水産物高付加価値化技術開発事業 ( 高品質水産物漬物 の開発) 船木勉 ・塚本研一 ( 総合食品研究所) 乳 酸 菌 と して Lac t obac i l l us br e ui sI FO 1 2 0 0 5 【目 的】 秋 田県 の主要 な水産加工 品であ る水産物漬物、特 に、 ( 以下L. br e ui s) を使用 した。 MSR液体培地 で前培 いず Lにつ いて、 これ までの経験的 な製造方法 を科学的 養 したL. br e ui s培 養 液 を米 糠 1 1%、 グル タ ミン酸 に明 らか にす るとともに、微生物制御 を主 と した高品質 N aO. 9% を含 む液体培地 に添加 した。 3℃で 7日 いず しの製造技術 を開発 し、付加価値 の向上 を図 ること 間静置培養 し、乳酸菌 ス ター ターと した。 0 ( 2) ホ ッケず しの乳酸菌添加試験 を 目的 と した。 秋 田県産 のホ ッケの切 り身 を原料 と して、乳酸菌 【方 ス ターターをいず Lに添加す ることによるホ ッケず 法】 し製造方法 を検討 した。原材料配合 は 2%乳酸 に漬 1 いず し試作 品の成分分析 と官能評価 け込 んだ ホ ッケ切 り身 1k gに対 して米飯 8 0 0g、米 ( 1 ) 試料 麹2 0 0g、 乳酸菌 ( L. br e ui s) ス ター ター8 0g、 グ 秋 田県産 の- タ- タ、 ホ ッケ、 カワハ ギ (ウマヅ ラ- ギ)、 コダイ (マ ダイ ・チ ダイ) の切 り身 を原 ル タ ミン酸 ナ トリウム 4gの割合で積層法 で漬 け込 料 と してそれぞれのいず Lを試作 した。原材料配合 んだ。対照 と して乳酸菌 ( L. br e ui s) を添加 しない は食酢 に漬 け込んだ魚切 り身 5k gに対 して米飯 4k g、 米糠 1 1%、 グル タ ミン酸 N aO. 9% を含 む液体培地 米麹 1k gの割合 で積層法 で漬 け込 み、 3℃ で2 0日間 を8 0g加 え た もの を同時 に調 製 した。 熟 成 は 3℃ 熟成 を行 い試料 と した。 ( 1 4日)及 び1℃ (7日) の 2つ の条件 で行 い以下 0 ( 2 ) 分析方法 の分析 を行 った。 また、Lac t obac i l l usbr e ui sI FO 1 2 0 0 5は グル タ ミン酸脱炭酸酵素 を持 っ ことが知 ら 分析 は各 いず しの魚肉部分 を採取 し以下 の方法で れて いるため、 ホ ッケず Lに添加 したグル タ ミン酸 行 った 。 有機酸 :HPLC有機酸分析 システム ( 島津 LCI O A) ナ トリウムを脱炭酸 し γ- ア ミノ酪酸 を生成す るか 単糖 ・オ リゴ糖 :HPLC糖分析 システム 検討 した。 ( 3 ) 分析方法 ( Di one xDX5 0 0 ) 遊離 ア ミノ酸 :ア ミノ酸分析計 (日本電子 JLC5 0 0 ) 分析 はホ ッケず しの米飯部分 を採取 し 1( 2) の方法 で行 った。 酵母 :フィルム法 (ス リーエム) 乳酸菌 :BCP培地 ( 3 ) 官能評価 水産業関係者及 び食品関係研究者 で構成 された2 2 【結果及び考察】 1 いず し試作品の成分分析 と官能評価 人 のパ ネルによ り、試作 した 4種類 のいず Lにつ い 表 1にいず し試作 品の分析結果 を示す。全遊離 ア ミ ノ酸量 と全糖量 は魚種 による差 はほとん どなか った。 て晴好 の順 に順位 を付 ける順位法 で行 った。 2 ハ タハ タず し熟成 中の成分経時変化 全有機酸量 はカワ- ギず Lで多 く、 コダイず Lで少 な い傾 向 にあ った。 この有機酸量 の違 いによ り pHに差 ( 1 ) 試料 秋 田県 内の- タ- タず し製造業者 の- タ- タず し があ る もの と考え られ る。 さ らに有機酸量 の違 いは食 製造法 に準 じて試作 を行 った。原材料配合 は食酢 に 酢浸潰工程で魚肉への酸浸透の差 によると推定 され る。 漬 け込 んだ- タ- タ切 り身 5k gに対 して米飯 ・米麹 また、微生物 で は pHの比較的高 い コダイず Lで酵母 5k g、野菜 (ニ ンジンな ど) 1k gの割合 で積層法で 数が多 い傾 向があ ったが、市販- タ- タず Lと比較す 漬 け込 んだ。 3℃で 1 8日間熟成 を行 い、米飯部分 を 表 1 いず し試作品の成分 2日間隔で採取 し以下 の分析 を行 った。 ( 2 ) 分析方法 ハ タハ タ 分析 は- タ- タず しの米飯部分 を採取 し 1( 2) の方 法で行 った。 3 乳酸菌 を用 いたホ ッケず し製造方法の検討 ( 1) 供試菌株 と培養 -2 5- pH 全遊離アミノ酸量 ( m g /1 0 0 g) 全有機酸量 ( m g/1 0 0 g) 全糖量 ( %) 乳酸菌数 ( CFU/g) 酵母数 ( CFU/ど) 4. 5 5 6 9. 7 81 0. 1 6. 8 6 0 2 0 0 ホ ッケ カ ワハ ギ 4. 6 6 4 0. 6 7 7 2. 8 6. 8 8 0 4 5 0 0 コ ダイ 4. 2 4. 9 5 4 7 . 3 6 5 2 . 7 9 4 8. 0 4 4 5. 5 5. 9 6. 6 3 9 0 4 2 0 2 0 0 0 4 4 0 0 0 ると乳酸菌数、酵母数 ともに少 ない傾 向 にあ った。 ク ロス トリジウムはすべて検 出 されなか った。 表 2にいず し試作品の官能評価 による噂好順位結果 を示す。順位 の平均では- タ- タ、 コダイ、 カワ-ギ、 ホ ッケの順 とな ったが、順位法 の検定表で解析 した結 果- タ- タ、 ホ ッケで 1%有意で順位差が認 め られた が、他 は有意差 はなか った。従 って晴好 と して ホ ッケ よ り- タ- タが強 い と考 え られ る。 しか し、前述 の魚 肉への酸浸透 の差 による酸味の違 いな どの要因があ る mg /100g ため、再検討 の必要があ る。 また、 この噂好順位結果 4日 8日 12日 16日 には魚 のイメー ジ、食経験 な ども影響 してい るもの と 推定 され る。 ( 2 ) 単糖 ・オ リゴ糖し熟成 中の有機酸量経時変化 表 2 いず し試作 品の嘩好順位結果 パ ネル ハ タハ タ N o . 1 N o . 2 N o . 3 N o . 4 N o . 5 N o . 6 N a7 N o . 8 N o . 9 N o . 1 0 N o . l l N o . 1 2 3 . 1 N o N o . 1 4 N a1 5 6 N o . 1 N o . 1 7 . 1 8 N o 3 1 1 3 1 3 2 1 1 ホ ッケ カワ- ギ 経時変化 図 2にを示す。遊離糖 タ- タず し米飯部分 は使用 の遊離糖量 と組成 の コダイ 2 4 4 4 3 4 1 3 2 4 1 2 3 3 2 2 1 4 3 4 1 2 2 3 2 1 4 3 1 4 2 3 2 3 1 1 3 2 2 3 4 3 4 2 4 4 3 3 4 1 1 2 3 N o . 2 1 9 N o . 2 0 1 N o . 2 2 1 1 2 4 2 3 2 3 4 4 2 3 1 3 順位合計 順位平均 1 4 . 9 1 3 6 . 1 8 2 5 . 6 7 2 5 . 4 3 4 1 4 3 4 によ り主 に生成す ると考 え られ る した米麹 の糖化作用 ) 8 7 9 く . 0 % 2 1 4 3 5 2. 0 以上か ら- タ- タず し以外 の新 しい魚種 によるいず 2しの開発 にはさ らに検討 を進 め ることが必要 であ る。 ( 1) ハ 有機酸 タハ タず し熟成 中の成分経時変化 化図 を示す。有機酸 1に- タ- タず は食酢浸潰工程で魚肉へ浸透 し米飯部分 の有機酸量 の経時変 した 酢酸が主成分で あ り、熟成経過 によ り魚 肉か ら米飯 0日目か ら -移行す る もの と考 え られ る。 熟成 8-1 0日 安定 してお り、有機酸経時変化 か らは熟成 は1 上が必要 と考 え られ る。 なお、 pHは熟 で4. 9-5. 0であ り、変化 はなか った。 以 成期間全般 0日 -2 6-0 1. 0 図 1 ハ タハ タず ミノ酸経時変化か らは熟成 は1 2日以上が必要 と考え られ る。 なお、遊離 ア ミノ酸組成比 は熟成 日数 で差 は認 め られなか った。 ( 4 ) 微生物 図 4にハ タ- タず し米飯部分 の乳酸菌数及 び酵母 数 の経時変化 を示す。熟成初期 には乳酸菌数が酵母 数 よ り多 いが、 8日目か らは酵母数が多 くな った。 乳酸菌数 は1 0日目に ピークがあ り、一時減少す るが、 1 6日目か らは増加 した。熟成 は乳酸菌 と酵母 の両方 が関与 し、 その菌相がバ ランスを保 ちなが ら進行す ると推定 され る。 一 o g ( CF U ) 7 6 5 ・ i 4 3 2 1 0 OE3 28 4E ) 6E I 8日 10日 12E ] 図 4 ハ タハ タず し熟成 中 14 E ] ≒ … ∼ ≒ ≡ … 16日 18E ) 以上か ら- タ- タず しの熟成 の微生物経時変化 中に 米飯部分への酢酸 と遊離 ア ミノ酸 の移行、 は魚肉部分か また ら 部分 の米麹 による糖化 と糖化 によ り生成 した遊離糖 米飯 の米飯部分 られ る。 か ら魚肉部分への移行が進行す ると考え 菌相が熟成時期 また、微生物 に は乳酸菌 と酵母が主 であ り、 す るもの と考 え られ よる り変化 していず しの熟成 に関与 。 分析結果以外 の香気 など微 量 な成分 も関係す る と推定 され るが、熟成 の最適期 2日日以降であれば各種 成分が 間 につ いて は1 なることか ら、 目的 とす る品質 によ り期間を安定 に 3 乳酸菌 を用 られ る。 きると考え 設定で ( 1 ) 乳酸菌 ス いたホ タータ ッケず し製造方法の検討 3 0 ℃で 7日間静置培養 した乳酸菌 ス ターターの ー CFU/gとな り、 ス ター 07 酸 菌数 は4 . 5×1 て十分 な菌数 であ った。 ( 乳 ター と し 子 : 「おい しさを測 る-食 品官能検 ミノ酪酸 に変換す ることがわか った。 γ-ア ミノ酪 酸 は血圧 降下、精神安定、肝機能改善 な どの生理機 3 際 Ue n」 o 、幸書房、 Y,Hayak ( a 1 9 w 9 a 4)K, 査 の実 Pur i f i c at i onandChar ac t e r T i akahas hiS,Oda K: 能 が あるとされ、食品へ の応用研究 が注 目されて い る。 その中で も発芽玄米 は γ-ア ミノ酪酸 を含 む こ tz De c ar boxyl as ef r om Lac at i onofGl ut amat e 1 ch e m , o b ac i l l u s6 b r e ui sI 1 2 0 05,Bi os c i .Bi ot e c h.Bi o FO とで注 目され、 その消費 も増加 して い るが、 γ-ア 0-4 0 m g/1 0 0g程度 で あ る。 ミノ酪酸含量 と して は1 一方、本試験 によるいず し中の γ-ア ミノ酪酸含量 3 0 m g/1 0 0gで あ り、 γ- ア ミノ酪酸 の供給源 と は1 して は有利 で あ る。 また、 いず し中 に添加 す るグル タ ミン酸 ナ トリウムを増加 す ることで さ らに γ- ア ミノ酪酸含量 を増加す ることも可能 で あ ると考 え ら b r e ui sが優先菌種 と れ る。 さ らには、 いず し中でL. な ることで、食 中毒菌 の抑制 も期待 され る。 いず し の風味 に関 して は、やや発酵臭があ るが問題 はな く、 これ らの方法 によ り高 品質 ないず しの製造 が可能 と な った。 l ogく CFU) /g 9 8 7 6 5 3 2 4 0 ㌔ ㌔ 0 ♂ 。 0 ♂ 0 ♂ ㌔ 。 4( 1) まとめ 数種 の 図 7 乳酸菌添加試験 の微生物 秋 田県 魚 につ いていず しの試作 と官能評価 を行 い、 ( 2) - タタず し熟成中の成分等 の経時変化 を分した。 産魚 によ る新 しいいず しの開発 を検討 ( 3) ホ しの熟成機構 ッケ いず を解 明 した。 析 し、 酪酸 を多 ず く含 しの乳酸菌添加試験 む高品質 いず しの製 を行 い、 γ-ア ミノ 5 立 した。 造方法 の基礎 を確 ミノ酪酸 を多 く含 む高 品 ( 2 1) 成果 いず γ- ア しの熟成機構 を解明 した。 ミノ酪酸 を多 く含 む高 品質 Lに 法 の基礎 した。 質 いず しの製造方 ( 3) γ- アを確立 は工 関 して 業所有権 【参考文献】 1 佐 々木 政 の申請予定 で あ る。 う」、北水試 則だ: 「 安全で美味 しいいず Lを造 りま しょ 1 9 8 9 ) よ り第 5号別冊、 ( -2 8- 2 吉川 秀
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