代理店戦略=再考 - マーケティング研究協会

【コラム】
代理店戦略 =再考=
はじめに
数年前から「代理店戦略」の再構築および実行のための人材育成などに
関するご相談をいただくケースが増えてきました。ご相談いただく企業は社名
を聞けばほぼどなたでも知っている大企業であり、業種も多岐にわたっていま
す。以前から、このテーマに関するご相談はお受けしてきましたが、近年特に
増えてきている傾向にあり、またその課題も複雑で難しいものになってきてい
るように感じます。
そこで、本コラムでは戦略上の課題を整理・提示するとともに、戦略立案か
ら実行・実現までの取り組みについて改めて考えてみたいと思います。
なお、本コラムでいう「代理店」とは、製品・サービスをエンドユーザーに販
売するためのチャネル(販路)のひとつであり、一般的には販売代理店、特約
店、販売店などの名称で呼ばれている企業を指します。
筆者プロフィール
清水 徹 (しみず とおる)
株式会社マーケティング研究協会
コンサルティング・サービス部 部長代理
Email [email protected]
大学卒業後、大手プレハブ住宅メーカーに営業職
(セールスエンジニア)として入社。
1997年にマーケティング研究協会に入社。入社後一
貫して、「営業力」「マーケティング力」の強化提案を行う
企画営業職として多くの業界と関わる。
企画営業活動と同時にコンサルティング、営業教育にも携わり、「販売代理店・特約店
の活性化策立案」 「代理店制度の再構築」 「販売代理店・特約店の機能強化サポートメ
ニュー開発」 「営業担当者のスキルアップ教育」などの実績がある。
◆近年の支援実績
○研修
・オフィス関連機器メーカー代理店営業部 新人研修
・OA機器販売会社 代理店営業研修
・医療材料メーカー 特約店との関係構築研修(拠点指導)
○コンサルティング他
・オフィス関連機器メーカー 代理店機能分析・戦略再構築
・OA機器販売会社 代理店分析ツール開発
・医薬系食品メーカー 取引制度適正診断
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【コラム】 代理店戦略 =再考=
第1回 あなたの会社の代理店戦略の本質的課題は何ですか?
■そもそも代理店を活用することの意義を考えてみる
■戦略課題の本質は「儲けの構造」を如何に築き上げるか
一般的に、販売チャネルとして代理店を活用することのメ
リットとしては、拠点や人員などの固定費負担を軽減しつつ
高い営業力を確保し、自社営業体制の一部として組み込む
ことができるという点が挙げられます。低コストで日本全国に
営業網を張り巡らすためには必要不可欠な営業・販売機能
です。
代理店を活用している企業であれば、チャネルとしての代
理店の重要性は認識しており、またメスを入れていかなけれ
ばならないという共通認識を持っています。ご相談いただく企
業も少なからずあてはまります。そして、代理店チャネルに関
する個々の事象を取り上げていくと非常に多くのネガティブな
面が見られます。
以前のように日本経済が成長し市場が拡大していく傾向
にあったとき(遠い昔のように思えますが)は、代理店の数を
増やすことが自社の業績に直結するということが言えました。
しかしながら、回復基調・成長軌道に入ったとはいえまだま
だその実感に乏しい現在では、過去に築き上げてきた代理
店網が思わぬところで足かせになってきているのではないで
しょうか。
ただし、そういった事象のひとつひとつに惑わされてしまう
と、傷口に絆創膏を貼るような対処療法的施策しか取れず、
根本的な解決には到底結びつきません。施策に対する活動
成果も上がらず、疲弊感だけが蓄積されてしまいます。
ひと言で言うと、収益構造が悪化してきているということで
す。既存の代理店網では経営資源の投資に見合うだけのリ
ターンが得られなくなり、再投資をおこなうだけの経営資源が
確保できなくなってきています。これでは、代理店を活用す
るそもそもの意義を失っているばかりか、マイナスに作用して
しまいます。
■代理店の優勝劣敗が進んできている
代理店を活用することの意義に立ち返ってみると、課題の
本質が見えてくるのではないでしょうか。前述のように、「低コ
ストで日本全国に網を張り巡らすためには必要不可欠な営
業・販売機能」を代理店活用の意義として捉えるならば、しっ
かりとした収益を上げる(投資に見合ったリターンを得る)こと
ができて初めてその価値が出てくるのではないでしょうか。
如何にして儲けの構造を築き上げるか・・・。
次回以降で、チャネル政策上の代理店の位置づけ・役割・
機能を明確にしていくとともに、収益構造を改善させていくた
めの手立てについて考えてみたいと思います。
では何故、既存の代理店網が収益構造を悪化させ、その
意義を失っているのでしょうか。理由は様々あるとは思いま
すが、ここではポイントを2つに絞って提示してみたいと思い
ます。
●理由1:流通チャネルのクロスオーバー化
●理由2:エンドユーザーの要求の変化・多様化・高度化
「理由1:流通チャネルのクロスオーバー化」については、
異業種からの参入や製造業もしくはサードパーティ企業のダ
イレクト・セリングなどにより、エンドユーザーの購買先の選択
肢が増えたことが挙げられます。エンドユーザーから見れば、
購買先の選択肢が増えることは歓迎されることなのですが、
既存の代理店からするとライバルが増えることとなり、更なる
競争の激化により経営体力を消耗させてしまうこととなります。
「理由2:エンドユーザーの要求の変化・多様化・高度化」
については、単なる“モノ”を購買するといったことから自社の
課題を克服するための“策”を購買するといったように、エン
ドユーザーの意識・要求が変わってきているということが挙げ
られます。昨今言われているソリューションといった言葉はま
さしくこれに当てはまり、代理店には今までのビジネスのあり
方を大きく変えていくことが求められています。
Company
Channel
Customer
Competitor
このような環境変化に対応できる代理店とそうでない代理
店とが明確に色分けされてきており、自社にしてみると今ま
でと同じような取り引きを一律におこなっていたのでは投資
対効果(ROI)が望みにくく、収益構造が悪化していくという
ことになります。
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【コラム】 代理店戦略 =再考=
第2回 代理店チャネルの意義は明確ですか?
前回のコラムで、代理店戦略の本質的課題を「儲けの構造
を如何に築き上げるか」と定義しました。今回はメーカーの
チャネル政策における代理店の位置づけや役割、意義につ
いて考えてみたいと思います。
「③通販」の特徴は、地理的に分散した顧客に対して自社
製品・サービスを均質に届けることができます。しかしながら、
製品・サービスの特性から通販といった販売形態には向き不
向きがありますし、また投資額が想定している以上にかかって
しまうといったケースが非常に多く見受けられます。
■チャネルの機能とチャネル政策の重要性とは?
■チャネル特性を顧客視点で見てみると
チャネルとは一般的に、企業と顧客とを結びつける販路の
ことを指します。またチャネル政策とは、これらのチャネルが効
果的・効率的に機能するように設計し運営・管理していくことと
定義されます。
この定義から考えてみると、チャネルとは顧客接点をどのよ
うに確立していくかということが重要であるといえます。企業サ
イドからいえば、どのような顧客にどのように製品・サービスを
購入・所有してもらいたいかを決定することであり、顧客サイド
からいえばどのような製品・サービスをどのように購入・所有し
たいかを満たすことであるということがいえます。
こうしてみると、チャネルは顧客の購入意思決定に大きな
影響を与える因子であることがおわかりになると思います。顧
客とのコミュニケーションをおこない、購入意思決定に影響を
与え、自社に成果(収益)をもたらすためのチャネルを設計・
運営・管理していくチャネル政策は、事業戦略の中でも非常
に大きな役割を果たしていることがいえます。
■チャネルの特性から見る企業側のメリット・デメリット
流通構造(販売形態)の視点から現在の状況を見てみると、
多くの企業では3種類のチャネルを活用されているように見受
けられます。
①直販(直接販売:企業の営業担当者による顧客への
ダイレクト・セリング)
②代販(代理販売:代理店や特約店など、社外の
ビジネスパートナーによる顧客へのダイレクト・セリング)
③通販(通信販売:インターネットなどを活用した、企業に
よる顧客へのダイレクト・セリング)
「①直販」の特徴としては自社の営業担当者が直接顧客と
コミュニケーションを取るため、A)顧客情報の収集が容易であ
り、B)製品・サービスのベネフィットを的確に伝えることができ、
C)販売後のアフターフォローにより顧客の満足度を高めること
ができる、といった点が挙げられます。しかしながら、拠点や人
員などの固定費負担が比較的大きく、特定の市場(地域的、
顧客特性的)に限定して展開することが現実的といえます。
「②代販」の特徴は、直販をおこなうよりも拠点や人員など
の固定費負担を軽減しつつ高い営業力を確保することが可
能となります。しかしながら多くの場合、代理店は競合企業の
製品・サービスも同時に扱っており、自社の思いのままに代理
店を動かすことは困難であるといえます。
「①直販」は、その企業(メーカー)の営業担当者が直接訪
問してくるので、製品・サービスについての詳細情報を得るこ
とができると同時に、提案と販売を直接受けることにより安心感
を持つことができるといったメリットがあります。しかしながら、多
くの場合その企業(メーカー)の製品・サービスだけで自社の
課題を解決しようとすることになり、顧客の本質的な課題解決
になるかどうかといった不安もあります。
「②代販」は、地域に密着した企業(代理店)の営業担当者
が訪問をしてくるため、長期継続的な取引が可能となり顧客に
ついての理解が深まる傾向があります。そのため、様々なメー
カーの製品・サービスを組み合わせて適切な課題解決提案を
受けることができるといったメリットがあります。しかしながら、高
度な技術力を要する製品・サービスの場合、アフターサービス
やメンテナンスといったことには代理店では対応できないとい
うケースも見受けられます。
「③通販」は、インターネットにしてもカタログ(紙)にしても、
時間帯に左右されずに注文を出すことができるといったことが
最大のメリットとして挙げられます。昨今では、適切なタイミング
に必要なものを必要なだけ注文したいといったニーズの高まり
により、通販による注文・購入が増えてきています。しかしなが
ら、製品・サービスに関する詳細情報を得るには困難であり、
比較的単純化されたものや使用経験のあるものの購入にしか
向いていません。
■あらためて代理店チャネルの意義を考えてみる
以上のことから、チャネルごとに向き不向きがあり企業とし
てはそれぞれの特性をふまえた上でのチャネルの設計・運
営・管理が必要であることがおわかりいただけたと思います。
「チャネル・ミックス」とはまさにこのことであり、製品・サービスを
適切な顧客に、適切なタイミングで、適切な方法で届ける販路
を設計することが肝要となります。
そのような中で代理店チャネルを活用することの意義は何
でしょうか?
固定費負担をできるだけ抑えつつ、顧客にできるだけ密着
し、顧客のニーズや課題を吸い上げ、適切な製品・サービスを
提供していくための仕組みに他ならないことがいえます。同じ
ような製品・サービスを扱う企業同士の競争力が代理店チャネ
ルの優劣に左右されるケースが多く見られることからもおわか
りになると思います。
次回は、どのようにしたら代理店チャネルの意義を最大限
に活かすことができるのかについて、そのポイントを考えてみ
たいと思います。
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【コラム】 代理店戦略 =再考=
第3回 代理店チャネルをフル活用するために必要なコンセプトは何ですか?
前回のコラムでは、適切なチャネル・ミックスを構築すること
の重要性と、代理店チャネル活用の意義について考えてみま
した。今回は、代理店チャネルをフル活用し競争力を高める
ためのポイントについて考えてみたいと思います。
■エリア・マーケティングから見た代理店戦略
ケース3は、ますます高度化・複雑化する顧客ニーズ・課題
に対応する必要が出てきていますが、いわゆる「御用聞き」的
営業機能しかもっていない代理店では、これらの需要を取り込
むことは困難であることが容易に想像できます。また、アフター
フォローやメンテナンスを必要とする顧客の場合、それらをカ
バーできる機能を持っていない代理店では、そもそも受注を
すること自体が困難であることもおわかりいただけると思います。
代理店チャネルの競争力を高める方策を考える前に、エリ
ア・マーケティングの観点から市場をどのように押さえるかにつ
いて考えてみたいと思います。
これらのケースを見てみると、地域特性に合わせた代理店
チャネル設計の重要性がよくおわかりいただけると思います。
既にご存知の方も多いとは思いますが、エリア・マーケティ
ングとは地域におけるその特性と構造を把握し、その違いに
対応した「地域密着型のマーケティング」のことをいいます。エ
リアごとに顧客の属性(業種や規模、ニーズ、課題など)や、製
品・サービスの現状の浸透度、競合企業とのパワーバランスな
どに違いがあり、個別の地域特性に合わせることが必要となり
ます。
■地域に対して「協働」できる代理店の必要性
地域特性の違いに合わせて自社の製品・サービスを顧客
に届けるためには、代理店チャネルについてもこれらの違い
を考慮した戦略を立てる必要があります。全国一律の戦略を
立てて実行することにより成果か望みにくくなった昨今では、
代理店戦略を立案する前にエリアの状況を詳細の把握し、
「その市場に対してどのように自社製品・サービスを提供して
いくか」を定義づけることが重要となってきています。
地域特性に合致した代理店を選別できたとしても、その代
理店とどのように取り組んでいくかによって市場での競争力に
差がでてきます。
一般的に、代理店は顧客の情報を企業にオープンにした
がらない傾向があります。代理店からしてみると「自分たちの
顧客を横取り(直取引)するんじゃないか?」といった不安があ
るためです。このような状況では、企業は自社の製品・サービ
スがどんな顧客にどのような用途で使用されているかといった
情報が入手できず、新たな製品・サービスの開発や、各種の
施策(販売促進など)にも悪影響が出てきます。
また、顧客との接点を代理店だけに任せてしまうことにより、
潜在的な需要を見逃してしまったり、せっかくの案件を取りきる
ことができなかったりすることが生じます。
■地域特性に合わせた代理店チャネル設計の重要性
日本全国を地域ごとに見てみるとそれぞれに特性があり、
その特性に合わせた代理店チャネルを設計していくことが重
要となります。では、地域特性に合っていない代理店チャネル
の設計とはどのような場合でしょうか。
多く見受けられるのは以下に挙げる3つのケースです。
●ケース1:エリア需要と代理店販売力のミスマッチ
●ケース2:顧客特性と代理店特性のミスマッチ
●ケース3:顧客ニーズ・課題と代理店機能のミスマッチ
ケース1は、エリア需要に対しての効率性という問題が生じ
てきます。需要以上の代理店販売力(数)では明らかにオー
バーストアとなってしまい、効率が悪く収益性を低下させてしま
いますし、逆に代理店販売力(数)が不足してしまうと、需要に
対するカバー率が低下してしまい、市場に対する自社製品・
サービスの浸透度(シェア)がいっこうに上がらないことになっ
てしまいます。
ケース2は、自社がターゲットとしている顧客の特性(業種
や規模など)に不慣れな代理店を活用しようとしても、自社製
品・サービスの浸透度(シェア)が上がらないことになります。
例えば、学需(学校などの文教市場)中心のビジネスを展開し
てきた代理店に民需(民間企業)の開拓は難しいといったこと
です。
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このようなことから、地域や顧客に関する情報を企業と代理
店とで共有し、相互の役割分担を明確にしながら、協力して地
域や顧客に対して働きかけていく「協働」といったことが重要と
なってきます。
■これからの代理店戦略コンセプト
以上のことから、これから重要度が高まってくる戦略コンセ
プトとして以下の2点を挙げてみたいと思います。
●コンセプト1:代理店の「選択と集中」
地域需要を効率的に取り込むことができる代理店の選別
●コンセプト2:代理店との「協働化」
地域需要を効果的に取り込むことができる代理店との
取り組み
次回は、有効な代理店戦略を立案するためのお膳立てと
なる代理店の評価と選別について考えてみたいと思います。
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【コラム】 代理店戦略 =再考=
第4回 [実践編 その1] どのような代理店と取り組みを深めますか?
前回のコラムでは、これからの代理店戦略コンセプトとして、
地域需要を効率的に取り込むための「選択と集中」、そして地
域需要を効果的に取り込むための「協働化」の2つを提示しま
した。今回は、いよいよ代理店戦略を立案し実践していくため
に必要なことの第1ステップとして、「代理店の評価と選別」に
ついて考えてみたいと思います。
■エリアの状況によって異なる2つの方向性
まずは、それぞれのエリアでの需要と代理店状況を見てみ
ます。エリアの需要に対して、現在の代理店網でどの程度カ
バーできているかによって、戦略の方向性が変わってきます。
エリア需要に対する既存代理店網のカバー率が低い場合、
現状のままでは業績を伸ばしていく(製品・サービスの浸透を
図っていく)ことは期待できませんので、なんらかのテコ入れを
しなければなりません。現在の代理店網を強化していくことで
エリア需要を取り込んでいくことが可能であれば、個々の代理
店ごとに強化策を講じることになります。しかしながら、多くの
ケースでは既存代理店網の強化だけでは困難ですので新た
な有力代理店を開拓する必要が出てきます。
そして、エリア需要に対する既存代理店網のカバー率が高
い場合は、より効率的にエリア需要を取り込むことを考えてい
くことになります。そのためには、自社資源(人、物、金、情報、
技術)をどの代理店にどのように配分していけばより高いリ
ターンを得ることができるかといった投資対効果(ROI)の観点
から、代理店を評価・選別していきます。
以下は、「エリア需要に対する既存代理店網のカバー率が
高い場合」について考えていきます。
■第1の評価軸はエリア密着度
第2回のコラムで、代理店チャネルの意義として「顧客に密
着してニーズや課題を吸い上げることができること」を挙げまし
た。この意義に照らし合わせてみると、取り組むべき代理店が
見えてきます。
業界によって多少異なると思いますが、代理店には大きく
2つのタイプがあります。ひとつは「直販型」の代理店。もうひと
つは「卸型」の代理店です。
■第2の評価軸は代理店機能
エリア需要を取り込んでいくために必要な機能を代理店が
保有しているかどうかも重要な評価軸になります。
もともと企業には代理店に期待する役割があり、その役割
を遂行していくために必要な機能というものが定義されている
と思います。それらの機能は顧客ニーズを満たすためには機
能であるともいえます。現実的には、全ての顧客ニーズを代理
店単独で満たすことは困難であり、企業と代理店とでその機
能の役割分担をしているといったケースが多く見受けられます。
業界によって異なりますが、代理店に求める機能は大きく
分けると「人」「物」「金」「情報」「技術」に区分されます。いわゆ
る経営資源の観点から代理店機能を評価することで、エリア
需要を取り込んでいける代理店かどうかの判断できます。
■代理店を総合的に評価し、選別していくために
前述の2つの評価軸に定量的評価(取引実績や伸長率、
代理店内シェアなど)を組み合わせて総合的に代理店を評価
します。その評価結果をもとに代理店の特性ごとにグループ
分けをおこない、グループ単位での基本方針を立てます。そ
こで初めて戦略的パートナーとしてどのグループと取り組みを
深めていくのかが判断されます。
グループ分けをおこなう際、その分け方にも工夫が必要で
す。グループの数については、少なすぎるとそもそもグループ
分けをおこなうことの意味がありませんし、多すぎるとグループ
単位の戦略や施策が複雑になってしまい、実行しようとすると
混乱を招いてしまいます。
実際には、全て数字で割り切れるほど単純なことではない
ため難しい面もありますし、それぞれの業界や企業ごとに評価
の仕方が異なります。製品・サービスの供給側(企業側)の視
点から、これらの評価をおこなうことによってより高いROIを期
待できる代理店が判断されます。
次回は、より実効性の高い戦略を立てるために、代理店の
視点からの企業評価(製品・サービスの供給者の評価)につ
いて考えてみたいと思います。
「直販型」代理店は、代理店自ら顧客のところへ営業活動
をおこない、製品・サービスを販売していくといった形態です。
それに対して「卸型」代理店は、小規模な代理店(二次店と称
される)への再販をおこない、自らは顧客へ営業をしないと
いった形態です。
業界特性やエリア特性、製品・サービス特性などを勘案し
ながら自社の既存代理店がどちらのタイプであるかを見極め
ることで、より効率的にエリア需要を取り込むことができる「エリ
アに密着した代理店網」であるかが判断できます。
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【コラム】 代理店戦略 =再考=
第5回 [実践編 その2] 競合企業との差別化はできていますか?
前回のコラムでは、代理店の機能評価をおこない、特性ご
とのグループに分けた後、基本方針を立てることについて解
説しました。自社によって有意な代理店を如何にして選別す
るかが鍵となります。今回は、代理店との取り組みを深めるた
めに必要な要素を洗い出し、自社をライバル企業との比較に
おいて代理店の視点から評価してみたいと思います。
■代理店が企業に求めるもの
代理店は自社も含めた企業から製品やサービスを仕入れ、
それを顧客に再販売することによりその差益で経営をおこなっ
ています。もちろん、仕入れた製品・サービスをそのまま再販
売するということではなく、何らかの付加価値を加えています。
様々な企業の製品を組み合わせたシステムとして販売するこ
とがその一例といえます。
このような場合、代理店はできるだけ安く製品・サービスを
仕入れて、できるだけ高く販売することで大きなリターン(収
益)を得ることができます。販売価格を上げることが困難である
現状を考えると、代理店は収益を上げるためには、一般的に
は如何にして仕入れを安くおこなうかに意識が集中します。
皆さんもおわかりであると思いますが、代理店は安く仕入
れることができればどこの企業から仕入れをおこなっても良い
ということになります。唯一無二の製品・サービスであれば、特
定の企業からしか仕入れることはできませんが、特に差別化
が難しい汎用的な製品・サービスであればどこからでも仕入れ
ることに躊躇は無いように思えます。このように、代理店にとっ
てはどのくらい儲かる製品・サービスなのかが仕入れをおこな
う際の最大の関心ごとといえ、企業に求めることといえます。
■差別化を図る3つの視点
差別化を図る1つ目の視点は「製品・サービス」です。顧客
から指名で注文がある製品やサービスについては、代理店は
特に難しい営業活動をおこなうことも必要とせず、確実に販売
をすることが可能となり、手間をかけずに収益に結びつけるこ
とができます。ただし、昨今では「製品・サービス」の面で特別
な差別化が難しい状況であり、ましてや顧客から指名買いが
入るようなものとなるとそう多くはありません。代理店サイドから
すると、より“売りやすいもの・儲かるもの”を販売するといった
傾向が強く出てきます。
ある企業では、なんとかして取り引きを継続しようとして策を講
じた結果、何十種類といった費目が出来上がってしまったとい
うケースもあります。「取引条件」については、非常にデリケー
トなテーマでもあるため、別の機会で取り上げてみたいと思い
ます。
そして最後の3つ目の視点は「営業/技術支援・サポート」
です。代理店が営業・販売しやすいように、また技術的対応が
できるように、企業がどのような営業/技術支援・サポートをお
こなっているかを見ます。一般的におこなわれている策として
は“営業同行”や“製品勉強会”といったものです。これらは、
代理店の収益を上げるために(裏を返せば企業が自社製品・
サービスを多く販売してもらうために)代理店の営業担当者お
よび技術担当者に対して教育をおこなうものです。いくら取引
条件が良くても、数が売れなければ収益には結びつかないた
め、どれだけ多く販売できるかを目的として実施されるケース
が多く見受けられます。
■代理店視点で自社を評価してみる
私がクライアントから相談を受けた場合、これら差別化のポ
イントが競合企業と比較して代理店にとってどのくらい有意な
ものであるかを、代理店視点から評価してみることをお奨めし
ています。代理店が何に関心を持ち、どのような点で企業を評
価し、優先順位をつけているのかを知らなければ、本当に有
効な策を実施することが困難であるからです。
基本的には、代理店は市場(顧客)に対して一緒に製品・
サービスを販売していくパートナーであることが望ましいと考え
ています。そのためにもお互いを理解し、共通認識の下に行
動に移すことが相互の収益に結びつくものであることを願って
います。このことがまさしく「取り組み」を深め、「協働」できる関
係です。ただし、残念ながら敵対しているケースを多く見受け
ますが・・・。
自社を客観的に評価し、強み/弱みを認識した上でどの
代理店とどのように取り組みを深めていくかを検討することが、
代理店チャネルにおいてビジネスをおこなうことの肝心なポイ
ントになると考えています。
次回は、選別された代理店(グループ)に対する基本戦略
を、代理店の評価軸と代理店視点による自社評価をもとにど
のように立てていくかを考えてみたいと思います。
2つめの視点は「取引条件」です。仕切り価格(マージン)
や販売リベート、各種の協賛金など企業が代理店に提示する
取引条件は多岐に渡っています。またそれぞれ単独で提示さ
れることはまれで、複数を組み合わせることが一般的です。こ
れらは、企業が代理店に自社の製品・サービスをより多く販売
してもらうための潤滑油のような役割を果たすことを目的として
いますが、多くの場合は予期せぬ状況に陥る原因となってい
ることもあります。本来であれば、企業の販売戦略をより効果
的に実現するための補完的な位置づけとして設定されること
が望ましいのですが、代理店の既得権益と化してしまい機動
的な運用ができなくなっていることも見受けられます。
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【コラム】 代理店戦略 =再考=
第6回 [実践編 その3]代理店に対する基本戦略と支援策は万全ですか?
前回のコラムでは、代理店視点による自社の評価をおこな
い、差別化のポイントを探ることについて解説しました。代理店
によって有意な支援策は何か?ライバル企業と比べた場合、
自社はどのようなポジションにいるのか?などを把握すること
が重要となります。今回は、前々回の「代理店のグループ分
け」と前回の「代理店視点からの自社評価」を組み合わせ、グ
ループ別の基本戦略と代理店支援策について考えてみたい
と思います。
支援策を棚卸しする際に私が使っているフレームワークと
して、5つの経営資源があります。一つ目が人的な支援です。
営業担当者による訪問や同行営業などが相当します。二つ目
が物的な支援策で、販促物やサンプル品、デモ用実機などが
相当します。三つ目は金銭的支援策で、リベートや販促支援
金などが相当します。四つ目は情報的支援策で、業界情報や
市場・顧客情報などの提供などです。最後の五つ目は技術的
支援策で、設計・見積もり機能やメンテナンス・技術指導など
の提供が相当します。
■グループ別の基本戦略類型
これらの支援策を、各グループの戦略課題に合わせて取
捨選択し、組み合わせをおこない、メニュー化します。メニュー
化をおこなう際の最大のポイントとしては、支援策を実行する
ことで戦略課題を解決することができるかどうかです。真に意
味のある支援策でなければ戦略課題を解決することができず、
過剰なサービスを提供してしまうことになりかねません。また、
支援策を組み合わせた場合にその実行主体が企業の本社側
にあるのか、それとも現場側にあるのかも重要なポイントです。
この点があいまいなままに、混乱しているケースが多々見受け
られます。
前々回のコラムで、取引実績や伸長率、代理店内シェアな
どの定量的評価と、エリア密着度や代理店機能といった定性
的評価を組み合わせ、代理店を総合的に評価しグループ分
けをおこなうことを解説しました。企業が属する業界の構造や
プレーヤーの数、自社ポジションによって評価項目の優先度
や重み付けが異なりますが、概ね次のようなグループに分ける
ことができます。
1.「最重点グループ」
売上規模や成長性、インストアシェア(以下ISS)、などが
高く企業にとって最も重要なポジションにある代理店のグルー
プ。戦略課題としては「ISSの維持」「代理店の取引先に対す
る拡販・深耕力強化」といったことが挙げられます。
2.「ISS拡大グループ」
売上規模、成長性にバラツキがあるがISSの拡大には余
地が残っている代理店のグループ。戦略課題としては「規模ま
たは成長性に着目したISS拡大策の強化」が挙げられます。
3.「取引再検討グループ」
売上規模、成長性にバラツキがあり、ISSや潜在的拡販可
能性が小さい代理店のグループ。戦略課題としては「取引安
全性が担保できればISS拡大策を実行」となります。
4.「収穫グループ」
規模、成長性ともに中程度以下であり、ISSにバラツキはあ
るが潜在的拡販可能性が見込まれる代理店のグループ。戦
略課題としては「特別な投資を控えながら取引を継続」となりま
す。
5.「取引撤退グループ」
規模、成長性、潜在的拡販可能性ともに低く、ISSにもバ
ラツキがある代理店のグループ。戦略課題としては「過剰支援
の削減」「場合によっては取引撤退を検討」となります。
■支援メニューの実行体制を整える
グループ別の戦略課題、解決手段である支援策、支援策
実行における本社と現場との連動・連携、この3つに一貫性が
求められるのは言うまでも無いと思います。特に企業の営業現
場では売上実績が欲しいがために独断で過剰な支援策を提
供してしまい、戦略に一貫性がなく経営資源を浪費し、経営
資源の投下に対するリターン(売上、利益、など)の効率が悪
くなっているケースがあります。
これらを防ぐためには、本社側で現場をマネジメントおよび
サポートする機能を持つことが必要であると考えています。支
援策が有効に選択され実行されているのかどうかといったマ
ネジメントと、円滑に実行され成果を生み出すことができるよう
サポートする機能です。
このような取り組みができて初めて戦略と支援策の有効性
を検証することが可能となり、次の戦略やアクションにつながり
ます。戦略と支援策と活動の一貫性・整合性、本社と現場の
役割分担と連動・連携。言葉で言うのはたやすいですが、永
遠のテーマでもあると感じています。
次回は、戦略の実行とそのマネジメントについて、本社と現
場との役割分担と連動・連動について考えてみたいと思いま
す。
■グループ別に支援策をメニュー化する
グループ別の特性に応じた戦略課題を解決するために、
企業として代理店にどのような支援策を用意するかといったこ
とが次の課題となります。そのためには現状の支援策の棚卸
しをおこない、代理店視点からの自社評価を加え、真に競争
力があり有意な支援策を取捨選択・調整したうえでメニュー化
します。
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【コラム】 代理店戦略 =再考=
第7回 [実践編 その4]本社と現場の役割分担、連携・連動は明確ですか?
前回のコラムでは、代理店のグループ別に支援策をメ
ニュー化し、実行体制を整えることの重要性について説明して
きました。支援策が有効に実行されているかどうかのマネジメ
ント機能と、円滑に実行され成果を生み出すことができるサ
ポート機能が整えられて初めて戦略と支援策、活動が一貫性
を持つことができます。今回は、戦略・支援策の実行とそのマ
ネジメントについての本社と現場の役割分担と連動・連携につ
いて考えてみたいと思います。
■代理店に一番近い現場ですべきこと
まずは代理店に関する情報を収集することが第一歩となり
ます。代理店に対する支援策の実行にあたり、その代理店が
今どのような状況にあるのかを知らなければ、どこに課題があ
り、どのような処方箋を作ればよいのか、有効な支援策の実行
手順とタイミングなどがわかりません。
■本社ですべきこと
本社の役割としては、全体(基本)戦略の立案と実行の支
援体制整備、実行結果のレビューとなります。全体(基本)戦
略の立案については前回のコラムで触れましたので、ここでは
割愛をします。
実行の支援体制は、あくまでも現場基点で整備することが
ポイントになります。よく見られる事象としては、会社が用意し
た支援策を実行しようとしても、そのやり方がわからなかったり、
本社の支援がなければならないにもかかわらずどの部署・人
に対して支援を要請すればよいのかわからなかったりします。
これでは、いくら有効な支援策を用意したとしても実行できず
に成果が出ないものとなってしまいます。
このような事を防ぐ手立てとして、本社内に「社内ヘルプデ
スク」を設置する方法があります。現場の課題についての相
談・支援依頼窓口としての役割を持たせ、支援策を確実に実
そして代理店の状況がわかったら、具体的な目標設定と成 行するための一次引き受け元となります。そのためにはこの
「社内ヘルプデスク」は社内のあらゆる部署の役割と機能を把
果の評価方法・指標・基準を設定します。目標については、数
字的なものと機能的なものとがあります。数字的なものとしては、 握し、組織として有効に機能するための取りまとめができる役
年間の「販売金額」や「販売数量」「取り引き/開拓顧客数」な
割と人材が求められます。
どがあります。また機能的なものとしては、「需要情報収集機
そして、年間を通してのレビューとなります。全体(基本)戦
能」や「技術・サービス機能」「物流機能」などがあります。これ
略の実現度・達成度はどうであったか、何ができて何ができな
らの項目について具体的な年間の達成目標を設定し、どのよ
うに達成/未達成を測るのか、そして達成するための企業と
かったか、その原因は何かといった評価です。このレビューは、
代理店の役割を明確にすることが肝要です。
期初にしっかりとした戦略と計画が組まれて初めて可能となり
ます。計画されていないものはレビューできません。また、レ
これらの目標に対してその進捗状況を把握し、目標達成ま
ビューがされなければ翌期の戦略・計画も組むことができませ
での道筋を徹底するための合同戦略会議を開催することも有
ん。意外とこのあたりがあいまいにされているケースも見受けら
効です。企業と代理店が同じ目標に向かって一緒に活動をす
れます。
ることの実践と検証の場として使うことができます。キーワードと
しては「見える化」と「徹底化」です。
■組織としての対応
「見える化」の項目例
1.達成目標(数字的/機能的)
代理店との協働は現場だけでは実現しません。ここで協働
2.活動計画(年間を通してのアクションプラン)
化に向けてのキーワードを現場と本社といった切り口と違う側
3.活動状況(活動内容とその結果)
面から二つ提示したいと思います。
4.因果関係(どのような活動をすると結果はどうなるのか)
一つは「機能別アテンド」です。企業と代理店のそれぞれ
5.達成可能性(地域別/顧客別/製品・サービス別の拡販
の機能の責任者と実務担当者が密接なコミュニケーションを
余地)
取り、目標達成に向けて協力体制をとるということです。具体
「徹底化」の項目例
的には、営業部門、技術・サービス部門、物流部門、人材育
1.計画に対する進捗状況(今、計画のどの辺りにいるのか)
成部門などごとに常に目標達成に向けての現状と課題、解決
2.最後までやりきる(どのようにすればできるのかを考える)
策を考え実行していくということです。
3.できないことの原因究明(なぜできないのかを徹底解明)
二つ目は「層別アテンド」です。企業と代理店のそれぞれ
4.成果の出る活動をしているか(成果が出なければ単なる
の階層ごとにコミュニケーションを取り、目標達成に向けての
無駄遣い)
協力をおこないます。経営幹部、実務責任者、実務担当者な
5.活動は全て計画的に(週・月・四半期・半期・年間での
ど各階層ごとに達成目標をダウンサイジングしながら共有し、
計画的な活動)
達成に向けて活動をしていくことです。
ここまでは、「仕組み」について考えてきましたが、次回は
戦略の実行と目標の達成に向けて不可欠な「人の育成」につ
いて考えてみたいと思います。
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【コラム】 代理店戦略 =再考=
第8回 [実践編 その5]戦略実行力を高める人材育成はなされていますか?
前回のコラムでは、戦略・支援策の実行とそのマネジメント
について、本社と現場の役割分担と連動・連携について考え
てきました。どれほど良い戦略(競合との差別化が図られ独自
性のある戦略)が立案され、どれほど役に立つ支援策が用意
されても、その戦略を具現化するための活動や支援策を活用
し成果を上げるためにドライブさせることができる人材がなけ
れば、絵に描いた餅になってしまいます。今回は、その戦略
や支援策を実行し成果を上げるための人材育成について考
えてみたいと思います。
■戦略の実行に必要なこと
■人材育成のベースはやはりOJT
以上の点から見てみると人材育成の場としてベースとなる
のは、現場での活動と言うことになります。OJT(On the Job
Training)といわれ、日常の活動を通して育成を図るというも
のです。そこで大きな鍵を握っているのが現場マネジャーとな
ります。
OJTにおける現場マネジャーの重要性を以下に挙げます。
その重要さがよくわかります。
1.本人を最もよく知っている人からの影響が最も大きい
2.本人の「強み」「改善点」を最もよく理解している
3.職場の仕事なのでお手本を示すことができる
4.改善の進捗を近くで見ている、誉めやすい
5.身近にいるためにフィードバックがしやすい
6.身近にいるため信頼関係を築きやすい
まずはコミュニケーションの問題が挙げられます。本社と現
場、上司と部下といった戦略を現場で実行するための複数の
コミュニケーションパイプを太く強くする必要があります。「コ
ミュニケーションだったらやっている」「指示命令系統はしっか
りとできている」といわれる方も多いと思います。私が定義して
また、OJTにはサイクルがあり、このサイクルをまわすことで
いるコミュニケーションとは、「発信者(戦略の出し手)の意思
トレーニングの効果も上がってきます。
や考えを受信者(戦略の実行者)にきちんと伝え、理解・納得
1.目的と期待レベルを明確に示す → 2.お手本を示す
を得て、発信者の思うように行動を取ってもらうこと」となります。
→ 3.実際にやらせてみる → 4.振り返り・復習をする
行動につながらなければコミュニケーションを取っているとは
言えません。コミュニケーションは情報の発信・受信だけでなく、
ここまで見てみるとOJTの重要性と現場マネジャーの役割
人材育成にもつながってきます。
の重大さがお分かりいただけると思います。ですので、企業の
教育(研修会など)についてのご相談ではこのマネジャー層の
そして情報や知識が挙げられます。自社の業界に関するこ 強化がテーマになることも非常に多くなってきています。
と、顧客の業界に関すること、代理店の業界に関すること、な
ど挙げ始めたらきりがありません。これらは現場へ提供したり
ただし時代は激しく変化してきており、マネジャーがプレー
現場で見聞きしたりすることで身につける(保有する)ことはで
ヤーであったときの経験が通じない(経験が必要無いというこ
きますが、それを使える形にしていくためにはやはり工夫が必
とではありません)場面が増えてきている状況下では、OJTだ
要となります。代表的なものとして自社製品・サービスの導入
けでは人材育成も不十分であるといえます。そこで集合研修
事例が挙げられるでしょう。導入事例を共有している企業は非
に代表されるOff-JT(Off the Job Training)を効果的に使
常に多いと思いますが、現場(戦略の実行者)の方を見るとそ
うことがポイントになります。昨今では「知識詰め込み型」の研
の事例を深く理解しておらず代理店や顧客に対して提供をす
修会はほぼ影を潜め、代わりに「実践・アウトプット型」の研修
るだけで終わってしまっているケースが多く見受けられます。
会が増えてきました。受講者自身が担当している代理店を具
その事例を目の前の代理店や顧客に対してどのように使えば
体的に取り上げ、その代理店に対する戦略や計画を組み立
成果が上がるのかといった視点が欠けています。
てると同時に現場活動をリンクさせていく、いわゆる「営業会議
+トレーニング」的な要素を研修会に取り入れていく形です。
最後にスキルが挙げられます。代理店や顧客のことを知る
この方法であれば、受講者は自身の担当する代理店を題材
ための「傾聴・質問」、問題を発見し解決するための「問題解
に挙げるので意識が高まりやすく、行動に起こすことができる
決」、提案を組み立てるための「企画立案」、提案を相手に伝
といったメリットとして挙げられます。これらを拠点単位で実施
えて意思決定・行動してもらうための「プレゼンテーション」など することで情報の共有にもつながります。
です。このスキルの点でよく見受けられるのは、「知っているこ
と」と「できること」に大きな隔たりがあり、多くの場合「知ってい
る」レベルで終わってしまっているということです。スキルが高
■代理店戦略を実行し成功させるためには
まらない理由としては、常に現場で実践しなければ身につか
ず時間がかかるということです。また、自分が「できる」レベル
ここまで、「代理店戦略=再考=」として全8回にわたり戦
にいるかどうかを客観的に評価することが難しいといったことも
略上の課題を整理・提示するとともに、戦略立案から実行・実
挙げられます。ですので、日々の活動自体をトレーニングの場 現までの取り組みについて考えてきました。企業の属する業
界や業界内ポジション、流通構造とそのパワーバランスによっ
として根気強く取り組むことが求められます。
て戦略の方向性は多岐に渡ります。それぞれの企業が積み
重ねてきた歴史も各々だと思います。成功への道筋は一つで
はありませんが、行動を起こさない限りは衰退の一途をたどる
ことになります。「一貫性」と「継続性」。最後にこの言葉を皆様
にお贈りします。ぜひ皆様の企業内で積極的に根気強く取り
組まれ、成功されることを祈願して最終講とさせていただきま
す。長きに渡りご精読ありがとうございました。
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