内容 ・基礎(杭)の2次設計の必要性 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第13回) ・静岡県建築構造設計指針・同解説で 建築基礎の2次設計 導入に向けて 要求される杭の2次設計 (1) 杭の2次設計が必要な建物 (2) 保有水平耐力 建築研究所 新井 (3) 必要保有水平耐力 洋 ・応答変位法による杭応力の計算例 1 杭の2次設計の必要性 (1) 8名が死亡した杭基礎建物 (1985年メキシコ地震) 軟弱粘性土地盤の非線形化 杭の周面摩擦抵抗の低下 とP-Δ効果により転倒 田村(2015), AIJ大会基礎構造PD 2 杭の2次設計の必要性 (2) 3 液状化地域の杭基礎建物の被害形態 自然地盤と盛土地盤をまたぐ 杭基礎建物の被害 (1995年兵庫県南部地震) 田村(2015), AIJ大会基礎構造PD 4 杭の2次設計の必要性 (3) 1995年兵庫県南部地震 ・人命保護の観点においても建物の基礎 の2次設計は不要と本当に言えるか? ・大地震後の修復性や継続使用に対する 社会的要請(官庁施設,消防や警察, 病院や学校,超高層建物など) 時松(2015), 地震・津波ハザードの評価, 朝倉書店 5 ・レベル2以上の地震動:地盤変位の影 響が大 1次設計で想定していない被 害 上部構造に損傷がなくても建物 が沈下傾斜して使用不能 解体(資 産の喪失に等しい) 6 静岡県建築構造設計指針・同解説で 要求される杭の2次設計 (1) 杭の2次設計が必要な建物 ・高さ31mを超える建物 杭の破壊が先行するのは危険 7.3 杭基礎の設計 7.3.3 水平力に対する検討 5 杭の2次設計 ・杭破壊により転倒の危険性がある建物 例えば, 5 高さ31mを超える建物及び杭の破壊 により転倒の危険性がある建物で杭 基礎を用いる場合は、杭の二次設計 (保有水平耐力の検討)を行う。 1) 塔状比が4を超える建物 ※転倒モーメントが大 2) 軟弱な地盤に建設する建物 ※地盤変位が大 杭の地中破壊 7 8 (2) 保有水平耐力 なお、これらに該当しない建物であって も、杭基礎の被害軽減のため、例えば、 基礎構造の耐震診断指針(案)(ベター リビング、2013)の1次診断および2 次診断の手法に基づいて、杭の地震時安 全性の検討を行うことが望ましい(付5. 3参照)。 2次設計のクライテリア 必要保有水平耐力 < 保有水平耐力 基礎構造の「保有水平耐力」とは何か? 明確な定義は,まだない. (言い換え) 上部構造の必要保有水平耐力時の杭・地 盤の応力 < 杭・地盤の強度(限界値) 9 基礎構造の限界状態 基礎構造の限界状態と要求性能の例 ・基礎構造の使命:上部構造の鉛直支持 地震荷重のレベル:上部構造と同様 例えば,損傷限界状態/安全限界状態 1964年新潟地震の液状化による 建物杭被害(河村ら, 1985) 10 性能レベル A 性能レベル B 一方で,基礎構造 の耐震性能残存率 ≠1-損傷度 建物支持の限 界状態と杭や地盤 の限界値をどう考 えるか? 性能レベル C 小 林 (1997), 建築技術3月 号に加筆 11 12 杭・地盤の限界値の考え方の例(1) 地盤 押込側・引抜 側それぞれ2 箇所以上で降 伏支持力Pyを 超えない 性能レベルC 押込力または引抜力 半数以上が深度方 向2箇所でMyを超 えない,かつ半数 以 上 で Mu お よ び Quに達しない 押込側・引抜側 押込側・引抜側い それぞれ半数以 ずれかの全数がPu 上で極限支持力 に達しない Puに達しない ベターリビング(2013), 基礎構造の耐震診断指針(案) 場所打ち鋼管コン クリート杭・SC杭 PHC・PRC杭 コンクリートのひび割れ My-y 最外端鋼管の降伏 最外端コンクリート,PC鋼材 最外端鉄筋の またはコンクリー または鉄筋の降伏 降伏 トの降伏 Mu-u 圧縮側コンク リートの限界 ひ ず み (0.35%) 圧縮側コンクリートの限界ひ 鋼管の塑性局部座 ず み ( PHC 杭 ( せ ん 断 補 強 屈または圧縮側コ 筋 ・ 中 詰 あ り ) お よ び PRC ンクリートの限界 杭:0.35%, PHC杭中詰なし: ひずみ(0.5%) 0.25%) 鋼管杭(中詰めなし) Mu-u 鋼管の塑性局部座屈 (限界ひずみ0.22t/r×102%) 鋼管杭(中詰めあり) 鋼管最外端の降伏 cmax×85% ベターリビング(2013), 基礎構造の耐震診断指針(案) O c y 曲率 u 杭の限界値 (M-関係) Pu Sy Su 地盤の限界値 (鉛直荷重-変位関係) 14 杭のせん断耐力の設定例 Mc-c My-y 鋼管最外端の降伏 Mc Py 13 杭の曲げ耐力の設定例 場所打ちコン クリート杭 O Mu My 沈下量または抜上量 半数以上が降 杭体 伏曲げモーメ ントMyを超え ない,かつ1 基礎ばり 箇所でも許容 パイル せ ん 断 力 Qas キャップ を超えない 性能レベルB 全 数 が My を 超 え ない,かつ半数 以上が終局曲げ モ ー メ ン ト Mu に 達しない,かつ1 箇所でも終局せ ん 断 耐 力 Qu に 達 しない 曲げモーメント 性能レベルA 杭・地盤の限界値の考え方の例(2) 15 杭の曲げ・せん断耐力の軸力依存性 ①場所打ちコンクリート杭: 等価矩形断面に対して修正荒川min式(軸力 項を累加)を準用 ②場所打ち鋼管コンクリート杭, SC杭: 鋼管部分のせん断耐力(④鋼管杭に同じ) ③PHC杭, PRC杭:COPITAの式 ④鋼管杭: 鋼材の短期許容せん断応力度×腐食代を考 慮した有効断面積/2 建築学会(1990), 建築耐震設計における保有耐力と変形性能 ベターリビング(2013), 基礎構造の耐震診断指針(案) 16 地盤の限界値の設定例 建築学会基礎指針:杭の極限支持力・摩擦力 曲げ耐力:断面力解析による せん断耐力:既往の部材評価式を準用 17 18 応答変位法の解析モデル(1) (3) 必要保有水平耐力 原則として応答変位法により算定 ・解析モデル,基本式と解法,境界条件 ・杭の非線形性,地盤ばねの非線形性 ・2次設計用の地震外力 -地震荷重の規定位置 -地盤応答の評価,液状化の扱い -建物慣性力の評価,動的相互作用の扱い, 地下部分の土圧摩擦力の扱い -建物慣性力と地盤変位の組合せ ・市販プログラムの例 19 簡易法(単杭モデル) 詳細法 (基礎ばり-杭の骨組みモデル) 20 応答変位法の解析モデル(2) 応答変位法の解析モデル(3) 簡易法を採用できる場合 ・建物全体で杭の仕様や負担軸力に大きな差 がなく,地震時の挙動が全ての杭で概ね同 じと思われる場合 ・杭の仕様や負担軸力についてグルーピング を行って,代表となる杭を選定できる場合 詳細法を採用すべき場合 ・アスペクト比が大きい建物の場合 ・連層耐震壁直下など地震時の変動軸力が大 きい杭が多数となる場合 グルーピングの方法 ① 杭の仕様:杭径・杭長・杭種・鋼管厚 ② 地震時軸力(常時±変動軸力): 載荷方向ごとに大・中・小に分類(軸力を 求められない場合は建物形状から推定) ③ 杭の配置:隅角部・外端・内部 ④ その他: ・布基礎,べた基礎下に杭が分散して配置 柱の支配範囲ごとに代表杭を選定 ・1フーチングに多数の杭 1本を代表杭 ベターリビング(2013), 基礎構造の耐震診断指針(案) ベターリビング(2013), 基礎構造の耐震診断指針(案) 21 基礎ばり-杭の骨組みモデルの解法 応答変位法の基本式(単杭)と解法 【参考資料1】 ・基本的に単杭の場合と考え方や手順は同じ だが,建物形状を考慮して,基礎全体また は通り全体を2次元ないし3次元にモデル化 d d y EI 2 kh B y yG 0 dz 2 dz 2 22 2 EI:杭の曲げ剛性,y:杭の変位,B:杭径,z:地盤の深度, yG:地盤変位,kh:水平地盤反力係数 ・FEMやFDMによる空間離散化+杭両端の境 界条件 多元連立1次方程式 [A]{y} = {g} ・EI と kh の非線形性(いわゆるM-, p-y 関係) 荷重増分解析( [A]{y} = {g})または 等価線形解析(直接反復法) 23 ・空間離散化の方法にはFEMを用いる場合が 多い(地盤ばね:ばね要素,杭:梁要素, 基礎梁:剛床仮定とし,各杭の杭頭を剛梁 要素で連結するか,杭頭の水平変位同一条 件を課す ・各杭の非線形化に伴う負担水平力の再配分 や除荷になる場合の影響を適切に考慮する ため,荷重増分解析が望ましい 24 杭頭と杭先端の境界条件 杭頭の回転を許容する場合 杭頭 ・回転拘束(固定): 撓み角ゼロ, せん断力Q=Q0(外力) ・曲げモーメント拘束(回転許容): 曲げモーメントM=M0(任意), せん断力Q=Q0(外力) 先ず,杭頭回転拘束 (固定)の条件で解き, その杭頭曲げモーメ ントM0fを求める. 次に,実情に基づい て杭頭固定度を設定 し,杭頭曲げモーメ ン ト 拘 束 (M0=M0f : 回転許容)の条件で解 き,杭応力を得る. 杭先端 ・ピン:M=0, 変位ゼロ ・フリー:M=0, Q=0 ベターリビング(2013), 基礎構造の耐震診断指針(案) 25 杭の非線形性:M-関係 (1) 杭の非線形性:M-関係 (2) ・曲げ材または曲げせん断材として扱う. ・杭材(コンクリート,鋼など)の応力-ひ ずみ 関係を用いて,平面保持仮定の下, 断面力解析を行って,曲げモーメントM- 曲率 関係を設定する. ※【参考資料2】やCOPITAのツールなど scy pcmax ccy ptmax cty ccmax =0.0025 =0.05 pty2 =0.015 stmax =0.18 pEs pcy2 =0.015 鉄筋降伏 コンクリート 圧壊 コンクリート ひび割れ pcy Ec 26 sEs pcmax =0.05 scmax =0.22t/r pty コンクリート (PHC 杭・中詰なし) ptmax PC 鋼材 sty 鋼管(中詰なし) 27 地盤ばねの非線形性:p-y 関係 28 基礎指針の水平地盤ばね (1) 水平地盤反力係数 kh 水平地盤ばね ・建築学会基礎指針※の地盤ばねを推奨 液状化地盤に対応可 ※現在改定中(2019年度刊行) ・その他の地盤ばね:弾性論に基づくもの, 道路橋示方書,鉄道標準など 10 kh 0 (y 0.1cm) kh kh 0 y (y 0.1cm) y : 杭と地盤の相対変位 kh y pmax : 塑性水平地盤反力 杭と地盤の相対変位 (cm) 基準水平地盤反力係数 kh 0 E0 B 0.75 鉛直地盤ばね:付けないことを推奨 地震応答に与える影響は大きくない 適切な地盤ばねがない 解析が非常に煩雑になる 29 ※実地盤の単杭の杭頭水平載荷試験で相対変位1cmの状態 に基づいて設定 : E0の決め方と土質により決まる定数, B: 杭径, E0: 変形係数(ヤング率), : 群杭係数(単杭で1) E0 = 700N (N: 標準貫入試験N値)が多用される 30 基礎指針の水平地盤ばね (2) 基礎指針の水平地盤ばね (3) kh0 の群杭係数 塑性水平地盤反力 pmax 砂質土 K P Bz 2 B z cu 粘性土 cu B KP: 受働土圧係数, : 単位体積重量, cu: 非排水せん断強度 = 一軸圧縮強度qu / 2 内部摩擦角 N値 ※実地盤の群杭(2本杭, 3本杭, 2×2本杭, 3×3本杭) の杭頭水平載荷試験等に基づいて設定 pmax の群杭係数(省略) (単杭で3), (単杭で9), (単杭で1.4) 31 基礎指針の水平地盤ばね (4) 応答変位法の2次設計用の地震外力 液状化による kh と pmax の低減 ( ) ・上部構造の必要保有水平耐力に対応 軸力 する荷重 水平力 非液状化時 建物慣性力 建物の地震荷重 液状化時 杭の水平地盤反力と 変位関係のモデル化 32 地表面における設計用 地震動の加速度応答 スペクトル 水平地盤反力係数の低減率 地盤変位 33 設計用地震動の加速度応答スペクトル 地震荷重(設計用地震動)の規定位置 工学的基盤面 (限耐法ベース) ①地盤応答 ③建物 慣性力 (地表面の加速度 応答スペクトルと 地盤変位) (限耐法と新耐震の2次設計レベル) 地表面 (新耐震ベース) ②地表面の 加速度応答 スペクトル 34 多質点系でC0=1相当 減衰定数5% ①建物の 地震荷重 地表面(新耐震ベース) C0×Rt 神戸震 災の 新耐 震 建物 被害小が根拠 速度応答1.6m/s ②基礎入力動 ③地盤変位 工学的基盤面 (限耐法ベース) 工学的基盤 35 36 地盤応答評価に必要な情報 地盤のS波速度構造の評価法(1) 弾性波速度検層 (PS検層) ・S波速度構造と動的変形特性は不可欠 弾性波速度検層 (PS検層) 標準貫入試験N値から経験的に推定 微動(表面波)探査 ※探査を行う技術者の腕次第で,PS検層に比べて 適切な結果にも不適切な結果にもなる 土試料採取と室内試験/データの 回帰式(H-DやR-Oモデルなど) 37 http://www.tokyosoil.co.jp/pdf/f-07.pdf 38 地盤のS波速度構造の評価法(2) 標準貫入試験N値から経験的に推定 走時曲線 経験式 太田・後藤(1976) 今井・殿内(1982) 多田ほか(1996) 福和ほか(1999) 田村・山崎(2002) 永田ほか(2008) 加藤・田守(2011) S波の生データ 起振点がボーリング 孔口から離れている ことに関する走時の 補正 地盤工学会(2005), 地盤調査 基本と手引き データ数 289 1654 264 数千程度 7677・1836 588 24487 N値とS波速度の関係のメカニズム? 39 40 地盤のS波速度構造の評価法(3) 例えば,太田・後藤(1976)の式 微動(表面波)探査 VS ’ 68.79 N 0.171 H 0.199 土質係数 年代係数 経験式の元データの地域や数量による 推定結果の信頼性や適用範囲の差異 対象地域 首都圏 全国(都市域) 神戸 名古屋 全国K-NET・横浜 千葉 全国(都市域) 41 探査範囲の地盤は水平成層構造であること 42 地盤の動的変形特性の評価法(1) Soil Profile 土試料の室内試験 砂質土 シルト 粘性土 中空ねじり 繰返しせん断 試験装置 (PARI web) 地震応答に影響の小さい薄層等は推定困難 供試体 43 44 地盤の動的変形特性の評価法(2) 地盤応答の評価法 数式モデルによる試験データの回帰式 工学的基盤で地震荷重を規定する場合:限耐法ベース ・時刻歴非線形解析: 高難度設計で使える? 信頼性 実用性 精度 簡便性 低 高 ・重複反射理論による等価 線形解析 中空ねじり 繰返しせん断 試験装置 ※いわゆる「SHAKE」 ・限耐法の地盤増幅: 固有値解析は必要 H-Dモデルの例:古山田ら(2003), 地盤工学会大会 供試体 低 高 45 重複反射理論による等価線形解析も いろいろ(建築基礎設計例集の地盤例) 46 限耐法の地盤増幅は要改良 ・告示どおりに安全限界の計算をすると ー 固有周期の精度が悪い場合が多い ー 変位が2-3倍異なる場合がある 井上ら(AIJ技報, 2010)の改良法 S波速度構造と動的変形特性は同一(古山田H-D) 47 48 地盤変位の評価法 液状化の扱い (地表面で地震荷重を規定する場合:新耐震ベース) ・重複反射理論による等価線形解析: 安全限界で発散の危険性が大きい 応答スペクトルから 単純な四則演算により 地表変位を概算 +インピーダンス逆数で 重み付けしたVs構造の モード解析 ・地盤変位:建築学会基礎指針の液状化 判定による動的水平変位Dcyを加算 ・地表面の加速度応答スペクトル: (工学的基盤で地震荷重を規定する場合) 液状化を考慮しない場合の結果 等価線形解析を利用した簡易評 価法も提案されているが,液状 化層の等価剛性・等価減衰の適 切な設定が難しい. 小林ら(2015), 建築学会技報, No.48 【参考資料3】AIJ大会発表予定 49 基礎指針の液状化判定 液状化 安全率 FL 地盤情報 土質,単位体積重量, 標準貫入試験N値, 細粒分含有率, 地下水位 1 深さ 地震動情報 地表面加速度, マグニチュードM 設計用地震動の規定位置 有効応力解析を推奨しない理由 1. 土のせん断応力-ひずみ関係とダイレイタ ンシーに伴う過剰間隙水圧およびサイク リックモビリティなどを表現する構成則が 複雑かつ多種多様 動的 水平変位 Dcy 液状化 層 地表面加速度 地盤応答解析の結果 工学的基盤面 (限耐法ベース) ※加速度応答スペクトルの 短周期側の値 地表面(新耐震ベース) 3-4m/s2 50 2. 地盤のモデル化や境界条件,運動方程式の 解法などの理解,構成則と,そのパラメタ 設定に関する適切な知識と経験が必要(再 現解析など実問題への適用に関する習熟) M 3. プログラムで用いる構成則のパラメタ設定 に必要な液状化試験データが必要 7.5 51 動的相互作用の扱い(1) 建物慣性力の評価法(限耐法ベース) E B F P I 52 B:上部構造の慣性力 基礎入力動(地表面地震動 ×相互作用係数)の加速度 応答スペクトルから (限耐法や荷重指針など) I: 建物と地盤の動的相互作用 後述 F: 地下部分の慣性力 ※深さ方向に低減しない 基礎入力動の最大加速度(加速度応答スペクトル の短周期側の値)から E: 地下部分に作用する土圧力と摩擦力 後述 53 ・限耐法の相互作用係数β(簡易式) 1 De K hb 1 1 K he GS H i K hb K he ただし 3 4 Khb:地下部分の底面の 水平地盤ばね定数 Khe:地下部分の側面の 水平地盤ばね定数 ※地盤ばね定数は コーンモデルによる 54 動的相互作用の扱い(2) 動的相互作用の扱い(3)S-Rモデル ・短周期が落ちる 地震荷重と関係薄 ・ 基 礎 底 深 さ の 自 由 地 盤 応 答 (E+F) を 基礎入力動の代用としてもよいか ・応答変位法の地盤ばねとの整合性? ・上部構造の地震荷重で考慮しているか ・時刻歴非線形解析をするのか 強震記録に基づく新長田建物の 基礎入力動(安井ら, 1998) 55 地下部分の土圧摩擦力の扱い(1) E I P 地下部分の土圧摩擦力の扱い(2) BCJ指針:地下部分側面土 の水平力分担率 B F 1 0.2 地上高さ 4 根入れ深さ 土圧摩擦合力ばね 導入当時の仮定:設計水平震度0.2,地盤変位 の影響なし,静的弾性論の抵抗メカニズム 杉村先生曰く「この分担率が現在の設計でも 用いられているのは問題」 57 P I 田村(2015), AIJ大会基礎構造PD 58 建物慣性力と地盤変位の組合せ 建物慣性力の評価法(新耐震ベース) E ・応答変位法の水平地盤ばねとして「土圧摩 擦合力ばね」を付加 ※基礎指針改定で検討中 ・主働から受働まで任意の地震時土圧状態を 表現できる 土圧摩擦合力ばね E = ×(B+F):必ず受働抵抗になる P = B+F+E = (1)×(B+F) B F 56 B:上部構造の慣性力 必要保有水平耐力 ※または,保有水平耐力, C0×Ds×Fes から, ベースシヤ係数から ・杭と地盤ばねの非線形性を考慮するため, 原則として,建物慣性力と地盤変位は同時 に作用させる ・一方,震動中は,建物と地盤,建物-地盤 連成系の固有周期の大小関係や,地盤変位 と杭変位の大小関係によって,建物慣性力 と地盤変位の向きと大きさが変化する I: 建物と地盤の動的相互作用 考慮しない F: 地下部分の慣性力 ※深さ方向に低減しない C0=1相当の地表面地震動の最大加速度3-4m/s2 (加速度応答スペクトルの短周期側の値)から 建物慣性力と地盤変位の作用は,①同時・ 同方向,②同時・逆方向の2ケースを検討 し,安全側の評価となる場合を採用 E: 地下部分に作用する土圧力と摩擦力 前述 59 ベターリビング(2013), 基礎構造の耐震診断指針(案) 60 応答変位法の市販プログラムの例 応答変位法による杭応力の計算例 (建物の杭基礎を対象とするもの) ・神戸市東灘区深江浜に実在した杭基礎建物 (Mビル)がモデル ※ベターリビング(2013), 基礎構 ・k-Pile (構造計画研究所) http://www.kke.co.jp/ ・PILE-Lite (ソフトウェアセンター) http://www.scinc.co.jp/ ・SEIN Pile (NTTファシリティーズ) https://www.sein21.jp/ ・PileExplorer (システムプランニング) http://www.kk-sp.co.jp/ ・ LiQSMART ( 伊 藤 忠 テ ク ノ ソ リ ュ ー シ ョ ン ス ゙ ) http://www.engineering-eye.com/ ・ ・ ・ ・基礎ばり-杭の骨組みモデルの場合,汎用のFEM ソフトを利用する人も多い 造の耐震診断指針(案), 付録1, 診断事例5 を改変して使用 ・実際は,1995年兵庫県南部地震で地盤の 液状化により杭が損傷し,上部構造に損傷 は見られなかったが大きく傾斜した(地震 後約1年半使用の後に解体された) ・ここでは,地震荷重を上部構造の C0=1.0 (新耐震ベース:地表面地震動)で規定,対応 する建物慣性力と地盤変位(液状化考慮)を設 定し,応答変位法により杭応力を計算 61 建物と基礎杭の概要 鉄骨造3階建て事務所ビル(S48竣工) ・短辺長 B = 9.05m, 長辺長 L = 30.1m ・地上高 H = 10.6m ・基礎根入れ深さ Df = 0.8m ・上部構造重量 Wb = 5448kN (地震力計算用:4631kN) ・基礎スラブ重量 Wf = 2615kN ・構造特性係数 Ds = 0.4 ・形状係数 Fes = 1.0 ・杭種:PC杭 A種 ・杭径:350mm(隅4本), 450mm(10本) ・杭長:28m(2本継ぎ) 杭頭部詳細図 62 地盤の概要 層厚 (m) 基礎伏図 63 0.8 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 0.5 2.5 1.5 8.0 7.0 2.5 1.5 6.0 ∞ 土質 単位体積 重量 3 (kN/m ) ▽ 砂質土 ※細粒分含有率 10% S波速度 (m/s) 平均 N値 160 160 2 4 7 7 5 8 11 15 10 2 3 14 20 28 10 29 - 18.0 190 液状化 対象層 粘性土 砂質土 粘性土 砂質土 工学的基盤 16.5 18.5 19.0 19.0 19.0 19.0 140 210 150 240 290 260 310 350 (地下水位1.8m) 一軸圧縮 強度 qu (kPa) 内部 摩擦角 (deg) 30 (細粒分含有率 10%) - 100 0 30 0 30 - 350 500 - 250 - - ①建物慣性力の算定:杭頭水平力(短辺方向) ②建物慣性力の算定:杭頭軸力(短辺方向) ・上部構造の必要保有水平耐力 Qun = Ds×Fes×C0×Wb(地震力計算用) = 0.4×1.0×1.0×4631kN = 1852kN ・建物全重量 Wb+Wf = 8063kN を杭の本数と断面積に より分配 各杭頭の常時軸力 350mm:418kN/本 450mm:639kN/本 ・C0 = 1.0 相当の地表面最大加速度 Amax = 3.5m/s2 基礎スラブ(地下部分)の水平力 Qf = (Amax / 9.8)×Wf = (3.5 / 9.8)×2615kN = 934kN ・建物慣性力によるO点回り転倒モー メント:(Qun+Qf)×(H+Df)/2 Qun ・杭7本の変動軸力の和 によるO点 H+Df +Qf 回り回転トルク:(N7×B/2)×2 N7 両者を等置して, O N7 N7 = (1852+934)×11.4/9.05/2 杭7本 杭7本 = 1755kN N7 を上記と同様に分配 各杭頭の変動軸力 350mm:182kN/本 450mm:278kN/本 B ・地下部分の側面土の水平力分担率 α = 1-0.2×H1/2/ Df1/4 = 1-0.2×10.61/2/0.81/4 ≒ 0.3 ・杭頭水平力の和 Qp = (1 - α)(Qun+Qf) = (1 – 0.3)(1852+934)kN = 1950kN これを杭の本数と剛性により分配 各杭頭の水平力 350mm:65kN/本 450mm:169kN/本 64 65 66 ・各杭頭の最大・最小軸力(圧縮側・引張側) =常時軸力±変動軸力 350mm:418±182(最大600・最小236)kN/本 450mm:639±278(最大917・最小361)kN/本 ④地盤の液状化判定 ・基礎指針の方法による ・検討対象:地下水位以深の砂質土(深さ1.8-8.3m) ・地表面最大加速度 3.5m/s2, マグニチュード 7.5 ③杭のM-φ関係のモデル化 ・断面力解析の結果(破線)から折れ線モデル(実線) 67 ⑤地盤変位の算定 ・【参考資料4】の簡易法+基礎指針のDcy ・C0 = 1.0 相当の地表面最大速度応答 1m/s2 68 ⑥杭の応力解析条件の整理-1:350mm(隅4本) 2×2×2 = 8ケース 杭頭:(2ケース) 固定/ピン 軸力 N:(2ケース) 引張側 236kN, 圧縮側 600kN 水平力 Q:±65kN(2ケース) 地盤変位:簡易法+Dcy M N = 600kN 杭体 N = 236kN EI (=M/φ) 地盤ばね:kh (=p/y) N値(砂質土) qu(粘性土) ※基礎指針の方法 p 非液状化 φ ×β(基礎指針) 液状化 杭先端:水平自由 y 69 ⑦杭の応力解析結果-1:350mm(隅4本) 逆()方向載荷 同()方向載荷 ⑥杭の応力解析条件の整理-2:450mm(10本) 2×2×2 = 8ケース 杭頭:(2ケース) 固定/ピン M 軸力 N:(2ケース) 引張側 361kN, 圧縮側 917kN 引 張 側 水平力 Q:±169kN(2ケース) 地盤変位:簡易法+Dcy N = 917kN 杭体 N = 361kN EI (=M/φ) φ 地盤ばね:kh (=p/y) N値(砂質土) qu(粘性土) My My ※基礎指針の方法 p 非液状化 圧 縮 側 ×β(基礎指針) 杭先端:水平自由 70 液状化 y My 71 My 72 ⑧杭の応力解析結果まとめ ⑦杭の応力解析結果-2:450mm(10本) 逆()方向載荷 同()方向載荷 条件 My 350(隅4本):液状化層上下部,深 引 さ20mの3箇所で曲げ降伏. 張 450(10本):液状化層上下部,深 杭 側 さ20mの3箇所で曲げ降伏.杭頭部 頭 で短期許容せん断力を超える. ピ ン 圧 350(隅4本):液状化層下部で曲 げ降伏. 縮 450(10本):曲げ降伏,短期許容 側 せん断力に達しない. 圧 縮 側 My 同方向載荷 性能 レベル 350(隅4本):杭頭部,液状化層上 350(隅4本):同左. 引 下部,深さ20mの3箇所で曲げ降伏.450(10本):杭頭部で曲げ破壊. 張 450(10本):液状化層上下部,深 液状化層上下部,深さ20mの3箇所 C未満 杭 側 さ20mの3箇所で曲げ降伏.杭頭部 で曲げ降伏.杭頭部で短期許容せ 頭 で短期許容せん断力を超える. ん断力を超える. 固 定 圧 350(隅4本):杭頭部,液状化層上 350(隅4本):杭頭部で曲げ破壊. 下部の2箇所で曲げ降伏. 液状化層上下部2箇所で曲げ降伏. C未満 縮 450(10本):杭頭部,液状化層上 450(10本):杭頭部で曲げ破壊. 側 下部の2箇所で曲げ降伏. 液状化層上下部2箇所で曲げ降伏. 引 張 側 My 逆方向載荷 My 73 拙講演内容が応答変位法 による杭の2次設計の理 解と習得のお役に立てれ ば幸いです. 75 350(隅4本):液状化層下部,深さ 20mの2箇所で曲げ降伏. 450(10本):液状化層全域と深さ C未満 20mで曲げ降伏.杭頭部で短期許 容せん断力を超える. 350(隅4本):同左. 450(10本):液状化層全域で曲げ C未満 降伏. 74 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 1 単杭の応答変位法の解法(例) 単杭の応答変位法の基本式(力の釣合式)は, d 2 d 2 y d dy 0 EI 2 + N + kh B ( y − yG ) = dz 2 dz dz dz (1) ここに,EI は杭の曲げ剛性(以後,便宜上,e と記す) ,N は杭の軸力(圧縮が正) ,y は杭の変位,B は杭径,z は地盤の深度,yG は地盤変位,kh は水平地盤反力係数.(1)式の左辺第 2 項は,杭の軸力 N による付加曲げの影響を考慮したもので,省略される場合が多い. (1)式を差分法で解ける形に展開すると, d 2e d 2 y de d 3 y d 4 y dN dy d2y +2 +e 4 + + N 2 + kh By = kh ByG dz 2 dz 2 dz dz 3 dz dz dz dz (2) 杭頭から杭先端までを, n 個の節点(節点番号 = i 0,1, 2,..., n − 1 ,間隔 ∆z )に離散化する.(2)式に おいて,1-4 階微分に対して,2 次精度の中心差分 dy yi +1 − yi −1 = 2∆z dz (3-1) d 2 y yi +1 − 2 yi + yi −1 = dz 2 ∆z 2 d 3 y yi + 2 − 2 yi +1 + 2 yi −1 − yi − 2 = dz 3 2∆z 3 d 4 y yi + 2 − 4 yi +1 + 6 yi − 4 yi −1 + yi − 2 = dz 4 ∆z 4 (3-2) (3-3) (3-4) を適用し,整理すると,(4)式を得る. γ i yGi a1i yi − 2 + a2i yi −1 + a3i yi + a4i yi +1 + a5i yi + 2 = (4) ここに, e −e e a1i = − i +1 4i −1 + i 4 2∆z ∆z 2e − 6e N − N N a2i = i +1 4 i − i +1 2 i −1 + i2 4∆z ∆z ∆z −2ei +1 + 10ei − 2ei −1 2 N i a3i = − 2 +γi ∆z 4 ∆z −6ei + 2ei −1 N i +1 − N i −1 N i + + 2 a4i = ∆z 4 ∆z 4∆z 2 ei +1 − ei −1 ei = a5i + 4 2∆z 4 ∆z (5-1) (5-2) (5-3) (5-4) (5-5) γ i = khi B (5-6) 参 1-1 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 1 ただし,杭頭( i = 0 )と杭先端( i= n − 1 )では,1 階微分の中心差分は,前進差分あるいは後退差 分により置換し,(6), (7)式とする. 杭頭( i = 0 ) a10 = a20 = −e1 + 2e0 ∆z 4 (6-1) 2e1 − 6e0 N1 − 3 N 0 − 2∆z 2 ∆z 4 (6-2) 6e0 2 N 0 − +γ0 ∆z 4 ∆z 2 −2e1 − 2e0 N1 + N 0 a40 = + 2∆z 2 ∆z 4 a30 = (6-3) (6-4) e1 ∆z 4 (6-5) γ 0 = kh 0 B (6-6) a50 = 杭先端( i= n − 1 ) a1( n −1) = en − 2 ∆z 4 (7-1) −2en − 2 − 2en −1 N n − 2 + N n −1 + 2∆z 2 ∆z 4 6e 2 N n −1 = n −41 − + γ n −1 ∆z ∆z 2 a2( n −1) = a3( n −1) a4( n −1) = a5( n −1) = (7-2) (7-3) 2en − 2 − 6en −1 N n − 2 − 3 N n −1 − 2∆z 2 ∆z 4 (7-4) −en − 2 + 2en −1 ∆z 4 (7-5) γ n −1 = kh ( n −1) B (7-6) また,杭頭と杭先端の近傍では,境界条件から,(4)式は,(8)-(11)式で表される. a) 杭頭回転拘束(固定) 杭頭( i = 0 )において, dy dz 撓み角 = y1 − y−1 = 0 2∆z d3y dz y−1 = y1 y − 2 y1 + 2 y−1 − y−2 y −y = −e0 2 3−2 3 2∆z 2∆z せん断力 Q0 = − EI 3 = −e0 2 より, 参 1-2 y−2 =y2 + 2Q0 3 ∆z e0 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 1 1) i = 0 に対して, a30 y0 + ( a20 + a40 ) y1 + ( a10 + a50 ) y2 = γ 0 yG 0 − a10 2Q0 3 ∆z e0 (8-1) 2) i = 1 に対して, a21 y0 + ( a11 + a31 ) y1 + a41 y2 + a51 y3 = γ 1 yG1 (8-2) b) 杭頭モーメント拘束 杭頭( i = 0 )において, y − 2 y0 + y−1 ∆z 2 d2y dz 曲げモーメント M 0 = − EI 2 = −e0 1 y−1 = 2 y0 − y1 − M0 2 ∆z e0 d3y dz y − 2 y1 + 2 y−1 − y−2 2∆z 3 2 M 0 2 2Q0 3 ∆z + ∆z y−2 = y2 − 4 y1 + 4 y0 − e0 e0 せん断力 Q0 = − EI 3 = −e0 2 より, 1) i = 0 に対して, ( 4a10 + 2a20 + a30 ) y0 + ( −4a10 − a20 + a40 ) y1 + ( a10 + a50 ) y2 = γ 0 yG 0 + ( 2a10 + a20 ) (9-1) M0 2 Q ∆z − 2a10 0 ∆z 3 e0 e0 2) i = 1 に対して, M y3 γ 1 yG1 + a11 0 ∆z 2 ( 2a11 + a21 ) y0 + ( −a11 + a31 ) y1 + a41 y2 + a51= e0 (9-2) c) 杭先端フリー 杭先端( i= n − 1 )において, y − 2y ∆z + yn n −1 曲げモーメント M n −1 = −en −1 n − 2 2 y − 2y + 2y 2∆z yn 2 yn −1 − yn − 2 0 = = −y n n−2 n −3 せん断力 Qn −1 = −en −1 n +1 = 0 yn +1 = 4 yn −1 − 4 yn − 2 + yn −3 3 より, 1) i= n − 2 に対して, a1( n − 2) yn − 4 + a2( n − 2) yn −3 + ( a3( n − 2) − a5( n − 2) ) yn − 2 γ n − 2 yG ( n − 2) + ( a4( n − 2) + 2a5( n − 2) ) yn −1 = 参 1-3 (10-1) 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 1 2) i= n − 1 に対して (a + (a 1( n −1) + a5( n −1) ) yn −3 + ( a2( n −1) − a4( n −1) − 4a5( n −1) ) yn − 2 γ n −1 yG ( n −1) 3( n −1) + 2a4( n −1) + 4a5( n −1) ) yn −1 = (10-2) d) 杭先端ピン 杭先端( i= n − 1 )において, 変位 yn −1 = 0 y y +y − 2 yn −1 + yn 0 yn = − yn − 2 = −en −1 n − 2 2 n = 2 ∆z ∆z 曲げモーメント M n −1 = −en −1 n − 2 より, 1) i= n − 3 に対して, a1( n −3) yn −5 + a2( n −3) yn − 4 + a3( n −3) yn −3 + a4( n −3) yn − 2 = γ n −3 yG ( n −3) (11-1) 2) i= n − 2 に対して a1( n − 2) yn − 4 + a2( n − 2) yn −3 + ( a3( n − 2) − a5( n − 2) ) yn − 2 = γ n − 2 yG ( n − 2) (11-2) 境界条件 a)ないし b)と c)ないし d)の組み合わせに応じて,(4)式および(8)-(11)式から必要な式を連立 させると,解くべき多元連立 1 次方程式は,(12)式の形に表される. Ay = g (12) ここに, A :(5)-(7)式の a1i , a2i , a3i , a4i , a5i から決まる要素を持つ正方行列 y :求めるべき杭変位 yi を要素に持つ列ベクトル g : γ i yGi と(8), (9)式右辺( a10 , a20 , a11 , M 0 , Q0 , e0 , ∆z )から決まる要素を持つ列ベクトル ※境界条件 c) 杭先端フリーの場合: = i 0,1, 2,..., n − 1 (要素数 n ) ※境界条件 d) 杭先端ピンの場合: = i 0,1, 2,..., n − 2 (要素数 n − 1 ) (12)式を解いて,杭変位 { yi } を得る. ※(12)式は,対称行列とはならない.ここでは,特異値分解法により求解する. 得られた杭変位 { yi } から,撓み角θ,曲げモーメント M,せん断力 Q を順次,1 階微分により求める. θ= dθ dM dy , M = − EI ,Q = dz dz dz (13) 参 1-4 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 1 この微分演算も,ここでは,差分法による.差分スキームは,(14)式とする. y1 − y0 ∆z − y3 + 6 y2 − 3 y1 − 2 y0 節点 i = 1 :3 次精度の前進差分 θ1 = 6∆z 節点 i = 0 (杭頭):1 次精度の前進差分 節点 = i 2,..., n − 3 :4 次精度の中心差分 θ0 = θi = − yi + 2 + 8 yi +1 − 8 yi −1 + yi − 2 12∆z 2 yn −1 + 3 yn − 2 − 6 yn −3 + yn − 4 6∆z y − yn − 2 :1 次精度の後退差分 θ n −1 = n −1 節点 i= n − 1 (杭先端) ∆z 節点 i= n − 2 :3 次精度の後退差分 θn−2 = (14-1) (14-2) (14-3) (14-4) (14-5) 以上は,系(杭体と地盤ばね)が線形(弾性)の場合の解法例である.これが非線形の場合,(12)式 を増分形で表示して( A∆y =∆g ),適切な杭体の曲げモーメント-曲率(M-φ )関係と地盤ばねの 荷重-杭地盤間相対変位(p-y)関係を設定し,曲げ剛性 EI と水平地盤反力係数 kh の接線勾配を用い て,荷重増分解析(プッシュオーバー解析)を行う.あるいは,等価線形解析を行う場合は,EI と kh の割線勾配を用いて,反復収束計算(イタレーション)により解を求める.この際,EI と kh の初 期値は,弾性時の値を用いる. 参 1-5 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 2 杭の断面力解析の方法(例) 1. 扱う杭 円筒断面の鋼管杭,コンクリート杭,SC 杭(鋼管巻コンクリート杭) ,RC 杭,PC・PHC 杭等 2. 材料の応力-ひずみ関係 コンクリート材については道路橋示方書の式(e 関数法) ,鉄鋼材についてはバイリニア型モデルで 規定する.いずれも,圧縮を正,引張を負とする.ひずみεから応力σを求める関数をσ = f(ε)と表す. 3. 解析フロー ①曲率φを与える.断面は平面保持仮定とする. ②中立軸位置 X を仮定して,断面に生じる総軸力 N,総曲げモーメント M を計算する.具体の計算 方法は 4.を参照. ③X を断面内外に渡って適当に変動させ,N > 0 となる X = X1 および N < 0 となる X = X2 を見つける. X1 と X2 の間で,中点法等により N = 0 となる X = X0 を探索する(イタレーション) .収束クライテ リアは十分に小さくとる(例えば |N| < 10-3 N) .解が見つからない場合,当該φはスキップする. ④X = X0 における M = M0 を求める解とする. ⑤φを更新して,①に戻る. 4. 断面に生じる総軸力 N,総曲げモーメント M の計算方法 (1) まず,杭材について,図 1 により N, M を計算する. 図1 参 2-1 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 2 ・断面の要素分割数は,十分に大きく取る(ここでは 1024) .微小要素 j(面積 Aj)内のひずみεj は, 位置 xj における値で代表し,Aj 内で一様と仮定する. ・Aj は,解析解を求め,正確に計算する. ・初期軸力 N0 は,内力(復元力)として扱うため,符号を逆転する. ・SC 杭(鋼管巻コンクリート杭)については,N, M とも,鋼材部とコンクリート部の断面力の単純 和とする.材料間の摩擦や付着等は考慮しない. (2) 次に,RC 杭ないし PC・PHC 杭については,鉄筋ないし PC 鋼棒等による断面力負担の影響を,図 2 により考慮する.当該位置のコンクリートを鉄筋ないし鋼棒等に置き換える操作に対応する. 図2 ・j 番目の鉄筋ないし鋼棒等の断面(1 本あたり面積 ASj)内のひずみεSj は,位置 xSj における値で代表 し,ASj 内で一様と仮定する. ・材料間の摩擦や付着等は考慮しない. ・せん断補強筋またはフープ鉄筋の影響は,コンクリートの応力-ひずみ関係(道示式:e 関数法) において,横拘束効果による耐力向上や破壊ひずみ伸延などにより評価する. 参 2-2 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 2 (3) なお,PC・PHC 杭については,(1), (2)いずれにおいても,有効プレストレスσe の影響を考慮する. プレストレス導入により生じるコンクリートおよび鋼棒等の初期ひずみεC0, εS0 は次式により求め, それぞれの応力-ひずみ関係に反映させる(原点をシフトする操作に対応する) . コンクリート: ε C 0 鋼棒等: ε S 0 = = σe EC > 0 (圧縮) σe 1 1 − < 0 (引張) ES S r EC はコンクリートのヤング率 ES は鋼棒等のヤング率 Sr は断面の鉄筋比. 5. 計算例 建築学会『建築耐震設計における保有耐力と変形性能』 (1990)pp. 136-145 の各種杭の M-φ関係の 計算例について,記載の杭の諸元,材質,計算仮定等にしたがって,追解析を行った.解析に用い たコンクリートの応力-ひずみ関係(道示式:e 関数法)は,記載の計算例のそれ(バイリニア型 モデル)と異なるが,軸力 0tf 時の応力-ひずみ関係が概ね同等となるよう,フープ筋や鋼管等に よる横拘束効果の影響を適当に調節した.解析結果を下図に示す(図番号は『保有耐力と変形性能』 (1990)に同じ) .いずれの杭種においても,コンクリートの応力-ひずみ関係が異なるため,記 載の計算例の図と完全には一致しないものの,概ね同等の M-φ関係が得られた. 図 3.2 鋼管杭(p.137) 図 3.5 場所打ちコンクリート杭(p. 139) 参 2-3 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 2 図 3.8 既製コンクリート杭(p.141) 図 3.10 鋼管巻既製コンクリート杭(p. 143) 図 3.12 場所打ち鋼管コンクリート杭(p. 145) 参 2-4 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 3 建築基礎設計に用いる動的地盤変位の簡易評価法 正会員 建築基礎設計 地盤の固有周期 動的地盤変位 振動モード ○新井 洋*1 応答スペクトル 安全限界 1. はじめに 基礎の 2 次設計の社会実装に向けて,建築構造の設計者が安 定して解を得られる動的地盤変位の簡易評価法が必須である. 筆者ら 1), 2)は, 工学的基盤または地表で規定される建物の地震荷 重に対して,単純な四則演算から求まる地表水平変位と 1 次元 多質点系の振動モードを用いて地盤変位を算定する方法を提案 している.本報では,この方法に,地震荷重の加速度一定領域 における補正係数と限耐法 3)の GS 1 に関する安全率を導入する. 2. 地表水平変位の算定法 1), 2)に加筆修正 図 1 に示すように,地盤を水平成層構造とし,多層地盤を表 層と工学的基盤から成る 2 層地盤に置換する.この 2 層地盤に おいて,初期状態から,地震応答解析により,等価線形応答状 態が得られたとする.ここに,G:表層のせん断剛性,h:表層 の減衰定数,T:地盤の固有周期(単位 s:添字 0, E は初期状態, 等価線形応答状態を表す) ,Dmax :地表変位,H:表層の厚さ(と もに単位 m) , γ max :表層の最大せん断ひずみである.土の動 的変形特性を H-D モデル 4)(規準せん断ひずみ γ ref ,最大減衰 定数 hmax )で模擬し,表層の有効せん断ひずみ γ E = 0.65 × γ max と 置くと,地盤の固有周期の延び α ≡ TE T0 = G0 GE ( 1 ≤ α ) を用いて,地表変位 Dmax は(1)式で表される. γ ref ⋅ H 2 (1) Dmax = γ m ax ⋅ H = ⋅ (α − 1) 0.65 即ち,地盤の固有周期の延び α がわかれば,表層の厚さ H と規 準せん断ひずみ γ ref から,地表変位 Dmax を算定できる. (a) 地震荷重(設計用地震動)を工学的基盤で規定する場合 図 1 の多層地盤を基礎固定の多質点系に置換する.系の 1 次 のモード減衰 ξ1 ,1 次の刺激関数ベクトル β1 {ui } ,および基盤 地震動の加速度応答スペクトル(減衰定数 5%) S AB ( T ) を用い て,地表変位 Dmax は近似的に(2)式で表される 5). 2 1.5 TE ⋅ β1u1 ⋅ S AB (TE ) ⋅ 1 + 10ξ1 2π Dmax (2) ここで,図 2(a)に示すように,限耐法 3)で規定される地震動 の応答スペクトルの速度一定領域の形状から S AB ( T ) = 5k T(単 位 m/s2:安全限界で k = 1 , 損傷限界で k = 0.2 )と置き,ξ1 = hE , β1u1 = 1.2 と仮定すると,(1)式との対比から(3)式が得られる. 1 1 9k 0.65T0 ⋅ α − ⋅ 1 + 10hmax 1 − 2 = 2 α α 4π γ ref ⋅ H (3) (3)式の左辺は,α の 4 次関数であるが,1 ≤ α ≤ 4 の範囲で α の1次関数 I (α : hmax ) ≡ 12 ( hmax + 0.1) ⋅ (α − 1) により近似できる. この近似を用いると,(3)式は(4)式に変形できる. 0.65T0 3k 1+ α= ⋅ ただし α ≤ 4 2 16π ( hmax + 0.1) γ ref ⋅ H (4) 図 1 多層地盤の 2 層地盤置換と地震時の等価線形応答状態 図 2 工学的基盤および地表で規定される地震荷重(設計用地震動)の加速 度応答スペクトル(減衰定数 5%, 安全限界) 以上より,(1)式と(4)式から,地表変位 Dmax を算定できる.こ の際,地盤の初期固有周期 T0 は,対応する多質点系の固有値解 析から求める 5).また,H-D モデルのパラメタに古山田ら 6)が 整理した値を用いると,(5)式が得られる(ただし, α ≤ 4 ) 25C kT0 0.0028C 2 (5) 1+ ⋅ ⋅ H ⋅ (α − 1) , α = 40 S H 0.0015S ここに,添字 C, S は粘性土および砂質土の地盤を表す.また, f A = min (1.6α T0 , 1) で,図 2(a)において限耐法 3)の応答スペク トルの加速度一定領域を無視した影響を補正する係数である. (b) 地震荷重(設計用地震動)を地表で規定する場合 図 2(b)に示すように,新耐震設計法の層せん断力係数や対応 する換算応答スペクトル 3)の速度一定領域の形状から,地表地 震動の加速度応答スペクトル S AG ( T ) = 7 k T (単位 m/s2:安全 限界の最大速度応答 7 2π 1.1 m/s)と置く.(2)式において −1 S AB ( TE ) ≈ GS 1 ⋅ S AG ( TE ) ( GS 1 :限耐法 3)における地盤の 1 次の 増幅率)と仮定し,地震動レベル k が同じならば地盤の固有周 期の延び α は地震動を工学的基盤で規定した場合と大差ないと 考えると,地表変位 Dmax は(6)式で評価できると推察される. Dmax = f A ⋅ 7 R π 1 Dmax = (5)式 × FS ⋅ ⋅ Z 0 + ⋅ hmax 1 − 2 5 α 2 α (6) ここに, RZ 0 は地盤の初期状態における表層/工学的基盤のイ ンピーダンス比である.また, FS は, GS 1 の信頼性を考慮して 付加した安全率で,図 2(b)や文献 3, 5 を参考に,1.5 とする. A Simplified Method to Evaluate Seismic Ground Displacement for Design of Building Foundations Hiroshi Arai 160514 林・大西研究室 拡大勉強会(第 13 回) 新井 参考資料 3 図 5 提案法および逐次非線形 解析による安全限界の地 表変位(地震荷重を工学 的基盤で規定:等価線形 解析において地盤の最大 せん断ひずみが 2%を超 えた場合) 図 3 国内 114 地盤の表層の厚さ, 平均 S 波速度, 初期固有周期の分布 図 4 提案法および等価線形解析による地盤の地震時固有周期と地表変位 3. 地盤変位の深さ方向分布の算定法 1), 2) 地震動レベルが大きく,安全限界( k = 1 )に近い場合,井澤 ら 7)を参考に,地盤各層の初期 S 波速度 VS 0 i を工学的基盤との インピーダンス比で重み付けした量 VSZi を算定する.VSZi を各層 の S 波速度と見なした多層地盤を基礎固定の多質点系に置換し て,その 1 次の振動モードを地盤変位の深さ方向分布とする. 地震動レベルが小さく,損傷限界( k = 0.2 )に近い場合, 同様にして地盤変位の深さ方向分布を求める. VSZi = VS 0 i と置き, 4. 等価線形解析および逐次非線形解析との比較 国内 114 地点の工学的基盤以浅の地盤(粘性土 65 地点,砂質 土 49 地点)を検討対象とする.全地点の地盤の表層の厚さ,平 均 S 波速度,初期固有周期の分布を図 3 に示す. 各地点の地盤に対して,工学的基盤と地表で図 2 の太実線お よび太点線の地震荷重を規定し,提案法および応答スペクトル とパワスペクトルの相互変換を利用した重複反射理論に基づく 等価線形解析 8), 9)により安全限界と損傷限界の地盤変位を算定し た.ただし,等価線形解析において地盤の最大せん断ひずみが 2%を超えた場合は無効とした.そこで,工学的基盤で規定した 地震荷重(図 2(a)の太点線)に適合する模擬地震動 23 波を作成 し,逐次非線形解析により安全限界の地盤変位を算定した. 図 4 に,提案法および等価線形解析で得られた地盤の地震時 固有周期と地表変位を示す.図から,地震荷重の規定位置・大 *1 建築研究所 構造研究グループ 主任研究員・博士(工学) 図 6 提案法および等価線形解析または逐次非線形解析による安全限界の地 盤変位の深さ方向分布(代表的な 8 地点) きさや土質,最大せん断ひずみ(< 2%)によらず,提案法によ る地盤の地震時固有周期は,等価線形解析の結果とよく対応し ている.また,提案法による地表変位は,等価線形解析の結果 と同等か若干大きめとなる場合が卓越している. 両者の対応は, 既報 1), 2)の結果に比べて大きく改善されており,本報で導入した (5)式の補正係数 fA と(6)式の安全率 FS の有効性が確認される. 図 5 に,等価線形解析で地盤の最大せん断ひずみが 2%を超 えた場合について,提案法および逐次非線形解析で得られた安 全限界の地表変位を示す.両者の対応は,地盤の最大せん断ひ ずみが 2-5%に達する場合もあるが,図 4(c)と同程度に見える. 図 6 に,代表的な 8 地点の解析で得られた安全限界の地盤変 位の深さ方向分布を示す.提案法による地盤変位は,いずれも 等価線形解析および逐次非線形解析の振動モードと概ね整合し ている.以上の結果は,提案法の妥当性を示している. 5. まとめ 建築基礎設計への利用を前提に,単純な四則演算から求まる 地表水平変位と 1 次の振動モードを用いて地盤変位を算定する 方法を示し,その妥当性と有効性を解析的に検証した. 【参考文献】1) 新井:JAEE 大会, P3-4, 2015. 2) 新井:JGS 大会, 2016 (投 稿中). 3) 建築研究所:改正建築基準法の構造関係規定の技術的背景, 2001. 4) Hardin and Drnevich: J. Soil Mech. Found. Div., ASCE, 98(7), 667-692, 1972. 5) 井上ほか:AIJ技報, 16, 107-112, 2010. 6) 古山田ほか:JGS大会, 2077-2078, 2003. 7) 井澤ほか:JGS大会, 77-78, 2015. 8) 岡野, 酒向:AIJ技報, 19, 47-52, 2013. 9) 杉戸ほか:JSCE 論文集, 493/III-27, 49-58, 1994. *1 Senior Research Engineer, Building Research Institute, Dr. Eng.
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