紛争解決 東京紛争解決グループ 2010年9月 特集… ■■ UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)修正仲裁規則 ■■ ベトナムにおける新仲裁法 UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)修正仲裁規則 2010年8月15日、UNCITRAL修正仲裁規則が施行された(以下「修正規則」)。修正規則 は、1976年に採択された旧規則(以下「1976年規則」)に代わるものであり、その修正過程には4 年が費やされた。旧規則は、殊に修正規則を適用するとしない限り、2010年8月15日以前に締結 された仲裁合意に引続き適用される。 UNCITRAL仲裁規則は、民間の商取引当事者、投資家、又は国家との間の様々な紛争解決に 利用されており、また、国家間の紛争解決にも利用されている。修正規則には様々な改正が加え られており、また、時間と費用の最小化にも重点が置かれている。 注目すべき改正点 ■■ 仲裁申立に対する被申立人の「答弁書」に関する規定が新設された。答弁書は、仲裁申立書 の受領から30日以内に提出しなければならず、被申立人が希望する場合は、答弁書に反対 請求や申立人以外の仲裁合意の当事者に対する請求も含めることができる。 ■■ 両当事者に対し、可及的速やかに仲裁人選任機関を選定するよう促す規定が新設された。選 定された仲裁人選任機関は、仲裁人の任命、忌避、解任、及び仲裁人報償金や費用の補正 について重要な役割を果たす。当事者が30日以内に合意に至らなかった場合、いずれの当 事者も、仲裁人選任機関の選定を常設仲裁裁判所の事務局長に要求することができる。 ■■ 新規則には、仲裁人の忌避及び補充の規定が置かれており、また、仲裁人が選任時に署名 すべき「独立性の表明」の標準書式が添付されている。この標準書式の表明文書には、仲裁 人に対し、仲裁人が修正規則に明記される期間の範囲内で必要な時間を仲裁の実施に充て ることができることの確認を求める任意の一文が含まれている。 ■■ 仲裁廷が選任した鑑定人は、仲裁廷と当事者に対し独立性と公正性の表明を提示しなけ ればならず、両当事者は、鑑定人の適格性、独立性又は公正性に異議を申し立てる権利を有 する。 ■■ 手続の効率促進を規定する改正点: (a) 仲裁廷は現在、特に「不必要な遅延や費用が生じないように手続を実施する」ことを要求さ れている。さらに仲裁廷は、その成立後可及的速やかに審理手続の予定を立てることも要 求されている。 (b) 仲裁廷は、当事者の請求により、第三者がすでに仲裁合意の当事者となっていること、及 びかかる第三者による不利益を被らないことを条件として、第三者に仲裁参加を許可する 権限を有する。 (c) 証 人又は鑑定人の証言に、ビデオ会議のような新しい通信方法を利用することができる。 ATTORNEY ADVERTISING. Prior results do not guarantee a similar outcome. ホワイト&ケースの東京紛争解決チームは、 国際仲裁、複雑な商事訴訟、政府調査につい て経験豊富な30名を超えるロイヤーの集まり です。東京のチームは、そのグローバル・ネッ トワークである北京、香港、ロンドン、ニューヨ ーク、パリ、シンガポールやその他の主要都 市の事務所から、紛争解決に高度な専門性 を有する500名を超える人材を活用し、素早く かつ効果的な対応を複数の司法権にまたが って提供することができます。世界中で紛争 やリスクを回避できる効果的な予防策のアド バイスを、迅速でコスト効率の良いソリューシ ョンを提供しています。 東京 ホワイト&ケース法律事務所 ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所 (外国法共同事業) 100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館26階 Tel: 03 6384 3300 Fax: 03 3211 5252 シンガポール White & Case Pte. Ltd. 50 Raffles Place #30-00 Singapore Land Tower Singapore 048623 Reg. No. 200010572Z Tel: + 65 6225 6000 Fax: + 65 6225 6009 東京紛争解決グループ ■■ ■■ 暫定措置の許可に関する多くの詳細規定 が追加された。これには、仲裁廷が後に暫 定措置を許可すべきでなかったとの決定を した場合は、暫定措置を請求した当事者 が、発生した費用及び損害について責任を 負うとする条項も含まれている。 両当事者は、意図的な不正行為の場合を 除き、仲裁人及び仲裁人選任機関に対し、 仲裁に関連する一切の作為又は不作為の 請求を放棄する。 仲裁手続を改善するため、今年6月、ベトナム 国会は新たに「商事仲裁に関する法律」(以下 「仲裁法」)を通過させた。同法には外国人投 資家に影響を与える多数の改正がなされてお り、2011年1月1日の施行日以降に締結される 仲裁合意に適用される。同日以前の仲裁合 意は引続き仲裁法令に従うこととなる。今号の 記事は、外国人投資家に影響する可能性の あるもののうち特に注目すべきポイントに焦点 をあてる。 結論 仲裁の範囲 1976年規則は旧態依然としたものであったの で、修正規則は非常に歓迎すべきものであ る。1976年規則に基づいて仲裁開始を検討し ている当事者は、同意によって修正規則を採 用することを検討すべきである。 仲裁法には、仲裁の範囲は商業活動を原因と して当事者間に発生した紛争の解決であると 改めて明記されている。しかし、仲裁法は仲裁 の範囲をそれ以外の種類の紛争にまで拡大 している。当該その他の紛争には、一方当事 者のみが商業活動に従事している紛争と、法 律上両当事者の仲裁付託の合意が要求され ている紛争が含まれている。例えば、建設又 は輸送分野における契約外の損害賠償請求 は、現在は仲裁廷に提起することができ、又、 国有機関は調達契約において請負業者との 仲裁に同意することができる。この改正により、 両当事者はより柔軟に紛争を仲裁に付託する ことができることとなるため、この改正は企業に とっては一歩前進したといえる。 ベトナムにおける新仲裁法 2003年、ベトナムは商事仲裁の整備と実施を 規制する「商事仲裁に関する仲裁法令」(以下 「仲裁法令」)を公布した。 仲裁法令の公布後も、仲裁はベトナムにおい て幅広い支持を得てこなかった。ベトナム国際 仲裁センター(以下「VIAC」)の統計によると、 ハノイ人民裁判所が2009年に取扱った経済 紛争は300件であり、ホーチミン市裁判所には 約1,000件の訴訟事件の受付があった。その 一方で、最大の仲裁機関センターであるVIAC が昨年取扱った企業による仲裁申立は58件 にとどまった。1 ベトナム企業は従前どおりの 伝統的な裁判所による解決を好むように見 える。 不動産又は土地に付属する資産に関する紛 争は、現在においても、当該請求が裁判所の 排他的管轄に属するか否かをベトナム法が 規定しているか不明確な管轄の「グレー・ゾー ン」に服したままの状態である。当該問題が 仲裁法施行規則の中で対処されることが望ま れる。 仲裁人の国籍 仲裁法令では、仲裁人はベトナム国籍を有す ることが要求されていた。しかし、この要件は 仲裁法において廃止された。新法は現在、一 定の法的要件を満たした外国人については、 係争中の両当事者は当該外国人を仲裁人と して選定することができ、又、仲裁機関若しく は裁判所は当該外国人を仲裁人に選任する ことができると規定している。ベトナム人と外国 人の両方の仲裁人から構成される客観的かつ 公平な仲裁廷を支える仕組みを整えることが、 仲裁法の意図である。 法律と言語 仲裁法では、仲裁手続の準拠法として外国法 の使用が可能であることが改めて強調されて いる。しかし、仲裁判断の執行にあたり、ベト ナムの裁判所は外国の準拠法がベトナム法の 基本原則に反しないかどうかを検討することが できる。 仲裁法は現在、国際慣行がベトナム法の基本 原則に反しない限り、仲裁廷が紛争解決に国 際慣行(例えば海運業の慣行)を検討し適用 することも認めている。 仲裁手続の既定言語がベトナム語に限定され ることは既になくなった。海外の当事者が関与 する場合であって、かつ仲裁言語について合 意に達していない場合には、仲裁廷がどの言 語が最も適切であるか決定することとなる。 1 「新法が商事紛争解決のための仲裁を促進する」 英語版については以下をご参照ください: http://vietnamnews.vnagency.com.vn/Pages/PrintView.aspx?ArticleID=201707. 2 2010年9月 暫定措置 仲裁法令は裁判所が暫定措置を命令できる 唯一の管轄機関であると明記している一方 で、仲裁法は、仲裁廷に一方当事者の請求に より一定の暫定措置を適用する権限を認めて いる。したがって、仲裁に付託された紛争の当 事者は、暫定措置の命令につき、関連裁判所 に請求するか、又は管轄仲裁廷に申立てるか を選択する権利を有することとなる。裁判所に 対する暫定措置の請求は、各仲裁廷の管轄 権の放棄又は拒絶とはみなされない。さらに 裁判所は、管轄仲裁廷に既に同一の申立て がなされている場合には、暫定措置の請求を 却下する必要があるだろう。 多くの弁護士、仲裁人、及び法律解説者は、 暫定措置に関するこれらの権利によって、 仲裁は魅力を増すだろうと考えている。例え ば、裁判所に暫定措置の適用を請求する係 争当事者は、それが非常に時間のかかるもの であり、当該請求が手続を遅延させる可能性 があるということがわかるであろう。 エストッペル(禁反言) 仲裁法では、仲裁手続に禁反言の原則を認 めている。仲裁合意又は仲裁法の条項の違 反を認識したにもかかわらず、当該違反に異 議を唱えなかった当事者は、仲裁においても また裁判所においても、その後に異議を唱え る権利は一切認められない。 結論 仲裁法は、仲裁法令の不備に対処しているた め、仲裁法令の改良と見られている。したがっ て、仲裁法は、法律解説者に歓迎されるだろ う。なぜならば、「 ベトナムの実体を考慮に入 れつつ近代法と国際仲裁実務の基準に近づ けるという意味で、同法はベトナムにおいて国 内外の企業の代替紛争解決に対する信頼を 勝ち取る結果となり、ベトナムの仲裁競争力を 増強するための確かな基盤となる。」2 からで ある。仲裁法が、仲裁の範囲を拡大し、仲裁 人の国籍要件を撤廃し、仲裁廷の権限を向上 させ、さらに国家裁判所の負担を軽減すること によって、外国投資家の保護が拡大されること となるだろう。 こちらの記事はベトナムの法律事務所 YKVN Lawyersのディエップ ・ホアイ・ナム によって 書かれました。 ホワイト&ケースの国際仲裁実務グループに、パートナーのデイビッド・ゴールドバーグ、アソシエートの ジュリア・ザコナック及びアルテム・ドゥッコが加わりましたので、ご案内申し上げます。 ロシア及びCIS(独立国家共同体)に関連した企業取引に起因する複雑な国際仲裁の当事者の代理人として特別の専門知識を有するこれら の3名の実務家を迎え、ロンドン及びモスクワを拠点とするホワイト&ケースの仲裁チームはさらに強化されました。 この3名は、ヨーロッパにおける70名を超える弁護士を含む150名の国際仲裁のスペシャリストを擁するグローバルチームに加わります。 パートナーのデイビッド・ゴールドバーグは、ロシア語を話すことができる第一線の国際仲裁弁護士として広く知られています。デイビッド・ゴー ルドバーグは国際商事及び投資仲裁の専門家であり、東欧及びCISでの実務経験を豊富に有しています。 アソシエートのジュリア・ザコナックは国際仲裁の専門家であり、係争事件に関するアドバイスを提供しています。 アソシエートのアルテム・ドゥッコは、特にロシア語を話すクライアントへのアドバイスを中心とした国際仲裁の専門家です。 デイビッド・ゴールドバーグ ジュリア・ザコナック アルテム・ドゥッコ ロンドン パートナー + 44 20 7532 1623 [email protected] ロンドン アソシエイト + 44 20 7532 1414 [email protected] ロンドン アソシエイト + 44 20 7532 1411 [email protected] 2Vuong Son Ha and Luu Tien Ngoc, “外国人が安眠できる仲裁への動き” 2010年7月23日;英語版については以下をご参照ください:http://www.vir.com.vn/news/business/ arbitration-move-to-see-foreigners-rest-easy-at-night.html. White & Case 3 本ニュースレターは、読者の便宜のために 提供されており、法的なアドバイスを成すも のではありません。本ニュースレターは、弊 事務所のクライアント及び関係者に一般的 な情報を提供するために作成されており、い かなる場合においても適切な法的アドバイ スなく特定の状況で用いられるべきもので はありません。なお、本ニュースレターはホワ イト&ケースのウェブサイト以外のウェブサイ トへのリンクを含むこともあります。 ホワイト&ケースは自らのサイト以外のいか なる他のウェブサイトについても責任を負う ものではなく、また、あらゆる他のウェブサイ トについて、その情報、内容、表現、正確さを 是認するものでも、明示黙示に関わらず保 証するものでもありません。 本ニュースレターは著作権によって保護さ れており、その内容は適切なクレジットを付 与することで複写あるいは翻訳ができま す。なお、本ニュースレターの英語版もあり ます。 www.whitecase.com 東京 パートナー 03 6384 3215 [email protected] 「国際的に結びつきが強いそのネットワークと 各分野における豊富な経験を有する」この偉 大なファームは、日本における卓越した紛争 解決の主プレーヤーたる所以。クロスボーダ ーの紛争解決案件は、チームの主力となる独 禁法、建設、国際通商、企業関連からなり、チ ームの要である。 ロバート・グロンディン Chambers Asia (2010 年) 国際仲裁に関するご質問等は下記のロイヤー のいずれかにご連絡ください。 マーク・グッドリッチ 東京 パートナー 03 6384 3200 [email protected] ナンダクマール・ポニヤ シンガポール パートナー + 65 6347 1312 [email protected] アロク・レイ シンガポール パートナー + 65 6347 1353 [email protected] ホワイト&ケースは、「中国及び東南アジアを カバーする国際仲裁業務において秀でている と認識されており、複雑なクロスボーダーの商 事紛争案件を多数取り扱っているチーム。」 Chambers Asia (2009 年) ホワイト&ケースの東京事務所は「紛争解決 でトップに位置付けている」、「アジア地区の 仲裁において顕著な記録を有している」と 賞賛。 Asia Pacific Legal 500 誌 ホワイト&ケースの東京事務所は「国際仲裁 について最高の水準」、「クロスボーダー紛 争案件における卓越した技術を有する」と 賞賛。 Chambers Asia (2009 年) 2009年企業内弁護士及びビジネスリーダー によるアジア全体の調査において、国際仲 裁及び紛争解決グループを有するトップクラ スの国内ローファームである。 Asian Legal Business (2009 年) White & Case means the international legal practice comprising White & Case LLP, a New York State registered limited liability partnership, White & Case LLP, a limited liability partnership incorporated under English law and all other affiliated partnerships, corporations and undertakings. AP0910024_JPN_v04
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