7 月号(第 23 号)2003.7 東京大学 分子細胞生物学研究所 広報誌 IMCB University of Tokyo IMCB Institute of Molecular and Cellular Biosciences University Tokyo The of University of Tokyo 分生研設立 50 周年を迎えて(宮島 篤) ………………………………1 目 次 研究室名物行事(細胞機能研究分野) …………………………………22 研究分野紹介(細胞増殖研究分野)…………………………………2 〜 3 お店探訪 放心亭(金井由美子) ………………………………………23 着任のご挨拶(北尾彰朗、棚谷 綾、大日方鐡機)………………4 〜 5 所内レクレーション報告 …………………………………………………23 転出のご挨拶(北川浩史、藤枝優一、畠山良一)…………………5 〜 6 分生研卒業生の進路状況 …………………………………………………24 分生研設立 50 周年記念シンポジウム開催される(秋山 徹)……7 〜 9 最近の新聞記事から ………………………………………………………25 21 世紀 COE プログラム「生体シグナル」合同リトリート(板東高功) ……10 平成 14 年(2002 年)研究分野業績発行物一覧(追加)………………26 Welcome to IMCB −新人紹介 ……………………………………11 〜 12 平成 15 年度科学研究費補助金採択一覧 …………………………26 〜 28 分生研所内発表会・新人歓迎会開催される(笠原大資) ………13 〜 18 平成 15 年度受託研究・共同研究一覧 …………………………………29 ドクターへの道(渡辺 晃) ……………………………………………19 知ってネット ………………………………………………………………30 OB の手記(嶋澤るみ子)…………………………………………………20 Tea Time-編集後記(金井由美子、松尾美鶴)…………………………30 留学生手記(金 美善) …………………………………………………21 研究最前線(分子情報研究分野、核内情報研究分野)…………31 〜 32 分生研設立 50 周年を迎えて 所長 宮島 篤 分生研の前身である応用微生物学研究所(応微研)が創設されたのは 1953 年です。この年は DNA 二重らせん発見の記念すべき年でもありますが、その後の半世紀の間に分子生物学は驚異的な進歩 を遂げました。分生研への改組後10年間だけでも、ヒトをはじめ多くの生物種のゲノム構造解明、 タンパク質の原子構造解明、あるいは個体レベルでの遺伝子操作など話題に事欠きません。分生研では、応微研からの伝統 的な研究に加えて、タンパク質の原子構造からマウス、ハエ、アラビドプシスを使った個体レベルの研究まで様々な分野で 活発な研究が展開されています。分生研は生命系大学院の6研究科に協力講座として連携しており、多様な生命科学を融合 する場となっています。また、応微研の設立理念である基礎と応用の両立は、分生研においても重要な課題であり、産学連 携を積極的に推進しています。研究の内容は時代とともに変化しますが、多分野の融合および基礎研究と応用研究の両立と いう本研究所設立の理念は時代を超えて生き続けるものと思います。先日の 50 周年記念シンポジウムでは、分生研の研究の 一端を紹介いたしましたが、分生研の多様な研究から新らたな研究分野が開かれ、その成果が10年後のシンポジウムで披 露できることを願っております。 研究分野紹介 細胞増殖研究分野 がんの分子標的治療:細胞増殖研究分野における、基礎からのアプローチ 最近のがん治療研究は様相が変わってきた。すなわち、がん化、悪性化に関係する種々の分子標的に対して、治療法の開 発が論理的に進められている。分子標的治療薬は、標的に作用し、そして、それが臨床効果に結びつく薬剤と考えられる。 具体的な分子標的としては、がん遺伝子産物、シグナル伝達系、増殖因子とリセプター、転写因子、DNA 修復、テロメラー ゼ、DNA 複製、細胞周期、細胞形態形成、耐性・感受性因子、膜酵素、転移と血管新生、各種サイトカイン、分化抗原、分 化誘導とリセプター、アポトーシスなどが考えられる。現在、分子標的薬剤として開発されて、興味深い結果を出している 薬剤がある。すなわち、EGF レセプターに対する抗体、BCR/ABL に特異的に作用するチロシンキナーゼ阻害薬、そして、 最近注目されている EGF レセプターのチロシンキナーゼインヒビターの経口投与薬剤などであり、分子標的薬剤の臨床有効 性は明確になりつつある。 細胞増殖研究分野では耐性を中心とした分子標的治療研究の中で、多剤耐性細胞のP-糖タンパク質に加えて、抗がん剤が誘 2 導するアポトーシスに対して抵抗性や耐性を示す細胞株がグリオキサラーゼ I (GLO1)を過剰発現していること、抗がん剤 が効きにくい固形がん細胞におけるプロテアソーム等が耐性に関与すること、さらには耐性と密接な関係のある生存シグナ ル Akt が関連する蛋白が興味深いこと、そして、ミトコンドリアの凝集ががん細胞のアポトーシスを制御している可能性が あることを見出している。これらについて、以下に述べる。細胞増殖研究分野では耐性を中心とした分子標的治療研究の中 で、多剤耐性細胞のP-糖タンパク質に加えて、抗がん剤が誘導するアポトーシスに対して抵抗性や耐性を示す細胞株がグリ オキサラーゼ I (GLO1)を過剰発現していること、抗がん剤が効きにくい固形がん細胞におけるプロテアソーム等が耐性に 関与すること、さらには耐性と密接な関係のある生存シグナル Akt が関連する蛋白が興味深いこと、そして、ミトコンドリ アの凝集ががん細胞のアポトーシスを制御している可能性があることを見出している。これらについて、以下に述べる。 プロテアソーム蛋白分解系を標的とした固形がんの薬剤耐性の克服 薬剤抵抗性、なかでも胃がん・大腸がんなどの固形がんの薬剤抵 抗性は治療上大きな問題となっており、新たな治療法の開発が切望 されている。本研究テーマは、グルコース飢餓や低酸素など固形が ん特有の環境へのがん細胞のストレス応答に着目し、ストレス応答 に伴い誘導される薬剤耐性の機序解明を中心に展開している。これ までに、トポイソメラーゼ II(トポ II)標的抗がん剤の耐性を中心 に解析し、標的分子トポ II αがストレス下で蛋白分解酵素プロテア ソームにより分解され発現量の低下が起こること、核局在蛋白質ト ポ II αの分解と合致しストレスにより核内にプロテアソームが蓄積すること、ストレスによるプロテアソームの核内蓄積が トポ II 標的抗がん剤の耐性誘導に直接関与すること、プロテアソーム阻害剤がトポ II αの分解を抑制し耐性誘導を抑制する こと、さらにはヒトがん細胞移植マウスにおいてもトポ II 標的抗がん剤エトポシドの効果を増強することなどを明らかにし てきた(図)。一方で、プロテアソームによる蛋白分解は、ユビキチン化に関る因子など、多数の酵素群により厳密に制御 されていることが明らかになってきており、こうした分子多様性は、がんに特異的な分子標的薬の開発を可能にするものと 考えられる。このような観点から、現在、トポ II αの分解制御ドメインを同定し、その制御に関与する因子群についての研 究を進めている。また、プロテアソーム阻害剤がトポ I 標的抗がん剤の増強効果も示すこと、これには抗がん剤によって誘 導されるトポ I の分解を抑制するという新しいメカニズムが関与することを見出し、トポ I の分解制御機構についても研究を 進めている。さらに、上記の成果などから、ストレス応答したがん細胞を標的とする治療法が成り立つことが明らかになっ てきたことから、ストレス下での細胞の生死の制御について、ストレス応答に関る因子群を中心に研究を進めている。 がん細胞の生存シグナルを標的にした抗がん剤の開発 これまで、抗がん剤により誘導されるアポトーシスは、直接的な傷害の 他に細胞内のアポトーシス誘導経路を活性化させるために起こると考えら れてきた。しかし我々は、がん細胞が抗がん剤に対して感受性を示す場合、 抗がん剤処理に伴い生存シグナルを伝達するセリン・スレオニンキナーゼ Akt 活性が抑制されることを見いだし、抗がん剤感受性と Akt の活性減少に は相関が認められることを明らかにしてきた。Akt のキナーゼ活性は多くの がんで高いことから、Akt 経路は抗がん剤開発の際の良い標的となりうると 考えられる。そこで Akt 経路を特異的に阻害する薬剤の探索を行ない、現在 までに Hsp90 阻害剤(ゲルダナマイシン、ラジシコールなど)とキナーゼ 阻害剤 UCN-01 を見い出すことに成功している。さらに両薬剤の標的分子を探索した結果、Akt の上流のキナーゼである PDK1 がその分子標的であることが同定された。そこで、PDK1 の活性制御機構のさらなる解析を通じて、新たな PDK1 阻害 剤の探索を進めている。また、Akt を標的にした新規抗がん剤開発を目指し、分子レベルでの Akt 経路の活性制御機構の解析 も進めており、Akt の新たな基質の同定や、抗がん剤などにより Akt が不活性化した際に活性化する Forkhead 転写因子によ り発現誘導されるアポトーシス関連遺伝子の探索を進めている。現在 Herceptin、Iressa、Glivec 等の分子標的薬剤ががん遺伝 子産物による増殖シグナルの伝達阻害を目的に開発され、臨床において期待通りの効果をあげている。これら薬剤の主要な 作用機作が Akt の遮断にあることが最近報告されつつあることから、今後見いだされるであろう PDK1 阻害剤も臨床応用さ れる可能性は高いと考えている。 がん細胞のアポトーシスに伴うミトコンドリアの凝集 アポトーシスは、がん細胞が抗がん剤により死滅するメカニズムの1つ であり、そのシグナル伝達機構の理解は新規抗がん剤開発の重要なヒント となる。ミトコンドリアは、細胞内のエネルギー産生器官として生存に必 須のオルガネラであるが、アポトーシスの制御においても非常に重要な役 割を果たしている。我々は、アポトーシス進行の際、ミトコンドリアが凝 集することを見出した。核周辺を中心として細胞内に広く存在するミトコ ンドリアは抗がん剤処理により凝集し、細胞は最終的にアポトーシスを起 3 こして死滅する。抗がん剤の刺激を感知すると、ミトコンドリアはチトクロムCを細胞質に放出し、アポトーシスの最終的 な実行分子であるカスパーゼの活性化を誘導する。非常に興味深いことに、ミトコンドリアの凝集はチトクロムCの放出よ りもさらに前の段階に起きている。すなわち、ミトコンドリアの凝集はアポトーシスのシグナル伝達を比較的上流で制御し ている可能性がある。ミトコンドリアの凝集を制御する分子を同定し、アポトーシスのシグナル伝達、および抗がん剤刺激 による細胞応答におけるその分子の役割を解析することが今後の課題である。 4 着任のご挨拶 創生研究分野 助教授 北尾彰朗 本年 4 月 1 日に創生研究分野の助教授に着任しました。第一線の研究者が集まる分生研で研究する 機会をいただいたことは大変光栄なことだと考えています。これまで文部省在外研究員として過ごし た Harvard Medical School での 1 年間を除くと、京都大学大学院理学研究科化学専攻助手・日本原子 力研究所計算科学技術推進センター研究員(京都府木津町)と京都近辺で研究生活をおくってきまし たが、4 月からは新しい環境のもと、新鮮な気持ちで研究に取り組んでいます。 私は生命現象を物理化学的な観点でミクロなレベルから理解したいと考えており、分子シミュレー ションなどの計算科学的な手法を用いて蛋白質などの生体高分子・超分子系が「分子(集合体)の機械」として機能するメ カニズムの研究をおこなっています。私が研究を始めた 1980 年代の終わりにはコンピュータの能力が十分でなかったので、 コンピュータ上で再現できるシステムの限界と現実のシステムとのギャップの大きさに悩まされましたが、現在では多数の 生体高分子を含んだ複雑なシステムを本格的に研究できるようになりました。しかし、複雑な生命現象を解明するためには、 「計算機上の空論」とならないよう常に実験研究者の方々と密接な協力をしながら研究を進めていく必要があります。分生 研の皆様には様々な機会にご指導やご協力をお願いすることになるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。 生体有機化学分野 助手 棚谷 綾 平成15年4月より生体有機化学分野の助手に着任いたしました棚谷綾です。私は、平成5年に本 学薬学部(薬化学教室、首藤紘一教授)を卒業し、引き続き同大学院に進学、平成10年に博士課程 を修了いたしました。薬化学教室では「芳香族アミド類の立体特性と機能性分子創製研究」に携わっ ていました。らせん状分子の構築などを行っていましたが、その研究がきっかけで、大学院修了後、 Illinois 大学 Urbana-Champaign 校(Jeffrey Moore 教授)へ学術振興会の特別研究員として留学いたし ました。わずか1年半の留学でしたが、分子認識や高分子化学の面白さにふれ、帰国後は薬化学教室 での研究を高分子化学に発展させるべく神奈川大学工学部(横澤勉教授)に科学技術振興事業団のポスドクとして採用して いただきました。薬学部から工学部畑へ転身かと思っていた矢先に、薬化学教室での先輩にもあたる橋本祐一先生より分生 研で医薬化学研究をさせていただく機会を頂きました。薬化学時代は「核内受容体リガンド」研究は門前の小僧的にふれて はいましたが、直接に関わる機会があまりありませんでしたので、現在、学生さんとともに医薬化学の基礎を 学ばせていただいております。今後はこれまでの専門分野をとり入れながら、医薬化学へ新しいスタイルでアプローチで きればと考えています。まだまだ未熟ではありますが、どうぞよろしくご指導のほどお願い申し上げます。 5 事務部 事務長 大日方鐡機 このたび、4 月 1 日付けで前渡邉事務長の後任として着任いたしました大日方です。前任者ほど に仕事ができるかどうか分りませんが、とにかく全力をつくして頑張りたいと思いますので、よろし くお願いいたします。 分生研に来て早いものでもう 2 ヶ月がたちました。来た当時私が一番びっくりしたことは、施設の 狭隘でした。研究室内を見ましたら、人とすれ違うにも避けるか体を横にしないと通れない状況です。 生命科学研究の最先端をいく研究所としては、劣悪な環境だなと思いました。現在、この状況を打開 するために、新棟建設に向け、所長はじめ分生研の皆様が鋭意努力しておられますので、私もその一助になればと肝に銘じ ているところであります。 さて、話は変わりますが、平成 16 年 4 月からは、国立大学始まって以来の大改革である法人化が待っております。今年は その法人化に向けての準備段階の最後の年であり、それに伴う作業もかなり出てくることが予想されます。 今後、これらの問題、また、この他にも山積している課題に対して、事務部をはじめ研究所の皆様と一体となって対処し て行く所存です。仕事をするときは、勇気を持って上機嫌でやれという言葉もございます。これに心がけ微力ではあります が、皆様方のご指導とご協力を賜り、事務長としての重責を果たして行きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 転出のご挨拶 前核内情報研究分野 助手 北川浩史 4 月よりアメリカのペンシルバニア州のメルク研究所に留学しております北川です。留学に際して、 私本人は休職にしていただいた方がありがたいと思っていたのですが、国の反対を受けたようで仕方 ないので辞職して留学することになりました。日本のお役所はお堅いな、という印象を再度痛感いた しましたが、私自身はこれも運命ではないか、と思っております。 私はもともと内科の臨床医であり、5 年半前には右も左もわからないまま、加藤茂明研究室にやっ て参りました。そして 1 年前、突然助手になることになり、私の将来像もそれにつれてかなり揺らい で参りました。留学することによってさらにその揺らぎは激しくなっているわけですが、私が日本に戻る頃には独立法人化 も完成されて日本もきっとさらに変革を遂げており、私の考え方もまたその時までにははっきりした形をとっているのでは ないか、と期待しております。 分生研に来るまで一度も実験をしたことがなかったので、私はここ分生研、加藤茂明研究室がどれほど恵まれた環境であ るかをよく認識しておりませんでした。しかし、改めてこの 5 年半を振り返ってみると、まず学問的に非常にレベルが高く、 常に多くの内外の著名な研究者が出入りしており、また同じ建物の中での共同研究もしやすい、という面がすばらしかった ことが分かります。さらに潤沢な研究施設もあり、研究しやすい環境であったことも間違いないと思われます。加えて加藤 茂明研究室がオープンで私のような何も知らない臨床医でさえも暖かく受け入れてくれたために今の私があると思われま す。これから研究をされる方々には是非分生研に来られることを強くお勧めいたします。末筆ではございますが、遠い空の もとより今後のますますの分生研のご発展をお祈りいたしております。 現所属: Merck Research Laboratories Bone Biology & osteoporosis section (Prof. Leonard P Freedman) E-mail : [email protected] 6 元事務部 庶務主任 藤枝優一 〜分生研での3年間〜 分子細胞生物学研究所の諸先生方、学生の皆さんそしてお膝元事務部のお歴々の皆様3年間大変お 世話になりました。 あれは3年前・・。人事異動によりまして平成12年4月1日新たなお仕事の仲間との出会いから 始まり、鶴尾先生(当時:所長)をはじめ多くの先生方、ソフトボールなどレクリエーションをとお した学生さん方との触れあいなど3年があっという間に過ぎ去り、いま、懐かしく思い出されます。 その中で、特に同じ仕事を担当された先生方には、その都度ご指導頂きましてありがとうございました。いろいろな思い出 が走馬燈のごとく落ちぶれゆく脳味噌を駆け回っていて、どれを取り上げたらいいのか収拾がつきません状況でありますし、 お酒の話をとったら現職の皆さんにご迷惑をかけそうなのでお礼だけにさせていただきます。 私は、現在、東京大学の一極である千葉県柏市にある柏キャンパスで産学連携、地域連携等の業務を中心に担当しており ます。実際には聞き慣れた言葉ではあるけれども実務としてお付き合いするとなるとなかなか大変なようです(他人事みた い)。柏キャンパスからは、お天気次第で東には茨城県の紫峰筑波山が、西には日本の名峰富士山が拝顔できるとのことで 仕事はさておいて楽しみです。機会がありましたら皆様も一度柏キャンパスをお訪ねください。これが大学の施設かと思わ せるような建物が並んでおります。 御礼方々、近況なりをお知らせしまして閉じさせていただきます。分生研のますますのご発展と皆さんのご健康・ご活躍 を柏の地から祈念いたしております。 元事務部 庶務掛 畠山良一 平成12年1月に分生研にお世話にになり、以来3年3月にわたり庶務掛に勤務いたしました。そ の間、研究所の皆様には大変お世話になりました。理由にはなりませんが、庶務の仕事が初めてなら 研究所勤務も初めてで、まるでオバケのQ太郎のテーマソング(「いつも失敗ばっかりしてるんだよ ー」)を地でいってしまうような毎日でした。そのたびに皆様のご寛容にすがり、ならぬ勘弁をして いただくこともしばしばでした。 いま私は教養学部の学生課課外活動掛で、学生の厚生補導に関わる業務をおこなっていますが、ま さに学生と四つに組む毎日で、研究所の場合とはまた一味違った緊張感のなかで仕事をしております。しかし、仕事の中味 は変わっても分生研でご指導いただいたことは必ず活かせるはずと確信し、分生研時代にはうまくできなかったことを、こ の駒場ではなんとかできるようにがんばってゆくことが、お世話になった皆様へのせめてもの恩返しと考えております。 最後に分生研の皆様の今後のご健勝と研究所のますますのご発展をいのり私の挨拶といたします。どうもありがとうがざ いました。 7 分生研設立 50 周年記念シンポジウム開催される 分子情報研究分野 秋山 徹 分子細胞生物学研究所(分生研)は、1953 年に創設され 種類の Lol 因子からなる機構によって触媒される。外膜特 た応用微生物研究所(応微研)が 1993 年に発展的に改組し 異的リポ蛋白質は、内膜に存在する ABC トランスポーター て設立され今日に至っている。その設立 50 周年を記念した LolCDE 複合体によって、ATP のエネルギーを使って遊離 シンポジウム「分生研の最先端研究〜世界との関わり〜」 される。一方、+2 位が Asp のリポ蛋白質は LolCDE による が去る 5 月 9 日(金)農学部構内弥生講堂において開催さ 認識を回避するシグナルとして働くため遊離されず、その れた。シンポジウムには海外から 3 名の招待演者及び分生 結果内膜にとどまる。遊離したリポ蛋白質は、ペリプラズ 研から 5 名の演者、さらに 270 名以上の研究者、研究所関 ム空間に存在する分子シャペロン LolA と可溶性複合体を形 係者等が国内外から参加し、多岐に渡る研究内容の講演が 成し、外膜に到達する。外膜に存在するリポ蛋白質受容体 行われ参加者との間での活発な議論も展開された。シンポ LolB は、LolA −リポ蛋白質複合体と相互作用することによ ジウム終了後場所を山上会館に移し、記念式典及び祝賀会 り、リポ蛋白質を LolA から受け取り、外膜にリポ蛋白質を が開催された。以下はシンポジウムの要約である。 アンカーさせる。脂質修飾が不完全であると、リポ蛋白質 の遊離反応は起こらない。一方、+2 位が Asp 以外のアミノ 徳田 元(細胞形成研究分野) "Transfer of lipid-modified proteins from inner to outer membranes of E. coli" 細菌には、N−末端の Cys 残基が脂質(diacylglycerol と N-acyl 基)で修飾されたリポ蛋白質が広く存在し、脂質部 分で膜にアンカーしている。大腸菌には少なくとも 90 種の リポ蛋白質が存在し、脂質修飾された Cys の次が Asp の場 合のみ内膜(細胞質膜)に、その他のアミノ酸の場合は外 膜に局在化する。リポ蛋白質の選別と外膜への輸送は、5 酸の場合は、+2 位や +3 位を化学修飾しても遊離される。+2 位が Asp の場合に限り LolCDE によって認識されない構造 になると考えられる。LolA と LolB の一次構造は似ていない にもかかわらず、高次構造は極めてよく似ていることが結 8 晶構造解析により明らかになっている。内膜から外膜へリ W. (2002) Yeast vacuoles and membrane fusion pathways. ポ蛋白質輸送が起きる機構を、Lol 因子の構造に基づいて EMBO J. 21, 1241-1247. 考察した。 豊島 近(生体超高分子研究分野) William Wickner (Darmouth Medical School, USA) "Structural basis of ion pumping by Ca2+-ATPase" "Mechanisms of membrane fusion" 筋小胞体カルシウム ATPase は、P 型(或いは E1/E2 型) Vacuole fusion offers the best "tools" for studying mem- ATPase を代表するカルシウムポンプであり、生態のイオン brane fusion mechanisms. The reaction occurs in three steps: 環境の維持のためにきわめて重要なものである。分子量1 Priming (which occurs on separate vacuoles), docking (the 1 万の膜蛋白質であるが、このポンプの5種類の異なった productive associations between vacuoles), and fusion. 生理的状態の結晶化に成功しており、カルシウム結合時、 Priming is initiated by ATP hydrolysis by Sec18p, leading to 非結合時のふたつの状態の構造が発表者らによって公表さ release of Sec17p, disassembly of a cis-complex between れている。この二つの状態の構造は著しく異なっており、 SNAREs, release of the Vam7p SNARE from the vacuole, and 特に膜貫通へリッ クスが熱運動によって手押しポンプのピ activation of the multisubunit "HOPS" complex. Vacuoles ストンのように動いていることが明らかになった。このよ then "tether" together, and the touching membranes flatten うに大きな運動は対抗輸送のために、進化の過程で必要で against each other, forming the "boundary domain" of closely あったのだろうという仮説が提出された。また、細胞質ド apposed membrane and the "vertex ring" of membrane at the メインはカルシウムがあるときに離散的であり、無いとき edge of the boundary membrane. Ypt7p:GDP, which cat- に集まっているが、その生理的意義が説明された。大きな alyzes tethering, clusters at the vertex ring. HOPS then cat- 膜蛋白質 であるが、脂質や溶媒分子も含む約 20 万原子の alyzes its activation to the GTP form and remains bound to 計算機シミュレーションが発表者の研究室で進んでおり、 activated Ypt7p. Ypt7:GTP and vacuole-bound actin initiate 原子構造に基づいて、イオンの能動輸送を完全に理解でき protein and lipid assembly into the vertex ring, leading to る日が近いことが実感された。 trans-SNARE pairing. Trans-pairing of SNAREs leads to release of calcium from the vacuole, which binds to calmod- 後藤由希子(情報伝達研究分野) ulin and promotes its association with the V0 segment of the "Cell fate regulation of neural precursors" vacuole ATPase, finally leading to fusion. Reference:Wickner, 脳発生において神経系前駆細胞(神経幹細胞)は脳室帯 に存在し、自己複製する一方で、ニューロン あるいはグリアに分化する。この神経系前駆 細胞の自己複製と分化の過程が厳密に制御さ れることにより、必要な数(と質)のニュー ロンとグリアが必要な時期と場所に産み出さ れると考えられるが、そのメカニズムに関す る研究は未だ端緒についたばかりである。本 9 演題では、神経系前駆細胞の自己複製能に関わる転写因子 膚での機能を解析した結果が報告された(Li et al., Nature, 群と、膜型受容体 Notch の新たなシグナル伝達について報 407, 633, 2000) 。 告された。 宮島 篤(機能形成研究分野) Jeff Macklis (Harvard Medical School, USA) "Liver development and regeneration" "Cellular repair of complex cortical circuitry by neural pre- 胎児肝臓には消化器官としての機能はほとんどなく、胎 cursors and induced cortical neurogenesis" 神経幹細胞は、発生過程だけでなく成体にも存在し、ニ 生期における主要な造血器官として機能する。演者らは、 胎児肝造血機構と肝細胞分化機構を明らかにするために、 ューロンを産み出し続けていることが近年明らかになって マウス胎児肝臓の初代培養系を確立し、肝細胞分化におけ きた。演者らは、ニューロンの死が新たなニューロン分化 る STAT3 や K-Ras の機能を示した。また、胎児の肝臓に発 を誘導することを明らかにし、神経幹細胞が障害により失 現する抗原の検索から、発生直後の未分化肝細胞に発現す われた神経機能の修復に役立つ可能性を示してきた、神経 る膜抗原分子 Dlk を同定した。Dlk に対する抗体を使って 幹細胞研究の第一人者である。本演題では、この分野の背 未分化肝細胞を分離するシステムを開発し、Dlk 陽性細胞 景と可能性を紹介し、また新たに産み出されたニューロン が肝細胞と胆管上皮細胞の性質を備えた細胞へと分化する が産まれてからある時期に活性化を受けてはじめて機能的 能力を備えた肝幹細胞であることを示した。さらに、 なニューロンとして維持される結果が示された。 Oncostatin M が肝再生過程において重要な機能をもつこと をノックアウトマウスを使って示した。 加藤茂明(核内情報研究分野) "Co-regulator and chromatin remodeling complexes for nuclear receptors" ステロイド・甲状腺ホルモンおよびビタミン A、D、エ イコサノイド等の低分子量脂溶性生理活性物質は、リガン ドとして各々固有の核内レセプターを介して生理作用を発 揮する。これら核内レセプターのリガンド依存的転写制御 には、基本転写装置と共に、レセプターへリガンド結合依 存的に相互作用する核内複合体群が関わっていることが知 られている。これら複合体は、各種シグナル因子と相互作 用することで、他のシグナルとクロストークする (Yanagisawa et al., Science 283, 1317,1999 ; Ohtake et al. ,Nature 423, 545, 2003)。更に今回は、VDR を用いる事によ り新規クロマチン構造修飾複合体の同定に成功しその性状 を解析した結果が報告された(Kitagawa et al., Cell, in press) 。 Pierre Chambon (INSERM, France) "Characterization of mammalian gene function through targeted spatio-temporally-controlled somatic mutagenesis in the mouse" 動物遺伝子の生体内機能の解析法の中で最も強力なアプ ローチは、相同的組み換えを利用した標的遺伝子破壊法で ある。最も代表的な例として、ノックアウトマウスの解析 が極めて良く知られている。しかしながら、この方法では 全ての臓器において遺伝子が破壊されるため、演者らは Cre-loxP 法を用いた時期部位遺伝子破壊法を開発した。こ の方法を用いて核内ビタミン A(レチノイド)受容体の皮 10 21 世紀 COE プログラム「生体シグナル」合同リトリート 機能形成研究分野 板東高功 21 世紀 COE プログラムは、大学の構 造改革の方針に基づき、平成 14 年度か ら文部科学省に新規事業として「研究拠 点形成費補助金」が措置されたものです。 このプログラムは、日本の大学が世界の トップレベルの大学として、教育及び研 究水準の向上や世界をリードする将来の 研究者を育成していくために、学問分野 ごとに世界的な研究教育拠点の形成を重 点的に支援することにより、活力に富み、 国際競争力のある世界最高水準の大学づ くりを推進することを目的としていま す。 宮島篤教授、後藤由季子助教授は、医学系研究科機能生物学専攻の高橋智幸リーダーらと共に生命科学分野の 21 世紀 COE プログラム「生体シグナル伝達機構の領域横断的研究」に平成 1 5年より 5 年間の予定で採択されました。このグルー プは、医学系研究科機能生物学専攻、医学系研究科分子細胞生物学専攻及び分生研から 10 研究室が参加し、生体の重要課題 であるシグナル伝達機構について、異なるレベルから研究を行い、統合的、領域横断的な画期的成果を挙げることを目的に 研究を進めています。今までの研究環境では異なる分野間の交流が乏しかったため、研究の発展が遅れていると言われてい ます。そこで、このグループでは各研究室間で容易に研究資材、技術の交換や情報の共有を行うことができるようにするた め、まず、お互いを知ることを目的とし、平成 15 年 3 月 21 日と 22 日に千葉県のかずさアカデミアセンターにて生体シグナ ルの第1回合同リトリートが開催されました。ここでは教授による各研究室の紹介があり、メンバー(助手、ポスドク、学 生など)がポスター発表を行いました。ポスター発表では、2日間で 200 演題ぐらいの発表があり興味のある発表はほぼす べて見ることができるくらいの規模でした。この会議での発表は、学会とは違い非公開で行われたため、現在進行中の研究 なども数多くポスター発表され、新たな研究の展開につながるような議論もできたと思います。さらに、各研究室の研究は 微妙に重なり合っておりながらも異なっている領域も多く、日々の研究室で行われる議論とは異なる視点から自身の研究内 容を見て頂く機会を得ることができました。そして、普段は思いつかないような考え方や疑問点などについて様々な角度か ら高いレベルの議論することができ、研究の方向性などを見つめ直す良い機会となりました。また、懇親会では、異なる研 究室の学生とも多く話すことができ、良き研究仲間ができたと思います。今後、このような研究仲間が中心となり、学生、 ポスドク主導で共同研究を盛り上げ、発展させていくことができればと考えています。 11 < Welcome to IMCB > 写真説明:左から 印 藤、渡邉、 大日方、近藤、 高山 <事務部> 大日方 鐡機 渡邉 正昭 高山 勇二 印藤 朝子 近藤 ひな子 事務長 庶務主任 用度掛主任 事務補佐員 事務補佐員 −新人紹介− <染色体動態研究分野> 田口 祐 大平高之 Marcia Yuri Kondo 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科研究生 <分子遺伝研究分野> 丸山 田中 東 保坂 原田 坂上 真一朗 泉美 美由紀 孝志 武尚 玲 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 東京薬科大学生命科学部卒研生 写真説明:左から 丸山、坂上、田中、 東、保坂、原田 <核内情報研究分野> 五十嵐 庸 宮本 純子 山形 薫 斉藤 メアリー 真木 彰郎 佐々木 康匡 馬場 敦史 秋本 千央 鈴木 絵里子 城出 裕子 岸本 正彦 趙 越 写真説明:左から 田口、 大平、Kondo <発生分化構造研究分野> 博士研究員 協力研究員 派遣研究員 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 派遣技術員 リサーチフェロー 技術補佐員 松原 武藤 福田 栄徳 新井 安達 和子 真祐 紘己 勝光 伸浩 成彦 研究員 博士研究員 理学系研究科修士課程2年 理学系研究科修士課程1年 医学部4年生 研究生 写真説明:左から 岸本、趙 写真説明:前列左から 五十嵐、城出、 秋本、鈴木、後列左から 後列左から 宮本、斉藤、山 形、真木、佐々木、馬場 写真説明:前列左から 武藤、新井、安達、 後列左から 福田、栄徳、松原 <分子情報研究分野> 柴田 葉子 海老根 和美 平野 真希 会田 康太 安井 利夫 小林 靖幸 大石 和広 技官 派遣研究補助員 農学系研究科博士課程1年 理学系研究科修士課程1年 理学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 農学系研究科修士課程1年 <細胞機能研究分野> 大野 高橋 大島 石井 良子 秀行 玲子 真紀 リサーチアソシエイト リサーチアソシエイト 理学系研究科修士1年 技術補佐員 写真説明:前列左から 柴田、平野、海老 根、後列左から 小林、会田、 大石、安井 <情報伝達研究分野> 綿谷 大橋 是常 加藤 写真説明:前列左から 加藤、是常、後列 左から 綿谷、大橋 健治 淳一郎 裕子 智子 工学系研究科修士 1 年 工学系研究科修士 1 年 新領域創成科学科 技術補佐員 写真説明:左から 大島、大野、 石井、高橋 12 <形態形成研究分野> 八杉 田中 高久 佐野 真下 徹雄 恵子 礼子 英理子 圭緒里 <細胞増殖研究分野> 理学系研究科修士課程 1 年 実験補助員 技術補佐員 技術補佐員 技術補佐員 徳田 恵美 大畑 広和 国田 朱子 田久保 耕平 小林 有佳 青柳 ゆみ子 医学系研究科博士1年 新領域創成科学研究科博士1年 医学系研究科修士2年 新領域創成科学研究科修士1年 薬学部4年 薬学部4年 写真説明:前列 青柳、中列左から 小林、国田、 大畑、後列左から 田久保、徳田 <細胞形成研究分野> ホサイン モタラブ 宮本 重彦 塚原 淳 安田 真樹 松澤 仁美 奥田 傑 写真説明:左から 佐野、八杉、高久、 田中、真下 <機能形成研究分野> 鬼塚 和泉 岡部 繭子 陳 彦栄 菅野 安喜 平田 絢美 神谷 淑子 伊藤 美香 共同研究員 理学系研究科博士課程 1 年 理学系研究科博士課程 1 年 理学系研究科博士課程 1 年 技術補佐員 技術補佐員 事務補佐員 写真説明:前列左から 松澤、奥田、 後列左から 塚原、安田、 モタラブ、 宮本 写真説明:左から 鬼塚、岡部、陳、 平田、菅野、伊藤、神谷 綾 祐輔 紘子 賢一 康平 満将 雄輔 浩史 <生体超高分子研究分野> 宮下 尚之 原口 聡史 寺島 農 関 勝之 小原 講二 <生体有機化学研究分野> 棚谷 中野 佐野 若林 望月 前田 橋口 白井 博士研究員 応用生命工学研究科博士課程 1 年 応用生命工学研究科修士課程 1 年 応用生命工学研究科修士課程 1 年 応用生命工学研究科修士課程 1 年 応用生命工学研究科修士課程 1 年 助手 薬学系研究科修士課程 1 年 研究生 薬学部 4 年 薬学部 4 年 共立薬大 4 年 共立薬大 4 年 明治大 4 年 写真説明:前列左から 中野、棚谷、佐野、 後列左から 前田、望月、白井、 若林、枠内 橋口 <高次構造研究分野> 写真説明:左から 関、宮下、 小原、原口、寺島 <活性分子創生研究分野> 伊藤 啓 助教授 粟崎 健 助手/さきがけ研究 21 研究員 加藤 健太郎 博士研究員(学振) 岡田 龍一 博士研究員(科技団) 上川内 あづさ 博士研究員(科技団) 新座 麻紀子 博士研究員(科技団) 島田 尚 博士研究員(科技団) 八神 貴子 技術員(科技団) 神谷 真理子 技術員(科技団) 大綱 英生 名古屋大学理学系研究科博士課程3年 田中 暢明 総合研究大学院大学 生命科学研究科博士課程3年 山下 杏子 技術補佐員 鈴木 まり子 事務補佐員 上田 佳宏 織田 浩嗣 梅田 幸子 水野 寛子 高 純子 博士研究員 農学生命科学研究科修士課程 1 年 農学生命科学研究科修士課程 1 年 農学生命科学研究科修士課程 1 年 研究生 写真説明:左から 上田、織田、梅田、 水野、高 <バイオリソーシス研究分野> 細谷 祥一 農学生命科学研究科博士課程1年 福場 一郎 農学生命科学研究科修士課程1年 肖 恬 研究生 写真説明:左から 福場、細谷、肖 写真説明:前列左から 山下、新座、上川内、神谷、鈴木 中列左から 大綱、島田、粟崎、伊藤 後列左から 田中、八神、加藤、岡田 学術研究支援員 農学生命科学研究科修士1年 農学生命科学研究科修士1年 研究生 研究生 13 分生研所内発表会・新人歓迎会開催される 機能形成研究分野 笠原 大資 去る6月 4 日(水)に 2003 年度分生研所内発表会・新人 歓迎会が開催されました。今年度は機能形成研究分野が幹 事(幹事代表:須田芳國)を勤めましたので、所内発表 会・新人歓迎会について報告します。 所内発表会は例年と同様に総合研究棟2階で行われまし た。今年で5回目となり分生研の春の行事としてすっかり 定着した感があります。午前 10 : 30 から昼の休憩をはさ んで午後 5 : 4 5まで行われ、16 研究分野の代表者それぞ れ 16 名が研究成果を発表しました。会場にはパイプ椅子も 持ち込んで 60 席以上はありましたが、満席で立ち見が出る 程盛況でした。発表時間は一人 15 分、質疑応答の時間が 5 分あり、発表内容も詳細にわたり活発な議論がなされまし 発生分化構造研究分野 / 福田 紘己 (修士2年) た。宮島所長の挨拶にもありましたが、現在はとなりの研 真核細胞生物の染色体機能領域および境界領域形 究室で何をやっているのかよく分かっていないことが多 成機構の普遍性と多様性の解明 く、このような会を期に研究室を超えたつながりができれ ばよいと思います。以下に発表された方々を御紹介します。 細胞形成研究分野 / 宮台 英典 (博士3年) ペリプラズムの機能を支えるリポ蛋白質の構造と 発表者・演題 (発表順・敬称略) 形態形成研究分野 / 梅津 大輝 機能の解析 (博士2年) ショウジョウバエ視覚中枢形成に関わる新規遺伝 細胞機能研究分野 / 河野 淳 (博士1年) シロイヌナズナD型サイクリンCYCD4;1の機能解析 子の単離とその機能解析 活性分子創生研究分野 分子情報研究分野 / 西田 歩 (博士3年) ショウジョウバエにおける新規 Armadillo 結合因 / 千々和 修平 (修士2年) 新規分子シャペロン GRP78 発現抑制物質 Versipelostatinの13 Cラベル化による生合成の研究 子 D6 の解析 情報伝達研究分野 生体超高分子研究分野 恒常的活性化型 / 米山 京 (博士1年) / 平林 祐介 (博士1年) 神経系前駆細胞のニューロン分化メカニズムの解析 TOR2 の単離 高次構造研究分野 / 大綱 英生 (博士3年) ショウジョウバエを用いた、視覚情報処理メカニ ズムの解析 分子遺伝研究分野 / 古賀 恵子 (博士3年) 大腸菌の増殖・分化を決める分子機構 機能形成研究分野 / 板東 高功 (博士3年) 新規 Neuronal Leucine-Rich Repeat タンパク質 NLRR4 遺伝子欠損マウスの作製と記憶固定化に関 する機能解析 14 染色体動態研究分野 / 薄井 俊樹 (修士2年) 審査員特別賞 細胞増殖研究分野 片山量平 (博士課程1年) エピジェネティックな発現制御を受けるイネ遺伝 子のプロファイリング 入賞者の方には励例会より盾と副賞が送られました。 生体有機化学研究分野 / 加藤 優子 (修士2年) 新規窒素含有活性型ビタミン D 3 誘導体の合成と 所内発表会に引き続き、新人歓迎会が農学部生協にて 18 : 30 から開催されました。歓迎会は総数 248 名(うち職 活性評価 員 64 名、学生 93 名、新人 91 名)という多くの皆様に御参 細胞増殖研究分野 / 片山 量平 (博士1年) 加いただき、盛況に行われました。宮島所長の挨拶を皮切 アポトーシス抑制分子 FLIP による Wnt シグナリン りに、和気あいあいとした雰囲気のなか、今年度分生研に グの増強 こられた新人の方々の紹介が行われました。毎年 4 月にな ると見なれない方々を分生研のなかで見るようになります バイオリソーシス研究分野 / 安 光得 (博士3年) が、この会で顔と所属の研究室や名前がわかり、親ぼくを 深める貴重な機会となっています。また新人の方の中には、 アミノアジピン酸還元酵素の分子進化 コントや手品、仮装や大道芸などインパクトのある芸をさ 核内情報研究分野 / 伊藤 紗弥 (博士1年) ショウジョウバエを用いたヒトエストロゲンレセ れる方もいて、例年通り大変盛り上がりました。 なお、会の終了後に各研究室の連絡係の方にアンケート をとりましたので、その内容についてコメントいたします。 プターの分子遺伝的解析 1.所内発表会の会場について 前回同様、発表はコンピューターを使ったプロジェクタ 例年と同様、総合研究棟2階会議室を使用しましたが、 ー映写に統一しました。前年度は次演者への接続がうまく 若干立ち見のでる時間帯もありました。そのため、もうす 行かない場合もあったそうなので、今年度は発表への移行 こし広い会場の方がよかったのではという意見をいただき をスム−ズに行えるよう前日に発表者の方に集まっていた ました。それだけ、活発な発表会になったということで、 だきシュミレーションをおこないました。そのため、当日 喜ばしいことだとおもいますが、会場の場所は検討しても は混乱なく進行できました。 よいかもしれません。また、最初のうちは質問のときマイ 発表会には、例年通り各研究室から2名ずつ審査員にな っていただきました。一人の発表者に対し、5研究室 10 名 クを使わなかったため、後ろまで質問内容が聞こえない場 合があったようです。 が審査にあたったほか、特別審査員として協和発酵工業 (株)特別顧問(財)応微研奨励会理事長の木下祝郎先生、 2.審査方法について 東大名誉教授、元分生研所長の丸尾文治先生、東大名誉教 審査方法については、内容、発表、質疑応答をそれぞれ 授、元分生研所長の田中信男先生、東大名誉教授、元分生 5 点満点で評価するという方式を取りました。この方法が 研所長、(社)北里研究所部長、北里大学・北里生命科学 適切だったという意見もある一方で、審査員によって点数 研究所客員教授の岩崎成夫先生、協和発酵工業(株)つく の基準がちがうのではないか、点数の辛い人が審査に当た ば研究所所長の水上透様、に御参加いただきまして審査員 ると評価がさがるのではないかという意見もありました。 特別賞を選定していただきました。 また、ひとりの発表者に対し審査員は 10 人が当たりました が、半分でいいのではという意見もいただきました。 2003 年度所内発表会入賞者は審査の結果、以下のように なりました。受賞者の方、おめでとうございます(敬省略) 。 3.新人歓迎会について ステージが中央にあったためみんなで芸を楽しめたとい 第一位 細胞増殖研究分野 片山量平(博士課程1年) う意見をいただきましたが、会場がもっと広い方がよかっ 第二位 情報伝達研究分野 平林祐介(博士課程1年) たという意見もいただきました。食べ物が少ないという意 第三位 核内情報研究分野 伊藤紗弥(博士課程1年) 見もありましたが、テーブルによってはあまっているとこ 審査員特別賞 バイオリソーシス研究分野 安 光得 (博士課程3年) ろもあり、うまく配分できればよかったと思います。また、 新人の自己紹介の時間を人数によって決めた方がよいとい 15 う意見もありました。 以上のようなアンケート結果を来年以降の参考にしてい ただければよいと思います。 最後になりましたが、発表会・新人歓迎会を行うにあた り御協力いただきました、各研究室の演者、審査員、連絡 係の皆様、お忙しい中お越しいただいた特別審査員の先生 以外の蛋白質の蓄積に対する FLIP の効果を検討した結果、 方、(財)応微研奨励会事務局長の山口千秋様、ならびに FLIP は他に、Wnt シグナルのメディエーターとして知られ 宮島所長に深くお礼申し上げます。 るβカテニンの細胞内蓄積量を増加させることが明らかに 以下は発表会に入賞された方々から一言いただきました なった(Fig.2-1)。またこのとき FLIP はβカテニンのユビキ チン化を抑制することで蛋白質蓄積を増加していることが ので、発表の要旨とあわせて御紹介します。 確認された(Fig.2-2)。 細胞を免疫染色すると、FLIP-L の一過性発現によって内 第一位 因性βカテニンが増加し一部は核に移行していることが、 観察された(Fig.2-3)。 βカテニンが蓄積するとその下流の アポトーシス抑制分子 FLIP による Wnt シグナリングの増強 細胞増殖研究分野 博士課程1年 片山 量平 転写因子 Lef1/Tcf family が活性化を引き起こす。そこで FLIP によるβカテニンの蓄積が転写の活性化を引き起こす かどうかを転写因子 Tcf の結合配列(TOP)を用いたレポータ 【序】FLIP は、Caspase8 と高いホモ ーアッセイで検討した。その結果 FLIP-L のみがシグナルを ロジーを有するが、Caspase の活性中 増強することが明らかになった(Fig.3)。さらに、FLIP-L の 心であるシステイン残基がないため 恒常性発現株を作成し、Wnt3a コンディションメディウム に、Fas シグナリングにおいて、 で刺激すると FLIP-L の恒常性発現株は Wnt シグナルに強く Caspase8 と競合し、Caspase 活性化を 反応した(Fig.4)。 阻害することでアポトーシスを抑制す 【まとめ】βカテニンは細胞接着において重要な役割を る。しかし FLIP のノックアウトマウス は Caspase8 や FADD のノック アウトマウスと同様、胎生致 死であり、その原因がいずれ も心筋の発育不全であることなどから、FLIP には Fas シグ ナリング阻害によるアポトーシス抑制以外の機能があると 推測される。 本研究において私は FLIP 分子の未知機能の解明を目的と して解析をすすめ、S100A10 を始めとする S100 蛋白ファミ しているが、更に Wnt シグナルのメディエーターとして発 リーの分解制御、さらに、βカテニンの分解の制御とその 生における器官形成や細胞の癌化に重要な役割をすること 下流の転写活性化機能を見い出したのでここに報告する。 が知られている。通常すみやかにユビキチン−プロテアソ 【実験・結果】これまでに当研究室において、Yeast 内で ーム系で分解されているβカテニンは、Wnt シグナルによ FLIP が S100A10 と結合することが見い出されてきた。私は りその分解が抑制され、 293T や LNCaP、Colo320DM 細胞において FLIP の過剰発現 下流の転写活性化がおこ により S100A10 をはじめとする S100family 蛋白が蓄積する る。このβカテニン分解 ことが見い出した。この FLIP の作用点を RT-PCR、 系の異常は細胞の癌化に Northern Blotting 及 び プ ロ テ ア ソ − ム 阻 害 剤 とって、重要なステップ (MG132,Lactacystin)を用い解析した結果、FLIP は S100A10 であると考えられてい のユビキチン化を著しく阻害することで細胞内の蓄積をひ る。本研究により FLIP は きおこしていることを明らかにした。さらに私は S100A10 βカテニンのユビキチン 16 化を阻害し細胞質βカテニンの増加、および転写活性化を 第二位 引き起こすことが明らかになった。FLIP は多くの癌で発現 していると報告されているが、Fas シグナリングの阻害に よるアポトーシス抑制だけでなく、FLIP が Wnt シグナルを 神経系前駆細胞のニューロン分化メカニズムの解析 情報伝達研究分野 博士課程 1 年 平林祐介 調節することにより細胞の癌化に寄与する可能性が考えら れる。 神経系前駆細胞の分化制御は脳の発 生において重要なステップです。これ 受賞の声 までに神経系前駆細胞の分化を抑制す 分生研に配属になったのが2年前の M1 の時であり、は るシグナルについては比較的解析がさ や2年が経ちました。初めて2年前に所内発表会を見た時 れてきました。一方で、分化を促進す には、まさか自分がその場で発表することになるとは夢に るシグナルについては多くが未解明な も思いませんでした。今年度こうして発表する機会を頂き、 ままです。本研究ではこれまで明らか そして優勝することができて大変嬉しく思っております。 にされていなかったニューロン分化促進のメカニズムにつ 分生研では多くの研究室が各分野の最先端で世界と競い、 いて端緒となるデータを得たので、それについて報告させ 多くの成果を挙げられています。このような環境の中で発 て頂きました。所内発表会における審査は、「どれだけ聴 表できることは嬉しくもありましたが、つたない発表をし き手に自分の研究の内容、面白さ等を伝えられたか。」に てしまうのではないかという不安でいっぱいでした。先生 重点が置かれます。それゆえ、エンターテイメント性に欠 の御配慮によりラボ内のセミナーで練習をさせて頂き、ま き、独りよがりな発表をしがちな私は本来、受賞に値する た、同じ D1 の友人に優しくも厳しい特訓をしてもらった 人間では全くありません。しかし、そんな私の原稿を根気 お陰で、徐々に自信を持って発表できるようになりました。 よく直して下さった後藤先生や、客観性を持った意見で分 とはいえ当日は口から心臓がとび出そうなくらい緊張して かりやすい発表へと私を導いてくれた情報伝達研究分野の いました。緊張のあまりマイクを口に近付け過ぎたりして 皆様のお陰で賞を頂くことが出来ました。皆様には心の底 しまっていたようですが、発表が始まってからは少しは落 から感謝しています。今回の発表において私の発表を聞か ち着いて話すことが出来たと思います。 れた多くの方々に研究内容を理解して頂き、評価して頂け 今回、優勝そして特別賞まで頂けたのも、鶴尾先生、内 たことを非常にうれしく思います。発表の後に、こんなに 藤先生をはじめとする先生方、そして様々な面で私を支え も多くの方々に声をかけて頂けるとは全く想像していませ て下さったラボのメンバーのおかげと感謝しています。 んでした。これからも、みなさんが私の研究内容に興味を 今後もこのすばらしい研究環境である分生研で、日々自 持ってくださったことを励みに研究に勤しみたいと思いま らを鍛練し、更に新規性豊かでインパクトの高い仕事を行 す。最後になってしまいましたが、幹事研究室の皆様、私 っていけるよう努力していきたいと思います。 の発表を聴いてくださった皆様には本当に感謝していま 最後になりますが本研究を進めるにあたり多大の御指 す。賞品の録音機能付き目覚まし時計には後藤先生の声を 導、御協力を頂きました諸先生方、そして、共同研究でお 録音させていただき、これから毎朝すっきりと目覚める予 世話になりました理学部分子生物学研究室の皆様に心より 定です。それではみなさんごきげんよう。 御礼申し上げます。 17 第三位 ることが示唆された。 さらに、ショウジョウバエの各種キナーゼ変異体を用い、 ショウジョウバエを用いたヒトエストロゲンレセプターの リン酸化修飾を介した ER αの転写制御を検討した。その 分子遺伝学的解析 結果、Cyclin dependent kinase 7 (Cdk7) の機能欠損変異体 核内情報分野 博士課程 1 年 伊藤紗弥 において ER αの転写活性が顕著に抑制された。一方、 Ser118 残基を Ala 残基に置換した非リン酸化型 ER αの転写 主要女性ホルモンであるエストロゲ 活性は変化しなかった。また、ショウジョウバエ Cdk7 に ンは、女性生殖器官の発育をはじめ多 よる ER α Ser118 残基のリン酸化を in vitro kination assay に 彩な生理作用を担っている。これらエ より確認した。以上の結果より、Cdk7 による ER α Ser118 ストロゲンの生理作用はリガンド依存 残基のリン酸化を介した転写活性増強メカニズムを個体レ 的転写制御因子である核内レセプター ベルで初めて証明することができた。 の一つ、エストロゲンレセプター (ER α、ER β) を介した標的遺伝子の転写 受賞の声 制御により発揮される。そのメカニズムは、ER αがリガン 今回の所内発表で、様々な研究分野の方に自分の研究を ド依存的に転写共役因子群と結合し、基本転写因子複合体 知ってもらい、様々な視点からたくさんの意見をいただい を誘導することにより転写を活性化させると考えられてい て大変刺激を受けました。2年前に分生研に来た時は研究 る。従って、エストロゲンの生理作用を理解する上で ER についてまったくの素人で何もわからない状態だったので αを介した転写制御の分子メカニズム解明は必須といえ すが、今回の発表では自分の研究をみなさんから評価して る。これまでに、特異的細胞種において種々の転写共役因 いただけるまでになり、大変うれしく思っています。指導 子が ER α転写活性化能発揮に重要であることや、リン酸 して下さった同じ研究室の方々や共同研究者の方々に対し 化された ER αの転写活性が細胞種特異的に増強すること て感謝の気持ちでいっぱいです。これからも一生懸命研究 が報告されている。しかしながら、 ER α転写活性化の多 をしていきたいと思います。有り難うございました。 くは培養細胞系での把握であり、個体における生理的意義 は判然としていない。そこで、本研究では生体内における ヒト ER α転写活性化メカニズムの解明を目的に、ヒト ER 審査員特別賞 αを発現導入させたトランスジェニックショウジョウバエ を用いた分子遺伝学的解析を試みた。 ショウジョウバエは多数の遺伝子変異系統が確立されて アミノアジピン酸還元酵素の分子進化 バイオリソーシス研究分野 博士課程3年 安 光得 おり、遺伝学的解析の可能なモデル個体である。さらに、 ショウジョウバエにはエクダイソンレセプター等の核内レ アミノアジピン酸経由でリジンを生 セプターが存在、機能しており、その転写活性を制御する 合成する経路は菌類だけではなく、原 と推測される転写共役因子、細胞内シグナル伝達因子、基 核生物にも見つかった。しかし、アミ 本転写因子が多数同定されている。これらショウジョウバ ノアジピン酸を 2-アミノアジピン酸-6- エ内在性因子はヒトのものと非常によく類似しており、シ セミアルデヒドに還元することができ ョウジョウバエに発現導入したヒト ER αの転写活性化能 るのは菌類だけである。この還元反応 発揮に寄与することが予想された。そこで、ショウジョウ を触媒する酵素がアミノアジピン酸還 バエにおける遺伝子発現法の常法である GAL4-UAS システ 元酵素(Lys2)である。Lys2 にはアデニル化ドメイン、ペ ムを応用し、組織特異的に発現させた ER αの転写活性を プチジル輸送体ドメイン、還元化ドメインの 3 つのドメイ GFP 発現として検出する系を構築した。その結果、3齢幼 ンが存在する。Lys2 には 12 ヶ所の保存領域があり、特にア 虫の複眼原基特異的に発現誘導させた ER αのリガンド依 デニル化ドメインには 9 ヶ所が含まれる。このドメインは原 存的な転写活性を検出することに成功した。さらに、ヒト 核生物の抗生物質ペプチド系合成酵素にも存在が知られ、 の既知転写共役因子(AIB1、CBP)のショウジョウバエホモ 進化的な共通祖先が示唆された 1)。 ログ遺伝子機能欠損変異体における ER α転写活性を検討 菌類は子嚢菌類、担子菌類、接合菌類、ツボカビ類の 4 した結果、転写活性の顕著な抑制が見られ、これらショウ つのグループに分けられる。データベースには 8 つの子嚢 ジョウバエ転写共役因子がヒト ER αの転写活性を促進す 菌類由来の Lys2 が存在している。これらのアミノ酸配列ア 18 ライメントの保存領域から lys2 特異的な PCR プライマーを 受賞の声 設計した 2)。このプライマーを用いて、子嚢菌類 15 株、 担 分子細胞生物学研究所(旧応用微生物学研究所)創立 50 子菌類 4 株、接合菌類 1 株、ツボカビ類 4 株から lys2 アデニ 周年という節目に所内発表会において発表することがで ル化ドメイン領域(遺伝子断片)の塩基配列を決めた。アミノ き、さらに、審査員特別賞をいただきまして、本当にあり 酸を含まない最少培地で担子菌酵母 Bullera alba、Mixia がとうございます。この喜びは研究室のメンバー全員で分 osmundae、Rhodotorula minuta の 3 種を培養し、RT-PCR を かち合いたいと思います。 行った。その RT-PCR 産物の塩基配列を得たところ、Bullera 進化について研究をつづけております。今回はその中から、 と Mixia の各々由来の 2 ヶ所のイントロン挿入位置は同じ 菌類のみ存在し、ゲノム上に単一コピーで存在しているア であった一方、Rhodotorula はそれらともに違う 1 ヶ所に挿 ミノアジピン酸還元酵素(Lys2)の分子進化について発表 入されていた。しかし、Lys2 の推定アミノ酸配列比較では させていただきました。近年分生研内では微生物に関心を Mixia と Rhodotorula が似ており、それらと Bullera はより 持ち、研究対象としている研究が減ってきていることを残 3) 異なっていた 。 私は微生物とくに菌類の分子 念に思っていました。この発表を通してすこしでも微生物 本研究でデータベース上の遺伝情報を含む 23 種の Lys2 研究の重要性、面白さを再認識して下さることができたら が菌類の系統進化を反映していることを明らかにした(図 これほどうれしいことはありません。この賞を励みとして 1)。これらの研究により、はじめて担子菌類、接合菌類、 現在関心を持っている環境中における菌類の多様性も視野 ツボカビ類においての lys2 の存在がわかった。また、lys2 は に入れた研究を進めていきたいと思います。 菌類だけに存在していることから菌類特異的な分子系統学 および分子生態学解析に優れていると考えられる。 図1 Lys2 比較に基づく系統樹 1)An KD, Nishida H, Miura Y, Yokota A (2003) BMC Evol Biol 3:9 2)An KD, Nishida H, Miura Y, Yokota A (2002) BMC Evol Biol 2:6 3)An KD, Nishida H, Yokota A (2003) ミ in preparation 19 ドクターへの道 形態形成研究分野 理学系研究科 生物化学専攻博士課程 1 年 渡辺 晃 ずいぶん昔から科学者になりたいと思っていたような気 く、偉大な発見をされ がします。子供の頃には不思議だと思うことがたくさんあ た多くの先輩の科学者 りました。しかし、子供が思いつくような不思議なことに たちが今の私と同じよ はたいがいすでに答えが見つかっていて、常識として定着 うに未熟で若かりしと しているものの方がほとんどです。そうした問いには必ず きに一体どのようなこ 誰かが答えてくれましたし、答えてくれない場合には書物 とを考えながら科学の の中に答えを見いだすことができました。科学の教科書は 道を進まれたのかと思 発見の宝庫でした。世界の法則を一つ理解するたび、子供 いめぐらせます。きっ ながらに感動していたのを今でもよく覚えています。しか と彼らも数多くの失敗 し、「何かをわかる」ということは同時に、「何がわからな を繰り返したでしょ いか」を知ることでもあります。ある疑問が解決すれば新 う。地味で地道な実験 しい疑問が生じその次にはまた新しい疑問が生じるという を何年も続けたりもし ように、こうしたことを繰り返していくとしだいに誰も答 たのでしょう。これは私の全く個人的な想像なのですが、 えることのできない問いばかりが残るということになりま それでも彼らが偉業を成し遂げることができたのは、そこ す。なかにはどのように研究したらよいのか全く考えも及 に科学への強い執念と「自分にもできるはずだ」という信 ばないような大きな疑問も含まれていますが、少しでもそ 念がただあっただけだからなのではないでしょうか。この うした問いに答えたくて今私は博士課程に至るわけです。 研究所にも強い執念を持って研究に当たっておられる方が さて、この研究所に来てから早いもので 2 年がたちまし 多くいらっしゃいます。私もそうした方々とともに切磋琢 た。科学者を目指すからには教科書に名前が載るような大 磨し合いながらこのドクターへの道をさらに先へと進んで 発見をしてみたいものだと日々思ってやみませんが、実際 行ければと思います。 に研究の道に入ってみるとそのような大きな発見というの はそうそう簡単にそのあたりに転がっているわけではない のだと当たり前のように気付かされやや呆然としてしまい ます。 かつてあるテレビ番組で利根川進さんがこう言っておら れました。 「実験をして仮説の通りになるのもそれはそれで一応お もしろい。しかし、もう一つ上のレベルのおもしろさとい うのが科学にはある。それは、予想通りではないけれども その実験結果が何か思いもよらないような重要なことを極 めて明確な形で提示しているとわかるときである。そうい うとき、世界中でこの先を突き進めるのは自分だけなのだ と思うと、おもしろいというよりむしろ恐いくらいになっ てしまう」 大発見の瞬間というのは、あるいは今でもそのあたりに 転がっているのかもしれません。ただ、今の私はそのこと の重大さに気がつくことができないほど未熟です。私はよ 20 OB の手記 国立医薬品食品衛生研究所 医薬品医療機器審査センター 嶋澤 るみ子 (元生体有機化学分野) 「OB の手記」の依頼を頂いたときに、いつもの分生研ニ ュース「OB の手記」の筆者と自分の立場がかなり異なる ので、少々とまどいました。(「 OB 数年の 男性 の手記」らしく卒後 が社会人になってからの経験を書いている 印象がありました。)編集委員の方からのお話では「普通 の人があまり知らない仕事なので、どんな仕事をしている ところなのかを書いてください」とのことでしたので、職 場の業務内容の紹介させていただこうと思います。 私が勤務している医薬品医療機器審査センターは、その 名前のとおり、医薬品と医療機器の承認審査を行っている ところで、平成9年 7 月にできた比較的新しい組織です。 ここでは、新医薬品(新しい有効成分を含む医薬品などの 写真:右から 5 番目が筆者 こと)の承認審査を例にして、私たちが何をしているか、 的に審査報告書を作成していきます。(職場での資料の多 説明させていただくことにします。 さは、写真で積み上げられている書類を見ていただくとわ みなさんがご存じの様に、医薬品は、厚生労働大臣によ かると思います。これでも年度末で片づけられてかなりき る「承認」がなければ、日本国内で製造したり、海外から れいな状態です。)私たちの作成した審査報告書は、承認 輸入したりして販売する事はできません。この「承認」を された医薬品に関しては、インターネット上で公開されて 行う際に厚生労働大臣は、薬事食品衛生審議会の意見を聞 います[医薬品情報提供ホームページ(http://www.phar- くことができるとされており、事実上、医薬品の承認の可 masys.gr.jp/)中の「新薬の承認に関する情報」 否は審議会の意見で決まることになっています。私たちの 仕事の中で一番重要な(あるいは比重が高い)部分は、こ (http://www.pharmasys.gr.jp/shinyaku/shinyaku̲ index.html) ]ので、一度ご覧になってみてください。 の審議会での議論の元になる「審査報告書」を作成するこ 医薬品に関して、多くの方が持っている期待は、現実の とにあり、毎日の仕事のほとんどが、結局は審査報告書を 薬の効果よりずっと大きいと感じます。残念ながら承認さ 書くための準備のためにあるともいえます。 れている医薬品は、同じ病気の人の中の全員に効果がある さて、その審査報告書を書くまでのどんなことをしてい ものではありませんし、また必ず病気が完治するものでは るかですが、新医薬品の審査は、薬学、医学、獣医学、生 ありません。医薬品はたとえ一部の人に対してであっても、 物統計学などの様々な専門領域を持った「審査官」で構成 その薬を使うことによるリスクよりベネフィットが大きい される「審査チーム」で行っています。どうして様々な分 と評価できるときに承認されていることを、多くの方に理 野に関する専門家が必要かと言うと、医薬品が承認できる 解していただければうれしいです。 か否かの判断は、臨床試験(医薬品を実際に人で使用して 設立されてから、6年ほどしかたっていない組織ですが、 みて、有効性・安全性を試験すること。「治験」とも呼ば 来年度から他の関連組織とともに独立行政法人化されるこ れています。)で示されている有効性などを評価するのは とが決まっています。国の組織でなくなってどの様に変わ もちろんのこと、医薬品の品質や動物実験で示されている っていくのかわかりませんが、この「医薬品医療機器審査 毒性などについても評価する必要があるからです。1つの センター」で、様々な専門領域を持った人たちと一緒に仕 医薬品の申請に対して、段ボール数個〜十数個分の資料が 事ができたことは、私自身にとって、良い経験になってい 提出されますので、それらの資料を読むのはもちろんのこ くことと思っています。 と、自分たちで周辺の情報を調査し、申請者(通常製薬会 社)の方々とは面談や書面でのやりとりを繰り返し、外部 の専門家の意見も伺った上で、総合的に評価を行い、最終 21 留学生手記 金 (核内情報研究分野 美善 博士課程2年) 早いもので、分生研にきて 4 回 術もさっぱりなので、研究室の先輩方に迷惑をかけっぱな 目の夏を迎えようとしています。 しの日々でした。自分の腕を磨くこと、一人で実験計画を 私が分生研を始めて志したのは修 立てて結果を出すこと、自分がやっている研究に対しては 士課程 1 年次の時でした。当時、 誰よりも理解することを目指した修士 2 年はあっという間 韓国の高麗大学に在学していた私 に終わりました。博士に進学しようかどうか迷ってる間に は、自分の専攻である分子生物学、 時間はすぎてしまい気づいたら、私を含む入学同期 4 人は 特に転写制御に関してより詳しく みんな博士課程に進学していました。 勉強したいと思い、当大学院進学 実験がうまく行かない時は途中で嫌になったり、自分自 を決心していました。しかし、家族や親戚が日本で働いて 身が研究者に向いていないかもと落ち込んだりするのが不 いた理由で、日本に遊びにくる機会が多かったし、当時東 安で、博士進学を止めようかなと何度か悩んだが、やはり 大の工学部で交換研究員として勤めていたおじさんの強い 新しいことを明らかにする研究の魅力を捨てることは出来 推薦があったため、大学院進学に選択肢がもう一つ増え、 ませんでした。今でも回りの優秀な先輩や同期をみると自 「日本留学」に関して真剣に悩んでいました。 地元であるソウルで生まれ成長し安定な生活を送ってい 分はやっぱ研究に向いていないかもと思ったりします。お そらく、この悩みは一生結論を出せないかも知れません。 たし、当時まで海外とは日本しか行ったことがない私だっ でも、重要なことは自分のやっている研究が好きで、楽し たため、日本って幾ら近い国だとしても未知の世界に一歩 くやって行くことだと思います。それと、同じ悩みを持っ を踏み出すことには勇気が要りました。当大学院に入り友 て頑張ってる仲間がいることが、かなり支えになっていま 達と共に安定的な大学院生活を送り就職するか、もっと広 す。今のラボで 4 年目に入り、最初は「こんにちは」、「あ い世界に出るのか、悩みの最後の結論は留学に行こう!で りがとうございます」くらいしか喋らなかった私も、みん した。その時、日本留学を選択するモトになったのは母親 なのお蔭で の一言「後悔しない人生を送ること」でした。やろうとし か否かよく分からないが!)日本語が上達し、今は夜遅い ていることが今すぐは辛いかも知れないし、その後どうな 時間まで自分の実験以外にもみんなと研究の話しをするの るか不安であったとしても、時間が過ぎた後に「その時… がとっても楽しいです。ト ゙ クタへの道に入って 2 年目、今 すれば良かった」と後悔しないように逃げないこと! 目指してるのはプロになることです。すくなくとも自分が おやじギャグ も言えるくらい(嬉しいこと 次の悩みはどのラボに入るかでした。漠然であるが動物 やってる研究は世界で自分が一番になるように。自分のし 細胞を用いた転写制御メカニズムに関して研究したいと思 ている研究では自分のやっている実験結果は世界の最先端 っていたため東大のホームページや分生研研究室一覧など な訳ですから、自信を持って行うべきだと思います。そし を調べ、また、分生研に所属している先輩方からのコメン て、ただ自信たっぷりにしているのではなく、それを裏付 トを聞き、選んだラボは核内情報でした。 けるプロ意識を持っているのが大事だと思い、頑張りたい 今もそうなんですが、加藤先生は 1 年の半年は海外出張 と思っています。 でラボにいらっしゃらない日が多くて、加藤先生に会える 以上、個人的な経験話になってしまいましたが、現在博 のは空から星を取るくらい難しいことでした。3 回くらい 士進学において悩んでる方々にやや微弱であっても参考に 挑戦し、やっと会えることが出来たが、まったく日本語が なったら嬉しいなと思います。最後に、暖かい支援をくだ できなくて、日本に 10 年くらい留学していた先輩に通訳し さる加藤先生や研究室のスタッフの方、毎日楽しい時間を て貰って「僕は人間関係を大切にする人なんだ。うちのラ 与えてくれる先輩、同期や後輩たちにこの場を借りて感謝 ボは人が多いので、みんなと円満に楽しく研究生活ができ します。 るように頑張ってくれ」との加藤先生のアドバイスと共に 加藤研に入ることが出来ました。 日本語も下手で、当然研究に対する知識もなく、実験技 22 研究室名物行事 細胞機能研究分野 〜八王子セミナー〜(内宮博文・梅田千景) 一つの研究室に「名物行事」なるものがそういくつもあ るものではない。以前、このコーナーで名物行事として 『ボーリング大会』を紹介してしまったので、今回、2度 目の名物行事紹介が回ってきて困ってしまった。しかし、 この研究室にはもう一つだけ『名物行事』と言える行事が あった。それが、今回ご紹介する『八王子セミナー』であ る。 八王子セミナーの歴史は古く、分生研における内宮研創 成期にまで遡る。そもそもは科研・重点領域研究の『若手 の会』を八王子の大学セミナーハウスにおいて開催したこ とに始まる。八王子での若手の会は2回行なわれたが、た った2回で終わらせるのはもったいない、ということで、 それ以降、『内宮研・八王子セミナー』へと姿を変え、ほ 身動きの取れない場所のため、電車利用の参加者達は陸の ぼ毎年9月ごろに開催しており、かれこれ10年程になる。 孤島に閉じ込められるような格好となる。(近隣にお住ま その歴史ある、八王子セミナーとは一体どのようなセミ いの方の名誉の為に申し上げると、車さえあれば決して不 ナーなのか?参加者は内宮研に在籍するスタッフや学生は 便な場所ではない。)そのため、セミナーへの集中力をそ もちろん、OB, OG や関連研究室の方々など幅広い。例年 ぐような誘惑がなく、参加者全員、心置きなくセミナーに 総勢30名程の参加者がある。セミナーの内容はその年に 全力投球することができるのである。 よって異なる。研究室内の人の発表が主な年もあれば、ホ 夜にはセミナー同様に重要なイベントである懇親会が待 ットな研究をされている方々をゲストスピーカーとしてお っている。セミナー中ではなかなか聞けない話も、砕けた 迎えすることもある。少人数のロングセミナーが中心の時 席ではいろいろと聞くことが出来、案外、仕事上重要なも もあれば、多くの方に簡潔にお話頂くこともある。とにか のなのである。もちろん、久しぶりに会う、OB、OG と懐 く一貫していることは、『八王子・大学セミナーハウスで かしい話に花を咲かせたりもする。翌日も朝からセミナー 行なう、1泊2日・合宿セミナー』ということである。 を控えているのであまり無理は出来ない筈なのだが、体力 東京都八王子市といえば、東京のベッドタウンで人口も 多く、比較的便利な場所の筈である。しかし、セミナーハ の有り余る若い参加者達は、その後自室で深夜まで話し込 んでいるとかいないとか… ウスの立地条件はこの『八王子市』のイメージとは少し違 このように、八王子セミナーは研究の上でも、親睦を深 っている。最寄り駅からは本数のあまり多くないバスかタ める上でも、内宮研にとって非常に意義のあるものなので クシーを利用しなければならず、近所にはコンビニもない ある。 山の上にある。敷地内には自然が多く残っていて、たぬき 八王子セミナーハウスの森には「○○研究室セミナー記 が出ることもあるらしい。そんな、車がないことには全く 念」の名を冠した樹木が多い。私達も「細胞機能研究室記 念植樹」を行ないたかったのであるが、いくら広い森とは いえ、余りにも樹木が増えてしまったということで、その 願いは叶わなかった。小柴先生にあやかり、楷ノ木を植え ようと思っていたのだが、残念である。 もちろん、本年度も八王子セミナーは開催予定である。 今年は例年より少し早めで8月29、30日。年によって は30度を優に超える過酷な気象条件も何のその。そんな ものは私達の向学心の前では何の障害にもならない。今年 も八王子の山が私達を呼んでいる! 23 お店探訪 放心亭 金井由美子(核内情報研究分野) 日頃の食事で、ふと「今日は変わった料理を」と小さな 塩茹でしただけ。それに茹でたポテトとキャベツのピクル 冒険心を抱くことがあります。エスニック料理に惹かれる スが添えられる。皮がついた原型のままでここにナイフと のはそんな時。「ドイツ料理」というと、ビールとソーセ フォークを入れ、ほうばります。野性味にあふれ、「ゲル ージ、じゃがいもの組み合わせしか浮かばない人にも、朗 マニア!」と叫びたくなります。大きさは大(3200円、 報があります。それも御徒町という身近なところに。まさ 6,7人向け)、中(1500円、3人向け)、小(860 に灯台もと暗し! 円)ありますが、これに軽くビールがあればお腹いっぱい JR 御徒町駅前の吉池本館6階「放心亭」がそれ。1階が になってしまいます。ともかくボリュームたっぷりです。 食品のスーパーマーケットなのでわかりにくいのが、また 今回はアメ横付近を歩いた後のランチですが、夜、コン 秘密めいていいのです。この6階に上がるとレストランに パなどでこの「アイスバイン」やソーセージなどをメーン なっています。和風と洋風に店が分かれ、洋風の方に入る に取り寄せれば、4000円ほどの会費でちょっと楽しめ とそのメニューが興味をそそります。海老や貝が入ったオ そうです。 ムライス(950円)はまず、一番手軽なランチ。スープ 他に「放心亭」神田神保町店(三省堂地下1階、電話0 とサラダは食べ放題なので「お金も野菜も不足気味」とい 3-3295-1888)、東京サンケイビル店(地下2階、 う時はぴったり。ちょっと財布も豊かで好奇心に誘われた 大手町。電話03-3231-0745)などもあります。 時、お勧めが「アイスバイン」。下処理した豚のすね肉を - お店の名前:放心亭(HO-SHIN-TEI) 住 所 : 東京都台東区上野 3-27-12 TEL : 03-3836-0446 営業時間 11:00 〜 23:00 (ランチ 11:00 〜 15:00) 所内レクレーション報告 < バトミントン大会 > 平成15年3月7日、御殿下記念館ジムナジウムにて分 優 勝:芳賀・奥村 ペア(細胞増殖) 生研バドミントン大会が行われた。今回は経験者の参加が 準優勝:平林・吉松 ペア(情報伝達) 多くレベルの高い大会となったが、1回戦の負け組を集め 第3位:原・小山内 ペア(細胞機能・分子遺伝) て行われる裏トーナメントもあり、参加者は楽しく汗をな がした。結果は以下のとおり。 裏トーナメント優勝:渡邉・山口ペア(事務部) 24 分生研卒業生の進路状況 平成 15 年 3 月に博士・修士課程を修了された方々の進路を紹介 〈形態形成研究分野〉 修士卒 します。 小沢豊彦(理学系研究科):エース証券 (ただし、同一研究科進学者を除く) 〈細胞形成研究分野〉 〈分子遺伝研究分野〉 博士卒 博士卒 永島明知(農学生命科学研究科):分生研学術研究支援員 原 華岡光正(農学生命科学研究科):分生研学術研究支援員 池上文緒(農学生命科学研究科):特許庁 修士卒 修士卒 千葉恵子(農学生命科学研究科):三菱化学生命科学研究所 井口麻子(農学生命科学研究科):長谷川香料株式会社 崇(農学生命科学研究科):三共株式会社 〈機能形成研究分野〉 〈染色体動態研究分野〉 修士卒 博士卒 大沢勇久(農学生命科学研究科):警察庁化学警察研究所 槌田 謙(農学生命科学研究科):京都大学放射線生物研究セ 峰松 寛(農学生命科学研究科):分生研非常勤研究員 ンター博士研究員 松下和浩(理学系研究科):株式会社マンダム 〈生体超高分子研究分野〉 修士卒 水谷龍明(理学研究科):医学系研究科博士課程進学 修士卒 三崎悟郎(農学生命科学研究科):明治製菓株式会社 〈生体有機化学研究分野〉 〈核内情報研究分野〉 修士卒 博士卒 荘 竹澤慎一郎(農学生命科学研究科):分生研博士研究員 喜多哲也(薬学系研究科):住友製薬株式会社 蘇寧(薬学系研究科):藤沢薬品工業株式会社 小林陽子(農学生命科学研究科):筑波大学日本学術振興会特別 研究員 〈活性分子創生研究分野〉 博士卒 修士卒 吉田 輔(農学生命科学研究科):千葉大学医学部 富川泰次郎(農学生命科学研究科):塩野義製薬株式会社 清水知宏(農学生命科学研究科):藤沢薬品株式会社 〈分子情報研究分野〉 朴 海龍(農学生命科学研究科):NIH ポスドク(アメリカ合 衆国) 博士卒 安達俊吾(理学研究科):東京医科歯科大学日本学術振興会特 修士卒 五月女宜裕(農学生命科学研究科):東京大学大学院薬学系研 別研究員 究科博士課程進学 修士卒 上田奈緒子(農学生命科学研究科):小野薬品株式会社 浦野信行(農学生命科学研究科):京都大学博士課程進学 壁谷佳典(理学系研究科):日本アイ・ビー・エム株式会社 山下知輝(農学生命科学研究科):東京大学医科学研究所博士 課程進学 〈情報伝達研究分野〉 〈バイオリソーシス研究分野〉 修士卒 田中美帆(工学系研究科):中外製薬株式会社 博士卒 徐 〈細胞機能研究分野〉 ルセンター研究員(アメリ カ合衆国) 博士卒 潘 玲(理学系研究科):株式会社 CII 修士卒 渡辺 香(新領域創成科学研究科):広島大学大学院理学系研 究科・研究補助員 〈細胞増殖研究分野〉 博士卒 六代 楊 必守(農学生命科学研究科):セントエリザベスメディカ 範(薬学系研究科):国立がんセンター研究所分子腫瘍学部 莉玲(医学系研究科):Massachusetts General Hospital Harvard Medical School Cutaneous Biology Research Center 25 最近の新聞記事から 新聞等に掲載された分生研の研究成果をご紹介します。 核内情報研究分野 読売新聞 2003 年(平成 15 年)5 月 29 日(水曜日) 毎日新聞 2003 年(平成 15 年)5 月 29 日(水曜日) 分生研ニュースでは、皆様からの情報をお待ち致して おります。 長澤([email protected])または分生研ニュ ース編集委員までお知らせ下さい。 26 平成 14 年度(2002 年)研究分野業績発行物一覧(追加) 前号(第 22 号)で掲載した業績発行物一覧に一部追加修正があ Cytokine regulation of liver development. ります。訂正カ所について再度掲載致します。 Kinoshita T and A. Miyajima: Biochimica et Biophysica Acta, 1592, 303-312, 2002. <機能形成研究分野> Cultivation of aorta-gonad-mesonephros-derived hematopoietic stem In vitro differentiation of stem cells in the aorta-gonad-mesonephros cells in the fetal liver microenvironment amplifies long-term repopulat- region of mouse embryo and adult bone marrow. ing activity and enhances engraftment to the bone marrow. H. Tamura, S. Okamoto, K. Iwatsuki, Y. Futamata, K. Tanaka, Y. M. Takeuchi, T. Sekiguchi, T. Hara, T. Kinoshita and A. Miyajima: Nakayama, A. Miyajima and T. Hara: Exp. Hematol., 30, 957-966, Blood, 99, 1190-6, 2002. 2002. Macrophage colony stimulating factor modulates the development of Enhanced in vitro maturation of fetal mouse liver cells with oncostatin hematopoiesis by stimulating the differentiation of endothelial cells in M, nicotinamide, and dimethylsufoxide. the AGM region. Y. Sakai, J. Jiang, N. Kojima, T.Kinoshita and A. Miyajima: Cell K. Minehata, Y. Mukouyama, T. Sekiguchi, T. Hara and A. Miyajima: Transplantation, 11, 435-442, 2002 . Blood, 99, 2360-8, 2002. Cultivation of fetal liver cells in a three-dimensional poly-L-lactic acid STAT3 down-regulates the expression of cyclin D during liver devel- scaffold in the presence of oncostatin M. opment. J. Jiang., N. Kojima, T. Kinoshita, A. Miyajima, W. Yan and Y.Sakai: T. Matsui, T. Kinoshita, T. Hirano, T. Yokota and A. Miyajima: J Biol Cell Transplantation, 11, 403-406, 2002. Chem., 277, 36167-73, 2002. Developmental expression pattern of oncostatin M receptor _ in mice. K-Ras mediates cytokine-induced formation of E-cadherin-based S. Tamura, Y. Morikawa, M. Tanaka, A. Miyajima and E. Senba: adherens junctions during liver development. Mech Dev. 115, 127-131, 2002. T. Matsui, T. Kinoshita, Y. Morikawa, K. Tohya, M. Katsuki, Y. Ito, A. Kamiya and A. Miyajima: EMBO J., 21, 1021-30, 2002. Hepatoma-derived growth factor is highly exspressed in developing liver and promotes fetal hepatocyte proliferation. A novel nuclear zinc finger protein EZI enhances nuclear retention and H. Enomoto, K. Yoshida, Y. Kishima, T. Kinoshita, M. Yamamoto, transactivation of STAT3. A.D. Everett, A. Miyajima and H. Nakamura: Hepatology,36, 1519- K. Nakayama, K-W. Kim, and A. Miyajima: EMBO J., 21, 6174-6184, 1527, 2002. 2002. Maturation of fetal hepatocytes in vitro by extracellular matrices and Oncostatin M; Induction of tryptophan oxygenase. A. Kamiya, Kojima, T. Kinoshita, Y. Sakai and A. Miyaijma: Hepatology, 35, 1351-1359, 2002. 平成 15 年度科学研究費補助金等採択一覧 以下は平成 15 年度科学研究費補助金の分生研における採択者 大坪榮一教授 染色体動態研究分野 遺伝的組換えの新展開: DNA の切断と再結合 (代表者氏名と研究題目、本年度配分予算額)です。 ○学術創成研究費(2) ○特定領域研究(2) 豊島 秋山 近教授 生体超高分子研究分野 P型イオンポンプによる能動輸送機構の構造的解明 徹教授 1,500 千円 分子情報研究分野 細胞周期の制御異常 63,000 千円 71,000 千円 ○特定領域研究(1) 鶴尾 隆教授 後藤由季子助教授 がん研究の総合的推進に関する研究 情報伝達研究分野 PI3K-Akt 経路による癌化メカニズムの解析 細胞増殖研究分野 756,300 千円 13,600 千円 27 早川洋一助教授 梅田正明助教授 活性分子創生研究分野 細胞機能研究分野 がん細胞のアポトーシス抵抗性を標的とする抗がん物質の探索 植物発生の基盤となる細胞増殖を制御するシグナル伝達機構 7,300 千円 2,800 千円 加藤茂明教授 ○基盤研究(S) 核内情報研究分野 核内レセプター転写制御の分子メカニズムの解明 27,600 千円 橋本祐一教授 生体有機化学研究分野 再生医療を支援する生物応答調節剤の創製研究 内藤幹彦助教授 28,100 千円 高次機能研究分野 Caspase 非依存性細胞死の誘導剤探索とその分子機構 10,100 千円 ○基盤研究(A)(2) 徳田 元教授 細胞形成研究分野 大腸菌におけるリポ蛋白質の選別輸送と膜局在化の分子機構 冨田章弘助手 12,500 千円 細胞増殖研究分野 プロテアソーム蛋白分解系を標的としたストレス誘導性薬剤 耐性の克服 9,100 千円 ○基盤研究(B)(2) 田中 橋本祐一教授 がん増悪因子を阻害する医薬リードの創製 増山典久助手 徳田 元教授 8,100 千円 2,400 千円 7,100 千円 核内情報研究分野 染色体構造調節因子複合体の機能解析 宮島 細胞形成研究分野 大腸菌細胞表層におけるリポタンパク質の選択的膜局在化と 品質管理の分子機構 分子遺伝研究分野 制御 加藤茂明教授 情報伝達研究分野 PI3 キナーゼ− Akt 経路による p53 調節機構の解析 寛助教授 核コードシグマ因子群によるシロイヌナズナ色素体 DNA 転写 生体有機化学研究分野 篤教授 機能形成研究分野 胸腺上皮細胞の機能と遺伝子発現の解析 6,700 千円 30,000 千円 多羽田哲也教授 武山健一助手 6,800 千円 形態形成研究分野 ショウジョウバエ視覚中枢形成メカニズムの解明 核内情報研究分野 9,500 千円 内分泌撹乱物質による性ステロイドホルモン撹乱作用メカニ ズムの解明 2,000 千円 秋山 徹教授 分子情報研究分野 新規 RNA 結合タンパク質によるアポトーシス誘導の分子機構 前田達哉助教授 11,200 千円 生体超高分子研究分野 浸透圧ストレス情報伝達経路の解析 16,000 千円 北尾彰朗助教授 多羽田哲也教授 創生研究分野 大規模分子動力学法で探るバイオナノマシンの作動原理 形態形成研究分野 5,300 千円 ショウジョウバエのパターン形成遺伝子の網羅的探索 4,800 千円 ○基盤研究(C)(2) 大坪榮一教授 梅田正明助教授 染色体動態研究分野 バクテリアの挿入因子によるゲノム再編の解析 5,400 千円 細胞機能研究分野 植物のメリステム構築とサイクリン依存性キナーゼの活性制 御機構 中村 勉助手 1,000 千円 分子情報研究分野 β-カテニンとそのパートナー分子 ICAT および RICS による神 経発生の制御機構 6,300 千円 土本 卓助手 染色体動態研究分野 花のホメオティック遺伝子の重複による機能の多様性の獲得 1,600 千円 葛山智久助手 活性分子創生研究分野 新規一次代謝経路、非メバロン酸経路を標的とした抗菌剤開 発のための探索研究 3,300 千円 大坪久子講師 染色体動態研究分野 シロイヌナズナの LINE、ATLN の発現制御とコードされる機 能に関する研究 藤田直也助手 生存シグナル伝達を阻害する新規物質の探索 8,100 千円 ○萌芽研究 前田達哉助教授 宮島 篤教授 健助手 3,400 千円 29,500 千円 橋本祐一教授 高次構造研究分野 変態期のショウジョウバエにおける神経回路崩壊を制御する 遺伝的プログラム 生体超高分子研究分野 真核生物型低温ストレス検知機構の解析 機能形成研究分野 肝細胞の発生・増殖・分化の分子機構 粟崎 2,100 千円 細胞増殖研究分野 3,300 千円 生体有機化学研究分野 サリドマイドの抗糖尿病薬への展開 1,000 千円 28 ○若手研究(A) 佐藤沙織 後藤由季子助教授 JNK 経路による細胞死誘導メカニズムの解析 8,400 千円 ○若手研究(B) 中村 勉助手 特別研究員(DC2) 細胞増殖研究分野 生存シグナル伝達分子 Akt 並びに PDK1 の活性制御機構の解析 情報伝達研究分野 と治療への応用 西田 歩 1,000 千円 特別研究員(DC2) 分子情報研究分野 Armadillo と直接相互作用する新規癌抑制遺伝子産物 D6 の解析 分子情報研究分野 1,000 千円 Wnt シグナルの抑制因子 ICAT を利用した新規 Wnt 標的遺伝子 の同定 1,300 千円 西村(那須)教子 増山典久助手 特別研究員(DC2) 分子情報研究分野 カドヘリン−β−カテニン複合体に結合する新規蛋白質 IRAC 情報伝達研究分野 ミトコンドリアを介したアポトーシス制御機構の解析 の機能解析 1,000 千円 1,300 千円 平林祐介 山田真紀助手 神経系前駆細胞における Wnt シグナルの機能の解析 細胞機能研究分野 植物における細胞死制御機構の解明 900 千円 1,300 千円 石岡 西田洋巳助手 特別研究員(DC1)情報伝達研究分野 利康 特別研究員(DC2)細胞増殖研究分野 新規ヒト IAP ファミリータンパク Apollon の機能解析 900 千円 バイオリソーシス研究分野 菌類特異的遺伝子を指標にした菌類多様性に関する研究 2,400 千円 大石康二 特別研究員(DC2)情報伝達研究分野 神経幹細胞における生存維持機構の解析 津田岳夫助手 900 千円 生体超高分子研究分野 重金属イオンポンプの結晶化 2,600 千円 小川文昭 特別研究員(DC2)分子情報研究分野 形態形成および癌化における DLG 蛋白質の機能的役割に関す 杉田有治講師 る研究 生体超高分子研究分野 900 千円 巨大膜蛋白質・脂質二重複合体の高精度分子動力学計算シス テムの開発 2,300 千円 小川原陽子 特別研究員(DC2)情報伝達研究分野 Akt による Mdm2 機能制御メカニズムの解析 佐藤 純助手 ショウジョウバエ気管形成における細胞仮足の機能および脱 分化の分子機構の解析 粟崎 健助手 3,000 千円 生機構の解明 片山和浩 特別研究員(DC2)細胞増殖研究分野 Akt 経路を介した細胞周期制御機構の解明 関谷高史 高次構造研究分野 ショウジョウバエにおける細胞系譜依存的な脳神経回路の発 900 千円 特別研究員(DC2)分子情報研究分野 大腸癌発症機構の解明 900 千円 1,900 千円 BISOVA Katerina 葛山智久助手 900 千円 形態形成研究分野 (受入教官:梅田正明助教授) 活性分子創生研究分野 未解明一次代謝経路、非メバロン酸経路に関与する遺伝子の 機能解析 外国人特別研究員 細胞機能研究分野 植物の細胞周期の制御機構に関する研究 400 千円 1,500 千円 平成 15 年度未来開拓学術研究推進事業補助金採択者 森口徹生助手 (代表者氏名と研究題目、本年度配分予算額) 分子情報研究分野 長鎖細胞外領域を有する新規 Secretin 様受容体の機能解析 2,200 千円 内宮博文教授 細胞機能研究分野 植物細胞死および増殖制御因子の高次発現機構の解明 75,000 千円 ○特別研究員奨励費 川崎善博 特別研究員(PD) 分子情報研究分野 癌抑制遺伝子 APC の機能解析 加藤健太郎 特別研究員(PD) 1,200 千円 高次構造研究分野 ショウジョウバエ成熟神経系幹細胞の増殖・増殖停止・分化 を制御する微小環境の解析 松井 等 特別研究員(PD) 機能形成研究分野 肝芽細胞の増殖・分化を制御する分子機構の解析 松本高広 特別研究員(PD) 1,200 千円 1,200 千円 核内情報研究分野 脳の性分化を規定する分子機構の解析 1,200 千円 29 平成 15 年度受託研究・共同研究一覧(平成 15 年 6 月 4 日現在) 〈受託研究〉 ◆機能形成・宮島 ◆分子情報・秋山 株式会社サイメディア 篤・教授 株式会社医学生物学研究所 徹・教授 モノクローナル抗体による癌の診断と 治療の研究 マウス樹状細胞の cDNA ライブラ リー作製 420 千円 1,000 千円 ◆発生分化構造・堀越正美・助教授 ◆分子情報・秋山 理化学研究所 徹・教授 独立行政法人産業技術総合研究所 環境ホルモン評価のための CCGI および CIA の相互作用因子と Yeast histone- like TAF のタンパク質高次構造の解析 6.3 千円 データベース作成に利用する癌細胞株のプレスクリーニング 1,000 千円 ◆活性分子創生・早川洋一・助教授 山之内製薬株式会社 ◆機能形成・宮島 肝臓におけ る造血・免疫機構の解明と肝疾患治療への応用に関する研究 7,150 千円 〈民間等との共同研究〉 財団法人 2,000 千円 篤・教授 科学技術振興事業団(戦略的創造研究推進事業) ◆機能形成・宮島 新規生理活性物質の探索 ◆生体超高分子・前田達哉・助教授 味の素株式会社医薬カンパニー医薬研究所 グメカニズムに関する共同研究 アミノ酸センシン 1,000 千円 ◆活性分子創生・新家一男・助手 第一製薬株式会社 篤・教授 千葉県産業振興センター 細胞の増殖分化に係る遺 創薬第三研究所 微生物抽出液からのテロ メレース阻害物質の獲得 1,000 千円 伝子並びに遺伝子産物の解析 平成 15 年度奨学寄附金受入状況(平成 15 年 5 月 15 日現在) ◆核内情報・加藤茂明・教授 帝人株式会社 創薬研究所 核内レセプターに関する研究 2,420 千円 総件数 8件 総 30,100 千円 額 内 500 万円を超えるもの 20,000 千円(学術研究助成) ◆機能形成・宮島 多羽田哲也教授 篤・教授 株式会社医学生物学研究所 ヘマンジオブラスト分離培養法の 確立 ◆高次構造・伊藤 840 千円 啓・助教授 科学技術振興事業団(バイオインフォマティクス推進事業)シ ョウジョウバエ脳神経回路の徹底解析にもとづく感覚情報処理 モデル構築 8,700 千円 出資元(財団法人 形態形成研究分野 東レ科学振興会) 30 〈新規採用〉 掲示板 〈知ってネット〉 北尾彰朗 助教授(創生研究分野):日本原子力研究所研究員より 棚谷 綾 柴田 葉子 助手(生体有機化学研究分野) 技官(分子情報研究分野) ○平成 15 年 4 月 17 日付け 職員の異動について、以下のとおり異動がありましたのでお知 〈新規採用〉 らせします。 大坪 ○平成 15 年 3 月 31 日 研究助成等公募(2003.6.4 現在) 〈退職〉 真樹 技官(形態形成研究分野) 詳細は分生研研究助成掛へお問い合わせ下さい。 高橋秀夫 教授(分子遺伝研究分野) TEL:03-5841-7803 / E-mail:[email protected] 温品惇一 助手(生体超高分子研究分野) 最新の情報は、ホームページで公開しております。 小磯邦子 講師(生体有機化学研究分野) http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/office/keijiban.html 〈辞職〉 松山伸一 助教授(細胞形成研究分野):立教大学教授へ 平成 15 年度日産学術研究助成募集について(財団法人日産科学 北川浩史 助手(核内情報研究分野):メルク研究所研究員へ 振興財団) 募集先 2007.31 締切 ○平成 15 年 4 月 1 日 〈転出〉 第 20 回井上研究奨励賞受賞候補者の推薦について(財団法人井 渡邉隆夫 事務長(事務部):地震研究所事務長へ 上科学振興財団) 藤枝優一 庶務主任(事務部):柏地区事務部企画課企画主任へ 研究助成掛 2003.8.15 締切 畠山良一 庶務掛主任(事務部):教養学部学生課課外活動掛 前野良子 用度掛主任(事務部):史料編纂所会計掛主任へ 教官公募(2003.6.4 現在) 主任へ 〈転入〉 詳細は分生研研究助成掛へお問い合わせ下さい。 TEL:03-5841-7803 / E-mail:[email protected] 大日方鐵機 事務長(事務部):原子力総合研究センター事務 長より 最新の情報は、ホームページで公開しております。 http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/office/keijiban.html 渡邉正昭 庶務主任(事務部):地震研究所事務部総務主任より 塩谷祥子 庶務掛主任(事務部):医学部附属病院病歴管理主 高山勇二 用度掛主任(事務部):国立特殊教育総合研究所総 任より 埼玉大学教授1名(理学部分子生物学科)2003.8.29 締切 北海道大学教授1名(低温科学研究所)2003.10.31 締切 東京大学助教授1名(大学院総合文化研究科)2003.8.29 締切 務部会計課総務掛主任より Tea Time−編集後記 「ニュー・オーリンズ」というと、20 世紀初めアメリカに発 先日九州で久しぶりに「もつ鍋」を食べた。一時期全国的に 生した民衆音楽「ジャズ」の都というイメージが浮びますが、 ブームになり、東京にも「もつ鍋屋」ができたが、名前は同じ ここはそもそもの始め、フランス人によって開拓された土地。 「New Orleans」は、フランス語では「ニュー・オレルアン」と でも味が全然違うのである。夏休みに九州への旅行を考えてい る方は、ぜひ福岡の大橋にある「やま中」のもつ鍋を食してみ 読むのだとか、、、、、。そのためか、けっこう美味しいフレンチ・ クイズィーンを楽しめるそうです。そして「オレルアン」とい てください。暑い夏でも元気が出ること間違いなし。 (研究助成掛 松尾美鶴) えば、フランスの愛国者「ジャンヌ・ダルク」を思い出します。 百年戦争の末期、救国の神託を受けたと深く信じ、軍を率いて イギリス軍を撃破、オレルアンを奪還した「オレルアンの乙女」 。 そうそう、ルイジアナ(Louisiana)はルイ王朝風といった意味 ですよね。19 世紀始め、他の中部、南部の諸州とともに産声を 上げたばかりの合衆国が割譲されたものです。カリフォルニア 方面はスペイン語の、ほかに先住民(インディアン)の地名は シカゴなど沢山あります。 こんな地名からも今、帝国と揶揄されるアメリカの成立過程 が空想できて、面白いと思いました。 (核内情報研究分野 金井由美子) 分生研ニュース第 23 号 2003 年7月 1 日号 発行 東京大学分子細胞生物学研究所 編集 分生研ニュース編集委員会(田村勝徳、金井由美子、増山典久、芳 賀直実、長澤和夫、松尾美鶴、山口武志) お問い合わせ先 編集委員長 長澤和夫 電話 03 − 5841 − 7848 電子メール [email protected] 31 研究 究最 最前 前線 線 研 変異 APC-Asef 複合体と大腸癌細胞の運動性 骨髄間葉系細胞におけるNFκB-PPARγのクロストーク 川崎善博、佐藤梨奈、秋山徹(分子情報研究分野) Nature Cell Biology, 5, 211-215 (2003). 須澤美幸、高田伊知郎、加藤茂明(核内情報分野) Nature Cell Biol. 5, 224-30 (2003) 癌抑制遺伝子産物 APC は、Wnt シグナル伝達因子β-catenin に結 核内レセプター型転写 合して分解を誘導する活性をもっているが、ヒト大腸癌で見出さ 因子 PPAR γの機能の一 れる変異 APC はこの活性を失っている。また、APC に変異のない つに脂肪細胞分化能の促 大腸癌の一部ではβ-catenin が変異により安定化している。これら 進がある。これは予め発 の事実から、APC が癌抑制遺伝子として機能するには、β-catenin 生・分化で定められた脂 の分解を誘導する活性が重要だと考えられている。しかし、大腸 肪細胞以外にも、成人の 癌でのβ-catenin の変異は稀で圧倒的に APC の変異が多いことな 骨髄系間葉細胞など脂肪 どから、APC にはβ-catenin の分解誘導以外にも重要な機能がある 細胞や骨芽細胞への多分 と推測される。また、癌細胞が変異により生じたAPC 断片を発現 化能を持つ細胞において し続けているということは、APC 断片の発現が癌の増殖・進展に も鍵となることが示され 有利に働いていることを意味していると考えられる。 ている。脂肪細胞分化抑 我々は、大腸癌で発現している変異 APC 断片が、低分子量 G 蛋 制因子として IL-1、TNF 白質Rac の活性を制御するguanine nucleotide exchange factor(GEF) αが存在するが、同時に 分子Asef(Kawasaki et al., Science, 289, 1194-1197, 2000)を恒常的に これらは骨代謝において 活性化し、大腸癌細胞の運動能亢進に重要な役割を果たしている 重要な働きをなす。しか ことを見出した。また、APC-Asef 複合体が、細胞接着面に局在す しながら脂肪、骨芽細胞 る cadherin 量の低下を起こして細胞接着能を弱める活性をもつこ 分化においてこれらのシ とも見出した(図) 。断片化した APC による Asef の恒常的活性化 グナルがどのように作用 が、ポリープの形成、がんの転移浸潤に重要である可能性がある するか、不明であった。今回我々のグループは骨髄間葉系細胞に と考えられる。動物実験レベルでこの仮説を支持する結果が得ら おいて、PPAR γリガンド存在下でIL1,TNFαが脂肪細胞分化を抑 れており、新たな分子標的治療のターゲットとしても興味がもた 制するだけでなく骨芽細胞分化を促進させることを見出した。ま れる。なおこの論文はNature cell Biologyの News & Viewsで紹介さ たこの抑制の分子機構について解析をおこなったところ、MAP キ れた(Fodde, Nature Cell Biology, 5, 190-192, 2003) 。 ナーゼ p38 の活性化よりもむしろ MAPKKK である TAK1/TAB1- Asef∆DH Asef∆APC Asef-full E-cadherin F-actin E-cadherin β-catenin 図;骨髄間葉系細胞における IL-1,TNF αシグ ナルと PPAR γのクロストークの模式図 NIK シグナルによって活性化された NF κ B と PPAR γの相互作用 による転写抑制が中心的な役割を果たす事を見出した(図)。マク ロファージ細胞において PPAR γが NF κ B の転写活性化能を抑制 する事や他の核内レセプターと NF κ B の相互作用は報告されて いるが、骨髄間葉系細胞においては IL1,TNF αによる NF κ B と核 内レセプターの相互作用は PPAR γ選択的に生じ、同じ核内レセ プター型転写因子である GR は NF κ B と結合しない点、PPAR γ の AF1,DNA 結合領域が NF κ B と相互作用するが、その際 PPAR γコアクチベーターの一つである PGC2 がモジュレーターとして 機能する点も興味深い。また老化、骨粗鬆症の患者において骨髄 内の骨芽細胞の減少と脂肪細胞の増加が観察されるが、これは NF κ B による PPAR γ活性の抑制制御が解除されているのかもし LacZ れない。しかしながら骨芽細胞分化における PPAR γと IL1,TNF αで協調的に発現増加する標的遺伝子は不明であり、PPAR γ/NF κ B 複合体における未知因子の存在の可能性は否定出来ず、まだ 不明な点は多い。 32 研究 究最 最前 前線 線 研 ビタミン D レセプター転写に関わる新規クロ マチンリモデリング複合体 WINAC の機能解析 北川浩史、藤木亮次、加藤茂明(核内情報研究分野) Cell, June 27 issue (2003). ダイオキシンによる女性ホルモン撹乱作用機構の解明 大竹史明、加藤茂明(核内情報研究分野) Nature, 423, 545-550 (2003). ダイオキシン類は発がん作用をはじめとした様々な毒性作用を持つ クロマチン構造は転写、複製、修復など様々な核内生命現象の場に 環境汚染物質であり、近年特に女性ホルモン・エストロゲン撹乱作用 おいて重要な役割を果たすと考えられている。中でも、クロマチン構 ( 「環境ホルモン作用」 )が注目されています。エストロゲンの生理作用 造変換に関わるクロマチンリモデリング複合体群の働きは、遺伝子発 は女性ホルモン受容体(ER α,ER β)を介した標的遺伝子の転写制御によ 現制御過程において中心的な役割を果たすと考えられるようになって り発揮されることが知られています。一方ダイオキシン類は「ダイオキ きた。転写反応に関わるクロマチンリモデリング複合体には、現在二 シン受容体(AhR/Arnt)」に結合して同様に遺伝子の転写を制御する作用 つのクラスが知られている。一つは、ヌクレオソーム構造を構成する を持ち、エストロゲン受容体には結合しないので、どのようにしてエス ヒストンタンパクの修飾を担うヒストン修飾酵素複合体であり、ヒス トロゲン作用を撹乱しているのか、そのメカニズムは不明でした。 トンアセチル化酵素(HAT)複合体などが知られている。もう一つは そこで私たちは、両者の受容体が転写因子であることに着目し、転 ATP 依存的にヌクレオソーム配列の再編成を行う ATP 依存性クロマチ 写制御の段階でダイオキシンとエストロゲンのシグナルが相互作用して ンリモデリング複合体である。 いる可能性を検討しました。 われわれは、リガンド依存的な転写制御因子である核内レセプター のリガンド結合ドメイン(LBD)をアフィニティー精製のベイトとし、 細胞内・プロモ−タ−上での転写因子の複合体形成・転写活性化能 の測定さらにノックアウトマウスを用いた解析の結果、私たちが得たモ 転写調節に働く様々な因子群の精製を行ってきた 1, 2。今回、ビタミン デルは、「ダイオキシン(3MC)を結合して活性化したダイオキシン受容 D レセプター(VDR)の LBD をベイトとすることによって新規 ATP 体が、エストロゲン(E2)を結合していない状態のエストロゲン受容体に 依存性クロマチンリモデリング複合体である WINAC を同定した。 WINAC は hSWI/SNF 複合体構成因子(BAF250,Brg1/hBrm, BAF170,BAF155,BAF60a,BAF57,BAF53,Ini1)、FACT 複合体構 成因子(FACT p140)、複製にかかわる因子群(CAF-1 p150,Topo Ⅱ β)を含み、これら 11 個のタンパク質を包括する約2 MDa の巨大複 合体(WINAC)を形成している。このように多彩な構成因子を持つ 複合体は生体内でどのような働きを持つのだろうか。まず生化学的な 手法を用い、この複合体が in vitro においてヒストンタンパクおよび DNA とクロマチン構造を再構築することを示した。さらに、この複 合体によるクロマチン再構築活性は VDR 結合領域周辺においてのみ 発揮されることを in vitro において明らかにした。実際に、レポータ ーアッセイによって VDR 標的遺伝子の転写調節に働いていることを 細胞レベルで明らかにしている。一方、in vitro と細胞レベルで転写以 外の複製反応にもこの複合体が機能していることを示し、WINAC の 直接結合することにより、不活性状態のエストロゲン受容体を活性化す もつ多様な機能について明らかにすることができた。 る」という分子機構でした(図1)(1)。正常状態ではエストロゲン受容 今回われわれが同定した WINAC は、転写のみならず複製にも関与す 体はエストロゲン結合時のみ活性化するのですが、ダイオキシン依存的 る多機能複合体であった。今後、この複合体のもつ生体内高次機能は興 なダイオキシン受容体との複合体形成が起こると、エストロゲン未結合 味深いテーマであり、遺伝子欠損マウスなどを用いた知見などによって 状態のエストロゲン受容体が活性化してしまいます。このような受容体 次第に明らかにされていくものと考えられる。 の「乗っ取り」が、化学的特性も標的受容体も異なるダイオキシンが正 常なエストロゲンシグナル伝達を撹乱する作用の正体であると考えられ ます(2)。さらにマウスにおいて、ダイオキシン(3MC)はダイオキシン受 容体およびエストロゲン受容体を介し、エストロゲン様の子宮細胞増殖 を誘導しました。子宮内膜症などのエストロゲン依存的な疾患とダイオ キシンとの関連が動物実験等で指摘されていることを考えると興味深い 結果と言えます。 本研究では、多岐に渡る化学物質の健康被害に対して分子生物学的 方法論を導入することによって、標的となる分子機構の一つを明らかに しました。将来的な創薬や環境政策に必要な基礎的知見となると考えて います。 1. Yanagisawa J., et. al. Mol. Cell 9, 533-62 (2002) 1. Ohtake F., et al. Nature 423, 545-550 (2003) 2. Kitagawa H., et. al. MCB 22, 3698-706 (2002) 2. Brosens J. and Parker M. Nature 423, 487-488 (2003)
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