折あり,骨盤骨折に対し TAE を施行した.
TAE 後に意識レベル低下し急性硬膜外血腫の悪化認めたため緊急開頭術を行った.第 5
病日に骨盤骨折に対する手術施行した.高次機能障害を認めるものの意識清明となり,自
力歩行も可能となった.【症例 2 】生来健康な44歳男性.ビルの11階で作業中に誤って墜
落し,2 階部分にあった屋根を突き破って受傷した.搬入時 GCS13点,血圧118/56mmHg,
HR135bpm.脳挫傷,両側気胸,多発肋骨骨折,脾損傷,下腿開放骨折などを認めた.両
側胸腔ドレーン挿入でバイタル安定し,下腿開放骨折に対し創外固定を行った.その後意
識清明となり,杖歩行でリハビリを行っている状況で転院した.【考察】報告により異な
るが墜落の高さが 5 階(15m)を超えると死亡率が高くなる.2 例とも30m を超える高さ
からの墜落であり救命困難が予測されたが,いずれも 2 階部分にあった屋根がクッション
となり衝撃が緩和された可能性がある.
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日外傷会誌 30巻 2 号(2016)
P4-10
受傷場所の環境菌による急性肺炎を来たした頚髄損傷の一例
大分大学医学部附属病院
高度救命救急センター
竹中 隆一
吉田 光朗
石田 健朗
黒澤 慶子
野谷 尚樹
青木 貴孝
塩月 一平
和田 伸介
下村 剛
重光 修
症例は69歳の男性.飲酒後,自宅近くの水路に転落し救急搬送された.CT で第 7 頚椎骨
折を認め,同レベルでの頸髄損傷が疑われた.気道内水分貯留や肺野に誤嚥を示唆する所
見を認め,水路内泥水による溺水が疑われた.入院初日から誤嚥性肺炎に対して SBT/
ABPC 6g/日を使用したが,膿性痰が増加し,肺炎像の増悪を認めた.この時点で喀痰か
らグラム陰性菌が検出されていたが菌種までは同定できなかった.第 8 病日より抗生剤を
MEPM 3g/日に変更したところ膿性痰は減少し,炎症反応や肺炎像も改善した.第13病
日に全身に皮疹が出現し抗生剤は終了とした.その後明らかな感染症の再燃は認めず,リ
ハビリ目的で近医に転院した.喀痰から検出された菌は Chromobacterium 属であること
が判明した.後日,転落した水路内の泥水を採取し培養したところ同菌の増生を認め,水
路内泥水の誤嚥による感染が疑われた.一般的に同菌は熱帯や亜熱帯の土壌や水中に存在
するとされており,その報告自体本邦では稀である.外傷に伴う感染症は受傷場所や搬送
経路などの環境に存在する菌が関与していることがあり,起炎菌の推定や抗菌薬の選択な
どに注意を要する.文献的考察を含め報告する.
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