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日本医科大学医学会雑誌
第10巻 2014年4月 第 2 号
目 次
●
橘桜だより
千葉北総病院への思い
●
井上 哲夫
36
藤森 俊二 他
38
Beyond the Theory
益子 邦洋
41
循環器集中治療学40年
田中 啓治
48
糖と脂質代謝のはざまから学ぶ
及川 眞一
55
心臓に恋をして40年:“母校に心臓外科を”の道を歩んで
落 雅美
63
遺伝病の治療を目指して
島田 隆
68
私の脳卒中治療研究
片山 泰朗
75
皮膚と心のクロストーク
川名 誠司
82
本学内分泌外科学分野の確立に向けた新知見,新技術へのあくなき挑戦
清水 一雄
90
三品 雅洋
101
藤田 雅裕 他
106
長山美貴恵 他
111
儀我真理子
115
柳原 恵子 他
120
大塚 茂
121
Journal of Nippon Medical School Vol. 80, No. 5 Summary
123
Journal of Nippon Medical School Vol. 80, No. 6 Summary
124
グラビア
プロトンポンプ阻害薬は小腸の炎症を増強する
●
●
定年退職記念講演要旨
綜 説
脳の障害に対する可塑性と代償
●
原 著
マイトマイシンC併用線維柱帯切除術後の晩期合併症に対する有茎弁結膜被覆術の短期成績
●
症例報告
特発性肺線維症の急性増悪と肺結核とを同時発症した1例
●
基礎科学から医学・医療を見る
検定の考え方,独立性の検定
●
話 題
乳癌治療の昨今
●
関連施設だより
日本医科大学の名のもとに
●
JNMSのページ
―橘桜だより―
千葉北総病院への思い
井上哲夫
日本医科大学千葉北総病院 院長
日本医科大学千葉北総病院は,開院から 21 年目を迎えています.小職は日本医科大学を卒業後,付属病院にちょ
うど 20 年勤務したところで新設された千葉北総病院に異動しましたので,ついに当院での勤務のほうが長くなりま
した.一番の古ダヌキということもあってか,一昨年 4 月より 4 代目の院長を拝命し,1 期 2 年を経過いたしまし
た.徳川将軍でも 3 代目まではたいへんに有名ですが,4 代目となるとあまり知られておらず,小職の境遇とよく
似ているような気がしております.4 代将軍は家綱という人で,あまり行政能力にみるべきものはなく,ほぼ何で
も側近たちの言うなりで「左様せい様」と呼ばれたとのことであります.しかし,まず大過なく有力な 5 代目への
引き継ぎを果たしていますので,それだけに側近には政道に通じた有能な人材を擁していたようです.当院でもま
さに然りで,医師,看護師,事務職をはじめとした技術・技能職その他のコメディカルスタッフには優れた人材が
揃いました.そのお蔭もあって平成 25 年度においては,医療収入は開院以来の最高を記録し,収支においても 4 病
院中では唯一前年度実績,予算とも上回る結果を残すことができました.本年 1 月の開院 20 周年を迎えるにあた
り,当院では初となる節目の記念行事を挙行いたしました(写真).個人なら成人式を迎えるこの時期に,これまで
の沿革や実績を振り返り,さらなる発展を目指すための良い機会にしようという職員全体の機運も高まった結果で
もありました.なかでも診療活動の中心をなす医師の活躍には目覚ましいものがあります.これまで院長や診療部
長として当院に在職中に医学部教授であった方は現職の方も含め,実に 19 名にも達し,後に講座主任(現大学院教
授)になられた方も 6 名輩出しています.こうした方々の熱心なご指導もあって,徐々に当院のもつポテンシャル
を評価していただける診療科が増え,有能で意欲あるスタッフの配属が実現し,またそれぞれの帰属意識も高まっ
てきているのが大きな要因だと思っています.医師一人あたりの医療収入は 4 病院中のトップを走り続けており,
まだまだ増員による収入増加の余地があるように思えます.しかし,診療業務の多忙さによる教育や研究に割くた
めの時間の少ないのが喫緊の懸案事項としてあり,負担軽減策が管理者としてのこれからの重要な務めと考えてお
ります.本年度の診療報酬改定の厳しさに対応して,高度急性期病院を目指したさらなる機能の強化,地域連携の
推進とともに,大学病院としての使命を自覚した病院運営を優秀な「北総大好き人間」の揃ったスタッフとともに
図っていきたいと思っております.
本学校歌の 3 番の歌詞「西に千古の白き富士,北筑波嶺の影清し…」はもともと「駄陵の森(千駄木)」を歌った
ものでありますが,今やここ北総からの風景に相応しい感じがしております.今年度,新病院がスタートする千駄
木の本院は都会型の典型としての発展が望まれますが,一方で,千葉北総病院のもつ独特な味も本学のブランドと
しての一角を担っていきたいものであります.
緑あふれる広大な敷地にはヤギの親子が捨てられていたこともあり,
ドクターヘリが白鳥の飛来地近くを飛んで皆逃げてしまったためにクレームがきたり,昨年の台風では土砂崩れ,
本年の大雪では駐車場の雪かきで苦労したことなど都会では経験できないことも起こります.全体を見渡せば,20
年経ってやっとここまで来ることができたこと,20 年経てばこうなるのも仕方がないことが相半ばする現状です
が,新たな 20 年に向け「継続と改革」を旗印に努力を続けて参りたいと存じます.医学会員諸兄におかれまして
は,改めまして当院に対し忌憚のないご指導・ご鞭撻そしてご支援を賜りますよう伏してお願い申し上げる次第で
あります.
(受付:2014 年 3 月 14 日)
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日医大医会誌 2014; 10(2)
―グラビア―
プロトンポンプ阻害薬は小腸の炎症を増強する
藤森
俊二
坂本
長逸
日本医科大学消化器内科学
Proton-pump inhibitor increase small intestinal Inflammation
Shunji Fujimori and Choitsu Sakamoto
Department of Gastroenterology, Graduate School of Medicine, Nippon Medical School
図1
人の消化管内には多くの細菌が存在している.小腸にお
いては,胃液の塩酸による殺菌作用で口側の小腸内の細菌
mL 程度とされているが,小腸を進むと
は少なく 103∼104!
低酸素環境により嫌気性菌を中心に増加し,回腸末端では
mL となる 1.小腸は栄養を吸収するために腸管
107∼108!
粘膜表層は絨毛・微絨毛で表面積を拡大して腸管内容に接
し,小腸上皮は腸管内細菌の影響を受けやすい.近年,非
ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とともにプロトンポン
プ阻害薬(PPI)をラットに投与すると,PPI を併用投与
した場合のほうが,NSAID 単独投与の場合よりも小腸粘
膜傷害が強いことが認められた 2.この報告では,PPI は
強力な酸抑制作用で胃の殺菌能を低下させ,それが腸内細
菌叢の変化をもたらし,変化した腸内細菌叢が NSAID の
小腸病変を増悪させることを証明している.図 1 は小腸に
傷害を認めなかった対象が,PPI を 2 週間服用したところ
出現した小腸粘膜欠損のカプセル内視鏡画像である.ま
た,図 2 を最も大きな病変として 6 個の小腸粘膜欠損を有
していた無症状者が,PPI を 2 週間服用したところ,図 3
を最大病変とした小腸粘膜欠損が 12 個に増加していた.
この病変は PPI の中止により改善が認められている 3.PPI
は胃の潰瘍性病変については胃内低酸化により治癒させる
が,同時におこる殺菌能の低下は小腸の傷害をもたらすよ
うであり,近年注目されている.
図1 PPI(Omeprazole)服用後に小腸に出現した粘膜欠
損のカプセル内視鏡像
連絡先:藤森俊二 〒113―8603 東京都文京区千駄木 1―1―5
E-mail: [email protected]
Journal Website(http:!
!
www.nms.ac.jp!
jmanms!
)
日本医科大学消化器内科学
日医大医会誌 2014; 10(2)
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図2
図3
図2
PPI 服用前に認められた最大の粘膜欠損
文 献
1.Hao WL, Lee YK: Microflora of the gastrointestinal
tract: a review. Methods Mol Biol 2004; 268: 491―502.
2.Wallace JL, Syer S, Denou E, et al.: Proton Pump
Inhibitors
Exacerbate
NSAID-Induced
Small
Intestinal
Injury
by
Inducing
Dysbiosis.
図3 PPI(Omeprazole)服用後に増加した粘膜欠損の最
大の病変
Gastroenterology 2011; 141: 1314―1322.
3.Fujimori S, Takahashi Y, Tatsuguchi A, et al.:
Omeprazole administration increased small intestinal
mucosal injury in two of six disease free cases
evaluated
by
capsule
endoscopy.
Digestive
Endoscopy E-pub ahead of print.
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日医大医会誌 2014; 10
(2)
平成 25 年度定年退職教授記念講演会
講演要旨,主たる研究業績
平成 26 年 3 月 1 日(土)午後 1 時~午後 6 時
会場:高千穂の間(東京ガーデンパレス 2 階)
主催:日本医科大学医学会
1.Beyond the Theory
教 授 救急医学
益子 邦洋
2.循環器集中治療学四十年
教 授 集中治療室(循環器内科学)
田中 啓治
3.糖と脂質代謝のはざまから学ぶ
大学院教授代行 内分泌糖尿病代謝内科学
及川 眞一
4.心臓に恋をして 40 年
“母校に心臓外科を”の道を歩んで
大学院教授代行 心臓血管外科学
落 雅美
5.遺伝病の治療を目指して
大 学 院 教 授 分子遺伝医学
島田 隆
6.私の脳卒中治療研究
大 学 院 教 授 神経内科学
片山 泰朗
7.皮膚と心のクロストーク
大 学 院 教 授 皮膚粘膜病態学
川名 誠司
8.本学内分泌外科学分野の確立に向けた新知見,
新技術へのあくなき挑戦
大 学 院 教 授 内分泌外科学
清水 一雄
益子 邦洋 教授
略 歴
1973 年 8 月 日本医科大学医学部卒業
1991 年 4 月 日本医科大学救急医学科 助教授
1973 年 10 月‌第 56 回医師国家試験合格 医師免許
1995 年 7 月 ‌日本医科大学付属病院 高度救命救急
取得
1973 年 12 月 日本医科大学 第三外科へ入局
1976 年 4 月 日本医科大学 胸部外科医員助手
1978 年 1 月 ‌日本医科大学付属病院 救命救急セン
ターへ出向
センター 部長
1997 年 9 月 ‌日本医科大学付属千葉北総病院 救命
救急部 部長
1999 年 5 月 ‌日本医科大学付属千葉北総病院 救命
救急センター長
1983 年 5 月 日本医科大学救急医学科へ配置換
1999 年 12 月 学校法人日本医科大学 理事
1983 年 6 月 ‌日本医科大学救命救急センター 医局
2004 年 4 月 日本医科大学救急医学講座 教授
長
2004 年 8 月 札幌医科大学救急医学 非常勤講師
1983 年 7 月 医学博士(日本医科大学)
2013 年 4 月 宮崎大学医学部 医学臨床教授
1984 年 10 月 日本医科大学救急医学科 講師
2013 年 4 月 日本医科大学千葉北総病院 副院長
1985 年 8 月 ‌米国ミネソタ州ロチェスター市メーヨ
2014 年 3 月 日本医科大学定年退職
クリニックへ留学
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日医大医会誌 2014; 10
(2)
学会役員等
(理事等)
日本外傷学会:編集委員会,用語委員会,臓器損傷分
日本 Acute Care Surgery 学会理事長,日本航空医療
類委員会,Trauma Registry 検討委員会,評議員選出
学会理事,日本外傷学会理事
委員会
(評議員)
日本熱傷学会:認定医制度準備委員会,会則改正委員
日本救急医学会,日本臨床救急医学会,日本外傷学会,
会
日本熱傷学会,日本臨床外科学会,日本腹部救急医学
日本臨床救急医学会:部会連絡委員会委員長,将来計
会,日本交通科学学会
画検討委員会副委員長,地方会検討委員会副委員長
(その他)
日本航空医療学会:東日本大震災におけるドクターヘ
日本救急医学会:編集委員長,病院前救護における外
リの調査検討委員会委員長,ドクターヘリ委員会委員
傷教育のあり方検討会委員長,救急医学領域医師研修
長
委員会,診療の質評価指標に関する委員会,航空機に
日本輸血・細胞治療学会:製剤検討委員会,外科系輸
よる救急搬送検討委員会,専門医認定委員会,メディ
血 療 法 委 員 会, 大 量 輸 血 プ ロ ト コ ー ル 検 討 タス ク
カルコントロール体制検討委員会,将来計画委員会,
フォース
JATEC コース企画運営委員会,AAST 合同学会準備
日本救急医学会関東地方会:常任幹事
委員会
Trauma:Editorial Board
社会的職歴
認定 NPO 法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)
進安全自動車(ASV)推進検討会委員,千葉県社会保
理事,日本外傷診療研究機構理事,JPTEC 協議会理
険診療報酬請求書審査委員会委員,千葉県医師会救
事,日本救急医療財団研修教育事業委員会委員長,救
急・災害医療対策委員会委員長,自動車技術会 イン
急救命士国家試験委員会幹事,厚生労働省 救急医療
パクトバイオメカニクス専門委員会委員,公益財団法
用ヘリコプターの導入促進に係る諸課題に関する検討
人交通事故総合分析センター調査研究審議委員,千葉
会委員,厚生労働省 薬事・食品衛生審議会専門委員,
県警察本部 交通事故調査委員会委員,印旛地域救急
消防庁「救命効果検証委員会」委員,国土交通省 自
業務メディカルコントロール協議会会長,宇宙航空研
動車アセスメント評価検討会委員,第 7 次~第 9 次中
究開発機構 人間を対象とする研究開発倫理審査委員
央交通安全対策会議専門委員,国土交通省 第 5 期先
会委員,千葉県防災支援ネットワーク検討会議委員
主催学会
第 55 回日本救急医学会関東地方会(2005 年)
第 1 回 Acute Care Surgery 研究会(2009 年)
第 14 回日本航空医療学会総会(2007 年)
第 24 回日本外傷学会総会・学術集会(2010 年)
第 3 回日本病院前救急診療学会(2008 年)
第 18 回エンドトキシン血症救命治療研究会(2014 年)
受 賞
消防庁長官表彰状,救急功労者(2007 年 9 月)
千葉県知事表彰,救急医療充実強化への貢献(2008 年
千葉県医師会長表彰:救急災害医療対策委員 10 年
9 月)
(2008 年 3 月)
厚生労働大臣表彰,救急医療功労者(2009 年 9 月)
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記 念 講 演 会 要 旨
Beyond the Theory
益子 邦洋
救急医学
はじめに
突然の心臓発作や脳卒中に見舞われた患者,あるいは交通事故や労働災害などにより瀕死のケガを負った重症外
傷患者では,尊い命が 1 分ごとに削られており,適切な時間内に適切な医療を受けなければ死の転帰を取る.これ
ら重症患者の生死を分ける最大の因子は“時間”である.それゆえ,
「救急医療は時間との闘い」とのキャッチフ
レーズがしばしば用いられる.胸部外科から救命救急センターへ出向した 1978 年 1 月から今日までの 35 年間,私
はまさに時間と闘い,限界に挑んできた.そこで本講演では,日本医科大学救急医学教室のモットーとも言える
“Beyond the Theory”について述べてみたい.
“ヘリコプター救急”から“病院前救急医療”へ
わが国におけるヘリコプター救急の試行的事業は 1981 年から始まった.以後,様々な形の実用化研究が行われ,
ヘリコプター救急が重症患者の予後改善に資するとの報告が相次いだ.しかしながら,わが国においてヘリコプター
を救急医療に活用しようとする気運は全く盛り上がりを欠いていた.その最大の要因は,救急医療に携わる医師,
救急隊員など,多くの救急医療関係者が,
「ヘリコプターは,陸続きでない島嶼の患者搬送には有用であるものの,
狭い国土に数多くの医療機関が存在するわが国においては,無用の長物である.」と考えていたことによる.私がヘ
リコプター救急の効果を体感したのは,1985 年に米国ミネソタ州ロチェスター市のメーヨクリニックへ留学してい
たときのことである.ミネソタ州のレベル I 外傷センターであるセントメリー病院には,Mayo One という名の救
急ヘリコプターが屋上ヘリポートに常駐していて,昼夜を問わず重症患者を半径 100 km 圏内から搬送していた.
瀕死の重傷外傷患者が迅速なヘリ搬送と的確な外科治療により劇的に救命される場面にしばしば遭遇し,その威力
を肌で感じた.1997 年に千葉北総病院へ赴任したとき,その周辺環境がメーヨクリニックと酷似していることに気
付き,ここでヘリコプターを救急医療に活用すれば,数多くの命を救うことができると確信した.折しも,学校法
人日本医科大学では,産学共同研究や共同事業を企画運営する組織として北総メディカルコンプレックス(HMC)
研究会を立ち上げていたことから,当時,東京災害医療センターの副院長をしておられた辺見 弘先生とともに
NPO 法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)を設立した.1995 年に発生した阪神・淡路大震災において,ヘ
リコプターが災害初動期の救急医療にほとんど活用されなかったことへの反省や,防ぎ得た外傷死(Preventable
Trauma Death;PTD)を削減するためにはヘリコプターを活用して医師が迅速な現場医療を提供する必要がある
との認識が救急医療関係者の中で高まった結果,HEM-Net の地道な活動は 2001 年に厚生労働省事業としてのドク
ターヘリ事業に結実した.ドクターヘリ元年の 2001 年から事業を開始した千葉県ドクターヘリ(後に北総ドクター
ヘリ)は,救急現場への迅速な医師派遣により,人命救助や後遺症軽減に大きな効果を挙げた.言い換えれば,救
急医が現場で提供する病院前救急診療は,
それまでの救急医療では決して救うことができない重症患者の命を救う,
“攻めの救急医療”であった.しかしながら,わが国のドクターヘリ事業は日中のみの運航であり,悪天候の際には
出動することができない.したがって,夜間や悪天候時にもドクターヘリに代わって病院前救急医療を提供する仕
組み,すなわち“二の矢”が必要であると考え,ラピッドカーを導入した.さて,すべてのドクターヘリ基地病院
にドクターカーを配備したとして,重症患者であれば,いつでも,どこでも,誰でも事故や急病に見舞われてから
15 分以内に高度な医療処置を受けることは可能になるであろうか.残念ながら,答えは否である.救急車の緊急走
行速度は時速 40~50 km であるから,ドクターカーの 15 分圏内は半径約 10 km でしかない.したがって,基地病
院から半径 50 km はヘリでは 15 分圏内であるが,ドクターカーでは 1~1.5 時間圏内と考えなくてはならない.こ
の問題を解決するために,私が会長を務める印旛地域メディカルコントロール(MC)協議会では,救急救命士を
活用してプレホスピタルケアの質を確保する取り組みを始めた.世界的に有名なシアトル市消防局のパラメディッ
44
日医大医会誌 2014; 10
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クは,高度な医療処置を医師の事前指示で,または無線などを介した直接指示で行うことができる.そこで当 MC
協議会では,2008 年に構造改革特区として「救急救命士による心肺機能停止前の静脈路確保と輸液」を含む 4 件の
特区申請を行った.これに対して救急医の中には「そんな危険なことは医師でないものに許すことができない.
」
,
「万一,患者が不利益を被ったら誰が責任を取るのか?」などと声高に叫ぶものがおり,厚生労働省も特区として認
めることはできないと回答してきた.しかしながら,救急車の代替手段として,時間との闘いに勝つためにドクター
ヘリを活用することと,医師の代替手段として救急救命士を現場で活用することとは同一線上にあり,
「二の矢を継
ぐ」体制を確保することにほかならない.そこで救急救命士の処置拡大に関する特区申請を粘り強く行った結果,
この取り組みは「救急救命士の処置拡大に関する実証研究」の形で結実した.2014 年度からは救急救命士による心
肺停止前の輸液が解禁されることとなり,医師と救急救命士がともに手を携えて病院前救急医療をになう体制が確
立する.
“医学的取り組み”から“医工連携の取り組み”へ
2012 年におけるわが国の交通事故による 24 時間死者数は 4,411 人で前年に比べて 201 人(4.4%)減少したが,毎
年 4,000 名を超える国民の尊い命が交通事故で奪われている現実は看過できない.国は「2015 年までに 24 時間交通
事故死者数を 3,000 人以下とし,世界一安全な道路交通を実現する」という第 9 次交通安全基本計画を発表したが,
この目標を達成するためには,
「人,道,車,救助救急」の関係者がそれぞれ独自の取り組みを進めるだけでは不十
分であり,医工連携による救急救命体制を推進しなければならない.
事故自動通報システム(Automatic Collision Notification;ACN)とは,自動車が,搭載しているエアバッグが
開くほどの衝撃を伴う交通事故に遭遇した場合,自動的に,全地球測位システム(Global Positioning System;GPS)
により感知された事故現場の位置情報とともに,エアバッグ展開情報を所定のコールセンターに発信するシステム
を言い,このシステムを活用することにより,事故に関する情報伝達を迅速化し,救助・救急医療を迅速に起動す
ることが可能になり,救命率の向上に寄与することが期待されていた.しかしながら,わが国でもすでに,一部の
車には ACN の装備が実用化しているものの,普及にはほど遠いと言わざるを得ない状況にあった.その理由とし
て,対応車種が高級車に限定されている,各自動車メーカー共通のシステムになっていない,加入者数が免許保有
者数の約 0.4%ときわめて少ない,コールセンターに医療関係者が不在で提供される医療の質が適切であるか否かが
評価されていない,などの課題が指摘されていた.AACN(Advanced ACN)とは,この ACN システムに改良を
加え,車両のエアバッグシステム内に搭載されているイベントデータレコーダ(EDR)のデータを活用し,衝突事
故の方向,衝突時の速度変化(デルタ V)
,シートベルト装着の有無などの情報から乗員のケガの状況を推定(傷害
予測)するとともに,消防や警察にその結果を通報するシステムのことを言う.私は 2010 年から AACN が起動す
るドクターヘリシステムについての研究を進めてきたが,その一環として,実車ならびにドクターヘリ実機を用い
て,交通事故発生から AACN を通じてドクターヘリを起動し,現場で医師が治療を開始するまでの時間短縮効果
を検証するための衝突実験を行った.その結果,基地病院から事故現場までの直線距離は 40 km であったが,事故
発生から 21 分後に搭乗医師が現場で治療を開始できることを明らかにした.交通事故や労働災害などにより,生命
に危険が及ぶような大ケガをした負傷者を救命するためには,損傷の発生から 1 時間以内に根本的治療を開始する
必要があり,この 1 時間は“Golden Hour”と呼ばれる.この目標を達成するためには,医師が現場から治療を開
始し,根本的治療が可能な医療機関へ迅速に搬送することが効果的である.しかしながら,ドクターヘリやドクター
カーによる医師現場派遣システムは,消防が事故を覚知(119 番通報を受信)した後でなければその起動が行われ
ることはない.現在の統計では,交通事故発生から 119 番通報(覚知)までの時間は約 5 分,119 番通報からドク
ターヘリ出動要請までが約 15 分,出動要請から医師が現場で治療を開始するまでが 18 分かかっており,これを合
計すると事故発生から医師の治療開始までに 38 分を要している.今回の実証実験では,AACN を活用することに
より事故発生から医師の治療開始までの時間は 21 分であったので,従前の平均所要時間 38 分に比べ約 17 分の時間
短縮効果が見られた.交通事故死者数を削減して後遺症を軽減するためには,事故の早期発見と救助・救急体制の
迅速な起動,現場からの適切な医療提供,救命救急センターなどにおける根本的治療の実施が必須であり,早期の
救命救急医療着手を可能とした今回の実験成果は,わが国のドクターヘリ事業にとって,画期的な 1 頁を刻んだ.
本システムを実用化するためには,大衆車や軽自動車にも搭載可能な AACN システムの開発,起動基準(ドクター
ヘリ要請基準)の策定とアルゴリズムや発信情報の標準化,AACN のコールセンターにおけるメディカルコント
日医大医会誌 2014; 10(2)
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ロール体制の確保,ドクターヘリの全国配備が鍵である.また,AACN システムを開発するためには,車両発信情
報から事故当事者の傷害程度を予測するアルゴリズムが必要となる.現在,よく知られる傷害予測アルゴリズムと
して米国の URGENCY があるが,これは米国の交通事故データをもとに開発されたものであり,体格が小さく高齢
者事故や軽乗用車事故が多いわが国の実情に照らして妥当なものとは言えない.傷害予測アルゴリズムの開発とと
もに,その妥当性を検証しつつ,傷害予測の精度・信頼性を向上させていくことが必要であり,そのためには,事
故時における車両情報(衝突時速度変化,衝突方向,ベルト着用有無,多重衝突有無,ほか)と当事者傷害程度を
詳細に記録した事故データを継続的に蓄積していく仕組みが必要であり,医学と工学が連携した交通事故調査体制
の構築が喫緊の課題である.米国では Crash Injury Research and Engineering Network(CIREN),ドイツではハ
ノーバー医科大学で交通事故調査体制が確立している.一方,わが国では交通事故総合分析センター(ITARDA)
による工学調査が行われているものの,交通事故と人身傷害の研究を行うためのデータが公表されていない.この
課題を解決するため,当センターでは日本大学工学部と協働して交通事故予防研究センターを立ち上げ,交通事故
事例データベースを公開するとともに,多くの研究成果を国内外に発信している.
“勇気ある撤退”から“Damage Control Surgery”へ
1980 年代までの体幹外傷に対する外科治療のセオリーは,完全な止血とすべての損傷の修復であった.外傷に関
する内外の教科書には,
「外科医たるもの,決して手術から逃げてはならない.いかなる困難があろうとも,手術を
完遂するために最善を尽くさねばならない.
」と記されていた.日本医科大学救命救急センターでもその教えに従
い,瀕死の体幹外傷患者に対して積極的に救急室開胸(Emergency Room Thoracotomy;ERT)や救急室開腹
(Emergency Room Laparotomy;ERL)を行っていた.重度肝損傷や血管損傷に対して,輸血が底をつくまで徹底
的に手術を続行した結果,高度な貧血や難治性アシドーシスが出現し,目に見える損傷は修復されたにもかかわら
ず,低体温やアシドーシスの遷延から希釈性凝固障害や不整脈を来たし,患者が死亡に至るケースがしばしば見ら
れた.すなわち,
「Injury repaired, but patient expired!」である.これらの苦い経験を通して,初回手術では止血
を主体とした簡略化手術に止め,その後いったん撤退して体制を立て直し,再び手術にチャレンジする戦略を採用
し,これをわれわれは“勇気ある撤退”と称した.この戦術転換は功を奏し,従来の手術法では救命できなかった
劇的救命例を誕生させるようになった.時を同じくして米国でも重度外傷の外科治療に様々な模索が続けられてい
た.その結果,初回手術は止血中心の簡略手術(Damage Control Surgery;DCS)に止め,いったん患者を ICU
へ収容して呼吸循環管理を行い,低体温,アシドーシス,凝固障害から成る Deadly triad を補正した後,計画的に
再手術を行う Damage Control 戦略が 1993 年に登場し,この考え方はその後広く世界中に普及した.当センターの
研究で,Deadly triad が揃ってから DCS を決断するのでは良好な転帰が得られなかったことから,私たちは収縮期
血圧<90 mmHg,深部体温<35.5℃,base excess(BE) <-7.5 mmol/L の 3 項目が満たされる前の DCS 決断を推
奨している.
おわりに
救急医学・救急医療には,医科学としての側面と,社会科学としての側面がある.どちらも重要であり,しばし
ば車の両輪に例えられる.救急患者の命を救い後遺症を軽減しようとすれば,医科学の研究はもとより,システム
としての救急医療の変革に取り組むことを余儀なくされる.システムの変革はしばしば痛みを伴い,抵抗勢力の壁
と闘うことも時には必要になる.多くの場合,医師だけでは問題の解決が困難であり,医師以外の様々な人たちの
知恵をお借りし,ともに手を携えて改革に挑む必要がある.次世代の救急医療を担う諸君には,医学研究をより一
層深化させ,多機関との協働を促進して救急医療の質向上に努めて頂きたいと切に願っている.
46
日医大医会誌 2014; 10
(2)
主たる研究業績 英 文
  1.‌The structure and activity of the critical care medical
(CCM)
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  2.Blunt traumatic rupture of the heart: an experience in Tokyo
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  3.‌Circulating Interleukin-10 in Patient with Severe Burns―A
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Burn Injuries
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22
21―29
  4.Organic solvent poisoning
Asian Med J
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160―167
  5.‌New diagnostic peritoneal lavage criteria for diagnosis of
intestinal injury
J Trauma
1998
44
991―999
  6.‌Trimethoprim-sulfamethoxazole for the prevention of
methicillin-resistant Staphylococcus aureus pneumonia in
severely burned patients
J Trauma
1998
45
383―387
  7.‌Biological monitoring of metabolites of sarin and its
by-products in human urine samples
J Toxicol Sci
1998
23
250―254
  8.Trauma systems/centers A Japanese perspective
Trauma
1999
1
285―289
  9.How best to utilize triage tags
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43
249―253
10.International airport and emergency medical care
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69
185―191
11.‌An outcome study of out-of-hospital cardiac arrest using the
Utstein template―a Japanese experience
Resuscitation
2002
55
241―246
12.‌Detection of circulating superantigens in an intensive care
unit population
Int J Infect Dis
2004
8
292―298
13.‌Analysis of antimicrobial drug resistance of Staphylococcus
aureus strains by WHONET 5: microbiology laboratory
database software
J Nippon Med Sch
2004
71
345―351
14.‌Early access to patients with life-threatening cardiovascular
disease by an air ambulance service
J Nippon Med Sch
2004
71
352―356
15.‌Trauma systems in Japan: history, present status and future
perspectives
J Nippon Med Sch
2005
72
194―202
16.Effectiveness of a“doctor-helicopter”system in Japan
Isr Med Assoc J
2006
8
8―11
17.‌Use of an air ambulance system improves time to treatment
of patients with acute myocardial infarction
Intern Med
2006
45
45―50
18.‌
‘Pipe organ’-like retroperitoneal drainage after Tile’s C open
pelvic fracture
J Trauma
2006
60 1347―1349
19.‌Gastric pneumatosis and portal venous gas in superior
mesenteric artery syndrome
Indian J
Gastroenterol
2006
25
263―267
20.‌Effect of direct hemoperfusion with a polymyxin B
immobilized fiber column on high mobility group box-1
(HMGB-1)in severe septic shock; report of a case
ASAIO J
2006
52
37―39
21.‌Evolving Physician-Staffed Helicopter Emergency Medical
Services System(Doctor-Heli)in Japan
Prehospital and
Disaster Medicine
2007
22
36―38
22.‌Relationship between effect of polymyxin B-immobilized fiber
and high-mobility group box-1 protein in septic shock
patients
ASAIO J
2007
53
324―328
23.‌Clinical responses and improvement of some laboratory
parameters following polymyxin B-immobilized fiber
treatment in septic shock
ASAIO J
2007
53
646―650
24.‌Comparison between Helicopter Emergency Medical Service
and Ambulance Transportation to Rescue People Injured by
Traffic Crashes in Japan
Prehospital and
Disaster Medicine
2007
22
31―33
25.‌Textbook of Basic First Aid Course(Japanese Red Cross
Society)
NISSEKI SERVICE
CENTER
2007
26.‌Effectiveness of continuous hemodiafiltration using a
polymethylmethacrylate membrane hemofilter after
polymyxin B-immobilized fiber column therapy of septic
shock
ASAIO J
2008
54
129―132
27.‌Relationship between treatment resistance to hemoperfusion
using a polymyxin B-immobilized fiber column and oxidative
stress
ASAIO J
2008
54
412―415
1―60
日医大医会誌 2014; 10(2)
47
28.‌Severity of acute myocardial infarction in patients
transported by air ambulance
Jpn J Aeromed Serv
2008
921―926
29.A case of abdominal aortic injury caused by a traffic accident
J Nippon Med Sch
2008
75
337―339
30.‌Revascularization by Right Gastroepiploic Arterial Bypass in
a Patient with Superior Mesenteric Arterial Thrombosis
Jpn J Vascular Surg
2008
17
59―61
31.‌Role of resuscitative emergency field thoracotomy in the
Japanese helicopter emergency medical service system
Resuscitation
2009
80 1270―1274
32.‌A case of successful treatment of acute iliofemoral venous
thrombosis caused by giant myoma through combination of
simultaneous hysterectomy and thrombectomy
Ann Vasc Dis
2009
2
114―117
33.‌A new look at criteria for damage control surgery
J Nippon Med Sch
2010
77
13―20
34.‌IL-17 is elevated in cerebrospinal fluids in bacterial meningitis
in children
Cytokine
2010
51
101―106
35.‌IL-8 in Cerebrospinal Fluid from Children with Acute
Encephalopathy is Higher than in that from Children with
Febrile Seizure
Scandinavian
Journal of
Immunology
2010
71
447―451
36.‌
‘Pipe-organ’-like retroperitoneal drainage in severe
necrotizing pancreatitis
Indian J
Gastroenterol
2010
29
34―36
37.‌Effectiveness of human atrial natriuretic peptide
supplementation in pulmonary edema patients using the
pulse contour cardiac output system
Yonsei Med J
2010
51
354―359
38.‌Effectiveness of endotoxin scattering photometry for
determining the efficacy of polymyxin B-immobilized fiber
treatment in septic shock: report of a case
J Nippon Med Sch
2010
77
119―122
39.‌A case of spontaneous rupture of nonaneurysmal left iliac
artery due to penetrating atherosclerotic ulcer
J Nippon Med Sch
2010
77
123―125
40.‌Effectiveness of early start of direct hemoperfusion with
polymyxin B-immobilized fiber columns judging from
stabilization in circulatory dynamics in surgical treatment
patients
Indian J Crit Care
Med
2010
14
35―39
41.‌Systemic inflammatory response syndrome score at
admission predicts injury severity, organ damage and serum
neutrophil elastase production in trauma patients
J Nippon Med Sch
2010
77
138―144
42.‌Surgical venous thrombectomy for Japanese patients with
acute deep vein thrombosis: a review of 5 years’experience
J Nippon Med Sch
2010
77
155―159
43.A case of commotio cordis caused by steering wheel injury
J Nippon Med Sch
2010
77
218―220
44.‌Enhanced expression of cytokines/chemokines in
cerebrospinal fluids in mumps meningitis in children
Pediatr Int
2011
53
143―146
45.‌Selection of acute blood purification therapy according to
severity score and blood lactic acid value in patients with
septic shock
Indian J Crit Care
Med
2010
14
175―179
46.‌High mobility group box 1 in cerebrospinal fluid from several
neurological diseases at early time points
Int J Neurosci
2011
121
480―484
47.‌Severity of cardiovascular disease patients transported by air
ambulance
Air Med J
2011
30
328―332
48.‌Morphological evaluation of areas of damage in blunt cardiac
injury and investigation of traffic accident research
Gen Thorac
Cardiovasc
Surg
2012
60
31―35
49.‌Methamphetamine and amphetamine concentrations in
survivors of body-packer syndrome in Japan
Forensic Sci Int
2013
227
45―47
50.‌Realising the potential; Challenges and opportunities for
HEMS in Japan
AirRescue Magazine
2013
3
124―126
51.‌Characteristics of patients with cardiac arrest caused by
coronary vasospasm
Circ J
2013
77
673―678
52.‌Lessons Learned from the Aeromedical Disaster Relief
Activities Following the Great East Japan Earthquake
Prehosp Disaster
Med
2013
28
166―169
53.‌Studies on therapeutic effects and pathological features of an
antithrombin preparation in septic disseminated
intravascular coagulation patients
Yonsei Med J
2013
54
686―689
54.‌Development of an educational program for the helicopter
emergency medical services in Japan
Air Med J
2013
32
84―87
55.‌A randomized, controlled, multicenter trial of the effects of
antithrombin on disseminated intravascular coagulation in
patients with sepsis
Critical Care
2013
17
R297
田中 啓治 教授
略 歴
1973 年 8 月 日本医科大学医学部卒業
1993 年 10 月 日本医科大学第一内科 助教授
1974 年 12 月 日本医科大学第一内科 研究生
1976 年 7 月 ‌日本医科大学付属病院集中治療室 医
員
部長
1999 年 12 月 ‌日本医科大学付属病院集中治療室 部
1978 年 9 月 山形県東根市北村山公立病院勤務
長
1980 年 4 月‌日本医科大学付属病院集中治療室 医
局長
2004 年 4 月 日本医科大学第一内科 教授
2013 年 7 月 ‌日本医科大学付属病院心臓血管集中治
1987 年 5 月 医学博士(日本医科大学)
1989 年 4 月 日本医科大学第一内科 講師
‌日本医科大学千葉北総病院集中治療室 療科 部長
2014 年 3 月 日本医科大学定年退職
主な専門分野
集中治療学,循環器内科学
日本脈管学会 専門医
日本集中治療医学会 専門医
日本内科学会 認定医
日本循環器学会 専門医
日医大医会誌 2014; 10(2)
49
学会役員等
日本集中治療医学会 評議員 理事(2002~2007)
日本循環器学会関東甲信越地方会 評議員
専門医審査委員会委員長(2010)
日本心臓病学会 Fellow of Japanese College Cardiology
会則検討委員会委員長(2002~2007)
日本脈管学会 評議員
社会保険対策委員会委員
日本心不全学会 評議員
機関誌編集・用語委員会委員(2004~2010)
日本臨床生理学会 評議員
深部静脈血栓塞栓症予防ガイドライン作成委員会 日本モニター学会 評議員
班員
日本循環制御医学会 評議員 ほか
日本集中治療医学会関東甲信越地方会 評議員 幹事
日本循環器学会 代議員
国民健康保険診療報酬特別審査委員会委員(2010 年~)
心筋梗塞(ST 上昇型)の診療に関するガイドライ
社会保険診療報酬請求書特別審査員会委員(2012 年~)
ン 班員
心筋梗塞二次予防ガイドライン 改訂版 班員
循環器領域における末期医療へのガイドライン(提
言)班員
主催学会
第 17 回日本集中治療医学会関東甲信越地方会会長
(2008 年;東京)
第 38 回日本集中治療医学会学術集会会長(2011;横浜)
50
日医大医会誌 2014; 10
(2)
記 念 講 演 会 要 旨
循環器集中治療学 40 年
田中 啓治
集中治療室(循環器内科学)
1.はじまり
CCU は 1962 年 Day によって米国 Bethany 病院に創られたものが最初といわれる.わが国においても 1973 年頃
より先駆けとなる数施設が開設され,以来循環器救急の中核となってきた.
日本医科大学付属病院集中治療室(ICU・CCU)は,私が医師となった 1973 年に ICU4 床,CCU4 床の計 8 床で
始まり,私は 1976 年に配属された.日本医大が他大学に先んじて CCU を設立したのは故木村栄一学長の英断によ
る.麻酔科の故西邑信夫教授が初代室長で,大林完治二代目室長,高野照夫三代目室長(第 28 回日本集中治療医学
会学術集会会長)のあと,1993 年私が引き継いだ.1985 年には日本集中治療医学会認定研修施設として認可され,
1986 年に 17 床の集中治療室が新設され,現在に至る.
集中治療室において私は,同僚の麻酔科医には呼吸管理を,経鼻挿管は西邑教授の直々の手ほどきを受け,同僚
の心臓血管外科医には血管縫合,気管切開などの技術や術後管理を学んだ.ICU 症候群の第一人者として活躍され
た黒沢尚(精神科)教授にも大きな影響を受けた.このように他部門(特に麻酔科,心臓血管外科,救命救急,放
射線科,精神科)の医師の生の指導と積極的な協力を受けられたこと,最も急性期に患者に接し,その患者の行く
末を見守ることができたこと,多くの患者の死に臨み,多くの病理解剖に立ち会ったこと,などが大きな糧となっ
た.
私の最初の英論文は,木村教授に下書きを命じられた症例報告で1,その後循環器学の成書 Braunwald’s Heart
Disease に引用された.
2.初期の目的とその達成
急性心筋梗塞の最大死因であった心室細動(Vf)を,心電図モニタリングによって発見し,即座に直流通電によ
り治療することが初期の CCU の主たる役割であった.現在では再灌流療法(血栓溶解療法と経皮的冠動脈インター
ベンション;PCI9)の目覚ましい発展や,新しい抗不整脈薬の登場21,25,28,56,60 により,CCU 内での致死性不整脈5 の
出現は激減.その主戦場は院外に移り,救命士の誕生,AED の設置,プレホスピタルケア2,3 などの充実をもたらし
た.さらに急性期の低体温療法,IABP4,23,35,PCPS17,51,CHDF,NPPV26,29,57 の効果も大きく,ICD 植込みにもつな
がっている.また PCI の進歩は Vf とともに三大死因とされる,ポンプ不全(肺水腫や心原性ショック4,17)や機械
的損傷(心自由壁破裂14,15,47,50,心室中隔穿孔35,乳頭筋断裂)の頻度も明らかに減少させた.
難治性心不全においては,種々の血管拡張薬,強心薬,V2―受容体拮抗剤などに加え CRT や TAVI の登場は人
工心臓や心臓移植,遺伝子再生医療への選択肢を広げることになった.1980 年代の日本医大の集中治療の現場は宝
の山だった.一症例一症例ごとに新しい発見があり,多くの研究対象に遭遇し,多くの臨床治験の場となり,新薬
や治療診断機器の開発に貢献した.1980 年には高野先生が米国よりニトログリセリン軟膏31,37 を持ち帰り,これが
硝酸イソソルビド静注薬32,40 とともにわが国における血管拡張療法の先鞭を切ることとなった.本剤は日本医大集中
治療室を中心に第二,三相臨床試験が行われ,これに引き続き,硝酸イソソルビドテープ33,34,ニトログリセンテー
プ41,の臨床治験,さらにはニトログリセンスプレー44 などが次々に世に送り出された.ドブタミンに続いて PDEIII
阻害薬(アムリノン38,42,43)やアデニル酸シクラーゼ活性薬が登場し,強心性血管拡張薬(inodilator)ブームが起き
た.この開発治験の流れはニコランジル27,54,やカルペリチド53 まで続く.これら薬剤の開発にはスワンガンツカテー
テルの存在がきわめて重要で,カテーテルが進化するとそれに連れ心不全治療も進歩した.一方,最新のコンピュー
タ内臓モニタリングシステムを寄贈していただき,このソフトの改良にも関係し,さらにはアイシン精機と共同で
国産 IABP(スーパーバルン48)の開発にも携わった.
1993 年から 1999 年までの 6 年間,INBA-HITEC PROJECT の名のもと千葉北総病院の集中治療室に勤務した.
日医大医会誌 2014; 10(2)
51
そこでは付属病院の集中治療室では経験できないような多くの症例に出会った.特に印象的だったのは,成田空港
を中心とした帰省医療である.なかでも,いわゆる“エコノミークラス症候群”の症例を多く収容し,わが国で初
めて肺動脈造影などによる詳細な検討を加え発表できた12,55.
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)は ICU における重大な合併症である.深部静脈血栓(Deep
Vein Thrombosis:DVT)に起因する肺血栓塞栓症(Pulmonary thromboembolism:PTE)は,時には突然死,呼
吸不全,右心不全を惹起し,病態をさらに増悪させるからである.その治療にはわが国においても,従来の血栓溶
解薬59,抗トロンビン薬,未分画ヘパリンに加え,低分子量ヘパリンや第 Xa 因子阻害薬などが臨床で用いられるよ
うになった.しかし,出血傾向を有することの多い ICU では一時的フィルター留置と選択的治療カテーテル治療を
優先する18,19.的確な VTE の予防や治療は ICU に収容された患者の死亡率を低下させる.それゆえ,ICU に収容さ
れるすべての患者は,この危険が明確に評価され,防止対策が講ぜられなければならない.予防ガイドライン作り
に参画し,さらにこれを改定中である.
動脈解離の死亡率は急性心筋梗塞よりも高く,病型がさまざまで22,手術可能な施設も限定されるため,循環器救
急のなかでも最も注意すべき疾患である20.私が第 55 回および 57 回日循総会パネルで急性大動脈解離の治療につい
て発表した際には,A 型解離は外科手術,B 型解離は内科的降圧療法が一般的であった7,8.しかし,血管内インター
ベンション治療の登場によって治療法は大きく変革した.治療は 1)虚血に陥った分枝血管に対するステント留置13,
2)カテーテル開窓術,3)ステントグラフトによるエントリ閉鎖術,これに 4)ハイブリッドで外科手術を加える.
急性期における手技は難しく,はじめは外部のエキスパートに来てもらい留置した.千葉北総病院では隈崎達夫常
務理事にお出でいただき初めてステントを留置した.しかし,現在では放射線科のステント専門医が絶えず待機し
ていただいており,また内科医でも研修を積んだものが出てきており,緊急治療が可能となった.
3.新たな問題点と将来の展望
日本医大集中治療室は,今までに約 25,000 例の重症患者,約 5,000 例の急性心筋梗塞を収容してきた.上述した
多くの新たな治療によって患者の死亡率は低下し,一見すると病気を克服したかに思える.しかし,不変と思われ
た IABP の効果に疑問が投げかけられ,Impella が注目を集め,必須であったスワンガンツカテーテルもカテーテ
ル血栓症や感染のため制限され,症例は一層高齢化,多臓器複雑化した.40 年間で救命できた症例の中から,フル
メタルジャケット化した冠ステント症例,心不全コントロール不良となった CRT-D 植え込み例,頻回に電気的焼
灼術を繰り返す症例,術後あるいは大動脈ステント後の再解離,重篤な呼吸不全をきたした慢性再発性肺血栓塞栓
症例など,数多くの症例がより重症化して戻ってきており,われわれはさらなる治療法を用意し対処しなければな
らない.このように時代が進むにつれ,患者も疾患も医療スタッフや医療環境も様変わりし,種々の疾患の複合に
より循環や呼吸機能が悪化し複数の主要臓器が急性の機能不全に陥り,さらに代謝,凝固,免疫系などの異常が加
わり悪循環にいたる.
より重篤化した症例は各部門の専門家が一堂に会して,集中的に診断,治療,看護しなければならない.近年で
は集中治療室が SCU,CCU,RCU,SICU,NICU,バーンセンター,移植センター,腎センターなど細分化する傾
向も見られる.一方では高齢化に伴う重症複合疾患の増加や,専門看護師,臨床工学技士,薬剤師,治験コーディ
ネーター,ICD,緊急検査システムや IVR センターなどの共有化が問題となっている.再度,
“集中治療センター”
として各部門が融合し昇華する必要性を感ずる.循環器専門医はもとより各部門のスペシャリストの集中治療への
積極的な参入が必要である.このような道を目指す医療スタッフが一人でも多く登場することを切に願う.
4.謝辞
私は日本医大卒業後早期に集中治療室に勤務し,その後ほぼ 40 年間集中治療室から異動することなく退職を迎え
た.このような我侭を通していただき,ご迷惑をおかけした皆々様に深謝いたします.多くの重症患者の急性期を
治療し,その行く末を見守ることは生きがいでした.多くの学生が BSL の際に集中治療に興味を持ち,研修を希望
し,研修を終えた医師が緊急患者を即座に連れてきたり,重症患者の相談にくることは大きな喜びでした.もちろ
ん失敗や後悔,懺悔すべきこともたくさん経験いたしました.しかし,失火や耐性菌騒動などありましたが,何と
かここに職務を全うすることができました.本当に有難うございました.
52
日医大医会誌 2014; 10
(2)
主たる研究業績 英文原著
  1.‌Supression of repeatedly occurring ventricular fibrillation
with Nifedipine in variant form of angina pectoris
Jpn Heart J
1977
18
736―742
  2.‌Prehospital care
(CCU network)
of acute myocardial infarction
and treatment of cardiogenic shock by intra-aortic balloon
pumping
Jpn Circ J
1981
45
623―635
  3.CCU network as primary care of acute myocardial infarction
Jpn Circ J
1984
  4.‌Effects of intraaortic balloon pumping on acute myocardial
infarction in 64 cases of cardiogenic shock, severe heart
failure and mechanical heart failure
Jpn Circ J
1984
48
  5.‌Ventricular tachycardia associated with acute myocardial
infarction―Features therapeutic effect and prognosis
Jpn Circ J
1985
  6.Sleep apnea in patients with acute myocardial infarction
Crit Care Med
1991
19
(7)
938―941
  7.‌Medical vs surgical treatment of acute aortic dissection in an
intensive care unit
Jpn Circ J
1991
55
(8)
815―820
  8.‌Medical therapy of acute aortic dissection―graphical
diagnosis and graphical therapy
Jpn Circ J
1993
57 1301―1304
(Suppl. 4)
  9.‌Cardiac rehabilitation in patients with acute myocardial
infarction who had coronary reperfusion therapy
Jpn Circ J
1994
58 1337―1339
(Suppl. 4)
10.Popliteal venous aneurysm with pulmonary embolism
Intern Med
1994
11.‌Ventriculoatrial block during atrioventricular nodal reentrant
tachycardia utilizing multiple retrograde pathways
J Cardiovasc
Electrophysiol
1998
(11) 1206―1213
9
12.‌Prognosis of economy class syndrome treated in intensive
care unit
Intern Med
2002
41
(2)
91―94
13.‌Spontaneous isolated dissection of the superior mesenteric
artery
Intern Med
2002
41
(9)
713―716
14.‌Clinical course, timing of rupture and relationship with
coronary recanalization therapy in 77 patients with
ventricular free wall rupture following acute myocardial
infarction
J Nippon Med Sch
2002
69
(5)
481―488
15.‌Clinicopathological characteristics of 10 patients with rupture
of both ventricular free wall and septum(double rupture)
after acute myocardial infarction
J Nippon Med Sch
2003
70
(1)
21―27
16.‌Assessment of left ventricular function using solid-state
gamma camera equipped with a highly-sensitive collimator
Ann Nucl Med
2003
17
(6)
517―520
17.‌Measurement of end-tidal carbon dioxide in patients with
cardiogenic shock treated using a percutaneous
cardiopulmonary assist system
J Nippon Med Sch
2004
71
(3)
160―166
18.‌H y b r i d t r e a t m e n t o f a c u t e m a s s i v e p u l m o n a r y
thromboembolism: mechanical fragmentation with a modified
rotating pigtail catheter, local fibrinolytic therapy, and clot
aspiration followed by systemic fibrinolytic therapy
AJR Am J
Roentgenol
2004
183
(3)
589―595
19.‌Differences in the clinical course of acute massive and
submassive pulmonary embolism
Circ J
2004
68
(11)
988―992
20.‌A rapid bedside D-dimer assay(cardiac D-dimer)for
screening of clinically suspected acute aortic dissection
Circ J
2005
69
(4)
397―403
21.‌Enhancing electrical cardioversion and preventing immediate
reinitiation of hemodynamically deleterious atrial fibrillation
with class III drug pretreatment
J Cardiovasc
Electrophysiol
2005
16
(7)
740―747
22.‌Aortic dissection with pseudo-aortic regurgitation and
transient myocardial ischemia―a case report
Angiology
2005
56
(6)
781―784
23.‌Initial experiences of removal of intra-aortic balloon pumps
with the Angio-Seal
J Invasive Cardiol
2006
18
(3)
130―132
24.‌Recurrent prosthetic valve endocarditis caused by
Staphylococcus aureus colonizing skin lesions in severe
atopic dermatitis
Intern Med
2007
46
(9)
571―573
25.‌Effect of nifekalant for acute conversion of atrial flutter: the
possible termination mechanism of typical atrial flutter
Pacing Clin
Electrophysiol
2007
48
(3)
49
33
(12)
690―697
276―287
362―369
779―782
30
(10) 1242―1253
日医大医会誌 2014; 10(2)
53
26.‌Factors predicting successful noninvasive ventilation in acute
lung injury
J Anesth
2008
22
(3)
201―206
27.‌Acute effects of intravenous nicorandil on hemodynamics in
patients hospitalized with acute decompensated heart failure
J Cardiol
2010
56
(3)
291―299
28.‌Nifekalant versus lidocaine for in-hospital shock-resistant
ventricular fibrillation or tachycardia
Resuscitation
2010
81
(1)
47―52
29.‌Aggressive treatment with noninvasive ventilation for mild
acute hypoxemic respiratory failure after cardiovascular
surgery: retrospective observational study
J Cardiothorac Surg
2012
30.‌Safety and efficacy of dexmedetomidine for long-term
sedation in critically ill patients
J Anesth
2013 [Epub ahead of print]
7
41
和文原著
(48,55 は学会発表)
31.‌急性心筋梗塞における心不全に対する nitroglycerin 軟膏塗布
の血行力学的効果
心臓
1979
11 1206―1212
32.‌急性心筋梗塞に伴う心不全に対する isosorbide dinitrate 点滴静
注の効果
ICU と CCU
1981
5
59―64
33.‌急性心筋梗塞に伴う心不全に対する硝酸イソソルビドテープ
(TY-0081)の効果―ニトログリセリン軟膏との比較
ICU と CCU
1982
6
845―852
34.‌硝酸イソソルビドテープのうっ血性心不全に対する効果―多施
設共同研究の集計
呼吸と循環
1984
32
841―847
35.‌急性心筋梗塞における intra-aortic balloon pumping の効果と
限界 特に心原性ショック,心室中隔穿孔に対する検討
日本内科学会雑誌
1984
36.‌急性心筋梗塞における糖代謝異常の発現機序―特に心血行動態
との関孫について
日医大誌
1985
52
58―72
37.‌ニトログリセリン軟膏のうっ血性心不全に対する効果の臨床的
検討―多施設共同・二重盲検試験の集計―
医学のあゆみ
1985
136
633―654
38.‌急性心筋梗塞に伴う心不全に対する amrinone(Win48680)一
回静注の効果;dobutamine との比較
呼吸と循環
1986
34
651―657
39.‌Isosorbide 5-mononitrate(TY10368)のうつ血性心不全に対す
る効果;Isosorbide dinitrate との比較
心臓
1986
18 1180―1187
40.‌うっ血性心不全に対する硝酸イソソルビド注射薬
(ニトロール®
注)と塩酸ドパミンの併用療法
ICU と CCU
1986
10 1105―1111
41.‌ニトログリセリンテープ(NT-1)のうっ血性心不全に対する
効果;単回および 3 日間連続投与による循環動態の観察
ICU と CCU
1986
10 1113―1120
42.‌急性心不全患者に対する win 40680(アムリノン)の臨床効果
の検討;前期第二相試試験
臨床と研究
1990
67 2290―2296
43.‌急性心不全に対するアムリノン(win 40680)の臨床的有用性
の検討;placebo を対照とした多施設共同二重盲検比較試験
医学のあゆみ
1990
154
511―522
44.‌うっ血性心不全に対するニトログリセリン(TY-0155)舌下噴
霧による心血行動態に対する効果と血漿中薬物動態
循環器科
1990
28
285―291
45.‌急性心筋梗塞におけるフランク誘導法を用いた ST モニタリン
グの有用性
日本臨床モニター学
会誌
1991
2
61―68
46.内服薬抵抗性狭心症に対するジルチアゼム点滴静注の効果
臨床薬理
1991
23
41―42
47.急性心筋梗塞に伴う心自由壁破裂の破裂時期に関する検討
心臓
1991
23
10―14
48.‌急性心筋梗塞に伴う心破裂および心原性ショックの対策 冠動
脈血栓溶解療法,次世代型 IABP(スーパーバルンポンプ)
,
経皮的心肺補助法(PCPS)
日本救急医学会雑誌
1992
(5)
3
49.‌早期梗塞後狭心症の重症度判定と難治例に対する冠動脈血行再
建術
脈管学
1992
32
711―715
50.急性心筋梗塞に伴う心室重複破裂 8 例の臨床病理学的特徴
心臓
1993
25
381―387
51.‌急性心筋梗塞における大動脈バルンパンピング(IABP)無効
の心原性ショックの病態とこれに対する経皮的心肺補助法
(PCPS)の有用性ならびに間題点
心臓
1995
27
793―801
52.‌ドパミン治療に抵抗性を示す急性心不全患者に対する NKH477
の有用性
臨床と研究
1995
72
214―224
53.‌うっ血性心不全におけるヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドの
動態とカルペリチドの適応
ICU と CCU
1996
20
759―766
54.うっ血性心不全に対する Nicorandil 一回大量静注法の効果
臨床と研究
1997
74
236―240
73
(3)
332―340
259
54
日医大医会誌 2014; 10
(2)
55.いわゆる“economy class syndrome”の病態について
日本内科学会雑誌
2000 89
(臨増)
56.‌III 群抗不整脈薬塩酸ニフェカラントが急性心筋梗塞患者の血
行動態に及ぼす影響
心臓
2000
32
(Suppl. 5)
124―130
127
57.‌集中治療室における非侵襲的陽圧換気(NPPV)の使用状況の
推移
日本集中治療医学会
雑誌
2006
13
(1)
41―47
58.多発性嚢胞腎に合併した急性大動脈解離の 3 例
日医大医会誌
2007
(1)
3
25―29
59.‌血栓溶解剤クリアクター静注用の急性肺血栓塞栓症患者におけ
る薬物動態および血液凝固線溶系に対する影響の検討 第 IV
相試験
薬理と治療
2009
37
(11)
941―951
60.VT storm に対するアミオダロン静注薬の有効性
Progress in
Medicine
2012
32
(Suppl. 1)
424―429
及川 眞一 大学院教授代行
略 歴
1973 年 3 月
東北大学医学部卒業
1999 年 10 月
日本医科大学内科学第三助教授
1973 年 5 月
岩手県立磐井病院初期研修
2000 年 5 月
日本医科大学第三内科診療教授
1976 年 5 月
東北大学大学院研究生
(第三内科)
2005 年 1 月
‌日本医科大学内科学第三教授,内
1981 年 12 月
東北大学医学部附属病院助手
分泌代謝部門教授
1990 年 10 月
2012 年 4 月
~1991 年 8 月‌文部省長期在外研究員:ワシント
分泌代謝内科学分野大学院教授代
ン大学代謝・内分泌・栄養学講座
(E.L.Biceman 教授)
1995 年 1 月
‌日本医科大学大学院医学研究科内
行
2014 年 3 月
日本医科大学定年退職
東北大学医学部附属病院講師
研究領域
代謝内科学―糖尿病の成因と治療・高脂血症の成因と
治療・血管障害・動脈硬化
学会役員
日本動脈硬化学会評議員 1985 年 6 月~現在
日本糖尿病学会評議員
幹事
‌1997 年 6 月
日本臨床栄養学会評議員 1992 年 11 月~現在
~1998 年 6 月
監事・理事
2001 年 11 月~現在
理事
2002 年 7 月~現在
日本老年医学会評議員
1997 年 4 月~現在
日本肥満学会評議員
1985 年 11 月~現在
日本病態栄養学会評議員 2000 年 4 月~現在
日本糖尿病学会評議員
‌1987 年 5 月
日本肥満症治療学会理事 2012 年 6 月~現在
~2007 年 5 月
2010 年 5 月~現在
56
日医大医会誌 2014; 10
(2)
主催学会
2006 年 2 月‌第 6 回日本動脈硬化学会教育フォー
ラム
2012 年 10 月
2013 年 7 月
第 45 回日本動脈硬化学会総会
2014 年 1 月‌第 51 回日本糖尿病学会関東甲信越
第 34 回日本臨床栄養学会総会
地方会
社会的活動
2004 年 7 月
~現在
2006 年 4 月
‌Journal of Atherosclerosis and
~2008 年 3 月
Thrombosis Editor-in-Chief
2001 年 6 月
~2007 年 9 月
合機構専門委員
2013 年 1 月
‌薬事・食品衛生審議会専門委員
2001 年 6 月
~2007 年 9 月
‌独立行政法人医薬品医療機器総
新開発食品評価調査会調査員
~2013 年 12 月
科学研究費委員会専門委員
日医大医会誌 2014; 10(2)
57
記 念 講 演 会 要 旨
糖と脂質代謝のはざまから学ぶ
及川 眞一
内分泌糖尿病代謝内科学
はじめに
糖と脂質代謝は互いに関連し,それぞれの病態を複雑にしている.これらの関係は多面的であり,この多面性を
理解して病態の相互関係を俯瞰すると,症例ごとの病態の差異が見えてくる.これは個々の症例における食事指導
や生活習慣への介入,薬物療法について取るべき方向性を理解する上で有益である.しかし,その治療学は完成し
たものではない.糖・脂質代謝異常の治療は検査値の是正―血糖・脂質・血圧などの正常化―を目的とするもので
はない.これらは次の問題を解決するための手段である.最終的な治療目標は糖・脂質代謝異常による臓器障害・
慢性合併症の発症・進展を防止することであり,これを実現するための治療学を考えなければならない.さらに,
これら糖・脂質代謝異常の発症を防止する予防医学の確立が求められる.このような問題を考えるとき,未知への
興味は尽きず,診療へのモチベーションが向上する.
【症例に学ぶ】
高血糖や高脂血症は特異的な臓器障害をもたらす.その因果関係は理解されているが,具体的な治療については
なお,確立されていない.ここに示す 2 例の自験例はいずれも東北大学在職中の例である.主治医として,あるい
は専門医としてその診断・治療に対する責任の大きさを感じた例である.経験する症例について,個々の病態の差
異を認識した結果,診断および治療に向かう時の不確実性がつきまとうことは否定できない.その上で,このよう
な症例を提示することが今後の診断・治療の進歩につながることを期待したい.
<症例 1>1 歳 2 カ月齢の男児.血清コレステロール 1,128 mg/dL,HDL-C 77 mg/dL,TG 70 mg/dL であり
Friedewald 式で求められる低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)は 1,037 mg/dL となる著明な高脂血症を示す
例を経験した.すでに結節性皮膚黄色腫が認められており,LDL 受容体異常である家族性高コレステロール血症
(FH)ホモ接合体と考えられた.患児とその両親の遺伝子解析から LDL 受容体変異が認められ,FH ホモ接合体と
確診された.このような乳児の FH ホモ接合体に対して行うべき治療法は確立されていない.小児期の心血管突然
死もありうることから,このような例に対しては積極的な LDL 低下療法を行うことが必要である.しかし,ホモ接
合体であることからスタチン療法の効果はほとんど期待できない.短期間で LDL 低下が得られる方法としては LDL
吸着療法(LDL アフェレーシス)が考えられたが,乳児に対して少なくとも週 2 回の LDL 吸着療法を行うことは
血管荒廃を招くことが危惧された.主治医の責任のもとにどのような治療を行うべきか.山本 章先生(国立循環
器病センター)
,馬渕 宏先生(金沢大学第二内科教授)に私の考えを伝え,議論の末,生体肝移植を選択した.当
時の東北大学第二外科・里見 進教授(東北大学 48 年卒の同級生,現,同大学総長)との議論も行い,生体肝移植
は十分に可能であるとの結論に達した.東北大学医学部倫理委員会での議論も行われ,この治療法を選択すること
が認可された.移植術は成功し,スタチン投与の効果が得られるようになった.その結果,血中 LDL コレステロー
ル値は正常域近くに維持することが可能となった.黄色腫は消退し,現在,問題なく経過している.この症例が生
涯を通じて幸せの時を過ごすことが続くことを祈らずにはいられない.
<症例 2>57 歳女性.全身浮腫,ネフローゼ症候群,脂質異常症を示した.本症例は東北大学第二内科腎グルー
プ・斉藤喬雄講師(現,福岡大学医学部総合医学研究センター(腎臓学)教授)から紹介された.腎生検所見はほ
かに類をみない組織像であった.従来の腎疾患では説明できない組織所見であることから新たな病態が考えられ,
また「高脂血症の存在が腎病変を来すのではないか?」との考えで検討を進めた.生検組織の脂肪染色を行ったと
ころ,糸球体毛細血管内に脂肪滴が沈着したと考えられる変化を認めた.特徴的な組織変化をまとめると,1.光顕
上,弱染色性の網状塊による糸球体係蹄の著明な拡張,2.電顕上,糸球体毛細血管腔内に顆粒状物質(最大径 2 μ
程度)が充満し,内皮細胞や赤血球は完璧に圧排され,泡沫細胞の出現はまれである,といった所見であり,これ
58
日医大医会誌 2014; 10
(2)
は,後に組織学的な診断基準として提唱された.このような新たな腎疾患を「リポ蛋白糸球体症」と命名して報告
した.リポ蛋白分画では中間型リポ蛋白(IDL)が増加したことからレムナントの増加が考えられた.アポ蛋白組
成の分析から家族性 III 型高脂血症を疑って検討を進めた.アポ E 遺伝子検索から 145 番目のアミノ酸を構成する
塩基配列のミスセンス変異が認められた.そこでアポ E-Sendai(Arg145 → Pro)はリポ蛋白糸球体症の原因遺伝
子変化であるとして報告した.アポ E ノックアウトマウスにアデノウィルスを用いてアポ E-Sendai-mRNA を肝臓
に強制発現させると,マウスの腎組織ではヒトのリポ蛋白糸球体症と同様の変化が生じた.これはアポ E-Sendai の
高発現が新たな腎病変を形成することを示すものである.しかし,アポ E-Sendai の存在がどのような機序で特徴的
な腎糸球体の組織変化を来すのか,についてはなお不明で,その治療法は確立していない.LDL 除去療法を行うこ
とがリポ蛋白糸球体症の腎機能悪化を防止することが報告されている.これは巣状糸球体硬化症における効果と同
様のものと考えられる.
これらの症例のみならず,多くの症例から臨床の面白さ,困難さを学ばせて頂いてきた.
【共同研究に学ぶ】
酸化ストレスは臓器障害の原因であり,その存在は脂質の過酸化に現れる.この過酸化脂質の測定法は確立され
ておらず,反応系からその脂質過酸化量を推定することが従来の測定系であった.東北大学大学院農学研究科機能
分子解析学(宮澤陽夫教授)ではリン脂質過酸化物(フォスファチジルヒドロペルオキシド,PCOOH)の血中濃
度測定に成功した.われわれは共同研究として,糖尿病,高脂血症,加齢変化で血中 PCOOH 濃度が増加すること
を見いだした.実験的な高コレステロール食負荷(白色家兎)では血中および動脈硬化巣の PCOOH 濃度が増加し
ていた.PCOOH が動脈硬化惹起性に作用する機序として,単球の血管内皮細胞に対する接着性を亢進することを
証明した.このような作用は Rho-kinae を介して行われることを明らかにした.これは共同研究の一例であり,こ
のような仲間を得ることが新たな研究を発展させるものと考えている.
【未知への興味】
高脂肪食がインスリン抵抗性を惹起し糖尿病発症の原因として注目されてきた.このような食生活が長期に渡る
とき,
「高脂肪食による高血糖の出現」という表現型は世代を越えて伝搬するのか?といった疑問がもたれる.本学
に移動して間もなく,高脂肪食で飼育したマウス(C57BL/6)の中で,高血糖を示す個体を抽出して選抜交配を開
始した.この発想は恩師・後藤由夫先生(東北大学名誉教授)が作成した G/K ラットの開発からヒントを得た.近
交系の交配になることから妊娠効率が不良となり,やむを得ず,C5 系,AKR 系の種を入れ,3 種類の混血マウス
として「高脂肪食による高血糖の出現を示す個体」の選抜交配を続けた.この交雑系の飼育は 2001 年から始め,現
在に至っている.高脂肪食による高血糖出現を示す特徴は世代を越えて維持されており,新たなモデル動物―高脂
肪食誘発性糖尿病動物の系統が樹立されたと考えている.このような開発を続けている中で,高脂肪食によっても
血糖の上昇が見られない個体が存在することに気づき,この表現型を有する個体についても選抜交配を続けた.こ
のように高血糖を来しやすい系統“prone 系”と来しにくい系統“resistant 系”の 2 系統を継代維持し,継代数 20
世代を越えて,なお,この形質が伝搬されている.高脂肪食は生後 5 週齢から 10 週齢までの 5 週間,35%高脂肪食
負荷で行っている.継代が進むことによって,高血糖を示す病態が再現され,現在では空腹時血糖も上昇し,糖尿
病状態が顕性化している.このような prone 系では膵ラ氏島の肥大化,β 細胞内のインスリン含量低下,インスリ
ン分泌能の低下が認められていることを報告した.また,コレステロール負荷食で飼育すると,高血糖を示す prone
系では明らかな粥状硬化病変が出現する.一方,resistant 系ではこのような変化が認められない.高血糖は動脈硬
化出現の危険因子であることは臨床的に認められている事実であるが,適切なモデル動物が存在しなかった.この
ようなモデル動物からの解析によって,高脂肪食に対する感受性の強い個体が存在し,これは世代を越えて伝搬さ
れることが明らかとなった.また,動脈硬化を発症しやすいモデルとして利用されることが期待される.このよう
な系統の病態は単一遺伝子の変化で説明することはできない.ヒト 2 型糖尿病と同様に,多遺伝子の重なりが病態
を形成するものと考えられる.現在,β 細胞の脂肪酸代謝に関与する関連因子―特に細胞膜蛋白(CD36)の発現に
ついて検討を重ねている.
遺伝子操作による実験モデル動物は該当遺伝子の役割を検討するにはきわめて有用な方法である.期待した結果
と異なる知見が得られることも,新たな世界の発見に通じるものであろう.われわれの開発したモデル動物では発
日医大医会誌 2014; 10(2)
59
症要因と考えられる遺伝要因が解明されると期待している.このような選抜交配といった手法は時間のかかる,効
率の悪い方法である.しかし,この方法によるモデル動物の確立によって,遺伝因子(責任遺伝子)と環境因子の
重なりの問題がより明らかになることが期待される.遺伝子操作では検討することのできない,未知の世界がそこ
に広がるのではなかろうか.
【山上に山あり】
達成された目的の先には,新たな問題が展開する.当初の目的は達成されても次の問題が見えてくる.歩みを止
めることはできず,興味はつきない.これまで,多くの方と出会い,ご指導いただき,ともに歩むことができたこ
とを誇り,また,それらの方々に心からの謝意を表したい.
60
日医大医会誌 2014; 10
(2)
主たる研究業績
英 文
  1.‌Interaction of obesity and glucose-stimulated insulin secretion
in familial hypertriglyceridemia
Diabetes
1978
27
682―693
  2.‌Effect of medium glucose concentration on glucose uptake by
rat arterial smooth muscle cells and subcutaneous fibroblasts
in culture
Tohoku J exp Med
1980
130
303―307
  3.‌Inhibitory effect of pancreatic elastase on thickening of the
renal glomerular basement membrane in the spontaneously
diabetic rat
Tohoku J exp Med
1982
138
103―109
  4.‌Evidence for direct effect of growth hormone on capillary
basement membrane thickness(CBMT)
Tohoku J exp Med
1985
146
167―174
  5.‌ApoE-2/E-3 ratio of very low density lipoprotein in diabetes
mellitus
Tohoku J exp Med
1985
146
131―136
  6.‌Effect of low density lipoprotein on DNA synthesis of
cultured human arterial smooth muscle cell
Atherosclerosis
1987
64
7―12
  7.‌Angiogenesis factors in ocular tissues of normal rabbits on
chorioallantoic membrane assay
Tohoku J exp Med
1988
154
63―70
  8.‌Lipoprotein Glomerulopathy: Glomerular lipoprotein thrombi
in a patient with hyperlipoproteinemia
Am J Kid Dis
1989
13
148―153
  9.‌Appearance of multidisperse low density lipoprotein and
altered lipoprotein composition in non-insulin dependent
diabetes with type IIa hyperlipoproteinemia
Metabolism
1989
38
224―229
10.‌Absence of angiogenesis-inhibitory activity in aqueous humor
of diabetic rabbits
Diabetes
1990
39
12―16
11.‌Abnormal lipoprotein and apolipoprotein pattern in
lipoprotein glomerulopathy
Am J Kid Dis
1991
18
553―558
12.‌T lymphocytes increase the synthesis of esterified cholesterol
in human monocyte-derived macrophages by activation of
the scavenger pathway
Biochim Biophys
Acta
1992
1138
327―333
13.‌Effects of high-density lipoprotein particles containing apo
A-I, with or without apo A-II, on intracellular cholesterol
efflux
Biochim Biophys
Acta
1993
1165
327―334
14.‌Apolipoprotein E Sendai(Arginine 145 → Proline)
: A new
variant associated with lipoprotein glomerulopathy
J Am Soc Nephrol
1997
8
820―823
15.Anti-angiogenic effect of TGFβ in aqueous humor
Life Science
1998
63 1089―1096
16.‌A novel apolipoprotein E mutation, E2(Arg25Cys)
, in
lipoprotein glomerulopathy
Kidney
International
1999
56
421―427
17.‌Microalbuminuria is closely related to diabetic macroangiopathy
Diabetes Research
and Clinical Practice
1999
44
35―40
18.‌Association of a novel 3-amino acid deletion mutation of
apolipoprotein E
(apoE Tokyo)
with lipoprotein glomerulopathy
Nephron
1999
83
214―218
19.‌A novel 18-amino acid deletion in apolipoprotein E associated
with lipoprotein glomerulopathy
Kid Int
1999
56 1317―1323
20.‌Age-related Increases in plasma phosphatidylcholine
hydroperoxide concentrations in control subjects and
patients with hyperlipidemia
Clin Chem
2000
46
822―828
21.‌Virus mediated transduction of apoE-Sendai develops
lipoprotein glomerulopathy in apoE deficient mice
J Biol Chem
2000
275
31269―
31273
22.‌Increase of serum phosphatidylcholine hydroperoxide
dependent on glycemic control in type 2 diabetic patients
Diab Res Clin Pract
2002
56
19―25
23.‌Chylomicronemia caused by lipoprotein lipase gene mutation
related to a hyper-response of insulin secretion to glucose
Int Med
2002
41
300―303
24.‌Living-donor liver transplantation for homozygous familial
hypercholesterolemia from a donor with heterozygous
hypercholesterolemia
Transpl Int
2003
16
276―279
25.‌Amadori-glycated phosphatidylethanolamine induces angiogenic
differentiations in cultured human umbilical vein endothelial
cells
FEBS Letters
2003
555
419―423
日医大医会誌 2014; 10(2)
61
26.‌Association of cholesteryl ester transfer protein activity and
TaqIB polymorphism with lipoprotein variations in Japanese
subjects
Metabolism
2003
27.‌Isohumulones, bitter acids derived from hops, activate both
peroxisome proliferator-activated receptor a and g and
reduce insulin resistance
J Biol Chem
2004
279
33456―
33462
2005
1687
173―180
28.‌Oxidized but not acetylated low-density lipoprotein reduces
preproinsulin mRNA expression and secretion of insulin
from HIT-T15 cells
Biochim Biophys A
(BBA) ―Molecular
and Cell Biology of
Lipids
52 1564―1570
29.‌Dietary isohumulones, the bitter components of beer, raise
plasma HDL-cholesterol levels and reduce liver cholesterol
and triacylglycerol contents similar to PPARα activations in
C%’BL/6 mice
Brit J Nutrition
2005
93
559―567
30.‌Prevention of diet-induced obesity by dietary isomerized hop
extract containing isohumulones, in rodents
Int J Obesity
2005
29
991―997
31.‌Fructose Ingestion Enhances Atherosclerosis and Deposition
of Advanced Glycated End-products in Cholesterol-fed
Rabbits
J Atheroscler
Thromb
2005
12
260―267
32.‌Ion-trap tandem mass spectrometric analysis of Amadoriglycated phosphatidylethanolamine in human plasma with or
without diabetes
J Lipid Res
2005
46 2514―2524
33.‌The risk of cardiovascular events in Japanese hypertensive
patients with hypercholesterolemia: Sub-analysis of the
Japan Lipid Intevention Trial(J-LIT)Study, a large-scale
observational cohort study
Hypertens Res
2005
28
879―887
34.‌The recovery of dysfunctional lipoprotein lipase
(Asp204-Glu)
activity by modification of substrate
Atherosclerosis
2005
183
101―107
35.‌Etiology of hypercholesterolemia in patients with anorexia
nervosa
Int J Eat Disord
2006
39
598―601
36.‌The new worldwide definition of metabolic syndrome is not a
better diagnostic predictor of cardiovascular disease in
Japanese diabetic patients than the existing definitions:
additional analysis from the Japan Diabetes Complications
Study
Diabetes Care Jan
2006
29
145―147
37.‌Aminophospholipid glycation and its inhibitor screening
system: A new role of pyridoxal 5’-phosphate and pyridoxal
as lipid glycation inhibitor
J Lipid Res
2006
47
964―974
38.‌Inhibitory effects of amlodipine and fluvastatin on the
deposition of advanced glycation end products in aortic wall
of cholesterol and fructose-fec rabbits
Biol Pharm Bull
2006
29
75―81
39.‌Risk of coronary events in Japanese patients with both
hypercholesterolemia and type 2 diabetes mellitus on lowdose simvastatin therapy: Implication from Japan Lipid
Intervention Trial(J-LIT)
Atherosclerosis
2007
191
440―446
40.‌Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in
hypercholesterolaemic patients(JELIS):a randomized openlabel, blinded endpoint analysis
Lancet
2007
369 1090―1098
41.‌Long-term Outcome after Living Donor Liver Transplantation
for Two Cases of Homozygous Familial Hypercholesterolemia
from a Heterozygous Donor
J Atheroscl Thromb
2007
14
94―97
42.‌Effect of hypertension and type2 diabetes meliitus on the risk
of total cardiovascular events in Japanese patients with
hypercholesterolemia: Implications from the Japan Lipid
Intervention Trial(J-LIT)
Hypertens Res
2007
30
119―123
43.‌In vivo angiogenesis is suppressed by unsaturated vitamin E,
tocotorienol
J Nutr
2007
137 1938―1943
44.‌Ion-trap tandem mass spectrometric analysis of squalene
monohydroperoxide isomers in sunlight-exposed human skin
J Lipid Res
2007
48 2779―2787
45.‌Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic
acid for hypercholesterolemic patients: subanalysis of the
JELIS trial
Stroke
2008
39 2052―2058
46.‌Association of serum apolipoprotein B48 level with the
presence of carotid plaque in type 2 diabetes mellitus
Diab Res Clin Pract
2008
81
338―344
62
日医大医会誌 2014; 10
(2)
47.‌Effects of EPA on coronary artery disease in
hypercholesterolemic patients with multiple risk factors:
Sun-analysis of primary prevention cases from the Japan
EPA Lipid Intervention Study(JELIS)
Atherosclerosis
2008
200
48.‌Validation of an ion trap tandem mass spectrometric analysis
of mulberry 1-deoxynojirimycin in human plasma:
application to pharmacokinetic studies
Biosci Biotechnol
Biochem
2008
72 2210―2213
49.Preparation of pure lipid hydroperoxides
J Lipid Res
2008
49 2668―2677
50.‌Tumor anti-angiogenic effect and mechanism of action of
delta-tocotrienol
Biochem Pharmacol
2008
76
330―339
51.‌Phosphatidylcholine hydroperoxide-induced THP-1 cell
adhesion to intracellular adhesion molecule-1
J Lipid Res
2009
50
957―965
52.‌Suppresive effects of EPA on the incidence of coronary
events in hypercholesterolemia with impaired glucose
metabolism: Sub-analysis of Japan EPA Lipid Intervention
Study(JELIS)
Atherosclerosis
2009
206
535―539
53.‌Waist Circumference as a Cardiovascular and Metabolic Risk
in Japanese Patients With Type 2 Diabetes
Obesity
(Silver Spring)
2009
17
585―592
54.‌Long-term lifestyle intervention lowers the incidence of
stroke in Japanese patients with type 2 diabetes: a nation
wide multicenter randomized controlled trial(the Japan
Diabetes Complications Study)
Diabetetologia
2010
53
419―428
55.‌LC-MS/MS analysis of carboxymethylated and carboxyethylated
phosphatidiylethanolamines in human erythrocytes and
blood plasma
J Lipid Res
2010
51 2445―2453
56.‌Involvement of Rac GTPase activation in phosphatidylcholine
hydroperoxide-induced THP-1 cell adhesion to ICAM-1
Biochem Biophys
Res Commun
2011
57.‌Serum Level of Triglycerides Is a Potent Risk Factor
Comparable to LDL Cholesterol for Coronary Heart Disease
in Japanese Patients with Type 2 Diabetes: Subanalysis of
the Japan Diabetes Complications Study(JDCS)
J Clin Endocrinol
Metab
2011
58.‌Selective breeding of mice for different susceptibilities to high
fat diet-induced glucose intolerance: development of two
novel mouse lines, Selectively bred Diet-induced Glucose
intolerance-Prone(SDG-P)and-Resistant(SDG-R)
J Diabetes
Investigation
2012
3
245―251
59.‌Effect of impaired glucose tolerance on atherosclerotic lesion
formation: An evaluation in selectively bred mice with
different susceptibilities to glucose intolerance
Atherosclerosis
2013
231
421―426
60.‌Characterization of Pancreatic Islets in Two Selectively Bred
Mouse Lines with Different Susceptibilities to High-Fat DietInduced Glucose Intolerance
PLOS ONE
2014
9
e84725
406
135―140
273―277
96 3448―3456
落 雅美 大学院教授代行
略 歴
1975 年 7 月 日本医科大学医学専門課程卒業
1993 年 4 月 日本医科大学 第二外科 講師
1975 年 12 月 第 60 回医師国家試験合格
1996 年 4 月 日本医科大学 第二外科助教授
1975 年 12 月 日本医科大学第三外科入局
2003 年 6 月日本医科大学付属病院心臓血管外科部
1976 年 9 月~1977 年 3 月
長
東京女子医科大学麻酔科研修医
2004 年 4 月日本医科大学外科学講座・心臓血管外
1977 年 4 月~1979 年 10 月
科部門教授
東京女子医大第二病院(現東医療セン
2012 年 4 月~日本医科大学大学院医学研究科心臓血
ター)心臓血管外科助手
管外科分野 大学院教授代行
1979 年 11 月 日本医科大学付属病院 胸部外科助手
2014 年 3 月 日本医科大学定年退職
1985 年 1 月~1990 年 6 月
会津若松市 会津中央病院心臓血管外
科部長
所属学会
日本外科学会・日本胸部外科学会・日本心臓血管外科
日本血管内治療学会・日本小児循環器学会
学会
Asian Society of Cardiovascular and Thoracic
日本血管外科学会・日本冠動脈外科学会・日本臨床外
Surgery・International Union of Angiology
科学会
日本血管外科学会関東甲信越地方会・日本胸部外科学
日本循環器学会・日本脈管学会・日本冠疾患学会・日
会関東甲信越地方会
本心臓病学会
日本循環器学会関東甲信越地方会
64
日医大医会誌 2014; 10
(2)
学会資格等
日本外科学会指導医・専門医
3 学会構成心臓血管外科専門医
日本循環器学会専門医
日本脈管学会専門医
日本胸部外科学会指導医
心臓血管外科専門医認定機構認定研修基幹施設長
学会役員等
日本心臓血管外科学会理事
日本血管外科学会評議員
日本胸部外科学会評議員
日本臨床外科学会評議員
日本冠動脈外科学会理事
日本胸部外科学会関東甲信越地方会幹事
日本冠疾患学会理事
日本血管外科学会関東甲信越地方会幹事
日本血管内治療学会理事
日本循環器学会関東甲信越地方会評議員
日本循環器学会評議員
日本 Advanced Heart & Vascular Surgery/OPCAB
日本脈管学会評議員
研究会幹事
学会会長等
第 134 回日本胸部外科学会関東甲信越地方会会長(平
第 26 回日本冠疾患学会学術集会会長(平成 24 年 12
成 17 年 6 月)
月)
第 7 回日本 Off-Pump CABG Live Demonstration 研究
会会長(平成 17 年 7 月)
日医大医会誌 2014; 10(2)
65
記 念 講 演 会 要 旨
心臓に恋をして 40 年:
“母校に心臓外科を”の道を歩んで
落 雅美
心臓血管外科学
昭和 50 年に母校を卒業してすぐに心臓外科医への道程を歩み始めた.4 年生で心臓病の権威である故木村栄一教
授の講義を受けた時から心臓の虜になり,6 年生の時にはほかの分野に進む選択枝は自分の中になかった.当時わ
が恩師庄司佑教授は気鋭の外科医でありその講義もまた自分の中の何かを動かしてくれた.当時わが国の心臓外科
は黎明期であり,国内でもごく限られた施設でのみ心臓手術が行われているのが現状であった.
東京女子医大心臓血圧研究所外科には叔父がいたことから入局を考えたが結局母校の第三外科に入局した.庄司
教授は心臓外科の右も左も分からない先輩医局員を相手にまさに孤軍奮闘していたが,先輩たちも皆心臓外科の素
人であって何を質問しても答えは返ってこなかった.このままでは心臓外科の手ほどきも受けられぬと考えた自分
は東京女子医大への国内留学を申し出た.
東京女子医大心臓血圧研究所での心臓手術には目を見張るものばかりであった.成人手術のみならず小児心臓手
術も世界レベルで行われていた.当時,手術中に心臓を停止させるにはごく限られた時間しか外科医には与えられ
なかった.それを過ぎると心臓は再び元の拍動を取り戻せずそれは重大な結果を意味した.女子医大では心筋保護
法の研究が進んでいて臨床応用され始めた頃だった.30 分ごとの心筋保護液冠動脈内注入で 150 分の心停止が保証
されたのである.ほとんどの手術はこれだけの心停止時間内に終了できる.
ほどなく西尾久にある女子医大第二病院(現東医療センター)須磨幸蔵教授のところで研修できることになった.
ここには著名な小児循環器病専門の教授がいたことから主に小児の心臓外科手術が行われていた.初めて心房中隔
欠損孔閉鎖術の術者となった時は天にも昇る気分で,その感激は今でも昨日のように思い出すことができる.
時は瞬く間に過ぎて留学期間を終える頃となった.女子医大の先輩からは強く引き留められたが,母校医局から
も矢のような復帰の催促であった.悩みに悩んで女子医大を離れることに決めた.自分への言い訳は「苦労するな
ら後輩のために.母校に心臓外科を確立する」であった.
母校医局は庄司教授が飯田橋に移られたのに伴い,付属病院では「胸部外科」としての診療科となっていた.部
長は後に聖マリアンナ医科大学第三外科教授になられた山手昇先生.当時医局には先輩がほとんどおらず,ほとん
どの手術を山手先生と自分とで手掛けた.当時脚光を浴びていた手術は冠動脈バイパス術であった.北里大学で心
臓外科教授をしていた叔父の紹介でハワイの Dr Mamiya のところへ 3 カ月間この手術を習いに行った.私のバイ
パス手術の原点はこの時にある.Mamiya 先生はまさに God hand surgeon であった.日本では 10 時間はかかって
いた手術をわずか 3 時間で終える.1 カ所のバイパス吻合時間が 4 分であることに時計を見る自分の目を疑った.
どれほど長い期間つまらない修行をするよりもほんの短期間でも super surgeon と一緒に手術に入ることが大切か
身をもって体験した.
昭和 60 年,卒後 10 年目で福島県会津若松市の会津中央病院で心臓外科を立ち上げた.そこに 6 年近くいたにも
関わらず大学に復帰できたのは,当時集中治療室室長であられた高野照夫教授のお陰である.内科医の期待に応え
るべく昼夜を問わず心臓血管外科手術に明け暮れた.
以後 20 有余年母校に心臓血管外科を確立し,後輩を育てられたことは幸運の一言に尽きるとともに,私が心臓に
恋をするきっかけを創ってくれた木村栄一教授の時代から続く循環器内科と心臓外科との密接な連携関係があった
からである.この伝統が母校日本医大で続くことを願っている.
66
日医大医会誌 2014; 10
(2)
主たる研究業績 欧 文
  1.‌Aortic dissection extending from the left coronary artery
during percutaneous coronary angioplasty
Ann Thorac Surg
1996
62 1180―1182
  2.‌Simultaneous subclavian artery reconstruction in coronary
artery bypass grafting
Ann Thorac Surg
1997
63 1284―1287
  3.‌Limb-salvage tibiotibial bypass using the inferior epigastric
artery
J Vasc Surg
1997
25
591―592
  4.‌Infective endocarditis: Consideration for the timing of surgical
intervention and type of infecting microorganism
J Nippon Med Sch
1997
64
16―21
  5.‌The clinical significance of performing preoperative
angiography of the internal thoracic artery in coronary
bypass surgery
Surgery Today
1998
28
503―508
  6.‌
“Hexatuple”coronary bypass with in situ arterial grafts
Jp J Thorac
Cardiovasc Surg
1998
46
402―405
  7.‌Modified Fontan operation: Consideration for the
determination of the appropriate procedure
J Nippon Med Sch
1999
66
28―32
  8.‌Combined non-cardiac operations with minimally invasive
direct coronary artery bypass grafting
Jp J Thorac
Cardiovasc Surg
1999
47
398―401
  9.‌Role of off-pump coronary artery bypass grafting in patients
with malignant neoplastic disease
Jp Circulation J
2000
64
13―17
10.‌Impact of sequential grafting of the internal thoracic or right
gastroepiploic arteries on multiple coronary revascularization
Cardiovasc Surg
2000
8
386―392
11.‌Effectiveness of Prostaglandin E1 on pulmonary hypertension
and right cardiac function induced by single-lumg ventilation
and hypoventilation
Ann Thorac
Cardiovasc Surg
2000
6
236―241
12.‌Coronary artery surgery using the internal thoracic artery
after reconstruction of the occluded subclavian artery
Jp J Thorac
Cardiovasc Surg
2000
48
524―527
13.‌Limited flow capacity of the right gastroepiploic artery graft:
Postoperative echocardiographic and angiographic
evaluation
Ann Thorac Surg
2001
71 1210―1214
14.‌Sequential grafting of the right gastroepiploic artery in
coronary artery bypass surgery
Ann Thorac Surg
2001
71 1205―1209
15.‌Adequacy of flow capacity of bilateral internal thoracic
T-graft
Ann Thorac Surg
2001
72 2008―2012
16.‌Surgical endovascular stent grafting for a ruptured
penetrating atherosclerotic ulcer of the aortic arch
J Nippon Med Sch
2002
69
47―50
17.‌Perioperative myocardial infarction in patients undergoing
off-pump coronary artery bypass grafting
The Japanese
journal of thoracic
and cardiovascular
surgery
2003
51
393―396
18.‌Comparison of m-RNA expression for inflammatory mediators
in leukocyte between on-pump and off-pump coronary
artery bypass grafting
Ann Thorac
Cardiovasc Surg
2003
9
43―49
19.‌Myocardial protective effect of Lidocaine during experimental
off-pump coronary artery bypass grafting
Ann Thorac
Cardiovasc Surg
2003
9
36―42
20.‌Subclavian artery reconstruction in patients undergoing
coronary artery bypass grafting
Ann Thorac
Cardiovasc Surg
2003
9
57―61
21.‌Application of off-pump coronary artery bypass grafting for
patients with acute coronary syndrome requiring
emergency surgery
Ann Thorac
Cardiovasc Surg
2003
9
29―35
22.‌A simple less invasive method of radial artery harvesting in
coronary artery surgery
J Cardiovasc Surg
2003
44
223―225
23.‌Coronary artery bypass grafting without cardiopulmonary
bypass: A five-year experience
J Nippon Med Sch
2003
70
157―164
24.‌Optimal time of surgical treatment for Kawasaki coronary
artery disease
J Nippon Med Sch
2004
71
(4)
279―286
25.‌Atrial septal defect with borderline pulmonary vascular
disease
Jpn J Thorac
Cardiovasc Surg
2004
52
(4)
213―216
日医大医会誌 2014; 10(2)
67
26.‌Early outcome of a randomized comparison of off-pump and
on-pump multiple arterial coronary revascularization
Circulation
2005
112
I-338―342
27.‌Off-pump versus conventional coronary artery bypass
grafting: A meta-analysis and consensus statement from The
2004 ISMICS Consensus Conference
Innovation
2005
1
3―27
28.‌Surgical strategy for redo off-pump coronary artery bypass
grafting to avoid re-sternotomy
J Jpn Coron Assoc
2006
12
183―187
29.‌Rupture of a normal-sized, non-dissected distal aortic arch in
a Marfan patient
Ann Thorac
Cardiovasc Surg
2006
12
438―440
30.‌XIII Quality control of arterial grafting: Early Detection of
graft patency and flow. Flow capacity of arterial grafts: Internal thoracic artery,
gastroepiploic artery and other grafts: Arterial Grafting for
Coronary Artery Bypass Surgery
Springer
2006
31.‌Nonocclusive mesenteric ischemia after aortic surgery in a
hemodialysis patient
Ann Thorac
Cardiovasc Surg
2008
14
129―132
32.‌Intraoperative verification of conduction block in atrial
fibrillation surgery
J Thorac Cardiovasc
Surg
2008
136
998―1004
33.‌Sivelestat reduces myocardial ischemia and reperfusion
injury in rat herats even when administered after onset of
myocardial ischemia
European Journal of
Cardio-Thoracic
Surgery
(Interactive
CardioVascular and
Thoracic Surgery
2009
34.‌Pulmonary injury after cardiopulmonary bypass: beneficial
effects of low frequency mechanical ventilation
J Thorac Cardiovasc
Surg
2009
137 1530―1537
35.‌Two-patch repair for atrioventricular septal defect with
mitral aneurysm
Ann Thorac Surg
2009
88 1341―1343
36.‌Multidisciplinary approach to severe coronary artery disease
Circulation Journal
2010
74
426―427
37.‌Enhanced vascularization by controlled release of platelet-rich
plasma impregnated in biodegradable gelatin hydrogel
Ann Thorac Surg
2011
92
837―844
38.‌Electroanatomical mapping-assisted surgical treatment of
incessant ventricular tachycardia associated with an
intramyocardial giant lipoma
J Interv Card
Electrophysiol
2012
33
109―112
39.‌Effect of postoperative landiolol administration for atrial
fibrillation after off pump coronary artery bypass surgery
Journal of
Cardiovascular
Surgery
2012
53
369―374
40.‌Open stent grafting with a trifurcated graft for an infected
aortic arch aneurysm concomitant with severe calcified
aorta
Ann Thorac
Cardiovasc surg
2012
41.‌Intraoperative Electroanatomic Mapping
Ann Thorac Surg
2012
93 1285―1286
42.‌A case of thoracoscopy-guided lead extraction with an
excimer laser sheath
Jounal of
Arrhythmia
2012
28
247―249
43.‌Double Potential Mapping: A Novel Technique for Locating
the Site of Incomplete Ablation
Innovations
2012
7
429―434
44.‌Overview: Japanese guidelines for myocardial revascularization to treat stable ischemic heart disease 2012
Gen Thorac
Cardiovasc Surg
2013
61
246―253
45.‌Progress in coronary artery bypass surgery and current
issues in Japan
J Jpn Coron Assoc
2013
19
278―282
279―283
島田 隆 大学院教授
略 歴
1974 年 8 月 日本医科大学医学部卒業
1991 年 4 月 日本医科大学第二生化学 主任教授
1975 年 1 月 日本医科大学小児科学教室 研究生
1994 年 4 月 日本医科大学小児科 教授(兼担)
1976 年 4 月 ‌国立がんセンター研究所生化学研修生 2003 年 4 月 付属病院遺伝診療科 部長
財団法人がん研究振興会流動研究員
2003 年 7 月 国際交流センター センター長
1978 年 4 月 日本医科大学第一生化学 助手
2003 年 12 月 学校法人日本医科大学 理事
1981 年 10 月 医学博士(日本医科大学)
2008 年 4 月 付属病院ゲノム先端医療部 部長
1981 年 9 月 ‌米国国立衛生研究所(NIH)
,心肺血液
2014 年 3 月 日本医科大学定年退職
研 究 所(NHLBI)
,臨床血液 部門
(Chief:
A.W. Nienhuis)
留学
主な研究領域
分子遺伝学,臨床遺伝学,遺伝子治療学,先天性代謝
異常症
所属学会
日本生化学会(評議員)
日本遺伝カウンセリング学会
日本遺伝子治療学会(理事,評議員)
American Society of Human Genetics
日本人類遺伝学会(評議員)
American Society of Gene and Cell Therapy
日本先天代謝異常学会(評議員)
American Society of Biochemistry and Molecular
日本癌学会
Biology
日本がん分子標的治療学会
American Society of Hematology
日医大医会誌 2014; 10(2)
69
主催学会
第 12 回日本遺伝子治療学会
社会的活動
1992 年 ‌厚生省・厚生科学審議会遺伝子治療専門委員
会委員
1994 年 ‌文部省・学術審議会バイオサイエンス部会遺
伝子治療臨床研究委員
1994 年 文部省・学術審議会専門委員
1994 年 ‌厚生省・中央薬事審議会バイオテクノロジー
特別部会委員
1994 年 ‌厚生省・中央薬事審議会遺伝子治療用医薬品
調査会委員
2002 年 ‌厚労省・厚生科学審議会科学技術部会遺伝子
治療臨床研究作業委員会委員
2002 年 ‌厚労省・薬事・食品衛生審議会生物由来技術
部会委員
2004 年 ‌厚労省・厚生科学審議会科学技術部会遺伝子
治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関
する作業委員会委員
2007 年 ‌独立行政法人医薬基盤研究所実用化研究評価
委員会専門委員
2008 年 ‌独立行政法人医薬基盤研究所医薬推進研究評
価委員会専門委員
2009 年 ‌独立行政法人日本学術振興会科学研究費委員
会委員(第二部医師薬学第 1 段審査)
2010 年 ‌独立行政法人医薬品医療機器総合機構専門委
員
2011 年 ‌厚労省・厚生科学審議会科学技術部会遺伝子
治療臨床研究作業委員会委員長
2012 年 ‌独立行政法人日本学術振興会科学研究費委員
会委員(第二部医師薬学第 2 段審査)
2013 年 ‌厚労省・薬事・食品衛生審議会生物由来技術
部会委員
70
日医大医会誌 2014; 10
(2)
記 念 講 演 会 要 旨
遺伝病の治療を目指して
島田 隆
分子遺伝医学
1.遺伝病との出会い(1968~1981)
昭和 43 年(1968)に日本医科大学に入学した.市川での進学過程の 2 年間はほとんど学生運動で明け暮れた.そ
の影響で半年遅れて千駄木での学部教育が開始された.臨床実習(BST)で千駄木の小児科を回った時,新生児室
で寝たきりの男の子に出会った.四肢は麻痺しており,痙攣を繰り返し,いつも泣いているような表情をしていた.
臨床的には異染性白質ジストロフィー(MLD)が最も疑われるとのことであった.母親は毎日のように病院に通っ
てきて,この子の病気は自分たちのせいだと言って泣いていた.両親はいとこ婚であった.この子との出会いがそ
の後の私の方向に大きな影響を与えることになった.
卒業後,内科か小児科か迷ったが,結局小児科に入局した.その一番の理由は BST の時に出会った子供が気に
なったからである.ちょうど,日本でも白血病の多剤併用療法が始まった時期で,小児科臨床は充実しておもしろ
かった.一方でコット室の MLD の子に対しては経管栄養と抗痙攣剤の投与以外にはなすすべもなく,次第に悪化
していく全身状態を見ているだけであった.このころから遺伝病の治療の研究をしたいと考えるようになった.当
時の小児科では初期研修の後,地方病院に派遣されるか,国内留学の選択肢があった.私は築地の国立がんセンター
の生化学部門での研究の道を選んだ.そのころの研究室の主要テーマは発癌物質のスクリーニングで,魚の焼け焦
げに発癌性があることなどが話題になっていた.私自身は細胞内の高分子の一つである poly(ADP-ribose)の研究
をしていた.研究は苦戦したが,生化学の実験はおもしろかった.2 年後に大学に戻る時に,小児科ではなく,生
化学教室の助手となった.すでに,MLD の子は亡くなっていた.第一生化学教室では,カエルやウナギの比較生
化学の実験を行っていたが,米国ではすでに組換え DNA の時代を迎えていた.留学したいと考えていた時,NIH
の Nienhuis が書いた New England Journal of Medicine のヘモグロビン異常症の総説に出会った.論文の最後に,
将来の遺伝病の治療法として遺伝子治療の記載があった.どうしても遺伝子治療の研究をしたいと思い,直接交渉
して留学にこぎつけた.
2.NIH での遺伝子治療研究―ウイルスベクターの開発(1981~1991)
1981 年に NIH の Clinical Hematology Branch に留学した.いろいろな理由で留学は 10 年間の長期に渡ることに
なった.Nienhuis とは全く面識がなかったが,行ってみて分かったことは,彼は独立したばかりの若手の研究者
で,元のボスの Anderson の研究室の一部を間借りして研究室を立ち上げたばかりであった.研究室は病院と同じ
建物で,スペースは限られており,80cm ほどの実験台の一部が与えられただけだった.研究室ではヘモグロビン
異常症の遺伝子解析が行われていた.クローニングだけでも 1 年近くかかっていた時代である.1980 年に UCLA の
Cline がイスラエルでサラセミアの患者に対して全く不完全な技術で,秘密裏に遺伝子治療実験を行ったことが明ら
かになり社会的問題になっていた.NIH の研究者も遺伝子治療研究を急いでいたが,いまだ有効な遺伝子導入技術
が見つかっていなかった.Microinjection や Electroporation などが遺伝子治療法として真面目に検討されていた.
1983 年頃に組換えレトロウイルスを使った遺伝子導入の有用性が報告され,一斉にウイルスベクターの研究が開始
された.私も,留学直後は遺伝子導入や遺伝子増幅のマーカーとして期待されていた葉酸脱水素酵素(DHFR)遺
伝子のクローニングを行っていたが,途中からウイルスベクターの開発にも参入することになった.
1980 年代はエイズの時代だった.NIH は国立の研究機関としてエイズ研究が最優先課題となった.そのような中
でエイズ研究の Broder グループと共同で,エイズに対する遺伝子治療開発のプロジェクトが開始された.結局,
当時の遺伝子治療技術ではエイズの治療は成功しなかったが,HIV ゲノムを扱っているうちに組換え HIV ベクター
の作製を思いついた.最も危険なウイルスと考えられていた HIV を組換えウイルスベクターとして改変することに
対し,反対意見が多かった.しかし,HIV はこれまで発見されたほかのレトロウイルスとは違った多くの特徴を
日医大医会誌 2014; 10(2)
71
持っている.何よりもリンパ球に特異的に遺伝子を導入することが可能であり,エイズの遺伝子治療のための有力
なベクターになり得る.HIV ウイルスを使った HIV 感染症の治療として注目された.安全性については,その後多
くの改良が加えられ,今では HIV ベクターは多くの遺伝子治療で使われるようになっている.
留学先は NIH の臨床血液部門であり,ヘモグロビン異常症や遺伝子治療以外にも様々な血液疾患の研究が行われ
ていた.再生不良性貧血を起こすウイルスである B19 パルボウイルスの研究にも参加した.その後,非病原性の別
のパルボウイルスであるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの開発にも従事した.
1989 年には NIH の Tenure track(終身雇用資格を得る権利を持つ研究者)を獲得し,米国永住の手続きを進め
ていた.1990 年秋に突然,日本医大から第二生化学の吉野教授の後任に立候補しないかという連絡があった.1986
年には日本医大からは退職しており,この時点での帰国は全く考えていなかったため,家族内でも,NIH 研究室で
も大騒ぎになった.結局,1991 年に帰国することになったが,あの時の決断が良かったのかどうか,判断は難しい.
3.日本医大での遺伝子治療研究―MLD と HPP の遺伝子治療(1991~2014)
世界最初の遺伝子治療が 1990 年に NIH の Anderson が中心になって先天性免疫不全症である ADA 欠損症に対
して行われ,世界的に遺伝子治療は注目されていた.私が帰国した 1991 年に,北海道で ADA 欠損症が発見され日
本でも遺伝子治療への対応が急がれることになった.私は帰国後,直ぐにこの日本での遺伝子治療騒動に巻き込ま
れることになった.厚生省に新たに作られた遺伝子治療の専門委員会に,日本ではただ一人の遺伝子治療専門家と
して召集され,ガイドラインの作成や遺伝子治療研究の審査などに従事することになる.遺伝子治療は日本中で話
題になっており,様々な分野の学会や研究会に招待され,日本中を駆け回ることになった.
日本に戻ることになって,いよいよ念願の遺伝病の遺伝子治療の研究を開始することができるようになった.最
初は日本では,ほとんど行われていなかったウイルスベクターの研究から開始した.日本で最初の HIV ベクターと
AAV ベクターが日本医大の地下の研究室で作製された.組換え HIV については当時の日本の組換え DNA の規制
では P3 に指定されており,この実験のために日本医大で最初の P3 実験施設が作られることになった.これらのベ
クター技術を勉強するため,日本中の大学や企業から研究者が集まってきた.
念願の MLD の遺伝子治療研究を開始した.MLD は神経系細胞に糖脂質が蓄積し,広範な脱髄を引き起こす疾患
であるが,神経疾患の遺伝子治療の方法論は確立していなかった.多くの大学院生が参加して様々なアプローチで
遺伝子治療を行い,有効性と安全性を評価した.また,この研究を進めるために,学内外の多くの神経研究者と共
同研究が行われた.AAV ベクターの直接脳内注入,髄腔内注入,新生児期全身投与,遺伝子改変造血幹細胞移植,
などの実験が行われた.これらの方法を組み合わせた MLD に対する遺伝子治療戦略を提起した.
低フォスファターゼ症(HPP)は MLD とともにわれわれが重点的に取り組んでいる遺伝病である.米国 NIH か
ら帰国した 1991 年の冬に付属病院にこの疾患の新生児が緊急搬送されてきた.これをきっかけに HPP の研究が開
始され,現在では,本学は HPP の研究拠点になっている.すでにモデルマウスに対する遺伝子治療に成功してお
り,実用化に向けた臨床プロトコールの最適化を行っている.
おわりに
1990 年に米国で開始された遺伝子治療は,その後様々な問題に遭遇し,試行錯誤を繰り返しながら現在に至って
いる.最近になってようやくその有用性が臨床研究で確認されるようになり,これから実用化に向けた臨床試験が
進められようとしている.この遺伝子治療の歴史は私自身の研究の変遷と,ほとんどオーバーラップしている.
日本医大を卒業してから 40 年,留学から日本医大に戻ってきてから 23 年,この間に多くの研究者,学生,大学院生
との交流があった.自分の望んでいた遺伝子治療の研究領域で仕事ができたのは幸せであった.時代の要請もあり,
臨床遺伝学の教育や,病院での遺伝診療も開始することができた.国際交流センター長として,医学生のための留
学プログラムを作るために海外の大学と交渉したのも懐かしい思い出である.これらの多岐にわたるプロジェクト
を思い通りに進められたのも,周囲に気心がしれた友人や先輩がいた母校だったからだと深く感謝している.
今後は大学での研究生活からは,離れることになるが,私の目指していた遺伝病の遺伝子治療にはできるだけ関
わっていきたいと思っている.日本は様々な理由で欧米と比較して臨床試験を進め難いといわれている.厚労省や
PMDA(医薬品医療機器総合機構)の専門委員としてガイドラインや審査制度の改革にも取り組み,遺伝子治療や
再生医療などの先端医療の臨床試験の推進のために貢献したいと思っている.
72
日医大医会誌 2014; 10
(2)
主たる研究業績
英文原著
  1. The multiple hemoglobins of the Japanese Eel, Anguilla
Japonica; Molecular basis for hemoglobin multiplicity and the
subunit interactions
J Biol Chem
1980
255 7912―7917
  2. Occurrence of H10-like protein and protein A24 in the
chromatin in bullfrog erythrocytes lacking histone 5
J Biol Chem
1981
256
10577―
10532
  3. Changes in nonhistone chromosomal proteins of bullfrog
during metamorphosis
Comp Biochem
Physiol
1982
72B
261―265
  4. The functional human dihydrofolate reductase gene
J Biol Chem
1984
259 3933―3943
  5. A human dihydrofolate reductase processed gene with an
Alu repetitive sequence: multiple DNA insertions at a single
chromosomal site
Gene
1984
  6. Only the promoter region of the constitutively expressed
normal and amplified human dihydrofolate reductase gene is
DNase I hypersensitive and undermethylated
J Biol Chem
1985
260 2468―2474
  7. Chromatin structure of the human dihydrofolate reductase
gene promoter: multiple protein binding sites
J Biol Chem
1986
261 1445―1452
  8. Novel transcription map for the B19(Human)pathogenic
parvovirus
J Virol
1987
61 2395―2406
  9. Site specific demethylation and normal chromatin structure
of the human DHFR gene promoter after transfection into
CHO cells
Mol Cell Biol
1987
7 2830―2837
10. Isolation and characterization of cDNA clones derived from
the divergently transcribed gene in the region upstream
from the human dihydrofolate reductase genes
J Biol Chem
1989
264
10057―
10064
11. A 165-base pair sequence between the dihydrofolate
reductase gene and the divergently transcribed upstream
gene is sufficient for bidirectional transcriptional activity
J Biol Chem
1989
264
20171―
20174
12. A genetically engineered cell line that produces empty
capsids of B19(Human)parvovirus
Proc Natl Acad Sci
USA
1989
13. Indiscriminate activity from the B19 parvovirus P6 promoter
in nonpermissive cells
J Virol
1991
14. Targeted and highly efficient gene transfer into CD4+ cells
by a recombinant human immunodeficiency virus retroviral
vector
J Clin Invest
1991
15. A GC box in the bidirectional promoter is essential for
expression of the human dihydrofolate reductase and
mismatch repair protein 1 genes
FEBS Letter
1992
16. Identification of two initiator elements in the bidirectional
promoter of the human dihydrofolate reductase and the
mismatch repair protein 1 genes
Nucleic Acids Res
1994
22 2143―2149
17. Novel missense and frameshift mutations in the tissuenonspecific alkaline phosphatase gene in a Japanese patient
with hypophosphatasia
Hum Mol Genet
1994
3 1683―1684
18. Genomic organization and expression of the human MSH3
gene
Genomics
1996
31
311―318
19. A new strategy for large scale preparation of high titer
recombinant adeno-associated virus(AAV)vectors by using
packaging cell lines and sulfonated column
Hum Gene Ther
1996
7
507―513
20. Two step gene transfer using adenovirus vector carrying
the CD4 gene and HIV vectors
Hum Gene Ther
1996
7 2281―2287
21. HSV-TK/GCV mediated killing of tumor cells induces tumorspecific cytotoxic T cells in mice
Cancer Gene Ther
1997
4
91―96
22. Stable integration of HIV-based retroviral vectors into the
chromosomes of non-dividing cells
Hum Gene Ther
1998
9
467―475
23. A novel strategy of cell targeting based on tissue specific
expression of the ecotropic retrovirus receptor gene
Human Gene Ther
1998
9 2691―2698
24. Identification of the protein components of mismatch binding
complexes in human cells using a gel-shifit assay
FEBS Lett
1999
31
1―8
86 7601―7605
182
361―364
88 1043―1047
314
453
33―36
85―89
日医大医会誌 2014; 10(2)
73
25. In situ gene trasfer and suicide gene therapy of gastric
cancer in dogs induced by N-ethyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine
J Jpn J Cancer Res
1999
26. Targeted and stable gene delivery into muscle cells by a
two-step transfer system
Biochem Biophys
Res Commun
2000
275
931―935
27. Site-specific integration of an AAV vector plasmid mediated
by regulated expression of Rep based on Cre/lox-P
recombination
J Virol
2000
74
10631―
10638
28. Selective killing of HIV infected cells by targeted gene
transfer and inducible gene expression using a recombinant
HIV vector
Hum Gene Ther
2001
12
227―233
29. Differentiation of transplanted bone marrow cells in the
adult mouse brain
Transplantation
2001
71 1735―1740
30. Preferential gene transfer to BBN-induced rat bladder tumor
by simple instillation of adenoviral vector
Urology
2001
57
579―584
31. Suicide gene therapy for chemically induced rat bladder
tumors entailing instillation of adenoviral vectors
Jpn J Cancer Res
2001
92
568―575
32. Long-term systemic therapy of Fabry disease in a knockout
mouse by adeno-associated virus-mediated muscle-directed
gene transfer
Proc Natl Acad Sci
USA
2002
99
13777―
13782
33. Lentivirus-mediated expression of angiostatin efficiently
inhibits neovascularization in a murine proliferative
retinopathy model
Gene Ther
2003
10
219―226
34. Bone formation following transplantation of genetically
modified primary bone marrow stromal cells
J Orthop Res
2003
21
630―637
35. Osteogenic and Chondrogenic Differentiation by Adiposederived Stem Cells Harvested from GFP Transgenic Mice
Biochem Biophys
Res Commun
2004
23
871―877
36. Adeno-associated viral vector mediated expression on
endostatin inhibits tumor growth and metastasis in an
orthotropic pancreatic cancer model in hamsters
Cancer Res
2004
64 7486―7490
37. HIV vector mediated intra-articular expression of angiostatin
inhibits progression of collagen-induced arthritis in mice
Rheumatol Int
2005
25
522―529
38. Antiangiogenic gene therapy of myeloproliferative disease
developed in transgenic mice expressing P230 ber/abl
Gene Ther
2005
12
541―545
39. Adeno-associated virus vector-mediated anti-angiogenic gene
therapy for collagen-induced arthritis in mice
Clin Exp Rheumatol
2005
23
7―12
40. Co-expression of FGE is essential for synthesis and secretion
of functional arylsulfatase A in a mouse model of
metachromatic leukodystrophy
Hum Gene Ther
2005
16
1―8
41. Mutations of the p53 cDNA sequence introduced by the
retroviral vector
Biochem Biophys
Res Commun
2006
340
567―572
42. Ex vivo cell-mediated gene therapy for metachromatic
leukodystrophy using neurospheres
Brain Res
2006
1094
13―23
43. AAV1 mediated co-expression of formylglycine-generating
enzyme and arylsulfatase A efficiently corrects sulfatide
storage in a mouse model of mitachromatic leukodystrophy
Mol Ther
2007
15
38―43
44. Differential Characteristics of HIV-based vs. SIV-based
lentiviral vector systems: gene delivery to neurons and
axonal transport of expressed gene
Neurosciece Res
2007
57
550―558
45. Systemic cancer gene therapy using adeno-associated virus
type 1 vector expressing MDA-7/IL24
Mol Ther
2007
15 1805―1811
46. HIV vector mediated targeted suicide gene therapy for adult
T-cell leukemia
Gene Ther
2007
14 1662―1667
47. Long-term inhibition of glycosphingolipid accumulation in
Fabry model mice by a single systemic injection of AAV1
vector in the neonatal period
Mol Genet Metab
2009
96
91―96
48. Leukemogenesis of b2a2-type p210 BCR/ABL in a bone
marrow transplantation mouse model using a lentiviral
vector
J Nippon Med Sch
2009
76
134―147
49. Global diffuse distribution in the brain and efficient gene
delivery to the dorsal root ganglia by intrathecal injection of
AAV1 vector
J Gene Med
2009
11
498―505
50. Hematopoiesis in regenerated
hydroxyapatite scaffold
Pediatr Res
2010
68
35―40
bone
marrow
within
90 1039―1049
74
日医大医会誌 2014; 10
(2)
51. Adeno-associated vector(type 8)-mediated expression of
soluble Flt-1 efficiently inhibits neovascularization in a
murine choroidal neovascularization model
Hum Gene Ther
2010
21
52. Successful treatment of metachromatic leukodystrophy
using bone marrow transplantation of HoxB4 overexpressing
cells
Mol Ther
2010
18 1373―1378
53. Prolonged survival and phenotypic correction of Akp2-/hypophosphatasia mice by lentiviral gene therapy
J Bone Miner Res
2011
26
135―142
54. Prevalence of c.1559delT in ALPL, a common mutation
resulting in the perinatal(lethal)form of hypophosphatasia
in Japanese and effects of the mutation on heterozygous
carriers
J Hum Genet
2011
56
166―168
55. A novel mutation screening system for Ehlers-Danlos
Syndrome, vascular type by high-resolution melting curve
analysis in combination with small amplicon genotyping
using genomic DNA
Biochem Biophys
Res Commun
2011
405
368―372
56. Global gene transfer into the CNS across the BBB after
neonatal systemic delivery of single-stranded AAV vectors
Brain Res
2011
1389
19―26
57. Rescue of severe infantile hypophosphatasia mice by AAV
mediated sustained expression of soluble alkaline
phosphatase
Hum Gene Ther
2011
58. AAV-8 vector expressing IL-24 efficiently suppresses tumor
growth mediated by specific mechanisms in MLL/AF4positive ALL model mice
Blood
2012
119
64―71
59. Successful gene therapy
hypophosphatasia
murine
Hum Gene Ther
2012
23
399―406
60. 5’-HS4 core insulator blocks promoter interference in the
lentivirus vector including the MSCV-U3 and EF1α double
internal promoters
Hum Gene Ther
2013
24
117―124
in utero
for
lethal
631―637
22 1355―1364
片山 泰朗 大学院教授
略 歴
1974 年  8  月 日本医科大学卒業
1986 年 10 月 日本医科大学第二内科 講師
1975 年  1  月 日本医科大学第二内科入局
1990 年  4  月 日本医科大学第二内科 助教授
‌
(新 城之介教授の下入局,1981 年 4
1994 年  2  月 日本医科大学神経内科 部長
月より赫 彰郎教授に師事)
1998 年  4  月 日本医科大学第二内科 教授(主任)
1982 年  1  月‌日本医科大学大学院医学研究科(臨床
2006 年  4  月‌日本医科大学内科学(神経・腎臓・膠
系内科学専攻)修了
原病リウマチ部門)教授(主任)
1986 年  9  月~1988 年  7  月
2012 年  4  月‌日本医科大学大学院医学研究科 神経
‌米国ペンシルバニア大学脳外科教室
(Prof. Frank A. Welsh に師事)へ
内科学分野 大学院教授
2014 年  3  月‌日本医科大学定年退職
「脳虚血の病態の研究」
‌
のためリサーチ
フェローとして留学
所属学会と役員等
日本内科学会(評議員)
日本頭痛学会(理事)
日本脳卒中学会(理事)
日本神経感染症学会(評議員)
日本老年病学会(評議員)
日本医科大学医学会(理事)
日本神経学会(評議員)
International Society of Cerebral Blood Flow and
日本神経治療学会(理事)
Metabolism
日本脳循環代謝学会(理事)
World Stroke Organization
日本脳ドック学会(理事)
American Stroke Association
76
日医大医会誌 2014; 10
(2)
執筆活動等
脳循環代謝 編集委員長(2001 年 10 月~2007 年 10 月)
日本医科大学医学会雑誌 編集主幹(2004 年 4 月~
日本神経学会 編集委員(2002 年 7 月~2005 年 5 月)
2008 年 3 月)
脳卒中 編集委員 和文誌:
(1998 年 8 月~2009 年 3
日本神経治療学会 編集委員(2004 年 6 月~2010 年 6
月)英文誌:
(2004 年 3 月~現在に至る)
月)
Journal of Nippon Medical School 編集主幹(2004 年
分子脳血管病 編集委員(2002 年~現在に至る)
4 月~2008 年 3 月)
主催学会
2008 年 11 月 第 20 回日本脳循環代謝学会総会
2013 年  3  月 第 38 回日本脳卒中学会総会
2009 年  6  月 第 18 回日本脳ドック学会総会
2013 年 11 月 第 31 回日本神経治療学会総会
2010 年 11 月 第 38 回日本頭痛学会総会
日医大医会誌 2014; 10(2)
77
記 念 講 演 会 要 旨
私の脳卒中治療研究
片山 泰朗
神経内科学
<脳卒中治療研究との出会い>
学園紛争のあおりで半年遅れの 1974 年 8 月に日本医科大学を卒業となり,1975 年 1 月に脳卒中の診断・治療で
御高名であった新 城之介先生が主催されていた旧第二内科に入局した.特に脳卒中学に興味があったわけではな
かったが,いつの間にか脳卒中の世界に足を踏み入れていた.当時の派遣病院の一つであった山形県の酒田市立総
合病院を研究フィールドとした「脳卒中発症と気候・気圧・天気および時間との関連」についての疫学調査にも参
加させて頂いた.さらに脳梗塞に伴う脳浮腫にステロイドが有効であるかどうかについての実験的研究にも参加さ
せて頂いた.当時 CT スキャンが現れたばかりの時期で臨床的にその効果を具体的に評価することは困難であった.
当教室ではその効果について動物を用いた基礎研究を行い,凍結損傷モデルや脳虚血モデルを用いて脳含水量を測
定してその効果について検討を行った.その後,第二内科学教室は 1981 年より赫 彰郎先生が主任教授となり,引
き続き脳卒中をメインテーマとして脳卒中の臨床および研究がなされた.
脳浮腫の研究はその後も重要なテーマの一つであり,高張溶液グリセオールの抗脳浮腫の研究に発展し,グリセ
オールの脳浮腫に対する効果を検討し,至適投与量,適切な投与方法について明らかとした.
<米国への留学とその後>
脳虚血におけるエネルギー代謝,特に嫌気的解糖産物であり,脳傷害性に作用する lactate 代謝に興味を持ち,そ
の方面の研究で名高い米国 Pennsylvania University Neurosurgery,生化学部門教授の Prof. Frank A. Welsh 先生
の下で 1986 年 9 月~1988 年 7 月に TCA 回路におけるブドウ糖代謝の律速酵素である pyruvate dehydrogenase
(PDH)活性を高めて lactate 蓄積を軽減することが期待される dichloroacetate(DCA)の脳虚血におけるエネル
ギー代謝障害に及ぼす影響について検討を行った.DCA は蓄積した脳組織 lactate を低下させなかったが,二次的
に発生するエネルギー代謝障害を抑制することが示された.
帰国後も PDH 活性と脳虚血におけるエネルギー代謝の研究を継続して,高血糖,一過性脳虚血,脳虚血の持続
時間および Ca2+ 拮抗薬などが lactate 蓄積の key enzyme である PDH 活性と脳代謝に及ぼす影響について研究を
行った.高血糖は lactate 蓄積を増加させ,エネルギー代謝を増悪させることを示した.また,虚血の導入が PDH
活性を上昇させることや Ca2+ 拮抗薬が PDH 活性を早期に正常化し,脳 ATP,PCr 回復を早めることを示した.
<脳保護薬の研究・開発>
2005 年に脳梗塞治療に血栓溶解薬 rt-PA(recombinant tissue plasminogen activator)が承認され,血行再開に
よる予後改善に大きな期待がもたれた.しかし rt-PA の脳梗塞急性期患者への使用率は約 3%に留まり,残りの 97%
は使用されず,予後改善には penumbra 領域をいかに救助するかが重要で,その治療に脳保護薬は不可欠である.
脳保護薬の開発には 1980 年代からフリーラジカルスカベンジャー,Ca2+ 拮抗薬,興奮性アミノ酸拮抗薬(NMDA
拮抗薬,AMPA/KINATE 拮抗薬)
,免疫抑制薬などの多くの薬剤が開発されてきた.われわれはフリーラジカル
スカベンジャー,エダラボンが虚血モデルにおいてアポトーシスを抑制し,さらに脳梗塞症例においてもグリア細
胞に多く含まれる Ca2+ biding protein である S-100β の逸脱を抑制し,脳保護的に動くことを示した.また,rt-PA
と併用は脳梗塞サイズを縮小させ,神経学的徴候を改善することを示した.
また,FK-506(tacrolimus,プログラフ®)は免疫抑制薬として実際の臨床の場で使用されている薬剤である.脳
虚血に対して保護作用があることは 1994 年に Sharkey らにより報告された.われわれは栓糸による中大脳動脈閉
塞モデルを用いてその効果について検討した.その結果,脳梗塞体積・脳浮腫体積を減少させ,そのメカニズムと
して酸化ストレスマーカーや炎症反応を軽減させることを明らかとして,脳保護薬として有用である可能性を示し
78
日医大医会誌 2014; 10
(2)
た.さらに,魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸 EPA(eicosapentaenoic acid)の前投与は脳虚血ラットにおいて脳
梗塞体積・脳浮腫体積を減少し,神経徴候を改善することを明らかとした.
また,最近ではマクロライド系抗生物質,エリスロマイシンやクラリスロマイシンが一過性脳虚血モデルにおい
て脳梗塞体積,脳浮腫体積を減少させ,神経徴候を改善することや,抗酸化作用および抗炎症作用を持つことを見
出し,新たな脳保護薬となりうることを明らかとした.脳梗塞の予後改善に有用と考えられ,今後の臨床応用が期
待される.
<細胞移植による脳梗塞治療>
近年,神経幹細胞移植が脳梗塞の予後を改善する基礎研究がなされ,臨床応用も始まっている.われわれは脳虚
血モデルに自家骨髄単核球細胞や骨髄間葉系幹細胞を移植し,脳梗塞体積・脳浮腫体積を減少させ,神経徴候を改
善することを観察した.また,免疫抑制薬 FK-506 と併用することで好中球やミクログリアなどの炎症性細胞の浸
潤が抑制され,その効果が増強されることも示した.今後,自家骨髄単核球細胞移植は脳梗塞患者の亜急性~慢性
期の治療として期待できるものと考えられた.
これらの基礎研究が臨床応用され,脳卒中治療に大いに貢献できることを期待している.
<脳卒中予防の研究>
脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHR-SP)を用いたスタチン(atorvastatin)の脳卒中予防効果について検
討した.Atorvastatin の高用量投与(20mg/kg)は脳卒中発症までの時間および生存期間を延長させ,内因性 NO
阻害物質である血漿 ADMA(asymmetric dimethylanginine)を減少させた.また,局所脳血流量は増加傾向を示
した.さらに,血管内皮における酸化ストレスマーカー(4-HNE,8-OHdG)および炎症マーカー(Iba-1,LOX-1)
の発現を抑制し,血管内腔/血管壁面積比を改善した.すなわちスタチンは高血圧ラットにおいて血圧や脂質レベル
に影響することなく,脳血管内皮保護効果を発揮しリモデリングを抑制して,脳卒中発症に予防的に作用している
ものと考えられた.
また,脳卒中患者において血漿 ADMA を検討した.その結果,虚血性脳血管障害患者では,aged match の検診
受診者に比べて血漿 ADMA 値が高値であり,また,検診受診者において脳卒中のリスクファクターが多い群でよ
り高値であり,ADMA は脳梗塞のリスクマーカーとなり得る可能性が示唆された.また,スタチン投与により低
下することも示された.
以上のように,スタチンは脳卒中予防に有用であり,脳卒中リスクと密接に関連する ADMA 値を減少させるこ
とを示した.
おわりに
1974 年に日本医科大学を卒業し,第二内科学教室に入局以来約 40 年にわたって脳卒中の診療および研究に関わっ
て参ることができました.2005 年 5 月には当付属病院に脳卒中ケアユニット(Stroke Care Unit:SCU)を設立す
ることができましたことも喜ばしいことでした.長きにわたり日本医科大学に勤務できましたことは,偏に良き師,
指導者に恵まれ,また,良き仲間そして医局員の御支援があって初めてできたものと深甚なる感謝を表します.
日医大医会誌 2014; 10(2)
79
主たる研究業績
英 文
(原著)
  1.‌Susceptibility to ischemic insult in hypertensive rats:
Correlation between degree of ischemia and hypertension
Jpn Circ J
1986
50
258―264
  2.‌Brain eicosanoid levels in spontaneously hypertensive rats
after ischemia with reperfusion: Leukotriene C4 as a possible
cause of cerebral edema
Stroke
1988
19
372―377
  3.‌Plasma levels of leukotriene C4, B4, slow reacting substance of
anaphylaxis in chronological phase of cerebrovascular
disease
Prostaglandins
1988
36
655―665
  4.‌Effect of dichloroacetate on regional energy metabolites and
pyruvate dehydrogenase activity during ischemia and
reperfusion in gerbil brain
J Neurochem
1989
52 1817―1882
  5.‌Role of platelets as a factor aggravating cerebral ischemia
Jpn Circ J
1990
54 1511―1516
  6.‌Effect of a prostacyclin derivative(OP-41483)and a
hyperosmotic agent(glycerol)on brain edema and
metabolism in cerebral ischemia
Jpn Circ J
1992
56 1239―1247
  7.‌The role of bradykinin in mediating ischemic brain edema in
rats
Stroke
1993
24
571―576
  8.‌Effects of long-term administration of ethyl eicosapentate
(EPA-E)on local cerebral blood flow and glucose utilization
in stroke-prone spontaneously hypertensive rats(SHRSP)
Brain Res
1997
761
300―305
  9.‌Ischemic tolerance phenomenon from an approach energy
metabolism and the mitochondrial enzyme activity of
pyruvate dehydrogenase in gerbils
Brain Res
1997
746
126―132
10.‌Effect of hyperglycemia on pyruvate dehydrogenase activity
and energy metabolites during ischemia and reperfusion in
gerbil brain
Brain Res
1998
788
302―304
11.‌The effect of duration of cerebral ischemia on brain pyruvate
dehydrogenase activity, energy metabolites, and blood flow
during reperfusion in gerbil brain
Brain Res
1998
792
59―65
12.‌Increased Intracellular Ca2+ Concentration in the
Hippocampal CA 1 Area during Global Ischemia and
Reperfusion in the Rat: A Possible Cause of Delayed
Neuronal Death
Neuroscience
1998
88
57―67
13.‌Hereditary spastic paraplegia with a thin corpus callosum and
thalamic involvement in Japan
Neurology
1998
51 1751―1754
14.‌Effect of nicardipine, a Ca2+ channel blocker, on pyruvate
dehydrogenase activity and energy metabolites during
cerebral ischemia and reperfusion in gerbil brain
Brain Res
1998
781
212―217
15.‌Delayed administration of ethyl eicosapentate improves local
cerebral blood flow and metabolism without affecting infarct
volumes in the rat focal ischemic model
Eur J Pharmacol
1999
372
167―174
16.‌Japanese nonvalvular Aarial fibrillation-Embolism scondaray
prevention cooperative study group: Optimal intensity of
warfarin therapy for secondary prevention of stroke in
patients with nonvalvular atrial fibrillation. A multicenter,
prospective randomized study
Stroke
2000
31
817―821
17.‌Pyruvate dehydrogenase activity and energy metabolite
levels following bilateral common carotid artery occlusion in
rat brain
Life Sciences
2000
67
821―826
18.‌Effect of long-term administration of JTP-2942, a novel
thyrotropin releasing hormone analogue, on neurological
outcome, local cerebral blood flow and glucose utilization in a
rat focal cerebral ischemia
Brain Res
2001
901
62―70
19.‌Ischemic preconditioning effects the subcellular distribution
of protein kinase C and calcium/calmodulin dependent
protein kinase Ⅱ in the gerbil hippocampal CA 1 neurons
Neurol Res
2001
23
751―754
20.‌Neuroprotective effect of immunosuppressant FK 506 in
transient focal ischemia in rat
Neurol Res
2001
23
755―760
80
日医大医会誌 2014; 10
(2)
21.‌1H magnetic resonance spectroscopic imaging of permanent
focal cerebral ischemic in rat: longitudinal metabolic changes
in ischemic core and rim
Brain Res
2001
907
208―221
22.‌Adenosine receptor antagonists cancelled the ischemic
tolerance phenomenon in gerbil
Brain Res
2001
910
94―98
23.‌The effect of ozagrel sodium on photochemical infarct in rat
Life Sciences
2002
24.‌Effects of glycerol on ischemic cerebral edema assessed by
magnetic resonance imaging
J Neurol Sci
2002
209
69―74
25.‌Protection against ischemic brain injury by protein
therapeutics
Proc Natl Acad Sci
USA
2003
99
17107―
17112
26.‌Distinct Patterns of gene transfer to gerbil hippocampus with
recombinant adeno-associated virus type 2 and 5
Neurosci Lett
2003
340
153―157
27.‌Neuroprotective effect of NS-7, a novel Na+ and Ca2+ channel
blocker, in a focal ischemic model in the rat
Brain Res
2003
969
168―174
28.‌Long-term measurement of cerebral blood flow and
metabolism in a rat chronic hypoperfusion model
Clin Exp pharmacol
Physiol
2003
30
266―272
29.‌Increased regional cerebral blood flow but normal distribution
of GABAA receptor in the visual cortex of subjects with
early-onset blindness
Neuroimage
2003
19
125―131
30.‌Effects of FK506 on the translocation of protein kinase C and
CaM kinase Ⅱ in the gerbil hippocampal CA1 neurons
Neurol Res
2003
25
522―527
31.‌Crossed cerebellar diaschisis in patients with cortical
infarction logistic regression analysis to control for
confounding effects
Stroke
2004
35
472―476
32.‌Feasibility and limitations of perfusion CT in the diagnosis of
acute cerebral infarction
Cerebral Blood Flow
and Metabolish
2004
16
1―11
33.‌Mild hypothermia enhances the neuroprotective effects of
FK506 and expands its therapeutic window following
transient focal ischemia in rats
Brain Res
2004
1008
179―185
34.‌Anti-apoptotic and neuroprotective effects of edaravone
following focal ischemia in rats
Eur J Pharmacol
2005
516
125―130
35.‌Urinary 8-Hydroxy-2’-deoxy guanosine and serum S100β in
acute cardioembolic stroke patients
Neurol Res
2005
27
644―646
36.‌Factors influencing outcome in Guillain-Barre Syndrome:
comparison of plasma adsorption against other treatments
Clin Neurol
Neurosurg
2005
107
491―496
37.‌Differential effects of sublethal ischemia and chemical
preconditioning with 3-nitroproponic acid on protein
expression in gerbil hippocampus
Life Sciences
2005
77 2867―2878
38.‌Cumulative neuroprotection by a combination of ozagrel
sodium and edaravone against photochemical thrombotic
ischemia in rats
Cerebral Blood Flow
and Metabolism
2005
17
39.‌Effect of ischemic preconditioning on cerebral blood flow
after subsequent lethal ischemia in gerbils
Life Sciences
2006
78 1713―1719
40.‌FK-506 extended the therapeutic time window for
thrombolysis without increasing the risk of hemorrhagic
transformation in an embolic rat stroke model
Brain Res
2007
1143
221―227
41.‌Effect of edaravone, a free radical scavenger, on ischemic
cerebral edema assessed by magnetic resonance imaging
Neurol Med Chir
2007
47
197―201
42.‌Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively
reducing cytotoxic oxygen radicals
Nature Medicine
2007
13
688―694
43.‌Extracranial carotid plaque is increasing in Japanese ischemic
stroke patients
Acta Neurol Scand
2007
116
20―25
44.‌Effects of long-term administration of HMG-CoA reductase
inhibitor, atorvastatin, on stroke events and local cerebral
blood flow in stroke-prone spontaneously hypertensive rats
Brain Res
2007
12
125―132
45.‌Combination therapy with transductive anti-death FNK
protein and FK506 ameliorate the brain damage with focal
transient ischemia in rat
J Neurochem
2008
106
258―270
46.‌Predicting the fate of acute ischemic lesions using perfusion
computed tomography
J Comput Assist
Tomography
2008
32
645―650
47.‌Intra-arterial transplantation of bone marrow mononuclear
cells immediately after reperfusion decreases brain injury
after focal ischemia in rats
Life Sciences
2008
12
433―437
71 2983―2994
233―240
日医大医会誌 2014; 10(2)
81
48.‌Involvement of mitoK(ATP)channel in protective
mechanisms of cerebral ischemic tolerance
Brain Res
2008
1238
199―207
49.‌Thrombosis in Japanese patients with Fabry disease
J Neurol Sci
2009
283
83―85
50.‌Nicergoline Increases Serum Substance P Levels in Patients
with an Ischemic Stroke
Cerebrovasc Dis
2010
29
194―198
51.‌Asymmetric dimethylarginine(ADMA)as a possible risk
factor for ischemic stroke
J Neurol Sci
2010
290
12―15
52.‌Early depressive symptoms after ischemic stroke are
associated with a left lenticulocapsular area lesion
J Stroke
Cerebrovasc Dis
2010
19
184―189
53.‌Correlation between insulin resistance and white matter
lesions among non-diabetic patients with ischemic stroke
Neurol Res
2010
32
743―747
54.‌Cilostazol for prevention of secondary stroke(CSPS2)
: an
aspirin-controlled, double-blind, randomised non-inferiority
trial
Lancet Neurology
2010
9
959―968
55.‌S t a t i n t r e a t m e n t d e c r e a s e d s e r u m a s y m m e t r i c
dimethylarginine(ADMA)levels in ischemic stroke patients
J Atheroscler
Thromb
2011
18
131―137
56.‌Combination therapy with bone marrow stromal cells and
FK506 enhanced amelioration of ischemic brain damage in
rats
Life Sciences
2011
89
50―56
57.‌Striatal Distribution of Dopamine Transporters and Dopamine
D2 Receptors at Different Stages of Parkinson’s Disease A
CFT and RAC PET Study
The Neuroradiology
Journal
2011
24
235―241
58.‌FK506 ameliorates oxidative damage and protects rat brain
following transient focal cerebral ischemia
Neurological
Research
2011
33
881―889
59.‌Mild hypothermia enhanced the protective effect of protein
therapy with transductive anti-death FNK protein using a
rat focal transient cerebral ischemic model
Brain Res
2012
1430
86―92
60.‌Therapeutic impact of eicosapentaenoic acid on ischemic
brain damage following transient focal cerebral ischemia in
rats
Brain Res
2013
1519
95―104
川名 誠司 大学院教授
略 歴
1975 年 3 月 新潟大学医学部卒業
1990 年 2 月 北里大学医学部皮膚科助教授
1975 年 4 月 新潟大学医学部衛生学教室助手
1990 年 4 月 聖路加国際病院皮膚科医長
1976 年 4 月 北里大学医学部皮膚科助手
1997 年 7 月 日本医科大学皮膚科学主任教授
1981 年 4 月 北里大学医学部皮膚科講師
2002 年 4 月 日本医科大学大学院医学研究科
1982 年 4 月 Wisconsin 医科大学皮膚科研究員
1983 年 4 月 Texas 大学医学部皮膚科研究員
2003 年 5 月 中国医科大学客員教授兼任
1984 年 6 月 国立横須賀病院皮膚科医長
2014 年 3 月 日本医科大学定年退職
皮膚粘膜病態学分野 大学院教授
1986 年 4 月 北里大学医学部講師
主な研究領域
皮膚アレルギー・免疫学,血管病理学,神経内分泌学,
神経薬理学,美容皮膚科学
資格・専門医
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・指導医
日本アレルギー学会認定専門医・指導医
日本レーザー医学会認定レーザー専門医
日医大医会誌 2014; 10(2)
83
主な所属学会および役員
日本皮膚科学会 評議員
日本研究皮膚科学会 評議員
日本乾癬学会 評議員
日本美容皮膚科学会 理事,評議員
日本皮膚アレルギー学会 評議員
日本レーザー医学会 評議員
日本加齢医学会評議員
日本小児皮膚科学会 評議員
日本接触皮膚炎学会 評議員
日本皮膚心身医学会評議員
光老化研究会世話人
米国研究皮膚科学会
日本アレルギー学会
主催学会
2007 年 8 月 第 25 回日本美容皮膚科学会総会学術大会
2013 年 2 月 第 76 回日本皮膚科学会東京支部学術大会
2010 年 1 月 第 33 回皮膚脈管膠原病研究会
2013 年 7 月 第 37 回日本小児皮膚科学会学術大会
2011 年 7 月 第 12 回光老化研究会
社会的活動
2006 年~2009 年 厚生労働省医師国家試験委員
血管炎・血管障害ガイドライン 2008 年版 作成委員
―‌日本皮膚科学学会診断ガイドライン作成事業
血管炎症候群の診療ガイドライン 2008 年版 作成協
力委員
―‌循 環 器 病 の 診 断 と 治 療 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン
(2006―2007 年度合同研究班報告)
血管炎・血管障害ガイドライン 2014 年版 作成委員
―‌日本皮膚科学学会診断ガイドライン作成事業
Diagnostic Guidelines for Cutaneous Vasculitis(2014)
作成委員
―‌The EADV Task Force Vasculitis and Vasculopathy
84
日医大医会誌 2014; 10
(2)
記 念 講 演 会 要 旨
皮膚と心のクロストーク
川名 誠司
皮膚粘膜病態学
はじめに
皮膚科医になってからの 37 年間のうち,日本医科大学で過ごしてきた後半 17 年間はこれまでの職業歴の中で最
も長いものであった.この間に皮膚科学は大きく変化し,特にアレルギー・免疫学の分野では,今まで不明であっ
たいくつもの病因・病態が明らかになり,新規の免疫抑制薬や抗サイトカイン療法,遺伝子治療などが導入される
ようになった.日本医大皮膚科も急速な時代の流れに対応しながら,他施設をリードする優れた知見を発信できる
ように努めてきた.私自身は血管炎・血栓症,蕁麻疹,膠原病など微小循環系を標的とする疾患,および補体系の
制御異常を専門とした.しかし,こうした生物学としての皮膚科学の進歩にもかかわらず,思うように改善しない
患者も少なくない.これらの患者を詳しく検討すると,その背景に心理的・社会的要因が絡んでいることが多々あ
る.
皮膚は目に見え,手で触れることができるゆえに心の傷と結びやすい.患者は人知れず悩み,対人関係や就業な
どの社会的活動が著しく制限されていることもまれではない.特に慢性炎症性疾患ではその傾向が強いため,皮膚
科医は心理的・社会的問題についても十分理解し,心身両面から治療していくことが望まれている.
本講演では,皮膚と心の関係についてこれまでの臨床経験と皮膚神経内分泌学の基礎研究を基にお話ししたい.
1.皮膚科における心身医学的診療
ある調査によると,皮膚科患者の 80%は何らかのストレスによって皮膚症状が増悪すると感じているとのことで
ある.中でもアトピー性皮膚炎,慢性痒疹,蕁麻疹,酒皶,痤瘡,乾癬,円形脱毛症などは,身体と精神が相互に
関連しあう「心身相関」を明らかに認め,心身医学的診療の対象となる.
心身医学的診療の基本は,医療面接を通して患者とともに問題点を探っていくことであり,患者の言葉に共感し
良好なコミュニケーションを維持しながら徐々に不安や怒り,苦しみなどを発散させることである.当科では早く
から「心療皮膚科外来」を開設し,心理療法士の資格を有する皮膚科医が中心となって患者の心理的ケア(認知行
動療法,環境調整など)にあたっている.しかし,これから紹介する心身医学的診療は,あくまで一般の皮膚科医
が行う「心理的問題に配慮した皮膚科診療」を意味している.ここでは紙面の都合上,アトピー性皮膚炎のみに焦
点を絞る.
1)アトピー性皮膚炎の心身医学
アトピー性皮膚炎は激しい瘙痒を伴う慢性湿疹を主病変とし,遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合った多因子
性の疾患と考えられている.近年,急激な患者数の増加が世界的な問題となっており,特に成人難治症例が目立っ
ている.
アトピー性皮膚炎の難治化には心理ストレスが大きな影響を与えていることは,古くから指摘されてきた.Profile
of Mood States(POMS)によると,緊張・不安状態,うつ状態,疲労感が有意に高い.さらに State-Trait Anxiety
Inventory(STAI)特性不安スコアおよび血小板由来の Translocator protein 18kDa(TSPO)が有意に高く,TSPO
遺伝子解析の結果からも患者はストレス感受性が高い(ストレス耐性がない)ことがうかがわれる.患者はストレ
スが加わると搔破を繰り返すようになり,搔くことでさらに症状が悪化する,いわゆる Itch-scratch cycle から抜け
出せず,心理的に泥沼の中でもだえ苦しむ.こうした状況は,うつ病,学校内でのいじめ,登校拒否,ひきこもり,
パラサイト,親子関係の悪化,家庭内暴力などに繋がっていく.また,長期の医療費負担や就業不能なども含める
と,アトピー性皮膚炎がもたらす社会的・経済的損失はきわめて大きい.
アトピー性皮膚炎患者の診療は,まず初診での病歴聴取から始まる.この時点で患者の苦しみをしっかり聴いて
いこうとする姿勢(傾聴と受容)が重要である.このような受容的雰囲気の中で,しだいに担当医と患者との間で
日医大医会誌 2014; 10(2)
85
信頼関係が築かれる.その後の再診時には,ストレスと皮膚症状との関係を患者とともに粘り強く明らかにしてい
く作業(心理テストなどを活用してもよい)を繰り返していく.特に搔破行動が悪化因子となることから,患者が
これを自覚し行動修正できるように援助していく.こうした取り組みによって多くの患者は自らの感情を上手にコ
ントロールし,自律的なスキンケアが可能となっていく.しかし,より重症の心理的・社会的問題を抱えている患
者に対しては,心理療法に精通した専門医との共同診療が必要である.ただし,現状では信頼できる専門施設は少
ない.
補助的薬物療法として,抗不安薬あるいは抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRI)などを併用す
ることがある.われわれは症例集積研究によって,tandospirone(5-HT1A agonist)が患者の POMS スコアと SCORAD
スコア(疾患重症度)を同時に減少させることを確認している.
痒みを伝える神経は,ヒスタミン感受性無髄 C 神経である.アトピー性皮膚炎の病変皮膚には自由神経終末の著
しい伸長が観察される.健常皮膚に一定量の搔き刺激を加えると,短時間で nerve growth factor(NGF)と NGF
受容体の発現増加,neutral endopeptidase(NEP)の減少が観察され,続いて substance P(SP)陽性神経線維の
伸長とマスト細胞の脱顆粒が増加する.したがって,NGF の発現が Itch-scratch cycle の発端となっていると考え
る.将来は抗 NGF 作用薬や抗 SP 作用薬が新規治療薬として有望かもしれない.
2.ストレスが皮膚に及ぼす病態メカニズム
1)中枢性ストレス応答系
心理ストレスの伝達経路には 2 つの主要なストレス応答系がある.一方は自律神経系であり,交感神経が活性化
されると循環器系,消化器系,免疫系が反応し,心拍数増加,血圧上昇,蠕動運動亢進,免疫低下などが生じ,皮
膚には発汗,冷感,顔面蒼白などが見られる.他方は内分泌系であり,視床下部から corticotropin-releasing hormone
(CRH)が産生され,下垂体―副腎系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis: HPA axis)を経由してグルココルチコ
イドの産生が高まり,全身の免疫系が低下する.一方,免疫担当細胞から産生された IL-1,IL-6 などの炎症性サイ
トカインは,視床下部の CRH の産生を促し,HPA axis を作動させる.このように生体においては,神経内分泌系
と免疫系がバランスを保ちながら恒常性を維持している.
2)皮膚ストレス応答系
皮膚はケラチノサイト,Langerhans 細胞を中心に重要な免疫担当臓器として機能している.さらに,皮膚は
CRH,proopiomelanocortin(POMC)ペプチド(ACTH,MSH,β- エンドルフィンなど)およびその受容体を産
生し,HPA axis と同等の CRH-POMC 反応系を有することも明らかになっている.皮膚に環境ストレス(日光,温
熱,生物学的侵襲など)が加わったとき,この系が作動し,皮膚免疫系とともにストレスに対する防御機構を巡ら
せている.
したがって,生体は心理ストレスに対しては上記の中枢性ストレス応答系が反応し,環境ストレスに対しては皮
膚のストレス応答系が反応するという,時間的,空間的に効率のよい役割分担をしている.
3)皮膚機能に対するストレスの影響
心理ストレスが皮膚にどのような影響を与えているか調べるためにコミュニケーションボックスを用いた動物実
験を行ったので紹介する.例えば,マウスあるいはラットに心理ストレスを与えると引搔き行動が増加する.この
時点で dorsal root ganglion(DRG)および皮膚には SP と NGF の産生が高まり,ついで皮膚 SP 陽性神経の伸長,
マスト細胞の脱顆粒が観察される.また,角層のバリア機能の障害,易感染性,接触アレルギー反応の増強も確認
される.そこに関わる因子は,脳からのストレス情報によって産生された CRH,グルココルチコイドであり,末梢
神経あるいは血液を介して皮膚のストレス応答系に作用する.また,ストレスは皮膚の NGF と SP の産生を増加さ
せ,マスト細胞に作用する.さらに放出されたヒスタミンは Th2 優位に誘導する.
ストレス下では,毛周期の休止期が有意に延長し,成長期への移行が遅延する.また,表皮・毛包ケラチノサイ
トの細胞死が増加する.その機序として,心理ストレスによって増加した脳 CRH/ウロコルチンが,末梢神経経由
で毛周期を変調させた可能性がある.あるいは,ストレスにより有意に上昇した血中コルチコステロンが毛包細胞
の増殖抑制と細胞死を誘導した可能性もある.
以上の結果は,心理ストレスがアトピー性皮膚炎,蕁麻疹,脱毛症の発症や悪化をもたらす機序の一部を説明し
ている.
86
日医大医会誌 2014; 10
(2)
おわりに
皮膚疾患患者の心理的要因は多くの皮膚科医にとって難しい,とっつきにくい対応課題である.そして,時間と
根気を必要とする.しかし,だからと言ってすぐさま心理専門家に任せるという診療態度は決してよい結果を生ま
ない.あくまで治療の基本は皮膚科医が主体的に行うことであり,皮膚科医が患者の肌に触れ,患者の言葉に共感
しながら丁寧に診察していくことが,患者にとって何よりの安心と慰めを与える.その上で必要に応じて心理専門
家の協力を仰ぐことが大切である.
退職後は現役時代より格段に自由な時間を使える身となる.病める人の心の声に耳を傾ける医師として,新たに
出発する日を心待ちにしている.
日医大医会誌 2014; 10(2)
87
主たる研究業績
英 文(原著)
  1.‌Negligible potency of acetylcholine in increasing vascular
permeability
Arch Int
Pharmacodyn Ther
1980
244
32―40
  2.‌Complement fixation by pemphigus antibody. I. In vitro
fixation to organ and tissue culture skin
J Invest Dermatol
1984
82
506―510
  3.‌Immunopathologic mechanisms in pemphigus and bullous
pemphigoid
J Invest Dermatol
1985
85
72―78
  4.‌Complement fixation by pemphigus antibody. II. Complement
enhanced detachment of epidermal cells
Clin Exp Immunol
1985
61
517―525
  5.‌Microcirculatory changes during skin allograft rejection and
prolongation of survival time by antiplatelet agents
Int J Tissue React
1986
8
119―128
  6.‌Value of the assay for IgA-containing circulating immune
complexes in Henoch-Schönlein purpura
Dermatologica
1986
172
245―253
  7.‌Complement fixation by pemphigus antibody. III. Altered
epidermal cell membrane integrity mediated by pemphigus
antibody and complement
J Invest Dermatol
1986
86
29―33
  8.‌Complement fixation by Brazilian pemphigus foliaceus
autoantibodies
Clin Exp Immunol
1988
71
464―469
  9.‌Deposition of the membrane attack complex of complement in
pemphigus vulgaris and pemphigus foliaceus skin
J Invest Dermatol
1989
92
588―592
10.‌Increased levels of immunoreactive leukotriene B4 in blister
fluids of bullous pemphigoid patients and effects of a
selective 5-lipoxygenase inhibitor on experimental skin
lesions
Acta Derm
Venereol
1990
70
281―285
11.‌Membrane attack complex of complement in HenochSchönlein purpura skin and nephritis
Arch Dermatol Res
1990
282
183―187
12.‌Involvement of membrane attack complex of complement in
UV-B-induced acantholysis in pemphigus
Arch Dermatol
1990
126
623―626
13.‌Serum SC5b-9(terminal complement complex)level, a
sensitive indicator of disease activity in patients with
Henoch-Schönlein purpura
Dermatology
1992
184
171―176
14.‌Confocal laser scanning microscopic and immunoelectron
microscopic studies of the anatomical distribution of fibrillar
IgA deposits in dermatitis herpetiformis
Arch Dermatol
1993
129
456―459
15.‌Epidermolysis bullosa simplex with transient erythema
circinatum
Br J Dermatol
1994
131
571―576
16.‌Changes in clinical features, histologic findings, and antigen
profiles with development of pemphigus foliaceus from
pemphigus vulgaris
Arch Dermatol
1994
130 1534―1538
17.‌Pustular psoriasis and aseptic purulent arthritis: possible role
of leukotrienes B4 and C4 in a flare of synovitis
Dermatology
1995
190
35―38
18.‌The membrane attack complex of complement alters the
membrane integrity of cultured endothelial cells: a possible
pathophysiology for immune complex vasculitis
Acta Derm
Venereol
1996
76
13―16
19.‌Drug eruption induced by cyanamide(carbimide)
: a clinical
and histopathologic study of 7 patients
Dermatology
1997
195
30―34
20.‌In situ expression of corticotropin-releasing hormone(CRH)
and proopiomelanocortin(POMC)genes in human skin
FASEB J
2001
21.‌Expression of IL-18 mRNA and secretion of IL-18 are reduced
in monocytes from patients with atopic dermatitis
J Allergy Clin
Immunol
2001
108
607―614
22.‌Expression and function of CD43 and CDw60 on T cells from
patients with atopic dermatitis
Acta Derm
Venereol
2001
81
263―267
23.‌Which bioengineering assay is appropriate for irritant patch
testing with sodium lauryl sulfate?
Contact Dermatitis
2001
45
286―290
24.‌Irritant patch testing with sodium lauryl sulphate:
interrelation between concentration and exposure time
Br J Dermatol
2001
145
704―708
25.‌Differences of skin irritation between Japanese and European
women
Br J Dermatol
2002
146 1052―1056
15 2297―2299
88
日医大医会誌 2014; 10
(2)
26.‌Systemic immunotherapy with topical dinitrochlorobenzene
as additional treatment of alopecia areata
Acta Derm
Venereol
2002
82
136―138
27.‌Wound healing involves induction of cyclooxygenase-2
expression in rat skin
Lab Invest
2002
51
968―972
28.‌Mast cells and T cells in Kimura’s disease express increased
levels of interleukin-4, interleukin-5, eotaxin and RANTES
Clin Exp Allergy
2002
32 1787―1793
29.‌Corticotropin-releasing factor receptor type 1 is involved in
the stress-induced exacerbation of chronic contact dermatitis
in rats
Exp Dermatol
2003
12
47―52
30.‌Divergence of contact hypersensitivity in vivo compared with
hapten-specific lymphocyte proliferation and interferongamma production in vitro following ultraviolet B irradiation:
the possibility that UVB does not affect the sensitizing phase
of contact hypersensitivity
Immunology
2003
108
570―578
31.‌Down-regulation of Toll-like receptor expression in monocytederived Langerhans cell-like cells: implications of lowresponsiveness to bacterial components in the epidermal
Langerhans cells
Biochem Biophys
Rec Commun
2003
306
674―679
32.‌Intermittent foot shock stress prolongs the telogen stage in
the hair cycle of mice
Exp Dermatol
2003
12
371―377
33.‌Human papillomavirus infection in actinic keratosis and
Bowen’s disease: comparative study with expression of cellcycle regulatory proteins p21(Waf1/Cip1),p53, PCNA, Ki-67,
and Bcl-2 in positive and negative lesions
Hum Pathol
2003
34
886―892
34.‌Cimetidine treatment for viral warts enhances IL-2 and IFNgamma expression but not IL-18 expression in lesional skin
Eur J Dermatol
2003
13
445―448
35.‌Human airway trypsin-like protease induces PAR-2-mediated
IL-8 release in psoriasis vulgaris
J Invest Dermatol
2004
122
937―944
36.‌Nitric oxide inhibits ultraviolet B-induced murine
keratinocyte apoptosis by regulating apoptotic signaling
cascades
Free Radic Res
2004
38
943―950
37.‌Quercetin-induced melanogenesis in a reconstituted threedimensional human epidermal model
J Mol Histol
2004
35
157―165
38.‌Cutaneous immunological activation elicited by a low-fluence
pulsed dye laser
Br J Deramtol
2005
153
57―62
39.‌Increased expression of matrix metalloproteinase-2, matrix
metalloproteinase-9 and matrix metalloproteinase-13 in
lesional skin of bullous pemphigoid
Int Arch Allergy
Immunol
2006
139
104―113
40.‌Role of substance P in stress-derived degranulation of dermal
mast cells in mice
J Dermatol Sci
2006
42
47―54
41.‌Increased expression of RANTES, CCR3 and CCR5 in the
lesional skin of patients with atopic eczema
Int Arch Allergy
Immunol
2006
139
245―257
42.‌Targeting of sebocytes by aminolevulinic acid-dependent
photosensitization
Photochem
Photobiol
2006
82
453―457
43.‌Dynamic changes in nerve growth factor and substance P in
the murine hair cycle induced by depilation
J Dermatol
2006
33
833―841
44.‌Changes in cutaneous sensory nerve fibers induced by skinscratching in mice
J Dermatol
2007
46
41―51
45.‌Objective evaluation of the effect of intense pulsed light on
rosacea and solar lentigines by spectrophotometric analysis
of skin color
Dermatol Surg
2007
33
449―454
46.‌Foot shock stress prolongs the telogen stage of the
spontaneous hair cycle in a non-depilated mouse model
Exp Dermatol
2007
16
553―560
47.‌Rapid changes in substance P signaling and neutral
endopeptidase induced by skin-scratching stimulation in
mice
J Dermatol Sci
2007
48
123―132
48.‌A transient unresponsive state of self-scratching behaviour is
induced in mice by skin-scratching stimulation
Exp dermatol
2007
16
737―745
49.‌Erratum to “changes in cutaneous sensory nerve fibers
induced by skin-scratching in mice”
J Dermatol
2007
47
172―182
50.‌Inhibitory effects of antipsychotic and anxiolytic agents on
stress-induced degranulation of mouse dermal mast cells
Clin Exp dermatol
2010
35
531―536
51.‌Effect of smooth pulsed light at 400 to 700 and 870 to 1,200
nm for acne vulgaris in Asian skin
Dermatol Surg
2010
36
52―57
日医大医会誌 2014; 10(2)
89
52.‌Effect of epinastine hydrochloride on murine self-scratching
behavior after skin-scratching stimulation
Arch Dermatol Res
2010
302
19―26
53.‌Efficacy of a 5-HT1a receptor agonist in atopic dermatitis
Clin Exp Dermatol
2010
35
835―840
54.‌Combination of carbon dioxide laser therapy and artificial
dermis application in plantar warts: human papillomavirus
DNA analysis aftertreatment
Dermatol Surg
2010
36 1401―1405
55.‌Comparative split-face study of 5-aminolevulinic acid
photodynamic therapy with intense pulsed light for
photorejuvenation of Asian skin
J Dermatol
2010
37 1005―1010
56.‌Effects of stress memory by fear conditioning on nerve-mast
cell circuit in skin
J Dermatol
2011
38
553―561
57.‌Revascularization by percutaneous transluminal angioplasty
improved abruptly deteriorated ischaemic symptoms in
cutaneous polyarteritis nodosa
Clin Exp Dermatol
2011
36
502―505
58.‌Targeting of sebaceous glands by δ-aminolevulinic acid-based
photodynamic therapy: An in vivo study
Lasers Surg Med
2011
43
376―381
59.‌Specific substance of Maruyama(SSM)suppresses immune
responses in atopic dermatitis-like skin lesions in DS-Nh
mice by modulating dendritic cell functions
J Dermatol Sci
2011
63
184―190
60.‌E-cadherin interactions are required for Langerhans cell
differentiation
Eur J Immunol
2013
43
270―280
清水 一雄 大学院教授
略 歴
1973 年 8 月
日本医科大学卒業
1990 年 4 月
日本医科大学第 2 外科 講師
1973 年 12 月
医師国家試験合格
1996 年 4 月
日本医科大学第 2 外科 助教授
1973 年 12 月‌日本医科大学付属第一病院第 2 外科
1999 年 7 月
日本医科大学第 2 外科 教授
入局
2003 年 4 月‌日本医科大学外科学第 2 講座(内分
1978 年 3 月‌日本医科大学大学院医学研究科修了
泌外科・心臓血管外科・呼吸器外科)
(第一病理)
,医学博士
主任教授・内分泌外科部長
1980~1982 年‌米国 North Carolina 州 Duke 大学外
2006 年 4 月~‌日本医科大学外科学講座(内分泌・
科留学(Prof. Samuel A. Wells, Dr.
心臓血管・呼吸器部門)主任教授・
George S. Eisenbarth)
内分泌外科部長
1989~1990 年‌米 国 Boston, Harvard University
2012 年 4 月~‌日本医科大学大学院医学研究科内分
Joslin Clinic(Dr. George S.
泌外科大学院教授・内分泌外科部
Eisenbarth)
長,
(内分泌外科・心臓血管外科・呼
St.
‌ Louis, Washington University,
吸器外科)統括責任者
Department of Surgery へ留学
(Prof.
2014 年 3 月
日本医科大学定年退職
& Chiarman Samuel A. Wells)
専門分野
内分泌外科の基礎と臨床,甲状腺・副甲状腺内視鏡手術
非常勤講師および客員教授ほか
国立琉球大学医学部非常勤講師,旭川医科大学耳鼻咽
科客員教授,エジプトカイロ大学外科客員教授,エジ
喉科・頭頸部外科非常勤講師,マレーシア国民大学外
プトアレキサンドリア大学学位審査委員
日医大医会誌 2014; 10(2)
91
Official Referee in Medical Journal
Endocrine Journal, Surgery Today, British Journal of
Endocrine Surgery, World Journal of Endocrine
Surgery, Journal of Nippon Medical School,
Surgery(Editorial Board)
主な海外ボランティア活動
1999 年~ ‌チェルノブイリ原発後小児甲状腺癌に対す
る医療支援活動―医療技術および手術指導
主催国内学会
2002 年 9 月 18 日‌第 5 回内視鏡下内分泌手術
2009 年 4 月 18 日‌第 1 回大江戸内分泌手術手
研究会:東京
技懇話会:東京・日本医科大
2003 年 6 月 26 日‌第 13 回吊り上げ法手術手技
研究会:東京・日本医科大学
学橘桜ホール
2011 年 7 月 7~8 日‌第 23 回日本内分泌外科学会
橘桜ホール
学術集会:東京・ホテルオー
2006 年 10 月 26~27 日 ‌第 39 回日本甲状腺外科学会
総会:東京・東京ドームホ クラ
2011 年 12 月 10 日‌第 823 回外科集談会当番世
テル
話人:東京・東大山上会館
主催国際学会
1993 年 2 月‌第 6 回アジア太平洋内分泌会
2004 年 10 月‌第 16 回アジア太平洋内分泌会
議(6th Asian-Pacific Endocrine
議(16th Asia Pacific Endocrine
Conference)
:米国ハワイ州ホ
Conference:Vice-president)
ノルル市
Ho Chimineh, Vietnam
2000 年 2 月‌第 13 回アジア太平洋内分泌会
2006 年 1 月 7~8 日‌第 17 回アジア太平洋内分泌会
議
(13th Asian-Pacific Endocrine
議(17th Asia Pacific Endocrine
Conference)
:米国ハワイ州ホ
Conference)Kuala Lumpur,
ノルル市
Malaysia
2010 年 3 月 22~23 日‌第 12 回アジア内分泌外科学会
2007 年 12 月 8 日‌6th Annual congress of
学 術 集 会(12th Congress of
GasLESS International
Asian Association of Endocrine
2007:中国,北京
Surgeons)
:東京,京王プラザ
ホテル
主な所属学会
国内学会
College of Surgeons
(ACS: active member)
, Asian-Pacific
日本医科大学医学会,日本外科学会,日本内分泌外科
Endocrine Conference(APEC), Endoscopic and
学会,日本内分泌学会,日本甲状腺外科学会,日本甲
Laparoscopic Society of Asia(ELSA: Faculty
状腺学会,日本臨床外科医学会,日本内視鏡外科学会,
日本外科系連合学会
member), Asian Association of Endocrine Surgeons
(AsAES)
, European Association of Endoscopic
主な国際学会
Surgery(EAES), European Society of Endocrine
International Society of Surgery(ISS)
, International
Surgeons(ESES)
Association of Endocrine Surgeons(IAES)
, American
92
日医大医会誌 2014; 10
(2)
主な学会役員(国内)
日本外科学会代議員,日本外科学会外科関連学会協議
日本内視鏡外科学会評議員,日本内視鏡外科学会技術
会委員,日本内分泌外科学会理事,同評議員,日本内
認定ビデオ審査委員,日本小切開・鏡視外科学会理事,
分泌学会評議員,日本臨床外科医学会評議員,日本甲
大江戸内分泌手術手技懇話会代表世話人
状腺外科学会理事,同理事長,日本甲状腺学会理事,
主な学会役員(国外)
International Association of Endocrine Surgeons
Fellow of American College of Surgeons(FACS)
,
(Active Member)
, Asian-Pacific Endocrine Conference
European Association of Endoscopic Surgery(EAES)
(Organizing Committee)
, Asian-Pacific Endocrine
(Member), World Journal of Endocrine Surgery:
Conference(APEC)
: Vice-president, Asian-Pacific
Editorial Board
Endocrine Conference(APEC)
: President(2008 年~)
,
東京都医師会関係
東京都医師会学術委員会委員長(2013 年 9 月~)
その他の主な委員
東京女子医科大学病院医療安全管理特別部会外部評価
11 月 8 日~)
委員(平成 25 年 1 月 23 日)
環境省「東電福島原発事故に伴う住民の健康管理のあ
刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会委
り方に関する専門会議」委員(平成 25 年 11 月 11 日
員(平成 25 年 4 月~)
~)
福島県「県民健康調査」検討委員会委員(平成 25 年 5
福島県「県民健康調査」検討委員会「甲状腺検査評価
月~)
部会」部会長(平成 25 年 11 月 27 日~)
「福島県甲状腺検査支援合同委員会」委員(平成 25 年
賞 罰
1999 年‌第 11 回日本内視鏡外科学会総会,
る基礎研究と臨床応
会長奨励賞受賞
演題名:Video-assisted neck surgery
用
2010 年度‌東京都医師会学術委員功労賞(10
(VANS)
:内分泌外科領
年在任)受賞
域における内視鏡下頚部
2011 年度‌日本医科大学賞(教育部門)受賞
手術 20 例の経験
2011 年度
1997 年度‌東京都医師会医学研究賞「奨励
賞」受賞
‌平成 23 年度(2011 年度)東京都
医師会グループ研究賞
研究課題:‌チェルノブイリ原発事
研究課題:バセドウ病術後永続的
故後の甲状腺癌に対
甲状腺機能低下症に
する医療支援―福島
対する凍結保存甲状
原発事故後の対応を
腺の自家移植に関す
見据えて
日医大医会誌 2014; 10(2)
93
記 念 講 演 会 要 旨
本学内分泌外科学分野の確立に向けた新知見,新技術へのあくなき挑戦
清水 一雄
内分泌外科学
はじめに
学生時代を含め 47 年間,医師として日本医科大学で 41 年間お世話になり,この度,無事責務を終え大学を退任
することになりました.現職時代は,学内外のたくさんの先輩,同僚そして後輩,関係各位にお世話になり支えら
れて任期を全うできたこと感謝の気持ちで一杯です.誠にありがとうございました.この場をお借りして私の大学
時代から,大学卒業後の医師としての大学生活を振り返ってみたいとおもいます.
学生時代
1967 年,大学に入学し市川の進学過程に通い始めたころは,学園紛争の真っただ中でした.入学後すぐ約 3 カ月
間,また大学 3 年次にも同様に約 3 カ月のストによる授業ボイコットがあり,卒業は 1973 年 8 月,秋の国家試験受
験となりました.この 6 年半の間,波乱の学生時代でしたが,サッカー部とミッドナイトサウンズジャズオーケス
トラでフル活動しました.音楽部では,アルトサックスとフルートでたくさんのステージを踏みました.ダンスパー
ティの華やかな頃でシーズンには毎週土曜日,日曜日はパーティでの演奏,昼はサッカーの練習や試合が重なるこ
とも多くありました.月曜日から金曜日までは音楽部の練習,土曜日はサッカーの練習,日曜日は試合と慌ただし
い一週間で,夏には二つのクラブの合宿もあり忙しい学生生活でした.市川のころ麻雀も手がけましたが全部やっ
ていると医者になれないと真剣に考え麻雀を止めました.やっと 8 月に正規卒業し秋に行われた国家試験にやっと
通った思い出があります.
医師としての 41 年間の思い出
卒業後は,一般・消化器外科医をめざし片岡一朗教授の主宰する第一病院第 2 外科に入局いたしました.以来今
日の退任を迎えるまでの 41 年間,あまりにもたくさんのことがありましたが今振り返ってみるととても短く感じ,
かつ充実した大学生活でした.私は今まで人生の節目節目で立派な指導者,良き先輩,同僚,後輩に恵まれ分岐点
で選択肢に迷うときは適切なアドバイスを頂き今日を迎えることができたと思っています.そのすべてをご紹介す
ることができませんが私を大学人として支えてくれたいくつかの仕事,私を医師として今日までを支えて頂いた多
くの方々を紹介させて頂きます.
甲状腺との最初の出会い
入局後,矢島権八教授の主宰する第一病理の大学院に入学しました.教室のメインテーマである腎臓に着手する
ものと思っていたところ,ある日教授室に呼ばれました.お仕事中の顕微鏡から眼を離し私の方を振り返りながら
「甲状腺をやりなさい」とおっしゃいました.これが今日まで私が甲状腺・内分泌外科を続けることになった最初の
出会いです.当時講師でおられた畠中洋一先生が一人で甲状腺の研究をされていて組織標本を手に入れるため表参
道の甲状腺専門病院である伊藤病院を紹介して頂きました.伊藤病院から手術標本を豊富に得ることができました
ので畠中先生のご指導の元,各種甲状腺疾患の光顕的,電顕的免疫組織化学の仕事が大変早く終わりました.この
時,甲状腺疾患をミクロのレベルで理解し診断できても,甲状腺疾患の患者さんを診ることができなかったのでそ
のまま伊藤病院で常勤医として臨床の研鑽を積ませて頂きました.これが甲状腺との深い関わり合いを持つきっか
けとなりました.そこで指導を仰いだ当時の伊藤國彦院長と三村 孝副院長は臨床,学問に対する姿勢のすべてを
教えて頂き学会発表,論文発表の機会もたくさん指導して頂き今までで最も尊敬する恩人の中のお二人です.
94
日医大医会誌 2014; 10
(2)
米国留学そして内分泌外科医としてのスタートのきっかけ
伊藤病院を終了後は,まだ一般・消化器外科医を目指して富士宮市立病院に 2 回ほど派遣を経験しておりました.
病院の裏がゴルフ場ですのでここでゴルフも覚え,手術は消化器外科を中心に一般外科手術を多数経験いたしまし
た.外科医として初めて出張したときは医長であった野口達也先生には手術のみならずゴルフの手ほどきも受け,
中堅医師として再度富士宮に出張の時は松野正孝先生,野中達也先生に消化器外科の大きな手術を中心に多数例の
指導を頂きました.
帰局後,留学のチャンスが訪れました.ちょうど 30 歳の頃,扁桃腺の手術を受け入院中に,米国 Duke 大学外科
の Prof. Samuel A. Wells, Jr. に直接留学希望の手紙を書きました.自己紹介と留学の気持ちをつたない英語で綴っ
たものでした.先方にとっては,紹介者もいない,一東洋人からの留学希望の手紙でしたので,恐らく戸惑ったこ
とでしょう.少し経ってから思いがけず Professor Wells から留学許可の直接の手紙がきました.驚きでした.この
チャンスを逃すこと無く庄司教授,教室員の許可を得て 1980 年から 82 年まで米国 North Carolina 州の Duke 大学
外科に留学し,Professor Samuel A. Wells のラボに所属しました.彼は,当時から内分泌外科医として,特に凍結
保存副甲状腺の自家移植で名声がありその後,St. Louis の Washington 大学外科の Chairman, さらにはアメリカ外
科学会(American College of Surgeons)の Director となり頂点に上り詰めます.Duke では,2 年間,Immunology
のラボを紹介され Dr. George S. Eisenbarth の元で当時最先端であったモノクローナル抗体を応用した免疫組織化
学的研究を行いました.幸い外科のボスが内分泌外科医であったためここでも十分な研究材料が手に入り,いくつ
かの論文を作成しました.この Dr. George Eisenbarth は私の帰国と同時に Boston にある Harvard 大学の Joslin
Clinic(糖尿病)に移動,その後 Colorado 州,Denver の Barbara Davis 糖尿病センターの President に上り詰めま
す.私はこの二人の巨頭を追いかけてもう一度 1989 年から 90 年まで留学しております.最初は,Boston の Joslin
にいる Dr. Eizenbarth を訪れここではモノクローナル抗体につき更に新しい知識を得,その後 St. Louis にいる
Professor & Chairman, Dr. Samuel Well のところに移り内分泌外科の手術に毎日入り多数の手術経験をしました.
一方,前後しますが,1978~79 年,伊藤病院から医局へ帰った頃,当時の主任教授,庄司 佑先生から大学で甲
状腺の専門外来を持ったらどうかと薦めて頂き当時としてはまれな専門外来を開設しました.最初,患者さんは来
ませんでしたが,最初の Duke への留学から帰国後も続行していると教室 OB の先生方,関連施設からの紹介患者
さんが徐々に増えてきました.この頃から当時千駄木の第 3 内科におられた若林一二教授が,内分泌内科ご専門で
私が第一病院で甲状腺外来を行っていることに気づかれ甲状腺疾患のみならず副甲状腺疾患,副腎疾患を多数ご紹
介頂き内分泌外科医としての基盤を作って頂きました.残念ながら若林教授はその現役時代に他界されました.私
にとっては痛恨の極みで大学において内分泌外科医として私を育てて頂いた若林教授からのご恩は生涯忘れること
はありません.これが今日の本学内分泌外科分野の原点です.このように最初は一般消化器外科を目指した私でし
たが,内分泌外科症例数の増加とともに次第に内分泌外科医に移行していきました.この様々な分岐点で出会った
矢島権八先生,畠中洋一先生,伊藤國彦先生,三村 孝先生,Professor Samuel A. Wells, Dr. George S. Eisenbarth,
庄司 佑先生そして若林一二先生の存在は今の私にとって忘れることができません.
内分泌外科医としての足跡ー私を支えたいくつかの仕事
1.各種モノクローナル抗体を応用した内分泌腫瘍に対する免疫組織化学的研究と臨床応用
Dr. George S. Eisenbarth から提供されたモノクローナル抗体 A2B5,4F2,HISL19 を用いて内分泌腫瘍に対する
診断と治療に関する研究を行いました.A2B5 は neural crest origin の内分泌組織で下垂体前葉,甲状腺傍濾胞細
胞(C-cell)
,膵ラ氏島細胞,副腎髄質に特異的に結合します.抗原決定基が GQ ganglioside で抗原は細胞膜に局在
します.本抗体はこれらの細胞から発生する内分泌腫瘍の特異的マーカーとなり,さらには,アイソトープをラベ
ルした本抗体は,動物実験で移植されたこれらの腫瘍(下垂体前葉腫瘍,甲状腺髄様癌,インスリノーマ,ガスト
リノーマ,副腎褐色細胞腫など)に集積し,シンチグラムで hot spot になることから局在診断に有効でした.さら
には本抗体に抗がん剤をラベルすれば,投与することにより特異的に腫瘍を破壊するミサイル療法の可能性を模索
しました.HISL19 も同様な抗体であり,同様な研究を行いました.4F2 は,甲状腺悪性腫瘍の中でも未分化癌に特
に陽性を示したため,この難攻不落な悪性腫瘍に対する新しい治療法として期待されました.また分化型から未分
化型へ移行する像を免疫組織化学的に証明することも手がけました.このようにこれらの抗体を使って研究をし,
いくつかの学位論文も完成させました.
日医大医会誌 2014; 10(2)
95
2.二次性(腎性副甲状腺機能亢進症)の手術適応―骨軟化症(アルミニウム骨症)との鑑別に関する臨床研究
腎不全患者(多くは透析患者さん)に発症する二次性副甲状腺機能亢進症の臨床症状は耐えがたい全身搔痒感,
骨塩量低下による骨痛あるいは病的骨折,異所性の石灰化など,患者さんの QOL を大きく損ないます.副甲状腺
手術による効果はそれらの症状を劇的に改善するため,それだけに患者さんの喜びは大きいものがあります.しか
し,同じ透析患者さんに発症するアルミニウム骨症(骨軟化症)は,臨床症状が似ているものの副甲状腺手術を行
うと臨床症状はかえって悪化します.したがってこの同様な原因で発症するこの二つの疾患を鑑別することはきわ
めて重要です.春日部秀和病院の内科(現つきの森クリニック)におられた本学第 2 内科出身の栗原 怜先生のご
指導とご協力のもと鑑別の困難な症例の骨生検を行い骨化前線に沈着するアルミニウムの程度をアルミニウム染色
により明らかとし多くの本疾患患者を手術から除外することができました.
3.甲状腺原発明細胞癌(甲状腺濾胞癌の亜型:clear cell carcinoma)と腎明細胞癌(Grawitz’ 腫瘍,renal cell
carcinoma)からの転移性甲状腺腫瘍との鑑別
甲状腺濾胞癌の亜型である clear cell carcinoma of the thyroid と腎原発 renal cell carcinoma(いわゆる Grawitz’
腫瘍)との鑑別は HE 染色では不可能とされています.したがって腎癌が甲状腺に転移した場合,この腫瘍は腎か
らの転移か甲状腺原発かを鑑別することは不可能ということになります.したがって甲状腺に clear cell carcinoma
を診断したときは,腎癌の既往の有無,また現在罹患しているかどうかを確認し診断する以外にありません.その
ため本学病理に存在する多数例の病理学的 clear cell change を呈した甲状腺原発腫瘍と腎癌症例をリストアップし
PAS 染色,Tg 染色などの免疫組織化学的手法を用いてその鑑別法を明らかにすることに着手しました.ちなみに
私の報告した症例報告「甲状腺転移を来した Grawitz’ 腫瘍の 2 症例」は,図らずも本邦最初の報告であったことか
ら今でも本疾患の症例報告に引用されています.
4.術後永続的甲状腺機能低下症を来したバセドウ病に対する凍結保存甲状腺組織の自家移植
バセドウ病の三大治療法の一つである手術療法は治療後の甲状腺機能が早期に安定する利点があり,現在,三大
治療法の中の 10%弱ですが,重要な治療法として手術のニーズがあります.この中で抗甲状腺薬による内科的治療
から解放されるために手術療法を選択したにもかかわらず術後永続的甲状腺機能低下症を来たし,反対に甲状腺ホ
ルモン薬を生涯必要とする症例に遭遇することがあります.現在は術後甲状腺機能低下状態としてホルモン補充を
する治療が一般的となりつつありますがまだ薬服用からの解放を目的として手術を受ける症例も見られます.綿密
な基礎実験の後,
手術的治療を受けたバセドウ病患者さんの摘出標本を-196℃に凍結保存し術後永続的甲状腺機能
低下症と診断した 4 症例に対し,凍結保存組織を融解後,前腕筋肉内に自家移植しました.このうち 3 例の甲状腺
機能が正常化し生涯の甲状腺ホルモン補充から解放されています.
このことは当時,わが国で最初に生体肝移植が島根医科大学で行われた時期と相前後していたのでこの仕事も読
売新聞に大きく取り上げられ報道されています.
5.外科的治療の対象となる橋本病
一般的に橋本病(慢性甲状腺炎)は内科的疾患で外科的治療の対象ではないとされています.講義でも学生には
内科的治療の対象疾患であることを教え,国家試験でも外科的治療と回答すると不正解となります.しかし,多数
例の橋本病患者さんを診ていると,手術をしたほうが良いのではないかという症例に遭遇することがあります.そ
れらの患者さんは長年の甲状腺ホルモン療法にもかかわらず縮小しない岩のように堅く大きく腫大したびまん性甲
状腺腫で整容上の問題がある場合,その大きさ故の圧迫症状,嗄声,違和感のある場合,経過中に急性増悪,破壊
性甲状腺炎を繰り返すなどしてステロイド療法を継続しなければならない場合などです.手術を受けても術前同様
甲状腺ホルモンを服用することには変わりはないので,手術により整容上の問題は解決され,圧迫症状,あるいは
繰り返す疼痛とステロイド服用から解放されることから術後患者さんはそろって手術の結果に満足していると感じ
ました.さらに橋本病の内科的治療の効果がない堅く大きなびまん性甲状腺腫はバセドウ病のびまん性甲状腺腫と
比べ出血も少なく,摘出が容易でした.手術合併症もほとんどありません.この頃私は「橋本病に対する外科的治
療の適応」というテーマで内科学会を中心に学会発表,論文発表を多数行いました.その結果驚くべきことに私の
ところに多数例の橋本病患者さんが内分泌あるいは甲状腺内科の先生から紹介されるようになったのです.甲状腺
内科医も橋本病で外科的治療を必要と思っている医師がおられたのでしょう.日本医科大学内分泌外科では,橋本
病の外科的治療を行う外科医がいるということが広まり全国から症例が集まりました.自分で必要と思ったときに
は既成概念にとらわれず思い切った学会発表,論文発表を発表することの大切さを感じた頃でした.
96
日医大医会誌 2014; 10
(2)
6.甲状腺疾患に対する内視鏡手術―世界に先駆けて行った術式(VANS 法)
甲状腺疾患は女性に多く手術創は常に露出された前頸部に置かれるため,美容上の観点から,甲状腺外科医は手
術創をいかに目立たなくするかについては常にその工夫をし悩んできました.1997 年,香港とイタリアから最初に
報告された甲状腺内視鏡手術は作成した手術操作腔内に CO2 を送気するもので hypercarbia, severe emphysema な
ど多くの合併症が報告されました.その頃,私は整容上の観点から甲状腺内視鏡手術に着目していましたが操作腔
作成法で悩んでおりました.産婦人科の明楽重夫教授(当時講師)にガスを使わず皮膚を吊り上げたらどうかと示
唆を頂き,綿密な準備の後,明楽先生にも手術に入って頂き第一例を 1998 年 3 月 6 日に施行し成功裏に終了しまし
た.甲状腺腫瘍に対するこの吊り上げ法による本術式は国内外を問わず初めてであり Video-assisted neck surgery
(VANS)法と命名して発表し,現在までその症例数は 700 例を越えるまでになっています.多くの学会で発表し,
国際学会で数回,公開手術を行い,多くの論文を書き,VANS 法は甲状腺内視鏡手術の代名詞となってきています.
7.チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺癌に対する医療支援と現状調査~福島原発後のフォローへ
私は,1999 年から「チェルノブイリ原発事故後の甲状腺癌に対する医療支援」をボランティア活動として毎年ベ
ラルーシを訪れ現在まで継続しています.途中から学生もついてきて大変良い海外実習にもなりました.大きい創
で若年者の手術を現地で見た後から,癌検診の診断のみならず内視鏡手術の紹介に 2006 年頃から着手しました.導
入に苦労しておりましたが 2007 年秋の検診で,原発事故で胎内被曝した 20 歳女性の甲状腺癌を発見しました.チャ
ンスが訪れました.本学に招待し,VANS 法を行いました.このことは,当時テレビ,新聞で大きくとりあげられ
ております.これがきっかけとなり毎年検診で訪れるベラルーシ現地で今日まで甲状腺内視鏡手術を毎年施行して
おり症例数は 10 例となっています.さらに嬉しいことに現地外科医は独自の器機を作成し,30 例近い症例に VANS
法を施行しており,この国でも本術式が普及しつつあることを実感しています.今後の福島原発事故後の症例にも,
導入,拡大していきたいと思っています.
一方,チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺癌大量発症の事実から,福島県では,東日本大震災に伴う福島原
発事故後の小児甲状腺癌発症の危惧に対し被災時 18 歳以下の 36 万人の方々に対し生涯の甲状腺検診を開始しまし
た.私は,福島県知事より,福島県「県民健康調査」検討委員会委員,福島県「県民健康調査」検討委員会「甲状
腺検査評価部会」部会員,
「福島県甲状腺検査支援合同委員会」委員を,また,環境省から「東電福島原発事故に伴
う住民の健康管理のあり方に関する専門会議」委員を仰せつかり,
「甲状腺検査評価部会」では,部会長に就任して
おります.14 年間にわたるチェルノブイリ原発事故後の甲状腺癌検診の経験の経験,そして甲状腺疾患に対する専
門家として今後も真剣に取り組んでいきたいと思っております.
8.5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた蛍光ラベリングによる正常および病的副甲状腺組織の同定法
甲状腺手術で正常副甲状腺を温存するため,甲状腺組織から副甲状腺の組織を区別する必要があります.また副
甲状腺手術では,副甲状腺病変を確実に切除するため摘出した標本が副甲状腺であるか否か,また完全に取り切れ
ているかどうかを術中に確認する必要があります.私どもは,5-ALA の代謝産物であるプロトポルフィリン IX が
副甲状腺に集積し,レーザー光励起により発光することから,本法を甲状腺および副甲状腺手術に応用し成果を上
げておりその有用性は学位論文としても認められています.
9.大学で行ってきた主な役割
1)学生部長:平成 19 年度から荒木前学長から仰せつかりました.元々学生と接することが好きであったことか
ら,6 年間この職務を全うすることができました.常に学生の立場に立って事に当たるようにした充実した 6 年間
であったと思います.たくさんの学生と接することができたのは私の喜びでもありました.
2)東日本医科学生総合体育大会理事:平成 14 年,前理事の川並汪一先生から引き継ぎ 12 年間この仕事をさせて
頂きました.毎年東医体の前には,本学で学生と結団式に臨み,また本学のみならず東日本の多数の医学生と結団
式,解団式などで接することができました.毎年,主管各校の準備から,開催期間の細やかな配慮,財政面での管
理,会計報告など一年の締めくくりまで学生たちが自分たちの手で運営している東医体を肌で感じることができま
した.
3)サッカー部々長:平成 5 年(1993 年)
,J リーグ開幕の年から 20 年間,故吉川文雄教授,浅野伍朗元学長のあ
とサッカー部の部長を務めさせて頂きました.医師となって退任まで 41 年ですのでその約半分はサッカー部に関与
していたことになります.元々学生時代はサッカーに没頭しており卒業してからもサッカー部の新入生歓迎会,卒
業生追い出しコンパ,OB 戦には参加をしていたのでサッカーとは長いつきあいになりました.20 年のサッカー部
日医大医会誌 2014; 10(2)
97
部長はたくさんのサッカー部の学生と接することができ,時には一緒にボールをけり本当に楽しい時間でした.万
難を排して遠くても東医体は応援に出かけたものです.その学生たちが医師になり,そして年々成長していく様を
見ていくのも楽しみでした.心残りは私の在任中に優勝の機会がなかったことでしたが,胴上げの期待をもちつつ,
経過したあっという間の 20 年間でした.
10.趣味と実益
趣味が実益となる,こんな良いことはありません.最後にいくつかご紹介したいと思います.
J リーグが始まる 1 年前のこと,突然清水市で開業をしているサッカー部の一年後輩である松永元良先生(第 3
内科 OB)から清水エスパルスのチームドクターになって欲しいと電話がありました.鎖骨,肋骨々折など怪我を
しながら医師になっても長くサッカーを続けていたくらいの私でしたので即座に OK をしました.今や,日本サッ
カーは日本リーグから J リーグとなり 20 年,隆盛の一途をたどっております.W 杯日韓共催,W 杯,オリンピッ
ク出場の常連になりつつあるまで人気と実力を兼ねそろえたスポーツとなりました.10 年以上チームドクターとし
ていつもピッチで試合を見ましたので国立のスタンドから J リーグの試合を見たことがありません.
一時大人気となった格闘技(K-1,PRIDE)
.あるとき友人からリングドクターを頼まれ,どんなスポーツかもよ
く分からないまま後楽園ホールにいきました.そこでは鍛え上げられた体を持つ屈強な男同士が倒すか倒されるか
の真剣勝負が繰り広げられていました.一回見てはまってしまいました.試合はほとんど祝祭日なのでできるだけ
行くようにしました.席はいつもリングサイドの 2 列目,ジャッジの後ろでした.目前に繰り広げられる死闘は迫
力満点で仕事を忘れ没頭してしまいます.これも客席でお金を払って見たことがありません.故アンディ・フグ(白
血病で本学に入院,死亡までの 6 日間を付き添った)をはじめたくさんの選手と親しくなりました.これも役得で
した.
もう一つ.学生時代からジャズオーケストラ(ミッドナイトサウンズジャズオーケストラ)に所属しサックスを
吹いていました.卒業後もたまに吹いておりましたが,学会の招宴会場やわれわれのプライベートなパーティ,知
り合いバンドが出演するライブハウスでの参加など演奏する機会が増えたので 10 年ほど前新しいアルトサックス
を購入しました.学会関係で下手でも演奏するとあのとき吹いていたのは先生ですね,と覚えていただけるので,
これは 100 回のシンポジスト,100 回の特別講演をするよりインパクトがありました.
おわりに
1978 年,スタートし留学をはさんで行ってきた甲状腺外来は,現在日本医科大学内分泌外科として大きく発展し
てまいりました.ここに至るまで下記に紹介する多くの後輩の力,そして関連専門施設の力があったことを忘れま
せん.
(敬称略)森 秀樹,大井俊孝,豊島宏二,北村 裕,長濱充二,北川 亘,石川久美,赤石淳子,ヘイムス規予
美,宮脇佳世.
現教室員として,杉谷 巌,赤須東樹,五十嵐健人,岡村律子,軸薗智雄,長岡竜太.
専門研修施設として伊藤病院,金地病院,隈病院,野口病院.
改めてこの場をお借りして感謝いたします.
98
日医大医会誌 2014; 10
(2)
主たる研究業績
  1.‌A critical analytical study of the Basedow’s disease in virtue
of Peroxidase-PAM-double staining method(PPDS)
J Clin Electron
Microscopy
1977
10
5―6
  2.‌Expression of receptors for tetanus toxin and monoclonal
antibody A2B5 on“APUD” cells and“APUD” cell tumors
Surg Forum(ACS) 1978
419―421
  3.‌Monoclonal Antibody F12A2B5: Reaction with Plasma
Membrane Antigen of Vertebrate Neurons and PeptideSecreting Endocrine Cells.
Monoclonal Antibodies to Neuronal Antigens
Cold Spring Harbor 1981
Press(First edition)
New York
209―218
  4.‌Expression of receptors for tetanus toxin and monoclonal
antibody A2B5 by pancreatic islet cells
Proc Natl Acad Sci
1982
  5.‌In vitro binding of iodinated monoclonal antibody A2B5 to
RIN insulinoma cells
Hybridoma
1983
2
69―77
  6.‌Immunodiagnosis of tumors in vitro using radiolabeled
monoclonal antibody A2B5
J Surg Oncol
1983
23
205―211
  7.‌Identification of human and rodent thymic epithelium using
tetanus toxin and monoclonal antibody A2B5
J Clin Invest
1983
71
9―14
  8.‌Ia+T cells in new onset Graves’ disease
J Clin Endocrinol
Metab
1984
59
187―190
  9.‌Immunoelectron microscopic localization of thyroglobulin in
the human thyroid Gland
J Clin Electron
Microscopy
1984
16
5―6
10.‌Abundant thyroid hormone is produced by thyroid cells in
culture
J Nippon Med Sch
1992
59
355―356
11.‌An experimental study on wound healing in hypothyroidism
J Nippon Med Sch
1993
60
360―361
12.‌Clinicopathological study of clear-cell tumors of the thyroid:
An evaluation of 22 cases
Surg Today
1995
25 1015―1022
13.‌Improvement of thyroid function after autotransplantation of
crypreserved thyroid tissue in rats: Clinical application of
the procedure to patients with persistent hypothyroid
Graves’ disease after thyroidectomy
Thyroidol Clin Exp
1996
8
55―62
14.‌Surgical indication in Hashimoto’s thyroiditis
Thyroidol Clin Exp
1996
8
95―101
15.‌Autotrnasplantation of cryopreserved thyroid tissue for the
treatment of irreversible postoperative hypothyroid Graves’
Disease
Thyroidol Clin Exp
1997
9
23―26
16.‌Novel germine RET proto-oncogene mutation associated with
medually thyroid carcinoma(MCT): mutation analysis in
Japanese patients with MCT
Oncogene
1997
14 3103―3106
17.‌Video-Assisted Neck Surgery(VANS):Endoscopic resection
of a large thyroid nodule extending to the upper mediatinum
with the aim of scarless neck surgery
Thyroidol Clin Exp
1998
10
241―244
18.‌Video-Assisted Neck Surgery: Endoscopic resection of benign
thyroid tumor aiming at scarless surgery on the neck
J Surg Oncol
1998
69
178―180
19.‌p53 gene mutation is not associated with tumorigenesis of
medullary thyroid carcinoma
Thyroid Clin Exp
1998
10
171―174
20.‌Fibroblast Growth Factor-2 free from extracellular matrix is
increased in papillary thyroid carcinoma and Graves’ thyroids
THYROID
1998
8
491―497
21.‌Video-assisted neck surgery. Endoscopic resection of thyroid
tumor with very minimal neck wound
J Am Coll Surg
1999
188
697―703
22.‌Rat/PTC is the most frequent form of gene rearrangement in
papillary thyroid carcinomas in Japan
J Hum Genet
1999
44
98―102
23.‌Fusion of a novel gene, to RET due to translocation (
t 10, 12)
(q11, 13)in a thyroid carcinoma
Genes Chrom
Cancer
1999
25
97―103
24.‌The influence of hypothyroidism on wound healing: An
experimenntal study
J Nippon Med Sch
1999
66
176―180
25.‌Overexpression of fibroblast growth factor receptor 3 in a
human thyroid carcinoma cell line results in overgrowth of
the confluent cultures
Eur J Endocrinol
1999
140
169―173
26.‌Immediate cause of death in thyroid carcinoma: Clinicopathological
analysis of 161 fatal cases
J Clin Endocrinol
Metab
1999
79 5066―5070
84 4043―4049
日医大医会誌 2014; 10(2)
99
27.‌Association of allelic loss on 1q, 4p, 7q, 9p, 9q, and 16q with
postoperative death In papillary thyroid carcinoma
Clinical Cancer
Research
2000
6 1819―1825
28.‌Allelotyping of anaplastic thyroid carcinoma: Frequent allelic
losses on 1q, 9p, 11, 17, 19p, and 22q
Genes Chrom Cancer
2000
27
244―251
29.‌A case with combined superior thyroid artery aneurysm and
external carotid artery aneurysm
Thyroidol Clin Exp
2000
12
29―31
30.‌Allelotyping of follicular thyroid carcinoma: Frequent allelic
losses in chromosome arms 7q, 11p, and 22q
J Clin Endocrinol
Metab
2001
86 4268―4272
31.‌Endoscopic hemithyroidectomy and prophylactic lymph node
dissection for micropapillary carcinoma of the thyroid by
using a totally gasless anterior neck skin lifting method
J Surg Oncol
2001
77
217―220
32.‌Minimally invasive thyroid surgery
Baillieres Best Pract
Res Clin Endocrinol
Metab
2001
15
123―137
33.‌Trial of autotransplantation of cryopreserved thyroid tissue
for postoperative hypothyroidism in patients with Graves’
disease
J Am Coll Surg
2002
194
14―22
34.‌Breast-conserving therapy in the management of early-stage
breast cancer. Our experience in 103 cases
J Nippon Med Sch
2002
69
24―30
35.‌Radio-guided parathyroidectomy for primary hyperparathyroidism
combined with video-assisted surgery using the solid-t-stated
multi-crystal gamma camera
J Surg Oncol
2002
80
173―175
36.‌Video-assisted endoscopic thyroid and parathyroid surgery
using totally gasless anterior neck skin lifting methid-Report
of 130 cases
Surg Today
2002
32
862―868
37.‌Reply to: Fatal thyroid crisis years after two thyroidectomies
for Graves’ disease: Is thyroid tissue autotransplantation for
postthyroidectomy hypothyroidism worthwhile?
J Am Coll Surg
2002
195
434―436
38.‌Immunohistochemical, biochemical and immunoelectron
microscopic analysis of antigenic proteins on neuroendocrine
cell tumors using monoclonal antibody HISL-19
J Nippon Med Sch
2002
69
365―372
39.‌Morphological and histochemical characteristics of mast cells
and the content of in-tissue histamine in various pathological
parathyroids: Do mast cells participate in hormone secretion
in human parathyroids?
J Nippon Med Sch
2002
69
347―354
40.‌Video-assisted minimally invasive endoscopic thyroid surgery
using a gasless neck skin lifting method―153 cases of
benign thyroid tumors and applicability for large tumors
Biomed Pharmacol
2002
56
88―91
41.‌Radioguided parathyroidectomy for reexploration of primary
hyperparathyroidism-a case report
Med Sci Monit
2002
8
21―25
42.‌Evaluation of an alternative, subclavicular approach to
thyroidectomy
Med Sci Monit
2002
8
80―82
43.‌Surgical therapy in Hashimoto’s thyroiditis
J Nippon Med Sch
2003
70
34―39
44.‌Endoscopic neck surgery with lymph node dissection for
papillary carcinoma of the thyroid using a totally gasless
anterior neck skin lifting method
J Am coll Surg
2003
196
990―994
45.‌Implementation of integratedmedical curriculum in Japanese
Medical Schools
J Nippon Med Sch
2004
71
11―16
46.‌In vivio priming of natural killer T cells by dendritic cells
pulsed with hepatoma-derived acid-eluted substances
Cancer Immunology
and Immunotherapy
2004
53
383―390
47.‌Comprehensive gene expression profiling of anaplastic
thyroid cancers with cDNA microarray of 25344 genes
Endocrine Relasted
Cancer
2004
11
843―854
48.‌Excision of extramedullary plasmacytoma in the hilar lymph
node
JJLC
2006
46
723―726
49.‌Down-regulation of an inhibitor of cell growth, transmembrane
protein 34(TMEM34),in anaplastic thyroid cancer
J Cancer Res Clin
Oncol
2007
133
213―218
50.‌Reduced sulfation of chondroitin sulfate in thyroglobulin
derived from human papillary thyroid carcinomas
Cancer Sci
2007
98 1577―1581
51.‌A non-acromegalic case of multiple endocrine neoplasia type
1 accompanied by a growth hormone-releasing hormoneproducing pancreatic tumor
J Endocrinol Invest
2007
30
421―427
52.‌Video-assisted breast surgery and sentinel lymph node biopsy
guided by three dimensional computed tomographic
ymphography
Surg Endosc
2008
22
392―397
100
日医大医会誌 2014; 10
(2)
53.‌Trans-Axillary Retro-Mammary Route Approach of VideoAssisted Breast Surgery Enable The Inner-Side Breast
Cancer To Be Resected For Breast Conserving Surgery
Am J Surg
2008
196
578―581
54.‌Evaluation of Only Sentinel Lymph Node Metastasis guided
by 3D-CT Lymphography in Video-assisted Breast Surgery
(VABS)
Surgical Endoscopy
2009
23
633―640
2009
33
s218
55.‌Gasless endoscopic thyroid and parathyroid surgery using
lifting procedure: appropriate techniques for cosmetic
improvement and prevention of complications based on 420
cases experience
Wordl J Surg
(Proceeding)
56.‌Microfollicular Variant of Papillary Thyroid Carcinoma: Its
Clinicopathological Features and Long-Term Prognosis
Endocrine J
2009
56
503―508
57.‌Clinicopathological Characteristics and Prognosis of Diffuse
Sclerosing Variant of Papillary Thyroid Carcinoma in Japan:
An 18-Year Experience at a Single Institution
World J Surg
2009
33
958―962
58.‌Which patient in thyroid malignancy is possible and suitable
indication for endoscopic total thyroidectomy and lymph
node dissection?
17th International
2009
Congress of the
European Association
for Endoscopic
Surgery
(proceeding)
59.‌Prognostic Impact of Extrathyroid Extension and Clinical
Lymph Node Metastasis in Papillary Thyroid Carcinoma
Depend on Carcinoma Size
World J Surg
2011
60.‌Introduction and use of video-assisted endoscopic thyroidectomy
for patients in Belarus affected by the Chernobyl nuclear
disaster
Asian J Endosc
Surg
2013
25―26
34 3007―3014
6
298―302
日医大医会誌 2014; 10(2)
101
―綜 説―
脳の障害に対する可塑性と代償
三品 雅洋
日本医科大学大学院医学研究科神経内科学分野
Neural Plasticity and Compensation for Human Brain Damage
Masahiro Mishina
Department of Neurological Science, Graduate School of Medicine, Nippon Medical School
Abstract
We previously believed that brain disorders could not be treated. However, brain-imaging
techniques have demonstrated functional localization and the recovery of damaged areas of
the brain. Through the use of various radiopharmaceuticals, positron emission tomography
(PET) allows in vivo imaging of regional cerebral functions, including cerebral blood flow,
molecular metabolism, and receptor binding capacity. In addition, PET demonstrates neural
plasticity and compensation for brain damage. This paper discusses the plasticity and
compensation of the brain revealed by our PET studies.
(日本医科大学医学会雑誌
2014; 10: 101―105)
Key words: positron emission tomography, γ-aminobutyric acid, aphasia, sigma1 receptor,
adenosine A2A receptor
塑性が低下し脳回路は固定化する.この切り替わりの
はじめに
時期を臨界期と呼ぶ1.
「視覚」を担う後頭葉のシナプスの数は,新生児期
かつて脳の障害は回復しないと信じられていた.し
は成人と同等だが,出生後 1 年で急激に増加する2.
かし,脳研究の進歩とリハビリテーションの発達によ
その後徐々に減少し,11 歳頃に成人と同じレベルに
り,その常識は覆ることになる.脳のイメージング技
なる.このシナプスの減少を synaptic
術は脳の機能局在を画像化し,ヒトの脳に備わる代償
ぶ.出生後,後頭葉では,眼球からの視覚のほか,聴
機能や回復過程を実証した.本稿では私たちが実施し
覚・体性感覚など様々な神経連絡がシナプスを形成す
た研究を中心に,脳の可塑性と代償について論ずる.
る.しかしヒトの晴眼者では眼球からの視覚情報が主
revision と呼
役となり,ほかのシナプスは減少する.ほかの種では
脳機能局在の形成
神経連絡の選択は異なり,例えば小型コウモリでは,
聴覚による空間認知が主になる.このような synaptic
新規の言語習得は,小児には容易だが大人では困難
になる.このように,幼少時の脳は高度に可塑的で経
験に応じて柔軟に変化するが,一定期間を過ぎると可
revision が大脳皮質各所で起こることにより,脳の機
能局在が形成される.
臨界期を迎える前に失明した患者は先天的全盲と呼
Correspondence to Masahiro Mishina, Department of Neurological Science, Graduate School of Medicine, Nippon
Medical School, 1―1―5 Sendagi, Bunkyo-ku, Tokyo 113―8602, Japan
E-mail: [email protected]
Journal Website(http:!
!
www.nms.ac.jp!
jmanms!
)
102
日医大医会誌 2014; 10(2)
ばれる.彼らは視覚野の形成時期に眼球からの視覚情
れが左半球になることが多いわけである.
報が欠如しているため,聴覚や体性感覚が位置や空間
言語野の損傷による失語は脳卒中の代表的な症状で
の情報把握に重要な役割を果たす.ヒトにおいては,
あり,日常生活にも大きな影響を及ぼす.Ohyama
それらは視覚情報と比べると空間の把握に不向きな能
らは,15O-H2O PET を用いて単語の復唱課題中の脳血
力であるため,晴眼者のシナプス活動より活発に活動
流の変化を画像化する方法で,言語野の局在を画像化
しなければならない.したがって synaptic
revision
することに成功した12.右利き健常者では,左半球の
は晴眼者より軽度となる3,4.いくつかの研究が,後頭
Broca 野を含む下前頭回付近,Wernicke 野を含む上
葉のブドウ糖代謝や脳血流は晴眼者より先天的全盲患
側頭回などの賦活が認められた.一方,脳梗塞により
者の方が高いことを報告している5―8.ブドウ糖代謝は
失語を呈し復唱課題が可能になるまで回復した患者で
シナプス活動を反映しており,脳血流もシナプス活動
は,右の下前頭回の賦活が増大していた(図 1)
.い
にエネルギーを供給するために増加することから,先
くつかの先行研究が,失語の回復に劣位半球が関与す
天的全盲患者の後頭葉で晴眼者よりシナプス活動が活
ることを示唆している13―16.本研究は,失語症患者の
発であることを,これらの研究が実証した.
回復過程で劣位半球の代償が作用したことをはじめて
私たちは,先天的全盲患者において,中枢性ベンゾ
画像化した.
ジ ア ゼ ピ ン 受 容 体 に 結 合 す る 放 射 性 リ ガ ン ド C11
flumazenil とポジトロン断層撮影(positron emission
パーキンソン病におけるドパミン欠乏の代償
tomography,PET)
を用い,
先天的全盲患者と晴眼者
における後頭葉の受容体密度の違いも検討した8.15O-
健常者のドパミンは 20 歳頃をピークに減少する
H2O PET による安静時の脳血流が先天的全盲患者で
が,パーキンソン病発症時にはすでにピーク時の 20%
有意に増加していたのは先行研究と同様であったが,
以下にまで減少している17.そこまでドパミンが減少
中枢性ベンゾジアゼピン受容体密度は両者で変わらな
しないと発症しないのは,様々な代償が発症を抑制し
か っ た.中 枢 性 ベ ン ゾ ジ ア ゼ ピ ン 受 容 体 は γ-
ているためである.
aminobutyric
acid(GABA)
A 受容体と共存すること
パーキンソン病ではドパミン作動性神経細胞が減少
から,シナプス全体の活動が亢進しているにも関わら
しているが,残存する細胞でのドパミン合成は亢進す
ず GABAA 受容体密度は晴眼者と同等ということにな
る18.一方残存するドパミンのシナプスでは,シナプ
る.この結果は synaptic revision に GABA 系が含ま
ス間隙に漂うドパミンを保持するため,それを細胞内
れない可能性を示唆する.過去の in vitro の研究で抑
に取り込むドパミントランスポータを減少させる19.
制性の神経伝達物質である GABA が脳の形成に重要
パーキンソン病の剖検脳の研究は線条体のドパミン
な役割を果たしていることが示されている .GABA
D2 受容体の増加を報告したが20,11C-raclopride
系により synaptic
画像でも線条体での集積が正常またはやや亢進す
9
revision が制御され,脳の機能局
在を形成するのかもしれない.
PET
る19.ただし,raclopride はドパミン D2 受容体との親
和性が弱く,内因性ドパミンと競合し集積が低下す
脳梗塞による失語症患者における
る.内因性ドパミンが減少するパーキンソン病におい
劣位半球の言語野の役割
ては,その競合が減少するために集積が増加すること
も考慮しなければならない21.
臨界期を過ぎた後,脳が全く変化しないわけではな
い.
ドパミン系以外の神経系も代償に関与している.
1976 年に発見されたシグマ受容体は当初オピオイ
音声言語はヒトの特徴のひとつであり,社会生活に
ド受容体のサブタイプと考えられていたが22,後に独
は重要な能力である.その中枢である言語野は 90%
自の受容体であることが証明された23.シグマ 1 受容
以上が左半球に存在するが,左利きでは右半球に存在
体とシグマ 2 受容体の 2 つのサブタイプが見つかって
する割合が増加する .Komaba らは,先天的脳梁形
いる24.学習や記憶の障害の改善・抗うつ作用・神経
成不全患者では言語野が両側に存在することを報告し
細胞保護などに関連があると考えられていたが,詳細
た .この症例は,言語野の優位半球での局在に,脳
は長年不明であった.しかし,Hayashi らによりシグ
梁を介した左右半球の線維連絡が関与する可能性を示
マ 1 受容体が小胞体において受容体シャペロンとして
唆する.脳梁を有する健常者では,左右どちらかの言
作用していることが発見され25,注目を浴びる.さら
語野が主に使用されるようになる.右利きの場合,そ
に,アルツハイマー病に用いられる donepezil26 と抗
10
11
日医大医会誌 2014; 10(2)
103
図 1 左前頭葉・側頭葉のアテローム血栓性脳梗塞により Wernicke 失語を呈した 50 歳
代男性における MRI T1 強調画像(A)
,15O-CO2 PET による脳血流画像(B),
15O-O PET による脳酸素代謝画像(C)
,B・C より算出される酸素摂取率画像(D)
,
2
111C-flumazenil PET による中枢性ベンゾジアゼピン受容体画像(E)
,15O-H2O PET
を用いた発症 2.3 年後の脳血流差分画像(復唱̶安静,F),発症 3.8 年後の脳血流差
分画像(G).
すべての PET 画像は MRI T1 強調画像にスーパーインポーズした.B ∼ E の PET
画像は発症 7.7 年後に実施した.左大脳半球における血流・代謝の低下域とベンゾ
ジアゼピン受容体分布の低下域はほぼ一致している.PET activation study では,
言語機能の回復過程で,右側頭葉の賦活が増大したことがわかる.患者の失語の回
復は良好であった.優位半球の GABA 系が低下し脳機能再構築に限界があったため,
劣位半球の代償が必要になったものと推察する.
うつ剤の fluvoxamine27 がシグマ 1 受容体アゴニストで
る31,32.したがって,ドパミンが欠乏するパーキンソ
あることも明らかになった.
ン病においてはアデノシン A2A 受容体を抑制すると
シ グ マ 1 受 容 体 は N-methyl-D-aspartic
acid
パーキンソニズムが軽減し33―35,2013 年にはアデノシ
(NMDA)型グルタミン酸受容体の活性を抑制する
ン A2A 受容体拮抗薬が抗パーキンソン病薬として本邦
が,NMDA 受容体はドパミン放出を促進する
.し
で 使 用 で き る よ う に な っ た.私 た ち は 11C-TMSX
たがって,シグマ 1 受容体は間接的にドパミン放出を
PET36 を用いて線条体のアデノシン A2A 受容体密度を
抑制する.私たちは 11C-SA4503 PET を用いて,初期
検討した37.未治療パーキンソン病では健常者と有意
のパーキンソン病における線条体のシグマ 1 受容体密
差がなかったが,抗パーキンソン病薬によるジスキネ
度を検討した .ばらつきが大きく健常者との差は見
ジアを有するパーキンソン病患者では有意に被殻のア
28,29
30
いだせなかった.しかし,パーキンソニズムの左右差
デノシン A2A 受容体密度が増加していた.これは過去
に着目すると,前部被殻において重症側で軽症側より
の剖検脳の研究や,後に別なリガンドを使用した PET
シグマ 1 受容体密度が少ないことがわかった.すなわ
研究の結果と一致した38,39.未治療パーキンソン病の
ち,ドパミンを抑制するシグマ 1 受容体を減少させる
パーキンソニズムの左右差に着目すると,重症側は軽
ことで,ドパミン減少の左右差を是正する代償が作用
症側に比べて被殻アデノシン A2A 受容体密度は有意に
していることを明らかにした.
少なかった.すなわち,ドパミン D2 受容体と相反す
アデノシン A2A 受容体はドパミンが豊富な線条体に
る作用を持つアデノシン A2A 受容体の密度は,パーキ
多く存在し,ドパミン D2 受容体と相反する作用があ
ンソニズムの左右差を軽減する方向で変化していた.
104
日医大医会誌 2014; 10(2)
未治療パーキンソン病患者が抗パーキンソン病薬投与
を開始すると,被殻アデノシン A2A 受容体密度は有意
に増加した.治療開始によりアデノシン A2A 受容体の
代償が軽減されたと推察する.また,アデノシン A2A
受容体がジスキネジア発現前に増加し始めることを,
初めて明らかにした.
おわりに
脳が障害を受けた後の変化を述べたが,脳イメージ
ングはすでに脳が障害を受ける前の変化をとらえるこ
とが可能である.例えば,アルツハイマー病で神経細
胞に蓄積するアミロイド β やタウの脳内分布を PET
で画像化できるようになり40,41,開発中の根本的なア
ルツハイマー病治療の前提として発症前診断が注目さ
れている42.今後は,脳疾患発症前の代償機能の研究
も期待される.
謝辞:本稿で記載した研究の一部は,科学研究費基盤
研究(B)13557077,基盤研究(B)16390348,基盤 研 究
(C)17590901,基 盤 研 究(B)20390334,基 盤 研 究(C)
20591033,基 盤 研 究(C)23591287 の 補 助 に よ る.PET
の研究はすべて東京都健康長寿医療センター研究所神経画
像研究チームとの共同研究である.同研究所および日本医
科大学のスタッフのご指導・ご協力に深謝する.
文 献
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(受付:2014 年 1 月 6 日)
(受理:2014 年 1 月 23 日)
106
日医大医会誌 2014; 10(2)
―原 著―
マイトマイシン C 併用線維柱帯切除術後の晩期合併症に対する
有茎弁結膜被覆術の短期成績
藤田 雅裕
中元 兼二
高橋
浩
日本医科大学眼科学
Outcomes of Conjunctival Pedicle Flap for Late-onset Complications Following Trabeculectomy
with Mitomycin C
Masahiro Fujita, Kenji Nakamoto and Hiroshi Takahashi
Department of Ophthalmology, Nippon Medical School
Abstract
We retrospectively analyzed the short-term results (8 weeks) of the use of a conjunctival
pedicle flap (CPF) for treating late complications following trabeculectomy with mitomycin C in
10 eyes of 10 patients with glaucoma. The main indications for CPF were bleb leak (8 eyes),
overhanging bleb (1 eye), and choroidal detachment (1 eye). In all patients we performed bleb
excision and advancement of the adjacent conjunctiva. Eight weeks after CPF transfer, no
hypotony, bleb leak, overhanging bleb, or choroidal detachment was observed in any patient.
Mean intraocular pressure at all time points after 1 week was significantly higher than before
CPF transfer (p<0.01). The intraocular pressure after CPF transfer was higher than 15 mmHg
in 7 cases (70%) and higher than 20 mmHg in 4 cases (40%).
(日本医科大学医学会雑誌
2014; 10: 106―110)
Key words: trabeculectomy, late-onset complication, conjunctival pedicle flap, glaucoma, bleb
leak
に応じて自己血清点眼3,コンタクトレンズの使用4,
濾過胞内自己血液注入5,経結膜強膜縫合6,遊離結膜
緒 言
弁移植7,有茎弁結膜被覆術8,9,羊膜移植術10 などが行
線維柱帯切除術は,マイトマイシン C(MMC)の
併用により眼圧を長期に低くコントロールできるよう
になったため,緑内障の観血的手術としてもっとも一
1
般的な術式となっている が,同薬の併用に伴い線維
2
柱体切除術後の晩期合併症の頻度は増加している .
われているが,晩期合併症に対する複数例の有茎弁結
膜被覆術の術後経過に関する報告は本邦では少ない8.
そこで,今回,マイトマイシン C 併用線維柱帯切
除術後の晩期合併症に対する同一術者による有茎弁結
膜被覆術の短期成績について検討した.
MMC 併用線維柱帯切除術による晩期合併症には,
房水漏出,脈絡膜剝離,低眼圧黄斑症,濾過胞感染症,
overhanging
bleb などがあり,治療として,合併症
Correspondence to Masahiro Fujita, Department of Ophthalmology, Nippon Medical School, 1―1―5 Sendagi, Bunkyoku, Tokyo 113―8603, Japan
E-mail: [email protected]
Journal Website(http:!
!
www.nms.ac.jp!
jmanms!
)
日医大医会誌 2014; 10(2)
107
Table 1 Background of Subjects
Case Age
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
60
54
37
66
58
65
75
65
74
65
Sex
M
M
M
M
M
F
F
M
F
F
Main
indications
for CPF
Type of Right or
glaucoma left eye
POAG
POAG
POAG
POAG
POAG
POAG
POAG
POAG
NVG
SG
R
R
R
L
L
R
R
R
L
R
Bleb leak
Bleb leak
Bleb leak
Bleb leak
Bleb leak
Bleb leak
Bleb leak
Bleb leak
Overhanging bleb
Choroidal detachment
Visual Acuity
Interval between
preoperative
Visual
at 8 Weeks
TLE and CPF
IOP
Acuity
after CPF
(day)
1,580
783
2,202
2,120
2,102
1,789
2,890
2,090
1,115
2,190
0.9
0.7
0.9
0.1
0.9
0.7
0.06
0.6
0.03
0.05
1.0
0.5
0.9
0.1
0.8
0.9
0.6
0.8
0.02
0.1
4
9
6
5
6
5
1
17
6
2
POAG:primary open angle glaucoma NVG:neovascular graucoma SG:secondary graucoma with uveitis
CPF:Conjunctival pedicle flap TLE:Trabeculectomy IOP:Intraocular Pressure
今回有茎弁結膜被覆術の対象になった,手術前後の患者背景を示す.
録から後ろ向きに調べて検討した.
方 法
統計解析には paired t-test を用い,有意水準 p<0.05
(両側検定)で検定した.
対象は,2012 年 6 月∼2013 年 6 月までに日本医科
結 果
大学付属病院眼科でマイトマイシン C 併用線維柱帯
切除術後の晩期合併症に対して,同一術者(K.N.
)
により有茎弁結膜被覆術が施行された 10 例 10 眼で,
MMC 併用線維柱帯切除術は,全例初回手術で,術
術後 2 カ月まで経過観察できたものである.性別は,
式は輪部基底結膜切開であった.MMC 併用線維柱帯
男性 6 例・女性 4 例,年齢は 61.9±10.8(平均値±標
切除術施行日から有茎弁結膜被覆術までの期間は,
準偏差)(35∼75)歳,病型は広義原発開放隅角緑内
1,886±602(783∼2,890)日 で あ っ た(Table 1)
.有
障 8 眼,ぶどう膜炎に伴う続発緑内障 1 眼,血管新生
茎弁結膜被覆術前に緑内障点眼薬を使用していた症例
緑内障 1 眼である.有茎弁結膜被覆術に至る原因と
は,症例 8 のみであった.
なった主たる合併症は房水漏出 8 眼,脈絡膜剝離 1
眼,overhanging bleb1 眼であった.
有茎弁結膜被覆術後 8 週では,全例,低眼圧,房水
漏出,overhanging
bleb および脈絡膜剝離はなかっ
有茎弁結膜被覆術の術式を以下に示す.
た.矯正視力は,術後 4 週,術後 8 週ともに術前と有
まず,濾過胞無血管および透明な結膜を切除後,周
意な変化はなかった(Fig. 1)
.眼圧は,術前 6.4±4.5
辺結膜を十分に剝離し,結膜有茎弁を 10-0 ナイロン
mmHg,術翌日 10.5±7.2 mmHg,術後 1 週 14.1±6.4
丸針で輪部および切除周辺の健常結膜に縫合し,最後
mmHg,術 後 4 週 13.5±4.0 mmHg お よ び 術 後 8 週
に房水漏出がないことを確認し終了とした.
12.3±3.1 mmHg で,術後 1 週以降では術前に比し有
検討項目として,まず,有茎弁結膜被覆術後 8 週の
意に高かった(p<0.01)
(Fig. 2)
.術後経過中,眼圧
低眼圧(5 mmHg 以下)
,房水漏出,脈絡膜剝離およ
が 15 mmHg を超えたものは 7 眼(70%)で,そのう
び overhanging bleb の有無に関して調べた.房水漏
ち 4 眼(40%)が 20 mmHg を超えていた.術後 8 週
出は診察時にフルオレセイン染色後細隙灯顕微鏡の青
で眼圧が 15 mmHg を超えていたものは 2 眼(20%)
色光で観察し,圧迫なしで房水が明確な漏出点から自
であった(Fig. 2,Table 2)
.術後経過中,緑内障点
然漏出するもの(leak)とした.次に,眼圧を術前と
眼薬を使用した症例は 4 眼(40%)であった.
術翌日,術後 1 週,術後 4(±1)週,術後 8(±1)週
で 比 較 し た.眼 圧 は す べ て 同 一 医 師(K.N.
)が
考 察
Goldmann 圧平眼圧計で測定されたものを用いた.次
に,経過中に眼圧が 15 mmHg 以上および 20 mmHg
線維柱帯切除術の晩期合併症には,房水漏出,低眼
以上を超えた症例数と割合を求めた.いずれも,診療
圧黄斑症,脈絡膜剝離,濾過胞感染症,overhanging
108
日医大医会誌 2014; 10(2)
bleb などがあるが,中でも最も重篤なものは濾過胞
感染症である.濾過胞感染症のリスクファクターに
は,男性,若年者,糖尿病,下方濾過胞,濾過胞から
の房水漏出などがあるが,中でも房水漏出が最も危険
率が高い2,3.Yamamoto らは,MMC 併用線維柱帯切
除術後 2.5 年の濾過胞感染症の発症率を前向きに調べ
たところ,房水漏出がある症例で 5.8±4.1%,房水漏
出のない症例で 1.2±0.5% で,有意に房水漏出がある
症例では濾過胞感染症が発症しやすいことを報告して
いる2.そのため,房水漏出濾過胞に関しては,でき
るかぎり積極的に治療する必要があるといえる.
今回,筆者らは,MMC 併用線維柱帯切除術後の晩
Fig. 1 Change of Visual Acuity
矯正視力は術後 4 週,術後 8 週ともに術前と有意な変
化はなかった.
期合併症に対する有茎弁結膜被覆術の短期成績につい
て後ろ向きに検討した.その結果,房水漏出例 8 眼に
おいては,有茎弁結膜被覆術後 8 週の時点では,
全例,
Fig. 2 Change of Intraocular Pressure(all subjects)
眼圧は術前に比し術後 1 週以降では有意に高かった(p<0.01)
.
Table 2 Postoperative courses of CPF
case
Maximum IOP
after CPF
IOP at 8 weeks
after CPF
Added glaucoma
eyedrops or not
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
14
17
17
8
11
25
23
24
21
17
9
12
13
7
11
11
13
17
13
17
no
yes
no
no
no
yes
yes
yes
no
no
CPF:Conjunctival pedicle flap IOP:Intraocular Pressure
No hypotony, bleb leak, overhanging bleb, choroidal detachment
at 8 weeks after conjunctival pedicle graft
今回有茎弁結膜被覆術の対象になった,手術前後の患者背景を示す.
日医大医会誌 2014; 10(2)
109
Fig. 3 Change of Intraocular Pressure(each subject)
経過中,眼圧が 15 mmHg を超えたものは 7 眼(70%)
,4 眼(40%)が 20 mmHg を
超えていた.術後 8 週で眼圧が 15 mmHg を超えていたものは 2 眼(20%)であった.
↓:緑内障点眼追加時期 点線:欠測値
房水漏出は治癒し,5 mmHg 以下の低眼圧もなかっ
異物感は改善していた.眼圧は術前 9 mmHg,術翌
た.有茎弁結膜被覆術は,少なくとも短期においては
日は眼圧 21 mmHg まで一過性に上昇したが,緑内障
9
房水漏出に対して有効な治療法といえる.Lee ら は,
点 眼 薬 は 使 用 す る こ と な く,術 後 2 カ 月 で は 13
MMC 併用線維柱帯切除術後の低眼圧の治療として有
mmHg まで下降した.
茎弁結膜被覆術を 17 眼に施行し,眼圧が 6 mmHg 以
線維柱帯切除術後の脈絡膜剝離は,通常,過剰濾過
上 18 mmHg 以下かつ房水漏出の持続・再発がないこ
に伴うもので,眼圧の正常化によって解消するため,
とを成功と定義としてその成功率を調べたところ,6
経過観察をすることが多い14.しかし,今回の症例 9
カ月で 76.5%,51 カ月で 70.6% であったと報告して
は,線維柱帯切除術長期経過後に,濾過胞の菲薄化と
いる.また,橋本ら8 は,有茎結膜弁移植を行った 7
ともに,房水漏出が増悪し高度な脈絡膜剝離を来たし
眼の術後 1 年の房水漏出阻止率は 86% であったと報
た症例であったが,有茎弁結膜被覆術後,眼圧が術前
告している.今回の報告は,8 週と短期であったため,
2 mmHg から 17 mmHg に正常化したのに伴い,脈絡
これらの成績より良好であったが,術後,長期に経過
膜剝離は治癒し,視力も 0.05 から 0.1 と向上した.
するにつれ,結膜が再無血管化,菲薄化し,房水漏出
以上の経過から,今回筆者らが行った有茎弁結膜被
が再発する症例8 もあるため,本術式の評価にはより
覆術は,線維柱帯切除術後の晩期合併症に対する治療
長期的な観察が必要であることはいうまでもない.
効果において少なくとも短期的には有効であるといえ
Overhanging bleb は濾過胞が角膜輪部を超えて角
る.
膜上にせり出してくる状態で比較的まれな術後晩期合
術後の眼圧経過に関して,眼圧が 15 mmHg 超えた
併症とされている.視力障害,強い異物感などを引き
ものは 7 眼(70%)で,そのう ち 4 眼(40%)は 20
起こすことがある.治療法として,冷凍凝固11,Nd:YAG
mmHg を超えていた.4 眼(40%)で緑内障点眼治
12
レーザー などの報告もあるが,一般に結膜被覆術が
13
13
療が追加されたが,2 眼(20%)では,術後 8 週で依
行われている .Scheie ら は,16 例の Overhanging
然として眼圧が 15 mmHg を超えていた(Fig. 3)
.今
bleb に結膜被覆術を施行し,全例で自覚症状改善,15
後,症例の目標眼圧に応じて,さらなる治療の追加が
例で良好な眼圧コントロールが得られたと報告してい
必要となる症例が増加する可能性がある.
る.今回の症例 9 も,術前より緑内障による中心視力
障害が高度であったため,視力の向上はなかったが,
110
日医大医会誌 2014; 10(2)
結 論
MMC 併用線維柱帯切除術後の晩期合併症に対する
有茎弁結膜被覆術の短期成績を調査した.今回の対象
では,少なくとも一過性に術後高眼圧になる症例が少
なくなく,眼圧の推移には十分注意する必要はある
が,MMC 併用線維柱帯切除術の晩期合併症である房
水漏出,overhanging bleb,脈絡膜剝離は治癒させる
ことができるため,本術式は MMC 併用線維柱帯切
除術後の晩期合併症に対する治療法として有効であ
る.
利益相反:利益相反公表基準に該当なし
文 献
1.日本緑内障学会診療ガイドライン作成委員会:緑内障
診療ガイドライン第 3 版.日眼会誌 2012; 116: 5―46.
2.Yamamoto T, Kuwayama Y, Kano K, et al.: Study
Group for the Japan Glaucoma Society Survey of
Bleb-related Infection: Clinical features of blebrelated infection: a 5-year survey in Japan. Acta
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3.Matsuo H, Tomidokoro A, Tomita G, et al.: Topical
application of autologus serum for the treatment of
late-onset aqueous oozing or point-leak through
filtering blebs. EYE 2005; 19: 23―29.
4.Blok MD, Kok JH, van Mil C, et al.: Use of the
Megasoft Bandage Lens for treatment of
complications
after
trabeculectomy.
Am
J
Ophthalmol 1990; 100: 264―268.
5.Leen MM, Moster MR, Kats LJ, et al.: Management
of overfiltering and leaking blebs with autologous
blood injection. Arch Ophthalmol 1995; 113: 1050―
1055.
6.有本 剛,丸山勝彦,土坂麻子,後藤 浩:線維柱帯
切除術後の晩期房水漏出に対する経結膜的強膜縫合の
成績.あたらしい眼科 2013; 30: 107―111.
7.Panday M, Shantha B, George R, et al.: Outcomes of
bleb leak and hypotony after glaucoma filtering
surgery. J Glaucoma 2011; 20: 392―397.
8.橋本尚子,原
岳:漏出濾過胞に対する結膜被覆術
の漏出阻止効果.眼科手術 2006; 19: 551―554.
9.Lee K, Hyung S: Effect of excision of avascular bleb
and advancement of adjacent conjunctiva for
treatment of hypotony. Korean J Ophthalmol 2009;
23: 281―285.
10.Budenz DL, Barton K, Tseng SC: Amniotic
membrane transplantation for repair of leaking
glaucoma filtering bleb leaks. Ophthalmology 2002;
109: 71―75.
11.El-Harazi SM, Fellman RL, Feldman RM, et al.: Bleb
window cryopexy for the management of oversized,
misplaced blebs. J Glaucoma 2001; 10: 47―50.
12.Sony P, Kumar H, Pushker N: Treatment of
overhanging blebs with frequency-doubled Nd: YAG
laser. Ophthalmic Surg Lasers Imaging 2004; 35: 429―
432.
13.Scheie HG, Guehl JJ 3rd: Surgical management of
overhanging blebs after filtering procedures. Arch
Ophthalmol 1979; 97: 325―326.
14.柏木賢治:脈絡膜剥離(線維柱帯切除術による)
.緑
内障手術 ABC 山本哲也編.(第 1 版)
.2002; pp 124―
125, メジカルビュー社.
(受付:2014 年 1 月 27 日)
(受理:2014 年 3 月 3 日)
日医大医会誌 2014; 10(2)
111
―症例報告―
特発性肺線維症の急性増悪と肺結核とを同時発症した 1 例
長山美貴恵
國保 成暁
齋藤 好信
吾妻安良太
林
宏紀
弦間 昭彦
日本医科大学内科学(呼吸器内科)
A Case of Simultaneous Onset of Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis
and Pulmonary Tuberculosis
Mikie Nagayama, Yoshinobu Saito, Hiroki Hayashi,
Nariaki Kokuho, Arata Azuma and Akihiko Gemma
Department of Respiratory Medicine, Nippon Medical School
Abstract
An 81-year-old man with idiopathic pulmonary fibrosis (IPF) came to our hospital with
symptoms of fever and worsening dyspnea. We diagnosed an acute exacerbation of IPF (AEIPF) on the basis of the findings of high-resolution computed tomography of the chest and thus
started steroid therapy. However, we detected Mycobacterium tuberculosis in the sputum and
concluded that pulmonary tuberculosis coexisted with AE-IPF. Because high-resolution
computed tomography showed circumscribed consolidation in S10 of the left lung, we suspected
that the consolidation was the focus of the tuberculosis. We started treatment of the
pulmonary tuberculosis with antituberculous drugs; however, we were unable to control the
AE-IPF, and the patient died. Interpreting the imaging findings of infection is difficult,
particularly in cases of AE-IPF, which is associated with consolidation and may coexist with
infection. The frequency of tuberculosis was higher in patients with IPF than in the general
population. In cases of AE-IPF caused by infection, screening sputum tests, including those for
acid-fast bacteria, are useful.
(日本医科大学医学会雑誌
2014; 10: 111―114)
Key words: pulmonary tuberculosis, idiopathic pulmonary fibrosis, acute exacerbation
る1.急性増悪の詳細な原因は現在のところ不明だが,
緒 言
感染症,胸部の侵襲的検査や手術,また放射線照射や
抗癌剤などの薬剤投与を契機に発症することが知られ
特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;
ている.IPF では蜂巣肺など肺底部・胸膜直下優位に
IPF)の急性増悪は胸部高分解能 CT(high-resolution
構造改築が起こり,同部位に感染病巣を形成した場合
computed
tomography;HRCT)で既存の蜂巣肺に
には病変の質的診断は困難である.今回,IPF の急性
新たにすりガラス影や浸潤影を呈するものとされ
増悪と肺結核を同時に発症した例を経験したため,こ
Correspondence to Mikie Nagayama, Department of Respiratory Medicine, Nippon Medical School, 1―1―5 Sendagi,
Bunkyo-ku, Tokyo 113―8603, Japan
E-mail: [email protected]
Journal Website(http:!
!
www.nms.ac.jp!
jmanms!
)
112
日医大医会誌 2014; 10(2)
Table 1 Laboratory data on admission
血算
WBC
Hb
Plt
7,800 /μL
11.3 g/dL
35.7×104 /μL
生化学
AST
ALT
LD
CK
Na
K
Cl
BUN
Cre
CRP
34
20
415
165
135
4.3
102
14
0.76
6.74
IU/L
IU/L
IU/L
IU/L
mEq/L
mEq/L
mEq/L
mg/dL
mg/dL
mg/dL
れを報告するとともに,その画像的特徴や診断上の問
KL-6
SP-D
BNP
MPO-ANCA
抗核抗体
1,990.6
388.3
72.5
<10
40
尿中レジオネラ抗体
尿中肺炎球菌抗体
陰性
陰性
血液ガス(室内気)
pH
PaO2
PaCO2
HCO3−
ABE
7.44
33.9
35.2
23.4
−0.5
U/mL
ng/mL
pg/mL
EU
倍
Torr
Torr
mmol/L
mmol/L
画像所見:入院時胸部 X 線写真では,発症前(Fig.
1A)より認めていた両側末梢側優位の網状影のほか,
題点に関し考察する.
両側中下肺野に新たなすりガラス影の出現を認めた
症 例
(Fig. 1B)
.胸部 HRCT では両側肺底部に蜂巣肺を認
め,発症前の HRCT(Fig. 2A)と比較し右中下葉お
81 歳,男性.
よび左下葉に非区域性に拡がるすりガラス影の新たな
現病歴:1 年半前より間質性肺炎を指摘され,当科
出現を認めた.また,左下葉 S10 には既存の蜂巣肺に
受診した際に,胸部 HRCT にて両側肺底部に蜂巣肺
重なり,consolidation の出現を認めた(Fig. 2B)
.
を認め,身体所見および血液検査から膠原病,血管炎
臨床経過:血液ガス所見および胸部 HRCT 所見か
を示唆する所見がないことより,IPF と診断した.自
ら,IPF 急性増悪と考えた.しかし,発熱を呈してお
覚症状が乏しく,その後は無治療で経過観察としてい
り,胸部 HRCT では限局性の consolidation を認めた
た.入院 1 カ月前より呼吸困難は次第に増悪し,1 週
ことから,急性増悪の誘因として呼吸器感染症の関与
間前より咳嗽,喀痰および発熱を認めていた.低酸素
も考えられた.入院同日よりメチルプレドニゾロン
血症を呈し,胸部 X 線では両側中下肺野に新たな浸
1,000 mg!
日によるステロイド大量療法を開始し,レ
潤影の出現を認めたことから,IPF 急性増悪を疑い緊
ボフロキサシン(levofloxacin;LVFX)500 mg!
日を
急入院となった.
併用した.第 3 病日に喀痰抗酸菌塗抹集菌法 3+,結
既往歴:肺腺癌(3 年前,右上葉切除術)
,腹部大
動脈瘤,右総腸骨動脈瘤,高血圧症.
核菌―PCR 陽性であることが判明し,肺結核症と診断
した.ステロイド大量療法により呼吸不全が改善した
家族歴:特記事項なし.
ため,その後のステロイド療法は行わず,LVFX か
喫煙:20 歳から 77 歳まで 1 日 20 本.
らイソニアジド,リファンピシン,エタンブトール,
職業:ネジの販売(粉塵曝露歴はない)
ピラジナミドによる抗結核療法を開始した.第 36 病
身 体 所 見:意 識 清 明,体 温 37.5℃,血 圧 128!
80
日の喀痰塗抹検査にて陰性化が確認され,胸部 CT で
mmHg,脈拍 68!
min,SpO2 92%(酸素 3 L 吸入下)
.
は左下葉の consolidation の改善を認めた(Fig. 3)
.
胸部聴診では両側で fine crackles を聴取.
以上より肺結核に対する治療は奏功したと判断した.
入院時検査所見(Table 1)
:血液検査では,Hb 11.3
しかしながら,その後呼吸状態が再び悪化し胸部 X
g!
dL と軽度貧血を認めるほか,LD 415 IU!
L,CRP
線で両側網状影および左中肺野のすりガラス影悪化を
6.74 mg!
dL,KL-6 1,990.6 U!
mL,SP-D 388.3 ng!
mL
認め,再度 IPF の増悪を起こしたと考えられたため,
と異常高値を認めた.KL-6 は,4 カ月前には 1,372.1
ステロイド大量療法を開始した.その後プレドニゾロ
U!
mL,1 カ月前には 1,804.1 U!
mL,すでに上昇して
ン 60 mg!
日にて治療を行ったが,呼吸状態は改善せ
いた.血液ガス所見は著明な低酸素血症を認めた.
ず第 52 病日呼吸不全により死亡した.
日医大医会誌 2014; 10(2)
113
B
A
Fig. 1 A: Chest X-ray before onset. The reticular shadow in the bilateral lungs is observed.
B: Chest X-ray on admission. That shows the ground glass opacity in the bilateral lungs.
A
B
Fig. 2 A: HRCT scan before onset. The reticular shadow is observed in the bilateral lungs.
The honeycombs and paraseptal emphysema are observed in the bilateral basal
segments.
B: HRCT scan on admission. Chest HRCT scan shows the ground glass opacity in the
bilateral lungs and the circumscribed consolidation in the left lower lobe (arrow) and
honeycomb in the bilateral basal segments.
契機として発症することが知られている.IPF 急性増
考 察
悪の診断に際しては,これらの誘因についても検討す
ることが重要である.IPF 急性増悪と肺結核を同時発
本症例は,IPF の急性増悪と肺結核が同時に発症し
症した症例はこれまでに報告がないが,本症例では肺
た症例と考えられる.
IPF の急性増悪は感染症,
胸部の
結核が急性増悪の契機となった可能性も考えられる.
侵襲的検査や手術,また放射線照射や薬剤投与などを
本症例は死亡後,喀痰結核菌培養検査陽性となり,
114
日医大医会誌 2014; 10(2)
クリアランスの低下などの局所免疫能の低下が要因と
なっているのかもしれない.
本症例はスクリーニングで行った喀痰検査から肺結
核の診断に至ったが,入院当初には胸部 HRCT 所見
から肺結核の合併を想定できなかった.これは,自覚
症状であった発熱および呼吸困難が急性発症であり,
IPF の急性増悪の症状と考えられたこと,また結核病
巣が IPF の蜂巣肺と重なっており,さらに IPF の急
性増悪と同時発症であったため,画像検査のみから結
核病巣の検出が難しかったことなどが原因として挙げ
Fig. 3 Chest CT scan after one month from
admission. The consolidation in the left S10
had improved.
られる.
前述したように IPF 急性増悪と同時発症した
肺結核の報告はなく,まれであると考えられるが,IPF
については肺結核の合併率が高いとの報告を踏まえる
と,呼吸器感染症を契機に発症したと考えられる IPF
急性増悪の診断時には,抗酸菌検査を含めた感染症検
肺結核症と診断された.また,結核病巣の部位につい
査を実施しておくことは重要であると考えられた.
ては,安定している時期の胸部 HRCT と比較して,
結 語
両側肺野に新たなすりガラス影が出現しているほか,
左 S10 にはすりガラス影とは別に consolidation が出現
していること,その他の部位に結核を疑う陰影がみら
10
IPF 急性増悪と肺結核との同時発症と考えられた症
れないことから,左 S に出現した consolidation が結
例を経験した.一般的に S6 以外の下葉結核はまれで
核病巣であろうと推定された.厳密には,同部位の病
はあるが,IPF 患者では肺結核合併率ならびに下葉の
理組織診断が必要であるが,本症例では呼吸不全があ
結核の割合も高いことが示唆されている.呼吸器感染
り経気管支肺生検の実施が困難であった.
症を契機に IPF 急性増悪が誘発されたと考えられた
一般的に二次結核は S1,S2,S1+2 に全体の 85%,S6
場合,結核の可能性も考慮し,抗酸菌塗抹・培養を含
に約 10% 発生すると言われる.浸潤影や散布影を呈
めた喀痰のスクリーニング検査を実施しておくことは
6
2
し,S を除く下葉結核はまれである .一方で,IPF
に合併した肺結核の特徴に関する報告は 少 な く,
Chung らの IPF 患者 143 人における肺結核症の解析
では,結核を生じた患者は 9 人(6.29%)おり,その
うち 7 人が下葉に病巣を形成していた.胸部陰影は結
節影や浸潤影を呈するものが多いと報告されてお
り3,IPF の肺結核では下葉結核が多いのかもしれな
い.IPF の肺結核合併率については,海外では IPF
患者の 4.4% が結核を合併していたとの報告4,日本で
は IPF 患者の 6.7% が結核を有していたとの報告5 が
ある.また,本邦での年次別・年齢階級別結核罹患率
は 2011 年の人口 10 万人あたり 50 代では 12.8,60 代
では 17.5,70 代以上では 55.7 であり6,一般人口と比
較すると IPF 患者では結核合併率が高いと考えられ
る.また前述の海外からの報告4 では,免疫抑制剤を
有用である.
文 献
1.特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂第 2 版.日
本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン
作成委員会.
2.小山関哉,坂口伸樹,堀田順一:結核の診断.臨床病
理 2012; 60: 796―803.
3.Chung MJ, Goo JM, Im JG: Pulmonary tuberculosis
in patients with idiopathic pulmonary fibrosis.
European Journal of Radiology 2004; 52: 175―179.
4.Park SW, Song JW, Shim TS, et al.: Mycobacterial
pulmonary infections in patients with idiopathic
pulmonary fibrosis. J Korean Med Sci 2012; 27: 896―
900.
5.Miyake Y, Sasaki S, Yokoyama T, et al.: Case-control
study of medical history and idiopathic pulmonary
fibrosis in Japan. Respirology 2005; 10: 504―509.
6.年次別,年齢階級別結核罹患率.結核予防会 結核研
究所 疫学情報センター.
使用している症例では対症療法を行っていた症例と比
較し,結核合併率が二倍であったと報告されている.
(受付:2014 年 1 月 6 日)
一方で,免疫抑制剤を使用している症例でも結核合併
(受理:2014 年 2 月 20 日)
3
率は変わらないと報告されているものもあり ,結核
の合併は IPF の病態そのものである構造改築による
日医大医会誌 2014; 10(2)
115
―基礎科学から医学・医療を見る―
検定の考え方,独立性の検定
儀我真理子
日本医科大学基礎科学数学
Statistical Tests, Test of Independence
Mariko Giga
Department of mathematics, Nippon Medical School
Abstract
In this paper we describe statistical test. This is the most important statistical field for
examining the mean, variance and other characteristics of population by using sample. First,
we propose a null hypothesis, for example, that the population mean is a certain value. With
statistical analysis, if we conclude that the null hypothesis is to be rejected, we judge that the
hypothesis is probably not true. When we conclude that the null hypothesis is to be accepted,
we can only say that we cannot reject it. In this paper, we also describe a test of
independence. This is a method of testing, for example, whether we can recognize a difference
in the numbers of male and female patients with certain diseases. The main method of testing
for independence is not applicable to small samples, for which other methods must be used.
(日本医科大学医学会雑誌
2014; 10: 115―119)
Key words: statistical test, null hypothesis, reject, accept, test of independence
X−μ
―――
_ _ Aα
−Aα<
σ <
――
√n‾
1.検定の考え方
検定(test)の考え方の基本は推定のそれと変わら
ない.前回の母平均の推定[1]
において,
“信頼度 95%
(1)
(記号 Aαの意味は[1]の(6)式参照)
において,母平均 μ を μ=μ0(μ0 は値)と仮定したと
の信頼区間(α=0.05)
”の正確な意味が,「標本をい
き(こ れ を 帰 無 仮 説(null hypothesis)と 言 い,H0
くつもとったとすると,そこから計算できる信頼区間
で表す)
,不等式
はその都度異なる.その中で信頼区間が真の母平均を
含んでいる確率が,95% である.
」ということを述べ
た.またこれは,信頼区間を導いたのと同じ式
X−μ0
―――
_ _ Aα
−Aα<
σ <
――
√n‾
(2)
が満たされる確率は 1−α(=0.95)であることを意
味する.言い換えれば,帰無仮説 μ=μ0 が成り立つの
に(2)が成り立たない確率は α(=0.05)しかない.
したがって(2)が成り立っていないときには帰無仮
Correspondence to Mariko Giga, Department of Mathematics, Nippon Medical School, 2―297―2 Kosugi-cho, Nakaharaku, Kawasaki, Kanagawa 211―0063, Japan
E-mail: [email protected]
Journal Website(http:!
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www.nms.ac.jp!
jmanms!
)
116
日医大医会誌 2014; 10(2)
説はどうも成り立たないらしいということで“棄却”
を第 2 種の過誤(error of second kind)という.
し,それ以外なら採択する.これが検定の基本的な考
検定の一番基本的な考え方では,第 2 種の過誤につ
え方である.今述べた 値 α は 有 意 水 準(signicance
いてはあまり深く追求しない.棄却は“帰無仮説はう
level)と呼ばれる.
そらしいから棄却しよう”という意味である.しかし
公式 1
母分散既知の場合の母平均の検定(両側検定)
正規母集団 N
(μ,
σ2)において母分散 σ2 は既知と
し,そこから抽出された大きさ n の標本の標本平均
を"とする.
採択は上の治療法の例でも述べたように,“これくら
いでは棄却することができない”という意味である.
たとえそのときの標本平均が μ0 からある程度ずれて
いても,“標本の具合によりそれくらいずれることは
ある.
”という感じである.
帰無仮説 H0:μ=μ0
とするとき,有意水準 α での両側検定における棄却
域は次で与えられる:
x−μ0
x−μ0
―――
―――
z= <A
α または z= >A
α.
(3)
σ
σ
――
――
√n‾
√n‾
今まで述べてきた手法は両側検定であるが,上側検
定,下側検定もある.両側検定は,母平均とある値 μ0
との間に差があるか否かに関心のある場合に,上側(下
側)検定は,母平均がある値 μ0 より大きい(小さい)
か否かに関心のある場合に用いられる.また検定の種
類によっては,帰無仮説が成り立たない場合には,統
計検定量の値が必ず,上側にずれるというものもあ
帰無仮説の「帰無」とは“無に帰する”という意味
る.
である.検定をするとき,多くの場合棄却を期待して
ここまでは検定の基本概念として,帰無仮説の棄却
いる.例えば,新しい治療法が既成のそれより効果が
の意味について述べ,採択については「棄却できない」
あるか否かを検定したいときは,帰無仮説 H0:μ=μ0
というきわめて消極的な言い方をしてきた.これはま
(μ は新たな治療法による調べている量の平均,μ0 は
ずは第 1 種の過誤に対して慎重であるべきであるとい
既成の治療法による対応する量の平均の値)は“新た
う検定の基本的立場である.しかし採択の方にもある
な治療法と既存のそれとの間に効果の差はない”であ
程度の意味を持たせる,つまり第 2 種の過誤もなるべ
るから,まさに棄却を期待している.逆に帰無仮説が
く少なくするという立場で考える検定力という理論も
採択された場合の意味するところは(“既存の治療法
ある([2]参照)
.
による効果と変わらない”というよりは)“既存の治
標本平均"から計算した(2)の中辺の値を z1 とす
療法とは異なる効果があったという結論は導けなかっ
るとき,確率 P
(z!|z1|)の値を p 値(p value)と
た”
である.このように,棄却と採択は同等ではない.
いう.つまり p 値とは,帰無仮説の下で実際に標本か
検定の考え方は公式 1 の前にも述べたが,棄却,採択
ら得られた値 z1 より極端な(つまり帰無仮説の値か
についてもう一度考えてみる.
ら離れている)値となる確率はどれだけかを表してお
公式 1 の z を確率変数とみたものを Z とする.Z の
り,SPSS などの統計ソフトでも用いられている.な
なす正規分布は帰無仮説が成り立つという仮定のもと
お,結果が棄却の場合には,p 値は帰無仮説を棄却す
での分布である.したがって,たまたま偏った標本に
るための最少の有意水準であることもわかる.
なり,Z の値がグラフの端の方(μ0 から遠いところ)
になることは帰無仮説が正しくても起こるが,めった
多くの検定手法が知られているが,以下では適合度
検定,独立性の検定について述べる.
に起こるはずのないことなのだから,標本から計算し
2.適合度検定
た Z の値がグラフ端の方の値をとったら棄却とする
のである.しかし,μ=μ0 が成り立っていても z の値
がグラフの端の方の値をとることがときにはあり得る
例2
ので,“棄却”と結論するのは実は誤りであったとい
メンデルは 1865 年,エンドウ豆の色と形状におい
メンデルの実験
う 危 険 も あ る.こ れ を 第 1 種 の 過 誤(error of first
ての遺伝形質を調べた実験において,次の上の段の数
kind)という.その危険の確率は,意味から考えて有
値結果を得た.この観測結果より,4 つの表現型は 9:
意水準 α に等しい.この意味で有意水準のことを危
3:3:1 の比率で現れると彼は考えた.これは統計的
険率ともいう.棄却できないときは採択になるが,こ
に正しいであろうか.下の段の数値は,556 個のエン
ちらに関しても,本当は帰無仮説が成り立っていない
ドウ豆を,理論比 9:3:3:1 にしたがって分けた場
のに採択としてしまう可能性もあるはずである.これ
合の理論度数を表す.
日医大医会誌 2014; 10(2)
観測
理論
117
黄丸
黄しわ
緑丸
緑しわ
計
315
312.8
101
104.3
108
104.3
32
34.75
556
556
を ai,属性 Bj(j=1,.
.
.
,s)を持つ標本の個数の和
を bj として,表 4(A)のような分割表を作る.ここ
で ai(i=1,.
.
.
,r)
,bj(j=1,.
.
.
,s)を 周 辺 度 数
という.「属性 A,B は互いに独立であるか否か」を
メンデルの観測結果が理論比に合っているかどうか
の検定をする際に使われるのが,次に述べる適合度検
2
of
independence)という.独立性が成り立たない度合
が大きいほど検定統計量 x2 の値は大きくなるので,
定(x -test of goodness of fit)である.
公式 3
検定したい.この手法を独立性の x2 検定(x2-test
棄却域は大きい方のみにとる(上側検定)
.
適合度検定
事象E(i=1,
...,
k)がn回中xi 回起こったとするとき,
i
帰無仮説 H0:観測結果は理論値 npi と合う
観測度数と A,B が独立としたときの理論度数を次
のようにおく.理論度数は yij=aibj!
n である.
表 4(A) 観測度数表
として有意水準 α で検定する.ただし,npi"5 とす
B2
…
Bs
計
x12
x22
…
xr2
…
…
…
…
x1s
x2s
…
xrs
a1
a2
Ar
x11
x21
…
xr1
計
b1
b2
…
bs
n
A1
A2
k
Σ
⋮
2
(xi−npi)
2
x2=
>x(k−1;
α)
.
――――
npi
i=1
2
ここで x(k−1;α)は
x2 分布表における値である.
この公式を使って例 2 の適合度検定を行う.
ある.これを有意水準 0.05 で検定する.n=556,p1=
B2
…
Bs
計
y12
y22
…
yr2
…
…
…
…
y1s
y2s
…
yrs
a1
a2
Ar
y11
y21
…
yr1
計
b1
b2
…
bs
n
⋮
値は次のようになる.
(101−104.3)2
(315−312.8)2
x2= ―――――――
+ ―――――――
104.3
312.8
2
x2 < x(4−1;0.05)が成り立ち棄却できない,つま
りメンデルの実験結果は理論比 9:3:3:1 に合って
いると言ってよい.ここで,適合度検定の結果“適合
している”という結論を得たということの意味は,「理
公式 5
⋮
B1
A1
A2
9
3
3
1
16,p2=16,p3=16,p4=16であるから,検定統計量の
2
x2 分布表より x(4−1;0.05)=7.815
であるから,
ar
表 4(B) 理論度数表
帰 無 仮 説 H0 は「p1:p2:p3:p4 は 9:3:3:1」で
2
(32−34.75)
(108−104.3)2
+ ――――――― + =0.470
――――――
104.3
34.75
⋮
B1
る.棄却域は次で与えられる:
ar
独立性の検定
帰無仮説 H0:A,B は互いに独立である
として有意水準 α で検定する.ただし,理論度数は 5
以上とする.棄却域は次で与えられる:
r
s
(xij−yij)2
2(r−1)
x2=
>x(
(s−1)
;α). (4)
――――
yij
i=1 j=1
Σ Σ
論比に適合していると積極的に判断できた」ではな
く,「帰無仮説を棄却することはできない」である.x2
2
なお 2×2 分割表の場合は,検定統計量は次のよう
の計算式を見るとわかるように,統計量 x の値が大
になることが直接計算でわかる.ゆえに,この場合に
きい場合に,理論度数と観測度数の数値には開きがあ
は理論度数表を作る必要はない.
る.したがって適合度検定の場合には,棄却域は上側
だけになる.つまり必ず上側検定となる.
適合度検定を使って,データがある分布に従ってい
るか否かを調べることもできる.
B2
計
A1
A2
a
c
b
d
a+b
c+d
計
a+c
b+d
n
n(ad−bc)2
x2= ――――――――――――
(a+b)
(c+d)
(a+c)
(b+d)
3.独立性の検定
母集団からランダムに選んだ n 個の標本を,2 種類
B1
例6
(5)
(6)
50 人の児童のうち 35 人はインフルエンザの
の属性 A,B により,A1,A2,…,Ar と B1,B2,…,
予防接種を受けた.インフルエンザに罹患した者と罹
Bs に分類したとき,Ai と Bj をともに持つ標本の個数
患しなかった者の数は表のようであった.この予防接
を xij,属性 Ai(i=1,.
.
.
,r)を持つ標本の個数の和
種はインフルエンザの発症を抑えるのに効果があった
118
日医大医会誌 2014; 10(2)
といえるかを,有意水準 5% で検定する.
をしても結輪は変わらない.
罹患
罹患せず
計
受けた
受けなかった
3
7
32
8
35
15
計
10
40
50
(III)理論度数が 5 以下の値を含み,どの値もあま
り大きくないときは,次の 4 節で述べるフィッシャー
の直接法を用いる.
適合度検定における公式 3 の npi は,独立性の検定
における公式 5 の yij に相当する.このことからもわ
帰無仮説 H0 は,「予防接種を受けたこととインフ
かるように,適合度検定と独立性の検定は統計理論と
しては同じである.適合度検定は理論度数の割合が初
ルエンザに罹患したことは独立」である.
ここではまず,公式 5 を用いて考えてみる.理論度
めから定めてある場合の検定と言える.
独立性の検定をする場合,「独立性が成り立たなく
数表は次のようになる.
罹患
罹患せず
計
受けた
受けなかった
7
3
28
12
35
15
計
10
40
50
なるほど x2 の値は大きくなるので,棄却域は大きい
方のみにとる.
」とした.この考えはどこもまちがっ
てはいないのであるが,x2 分布の確率密度関数のグラ
フを見ると,自由度が 3 以上のときは,x=0 のとき
は確率は低く,x が少し大きくなるあたりで確率が最
実際の数を xij,理論度数を yij として,(4)式を使
態ならば x=0 のとき確率最大になるはずであろう.
うと,
2
しかし独立性の検定に使う確率変数の分布がこのよう
2
Σ Σ
2
(xij−yij)
x=
――――
yij
i=1 j=1
2
大になっていることに気づく.真に独立で理想的な状
になる理由は,統計の理論がすべて正規分布によるば
らつきを持つことを仮定してできているからである.
2(2−1)
(2−1)
;0.05)
)
=9.524>3.842(=x(
もし標本から独立性の検定をおこなった結果,検定統
となり棄却,つまり予防接種は効果があったといえ
計量が 0 に非常に近くなったら,それは“合いすぎ”
る.なお,例 6 は 2×2 分割表の場合なので,検定統
なのであり何らかの作為を疑われる結果であると考え
計量の値は理論度数表を作らず(6)式で直接計算す
ることもできる.(メンデルのエンドウ豆の実験結果
ることもできる.
は“合いすぎ”であると言われている.しかしそれは
2
公式 3,公式 5 を見ると,これが x 分布としてうま
メンデルの功績を損なうものではないであろう.
)こ
く機能するのは n が十分大きいときであることがわ
の考え方で独立性の検定をする流儀もある.その場合
かる.事実,適合度検定における npi や分割表の理論
は両側検定になる.
2
度数が 5 以下の値を含む場合,上の x 分布による近
ついでながら説明を付け足す.例えば母平均の検定
似はとても悪くなる.このようなときは以下の(I)∼
で使う検定統計量の標準化する前のグラフは,帰無仮
説 μ=μ0 を中心とする正規分布である.これは左右対
(III)の方法を用いるとよい.
(I)2 つのクラスのデータをまとめる.たとえば表
称であるからばらつきの影響も左右対称に働き合い,
4(A)において,Bs−1 と Bs の値が小さい場合には,
μ=μ0 のところがグラフの値は一番大きくなる.しか
これら 2 つの値を合わせて Bs−1 の値とする.
し独立性の検定の場合は,検定統計量は正の値のみを
(II)イェーツ(Yates)の補正をする.すなわち,
ずれるのである.
統計量として次のものを使う.
r
s
(|xij−yij|− )2
x2=
―――――――.
yij
i=1 j=1
Σ Σ
(7)
特に 2×2 分割表の場合には次のようになる.
n
― 2
n
(|ad−bc|− )
2
x2=――――――――――――.
(a+b)
(c+d)
(a+c)
(b+d)
とる x2 分布に従うので,グラフの最大値は x=0 から
4.フィッシャーの直接法による独立性の検定
前節で述べたフィッシャーの直接法またはフィッ
シャーの正確確率検定(Fisher’
s exact test)とは,
(8)
2
データの数が非常に少なく,公式 5 を使っての検定が
適用できない場合(目安としては,理論度数が 5 以下
x の値が小さくなるように補正する理由は,もとも
の値を含みどの値もあまり大きくないとき)の属性に
とは離散的な分布を連続分布である x2 分布で近似し
関する独立性の検定法であり,両側検定,片側検定ど
て解析するからである.なお例 6 ではイェーツの補正
ちらも可能である.この手法は,母平均が特定の分布
日医大医会誌 2014; 10(2)
119
に従うことを仮定していないのでノンパラメトリック
ければ関連は低いし,大きければ関連は強いと考えて
検定である.2×2 分割表で使うことが多い.
よい.このことから|ad−bc|は独立性の指標と考え
ることができる.
例7
有意水準 5% で A,B の独立性を検定したい場合
肉と魚の嗜好の違いによって,コレステロールが基
は,a の値が小さい方からと大きい方から,それぞれ
準より高いか低いかを調べたところ,左側の表のよう
図 9 の累積確率が 0.025 になるところまでが棄却域で
な結果を得た.なお,右側の表は説明のために記号を
ある.それは a の値で言うと,例 7 の場合 3 以下およ
当てたものである.
び 10 以上である.この例における実際の値は a=9 で
あったから,帰無仮説は棄却されない.つまり“肉が
表 8 高め
低め
計
肉
魚
9
3
9
10
14
13
計
12
15
27
B1
B2
計
A1
A2
a
c
b
d
r
s
計
t
u
n
好きか魚が好きかで,コレステロール値が基準より高
いか低いかに違いがあるとは言えない”ことがわかっ
た.
検定したいことは,肉と魚の嗜好の違いによって,
コレステロール値の高低に差があるか,すなわち A1
か A2 かによって,B1 か B2 かに差があるか否か,であ
る.今周辺度数 r,s,t,u は固定して考える.この
とき a が決まれば b,c,d の値は自然に決まることに
注意する(0!a!min
(r,
t)
)
.したがって,帰無仮説
a
H0「因子 A と B とは互いに独立である」
の下で,
(A1,
B1)に対応する値 a を調べることによって,独立性を
判断することができる.
(A1,B1)の値が a となる確率,すなわち a,b,c,
d が表 8 のように決まる確率は次のようになる.
rCa×sCc
Pa= ――――
nCt
(a+b)
!(c+d)
!(a+c)
!
(b+d)
!
n! a! b! c! d!
(9)
=―――――――――――――――――.
ゆえに,その出現確率は図 9 のようになる.
“肉が好きか魚が好きか”が,“コレステロールの高
い低い”とは無関係,つまり完全に独立であったとす
ると,
a
c
― = ― すなわち ad−bc=0
b
d
となるはずである.この ad−bc の値の絶対値が小さ
図9
文 献
1.儀我真理子:正規母集団,推定の考え方.日本医科大
学医学会雑誌 2014; 10: 16―20.
2.儀我真理子:確率・統計の基礎.2014,ムイスリ出版.
3.薩摩順吉:確率・統計.1989,岩波書店.
4.澤田 昇,田澤新成:統計学の基礎と演習.2005,共
立出版.
5.篠原昌彦:確率・統計.1989,朝倉書店.
6.丹後俊郎:新版医学への統計学.1993,朝倉書店.
7.東京大学教養学部統計学教室:自然科学の統計学.
1993,東京大学出版会.
8.服部哲也:理工系の確率・統計入門.2005,学術図書.
9.宮原英夫,白鷹増男:医学統計学.1992,朝倉書店.
(受付:2014 年 1 月 16 日)
(受理:2014 年 3 月 17 日)
120
日医大医会誌 2014; 10(2)
Luminal A(ER!
PgR 陽性,HER2 陰性,Ki67 低値)
,
―話 題―
luminal B(ER!
PgR 陽性,HER2 陽性または Ki67 高値)
,
乳癌治療の昨今
HER2 陽性(ER!
PgR 陰性,HER2 陽性)
,トリプ ル ネ ガ
ティブ(ER!
PgR 陰性,HER2 陰性)の 4 つの群に分類し,
日本医科大学外科学(乳腺外科)
柳原 恵子,武井 寛幸
これらのサブタイプごとに治療の選択を行う.全身治療の
中でも分子標的治療薬の発展は目覚ましく,増殖能が高く
予後不良であった HER2 陽性乳癌は,術前後の補助療法
わが国の乳癌罹患率と死亡率は増加の一途を辿ってい
や転移再発にトラスツズマブを用いることで,予後の改善
る.2008 年の罹患数は 59,389 人で,15 人に 1 人の女性が
が得られている.現在 HER2 陽性の転移性乳癌にはラパ
乳癌に罹患する割合で,将来的には 10 人に 1 人が乳癌を
チニブ,ペルツズマブが使用でき,トラスツズマブに化学
経験するようになると考えられている.また,2012 年の
療法剤を結合させたトラスツズマブエムタンシンも 2013
乳癌死亡数は 12,529 人で,30 歳から 64 歳までの働き盛り
年に承認され,治療の選択肢が広がっている.
の女性の癌による死亡の第 1 位を占めている.欧米では死
トリプルネガティブ乳癌は,ER,PgR,HER2 共に陰
亡率が低下傾向に転じており,検診受診率が 70∼80% と
性であるため内分泌療法やトラスツズマブの適応がなく,
高いことが乳癌の早期発見,死亡率低下に結びついてい
化学療法が必要な癌である.しかし,化学療法の効果は乏
る.日本では 2004 年から乳癌検診の対象年齢を 40 歳以上
しいことも多く,他のサブタイプに比べて予後不良で,
に拡大,2 年に 1 度のマンモグラフィが推奨されている
PARP 阻害剤や白金系薬剤が効果的な可能性が報告されて
が,受診率は任意型検診を含めても約 30% と低く,今後
いる.
これを増加させることが,死亡率低下につながるであろ
う.
日本人の遺伝性乳癌は乳癌全体の約 5∼10% である.遺
伝性乳癌にはいくつかのタイプがあるが,
「遺伝性乳がん
最近の乳癌治療は大きな変貌期となっている.手術にお
卵巣がん症候群」は BRCA1 や 2 に遺伝子変異が認められ
いては,EBM(evidence based medicine)の考えはもち
るもので,乳癌発症年齢が 40 歳未満,トリプルネガティ
ろんのこと,QOL(quality of life)を考慮した治療選択
ブ乳癌,両側乳癌,乳癌や卵巣癌の家族歴,男性乳癌など
が行われるようになっている.二十数年前に始まった乳房
が認められることが多い.
温存術は,当初の単に「乳房を温存する」手術から,
「整
BRCA1 はトリプルネガティブ乳癌,BRCA2 は ER,PgR
容性を保つ」手術へと QOL 改善の努力がなされている.
陽性乳癌や男性乳癌と関連があり,これらの遺伝子に変異
ただし,
「温存術=QOL が良い」わけではない.再発は最
があると,乳癌を発症する可能性は 45∼84%,卵巣癌を
も避けたい出来事である.乳房内に癌が残れば乳房内再発
発症する可能性は 11∼62% と高く,若年発症も多い.手
のリスクは高くなる.乳房内で癌が広がっており,著しい
術では,温存術可能な乳癌であっても,全摘術も選択肢と
変形が予測される温存術では整容性を保つことも困難であ
して挙げられる.
る.そのような場合は,乳房全摘術に乳房再建術を行う考
2013 年にはアメリカの女優,アンジェリーナ・ジョリー
えも広がってきている.2013 年には再建用の人工物(シ
がこの遺伝子変異を認めたため予防的乳房切除と乳房再建
リコンインプラント)が保険適用となった.
術を行い,日本でも大きく取り上げられた.予防的切除を
また 2010 年に保険適用になったセンチネルリンパ節生
することで乳癌や卵巣癌の発症の可能性が低くなる.乳癌
検では,センチネル(みはり)リンパ節に転移がなければ
や卵巣癌で命をおとさないために,この遺伝子変異を持つ
腋窩リンパ節郭清が省略可能となった.これは患側上肢の
女性が予防的乳房・卵巣切除をする際には,費用の援助を
浮腫予防につながり QOL の向上をもたらした.最近で
行う国もある.
は,センチネルリンパ節に転移があった場合でも,腋窩郭
清を追加すべきか否かの議論がなされている.
現在の日本では BRCA1!
2 の遺伝子変異を調べるために
は,遺伝カウンセリングの後,希望があれば検査可能であ
乳癌は早期から全身にも癌細胞が広がっていると考えら
る.自己負担のため 25 万円程度の費用が必要で,遺伝子
れており,局所治療と全身治療を組み合わせ,完治を目指
検査で陽性であっても,予防的乳房・卵巣切除の可能な施
すのが一般的である.全身治療としては,内分泌療法,化
設はごくわずかで,倫理面や費用面での課題も残る.
学療法,分子標的治療薬がある.近年,乳癌は遺伝子解析
によっていくつかの intrinsic
subtype に分類されるよう
になった.しかしすべての症例に網羅的遺伝子解析を行う
このように大きな変貌期にある乳癌治療は,どのように
治療を組み立てていくか,さらなる専門性が求められてい
る.
ことは不可能なため,ER(エストロゲン受容体)
,PgR(プ
(受付:2014 年 1 月 20 日)
ロゲステロン受容体)
,HER2(ヒト上皮成長因子受容体
(受理:2014 年 2 月 10 日)
2)
,Ki67(細胞増殖関連タンパク)を免疫染色法で検索
し,近似的にサブタイプ分類を行っている.
E-mail: [email protected]
Journal Website(http:!
!
www.nms.ac.jp!
jmanms!
)
日医大医会誌 2014; 10(2)
121
―関連施設だより―
日本医科大学の名のもとに
大塚 茂
北村山公立病院
In the Name of Nippon Medical School
Shigeru Ohtsuka
Kitamurayama Municipal Hospital
山形県は,空気も米も果物もおいしく,風光明媚で名所旧跡もたくさんあり,いたるところに温泉があります.
北村山公立病院のある東根市は,県の中央部,村山盆地に位置し,東は仙台市,南は山形市,天童市に隣接した,
やはり温泉のある自然豊かな田園都市です.また,国道 13 号線,48 号線,287 号線が通り,山形新幹線さくらんぼ
東根駅や,東北中央自動車道東根 IC から 2.4 km の距離に山形空港が所在するなど県内交通の要衝にあり,先端技
術産業が集積する産業都市でもあります.
北村山公立病院は,昭和 37 年 10 月に三市一町(東根市,村山市,尾花沢市,大石田町)の組合立病院として創
立され内科,外科,産婦人科,小児科,整形外科,耳鼻咽喉科の 6 診療科 98 床で診療を開始いたしました.以後,
日本医科大学の特定関連病院として認定され,医師は母校日本医科大学より絶え間なく安定して派遣されました.
昭和 48 年 6 月に現在の地に新築移転してまいりました.平成 4 年 4 月には大規模な病院の増改築工事を行って,14
診療科 390 床で診療開始となりました.その後,亜急性期病床・回復期リハビリテーション病棟を開設して,さら
には人工透析センターの改修など診療体制を整備してまいりました.また,これまでに電子カルテの導入,最新の
医療機器の導入充実を図り,現在は平成 6 年診療開始の形成外科と平成 21 年診療開始の乳腺外科を含む 16 診療科
(内科,神経内科,小児科,外科,整形外科,形成外科,脳神経外科,乳腺外科,皮膚科,泌尿器科,産婦人科,眼
科,耳鼻咽喉科,リハビリテーション科,放射線科,麻酔科)360 床で,北村山地域 10 万 1 千人診療圏の基幹病院
として,その役割を担っております.今日までに母校日本医科大学からは私を含めて実人数で 661 人の先生方が派
遣,勤務されています.地域の診療所の先生方との病診連携を深め,様々な高度な機能を有する医療機関との病病
連携をより密にして,さらには介護保険施設などとも連携を図り地域完結型の心のかよう安心で安全な医療の提供
南側から見た北村山公立病院
連絡先:大塚 茂 〒999―3792 山形県東根市温泉町 2―15―1 北村山公立病院 院長
URL:http://www.hosp-kitamurayama.jp/
E-mail:[email protected]
Journal Website(http://www.nms.ac.jp/jmanms)
122
日医大医会誌 2014; 10
(2)
に努めております.
当該地区唯一の救急告示病院として当院では,昭和 54 年からその
業務を開始しております.平成 23 年度には年間の救急患者数が
10,000 人を超えて,年間の救急車受け入れ件数についても村山二次
医療圏で山形市立病院済生館,山形県立中央病院に次いで三番目の
シェアを占めるに至っております.
当院のリハビリテーションセンターは,昭和 37 年 10 月に外科系
の患者さんの後療法を行うということを目的に常勤マッサージ師 1
名でマッサージを開始したのが始まりであります.昭和 48 年 6 月
に,県内初のリハビリテーション施設として山形県立リハビリテー
ションセンター(理学療法士 1 名,マッサージ師 4 名,助手 1 名)
が併設されました.平成 12 年 4 月には山形県立リハビリテーション
センターが県から移管されて北村山公立病院リハビリテーションセ
ンターとなりました.平成 15 年 11 月には回復期リハビリテーショ
病院正面玄関東側に設置している
初代院長 髙橋末雄先生の銅像
ン病棟を開設しています.現在,リハビリテーションセンターは担
当医師 1 名と理学療法士 15 名,作業療法士 12 名,言語聴覚士 3 名
の体制で 365 日集中的なリハビリテーションを提供しています.リ
ハビリテーションセンターでは水治療などに温泉を利用していま
す.またこの温泉を入院患者さん用の入浴施設「なごみ温泉」と職員風呂に利用しています.
人工透析センターは,平成 4 年 4 月人工透析装置 5 台で治療を開始しています.その後二度の改修工事を経て人
工腎臓装置を更新し,
現在は 30 床で年間延べ 12,000 件の透析を行っています.緊急透析についても対応しています.
平成 21 年 1 月,病院敷地内に院内保育所「スマイルキッズきたこう」を開所しています.定員は 30 名で終夜保
育も行っています.
日本医科大学特定関連病院である北村山公立病院の特色は,当該地区唯一の救急告示病院として救急医療の充実,
リハビリテーションセンターの充実,人工透析センターの充実の三つにあると考えています.母校日本医科大学で
は,いよいよ新病院が今年 4 月に完成し,8 月診療開始と伺っています.北村山公立病院は日本医科大学の名のも
と,克己殉公の精神で地域医療に貢献することがなによりの奉公と考えその役目を果たすべく職員一同努力精進い
たしているところであります.
(受付:2014 年 1 月 28 日)
日医大医会誌 2014; 10(2)
123
―JNMS のページ―
Journal of Nippon Medical School に掲載した Original 論
Impact of Coexisting Irritable Bowel Syndrome
文の英文 Abstract を,著者自身が和文 Summary として
and Non-erosive Reflux Disease on Postprandial
簡潔にまとめたものです.
Abdominal Fullness and Sleep Disorders in
Functional Dyspepsia
(J Nippon Med Sch 2013; 80: 362―370)
Journal of Nippon Medical School
Vol. 80, No. 5(2013 年 10 月発行)掲載
機能性ディスペプシア overlap 症候群における睡眠障害
Gastric Emptying of a Carbohydrate-electrolyte
Solution in Healthy Volunteers Depends on
Osmotically Active Particles
(J Nippon Med Sch 2013; 80: 342―349)
健常成人における炭水化物・電解質溶液の胃排出は
の検討
二神生爾
山脇博士
新福摩弓
泉 日輝
若林大雅
小高康裕
名児耶浩幸
進藤智隆
河越哲郎
坂本長逸
日本医科大学消化器内科学
浸透圧を規定する粒子に依存する
目 的:機 能 性 デ ィ ス ペ プ シ ア(FD)患 者 に お け る
金
徹
岡部 格
桜井 実
石原圭一
井上哲夫
汲田伸一郎
1
3
2
3
1
金谷浩司
overlap 症候群は,逆流症状(FD-NERD)や便通障害(FD-
坂本篤裕
IBS)を合併する患者群であり,一般に症状が強く治療抵
3
4
5
日本医科大学千葉北総病院麻酔科
抗性であることが知られている.この overlap 症候群にお
ひたちなか総合病院麻酔科
いて,睡眠障害の検討は今までなされていない.今回の研
日本医科大学健診医療センター
究は,この両者の相関関係を明らかにする目的で遂行し
日本医科大学放射線医学
た.
1
2
3
4
方法:139 名の FD 患者を対象に胃排出能を 13C 呼気試
日本医科大学麻酔科学
5
験 法(Tmax)で,睡 眠 障 害 を ピ ッ ツ バ ー グ 質 問 表
背景:クリアウォータの胃からの排出時間はその構成成
分によって異なるが,その具体的な差は知られていない.
(Pittsburgh Sleep Quality:PSQI)を用いて,うつ傾向を
SRQ-D スコアを用いて評価した.
方法:10 人の健康成人を対象にクロスオーバー試験に
結果:アルコール摂取量,BMI 値,喫煙率などは FD
て OS-1 とポカリスエット (PS)の胃からの排出時間を
単独群,overlap 症候群の間に有意な差は認められなかっ
比較した.6 時間の絶飲食後,500 mL の OS-1Ⓡ(あるい
た.FD-NERD 群や FD 単独群に比較して FD-NERD-IBS
は PS)を 3 分以内で経口摂取した時の胃内容量の変化を
群では食後膨満感のスコアは有意に高値であった.また,
magnetic resonance imaging を用いて評価した.測定ポ
健 常 者 群 に 比 較 し,FD 単 独 群,overlap 症 候 群 と も に
イントは経口摂取直前,経口摂取直後,経口摂取 30 分後
Tmax 値は有意に高値であった.Overlap 症候群における
とし,ナトリウム,カリウム,炭水化物,浸透圧を規定す
PSQI 値は有意に高く,睡眠は有意に障害されていた.
Ⓡ
Ⓡ
る粒子の単位時間当りの排出量も合わせて検討した.
結果:経口摂取 30 分後の胃内容量は OS-1 が 76.0±57.0
Ⓡ
mL,PS が 158.1±73.5 mL で OS-1 の方が有意に少なかっ
Ⓡ
た(p<0.01)
.また,ナトリウム,カリウム,炭水化物の
単位時間当りの排出量は OS-1Ⓡと PS の間で有意な差 が
あったが,浸透圧を規定する粒子には差がなかった.
結論:胃からの排出時間は OS-1Ⓡの方が PS よりも有意
に速く,その制御因子は浸透圧を規定する粒子と推測され
る.
結 語:FD-overlap 症 候 群 に お け る PSQI 値 は FD 単 独
群に比し高値を示した.合併する症状と睡眠障害の関係に
ついては,さらなる検討が必要と思われる.
124
日医大医会誌 2014; 10(2)
Significance of Aggressive Surgery for an
Invasive
Carcinoma
Derived
Intraductal
Papillary
Diagnosed
Preoperatively
from
Mucinous
an
Neoplasm
as
Borderline
Resectable
Journal of Nippon Medical School
Vol. 80, No. 6(2013 年 12 月発行)掲載
Evaluation
of
Carcinoembryonic
(J Nippon Med Sch 2013; 80: 371―377)
Serum
Antigen
Levels
in
of
Allergic
Bronchopulmonary Aspergillosis
(J Nippon Med Sch 2013; 80: 404―409)
術前に borderline
resectable と診断された膵管内腫瘍
由来の浸潤癌に対する積極的外科切除の意義
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症における血清
CEA 値の検討
相本隆幸
1
水谷 聡
2
川野陽一
1
鈴木英之
2
内田英二
野口 哲
山本和男
森山 岳
齋藤友理子
日本医科大学外科学(消化器外科学)
教山紘之
三上慎太郎
小野 竜
小林威仁
日本医科大学武蔵小杉病院消化器病センター
山名一平
植松和嗣
1
1
2
埼玉医科大学総合医療センター呼吸器内科
目的:borderline resectable と診断された膵管内腫瘍由
来の浸潤癌(BRICs derived from IPMNs)と borderline
背 景:血 清 carcinoembryonic
antigen(CEA)は,悪
resectable と診断された浸潤性膵管癌(BRPDAs)の臨床
性腫瘍のマーカーであるが,良性疾患でも高値となる.ア
病理学的な特徴を比較検討した.
レルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は,気管
患者および方法:対象は BRICs derived from IPMNs
支喘息と多彩な胸部画像所見を呈する疾患である.われわ
症例の 7 例と BRPDAs 症例の 14 例.初発症状,術前画像
れは,ABPA 患者の血清 CEA 値を測定し,CEA 値と,
診断,血清 CA19-9 値,術中因子,病理組織学的所見,補
末梢血好酸球数,血中 IgE 値,および胸部 CT 所見との
助化学療法,予後につき検討した.
関連性を検討した.
結果:BRICs derived from IPMNs 症例:全例,腫瘍径
方法:当院で治療を行った 13 人の ABPA 患者(男性 6
が 3 cm 以上で主要脈管への 180̊ 以下の浸潤が疑われた.
人,女性 7 人,年齢 34∼76 歳)を対象とした.プレドニ
5 例(71%)は Whipple 手術,2 例(29%)は膵体尾部切
ゾロンによる治療前後での血清 CEA 値,末梢血好酸球
除術を施行されたが,血管合併切除を要したのは 3 例のみ
数,および IgE 値を測定し,CT 画像の評価を行った.
(43%)であった.全例で治癒切除が施行され,術後の合
結果:治療開始前において,13 人中 7 人に血清 CEA の
併症や再発を認めていない.病理学的に IPMN の亜型分
基準値上限以上の上昇を認めた.血清 CEA 値と末梢血好
類は,2 例(29%)が gastric type,5 例(71%)が intestinal
酸球数,IgE 値との相関は認めなかった.治療前後で測定
type であった.リンパ節転移は 2 例(29%)にみられ,
できた 9 人で,治療後に血清 CEA 値は有意に低下し,か
進行度は Stage II が 4 例(57%)
,IVa が 3 例(43%)で
つ 肺 野 の consolidation の 改 善 を 認 め た.治 療 前 に
あった.術後 3 年生存率は 100% であった.BRPDAs 症
consolidation を呈した症例の血清 CEA 値は,それ以外の
例との比較検討:BRICs
症例と比較して,血清 CEA 値が有意に高かった.
derived
from
IPMNs 症例は
BRPDAs 症例に比べ,腫瘍径が大きく(P<0.05)
,リン
結論:ABPA 患者で血清 CEA 値の上昇している症例が
パ節転移の頻度が低く
(P<0.05)
,進行度がより早期であっ
認められ,肺野に出現した consolidation と関連している
た(P<0.05)
.また,術後 3 年生存率も BRPDAs 症例に
可能性がある.血清 CEA 値上昇は,肺の局所的な炎症の
比べ有意に高率であった(P<0.001)
.
存在と関連する可能性がある.
結論:BRICs derived from IPMNs は BRPDAs に比
べ,生物学的悪性度が低く,良好な予後を示す.また,積
極的な外科的切除が良好な予後に寄与する可能性がある.
日医大医会誌 2014; 10(2)
125
Aortic Arch Calcification Detectable on Chest
Prognostic Value of Heart Rate Variability in
X-ray Films is Associated with Plasma Diacron-
Comparison with Annual Health Examinations
reactive Oxygen Metabolites in Patients with
Type 2 Diabetes but without Cardiovascular
in Very Elderly Subjects
(J Nippon Med Sch 2013; 80: 420―425)
Disease
超高齢者の健康診断データと心拍数変動指標
(J Nippon Med Sch 2013; 80: 410―419)
心血管病を有しない 2 型糖尿病患者において胸部 X 線
栗田 明1
高瀬凡平2
写真で示される大動脈弓石灰化は血清 diacron-reactive
草間芳樹3
新 博次3
1
社会福祉法人福音会
2
防衛医科大学校救急部
2
日本医科大学多摩永山病院内科
南町田病院
oxygen metabolites(d-ROMs)と関連する
渡邉健太郎
小原 信
鈴木達也
大内基司
3
鈴木一成2
橋本雅夫2
三枝太郎2
青山純也2
4
中野博司
大庭建三
1,2
2
2,3
2
小谷英太郎3 岩原信一郎4
2
山形大学医学部内科学第三(神経・内分泌代謝・血液内科
学)講座
1
日本医科大学付属病院老年内科
2
昭和大学医学部内科学講座(糖尿病・代謝・内分泌内科学
部門)
3
少子高齢化社会の到来とともに特別養護老人ホーム(特
養)において超高齢者の入所者が増えているが入所時や健
診の生命予後について十分検討されていない.そこで特養
の超高齢者の予後を健康診断(健診)データと自律神経能
を評価できる心拍数変動指標(HRV)を用いて検討した.
目的:本研究では,心血管病を有しない 2 型糖尿病患者
対象と方法:2008 年 3 月から 2009 年 6 月までの間に特
において胸部 X 線写真にて認められる大動脈弓石灰化と
養 入 所 中 の 71 例 を 対 象 と し た.入 所 時 の 健 診 デ ー タ
血清 diacron-reactive oxygen metabolites(d-ROMs)の
関連性につき検討した.
方法:対象は 心 血 管 病 を 有 し な い 2 型 糖 尿 病 患 者 49
例.対象を大動脈弓石灰化合併群(26 例)および大動脈
弓石灰化非合併群(23 例)に分類.対象の早朝空腹時の
血 清 d-ROMS,高 感 度 CRP,plasminogen
activator
(Alb,CRP,BMI)と,その 1 週間前後にホルター心電
図(フクダ電子 EMC-150)を記録し,Mem Calc で HRV
を比較検討した.その後通常の介護ケアをしながら 3∼48
カ月間フォローした.
結果:生存群(n=37,86±14)と死亡群(n=34,90±
inhibitor-1(PAI-1)
,および lipoprotein(a)
(Lp(a)
)値
16)との間に年齢,性差や Alb,CRP,BMI の値にも両
を炎症性指標および酸化ストレス指標として評価し,大動
群間に有意な差は な か っ た.し か し 生 存 群 の SDNN と
脈弓石灰化とこれらの指標との関連性につき検討した.
CVRR は死亡群に比べて有意に高値で(SDNN:73.2±13.5
結果:大動脈弓石灰化合併群の血清 d-ROMs 値は大動
脈弓石灰化非合併に比し,有意に高値であることが示され
た一方で,大動脈弓石灰化合併群の血清高感度 CRP,PAI1,および Lp(a)値は大動脈弓石灰化非合併群と比し高
値であったが,有意な差は示されなかった.大動脈弓合併
を目的変数,血清 d-ROMs,高感度 CRP,PAI-1,あるい
は Lp(a)値を説明変数とした線形回帰分析では,大動脈
ms vs. 53±9.8 ms,p<0.05,CVRR:9.3±1.7% vs. 7.6±
1.3%,p<0.05)
,SDNN<65 ms の相対危険度は 1.85
(1.06∼
3.23,p<0.05)
で,CVRR<8% の相対危険度は 1.84
(1.06∼
3.22,p<0.05)であった.Kaplan Meier 分析で SDNN と
CVRR は超高齢者の生命予後を判定するのに有用な指標
であることが示された.
弓石灰化と血清 d-ROMs 値が有意な関連性を示したが,
結論:超高齢者の生命予後には心臓の副交感神経能が微
血清高感度 CRP,PAI-1,あるいは Lp(a)値は有意な関
妙に関与していることが示唆された.HRV は生命予後を
連性は示されなかった.
評価するのに重要な指標であるといえる.
結論:心血管病を有しない 2 型糖尿病患者において,血
清 d-ROMs 値は大動脈弓石灰化と関連した.それゆえ,
この研究結果は大動脈弓石灰化を示す患者は酸化ストレス
上昇と強く関連することを示唆している.さらに,大動脈
弓石灰化を示す 2 型糖尿病患者は酸化ストレスにより惹起
される糖尿病性合併症の発症および進展危険度が高い可能
性が示唆された.
126
日医大医会誌 2014; 10(2)
Surgical Outcomes and Prognostic Factors in
Elderly Patients (75 Years or Older) with
Hepatocellular
Carcinoma
Who
Underwent
Hepatectomy
(J Nippon Med Sch 2013; 80: 426―432)
高齢者(75 歳以上)における肝細胞癌肝切除術の手術
成績と予後因子
谷合信彦
吉田 寛
吉岡正人
川野陽一
内田英二
日本医科大学外科学(消化器外科学)
背景:肝細胞癌(HCC)の高齢者に対する肝切除の適
応は結論がでていない.
方法:肝切除術を行った高齢者 HCC 患者の手術成績と
予後因子を検討した.75 歳以上の HCC 患者に対して肝切
除を行った 63 例(高齢者群)と 75 歳未満の 353 例(若年
者群)の累積生存率,無再発生存率を比較した.さらに,
高齢者群の予後因子を Cox ハザードモデルによる多変量
解析にて検討した.
結果:高齢者群の 3,5 年累積生存率は 56.2%,40.2%
で,若年者群は 63.4%,46.6% であった.3,5 年無再 発
生存率は高齢者群では 34.9%,34.9%,若年者群は 30.8%,
21.5% であった.それぞれに有意な差は認めなかった.有
意な予後関連因子は多変量解析の結果より Child-Pugh 分
類(P=0.01)であった.
結論:HCC に対する高齢者の肝切除術は適切な症例を
選択すれば若年者と同様に,安全で予後に有効な治療法で
ある.
日本医科大学医学会
第 24 回公開「シンポジウム」を開催します.
日本医科大学医学会は,本会会員,同窓会および学外関係者を対象に,日本医科大学医師会と同窓会の後援を得
て,年 1 回,公開「シンポジウム」を開催しています.今年も次の通り開催いたします.詳細は医学会ホームペー
ジ上でご案内いたします.http://home.nms.ac.jp/ma_nms/
開催日程:平成 26 年 6 月 14 日(土)午後
開催場所:橘桜ホール(日本医科大学橘桜会館 2 階)
主 題:
「総合診療を考える」
査読をお願いした先生方へ
日本医科大学医学会雑誌は,2005 年 2 月創刊以来査読制度を導入し,ご専門の先生方に編集委員会から査読をお願いして
おります.審査にあたられた先生方のご協力によって,論文の質的向上は目覚ましいものがあります.2013 年 4 月から 2014
年 3 月までに本誌編集委員会より査読をお願いいたしました諸先生方のご氏名を誌上に掲載し,謝辞に代えさせていただき
ます.
平成 26 年 4 月
日医大医会誌編集委員会
編集主幹 内田 英二 担当者一覧
加藤 篤衛
菅 隼人
齋藤 文仁
清水 章
志和 利彦
鈴木 由美
清家 正博
高橋 翼
高橋 秀実
高見 利也(九州大学)
鈴木 達也
中澤 秀夫
中村 成夫
平田 知己
藤崎 弘士
松田 潔
鈴木 英之
藤田 武久
渡邉 昌則
(五十音順敬称略 平成 26 年 3 月現在)
日医大医会誌論文投稿チェック表
種 目: 投稿日:平成 年 月 日
著者名: 所 属:
表 題:
□ 1.日本医科大学医学会会員で会費が納入されている.
□ 2.著者数は 10 名以内である.
□ 3.投稿論文は 4 部で,原稿枚数は規程どおりである.
種 目
文字数
グラビア
700 字以内
カラーアトラス
1,000 字以内
原 著
16,000 字以内
英文抄録
図表写真の点数
400 語以内
制限なし
綜説(論説)
16,000 字以内
400 語以内
12 点以内
臨床医のために
4,000 字以内
400 語以内
6 点以内
臨床および実験報告
3,200 字以内
400 語以内
6 点以内
症例報告
3,200 字以内
400 語以内
6 点以内
CPC・症例から学ぶ
基礎研究から学ぶ
6,400 字以内
400 語以内
原稿枚数に含む
話 題
2,200 字以内
□ 4.原稿(文献も含む)にページを記載している.
□ 5.体裁が次の順に構成されている.
①表題 ②Title・著者名・所属(英文) ③Abstract(英文) ④Key Words(英文) ⑤緒言
⑥研究材料および方法 ⑦結果(成績) ⑧考察 ⑨結論 ⑩文献 ⑪Figure Legend
□ 6.Abstract はネイティブチェックを受けている.
□ 7.Abstract は double space で 400 語以内である.
□ 8.Key Words は英語 5 語以内である.また,選択に際し,医学用語辞典(南山堂)・Medical Subject Heading を参考にしている.
□ 9.文献の記載が正しくされている.(投稿規程記載見本参照)
□ 10.文献の引用が本文中順番に引用されている.
□ 11.(1)表・図は英文で作成されている.
(2)表・図および写真は各 1 枚ずつ(A4)にされている.
(3)表・図および写真の数は規定内である.
(4)図表を電子媒体で作成する場合は,300dpi 以上で作成されている.また,査読者用に JPG で作成されているものを付加する.
(5)本文中の表・図の挿入位置が明示され,順番に出ている.
(6)表・図は査読しやすい大きさである.
(7)写真は 4 部とも鮮明である.
□ 12.誓約書・著作権委譲書がある.
□ 13.投稿者は,印刷経費の実費を負担する.
連絡先 希望する連絡先
E-mail @
メモ:
誓約書・著作権委譲書
日本医科大学医学会雑誌に投稿した下記の論文は他誌に未発表であり,また投稿中でもありません.また,
採択された場合にはこの論文の著作権を日本医科大学医学会に委譲することに同意いたします.なお,本論文
の内容に関しては,著者(ら)が一切の責任を負います.
論文名
氏名(自署)
No. 1
No. 2
No. 3
No. 4
No. 5
No. 6
No. 7
No. 8
No. 9
No. 10
注:著者は必ず全員署名して下さい.
日付
日本医科大学医学会雑誌(和文誌)論文投稿規程
  1.日本医科大学医学会雑誌(和文誌)は基礎,臨床
分野における医学上の業績を紹介することを目的と
し,他誌に未投稿のものでなければならない.
  2.本誌への投稿者は原則的に日本医科大学医学会会
員に限る.ただし,依頼原稿についてはこの限りで
はない.
  3.投稿論文の研究は「ヘルシンキ宣言,実験動物の
飼養および保管等に関する基準(
「日本医科大学動
物 実 験 規 程 」 日 医 大 医 会 誌 2008; 4: 161―166 参 
照)
」
,あるいは各専門分野で定められた実験指針お
よび基準等を遵守して行われたものであること.
また,平成 17 年 4 月 1 日に施行された個人情報 
保護法を遵守したものであること.
  4.本誌には次のものを掲載する.
①原著,②綜説(論説)
,③臨床医のために,④臨 
床および実験報告,⑤症例報告,⑥ CPC・症例か 
ら学ぶ・基礎研究から学ぶ,⑦話題,⑧その他編集
委員会が認めたもの.
種目
原稿
英文
抄録
図表写真
の点数
原著
16,000 字
以内
400 語
以内
制限なし
綜説
(論説)
16,000 字
以内
400 語
以内
12 点以内
臨床医の
ために
4,000 字
以内
400 語
以内
6 点以内
臨床および
実験報告
3,200 字
以内
400 語
以内
6 点以内
症例報告
3,200 字
以内
400 語
以内
6 点以内
CPC・症例
から学ぶ・
基礎研究
から学ぶ
6,400 字
以内*
400 語
以内
原稿枚数に
含む
話題
2,200 字
以内
ただし,図・表・写真に関しては,400 字に相当し,
原稿用紙一枚と数える.
  5.投稿は原稿および図・表・写真ともにオリジナル
に加え各 3 部が必要である.
  6.所定の論文投稿チェック表・誓約書・著作権委譲
書を添付する.
  7.文章は現代かなづかいに従い,A4 判の白紙に横
書き(20 字×20 行の 400 字)で,上下を約 2.5 cm
ずつ,左右を約 3 cm ずつあける.外国語の原語綴
は行末で切れないようにする.
原稿の構成は,①表紙,②抄録,③ Key words
(英語)5 語以内,④本文(緒言,研究材料および 
方法,結果(成績)
,考察,結論,文献)
,⑤図・表・
写真とその説明,⑥その他とする.
  8.原稿の内容は,
1)表紙:表題,所属名,著者名,連絡先(所属機
関,勤務先または自宅の住所,電話番号,Fax 番
号,または e-mail address)
.表題には略語を使 
用しない.著者は原則として 10 名以内とする.
*
2)文献:本論文の内容に直接関係のあるものにと
どめ,本文引用順に,文献番号を 1.2.3,…と
つける.文献には著者名(6 名以下は全員,7 名 
以上は 3 名を記載し,4 名からはほか,英文は 
et al. で記載する.)と論文の表題を入れ,以下の
ように記載する.なお,雑誌の省略名は和文の場
合 は 医 学 中 央 雑 誌・ 収 載 誌 目 録, 欧 文 誌 で は 
Index Medicus による.
i.雑誌の記載例
田尻 孝,恩田昌彦,秋丸琥甫ほか:成人に対す
る生体肝移植 . J Nippon Med Sch 2002; 69
(1):83.
Katoh T, Saitoh H, Ohno N et al.: Drug Interaction
Between Mosapride and Erythromycin Without
Electrocardiographic Changes. Japanese Heart
Journal 44(2003),225―234.
ii.単行書の記載例
荒木 勤:最新産科学―正常編.改訂第 21 版,
2002; pp 225―232,文光堂 東京.
Mohr JP, Gautier JC: Internal carotid artery 
disease. In Stroke: Pathophysiology, Diagnosis,
and Management(Mohr JP, Choi DW, Grotta JC,
Weir B, Wolf PA, eds), 2004; pp 75―100, 
Churchill Livingstone, Edinburgh.
3)図・表,写真:
表題,説明を含め英文で作製する.表は Table 1
(表 1),Table 2(表 2)…,図は Fig. 1(図 1)
,
Fig. 2(図 2)…とし本文の欄外に挿入個所を明示
する.
表の上には必ず表題,図には図題をつける.ま
た,
本文を併読しなくともそれだけでわかるよう実
験条件を表の下に簡単に記載することが望ましい.
4)見出し符号:
1,(1),1),i,(i),i)を基本順位とする.ただ
し,緒言,研究材料および方法,結果(成績), 
考察,結論など論文項目の各項目には見出し符号
は必要でない.
5)原則として国際単位系(SI)を用いる.記号の 
あとにはピリオドを用いない.数字は算用数字を
用いる.
  9.原稿採択後は,受理が決定した最終稿を入力した
電子データを印字原稿と共に提出する.
10.論文の採否は,編集委員会が決定する.
11.投稿前に英文校閲を希望する場合は,事務局にご
連絡下さい.(有料)
12.投稿原稿は原則として返却しない.
13.著者校正は原則として初校のみとし,指定期限以
内に返却するものとする.校正は脱字,誤植のみと
し,原文の変更,削除,挿入は認めない.
14.投稿原稿は原則として,その印刷に要する実費の
全額を著者が負担する.
15.別刷を必要とする場合は,所要部数を原稿の表紙
に明記する.別刷の費用は著者負担とする.ただし,
依頼原稿は別刷 50 部を無料贈呈する.
16.投稿論文の提出先
〒113―8602 東京都文京区千駄木 1 丁目 1 番 5 号
日本医科大学事務局学事部大学院課内
日医大医会誌編集委員会
(平成 22 年 9 月 2 日)