第3回 IPSN 講演会を開催しました

The IPSN Quarterly No.6, August 2011
The IPSN Quarterly
東京都千代田区丸の内 1-7-12 サピアタワー 10F Tel: 03-5288-5401
知的財産戦略ネットワーク株式会社ニュースレター
2011 年夏号(第 6 号)
第3回 IPSN 講演会を開催しました
「知財ファンド」~ライフサイエンス分野の産学官連携の新潮流
ライフサイエンス分野の産学官連携を考える IPSN 講演会が 5 月 24 日、東京ステーションコンファレンスにて
IPSN 秋元浩の司会により開催されました。講演会では、㈱産業革新機構専務取締役の朝倉陽保先生、国立が
ん研究センター理事長特任補佐・弁護士の境田正樹先生、京都大学大学院薬学研究科・最先端創薬研究セ
ンター特定教授の内海潤先生及び日本製薬工業協会理事長の伍藤忠春先生がそれぞれの立場から講演され、
IPSN からはディレクター高島義典がこれまでの活動実績を報告しました。講演会には企業の知的財産、研究開
発、事業開発に携わる方、大学等の産学連携、研究に携わる方など IPSN 会員を含めた約 80 名が参加されまし
た。講演会の模様をご紹介します。⇒次ページ
目
次
第3回 IPSN 講演会を開催しました ............................................ 1
第3回 IPSN 講演会概要 .............................................................. 2
第4回 IPSN 講演会のお知らせ ................................................... 8
第 10 国際バイオ EXPO 出展報告 ................................................ 9
WEB 研究情報リストのご案内 ..................................................... 9
全国イノベーション推進機関ネットワークの紹介 .................... 10
創薬の新しい潮流⑤ ~産学連携本部・知財本部の変容 ............ 13
Information............................................................................... 17
1
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
第3回 IPSN 講演会概要
■産業革新機構の活動概要
株式会社産業革新機構
専務取締役 COO 朝倉 陽保
も大事である。
投資手法として特に重要なことは、ガバナンスと
EXIT のイメージである。PE が強いガバナンスをもち、
コントロールすることによるメリットは、投資先企業は
産業革新機構(以下
非常に速い意思決定ができることである。また、リスク
「INCJ」)は官民共同の
マネーの調達と経営が一元化することでダイナミック
ファンドであるが、構成
な経営ができる。一方で、PE 側(株主)が非常に強い
するメンバーのほとんど
支配力を持つため、利害の対立がある際に株主の意
が民間出身であり、プラ
思が大きく反映されることとなるという留意点がある。
イベートエクイティ(以下
また、PE は、利益追求のために、投資家の企業価値
「PE」)の一つとして活
を向上するという手法だけではなく、ローンの活用や、
動している。PE とは、資
鞘抜きなどの施策を打ち短期的なリターンを追求す
金を仲介する機能の一つで、資金運用者、資金仲介
ることも可能であり、PE は強いサポーターであると同
者がおり、資金が循環し企業や研究開発に投資を実
時にリスクを与える可能性もあることを理解しておか
行している。資金仲介機能には、資本市場や銀行が
なければならない。
あり、また投資ファンドもその一つとして機能を提供し
PE は、欧米ではなくてはならない重要な資金提
ており、その投資ファンドの一つに PE がある。その中
供者として役割を果たしているが、日本における活動
で、PE は資金提供だけではなく、付加価値とコントロ
は、2007 年ごろのピークを越えた後は金額的にも件
ールといった資金提供以外のものを提供している。
数的にも低減してしまっている。また、ベンチャーキャ
一般に、企業活動においてリスクの高い状態と低
ピタルについても同様である。リーマンショックの後欧
い状態があり、資本市場から資金調達を行っている
米では、市場は 2009 年 2010 年には回復しているが、
のは成長・成熟期の安定した状態にある企業である。
日本は回復が遅れており、震災の影響によってまた
一方で、創業期のベンチャー企業や、成熟期を超え、
回復が遠のくと考えられる。投資件数だけではなく、
企業の再編・合併・買収の段階にある企業はリスクが
日本では新規公開も件数が減っており、上場による
高い状況にある。このような状況下では、一般的な資
EXIT も難しくなっている。
本市場からの資金調達が難しいため、ベンチャーキ
日本の場合は定性的な課題もあるが、定量的な
ャピタルやバイアウトといった形で、プライベートエク
課題としてリスクマネーが不足している。資本市場か
イティが資金を提供している。
らの資金提供や間接金融などのリスク耐性の低いマ
PE ファンドは金融の観点だけではなく、技術・法
ネーの提供はあるが、リスク耐性の高いマネーの提
務・会計などの専門知識や企業経営・戦略等の知
供は少ないため、大きなリスクマネーの空白地帯がで
識・経験を駆使して短期間に検討・価値向上を行っ
きてしまっている。INCJ は 2009 年の 7 月にできた官
ていく。PE は投資先の価値向上という観点から、IP
民共同の PE ファンドであり、そのようなリスクマネーの
のようなものも含め資産がどのようなキャッシュフロー
空白地に対し、資金の提供を行っていく。
を生むかを考え投資活動を行っている。さらに産業
日本企業は新技術が生まれた時にはシェアが高
構造の健全化のためには、必要な合従連衡を行い、
いにもかかわらず、市場が拡大するにつれてシェア
また、不必要なリスクマネーは提供しないという判断
が低減してきてしまう。逆の見方をすれば、ニッチマ
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The IPSN Quarterly No.6, August 2011
ーケットでは高いシェアを持っているともいえるが、日
ていく。それ以外には、カーブアウトや大企業同士の
本企業がシェアを落としてしまうスピードが年々早くな
提携や、海外の事業買収等により、日本の技術を使
り、先行者利益が縮んでしまっているのは大きな問題
って外貨を稼ぐような案件も投資対象案件として取り
である。
組んでいる。
株式の時価総額について、国内の製造業だけ見
LSIP は、日本最初の知財ファンドで実験的な部
るとトヨタ自動車約 11 兆円(トヨタ自動車)、キヤノン
分もあるが非常に重要なものの一つであると考えて
約 5 兆円、武田薬品工業約 3 兆円程度であり、日立・
いる。また、INCJ のバイオベンチャー案件としては、
東芝・パナソニックなどの電気メーカーは任天堂より
アネロファーマに対し投資を実行しただけではなく、
時価総額が小さいのが現状である。株式市場におい
これ以外にもいくつかのバイオ案件を検討しており、
てはより資本効率が大きい企業が評価され、時価総
その中には、大企業では事業化されないパイプライ
額の高い企業が有利な状況にある。グローバルに見
ンを切り出してもらうようなスキームも含まれている。ラ
るとアップル(米)22 兆円、ファイザー(米)18 兆円程
イフサイエンス以外の分野では、アルプス電気のノン
度の時価総額があり、グローバル企業は時価総額で
コアと決まった技術を切り出し、リスクマネーを INCJ
10 兆円、少なくとも 5 兆円規模がほしい状況にあるの
が投入し、カーブアウトという形で新会社を設立した。
ではないか。
それ以外にも、日本電子のノンコア事業のカーブア
日本は垂直統合型の企業が多く、その構造が日
ウトに対する支援も実施している。
本を支えてきた部分はあるが、自前以外のシーズを
知財については、日本の大学・研究機関の特許
いかに取り入れるかという点も大事である。日系企業
は産業化を見据えていないため、事業に応用してい
は他社の開発したものの導入があまり得意ではない
くのは難しいのが現実である。欧米においては大学
が、そのような柔軟性もますます求められていくだろう。
そのものが営利機関的な側面を持ち活動をしている
これまでは、技術、知財、人材が流動しないので死
ので、日本の現状に比べ、ビジネス志向が強く特許
蔵されてしまっているが、他の企業、産業で、それら
収入に直接繋がっている部分も大きい。
の技術、知財、人材は大いに役に立つ可能性があり、
流動化を進めることが重要である。
LSIP 等の知財ファンドを通じて知財の流動化や
人材の流動化をしたいと考えている。知財を評価す
INCJ は約 9,000 億円の投資原資を持っており、
る際に、知財そのものだけではなく、バリューアップや
PE の手法を用いて投資先の価値向上を行い、社会
バンドリングにより総合的に知財価値向上を行うこと
全体の流動性を上げることが重要だと考えている。ま
により、EXIT が可能かの評価も行っている。また、フ
た、INCJ の運営期間が 15 年という時限組織になって
ァンド形式にすることにより必然的に EXIT を見据えな
おり、15 年で投資先に対して何ができるのか、何をし
ければならない形になっている。
たいのか、EXIT のイメージを持って投資を行ってい
知財ファンドに関しては、日本だけではなく、イン
る。投資先にも、資金の受け入れに際し、同様に考え
テレクチュアルベンチャーズやアルナイラムのようなも
てもらっている。INCJ は投資先の事業価値向上が目
のもあり、そのような機能をうまく産業として活用してき
的であり、ローンの活用や鞘抜きなどといったことは
ている。また、欧州にも国が資金提供している知財フ
実施せず、事業価値向上による収益にフォーカスし
ァンドがあり、韓国でも同様のファンドが立ちあがった。
ている。
日本でも日本の企業構造に合致した知財ファンドを
投資対象としては、LSIP を含めた知財ファンドも
形成したいと考えている。
INCJ のミッションの一つであり、国内に死蔵されてい
朝倉陽保氏経歴:
る知財を対象としている。また、ベンチャー企業への
1984 年 4 月
支援として、十分なリスクマネーを投じ、大企業との提
び情報産業グループにおいて営業、事業開発、事業投資に
三菱商事株式会社入社。機械グループおよ
携を含め将来に技術が生かされるような構造を考え
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The IPSN Quarterly No.6, August 2011
エイパックス・パートナーズ(Apax
重要課題は、ルールメーキング、ナショナルプラットフ
Partners)の日本進出に参画。情報通信、技術分野の投資
ォームの創設、広報戦略および事業化支援である。
を主導。2001 年 2 月
カーライル・グループ(The Carlyle
また、知的資産に関わる重要課題は、特許法の一部
Group)のマネージングディレクターに就任。日本を対象
改正の検討およびナショナル知的資産戦略センター
とするバイアウト部門の投資責任者およびグロースキャ
創立である。
従事。1999 年 5 月
株式会社産
医療イノベーションに関わる知的資産分野におい
業革新機構 専務取締役 COO 就任。投資活動全般を統括。
て研究機関側の問題点は、①大学知的財産部と
1984 年 3 月
TLO との業務および責任分担が曖昧、②技術につ
ピタル部門の日本代表を歴任。2009 年 7 月
慶應義塾大学工学部卒業、1994 年 6 月
ハ
いて目利き力のある人材不足、知財に関するリーガ
ーバード大学 MBA 修了。
ルマター(ライセンス交渉、紛争処理)に対応できる
■医療イノベーションの今後の方向性について
国立がん研究センター
理事長特任補佐 弁護士 境田 正樹
人材不足などである。その解決に向けて、研究機関
ごとに営業力・マーケチィング能力・目利き力のある
人材の雇用を促進することはもとより、さらに各研究
機関の産学連携本部(知的財産部)と TLO が連携な
現在、日本における医薬
いし共同して「知的資産センター」の創立も検討すべ
品・医療機器はいずれも
きである。
輸入超過である。昨年の
このような医療イノベーションの施策を背景として、
医薬品の輸入額は輸出額
国立がん研究センターでは 2011 年 1 月にセンター内
の 13 倍ほどの約 2 兆円で
にナショナルイノベーション推進室を設置し、また、医
あり、医療機器の輸入額
療イノベーションに関わる主要大学と 6 ナショナルセ
は輸出額の 2.6 倍ほどの
ンターとの連携構想を積極的に推進している。医療
約1,075 億円である。
イノベーションのための連携構想の中心は、医療現
このように医療分野において、日本企業の国際競
場においてイノベーションを生み出す協同組織(プラ
争力が失われている原因は、政府、産業界、アカデミ
ットフォーム)の創立であり、具体的には「個別化医療
アのそれぞれにおいて存在すると思われる。
開発プラットフォーム」、「創薬プラットフォーム」、「知
その対策の一環として、政府は医療イノベーション
的財産権戦略プラットフォーム」などの構築を目指し
を促進し、国際競争力の高い関連産業の育成とその
ている。
成果による国民の医療・健康水準の向上を目指すた
境田正樹氏経歴:
め本年 1 月に「医療イノベーション推進室」を内閣官
東京大学法学部出身、弁護士(第二東京弁護士会所属)
房内に設置した。推進室の体制は、産学官の人材か
(主な現在の公的活動)
らなるオールジャパンの組織であり、6 つのワーキン
東北大学客員教授、内閣官房医療イノベーション推進室
グチーム(医薬品、医療機器、再生医療、個別化医
知的資産ワーキングチーム委員、個別化医療ワーキングチ
療、レギュラトリー・サイエンス、知的資産)からなる。
ーム委員、
国際競争力のある医薬品・医療機器・再生医療など
大阪大学臨床医工学融合研究教育センター招へい教授
を生み出せる医療イノベーションを興すこと、優れた
内閣府独立行政法人ガバナンス検討チーム委員
研究成果を生かした世界に通用する技術の実現化
を目指すこと、研究開発の基礎から実用化までの切
れ目のない研究開発費の投入や研究基盤の整備に
取り組むことをその業務目的としている。
特に医薬品、医療機器、再生医療、個別化医療の
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The IPSN Quarterly No.6, August 2011
■イノベーション創出のための「学」の新しい
プラットフォーム
京都大学大学院薬学研究科・最先端創薬研
究センター 特定教授 内海 潤
は出口の事業や製品から想定して必要な特許を作っ
ていくのである。
大学から特許出願する場合は、革新的基礎発明
からラジカル・イノベーションを生む可能性があるの
で、基礎研究成果から広い出口を想定し、強い基本
国立大学は法人化に
より、「運営」から「経営」
へと質的変化が生じて
特許を創出することが重要である。応用特許や後続
特許は企業任せでもよいと考える。
大学の共同研究と委託研究はいずれも増加傾向
いる。「経営」、すなわち、
にあり、ライフサイエンス分野が多いのが特徴的であ
目的を達成するために、
る。このうち、企業単独では完遂できない創薬研究こ
継続的・計画的に意思
そ、産学連携が必須であり、その「真骨頂」であると考
決定を行って実行に移
える。医療現場のニーズ把握・臨床研究・治験は企
し、事業を管理・遂行することを行うため、主に次の 4
業単独では不可能であり、大学臨床部門との連携が
つの施策が新たに導入された。
必須となる。医学分野の産学連携は同時に最新の実
①経営協議会の設置、財務情報の作成・公開
用化技術を医療に提供することができる。例えば、先
②中期目標・中期計画の策定・公開
端的ゲノム解析技術は臨床で個別化医療や疾患リス
③知的財産の積極的な創出と活用
ク評価で大きく役立っている。
④社会連携・産学連携の組織的推進
大学特許発明には 3 つの活用パターン:①単純ラ
大学の特許出願件数は全出願件数(約 35~40 万
イセンス型(単純技術移転)、②共同研究型(複合的
件)の 2.5%程度であり、機関別内訳は、おおむね国
技術移転)、③大学発ベンチャー型(欧米に多い)が
立大:公立大:私立大=7:1:2 である。大学特許の外
あり、後者ほどリターンが大きい傾向がある。うまく活
国出願率は国内の平均 PCT 出願率(約 8%)に比べ
用している欧州の事例を 2 つ挙げてみたい。
て 25%程度と高い。医薬関連特許でいわゆる「30 条
適用」出願は 30%程度である。
ドイツの Max-Planck 協会/研究所は研究員約 1 万
人(ノーベル賞受賞者 17 名)、年間予算 13 億ユーロ
大学の特許権実施件数は 2003 年以降増加してい
の公的研究機関であり、生物・医学、化学・物理学、
るが、実施料収入は頭打ちの傾向である。平均ライ
社会学などの 80 の研究所を擁している。特許出願件
センス率は 36.9%と高いが、実施料平均単価は 2005
数は年間 80~100 件で研究者 100 人あたり 1 件しか
年の 50 万円から 2009 年は 16 万円と減少している。
特許を出願していないが、累積平均ライセンス率は
大学の研究の特徴としては「課題分析型」が多く、
58%であり、高品質の特許を作っているといえる。知
「発明」より「発見」が多くなる。しかし、深い分析から
財管理・TLO 部門の Max-Planck Innovations はスピ
の「パラダイムシフト的発見」があり、革新的基礎研究
ンオフ企業 92 社を設立し、150 特許をライセンスして、
成果から次世代新技術が発明として創出される期待
年間のライセンス収入は 0.1~0.2 億ユーロという。
がある。
もうひとつの事例は英国の IP group という企業で、
大学と企業の特許アプローチには以下の違いがあ
Oxford 大など 10 国立大学の発明の事業化をインキ
る。大学では学問のための研究を実施しており、大
ュベートしている。経営陣は金融と技術コンサルタン
学の特許は研究からのアプローチを行っているため
ト出身で、100 億円規模の自前の研究ファンドを持ち、
出口が(どうしても)不明確である。他方、企業では事
将来性のある事業分野を積極支援して(医薬・バイオ
業のための研究を実施しており、特許は事業からの
16%)、事業化まで面倒を看て投資を回収する手法
アプローチを行っているため出口が明確である。す
を採っているという。成功確率は、評価 60 件→支援 6
なわち、大学は入口の研究から特許を作るが、企業
件→事業自立 2 件で 3%程度とのことであるが、総資
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The IPSN Quarterly No.6, August 2011
産は 5 年間で 204M ポンド(2005 年)から 300M ポンド
研究開発費の税額控除の恩恵が大きく、法人税率が
(2009 年)に拡大しているという。
5%引き下げられても研究開発税制が廃止されると減
欧州の事例も参考にして、以上から導き出される、
税の効果を享受することができない。今回は、研究開
我が国における「学」からのグローバルなイノベーショ
発税制は基本的には継続されるが、官民対話は、こ
ン創出の課題と対応とは、①優れた研究成果を得る
のようなことについて意見交換をできる貴重な場であ
ために「学」はさらに先端的研究を深化させる、②連
る。研究開発税制に関連して、英国で知的財産権を
携システムは欧米流と日本流のハイブリッド方式で整
優遇する観点から採用されている「Patent box 制度」
備する、③出口指向の産学官連携プラットフォームの
は、注目しておくことが必要と考えている。
創成と実施を行う、とまとめることができよう。
知財に関連する話題として、昨年 10 月に開催され
大学側からの事業創出には限界がある。研究成果
た生物多様性条約に関連した遺伝資源の扱いに関
は実用化されてこそ最高の価値がある。企業も連携
する「名古屋議定書」について少し触れておく。この
研究をもっと大学に働きかけることが重要である。科
名古屋議定書では、主として遺伝資源の提供元とな
学と技術のイノベーションのためには、こうした意識の
る途上国と、遺伝資源の利用国となる先進国との間
イノベーションを先に行うことも必要であろう。
の利害調整が一つの目的となっていた。「遺伝資源」
内海潤氏経歴:
利用の薬品や食品等の成果についての原産国への
1979 年、北海道大学大学院獣医学研究科修士課程修了。
公平な分配について、「利益配分の過去への遡及適
同年、東レ(株)入社。同社基礎研究所主任研究員、医薬
用」、「利益配分の対象の派生物への拡大」、「チェッ
臨床開発部主幹、研究開発企画部バイオメディカル担当部
クポイントの設置」などの論点について、遺伝資源提
長として、医薬研究開発に 28 年間、うち産学官連携に 15
供国と利用国との対立は大きかったが、最終日に議
年間携わる。創薬事例として、
「κ作動性難治性そう痒症
長案により妥結し、「名古屋議定書」として採択された。
治療薬・塩酸ナルフラフィンの創出」
(平成 22 年度日本
条文の記述が抽象的なため、今後の実行過程の中
薬学会創薬科学賞受賞)
。2006~09 年、北海道大学教授/
で対応して行く必要がある。
知的財産部長(知的財産本部/産学連携本部)
、2010 年よ
これに関連して、世界保健機構(WHO)でパンデミ
り京都大学大学院特定教授(薬学研究科・最先端創薬研究
ックなインフルエンザ流行時のウイルス提供への利益
センター)
。
配分の原案がまとまった。これによれば、提供された
ウイルスを利用するワクチン・抗ウイルス薬メーカーは
■製薬産業を取り巻く諸課題について
日本製薬工業協会
理事長 伍藤 忠春
政府のトップと製薬企業のトップが医薬品の研究開
出するほか、①ワクチンの製造量の 5~20%の無償
or 低額提供、②抗ウイルス薬のX回分の無償 or 低額
提供、③必要な製造技術、特許等の無償許諾 or 低
発の基盤整備に関連した
額ランセイス、のうち2項目を選択することとなる。
政策について意見交換を
伍藤忠春氏経歴:
行う「官民対話」は、民主
昭和 48 年 4 月厚生入省、平成 6 年 7 月 厚生省薬務局経済
党への政権交代以降途絶
課長、11 年 8 月 厚生省 大臣官房人事課長、13 年 1 月 厚
えていたが、近々開催され
生労働省大臣官房審議官(老健・健康担当)、14 年 8 月 社
る見込みとなっている。東
会保険庁次長、15 年 8 月 厚生労働省 雇用均等・児童家庭
北大震災への対応で、先
局長、17 年 11 月 財団法人長寿社会開発センター 理事長、
行きは不透明であるが。
法人税の引き下げに関連して、研究開発費の税
額控除の特例の扱いが問題になった。製薬企業は
6
WHOネットワークの運営費(3000 万ドル程度)を拠
22 年 9 月 日本製薬工業協会 理事長
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
■IPSN と知財ファンド LSIP の活動状況
知的財産戦略ネットワーク㈱(IPSN)
ディレクター 高島 義典
そのうちの約 3 割については、追加のデータが得ら
れるのを待っているところである。残念ながらライセン
スの成果は未だ出ていないが、共同研究などの提携
の話が数件進行中である。
IPSN は 2009 年 10 月
一方、IPSN では、提供した個々の案件に関し、企
から本格的なネットワーク
業にヒアリングやアンケート調査を実施し、その結果
事業を開始したが、本年
を大学・研究機関に提供し、情報のバリューアップを
4 月までの約 1 年半の活
図った。多くの会員は、新標的分子の紹介を希望し、
動を総括し、ネットワーク
疾患動物モデルなどでのデータがあるものを望んで
に参画いただいている会
いる。
員のさらなるご支援を仰ぎたいと望んでいる。
IPSN は、国内外の大学・研究機関、研究開発型企
また、会員以外の企業への情報提供も行ったが、
今後は、新たな賛助会員制度と Web を利用した情報
業およびベンチャー企業などを中心に知的財産戦
提供を行うこととしている。
略に関するネットワークを主宰し、わが国のライフサイ
3.マッチング支援
エンス分野の研究成果をワールドワイドな知財となし
大学・研究機関及び TLO へのライセンスに関する
知財価値のレベルアップや事業化の推進に注力して
25 件のコンサルテーションを実施した。さらに、大学
いる。また、わが国初の知財ファンド「ライフサイエン
発ベンチャーへのライセンス契約のフレームワーク、
ス知財ファンド LSIP(エルシップ)」の全面的な運営を
契約条件、対価への助言や交渉等の個別支援を約
通じて、大学・公的研究機関などの埋もれがちな基
10 件実施した。
礎的・基盤的研究の知的財産の活用や実用化を推
Ⅱ.知財サポート事業
進している。
1.知財コンサルテーション
IPSN の事業は、Ⅰ.ネットワーク会員事業、Ⅱ.知財
大学・研究機関に対し 28 件の知財コンサルテーシ
サポート事業、Ⅲ.知財インキュベーション事業、Ⅳ.
ョンを実施した。知財戦略の策定、知財強化策など
LSIP ファンド運営事業の4つに分けられる。
の他、特許庁からの指令への対策案の策定など多
Ⅰ.ネットワーク会員事業
岐にわたる助言を行った。
1.ネットワーク参画会員
2.知財価値評価/知財部アウトソース
ネットワーク参画会員数も優先会員、賛助会員から
ベンチャー企業や投資家の依頼で、ベンチャー
なる企業会員も 25 社におよび、大学・研究機関から
企業の資金調達や投資の判断のための知財評価を
なる連携会員も 60 機関(海外研究機関)を超え IPSN
4 件実施した。また、知財部門を持たない企業に対し
事業の基盤が確固たるものになりつつある。
知財部アウトソースの形で出願戦略や出願に関して
2.研究情報提供による大学・研究機関と研究開発
全般的な業務支援を行った。
型企業とのマッチング
3.知財セミナー
2010 年 4 月までに、5 回の大学・研究機関の情報
文科省 iPS 研究ネットワークの依頼で 14 回の出張セ
提供を行い、95 件の案件を企業に紹介した。1 万件
ミナー及び連携会員における研究員への啓発のた
以上に及ぶ研究情報、知財情報から IPSN で選択し
めの出張セミナーを 4 回実施した。また、IPSN 主催
たもの、各機関からのご提供によるものなどを企業へ
の外部専門家による講演会を 2 回開催した。
紹介した。提供情報の領域・分野はがん、アルツハイ
4.その他の知財活動
マー、メタボリックシンドロームの順で多かったが、難
日本製薬工業協会、バイオインダストリー協会、日
病に対するものも幾つかあった。提供情報の約 7 割
本弁理士会、medU-net 及び IPSN からなる「ライフサ
を超える案件に対し、追加情報提供の希望があり、
イエンス知財合同検討会」を定期的に開催し、知財
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The IPSN Quarterly No.6, August 2011
動向に関する情報交換・情報の発信を行った。
また、IPSN として「知的財産推進計画 2011」の策
以上のように、IPSN は、大学・研究機関と企業から
なるグローバルネットワークを通じ、大学・研究機関の
定に向けた意見書の提出も行った。
先端技術研究の知財価値の向上や、企業における
Ⅲ.知財インキュベーション
事業化の促進、さらには知財人材の育成・確保を目
IPSN では、優れた研究で知財価値を向上させるた
めの出願費用の援助や知財補強のための研究費の
指した事業を大きく展開し、社会的な貢献をしたいと
強く望んでいる。
援助を行っている。IPSN は援助の見返りとして、一定
期間の独占的なライセンス権の許諾を受ける。現在、
高島義典氏経歴:
1 件の案件が進行中である。
1971 年
Ⅳ.LSIP ファンドの運営
卒。住友化学入社後、研究所で医薬合成研究に従事、本社
東京大学農学部農芸化学科天然物有機化学教室
LSIP ファンドは、本邦初のファンドで、がん、アルツ
技術部を経て、1983 年よりニューヨークで Sumitomo
ハイマー、ES/幹細胞、バイオマーカーの 4 領域を対
Chemical America Inc.(N.Y.)技術駐在員として勤務、在
象に、大学・研究機関で死蔵されている特許を集め、
籍中に住友製薬(株)に移籍、1988 年に帰国後は主に事業
要素技術などのクライテリアごとにバンドリングし、必
企画、海外開発体制の構築、技術導出入、ライセンス契約、
要に応じ周辺特許のライセンスを受け価値の高い特
アライアンスマネジメントを所轄、化学研究所長、ライセ
許を集約しパッケージとして企業へライセンスする。
ンス部長、理事等を歴任、2007 年 6 月に大日本住友製薬
現在、13 パテントファミリーについて、大学・研究機関
を退職後、ベンチャー企業を経て 2009 年 4 月より製薬協
からの特許譲渡や実施許諾を受けている。
知財支援プロジェクトメンバーとして iPS 細胞関連研究
また、上記 4 領域において、知財強化のための出
の知財支援担当、2009 年 11 月より現職。
願費用や研究費の援助を行う知財インキュベーショ
ンも 3 件実施している。
第4回 IPSN 講演会のお知らせ
10 月 6 日(木)、バイオジャパン 2011 会場内にて第 4 回講演会を開催します。今回のテーマは、「真の知財
立国の実現に向けて~実効性ある知的財産戦略の提案」です。
モデレータに山崎達美先生(バイオインダストリー協会運営会議議長/中外製薬副社長)、講演者に、金澤一
郎先生(前日本学術会議会長/東京大学名誉教授)及び野木森雅郁先生(日本製薬工業協会副会長/アス
テラス製薬会長)をお迎えします。IPSN からは秋元浩(代表取締役社長)が弊社の活動報告と知的財産戦略へ
の提案をさせていただきます。皆様のご参加をお待ちしています。
日 時:2011 年 10 月 6 日(木)15:00~16:30
場 所:パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい・バイオジャパン 2011 会場 F201)
http://www.pacifico.co.jp/visitor/accessmap.html
お申し込みは、バイオジャパン 2011 講演会申込サイトからお願い致します。
セミナー申込 URL:https://www.biojapan2011.com/user/user_login.php
8
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
第 10 回国際バイオ EXPO 出展報告
2011 年 6 月 29 日から 7 月 1 日まで 3 日間にわたって開催された「第 10 回国際バイオ EXPO」に出展しまし
た。暑さが厳しい中での開催でしたが、150 名を越える方々にご来場いただき、盛況のうちに終えることができま
した。ご来場くださいました皆様に心より御礼申し上げます。
■ブースでは
IPSN をこの機会に知ったという来場者の中には、「知財サポートをしてくれるということは、IPSN は特許事務
所?」という疑問を持った方もいました。IPSN は特許事務所が多く手掛ける特許出願や特許調査を行うのでは
なく、事業化を見据えた知財戦略の立案、実践のた
めのサポート、他機関や企業とのマッチングに向け
た契約書作成・条件提案・交渉戦略立案を支援し、
場合によっては交渉の場に専門スタッフが同席する
等、お客様と一体となってサポートするところに特長
があることを説明しました。
■プライベートセミナーでは
会期中に開催したプライベートセミナーでは、「研究成
果の事業化を目指して~IPSN と LSIP の活用」をテーマに、
IPSN シニアマネージャーの小此木恒夫が講演しました。
ここでは、IPSN を介して企業へ提供した大学等の研究・
知財情報の研究内容の分析、情報を受け取った企業の
反応等につき、詳しく説明しました。
講演資料は、IPSN ホームページに掲載しています。
http://www.ipsn.co.jp/110629BioEXPO.pdf
WEB 研究情報リストのご案内
IPSN では、本年 6 月からウェブサイト上に大学等から入手し、企業へ提供した研究・知財情報をリスト化して掲
載しています(随時更新)。これらの情報は大学等から得られた多くの情報の中から企業ニーズがあると見込ん
で選びぬかれた価値のある情報です。是非ご覧ください。
Check! ◆研究情報リスト
http://www.ipsn.co.jp/research/article/index.html
ご関心のある案件がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
Tel: 03-5288-5401
Email: [email protected] 担当:金野(こんの)
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The IPSN Quarterly No.6, August 2011
寄稿
全国イノベーション推進機関ネットワークの紹介
全国イノベーション推進機関ネットワーク プロジェクト統括 前田
裕子
今回は、我が国のイノベーション創出による我が国産業の活力増強を目的として平成 21 年 4 月に設立された
「全国イノベーション推進機関ネットワーク」の活動概要について、当事務局プロジェクト総括の前田裕子先生に
ご寄稿いただきました。
1.はじめに
全国イノベーション推進機関ネットワーク
(INNOVATION INITIATIVE NETWORK JAPAN、
略称:イノベーションネット)は、平成 21 年 4 月に設立
情報発信のプラットフォームとしてコンテンツ強化を
図っています。
(2)企業つながり検索エンジン「smeet」の運営・管理
東大政策ビジョン研究センターが開発した、企業間
され、イノベーション政策を推進している文部科学省、
のつながり先候補の検索や選定をサポートする検索
経済産業省の両省がバックアップし、関係する独立
サイトの運営管理を行っています。平成 23 年 4 月より
行政法人が事業運営に深く関わる幹事機関となり、
イノベーションネットのエンジンとして公開、既に 1 万
我が国イノベーション推進の横断的な組織として活
3 千社が登録しています。データベースの検索方法
動を開始しました。さらに、平成 23 年には農林水産
はきわめてシンプルで分かりやすく、企業名での検
省も参画し、日本産業界の技術分野を網羅できる体
索と技術・製品での検索で、キーワード入力だけで該
制を構築しました。
当する企業の一覧が表示されます。
イノベーションネットは、全国のイノベーションに関
Check! ◆企業つながり検索エンジン「smeet」
する情報を共有することをベースにして、情報提供、
http://www.ipr-ctr.t.u-tokyo.ac.jp/smeet_dev/
データベース構築、人材育成、販路開拓、金融機関
(3)全国的ネットワークとの連携
との連携、研究機関のシーズ移転、産学官連携コー
「知財総合支援窓口」:特許庁の地方における窓口
ディネーターのネットワーク構築さらには表彰事業
で、中小企業等の知財に関する課題をワンストップで
等々、多岐にわたる活動を通じて、日本の産業、とく
解決。47 都道府県の自治体や技術移転機関に設置
に中小企業の底上げを図り、地域イノベーション創出
し、窓口機関の多くはイノベーションネットと連携体制
を加速して我が国産業の活力増強を目的とした機関
を構築しています。
です。
「金融連携ソリューションプログラム」:全国地方銀行
平成 22 年には全国地方銀行協会と包括協定を結
協会と協定を結び、地銀と連携して地域の産学官金
び、地域金融機関との連携体制を強化し、本年度に
連携活動を支援する体制を構築しました。地銀の顧
農林水産省がイノベーションネット支援に参画するこ
客である技術的支援を要請する地域の中小企業とイ
とで、農商工連携やアグリバイオ分野でのイノベーシ
ノベーションネットの会員が有する技術情報、研究者
ョンが促進するものと期待しています。
情報とを結びつけることにより、中小企業における新
技術、新産業の活動を支援するものです。
2.イノベーションネットの活動(平成 23 年度)
2-2.地域イノベーション促進事業
2-1.ネットワーク基盤強化事業
(1)全国ネットワークを活用したイノベーション戦略展
(1)地域イノベーション情報データベース事業
開促進事業(経済産業省委託事業)
地域イノベーション情報データベースで、会員間の
全国で地域の強みを活かした成長性の高い新産
情報交流や企業間マッチングを促進するとともに地
業・新事業創出を促進するための「ツール」および
域で取り組んでいるイノベーションに関する総合的な
「チーム」構成にあたって不足する支援機能や支援
10
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
人材の紹介を行う全国的な基盤作りを実施し、それ
見える関係を構築して相互の信頼関係のもとで、イノ
によって新事業創出による地域経済活性化を促進し
ベーションを進めることが重要と考えます。
ます。主な事業は下記のとおりです。
(2)全国コーディネート活動ネットワーク構築・強化事
① 地域間連携等促進事業:他地域にても展開でき
業(文部科学省委託事業)
る事業モデルを全国から 9 モデルを選定し、実証しま
産学官連携コーディネーター(以下 CD という)の全
す。他地域での導入に対する課題や手法について
国的なネットワークを構築し、各 CD の活動を促進す
明らかにし、次年度以降地域に導入し、新産業創出
ると共に地域を越えた広域的な CD の連携強化によ
育成を支援します。
り、我が国の産学官連携活動の持続可能な体制整
備および質的向上を図ります。
類型モデル
モデル事業実施予定地域
復興支援
いわき
産学官金連携
兵庫
アジア展開支援
首都圏、福岡
地域経済の発展
沖縄、静岡、四国、京都、札幌
主な事業は下記のとおりです。
① 全国規模の会議開催:年 1 回実施
② 地域規模の会議開催:全国を北海道・東北、関
東・甲信越、中部、関西、中国・四国、九州・沖縄の 6
地域に分け、それぞれの地域で年 3 回の会議、合計
18 会議を開催。
② 先進事例・成功事例の抽出、評価及び普及のた
めの表彰事業:全国の優れた地域イノベーション事
例の中から、地域において新しい事業を起こし、地域
の活性化に寄与した支援プロジェクトを抽出、評価し、
これら事業の普及促進を図るため、表彰事業を実施
します。賞は、地域イノベーション大賞と優秀賞を設
けています。
③ OB 人材等支援人材活用のためのデータベース
構築事業:地域企業がイノベーションを創出し、競争
力を構築するためには経験豊かな企業 OB 人材の知
識やノウハウが必要です。それらの人材を有効に活
用するためには、支援人材のデータベースの共有化
が必要です。
OB 人材の専門分野や技能、経歴、過去の事例な
ど可能な限り詳細な情報を収集してデータベース化
します。本データベースはイノベーション創出に関わ
るすべての関係者が日常的にアクセスし、情報収集
や意見交換を行うプラットフォームとして構築します。
④ 地域フォーラムの開催等によるノウハウ、情報の
共有化、ネットワーク化事業:全国 4 地域でその地域
のイノベーションに関連したテーマでフォーラムを開
催します。テーマは地域の関心の高いテーマで、地
域産品の販路拡大、海外販路展開、農商工連携等
を想定しています。本フォーラムを通じて地域の支援
機関職員やコーディネーターが情報を共有し、顔の
地域会議においては、文部科学省、経済産業省
の施策説明や各地、各大学の産学官連携活動の事
例や現状紹介を行った後、出席者全員による意見交
換会を行っています。平成 23 年度の意見交換会で
は、震災復興に向けての CD の役割、CD に必要な
資質、能力について議論を進めています。
③ 有識者会議:全国規模の会議、地域規模の会議
の方向性を明確にするために、産学官連携活動に
造詣の深い有識者 3 名と 6 地域の CD の代表者によ
る会議を地域規模、全国規模の会議前後に年 5 回
実施します。
④ 若手人材発掘のための座談会:若手 CD の活力
向上と若手同士のネットワーク構築、さらには産学官
連携分野への若手の参画を目的に座談会を実施し
ます。産と学の双方で活躍し、実績を挙げている若
手 CD を中心に、この分野で活動を開始して間もない
新人やこれからこの分野で活動しようと考えている若
手人材が車座になって質疑応答や意見交換する場
を設けます。規模は 30 人ほどの方に参加いただき、
平成 23 年 9 月 20 日(火)に実施します。
⑤ 事例集の作成:成功事例と CD の人物像にスポッ
トをあてる。CD の人物像にスポットをあてることにより、
各人のコーディネート活動のノウハウ共有や CD を目
指す人材の指針になることを目的としています。
⑥ ウェブサイト(全国コーディネート活動ネットワーク)
11
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
の運営
Check! ◆http://www.sangakukanrenkei.jp/f/
本事業で行う各種イベントの案内、現在本事業に
登録している 550 名余の CD のデータベース、自由
ん。こうした専門人材育成のための実践的研修カリキ
ュラムやその普及方策について検討し、地域におけ
る新産業創出へ資する人材育成のためのカリキュラ
ム案を作成します。
に記載可能な掲示板や ML を充実し、情報発信、
情報共有を密にしています。
(3)産業技術総合研究所(産総研)の技術解説集作
成(産業技術総合研究所委託事業)
3.まとめ
東日本大震災によりイノベーションによる地域産業
活性化の必要性はますます高まっています。とくに学
産総研特許のうち中小企業で利用可能と思われる
が抱える貴重な研究開発シーズが事業化の日の目
50 特許を抽出し、中小企業や一般の人にも分かりや
を見ずに埋もれているケースが多く、これら技術を地
すく技術を解説したシーズ集を作成します。
域社会に送り出し、事業化することは地域産業活性
産総研特許 13,000 件の中から 150 件を選定し、3
化とひいては日本産業の回復へも繋がります。その
地域(千葉、京都、福岡)のイノベーションネット会員
ために産と学のネットワークは重要で、そのネットワー
機関の産学官連携に携わるコーディネーター各 2 名
クを構築、強化、活用するためにイノベーションネット
にその評価をお願いしました。その評価結果を基に
の存在があります。
解説すべき案件 50 件を選定しました。また、各地の
イノベーションネットでは、各種データベースやネッ
企業 45 社にもヒアリングを実施し、各技術に対する評
トワークを順次整備、強化し、会員にとって有用な情
価をお願いしました。これらの評価結果は今後の研
報源として多くの方に活用していただいています。ま
究開発の参考となるよう研究者にフィードバックして
た、各地の技術移転機関、大学さらには金融機関と
います。内容は、一般向け平易解説ページが 2 ペー
の連携も強化しているので、産学官金連携の多くの
ジ、詳細解説ページが 2 ページ、特許請求項紹介ペ
課題に対応できる体制にあります。
ージが 2 ページの合計 6 ページで構成した解説集で
東日本大震災で多くの企業、研究機関が被害を
す。
受け、このような時期だからこそ、イノベーションネット
(4)販路開拓事業
が有するネットワークを有効に活用し、支援すること
全国商工会連合会が実施する「新事業創出・販路
が重要となります。現在被災地におけるニーズを把
開拓促進ネットワーク整備・活用等事業」に協力し、
握し、対応を検討していますが、他に支援ニーズが
平成 22 年度は 20 件の具体的商品についての販路
あれば是非情報提供をいただきたいです。地道な支
開拓支援を行いました。このうち 11 件は具体的販路
援活動を数多く立ち上げ、それぞれが少しでも産業
を開拓できました。本年度はさらに支援件数を拡大し
復興の援けとなれば、それが近い将来、日本の国力
ます。
回復につながり、日本の底力を世に知らしめることに
(5)専門人材の確保・育成のための実践的研修カリ
なるのではないでしょうか。それが、イノベーションネ
キュラム開発及び普及方策の検討事業
ットの責務だと考えています。(了)
高度で多岐にわたるニーズに対応できる支援人材
や金融機関との連携に対応できる人材等、今後の産
学官金連携活動に資する人材は十分とはいえませ
全国イノベーション推進機関ネットワーク事務局
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台 1-8-11 東京 YWCA 会館 8F (財)日本立地センター内
Tel 03-3518-8973 Fax 03-3518-8970 Email : [email protected]
http://www.innovation-net.jp/info/index.html
12
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
創薬の新しい潮流⑤
~産学連携本部・知財本部の変容
知的財産戦略ネットワーク㈱ 取締役 長井 省三
大学の産学連携本部・知財本部のあり方に関し、最近自らが変容する大学が徐々に出現し、新潮流が形成さ
れつつあります。ライフサイエンス分野、特に創薬分野に関係する大学の産学連携本部・知財本部も変容し、本
来の機能を発揮することが期待されます。
特に、ライフサイエンス分野の大学の産学連携本部・知財本部の方々は、研究している先生の知財に関する
理解が乏しく苦労している、地方大学における産学連携が上手く行かない、その他に特許に関する様々な悩み
等を様々な場面で発信しています。例えば、「学会発表/論文発表を重視し、特許を軽視している」、「研究論
文と異なり研究成果の報告書として特許は評価されていない」、「せっかく特許取得しても活用されないので特
許取得する意義が乏しい」、「地方大学における産学連携をどの様にしたら良いのか解らない」等です。
以下に、これ等の点に関する様々な対応を紹介し、情報の共有化を図ることにより、ライフサイエンス分野の
大学の産学連携本部・知財本部の変容の一助になれば幸いです。
Ⅰ.「学会発表/論文発表重視」
研究している先生方は、知財のことなど全く念頭に
の侵害になるので、実施する場合はライセンスを受け
る必要がある可能性すら指摘されてしまいました。不
ない先生は稀で、知財のことは念頭に一応あるが、
用意な対応により、研究の自由度が阻害された結果
知財より学会発表/論文発表を重視しており、知財
になってしまった失敗例です。
のことは二の次としている先生方が多いようです。こ
かかる場合、今後の研究計画については、特許手
れは、研究している先生方にとっては当然の話です。
当てをしていないのであれば、具体的な研究計画の
学会発表・論文は、研究内容の評価であり、特に、
回答をしなければこの様な失敗とならなかった筈で
Nature 等の一流誌に掲載されることは研究内容が一
す。本件は、特許出願された事例として紹介しました
流であることの証明であり、これを積み重ねることが
が、特許を先行されてしまった事例ではなく、学会発
研究職としての地位の向上となるからです。
表/論文発表を先行されてしまうこと、すなわち、プ
【失敗事例と対応策】
ライオリティーが守れないこともあり得ます。学会発表
① 失敗事例
/論文発表の場合には、裏付けとなるデータが必須
学会発表を重視し、知財を二の次とした下記のよう
な失敗例があります。
ある先生が欧米の学会で発表し、フロアーから今
後の研究内容について質問された際に、今後の化
なため、今後の研究計画を公表してしまった場合に
は、先に裏付けデータを取得し、学会発表/論文発
表をいかに先に行うかの競争になります。
したがって、この様な失敗事例を指摘し、知財のこ
合物合成のコンセプトを含む研究計画を正直に答え
とを二の次とする考え方を変更しないと、先生方自身
てしまいました。その後帰国してしばらくたった後、欧
の研究継続の弊害となりかねないことや、研究のプラ
米のベンチャーが自分の答えた研究計画をいち早く
イオリティーを守るためにも特許が必要となってきて
行い、こともあろうか、そのコンセプトを含む特許が出
いることを根気よく説明して行くことが肝要です。
されていることを知りました。そこで、当該ベンチャー
② 対応策
に対し、当該特許は自分の発明であり、自分に無断
かかる今後の研究計画を公表する場合、米国で汎
で特許出願し、特許を取得したことは遺憾である旨
用されている知財戦略を事前に行っておくことで対
伝えようとしました。しかし、先生が相談した知財専門
応することが可能です。学会発表/論文発表では裏
家から逆に当該特許の先生による実施は当該特許
付けデータの取得が必須ですが、特許では必ずしも
13
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
必須ではありません。すなわち、裏付けデータを取得
れています。3)
する前に、特許の手当てをする米国仮出願の活用で
③ 近畿大学では、研究者(教員)の業績評価で特
す。米国では、コンセプト発明(コンセプト自体が世界
許出願や研究成果の実用化という産学連携活動が
初で新規な発明)は発明のコンセプト段階あるいは当
項目とされています。4)
り実験のデータ(学会/論文できないデータ)で、仮
④ その他にも、例えば、特許を取得し、実用化を実
出願し、1 年以内にフルデータを加えた本出願をす
践し成果をあげた先生を産学連携本部・知財本部が
れば、仮出願の日に出願されたと扱われます(仮出
名誉なこととして表彰することで、大学等で特許取得
願日まで遡及します)。かかる米国仮出願を行ってお
の意義を高めること等も考えられます。既に、年に1
けば、たとえ、裏付けデータの取得が遅れ、学会発
件選定し表彰している大学があります。
表/論文発表が遅れても(競争に負けても)、特許で
⑤ ドクター論文の審査で、特許を論文と同様に評
は勝てることがあるのです。米国の大学等で汎用され
価対象にしている大学があります。
ている特許戦略です。
⑥ 文部科学省や経済産業省の競争的資金を申請
【知財意識向上策】
する場合、特に大学の研究成果の実用化を目指す
大学における先生の知財意識を向上させる取り組
ような外部資金獲得の申請書には、発表論文リストと
みは講演会・セミナーを行うことが殆どでしたが、一
同様に出願特許リストを明記するようになってきてい
歩踏み出した事例として、下記の取組例があります。
ます。すなわち、国の外部資金申請書では特許も学
21世紀型産学官連携手法の構築モデルプログラ
ムを実践している山口大学では、知財意識の普及計
会発表・論文と同様の評価対象とされています。
以上の事例のように特許は研究成果の報告書とし
画を第 1 期「知財意識の萌芽期」、第 2 期「知財意識
て評価される可能性があります。かかる他大学の事
の高揚期」、第 3 期「知財意識の充実期」として数年
例を自己の大学でも採用されるように努力し、実践す
かけて実践しています。1)
ることで、特許が大学でも学会発表/論文発表と同
様に評価されるようにすることが可能となります。
Ⅱ.「研究成果の報告書として特許は評価されない」
多くの大学等は、特許は研究成果の報告書として
評価されていないのは事実のようです。しかし、下記
Ⅲ.「特許取得しても活用されない」
せっかく特許取得しても活用されないので特許取
に紹介する様に、特許が研究成果の報告書として既
得する意義が乏しいとの指摘です。活用されないと
に評価されている大学や競争的資金申請書等の事
指摘する特許の多くは、企業に活用される可能性が
例が多々あります。この拡大傾向は今後も続くものと
殆どない特許を取得しているに過ぎないのではない
思われます。
でしょうか。このことは、産業化への出口を見据えた
【特許を学会発表/論文発表と同様に評価対象とし
知財戦略のもとに出願し、取得した特許でなければ、
ている事例】
企業に活用され可能性が殆どないことを意味してい
① 長岡技術科学大学では、研究者(教員)評価の
ると思います。
評価項目の研究関係では、特許等の出願の件数、
一方、活用に実績をあげている米国の一流大学で
共同研究等の獲得額、企業化・ベンチャー設立、技
は、産業化への出口を見据えた知財戦略を実践して
術相談件数といったように幅広く産学連携に関係す
います。産業化への出口を見据えるとは、その特許
る項目が用意され、具体的な件数や金額といった数
の産業への出口が具体的に何を目指しており、目指
値で表しやすい指標が定められ、評価結果は賞与
したものが企業のニーズに合致していることです。
等に反映されています。2)
【取得する特許を対岸の見える真の「死の谷」のある
② 高知工科大学では、研究者(教員)の業績評価
案件に絞り込む】
で特許出願、登録、特許料という評価項目が定めら
14
従来、大学の研究と産業との関係は、両者の間に
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
「死の谷」があり、企業で大学の研究成果である発明
あると考えているのに対し、企業側はかかるケースは
が活用されないポイントであり、「死の谷」を乗り越え
出口が見えないとの認識の差異と思われますが、こ
ない限り企業は大学の研究成果である発明を活用し
の様な両者の認識が異なる原因として、下記の鋭い
ないと指摘されてきました。そして、この「死の谷」に
指摘があります。
対する取り組みが重要であるとされ、さまざまな取り
大学の研究の特質は、「課題の発見」⇒「課題の分
組みが行われています。大学の「死の谷」があるので
析」⇒「課題の設定」⇒「解決手段の検討」⇒「解決手
企業が活用しないとの主張が多くあり、その結果、こ
段の設定」⇒「実践(研究の開始)」という「課題分析
れが真実であるかの如き世論が形成され、国の種々
型」です。すなわち、大学の研究は、「発見」が多く、
の取り組みを行っているのではないでしょうか。
「発明」も一部あると言えるのではないでしょうか。した
しかし、企業側より、最近これは大学の誤った認識
がって、大学のアプローチは学問のための研究で、
であり、産業化への出口が明確でないものは対岸が
「発見」からのアプローチであるため、産業化への出
見えていないので、「死の谷」などではなく、「単なる
口が不明確であり、取得した特許は使われるかもしれ
崖」に過ぎないと指摘されています。このことは、大学
ない特許です。
が活用されないとする特許の多くは、現実的には産
一方、企業の研究の特質は、「課題の設定」⇒「課
業化への出口などない場合が多いことを意味してい
題の分析」⇒「解決手段の検討」⇒「実践(研究の開
ます。
始)」という「課題解決型」です。すなわち、企業の研
すなわち、大学が主張する「死の谷」があるとする
究は、「発明」が多く「発見」も一部あると言えます。し
案件の多くは、企業にとっては、実は「死の谷」がある
たがって、企業のアプローチが事業戦略に基づく事
のではなく「単なる崖」に過ぎないとの指摘です。この
業のための研究であるため、産業化の出口が明確で、
指摘は極めて厳しいですが、企業の本音であります。
かつ、特許は使う特許、必要な特許です。つまり、大
産業化への出口が明確な案件(真に「死の谷」のある
学の研究と企業との研究のアプロ-チを全く異にし
案件)に絞り込み、出口が明確でないもの(「死の谷」
ているとの指摘です。かかる指摘は正に的確な指摘
でなく「単なる崖」にすぎないもの)は産業化を期待し
で、両者の研究アプローチに違いが、取得する特許
た特許ではなく、むしろ特許化せず論文発表して技
の意義でも全く異なっているとの指摘です。5)
術の周知を図り、広く活用を図るべきではないでしょ
うか。
したがって、提供する大学は、取得する特許を対
Ⅳ.「地方大学における産学連携をどの様にしたら良
いのか解らない」
岸が見える真の「死の谷」のある案件に絞り込むこと
大手総合大学における産学連携を、地方大学に
で、企業に活用される可能性は著しく高まり、特許取
適用することが容易でなく、産学連携が推進できず、
得の意義が出てくると思います。この為には、「真の
成果を上げることができないとの悩みに対し、解決策
死の谷」と「単なる崖」との目利きが重要ですが、この
を実践している大学があります。すなわち、地方固有
目利きを大学自らが行うことは容易ではありませんの
のビジネスモデルの構築と実践です。
で、民の力を借りて的確に行うことが肝要です。一方、
【地方固有のビジネスモデルの事例】
受け入れる企業は、大学が提供する案件を良く精査
① 久留米大学は、地域の密着した独自のビジネス
し、真の「死の谷」か「単なる崖」かを見抜き、「単なる
モデルを実践しています。産学連携活動の 5 本の柱
崖」の場合にはその旨を大学に明確に指摘すること
となる「地域密着型」の目標を掲げ、特に情報の収集
を積み重ねることで、大学から提供される案件をより
と提供発信に関し、先生方からの情報提供を待つ従
効率的に活用できます。
来の「待ちのスタンス」でなく、自ら先生方の懐に飛び
なお、かかる大学と企業との「死の谷」に関する認
識の差異は、大学側は抽象的で曖昧なものも出口が
込み、「獲得のスタンス」を実践し、成果を上げていま
す。6)
15
The IPSN Quarterly No.6, August 2011
② 岐阜大学は、「地域重視型」に取り組み、例えば
この様な地方固有のビジネスモデルを自己の大学
県内の自治体より産学連携を実践する研修生を受け
で採用するように推進することで、自己の大学固有の
入れ、その結果自治体の共同研究契約数が伸びた
産学連携に変容することが行われはじめています。
こと等についても紹介しています。7)
【大学が変容するためのポイント】
③ 三重大学の活動も著名で、地域大学の中で産学
官の連携自立的な取り組みで実績をあげている「地
域密着型中小企業の成長支援」を目指した「地域密
最後に、大学が変容するためのポイントを指摘させ
て頂きます。
担当者自らが汗をかいて改革に取り組まない限り、
着の産学連携」のビジネスモデル(三重モデル)があ
大学は変容できません。他人は改革してくれません
ります。本年度は産学官連携部門と研究推進部門を
し、外からの改革は期待できないのだから、担当者
機能的に融合させるため「三重大学研究機構」を立
自らが行うべきです。既に実践している改革事例を
ち上げました。8)
学習し、実践することです。そして、改革は一人で行
④ この他に、地方における大学間、地方公共団体
うことは容易でなく、他の人の力を上手く活用すること
との連携により知的財産戦略を地方で推進する取り
も重要です。他人の協力は担当者自らが汗をかかな
組みとして、文科省が「産学官連携戦略展開事業
いと得られません。そして、改革できれば、大学内に
(戦略展開プログラム)」30 機関が選定されています。
おける担当者自らの地位の向上につながる筈です。
例えば、信州大学においては、信州大学が世話役と
その結果、ライフサイエンス、特に、創薬分野に関係
なり、信州地域の知の拠点による「地域振興の促進」、
する大学の研究機関の産学連携本部・知財本部が
「大学間連携による知的リソースの有効活用」、「地域
変容し、本来の機能を発揮することが期待できます。
ブランドによる町おこし」を行うとして、長野県の 19 大
(了)
学等が参加する「信州産学官連携機構」を立ち上げ、
国・県・市町村・金融機関と連携しています。
(注)
1) 平成 18 年度「大学知的財産本部整備事業」 21 世紀型産学官連携処方の構築によるモデルプログラム事業成果報告書「大学の知的財産業
務に関するコスト分析と活動改善方策に係る調査研究」 平成 19 年 3 月 33 頁 山口大学 産学公連携・創業支援機構
2) Discussion Paper No.69「国立大学等における産学連携の目標設定とメネジメントの状況」(2010 年 10 月)64 頁 文部科学省 科学技術政策研
究所 第3調査研究グループ 総括上席研究官 長野裕子氏
3) 同上 72 頁
4) 同上 78 頁
5) 第 3 回 IPSN 講演会(2011.05.24) 京都大学大学院薬学研究科最先端創薬研究センター 特定教授 内海潤氏講演スライド
6) The IPSN Quarterly 2011 年 11 月号 10 頁「久留米大学の産学連携活動の紹介」久留米大学知的財産本部 学長特命教授 井上 薫氏
7) The IPSN Quarterly 2011 年 5 月号 5 頁「 岐阜大学の知的財産マネージメントについて」岐阜大学 産官学融合本部 教授 知財戦略室長
野田誠一氏
8) 産学官ジャーナル Vol.17 No.6 40(2011) 連載「大学の社会貢献・産学官連携 三重モデル」
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The IPSN Quarterly No.6, August 2011
Information
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主な活動報告(2011 年 6 月~2011 年 8 月)
第 6 回ゼロ次情報提供(6 月 24 日)、臨時情報提供(7 月 15 日)
第 10 回国際バイオ EXPO 出展(6 月 29 日~7 月 1 日)
第 8 回ライフサイエンス知財合同検討会(7 月 6 日・サピアタワー)
ライフサイエンス分野の知財をめぐる動向・取組みについての各団体(日本製薬工業協会、
バイオインダストリー協会、日本弁理士会、medU-net、IPSN)の活動状況紹介や意見交換を行いました。
■ 主な活動予定
 バイオジャパン 2011 出展
2011 年 10 月 5 日(水)から 7 日(金)までパシフィコ横浜で開催されるバイオジャパン 2011 にブース出展しま
す(小間番号:C205)。弊社の事業活動の説明や、知財コンサルティング・マッチング相談も承ります。是非お立
ち寄りください。展示会入場無料ご招待券を入手希望の方は IPSN までお知らせください。
 第 4 回 IPSN 講演会開催
2011 年 10 月 6 日(木)、バイオジャパン 2011 セミナー会場におきまして講演会を開催します。
詳しくは 8 ページ又は右 URL をご覧ください。
http://www.ipsn.co.jp/111006.pdf
■ 主な IPSN 関連掲載記事・論文等
 「ライフサイエンス知財コンサルティング会社『バイオ・サイト・キャピタル株式会社』と業務提携」
朝日新聞/大阪版(2011 年 7 月 29 日)
 「我が国初の知財ファンド LSIP について」
翁 雅男、秋元 浩 特技懇(tokugikon)、no.261(2011 年 5 月 23 日)
 「アカデミア・ベンチャー・中堅製薬企業の医薬品の特許戦略」
長井 省三 国際医薬品情報、通巻第 938 号(2011 年 5 月 23 日)
■ 寄稿のお願い
IPSN では、皆様から産官学連携推進、先端技術分野の知財を巡る問題や課題などの幅広いご意見、論文を
お寄せいただき、かかる問題を考える場として本ニュースの紙面を活用しています。
ご意見、論文がございましたら弊社までお寄せください。
編集後記
次回(10 月 6 日)の IPSN 講演会のテーマは「真の知財立国の実現に向けて」です。日本が「知的財産立国」
を打ち出してから 10 年近く経ちますが、当初から「産学官連
携」と「知財人財の育成・確保」が大きな課題となっています。
IPSN では 9 月から国立大学の知財担当者1名を OJT 研修
生として受け入れます。彼が将来の日本を代表する知財人
財になることを願いながら、IPSN プロスタッフの厳しい(?)指
導を乗り越えるために、サポートさせていただこうと思います
(金野陽子)。
本書の内容を無断で複写・転載することを禁じます。
2011 年 8 月発行 The IPSN Quarterly (第 6 号・夏)
〒100-0005 千代田区丸の内 1-7-12 サピアタワー10 階
電話:03-5288-5401 ファクシミリ:03-3215-1103
URL: http://www.ipsn.co.jp/
Email: [email protected]
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