GEMC journal no.10 2013.3 - 東北大学法学研究科・法学部

10
2013. 3
はしがき
東北大学グローバル COE プログラム「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生( Gender Equality and
(平成 20 年度社会科学分野/拠点リーダー辻村みよ子、
Multicultural Conviviality in the Age of Globalization )」
国内連携機関・東京大学社会科学研究所)は 2008 年度に発足し、グローバル化が進行する世界で生じている
諸問題を、男女共同参画と多文化共生の二つの観点から解明し、それらの知見を融合しながら解決策を提示す
ることを目的としてきました。さらに、こうした問題への深い理解と有効な対応策を提示しうる若手研究者を
育成することを最終的な目標として、諸外国の大学とのダブルディグリーを目指すクロスナショナル・ドクト
。
ラル・コース( CNDC )を創設しました(詳細は、http://www.law.tohoku.ac.jp/gcoe をご覧下さい)
このような GCOE の目的と目標を果たすために、学術的な研究成果を発表するジャーナルを発刊すること
「 GEMC
とし、Gender Equality and Multicultural Conviviality(男女共同参画と多文化共生)の頭文字をとって、
ジャーナル」と名付け、2008 年度末に 1 号を、2009 年度からは英文ジャーナルと和文ジャーナルを毎年 2 号
ずつ刊行してきました。2011 年 3 月に東日本大震災が日本を襲い、2011 年度発行の 6 号と 7 号は、それぞれ災
害に関連する特集を組みました。
最終年度である 2012 年度には、通常の英文ジャーナルと和文ジャーナルの 8 号と 9 号のほかに、最終号とし
て、この 10 号を刊行する運びとなりました。10 号には、GCOE の 5 年間にわたる研究活動の成果をまとめた
総括研究会の報告とコメント、質疑討論と、主な研究・教育・出版活動の資料編を収めています。GCOE は、
グローバル時代におけるジェンダー平等と多文化共生に関わる様々な社会問題を抽出して理論的に分析し、問
題克服の糸口を解明して社会に還元するという、大きな課題にとりくんできました。10 号をご覧くだされば、
この課題を果たすべく、GCOE がそれぞれの分野であげてきた成果を、概括的に一覧できるものと思います。
GEMC ジャーナルは、本年度で全 10 号の刊行を終了します。これまで執筆してくださった方々(執筆者数、
延べ 111 名)をはじめ、刊行にご協力くださったすべての皆様に、心よりあつく御礼申し上げます。我々の 5
年間の活動が、
日本と世界のジェンダー平等(男女共同参画)と多文化共生の進展のために寄与できることを、
一同、祈念しております。
2013 年 3 月
東北大学グローバル COE
「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」
GEMC ジャーナル編集委員会
003
GEMC journal 目次
はしがき
第 1 部 GCOE 総括研究会
序文 ―5 年間の GCOE 活動を終えて―
GEMC ジャーナル編集委員会………… 003
辻村みよ子………… 006
人身取引対策とジェンダー平等
コメント
高松 香奈………… 014
大沢 真理………… 023
「利他的医療」の法原理と国家法
コメント
米村 滋人………… 028
水野 紀子………… 034
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
―社会制度に対する経済・経営・統計学的アプローチ―
コメント
民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ
―東北復興に向けた理論的課題と予備的考察―
コメント
災害と外国人女性達
―ジェンダー平等と多文化共生の主流化をめざして―
コメント
質疑討論
吉田 浩………… 036
佐藤 博樹………… 054
スティール若希………… 058
大沢 真理………… 072
李 善姫………… 074
樺島 博志………… 080
………… 082
093
094
103
106
113
119
122
158
第 2 部 資料編―GCOE2008 ~2012 年度の主な活動―
15 の研究プロジェクトの総括
東京大学連携拠点の成果概要
CNDC と若手メンバー
出版活動一覧
博士論文の紹介
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
主な研究会&ワークショップ等一覧
…………
…………
…………
…………
…………
…………
…………
…………
執筆者一覧
………… 171
GEMC journal 投稿規定と執筆要領
………… 172
GCOE 事業推進担当者・GEMC journal 編集委員会名簿
………… 173
第1 部
[GCOE 総括研究会]
序文̶5 年間の GCOE 活動を終えて̶
辻村 みよ子
人間の安全保障と人身取引問題 ̶男女共同参画と多文化共生の試金石̶( 大沢プロジェクト 1 )
人身取引対策とジェンター平等
高松 香奈 / Comments
大沢 真理
少子高齢化をめぐる国家と私的領域( 水野プロジェクト 2 )
「利他的医療」の法原理と国家法
米村 滋人 / Comments
水野 紀子
「法の経済分析(Law and Economics)
」の手法に基づく、
他文化交流、男女共同参画の政策効果の分析( 吉田プロジェクト )
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
̶社会制度に対する経済・経営・統計学的アプローチ̶
吉田 浩 / Comments
佐藤 博樹
民主的実践としてのジェンダー平等と
異文化間能力へのアプローチ
̶東北復興に向けた理論的課題と予備考察̶
スティール若希 / Comments
大沢 真理
災害と外国人女性達
̶ジェンダー平等と多文化共生の主流化を目指して̶
李 善姫 / Comments
質疑討論
樺島 博志
10
2013.3
序文
―5 年間のGCOE 活動を終えて―
辻村みよ子
Ⅰ. グローバル COE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」の目
的と成果
1.研究面での成果
(1)目的と構成
2008 年から 2013 年までのグローバル COE プログラム(GCOE)社会科学分野で、東北大学「グローバル
時代の男女共同参画と多文化共生」1 が採択された。これは 2003 年から 2008 年までの 21 世紀 COE プログラ
ム「男女共同参画時代の法と政策」拠点の成果2 を発展させたものである。
GCOE では、21 世紀 COE よりも視野を拡大し、社会科学を総合する「ジェンダー平等(男女共同参画)
と多文化共生」教育研究拠点を確立することを目的とした。ここでは、ジェンダー平等(男女共同参画)と
多文化共生の複合的な視点から、人身取引や女性の貧困、生殖補助医療など現代の複雑な社会問題に切り込
み、ジェンダーに関連する社会科学の成果を総合して「ジェンダー社会科学」という新たな学問を確立する
ことを課題とした(この成果については、Ⅲで後述)
。
GCOE の事業推進担当者は 25 名で、そのうち連携機関となった東京大学社会科学研究所から大沢真理教
授など 5 名に加わって頂いた。学内外の研究教育協力者は延べ 200 名におよび、これらのメンバーで分野横
断的に具体的な課題について研究する 15 の研究プロジェクトを組織して研究活動を行った。その人的構成
からしても、あたかも一つの国際学会を構築したような勢いであった。
(2)シンポジウム・研究会等の開催
2008 年 8 月 7 日に東京大学でキックオフ・セミナーを開催し、2009 年 2 月 3 − 4 日には東北大学(仙台)
で内外の約 120 名の研究者や大学院生を集めてキックオフ・シンポジウムを開催して、本拠点の研究・教育
の意義や課題を確認しあった。
2008 年 10 月 22 − 23 日には北京で「グローバル化時代における新たな社会的イッシュー」に関する国際
ワークショップを開催したほか、2009 年 8 月 3 − 4 日には、東京と仙台で、カナダ・フランス・アメリカ・
イタリア等の研究者を招待して大規模な「国際セミナー2009」を開催し、海外の研究機関や研究者とのネ
ットワークを確立した。シンポジウムの内容は、2010 年 3 月末日に刊行した『ジェンダー平等と多文化共
生―複合差別を超えて―』(辻村・大沢編、東北大学出版会)およびその英語版(下記)にまとめており、
性差のほか階層や宗教、文化など多様な属性によって複雑な差別問題等を生みだしている現代の多文化共生
社会の課題を「複合差別」という視点から明らかにした。
その後も、複数の研究プロジェクトなどを中心に、アジア諸国や欧米諸国の研究者と連携して多くの国
際シンポジウムや国内の研究会を企画し、その数は、共催・後援等も含めると〔約 4 年半で〕215 回に及ん
006
だ3。また、全体企画としては、毎月、合同で GCOE 月例研究会を開催し、2012 年 12 月までに 40 回開催した。
、10 月には「萩セミナー」を開催し、すべての研
研究と教育を兼ねて、毎年 4 月には仙台で「桜セミナー」
究プロジェクトの進捗状況や成果を発表しあい、シナジー効果を確保するための合同討議を重ねた。毎年の
萩セミナー、桜セミナーには、国内外の研究者・大学院生等、延べ約 100 名が参加して、大きな成果を挙げ
ることができた。
(3)成果の公表
[第 1 − 10 号]
GCOE の研究成果は、寄稿論文や若手研究者の査読済論文を掲載した本誌『GEMC journal』
で公表してきた。ここにはシンポジウム等で報告した内外の教授たちの寄稿論文のほか、GCOE フェロー
やリサーチ・アシスタント(RA)等の論文(約 30000 字)が、厳重な査読を経て掲載されており、若手研
究者のキャリア形成に役だった。
このほか、GCOE の研究成果を公表するために単行本を出版しており、①研究プロジェクトの共同研究
② GCOE メンバーの著作である「著者シリーズ」
(単著)
の成果をまとめた「研究成果シリーズ」
(共著)7 冊、
5 冊が既に刊行済である。最終年度には、さらに、①「研究成果シリーズ」3 冊、②「著者シリーズ」1 冊を
加えて、合計 16 冊の刊行を予定している。
①研究成果シリーズ
(責任者・辻村みよ子)と「人
ここには、「多文化共生社会のジェンダー平等」研究プロジェクト(PT)
間の安全保障と人身取引問題」(責任者・大沢真理)が中心になって開催した上記「国際セミナー2009」の
成果をまとめた、前述の辻村=大沢編『ジェンダー平等と多文化共生―複合差別を超えて―』
(東北大学出
,Gender Equality in Multicultural Societies:
版会、2010 年)、Miyoko TSUJIMURA & Mari OSAWA(eds.)
Gender, Diversity, and Conviviality in the Age of Globalization, Tohoku University Press, 2010 が含まれる。
「アジアにおけるジェンダー平等政策」PT(責任者・辻村みよ子)の成果として、Miyoko TSUJIMURA &
Jackie F. STEELE, Gender Equality in Asia: Policies and Political Participation, Tohoku University, 2011 辻
(辻村みよ子、
スティール若希編、
村= J. スティール編『アジアにおけるジェンダー平等―政策と政治参画―」
東北大学出版会、2012 年)も刊行した。
このほか、「男女共同参画・多文化共生社会に求められる『リーダーシップ』教育の研究―中・高等教育
における男女別学の国際比較分析に基づいて」PT(責任者・生田久美子)の研究成果をまとめた『男女共学・
別学を問いなおす―新しい議論のステージへ―』
(東洋館出版社、2011 年)を刊行して男女共学・別学問題
を主に教育学の視点から明らかにした。また、
「多文化共生とジェンダーをめぐる国際法規範の国内的履行
と国際紛争の平和的解決メカニズムの実証的研究」PT(責任者・植木俊哉)の研究成果である『グローバ
ル化時代の国際法』(植木俊哉編、信山社、2012 年)が、グローバル時代の国際法規範の展開と課題を理論
的に解明した。「グローバリゼーションとナショナリズム」PT(責任者・大西仁)の成果である『移動の時
代を生きる―人・権力・コミュニティ―』(大西仁・吉原直樹監修、李善姫・中村文子・菱山宏輔編、東信堂、
2012 年)では、国境を超えるヒトの移動の影響について、社会学・政治学・経済学・教育学等の視座から
学際的に分析した。
2012 年度の刊行分には、事業推進担当者の多くが参加する最大の研究プロジェクト「少子高齢化をめぐ
る国家と私的領域」(責任者・水野紀子)の成果をまとめた共著『社会法制・家族法制における国家の介入』
(有斐閣、2013 年)や、都道府県別の男女共同参画指標などを明らかにして内外に大きな話題を投げかけた
「法の経済分析の手法に基づく、多文化交流、男女共同参画の政策効果の分析」PT(責任者・吉田浩)がお
もに経済学の立場からの分析結果をまとめた『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』
(河北新報出版センター、2013 年)が含まれる。また、多くの社会学者と協力して調査・分析した「少子
高齢化社会の家族変動」PT(責任者・田中重人)の成果は、Sigeto Tanaka ed., Quantitative Picture of Contemporary Japanese Families: Tradition and Modernity in the 21st Century(Tohoku University Press, 2013年)
として刊行予定である。
②著者シリーズ
辻村『憲法とジェンダー―男女共同参画と多文化共生への展望』
(2009 年、有斐閣)が 21 世紀 COE 以来
の研究論文を纏めて著者シリーズの第 1 号として刊行され、第 2 回昭和女子大女子文化賞を受賞した。この
序文
007
10
2013.3
ほか、若手研究者の研究成果として、金淑賢『中韓国交正常化と東アジア国際政治の変容』
(2010、明石書
、Ji, Meng, Phraseology in Corpus-Based Transla店)、王冷然『適合性原則と私法秩序』(2010 年、信山社)
tion Studies, Peter Lang, 2010、木原淳『境界と自由―カント理性法論における主権の成立と政治的なるもの
―』(2012 年、成文堂)が刊行され、それぞれ、若手研究者の就職や昇進等につながった。
(4)研究センターの開設・交流
東北大学片平キャンパスに開設した「ジェンダー平等と多文化共生」研究センター 4 では、関連する内外
の貴重書やシリーズを含めて約 8000 冊所蔵しており、2012 年度には、蔵書目録も完成した。
2011 年度からは、一橋大学大学院社会学研究科ジェンダー社会科学研究センター、お茶ノ水女子大学ジ
ェンダー研究センターなど、全国の研究センターとの交流会を 11 回実施し、今後のネットワーク化と交流
の継続が期待されている。また、海外連携機関であるオタワ大学との研究交流(2008 年、2009 年、2011 年)
のほか中国社会科学院との交流事業を実施(2012 年 7 月)した。
とくに、本 GCOE の連携機関である東京大学社会科学研究所との共同セミナーの実施は 19 回に及び、連
、no.5 岩波シリーズ「ジェンダー社
携拠点シリーズの刊行 No.1 − 5 刊行(no.4「震災復興と男女共同参画」
会科学の可能性」[全 4 巻、2011 年]批評)など、5 冊を刊行して連携拠点との交流についても十分な成果
を出すことができた。
また、この研究センターは、若手研究者の研究拠点であるとともに、東北大学法科大学院や教養課程の
「ジェンダー論」
「ジェンダーと法」科目等の資料検索の場としても教育上重要な役割を担っている。さらに、
シンポジウム等で来校された内外の多くの研究者たちが集える交流の場としても機能した。今後は東北大学
の男女共同参画施策の総合施設としての役割が期待されている。
2.人材育成面、教育面での成果
人材育成面では、ポスドクを GCOE フェロー、助教として採用し研究支援を行い、大学院博士後期課程
学生を RA として採用して若手研究者育成に努めると共に、海外の連携機関との間で共同博士課程(ダブル・
ディグリー)をめざすクロス・ナショナル・ドクトラル・コース(CNDC)を実施し、毎年 4 月・10 月入学
の留学生を受け入れた。同時にこれら CNDC 学生の学位取得を促進し、2012 年 9 月までに 10 名が学位を取
得している。
①教育:CNDC では、多くの大学 10 校 13 機関(シェフィールド大学、ENS − Lyon、リヨン第 2 大学、清
華大学、中国社会科学院、オタワ大学、延世大学校、ソウル大学校、国立台湾大学、ハイデルベルク大学)
との連携が実現した。留学生 34 名(2009 年度 9 名、2010 年 4 月入学生 4 名、10 月入学生 6 名、2011 年度 4
月入学生 3 名、10 月入学生 7 名、2012 年 4 月入学生 3 名、10 月入学生 2 名)
、学位取得者数(10 名、シェフ
ィールド大学 2011 年度 5 名、清華大学 2010 年度 3 名、リヨン第 2 大学 2010 年 1 名、リヨン第 2 大学 2012 年
度 1 名)も順調と評価できる。これまで日本人学生が 3 名にとどまっていたが、東北大学側から 1 名の博士
後期課程の学生が、海外パートナー大学(シェフィールド大学)
への来年度の入学をめざし準備を進めている。
②人材育成:若手研究者育成プログラム」として、東大連携拠点は、特任助教 2 名、特任研究員 1 名、東
北大本拠点は、GCOE 特任フェロー2 名、GCOE フェロー11 名、国際展開マネージャー2 名、研究企画マネ
ージャー1 名、RA50 名(うち CNDC34 名)を採用し、事業推進担当者が研究指導にあたった。フェロー・
RA の雇用は延べ 69 名になった。中間評価で指摘されたとおり、若手研究者の海外での報告支援を 30 回、
出版支援を 4 回実施して、支援を一層強化してきた。自由な発想の下に研究課題を設定し、創造性に富んだ
研究を行うため、若手研究奨励費による研究奨励もフェロー・RA の全員に対して行った。その結果多くの
若手研究者が専任の教員ポストを得るなどして巣立ってゆくことができた。
3.社会貢献
日本学術会議とのシンポジウムや、日本女性会議の後援など、社会的な影響力を持つ多くのシンポジウム
を企画してきた。とくに日本学術会議主催のシンポジウムには、
「災害・復興と男女共同参画(6・11 シン
008
ポジウム∼災害・復興に男女共同参画の視点を∼)
」が含まれ、共催も 4 回におよぶ。
このほか、2012 年 10 月には、復興からの発信と女性のエンパワーメントを目指して仙台で 2200 人の参加
者を集めて開催された「日本女性会議 2012 仙台」の後援も行った5。そのほか、東北大学が毎年市民を対象
に行っているイヴェントにも出品し、フェローなど若手研究者等が「せんだい男女共同参画推進財団」主催
の講演会等の講師をつとめる機会もあった。
4.運営面
運営面では、初年度に構築した GCOE 運営委員会・執行委員会を毎月(3 年次からは隔月)に開催した(2012
年 12 月までに運営委員会 30 回、執行委員会 49 回開催)ほか、CNDC 運営委員会、研究企画委員会を頻繁
に開催し、連携機関である東京大学社会科学研究所を含めた運営体制も強化した。
、
『GEMC journal』を英文・
また、広報ツールとして 6 ケ国語の HP を充実させるとともに『FACTBOOK』
和文版を毎年刊行し、活動内容等を国内外に発信した。
Ⅱ . GCOE 総括研究会「ジェンダー平等と多文化共生」
上記のような多様な研究活動の成果、とくにそのシナジー効果を検証するため、2012 年 8 月 2 日、仙台国
際センターで総括研究会を開催した。本誌の第 10 号特集号は、GCOE の 5 年間の総決算として開催された
GCOE 総括研究会「ジェンダー平等と多文化共生」の成果を問うことを企図している。当日は、人身取引、
ワークライフバランス、生殖補助医療、大震災復興問題などをめぐって 4 本の報告と討論を行った。本誌に
掲載したのは、その報告とコメントである。このこれらは、いずれも、男女共同参画(ジェンダー平等)と
多文化共生問題研究のシナジー効果が明確に示された分野であり、グローバル時代における問題の多面的側
面と課題の深刻さが明らかになった。フロアには、教育研究協力者でもある橋本ヒロ子国連婦人の地位委員
会日本代表、原ひろ子 JAICOWS(女性研究者の環境改善に関する懇談会)代表、山下泰子女性の地位協会
常務理事など、日本の男女共同参画を担ってきた多数のキーパーソンが参加して発言した。これにより、対
外的にも、対内的にも、非常に充実した総括の機会を得ることができた。内容については、本誌掲載の報告
とコメントに委ねるが、いずれも現代のグローバル化のなかでのジェンダー問題と共生の課題が明らかにさ
れており、適切なコメントによって、その学問的成果と学際的研究の展望も示されることになったと思う。
なお、当日のプログラムは下記のとおりである。
[GCOE 総括研究会]
日 時:2012 年 8 月 2 日(木)13:00 ∼17:45
会 場:仙台国際センター3 階「小会議室 8」
開会挨拶 辻村みよ子(プログラム拠点リーダー、東北大学大学院法学研究科教授)
【報告 1】
「人間の安全保障と男女共同参画」
報 告 高松香奈(国際基督教大学教養学部准教授)
コメンテータ 大沢真理(プログラム連携拠点リーダー、東京大学社会科学研究所教授)
司 会 萩原久美子(東京大学社会科学研究所特任助教、事業推進担当者)
【報告 2】
「
『利他的医療』の法原理と国家法」
報 告 米村滋人(東北大学大学院法学研究科准教授、事業推進担当者)
コメンテータ 水野紀子(プログラム拠点サブリーダー、東北大学大学院法学研究科長・教授)
司 会 久保野恵美子(東北大学大学院法学研究科教授、事業推進担当者)
【報告 3】
「現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画―社会制度に対する経済・経営・統計学的アプ
報 告 序文
009
10
2013.3
ローチ―」
吉田浩(東北大学大学院経済学研究科教授、事業推進担当者)
大澤理沙(東北大学大学院経済学研究科研究員)
コメンテータ 佐藤博樹(東京大学大学院情報学環教授、事業推進担当者)
司 会 森田果(東北大学大学院法学研究科准教授、事業推進担当者)
【報告 4】
“Mainstreaming Gender and Diversity into Tohoku Reconstruction: Theoretical and Practical Hurdles”
報 告 スティール若希(東京大学社会科学研究所准教授)
コメンテータ 大沢真理(プログラム連携拠点リーダー、東京大学社会科学研所教授)
「災害と外国人移住女性達―ジェンダー平等と多文化共生の主流化をめざして―」
〔原稿参加〕
李善姫(東北大学法学研究科 GCOE フェロー)
コメンテータ、司会 樺島博志(東北大学大学院法学研究科教授、事業推進担当者)
――――――――――
質疑討論 辻村みよ子、水野紀子、大沢真理 ほか、参加者全員
閉会挨拶 水野紀子(プログラム拠点サブリーダー、東北大学大学院法学研究科長・教授)
[2012 年度萩セミナー・報告会]
このほか、この研究会で報告されなかった分野を含め、総括的な研究成果の報告会を、2012 年の萩セミ
ナー(10 月 18 − 21 日)の第 1 日に開催し、すべての研究プロジェクトの成果と課題を論じあった。
Ⅲ . ジェンダー平等からジェンダー社会科学への展開
GCOE では、社会科学に属する学際的な学問分野を統合し、ジェンダー平等(男女共同参画)と多文化
共生の複合的な視点からジェンダーに関連する研究成果を総合して「ジェンダー社会科学」という新たな学
問を確立することを課題とした。幸いにも、GCOE 拠点リーダー辻村と連携拠点リーダー大沢が共同編集
(岩波書店、2011 年)が刊行されたことで、この課題に
した 4 巻シリーズ『ジェンダー社会科学の可能性』
大きく接近することができた。法学のみならず、政治学、経済学、社会学など広範な分野の研究者が連携し
て共通の目標に向かうことができ、学際的交流やネットワーキングの面でも有意義な機会となった。
「集中討議・ジェンダー社会科学の
この成果を確認するため、最終年度を目前にした 2012 年 3 月 20 日に、
可能性」を東京大学(伊藤国際学術研究センター・伊藤謝恩ホール)で開催し、執筆者約 30 名のほか、約
200 名が参加して議論を重ねた。ここでは、これまで日本のフェミニズム・ジェンダー論を牽引してきた上
野千鶴子東京大学名誉教授、江原由美子首都大学東京副学長など社会学者を始め、ジェンダー法学から浅倉
むつ子早稲田大学教授、広渡清吾専修大学教授、紙谷雅子学習院大学教授、政治学から宇野重規東京大学教
授、岩本美砂子三重大学教授、経済学から金子勝慶応義塾大学教授、足立真理子お茶の水女子大学教授など、
、大沢編
日本を代表する論客たちが参加して討論した。シリーズの 4 巻(辻村編『かけがえのない個から』
『承認と包摂へ』、辻村編『壁を超える』、大沢編『公正なグローバルコミュニティを』
)のそれぞれについて、
ジェンダー分析の学的インパクトと、課題・可能性を明らかにし、学際的な共通のタ―ムを構築して今後も
論じあってゆく必要を確認しあった。
その内容は、東京大学社会科学研究所、連携拠点研究シリーズ第 5 号『集中討議・ジェンダー社会科学の
可能性』(大沢真理=辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編、
2012 年 8 月)で公表されているので、参照されたい。
010
Ⅳ . 5 年間の GCOE 活動の総合的評価
以上のように、GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」拠点の 5 年間の活動は、質量とも
に非常に充実したものとなった。
その量的成果は、勿論、上記のようなシンポジウム・研究会の開催回数や、出版物の数、若手研究者の育
成状況等に示されている。質的にも、「グローバル時代におけるジェンダー平等と多文化共生に関わる様々
な社会問題を抽出して理論的に分析し、問題克服の糸口を解明して社会に還元する」という大きな課題に対
して、それぞれの分野で、大きな成果を得たと評することができる。これらのことは、刊行した多数の著書・
論文の内容に示されており、日本国内での受賞や法律雑誌等の書評等に、その評価が示されている。
研究成果を一言で総括することは困難であるが、これらの刊行物が、日本国内はもとより、世界各国のい
くつかの図書館(上記連携拠点のある主要大学の図書館のほか、コロンビア大学日本法図書館やパリ市立
マーガレット・デュラン図書館、パリ日本文化会館図書館等)に所蔵されていることからして、今後も本
GCOE 活動の科学的・歴史的意義が後世にわたり学際的・国際的に評価されることになると確信している。
また、2010 年の中間評価時にも指摘され、とくに後半の活動において注意を払った 15 の研究プロジェク
トの成果の「シナジー効果」の確保や、ジェンダー平等と多文化共生問題の相互連関については、とくに、
2012 年 8 月の総括研究会と 10 月の萩セミナーで確認したところである。前者の成果は本誌に掲載され、ま
た、後者で検討したジェンダー問題と多文化共生の問題の緊張と交錯問題については、内外の専門家によ
る 2 本の報告(Baden OFFORD“Gender, Sexuality and Cosmopolitanism in Multicultural Australia : A Case
Study”、志田陽子“Multiculturalism and Gender Issues”)が、それぞれ本誌 8 号と 9 号に掲載されているので、
参照願えれば幸いである。
(2)
記載の 10 校 13 機関)と東北大学の両方から博
さらに、本 GCOE では、上記連携大学・教育機関(1 −
士号(ダブル・ディグリー)を授与されることができるクロス・ナショナル・ドクトラル・コースの取り組
みが大きな成果をもたらした。海外の大学における学生の面接試験から、東北大学での英語による講義・学
位論文の指導、海外の大学での学位論文審査まで、大変な労力を割いて、大西仁 CNDC 運営委員会委員長・
拠点サブリーダーを中心に多くの教職員が参加して成し遂げたその成果は、他の何物にも代えられない賜物
であるといえる。
このような 5 年間の教育と研究の成果は、シェフィールド大学・リヨン第 2 大学・清華大学と東北大学法
学研究科の両方からダブル・ディグリーを取得し、2012 年 4 月の桜セミナーと同年 10 月の萩セミナーに参
加した、CNDC 学生 1 − 2 期生たちの感謝の言葉に示されている。そこには、イギリスのシェフィールド大
学の White Rose East Asia Centre の名誉フェロー(Honorary Fellow)となった Ra MASON 氏、中国の中国
人民大学の講師となった陳浩氏も含まれる。
また、2011 年度にリヨン大学と東北大学の学位を得て、今年からフランスのプロヴァンス大学の准教授
となった、Pauline CHERRIER 氏は、「この東北大学の GCOE と CNDC がなければ、私の将来はなかった。
私の一生にとってかけがえのない機会を与えてもらったことに、心から感謝している」と涙ぐんだ…。過労
死を恐れるほどのハードな活動日程や仕事量にもめげず、何とか 5 年間を乗り切ってきた疲れが、一度に吹
き飛んだ瞬間であった。
本誌第 1 号から第 10 号までに寄稿して下さった多くの皆さまや、200 名に及ぶ各分野の研究教育協力者の
皆さまに心より感謝したい。そして、我々の 5 年間の活動が、世界のジェンダー平等(男女共同参画)と多
文化共生の進展、諸課題の解決のために寄与し続けることができることを、一同、心より願っている。
(本号では、本研究拠点の出版物のほか、各研究プロジェクトの主な成果、各事業推進担当者の研究成果、
若手研究者の学位取得状況や研究成果などを一覧にしているため、巻末を参照されたい)
。
2012 年 12 月末日
拠点リーダー 辻村みよ子(文責)
サブリーダー 大西仁・水野紀子
連携拠点リーダー 大沢真理
序文
011
10
2013.3
註
1 Tohoku University Global COE Program“Gender Equality and Multicultural Conviviality in the Age of Globalization,”http://www.law.tohoku.
ac.jp/gcoe/
、
2 http://www.law.tohoku.ac.jp/gelapoc/ その研究成果は、東北大学 21 世紀 COE ジェンダー法・政策研究叢書[全 12 巻・辻村監修、2004-2008]
Miyoko TSUJIMURA(ed.)International Perspectives on Gender Equality, Tohoku University Press, 2008, Miyoko TSUJIMURA et Daniel
研究年法
(日・
Löchæk, (dir), Egalité des sexes: la discrimination positive en question, Société de Législation Comparée, 2006, など15冊の著書と、
英各 5 巻)
、
、
法律時報『学会展望』各年 12 月号(日
News Letter 1-18 号などに示されている。国際女性の地位協会編『国際女性』21 号(2008 年)
本評論社)
「ジェンダーと法」の項目に書評や紹介が掲載されている。
3 本稿で記した研究会等の回数は 2012 年 12 月末現在。数字には、相互に重複があるものも含まれる。
4 http://www.law.tohoku.ac.jp/gemc/ で蔵書の検索も可能。市民や学生にも公開して社会貢献に役立つとともに、GCOE 終了後は、東北大学の
男女共同参画総合センターの機能を持った組織としての存続が予定されている。
5 日本女性会議 2012 仙台(「きめる、うごく、東北(ここ)から」)の詳細は、http://joseikaigi2012sendai.jp/ 参照。大会実行委員会委員長を本
GCOE 拠点サブリーダー水野紀子が務め、全体会シンポジウムのコーディネ―ターを拠点リーダー辻村みよ子が務めた。
012
序文
013
10
2013.3
人間の安全保障と人身取引問題
―男女共同参画と多文化共生の試金石―
(大沢プロジェクト1)
人身取引対策とジェンダー平等
報告者 高松 香奈
Ⅰ. 人身取引対策としてのジェンダー平等
2012 年 4 月 3 日に、国連総会対話会合「人身売買と闘う:女性と子どもに対する暴力撤廃のためのパート
ナーシップと革新」(“Fighting Human Trafficking: Partnership and Innovation to End Violence against Women and Children”)が開催された。同会合に出席した UN Women 事務局長は、「人身取引の予防」の重要性
にふれ、予防のためのジェンダー平等の達成、女性のエンパワーメント、女性に対する暴力へのゼロ・トラ
レンスの取り組みに言及した(UN News Center, 2012)1。
これまでも、人身取引を撲滅するためにジェンダー平等の重要性が指摘されてきた。例えば 2002 年に開
催されたアジア欧州会合(ASEM)セミナー「女性と子どもの人身取引撲滅のためのジェンダー平等の促進」
(Promoting Gender Equality to Combat Trafficking in Women and Children)では、特に人身取引の被害者と
ならないためにジェンダー平等が重要である点が強調されている(UNIFEM, 2002)2。また、国際労働機関
(ILO)は、児童労働や、子どもの人身取引問題に関わる人々への教本の中で、人身取引問題解決のために
はジェンダー平等への取り組みが不可欠であることを示している(ILO, 2003: 25-26)3。さらに、国連薬物
犯罪事務所(UNODC)が 2006 年に公表した報告書『Trafficking in Persons: Global Patterns』は、送出国
127 か国、中継国 98 か国、受入国 137 か国の人身取引問題について考察し、複数の要因が幾重にも折り重な
った人身取引問題と地域により異なる被害者、加害者、搾取の特徴について明らかにした上で、人身取引
の予防について 7 つの点への取り組みを提案するが、その中で貧困や機会におけるジェンダー不平等など、
とりわけ女性と子どもの脆弱性を作り出している格差への対応の重要性について指摘している(UNODC,
2006: 12)4。
これらの指摘は、特に人身取引のプッシュ要因に対処するためのジェンダー平等の必要性に言及したもの
である。確かに、ジェンダー格差と人身取引(移動労働への)の誘因との関係は見逃せない。労働を目的に
非正規ルートで国境を渡った移動者に対して行った聞き取り調査の結果からも、女性は男性に比べ、出身コ
ミュニティで現金収入を得る機会が限られ、移動は唯一残された生活を成り立たせるための手段であった(高
松、2011)5。
さらには、ジェンダー平等やジェンダー意識の変革は、人身取引のプル要因への対処としても有効である
という示唆もある。日本で実施した意識調査を丹念に分析した Otsuki, Hatano(2009)6 の調査研究は、受入
国におけるジェンダー意識の固定化が受入国におけるプル要因に影響していることを指摘している。
以上から、人身取引問題の根底には、プッシュ要因・プル要因の双方でのジェンダー不平等やジェンダー
意識の固定化があり、その是正は人身取引問題に対処する上で基礎的な取り組みであることは確かなようだ。
とりわけ、最も多い形態の人身取引が性的搾取であり被害者の大多数が女性と女児という事実(UNDOC,
2009: 6)7 が示すように、ジェンダー格差や不平等が人身取引問題に与える影響は深刻であり、その是正が
強く求められるのだ。
014
地球上のすべての国が、人身取引の送出国、中継国、受入国のいずれかとして人身取引問題に関わってい
る。そのため、各政府は、人身取引のプッシュ要因・プル要因への対処、および被害者の保護、加害者の訴
追などの一連の対応が求められる。既述のように人身取引問題解決のためにジェンダー平等の必要性が指摘
されたが、各国内のジェンダー平等の状況は、人身取引の取り組みに影響を与えるのだろうか。米国は各国
政府の人身取引への取り組み状況を 4 区分に分け格付けをしているが、この取り組みの差と各国のジェンダ
ー平等の達成状況に関係性はあるのだろうか。
以上を背景に、本稿の目的は、「ジェンダー平等の状況は人身取引対策を促進する上で重要な社会要素の
一つか」という点について考察することである。
Ⅱ . 考察に使用するデータと問題点
ジェンダー平等の状況は人身取引対策を促進する上で重要な社会要素の一つかという点を確認するため
に、ジェンダー平等と人身取引対策との関係性について考察をしていく。ジェンダー平等の達成については、
世界経済フォーラムの報告書『The Global Gender Gap Report 2011』で示されたジェンダーギャップ指数を、
そして人身取引対策の進捗については米国務省報告『Trafficking in Person Report 2012』の各国格付けを使
用する。
世界経済フォーラムは 2006 年から毎年、各国のジェンダーギャップに着目した報告書『The Global Gender Gap Report 』を公表している。各国のジェンダーギャップは、数値化されランキング化されるが、これ
、教育分野(Educational Attainment)、保健
らの数値は経済分野(Economic Participation and Opportunity)
分野(Health and Survival)、政治分野(Political Empowerment)の 4 つの柱に沿って導き出されている(World
Economic Forum, 2011: 5)8。
具体的には、経済分野は「女性の就労率(対男性比)
」
、
「同一労働における賃金差(対男性比)
」
、
「女性の
所得(対男性比)」、「女性管理職率(対男性比)
」
、
「女性専門職・技術職率(対男性比)
」の 5 つの要素から
構成される。教育分野は、「女性の識字率(対男性比)
」
、
「女子初等教育就学率(ネット、対男性比)」、「女
子中等教育就学率(ネット、対男性比)」、「女子高等教育就学率(グロス、対男性比)
」の 4 つの要素から構
成されている。保健分野は、「出生時における男女比」
、
「女性の健康寿命率(対男性比)
」の 2 つの要素から
「女性国会議員率(対男性比)
」
「女性大臣率(対男性比)」、
、
構成される。政治分野は 3 つの要素から構成され、
」である。
「過去 50 年間に女性が首相・大統領となった年数の比率(対男性比)
ジェンダーギャップやジェンダー平等の達成状況について、世界経済フォーラム以外にも、これまで国連
開発計画(UNDP)などが『人間開発報告書』でジェンダー開発指数(GDI)やジェンダーエンパワーメン
ト指数(GEM)、ジェンダー不平等指数(GII)などの数値化に取り組んできた。しかし、これらに対して
批判的な意見も出されている。主な批判の一つは、ジェンダー平等や女性のエンパワーメントの数値化の方
法やウェイトのつけ方などに対する指摘である(Grown, 2008: 94-98)9。これらは、より精度の高い、より
実態を反映した数値化をめざし改良を求めるための指摘といえる。そして、もう一つの批判は、主に取り組
みを支える規範そのものへの指摘である。具体的には、土佐が解説するように、ジェンダー平等やジェンダ
ー主流化政策の評価に対しては、評価する側が持つ世界観による評価としての反発であり、ジェンダー平等
という点である
(土佐、
という尺度が「優劣関係を含んだ階層的文明秩序観を補強することにつながっている」
10
2011: 34-35) 。これは、例えば、ミレニアム開発目標にも示されるようにジェンダー平等の達成は、貧困
撲滅にも重要な要素であり、全世界的に取り組むべきであるというアプローチが強調される中で、ジェンダ
ー平等に立ち遅れている国々はどう解釈されるのかという課題である。国境横断的な取り組みが求められる
人身取引問題との関係の中で、ジェンダー平等の達成はどう議論されるのか避けては通れない課題であり、
この点どう解釈するべきなのか。
つぎに、人身取引問題への各国の取り組みに対する評価をみてみたい。各国の人身取引問題への取り組み
を評価し、格付けをする試みは、米国務省のみが実施しており、他に類似の試みはない。本稿が米国務省の
(TIP 報告書)は、
格付けを参照するのは、この理由による。米国務省『Trafficking in Person Report 2012』
人身取引の予防、被害者の保護、加害者の訴追の 3 つの視点から各国の状況について言及し、格付けを行っ
人身取引対策とジェンダー平等
015
10
2013.3
ている。格付けの根拠は米国政府が 2000 年に成立させた
「Trafficking Victims Protection Act of 2000」
(TVPA)
、最低基準を満たしていないが、人身取引対策の努力
である。TVPA 最低基準を満たしている国を「Tier1」
している国を「Tier2」、最低基準を満たさず人身取引対策の努力をしているが、国内に深刻な人身取引の
、最低基準を満たす努力をしていない国を「Tier3」とし
被害者がおり、増加傾向にある国を「Tier2 監視」
11
ている(U.S. Department of States, 2012: 51) 。この TVPA 最低基準とは、主に深刻な人身取引を禁止、処
罰する取り組みを行っているかなど 4 つの基準と 11 の評価項目からなる(U.S. Department of States, 2012:
388)12。尚、4 つの基準と 11 の評価項目いずれにも、ジェンダー平等を直接言及している箇所は見られない。
そのため、ジェンダー平等の状況と格付けの間に何らかの関連が見られた場合は、ジェンダー平等は深刻な
人身取引を禁止、処罰する取り組みを推進するうえでの環境条件の一つと判断できるであろう。
TIP 報告書、主にその格付けに対しては、その評価に不満を持つ国からの反発がこれまでに見られたこと
もあった(朝日新聞 2002 年 6 月 8 日朝刊 6)13。反発の主な理由は各国の取り組みに対する米国政府による過
小評価にあるが、推測すると米国が作成した基準により一方的に評価・格付けされることや、格付けの基準
がかならずしも明確ではないと感じることへの不満といえよう。実際、取り組み状況に大きな違いが見られ
ない場合でも、米国から制裁を受けている国や米国に敵対すると考えられている国と、米国が関係を重視し
ている国とでは、格付け結果がだいぶ異なると判断できるケースもある。そのため、格付けそのものが米国
の外交をだいぶ意識した内容となっているという見方もできる。すなわち、格付けに関して、米国の恣意性
を完全に排除することは困難なようである。
Ⅲ . データの考察
1.経済的規模と人身取引対策の関係
米国 TVPA 最低基準を満たしている国(Tier1 とされる国)には、OECD 諸国が多くみられることから(図
表 2 参照)、まず経済規模との関係を考察してみたい。経済規模の指標として米ドル換算された一人当たり
GDP(購買力平価)を使用する。
図表 1 で示されたように、 経済規模と人身取引の格付けには関係性がみられた。TIP 報告書の格付け、各
国の一人当たり GDP(PPP)の関係を見ると、より良い格付け(3 → 1 に近づく)となるには、一人当たり
GDP の値が高くなる傾向があることを示唆している。すなわち、経済規模の大きい国のほうが、より米国
の設定した最低基準を満たす傾向にある。
図表 1 経済規模と人身取引対策の格付けとの関係
人身取引対策の格付け
相関係数
一人当たり GDP (PPP)
** p<0.01
-.577(**)
これは、TVPA 最低基準の 4 つの基準と 11 の評価項目に関係するのかもしれない。それは、基準と評価項
目では、法の遵守・執行能力をはじめ、啓発教育活動などの分野での取り組みが求められるため、ある程度
の経済力がありガバナンスが機能している国がより基準を満たしやすいのかもしれない。
016
図表 2 各国格付け
Tier 2
Tier 1
Australia
Austria
Belgium
Canada
Colombia
Croatia
Cze ch Repu blic
Denmark
Finland
France
Georgia
Germany
Iceland
Ireland
Israel
Italy
Korea, south
Lithuania
Luxembourg
Mace don ia
Mauritius
Netherlands
New Zealand
Nicaragua
Norway
Poland
Slovak Republic
Slove nia
Spain
Sweden
Taiwan
United Kingdom
United States of America
Albania
Antigua & Barbuda
Argentina
Armenia
Aruba
Bangladesh
B elize
Benin
Bolivia
Bosnia & Herzegovina
Botswana
Brazil
Brunei
Bulgaria
Burkina Faso
Cambo dia
Cameroon
Cape Verde
Chile
Costa Rica
Cote d’Ivoire
Curacao
Dominican Republic
Egypt
El Salvador
Estonia
Ethiopia
Fiji
Gabon
Ghana
Greece
Guatemala
Guinea
Guyana
Honduras
Hong Kong
Hungary
India
Indonesia
Japan
Jordan
Kazakhstan
Kiribati
Kosovo
Kyrgyz Republic
Laos
Latvia
Lesotho
Mali
Malta
Marshall Islands
Mexico
Moldova
Mongolia
Montenegro
Morocco
Mozambique
Nepal
Nigeria
Oman
Pakistan
Palau
Panama
Paraguay
Peru
Philippines
Portugal
Qatar
Romania
Rwanda
St. Lucia
St. Vincent & The Gren.
Serbia
Singapore
Solomon Islands
South Africa
Sri Lanka
Swaziland
Switzerland
Tajikistan
Tanzania
Timor-Leste
Togo
Tonga
Trinidad & Tobago
Tunisia
Turkey
Uganda
Ukraine
United Arab Emirates
Uruguay
Vietnam
Zambia
Tier 2 Watch
Afghanistan
Angola
Azerbaijan
the Bahamas
Bahrain
Barbados
Belarus
Burma
Burundi
Chad
China (PRC)
Comoros
Congo, Republic of
Cyprus
Djibouti
Ecuador
The Gambia
Guinea-Bissau
Haiti
Iraq
Jamaica
Kenya
Lebanon
Liberia
Macau
Malawi
Malaysia
Maldives
Mauritania
Micronesia
Namibia
Niger
Russia
Senegal
Seychelles
Sierra Leone
South Sudan
Suriname
Thailand
Turkmenistan
Uzbekistan
Venezuela
Tier 3
Algeria
Central African Rep.
Congo (DRC)
Cuba
Equatorial Guinea
Eritrea
Iran
Korea, North
Kuwait
Libya
Madagascar
Papua New Guinea
Saudi Arabia
Sudan
Syria
Y e me n
Zimbabwe
So malia Spec ial Case
(出所:Trafficking in Persons Report 2012, p.52)
(出所:Trafficking
in Persons Report 2012, p52)
2.ジェンダーギャップの縮小は人身取引対策に不可欠な要素
とはいえ、経済的規模が大きくなるだけで、人身取引の対策が自ずと進むということではないという点を
強調しておきたい。TIP 報告書の格付けと、各国のジェンダーギャップとの関係を考察してみると、ジェン
ダーギャップの縮小が人身取引対策の促進にとって重要な環境要素である可能性が高いのだ。図表 3 で示す
ように、データの揃った 135 か国全体をみると、負の相関があることがわかる。すなわち、ジェンダーギャ
、順位付けも上昇する(3 → 1 数字が減少する。2.5
ップが改善されると(数値として 0 から 1 に増加すると)
は Tier2 監視を示す)傾向がある。特に、経済分野、教育分野、政治分野におけるジェンダーギャップの改
善と格付けは関係が強いようである。一方で、保健分野のジェンダーギャップは、格付けに対して特別な影
響は与えないようである。
人身取引対策とジェンダー平等
017
10
2013.3
図表 3 米国務省格付けとジェンダーギャップとの関係
人身取引 位置付け
全体(135カ国)
高所得国(45カ国)
上位中所得国(37カ国)
下位中所得国(33カ国)
低所得国(19カ国)
全体
-.492(**)
-.582(**)
-0.188
-.468(**)
0.107
** p<0.01
相関係数
グローバルジェンダーギャップ指数
経済分野
教育分野
保健分野
-.313(**)
-.284(**)
-0.154
-.388(**)
-.349(*)
-.301(*)
-0.145
-0.251
-0.137
-.382(*)
-.442(*)
0.174
0.247
0.245
-0.182
* p<0.05
政治分野
-.437(**)
-.573(**)
-0.109
-0.227
-0.298
以下は、経済分野におけるジェンダーギャップの状況、経済的規模と格付けを示したものである。既述の
通り、経済規模が上昇すると、TVPA 最低基準を満たす傾向にあるが、図表 4 で示すようにある程度のばら
つきは見られるものの、経済規模の大きい国の中で、経済分野でのジェンダーギャップが大きい国は取り組
みが立ち遅れる傾向にあると言えよう。これは同様に、経済規模の中規模な国でも言え、最低基準を満たす
努力をしていない国(Tier3)は、ジェンダーギャップの縮小に立ち遅れている国という傾向があるであろう。
平等
シンガポール
スイス
アラブ首長国連邦
日本
ギャップ
図表 4 経済分野のジェンダーギャップと格付け
一人当たり GDP が大きく、Tier2 に位置付けられている国で、ジェンダーギャップが著しいのはアラブ
首長国連邦である。米国務省報告は、アラブ首長国連邦の人身取引の現状について、民間分野で労働人口
の 90%が移民労働者であることに触れ、移民労働者に対する制限的な保証人法が移民労働者の立場を弱め、
搾取しやすい状況を作っていると指摘し、また、性的搾取を目的とした人身取引と比較し、強制労働を撲滅
する努力が不足している点についても言及している(U.S. Department of States, 2012: 355)14。
図表 4 を見ると、一人当たり GDP が大きい国々の中で、アラブ首長国連邦の例は顕著であるが、一人当
たり GDP が大きく Tier2 に位置付けられている国として、シンガポールとスイスがあげられる。
米国務省報告はシンガポールの人身取引問題の現状について、同国の全労働者の 1/3 以上が外国人労働者
018
であることに触れ、債務の存在、低スキル労働者が他の職を探すことに対する制限や雇用主に認められてい
る権限など、外国人労働者が弱い立場に置かれていること、また置かれやすい状況について指摘している
(U.S. Department of States, 2012: 309)15。そして、スイスの人身取引問題の現状については、人身取引ケー
スの増加について触れ、女性の性的搾取や子どもに強制的に「物乞い」や「万引き」をさせるためにヨーロ
ッパの異なる地域から「ロマ人」が連れてこられていること、そしてジュネーブでの外交官世帯での家事使
用人の強制労働問題が指摘されている(U.S. Department of States, 2012: 330)16。
次に教育分野をみてみたい。一般的に、国の経済規模が大きくなると、教育分野のジェンダーギャップが
縮小する傾向にある。逆に、一人当たり GDP を高めるには、女性の教育が不可欠である傾向を示している
ともいえる。経済規模が大きくても、教育分野でのジェンダーギャップが残る国や、ジェンダーギャップ
。経済規模が大きい国では、他の
が見られるものの TVPA 最低基準を満たす国も見られる(例として韓国)
国々と比較すると、シンガポール(Tier2)は教育でのジェンダーギャップが比較的大きいといえる。図表 5
からは、経済規模が小さい国で人身取引対策を進めるには教育分野でのジェンダーギャップを縮小させるこ
とが不可欠といえよう。これは本稿冒頭で触れたように、人身取引の予防としてジェンダー平等の重要性が
UN Women, ILO, UNODC 等から指摘されたが、特に人身取引の送出国で女性や女児を人身取引の被害者に
しないためには、教育分野のジェンダー平等が不可欠といえる。
平等
韓国
シンガポール
ギャップ
図表 5 教育分野のジェンダーギャップと格付け
つぎに政治分野について見てみたい。他の分野と同様に、国の経済規模が大きくなると TVPA 最低基準を
満たす傾向にある。しかし、経済規模が大きい国でも、政治分野でのジェンダーギャップが顕著な国は、人
身取引対策が進まない傾向にあるといえる。政治分野でのジェンダーギャップは、経済分野、教育分野と比
較してもより顕著といえる。つまり、人身取引対策を強化するには、女性政治家の役割が重要と推察するこ
とができるのではないだろうか。
人身取引対策とジェンダー平等
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平等
アラブ
首長国連邦
ギャップ
日本
シンガポール
図表 6 政治分野のジェンダーギャップと格付け
以上が、全体(135 か国)の考察結果である。米国務省格付けと世界経済フォーラムのジェンダーギャッ
プとの関係をみると、特に高所得国の政治分野におけるジェンダーギャップの縮小は重要な要素といえそう
である。国際的な人身取引の流れは、人身取引に関わるブローカーのネットワークなども考慮に入れる必要
があり、経済的規模に応じて、人身取引の送出国、中継国、送出国と区別することは難しい。しかし、人身
取引の流れがより経済的規模の大きい国々に向かっている傾向から、より受入国となる高所得国においてジ
ェンダーギャップの縮小、とりわけ政治分野でのジェンダーギャップ縮小の必要性が示唆された。受入国側
が人身取引対策を進めていくうえで、ジェンダー平等は必要不可欠な環境条件の一つといえ、特に女性議員
の政策決定への関与は絶対不可欠な要素といえよう。
高所得国でも、より人身取引の受入国となる OECD 諸国の格差に焦点を絞って考察してみたい。図表 7 は、
OECD 諸国のジェンダーギャップと相対的貧困について示した。一般的にジェンダーギャップが残る国は、
国内の貧困(相対的貧困)の状況がより深刻である可能性が高いと言えるが、TVPA 最低基準を満たすか否
かという点には、ばらつきが見られる。しかし、国内の相対的貧困問題が顕著で、かつジェンダー格差を放
置している国は日本と韓国であり、日本は Tier2、韓国は Tier1 となっている。韓国はジェンダーギャップ指
標や相対的貧困の指標で、日本と問題を共有している国の一つである。また、これまでに考察から導かれ
た傾向からすると、取り組みに立ち遅れている可能性が高い国ともいえる。しかし、米国務省の格付けは
Tier1 となっている。米国務省の報告書を参照すると、韓国は人身取引の加害者を適切に訴追し、主に性的
搾取を目的とした人身取引の予防を行っている点が評価されている(U.S. Department of States, 2012: 210211)17。米国務省の TVPA 最低基準は禁止や処罰にウェイトが置かれており、確かに韓国は国務省報告がカ
バーする期間に訴追が行われている点が評価されており、法的枠組みに沿った対応が行われているのかもし
れないが、国内のジェンダーギャップを縮小することで、人身取引対策への環境が整備され安定的な対策が
可能となるのかもしれない。同時に日本は、法的枠組みに沿った対応とジェンダーギャップの縮小を念頭に
おいていく必要があることを示す。考察の結果この 2 か国の対応は強調されるべきであるが、特記すべきは、
020
人身取引問題がアジア・太平洋地域でより深刻と言われ(ILO, 2008: 3)18、日本と韓国は受入国であるとい
う事実であり、両国の取り組みはとりわけ重要である。
貧困率︵可処分所得の中央値 %未満︶
50
イスラエル
日本
韓国
格差
平等
10
図表 7 OECD 諸国 ジェンダーギャップと相対的貧困
Ⅳ . おわりに
本稿では、「ジェンダー平等の状況は人身取引対策を促進する上で重要な社会要素の一つか」という問い
に応えるために、世界経済フォーラムの公表するジェンダーギャップ指数と、米国務省の人身取引対策の各
国格付けを使用し、分析を行った。ジェンダーギャップの縮小は、プッシュ要因、プル要因を縮小すること
以上に、国が人身取引対策を進めるための重要な社会要素となりうる可能性を示唆したといえる。
考察結果を要約すると、①経済的規模の大きい国でより人身取引対策が進む傾向、②経済分野、教育分野、
政治分野でのジェンダー格差の縮小は人身取引対策を促進させる傾向、③とりわけ人身取引の受入国となり
やすい高所得国で経済分野、政治分野のジェンダー格差を縮小させることは人身取引対策を促進させる傾向、
ということである。特に高所得国では、女性政治家を増やすことは、対策を促進する上で鍵となるのではな
いだろうか。やはり被害者の多くが女性と女児という人身取引問題に対しては、政策決定過程で女性議員の
役割が求められるのである。
これらの考察結果から示唆されるのは、特に受入国で人身取引対策を進める環境としてのジェンダー平等
の推進が大切であるということである。人身取引は国境横断的課題であり、全世界が足並みを揃え対応して
人身取引対策とジェンダー平等
021
10
2013.3
いく必要があるが、この視座からはジェンダー平等から立ち遅れた国々は、人身取引対策という観点からは
「問題」ともいえ、特に受入国はこの点を認識し、取組を充実させていかなくてはならないのではないだろ
うか。
註
1 UN News Center Home Page Remarks to General Assembly Interactive Dialogue "Fighting Human Trafficking: Partnership and Innovation to
End Violence against Women" http://www.un.org/apps/news/infocus/sgspeeches/statments_full.asp?statID=1496(最終アクセス日 2012 年 10 月
8 日)
2 UNIFEM(2002)Promoting Gender Equality to Combat Trafficking in Women and Children, ASEM seminar co-organized by the Ministry for
Foreign Affairs, Sweden and UNIFEM in co-operation with UNESCAP, 7-9 October 2002(セミナー報告書)
3 ILO(2003)Promotion of Gender Equality in Action against Child Labour and Trafficking: A Practical Guide for Organizations, Bangkok,
International Labour Office
4 United Nations Office on Drugs and Crime(UNODC)Trafficking in Persons Global Patterns April 2006(ダウンロード可能 http://www.
unodc.org/pdf/traffickinginpersons_report_2006-04.pdf)
『政府開発援助政策と人間の安全保障』日本評論社
5 高松香奈(2011)
“Japanese Perceptions of Trafficking in Persons: An Analysis of the‘Demand’for Sexual Services
6 OTSUKI, Nami, HATANO, Keiko(2009)
and Politics for Dealing with Trafficking Survivors”, Social Science Japan Journal Vol.12, / No.1, pp. 45-70
7 UNODC(2009)Global Report on Trafficking in Persons, UNODC
8 World Economic Forum(2011)The Global Gender Gap Report 2011, Geneva, Switzerland
“Indicators and Indexes of Gender Equality: What Do They Measure and What Do They Miss?”
, Buvinic, Morrison,
9 Grown, Caren(2008)
Ofosu-Amaah, Sjoblom eds, Equality for Women, The World Bank
「第 2 章 比較するまなざしと交差性―ジェンダー主流化政策の波及 / 阻害をどう見るか」日本比較政治学会編 『ジェンダ
10 土佐弘之(2011)
ーと比較政治学』日本比較政治学会年報第 13 号、ミネルバ書房
11 U.S. Department of States(2012)Trafficking in Persons Report 2012, http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2012/index.htm( 最 終 アクセ ス日
2012 年 10 月 8 日)
12 U.S. Department of States(2012)Trafficking in Persons Report 2012, http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2012/index.htm( 最 終 アクセ ス日
2012 年 10 月 8 日)
」
13 朝日新聞 2002 年 6 月 8 日朝刊 6 面「これは米国の問題 カンボジア副首相(ことば・ワールド)
14 U.S. Department of States(2012)Trafficking in Persons Report 2012, http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2012/index.htm(最終アクセス日
2012 年 10 月 8 日)
15 U.S. Department of States(2012)Trafficking in Persons Report 2012, http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2012/index.htm( 最 終 アクセ ス日
2012 年 10 月 8 日)
16 U.S. Department of States(2012)Trafficking in Persons Report 2012, http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2012/index.htm( 最 終 アクセ ス日
2012 年 10 月 8 日)
17 U.S. Department of States(2012)Trafficking in Persons Report 2012, http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2012/index.htm( 最 終 アクセ ス日
2012 年 10 月 8 日)
18 ILO(2008)ILO Action against Trafficking in Human Beings, ILO
022
Comments
大沢 真理
ここでは、高松報告にたいする直接のコメントとともに、質疑討論につながるような論点も提供したい。
Ⅰ. 日本の人身取引対策は 2 等級
まず高松報告にたいして補足をおこなう。政府による人身取引撲滅の取り組みにかんして、アメリカ国務
省の毎年の『人身取引報告書』における格付けでは、2001 年の第 1 回報告書以来、日本はティア 2(Tier2)
であり続けている。2000 年に制定された米国人身取引被害者保護法(TVPA)の「最低基準」を、当該国の
、最低基準を満たしていないが、満たそうとして相当の努
政府の取り組みが満たしていれば 1 等級(Tier 1)
力をしていれば 2 等級(Tier 2)、最低基準を満たさず、満たそうという努力もしていなければ 3 等級(Tier 3)
である。主要先進国は、韓国も含めて 1 等級であるが、日本は 2 等級なのである。しかも 2004 年には、日本
は Tier2 Watch、すなわち「2 等級−監視対象」に格付けられたこともある。
2 等級監視対象とは、2 等級のなかで以下の 3 ついずれかに該当する国である。①被害者の絶対数が相当
であるか、かなり増大している、②前年よりも努力を増しているという証拠を提供できない、③翌年に追
加的なステップを取るという誓約により、相当の努力をしていると認められた(U.S. Department of State
2004: 28)。この 2 等級−監視対象の格付けにたいして、日本政府は愕然としたといっていいだろう。この
格付けの理由は、人身取引対策行動計画の策定(2004 年 12 月)に至る対策が取られていても、国内での予
防(prevention)、さらに加害者の訴追(prosecution)などの面で、依然として取り組みが弱いという点を、
厳しく査定されたためである。また、2006 年の報告書では、人身取引を行った者が起訴され有罪となって
も大多数が執行猶予であること、被害女性が捜査や訴追に協力しようにも被害女性保護が不十分であるこ
と、売春は違法だが「需要」を違法にする努力が見られないことが、指摘された(U.S. Department of State
2006: 149-151)。
こうした状況において、「プル要因」にかかわる事情は、高松報告も援用している大槻奈巳・羽田野慶子
。同論文によ
の共著論文で、大規模アンケート調査の結果にそくして分析された(Otsuki & Hatano 2009)
れば、「男女は本質的に違う」と考える人ほど、性的サービスを買うことを容認する傾向がある。いいかえ
れば、男女特性論であり、日本社会では依然としてそれが強い。
日本への人身取引は、性的搾取を目的とするケースが大部分であるが、近年では外国人技能実習生・研
修生の制度も、強制労働ではないかという観点から、アメリカ国務省によって問題視されている(U.S. Department of State 2007: 124)。
ところで、人身取引の被害者を送り出したり中継する社会、そして人身取引の被害者が多数送り込まれる
ような社会では、いわゆるソーシャル・コヒージョン(social cohesion、社会的結合力)という面で、問題
が大きいのではないか。いくつかの指標でその関連をつかむことができると考える。
Ⅱ . 注目される社会的結合力
1.学問のもう一つのフロンティア
社会的結合力について、社会の持続可能性を測っていくうえで非常に重要な変数だということが、いくつ
かのアプローチで共通して注目されている。ジェンダー研究はもちろんのこと、それと共鳴するようなアプ
ローチとして、例えば制度重視の開発論や開発経済学、逆システム学、障害学などをあげることができる。
逆システム学は、経済学者の金子勝と血管学者の児玉龍彦により『逆システム学』
(岩波新書、2004 年)で
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023
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提起されたものである。また、ソーシャル・エピデミオロジー(social epidemiology、社会疫学)といわれ
る分野が、社会科学と近接しつつ社会的結合力に注目している。
たとえば制度重視の開発論では、広義の社会保障や社会保険による社会的包摂が強い社会において、市場
メカニズムの機能も支えられ、長期的な経済成長を達成していることが、
確認されている。
社会的結合力とは、
周知のソーシャル・キャピタル(social capital、社会資本)概念を拡張したリーツェンらの概念に由来して
、c. 所得分配の平等度(ジニ係数と中流 60%が占める
いる。指標は、a. 団体の組織度と加入度、b.「信頼」
所得シェア)、d. 民族的分裂度(ジェンダー・教育・階級・障害による分裂にも着目)である(石井 2003)。
また障害学では、近年、従来の「医学モデル」から、
「社会モデル」への転換が大きな流れになっている。
医学モデルでは、個人に医学的に特定できるようなインペアメント(impairment)があることが障害であり、
それを外科的に、あるいはリハビリによって克服すると障害者の社会統合が進むと捉える。これにたいして
社会モデルでは、インペアメントをインペアメントたらしめているのは、社会の側のハード・ソフトの構成
であると捉えるのである。
これについて、理論経済学の領域から果敢に挑戦しているのが、ゲーム理論家の松井彰彦東京大学教授で
ある。ゲーム理論では演繹論的ゲーム理論が主流であるが、松井は帰納論的ゲーム理論の開発に取り組んで
おり、特に偏見を持たない人のあいだでも差別や隔離が起こり、固定化する恐れがあるという点を理論的に
説明することに成功している(松井 2012)。
社会疫学においては、もう 1 つの医学フロンティアが提案されている。従来のアプローチが、人間の個人
の身体、臓器、ホルモン、遺伝子、分子というように、要素に還元していくアプローチであったとすれば、
「生物・心理・社会」モデルで捉え、人間と
新しいもう 1 つの医学フロンティアとは、人間を生態学的に、
環境との相互作用を重視して包括的・全体的に健康を追究するアプローチである。ニュー・パブリック・ヘ
。いわゆる性差医療は、ニュー・パブリック・ヘルス
ルス(New Public Health)とも呼ばれる(近藤 2005)
のなかでも、ジェンダーを重視している流れと言えるのではないだろうか。要素還元的アプローチというの
は、従来の生物学・医学モデル以上に主流経済学についてもあてはまることである。
024
2.所得格差と健康社会問題指標
さて上図は、社会疫学の成果の 1 つであり、その国際的な啓発団体 Equality Trust のホームページに掲載
されている。縦軸が健康・社会問題指数、すなわち、平均寿命、子どもの数学と読解力の成績、乳幼児死亡率、
殺人や収監者の比率、10 代の出産等々を統合した指数である。横軸は所得の不平等であり、健康社会問題
指数の国際的な差異は、所得不平等度との相関が高い、ということを示す。注意するべきは、所得格差が大
きい社会では、低所得層のみならず中・高所得層でも健康および社会問題が大きい傾向があることだ。中以
上の層の指標で、国や州によって 3 倍から 10 倍の差がある。所得格差は、一部のハイリスクグループだけ
でなく、人口全体に影響する。その理由は、所得格差の大きな社会では、ストレスが高く、自律神経やホル
モンの働きが慢性的に乱されるため、免疫機能の低下や血圧・血糖値の亢進を招くからだという(ウィルキ
。
ンソンとビケット 2009 = 2010;http://www.equalitytrust.org.uk/)
それは、むろん因果関係ではないが、多数の回帰分析がなされている。日本は左の最も低い位置にあり、
所得不平等が小さくて、健康社会問題指数において非常に問題が小さいことになる。
しかし、日本のこのような位置づけには疑問が提起されている。所得不平等度のデータが日本については
1980 年代の数値で、近年の格差拡大を反映していないこと、また所得不平等の尺度が 20 /80 率と略称され
るもので、日本の実態を反映しにくいこと、などである。20 /80 率とは、所得 5 分位の最下位と最上位の
所得比である。日本の所得分布の特徴は、中間層と富裕層の格差が比較的小さく、所得中央値の 50% 未満
の人口比率が比較的高い点にある。所得中央値の 50% 未満の低所得は「相対的貧困」と呼ばれ、その人口
。
比率である相対的貧困率は、日本では先進国で最も高い部類にある(阿部 2011)
上述の社会的結合力のなかでも社会的信頼について、最新の調査がシティズンシップ(Citizenship)2004
でおこなわれており、日本での人への信頼はかなり低いレベルにある。その数値と相対的貧困率を散布図に
すると、下図のとおりである。人への信頼は、日本が最低の 32.3%、貧困率は 3 番目に高い。
人身取引対策とジェンダー平等
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3.信頼と相対的貧困率
注:横軸は、「他人と接する時、相手を信頼できるか、用心する方がいいか」
「いつも信頼できる」と「たいてい信頼できる」の回答の合計。
出所:信頼は、International Social Survey Program,“Citizenship 2004,”Q13、
相対的貧困率は OECD StatExtracts の数値より作成。
日本の相対的貧困率が諸外国に比して高い要因として、
労働年齢人口については女性の稼得力が弱いこと、
高齢人口については、単身女性の貧困率が高く、高齢単身女性が増加してきたことを、指摘できる。いずれ
もジェンダー問題である。
Ⅲ . 結語
再度、高松報告に引き付けると、性的搾取を目的とした人身取引を、東南アジア、コロンビア、あるいは
ロシアなどの諸国から日本が大量に吸引している現状は、日本社会の根強いジェンダー不平等および男女特
性論と強く関連している。男女共同参画と多文化共生とは、統合的に捉えて取り組んでいくべき課題である
ことを、強く示唆しているといえよう。
引用文献
Otsuki, Nami & Keiko Hatano(2009)
,“Japanese Perceptions of Trafficking in Persons: An Analysis of the‘Demand’for Sexual Services and
, 45-70.
Policies for Dealing with Trafficking Survivors,”Social Science Japan Journal, 12(1)
, Trafficking in Persons Report 2004.
U.S. Department of State(2004)
, Trafficking in Persons Report 2006.
U.S. Department of State(2006)
, Trafficking in Persons Report 2007.
U.S. Department of State(2007)
阿部彩(2011)
『弱者の居場所がない社会 貧困・格差と社会的包摂』講談社現代新書
石井菜穂子(2003)
『長期経済発展の実証分析 成長メカニズムを機能させる制度は何か』日本経済新聞社
ウィルキンソン、R. とビケット、K.(2009 = 2010)酒井秦介 訳『平等社会―経済成長に代わる、次の目標』東洋経済新報社
金子勝・児玉龍彦(2004)
『逆システム学』岩波新書
近藤克則(2005)
『健康格差社会−何が心と健康を蝕むのか』医学書院
松井彰彦(2012)
「帰納論的ゲーム理論とその応用」
、2012 年 6 月 19 日東京大学社会科学研究所全所的プロジェクト研究『ガバナンスを問い直す』
第 25 回セミナー報告
026
人身取引対策とジェンダー平等
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10
2013.3
少子高齢化をめぐる国家と私的領域(水野プロジェクト2)
「利他的医療」の法原理と国家法
報告者 米村 滋人
Ⅰ. はじめに
筆者は、2008 年度から 5 年間、水野紀子教授をプロジェクト責任者とするプロジェクト「少子高齢化を
めぐる国家と私的領域」のメンバーとして研究活動を行ってきた。プロジェクトの取り組んだ研究内容は極
めて多岐にわたり、容易に全体をまとめることはできないが、本報告は、このプロジェクトにおける研究活
動の総括を兼ねて、「利他的医療」に関する諸問題を素材として少子高齢化社会における法律問題の解決の
糸口を探るものである。
Ⅱ . 医療に関する一般的法規範
まず、医療に関する法規範の一般的な内容につき整理しておく。医療に関する法規範として第 1 に挙げら
れるのは、憲法上の規範である。具体的に医療において問題となるものとして、生存権、生命権、自己決定
権・プライバシー権等の幸福追求権、平等原則・比例原則等の憲法原則などが挙げられる。これらはいずれ
も重要な人権ないし法原則であるが、内容の抽象性が高く、個別の事案の解決にどの程度寄与するかが判然
としないものも多い。
これに対して、民刑事法の規範としては、「治療行為の正当化要件」に関する刑法上の議論や医療過誤責
任の要件論(過失・違法性・因果関係など)が挙げられ、後者の一環として、インフォームド・コンセント
や説明義務に関する諸問題が論じられる。これらの民刑事法の諸規範は、憲法規範に比して具体的であり、
個別事案の解決を可能にする規範形成に重点が置かれていたと見うる。
少し詳細に説明しよう。まず、「治療行為の正当化要件」論は、主として刑事法理論に基づく議論である。
治療目的であっても手術・投薬等の医療処置は傷害罪の構成要件に該当するため、それらの医療処置を合法
的に行いうる(違法性を阻却する)ための要件が論じられてきた。具体的には、①患者の同意、②医学的適
応性・医術的正当性の 2 つが挙げられるのが通常であるが1、後者は一括して「医学的正当性」と表現する
こともできる 2。①の「患者の同意」は、伝統的な考え方によれば必ずしも患者により明示される必要はなく、
治療法を提示されて異議を述べなかった場合にも「黙示の同意」として同意ありとされる。また、本人が不
在の場合や一切説明を聞いていない場合でも、
「本人が現実に同意するか否かを問われたならば同意したで
あろう」と考えられる場合には、「推定的同意」として現実の同意があったのと同じ効果が認められる。ま
」に即しているか否かを意味するとされたが、
た②の「医学的正当性」は、かつては「医学準則(lege artis)
現在では、より広く、「その医療行為を客観的に正当とみなしうるかどうか」を判断するものとされる。通
常の医療行為の場合には、患者の優越的利益(医療行為の危険性よりも患者本人の享受する利益が優越する
こと)があれば認められるとされている。これに対して、子どもの医療においては子ども本人は法的に有効
028
な同意行うことができないため、医学的正当性の要件が極めて重要であり、この点が厳格に判断される傾向
」がその内容となるとされるこ
にある。具体的にはアメリカ法にならい、子の「最善の利益(best interest)
とが多い。
以上のような伝統的な議論とは別の形でわが国に入ったのが、インフォームド・コンセント法理である。
インフォームド・コンセント法理は 1970 年代にアメリカで確立した判例法理であり、同時期における公民
権運動の高まりを背景に完成された生命倫理学(bioethics)の提唱する、通常の医療における患者の同意や
医学研究における被験者の同意を不可欠とする「自律尊重原則」の一環として、この法理も理解されるよ
うになった3。インフォームド・コンセント論においては、十分な説明が同意の前提として極めて重視され、
説明なくして有効な同意がなされることはない。また、同意は現実に存在する必要があり、書面の形での明
示が要求されるとの理解が多い。これらはいずれも、伝統理論における「患者の同意」とは大きく異なると
言える。
インフォームド・コンセント論は医療に関する法規範に絶大な影響力を及ぼし、現在では医療関係者の中
でこの言葉を知らない者はいないであろう。その反面、インフォームド・コンセントは過度に重視される傾
向が否めず、インフォームド・コンセントさえあれば医療行為がすべて正当化されるとの見解すら出現して
いるのが現状である4。
Ⅲ .「利他的医療」の諸問題
1.「利他的医療」の意義
以上を前提に、本稿の主たる検討対象である「利他的医療」の現状と課題に論を進める。まず、
そもそも「利
他的医療」とは筆者独自の用語法であるが、第一義的には「第三者に利益を与えることを目的としてなされ
る医療」を指すものとする。ただし、主目的は当事者の利益であっても、結果として第三者の利益をもたら
す場合を含むものとする。具体例としては、臓器移植、生殖補助医療、医学研究の意義を有する医療(治験・
臨床試験など)が挙げられ、臓器移植においてはレシピエントが、生殖補助医療においては出生子および配
偶子の被提供者(第三者による配偶子提供の場合)が、医学研究においては社会一般ないし潜在的患者集団
が、それぞれ利益を受ける第三者であることになる。これらのうち、今回は脳死臓器移植と生殖補助医療を
例にとり、これらの医療に関する法規範の内容を概観する。
2.臓器移植の法規範
臓器移植は、死体臓器移植と生体臓器移植に大別され、脳死臓器移植を含む死体臓器移植に関するルール
は、臓器移植法に定められている。同法 6 条 1 項は、臓器摘出の要件として、①死亡した者が生存中に当該
臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受
けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないときまたは遺族がないとき、②死亡した者が生存中に当該臓器を移植
術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している
場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき、の 2 つを掲げてお
り、このいずれかが満たされればよいとする。もっとも、実際にはこれだけで移植実施の可否が判断されて
いるわけではなく、移植の客観的・医学的な適否があわせて判断されている。その内容としては、
(i)そも
そもドナー候補者の臓器が移植に適しているか否か、
(ii)どのレシピエントに臓器を移植すべきか、など
があり、(ii)のレシピエント選択については厚生労働省の通知において詳細な基準が定められている。
生体臓器移植に関しては、法律の形での規制がほとんど存在せず、規制が極めて緩やかである。これは、
わが国では 1968 年のいわゆる和田心臓移植が脳死判定の的確性や移植の必要性等につき重大な問題をはら
むものであったことなどから、脳死臓器移植に対しては否定的な意見が極めて強かったのに対し、生体臓器
移植に関しては、1989 年のわが国初の生体肝移植以来、好意的な論調が多かったことに加え、臓器移植の
法規制が検討された際、ドナー・レシピエント双方が移植に同意していれば、社会がそれを禁圧すべきでな
「利他的医療」の法原理と国家法
029
10
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いとの見解が有力であったことが主な理由である。その結果、臓器移植法には生体臓器移植に関する規定が
なく5、厚生労働省のガイドラインにいくつかの抽象的規定が置かれるに留まっている。生体臓器移植の実
施要件・実施方法に関するルールは医療機関ごとに定められるのが実情であるが、そのうち実質的に重要で
あるのは親等制限の定めである。生体臓器移植に関しては、臓器摘出の同意の任意性を担保し臓器売買を防
止するため、近親者間でなければ生体移植を実施できないものとされるのが一般的であるが、どの程度の近
親者であれば移植を実施するかについては、医療機関内部の決定に全面的に委ねられているのである。
なお、2009 年に臓器移植法が改正され、親族優先提供の規定が盛り込まれた。これ以降、臓器提供者が
意思表示カードに「親族優先」と記載していた場合には、親族に臓器移植の適応のある患者がいる限りで、
。しかし、この改正
当該親族が優先的に移植を受けることができる(特定個人の指定は認められていない)
の際に、レシピエント選択基準を一般的にどのように運用するかについては議論されず、他の待機患者より
も親族を優先することが「医学的正当性」を有するか否かも明らかでないまま、親族優先提供の場面につい
てのみレシピエント選択の方法を法律が定めるという、いびつな規制がなされた。この問題の背景には、提
供者が臓器配分決定につきいかなる権利を有するか、優先提供を受ける親族の「権利」はいかなる内容か、
なども問題となり、これらを踏まえた上でどのようなレシピエント選択基準を採用すべきか、
「医学的正当性」
の観点から一般的な整理を行うことが必要であろう。
3.生殖補助医療の法規範
生殖補助医療は、用いる技術等により種々のものに分類される。夫婦の配偶子を用いてなされるものとし
ては、AIH(夫婦間人工授精)、IVF-ET(体外受精・胚移植)などがあり、第三者から配偶子提供を受けて
、第三者提供精子による IVF-ET など、第
なされるものとしては、AID(第三者提供精子による人工授精)
三者提供卵子による IVF-ET などが挙げられる。さらに、第三者による胚提供や代理懐胎なども、生殖補助
医療に含まれる。これらの生殖補助医療に関しては、
現在のところ、
国の法令等による規制は全く存在しない。
国レベルの規制が存在しないのは、これらの医療が規制を要しないと考えられているためではない。むし
ろ、そもそも生殖補助医療を規制すべきか否か、またそれによって生まれた子どもの法的な親子関係をどの
ように定めるべきかについては、医療関係者・法律家のみならず一般社会をも巻き込んで激しい議論がなさ
れてきた。具体的には、リプロダクティブ・ライツが憲法 13 条の幸福追求権に含まれるとの立場などから
法規制に慎重な見解がある一方で、代理懐胎を中心に反倫理性や出生子の不利益を理由に法規制を積極的に
行うべきであるとの見解が存在するのである。
このような状況を受けて、2003 年に、厚生労働省の厚生科学審議会生殖補助医療部会は、生殖補助医療
を規制する新規立法を行うよう提言する報告書 6 を公表した。そこでは、代理懐胎は全面禁止、第三者提供
卵子による体外受精や第三者による胚提供には厳格な要件を課すべきものとしたが、未だこの報告書に沿っ
た法案化はなされていない。その後、アメリカで代理懐胎により出生した子を自らの嫡出子として届け出た
タレントの事例が世間の耳目を集めたことなどを契機として、日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討
委員会」が代理懐胎の問題を中心とする検討を行い、2008 年に報告書7 を公表した。そこでは、代理懐胎は
原則禁止とし、営利目的の場合は処罰すべきものとする一方、臨床試験としての実施は容認するとした。し
かし、この報告書の内容に沿った立法の動きも表面化していない。
4.示唆される問題点
以上、臓器移植と生殖補助医療に関する法規範の内容をごく簡単に整理した。上記の整理から示唆される、
これらの医療に関するルールの問題点として、次の 2 点を指摘することができる。
第 1 に、いずれの医療類型においても、当事者たる提供者・患者の同意のみならず、客観的な正当化要件
の有無があわせて判断されている。確かに、生体臓器移植では「当事者が同意していれば認めて良い」とい
う主張がなされ、生殖補助医療においても同種の主張は存在するが、生体臓器移植でも親等制限や臓器売買
禁止のルールは存在し、生殖補助医療でも有償ないし営利目的の代理懐胎を禁止すべきことには異論は見ら
れない。このように、現実には、これらの医療の実施に何らかの客観的要件を課し、それが充足される場合
030
にのみ実施が正当化できるとの判断枠組みが採用されている。もっとも、このような客観的要件の内容は曖
昧ないし断片的であり、説得的な一般的基準は提示しにくいことも指摘できる。脳死臓器移植のレシピエン
ト選択基準は、その好例であると言うことができよう。
第 2 に、現に存在しない出生子の利益をどのように図るかが問題となる。通常の子どもや認知症高齢者な
どと同様、自ら十分な判断を行い意思を表示することができない法主体の利益保護の問題として整理できる
部分もあるが、さらに、「将来の出生子」であることの困難性も存在する可能性がある。すなわち、現に存
在しない法主体に関しては、代理等の既存の法技術による利益保護ができないことに加え、将来どのような
法主体がどのような環境の下で出現するかを予測することはしばしば困難であり、その利益を的確に評価す
ることも難しい場合がありえよう。そのような将来の法主体の利益をどのように保護するかが生殖補助医療
に関する議論を複雑にしている側面は否定できまい。
Ⅳ . 医療に関する法原理の再構築
1.問題点の整理
以上の分析を踏まえて、医療に関する法規範のあり方につき検討を行う。まず、医療に関する従来の議論
と対比させる形で、上記のような「利他的医療」の特徴を挙げておくこととしよう。従来の(主として民刑
事法領域における)議論は、次のような前提を有していたと考えられる。すなわち、①医療は患者の利益の
みを追求する営みであり、②「医学的正当性」のような客観的正当化要件は患者自身の利益保障を意味して
はいるが、③患者の現実的同意は極めて重視されるべきものである、との前提である。ところが、
「利他的
医療」の場面においては、上の分析から浮き彫りになったように、①′複数の主体(患者、提供者、出生子
など)の利益が同時に追求され、②′客観的正当化要件は患者から見れば他者の利益保障である場合があり、
筆者が「利
③′現存する患者・提供者のみの同意では問題を克服できない場面が指摘されていた。このように、
他的医療」として掲げた医療類型は、従来の議論において想定されていた「医療像」とは異なる実態を有す
ることが明らかである。
そうすると、このような場面で従来の前提から導かれる枠組みをそのまま維持することは適切でなく、
「利
他的医療」の法規範を考えるにあたっては、少なくとも「他者の利益」の考慮を組み込む判断枠組みが必要
となろう。ところが、このような「他者の利益」の考慮にあたっては、種々の問題が存在することが指摘で
(ii)
「他者の
きる。簡単に思いつくものだけでも、(i)「他者の利益」とは具体的にいかなるものであるか、
「患者本人の利益」と「他者の利益」が衝突する場
利益」は果たして、またどの程度、保護すべきか、
(iii)
合に、両者をどのように調整すべきか、(iv)「他者」が現存せずその意思が不明な場合はどうするか、など
の問題が存在することに気づく。これらの問題をどのように取り扱うべきかは、具体例の分析を通じて考察
する以外にない。本報告では、2 つの問題例を存在として取り上げ、この点を検討することにする。
2.問題例 1――骨髄移植における同意
まず、臓器移植に近い法律関係ともいいうる、骨髄移植の事例を挙げる。一般的に、患者の同意やインフ
ォームド・コンセントは、一旦表明した後であってもいつでも撤回できるものとされている。しかし、骨髄
移植推進財団(骨髄バンク)を通じた第三者ドナーからの骨髄移植においては、ドナーから骨髄採取のため
の入院直前の段階で「最終同意」を行う旨の書面提出がなされ、これ以降の同意撤回はできないものとされ
ている。このような仕組みになっているのは、次のような事情による。ドナーの入院は移植実施の 2,3 日前
であるが、この段階以降はレシピエントに大量の放射線を照射するなどにより自己の骨髄細胞(免疫を担う
細胞のもとになる細胞)を死滅させ、移植に備える必要があるが、レシピエントにこの処置を行ってから同
意が撤回され、移植が実施されないことになった場合、既に骨髄細胞が死滅したレシピエントは免疫機能を
失っており、生命に対する危険が極めて大きくなる。このような事態を防ぐためには、同意撤回に期限を設
ける以外にないのである。
「利他的医療」の法原理と国家法
031
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2013.3
ここでは、ドナーの自己決定権とレシピエントの生命・健康の利益が衝突する事態が生じている。この種
の衝突場面をどのように解決すべきかにつき、一般的にはさまざまな考え方がありえ、特に二者間の「自己
決定権と生命」の対立図式は、妊娠中絶の是非をめぐるアメリカ等での激しい議論で既に現れていた。わが
国では生命が一般的に優越するとの考えが強いが、生命侵害の危険性の程度等によっても異なり、一般的な
解決にはかなりの困難が伴う。ただし、上記の骨髄移植の場面に限って検討するならば、レシピエント側の、
骨髄細胞が完全に死滅した後に移植が受けられない場合の生命リスクは極めて大きいのに対し、ドナー側の
自己決定権の制約は数日間の同意撤回ができなくなるという程度であり、現在の運用は一応正当化できるも
のと思われる。
3.問題例 2――小児・精神障害者を被験者とする医学研究
次に、医学研究の事例を挙げる。一般的に、医薬品の治験や臨床試験など、人体に対する侵襲を伴う医学
②医学的正当性(客
研究の正当化要件は臨床医療の正当化事由とほぼ同様に解されており、
①被験者の同意、
観的要件)であるとされる。ところが、小児や精神障害者などは自ら有効な同意を行えないことから、この
ような者を被験者とする臨床試験を実施しうるかが問題とされてきた。小児や精神障害者が被験者になれな
いとすると、これらの患者に使用できる医薬品や治療法が存在しなくなるおそれがあるなどの事情もあり、
現在の行政ガイドラインでは親権者等の「代諾」があれば臨床試験等が実施可能とされている。しかし、親
権者の同意は「被験者の同意」そのものではなく、この場合に②の医学的正当性の要件が成年者の場合と異
なるか否かが問題となる。また、②の要件判断において、アメリカ法と同様に親が子どもの「最善の利益」
を追求すべきであると考える場合、子どもに医学研究のリスクを負担させることが「最善の利益」であると
は言いにくい場合も多く、子どもを被験者とする医学研究が正当化できるかは難問であるとされている。
(ii)被験者の利益と臨床試験の恩恵を受け
ここでは、(i)正当化要件たる「同意」の意義や位置づけと、
(i)については、医学研究は被験者に不利益であると
る潜在的患者群の利益の調整、の 2 点が問題となる。
の前提があるためか、被験者の自発的同意が極めて重視されてきた。しかし、小児等の場合に本人の有効な
同意が不要だとすると、そもそも「被験者の同意」がなぜ要求されるのか、その根本的な意義に疑問が生ず
る。(ii)は、複数関係者の利益衝突の一場面であると言える。医学研究が潜在的患者群の利益を追求する
営みである以上、被験者が自らは利益を享受せずリスクのみを負担する事態は避けられず、両者の均衡は本
人同意の有無と無関係に客観的に図る必要があると考えられる。
4.「利他的医療」の法原理
以上で見てきたように、「利他的医療」の場面では、
「他者の利益」をも考慮し、患者・被験者等と第三者
の利益衝突を調整することが必要となる。また、小児等を被験者とする医学研究の例に見られるように、患
正当化要件としての「同意」と「医学的正当性」
者・被験者等の「同意」が法的意味をなさない場面も存在し、
の相互補完関係を認めなければならない。そうすると、
従来考えられていた以上に、
正当化要件としての「医
学的正当性」に盛り込まれる客観的要件が重要となる。ところが、従来の議論においては、このような客観
的要件として「代諾」等の「同意」に近い要素のほか、医学準則のような純医学的考慮、関係者間の利益調
整などの法的評価が雑多に盛り込まれ、それらが相互にどのような関係に立つかも明らかでなかった。そこ
で、この点の再整理を行いつつ、医療行為の正当化要件の内容や相互関係を明らかにする作業が必要となる。
もっとも、このような緻密な論証を要する大がかりな作業を本報告ですべて行うことは難しい。以下では
あくまで試論として、このような構成がありうるという例示として 1 つの構成を示すに留めたい。
[a]患者・被験者の利益保護・不利益最小化保障
まず、患者・被験者の利益保護ないし不利益最小化の要請を満たす必要がある。この点については、本人
の自由意思による利益選択が最も優先され、(a-1)本人の十分な理解に基づく同意があればそれで充足され
る。ただし、本人が自ら同意をなしえない場合に、
(a-2)本人の利益保護・不利益最小化につき他者の「認
証」があればそれも考慮される。この場合には、当該他者が利益相反状況になく、本人の選択としても合理
032
的なものであるか否かにつき、原則として独立の組織等が審査する。
[b]受益する第三者の利益保護・不利益最小化保障
次に、受益する第三者の利益保護ないし不利益最小化の要請を満たす必要がある。この点についても、
(b-1)第三者の十分な理解に基づく意思があれば、それが最優先される。ただし、
(b-2)第三者が現存しな
いか意思を表明できない場合等においては、当該第三者の利益に資するか否かを独立の組織等が審査するこ
とになる。
[c]客観的な正当化要件
以上に加えて、客観的な正当化要件を満たすことが必要となる。具体的には、
(c-1)医学的に正当な医療
であることに加え、(c-2)患者・被験者と受益者の利益調整を図る必要がある。この要素の存在により、[a]
や[b]で一旦正当とされた利益保護・不利益最小化の判断も、制約を受けることがありうる。
Ⅴ . 結びに代えて
以上、本報告では、「利他的医療」の場面を素材として医療に関する従来の議論の前提に疑問を呈し、新
たな医療行為の正当化要件を定立する必要性を論じた。最後に、本報告の議論の射程に関連して 2 点ほど補
足しておきたい。
第 1 に、本報告ではいくつかの医療を「利他的医療」と名付け、そのような事例を素材として議論を進め
てきたが、「利他的医療」が医療全体の中で特殊場面として位置づけられるものであるかが問題となる。筆
者は、「利他的医療」が特殊場面であるという前提は有しておらず、むしろこの場面は医療に普遍的に存在
する要素がやや強調されて表れているに過ぎないと考える。というのも、医療は、元来患者本人のみに関係
するものではない。医療の内容は、家族や近親者のライフスタイルに大きく影響する可能性があることに加
え、遺伝子検査等は医学的にも近親者に直接影響を及ぼしうる。また、国民皆保険制度の採用されているわ
が国では、医療保険の法律関係や財政的負担も重要な考慮要素であり、医療保険に関する諸規範を無視して
医療行為の適否を論ずることは困難である。このように、一般の医療行為においても、第三者や社会一般の
利益保護・不利益最小化を考慮すべき場面は存在しうるのである。そうすると、この点についてはさらに検
討すべきであるが、本報告で提示した「利他的医療」の法原理は、そのまま医療一般の法原理として通用し
うる可能性があろう。
第 2 に、本報告の分析は、医療以外の場面についても一定の問題を提起しうる可能性がある。ある私人の
私的行為が他者に利益・不利益を及ぼす場面は数多く存在し、複数者間の利益調整が必要となる法律問題は
少なくない。とりわけ民事法には、このような問題領域が多数存在するものの、従来の民事法学は、この種
の利益調整につき場面ごとの規範によって対応してきた。しかし、従来の議論において、現存しない関係者
の利益を考慮することは多くなく、そのための法技術も未成熟なままである。たとえば、家族法でしばしば
言及される「子の福祉」は、将来の子の置かれる状況を想定して評価される概念であるが、その内容は抽象
的であり、論者による認識の隔たりも大きい。さらに言えば、少子高齢化に伴う諸問題の中で、世代間格差
問題などを論じる中で、将来世代の利益保護の観点も極めて重要であるが、法学において将来世代の利益を
どのように扱うかは、未だ問題すら認識されていないように思われる。その結果、従来の法的枠組みでは、
「将来世代」に属する主体が現存しないというだけの理由で、
その利益が過度に軽視されてきたのではないか。
現存しない主体の利益、特に将来の法主体の利益をどのように現在の法律関係の俎上に載せ、適切な利益調
整を行うかは、まさに法学全体が取り組まなければならない問題であるとも言えよう8。
本報告は、「利他的医療」の場面に関する分析を中心に、ごく大雑把な分析をなしえたに留まるが、プロ
ジェクト「少子高齢化をめぐる国家と私的領域」の検討対象は、まさに少子高齢化社会における法律問題全
般であり、筆者の視点もこのプロジェクトの研究全体から大いに示唆を受けたものである。本プロジェクト
のメンバーすべてによる豊潤かつ複眼的な研究成果が、今後の法学ないし関連諸分野の研究の発展に寄与し
うることを願いつつ、本報告を終えることとしたい。
「利他的医療」の法原理と国家法
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註
』530 頁以下、山口厚『刑法総論〔第 2 版〕
』108 頁。
1 内藤謙『刑法講義総論(中)
2「医学的正当性」と表現するものとして、前田達明ほか編『医事法』164 頁以下(松宮孝明執筆)など。
3 詳細は、米村滋人「医事法講義・医事法総論[2]医事法の基本思想と法的構造 1」法セミ 688 号 100 頁参照。
4 もちろん、これは誤りであり、アメリカでもそのようには考えられていない。しかしわが国では、医療関係者や一部の法律家に広まったこの
ような理解を前提に、医学研究に関する審査を行う倫理審査委員会では、説明・同意文書がわかりやすいか、患者を誤導するものではないか、
などのインフォームド・コンセントに関する点のみが審査される場合も多い。
5 ただし、臓器売買禁止規定は生体移植にも適用があるとされる。
6 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/04/s0428-5a.html で閲覧可能。
7 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t56-1.pdf で閲覧可能。
8 哲学を中心とする多数の論者による注目すべき研究として、高橋隆雄編『将来世代学の構想』参照。
Comments
水野 紀子
利他的医療と法原理というテーマでの米村報告は、日本でのこの領域の立法が困難な状況を描いており、
またその基本的な理由を自己決定の枠組みでは処理できない利他的な利益を組み込むことの困難さに求めて
いる。以下のコメントは、その趣旨に反対するものではまったくない。また私のコメントに報告者が異なる
意見を持っているものとも考えておらず、おそらく時間の都合で省略された点なのではないかと考えている。
まず、利他的な利益であっても古くからある古典的な問題においては、伝統的な法領域がそれに対応して
きたのではなかったろうか。自己決定では正当化されない例としては、たとえば刑法領域には自殺幇助や賭
博罪などがあり、民事法領域でも契約の公序則は多くの利他的な利益を組み込んでいるし、家族法領域では
次世代を育てるために、婚姻制度をはじめ、多くの制約が両親に課せられている。報告者が指摘されたよう
に、たしかに民事法において自己決定や意思自治が強固に言われる傾向があるが、経済法の領域でも規制が
必要なことは共通認識となっている1。
とりわけ問題が顕在化するのは、臓器移植や生殖補助医療など、医学の急速な進展によって可能となった
が、自由に任せては大変な危険を伴う諸問題である。この種の生命倫理領域の問題は、衆知を集めて自覚的
に決断して規律を設けなくてはならず、自然に規律ができあがるのを待って済む問題ではない。しかし日本
法は、人体についての生命倫理的規律の立法作業を行うことができないまま今日に至っている。
世界的に先進国のこの種の規制を眺めると、規律のない自由が市場化に結びついたアメリカと、医師会の
自粛や行政規制によって運営される日本と、1994 年に包括的に生命倫理の問題を扱う生命倫理法を立法し
たフランスが対照的であり、これらの規制状況を比較する視点は、すでに多くの論者が指摘するところであ
る。さらに規制が及ばない開発途上国に視野を広げると、臓器移植や生殖補助医療は、金銭を対価に臓器を
売ったり代理懐胎を引き受けたりする貧困層の存在を背景に商業的に行われ、先進国の客を対象とした臓器
売買や生殖補助医療ツーリズムが隆盛となって、無法地帯となっている。
憲法の保障する自由と自己決定が至上原理となり、市場化の弊害が明らかになってから徐々に州法で規制
がはじまっているアメリカ法と、生命倫理法で体系的な規制を構築したフランス法は、きわめて対照的な立
法状況ではあるが、日本法と比較したときの相違として、両国において前提となっている事実がある。すな
わち、フランス法とアメリカ法のどちらにおいても、規制がない分野は自由であるという前提があることで
ある。しかし、日本においてはその前提が事実上、確立していない2。
日本社会にこの自由の前提がないことが法規制のない行動も自粛させることになっており、その自粛を破
るとマスコミのバッシングが加えられる危険があるほか、場合によっては不法行為法の損害賠償が認められ
034
る可能性もありうるだろう。この息苦しい圧力は、いわゆる「世間」の力として、日本社会の言論や行動の
自由を束縛する抑圧となってきたものの、生殖補助医療においては、法規制の遅れを補う秩序をもたらして
きたことは否定できない。
立法がないまま医師会の自粛や行政指導指針によって運営されている日本の現状は、日本法の長所でもあ
れば限界でもあるといえるだろう。立法がなくても日本産科婦人科学会の会告によって生殖補助医療が自粛
されてきた点は、高く評価されるべきであるが、会告違反の医療を規制する力はない。また行政指導指針、
いわゆるガイドラインの位置づけにも、根本的な危うさがある。ガイドラインに定めること以外は、すべて
自由であると考えてよいのか、あるいはガイドラインが手続きを定めること以外は、すべて許されないと考
えるのか、その点についてのコンセンサスもできていない。実際には研究現場はガイドラインが定めている
こと以外は自粛しているが、もし自粛が破れたときには、一斉に過度に自由な方向に暴走する危険を抱えて
いる。
また、現状のガイドラインそのものやガイドライン策定過程にも、少なからず問題がある。ガイドライン
がインフォームド・コンセントのみを正当化理由としていることの問題は、米村報告が示唆する通りである。
さらに、ガイドラインには細かな手続き規制が規定されているが、これらの体系的な整理がついていない。
限定された対象ごとに定められたガイドラインであるために類推適用にも限界があり、新たな問題が生じた
ときに類推適用するには、ある場合には過剰規制となり、ある場合には過少規制となる。それゆえに、絶え
ず新たなガイドライン策定が必要となり、しかもガイドライン策定に時間がかかるために、対応の遅れが研
究現場に支障を来している。ガイドライン策定に時間がかかるひとつの理由として、たとえば胚の地位につ
いての原理的対立によって議論が硬直化したように、体系性をもった策定がなされないために、原理的な議
論を封じることができないことがある。人工妊娠中絶の是非がキリスト教社会で激烈な対立をもたらしてき
たように、あるいはまた脳死臓器移植の是非が日本で臓器移植法の立法を妨げたように、具体的な規制の立
案において原理的な対立がもちこまれると、妥協によってコンセンサスを作り上げることが困難になる。策
定を担当する委員会のメンバーが交代すると、その価値観によって策定方針がそのたびに揺れることにもな
る。なによりガイドラインを体系化して、基本を固める必要があるが、そのような立法技術も、日本人がも
っとも苦手としていることのように思われる。
法は、単純な提言の主張ではなく、複雑な考量を体系化したものである。日本社会は、
「世間」という共
同体の圧力による秩序に依存した社会であった。それゆえに、このような複雑な法による秩序の意義と、そ
の法秩序が保障する自由の意義について、日本人は、立法者もマスコミも、十分に自覚することが、いまだ
に不得手なのかもしれない。
また米村報告の最初に触れられたように、社会的インフラや司法インフラの不備が致命的な桎梏となって、
法の改正によっては解決がつかない問題が、たとえば児童虐待に典型的なように、日本社会には多く存在し
ている。この背後にも、「世間」の力があったように思う。つまり世間が具体化した共同体が比較的最近ま
で日本社会には存在し、そういう共同体が児童虐待や高齢者問題に対する安全弁として機能してきた。しか
しそのような共同体はあっという間に失われてしまい、しかし代わりのインフラが整っていないのが日本の
現状ではなかろうか。
註
我々のプロジェクトメンバーの研究成果である滝澤紗矢子
『競争機会の確保をめぐる法構造』
1 経済法領域における規制が成立する過程や現状も、
などの最先端の研究によってあきらかにされている。
2 本筋から離れるが、内縁準婚理論や事実婚をめぐる日本家族法の錯綜も、この構造故のように思われる。すなわち「世間」を相手とした戦い
が内縁準婚理論や事実婚論者の主張に紛れ込んでいるのではなかろうか。
「利他的医療」の法原理と国家法
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「法の経済分析(Law and Economics)」の手法に基づく、
多文化交流、男女共同参画の政策効果の分析(吉田プロジェクト)
現代日本の社会・経済戦略としての
男女共同参画
―社会制度に対する経済・経営・統計学的アプローチ―
報告者 吉田 浩
Ⅰ. 本研究のねらいと背景
1-1.本研究のアプローチの特徴
本研究は「男女共同参画」や「多文化共生」といった制度的側面を含む社会問題を「経済・経営・統計学
的な視点」で分析している。特に、「男女共同参画社会の推進」がどのような社会厚生の拡大につながるの
かという形で、社会制度の「効果を量的に検証する」というアプローチで研究を行ってきた。
男女共同参画に代表されるようないわゆるジェンダー・男女平等・女性の社会的地位等の問題を扱う場合
に、本研究のタイトルのような「現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画」という課題設定は、以
下の 2 つの意味で奇異に思われることであろう。第 1 は「男女共同参画」の問題が「経済」の問題として扱
われている点であり、第 2 にはそれが「戦略」とうたわれている点であろう。そこで、以下では本研究のね
らいと背景を説明するために、上にあげた「男女共同参画」
「経済」
「戦略」の諸関係を整理することとする。
1-2.なぜ経済で分析するのか
初めに男女共同参画の問題をなぜ経済(学)の観点でアプローチするかという点である。なお、ここでい
う経済には副題にあがっているように、経営(学)や計量経済学をはじめとした統計学的アプローチも包括
するものとする。さて、男女共同参画の問題はオーソドックスには憲法・人権をベースとする法学、社会に
おける男女の関係・地位をそのままに分析する社会学等のアプローチを中心として行われてきた。それらの
先行研究群はすでに膨大な蓄積を有しており、相当程度の研究成果も公表されている。にもかかわらず、本
研究において、それらと異なる「経済(学)」のアプローチを我々が採用する理由は以下の 3 点である。
(1)質的議論から量的議論への転換
「べきか・べきでないか」という質的な熟議
第 1 に「男女共同参画」の問題を「よいか・そうでないか」
によって解決しようとするアプローチに代わって「多いか・少ないか」という「量的な議論に置き換える」
ことを狙ったためである。そして、この量的な議論による学術的・科学的アプローチを行ううえで、特に社
会科学分野で援用可能なツールとして経済学および統計学の知見は非常に有効であるといえる。我々はこの
「男女共同参画」の問題を検討していく上で、この問題に研究上、政策上、実践上かかわっている人々よりも、
それらから距離を置いているいわば「部屋の外」にいる社会の多くの人々に対してどのようにこの問題の重
要性を訴え、理解してもらうのかということの必要性を痛感してきた。単に社会の大衆に対してその意識に
影響を与えるための手法としては、さまざまなアクションが存在しうるかもしれない。
しかし、学問的・科学的正確性を犠牲にすることなく、かつ多くの社会の構成者に端的に問題の重要性や
036
変革の効果を理解してもらうためのひとつのアプローチとして我々は男女共同参画の実情や解決するべき問
題点の重要性、そしてその効果の有効性を比較可能な「量的数値」として接近し、提示するという方法に注
目した。数値で提示することにより社会のどのような立場の人であっても「どちらが大きいか」という結果
には合意できるであろうし、その上で「もっと大きくするにはどうするか」という前進的議論への発展も期
待したからである。
(2)量的議論を実質的議論で補完
次に、経済的なアプローチをとった第 2 番目の理由を述べることとする。我々は上で、質的な議論を量的
な議論で代替し、多くの立場の異なる人々を共通な数値を手がかりに、議論に参加させることができないか
というねらいを述べた。しかし、我々はこの「男女共同参画」という社会生活上きわめて人的側面にかかわ
りの深い問題を、議論の簡便性・有利性に注目するがゆえに単純な数値によって無味乾燥化し、議論の本質
をいわば「骨抜き」にしてしまう犠牲は避けるべきあることの重要性も留意した。
そこで、本研究ではこの男女共同参画の問題に同じ量的なアプローチを行うにしても、我々の社会生活上
の諸分野において「実質的」に大きな影響を与えうる分野を重視することとした。その意味において、本研
究では男女共同参画が単に社会生活における制度上の地位や機会の均等にとどまらず、
その結果として所得、
雇用等の生活に強く結びついた経済的成果の実現にどのように結実していくのかという形で把握することと
した。制度の成果としての「社会厚生」をその大きな実質的構成要素である「経済厚生」でつかもうとした
のである。さらに、本研究では量的アプローチの視点を保ちつつ、限定された「経済厚生」からより広い効
果の確認指標への展望として「幸福度」という広範かつ最終的とも言うべき成果指標へのアプローチも行っ
ている。
(3)経済にとっての男女共同参画
(2)では「男女共同参画」を検討、推進するためのいわば「手がかり」として、経済学・
上にあげた(1)、
統計学に代表されるような量的なアプローチや「経済厚生」による効果の測定という観点を提示した。しか
し、我々は研究を進めていく中で、「男女共同参画」問題(メイン)を解決するための「経済」
(サブ)とい
うアプローチも設定、保持することができるが、逆に「経済の側」
(サブ)でも解決するべき問題を抱えて
いるのではないかということにも気づいていた。
1990 年のバブル経済の崩壊以来、日本では「失われた 10 年」そして「20 年」と経済状況が回復を見ない
ままに、長期の社会的停滞を続けている。この問題に対してさまざまな議論やそれに基づく解決策が提示さ
れている。ここ数十年で国外を初めとして内外の社会の構造が大きく変革しているため、現在の日本は多く
の「不確実性」に直面している。この不確実性は 1 つには、従来の社会、経済、政策的手法や制度が意図し
たとおりに機能しないという意味での「不確実性」を増し、もう 1 つには「想定外」という言葉に象徴され
るように、現在直面している状況から予想できないような新たな問題が次々と発生するという「不確実性」
を生み出している。
このような日本の社会・経済の上での閉塞感・手詰まり感に対して、従来の企業、社会、地域等のさまざ
まな分野におけるマネジメント手法を転換するため、広い意味での「イノベーション」が必要であることは
言うまでもない。我々はこの社会状況を意識しつつも、男女共同参画の問題を分析し、事例を収集していく
中で「男女共同参画の推進」という「従来の日本社会からの踏み出し」が我々の社会、経済の諸問題を解決
する手がかり、すなわちソルーション(解決策)として機能するのではないかということを意識し始めた。
これが、本研究において「男女共同参画」と「経済」を有機的に結合して問題を検討するアプローチをとっ
た理由の 3 つ目である。
1-3.男女共同参画と戦略
前項では男女共同参画と経済、あるいは経済学的なアプローチのかかわりについて、本研究のねらいとと
もに述べた。ここでは、本研究においてそれが「戦略」とうたわれていることについて述べることとする。
すでに、1-2. の(3)で述べたことであるが、「男女共同参画の推進」が経済、社会の閉塞を打破する解決策
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
037
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になりうるのではないかという問題意識を持ちつつ、この研究は進められた。しかし、我々は研究を進め、
ある仮説または結論そして政策の提言を行うにあたって、以下のことに注意深く配慮しなければならない。
それは「収集された事実あるいは統計数値」とそこから観察者が見つけ出したとする「法則や関係」、そし
て最終的にその関係を使ってある社会的・経営的・経済的・政策的な目的を実現するためにとる「戦略」で
ある。
本研究では収集した事実からある関係を見出すための手法として、学問的・科学的見地から、国際的に採
用され実績も確認された既存のルール(ノルウェーの男女平等度指標)
、科学的な計量経済学の手法(国際
幸福度分析、女性の介護労働の分析)、経営学の事例とケースによる手法(大企業および地場産業における
女性の活用事例)を採用した。しかし、最終的に本研究の意図する核はこの提示された諸関係を「戦略」的
に「解釈して活用」しなければならないということである。これは本書が意識している「部屋の外」の人々
が本書の結果を用いる場合に特に重要な点であると考えられる。
単純な事実関係を鵜呑みにし、やみ雲に社会、組織のマネジメントに結果を流用するだけでは、意図した
効果を得られないであろう。例えば、広告の効果と製品の売り上げに関して、一定の事実関係に基づく分析
によって「効果」が確認されたとしても、ただ何の戦略的配慮もなしに広告を増やすだけでは意図した売り
上げは実現せず、却って「理論的には成立しても、広告は実際には無効」という誤った結論を得ることにな
る危険性を持っている。我々の分析では、単純に「男女共同参画」が直ちに「社会厚生の増大」というナイ
ーブな結果を提示することの無いように配慮している。各分析において、男女共同参画社会の推進が「どの
ようなメカニズムによって」「どのような条件が成立するときに」その成果が見られると判断されるのかを
記述している。
これらのことから、現在の日本の社会問題を解決する手がかりの一つとして我々が注目している男女共同
参画社会の実現は、観察された「法則」の「戦略なき流用」では機能しないといえる。本研究で得られた知
見の「戦略的活用」の視点が日本の社会問題を解決するためにも必要であり、逆に男女共同参画社会の実現
を目指すためのもうひとつの「戦略」としても重要であるといえる。
Ⅱ . 本研究の分析対象とその位置づけ
Ⅰ . では、男女共同参画問題の分析のために「経済(学)
」と「戦略」の視点の重要性を述べた。そのこと
を踏まえ、以下では本研究で取り上げた分析対象とその位置づけについて述べることとする。
男女共同参画問題の分析のために社会面、経済面、政策面でどのような項目に焦点を当てるかについては
さまざまな考え方ができるであろうが、本研究では分析の空間的広がりと時間的広がりから以下のように対
象を設定した。
はじめに、分析対象の空間的広がりとして、個人や企業といった個別対象から、企業や個人を含む地域社
会、そして社会全体あるいは国際比較といった大きな主体への拡大である。いっぽう、分析の時間的広がり
としては過去、現在を含みそして日本の将来の姿を展望する軸を設定した。この空間的・時間的の 2 つの分
析軸をもとに、図 1 に示すような分析対象を選定した。
分析 1 の都道府県別男女平等度指標では、ノルウェー統計局の男女平等指標の作成方法に基づき、現在の
日本の男女平等度について、社会、経済、教育、人口、政治参加等の指標を用いて、都道府県別にその状況
を定量的に明らかにしたものである。この章は男女共同参画社会の推進を通じて、1980 年代以降いったん
下落した出生率という社会問題を解決したノルウェーの政策効果と、男女共同参加の問題に定量的にアプロ
ーチするという本研究全体の問題意識を提示するイントロダクション的な役割を果たす。
分析 2 は男女別にアンケートを行った幸福度調査の分析を通じて、個人のレベルでの分析へ踏み出した。
同時に所得等の経済厚生をふまえてより広い幸福度という厚生指標に分析を拡大し、さらに国際比較の観点
を導入して、分析対象の空間的広がりを拡大している。
続く分析 3 および 4 では、個人から企業、また地域社会へと分析対象をシフトし、はじめに大企業におけ
る女性活用の戦略的事例を IBM とヤオコーをケースに用いて、企業内での意思決定とその効果を時系列的
038
社会全体
3:大企業の
女性活用事例
過去
現在
5 女性の介護労働
個別主体
(個人・企業)
1:都道府県別
男女平等指標
2 国際幸福度指標分析
↑空間的広がり↓
地域社会
4:女性による
伝統産業と創造都市
将来
←時間的広がり→
注:吉田作成
図 1 本研究の分析軸の設定
に事実を収集し分析している。次に分析 4 で歴史的に大きな曲がり角にあった伝統地場産業において、女性
のセンスを導入することで新たな産業としての発展の道を見つけ出したケースを、過去から現在にかけてを
調査することで明らかにしている。
最後に分析 5 では、今後の高齢化による要介護者の急増という社会問題を、老後の介護の受け手としての
女性、家庭内介護の供給者としての女性そして介護保険による介護サービスの供給事業に従事する労働者と
しての女性の問題として捉え、現在から将来までを展望して分析を行っている。
以上を踏まえ、以下では分析 1 から 5 までの概要を報告することとする。
Ⅲ . 分析 1:都道府県別の男女平等度指標
3-1.指標開発の意義
「男女共同参画社会基本法」制定以後 10 年が経過し、男女共同参画社会のための施策は、その施策の必要
性を啓蒙する段階から施策の実施の段階へと進展してきたといえる。ここにおいて、日本の男女平等度指標
を開発・推計する意義として、以下の 2 点をあげることが出来る。第 1 に、各種施策の実施は男女共同参画
社会の実現のために必要なアクションであるが、それはインプットであり、アウトプットである男女共同参
画社会の「実現」が保障されているわけではないということである。そこで、本研究で扱う男女平等指標に
よって、各種施策のインプットによってどの程度まで男女共同参画社会が実現したかを知る必要がある。第
2 に、男女平等度指標をより具体的かつ身近な指標として把握する必要があるということである。これまで
も、日本の男女共同参画社会の状況をおいて定量的に把握する指標がないわけではない。
この指標の第 1 としては、男女共同参画基本計画おける「男女共同参画基本計画数値目標」があげられる。
この指標は、各項目の進捗状況を把握するためには有益である。しかし、項目相互間の有機的関係は考慮さ
れておらず、個々の指標が独立して示されているという限界がある。また国際的な比較を意識した指標とし
、GGI(ジェンダー・ギャップ指数)
ては、HDI(人間開発指数)、GEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)
などがあげられる。付表 2 に示された各指標の 2008 年の結果について見てみると、HDI については、179 か
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
039
10
2013.3
国中日本は第 8 位と健闘しているといえるが、GEM については 108 か国中 58 位と中位以下にランクされ、
さらに GGI に至っては 130 か国中 98 位とかなり下位に位置する状況となっている。これらの指標に基づい
て日本の男女共同参画の状況について国際的なポジションを改善することは、
もちろん必要である。しかし、
この指標は日本国全体レベルでマクロ的な視点で集計された指標であり、日本国内の地域的なばらつきなど
を知ることはできない。日本国全体の状況を改善するためには、男女共同参画をいっそう推進するべき地域
はどこであるのかというボトムアップの指標により、施策実行の優先地域を明確化し、施策を効率的に実行
する必要がある。また、地域間で男女共同参画社会実現の程度に差異があるということは、地域間の公平性
の観点からも解消されるべき問題である。そこで、本研究では日本国内の男女平等度指標に関して地域別に
推計を行うことによって、いま述べた男女共同参画社会の実現のための施策推進のための効率性・公平性の
観点から有益な資料を提供するものである。
3-2.指標の構成
ここでは、ノルウェー統計局で行われている男女平等度指標を参考に日本における指標を算出した。今回
はノルウェーの 2008 年時点の推計方法に基づいている。2008 年の推計方法では、指標作成の推計項目も限
定されており、
:保育施設に通う 1-5 歳の子供の比率
(a)Kindergarten coverage for children aged 1-5(2007)
:20-39 歳の男性 100 人に対する女性人口比
(b)Number of women per 100 men aged 20-39(2007)
:男女の高等教育受けている比率
(c)Education levels for women and men(2007)
:女性の労働参加率
(d)Labour force participation for women and men(2007)
(e)Income for women and men(2007):女性の対男性相対所得
:女性地方議員の比率
(f)Percentage of female municipal council members(2007)
の 6 つの指標のみからインデックスが構成されている。また、総合指標についても各インデックスを重み付
けなしで足し合わせ、これを 6 で除すというシンプルな方法によって算出されている。このため、本研究で
はこの 2008 年基準の推計方法に基づき、上記の 6 指標を使って相対評価によってスコアを算出している。
3-3.結果と考察
実際に日本の都道府県別の試算を行った結果は表 1 および図 2 に示されている。図 2 を見ると、おおむね
中部地方、近畿地方ならびに中国・四国地方で男女平等度が高いという結果が得られている。これに対して、
北海道、東京都を除く関東地方、九州地方では平等度指標の値が小さくなっている。また、図 3 ではスコア
別に都道府県数の分布を示している。指標の定義により、理論上の最低点は 1 点、最高点は 4 点となる。大
部分の自治体が総合スコアで 2.5(=(1 + 4)÷ 2)点を超えており、著しく男女平等度に問題のある地域は
存在しないことがわかる。
さらに、保育、教育、人口、労働、給与、議員の各項目間の相関係数を見ると、各指標間に必ずしも正の
相関があるわけではないことがわかる。このことは、特定の地域で全ての指標が連関して悪くなるという負
の連鎖が起こっていないことを意味する。すなわち、各指標はある程度独立性が強く、他の指標との関係に
縛られることなく改善可能であることを示唆しているといえる。
040
表 1 都道府県別の男女平等度指標
1
2006
北海道
青森
岩手
宮城
秋田
山形
福島
茨城
栃木
群馬
埼玉
千葉
東京
神奈川
新潟
富山
石川
福井
山梨
長野
岐阜
静岡
愛知
三重
滋賀
京都
大阪
兵庫
奈良
和歌山
鳥取
島根
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
福岡
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
沖縄
2
2000
2b
2000
3
2006
4
2005
4b
2005
5
2007
5b
2007
6
2007
義務教育前 高等教育 女性の高等教 人口性比 労働参加率 女性労働参 相対給与 女性給与額 女性議員の
教育修了率 (女性/男性) 育卒業者率 (15 ∼64 歳)(女性/男性) 加率 (女性/男性)
割合
スコア スコア スコア スコア スコア スコア スコア スコア スコア
1
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1
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1
2
1
4
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4
4
1
4
2
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1
1
3
2
1
1
2
4
ランク
総合
1.917
2.083
2.833
2.417
2.167
2.583
2.667
2.167
2.167
2.333
1.750
2.167
3.000
2.083
2.333
2.417
2.917
2.750
2.833
3.083
2.833
2.583
2.500
2.250
2.500
3.083
2.833
2.667
2.833
2.167
3.167
2.583
3.083
2.917
2.417
2.917
3.083
2.500
2.583
2.250
2.333
2.333
2.583
2.250
2.083
2.000
3.000
順
46
42
11
27
37
19
17
37
37
30
47
37
6
42
30
27
8
16
11
2
11
19
24
34
24
2
11
17
11
37
1
19
2
8
27
8
2
24
19
34
30
30
19
34
42
45
6
出所:吉田 浩(2010)
「日本における男女平等度指標の開発―ノルウェー統計局の男女平等度指標を参考に―」GEMC journal,
No.3, pp.82-92, March, 2010.
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
041
10
2013.3
平等度指標
2.75∼3.17 (16)
2.42∼2.75 (10)
1.75∼2.42 (21)
出所:吉田 浩(2010)
「日本における男女平等度指標の開発―ノルウェー統計局の男女平等度指標を参考に―」 GEMC journal, No.3, pp.82-92, March, 2010.
図 2 都道府県別の男女平等度指標マッピング
Ⅳ . 分析 2:幸福度と男女共同参画
4-1.問題意識
幸福度は、我々の人生の質を測る上で重要な指標であり、近年、経済学の観点からも、その規定要因に関
する研究が数多く行われている。我が国の政策でも、幸福度の測定、改善に関する動きが出ており、平成
22 年からは内閣府において「幸福度に関する研究会」が組織され、幸福度指標などについての検討が進め
られている。経済学の目的は人々の幸福(厚生)を高めることにあり、どのような社会を構築していくのか
によって、幸福度が異なるのであれば、国のとる戦略にも大きな影響があると考えられる。本研究は、そう
した戦略にとって有用な材料を提供することにある。
042
4-2.手法と観点
幸福度における男女差が生じる要因に関しては複数の研究がある。そのうちの 1 つのアプローチとして、
個人をとりまく社会経済環境を原因とする見方がある。すなわち、女性にとって生活しやすい、または、活
躍しやすい社会経済環境の形成が、個人属性とは別に、幸福度に男女差を生み出す可能性がある。そこで本
研究では、社会経済的要因と幸福度における男女差の関係を明らかにする。つまり、個人属性の影響を取り
除いた後でも残る男女間の幸福度の差と女性が社会でどれだけ活躍しているかなどの社会経済的な要因との
関係について分析する。ただし、そうした分析を行う際、一国または少数の国のデータ分析では、男女差に
関して十分な多様性を確保することができず、男女差と社会経済環境との関係を明らかにすることはできな
い。さらには、幸福度は個人属性に大きく影響されるため、そうした要因の影響をコントロールした上で男
そこで本研究では、
女差を見る必要がある。そのためには、一定数の国の個票を使った分析を行う必要がある。
International Social Survey Programme(以下、ISSP と記す)で 2007 年に行われた、32 ヵ国の個票データを
使った分析を行った。ISSP2007 を選択した理由は、幸福度のほか、それに大きく影響することが明らかに
なっている健康状態などがわかるためである。また、従来の研究ではあまり取り上げられていないが、経済
学的には幸福度の重要な要因と考えられる余暇に関する情報も得られることも、本研究で ISSP2007 を利用
する理由である。
4-3.幸福度の男女差と男女共同参画分析
ISSP2007 による各国の幸福度における男女差は、どのような男女共同参画の指標と関係があるだろうか。
ここでは、GGI(Gender Gap Index)の 2007 年のスコアを使って ISSP2007 の幸福度における男女差の分析
を行う。GGI は世界経済フォーラムが毎年、公表している男女平等に関する指標で、4 つの要素から構成さ
、
「教育達成度」
、
「健康と生存力」
、
「政治的エンパワメント」
れている。その 4 要素とは「経済参加と機会」
である。
最初に、図 3 は 2007 年の GGI の総合スコアとの関係である。図を見ると右上がり、つまり正の相関関係
があることがわかる。GGI は 1 が完全平等を示しており、平等に近いほど、女性のほうが幸福になりやすい
ことがわかった。
表 2 分析対象国一覧
AR- アルゼンチン
AU- オーストラリア
AT- オーストリア
FLA- フランダース(ベルギー)
BG- ブルガリア
CL- チリ
HR- クロアチア
CY- キプロス
CZ- チェコ
DO- ドミニカ共和国
FI- フィンランド
FR- フランス
DE- ドイル
IE- アイルランド
IL- イスラエル
JP- 日本
KR- 韓国
LV- ラトビア
MX- メキシコ
NZ- ニュージーランド
NO- ノルウェー
PH- フィリピン
PL- ポーランド
RU- ロシア
SK- スロバキア
SI- スロベニア
ZA- 南アフリカ
SE- スウェーデン
CH- スイス
GB- 英国
US- 米国
UY- ウルグアイ
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
043
2013.3
.3
10
0
.1
幸福度の男女差
.2
GB
PH
NZ
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KR
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BG
AT AU
CH
HR
UY
IL
ZA
DO SK
FLA LV
RU
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CZ FR
SI
AR
CL
JP
MX
SE
FI
NO
PL
-.1
CY
.65
.7
.75
GGI2007
.8
.85
図 3 幸福度の男女差と GGI2007
.3
次に、GGI のうち「経済参加と機会」、
「政治的エンパワメント」と幸福度の男女差の関係について確認する。
図 4 が経済参加と機会との関係を示している。この散布図においても正の関係があることがわかる。一方、
図 5 では政治的エンパワメントとの関係を示しているが、こちらも正の相関があることがわかる。つまり幸
福度の男女差は経済、政治のいずれの要素とも正の相関があることがわかった。
0
.1
幸福度の男女差
.2
GB
US NZ
KR
CL
AT
JP
MX
DE
BG
UY
ZA
DO
AR
CZ FR
CH
IL
FLA
SK
IE
SI
PH
AU SE
HR
FI LV
RU NO
PL
-.1
CY
.5
.6
.7
GGI2007 経済参加と機会
図 4 幸福度の男女差と GGI2007 経済参加と機会
044
.8
.3
.1
幸福度の男女差
.2
GB
PH
US
KR
CL
UY
0
JP
DO
RU
SK
MX
SI CZ FR
NZ
DE
BG
AU
CH
HR
IL
SE
AT
ZA
LV
FLA
NO
IE
FI
AR
PL
-.1
CY
0
.1
.2
.3
.4
GGI2007 政治的エンパワメント
.5
図 5 幸福度の男女差と GGI2007 政治的エンパワメント
ここで、これまでに見た 3 つの男女共同参画の指標と幸福度の男女差の相関係数を表 3 にまとめた。GGI
の総合スコアおよび 2 つの構成要素は、いずれも幸福度の男女差と 10%水準で有意な正の相関関係を持って
いることが示されている。
したがって、主要な個人属性の影響を取り除いても残る幸福度における男女差は、男女共同参画における
社会経済環境の影響を受けていることが明らかになった。また、経済面と政治面の影響力を比べると、相関
係数からは、経済面のほうがやや強いということも本研究の分析で確認された。
表 3 幸福度の男女差と GGI の相関係数
指標
GGI2007
相関係数
0.3011*
GGI2007
GGI2007 政治的
0.3286*
0.2983*
経済参加と機会
エンパワメント
*:10%水準で有意。
Ⅴ . 分析 3:企業戦略としての男女共同参画
5-1. 問題認識
男女共同参画社会を実現する視点は、先進国における大きな潮流であるとされている(橘木,2005)1。日
本においては、1985 年に男女雇用機会均等法が制定され、1992 年には育児・介護休業法が制定されるなど
して、女性の雇用が拡大してきたと言われている。しかし、現実には、女性の労働力率、特に有配偶女性
や子どもを育てる女性の労働力率を確認すると、ほとんど変化が確認されないことや、女性の管理職比率
が低いことを指摘する研究も確認される(武石,2005)2。また、山口(2011)3 においても、国連が発表す
る GEM(Gender Empowerment Measure)を引き合いに、日本の男女共同参画において、先進諸国からは
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
045
10
2013.3
るかに遅れをとっている事実が指摘されている。これらの状況を作り出している社会的背景として、武石
(2005)や山口(2010,2011)4 では、女性の働く期間が短く、この「現実」が企業にとってのリスク要因と
なっていると指摘している。結果として、女性にとってはこの「事実」がキャリアの制約になり、企業にと
ってはこの「事実」ゆえに女性の積極的な登用を回避する意思決定を取るようになることが指摘されている。
しかし、山口(2010)では、この状況を作り出しているのは、企業が女性雇用者に対してネガティブ・ス
テレオタイプを生み出した結果に過ぎず、ポジティブ・アクション(アファーマティブ・アクションとも呼
ばれる)によって是正すべきであると強調している。このように、女性の雇用を巡って、解決すべき課題も
未だに多く確認される。
5-2.分析の目的
男女共同参画で世界的に遅れを取っていると言われる背景の一つには、企業側の認識に起因する部分も少
なくない。それは、例えば、女性就労者に対するポジティブ・アクションのような措置が「保護策」である
との認識や、女性の雇用のための措置(例えば、育児休暇)が「福利厚生」の手段として認識され、競争や
変化の激しい環境下において、企業がこのような「保護策」を取っている余裕はないという主張である。
一方で、事例を確認すると、企業が女性の雇用に対する制度や措置を(保護策ではなく)企業が生き残る
ための戦略的手段として位置づけ、推進しているケースを確認することができる。これらのケースでは、女
性の雇用に対する措置を福利厚生的な意味合いや、女性の雇用に対する現代的潮流に対応した結果だからで
はなく、企業戦略の側面から女性就労者の働き方の多様性を容認し、人材(女性)を登用・活用している。
本研究の目的は、女性就労者の戦略的起用・活用という観点から男女共同参画社会の実現を考察することで
ある。
5-3.現状認識
一言で、「男女共同参画社会の実現」や「女性就労者の働き方の多様性の容認」といっても、労働市場の
違いによってその対応は異なる。正規雇用を前提とした内部労働市場における対応と、非正規雇用から正規
雇用に至るまでのキャリアパスが用意されている外部労働市場から中間労働市場、そして、場合によっては
内部労働市場への登用可能性もある対応とは異なる。データを確認すると、依然として、結婚や出産を機に
労働市場から一時退出する女性就労者の存在が確認され、その後、セカンドキャリアとして労働市場に再び
「共
参入するケースも少なくない。内閣府男女共同参画局の『平成 23 年度版 男女共同参画白書』において、
働き世帯数の推移」や「雇用形態別に見た役員を除く雇用者の構成割合の推移(女性)
」を確認しても、セ
カンドキャリアとして非正規雇用を選択している女性の行動が確認される。また、それゆえ、
「管理職に占
(OECD HDR-2009-table-rev)は低くなっている(参考までに、
める女性の割合(OECD 諸国との国際比較)」
]を確認すると、日本の現状
「研究者に占める女性割合の国際比較」[『平成 23 年度版 男女共同参画白書』
は韓国のそれよりも低い)。
5-4.事例抽出
以上から、男女共同参画社会の実現に向けて女性の就労者を後押しする事例は、2 つのタイプに分別して
行わなければならないことが示唆される。それは、
内部労働市場での女性就労者を企業が戦略的に活用する、
すなわち、M 字就労の課題を克服するための就労を支援する事例(日本 IBM)と、外部労働市場の参入障
壁を低く設定し、「制約」がある女性就労者を中間労働市場に登用して企業が戦略的に活用する、すなわち
M 字就労を前提として、女性就労者のセカンドキャリアを充実するための就労支援を実施する事例(ヤオ
コー)である。
(1)日本 IBM の事例
日本 IBM が女性就労の見直しや取り組みを行ったきっかけは、IBM アメリカ本社の再建にあった。同社
046
の業績回復のための取り組みの一つに“Diversity and Inclusion”
(多様性と受容)が挙げられる。この取り
組みは、市場のニーズが多様化する状況において、組織に多様性を包含し、多様なニーズに適応する必要が
あるという認識の下で進められてきた。ダイバーシティーの対象で高い優先順位にあったのが、女性就労者
の能力活用施策であった。その理由は、女性がマイノリティーの中で大きな割合を占める存在であったこ
と、また、女性人材の採用と育成のために企業が先に「投資」をしているにもかかわらず、入社 5 年から 10
年目の退職率が同期の男性就労者として比較して高いために、結果的に、採用と育成の費用が埋没してしま
っており、これが企業にとって機会損失になっていたと認識されていたためである。そこで、日本 IBM の
Women’s Council(社内の委員会)が調査したところによると、3 つの課題が明らかとなった。それは、女
性就労者自身の将来像が描けていないこと、仕事と家事・育児のバランスが継続的就労のボトルネックとな
っていたこと、男性中心のネットワークから取り残されていたこと、であった。そのため、委員会は、課題
に対する解決策を提示し、性別・障がいの有無、人種等を問わず適応することができる働き続ける制度を整
備した。これらの取り組みによって、一定の成果が確認された(全従業員に占める女性就労者の割合、管理
職に占める女性の割合、理事・取締役に占める女性の割合のすべてが改善された)
。
一方で、社内に多様性を包含すると、組織の複雑性も増す。その組織を統率するためには、組織に所属す
るメンバー間で目指すべき方向性や価値観が共有されていることが不可欠であり、IBM は、この点を踏ま
えて、IBM の価値基準と行動指針を明確に打ち出している。
(2)ヤオコーの事例
ヤオコーは埼玉県を中心に関東圏で食品小売業を展開している東証一部上場企業である。23 期連続で増
収増益を達成しており、その業績を支えている一つの要因が、パートタイマーやアルバイト(非正規雇用者
率 76.4%)である。同社は、積極的に非正規雇用者に権限を委譲し、働くインセンティブを高める制度を充
実させ、また、女性の生き方やワークライフバランスを重視した働きができるよう社内体制を整備している。
ヤオコーでは、セカンドキャリアとして就労する女性スタッフの働き方の選択肢を複数用意している。非正
規雇用と正規雇用が大きく異なる点は、人事異動の有無と結果責任の大きさの違いである。しかし、セカン
ドキャリアの女性就労者の中には、人事異動があっても、厳しい結果責任が問われても、正規雇用を希望す
る就労者が含まれており、そのキャリアパスも用意されている。
5-5.事例の含意
日本 IBM とヤオコーの事例から確認されたように、女性就労者が働き続けることができる仕組みや、制
約がある女性就労者に対しても管理職登用の門戸が開かれる仕組みを提供することで達成される「男女共同
参画」の職場の実現は、企業競争力を維持し、向上させるために肝要であるという点を理解した上で取り組
むことが重要である。
このような視点を持つ重要性は、山口(2011)や Porter and Kramer(2011)5 においても強調されている。
「男女共同参画の推進と時間当たりの労働生産性との
山口(2011)が定量的調査を通じて得た分析結果は、
間に強い関連がある」こと、「女性正社員に管理職へのより大きな機会を開いている企業が、より生産性・
競争力が高くなる傾向を示す」こと、「女性の正規雇用の拡大が企業のパフォーマンスを高めることに結び
つくためには、まず女性雇用者の結婚・育児離職率を下げることが必須である」こと、
「性別にかかわらず
能力開発をし、かつ長期雇用を重視する企業が、育児介護支援や WLB(ワークライフバランス)の推進を、
企業のパフォーマンスの向上に結びつけることに成功している」
ことなどであった。これらの分析結果から、
「その前提として現在も非
山口(2011)は、「有能な女性正社員に管理職昇進への道を大きく開く」こと、
常に高い女性の結婚・育児離職率を低くする努力をする」ことの重要性を指摘している。しかし、
山口(2011)
の研究を理解・解釈する上で注意すべきことは、
「女性の管理職比率を増やし、女性の結婚・育児離職率を
低下させたから(必ず)企業の生産性・競争力が向上する」という因果関係を示しているわけではない点で
ある。この研究調査結果が示しているのは、相関関係であって、因果関係を示してはいない。この論理を解
く鍵の一つは、「就労者のワークライフバランスの推進を福利厚生目的ではなく人材活用目的と考える」(山
口,2011)ことにある。すなわち、企業は、女性の就労を促進する制度や仕組みを保護対策や福利厚生目
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
047
10
2013.3
的として位置づけるのではなく、企業の競争力を高めるための戦略的手段として位置づけた上で女性就労者
を活用・登用することが、結果として企業の生産性の向上に結びついているという解釈である。この観点は、
Porter and Kramer(2011)の基本的な主張と共通する。Porter and Kramer(2011)では、企業の社会的活動が、
社会的義務として取り組む視点からの CSR(Corporate Social Responsibility;企業の社会的責任)ではなく、
ビジネスの機会を創出する視点からの CSV(Creating Shared Value;共通価値の創造)の視点で取り組み、
関係者相互間に Win-Win の関係を構築することの重要性を指摘している。
5-6.結論
山口(2011)や Porter and Kramer(2011)から得られる重要な示唆は、企業において、さまざまな仕組
みを整備して男女共同参画社会を実現することは、企業の競争力を高めるよう作用すると同時に、就労者
にとっても働きやすい環境が整備されることを意味し、企業にとっても就労者にとっても Win-Win の関係
を構築することの重要性である。決して「「甘え」の構造」
(土屋,2001;2007)6 の中での保護策ではない。
したがって、「現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画」は、このような観点から現代的課題とし
て取り組む必要があることが再確認されたといえよう。
Ⅵ . 分析 4:創造都市の産業振興における女性の参画
6-1.問題意識と着眼点
時代と共に男女共同参画の目指すところは変化する。男女共同参画の射程も「社会的弱者である女性を保
護する」という立場から、「男女が共に生きる社会において、性差を含む多様性を活用する」という方向へ
広がりつつある。分析 3 では、企業が戦略的に男女共同参画を進めている事例が報告された。では、地域と
いう範囲ではどうか。全ての人が「性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮」
(内閣府、1999)し、
それを地域社会の活力に結び付けるにはどうしたら良いのか。本研究では、
「創造性」というキーワードで
考えてみたい。
「創造性が競争力の源泉となる産業がこれからの社会を主導する」
。この見地に立てば、男女共同参画につ
いても、従来型の社会が前提としているライフスタイルやワークスタイルにおける議論ばかりではなく、未
来の社会を前提として議論する必要があるだろう。本研究はそのきっかけとなることを目指している。
本研究では、地域において女性の能力を創造的に活用する方策を探るために、石川県金沢市(以降、金
沢と表記)に着目する。金沢は人口 46 万人、北陸に位置する地方都市である。江戸時代には「加賀百万石」
と謳われ、将軍家に次ぐ石高を誇った加賀藩の中心地として栄えた。現在の金沢は人口も経済規模も決して
大きくはないものの、文化を資源に独自の発展を遂げ、創造都市(クリエイティブシティ)として世界的に
も注目されている。本研究では、特に伝統工芸産業において文化と産業を融合させる上で個人が創造性を発
揮している事例に着目する。「世界第二位の経済大国」という呼称が過去のものとなり、コスト競争を抜け
出して高付加価値産業への転換を迫られる日本にとって、金沢の事例は示唆を与えるものと考える。
6-2.金沢の伝統工芸と調査対象
金沢には、
「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」
(
(昭和 49 年 5 月 25 日法律第 57 号、
以下
「伝産法」
という)
に基づいて経済産業大臣が指定する伝統工芸 6 業種と、伝産法で未指定の希少伝統工芸が 20 業種ある。希
少伝統工芸は伝産法の要件をほぼ満たしながらも一定の産業規模を有していない業種であり、市によって後
継者育成などの振興策の対象とされてきた。ただし、これらの希少伝統工芸の中には既に失われた業種もあ
る。金沢市の集計による伝統工芸品産業 22 業種の従業者数は、2009 年の実績で 2,848 人(指定業種 2,634 人、
「菓子木型」
「かつら・かもじ」
「太鼓」の 4 業種については、
未指定業種 214 人)となっている。「加賀竿」
後継者が確認されていない。現存していても高齢の職人が唯一人で継承するなど、風前の灯となっているも
048
のもある。
このような状況で、伝統と現代、文化と産業を結びつけるための様々な努力が産学官民によって行われて
いる。本研究では、特に個人の創意工夫が伝統工芸産業に影響を与えた事例を取り上げることとした。この
ため、金沢箔、加賀毛針、加賀繍(かがぬい)
、金沢桐工芸の四種の伝統工芸において、イノベーションに
関連したキーパーソンへ 2012 年 4 月から 8 月にかけて個別にインタビューを行った。いずれも、女性がアン
トレプレナーシップを発揮した事例として取り上げた。
なお、ジェンダーの問題を考察する際に、特定の個人が女性一般を代表するものではないことに留意する
必要がある。その上であえて定性的なアプローチをとるのは、今回の調査の目的が仮説を生み出すことにあ
るからだ。聞き取った内容は個人のライフストーリーであると同時に、伝統工芸産業を受け継ぎ、伝統と現
代、文化と産業を結びつけてきた当事者から語られるオーラルヒストリーでもある。彼女たちの活動が地域
の産業にどのような影響を与えたのか、また、彼女たち自身の人生の中でどう位置付けられるのか、事例を
通して見ていきたい。
(1)金沢箔の事例
「金沢箔」の事例は、素材から金沢ブランドの工芸品へという価値の転換が行われた事例である。
日本国内で金箔の 98%以上、その他の金属箔についてはほぼ 100%を生産しているのが金沢である。しか
し、箔の原料である金、銀等の金属の石川県内での自給はできず、地金を扱う地金商も他の大都市圏が主で
ある。いかに高い製箔技術を持っていても景気の影響を強く受けざるを得なかった。用途も従来は高級な伝
統工芸品や伝統的な建築物に限られており、産地による創意工夫の余地は限られていた。
本研究では、オイルショックをきっかけに箔工芸品の製造販売を行う会社を創業し、売上高 14 億円の企
業に育てた女性に着目した。この事例の特徴は、それまでは専ら材料として流通していた箔を金沢発の工芸
品としてブランド化し、雑貨や食品等へ応用を進めたことにある。小売業への参入は、最終製品の付加価値
を高めるための産地による創意工夫を可能にした。製箔の副産物である箔打ち紙の製法を応用した「あぶら
とり紙」も、全国的なヒットにつながった。
石川県伝統産業振興室が 2012 年に発表した調査結果によれば、他の国指定伝統工芸の生産額が総じて減
少するなか、2008 年度から 2010 年度までの 3 年間で金沢箔のみ微増している。金箔を大量に用いる仏壇等
の需要が減るなか金沢箔が健闘を見せているのは、金沢箔業界に携わる人々が将来を見越して食品、化粧品、
インテリア、建築、土産品など現代的な用途の開発を行ってきたことが要因となっている。
(2)加賀毛針の事例
金沢に伝わる伝統的な釣具「加賀毛針」の事例は、釣具から装飾品へという価値の転換が行われた事例で
ある。
鮎釣りの道具である加賀毛針は、近年では女性の内職として継承されてきた。全国に根強いファンがいる
一方で、他の工芸品と比べて知名度は高くない。高度な技術を要するために継承者の参入が少ないこと、天
候や季節、自然環境などに生産が影響されることが兼ねてからの課題であった。
本研究では、釣具店に嫁いだことをきっかけに毛針職人になり、実演のために訪れたデパートで毛針の材
料である羽根を用いたコサージュを即興で開発した女性に着目した。現在ではコサージュは釣りのオフシー
ズンの主力商品となっている。金沢市内の別の老舗釣具店でも、20 代目の当主である現社長が毛針職人の
妻と二人三脚でブローチやチョーカー、イヤリングなど多種類のアクセサリーの開発を進めている。
この事例の特徴は、釣具の材料を用いたアクセサリー制作という一見小さな工夫が、加賀毛針の種々の課
題の解決につながり得る波及効果を生んだことにある。アクセサリーへの応用は、若い女性など新たな消費
者層の獲得や、釣りのオフシーズンの生産安定化につながった。また、それまではどんなに美しくとも「釣
具」としての価値で値段が決まっていたが、デザインの工夫や他の作家とのコラボレーションで付加価値の
高い製品を生み出すことができるようになった。加えて、加賀毛針の文化の伝承にも貢献している。毛針ア
クセサリー作りの体験教室には観光客や地元の小中学生も含め年間数百人が参加し、文化の伝承の機会とな
っている。2012 年には、アクセサリー作りに興味を持ったことから老舗釣具店にデザインの学校を出た新
卒の女性が入社したという。
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
049
10
2013.3
(3)加賀繍の事例
金沢に伝わる伝統的な刺繍技法「加賀繍」の事例は、モノを売るビジネスからサービスを売るビジネスへ
という価値の転換が行われた事例である。
本研究では、自らが趣味から刺繍の道に入ったことを生かして加賀繍の教室を主宰する女性に着目した。
この事例の特徴は、習い事から弟子入り、伝統工芸士、独立と工房主宰というキャリアパスを示し、下請け
として内職で仕事をするのみだった加賀繍の世界に体系的な教育プログラムと楽しみの要素を取り入れたこ
とにある。
下請け産業からの脱却という点では先に紹介した金沢箔の事例と共通するが、異なるのは技術の伝承自体
がサービスとなり、継承者にとっての生きがいにもなっている点である。
2012 年 4 月現在、加賀繍の伝統工芸士 23 人は全員が女性で、そのほとんどが主婦である。金沢市全体で
は加賀繍の工房が 8 つあり、金沢市の支援の下、工房に弟子入りして加賀繍の技術を学んでいる「専門塾生」
が 10 名いる。その他、カルチャーセンター等で数十名の生徒が趣味として加賀繍を学んでいる。加賀繍の
生産高は現在も縮小傾向にあり、業としての従事者数も減少傾向にある。しかし、趣味として普及するとと
もに、作家志向の強い若手の職人が育つなど、技術の伝承は進んでいる。個人で作品を作るケース、工芸士
が何人か集まって工房として成り立った上で専門塾を開設するケース、趣味としての教室を主宰するケース
など、それぞれが加賀繍作家として活動する道を模索している。
(4)金沢桐工芸の事例
「金沢桐工芸」の事例は、現代生活に合った商品開発と情報発信の工夫による価値の転換が行われた事例
である。
金沢桐工芸の代表的な製品は桐をろくろで引いて表面を焼き、蒔絵などを施した桐火鉢である。しかし、
燃料革命によって暖房器具としての火鉢の需要は皆無に等しくなってしまった。近年では壁掛けや花瓶など
の桐工芸品も作られるようになったが、他の工芸品同様、現代生活との乖離が課題であった。
本研究では、東京の出版社に勤めた後にパートナーと共に金沢に帰郷して家業の桐工芸店を継承し、現代
生活に合った桐工芸品をプロデュースする女性に着目した。この事例の特徴は、古いものの良さを最大限に
残しつつ、現代的な感覚と情報発信の工夫によって新たな需要を喚起している点にある。新たな桐工芸品の
開発のほか、「火鉢のある生活」の見直しと発信、金沢のガイドブックの制作、個人商店を中心とした金沢
物産展の企画、商店街の活性化、町家の保存運動など地域全体の活性化に活動の幅を広げている。
伝統産業の振興において、新たな取り組みは閉塞感の打開策となる反面、本来の価値を損なってしまうと
いう危険がある。伝統的なものの価値を再発見し、現代的な感覚で発信するという取り組みが、こうしたジ
レンマに対する 1 つの解決策となっている。
6-3.まとめ
以上の 4 つの事例に共通していることは、結婚や出産、帰郷といった個人のライフイベントに基づくキャ
リアの転換が、伝統産業への参入のきっかけとなっている点である。個人のキャリアとも密接に関連した新
たな発想と創意工夫が、伝統産業の課題を解決し得るイノベーションにつながっている。
元々、今回事例として取り上げたような起業家や個人事業主は個人が自身の裁量で能力を発揮しやすい働
き方であり、例えば個人商店では「商店のおかみさん」と呼ばれるように女性も重要な役割を担ってきた。
かつて近代社会へ移行する時期においては、女性を「内職や露店から解放」することが女性の権利の獲得と
結び付けられていた。しかし、創造性の発揮に関していえば、家内労働や手工業的な働き方に見直されるべ
き面もある。もちろん、正社員であろうとパートタイマーやアルバイト、ボランティアであろうと創造性の
発揮は可能である。例えば分析 3 では、パートタイマーの力を最大限に引き出すための企業の取り組みが紹
介された。
出産や育児、介護等によって職業人としてのキャリアを中断した女性の再就労の方法には様々なものがあ
る。正社員もしくはパートタイマーとしての企業への再就職も、有望なパスであることは確かである。加え
050
て、有償労働と無償労働の狭間で創造的なキャリアパスを選択できる、社会的・文化的なインフラを整える
ことも、男女共同参画に大切な視点ではないだろうか。
重要なのは労働形態ではなく、個人がどのように価値を生み出すか、そして個人の創造性を最大限に発揮
させるためにどのような支援を行うか、ということである。
本研究では、地域の産業振興において、キャリアの転換による人材の多様性がプラスに作用した事例を紹
介した。これらの事例は短期的な経済効果以上に、地域の価値を高める上で高い質的効果を生んでいる。彼
女らは伝統工芸の分野において創造性を発揮し、技術の継承や新たなデザインの製品の創作はもとより、新
たな消費者層の開拓、後継者の獲得、地域ブランドの確立をもたらしている。それらは長期的に見て地域の
持続性を高め、外需を獲得し、女性の就労の機会を広げることにもつながるだろう。現状において、他の先
進諸国と比して日本の多くの女性が就労においていわゆる「M 字カーブ」の谷を経験しているのだとすれば、
それは逆にイノベーションの可能性が秘められているとも捉えられる。
「制約」
「ブランク」とみなされてい
たものをどうプラスに転換するか、そこに社会の発展する鍵がある。M 字カーブをただ埋めるのではなく「ど
う埋めるか」が重要になる。
Ⅶ . 高齢社会における女性問題としての介護労働
7-1.問題意識
人口の高齢化による要介護高齢者の増大は、フォーマルあるいはインフォーマルを問わず、より多くの介
護者を必要とする。介護者の多くは女性であり、その 4 割が 60 歳未満である(厚生労働省『国民生活基礎
調査』)。また、介護者の就業に着目すると、2002 年∼2007 年において、介護あるいは看護を理由に転職・
「病気・高齢のため」に次いでの 2 番目に多い離職理由と
離職している者は 12 万人であり、50 代女性では、
いなっている(総務省『就業構造基本調査』)。介護者の就業における介護保険サービスの影響を見てみると、
介護保険サービスを利用者において有業者が多いことがわかる(総務省『社会生活基本調査』
)
。
生産年齢人口が減少していく中で、労働力率の向上、特に女性の労働力率の向上は政策的な課題となって
いる。また高齢化の進展により、介護と就業の両立は女性の労働を考える上で重要性を増していくと考えら
れる。そこで本研究では、介護保険サービスの利用が介護者の就業と介護の両立を促進するという観点から、
介護保険サービスの供給を可能にする要件を明らかにする。介護保険サービスを供給していく上で、財政的
男女共同参画社会の実現
研究2
女性の労働力率
家庭内サービス
研究1
介護
本研究
介護保険サービス
人的制約
財政的制約
世帯所得
育児
介護休業
留保賃金
結婚
雇用時間の柔軟性
出所:大澤作成。研究1および研究2は先行研究をスコープにより分類したもの。
図 6 本研究の概念図
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
051
10
2013.3
制約と人的制約の大きく分けて 2 つの制約があるが、ここでは人的制約に着目して分析を行う。
7-2.介護保険制度と介護労働供給増加施策
2006 年以降、介護関連職種の有効求人倍率の高さや、離職率の高さ、介護福祉士等養成機関における定
員割れなどが、「介護労働者不足」として指摘されるようになってきた(介護労働者の確保・定着等に関す
る研究会(2008)の「中間とりまとめ」)。2009 年には、このような「介護労働者不足」を背景として、「介
護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律」
(平成 20 年 5 月 28 日法律第 44 号)
が成立し、介護従事者処遇改善交付金事業により介護労働者の賃金が引き上げられた。
(厚生労働省)
』
によれば、
介護労働者の賃金は上昇しているが、
『介護職員処遇状況等調査(2009 年・2010 年)
賃金の上昇が労働供給に与えた影響は明らかではない。そこで本研究では、上記の政策の効果を検証するた
め、賃金の上昇が介護労働者の労働供給に与える影響を分析する。
7-3.介護労働者の賃金の上昇が労働供給に与える影響
本研究では、賃金の上昇が介護労働者の労働供給を増加させるという仮説を検証するために、介護労働者
の労働供給関数の推定を行う。用いるデータは、
(財)介護労働安定センターが 2006 年に行った『平成 18 年
介護労働実態調査』の介護事業所調査票における事業所単位の個票データである。被説明変数として短時間
介護労働者の 1 カ月当たりの労働時間数、説明変数として、時間給、個人属性、事業所属性を用いた重回帰
分析を行う。推計は、職種別に、訪問介護員、通所介護職員、介護老人介護施設職員の 3 つについて行う。
推計結果は表 4 に示されており、賃金の上昇が短時間介護労働者の労働供給を増加させるという仮説を支
持している。その論拠は以下のとおりである。賃金について、統計的に有意にプラスの偏回帰係数が得られ
ている。このことは、賃金の上昇が短時間訪問介護員の労働供給を増やす効果がある可能性を示している。
また、賃金の 2 乗項の偏回帰係数が統計的に有意にマイナスの符号を表していることから、賃金の上昇はあ
る水準までは労働時間数を増加させるが、ある水準を超えると反対に労働時間数を減らす可能性があること
を意味している。推計結果をもとに短時間訪問介護員の労働供給に関する簡単な試算を行ったところ、第 1
に、短時間訪問介護員の時間当たり賃金が 4.0% 上昇した場合、1 カ月間の労働時間数が平均 3.8 時間多くな
ること、第 2 に、短時間訪問介護員の 1 カ月当たりの労働時間数を短時間介護職員並みにするためには、時
間給を 2500 円程度にする必要がるという結果が得られた。
7-4.おわりに
本研究では、介護労働者の賃金の引き上げが労働供給に与える影響を明らかにするため、短時間介護労
働者の労働供給関数の推定をおこなった。分析の結果、次のことが明らかとなった。第 1 に、賃金の上昇は
短時間介護労働者の労働時間数を増加させることである。より具体的には、短時間訪問介護員の時間給が
10% 上がると、1 カ月間の労働時間数が 7.5% 増えることを明らかにした。第 2 に、短時間訪問介護員の賃金
率がある一定の水準を超えると減少に転じることが明らかになった。また、推計結果をもとに介護従事者処
遇改善交付金事業の効果を推計したところ、短時間訪問介護員の 1 カ月当たりの労働時間数を短時間介護職
員並みにするためには、現在の短時間訪問介護員の平均時間給 1200 円の 2 倍以上にする必要があることが
明らかになった。
以上のことから政策的示唆として次のことが導かれる。2009 年に実施された介護従事者処遇改善交付金
事業によって、介護従事者の賃金は上昇した(厚生労働省『介護従事者処遇等状況調査』
)が、労働時間数
を増加させる効果は大きくはない。また労働供給を必要とされる水準まで増加させるためには、十分な賃金
の引き上げが必要であると言える。ただし、財政的制約が今後一層強まる中で、介護労働者の賃金を大幅に
引き上げることの政策的妥当性については、政策の費用対効果も含め十分に検討しなければならない。この
点に関しては今後の課題としたい。
052
表 4 短時間介護労働者の労働時間数の推計結果
訪問介護
賃金率
賃金率二乗
定型勤務ダミー
男性ダミー
年齢
年齢二乗
勤続年数
勤続年数二乗
介護福祉士ダミー
訪問介護員 1 級ダミー
訪問介護員 2 級ダミー
他事業所有ダミー
複数サービスダミー
切片
Log pseudolikelihood
観測数
0.126
(0.032)
通所介護
***
-0.044 ***
(0.011)
29.812 ***
(2.874)
-1.143
(3.424)
0.068
(0.043)
5.985
***
-0.704
***
(0.898)
(0.151)
1.925
(1.120)
施設介護
0.251
0.805
(0.253)
(0.223)
-0.142
(0.137)
6.768
(5.662)
-1.311
(0.491)
0.014
(0.006)
2.931
(0.999)
***
**
***
-0.428 ***
(0.114)
-4.680
(25.426)
17.680 ***
(6.707)
-0.236 *
(0.123)
***
***
5.169
***
-0.587
***
(1.565)
(0.222)
*
-2.748
(3.176)
0.867
0.815
(1.464)
(6.810)
7.135
(2.320)
4.129
***
4.540
**
(1.215)
(1.953)
-51.665 **
(22.588)
5.894
(2.002)
0.625
(2.382)
-3.055
(116.908)
***
-4.671
(3.218)
-258.371 **
(116.905)
-1.2E+07
-1394337
-2984489
8,766
1,755
664
出所:大澤推計
追補:GCOE 事業としての本研究の位置づけ
本プロジェクトは、多文化共生、男女共同参画、高齢社会にかかわる法制度や社会システムの改変・整備
が、社会・経済・国民の行動変化や厚生に及ぼす効果を可能な限り実証的に検討することを目的としている。
このプロジェクト研究で期待されるのは、(1)社会制度に関するフロンティアなイシューについて、定
量的な根拠に基づいて判断し、政策立案、議論のできる人材を育成するという教育効果と、
(2)これまで、
ともすれば「べき論」やジャーナリスティックな議論が先行してきた分野において、何がどれだけ変わるの
かという根拠に基づく公共政策の議論の土台を提示し、東北大学によって Evidence Based Public Policy と
いう一分野の確立である。
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
053
10
2013.3
研究メンバー
分析 1
◎吉田 浩(東北大学大学院経済学研究科・教授)
分析 2
水落 正明(三重大学人文学部・准教授)
分析 3
水野由香里(西武文理大学サービス経営学部・専任講師)
分析 4
根立 俊恵(一般社団法人知識環境研究会・研究員)
分析 5
大澤 理沙(東北大学経済学研究科地域イノベーション研究センター・研究員)
◎:研究代表者
註
* 本報告は 2012 年 8 月 2 日仙台国際センター報告に対する東京大学佐藤博樹教授のコメントを受け、加筆修正したものである。佐藤氏にはこの
場を借りて有益なるコメントに対するお礼を申し上げます。なお、本報告のもととなった研究報告に対する佐藤氏のオリジナルなコメントの詳
細は、本報告に続くコメントの部分を参照されたい。なお、研究の未対応部分および誤りは筆者に帰せられる。
† 東北大学大学院経済学研究科教授 [email protected]
『現代女性の労働・結婚・子育て 少子化時代の女性活用政策』
,ミネルヴァ書房.橘木俊詔,2005,
「なぜ女性活用策
1 橘木俊詔編著,2005,
がうまくいかないのか」
,橘木編著(2005)所収.
「非正規労働者の基幹労働力化と雇用管理 −非正規労働の拡大が女性のキャリアに及ぼす影響−」
,橘木編著(2005)所収.
2 武石恵美子,2005,
「労働生産性と男女共同参画 なぜ日本企業はダメなのか、女性人材活用を有効にするために企業は何をすべきか、国は何
3 山口一男,2011,
をすべきか」
,RIETI Discussion Paper Series 11-J-069.
「女性雇用者のネガティブ・ステレオタイプは企業が生み出している:二種の予言の自己成就の理論的考察とその対策」
,
4 山口一男,2010,
RIETI Discussion Paper Series 10-J-49.
「経済的
5 Porter, M.E. and M. R. Kramer. 2011.“Creating Shared Value,”Harvard Business Review, January–February2-17(編集部訳,2011,
価値と社会的価値を同時に実現する共通価値の戦略」Diamond Harvard Business Review,Jun,8-31)
.
『続「甘え」の構造』
,弘文堂、および,土居健郎 2007,
『
「甘え」の構造(増補普及版)
』
,弘文堂.
6 土居健郎,2001,
Comments
佐藤 博樹
本稿は、概要ペーパーに関するコメントであるため、誤解もあろう。この点、ご了解をいただきたい。ま
た下記に論文とあるが、各コメントは、論文要旨と各論文の概要を説明された吉田報告に関するものである。
Ⅰ. 吉田論文
第 1 に、日本国内の都道府県の比較のために、ノルウェー統計局が開発した男女平等度指標を適用する理
由が説得的に説明されていない。第 2 に、同指標で測定された都道府県毎の男女平等度の違いが何に起因す
るものかが明らかにされていないため、男女平等度を改善するための施策立案に活用できない。第 3 に、男
女平等度を都道府県別に測定する先行研究と比較して、今回の計測の特徴や貢献が説明されていない。
第 3 の点に関係して、私が参加した内閣府男女共同参画会議の「少子化と男女共同参画に関する専門調査
会」が行った都道府県比較を紹介する(「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国内分析報告書」2007
年)。専門調査会報告は、女性の労働力率(有業率)と合計特殊出生率の水準と変化に基づいて都道府県を
類型化(タイプ 1 からタイプ 7)し、その上で各類型の社会環境を比較している。調査会報告のタイプ 1 は、
合計特殊出生率の減少率が小さくかつ水準が比較的高く、女性有業率の水準も高い都道府県で , 他方、タイ
054
プ 7 は、合計特殊出生率の減少率が大きくかつ水準が低く、女性有業率の水準も低い都道府県である。吉田
、長野県(2 位同位)
、京都府(2 位同位)、
論文で男女平等度が比較的高いと分類された鳥取県(ランク 1 位)
東京都(6 位)を取り出すと、専門調査会報告ではそれらはタイプ 1(鳥取県、長野県)とタイプ 7(京都府、
東京都)の全く異なる類型に分かれる。タイプ 7 の東京都は、女性が就業率が低いだけではなく出生率も低
いことが知られているが、吉田報告では男女平等度が比較的高い類型となる。こうした相違点をどのように
理解すればよいのか。調査会報告は、①雇用機会の均等度を含めたライフスタイルの選択の多様性、②仕事
と生活の両立の可能性、③子育て支援の充実度などに関して指標化した社会環境を上記のタイプ別毎に比較
しているが、それによるとタイプ 1 に比較してタイプ 7 は、雇用機会の均等度だけではなくて、仕事と生活
の両立可能性や地域の子育て支援充実度など低いことが示されている。
Ⅱ . 水野論文と根立論文
コメントではなく、2 つの事例研究に関する吉田報告に関係して感想を述べる。第 1 は、事例研究に基づ
いて、男女共同参画の促進が企業の業績向上につながることを実証するためには、仮説構築と調査方法など
周到な準備が必要となる。全国レベルや産業レベルなどのマクロレベルでは、計量的に両者の関係を実証し
た研究があるが、個別企業の事例研究での実証は簡単ではない。
第 2 に、マクロレベルでは、役員や管理職に占める女性比率が高い企業は、利益率が高いことなどを実証
した研究があるが、個別企業レベルにおりると、女性が活躍している会社と活躍していない会社の利益率の
分布には重なる分が大きい。つまり、女性比率が高くても利益率が低い企業が存在する。言い換えれば、マ
クロレベルでは統計的に有意であることが、個別企業レベルには当てはまらないことが少なくない。マクロ
レベルで実証的に正しいことをミクロレベルたとえば企業レベルに落とし込む論理が大事となる。私は、女
性の活躍の場の拡大が企業の利益に結びつくと短絡的に主張するのでなく、そうしないと企業経営にマイナ
スになると説明することにしている。このように、マクロレベルで正しいことを企業レベルに落とし込むと
きには、ロジックに工夫が必要となる。
第 3 に、女性の共同参画推進(均等)が、自動的にワークライフバランス(work–life balance)の実現を
もたらすという主張にも疑問がある。ワークライフバランス支援と均等の関係は、現状では独立しているの
ではないのか。例えば、東洋経済新報社の CSR 総覧のデータを利用して両者の関係を見ると、両者に相関
があるとは言えない。それはワークライフバランスの実現度を男女の勤続年数の差で測定し、均等を女性管
理職比率で測定した結果による。これによる均等の実現が両立を促進している訳でないことがわかる。男女
共同参画推進すれば自動的に働きやすい職場環境が実現できるわけでないのである。
Ⅲ . 大澤論文
賃金水準が労働時間を決める部分があることは否定しないが、就業調整の問題など労働時間が賃金を決め
る側面も大きいと考える。さらに訪問介護では、介護サービスの利用時間帯などで労働時間が決まる部分も
少なくない。たとえば、利用者の都合で毎月の労働時間が変わり、訪問先の方が亡くなられたりすると、仕
事がなくなることにもなる。労働時間は、介護サービスの需要で決まる部分が大きい。さらに、賃金水準と
労働時間の関係であれば、個人調査のデータを使う方が仮説の検証に適していよう。2010 年の個人調査は、
就業者の現在の労働時間、希望する労働時間、賃金水準、就業調整行動なども尋ねている。近日中にデータ
が、SSJ データアーカイブから公開されるので、分析に利用されることを期待している。
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
055
10
2013.3
Ⅳ . 水落論文
幸福感に関して議論は興味深い。しかし、幸福感の水準自体をそのまま国別に比較することには留意が必
要であろう。そのため、幸福感の水準自体を国際比較するのでなく、たとえば男女の幸福感の水準の違いを
国毎に比較したり、各国における幸福水準を規定する要因を国毎に比較する方が有益な結果を得ることがで
きよう。国単位の比較では、他の年度の ISSP(International Social Survey Programme)のデータを国毎に
集計し、性別役割分業意識や家族観、女性の仕事観などの相互関係を分析することも検討に値しよう。
056
現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画
057
10
2013.3
民主的実践としてのジェンダー平等と
異文化間能力へのアプローチ
―東北復興に向けた理論的課題と予備的考察―
報告者 スティール若希 1
監訳 大沢 真理
ジェンダー平等と多文化多様性の概念からただちに引き出されるのは、個人の平等な価値を認める法的・
政治的実践を生み出す必要があるという点である。その際に、個人にはさまざまな差異があり、その差異の
ために、公式・非公式の差別や偏見によって個人が日常生活において不当な不利益や負荷を課されるかもし
れないことにも注意しなければならない。現代の自由民主主義国家の多くが抱えるパラドックスは、矛盾に
満ちた空間に横たわっている。つまり、国家は立憲民主制としての正統性をもち、国民を差別から保護する
と考えられているにもかかわらず、実際には「民主的憲法」2 を推進することもできず、市民権(Citizenship)
の保護が実質的に約束しているはずの事柄も推進できていないという、矛盾である。
本報告は、ジェンダー平等と多文化の実態にかかわる課題を追究しようとするものであり、その方法は、
民主的なシティズンシップ・市民権3 全般に関して、それが理論的には約束しているはずのこととその実践
における陥穽を批判的に検討することである。本稿はまた、民主的な市民権がとくに東日本大震災後の復興
計画にとってどのような意味をもつかを、批判的に考察する。
その際に援用するのは、ジェンダー平等、多文化主義、民主政治が交差する領域の研究を国際的にリード
してきた 2 つの理論体系、すなわち、フェミニズム政治理論と批判的民主主義論である。ここで述べておき
たいのは、本稿が民主主義社会、特に先進的な立憲民主主義社会を考察の対象とすることである。
「ジェン
ダー平等」と「多文化多様性」の課題に最も正面から取り組んできたのは、民主主義を掲げる先進工業国で
ある。そうした国々は民主的自己統治に関する憲法上のルールに従うと宣言しており、そのルールは個人の
平等と自由の原則に立脚し、しかも平等と自由は各法主体がもつ性別やジェンダーあるいは多様な文化的特
徴にかかわらず、原則でなければならないとされている。さらに本稿は民主主義の概念に焦点を当てる。民
主主義の概念は一群の法的・政治的・制度的な「前提条件」を含意しているが、それらは多くの場合、政治
的アクターや社会科学者によっていまだ十分に理論化されず、そのためにいわゆる先進社会における現存の
民主主義の質について無批判な想定がまかり通っている。
アイリス・マリオン・ヤングは現代の民主主義を、フェミニズムと人種差別反対主義の 2 つの観点から批
判し、社会正義こそが「社会の成員の自己開発と自己決定を促進する制度的条件」だと述べている4。本稿
の考察が関心を寄せるのも、政治的アイデンティティを相互に構成する複数の要素(国籍、人種、ジェンダ
ー、母語、年齢など。これらが民主的市民権の質を実際に左右している)の間の複雑な関係を提起できるよ
うな理論的枠組みである。さらに、市民が「ジェンダー平等」を的確に実践することを可能にする、自己開
発と民主的市民権の制度的条件を探りたいと考えている。
そうした制度的条件によって、
「異文化間の流暢さ」
が現在から未来への確固たる民主的文化となるだろう。本稿では次のような疑問が出発点になっている。
民主的制度や法律は、異文化間暴力の恐れ、性的な抑圧、その他「差異」によって実際に不利益を生
じる公式・非公式の手段に対して、どのような保護の役割を果たすのか。
大多数の市民/住民(女性および男性)がジェンダー平等の民主的基盤を自分たちの文化に公式に取
り入れるには、互いを尊重し合う制度的実践としてどのようなことを公的に採用すべきか。
058
マイノリティ文化に属する住民も、「共生」に向けて政治的帰属のルールに影響を与える対等の資格
があるという見解があるが、その見解が主流の文化で尊重されるようにするには、異文化間パートナ
ーシップについてどのような制度的実践を行えばよいのか。
エリートおよび草の根による政治的代表の実践(代議制自己統治を含む)
、規範形成活動(立法)、ジ
ェンダー平等な異文化間市民権へと市民を育てる市民教育、これら三者の間にどのような関係がある
のか。
日本の市民権について批判的に考察するうえで、
短期的・長期的な「ポスト 3.11 の余韻」が「機会の窓」
になるにはどうすればよいか。誰が日本の「内/外」とみなされるのか、東北復興政策・戦略が掲げ
る支援プログラムや支援サービス、まちづくりに、誰を含めるべきか。
以下では第一に、ジェンダー平等および文化的多様性の尊重に向けた、日本をはじめ世界各国の現行の対
応をもとに、民主的市民権の実践に見られる欠陥を明らかにする。第二に、現代のアイデンティティが交差
する複雑性にかんがみて、多文化主義に関する文献の理論的盲点をいくつか指摘する。第三に、フェミニズ
ム研究が最も適切に理論化してきた、平等と差異の間の核心的な緊張を振り返り、現代の政治的アイデンテ
ィティがいかに複雑に交差しあっているかについて述べる。こうした作業によって、現代の民主主義の主要
な課題が浮き彫りになるだろう。それは、時代遅れのカテゴリーを脱構築するだけでなく、そうしたアイデ
ンティティ(ジェンダー、人種、文化、民族)の反本質主義的な解釈を法律に組み込んで集団を超えた連帯
を形成するという課題である。第四に、上述の政治的帰属の問題を民主的自己統治の実践に関連づけたい。
それを通じて、民主的な代議制意思決定機関は、すべての市民(エリートおよび民衆)が権限を実際に共有
(power-sharing)するための教育を受け、ジェンダー平等かつ異文化間で互いを尊重し合う能力を否応なく
身につける実践的な場所であることを、再評価することになる。最後に、以上の理論的・実践的洞察をポス
ト 3.11 の東北復興の現状に当てはめ、日本の市民権の歩みのなかでも歴史的な現時点で、どのような含意
を引き出せるのかを検証する。
Ⅰ. 民主主義の欠陥:国際的および憲法上の公約
「民主主義」に関する主要な文献は、ほとんどが西洋の政治哲学の伝統に根ざしており、そこでは個人の
権利と自由が共同体の要求と緊張関係にあると想定している。しかし、こうした文献が語らなかったか不十
分にしか扱わなかった問題が、さまざまな市民/住民が烙印を押され、政体(bodypolitik)の正規の成員に
なることから排除されてきた、ということである。排除は性・ジェンダー、性的指向、人種、先住民である
ことなどにもとづくだけでなく、国籍や年齢、身体能力に基づく排除もあると考えられる。こうした差異の
多くは、現代の民主主義社会においても多くの市民/住民の権利と自由を否定するために使われている。理
論的には、全ての立憲民主主義国家は、ジェンダー平等の実践と多文化的な実践の有効性と範囲を拡大し、
自国の憲法上の誓約および国際的誓約を履行することが期待されている。各国政府の進捗状況を監視するた
めに、国連などの多国間機関は『人間開発報告書』を作成し、根強い不平等に関して数多くの含蓄の深い指
、
「市民的及び政治的権利に関
数を次々と発表している。国際法の分野では「人種差別撤廃条約」
(1965 年)
(1966 年)
、
「女性差別撤廃
する国際規約」(1966 年)、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」
5
条約」(1979 年)において、各国の国内法や国内政策により、あるいは法・政策を通じて、歴史的に周縁
化されてきた社会集団に対する差別を是正する国内政策措置の失敗について、各国が応答責任を負うよう
(国連 1995)
にする法的な約束事が取り決められている。1995 年の国連世界女性会議では『北京行動綱領』
が 180 カ国以上によって採択され、女性の全面的な参加と実質的な平等を、良好なガバナンスの要として実
現することに向けて、広範囲にわたる政治的な約束事が決められた。
「文化的表現の多様性の保護及び促進
6
7
に関する条約」を 75 カ国が批准し、「障害者の権利条約」と「先住民族の権利に関する国連宣言」8 が採択さ
れたことは、規範枠組みや民主的理念の変化を反映している。規範枠組みや民主的理念は、国内社会と国際
社会の境界、政治的帰属および市民権と文化的・身体的アイデンティティの概念、社会集団の成員であるこ
との役割、世界における多様なあり方の民主主義にとっての価値、などを強調してきたが、それが変化して
民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ
059
10
2013.3
きたのだ。
しかしながら、これらに対抗する新自由主義的言説がこの 30 年間に出現した9。こうした言説は公式的な
法的平等を民主的市民権の最終目標とし、したがって階級、ジェンダー、人種、文化、言語、社会経済的地位、
先住性、障害が市民権の行使に政治的な影響を及ぼし続けていることを否定する。新自由主義者と新保守主
義者が言わんとするように、公式的な平等がすでに憲法の条文にほぼ達成されたのであれば、構造的な差別
の克服を目指すアファーマティブ・アクションや特別措置などの、民主的な包摂の仕組みは不要であるか廃
止すべきものとなる。過去 30 年間の民主的「進歩」を振り返ると皮肉なことに、構造的差別を撤廃するた
めの政府による具体的かつ積極的な法的介入を規定した国際条約に、ますます多くの国が署名しているが、
「平等」は達成済みで、家父長制、植民地主義、抑圧の時代は終わったと主張する保守的言説を前に、それ
らの条約における誓約は履行されていない。
Ⅱ . 文献検討:理論的盲点を明らかにする
マイノリティの権利、民主的制度、政治的代表に関する主要な国際的な文献は、従来、多極共存型民主主義、
ナショナリズム、少数民族やマイノリティ文化に焦点を当ててきた。したがって、先住民族、少数民族、多
文化社会内の民族・文化的マイノリティなど、各集団の権利に見られるさまざまな差異に注目している10。
カナダの哲学者ウィル・キムリッカら多文化主義の主要な理論家は、ジェンダーに基づく自己決定の問題と
民族・文化的問題が理論的系譜を共有すると認めている。とはいえ、女性や移民の民主的な自己統治の権利
を確立することは、彼らの考察の中心にはなかった。むしろキムリッカは当初、ある集団の民主的権利の規
範的正当性を、カナダのように白人移民社会を築いた移住のパターンに求めた。そして、
「旧」マイノリテ
ィの集団としての権利と「新」マイノリティの集団としての権利を区別している11。政治的自己代表への民
主的権利12 について、その規範的根拠をこのように狭く定義すると、女性や民族・文化的マイノリティ、永
住者、移住労働者、障害者、若者などの集団が表明した懸念に対して、分析的にも規範的にも盲点が生じる。
そうした集団の民主的権利は、地域的集中や移住、あるいは民族・文化的集団性といった従来のパラメータ
と関係づけられないかもしれない。したがって、地域や移住に基づいた分析は「国家」
、
「文化」
、
「マイノリ
ティ」についての本質主義的な見方を提示することになりがちで、集団の特異性や固有の特徴の定義が、集
団/国家内の有力な指導者の考え方や利害、属性によって決定されることにもなる。しかしながら、地理的
領域にもとづくのでない集団が民主的な自己統治を求める生来の権利は、近代の国民国家概念が生まれる前
から間違いなく存在する。英国について言えば、ポール・ギルロイが「多文化共生」という用語をポストコ
ロニアリズムの文脈で用いたことも同様の問題をはらんでいる13。ギルロイは一義的な人種概念と人種化の
言説の効果だけに過度に固執しているからだ。人種と文化が階級やジェンダー、能力、性的指向に基づく抑
圧とどう交差しているのかという分析が重要であるにもかかわらず、ほとんどなされていない。ギルロイは
人種差別主義がもたらす計り知れない影響を十分認識しているが、英国での日常的な異文化共存の関係にお
いて草の根レベルで互いを尊重し協力し合うことができると、
かなり単純で目的論的な信頼を主張している。
これは人種差別主義の力を政治的に認識した分析であるが、脱政治化するような行動手法を提唱しており、
そうした分析から導かれる行動手法では、人種化されたアイデンティティが、既存の形態の人種差別主義を
克服するうえで、実際に果たしうる建設的な政治的役割が否定されてしまう。ギルロイは人種化された政治
的アイデンティティを漫然と制度的に解体することを支持しているだけではない。多文化共生が、劇的な幸
運によってではなく制度設計をつうじて存在できるように、将来の草の根レベルの多文化共生を発展させる
には、どのような制度的条件が必要なのか、批判的に考察することもしていない。フェミニズム運動に対し
てはジュディス・バトラーが、その政治的アイデンティティとしての「女性」というカテゴリーを批判した
が14、それと同様にギルロイは、周縁化された集団が民主的な自己決定やエンパワーメントを求めうる「民
主的な」プロジェクトとして、人種化されたアイデンティティが役割を演ずることは正統なのかと、異議を
申し立てている。
ここで日本に話を移すとジョン・リーは、日本が何百年にもわたって多民族社会であって、複数の民族が
日本の国造りに貢献してきたという現実を、帝国主義的な戦前と戦後の言説がいかに覆い隠してきたか明ら
060
かにしている15。日本のマイノリティに関するマイケル・ウィーナーの著書16 と同様に、エスニックな多重性、
多文化主義、マイノリティの現実と、ジェンダー化・階級化された移住の政治的意味合いとが深くつながっ
ていることは、不十分にしか検討されていない。それで、市民/住民間の民主的共生の実現を妨げているの
は民族や文化、人種だけだということになっている、というのだ 17。いっぽう竹沢泰子は阪神・淡路大震災
後の復興における日本人と中国人・韓国人住民との協力関係に触れて、
「多文化共生」
を論じている18。竹沢は、
人種以外のアイデンティティはほとんど取り上げていないが、多文化共生を「地域の市民権」に関する新た
な言説と関連づけ、また日本在住外国人の参政権の重要性の高まりと関連づけて論じている。竹沢によれば、
外国人住民は参政権を、多文化共生のまちづくりの実践を制度化する手段とみなしており、そうしたまちづ
くりができてこそ、将来、自分たちの不安定な状況が緩和されると考えている。李善姫のフィールドワーク、
そしてクリス・バージェスの研究も、グローバル化と日本の農家の妻として来日する外国人女性の増加とい
う文脈で的確に論証しているように19、民主的自己決定と参政権の問題は、問題の人種化という観点だけで
なく、ジェンダー化および世代を超えた影響という観点からも理解されなければならない。
分析ツールとして多文化理論の多くが推奨に値しないのは、それぞれの国、文化あるいはマイノリティに
内在する多様性を配慮せず、ジェンダー化された差異、階級の違い、世代の違いから生じる集団性について
相反する解釈が生じることの重要性を強調していないからである。また、そうした多文化理論は、国会議員
や政策立案者が、より広範な多様性や国民が直面している交差的抑圧を調査するために使えるような指針を
示していない。そうであるなら、民主的市民権を制度的に再構築して、さまざまな政治的アイデンティティ
を実際に説明しながら、ただし具象化はしないような概念とすることは、ジェンダー研究、多文化研究、多
国間民主主義、グローバル化研究、法律・政策研究、民主主義の理論と実践にとって、依然として中心テー
マであると思われる。
論争の条件とさまざまなエンパワーメント戦略間の緊張を明らかにするために、私たちは、多様な市民権
の複雑性を分析するべく幅広い専門知識を積み上げてきた研究を注視しよう。それはフェミニズム政治理論
である。
Ⅲ . 平等と差異の複雑な関係を理論化する
ジュディス・スクワイアーズは著書『Gender in Political Theory』
(1999 年)20 において、
「平等」
「差異」
「多
様性」という 3 つの概念をめぐって、フェミニズム理論の有益な類型論を示している。この 3 つの概念はまた、
「ジェンダー」「多文化主義」「移民・グローバル化」が民主的市民権に及ぼす影響に関する昨今の論争や学
際的研究の中心を占めている。ここではまず、フェミニズム理論の 3 つの潮流がそれぞれ何を目指している
「多様性フェミニズム」
のかを略述する。それらは「平等」
「差異」
「多様性」の概念と関係している21。次いで、
の貢献に焦点を当てる。それは民主主義、自己決定、帰属特性に基づく政治的アイデンティティ(ジェンダ
ー、人種、文化など)の複雑な関係を理解するのに役立つ。
フェミニズム理論の第 1 の潮流は、生物学的性差とジェンダーを区別し、ジェンダーを文化的所産として
構築しようとした「平等派フェミニズム」の社会的構築主義アプローチに基づく。この理論によれば、ジ
ェンダーの差は男女間の不平等を正統化するためになされた性差別主義の結果であり22、存在論的差異の結
果ではない。この第 1 の潮流は「平等」戦略を軸に形成され、性差に「中立」であるとされた(今後も中立
でなければならない)既存の政治機構に、女性を「包摂」しようとした。この包摂プロジェクトの狙いは、
理論においても実践においてもジェンダーは政治的な関与変数であるべきではないと主張することにあっ
た23。ジェンダー中立の戦略は、セックスという事実性と性差別主義的なジェンダー差の構築とを区別しよ
うとしたにもかかわらず、実際には男性優位と驚くほど似通った一般的手法となった。フェミニズムの第 2
の潮流は、男性モデルへの同化によってエンパワーメントが可能になるという考え方を否定し、女性の「差
異」という概念を軸に形成され、平等は「同一性」と一体化しつつあると主張した。女性性を戦略的に「肯
定」し、女性の「差異」を称揚し、弱さ、劣性、従属の要因として歴史的に規範化されていたものを批判し、
改めて明確にしようとした。その目的は、女性に特有の「思いやり、平和を愛する心、直感的・情緒的性質」
を評価して、女性が男性と違う点を過小評価した家父長制的価値観を「逆転する」ことにあった24。この逆
民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ
061
10
2013.3
転戦略によって公共圏が再秩序化され、これまで以上に女性に開かれたものとなり、女性の経験から生まれ
た資質を積極的に取り込んでいくことが期待された。
平等派フェミニズムと差異派フェミニズムが提起した議論には、きわめて大きな政治的意義があるとスク
ワイアーズは指摘している。同時に、移民を受け入れた植民地社会(白人移民社会)や、国民の経験が少な
からぬマイノリティの存在によって内部で多様化したところ(カナダなど)では、平等派フェミニズム(リ
ベラル・フェミニズム)や差異派フェミニズム(ラディカル・フェミニズム)が浸透するには、女性間にい
くつもの大きな格差が存在することを否定した「シスターフッド」という概念が必要だった。たとえばカナ
ダと米国の文脈では、このように一般化したフェミニズム理論や主流のフェミニズム運動に対して、過去
40年間に、黒人を含む有色人種の女性25や先住民族の女性26、ケベック州のフェミニスト27、ポストコロニアル・
フェミニスト28、レズビアン・フェミニスト29、障害をもつ女性などから異議が申し立てられてきた。そう
した批判がなされた結果、カナダやアングロサクソン系米国人によるフェミニズム理論やフェミニズム運動
は単一の性・ジェンダーに焦点を当てるのをやめ、女であること(womanhood)について語らなくなった。
代わって「多様な女性」が議論されている。
スクワイアーズがフェミニズム理論の第 3 の潮流とみなした「多様性フェミニズム」の政治的戦略は、認
識論的な「置換」戦略を活用し、セックスとジェンダーのカテゴリーに代えて、内在する「多様性」を解き
放とうとする。支配的な考え方では、ジェンダーとセックスを女性と男性の身体とかかわる自然な二元体と
して理解することで、多様性を覆い隠しているという。この第 3 の潮流の関心は、力、言語、あるいは言説
「ジェンダーは本質的に政治
を通して、ジェンダーが関係的に構築されていることにある。この文脈では、
30
的カテゴリーになる」 。この場合、セックスは根底的なものとはみなされず、セックスとジェンダーの因
果連関がいかに文化的に形成されていようと、そうした因果連関を認めない。つまるところ、フェミニズム
運動が組織化されるうえで核となるべき語彙と政治的カテゴリー(
「女性」31)に疑問を呈したのである。
(2003 年)32 において、スクワイ
メアリー・ディーツは論文「Current Controversies in Feminist Theory」
アーズの類型に基づいてフェミニズム理論の類型を提起し、
「多様性フェミニズム」をさらに 2 つの流れ、
すなわち多様化と脱構築に分類している。そうしてディーツは、それぞれが民主主義をいかに理論化してい
るか(「アソシエーショナル民主主義」か「闘争的民主主義」か)に応じて、とるべき戦略を考察している。
アソシエーショナル・アプローチをとる理論家(アイリス・ヤング、アン・フィリップス、メリッサ・ウィ
リアムズ、ナンシー・フレイザー、セイラ・ベンハビブ)は、
「政治化されたアイデンティティを出発点とし、
次いで、交差する複数のアイデンティティ、自我あるいは集団の拡散、交渉、協調という観点から(民主的)
政治を理論化する」33 という。一方、多様性フェミニズムの闘争的アプローチ派(シャンタル・ムフ、ボニー・
ホーニッグ、ジュディス・バトラー)は、政治を分節化(articulation)の実践とみなしている。そこでは単
一のアイデンティティ(「女性」など)あるいは複数のアイデンティティが、
「パフォーマティブなものとし
てつねに論争、変容、さらには不安定化操作の対象になりやすい」34 という。
「アソシエーショナル民主主義」を主張する理論家は、排除(ジェンダー、人種、文化的排除)のプロセ
スの理解に重点をおき、民主的エンパワーメントを実現する制度的・現実的手段を再構築しようとする。こ
れに対して「闘争的民主主義」を主張する理論家は、これまで排除の根拠となってきたカテゴリーの脱構築
を重視する。両者とも多文化共生とジェンダー平等の実践にとって重要な理論的洞察を示している。後者は、
ギルロイやバトラーがジェンダー化・人種化されたアイデンティティの脱構築を主張したのと同じく、帰属
/排除のカテゴリーを廃することに焦点を置き、アイデンティティが偶然的なものであることをより適切に
説明しようとしている。しかしその脱構築は、過去の排除に異議申し立てする共通の語彙がなく、オルタナ
ティブな未来を再構築する実践的手段も示せないという中途半端なものにとどまっている。いっぽう前者の
焦点は、帰属/排除の既存の概念が力を振るっている状況に異議を申し立てることにあり、帰属カテゴリー
の反本質主義的な概念化に基づいてオルタナティブな政治的介入および法的義務を再構築することを目指し
ている。いずれにしても両者が認識するべきは、代議制民主主義の制度的実践がそもそも偶然的であり、脱
構築的(過去の規範)であると同時に再構築的(新たな規範)でもある規範生成のプロセスに従事するもの
だ、という点である。
次節では、こうした理論的・実践的異議申し立てのいくつかを取り上げて、民主的な自己統治機関や意思
決定機関についてこれまでとは違った考え方を提起する。
062
Ⅳ . 市民化の実践としての代表制民主主義
ディーツによればフェミニズム政治理論の研究者は、
「民主主義に与するフェミニズムの政治的実践を概
念化するとは、どのような意味をもつかという論争に従事してきたが、ジェンダーの二元論から出発するわ
けではない」35。既述のとおり、こうした緊張は多文化主義やマイノリティのなかのマイノリティに関する
文献にもみられる。いずれも、「文化」の単一性を想定せず、多数派/少数派の立ち位置の具体化された二
元論から出発することなく、多文化的実践を再概念化しようとしている。同様にナショナリズム、多国間民
「国民」を均質化しようとせずに、政治的帰属を再概念
主主義、非対称36 連邦制に関する文献においても、
化する試みがなされている。「ジェンダー」であれ、
「文化」であれ、
「国民性」であれ、それぞれをテーマ
とする研究は、平等、差異、複数のアイデンティティのより動的な関係性の基礎になりうる実践的土台を新
たに見出そうとしている。その際の複数のアイデンティティは、今日の民主的市民権と代議制意思決定機関
をつうじて実質的に再構築され実践的に自己決定することが必要である。
自分の運命や、自分が居住する政治的共同体が追求する協力の条件に対して「発言権」をもつには、政治
的権利や政治的代表はどの程度必要なのか。T・H・マーシャル(Marshall 1950)が提示した市民権理論は、
公民権から政治的市民権、社会的市民権への進化の過程で、民主主義における諸権利が重要であり、かつ相
そうした権利や自由の享受(獲
互依存することを強調した37。そして、社会のなかのさまざまな集団によって、
38
得)が及ぼす影響や享受の度合いに差があることについて 、さらには法制化された公共政策の影響や、近
代国家39 の福祉国家構造40 について、重要な批評や洞察を示した。歴史的にみると女性や移民、現代のグロ
ーバル化の文脈では外国人居住者や非正規労働者は、社会的市民権の一部を部分的に得てきたが、公民権や
政治的市民権はほとんど得ていない。これらの集団は現代の(自治体および国の)代議制民主制度において
構造的に過少代表であり続け、法的あるいは象徴的に(政治的仮想という意味で)成員になることが事実上
否定されている。そうである以上、彼女/彼らが政治的代表の拡大や民主的包摂を要求するのは、彼女/彼
らが自分たちの政治的共同体でもあると考える共同体への帰属とその共同体の運命に対する「発言権」を求
めていることにほかならない。それは、政治的共同体の法的・政治的・社会経済的パートナーシップが制度
的に熟議され、決定される観念的な論争空間への参加を要求しているのだ。
」だけでなくあらゆる形態の力が動員
イートマンは代表の政治学について論じて、
「支配力(power over)
41
されて、民主的な帰結も非民主的な帰結も導きうると注意している 。皮肉なことに、立憲民主主義が公式
に存在しても、意思決定機関が民主的な目的のためだけに運用されるとは限らない。民主的市民権にとって
」を比較
必要な実践とは、そこにおいて政治組織の主要な構成員全員がお互いへの「支配力(power over)
」を支える資源に比較的平等にアクセ
的平等に分け合い、自己開発の企てを達成する「実現力(power to)
スできるような実践であり、さらにはフレイザーやレイシーが敷衍しているように、意思決定機関を通して
」を行使することも必要である42。パワーシェアリ
他の構成員とともに比較的平等に「協働力(power with)
ングの実践は、多様な市民/住民の平等を規範的かつ象徴的に確立することに資する。それだけでなく、よ
り実際的に、忠誠の対象が同一でない多様な市民を互いに向き合わせ、困難かつやりがいもあると思われる
議論や意見交換の場で差異を克服させることになる。その議論や意見交換により、多様な成員が共通の目標
と願望をめぐって集団をつくったり、1 つにまとまったりする。民主的制度、市議会、コミュニティ委員会、
地域諮問委員会、教育委員会において差異を超えて協働することは、私たちが別々に、そして集団としても
求める成果を、民主的に確保する基本的な手段である。差異を超えて協働するという実践により、私たちが
政治的運命を共にするすべての者が直面する視点、ニーズ、現実にたいして注意が払われやすくなる。そう
いう注意が払われなければ、異なる人々が抱えている困難に私たちはほとんど気づかず、理解も限られ、ま
してや共感することはおぼつかない。ジェイムズ・タリーはこうした行為を「市民化の実践」と定義してい
る43。この種の市民の関与や熟議の活動は、市民としての責任と役割を実践的に私たちに教えてくれる。そ
れらは、アソシエーショナルな連帯を築き、民主的な反対意見を敬意をもってつなぐような連帯をつくるこ
とになる。民主的な設計によってジェンダー平等で異文化間能力を備えた市民を形成しようとするなら、そ
うした連帯が必要である。つまり、ジェンダー平等な市民を形成し、異文化を尊重していくうえで、私たち
の民主的な文化は、台所から内閣に至る意思決定や熟議において、差異を超えて多様な他者とかかわりあっ
民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ
063
10
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ていく日常の現実、日々の行動、儀式的行為などに根を下ろす必要がある。そして、他の技能や能力と同じ
く、それは実践しなければ完璧なものにならない。
上記の点は人間性や民主的文化という観点からみてまったく明白で、直感的に分かるともいえよう。にも
かかわらず、今も続く民主的排除に対処するどころか、
(性、人種、言語、宗教において)支配的な市民集
団が民主的制度において構造的に過大に代表されており、そうした状態は先進的な自由民主主義国、特に先
進 8 カ国(G8)においてほとんど野放し状態になっている。ここで本稿の第 2 の疑問に立ち戻ろう。大多数
の市民/住民(女性および男性)がジェンダー平等の民主的基盤を自分たちの文化に公式に取り入れるには、
互いを尊重し合う制度的実践としてどのようなことを公的に採用すべきか。
ジェンダー・バランスのとれた議会というのはさほど異論のない目標であるが、小選挙区制(得票の多数
を制した者 1 人が議席を獲得する)といった選挙制度の影響にもかかわらず、ジェンダー・バランスのとれ
た政府を実現する仕組みを法制化しているのは G8 のうち 1 カ国にすぎず、国会議員に占める女性の割合に
)を達成している国も 1 カ国だけ
関する最低目標としての 30%(クリティカルマス(決定を左右できる数)
である。「先進民主主義国」である G8 のうち、国会議員に占める女性の割合に基づく 2012 年の国際ランキ
ングで上位 20 カ国に入った国は 1 つもない。詳しくは表 1 のとおりである。
表 1 G8 の国会におけるジェンダー・バランス
国
選挙制度
クォータ制
順位
女性(%)
男性(%)
ドイツ
小選挙区比例代表併用制
なし
22
32.9
67.1
フランス
二回投票制
法制化
38
26.9
73.1
カナダ
小選挙区多数代表制
なし
45
24.7
75.3
英国
小選挙区多数代表制
なし
57
22.3
77.7
イタリア
完全比例代表制
なし
60
21.6
78.4
米国
小選挙区多数代表制
なし
80
16.9
83.1
ロシア
完全比例代表制
なし
94
13.6
86.4
日本
小選挙区比例代表並立制
なし
110
10.8
89.2
出典:Inter-Parliamentary Union, Women in National Parliaments(31 July 2012), Geographic Regions, Ace
Project, Global Database of Quotas for Women
Ⅴ . 3.11 以前の日本におけるジェンダー平等と異文化間能力
2011 年 3 月 11 日の大震災以前においても、ジェンダー・バランスのとれたガバナンスの実現から、日本
がほど遠い状況にあることは知られていた。歴代政権は明らかに、各政党が立候補者のジェンダー・バラン
スを図る有効な措置をとるよう、担保する手立てを講じてこなかった。それどころか、審議会に限って女性
の割合を 30%とする目標を設定してきたのは、象徴にすぎない努力で問題がある。日本の場合、それまで
政治的権限を男性が独占する体制を規定していた法律は、56 年ほど前にようやく改正されたが、表 1 に見ら
れるとおり、男性独占は 1946 年以降も実際にはほとんど変わっていない。2012 年になっても国会議員の圧
衆議院議員のなんと 89.2%を占めている。日本の政党は、
倒的多数は男性であり、男性は参議院議員の 81.4%、
064
党首脳部のあり方、候補者の選定、国政選挙におけるパワーシェアリング(都道府県や市町村レベルの意思
決定は言うまでもない)に関して、ジェンダー平等を実践する有効な能力をいまだに獲得していない。この
ことによって、女性たちの現実や視点が権力内において適切に代表されているということを確認することが
難しくなっている。衆議院の女性議員らにインタビュー調査を行ったところ、女性市民にとって、女性議員
に接触できること、熟考と意思決定という公式の政治的伝達手段を通して、女性住民たちの懸念をすくい上
げ、代表することが女性議員に対して女性市民よって求められている、ということの重要性を確認した。市
民教育の観点から見ると、日本の男性と女性が、ジェンダー平等の流暢さに向けて、個々の文化をさらに発
展させる可能性があるジェンダー平等なパートナーシップの実践を、日常的に目にし、直接経験することが
いっそう難しくなっている。
マイノリティ文化に属する住民も、「共生」に向けて政治的帰属のルールに影響を与える対等の資格
があるという見解があるが、その見解が主流の文化で尊重されるようにするには、異文化間パートナ
ーシップについてどのような制度的実践を行えばよいのか。
政治的異論がいっそう多い問題は、特別永住者に参政権を認めるという選挙公約の実現であるが、それは
異文化間能力と政治的帰属に関する民主的実践の出発点になりうる取り組みである。客観的に言うなら、日
本国籍の取得や「帰化」手続きが容易でない以上、日本の政治的運命について公式に発言する権利を特別永
住者から奪い続けることは、きわめて不当な「負荷」となる。人々が漂流するポストコロニアル時代に、小
さからぬディアスポラ集団が何世代にもわたって日本に居住しており、彼女 / 彼らが法律上のあらゆる義務
を負う一方で、民主的な参加・代表の権利を全く与えられないのは、きわめて不当と思われる。都道府県や
市町村における地方参政権は民主的市民権の最低限の「行使」となろう。そうすることで特別永住者の政治
組織への貢献が認められ、異文化理解の機会が意思決定機関のなかに生まれる。2006 年に法務副大臣が「今
後の外国人の受け入れについて」と題する中間報告書を発表したが、そのなかの提言 8 は次のように述べて
いる。「日本政府は、在留外国人が日本社会に支障をきたすことなく日本社会の多元性に貢献できるよう、
彼女 / 彼らの人口統計上の多様性を考慮する必要がある」44
ここでタリーの「受動的臣民(civil subjects)
」と「能動的市民(civic citizens)
」の概念を援用するなら、
植民地時代の過去と現代のグローバル化が日本を含む G8 諸国の多くに及ぼす影響として、ディアスポラ・
マイノリティや結婚移民、臨時に出稼ぎにきて定着する外国人などの増加によって、
「
“civil”subjects」が
実質的に増加しており、彼女 / 彼らは純粋に経済的目的のための用具のように維持されている。その一方で、
国の未来を民主的に形成する法的権限と政治的権利を有する「
“civic”citizens」は実質的に減少している。
古代ギリシャで使われていた言葉を借りるなら、差別と排除にかかわる公式的な法律と非公式的のプロセス
」(自己
によって、日本などポストコロニアルの現代民主主義国に居住する人々は、ますます「市民(liber)
45
」に分かれつつある 。こうした不均衡の拡大によって、
統治への政治的権利を有する)と「奴隷(servus)
民主的には「不自由」といってもいい個人が増え、
同時に民主主義社会そのものの実質的自由も弱まっている。
こうした力の独占が行き過ぎると、民主的制度の正統性が損なわれ、有権者の間に政治不信が生じ、投票
率が低下し、その結果、選挙によって説明責任を果たす仕組みが弱体化する。民主主義は選挙を行うことで
表面上は維持されるが、代議制を信認するのは、市民のなかでますます小さくなる部分にすぎない。候補者
の選定は市民を代表するものとはいえず、そうした候補者が寄り集まっても異文化間能力は発揮されず、人々
のニーズの根幹をジェンダーに配慮して洞察することはできない。社会的・経済的市民権が得られるかどう
か定かでなく、政治的市民権に至ってはまず得られないような状況にある人々が増加しているなかで、私た
ちは「民主的市民権」をどう評価するのか。また、どのような基準で社会が「自由」であるかどうかを判断
するのか。
3.11 以前の文脈では、上述したように支配的男性性と民族・人種的にみた日本人性が政治権力を支配し覇
権を握り、そのために構造的不平等が悪化し維持されていた。女性が人口の半数強を占め、子どもや相当数
の高齢者のプライマリーケア・ニーズのほとんどに対応していることを考えるなら、女性の視点が十分反映
されないことは、政治組織の 4 分の 3(つまり女性、子ども、高齢者)におよぶ人々にとって、重大な悪影
響をもたらす恐れがある。東日本大震災後の文脈においては、こうした民主的欠陥と「自然災害」の影響が
民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ
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相まって、経済的不安定性、合法化された従属、政治的支配といった「人災」への脆弱性が、劇的に高まっ
ている。以下に紹介する「災害に強い国・コミュニティの構築:兵庫行動枠組 2005 − 2015」が述べたように、
「災害リスクは、ハザードが、物理的・社会的・経済的・環境的な脆弱性と相互に作用する時に発生する」
(2005:
46
1)。たしかに、自然災害と男性が作り出した人災 が悲劇的な形で結合するからこそ、生活の保障、人間の
尊厳、さらにはすべての個人の平等な道徳的価値という最も基本的な民主的目的が脅かされる。
Ⅵ .「減災」
、多様な市民権、民主的なパワーシェアリング:3.11 後の東北
復興に向けた予備的考察
2005 年に象徴的な意味で神戸において開催された国連防災世界会議は、参加国政府が人間の安全保障全
般にわたる懸念事項、ひいてはジェンダーの視点にかかわる懸念事項に注意する必要性を認める重要な機会
となった。この会議の成果文書「災害に強い国・コミュニティの構築:兵庫行動枠組 2005 − 2015」におい
て 11 項目にわたる「一般的考慮事項」が確認され、その第 4 項でジェンダーの視点を取り入れること、第 5
項で文化的多様性を考慮することに言及した。第 4 項、第 5 項には次のように記されている。
(d)リスク評価、早期警戒、情報管理、教育・トレーニングに関連したあらゆる災害リスク管理政策、計画、
意思決定過程に、ジェンダーに基づいた考え方を取り入れることが必要である。
(e)災害リスク軽減計画を立てる際に、文化的多様性、年齢、及び脆弱な集団が適切に考慮されるべき
である47。
日本政府は 2005 年に策定した「第2次男女共同参画基本計画」で、防災分野における男女共同参画の取
り組みの重要性に触れ、同年の「防災基本計画」
ではジェンダーの視点の必要性に言及した。しかし皮肉にも、
全国知事会が 2008 年に実施した調査によると、47 都道府県、1,747 市町村が任命した避難所運営責任者は
全員男性であり、災害への対応や避難所の運営には男性的な一群のスキルが必要だと認識されていた48。人
事がかくも男性中心的であれば、ジェンダーの視点を「災害リスク管理政策や計画、意思決定過程に組み込
む」ことを可能にする制度的措置はほとんど期待できない。3.11 後に避難所で生活する男女を対象とした調
査と対比すると、2008 年の全国知事会調査の結果では、避難所生活者が抱えるであろう問題に関して都道
府県の回答者が挙げた「優先分野」には、明らかにジェンダー・ギャップが見られる 49。
兵庫行動枠組では、小項目の「資源」と題する箇所で
「優先行動」
を掲げ、
3 つの活動分野を挙げているが、3.11
後の状況を考えると、日本がこの 3 分野で 2005 ∼2011 年に行動しておくことが決定的であったと思われる。
すなわち、兵庫行動枠組の参加国は、次の行動をとることを約束している。
(e)全てのレベルにおいて、減災(災害リスク軽減)に対する既存の人的資源能力を評価し、進行中や
将来的な必要条件を満たす能力開発計画及びプログラムを整備する。
(f)明確に優先付けされた行動にもとづき、全ての関連するセクター及び当局のあらゆる行政及び予算
レベルにおける災害リスク管理政策、施策、法令及び災害リスク軽減に関する規制の開発と実施に資
源を配分する。
(f-2)政府は、災害リスク軽減を促進し開発計画に盛り込む上で必要な強い政治的決意を表明すべきで
ある50。
兵庫行動枠組から 3 ∼4 年たっても日本政府の取り組みは相変わらず貧弱なものであり、男女共同参画推
進関係予算のなかで「防災・災害復興」予算は、
2008 年度も 2009 年度も 0 円だった(山地 2009: 45)。つまり、
ジェンダーの視点や人口の文化的多様性から生じる明らかな優先課題が認識されていないだけでなく、こう
した幅広い人間的経験や女性が社会やケアの提供にさまざまな貢献をしてきたことが十分に理解・評価され
ていない。当然ながら、こうした重要な人的資源はリスクや人間の苦しみを軽減するために十分活用されず、
066
被災者のニーズに応じた災害対応・復興戦略を決定・推進する責任を担うことを公式に要請されず、その権
限を与えられてもいない。
ジェンダー平等な実践と異文化間能力を備えた政治文化を政府が推進せず、そうした文化が維持されない
場合、国民は実際にどのような影響を受けるのか。多数の被災者にトラウマと史上まれな大損害をもたらす
自然災害に直面した時、そうした民主的失敗は何を意味するのか。日本のような社会では、役割がジェンダ
ーに基づいて階層化されているために、形式も内容も過度に男性中心的な制度的文化のなかで行動するリー
ダーの「知識」や「理解」の幅が制限され続けている。そんな社会では、特にどのようなことが必要とされ
るのか。ジェンダーに基づいた役割の階層化が著しい社会では、ジェンダー・バランスのとれたリーダーシ
ップと意思決定、および公共政策や公共サービスを、草の根レベルで実施することが明らかに最も必要であ
ろう。
驚くことではないが、多様な女性の現実や視点が政策決定者の耳にきちんと届いていないのではないかと
いう懸念が高まり、前千葉県知事の堂本暁子および女性と健康ネットワークの原ひろ子を中心に、3.11 から
3か月後の6月 11 日を期してシンポジウムを開催することが計画された。そのシンポジウムの実行委員会
は、10 月以降「男女共同参画と災害・復興ネットワーク」となり、活動を続けている51。 女性の声をはっ
きり代弁できる適切な組織や名の知れた代表者がなく、女性特有の課題は放置され、復旧・復興政策で取り
上げられないのではないかと危惧されていた。事実、地震・津波・原発事故の三重災害から 1 カ月後の 2011
年 4 月 11 日に東日本大震災復興構想会議が設置されたが、委員 15 人のうち女性は 1 人だけであった。5 月
10 日に同会議で決定された「復興構想 7 原則」は経済の再生に重点を置く反面で、ジェンダー平等が分野横
断的な課題であり、減災に向けて公約済みの目標であることには全く触れていない。目の前に立ちはだかっ
ている健康、福祉、環境、教育の課題を、ジェンダーに配慮した視点に立って分析した形跡もなかった(原
2012)。そこで、東日本大震災から 3 カ月以内に「災害・復興と男女共同参画」をテーマとするシンポジウ
ムを開催しようと、女性団体や被災地で活動する女性たちに呼びかけたのである。6 月 11 日に開催されたシ
ンポジウムでは、女性たちの関心事を政策課題に載せるために数々の報告や提言がなされた。そのなかで日
(2)防災・復興
本政府に対して 3 つの要求が出された。(1)意思決定への女性の参加を積極的に推進する、
措置にジェンダー平等の推進を盛り込む、(3)被災者が復興計画の作成・実施に参加できる仕組みをつく
る52。
これらの要求は、2011 年 6 月 24 日に公布・施行された東日本大震災復興基本法に一部盛り込まれた。同
「女性、子ども、障害者等を含めた多
法第 2 条(基本理念)第 2 項は、「被災地域の住民の意向」を尊重し、
様な国民の意見」を考慮することが必要である、としている。また、
「東日本大震災からの復興の基本方針」
の「1 基本的考え方」第 9 項には、「男女共同参画の観点から、復興のあらゆる場・組織に、女性の参画を
「市町村の計画策定に対する人的支援、
復興事業の担い手等」
促進する」53 と明記されている。さらに、同方針の
に関する第 4 項には、「まちづくりにおいて、協議会等の構成が適正に行われるなど、女性、子ども・若者、
高齢者、障害者、外国人等の意見が反映しやすい環境整備に努める」54 とある。もっとも、日本政府が復興
においてジェンダーの問題や外国人の関心事を主流化することに、どこまで力を入れてきたのかといえば疑
問は残る。
実際、1 年後に「男女共同参画と災害・復興ネットワーク」は、経済の再生、雇用、まちづくりに重点を
おいた復興戦略にジェンダーの視点が欠けていることを問題提起するために、第 2 回シンポジウムの開催が
必要であると判断した。このシンポジウムは 2012 年 6 月 22 日に開催され、被災地における女性の多様な現
実を証言するために一般市民から専門家まで多数の女性たちが参加し、復興戦略への女性の参加を求めた。
妊娠中および子育て中の母親、女性の医療従事者、現場で被災者支援を続けるボランティア、高齢者、障害
者、そして日本人と結婚し東北で生活する外国人女性も含まれていた。つまり、3.11 後に開かれた他の女性
の集まりと同じく、この「ネットワーク」が鋭く意識していたのは、さまざまな集団の脆弱性や、周縁化さ
れた女性たちの声や身体に連帯する必要性をしっかりと受け止めることであり、日本の政治的共同体への彼
女らの社会政治的帰属と「内」なる者としての地位を得る権利を、公的に再確認する必要性だった。
民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ
067
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Ⅶ . 結論
本論文では、先進民主主義社会がジェンダー平等と文化的多様性の制度的実践を確立できるよう後押しす
るという、理論的・学際的課題の一端を探求しようとした。その狙いは、先進民主主義諸国に暮らすエリー
トから草の根までの人々が、異文化を尊重し合いジェンダーに配慮して協力し合う能力を獲得していくこと
にある。日本をはじめ G8 の先進民主主義国では、民主主義のさまざまな欠陥がいまだに存在することを明
らかにするためにいっそうの研究が必要である。日本国籍を持たない、得ることができない住民は公式の意
思決定過程から排除され、自治体も国もジェンダー平等政策は口先だけで、防災やジェンダー平等など国の
重大な責任事項への予算配分をゼロとすることが、意識的に決定されている。また、日本の社会像から数多
くのさまざまな「身体」が構造的に排除されている事態が、公然と記録され、提起されることもない。そん
な日本の社会像では、基本的に日本人男性しか国家の主人公になれない。
「東
こうした課題を研究上の目標として、日本とカナダの研究者の学際的ネットワークが新たに形成され、
北復興への優先課題と復興計画においてジェンダーと多様性を主流化するポスト 3.11 の課題と機会」を予
備的に考察するため、研究者の知見を融合する取り組みがなされてきた。第 1 回ワークショップは 2012 年 6
月 11 日にカナダのビクトリアで開催された55。これは東日本大震災から 1 年 3 カ月後、
「男女共同参画と災害・
復興ネットワーク」のシンポジウムからちょうど 1 年後に当たる。法学、政治学、公共政策、社会政策、社
会学、人類学、地理学の知見を踏まえ、「ジェンダー、多様性、東北復興―ポスト 3.11 の課題と機会」と題
する予備報告書が、3.11 被災 2 周年を前に、2013 年 2 月末に発表される予定である。東北大学のグローバル
COE プログラム「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」による多大な研究を拡大し、この国際ネ
ットワークとその他数多くの研究・草の根団体が協力して、日本各地でワークショップやシンポジウム、研
究会を開いている。こうした啓発活動(それはまさに「市民化」を目指す取り組みである)では、社会科学
の研究、学際的な議論、さらには法・政策改革に向けたエビデンスに基づく提言がきわめて重要だと強調さ
れている。選挙で選ばれたリーダーが構造的不平等、不合理な差別、政治組織の自由を妨げている民主主義
のさまざまな欠陥を徹底的に「調査」しようと決断するなら、その時は、今後の法制改革の指針となる、実
証的な知見に事欠くことはないだろう。
理想を言えば 3.11 の記憶は、1 万 9000 人以上の死者・行方不明者、原発事故による惨状、東北沿岸地域
の暮らしとコミュニティの破壊に思いを致すことにとどまってはならない。よく考えて政治的行動をとれ
ば、日本政府、自治体、政党は、女性団体や市民社会と協力して、今後 100 年の日本の市民権のために新た
な道筋を描くことに 3.11 の教訓を生かせる。そうなればこの教訓は、民主的に選ばれたリーダーが、日本
の政治的共同体を構成するきわめて多様な視点、現実、集団に配慮し、尊重し、政治的力を与えるためにと
る現実的施策に反映される。私たちがポスト 3.11の復興過程から何らかの民主的進歩を手にできるとすれば、
その条件は、誰が東北を担っているのか、また担っていたのか、したがって国の政治体(bodypolitic)や意
思決定過程に誰を迎え入れるべきなのかを批判的に熟慮し、理解することにある。世界の民主主義国は、3.11
が日本に付したとてつもない課題と機会から学び、今回の想像を絶する苦難と、ポスト 3.11 の女性たちの
活動の多くに見てとれる豊かな知恵と民主的実践から、
謙虚に学ぶべきであろう。つまるところ「東北復興」
は、何よりも民主主義の再構築、制度の多様化、市民の再活性化が実現する機会の窓であり、東北の女性た
ちと全国の支援者が懸命になって開こうとしている希望の扉にほかならない。
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註
1 大沢先生に監訳と貴重なコメントをいただき、心より感謝申し上げます。
2 James Tully(2005a)
,“Two Meanings of Global Citizenship: Modern and Diverse”, Paper presented at The Meanings of Global Citizenship
Conference, Liu Centre and Trudeau Foundation, UBC, September 9-10, 2005, 2.
3 シティズンシップは市民権より広い意味がある。本報告で「市民権」と記述されるものは、より広義の「シティズンシップ」を意味する。
4 Iris Marion Young(2000)
, Inclusion and Democracy, Oxford: Oxford University Press, 33.
5 条文は、www.un.org/womenwatch/daw/cedaw/text/econvention.htm.
6 条文は、http://unesdoc.unesco.org/images/0014/001429/142919e.pdf.
7 条文は、www.un.org/esa/socdev/enable/rights/convtexte.htm.
8 条文は、www.un.org/esa/socdev/unpfii/en/declaration.html. カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはこの宣言に反対した。
(2002)
9 Anita Superson and Ann Cudd(eds)
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11 Will Kymlicka(2008)
12 言い換えれば、政治的に自己を代表するための代表制民主主義による権利。この概念のニュアンスについては Steele 2009 を参照されたい。
13 Paul Gilroy(2004)
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, Gender Trouble: Feminism and the Subversion of Identity. New York: Routledge and Kegan(竹村和子訳『ジェンダー・
14 Judith Butler(1990)
トラブル―フェミニズムとアイデンティティの攪乱』青土社、1999 年)
。後年の著書『Undoing Gender』
(2004)は、法律におけるジェンダー
に基づくカテゴリーの使用と役割に対してさらに微妙なアプローチを示唆している。
15 John Lie(2001)
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(1997)
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16 Michael Weiner(ed)
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17 John Lie(2001)
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18 Yasuko Takezawa(2008)
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「
『多文化ファミリー』における震災経験と新たな課題――結婚移民女性のトランスナショナル性をどう捉えるか」
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19 李善姫、
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20 Judith Squires(1999)
21 スクワイアーズによる類型は、主としてアングロ・アメリカンのフェミニストの政治理論に因っているため、日本のフェミニスト研究の中に位
置づけることはできない。上野千鶴子や岡野八代などの現代の日本のフェミニスト論者の議論に関して、また、彼女たちがこの概念枠組みの
なかにどのように位置づけられるかについては、天野正子、伊藤公雄、伊藤るり、井上輝子、上野千鶴子、江原由美子、大沢真理、加納美紀
代(編集協力)
、
(新編)日本のフェミニズム 2:フェミニズム理論(2009 岩波書店)を参照されたい。
22 Judith Squires(1999)
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23 Squires: 117.
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32 Mary Dietz(2003)
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44 法務省(2006)
, Republicanism: A Theory of Government, Oxford: Oxford University Press, 31-32.
45 Philip Pettit(1997)
“Japan’
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46 日本おいて、所得再配分に関して男性が作り出した「政策の失敗」に関する議論は、Osawa(2012)
Development Has Rendered Japanese Society Vulnerable to Crises and Disasters”, GEMC Journal, Tohoku University Press, Special Issue No.
10. を参照されたい。
47「兵庫行動枠組 2005 − 2015」。国連防災世界会議(2005 年 1 月 18 ∼22 日、神戸)で採択。
。
「男女共同参画と災害・復興ネットワーク」第 4 回研究会(2012 年 8 月 7 日、東京)での堂本暁子報告。
48 全国知事会調査(2008 年)
民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ
071
10
2013.3
「女性・地域住民からみた防災施策の在り方に関する調査報告」
49 全国知事会(2008 年)
(2005: 6)
50「兵庫行動枠組 2005 − 2015」
「
「災害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジウム」実行委員会」の設立から始まった。日本学術
51 フェミニスト研究者と女性組織との協力は、
会議の「人間の安全保障とジェンダー」委員会との共同で、2011 年 6 月に開催されたシンポジウムを受け、
「男女共同参画と災害・復興ネット
ワーク」が正式に設立された。このネットワークは、法律と政策の変革のために、戦略的なアドヴォカシィにたずさわることを目的とした個々
人のフェミニストの連合である。大沢真理・堂本暁子・山地久美子編、皆川満寿美編集補佐『
「災害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジウム
∼災害・復興に男女共同参画の視点を∼』
、GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研究連携点研究シリーズ No.4、
:1.
ISS『社会科学研究所研究シリーズ』No.46(2011 年)
:68.
52 大沢・堂本・山地編(2011 年)
:http://www.reconstruction.go.jp/topics/doc/20110729houshin.pdf
53「東日本大震災からの復興の基本方針」
(2011: 10)
54「東日本大震災からの復興の基本方針」
55 ワークショップ「ポスト 3.11 の課題と機会―東北復興への優先課題と復興計画(2012 ∼2015 年)におけるジェンダーと多様性の主流化」を
ビクトリア大学アジア太平洋研究センターが 2012 年 6 月 10 ∼11 日に開催。http://www.capi.uvic.ca/events/workshop-post-311-challenges-and-
opportunities-gender-and-diversity-mainstreaming-priorities-
Comments
大沢 真理
スティール報告が紹介している東北復興に関する日本・カナダ連携プロジェクトは、本「グローバル時代
の男女共同参画と多文化共生」プログラムの 15 の研究プロジェクトの全体を継承し、またがるものと考え
られ、21 世紀 COE の段階から貢献が大きかったスティールならではの発案といえる。
それはたとえば、私が責任者を務める生活保障のプロジェクト、および人間の安全保障と人身取引問題の
プロジェクトを継承する。また日加連携プロジェクトのメンバーである李善姫は、大西プロジェクトで活躍
してきた。
高松報告へのコメントではあえて触れていないが、災害復興の実践と研究においても、21 世紀になって
大きなパラダイム(paradigm)転換が起こった。しかし、日本においてはパラダイムチェンジ(paradigm
change)が、十分ではなく、むしろ遅れている。国連の世界防災会議が過去 2 回、1994 年に横浜、2005 年
に神戸というように、いずれも日本で開催された。そこで打ち出されたのが、ソーシャル・バルネラビリテ
、社会的脆弱性のアプローチである。
ィ・アプローチ(social vulnerability approach)
自然災害は、貧富や性差などにかかわりなく襲いかかるという意味で、平等主義的(egalitarian)である
というイメージがある。たしかに、地震のマグニチュードや津波の高さは、個人や地域を選んで襲ってくる
わけではない。天災だからしかたない、という反応にもつながる。しかし、実際には被害は平等ではない。
津波や地震にみまわれた地域のなかでも、社会的脆弱性の量的質的な蓄積におうじて、被害は異なっている。
ソーシャル・
自然の破壊力そのものを意味するナチュラル・ハザード(natural disaster / hazard)の大きさと、
バルネラビリティ(social vulnerability)の掛け算として、ディザスター・リスク(disaster risk)の大きさ
が顕現する(池田 2011)。
これは、国際的な防災や復興、減災の取り組みのなかでは、ほぼスタンダードな考え方になっており、世
界防災会議において、日本政府もホスト国として了解し、防災とジェンダーに関するイニシアチブを対外的
に発信してきた。しかし、今回の東日本大震災において、それは国内の防災や救援、復興には、ほとんどま
ったく生かされていなかったことが露呈してしまった。
大震災後にも、地震・津波・原発事故の被害にさまざまな格差があ(りう)ることについて、年齢にもと
づく格差以外は、政府・自治体・マスメディアの認識は遅れている。とくにジェンダー格差の認知は弱く、
高齢者や低所得自治体での死亡率が高かったという最近分析においてすら、
ジェンダー視点が欠けている(田
。
中・丸山・標葉 2012、代表的な図を下に引用)
072
出所:http://d.hatena.ne.jp/r_shineha/20120312/1331546849
大沢による注:市町村民所得は「企業所得、市町村民雇用者報酬、財産所得」によって構成されている。市町村民所
得には個人や自営業者の所得(給料や事業所得など)だけではなく、
株式会社等の企業の所得(利益)
なども含まれている。
図 1 沿岸部接地自治体(女川・双葉地方除く)における人的被害と一人当たり市町村民所得
復興格差や予算のアンバランスなど、復興の現状には憂慮すべき点が多い。日加連携プロジェクトの成果
として、カナダに対する教訓があるとすれば、日本の轍を踏んではいけないという点しかないのかと、悲観
が強くなる。とはいえ、カナダ側のメンバーの多くは、国際政治や法律学、地理学など、それぞれの分野や
ディシプリン(discipline)の中で日本研究に従事している。日本の外から日本研究者として日本を見るこ
とで得られる知見を、最大限に生かした貢献が期待できる。
日本研究者ではないメンバーもいるが、そこで期待できる貢献は、植民地主義やガバナンスなどの概念に
関連する。東日本大震災の被害の実態と、その復興過程を検証する上で、植民地主義という概念は不可欠と
考えるからだ。東北学の提唱者である赤坂憲雄は、大震災の直後に、東北は(東京の)植民地だったのかと
いう発言をおこなっている。また日米安保体制を軸とする日本の対米従属を、
「ともだち作戦」の検証にお
いても忘れてはなるまい。
ソーシャル・バルネラビリティ・アプローチは、李善姫の研究にも通じている。結婚移住女性の置かれた
状況には、まさに多重の脆弱性が孕まれているからだ。アプローチないし理論的フレームワークという意味
でも、スティールや李善姫をメンバーとする日加連携プロジェクトは、この男女共同参画と多文化共生のプ
ログラムからスピンアウトする新しい研究として、意義が大きいと考える。
引用文献
池田恵子(2011)
「災害と男女共同参画をめぐる国際的潮流」
、
大沢真理・堂本暁子・山地久美子編、
皆川満寿美編集補佐『
「災害・復興と男女共同参画」
、GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研究所連携拠
6.11 シンポジウム∼災害・復興に男女共同参画の視点を∼』
点研究シリーズ No.4、10-19 頁
田中幹人・丸山紀一朗・標葉隆馬(2012)
『災害弱者と情報弱者:3・11 後、何が見過ごされたのか』筑摩選書
民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ
073
10
2013.3
災害と外国人女性達
―ジェンダー平等と多文化共生の主流化をめざして―
報告者 李 善姫
Ⅰ. はじめに
災害は、新たな問題を引き起こすのではなく、その社会が抱えている問題を新たに可視化すると言われて
いる。17 年前の阪神大震災は、当時の外国人の孤立状態と日本人の地震被災者同士のトラブルなどが問題
になった。そこでは、滞在外国人の「言語の壁」が問題化するなかで、市民団体と自治体が外国人に対する
多言語支援を実施するなど、多文化共生の必要性が明らかになっていた。実際に日本の市民社会の中で「多
文化共生」という言葉が拡散したのも、阪神大震災後のことである。
東日本大震災における外国人死者は、警視庁の 2011 年 4 月 30 日の発表によると、総 23 人となっている1。
阪神大震災の当時、全体の死亡者 6,433 人のうち外国人死亡者が 174 人だったことを考えると、東日本大震
災の全体死亡数 15,848 人中 23 人という数字は高いとは言えない。それゆえ、東日本大震災の場合は、災害
地域の外国人問題はそれほど大きな社会問題にはならなかった。災害直後、避難所での放火など外国人犯罪
を吹聴するようなデマはあったが、それが事実ではないことはすぐに確認されていたし、避難所の中でも目
に見える外国人差別や孤立はほとんど報告されていない。むしろ、外国人研修生を避難させて自分自身は津
波で亡くなった女川の佐藤水産の専務の話などは、今回の災害の美談として世界中に知れ渡っている。
このように、今回の災害で外国人に対する差別と孤立の問題があまりなかったのは、津波被害地域の沿岸
部に滞在している外国人の殆どが、日本人の配偶者を持つ結婚移住女性か、あるいは産業研修のために集団
生活をする研修生であったからと言える。すなわち、彼らの殆どは日本での生活において日本人の家族ある
いは管理者がいて、災害時には直ちに周辺の日本人からの助けを受けることができていたと思われるのであ
る。
しかし、問題が全くないとは言い難い。筆者は、表には現れることのない、被災地域の外国人が抱えてい
る様々な問題と困難を明らかにするため震災直後から聞き取り調査を行っている。本稿では、その調査過程
で収集したいくつかの事例を紹介し、被災地域となった東北日本での多文化共生の課題を提示する2。阪神
大震災とは異なる地域的背景と時代背景の中で、今回の災害では定住外国人と関連してどのような動きがあ
り、どのような問題があったのかを考察したい。本調査は現在も進行中であり、本稿はその中間報告として
の研究ノートであることを付け加えて置く。また、今回の調査においては、被害地域に住む定住外国人の多
くが結婚移住女性であることから、考察の主な対象を外国人女性とする。
Ⅱ . 被災地域の外国人と多文化共生施策
まず、被災地域の外国人の現況とそこで行われてきた外国人支援体制を整理する必要がある。これについ
ては、すでに別稿で整理しているため、当該地域の震災前の多文化共生施策については、概観のみを簡略に
074
紹介する3。
被災以前の平成 22 年 12 月現在、最も震災による被害が大きかった被災 3 県(岩手、宮城、福島)の外国
人登録者数は、全部で 3 万 3623 人である。そのうち永住者(特別永住者を含む)が 9433 人で最も多く、そ
の他に日本人の配偶者が 3947 人、定住者が 1372 人、留学が 4411 人、機能実習が 3061 人などとなっている。
各地域の外国人が占める人口比率は、宮城県が 0.69%、福島は 0.56%、岩手は 0.47%となっている4。これは、
日本の総人口に対する国内外国人登録者数の比率が、1.7%弱であることに比べると、顕著に低い比率と言
える【表 1 参照】。つまり、東北地域は日本全国の中でも、定住している外国人の数が少なく、しかも農漁
村においては、広く散在しているのが特徴と言える。
例えば、より具体的な沿岸部の滞在外国人の構成状況を宮城県の事例から説明する。平成 21 年 11 月に宮
城県経済商工観光部国際政策課がまとめた資料によると、2008 年現在、宮城県内で最も外国人が多く集住
しているのは、女川町で、外国人比率が町人口の 2.16%を占めていた。その次が仙台市で 0.98%、その次が
南三陸町で 0.86%、次が七ヶ宿町 0.74%、そして気仙沼市 0.68%となっている。女川の外国人の約 75%は
機能実習生(滞在資格別としては特定活動に該当)が占めており、残りの 25%は永住者、特別永住者、日
本人配偶者、定住者、その他となっている。南三陸や気仙沼でも半数以上は機能実習生が占め、その他が永
住や日本人の配偶者などとなっている。七ヶ宿町の場合は、機能実習生はいなく、殆どが永住(特別永住者
もいない)と日本人配偶者となっている5。つまり震災の被害が大きかった沿岸部においては、定住外国人
の多くが機能実習生と日本人の配偶者、そして日本人の配偶者から永住者に転じた外国人女性であることが
言える。
当該地域で、国際結婚の斡旋業が本格化する 90 年代からであるが、それ以前から、稀ではあるが、遠洋
船に乗る船乗りが現地で出会った外国人女性を連れて来るケース、出稼ぎに行った都会で外国人女性と結婚
し故郷に戻ったケースなどがあったという6。90 年代以降、斡旋業者による国際結婚が少しずつ行われるこ
とになり、2004 年には 500 件を超える国際結婚が県内で行われた。ところが、当該地域の「国際結婚」は、
全くの行政主導ではないので、いわば「ムラの国際結婚」ではなく、
「個人の国際結婚」にすぎなかった7。
つけ加えて説明すると、85 年から山形や新潟を中心として行われる「ムラの国際結婚」の場合は、行政が
結婚相手を斡旋し、日本語の学習や就労、家庭生活にまでアフターケアを手掛けていた 8。しかし、太平洋
側の「個人の国際結婚」の場合は、行政が全面的に国際結婚家庭をアフターケアすることはなく、その分、
国際結婚に対する十分な社会的認知もされていないと言える。もちろん、地域の中では外国人花嫁をより早
く地域の暮らしに適応させるために、地域住民らが日本語教室を立ち上げていた地域もあるが、殆どの自治
体で、地域内の外国人花嫁を支援する動きが、本格化するのは、総務省が、
「多文化共生マスタプラン」を
発表した 2006 年からとなる。あまりなかったのが事実である。
ところが総務省の発表によって各自治体がようやく地域内の外国人との共生のための施策を行い始めたと
は言え、外国人が一番多い宮城県においても、仙台市以外の 34 市町村の中で日本語教室が開設されている
市町村は 13 ヵ所に止まっているなど、未だ定住外国人に対する日本語教育の体制さえも十分に整っている
とは言えない。県や市レベルの国際交流協会が外国人相談や外国にルーツを持つ子どもの学習支援などを行
っているが、東北地域には外国人に対する支援や人権問題に対応する民間の NPO や NGO 組織が殆ど存在し
ていないことから、外国人問題が社会の水面上に上がった事例は殆どない。このような中で、2011 年 3 月
11 日に東日本大震災が起きたのである。
次に、東日本大震災発生後、災害地域では外国人、特に結婚移住女性と関連してどのような問題が起きた
のかについて紹介する。
表 1 全国と東北 6 県の外国人登録者数の推移9
(人)
東北 6 県の
東北 6 県の
比率
全国の
外国人登録者数
総人口
(%)
外国人登録者数
2001
51,898
9,798,224
0.53
1,778,462
127,316,043
1.41
2002
46,998
9,777,446
0.49
1,851,758
127,485,823
1.47
2003
50,273
9,743,462
0.52
1,915,030
127,694,277
1.51
年
日本人人口
比率
(%)
災害と外国人女性達
075
10
2013.3
2004
52,720
9,705,434
0.55
1,973,747
127,786,988
1.56
2005
53,399
9,634,917
0.56
2,011,555
127,767,994
1.59
2006
51,836
9,657,597
0.54
2,084,919
127,769,510
1.65
2007
51,701
9,595,721
0.54
2,152,973
127,770,794
1.70
2008
52,044
9,532518
0.55
2,217,426
127,692,273
1.75
2009
51,097
9,384,368
0.54
2,186,121
127,515,379
1.70
2010
48,732
9,335,636
0.52
2,134,151
128,050,903
1.67
Ⅲ . 災害と外国人移住女性
3-1.災害直後の定住外国人の帰国避難と結婚移住女性達の帰国
周知の通り、今回の災害は、地震、津波、そして放射線のトリプル災害であった。そこで、災害直後、多
くの国々は災害地域内に居住している自国民に帰国避難を勧告し、それによって多くの外国人が先を急いで
本国に帰国避難した。
平成23年3月末には30,092人
(総数2,092,944人)
震災直後の被災3県(岩手、宮城、福島)の外国人登録者数は、
10
と減り、同年 6 月には 29,148 人(総数 2,093,938 人)と減少している 。震災によって、全国の外国人数は、
同一期間(平成 22 年 12 月から平成 23 年 6 月の間)1.9%減っているが、被災 3 県の場合は、岩手が− 15.9%、
宮城県の外国人登録者数の推移をみると、
宮城が− 12.9%、福島が− 12.4%とそれぞれ減少している。震災後、
主にその数が減少したのは機能実習生と留学生であり、日本人の配偶者、中長期就労の滞在許可者の減少は
それほど多くない。その間、中長期滞在者が永住申請を行うことで、
永住資格の数はむしろ増加している【図 1
参照】。
そ
の
他
…
・
国
際
在
人
文
知
識
家
族
滞
習
技
能
実
学
留
者
住
定
者
偶
日
本
人
の
永
配
住
者
図 1 宮城県の滞在資格別外国人数の変動
平成22年12月
平成23年9月
これらのデータからもわかるように、マスコミで大きく報道された外国人の帰国は、一時的な動きであり、
その多くはそもそも流動性が高い滞在資格の人々であった。それにも関わらず、実際に今回の震災で最も多
く話題になったのは、結婚移住女性達の帰国であり、そこには、日本人の家族を捨てて帰国避難をした外国
人女性に対する暗黙の非難が存在した11。結婚移住女性達の帰国をめぐる問題は、帰国避難を勧誘する本国
の家族と、帰国に不満を持つ日本の家族との間で生じた家族間の葛藤が最も多く、事例の中には、帰国した
ことをきっかけに、別居、離婚になったケースもある。ここで A さんの事例を紹介したい。
076
A さんは、帰国避難したことをきっかけに夫婦間に亀裂ができ、今でも別居状態にある。結婚 9 年目の A
さんには、連れ子の女の子が一人と韓国に成人した息子が一人いる。被災直後は夫と指定避難所に避難した。
その後、仙台の知り合いからの安否を確認する電話のなかで、皆震災後韓国に帰っていると聞いて不安にな
り、自分も帰国を決心した。最初、夫は反対したが、周りの韓国人もその夫を説得して許可をもらった。本
来は 6 カ月以上滞在するかも知れないということで、娘を韓国の学校に入れていた。しかし、日本の夫の反
応が良くなく、結局避難 2 か月後に韓国から戻ってきた。震災後は、夫が家の財布の紐を握るなど夫婦間の
亀裂が深化した。A さんは結局 8 月末に韓国に再帰国し、今現在も別居中である。
これらの問題の根本的な原因は、東北地域における仲介型国際結婚をする殆どの男性やその家族は従来の
イエ制度の観念の中で国際結婚をしている半面、結婚移住女性達は「トランスナショナル」な家族観と強い
モビリティー性の中で結婚移民を選択していることにある。つまり、結婚観と家族観のズレが原因で、帰国
避難に関する葛藤が生じていたと言える。
ところが、このような避難をめぐる家族観の葛藤は、外国人花嫁と日本人夫だけの問題ではない。特に福
島などでは今でも避難をめぐる家族観の葛藤が続いている。モビリティーに関する夫婦間の葛藤が、結婚移
住女性の場合、より鮮明に問題化されたにすぎないのである。
3-2.社会と制度におけるジェンダー差別と外国人排除
もちろん、すべての結婚移住女性が帰国避難をしたわけではない。中には帰りたくても帰れなかった人も
多い。その多くは、嫁ぎ先の家に要介護者がいるなど、嫁としての役割を捨て切れず、帰国避難をあきらめ
た人々である。
ところが、災害直後に帰国避難もせずに頑張ったにも関わらず、その存在を認めてもらえないケースもあ
る。福島に住んでいる N 氏は、長男の嫁として、病気の夫と姑の世話のため帰らなかった。昨年末に姑は亡
くなったが、韓国人の嫁には財産相続をしたくないと、姑は亡くなる前にすべての財産を次男の名義に変え
ていたという。一緒に住んでいる舅からも「あなたは、家族ではない」と言われ、彼女は何のために今まで
9 年間も頑張ってきたのかと嘆いた。存在が承認されないという東北の結婚移住女性問題はいまだに根強く
残っている。ある意味、前述した結婚移住女性たちの高いモビリティーは、彼女等の社会統合・社会適応の
不安定さを反証するものでもあると言える。
このような結婚移住女性に対するジェンダー役割の押しつけは、制度面からも見ることができる。今回の
震災で夫を亡くした韓国籍の E さんの場合、結婚してちょうど永住申請ができる矢先に震災に遭い、夫を亡
くした。当時、彼女は「日本人の配偶者」の滞在資格であったが、夫との間に子どもがいるわけでもなく、
夫の両親と同居していたわけでもなかったので、滞在許可をもらうことができなかった。彼女が日本に居続
けられるためには、働くか、あるいは別な男性と結婚するという道しかなく、結局彼女は、夫が残してくれ
たお金で商売を始め、それで「定住者資格」をもらうことができた。しかし、彼女の早すぎた社会復帰は、
仮設住宅で仲良くなった同じ被災者との連帯を断ち切るはめになった。商売を始める前までは、毎日のよう
に仮設の住民と様々なイベントに仲良く参加していたので、夫を亡くした寂しさを何とか和らげることがで
きていた。しかし、一人で仙台まで行き来し、店内でも一人でいる時間が多くなるにつれ、彼女の中で寂し
さが耐えられない状況となってしまったのである。おまけに、韓国にいる E さんの母も病気になり、彼女は
店を立ち上げた 7 か月あまりで店をやめて、韓国に戻ることになった。
3-3.不可視化される結婚移住女性達
報告者は、以前から東北地域の結婚移住女性達の不可視化を指摘してきた[李善姫 2012a /2012c]。災
害は、この問題の深刻さも改めて浮彫にした。災害以降、各地域の国際交流協会と各国大使館は、自国出身
の人々の安否確認を行った。特に領事館経由の安否確認は、外国人の本名を使う。しかし、東北に住む結婚
移住女性のほとんどは通称名を使っている。親しい関係である外国人同士でさえ、
お互いの本名を知らない。
すなわち、本名で外国人女性の安否を確認することは、非常に困難なことだったのである。
災害と外国人女性達
077
10
2013.3
「私の地域に住んでいるということで、領事館から連絡が来て○○の安否を知りたいとの問い合わせが
来たが、我々は普段通称名を使っているので、韓国名を聞かれてもわからなかった」
(山元町 K 氏)
結婚移住女性のこのような不可視化は、特に韓国や中国からの結婚移住女性の場合によく見られる。それ
は、見た目では日本人とほとんど変わらないということで、自分の外国人としてのアイデンティティを隠
し、早く嫁いだ地域に馴染もうとする結婚移住女性たちの「戦略的不可視化」でもある。しかし、このよう
な移住初期における「戦略的不可視化」は、その後外国人としての彼女等のアイデンティティを社会が認め
なくなるなど、新たな問題を生むことになる。それについては、すでに指摘している通りである[李善姫 2012c]。この結婚移住女性の不可視化は、災害時において彼女等がいかに脆弱な立場に陥りやすいかを物
語っている。
Ⅳ . 新たな可能性―結婚移住女性たちのエンパワーメントと主体的社会
参画
震災後、災害地域では様々な NPO や NGO が地域復興のために働いている。彼らの介入が、被災地域の人々
における新たな「媒介力」として働いている例も少なくない。結婚移住女性の場合も、今回の震災の経験と
その後の支援者との関わりの中で、新たに地域社会のメンバーとして認められる例が多数見受けられた。
8 年前に日本人の夫と結婚して石巻雄勝に住む Y さんは、震災前は家族の世話で毎日が精一杯でうつ病を
患っていたが、震災後は自分も何か地域社会のためにできることがあるのではないかと思い、地域の事に積
極的にかかわっている。そのきっかけは、外部から支援活動に来た NPO と関わりであった。
また、被災地のフィリピン人女性たちの自助グループの組織化も活発になっている。全国のフィリピン人
組織が震災後に支援団体を立ち上げ、各地域のフィリピン人に支援物資を届けた。フィリピン人女性たちは、
外部からの支援を受ける受け皿として組織を作ることが必要であると認識し始めるようになった。現在まで
に岩手の大船渡から福島のいわきまで、フィリピン人組織がそれぞれ立ち上がっている。
これらのフィリピン人女性たちのエスニック・グループ結成は、中国人女性たちのネットワークづくりに
も影響を与え、現在、宮城県では定住中国人のネットワークづくりが始められている。今回の災害を通して、
東北の結婚移住女性たちがどのように自助組織を作り、そこからどのようにエンパワーし、市民として社会
参画していくのか。今後も注視していかなければならない。
Ⅴ .「共生」のためのジェンダー平等と「共生」のための外国人包摂を
女性の全てが弱者ではないのと同じように、外国人だからと言って全てが弱い立場にいるわけではない。
しかし、脆弱性を孕んでいることには変わりがない。今回の震災をきっかけに出会った石巻のある韓国籍の
女性のことを紹介する。
木村さん(偽名・40 代後半)の母と父は、彼女が生まれる前にすでに別れていて、彼女は自分の父親
に対する記憶がない。どうもその父親は在日で、認知もしてもらえなかったので、彼女自身は無国籍の
まま生きてきた。自分には戸籍がないことがネックで、社会では何もできないという状況の中、お見合
い結婚をした。38 才になってようやく何とか国籍を持たないとだめだと思い、韓国民団に行って韓国
国籍をもらうことができた。国籍をもらっても、彼女には自分が韓国人である意識は全くなかったとい
う。ところで、姑との関係の悪化がきっかけに夫に DV を受けるようになった。警察も呼んで、シェル
ターに逃げた事もあったが、行政は DV の夫から自分を十分に守ってはくれなかった。逃げて、また連
れ戻されての繰り返しだった。夫には何度も離婚を申し込んだが、
「別れるならお前を殺し、
おれも死ぬ」
という言葉で離婚もできない日々が続いた。ところが、震災をきっかけに夫が離婚に応じてくれた。義
捐金を分けたくないから、離婚してくれたのではないかと彼女は言う。しかし、その後が問題であった。
078
彼女には住む場所がないのである。市役所に自分も罹災者であるから、仮設住宅に入れないかと相談し
た。市役所からは、震災当時世帯を共にしていたご主人が、家の応急処置金をもらっているので、仮設
住宅を与えることはできないという回答だった。結局離婚後、友達の家を転々しながら生活した。いわ
ゆるホームレス状態の中、仕事を見つけることもできない、生活保護も受ける事もできないという悪循
環の連続だった。そんな中、市が行った外国人被災状況のアンケートが届き、今まで自分が外国人であ
るアイデンティティも持たなかった彼女は、藁を握る心境で、アンケートに困っていることを書いた。
そのアンケートは市に了解を得て、大学の研究者と支援団体が被災外国人の状況が知りたいということ
で実施したものであった。そこで、ようやく彼女への支援ができたのである。市の担当部署に何度も話
をし、彼女にも仮設住宅を申し込むことができた。その時、彼女の所持金はたった 700 円だった。
木村さんの事例は、外国人としての自己アイデンティティもない中、外国人として女性としての二重の苦
の中に生きている事例と言える。そして、外国人女性の制度的な面においても、社会的な面においてもまだ
十分に日本社会に包摂されていない状況を現わす事例でもあり、この社会がなぜ「ジェンダー平等」と「多
文化共生」を同時に主流化しなければならないのかを物語っている。
鈴木恵理子氏は、多文化共生のためには、三つの壁を無くすことが必要であるという[毛受、鈴木
2007]。それは、「言語の壁」「心の壁」「制度の壁」である。阪神・淡路大震災後、定住外国人に対する「言
語の壁」を無くすための努力は、東日本大震災の後、すぐ地元の FM ラジオにおける多言語避難勧告放送や
多言語相談窓口設置につながっている。また、被災地の外側からも多言語支援センターがいち早く立ち上が
り、被災地域の行政に対する多言語翻訳の支援を行うなど、少なくとも「言葉の壁」を無くための努力は、
大きな成果を見せたと評価できる。しかし、本稿でとり上げた事例の中からも見えるように「心の壁」や「制
度の壁」の面においては、いまだ大きな課題を残している。特に東北の外国人女性たちの場合には、それら
の壁に「ジェンダー」問題が重くのし掛かっていると言わざるを得ない。
7 月 9 日から施行された日本の新しい入管法では、日本人および永住者の配偶者資格を持つ人が「6 か月
以上配偶者としての活動をしていない」場合、法務省がその在留資格の取り消すことができると明記してい
る。特に結婚移住女性たちの立場が、ますます弱くなるのではないかと憂慮される部分である。
震災は、不幸な出来事である。しかし、一度浮き彫りになった社会の脆弱さを放置したまま復興はあり得
ない。今だからこそ、我々は「共生」のためのジェンダー平等と多様性を認め合うコミュニティ建設に正面
から向き合わなければならない。
参考文献
李善姫、2012a 「グローバル化時代に仲介型結婚移民――東北農村の結婚移民女性たちにおけるトランスナショナル・アイデンティティ」
,李善姫・
中村文子・菱山宏輔編 / 大西仁・吉原直樹監修 『移動の時代を生きる――人・権力・コミュニティ』
,東信堂
李善姫 2012b 「
『多文化ファミリー』における震災経験と新たな課題――結婚移民女性のトランスナショナル性をどう捉えるか」
,鈴木恵理子編・
駒井洋監修 『移民ディアスポラ年報 2 東日本大震災と外国人移住者たち』
,明石書店
李善姫 2012c 「ジェンダーと多文化の狭間で――東北農村の結婚移住女性をめぐる諸問題」
,東北大学グローバル COE プログラム『GEMC
journal』no.7
桑山紀彦,1995,
『国際結婚とストレス』
,明石書店
賽漢卓娜,2011,
『国際移動時代の国際結婚―日本の農村に嫁いだ中国人女性』
,勁草書房
佐竹眞明・メアリー・アンジェリ・ダアノイ,2006,
『フィリピン ‐ 日本国際結婚移民と多文化共生』
,めこん
佐竹眞明編,2011,
『在日外国人と多文化共生』
,明石書店
佐藤隆夫編,1989,
『農村(むら)と国際結婚』
,日本評論社
宿谷京子,1988,
『アジアからの花嫁――迎える側の論理』
,明石書店
武田里子,2011,
『ムラの国際結婚再考――結婚移住女性と農村の社会変容』
,めこん
仲野誠,1998,
「
『外国人妻』と地域社会――山形県における『ムラの国際結婚』を事例として」
,
『移民研究年報』92-109 頁.
日暮高則,1989,
『
「むら」と「おれ」の国際結婚学』
,情報企画出版
新潟日報社学芸部編,1989,
『ムラの国際結婚』
,無明舎
毛受敏浩、鈴木恵理子 2007 『
「多文化パワー」社会(国際交流・協力活動入門講座)
』
,明石書店
災害と外国人女性達
079
10
2013.3
註
1 2011 年 4 月 25 日の時事通信社の報道による。その後の正式な集計の報道がないため、この数字がほぼ確定的に使われている。
「震災後の東北における地域再編と結婚移民女性の社会参画に関する文化人類学的考察」とトヨタ財
2 本研究は、科学研究費補助金(基盤 C)
団 2011 年度研究助成プログラム「震災後の東北地域における多文化共生とトランスナショナル・家族の可能性に関する考察」の研究調査とし
て行っている。なお、本稿で書いた一部の事例は、
「外国人被災者支援センター」
(センター長:佐藤信行)との共同調査によるものである事
を明記しておく。
3 拙稿 2012b, 2012c などをご参照いただきたい。
4 法務省統計[表 1]と各県の総人口を参照に筆者が計算したもの。
5 平成 21 年 11 月 6 日宮城県経済商工観光部国際政策課長犬飼章氏が報告した「第 2 回多文化共生の推進に関する意見交換会―宮城県の取り組
み事例―」による。
6 2012 年 5 月 23 日、気仙沼日本語教室の代表千葉氏とのインタビューによる。
「ムラの国際結婚」の場合は、行政が外国人花嫁の結
7 いわゆる「ムラの国際結婚」は、山形や新潟で行われた行政主導の国際結婚を称する。
婚後の現地適応を様々な形で手助けしている。
、
【新潟日報社学芸部編 1989】によると、当時の行政は外国人花嫁を斡旋するにあたって、ムラでの歓迎式はもちろん、外国人花
8【日暮 1989】
嫁のための日本語教室やお茶会を開く他、就労や家庭訪問など地域社会定着のためのアフターケアについても行っていたと書かれている。
9 法務省統計局 HP http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001074828 参照
10 http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00011.html
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00021.html 閲覧。
。
11 筆者は、この問題について別稿でより詳細な事例と分析を行っている。そちらをご参照いただきたい[李善姫 2012b]
Comments
樺島 博志
李の報告は、震災における外国人女性の状況について、言語、心の問題、それから制度といった角度から
検討しており、キーワードとして、「結婚移住女性」という言葉を使っている。日本で結婚して滞在してい
る外国人の女性が、この震災という危機において大変な困難を経験しているという、実地調査に基づく実証
的な研究成果である。
震災復興関係の公共政策の研究では、震災復興集団移転といった問題が、いま盛んに論じられている。け
れども、公共政策の議論においては、外国人女性などのマイノリティー(minority)に属する人々について、
どのような震災復興策が現に必要とされているのか、ということについて、非常に重要かつ本質的な問題で
あるにもかかわらず、焦点が向けられていない。それどころか、公共政策の研究では、そもそもそこに向け
られる眼差しが欠けている、ということを李の報告は気付かせてくれる。
さらに、李の報告は、法理学の見地からも興味深いものである。李の実証研究で明らかにされているのは、
結婚により日本に居住している外国人の女性が、伝統的な言葉を使えば、非常に社会的に疎外されている、
ということである。疎外(Entfremdung, alienation)というのは、マルクス(Karl Marx)によって有名にな
った言葉である。李は、マルクスの分析とは異なり、疎外を経済的な現象としてではなく、社会文化的現象
として把握している。このような把握は、非常に的確なアプローチであると考えられる。スティールの議論
も同じようなフレームワークであったが、下部構造からではなくて、ある種の社会文化的な問題として、外
国人女性の社会における疎外の問題は把握されなければならない。そういう意味では、マルクスではなくて
ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel)の精神現象学を出発点として、承認をめぐる闘争(Kampf um
die Anerkennung)という定式でアクセル・ホネット(Axel Honneth)が強調した観点と、通底する問題関
心ではないだろうか。すなわち、外国人女性などの社会的マイノリティーの問題は、どのようにすれば社会
的にその存在を承認されるのか、どのようにして社会のマジョリティからレコグニション(recognition)を
得ることができるのか、という問題なのである。
080
李の論文の最後では、日本社会にいまエスニック・グループが形成されつつあることを指摘しており、彼
らが社会的な承認を得る可能性が示唆されている。では、日本社会というのは、本当に、多文化的に把握で
きるのか。スティールは、マルチカルチュアル・コンビビアリティ(Multicultural Conviviality、多文化共生)
の条件として、こうしたエスニック・グループの形成ということを指摘している。しかしながら、現在の法
理学・社会哲学の研究においては、むしろ事態は逆のほうに進んでいるという、極めて悲観的な見方が提起
、あるいはダイバーシティー(diversity)
されている。つまり、社会はコンヴィヴィアリティ(conviviality)
という方向ではなくて、むしろフラット化しつつあると法理学・社会哲学では言われている。ニナ・パウワ
ー(Nina Power)は、ワン・ディメイショナル・ウーマン(one-dimensional woman)という言葉を使って
いる。要するに女性の生のあり方が、多様性にではなく、均一化する方向に向かっている、ということをパ
ウワーは指摘している。このような事態は、とりわけ外国人女性のようなマイノリティー・グループにとっ
ては、非常に厳しい状況に物事が進んでいるということではないだろうか。このことは、資本主義の進行に
伴い一切が商品化され均一化する方向に向かうというマルクスの分析と符合しており、そういった社会のフ
ラット化、あるいはワン・ディメンショナル化という事態は、マイノリティーにとっては非常に克服するこ
との難しいチャレンジングな状況であるということなのである。
李の報告から、現在の震災復興の状況において、グラスルーツ(grass roots)的に外国人女性などのマイ
ノリティー・グループ、エスニック・グループが社会的に承認を得ようとする際に、フラット化、ワン・デ
ィメンショナル化という現代の社会状況が大変な障害となり得るのではないか、という危惧すべき事態が明
らかになった。だからこそ、このような社会構造を実地調査にもとづき実証的に分析するという李の課題は、
法理学に携わる者にとって、非常に重要な意義と問題提起をはらんでいるのである。
災害と外国人女性達
081
10
2013.3
質疑討論
辻村みよ子(東北大学大学院法学研究科教授、GCOE 拠点リーダー)
:
ここから私が、コーディネーターをさせていただきます。
本日は、とても充実したご報告、コメント、そしてご議論をありがとうございました。本当にたくさ
んのプロジェクトの、内容の濃いご報告を伺うことができて、実際に異分野の融合ということも感じま
したし、とても充実した気持ちでありがたく思っております。
さて、この時間帯、せっかく全国からこうしてたくさんお集まりいただきましたので、皆様からご意
見をいただきたいと思います。
その前に、私の方から議論の呼び水となる話をさせていただきます。実は、私たち GCOE の中間評
価の研究面では、「15 研究プロジェクトを統合して、国際的に卓越した新しい学問領域が形成されるよ
うにいっそう努力することが期待される」というコメントが付けられました。最初から危惧しておりま
したように、15 のプロジェクトに分かれて研究をすることにより、プロジェクトごとにばらばらにな
ってしまうのではないかということを指摘されました。それを受けまして、我々の最終目標を達成でき
るように、月例研究会や萩セミナー、桜セミナーでは、これらのプロジェクトの成果を統合するような
全体の研究会をたくさん企画してまいりました。その上で、本日、ほかのプロジェクトの研究内容を相
互にふまえて議論するということができましたので、
「研究プロジェクトの成果を統合して新しい学問
領域」を確立すると言う目標を一定程度達成したと言って良いと考えております。先ほどスティールさ
んが指摘しましたように、それは、GEMC[Gender Equality and Multicurtural Conviviality]だと思う
のです。つまり、「ジェンダー平等と多文化共生、あるいは共生」の視点を複眼的に見て、組み合わせ
た一つの学問領域というのが GEMC になります。その学問領域が形成されるように努力してきて、そ
の成果が表れつつあることを発信していかなければいけないと思っております。ですから、ジェンダー
と共生の関係、ジェンダーと多文化共生の関係をテーマとして、皆様からご意見を伺いたいと思います。
もちろん報告の中で人身取引、臓器移植などもすべてジェンダーが関係していることもすでに述べてい
ただいておりますが、そういった論点もさらに発展させることができればと思います。
それから、本日の研究会は、非常に学際的な内容を持っていたと思っております。例えば、医学も修
められている米村さんが医学と法律学を学際的に結びつける報告を行い、それに対して、社会学や経済
学からの質問がありました。あるいは、吉田プロジェクトの場合には、経済学からのご報告に対して、
法律学の森田さんのコーディネートのもとで、佐藤さんより社会学の観点からコメントもいただきまし
た。それぞれのセッションで学問領域の垣根を解き放った、学際的な相互交流ができたのではないかと
思っております。同時に、研究分野の特殊性と共通性というものも浮かび上がってきます。そこから発
展させて、「ジェンダー平等研究は、学問を超えられるか」というようなテーマもありうるかなと思っ
たりしております。
そういった論点について議論していただいて、最後にはこれらを接合していきたいと思っています。
それにより、国際的な新しい学問領域の形成というところにまでいけるのかという課題が見えてくると
思います。例えば、以前に岩波のシリーズの話をしましたが、昨年、
『ジェンダー社会科学の可能性』
という 4 巻本を出版しましたときに、経済学、法学や社会学の枠を超えたジェンダー社会科学というも
のを目指しました。でも、これは、ジェンダーだけの視点からだったわけです。一方、GCOE では、多
文化共生をも加えた新しい学問の可能性を追求してきました。その点についても議論していきたいと思
082
います。
それでは、最初の高松報告について、補充的な質疑をしたいと思います。まず、高松報告について、
何かございますでしょうか。原さんどうぞ。
原ひろ子(城西国際大学客員教授):
ありがとうございます。高松さんが、冒頭で男女共同参画という言葉をジェンダー主流化に変えまし
「グローバル時代
たとおっしゃっていました。一方、東北大のグローバル COE プログラムのテーマは、
の男女共同参画と多文化共生」なのに、本日のセッションのテーマは、
「ジェンダー平等と多文化共生」
です。私は、個人的にはジェンダー平等と多文化共生の方がインクルーシブ(inclusive)でいいと考え
ています。つまり男女共同参画というと男と女になってしまうけれど、LGBT、その他の問題を色々含
めるとすると、ジェンダー平等の方がいいと個人的には思っているのです。高松さんはどうして変更な
さったんでしょうか。
高松香奈(国際基督教大学准教授):
ありがとうございます。なぜ変更したのかについて説明させていただきます。
最初のネーミング、タイトルの付け方ですけれども、このグローバル COE のプログラムの名前をち
ょっと意識しまして、男女共同参画と書いたのです。もちろんジェンダー主流化ですとか、ジェンダー
平等の方が、私個人としてもしっくりはくるのです。その上で、最終的に変えたのは、政策を見るとい
う時にジェンダー主流化政策の方が、開発援助とか、そういうところではすごく使われる言葉という、
それだけのテクニカルな理由で変えました。特に男女共同参画ということに異議を持ったから変えたと
いうことではないのです。
辻村みよ子:ありがとうございました。非常に基本的で、かつ重要な論点を出していただきました。男女共
同参画とジェンダー平等は同じかどうかを問うているのですね。これは、内閣府の男女共同参画局自身
がジェンダーという言葉を使わないで立法をしながら、実際には「男女共同参画社会基本法」を「ベー
」
、
「男女共同参画」
シック・ロー・フォー・ジェンダー・イクオリティー(Basic Law for a Gender Equality)
」というように訳している。つまり、日本語とし
を「ジェンダー・イクオリティー(Gender Equality)
てはジェンダーという言葉を使わないということなのです。ここにいらっしゃる方でうなずいていらっ
しゃる方は、その背後にあるものをご承知だと思います。2000 年代初頭からバックラッシュ(backlash)
的な影響もありましたし、2000 年代には、我々もジェンダー平等ということをタイトルに出さないで、
基本法に即して男女共同参画という言葉を用いました。
「ジェンダー・イクオリティー・アンド・マルチカルチュラル・
しかし我々のGCOEのテーマは、英語では
」です。いろんなところでそう
コンヴィヴィアリティ(Gender Equality and Multicultural Conviviality)
いう使い分けをしておりますが、このことは日本社会の状況にも現れているといえます。
我々の研究センターは、ジェンダー平等と多文化共生研究センターという名称でして、略してジェン
ダー研究センターといわれることもあります。ですから、ジェンダーの研究センターであることは間違
いないのですけれども、テーマとしては男女共同参画ということを掲げたということがございます。最
初に、非常に基本的なところをご指摘いただきまして、ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
スティール若希(東京大学社会科学研究所准教授)
:
先ほどの原さんのコメントに関連するのですけれども、学問のグローバル化を踏まえるならば、まず
やはり大きな挑戦といえば、統一した概念、統一した言葉、定義を打ち立てることだと思います。国際
的なレベルでは、ジェンダー・イクオリティーか、ジェンダー・エンパワーメント(gender empowerment)か、どちらが主に使われているのか。日本政府も署名や関与をしているからこそ、国連のいろい
ろな機関が出している文章や条約の定訳なども関係してきます。それを考えてみると、将来的に学問分
野におけるグローバル化を進める際の一つの大きな問題点は言葉の壁を乗り越えることです。男女共同
参画社会基本法の訳を見てみると、やはりジェンダー・イコール・パティスペーション・ソサエティー
(gender equal participation society)か、ジェンダー・イクオリティーかのどちらなのかという問題が
重要になってきます。その点ではセンターの名称の問題だけではないと思うのですが、ジェンダー平等
にするのか、男女平等にするのか、男女共同参画なのか、将来的には言葉や概念の統一をどうすればい
質疑討論
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いのでしょうか。
辻村みよ子:基本法の訳語は、ジェンダー・イクオリティーです。参画についても、パティスペーション
(participation)という言葉を使っていません。
スティール若希:ジェンダー・イコール・ソサエティーもジェンダー・イクオリティーと若干違う。それは、
どういうことになるか。将来的には語彙の統一は難しいとちょっとコメントしたかったのです。
辻村みよ子:日本政府は、男女共同参画社会の英訳をジェンダー・イコール・ソサエティーとしていますが、
国際的なレヴェルと国内のニュアンスが異なることは問題ですので、今後も課題が残っているといえる
でしょう。
ほかにいかがでしょうか。なお、確認ですが、高松さんは人身売買ではなくて、人身取引とされてい
ます。売買という言葉は使わないのですね。
高松香奈:私は使いません。
辻村みよ子:一般的にはどうですか。
高松香奈:日本政府の文書では、人身取引という言葉を使っていますが、人身売買という言葉を使われる方
もいます。
辻村みよ子:意味的にどう違うのですか。
高松香奈:私の見解ということでもよろしいでしょうか。私が人身取引の研究や調査をしていく中で、売買
という言葉が必ずしも当てはまらない事例がたくさんあります。売買されるとなると、売買の関係が成
り立っているというように一般的に考えられています。しかし、人身取引というか、ミャンマーなどの
ボーダー(国境地帯)での調査だと必ずしも売買ではないというところから、私は人身取引という言葉
を使っています。つまり、売買というといくらかお金を払って、家族がもらって、行った先でもある程
度はベネフィット(benefit)があるような印象があると思うのです。しかし、私が知っている多くのケ
ースは、ほとんどベネフィットというものが家族にもなければ、その人自身にもなくて、一方的な使用、
搾取が非常に強いので、あまり売買という言葉は当てはまらないのかなと私個人は考えています。
辻村みよ子:対価がなく、ただの搾取だということですか。
高松香奈:売買という言葉が当てはまるようなものも、もちろんないわけではないと思うのですが、私の知
る限りではなかなか当てはまらないと考えています。
辻村みよ子:わかりました。ありがとうございます。ほかは、
いかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、
米村報告の「利他的医療の法原理と国家法」について、何か補足的なご議論がございますでしょうか。
佐々木弘通(東北大学大学院法学研究科教授)
:
言葉の問題が論点になっているので、私は、この「利他的医療」という言葉がちょっとピンと来ない
というか、いかがなものかという観点からコメントさせていただきます。
具体例の第一の、臓器移植の場合は、臓器を譲り受ける人が利益を受けるということでわかるのです。
しかし、第二の、人工生殖医療になってくると、ちょっと微妙になってくるのではないかと思うのです。
例えば、夫婦間の人工生殖医療の場合は、妊娠できなかった夫婦が妊娠できたのであれば、それは自分
たちの利益のために行ったことになるのではないか。もちろん、たしかに第三者の精子、卵子とかを使
う場合、あるいは代理母という人がいる場合には、その代理母や、精子を提供する人、卵子を提供する
人から見たら、他人のためにやっているということになるのかもしれません。三番目のパターンとして、
研究のための医療ということをおっしゃっていましたが、この場合、利益を受ける人というのは、今度
は抽象的な存在です。つまり、誰が「利他」の「他」かということがぼやけてきています。以上のよう
に、この三つの場合を一つに統合して利他的医療というふうに名付けるのは、かえって問題がぼやけて
くるのかなと思います。
だから、一つ一つの問題を突き詰めた先に、
「こういう共通点があって、これが……」
、というふうに
して出してくるべきものを、一気に頭から一つにまとめられると、ちょっとどうかなと感じます。
それから、言葉の問題としては、利他的医療と対になるものとして、従来の医療が利己的医療と捉え
られるのかというと、それは違うのではないか。
まとめますと、先端医療科学技術に伴って出てくる新しい問題というように私などは一般的に捉えて
いたものを、利他的医療という一つの言葉で捉え直したところに一つポイントがあると思うのです。し
084
かし利他的医療という言葉に見合った現実が、それぞれの場合にあるのかなというと、かなり違うので
はないかなと思いました。ですから、私なりに考えると、複数当事者に関わる医療のとき、もう少し詳
しく言えば、病気の患者さんを治すという医療ではなくて、もっといろいろな当事者が関わってくると
いうことに共通の特色があるのかなと感じています。
また、最後の課題も将来世代の法律問題として出てきているわけです。しかし、これも主として二番
目の生殖医療に関しては出てきますが、一番目の臓器移植の問題については、このようなかたちでの課
題があまりクリアに出てこないと思います。やはりその辺は、この短い報告時間だと十分に意を尽くし
て論ぜなかったということかもしれませんけれども、ちょっと一つのピクチャーとして描くには、まだ
ごちゃごちゃしているなという印象を受けました。
辻村みよ子:ありがとうございました。私も先ほど個人的にまったく同じことを米村さんに伝えましたので、
おそらくお返事があると思います。
米村滋人(東北大学大学院法学研究科准教授)
:
複数の憲法の先生から、大変貴重なご指摘をいただきまして、大変恐縮に存じます。
私の意図として申し上げさせていただきますが、最初にも報告の中で申しましたとおり、利他的医療
というのは私の造語でございまして、一般的に使われる用語ではございません。ですので、私の定義付
けということになってしまいますし、それが不適切だということであれば、今後は一切使わないという
ことで運用させていただきたく思います。
一応、私の意図といたしましては、やはり医療というものは、先ほどまさに佐々木さんが、利己的医
療だったのかというご指摘だったと思いますが、利己的医療であるかのごとくに法律構成がされていた
ということを私は問題にしたいと考えたわけです。あたかも患者だけが受益者であるかのように法律構
成がされたため、客観的制度化要件というのは、患者に優越的利益があればよいということで、通常は
理解されていたと思います。要するに、プラスがマイナスを上回るという状況であれば、それで医療と
して正当であるというふうにみなされるという理論が主流であった。それは、まさに患者の利益だけを
考えてものを言えばよかった。そういう発想だろうと思うのです。
ところが、実際には私の発想でいいますと、全ての医療というのは、社会性を持っていて、ある人に
ある医療を提供した場合には、それを負担する誰かほかの人がいるという側面もあり、あるいは究極的
な状況では、医療資源が不足している状況では、ある人にはある治療をすれば、ほかの人が治療を受け
られなくなるという側面がある場合がある。そういうことを多面的に考えて、この人にこの治療をすべ
きかどうかということを決めなければいけないものを、二者間関係だけですべてを解決しようとしてい
たのが、従来の医療に関する法律的なアプローチだったと、私は思っております。
ですから、この利他的医療の問題と私が言ったのは、実は利他的医療の問題だけではないのですよと
いう最後のところが、むしろ私としては言いたいことです。つまり、利他的医療と私が名前をつけたも
のが、ある種の特殊な場面だというふうにむしろ捉えていただきたくなかったのです。ですから、逆に
いうとそこの定義はあいまいにして、いくらでも広がりうるようにしているという部分はあります。そ
れが一つの答えになろうかと思います。
その上で、臓器移植と人工生殖医療では、状況に違いがあるのではないかという指摘をいただきまし
た。それは、基本的にはおっしゃるとおりだと思います。ただ、その違いというのが、何に由来する違
いなのかということも、また同時に考える必要があります。臓器移植の場合には特定の他人がいるとい
うような言い回しで表現しますと、脳死臓器移植は、基本的に特定の他人がいないのです。いないのに
提供するというスキーム(scheme)であり、匿名性が必ず担保されなければいけないという側面があ
ります。
それから、臓器移植のアナロジー(analogy)で、最近組織移植とか、組織バンクというものが、非
常に発達してきております。これも相手はいないのです。しかも、
将来の人である可能性が高いのです。
そういうかたちで提供される医療というのをやはりある種の共通性をもって、法的に更正しないといけ
ないという問題意識が、私の中にはあります。それでこういうかたちでの問題とさせていただいたとい
う次第でございます。十分な説明になっているかどうかわかりませんが、以上とさせていただきます。
辻村みよ子:ありがとうございました。先ほど私が、個人的に質問をしましたのも同じようなことでござい
質疑討論
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ます。言葉の問題として第三者の利益という定義がありましたので、この第三者とは誰かということを
聞きました。AID ならば第三者でわかるのですが、夫婦間、配偶者間の AIH の場合に、第三者とは誰
なのかを先ほど確認しましたら、子どもだというお答えでした。子どもの利益、AIH で生まれることが、
子どもの本当に利益になっているかどうかということは、また別の次元ですけれども、そういうものも
利他的医療なのかという質問をいたしました。
それから、オーストラリアの州法で、代理懐胎を一部分認めているところでは、アルトリュィスティ
ック・サロガシー(altruistic surrogacy、利他的な代理懐胎)という言葉が使われています。アルトリ
ュィスティック・サロガシーだけは認めるということをオーストラリアの州法について一般に論じてい
ます。新聞報道でも全部この単語を使うのです。
ただ、その場合には非営利性、無償性、任意性、任意同意性とか、他人のために善意であげる、自分
の姉妹とかのために産んであげる、というようなことを指していたのです。ですから、この単語を使う
ときに、狭義の意味と広義の意味があるので、この単語から来るさまざまな問題性があるのではないか
ということを私は指摘させていただきました。
そのほかにいかがでしょうか。
田中重人(東北大学大学院文学研究科准教授)
:
東北大学の田中です。私は、法律関係は素人ですので、ちょっと教えていただきたい。根本的なこと
ですけれども、どうして医療というのが特別扱いになっているのかということについてお伺いしたいで
す。
報告の最初に住居侵入の話を出されたが、たぶん住居侵入の場合は、同意があるかどうかがすべてな
のではないかと思います。しかし、医療の場合はそうではなくて、患者と医師の間で同意があっても、
それ以外に正当な医療行為でなければいけないという縛りが別にかかっているということですね。そも
そもなぜなのかということをお伺いします。
米村滋人:ありがとうございます。まず被害者の同意の理論という刑法の理論にのっとって申します。住居
侵入の場合というのは、被害者の同意の理論の例として説明するのは本当は適切ではありません。刑法
ですとそもそも条文の何々を犯した者は、懲役何年以下の刑に処するというふうに書いてあります。そ
この「何々をした者は」というのを構成要件と呼んでいるわけです。被害者の同意がある場合には、住
居侵入罪の構成要件にも当たらないというふうに考えられております。ですから、構成要件の該当性を
阻却する同意ということ、いわゆる被害者にとっては、違う扱いになっています。
ただ、一般的にこの同意の問題を考える際には、どういう犯罪についての同意なのかということを考
える必要があります。住居侵入罪の場合には、一般的な説明としましては、実は争いがあるのですが、
基本的には住居という住居領域に入って来るということが、いったいどういう利益を侵害しているのか
ということの分析が基本にあります。それは、誰を立ち入らせるかを決める権限が、そこに住んでいる
人にあるのだというふうに考える立場が一般的です。ですから、住居に誰を立ち入らせるかを決める権
利でしかない。自己決定権に近いような発想ですが、それに対する侵害があったということで、住居侵
入罪を説明するというのが多数の立場だということになります。ですので、
同意なくして入ってきたら、
その時点でだめだということになるのです。
ところが、この医療行為に関しては、通常は傷害罪の違法性を阻却するための同意ということになり
ます。ですので、傷害罪が違法である理由というのは、本人がいいと言ったか、悪いと言ったかだけで
はないという発想が、もともとあるのです。それで、本人がいいと言っても、やはりやってはいけない
傷害行為というのがある。よく刑法で例に挙げられるのが、やくざの指つめです。やくざが、指をつめ
たいといって、指をつめるという行為は、医者がやらなくてもそういうことだとみなされるわけです。
それが果たして傷害罪に当たらないかというと、当たるというのが一般的な刑法の見解です。これは、
被害者の同意があったとしても、それは社会的に許されない行為だからというふうな説明がされたり、
この同意自体に反倫理性があって無効であるという説明をされたりする場合もあります。いずれにして
も被害者の同意があったとしても、傷害罪というのは違法性が完全に阻却されるものではないという考
え方が、ベースにあるのです。
そういうこととの関連もありまして、医療行為の場合には、患者の同意があっても、そもそもその患
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者というのは、医療のすべてを理解して完全に自己の法益を放棄する意図を持って、同意を与えるとい
う場合は少ないというか、ほとんどないということの前提になっていますので、同意だけで完全に違法
性を阻却する効果をもたらすのは無理だということが前提としてありました。
それで客観的な正当性が、
合わせて一つの法のようなかたちで要求されて、両方ないと違法性が阻却されないというのが一般的な
刑法の説明であります。
いずれにしても、被害者の同意が違法性を阻却する程度というのは、それぞれの行為領域によって違
うということでして、わりと財産に関する犯罪では、同意があれば簡単に違法性阻却されるというのが
一般的です。一方、傷害罪は身体の健康に対する侵害だと考えられていますが、それは完全には阻却で
きないと考えることが多いです。しかし、かなりの程度は阻却される。生命に対する侵害です。殺人罪
に対しては、同意があってもこれは完全に違法だと考えられております。それで同意殺人罪などが処罰
されているということで、やっぱり基本的には三段階ぐらいに分けて考えるのが刑法の世界では一般的
かと思います。
わかりにくい説明になったかもしれませんが、以上です。
辻村みよ子:ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。
スティール報告、李さんの報告はいかがでしょうか。今日は、韓国多文化学会の梁会長がゲストとし
ていらしていますので、コメントをお願いします。
梁起豪(聖公会大学校教授):
どうも、一言申し上げたいと思います。ちゃんと多文化のところまで研究の領域が含まれているとい
うことは、素晴らしいと感じました。日本政府はあまり多文化政策をとっていないのですが、特に日本
の結婚移民に対してはそのことを強く言うことができます。彼女たちは日本全国に散在していて人数も
少ないし、共生教育の対象になるかどうかにつきまして、議論がいろいろと分かれるところがあります。
だから、そういう面では非常に壁が高いというか、歯がゆいところという気持ちがあるわけです。
韓国は、どちらかというと、国民という観点から中央政府が結婚移民者とその家族に対して非常にや
りすぎという点について、いろいろ批判が出ています。日本と韓国は、非常に対称的な事例かもしれな
いというのが私の感想です。
せっかくここまで研究をなさってきたので、これからもこの研究を続けていくだけでなく、こういう
面で発信力といいますか、メッセンジャーを務めることとメッセージを発することが重要です。そうい
うことから少しずつ多文化に関する関心が高まっていき、さらによい研究ができるようになると思いま
すので、これからも期待しています。ありがとうございました。
辻村みよ子:ありがとうございました。外国人女性というか、
マイノリティー(minority)女性の問題などは、
女性差別撤廃委員会からも総括所見で勧告を受けております。第三次男女共同参画基本計画をつくりま
したときも、この言葉を何とか入れたのですが、実態がわからないのです。それで、その調査をするこ
とは可能かということについて行政担当者に尋ねても、そもそも資料がないのですぐに無理だと思われ
ています。新たな政策や対策を行うためには、大規模な調査をどこかの段階でしなければいけないので
すが、現状では非常に難しいということになっているようです。ですから、そこで終わるわけにはいか
ないとはいえ、現状ではそうだということですので、問題意識を共有してこれからも色々なところで議
論をしていかなければいけないと思っております。
ほかにいかがですか。何かありますか。岩本さんどうぞ。
岩本美砂子(三重大学教授):
三重大学の岩本です。大きな質問になってしまうかもしれません。水野先生から出されたコメントの
中で、世間の圧力というものに強く触れられました。それから、李さんの報告の中には、結婚移住女性
の夫や家族が持っている家意識から引き起こされる問題の指摘があり、若希スティールさんのご指摘、
日本人論というような立て方をされました。日本という国が日本人からできているというエスノセント
リック(ethnocentric)な理解をあえて国意識と表現しますと、お家意識の問題、村意識の問題、国意
識の問題という三通りがそろって出てきたなと思って、政治学者としては感慨が深いものがあります。
このたびの福島の事故に対する国会の事故調査報告委員会の報告書が、なぜか日本語版にはなく、英
語版のあいさつだけ権威に対する日本人の反射的従属性だとか、
村意識の問題などを指摘していました。
質疑討論
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英語版だけでやっているというのが、内と外の使い分けのようで、まさに自分たちが批判していること
をやっているではないかと、ちょっとおかしかったのです。
それに対して、なるほどそうだという納得のされ方もありましたけれども、単に感情的に言っている
だけではないかという反発も、国会事故調の英文のあいさつは生んでいます。いま、政治学の中でも、
戦後の政治学の中で行われてきた日本の家意識、村意識、国意識の持っている問題を指摘してきた財産
のようなものに対して、客観的に証明できない非常に古い遅れた指摘ではないかというバッシングのよ
うな強い流れがあるのです。
確かに、この日本政治学の中の家意識、村意識、国意識の分析の中にはジェンダーの視点はありませ
ん。しかし、この三つの分析視角は、ジェンダーの視点を十分取り込むことができる、まだ生産性の高
い財産ではないかと思っています。そのあたりをもう少しコメントをいただけるとうれしいのです。
:
水野紀子(東北大学大学院法学研究科長・教授 GCOE サブリーダー)
私は、家族法学者で、家族法が本業ですので、家意識の問題について少しお話をしたいと思います。
家意識といったときに、その家意識は、どのように定義して、どのように使うかということが問題で
す。私が「イエ意識」というときには、たいていは片仮名の「イエ」に頭の中で変換して使っておりま
す。漢字の家というときは、明治民法がつくった制度的な家制度と使い分けています。明治民法の家制
度は、立法前に明治維新直後から制度化された戸籍制度を利用して、明治民法立法者が作り上げた緻密
な制度です。そしてイエ意識ということになりますと、
日本人の行動パターンの多くを決めているのは、
明治民法の家制度からというより、近世の江戸期に確立していた片仮名のイエ意識であるところが大き
いように思います。
このあたりの知見は、主に法制史の渡辺浩先生の受け売りですが、日本人は近世に非常に独自なイエ
制度を、それは家族制度、社会制度、産業制度であるものをつくり上げたのだと思います。つまり、日
本人はすべてどこかのイエに帰属しており、そのイエは、括弧付きの「法人」ないし「機構」として、
いわば職能団体として機能していて、そして日本人は皆どれかのイエに帰属することによって、アイデ
ンティティー(identity)とそれから職業とを規定されていました。そのイエが緻密なピラミッドのよ
うに構築されて社会を構成する、そういう国のかたちをもっていました。
日本も同じように儒教国家といわれますけれども、イエ制度は、お隣の韓国や中国とは、非常に違う
かたちの機能を営みます。中国の場合には、いわゆる宗族といわれる家族制度で、これは産めよ増やせ
よといいますか、自分たちの男系血統をひたすら増やし、その血族集団で相互扶助をはかる家族制度で
す。一方、日本のイエというのは、社会の中での営業団体でもありましたから、ある種、世間の力を非
そしてイエの後継ぎについても、
常に気にしながら生きていかなくてはならない機能集団でありました。
中国のようにともかく男系以外はあり得ないというのではなくて、経営能力のある次の後継ぎを獲得す
るためには、長男よりも娘婿の方が確実に経営能力がある男をゲットできますから、むしろイエの当主,
後継者は娘婿にするという家訓をもつ商家というのも少なくなかったわけです。
イエがメンバーの生存を保障する共助集団として存在し、そして世間の力をすごく感じながら生きて
いくという、この日本人のメンタリティーは、私もやはりいまだにある種の文化的遺伝子として、日本
の社会の中にずっと生きているように思います。家族法は、家の自主自律を尊重する明治民法から戦後
は当事者の自主自立へと変わりましたが、家庭内への公的介入がないという点ではイエの伝統を受け継
いで一貫しています。戦後の高度成長期の会社主義にも、イエの伝統を感じますし、法的に制限されて
いなければ自由だという規範感覚が薄いことにも世間の力が強く働くイエ社会の文化的遺伝子があるよ
うに思います。
硬直化した定義付けで、儒教道徳とか、家意識というかたちで、ただのレッテル貼りするのは、これ
は確かにいま岩本先生がおっしゃったように、ある種の思考の怠惰を招くように思います。しかし、も
う一度本当にイエ制度という原点に戻って分析をしてみると、われわれ自身の発想なり、行動のパター
ンというものに対して、日本近世のイエ制度は、相当いまだに影響力を持っているような気がします。
レッテル貼りから遠いものとして、そういうイエ意識が、日本人に対してどういう機能を果たしてい
るのかを分析していけば、分析視角としてまだかなり有効だろうと思います。
辻村みよ子:ありがとうございました。ほかに何かありますか。
088
スティール若希:岩本先生の質問に対して、ちょっと李さんの代わりに答えようと思います。
辻村みよ子:はい、どうぞ。
スティール若希:岩本先生の質問は、すごく大切な質問だと思います。日本研究をやっていらっしゃる大勢
の学者は、オーストラリア、カナダ、アメリカ、ヨーロッパのほうに住んでいらして、自らの業績を英
語で出版している。そして、自分の所属している国はわりと多文化的な社会であり、そのような自国の
社会を前提にして日本研究を進めている。だから、その文献の中には、
(日本が単一民族の国であるこ
とを称揚する日本のナショナリストとは異なるかたちで、
)日本人イコール単一民族という社会を批判
的に受け入れない学者による研究が、結構多くあると思います。
とはいえ、英語で出版されている文献を読んでみると、日本社会において日本人イコール単一民族社
会が神話であることを前提とした、非常に興味深い方向で日本研究は進んできているのです。ある意味
では、この研究の潮流には日本人も大勢いらっしゃいます。外国の学者のみではないのです。特に先ほ
ど紹介されましたカナダのビクトリアで 5 月に開催されたワークショップの中にも、カナダに住んでい
るからこそ、カナダの観点や感覚から、ジェンダー平等も当然に考えているし、多文化共生の多様性と
かを前提にして、日本を研究している報告もありました。一歩下がって日本を研究しているからこそ、
ある意味で将来の日本のシティズンシップ論がどうやって変わっていけばいいかを批判的に検討してい
るのです。それを非常に面白いと思うので、フェミニズム論も加えて、シティズンシップ論について日
本で活躍している学者と一緒に議論することができると、学際的な話し合いになると思います。このよ
うに、一歩下がって見ている日本のことをペーパーも書いていき、日本人論をなるべく静かに批判しよ
うというか、日本の中でもそれを見直しましょうかというきっかけになれば面白いなという考え方です。
辻村みよ子:ありがとうございました。こういった問題は、やはり日本人にも通じるものであって、そうい
った問題を自覚したことの意義は大きいと思います。
ほかにいかがでしょうか。最終的なご発言をいただければ。
山下泰子(文京学院大学名誉教授):
最後になってしまうと大変申しわけありません。山下泰子です。
このグローバル COE と以前に東北大学が中心になってやってこられた 21 世紀 COE との関わりはど
うだったのだろうかと思いました。法と政策ということで非常に法的なレベルを基礎にしながら、前回
の COE はやってこられて、多文化共生になったら、法的な側面がかなり落ちたかなという気がしてい
ます。私は、女性差別撤廃条約の研究者なものですから、ジェンダー平等という話の中に 1 回も条約の
話が出なかったなとそんなことも思ったわけです。このあたりは、辻村先生にお伺いしたいかなと思い
ます。
辻村みよ子:ありがとうございました。21 世紀 COE を継続しつつ、その視座を拡大し、研究対象を拡大し
てグローバル COE を行うという方向でやってまいりました。ですから、山下先生にもご協力いただい
た 21 世紀 COE の中で、法的な問題はだいたい扱いました。そこで女性差別撤廃条約の問題なんかもた
くさん扱ったと思います。今度は、そのジェンダー法学から、ジェンダー社会科学へという拡大をした
わけです。
山下泰子:三段跳びをされたと。
辻村みよ子:そうです。それでジェンダー社会科学という新たな研究領域を確立する。
そこでは、
経済学、法学、
政治学、社会学などの社会科学だけではない、歴史学をはじめとする隣接諸科学をも含めた、人文社会
諸科学の粋を集めたものにするという問題意識です。
その思いから、ジェンダーの視点だけではある程度限界があるということを申しました。もちろんジ
ェンダーの問題をより深めるという課題も重要だったのですが、グローバル COE は 21 世紀 COE を拡
大するということでやってまいりました。決して女性差別撤廃条約などの法律問題を軽視したわけでは
ありません。15 のプロジェクトの中では、植木先生のプロジェクトでしっかり取り組んでこられたと
ころであり、まとめについてもその成果はあったというように考えております。
山下泰子:私の感想を申し上げただけですので、発展的にさまざまな学際的なご発言の中で、ジェンダー平
等が論じられていることに大変感銘を受けたのですが、そんなことが申し上げてみたかっただけです。
ありがとうございました。
質疑討論
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辻村みよ子:ありがとうございました。今後もまた何らかのかたちで続けていくことができればありがたく
思います。もとより、ジェンダー平等と多文化共生研究センターは、今後も残すという方針で、大学も
取り組んでいただけるものと思っております。当センターには現在 8,000 冊の蔵書がございますし、そ
の中には国際法関係、女性差別撤廃条約関係も非常に大きなウエートを占めております。そして、今後
もセンターの全国的な交流をさらに深めていきたいと考えています。また、東北大学に国際高等研究教
育機構というのがあるのですが、それが 21 世紀 COE と、12 のグローバル COE の受け皿になっています。
そのなかでより積極的に学際融合的なシナジー研究所をつくって、研究を続けていくことになっており
ますので、この成果を継続したいと思います。
今後とも、いろんな意味でご協力をお願いすることもあるかと思いますが、よろしくお願いしたいと
思います。
大沢真理(東京大学社会科学研究所教授・連携拠点リーダー)
:
萩原さんがタイムキーピング、代読だけでしたので、自分の言いたいことを言う機会が必要かと思い
ます。
辻村みよ子:何かありますか。
萩原久美子(東京大学社会科学研究所特任助教)
:
ありがとうございます。今日は、本当に勉強させていただきました。いろいろなご報告、コメントの
」について佐藤先生が
中で、私の研究領域でもある「ワーク・ライフ・バランス(work–life balance)
マクロな政策がどのようにミクロな戦略に適用されていくのかという道筋についてご指摘されていまし
た。そのご指摘に現場の分析という点から共感するところが多くありました。マクロな政策あるいはマ
クロな結果のフラクタル(fractale)として、ミクロな私たちの生活や企業経営、組織があるわけでは
ありません。国の男女共同参画、労働政策がフラクタルにミクロなところまで一直線に降りていくわけ
でもありません。マクロな政策というものがどのようなかたちでミクロに落としこまれていくのか、ど
のように受容され、抵抗されるのか。それが、まさにジェンダー視角からの調査の腕の見せ所であるか
と思うからです。
これは私自身の課題として、いつもそれに悩んできたことです。ミクロなものがフラクタルにマクロ
なものに集約されていくわけではない、そのダイナミクスを作り上げるのが、社会的な関係、ジェンダ
ー、エスニシティー(ethnicity)、階級であり、それらが複合的に交差する中でさらに生まれるダイナ
ミクスをとらえる重要性をリマインド(remind)してもらったという気がします。マクロなダイナミ
クスとともに、ミクロな企業経営とか、組織の中でジェンダー関係を一生懸命見る。その意味を改めて
かみしめています。
ありがとうございます。
辻村みよ子:ありがとうございました。では、本日の質疑討論はこれで閉じさせていただきます。
今回、こういうかたちで総括研究会を持てて、本当に良かったと思います。ご協力に感謝申し上げま
す。閉会あいさつは、拠点サブリーダーも務めていらっしゃる、研究科長の水野先生にお願いします。
水野紀子:本日はお暑い中、シンポジウムにご出席くださいまして、どうもありがとうございました。グロ
ーバル COE が始まった 2008 年には、アメリカに端を発したリーマンショックが世界を覆いました。そ
して昨年、2011 年 3 月には、東日本大震災が日本を襲いました。世界はグローバル化して共通する問題
を抱えるとともに、各国のそれぞれのその「国のかたち」が経済恐慌へのリアクションにも自然災害の
リアクションにもそれぞれに異なった様相をもたらすように思います。本日の 4 つのプロジェクトから
のご報告を伺い、おかしな言い方ですが、それとパラレルに見えるように思いました。つまりジェンダ
ー平等と多文化共生という問題は、グローバル化が世界を覆うように、すべての研究分野を通じて共通
した課題をもたらすのですが、それぞれの専門の報告者がその専門領域の伝統的な知恵のかたちを武器
にその課題に迫っているように見えました。他国の国のかたちを知ってはじめて、自分の国のかたちや
個性を認識することができるように、他の専門の報告を伺うと、自分の専門の個性がわかるように思い
ます。本日ご出席の皆様には、共通の感想をおもちだと思いますが、伺っていても知的興奮を覚える非
常に興味深い報告と討議で、まことに実り多い成果であったと思います。報告者の皆様をはじめ、この
場においでくださってご参加いただいた皆様に心よりお礼を申し上げます。
090
仙台という被災地におりますと、あの途方もない災害がのこした爪痕と断絶がどれほど大きなもの
か、折に触れて痛感いたします。震災前の日々と同様に仕事や生活で日常的に接触する人々が、わずか
なタイミングの違いで大切な人が亡くなってしまった喪失感や、育った土地が根こそぎ消えてしまった
痛みを、心のうちにかかえていることが少なくありません。まして復興の目処の立たない被災地で、仕
事や家を失ったまま、先の目処がたたない生活を送る人々は、震災のもたらした断絶に苦しんでいます。
仮設住宅では、ストレス下にある男性たちがアルコールやギャンブルにおぼれ、DV や児童虐待も増え
ています。最後のセッションで扱われたように、被災という場面においても、ジェンダーと多文化共生
の問題は、その姿をくっきりと浮かび上がっています。しかし悲惨と課題がある一方では、震災故に見
えてきた連帯の力も大きなものでした。共同体の連帯もそこでの苦闘を支えていますし、ボランティア
や義援金に見られるように日本全国や世界から寄せられる連帯も大きな支援になっています。私たちの
GCOE の研究も、脆弱性をもち苦しんでいる立場の人々への連帯の意識に支えられてきたように思い
ます。もとより簡単に解決が見つかるような課題ではありませんが、それでも冷静な知力と暖かい人間
的な共感をもって、努力を続けるしかないのでしょう。その努力を続けるなによりの励ましになるのは、
やはり同じような努力を続ける人々との交流であると思います。グローバル COE は、今日のシンポジ
ウムに顕著なように、その貴重な交流と励ましの場となってきました。今までの皆様のご協力に改めて
心より感謝申し上げます。本当にどうもありがとうございました。
(質疑討論 終了)
質疑討論
091
第2 部
[資料編]
̶GCOE2008∼2012 年度の主な活動̶
15 の研究プロジェクトの総括
東京大学連携拠点の成果概要
CNDC と若手メンバー
出版活動一覧
博士論文の紹介
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
主な研究会&ワークショップ等一覧
10
2013.3
15 の研究プロジェクトの総括
ジェンダー平等と多文化共生を融合させつつ、総計 15 の研究プロジェクトを展開しました。
各プロジェクトは、研究会・国際ワークショップを随時開催し、先端的研究を進めるとともに国内外の若
手研究者の育成を図り、最終成果物を叢書等で公刊してきました。
多文化共生社会におけるジェンダー平等
―ジェンダー研究と多文化共生研究の交錯に関する学際的研究序説―
辻村 みよ子 東北大学大学院法学研究科(教授)
■研究活動
このプロジェクトでは、多文化共生社会のジェンダー平等の課題の宝庫であるカナダ・アメリカ・北欧・
フランス等の研究者との共同研究を行い、ジェンダー法学の世界的第一人者フランセス・オルセン教授ら多
数の外国人研究者を招いて 2009 年 8 月に大規模な「国際セミナー2009」を東京と仙台で開催しました。そ
の成果を、Tsujimura & Osawa (eds.), Gender Equality in Multicultural Societies, 2010、辻村・大沢編『ジェ
ンダー平等と多文化共生―複合差別を超えて』
(2010 年、いずれも東北大学出版会刊)で公表しました。さ
らに、フランスにおけるイスラムのスカーフ問題や、ケア労働に関連した日仏会館主催シンポジウム等を後
援・共催し、とくに 2011 年国際女性デー記念シンポジウム「ケア、国際移民、ジェンダー」では大きな成
果を得ました。
また、
2008 年 9 月以降、コロンビア大学・オタワ大学・ケベック大学等の訪問・講演会開催等を積極的に行い、
2011 年には萩セミナーにシドニー大学のアーヴィング教授らを招いて、国際ワークショップ“Gender and
Constitutional Citizenship”を開催しました。同年 3.11 の東日本大震災と原発事故をうけて、日本学術会議「「災
、ジェンダー法学会プレ企画「災害とジェンダー」等も共催し、
害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジウム」
成果を東京大学社会科学研究所連携拠点シリーズ 4 号として刊行しました。
さらに、本 GCOE の目的の一つである「ジェンダー社会科学」の確立を目指して岩波書店からシリーズ『ジ
ェンダー社会科学の可能性』(辻村・大沢編、全 4 巻、2011 年)を刊行し、2012 年 3 月に約 200 名の参加を
得て合評会を開催して成果を上記連携拠点シリーズ 5 号として纏めました。主催・共催・後援したシンポジ
ウム等の回数は 51 回に及び、研究成果も、プロジェクト研究成果シリーズ 2 冊、岩波シリーズ 4 冊、連携拠
点シリーズ 2 冊のほか、GEMC ジャーナルの寄稿論文等に示すことができ、当初の目標を達成することがで
きました。
094
アジアのジェンダー平等政策と課題
辻村 みよ子 東北大学大学院法学研究科(教授)
■研究活動
このプロジェクトでは、アジア諸国のジェンダー平等政策と課題について、内外の研究者との共同研究を
通じて、欧米先進国や日本の政策・理論との比較という視座も含めた研究成果を得ることを目的としました。
そのため、2009 年 5 月にフィンランド大学で開催された国際シンポジウム“Gendering Asia Conference”や、
」シンポジウム
同年 10 月のドイツ・ヒルデスハイム大学主催の「アジアにおける女性と政治(WPA2009)
で報告等を行ってアジアの研究者とのネットワークを諮り、同年 10 月の萩セミナーの際に、中国社会科学
院、韓国梨花女子大学校、インディラ・ガンジー国立公開大学等の中心的研究者を招聘して、アジアのジェ
ンダー平等政策についての比較研究を行いました。さらに、2010 年 6 月と 10 月に、インドやアラブ諸国の
ジェンダー平等政策をテーマとして国際ワークショップを開催し、これらの成果を纏めて、2011 年 3 月に M.
Tsujimura and J.F. Steele (eds.), Gender Equality in Asia: Policies and Political Participation (Tohoku University Press) を出版し、韓国、中国、インド、フィリピン、スリランカなどのジェンダー平等政策の展開につ
いて明らかにしました。これらについて殆ど情報のない日本や世界各国にとって、この共著は大変貴重な成
果であり、前掲書を元にした辻村&スティール編『アジアにおけるジェンダー平等』を、2012 年 3 月末に
東北大学出版会から刊行しました。
こうして、本プロジェクトでは、研究成果シリーズとして 2 冊を刊行したほか、19 回に及ぶシンポジウム、
研究会等の主催・共催等を通して多くのアジア諸国の研究者・研究センターとのネットワークを形成するこ
とができました。また若手研究者育成の成果として、本 PT 所属の GCOE フェロー(韓国人留学生)が母国
の憲法裁判所研究員として就職し、その後の研究交流に貢献していることも特筆すべきことがらと言えます。
人間の安全保障と人身取引問題
―男女共同参画と多文化共生の試金石―
大沢 真理 東京大学社会科学研究所(教授)
■研究活動
人身取引問題の解決の糸口を探る――その目的に向かって、初年度からタイ・フィリピンなど送り出し・
中継国で被害当事者支援を行うNGOとの連携を強め、2010 年には、日本で人身取引されて出身地に帰還し
た女性たちへのインタビュー調査を実施しました。同時に、人身取引の需要削減への取り組みについてイギ
リス、スウェーデン、オランダ、ドイツで現地調査も行いました。さらにハーグ条約に関する報告書(『国
)の抜粋翻訳を行い、広く一般へ
際的な子の奪取の民事面に関する条約とドメスティック・バイオレンス』
の情報発信に努めてきました。またプロジェクト・メンバーによる研究成果もまとめられ、
①大沢真理編『ジ
ェンダー社会科学の可能性 第四巻 公正なグローバル・コミュニティを』
(岩波書店)②高松香奈『政府
開発援助政策と人間の安全保障』(日本評論社)が刊行されています。さらに 2011 年 3 月におきた東日本大
震災は、プロジェクト・メンバーにとってジェンダーと人間の安全保障の視点から「災害」にアプローチす
「災害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジ
る重要性を改めて認識する契機となりました。2011 年 6 月の「
ウム」の開催をはじめ、公開セミナー、研究会を数次にわたって行い、最終年度では市民との連携という新
たな段階へと踏み出すことができました。被災地の NPO、農漁村の女性たちを招き、12 月に開催した公開
シンポジウムは、被災地の「復興」に潜むジェンダー不平等な資源配分の実態や多様性を尊重する市民の活
動に学ぶとともに、ジェンダーと多様性の保障が災害へのレジリエンスを高めるという次なる研究課題発見
の機会となりました。
15 の研究プロジェクトの総括
095
10
2013.3
男女共同参画・多文化共生社会に求められる「リーダーシップ」教育の研究
―中・高等教育における男女別学の国際比較分析に基づいて―
生田 久美子 東北大学名誉教授、田園調布学園大学(副学長)、子ども未来学部(教授)
■研究活動
2008 年度に 3 年間の計画で開始した本プロジェクトは、国際比較調査、学内研究会、国外での学会発表、
成果報告書刊行という流れの中で、男女別学・共学問題が教育における文化間の相違や特徴を検討する視点
として有効である点、さらには、教育の実践や政策にとって実効性のある男女別学・共学議論のためには、
ジェンダーの問題のみならず教育そのものの効果を原理的に問う議論が不可欠であることを示しました。
2009 年 3 月にニューヨークにおける女子高等学校を対象とする訪問調査を実施し、同年 10 月の萩セミナ
ーではジェーン・ローランド・マーティン、スーザン・レアード両氏をアメリカより招聘してワークショッ
男女別学問題を哲学的かつ歴史的観点から論じました。
プを実施し、水原克敏氏、坂本辰朗氏の報告とともに、
宮城県内の高等学校を中心にした日本国内の男女共学化の動向についてはアンケート調査を交えた調査を継
続的に進め、その成果の一部は 11 月の東北大学男女共同参画シンポジウムでの発表にも活かされました。
2010 年度の活動は成果報告が主となりました。4 月の桜セミナー、10 月の萩セミナーで調査結果の報告
をし、7 月にはアメリカ・ニューメキシコ大学において開催された The Society for Educating Women におい
てラウンド・テーブルを実施して成果を発表しました。さらに、成果の一部を 2011 年 1 月にイタリア・ト
リノ大学で開催された国際セミナーでも発表しました。
本プロジェクトの成果の全体をまとめた成果報告書『男女共学・別学を問い直す―新しい議論のステージ
へ』を 2011 年 3 月に東洋館出版から刊行しました。
被害者と加害者が共生する社会
―「刑事法とジェンダー」研究からのさらなる発展―
水野 紀子 東北大学大学院法学研究科(教授)
■研究活動
このプロジェクトでは、研究会を開催したり、調査を実施したりして、犯罪被害者の権利と救済、加害者
の更生・再犯防止等について議論を深めていきました。プロジェクトを進めるにあたっては、国内における
調査・研究にとどまらず、海外の研究者との交流を通じて国際連携も図りました。
2008 年度は大学内外の研究者、実務家を招聘して研究会を数多く開催しました。2009 年度は官民協働刑
務所に関する調査を中心に活動を実施しました。2010 年度は 2009 年度に実施した調査の内容をまとめ、社
会心理学会、犯罪社会学会等でワークショップを立ち上げ、報告を行いました。8 月にはアメリカ、インド、
インドネシア、オーストラリア、韓国の被害者学研究者を招聘し、各国の被害者政策に関する国際セミナー
(代表 を開催しました(科研費基盤(B)「犯罪の被害にあった女性・児童への対策に関する総合的研究」
矢野恵美)共催)。2011 年度は調査研究の成果について複数の学会で報告し、意見交換をし、議論を深めま
した。また、セクシャル・ハラスメントの被害者救済、加害者の刑事責任を考えるセミナーを沖縄で開催し
ました。2012 年度は犯罪社会学会のテーマセッションにおいて研究成果の一部を報告しました。また、ス
ウェーデンから矯正の実務家を招聘し、国内外の実務と研究の協働となる国際セミナーを開催しました。
096
多文化共生とジェンダーをめぐる国際法規範の国内的履行と
国際紛争の平和的解決メカニズムの実証的研究
植木 俊哉 東北大学理事(大学院法学研究科・併任教授)
■研究活動
本プロジェクトの研究成果を総括する著書として、
2012 年 3 月に植木俊哉編『グローバル化時代の国際法』
「グローバル化」と
(信山社)を刊行しました。この著書には、本研究組織のメンバー6 名が論文を寄稿し、
いう現象から発生する現代的な諸課題に関して、
それぞれの研究分野での新たな学問的知見を提示しました。
また、2011 年 3 月に発生した東日本大震災に関連する国際法規範の国内的履行に関して、プロジェクトリ
ーダーは 2011 年 7 月に論文「東日本大震災と福島原発事故をめぐる国際法上の問題点」を発表し、2011 年
11 月に中国・大連で開催された第 5 回日中海洋法ワークショップでは、“The Earthquake, Tsunami, Nuclear
Accident and the Law of the Sea”と題する研究報告を行いました。また、2012 年 5 月に京都で開催された
世界法学会において「自然災害と国際法の理論」と題する研究発表を行い、2012 年 9 月には米国のバーク
レーで開催された第 4 回 4 学会国際会議(日、米、加、豪・NZ)合同研究大会において“Natural Disasters
and the Theory of International Law”と題する報告を行いました。また、2012 年にブルガリアのソフィアで
「国際組織の責任」に関するスタディ・グループ会合に参
開催された第 75 回国際法協会(ILA)総会では、
加し、その最終報告書の採択を行いました。
グローバリゼーションとナショナリズム
大西 仁 東北大学大学院法学研究科(教授)
■研究活動
本研究プロジェクトでは、日本、中国、韓国、英国、フランス、スウェーデンの研究者による国際共同研
究を展開していきました。
すなわち、調査・研究を各国で展開すると共に、随時日本の国内外で国際ワークショップを開いて、それ
ぞれの成果を基に共通理解を深めていく計画であり、その際、積極的にポスドクの若手研究者や大学院博士
課程の学生の参加も促すことによって、若手人材の育成にも力を尽くしたいと考えました。
その一環として、2009 年萩セミナーでは、国際ワークショップ“Political Process of Historical Memories
in East Asia”を開催し、2010 年 2 月に英国シェフィールド大学で国際シンポジウムを共催し、2011 年 10 月
の萩セミナーで、池上雅子氏(ストックホルム大学)と南基正氏(ソウル大学校)を報告者に招いて、「北
東アジアにおける国際政治の変容」をテーマに、国際ワークショップを開催しました。2012 年 11 月に、延
世大学校と共同で、「東アジアのナショナリズムと平和」をテーマに、最後の国際ワークショップを開催し
ました(詳細は 169 頁をご覧ください)。
若手研究者の研究成果として、2010 年春に、金淑賢氏が『中韓国交正常化と東アジア国際政治の変容』(明
石書店)を、紀萌氏が Phraseology in Corpus-Based Translation Studies(Peter Lang)を、それぞれ出版し
ました。また、東北大学国際高等研究教育機構、同大学文学研究科 GCOE とも協力して、若手研究者の共
同研究の成果を一冊にまとめた『移動の時代を生きる―人・権力・コミュニティ―』
(東信堂)を 2012 年 3
月に出版しました。
15 の研究プロジェクトの総括
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多文化共生政策の国際比較
戸澤 英典 東北大学大学院法学研究科(教授)
■研究活動
2008 年 12 月に東北地方の実務家とも連携しながら本プロジェクトを立ち上げ、ヒアリング調査や研究会
を重ねていました。東北地方の多文化共生に関するネットワークも徐々にできつつあり、2010 年度以降の
本格的な調査に向けて、他地域での類似プロジェクトも参考に、調査内容・方法の検討を行いました。
国際比較の研究対象としては、特に、多文化共生社会への政策的な対応を急速に進めている韓国を重点的
に取り上げ、2009 年 2 月には韓国を訪問し、韓国政府や関係者へのヒアリング調査を実施しました。日韓
において毎年交互に国際セミナーを行い、経験の共有と政策論議を積み重ねてきました。また、2010 年以降、
他の重点的な比較対象であるヨーロッパ(ドイツ、スウェーデン)
、カナダ・アメリカ、オーストラリア・
ニュージーランドなど、多文化共生に異なったアプローチで取り組んでいる国々や、移民送り出し国である
フィリピン、ベトナム、中国等に順次メンバーを派遣し、海外の研究協力者とも連携しながら現地調査を進
めました。
研究成果は、オンライン・フォーラムにおいて随時公表する予定です。
近代日本・戦後日本の対外態度
―日米関係を中心に―
牧原 出 東北大学大学院法学研究科(教授)
■研究活動
2008 年度は、打ち合わせを兼ねた研究会を開催し、今後の研究の前提となるオーラル・ヒストリー・プ
ロジェクトの方向性について、具体的な人選を進めました。2009 年には、オーラル・ヒストリー・プロジ
ェクトの方法について研究会をおこない、戦後の日本外交に重要な役割を果たしたある女性へのオーラル・
ヒストリー・プロジェクトを行いました。また、戦後日本の行政の国際化を果たした女性官僚の研究に着手
しました。2010 年も引き続き研究を進めました。
、
『条約改正史―法権回
それにより、『行政改革と調整のシステム』
(牧原出、東京大学出版会、2009 年)
、
『戦後行政の構造とディレンマ―予防接種
復への展望とナショナリズム』(五百旗頭薫、有斐閣、2010 年)
行政の変遷』(手塚洋輔、藤原書店、2010 年)など、数多くの成果を出すことができました。これらの成果
は各メンバーに共有されており、同プロジェクトは今後の研究の礎となりました。
098
グローバル時代の「公共性」再考
―地域間格差を手がかりに―
稲葉 馨 東北大学大学院法学研究科(教授)
■研究活動
2008 年 10 月に「グローバリゼーションとナショナリズム」のプロジェクトにあわせて、中国清華大学及
び東北大学でミニ国際ワークショップを開催し、
今後のプロジェクトの進め方について討論しました。また、
2008 年 11 月には、フランスの研究者と日本の産業クラスター分析について意見交換を行いました。2009 年
および 2010 年には、日本の地域間格差について、研究会を多数開催し、かつ 2010 年 2 月には、フランスと
ベルギーの研究者・実務家等と国際シンポジウムを開催しました。
なお、Factbook 2009 の 44 ページで紹介した、2009 年度の清華大学での国際ワークショップ及び 2010 年
2 月の日仏会館での国際シンポジウムは、それぞれ、清華大学人文社会科学院及びフランス国立現代日本研
究センターと連携して実施したものです。ここに改めて両機関のご協力に感謝します。
研究成果につきましては、プロジェクトの各メンバーがそれぞれに発展させてきました。その一例として、
、
『都市法入
『行政法 第 2 版(LEGAL QUEST)』(稲葉馨・人見剛・村上裕章・前田雅子、有斐閣、2010 年)
『防災の法と仕組み(シリーズ・防災を考える)
』
(生田長人、東信堂、
門講義』(生田長人、信山社、2010 年)、
2010 年)、『現代政治学 第 4 版(有斐閣アルマ)』(加茂利男・大西仁・石田徹・伊藤恭彦、有斐閣、2012 年)、
『行政改革と調整のシステム』(牧原出、東京大学出版会、2009 年)が挙げられます。
少子高齢化をめぐる国家と私的領域
水野 紀子 東北大学大学院法学研究科(教授)
■研究活動
GCOE が開始して以来、毎年、平均して約 10 回の研究会を開催してきました。これらの研究会における
議論は、プロジェクトメンバーの活字業績となって 5 年間を通じて多くの成果を生み出しました。学界水準
を高めた論文は枚挙にいとまがなく、書籍も森田果『金融取引における情報と法』
(商事法務)
、
滝澤紗矢子『競
』
(有斐閣)などの画期的な著作を
争機会の確保をめぐる法構造』(有斐閣)、水町勇一郎『労働法(第 3 版)
公表しました。また研究活動ばかりではなく、児童虐待対応の親権法改正をはじめとして、具体的な立法や
行政ガイドラインの策定などにおいても、メンバーの多くは、GCOE の研究成果を活かして実践的な活動
をしてきました。最終年度には、有斐閣から『社会法制・家族法制における国家の介入』と題して、プロジ
ェクトメンバーが執筆した成果本を出版しました。
15 の研究プロジェクトの総括
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「法の経済分析(Law and Economics)」の手法に基づく、
多文化交流、男女共同参画の政策効果の分析
吉田 浩 東北大学大学院経済学研究科(教授)
■研究活動
2010 年度は男女共同参画に焦点を当てて研究を行い、「都道府県別男女平等度指標」としてノルウェー統
計局の男女平等年表の作成方法に基づき、現在の日本の男女平等度について、社会、経済、教育、人口、政
治参加等の指標を用いて、地域別にその状況を定量的に明らかにした。この研究は男女共同参画社会の推進
を通じて、1980 年代以降いったん下落した出生率という社会問題を解決したノルウェーの効果と、男女共
同参画の問題に定量的にアプローチするという本研究全体の問題意識を提示するものであり、多くの新聞、
メディアに取り上げられた。
続く 2011 年度は多文化共生の面に焦点をあてて研究を行った。2011 年度の研究は、高齢者と若年者とい
う異なる世代が共生する現在の日本において高齢者福祉(Well-Being)の現況を把握するという観点から、
高齢者の心身の健康、経済生活、社会生活、個人生活、安全・安心 5 つの分野 15 種類の統計を用いて高齢
者福祉指数を試算し、日本の全都道府県別の計算結果にもとづくスコアを求めた。多文化共生における意義
としては、貧困者と富裕者、男性と女性といった対立的または入れ替わりのない関係の間での指数と異なり、
すべての国民はやがて高齢者となることを考慮すれば、我々は現在の高齢者と共に将来の高齢者(自分)と
も共生していく必要があり、その意味でもこの指数を政策的に有効に活用することが期待できた。
2012 年度は、男女別にアンケートを行った幸福度調査の分析を通じて、所得等の経済厚生をふまえてよ
り広い幸福度という厚生指標に分析を拡大し、さらに国際比較の観点を導入して、分析対象の空間的広がり
を拡大した。さらに、個人から企業、また地域社会へと分析対象をシフトし、はじめに大企業における女性
活用の戦略的事例をケースに用いて、企業内での意思決定とその効果を時系列的に事実を収集し分析してい
る。同時に歴史的に大きな曲がり角にあった伝統地場産業において、女性のセンスを導入することで新たな
産業としての発展の道を見つけ出したケースを、
過去から現在にかけてを調査することで明らかにしている。
加えて、今後の高齢化による要介護者の急増という社会問題を、老後の介護の受け手としての女性、家庭内
介護の供給者としての女性そして介護保険による介護サービスの供給事業に従事する労働者としての女性の
問題として捉え、現在から将来までを展望して分析を行っている。以上を踏まえ、本プロジェクトの研究成
果のまとめとして、河北新報出版センターより『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦
略』を出版した。
100
少子高齢化社会の家族変動:ミクロデータ分析によるアプローチ
田中 重人 東北大学大学院文学研究科(准教授)
■研究活動
2008-2009 年には、家族変動・家族政策・計量分析に関する分析を収集し、分析課題を絞り込むととも
に、既存データを利用しての予備的分析をおこないました。2009 年 8 月には、他の 2 プロジェクトと合同
で国際セミナー“Gender Equality in Multicultural Societies: Gender, Diversity and Conviviality in the Age of
Globalization”を開催しました。最新の「第 3 回全国家族調査」(NFRJ08)データが利用可能となった 2010
年から本格的な計量分析を開始。2010 年 10 月には「萩セミナー」の一環として、ワークショップ「計量分
析からみる家族変動 : 近年の日本社会における格差・意識・ライフコース」を開催。2011 年以降も、メーリ
ングリストや研究会での討議を重ねながらデータ分析を進めてきました。具体的な分析課題の設定はメンバ
ーの自主性にゆだねられており、現代日本における直系家族制度のありかた、アンペイド・ワークの構造、
雇用の女性化とワークライフ・バランス、家族に関する意識と規範、子どもの教育と家族、経済的不平等と
結婚・離婚など、現代日本社会における家族変動の重要な側面について、大規模データのメリットを生かし
た新しい知見を得るとともに、分析結果から導かれる政策的含意や家族法への示唆について、過去の家族研
究の蓄積を利用して多角的な検討をおこなってきました。分析の成果は、これまでにも学会大会等での発表
や雑誌論文として発表してきています。2013 年 3 月には、これらの研究成果を英文書籍としてまとめ、出
版しました。
生活保障システムの比較ジェンダー分析
―グローバル知識経済と社会的排除の諸相―
大沢 真理 東京大学社会科学研究所(教授)
■研究活動
5 年にわたる研究活動の前半は、国際的な研究者・学術ネットワーク(韓国・ソウル大学校日本研究所お
よび釜山大学、ドイツ・ブレーメン大学およびデュースブルグ大学、ハンザ先端研究所、イギリス・シェフ
ィールド大学、アメリカ・シラキューズ大学)を基盤に、国内外で集中研究会、公開シンポジウムを積みか
さねてきました。さらにイタリア、イギリスで生活保障システムの重要なアクターである社会的経済に関
する現地調査を行いました。これら知見をもとに、後半の研究活動では国内での実態に踏み込み、ふくい
県民生協と関連組織、NPO、女性団体などのヒアリング調査を実施しました。これらの活動成果の一部は、
GCOE 連携拠点リサーチペーパーシリーズとなっているほか、2011 年度にはその集大成として辻村みよ子・
』
(岩波書店)
、さらに各メンバーの書籍として①大沢
大沢真理編『ジェンダー社会科学の可能性(全 4 巻)
真理編『社会的経済が拓く未来―危機の時代に包摂する社会を求めて―』
(ミネルヴァ書房)
、②米澤旦『労
働統合型社会的企業の可能性―障害者就労における社会的包摂へのアプローチ』
(ミネルヴァ書房)
、③エス
(岩波書店)が刊行さ
ピン=アンデルセン著、大沢真理 監訳『平等と効率の福祉革命―新しい女性の役割』
れています。最終年度は 3.11 以後の日本の生活保障のありかたへと問題関心を発展させ、カナダのダイバ
ーシティの視点を活かした防災・復興を考察するために、6 月、10 月の二度にわたってカナダの研究者とセ
ミナーを開催しました。その成果をプレリミナリーレポートとして日本・カナダで発表しました。12 月に
は被災地の NPO、行政、女性たちを招いての公開シンポジウム「復興元年を総括する――持続可能な社会
の条件」を開催しました。
15 の研究プロジェクトの総括
101
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2013.3
企業の人材活用におけるワーク・ライフ・バランス(WLB)支援と
男女雇用機会均等施策の効果に関する実証的研究
佐藤 博樹 東京大学大学院情報学環(教授)
■研究活動
2008 年度中に参加メンバーが各自分析に取り上げるデータセットを確定し、2009 年度からは具体的な分
析に入りました。2009 年度には、総務省統計局の「就業構造基本調査」の再分析を行い、他のデータ分析
と合わせて、2010 年度に中間的な研究成果を取りまとめました。企業における WLB 支援の現状や課題の理
解に関しては、東京大学社会科学研究所が民間企業と共同で実施しているワーク・ライフ・バランス推進・
研究プロジェクトと密接な情報交換をしております。ワーク・ライフ・バランス推進・研究プロジェクトの
成果報告会(2008 年度、2009 年度、2010 年度、2011 年度)を本プロジェクトと共催で行いました。
(2012 年 64 巻・
最終の研究成果は、
「特集「ワーク・ライフ・バランス」と「男女雇用均等」
」
『社会科学研究』
第 1 号)として刊行しました。その内容は、下記のようになります。
第 1 に、次世代育成支援対策推進法や育児介護休業法は、女性の就業継続に貢献しているものの、保育サ
ービスの充実や、小規模企業で働く女性への両立支援制度に関する情報提供などの課題があります。第 2 に、
女性の就業継続のためには、両立支援制度の充実だけでなく、通常のフルタイム勤務の働き方の改革(つま
り男性の働き方の見直し)と男性の家事や育児への参加促進が不可欠となります。第 3 に、女性の活躍の場
の拡大のためには、就業継続支援だけでなく、女性が仕事にやりがいを持て、昇進機会が開かれるなど、雇
用機会の均等が必要となります。そのためには、管理職キャリアだけでなく専門職キャリアを用意し複線型
の昇進ルールとしたり、管理職による女性部下に対するマネジメントの改革が求められます。第 4 に、国際
比較によると、民間セクターよりも公的セクターの方が、女性が就業継続しやすいものの、雇用機会の質を
ストレスや仕事の自律性で測定すると、マイナスの面も少なくありません。就業継続だけでなく、仕事の質
の改善が課題となります。
102
東京大学連携拠点の成果概要
社会科学研究所との連携から生まれた研究活動、教育活動
社会科学のディシプリンを横断する複合的アプローチ、国内外に広がる研究ネットワーク、社会とともに
ある調査研究活動。これらを特徴とする東京大学社会科学研究所(社研)との連携によって、この 5 年間、
ユニークな研究活動、教育活動が展開されました。
①全所的プロジェクトをはじめとする学内外の研究プロジェクトとの連携
社研全所的プロジェクト研究「ガバナンスを問い直す」では大規模アンケート調査「福井の希望と社会生
活調査」(N = 7008)を実施しており、そのデータの分析や報告にあたって、全所的プロジェクトとグロー
バル COE(GCOE)連携拠点との間での研究交流が活発に行われました。GCOE のプロジェクト・テーマ
である「生活保障システム」「社会的排除」に着目した二次分析、福井県在住女性や NPO、社会的企業への
インタビュー調査は全所的プロジェクトとの合同報告会を通じて現地メディアでも紹介されました。
プロジェクト間の交流は社研外部にも広がりました。2012 年 1 月には、東京大学大学院経済学研究科に
おける学術創生研究 READ(経済と障害の研究)プロジェクトと GCOE 連携拠点の共催で公開シンポジウ
ム「新著『ケアの社会学』を手がかりに―上野千鶴子とケアの社会科学をきわめる」を開催しています。「だ
れもが人格と個性を尊重され、フルに参加できる社会を実現する条件は何か」という本 GCOE の研究課題と、
READ の研究課題「すべての人にとってより住みやすい社会とは」とが共鳴しあいながら、社会科学のデ
ィシプリンを横断する新領域の可能性を議論しました。
②社研 GCOE セミナーの開催
社研 GCOE セミナーでは、社研の研究スタッフをはじめ、社研の客員研究員などをお招きし、最前線の
。報告・討論とも余裕のある時間設定とし、国
研究成果を報告していただきました(100-101 頁の表参照)
内外、学内外の研究交流の場となってきました。
③市民との協働、連携事業の活発化
GCOE のプロジェクト「企業の人材活用における WLB 支援と男女雇用機会均等施策の効果に関する実証
的研究」では、社研が民間企業と共同で実施している「ワーク・ライフ・バランス推進・研究プロジェクト」
との間で密接な情報交換を行ってきました。その連携から研究・調査―政策―実践の好循環が生まれ、民間
との関係強化、連携事業の活発化へとつながりました。
また、3.11 東日本大震災以降、GCOE 連携拠点では男女共同参画の視点が活かされた復興をめざし、
NPO や被災地との連携を強めてきました。社研全所的プロジェクトでも「災害と復興のガバナンス」を新
たな課題として設定しており、2012 年 12 月には GCOE 連携拠点と全所的プロジェクトが特別連続セミナー
「復興元年を総括する」を共催。被災地で活動する NPO や女性を招き、市民との協働・連携をさらに強化す
ることができました。
東京大学連携拠点の成果概要
103
10
2013.3
④社研ネットワークを通じた成果の報告と還元
以上の連携拠点での研究活動やセミナー、シンポジウムでの成果は、東京大学社会科学研究所から、
GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研究所連携拠点シリーズ(および ISS リサ
ーチシリーズ)として発刊され、社研の研究ネットワークを通じて広く社会に還元されました。発刊された
シリーズは以下です(2012 年末現在)。
◆大沢真理・日仏女性研究学会・日仏会館研究センター編『国際女性デー・日仏シンポジウム 女性の貧困
化に社会はどう立ち向かうのか―グローバル危機の中での日仏比較』
(2010 年)
(上野千鶴子・
◆大沢真理編『公開シンポジウム「ニーズ中心の福祉社会へ:当事者主権の次世代福祉戦略」
中西正司編)を読み解く』(2010 年)
◆大沢真理・韓栄恵共編『国際共同シンポジウム 日韓社会における貧困・不平等・社会政策:ジェンダー
の視点からの比較』(2010 年)
「災害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジ
◆大沢真理・堂本暁子・山地久美子編、皆川満寿美編集補佐『
ウム―災害・復興に男女共同参画の視点を』
(2011 年)
◆大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千恵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』(2012 年)
⑤若手研究者の育成・研究
若手研究者育成を目的に、ポスドクや博士課程学生を対象とする「特別研究奨励費」制度を創設し、
2008 年度から 2012 年度まで延べ約 40 人が、年度末に開催される報告会で成果を披露してきました。社研に
おける国際交流の実績を基盤に、AIT からの留学生との交流、英シェフィールド大学、独デュースブルグ大
学での若手研究者ワークショップを開催し、海外での研究報告や研究交流を経験する機会を積極的に設ける
ことができました。
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
104
2008 年 11 月 27 日
東京大学赤門総合研究棟
センター会議室
“Welfare and Capitalism in Postwar Japan”
報告者:Margarita Estévez–Abe(Former Paul Sack Associate
Professor of Political Economy, Department of Government, Harvard University)
2009 年 3 月 24 日
「開発援助のジェンダー化―マクロレベルに留意して」 報告者:北中真人氏(JICA 企画部参事役)
田中由美子氏(JICA 国際協力専門員)
2009 年 5 月 22 日
「生活保障システムというアプローチ――『男女共同参画と多文
化共生』研究の概念枠組みに向けて」
報告者:大沢真理(東京大学社会科学研究所教授)
社会科学研究所 GCOE オ
フィス
社会科学研究所 GCOE オ
フィス
“Conflict and Disaster: Some Human Security Issues for Women
in Sri Lanka”
社会科学研究所第一会議
報告者:Dr. Sepali Kottegoda(Former Vice Chairperson of Asia
室
s Watch(APWW))
Pacific Women’
2009 年 2 月 5 日
2009 年 9 月 30 日
東京大学社会科学研究所
ミーティングルームB
「我が国の児童虐待防止対策の課題について」 報告者:三橋真紀(社会問題研究家、元厚生労働省課長補佐)
第6回
(社研全所的プロジェ
クト研究「生活保障
セクション」共催)
第7回
第8回
第9回
公開シンポジウム
( 東 京 大 学 READ 共
催)
第 10 回
第 11 回
第 12 回
第 13 回
公開シンポジウム
“Labour Market Flexibility and Worker Security in Advanced Political Economies: Insights from the Italian Case”
東京大学経済学研究科学
報告者:Stefano Sacchi, Assistant Professor of Political Science,
術交流棟(小島ホール)
2009 年 11 月 24 日
University of Milan
2011 年 3 月 1 日
Frontiers of Gender Studies 東北大学東京分室サピア (若手研究者による報告:高松香奈、李善姫、中村文子、不破麻
タワー
紀子、石黒久仁子)
2011 年 7 月 14 日
「災害・復興とジェンダー」
東京大学赤門総合研究棟 報告者:池田恵子(静岡大学教育学部教授)、山地久美子(関西
センター会議室
学院大学災害復興制度研究所研究員)
2011 年 10 月 27 日
東京大学赤門総合研究棟
センター会議室
「ポーランドにおけるジェンダー・ポリティクスの新しい動向」
報告者:小森田秋夫(前社研所長、現神奈川大学教授)
「『ケアの社会学』をてがかりに――上野千鶴子とケアの社会学
をきわめる」
2012 年 1 月 16 日
、松
東京大学経済学研究棟一 報告者:小山康子(社会福祉法人いきいき福祉会専務理事)
井彰彦(東京大学大学院経済学研究科教授)、リプライ:
番教室
上野千鶴子(東京大学名誉教授)
2012 年 1 月 19 日
「タンザニアにおけるジェンダーに対する灌漑稲作導入インパク
東京大学赤門総合研究棟 ト――予備調査結果を中心に」
センター会議室
報告者:田中由美子(国際協力機構・国際協力専門員)
2012 年 3 月 19 日
伊藤国際学術研究センタ
ー・特別会議室
「ドイツの児童手当による所得保障と政府間費用負担問題」
報告者:嶋田崇治(慶応大学大学院経済学研究科後期博士課程)
「ジェンダーがひらく労働の新しい世界――ジェンダー分析はど
こまで力を付けたのか」
2012 年 7 月 2 日
コメンテーター:武田宏子(東京大学特任准教授)、駒川智子(北
東京大学赤門総合研究棟
海道大学助教)、リプライ:石黒久仁子(文教
センター会議室
大学助教)、萩原久美子(東京大学 GCOE 特
任助教)
2012 年 9 月 11 日
東京大学社会科学研究所
第一会議室
「周産期医療をめぐるポリティクス――日本ではなぜ無痛分娩が
普及しなかったのか」
報告者:大西香世、コメント:中山まき子(同志社女子大学教授)
2012 年 10 月 22 日
東京大学 小柴ホール
「ケアの倫理をグローバル社会へ―上野千鶴子・宇野重規と、岡
野八代著『フェミニズムの政治学』を読み解く」
コメンテーター:上野千鶴子(東京大学名誉教授)、宇野重規(東
京大学大学社会科研究所教授)、リプライ:岡
野八代(同志社大学大学院グローバル・スタ
ディーズ研究科教授)
第 14 回
特別連続セミナー
(社研全所的プロジェ
クト共催)
2012 年 11 月 7 日
「非正規労働者の均等待遇をめぐる理論と政策――労働法学の視
東京大学赤門総合研究棟 点から」
センター会議室
報告者:水町勇一郎(東京大学社会科学研究所教授)
2012 年 12 月 8・9 日
『復興元年を総括する――持続可能な社会の条件』
東京大学経済学研究棟一 (①東北の女性はなぜ立ち上がったのか――ジェンダーと多様性
番教室
②食・雇用・コミュニティ――生存と持続可能性へのチャレンジ)
東京大学連携拠点の成果概要
105
10
2013.3
CNDC と若手メンバー
本 GCOE プログラムは、若手人材の育成を最重要目標と位置付けていました。若手人材育成の主なプロ
、GCOE フェロー、RA の 3 つがありま
グラムとしては、クロスナショナル・ドクトラル・コース(CNDC)
した。
クロスナショナル・ドクトラル・コース(CNDC)
■クロスナショナル・ドクトラル・コースとは
東北大学大学院法学研究科と海外パートナー機関が共同で学生の指導に当たる博士課程です。
CNDC に登録した学生は、3 年間の博士課程の中の少なくとも 1 年間は国外の機関で履修し、原則として
3 年間の課程を経て、東北大学と海外パートナー機関の双方に博士論文(原則として英語)を提出して、両
機関から博士の学位を取得すること(ダブルディグリー取得)を目指します〈図1参照〉
。CNDC では、学
生が全課程を英語で履修することも可能なようにカリキュラムが組まれています。
■学生に対する指導
CNDC のひとりひとりの学生に対して、東北大学大学院法学研究科、海外パートナー機関のそれぞれか
ら 1 名ずつ計 2 名の指導教員(supervisors)が、緊密な連携を取りながら、研究指導・論文指導を行います。
又、ポスドクの若手研究者から選抜された特任フェローによる定期的な個人指導(テュートリアル)も行わ
れます。
■学生に対する支援
CNDC に登録する学生は、国外で履修する間、安定した条件の下で研究に専念できるよう、RA として採
用されます。
2012 年 3 月にダブルディグリーを取得し
たシェフィールド大学の CNDC 学生が、日
欧産業協力センターのニューズレター EUJAPAN NEWS vol.10 p.15 に掲載されま
した。
(紙面下方省略)
106
■海外パートナー機関
現在、〈図 2〉にある 10 の海外パートナー機関が東北大学と共同して CNDC を実施しています。今後、な
おいくつかの機関が海外パートナー機関として加わることが予定されています。
■実施状況と今後の発展
2009 年度に、シェフィールド大学(英国)、エコル・ノルマル・シュペリュール・リヨン校(ENS-Lyon、
フランス)、リヨン第 2 大学(フランス)、清華大学(中国)の博士課程の学生計 9 人を、2010 年度に、シェ
フィールド大学、リヨン第 2 大学、清華大学、中国社会科学院(中国)の博士課程の学生計 10 人を、2011
年度に、リヨン第 2 大学、清華大学、中国社会科学院、延世大学校(韓国)の博士課程の学生計 10 人を、
2012 年度に、シェフィールド大学、清華大学、中国社会科学院の博士課程の学生計 5 人を、東北大学大学
院法学研究科後期 3 年の課程(博士課程)に受け入れました。これら総計 34 人の学生の中、10 名は既に東
北大学と海外パートナー機関による合同の博士論文審査に合格してダブルディグリーを取得しました。現
在、他の 24 名は、博士論文完成を目指して研究に従事していますが、今この中の 2 名が、本 GCOE プログ
ラムが終了する 2013 年 3 月末までにダブルディグリーを取得する見込みです。もしこの見込みが実現すれば、
CNDC は、GCOE プログラム終了までに計 12 名のダブルディグリー取得者を輩出することになります。
CNDC はこのようにめざましい成果を挙げることができましたので、東北大学法学研究科と海外パー
トナー機関は、本 GCOE プログラム終了後も、CNDC を継続・発展させることにしました。したがって、
2013 年度以降も、CNDC 在学生は、引き続きダブルディグリー取得を目指して研究に励むことになるばか
りでなく、新たにダブルディグリーを目指す学生が続々とCNDCプログラムに参加することが期待されます。
CNDC と若手メンバー
107
10
2013.3
図1
CNDCの履修モデル
1年次
東北大学で履修
海外パートナー
機関で履修
東北大学で履修
海外パートナー
機関で履修
東北大学で履修
海外パートナー
機関で履修
図2
CNDCの国際共同実施体制
A
J
B
C
D
F
E
東北大学
G
H
I
A: シェフィールド大学
D: 清華大学
G: 延世大学校
B: エコル・ノルマル・シュペリュール(ENS-Lyon) E: 中国社会科学院 H:ソウル大学校
C:リュミエール・リヨン第2大学
F: オタワ大学
I : 国立台湾大学
108
ダ ブル ディグ リ ー の 取 得
海外パートナー機関
博士課程の学生
3年次
学 位 論 文の合 同 審 査
東北大学
博士課程の学生
2年次
J : ハイデルベルク大学
クロスナショナル・ドクトラル・コース(CNDC)
学生紹介
Pauline CHERRIER
Baptiste KUMALA
リヨン第 2 大学(フランス) 国籍:フランス
研究テーマ:Between Brazil and Japan: Identities out
エコル・ノルマル・シュペリュール・リヨン校(フランス)
国籍:フランス
研究テーマ:Innovation Policy in Japan: the Case of
of Places
【東北大学入学:2009 年 10 月、学位取得:2011 年 3 月】
Service Robotics
【東北大学入学:2009 年 10 月】
服部 晶
陳浩
リヨン第 2 大学(フランス) 国籍:日本
研究テーマ:The Cluster Policy in Japan and the
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Research on Young Marx in Terms of the
Changing Relationship between Central
and Local Authorities
【東北大学入学:2009 年 10 月、学位取得:2013 年 3 月
Relation between Individual and Society
【東北大学入学:2009 年 10 月、学位取得:2011 年 9 月】
見込】
劉超
于 福堅
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:A Study of the Growth Mechanism of
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Research on Ethnic Nationalism of the
Tsinghua University: From the Angle of
the Interaction of Politics with Learning,
1928-1935
【東北大学入学:2009 年 10 月、学位取得:2011 年 9 月】
Developing Countries
【東北大学入学:2009 年 10 月、学位取得:2011 年 9 月】
Paola CAVALIERE
Kamila SZCZEPANSKA
シェフィールド大学(英国) 国籍:イタリア
研究テーマ:Women’
s Identity Formation and Trans-
シェフィールド大学(英国) 国籍:ポーランド
研究テーマ:The Politics of War Memory in Japan
formation in Contemporary Japan: A Gendered Approach to Faith-Based Volunteering
【東北大学入学:2009 年 10 月、学位取得:2012 年 3 月】
1990-2010: Progressive Civil Society
Groups and Contestation of Memory of
the Asia-Pacific War(1937-1945)
【東北大学入学:2009 年 10 月、学位取得:2012 年 3 月】
Sven MATTHIESSEN
黄亮
シェフィールド大学(英国) 国籍:ドイツ
研究テーマ:Going to the Philippines is like Com-
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:The Research on the Social Transforma-
ing Home: Japanese Pan-Asianism and
the Philippines from the Meiji Era to the
Greater East Asia Co-Prosperity Sphere
【東北大学入学:2009 年 10 月、学位取得:2012 年 3 月】
tion and the Civil Society Development in
China
【東北大学入学:2010 年 4 月】
CNDC と若手メンバー
109
10
2013.3
Guénolé MARCHADOUR
亓 同惠
リヨン第 2 大学(フランス) 国籍:フランス
研究テーマ:The Social Relations of Domination in a
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:On the Relations of Recognition and
Migration Context: The Case of Brazilian
People in Japan from 2000
【東北大学入学:2010 年 4 月】
王藝
周 嘯天
中国社会科学院(中国) 国籍:中国
研究テーマ:The Study on the Result-Selective Princi-
ple: Taking International Product Liability
Area as an Example
【東北大学入学:2010 年 4 月】
Paul O’
SHEA
シェフィールド大学(英国) 国籍:アイルランド
研究テーマ:Playing the Sovereignty Game: Understanding Japan’
s Territorial Disputes
【東北大学入学:2010 年 10 月、学位取得:2012 年 3 月】
缪 爱丽
中国社会科学院(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Research on the Launch and Limitations
of the Power of Penalty
【東北大学入学:2010 年 10 月】
Nicolas MORISHITA
リヨン第 2 大学(フランス) 国籍:フランス
研究テーマ:Japan, a Public Works State
【東北大学入学:2010 年 10 月】
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Complicity and Status
【東北大学入学:2010 年 10 月】
Ra MASON
シェフィールド大学(英国) 国籍:英国
研究テーマ:Japan’
s Recalibration of Risk: The Fram-
ing of North Korea
【東北大学入学:2010 年 10 月、学位取得:2012 年 3 月】
范 世煒
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Risk Governance
【東北大学入学:2010 年 10 月】
丁 慧敏
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:A Comparative Study of Sexual Offences
from the Perspective of Gender Equality
and Cultural Display
【東北大学入学:2011 年 4 月】
何洋
Ioan TRIFU
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Authority, Power and Legal Culture: Con-
リヨン第 2 大学(フランス) 国籍:フランス
研究テーマ:Prefectural Governors in Post-War Japan:
stitute Gender Equality through Multicultural Conviviality
【東北大学入学:2011 年 4 月】
110
Right
【東北大学入学:2010 年 4 月】
A Socio-Historical Approach
【東北大学入学:2011 年 4 月】
武腾
金賢
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Finacial Lease Contract’
s New Develop-
延世大学校(韓国) 国籍:韓国
“Civilization and Enlightenment”Contra
研究テーマ:
ment All around the World
【東北大学入学:2011 年 10 月】
陈睿
Independence: Liberalism and its Discontents in Nineteenth Century
【東北大学入学:2011 年 10 月】
张 玲玲
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:On Jerome Frank’
s Legal Realism
【東北大学入学:2011 年 10 月】
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:The Capital Globalization and the Contemporary China’
s Owenership Transfor-
mation: The Logic of Capital and the Role
of Government
【東北大学入学:2011 年 10 月】
曲甜
曹 冬媛
中国社会科学院(中国) 国籍:中国
研究テーマ:China’
s Public Service Mechanism under
中国社会科学院(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Comparative Study in Sino-Japanese Cor-
the Background of Government Transformation
【東北大学入学:2011 年 10 月】
porate Law
【東北大学入学:2011 年 10 月】
樊健
神田 文
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Law and Economics of Executives’Stock
シェフィールド大学(英国) 国籍:日本
研究テーマ:The Policy of“Societalizing Social Welfare ”and Its Impact on the Voluntary
Options in Chinese Public Corporations
【東北大学入学:2011 年 10 月】
Sector in China: What Lesson Can China
Learn from Japanese Experience?
【東北大学入学:2012 年 4 月】
邓 毅丞
李猛
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Research on Aggregated Consequential
中国社会科学院(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Decentralization and Regional Inequality
Offense
【東北大学入学:2012 年 4 月】
王 海军
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:Research on Suicide Associated Behavior
【東北大学入学:2012 年 10 月】
of China
【東北大学入学:2012 年 4 月】
徐樹
清華大学(中国) 国籍:中国
研究テーマ:The Conflict and Harmonization of State
Immunity Rules in the Age of Globalization
【東北大学入学:2012 年 10 月】
CNDC と若手メンバー
111
10
2013.3
成果
これまでの GCOE フェロー・RA 等、若手メンバーの就職先
蘇 恩瑩
矢野 恵美
王 冷然
高松 香奈
紀 萌
安藤 純子
猪瀬 貴道
河北 洋介
堀見 裕樹
茂木 洋平
于 福堅
陳 浩
劉 超
竹田 香織
木村 元
徐 学柳
Pauline CHERRIER
Kamila SZCZEPANSKA
Ra MASON
Paul O’
SHEA
Sebastian MASLOW
周 嘯天
黄 亮
亓 同恵
牧 真理子
西山 千絵
112
韓国憲法裁判所・研究員
琉球大学大学院法務研究科・准教授
徳島大学総合科学部・准教授
国際基督教大学教養学部・准教授
早稲田大学高等研究所・研究員
韓国国民大学校国際学部・講師
東北大学大学院法学研究科・助教
東北大学大学院法学研究科・助教
東北大学大学院法学研究科・助教
桐蔭横浜大学法学部・専任講師
中国広西省賀州市八歩区信都鎮党委・副書記
中国人民大学マルクス主義学院・講師
清華大学教育研究院・ポスドクフェロー
政策研究大学院大学比較議会情報プロジェクト・スタッフ
日本学術振興会・特別研究員
東北大学大学院経済学研究科・研究員
プロヴァンス大学・准教授
ルール大学ボーフム・ポスドクリサーチフェロー
シェフィールド大学 White Rose East Asia Centre・名誉フェロー
ストックホルム経済大学欧州日本研究所・ポスドクリサーチフェロー
ハイデルベルク大学 Centre for East Asian Studies・リサーチアソシエイト
山東大学・講師
中共吉林省委内公庁・書記秘書
西南政法大学・講師
大分大学経済学部・専任講師
沖縄国際大学法学部・専任講師
出版活動一覧
本プログラムの出版活動は、公開される成果にふさわしい多様な形態をとって展開されてきました。
2008 年度以来は、ホームページで本プログラムの研究・教育全般にわたる情報を公開し、最新の学術論文
を掲載した学術雑誌である GEMC ジャーナルを刊行してきました。また、研究成果は、研究成果シリーズ
や著者シリーズとして書籍化もされています。
GEMC ジャーナルの刊行
GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」プログラムの目的は、研究と人材育成でした。こ
れらの目的を果たすために、学術的な研究成果を発表するジャーナルを発刊することとし、男女共同参画と
多文化共生 Gender Equality and Multicultural Conviviality の頭文字をとって、GEMC ジャーナルと名付け
ました。
GEMC ジャーナルは、第 1 部と第 2 部に分かれます。第 1 部には、GEMC ジャーナル編集委員会から執筆
を依頼した論文で、本プログラムの研究会報告をもとにした論文や事業推進担当者らの研究論文を掲載しま
した。第 2 部には、若手研究者に業績を発表する機会を保障するために、査読雑誌と位置づけて投稿論文を
掲載しました。本 GCOE のテーマと関係する論文であれば、身分資格を問わずに投稿を認め、掲載可能性
のある論文の著者には研究会での報告等をお願いして成果を共有してきました。第 2 部の査読にあたっては、
GEMC ジャーナル編集委員会内部に査読委員会を設けました。査読委員会は、広範囲の領域にわたる論文
を査読するために、それぞれの論文と同じ分野の内外の専門家に匿名で個別に評価を依頼し、その評価に基
づいて厳正な査読を行いました。
2008 年度に発刊した GEMC ジャーナルは、2009 年度以降は英文ジャーナルと和文ジャーナルを 2 冊ずつ
刊行しました。
グローバリゼーションの進展に伴い、ジェンダー、ナショナリズム、コミュニティ、世代などが生み出す
差異は、構造的にもつれ合って深刻な弊害を社会にもたらします。これらの弊害を克服し、多様な文化的価
値が共存する社会を再構築する道を求めて、本 GCOE は発足しました。その出発の年である 2008 年には、
アメリカに発した金融危機がたちまちグローバル化して、世界を覆いました。課題は緊急でかつ困難ではあ
りますが、本 GCOE は知的な営為を重ねて、これらの課題に対応し、基礎工事となる確実な研究を目指し
ました。GEMC ジャーナルも、その営為の意義ある努力の一つとして、毎年度刊行しました。
■ GEMC ジャーナル第 1 号~第 7 号
出版活動一覧
113
10
2013.3
GEMCジャーナル第 8 号の目次
Preface
GEMC journal Editorial Board
Part I Invitational Papers
■Gender, Sexuality and Cosmopolitanism in Multicultural Australia: A Case Study Baden OFFORD
■Japan’
s Postwar Model of Economic Development Has Rendered Japanese Society Vulnerable to Crises and Disasters
OSAWA Mari
■Approaching Gender Equality and Intercultural Competence as a Democratic Praxis:
Theoretical Challenges and Preliminary Implications for Tohoku Reconstruction
Jackie F. STEELE
■International Human Rights Norms and Immigration Policy in Korea and Japan LEE Byoungha
■The Gender Gap in Happiness and Socioeconomic Condition
MIZUOCHI Masaaki
Part II Submitted Papers
■On Jerome Frank and His Constructive Skepticism
CHEN Rui
■Diversifying Welfare Responsibilities and Mobilizing the Voluntary and Non-Profit Sector:
Comparative Analysis of China and Japan
KANDA Fumi
Part III Dissertation Summaries
■Between Brazil and Japan: Identities out of Place
Pauline CHERRIER
■The Significance of the Concept of the Individual for Young Marx’
s Civil Society Theory
CHEN Hao
■Transformation of Tsinghua University in Modern East Asia: A Typical Case of Political-Academic Interaction in Modern E.S.
LIU Chao
■Research on Ethnic Nationalism of the Developing Countries
YU Fujian
■Women’
s Identity Formation and Transformation in Contemporary Japan: A Gendered Approach to Faith-Based Volunteering Paola CAVALIERE
■Japan’
s Recalibration of Risk: The Framing of North Korea
Ra MASON
■“Going to the Philippines is like Coming Home”
:
Japanese Pan-Asianism and the Philippines from the Meiji Era to the Greater East Asia Co-Prosperity Sphere
Sven MATTHIESSEN
■Playing the Sovereignty Game: Understanding Japan’
s Territorial Disputes Paul O’
SHEA
■The Politics of War Memory in Japan 1990-2010:
Progressive Civil Society Groups and Contestation of Memory of the Asia-Pacific War (1931-1945) Kamila SZCZEPANSKA
■The Cluster Policy in Japan and the Changing Relationship between Central and Local Authorities
HATTORI Akira
List of Contributors
GEMC journal Guidelines for Submission
GCOE Program Members and GEMC journal Editorial Board Members
GEMCジャーナル第 9 号の目次
はしがき/ Preface
GEMC journal 編集委員会/ GEMC journal Editorial Board
Part I 寄稿論文/ Invitational Papers
■福祉レジーム論から生活保障システム論へ
大沢 真理
From Welfare Regimes to Livelihood Security Systems
OSAWA Mari
■多文化主義とジェンダー:憲法理論の視座から
志田 陽子
Multiculturalism and Gender: From the Perspectives of Constitutional Theories
SHIDA Yoko
Part II 博士論文要旨/ Dissertation Summaries
■日本と韓国の憲法におけるジェンダー平等の実現―「人権アプローチ」
を中心に―
蘇 恩瑩
A Study on‘Individual Dignity’for Gender Equality
SOH Eunyoung
■国民的一体性の幻想―1907 年から1914 年までのチェコ政党政治における政党間競争の誕生 中根 一貴
The Illusion of National Unity: The Emergence of Party Competition in Czech Party Politics 1907-1914
NAKANE Kazutaka
■条約解釈における「国際法の関連規則」に関する一考察
堀見 裕樹
The Interpretation of Treaties in Light of the“Relevant Rules of International Law”
HORIMI Hiroki
■投資条約仲裁手続における人的管轄権の判断基準:国際請求における「国籍」の機能 猪瀬 貴道
The Criteria for Jurisdiction Ratione Personae in Investment Treaty Arbitration:
The Function of Nationality in International Claims
INOSE Takamichi
■Affirmative Action の正当化法理―アメリカの判例と学説を中心に―
茂木 洋平
Justifications of Affirmative Action in the United States: Theory and Legal Precedent MOGI Yohei
■カナダ憲法における多様性―性的指向・同性婚を素材にして―
河北 洋介
A Study on Diversity in Constitutional Law of Canada: The Issue of Sexual Orientation and Same-Sex Marriage
KAWAKITA Yosuke
■現代日本の政党制と議会政治―自民党政権から民主党政権まで―
川村 一義
Japan’
s Party System and Parliamentary Deliberation: From LDP to DPJ Governments KAWAMURA Kazuyoshi
執筆者一覧/ List of Contributors
GEMC journal 投稿規定と執筆要領/ GEMC journal Guidelines for Submission
GCOE 事業推進担当者・GEMC journal 編集委員会名簿/ GCOE Program Members and
GEMC journal Editorial Board Members
GEMCジャーナル第 10 号の目次
はしがき/ Preface
GEMC journal 編集委員会/ GEMC journal Editorial Board
Part I GCOE 総括研究会/ GCOE Concluding Seminar
■序文―5 年間の GCOE 活動を終えて―
辻村 みよ子
Introduction: Concluding the Five-Year-GCOE Activities
TSUJIMURA Miyoko
■人身取引対策とジェンダー平等
高松 香奈
Policies of Trafficking in Persons and Gender Equality
TAKAMATSU Kana
コメント/ Comments
大沢 真理/ OSAWA Mari
■「利他的医療」の法原理と国家法
米村 滋人
Principles and the Law on Altruistic Medicine
YONEMURA Shigeto
コメント/ Comments
水野 紀子/ MIZUNO Noriko
■現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画―社会制度に対する経済・経営・統計学的アプローチ―
吉田 浩
Gender Equality as a Social and Economic Strategy in Modern Japan:
Economy, Management and Statistical Approach towards Social Systems
YOSHIDA Hiroshi
コメント/ Comments
佐藤 博樹/ SATO Hiroki
■民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ―東北復興に向けた理論的課題と予備的考察―
スティール若希
Approaching Gender Equality and Intercultural Competence as a Democratic Praxis:
Theoretical Challenges and Preliminary Implications for Tohoku Reconstruction
Jackie F. STEELE
コメント/ Comments
大沢 真理/ OSAWA Mari
■災害と外国人女性達―ジェンダー平等と多文化共生の主流化をめざして―
李 善姫
Disaster and Immigration Women: Towards Gender Equality and Multiculturalism Mainstreaming
LEE Sunhee
コメント/ Comments
樺島 博志/ KABASHIMA Hiroshi
■質疑討論/ Discussion
Part II 資料編―2008 ∼ 2012 年度の主な活動―/ Appendix: GCOE Main Activities in 2008-2012
執筆者一覧/ List of Contributors
GEMC journal 投稿規定と執筆要領/ GEMC journal Guidelines for Submission
GCOE 事業推進担当者・GEMC journal 編集委員会名簿/ GCOE Program Members and GEMC journal Editorial Board Members
114
研究成果の出版
本プログラムの研究成果の一部は、単行本として出版されました。本プログラムのプロジェクトの共同研
究成果からなる「研究成果シリーズ」と、事業推進当者や研究教育協力者、フェロー等の研究論文をまとめ
た「著者シリーズ」です。著者シリーズは、専門家による査読制度を導入し、出版された本の一定数を買い
上げてメンバー等が利用しました。内容が本プログラムの趣旨に合致する、
水準の高い業績に限られました。
最終年度出版された 4 冊を含め、本プログラムの研究成果として、プロジェクト「研究成果シリーズ」が 10
冊、「著者シリーズ」が 6 冊、計 16 冊が本プログラムから出版されました。
■研究成果シリーズ
『ジェンダー平等と多文化共生―複合差別を超えて』
辻村みよ子・大沢真理 編(東北大学出版会、2010 年 3 月)
ISBN978-4-86163-146-7
GCOE「多文化共生社会のジェンダー平等」研究プロジェクトの成果として、2009 年 8 月開催の「国際
セミナー2009」参加者や研究協力者の論文を中心に編集。本 GCOE が追求する「ジェンダー平等」と「多
文化共生」の視点を交錯させ、複合差別を超えるという観点から現代の諸課題に迫る意欲的な学際的共著。
Gender Equality in Multicultural Societies:
Gender, Diversity, and Conviviality in the Age of Globalization
TSUJIMURA Miyoko & OSAWA Mari (eds.)(東北大学出版会、2010 年 3 月) ISBN978-4-86163-135-1
GCOE「多文化共生社会のジェンダー平等」プロジェクトに参加したオタワ大学、UCLA、東京大学等
の内外の研究者 14 名の共著。2009 年 8 月の「国際セミナー2009」参加者の論文を中心に、現代の多文化
共生社会におけるジェンダー平等問題を法学・社会学など広範な視座から追求した学際的な共同研究の成
果。
Gender Equality in Asia: Policies and Political Participation
TSUJIMURA Miyoko & Jackie F. STEELE (eds.)(東北大学出版会、2011 年 3 月) ISBN 978-4-86163-161-0
本書は、GCOE「アジアのジェンダー平等政策と課題」研究プロジェクトの成果として、また、国際的
研究ネットワーク「アジアにおける女性と政策」と「現代インド地域研究」からの論文を中心に編集。ジ
ェンダーと民主化、クォータ制、法改正、政策実行等の実態に迫る議論を展開しながら、民主主義的制度
の中にあるアジアにおけるジェンダーの主流化へ向けた現代の課題を明らかにする。
『男女共学・別学を問いなおす―新しい議論のステージへ―』
【編著】生田久美子、
【著】坂本辰朗、水原克敏、尾崎博美、八木美保子、畠山大、ジェーン・ローランド・
マーティン、スーザン・レアード(東洋館出版社、2011 年 3 月)
ISBN 978-4-491-02673-2
本書は男女共学・別学という問題を歴史的・政策的・哲学的観点から検討する。その目的は、男女共学・
別学の優劣関係を提示する事ではなく、その比較によって見えてくるジェンダーの観点を中心に考察を行
うことで、既存のジェンダー枠組みに与する所の多い従来の「リーダーシップ」概念、ひいては伝統的な
教育観・人間観を捉えなおすことにある。
出版活動一覧
115
10
2013.3
『アジアにおけるジェンダー平等―政策と政治参画』
辻村みよ子・スティ―ル若希 編(東北大学出版会、2012 年 3 月)
ISBN978-4-86163-185-6
「アジアのジェンダー平等政策」研究プロジェクトの成果として、2009 年・2010 年の GCOE 萩セミナー、
ドイツ・ヒルデスハイム大学主催シンポジウム、東京外国語大学現代インド地域研究拠点共催国際ワーク
ショップでの報告をもとに編集。M.Tsujimura & J.F. Steele (eds.), Gender Equality in Asia: Politics and
Political Participation, Tohoku University Press, 2011 掲載論文のほか、新たな論文の翻訳も掲載。韓国、
中国、インド、フィリピン等のジェンダー平等政策の現状と課題を紹介した貴重な共著である。
『グローバル化時代の国際法』
植木俊哉 編(信山社、2012 年 3 月)
ISBN978-4-7972-5461-7
本書は、東北大学グローバル COE プログラム「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」におけ
る編者をリーダーとする研究プロジェクト「多文化共生とジェンダーをめぐる国際法規範の国内的履行と
国際紛争の平和的解決メカニズムの実証的研究」の研究成果として、グローバル化時代の国際法規範の
理論的発展と新たな展開を国内法秩序との相互作用を視野に入れながら分析した諸論稿を収録したもので
ある。
『移動の時代を生きる―人・権力・コミュニティ』
大西仁・吉原直樹 監修、李善姫・中村文子・菱山宏輔 編(東信堂、2012 年 3 月)
ISBN978-4-7989-0109-1
本書は、グローバリゼーションが進む現代の世界で、国境を越えるヒトの移動が人間と社会にどのよう
な変化をもたらしているかについて、社会学・政治学・経済学・教育学などの多角的観点から考察するも
ので、特に、大量のヒトの越境移動によって、移動した人間、受け入れ社会、送り出し社会のそれぞれに
ついて、ひとりひとりの人間が人間として発展する条件がどのように変化したかに注目するところに最大
の特徴がある。
『社会法制・家族法制における国家の介入』
水野紀子 編(有斐閣、2013 年 2 月)
ISBN978-4-641-13640-3
「少子高齢化をめぐる国家と私的領域」研究プロジェクトの成果として、
嵩さやか「社会保障と私的扶養」
、
桑村裕美子「協約自治制度と国家介入のあり方」
、
滝澤紗矢子「アメリカ競争規制に対する O・W・ホームズ・
渡辺達徳
「制限行為能力者による法律行為の取消しと返還されるべき利益」
、
河上正二
「高
Jr.の理論的寄与」、
齢消費者の保護」
、米村滋人「公的社会保障給付と私法契約」
、大村敦志「パクスその後―私事と公事の
間で」
、久保野恵美子「精神障害者と家族」
、水野紀子「公権力による家族への介入」を収めた。
『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』
男女共同参画による
日本社会の経済・経営・
地域活性化戦略
吉田浩 編(河北新報出版センター、2013 年 3 月)
ISBN978-4-87341-292-4
本書は「男女共同参画社会の推進」を経済・経営・統計学から「効果を量的に検証し」
、
定量的「見える化」
というアプローチで研究を行ってきた。本書では現在の日本の社会・経済の上での閉塞感・手詰まり感に
対して、
「男女共同参画の推進」という「従来の日本社会からの踏み出し」諸問題を解決する突破口であ
るという意識のもと「男女共同参画」を戦略化するという新機軸を提示している。
116
Quantitative Picture of Contemporary Japanese Families: Tradition and Modernity in
the 21st Century
(東北大学出版会、2013 年 3 月)
TANAKA Sigeto(ed.)
ISBN978-4-86163-226-6
本書は、現代日本家族に関する計量研究の成果である。少子高齢化の進む現在の日本では、家族に関
連する問題に注目が集まっているが、実証的な知識に基づいた議論が十分なされているとはいえない。本
書では、代表性のあるミクロ調査データの分析結果に基づき、直系家族制の伝統の下での親子関係、無償
労働に関する世帯内の性別分業、女性の就業とワークライフ・バランス、経済/教育面での不平等などの
問題を論じる。
■著者シリーズ
『憲法とジェンダ―男女共同参画と多文化共生への展望』
辻村みよ子 著(有斐閣、2009 年 12 月)
ISBN978-4-641-13069-2
本書は、ジェンダー平等と多文化共生の視点から従来の法学・憲法学・人権論の課題を再検討し、
「ジ
ェンダー憲法学」の可能性を追求した研究書。21 世紀 COE「ジェンダー法・政策研究叢書」12 巻に収録
した論文をもとに GCOE の研究成果と多文化共生の視座を加えて編集。ルワンダ憲法・韓国民法など貴
重な資料も掲載。
『中韓国交正常化と東アジア国際政治の変容』
金淑賢 著(明石書店、2010 年 3 月)
ISBN978-4-7503-3165-2
本書は、現在及び今後、グローバリゼーションに直面する中国・韓国を含む東アジア諸国において、中
韓国交正常化を前後とする東アジアの国際関係の変容と、また中韓国交正常化のプロセスを明確にするこ
とによって、どのように排他的ナショナリズムが台頭するか、又、これをどのようにマネージして政治緊
張を回避することができるか等を探る上で、確かな視座と多くの重要な示唆を提供する。
『適合性原則と私法秩序』
王冷然 著(信山社、2010 年 3 月)
ISBN978-4-7972-6058-8
本書は、適合性原則の母国法たる米国法を比較法の素材とし、投資取引領域における同原則の本来の
意味や民事責任認定の判断構造を確認・分析し、日本での適合性原則に関する理解および運用上の問題
点を析出するとともに、多文化社会において適合性原則が果たすべき役割を検討しようとするものである。
Phraseology in Corpus-Based Translation Studies
JI Meng(Peter Lang、2010 年 7 月) ISBN 978-3-03911-550-1
本書の主たる目的は、翻訳学におけるコーパス資料やコーパスの方法論を探究することである。本書が
行う事例研究では、セルバンテス著『ドン・キホーテ』の現代標準中国語への翻訳に焦点を当てる。この
特有なトピックを検討することを通して、本書は、中国における『ドン・キホーテ』の人気を説明する一
助となることを目指す。
出版活動一覧
117
10
2013.3
『境界と自由―カント理性法論における主権の成立と政治的なるもの』
木原淳 著(成文堂、2012 年 3 月)
ISBN978-4-7923-0529-1
グローバル化が進展する現代において、国民主権理念は自明の正当性を失い、新たな法秩序空間の模
索が課題となっているが、この課題は、国際法まで包含した法秩序のグランドデザインを模索した 18 世紀
の啓蒙主義理性法論と同様のものといえる。このような観点から本書はカント理性法論の読み直しを進め、
主権的な国民国家が果たしてきた意義を正当に評価・継承しつつ、グローバル化時代にふさわしい法秩序
の展望を試みる。
『身分社会と市民社会―19 世紀ハンガリー社会史』
ケヴェール・ジェルジ 著/平田武 訳(刀水書房、2013 年 3 月)
ISBN978-4-88708-408-7
ハンガリーの社会経済史研究の第一人者である著者が、歴史人口学と家族史、歴史地理学と移民史、
社会階層構成とその再編成過程の分析、政治参加と官僚制化、服飾・住居文化史、ネイション形成史、中
産階級心性史、社会移動分析など、社会科学的歴史学の手法や最新の国際的知見の紹介から、ハンガリ
ー国内での社会科学的歴史学の最新の研究成果に至るまでを網羅して、19 世紀ハンガリーの社会構造変
容を多面的に描き出したもの。
118
博士論文の紹介
蘇 恩瑩
日本と韓国の憲法におけるジェンダー平等の実現―「人権アプローチ」を中心に― (2009 年 3 月学位取得)
本論文は、最高規範かつ国民の基本権を規定している憲法を用いて、ジェンダー平等を実現するためにもっとも望ましい方
向を模索する試みである。既存の男女差別理論を越えた、
「ジェンダー法理論」の必要性について論じ、それは日本と韓国の
憲法の、個人の尊重を明示している条文と平等原則から根拠づけられると主張した。そして、その条文が問題となる例として、
日本民法の夫婦同姓原則および韓国(改正前)民法の父姓承継原則の違憲性と改正方向について論じた。
中根 一貴
国民的一体性の幻想―1907 年から 1914 年までのチェコ政党政治における政党間競争の誕生 (2010 年 3 月学位取得)
男子普通選挙権の実現と大衆政党の伸長を経験していた 20 世紀初頭のハプスブルク君主国のチェコ諸領邦において、名望
家政党型の自由主義政党が追求した、チェコ人政党・政治家による統一的な政治行動の展開を分析した。この統一的な政治
行動の崩壊により、政党間競争がチェコ政党政治において初めて誕生したのである。さらに、このことが戦間期チェコスロヴ
ァキアの議会制民主主義の安定に寄与したことを明らかにした。
堀見 裕樹
条約解釈における「国際法の関連規則」に関する一考察 (2010 年 3 月学位取得)
本論文では国際裁判所等での条約解釈の際に頻繁に援用される条約法条約の解釈規則の中でも近年活発に議論が行なわれ
ている、
条約解釈の際に「当事国の間の関係において適用される国際法の関連規則」を「考慮する」ことを求める第 31 条 3 項(c)
について、同条文に関する裁判例の分析を中心に、国際法委員会の作業、学説及び起草過程を踏まえてその意味内容を明ら
かにし、関連する国際法上の具体的な問題点を検討する考察を行った。
猪瀬 貴道
投資条約仲裁手続における人的管轄権の判断基準:国際請求における「国籍」の機能 (2010 年 9 月学位取得)
本稿では、二国間投資条約(BIT)
、自由貿易協定(FTA)
、経済連携協定(EPA)など「投資条約」に規定される外国投
資家と投資受入国との間の紛争処理手続である投資条約仲裁手続について、
「人的管轄権」の判断構造を検討した。
「投資条
約締約国の投資家(国民・会社)
」の範囲の基準としての国籍が問題となることから、代表的な条約規定例、これまで仲裁判
断例を整理して、外交的保護における判断との比較などから検討した。
茂木 洋平
Affirmative Action の正当化法理∼アメリカの判例と学説を中心に∼ (2010 年 9 月学位取得)
人種に基づく Affirmative Action(AA)は過去の差別の救済、将来の利益の達成のいずれの理由により正当化したとしても、
AA の直接の受益者が社会・経済的に不利な状況にないことに変わりはなく、真に救済の必要な者を救済していない、という
批判を受ける。その批判を回避するためには、人種に基づく AA の対象者を判断する際には、不当な理由から、地位の獲得に
不利な状況におかれている者を明確にせねばならないことを明らかにした。
Pauline CHERRIER
Entre Japon et Brésil: identités décalées(日本とブラジルのはざまで―拠り所のないアイデンティティ) (2011 年 3 月学位取得)
本研究は、日系ブラジル人の事例研究に基づいて、移民の政治的アイデンティティの記号論的分析を提案する。日系ブラジ
ル人は 1908 年にブラジルへ移住した日本人とその子孫で構成されている。後者の 3 分の 1 は現在日本に在住しており、1990
年以来、その大半は主に単純労働に従事している。本稿では、公式とエスニックメディアの言説分析を通して、移民が日本と
ブラジル両社会の公共空間でどのように表わされるのかを明らかにする。現在では多文化共生の言説も人種混合や国家アイ
デンティティの形成過程に光を当てている。それにより本稿は、現代のグローバル化時代における空間や世代という枠を超え
る移民の意味を明確にしている。
博士論文の紹介
119
10
2013.3
河北 洋介
カナダ憲法における多様性―性的指向・同性婚を素材にして― (2011 年 3 月学位取得)
本稿は、カナダ憲法における多様性について、性的指向・同性婚を基に考察するものである。そのために、カナダ憲法にお
ける平等権と性的指向問題との関係、カナダにおける司法積極主義、カナダの裁判所における「婚姻」概念の変容、さらに、
カナダにおける同性婚承認の過程について概観した。そして最後に、性的指向・同性婚に関する分析を基にカナダ憲法にお
ける多様性に関する実践的局面と理論的局面を考察した。
陳 浩
個人と社会の関係から見た初期マルクスの研究 (2011 年 9 月学位取得)
個人と社会との関係に関して、
特に『フォイエルバッハに関する概要』の「第 6 条」における人間の本質に関する叙述によると、
マルクスが個人に対して社会を優先させる立場を取っていることに幅広いコンセンサスが得られている。しかし、マルクスの
市民社会論に基づいて、初期マルクスに特有な個人と社会の関係についての問題意識を考えることで、本論文では、従来と
は逆の解釈を主張する。すなわち、初期マルクスにとって、少なくとも市民社会の段階において、社会関係の出発点であり根
拠となるのは、社会よりはむしろ個人なのである。
干 福堅
現代の国家建設に関する社会理論―国家建設におけるナショナリズムの建設的な機能について (2011 年 9 月学位取得)
本論文は発展途上国の民族型ナショナリズム運動を研究対象とし、ナショナリズム理論の発展史を整理したうえで、ナショ
ナリズム理論研究の分類図式を提示した。それを理論的な基礎として、本論文は、1990 年代以降に発展途上国で現れてきた
数多くのエスニック・ナショナリズム事件を説明する構造的な分析枠組みを提案した。初めに、グローバル化が発展途上国に
おけるエスニック・ナショナリズムの出現を促進し、特にインターネットに代表される技術の進歩がもっとも便利なコミュニ
ケーション手段を提供した。第二に、ソ連及び東欧諸国の急激な変化ののちに、発展途上国が早急に行った民主化改革がエ
スニック・ナショナリズム事件の制度的要因の一つであることを論じ、最後に、少数エスニック・グループに関連する数多く
の国際レジームの形成が、エスニック・ナショナリズム事件のもう一つの重要な制度的要因であることを論じる。
劉 超
清華大学発展メカニズムの研究―政治と学術相互作用の視角から (2011 年 9 月学位取得)
清華大学は近代中国において、広く影響力を持つ大学である。北京政府期には平均的なレベルにあったが、南京国民政府
初期においては国内学術環境の改善に伴って急速な発展を遂げてきた。特に 1931 年の満州事変後、中国が日本の侵略に直面
するなか、国内の各界は内部の矛盾を緩和し、危機への対応に重点を置いた。清華大学の学者も当局に対する批判的立場か
ら一転し、大学と政府は密接に協力していた。このような状況において、清華大学は自然科学、テクノロジー、人文科学など
の分野で著しい発展を遂げた。このようなケースからみれば、近代中国において、学術は常に政治と密接に相互作用し、外
部の諸要素から切り離すことはできない。
Kamila SZCZEPANSKA
日本における戦争の記憶の論議 1990-2010:進歩的な市民グループとアジア・太平洋戦争の記憶の論争 (2012年3月学位取得)
本研究の目的は、日本での過去 20 年間において、市民社会団体が太平洋戦争をめぐる記憶の論争にどのように参加してい
たのか、また、どのような貢献をしていたのかについて分析することである。研究の結果に基づいて、前述のプロセスにおい
て、市民社会団体はどのような役割を担い、その団体の重要性はどうであったのかについて解明している。この研究の事例と
して、1)
「日本の戦争責任資料センター」
、2)
「子どもと教科書全国ネット 21」
、3)
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク、
「アクテイブ・ミュージアム女たちと戦争資料館」
、4)
「POW 研究会」の団体を取り上げた。
Paola CAVALIERE
現代日本における女性のアイデンティティの形成と変化 : ジェンダー的視点から見た宗教の社会貢献活動 (2012 年 3 月学位取得)
博士論文の主題は、宗教団体に所属する女性による草の根の社会貢献活動に焦点をあてながら女性の社会的自己実現へ及
ぼす影響やアイデンティティ変容を扱うものである。2009 年から 2010 年においてサーベイ調査の対象事例となった団体は真
如苑、立正佼成会、日本カトリック教会である。実践論やパフォーマティヴィティの概念を用いてどのように宗教団体所属の
女性が日常的な社会貢献活動の行為によって構造の再生産およびアイデンティティ形成を行うのかを考察する。
120
Ra MASON
日本の北朝鮮の位置づけにおけるリスクの再評価 (2012 年 3 月学位取得)
冷戦後の東アジアにおける国際関係は、冷戦中の固定されたパワーバランス(ソ連対米国)の時代に比べ、非常に活発で
複雑になりつつある。そんな中、日本からみた北朝鮮における(ミサイル・核・拉致等による)リスクが拡大し、そのリスク
のレベルが高く評価されている。そこで、この研究を通して、日本(その政治・マスコミ・社会など)はどのような政治的・
社会的プロセスを経てそれぞれのリスクを再評価しているのかを解いていく。
Paul O’
SHEA
主権ゲーム―領土問題に対する日本の姿勢に関する考察 (2012 年 3 月学位取得)
本稿は、日本とロシア、韓国、中国とのあいだの領土問題に関するコンストラクティヴィズム・アプローチ研究である。本
研究の主眼は、紛争の激化や緩和ではなく、関係国による主権の行使にある。領土紛争において、国家は係争地に主権を行
使するために様々な手段を用いる。そして、国家はこのような主権の行使を国際的に正統なものであると主張する。本研究は、
国家による主権の行使に着目することで、日本の「主権ゲーム」に対するアプローチが個々の紛争において多様であり、領域
の相対的価値とその価値から生ずる政策目標によって変化することを明らかにする。
Sven MATTHIESSEN
フィリピンへ行くことは故郷に帰るようなものである―明治時代から大東亜共栄圏までの日本の汎アジア主義とフィリピン群島
(2012 年 3 月学位取得)
博士論文の目的は、19 世紀後半から太平洋戦争の終わりまでの、日本の汎アジア主義の発展を調査することにあり、この
思想に対するフィリピンの見方を調査するものである。フィリピンは、戦時下において、日本占領下の領域の中で、特殊な事
例であった。それは、フィリピン群島の文化的・歴史的な特殊性によるものである。とくに、フィリピン人に受け入れられた
親アメリカ主義によって、アジアへの価値への回帰を中心に置く汎アジア主義を履行することは、日本当局にとって、実質的
に不可能であった。故に、フィリピンへ行くことは、故郷に帰るようなものであるという日本人の汎アジア主義共同体の一前
提は、満たされることはなかった。
川村 一義
現代日本の政党制と議会政治―自民党政権から民主党政権まで― (2012 年 3 月学位取得)
本稿の目的は、1956 年から 2011 年までの政府立法データを分析することによって、日本の国会審議過程を動態的に把握す
ることにある。近年の国会研究が、洗練された理論的研究を志向してきたのとは対照的に、筆者は、与党の分権性や野党の
多党化、政治改革の進展や二院制の外生的制約等、具体的な文脈に即した政治現象の因果関係分析を志向している。議会は
国内政治の縮図であるという関係は日本でも同じであり、本研究によって、国会は魅力的な研究対象であると再認識されるこ
とが期待される。
服部 晶
日本のクラスター政策における中央政府と自治体関係の変動 (2013 年 3 月学位取得見込)
この研究は日本におけるクラスター政策がどういった形でガバナンスに影響しているかを分析する。クラスター政策は 2001
年と 2002 年に経済産業省と文部科学省により日本の経済競争力と地域イノベーション能力を再生するための切り札として構
成された。本研究は九州と東北地方の二つのケースを基に日本で実際にクラスター政策がどのように行われているのかを説明
する。他には日本と欧州連合との組織的な比較を行い将来日本が使用できるガバナンスモデルが分析されている。
博士論文の紹介
121
10
2013.3
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
●:著書・論文 ◆:口頭発表・報告(*印は元メンバー)
若手研究者の研究成果
【CNDC 学生】
干 福堅 *
● Yu, Fujian, Publishes Regularly as a Columnist for the Chinese Daily Newspaper Chinese Ethnic News on
Issues of Democracy, Nationalism and Ethnic Conflicts in Various World Regions, November 30, 2009-August 20, 2010.
◆ Yu, Fujian,“The Multi Multiculturalisms: A Comparison Between America and Canada,”presented at Access Students Programe (initiated by Academia Sinica), Taiwan University, China, March 14, 2010.
◆ Yu, Fujian,“The Social Theories of Modern State-Building: the Constructive Functions of Nationalism in
State-Building,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 9, 2010.
陳 浩 *
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劉 超 *
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◆ Liu, Chao,“Historical Interaction between Academy and Society: Case Study of Tsinghua University in
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◆ Liu, Chao,“A Study of the Growth Mechanism of Tsinghua University: From the Angle of the Interaction of
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服部 晶
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Social Science, vol.60, no.1, pp.117-139, 2009.
◆ Hattori, Akira,“Japanese Regional Innovation Policies and the Decentralisation Reform,”presented at 5th
International Workshop CNRS-University of Tokyo, Paris, France, December 17-18, 2009.
◆ Hattori, Akira,“Clusters and Innovation in Japan: The New Relationship between Central Government and
Local Powers,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 9, 2010.
Pauline CHERRIER*
● Cherrier, Pauline,“Le traitement médiatique des travailleurs brésiliens du Japon durant la crise économique
46, automne/hiver, pp.37-70,
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◆ Cherrier Pauline,“The Japanese Response to Nikkei-Brazilians’Crisis,”presented at Japan in the World, Tohoku University, March 8, 2010.
◆ Cherrier Pauline,“The Japanese Response to Nikkei-Brazilians’Crisis,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 9, 2010.
◆ Cherrier Pauline,“Nikkei Brazilians’Parades: from the Brazilian Carnival to the Japanese protests,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, October 15, 2010.
Baptiste KUMALA
◆ Kumala, Baptiste,“Innovation Policy in Japan: The Case of Service Robotics,”presented at Workshop on Innovation and Cluster Policies, Manufacturing Management Research Center, University of Tokyo, January
30, 2009.
◆ Kumala, Baptiste,“Innovation Policy in Japan: The Case of Service Robotics,”presented at Gender Equality and Multicultural Conviviality in the Age of Globalization Kick-off Seminar, Tohoku University, February
3-4, 2009.
◆ Kumala, Baptiste,“Does Japan Dream of Mechatronic Men?,”presented at Japan in the World, Tohoku University, March 10, 2010.
◆ Kumala, Baptiste,“Innovation Policy in Japan; the Case of Service Robotics,”presented at Sakura Seminar,
Tohoku University, April 9, 2010.
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
123
10
2013.3
◆ Kumala, Baptiste,“Service Robotics in Japan: The Social Shaping of its Emergence,”presented at LIA-
CASSH Workshop, Tokyo, September 24, 2010.
Paola CAVALIERE*
● Wakakuwa, Midori, Kiyono Shinbo, Paola Cavaliere,“2006nen Azuchichō byōbue tansaku purojekuto:
gakujutsu chōsa hōkokusho,”in Azuchi Town Board of Education, 2009.
◆ Cavaliere, Paola,“Women’
s Voluntary Action in Religious Organizations in Japan: from Conformity to Innovation,”presented at PhD Knowledge Exchange Workshop, White Rose Research Centre with the University
of Tokyo, March 3, 2011.
◆ Cavaliere, Paola,“Women’
s Action in Japanese Faith-based Volunteer Groups: a Generational Approach,”
presented at White Rose Research Centre Generation Workshop, University of Leeds, June 21, 2011.
◆ Cavaliere, Paola,“Women’
s Engagement in Faith Based Volunteering: Trajectories of self and Change in
Contemporary Japan,”presented at European Association for Japanese Studies, 7th EAJS Ph.D Workshop,
Käsmu, Estonia, August 22, 2011.
◆ Cavaliere, Paola,“Women in Japanese Faith-Based Volunteer Groups: From Continuity to Innovation,”presented at Centre for the Study of Japanese Religions, School of Oriental and African Studies, The University
of London, March 9, 2012.
◆ Cavaliere, Paola,“Women’
s Identity Formation and Transformation in Contemporary Japan: a Gendered Approach to Faith-based Volunteering,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 13, 2012.
◆ Cavaliere, Paola,“Women and Religious Civil Society in Japan: Perspectives on Social Change,”presented
at The Italian Association for Japanese Studies, Florence, September 21, 2012.
Kamila SZCZEPANSKA*
◆ Szczepanska, Kamila,“Memory and Civil Society:‘History Issue’and Civil Society Groups in Japan,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, October 15, 2009.
◆ Szczepanska, Kamila,“Memory, Identity and Civil Society: NGOs and“History Issue”in Japan,”presented
at Sakura Seminar, Tohoku University, April 9, 2010.
◆ Szczepanska, Kamila,“Civil Society and the Politics of War Memory in Japan: How Do You Make Your
Voice Heard?,”presented at Re-representing the Past: Japan, China and World War Two in the Twenty-First
Century, Leeds, July 7-8, 2010.
◆ Szczepanska, Kamila,“Progressive Civil Society Groups and Contestation of War Memory in Japan (19902010),”presented at Sino-Japanese Relations Postgraduate Network Conference, University of Leeds, United Kingdom, June 2-3, 2011.
◆ Szczepanska, Kamila,“Bringing the Legacy of Ienaga Saburo’
s Struggle to Next Generations: Children and
Textbooks Japan Network 21,”presented at Generation Workshop, White Rose East Asia Centre, University
of Leeds, United Kingdom, June 21, 2011.
◆ Szczepanska, Kamila,“The Politics of War Memory in Japan 1990-2010: Progressive Civil Society Groups
and Contestation of Memory of the Asia-Pacific War (1931-1945),”presented at Sakura Seminar, Tohoku
University, April 13, 2012.
◆ Szczepanska, Kamila,“Progressive Civil Society Activism and the POW Issue in Japan,”presented at British Association for Japanese Studies Annual Conference, University of East Anglia, United Kingdom, September 6-7, 2012.
Sven MATTHIESSEN*
● Matthiessen, Sven,“The Perception of the Philippines in Japanese pan-Asianism from the Meiji-Era until
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● Matthiessen, Sven,“Rōmusha auf den Philippinen: Zwangsarbeit und Guerilla (1941-1945),”in Klaus Gest124
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strukturellen Problem bewaffneter Konflikte von der Antike bis heute, Paderborn: Schoeningh Verlag, 2013.
◆ Matthiessen, Sven,“Japanese pan-Asianism: Varying Perspectives,”presented at Japan in the World, Tohoku
University, March 10, 2010.
◆ Matthiessen, Sven,“The Japanese Greater East Asia Co-Prosperity Sphere and the Philippines,”presented at
Workshop Ateneo de Manila University, Philippines, March 20, 2010.
◆ Matthiessen, Sven,“Japanese pan-Asianism: Varying Perspectives,”presented at Sakura Seminar, Tohoku
University, April 9, 2010.
◆ Matthiessen, Sven,“The Perception of the Philippines in Japanese Greater Asianism 1886-1941,”presented
at Workshop Ateneo de Manila University, Philippines, August 3, 2010.
王 藝
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亓 同恵
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s Two Kinds of Egalitarianisms,”in Beijing University Law Journal, vol.24,
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no.2, pp.312-330, 2012.
● Qi, Tonghui,“Critique Based on the Rationality of the Tradition: The Discuss about Zhang Taiyang’
s Criti”
cism of Traditional Legal Institutions, in Tsinghua Law Review, vol.5, no.1, pp.129-145, 2012.
◆ Qi, Tonghui,“The Recognition’
s Meaning for the Right of Law,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, April 16, 2010.
黄 亮
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◆ Huang, Liang,“The Research on the Social Transformation and the Civil Society Development in China,”
presented at Hagi Seminar, Tohoku University, April 16, 2010.
Guénolé MARCHADOUR
◆ Marchadour, Guénolé,“The Social Relations of Domination in a Migration Context: The Case of Brazilian
People in Japan from 2000,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, April 16, 2010.
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Japon,”presented at International Symposium Egalité hommes/femmes et articulation travail/famille: vers
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Ra MASON*
● Mason, Ra,“Can Japan Change the Plan?: The Rocky Roadmap to Rapprochement with North Korea,”in
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● Mason, Ra,“Recalibrating Risks in Japan: The Challenge of North Korea,”in The Pacific Review, 2012.
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
125
10
2013.3
● Mason, Ra, Japan’
s Recalibration of Risk: The Framing of North Korea, Sheffield Centre for Japanese Stud-
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◆ Mason, Ra,“Japan’
s Recalibration of Risk: The Framing of North Korea,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, June 15, 2011.
◆ Mason, Ra,“Japan’
s Recalibration of Risk: The Framing of North Korea,”presented at Social Science Dissertation Workshop, Institute of Social Science (ISS), University of Tokyo, September 2011.
◆ Mason, Ra,“Japan’
s Recalibration of Risk: The Framing of North Korea,”presented at Expert workshop:
s International Crisis Management Capabilities, Institute
Ready or Not? Assessing Recent Changes in Japan’
of East Asian Studies, University of Duisburg-Essen, October 2011.
◆ Mason, Ra,“NHK Project Wisdom: North Korea: The World’
s Perspective, Participated as an Expert on Japan and North Korea (DPRK) following the death of Kim Jong-Il and official appointment of Kim Jong-Un
as leader of the DPRK.”presented at Global Debates on TV and Online, January 28, 2012.
◆ Mason, Ra,“Deception: Japan and the Framing of North Korea,”presented at 12th Annual East Asian Studies Graduate Student Conference, University of Toronto, March 2012.
◆ Mason, Ra,“Japan’
s Recalibration of Risk: The Framing of North Korea,”presented at OSIPP-MEARC Conference: International Order in East Asia: Critical Reflections from European/Asian Perspectives, Leiden
University, March 2012.
◆ Mason, Ra,“Recalibrating Risks in Japan: The Challenge of North Korea.”presented at EJARN-EIJS Cons Next? Stockholm School of Economics, June 2012.
ference: Japan – What’
缪 爱丽
● Miao, Aili,“Study of Victim Promise System,”in People’
s Procuratorial Monthly, vol.11, pp.72-76, 2011.
● Miao, Aili,“Research on the Theory of Victim’
s Agreement,”in People’
s Procuratorial Monthly, vol.11,
no.5, pp.70-73, 2011.
● Miao, Aili,“Research on the System of Victim Impact Statement,”in Journal of Law Application, vol.4,
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◆ Miao, Aili,“Research on Victim Participation at Sentencing and Parole,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, June 8, 2011.
周 嘯天
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● Zhou, Xiaotian,“On the Criteria in Number of Crimes,”in Journal of ShanXi Normal University, vol.38,
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◆ Zhou, Xiaotian,“On the Criteria in Number of Crimes,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University,
June 8, 2011.
Paul O’
SHEA*
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Shea, Paul,“Sovereignty and the Sino-Japanese Maritime and Territorial Dispute,”in EIJS, Stockholm
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● O’
Shea, Paul,“The Sino-Japanese Maritime Dispute and its Implications,”in Strategic Insights, 39, pp.1418, 2012.
◆ O’
Shea, Paul,“Understanding Japan’
s Territorial Disputes in the post-Cold War Period,”presented at Sakura
Seminar, Tohoku University, June 15, 2011.
Nicolas MORISHITA
◆ Morishita, Nicolas,“The Japanese Public Works State,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University,
126
June 29, 2011.
范 世煒
◆ Fan, Shinwei,“Policy Issues and Agenda Setting of Climate Change Policy: A Research Based on Perspectives of Discourse Analysis and Policy Networks,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April
13, 2012.
Ioan TRIFU
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◆ Trifu, Ioan,“Socio-history of Prefectural Governors in Post-war Japan,”presented at Hagi Seminar, Tohoku
University, October 15, 2011.
何 洋
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丁 慧敏
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na,”in People’
◆ Ding, Huimin,“Research on Concurrence of the Statutory Provisions in Criminal Law,”presented at Hagi
Seminar, Tohoku University, October 15, 2011.
曲 甜
◆ Qu, Tian, ”
The Ways of Public Services Delivery,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April
13, 2012.
曹 冬媛
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2011.
◆ Cao, Dongyuan,“The Comparative Research in Corporate Supervise System: Mainly from China, US and
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张 玲玲
◆ Zhang, Lingling,“Marx’
s World History Theory,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 13,
2012.
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
127
10
2013.3
陈 睿
● Chen, Rui,“Legislation and Judicial Interpretation: a Musical Metaphor of Jerome Frank,”in Tohoku
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● Chen, Rui,“On Jerome Frank and his Constructive Skeptism,”in GEMC journal, no.8, pp.98-106, 2013.
◆ Chen, Rui,“Legislation and Judicial Interpretation: a Musical Metaphor of Jerome Frank,”Sakura Seminar,
Tohoku University, April 13, 2012.
樊 健
◆ Fan, Jian,“Success of Failure is Unknown: A Preliminary Study on Say-On-Pay,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 13, 2012.
武 腾
◆ Wu, Teng,“Improvement of Theory and Legislation on Quality Warranties of Goods,”presented at Sakura
Seminar, Tohoku University, April 13, 2012.
金 賢
◆ Kim, Hyun,“Civilization contra Independence: Japan’
s Orient or the People?,”presented at Sakura Seminar,
Tohoku University, April 13, 2012.
◆ Kim, Hyun,“Nationalists’Predicament and their Challenge in Late Confucian Korea: From Pan-Asianism to
Christianity,”presented at GCOE International Seminar“Nationalism and Peace in East Asia,”Tohoku University, November 23, 2012.
神田 文
● Kanda, Fumi,“Diversifying Welfare Responsibilities and Mobilizing the Voluntary and Non-Profit Sector:
Comparative Analysis of China and Japan,”in GEMC journal, no.8, pp.108-139, 2013.
◆ Kanda, Fumi,“A Comparative Study of the Voluntary and Non-profit Sector in China and Japan: A Policy of
‘Societalizing Social Welfare’and its Effects in Beijing,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University,
April 12, 2012.
邓 毅丞
● Yicheng, Deng,“Reconsidering on Reeducation through Labor,”in Judicial Reform Review.
● Yicheng, Deng,“Research on Organizing Other People to Sell Organ Crime,”in Tsinghua Law Review.
◆ Yicheng, Deng,“Research on Aggregated Consequential Offense Rule,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 12, 2012.
◆ Yicheng, Deng,“Defining the Scope of Aggregated Consequential Offense,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, October 19, 2012.
李 猛
◆ Li, Meng,“Justice, Space and Regional Development: How to Understand and Correct Regional Disparities,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 12, 2012.
◆ Li, Meng,“Decentralization and Regional Inequality of China,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, October 19, 2012.
◆ Li, Meng,“The Internal Tension of Regional Governance Theory,”presented at The 7th China Youth Political scholars Forum, Henan, China, October 26-28, 2012.
◆ Li, Meng,“Regional Inequalities and Megacities Governances: the Experience of China,”presented at Work128
shop of Governance Issues in Megacities: Chinese and International Perspectives, Beijing, China, October
29-30, 2012.
◆ Li, Meng, Commentator at GCOE International Seminar“Nationalism and Peace in East Asia,”Tohoku
University, November 23, 2012.
王 海军
◆ Wang Haijun,“Research on Suicide Related Behavior,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, October 19, 2012.
徐 樹
● Xu, Shu and Xinmeng Wang (Supervising eds.), Tsinghua Law Review, vol.5, Beijing: Tsinghua University
Press, 2011.
● Xu, Shu,“On the Restrictive Jurisdictional Immunity with Respect to State-owned Ships,”in Chinese Journal of Maritime Law, vol.23, no.2, pp.46-53, 2012.
● Xu, Shu,“The Doctrine of Lex Specialis in the Contemporary International Legal Order,”in Wuhan University International Law Review, vol.15, no.2, 2012.
● Xu, Shu,“On the Theory and Practice of the Participation of HKSAR in International Treaties,”in Journal
of Gansu Political Science and Law Institute, no.6, 2012.
● Xu, Shu and Xinmeng Wang (Supervising eds.), in Tsinghua Law Review, vol.6, 2012.
◆ Xu, Shu,“The Expansion of Investor-State Arbitration under International Investment Treaties in the Age of
Globalization,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, October 19, 2012.
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
129
10
2013.3
【GCOEフェロー】
中根 一貴
●中根一貴「19 世紀後半から 20 世紀初頭までの国民的一体性とチェコ政党政治」GEMC journal(東北大学
GCOE)no.1(2009 年)106-121 頁
●中根一貴「19 世紀後半のハプスブルク君主国領ボヘミアにおけるチェコ人とドイツ人の「和解」の試み」
GEMC journal(東北大学 GCOE)no.7(2012 年)164-177 頁
●中根一貴「一体性と競合のあいだ(一)―1907 年から 1914 年までのチェコ政党政治の変容と政党間競合」
法学(東北大学)第 75 巻 5 号(2012 年)518-569 頁
(名古屋大
●中根一貴(書評)「中田瑞穂著『農民と労働者の民主主義―戦間期チェコスロヴァキア政治史』
学出版会、2012 年)」東欧史研究 第 35 号(2013 年)
●大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研
(2012 年)
究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
◆ Nakane, Kazutaka,“National Unity and Czech Party Politics from the Late 19th Century to the Beginning of
20th Century,”Gender Equality and Multicultural Conviviality in the Age of Globalization Kick-off seminar,
Tohoku University, February 4, 2009.
◆中根一貴「19 世紀後半から 20 世紀初頭におけるチェコのナショナルな政治の誕生と変容」
(川内萩ホール
企画展示、2011 年 7 月 -9 月)
「19 世紀後半から 20 世紀初頭におけるハプスブルク君主国領ボヘミアにおけるチェコ人とドイ
◆中根一貴、
ツ人の「和解」の試みと挫折」、東北大学川内萩ホール企画展示(東北大学、2012 年 7 月 -9 月)
◆ Nakane, Kazutaka, Commentator at GCOE International Seminar“Nationalism and Peace in East Asia,”
Tohoku University, November 23, 2012.
◆中根一貴「19 世紀後半から 20 世紀初頭までのチェコ政治とネイション」GCOE 月例研究会(東北大学、
2012 年 12 月 21 日)
薛 軼群
●薛軼群「民国初期的無線電合同糾紛与対外通信権」
『民族主義与近代外交』
(復旦大学出版社、2013 年)
◆薛軼群「20 世紀初期中国における電気通信事業の展開」GCOE 月例研究会(東北大学、
2011 年 11 月 30 日)
◆薛軼群「近代中国不平等条約中的対外通信問題」民族主義与近代外交学術研討会(復旦大学、2012 年 4
月 21 日)
◆薛軼群「日露戦争後東三省的電信利権交渉:対中日、中俄電約的考察」東亜論壇:明清以来的中国(復旦
大学、2012 年 5 月 20 日)
◆薛軼群「グローバル化と中国の情報通信」(川内萩ホール企画展示、2012 年 7 月 - 9 月)
◆薛軼群「日露戦争後日清、露清交渉からみる清朝の電信政策」日中若手歴史研究者セミナー(アモイ大学、
2012 年 8 月 20 日)
◆薛軼群「近代中国の電気通信事業について:有線電報・無線電報を中心に」日中関係史・良友画報研究会
(神奈川大学、2012 年 10 月 11 日)
李 善姫
●李善姫「韓国社会の『共同体論』とジェンダー―女性の巫俗儀礼からのアプローチ」東北大学創立百周年
記念国際シンポジウム「女性百年―教育・結婚・職業」
《いかに生きたか、いかに生きるか》(刊行委員会
編)(2009 年)115-137 頁
●李善姫「韓国における多文化主義の背景と地域社会の対応」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.5(2011
年)6-19 頁
」文化人類学 vol.73, no.3(2008 年)
●李善姫「(書評)宇田川妙子・中谷文美編『ジェンダー人類学を読む』
130
463-468 頁
●大西仁・吉原直樹監修、李善姫・中村文子・菱山宏輔編『移動の時代を生きる―人・権力・コミュニティ』
(GCOE 研究成果シリーズ)(東信堂、2012 年)
●李善姫「グローバル化時代の仲介型結婚移民―東北農村の結婚移民女性達におけるトランスナショナル・
アイデンティティ」大西仁・吉原直樹監修、李善姫・中村文子・菱山宏輔編『移動の時代を生きる―人・
(東信堂、2012 年)3-42 頁
権力・コミュニティ』(GCOE 研究成果シリーズ)
●李善姫「『多文化ファミリー』における震災経験と新たな課題―結婚移民女性のトランスナショナル性を
どう捉えるか」鈴木恵理子編、駒井洋監修『移民ディアスポラ年報 2 東日本大震災と外国人移住者たち』
(明石書店、2012 年)56-74 頁
●李善姫「ジェンダーと多文化の狭間で―東北農村の結婚移住女性をめぐる諸問題」GEMC journal(東北
大学 GCOE)no.7(2012 年)88-103 頁
●大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研
(2012 年)
究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
●李善姫「災害と外国人女性達―ジェンダー平等と多文化共生の主流化をめざして―」GEMC journal(東
北大学 GCOE)no.10(2013 年)74-80 頁
●李善姫「東日本大震災から見た東北日本における多文化共生の成果と課題―結婚移住女性をめぐる諸問題
を中心に」東北学院大学社会福祉研究所叢書Ⅸ(2013 年)
◆李善姫「地域社会における日韓女性のコミュニティ活動と多文化共生」国際シンポジウム「多文化共生社
会のジェンダー平等―グローバリゼーション下のジェンダー・多様性・共生」
(東北大学、2009 年 8 月 4 日)
◆李善姫「韓国の多文化共生施策と地域社会の取り組み」仙台国際交流協会・ダイバーシティ研究所主催「多
文化共生セミナー2010」(仙台国際センター、2010 年 9 月 9 日)
◆李善姫「Multicultural Symbiotic Political Measures in Japan and Current Situation of Women Marriage Migrant in Tohoku Region」東アジア日本学会(韓国釜京大学、2010 年 10 月 23 日)(韓国語発表)
◆李善姫「急変する韓国社会のパラダイムと『多文化社会』への動向―地域社会での取り組みとその明暗―」
日本韓国語教育学会・創立記念国際学術大会(岩手県立大学、2010 年 11 月 4 日)
◆李善姫「アジアのジェンダー構造と格差―彼女らはなぜ結婚移民を選択するのか」仙台市男女共同参画推
進センター/ジェンダー論公開講座(エル・ソーラ仙台、2010 年 11 月 6 日)
◆ Lee, Sunhee,“Current Situation of Women Marriage Migrant in Tohoku Region,”presented at The 7th ISS-
GCOE Seminar Frontiers of Gender Studies, Tohoku University, Tokyo Office, February 25, 2011.
◆ Lee, Sunhee,“A Vision of‘Japanese Multiculturalism’in the Aftermath of the Great Disaster of‘3/11’
,”presented at The SEAA 2011 Conference, Chonbuk National University, Korea, August 4, 2011.
◆李善姫「国際結婚家族の震災経験からみる東北の多文化共生の課題」多文化関係学会震災ワーキンググル
ープ(青山学院大学、2011 年 9 月 11 日)
(川内萩ホール企画展示、2011
◆李善姫「アジアのジェンダー構造と格差―東アジアの結婚移民を考える」
年 7 月 -9 月)
◆李善姫(コメンテータ)結婚移民研究会・京都大学文学部社会学・京都大学 GCOE 共催「地域の担い手
としての結婚移民」(ウィングス京都、2011 年 10 月 16 日)
◆李善姫「災害地域における外国人女性の現況と『文化媒介力』の必要性」GCOE 月例研究会(東北大学、
2011 年 12 月 9 日)
◆李善姫「急変する韓国社会のパラダイムと『多文化社会』への動向」青山学院大学国際交流共同研究セン
ター研究会「多文化状況の最前線では何が起こっているのか(欧州、韓国の動向から)
」
(青山学院大学、
2012 年 2 月 3 日)
◆李善姫「被災外国人支援の『媒介力』と結婚移民女性のエンパワーメント」国際円卓会議シリーズ「東日
本大震災とその後―災害・復興・防災の日中比較を通じた新しい社会の模索」日中社会学会・北京日本学
研究中心共済(東北学院大学、2012 年 2 月 18 日)
◆李善姫「東日本大震災と定住外国人―その時、我々はどんな情報が欲しかったのか」NPO 法人「地球こ
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
131
10
2013.3
とば村」シンポジウム『災害情報はどのように伝えられたか―多文化社会日本のメディア環境と課題―』
(国
際協力基金 JFIC ホール「さくら」、2012 年 2 月 25 日)
◆ Lee, Sunhee and Ayako Nakamura,“Migration in the Globalizing World: Has Human Development Become
Easier?,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 14, 2012.
◆ Lee, Sunhee,“Disaster and Migrant Women in Tohoku Region-after the Great Disaster on March 11,”presented at The Workshop on the Post-3.11“Challenges and Opportunities of Mainstreaming Gender and Diversity in the Priorities and Planning of Tohoku Reconstruction,”University of Victoria in Canada, June 11,
2012.
◆李善姫「東日本大震災における移住女性の問題と媒介力の可能性」第 9 回移住労働者と連帯する全国ワー
クショップ、「災害」分科会報告(新潟国際情報大学、2012 年 6 月 22 日)
◆ Tsuchida, Kumiko and Sunhee Lee,“Rebuilding the Livelihood after the Disaster: the Case Studies of Immigrant Women in Tohoku,”presented at ISA Forum 2012, University of Buenos Aires, August 1, 2012.
◆李善姫「結婚移住女性が地域住民になるためには―市民社会の認識と役割」日本女性会議 2012 仙台(仙
台国際センター、2012 年 10 月 27 日)
◆ Lee, Sunhee,“Vulnerability of Migrant Women in Disaster,”presented at The 5th World Social Forum on
Migrations (WFSM), Manila, Philippines, November 29, 2012.
◆李善姫「被災地の外国人女性の現状―声なき現地適応からエンパワメントへ」東京大学社会科学研究所
GCOE・全所的プロジェクト共催 特別連続セミナー『復興元年を総括する―持続可能な社会の条件』(東
京大学、2012 年 12 月 8 日)
中村 文子
● Nakamura, Ayako, and Hiraku Yamamoto,“Protecting Human Rights in a‘Post-Unilateral’International Society: The Localization of Global Norms and the Limits and Prospects of Global Governance,”in Interdisciplinary Information Sciences, vol.15, no.2, pp.147-162, 2009.
● Nakamura, Ayako and Sebastian Maslow,“Networking Against Human Trafficking in Japan: The Japan
Network Against Trafficking in Persons (JNATIP) and the Polaris Project Japan,”in Asian Politics & Policy,
vol.2, no.3, pp.491-494, 2010.
● Nakamura, Ayako,“Regional Governance against Trafficking in Persons: European Strategies towards the
Implementation of Global Norms,”in GEMC journal, no.4, pp.160-181, 2010.
● Olsen, Frances 著、中村文子訳「フェミニズムから見た多文化共生―それはいかにジェンダー平等と関連
するか―」辻村みよ子・大沢真理編『ジェンダー平等と多文化共生―複合差別を超えて』
(GCOE 研究成
果シリーズ)(東北大学出版会、2010 年)35-48 頁
●大西仁・吉原直樹監修、李善姫・中村文子・菱山宏輔編『移動の時代を生きる―人・権力・コミュニティ』
(GCOE 研究成果シリーズ)(東信堂、2012 年)
●中村文子「地域的な人権ガヴァナンスの一考察―国際人身売買の問題を中心に―」大西仁・吉原直樹監修、
李善姫・中村文子・菱山宏輔編『移動の時代を生きる―人・権力・コミュニティ』
(GCOE 研究成果シリーズ)
(東信堂、2012 年)151-175 頁
●中村文子「ジェンダー・イッシューをめぐる地域ガヴァナンスの可能性―規範企業家としての EU と
ASEAN のトラフィッキングに対する地域的対策を比較して―」公益学研究 第 11 巻第 1 号(2011 年)
51-62 頁
● Veneracion-Rallonza, Lourdes 著、中村文子訳「トランスナショナルな領域におけるシンボリック・ポリ
ティクス―日本軍性奴隷に対する女性国際戦犯法廷の規範的な影響」辻村みよ子・スティール若希編『ア
(東北大学出版会、2012 年)
ジアにおけるジェンダー平等―政策と政治参画』
(GCOE 研究成果シリーズ)
281-322 頁
●大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研
(2012 年)
究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
132
◆中村文子「性的搾取の人身売買―その原因と今後の試み」ECPAT/ ストップ子ども買春の会ユース合宿招
待講演(オリンピック記念青少年総合センター、2010 年 9 月 1 日)
◆中村文子「レトリックからプラクティスへ―反人身売買規範の履行に向けた EU の取り組み」日本公益学
会(成城大学、2010 年 9 月 12 日)
◆中村文子「人身売買をめぐる地域的ガヴァナンス―EU の地域的対策に関する分析」社会・経済システム
学会(同志社大学、2010 年 10 月 30 日)
◆ Nakamura, Ayako,“Modern Slavery in the Age of Globalization: Exploring the Causes behind Trafficking in
Persons and Seeking Global Strategies against Transnational Human Rights Abuses,”invited lecture at So-
cial Science Research Institute of the International Christian University, January 26, 2011.
◆ Nakamura, Ayako,“Regional Governance against Trafficking in Persons: A Comparative Analysis of European and East Asian Approaches towards the Implementation of Global Norms,”presented at International
Conference Towards Multi-lineal International Order of East Asia, Osaka School of International Public
Policy (OSIPP), Osaka University, January 29, 2011.
◆ Nakamura, Ayako,“Regional Governance against Trafficking in Persons: A Comparative Analysis of European and East Asian Approaches towards the Implementation of Global Norms,”presented at The 7th ISSGCOE Seminar Frontiers of Gender Studies, Tohoku University, Tokyo Office, February 25, 2011.
◆中村文子「ジェンダー・イッシューをめぐる地域ガヴァナンスの可能性―規範企業家としての EU と
ASEAN のトラフィッキングに対する地域的対策を比較して―」日本比較政治学会(北海道大学、2011 年
6 月 18 日)
◆中村文子「人身売買の構造的要因と反人身売買の履行に向けた地域機構の取り組み」関西政治社会学会第
1 回研究会(同志社大学、2011 年 6 月 26 日)
◆中村文子「ジェンダー・イッシューをめぐる地域ガヴァナンスの可能性―EU の人身売買に対する地域的
対策を例として―」(川内萩ホール企画展示、2011 年 7 月 -9 月)
◆中村文子「規範インタープリターとしての地域機構と人権規範の普及―ASEAN と EU の人身売買対策を
事例として―」国際政治学会(つくば国際会議場、2011 年 11 月 12 日)
◆中村文子「ジェンダー・イッシューと地域形成―ヨーロッパと東南アジアにおける人身売買に対する地域
ガヴァナンスを事例として」ジェンダー法学会(東北大学、2011 年 12 月 4 日)
◆中村文子「人身売買とジェンダー―女性・女児への性的搾取と差別の構造」仙台市男女共同参画推進セン
ター、ジェンダー論講座⑥(エルソーラ仙台、2011 年 12 月 10 日)
◆ Lee, Sunhee and Ayako Nakamura,“Migration in the Globalizing World: Has Human Development Become
Easier?,”presented at Sakura Seminar, Tohoku University, April 14, 2012.
◆ Nakamura, Ayako,“Human Trafficking and the Evolution of Multilevel Governance: State-Society Relations
and the Crafting of Domestic and Transnational Networks in Southeast Asia,”(Open lecture) at International
Christian University, May 29, 2012.
◆中村文子「ジェンダー・イッシューをめぐる地域ガヴァナンスの可能性」
(川内萩ホール企画展示、2012
年 7 月 -9 月)
◆中村文子「人身売買と東アジアにおける地域カヴァナンスの形成」国際アジア共同体学会・グローバルガ
バナンス学会・政治社会学会・東京外国語大学国際関係研究所・日本公益学会共催 第 1 回「アジアの共生」
ジョイント・コンファレンス(東京外国語大学、2013 年 1 月 12 日)
王 冷然 *
●王冷然『適合性原則と私法秩序』(信山社、2010 年)
(第 7 章)
(成文堂、
●王冷然「消費者保護と適合性原則」佐藤祐介・松岡勝美編『消費者市民社会の制度論』
2010 年)
●王冷然「外国人に対する先物取引の勧誘行為と不法行為」ジュリスト消費者法判例百選 no.200(2010 年)
22-23 頁
●王冷然「適合性原則に関する基礎的考察」私法 75 号(2013 年)
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
133
10
2013.3
◆王冷然「投資者保護について」中国法学会商法学研究会 2010 年年会(大連海事大学法学院、2010 年 7 月 3 日)
◆王冷然「履行期前の契約違反の認定基準」国際物品売買契約に関する国連条約成立 30 周年―回顧と展望:
国際学術研究会(上海対外貿易学院法学院、2010 年 11 月 6 日)
◆王冷然「適合性原則に関する基礎的考察」日本私法学会(法政大学、2012 年 10 月 14 日)
蘇 恩瑩 *
● Soh, Eunyoung,“A Study on‘Individual Dignity’for Gender Equality in the Constitution of Japan,”in Ewha
Journal of Gender and Law (Istitute for Gender and Law, Ewha Womans University, South Korea) vol.1
no.2, pp.103-138, 2010.
● Soh, Eunyoung,“Ten Years’Experience of Gender Quota System in Korean Politics,”in GEMC journal,
no.4, pp.98-105, 2011.
●金善旭・蘇恩瑩「韓国におけるジェンダー平等立法と展望」辻村みよ子・スティール若希編『アジアにお
(東北大学出版会、2012 年)23-54 頁
けるジェンダー平等―政策と政治参画』(GCOE 研究成果シリーズ)
◆ Soh, Eunyoung,“A Breakthrough in Korean Gender Equality Policy: Focusing on the Revised Bill of the
Framework Act on Women's Development,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University, October 18,
2009.
紀 萌 *
● Ji, Meng, Phraseology in Corpus-Based Translation Studies, Oxford and Bern: Peter Lang International International Academic Publisher, 2010.
● Ji, Meng,“A Corpus-Based Study of Lexical Periodization in Historical Chinese,”in Literary and Linguistic
Computing, vol.25, no.2, pp.199-213, 2010.
● Ji, Meng,“A Corpus-Based Study of Linguistic Variation in Modern Chinese Scientific Writing,”in GEMC
journal, no.2, pp.106-115, 2010.
● Ji, Meng,“Using Corpora in Contrastive and Translation Studies,”in R. Xiao (ed.) Invited Review for Target: International Journal of Translation Studies.
◆ Ji, Meng,“A Corpus-based Study of Clausal Conjunctions in Modern Chinese Science Writing,”presented at
Linguistic Society of Korea and KASELL 2010 International Winter Conference on Linguistics, Seoul, South
Korea, January 2010.
◆ Ji, Meng,“Text-based Research in the Era of Digital Humanities,”presented at International Journal of Arts
& Sciences Mediterranean Conference for Academic Disciplines, Malta, February 2010.
◆ Ji, Meng,“Empirical Methodologies in Text-Based Cross-Cultural Studies,”invited talk at Department of
Humanities, Imperial College, UK, February 2010.
◆ Ji, Meng,“Corpus-based Approaches to Translation Teaching,”invited talk at School of Foreign Studies, An
Hui University, China, March 2010.
◆ Ji, Meng,“A Corpus-based Cognitive Study of Nominalization in English and Chinese Scientific Writing,”
presented at the 7th International Conference on Cognitive Science, China, August 2010.
◆ Ji, Meng,“Introducing Corpus Methodology to Chinese Comparative Literature,”invited talk at the Institute
of Foreign Literary Studies, Chinese Academy of the Social Sciences, China, September 2010.
堀見 裕樹 *
●堀見裕樹「国際人権法の視点からみた日本における婚外子相続分差別訴訟に関する一考察」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.5(2011 年)118-141 頁
●堀見裕樹「国際法における「災害」の概念に関する序論的考察―国連国際法委員会の作業を中心に―」植
(信山社、2012 年)159-200 頁
木俊哉編『グローバル化時代の国際法』(GCOE 研究成果シリーズ)
◆堀見裕樹「国際人権法の視点からみた日本における婚外子相続分差別訴訟に関する一考察・補遺」GCOE
研究会(民法研究会共催)(東北大学、2011 年 8 月 11 日)
134
◆ Horimi, Hiroki,“Seeking a Treaty on International Cooperation on Disasters for the Pacific Rim: From the
Experience of the Great East Japan Earthquake,”presented at 8th APRU Research Symposium on Multi-
hazards around the Pacific Rim, Towards Disaster-Resilient Societies: The Role of Universities in Reducing
Risks of Catastrophic Natural Disasters, Tohoku University, September 21, 2012.
◆ Horimi, Hiroki,“Possibility of a Treaty on International Cooperation on Disasters for the Asia-Pacific Region: A Preliminary Study from the Experience of the Great East Japan Earthquake,”presented at GCOE
Monthly Seminar, Tohoku University, November 28, 2012.
安藤 純子 *
●全敬玉著、安藤純子訳「韓国における女性の政治参画とクオータ制の影響―クオータ制 10 年の成果」辻
村みよ子・スティール若希編『アジアにおけるジェンダー平等―政策と政治参画』
(GCOE 研究成果シリ
ーズ)(東北大学出版会、2012 年)55-79 頁
● Piquero-Ballescas, Maria Rosario 著、カルロ・エマニュエル・ピケロ バレスカス・安藤純子訳「フィリ
ピンにおけるジェンダー平等と女性のマグナカルタに関する試論」辻村みよ子・スティール若希編『ア
(東北大学出版会、2012 年)
ジアにおけるジェンダー平等―政策と政治参画』
(GCOE 研究成果シリーズ)
247-257 頁
西山 千絵 *
●西山千絵「ケルゼンにおける憲法裁判権論の展開―合憲性審査権の多様性・個性再考のための試み(一)」
東北法学 39 号(2012 年)1-72 頁
●大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研
(2012 年)
究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
◆西山千絵「新聞社が通信社からの配信に基づき自己の発行する新聞に記事を掲載するに当たり当該記事に
摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるといえる場合―最一小判平成 23 年 4 月 28 日(平
成 21(受)2057 )民集 65 巻 3 号 1499 頁」東北大学公法判例研究会(東北大学、2012 年 5 月 19 日)
【GCOE日本学術振興会特別研究員】
木村 元
●木村元「グアンタナモの拷問被害者による損害賠償請求事件―『対テロ戦争』における『他者』の排斥と
国際人権法の枠組―」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.1(2009 年)66-81 頁
」法学(東北大学)第 73 巻 2 号(2009 年)
●木村元「グアンタナモの被拘禁者をめぐる訴訟と『法の支配』
74-129 頁
●木村元「『対テロ戦争』におけるアラブ・ムスリムに対する差別―米国連邦最高裁判所 Ashcroft v. Iqbal 判
決の意味するところ―」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.3(2010 年)110-125 頁
茂木 洋平 *
●茂木洋平「Affrimative Action の司法審査基準」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.3(2010 年)158174 頁
河北 洋介 *
●河北洋介「第 11 章 身体の自由(被疑者・被告人の権利、
裁判を受ける権利)
」辻村みよ子編著『基本憲法』
(悠々社、2009 年)179-200 頁
●河北洋介「カナダ憲法における平等権と性的指向問題の連関性」
GEMC journal(東北大学 GCOE)no.1(2009
年)52-65 頁
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
135
10
2013.3
●河北洋介「カナダにおける司法積極主義―性的指向関連判例を素材にして―」GEMC journal(東北大学
GCOE)no.3(2010 年)94-109 頁
●河北洋介「カナダにおける『婚姻』概念の変容:カナダ憲法判例に基づいて」GEMC journal(東北大学
GCOE)no.5(2011 年)64-79 頁
●河北洋介「衆議院議員選挙の選挙区割り―最高裁平成二三年三月二三日大法廷判決について―」東北法学
第 38 号(2011 年)1-20 頁
(法律文化社、2012 年)112-126 頁
●河北洋介「人身の自由」安藤高行編『エッセンス憲法』
(法律文化社、2012 年)255-260 頁
●河北洋介「憲法の改正」安藤高行編『エッセンス憲法』
【RA】
白音吉日嘎拉
◆白音吉日嘎拉「水俣病事件現地調査で感じた法と救済」中国の不法行為法(侵権行為法)討論会(内モン
ゴル呼和浩特市、2012 年 8 月 13-15 日)
樋口 恵佳
●樋口恵佳「国際法における相当の注意義務における一考察―国際海底機構の要請に関する勧告的意見を題
材に―」東北法学 第 40 号(2012 年)67-145 頁
川村 一義 *
●川村一義「日本の政党制の変容と野党第一党の機能」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.5(2011 年)
80-103 頁
●川村一義「擬似連立政権下の国会運営:自民党派閥と委員会制度」GEMC journal(東北大学 GCOE)
no.7(2012 年)144-163 頁
竹田 香織 *
●竹田香織「性同一性障害者特例法をめぐる現代的状況―政治学の視点から―」GEMC journal(東北大学
GCOE)no.1(2009 年)94-105 頁
●竹田香織「マイノリティをめぐる政治過程分析のための理論的考察」GEMC journal(東北大学 GCOE)
no.3(2010 年)148-157 頁
」選挙研究 第 25 巻 2 号(2009 年)154-156 頁
●竹田香織「(書評)北村亘著『地方財政の行政学的分析』
●河村和徳・竹田香織「系列再編の視点から見る政権交代―宮城県選挙区」白鳥浩編著『衆参ねじれ選挙の
政治学―政権交代下の 2010 年参院選―』第 7 章(ミネルヴァ書房、2011 年)239-263 頁
●スティール若希著、竹田香織訳「日本の衆議院における女性代表―並立制下の『暫定的』措置と機会の拡
大」辻村みよ子・スティール若希編『アジアにおけるジェンダー平等―政策と政治参画―』
(GCOE 研究
成果シリーズ)(東北大学出版会、2012 年)323-353 頁
◆竹田香織「議員立法とセクシュアル・マイノリティ」日本公益学会(東北公益文科大学、2009 年 9 月 12 日)
◆増山幹高・竹田香織「いかに見たい国会審議映像に到達するか?」2012 年度日本選挙学会ポスターセッ
ション(筑波大学、2012 年 5 月 19-20 日)
◆増山幹高・竹田香織「情報公開制度はどのように利用されているのか?」日本公共政策学会(立命館大学、
2012 年 6 月 16 日)
牧 真理子 *
●牧真理子「ドイツ企業買収法における経営管理者の中立義務と例外規定」GEMC journal(東北大学
GCOE)no.5(2011 年)142-155 頁
●牧真理子・高橋英治「ドイツ企業買収法上の労働者利益」法学雑誌(大阪市立大学)58 巻 1 号(2011 年)
136
1-34 頁
● Maki, Mariko,“Der Schutz von Arbeitnehmerinteressen bei einer Unternehmensübernahme,”in Karl Riesenhuber, Kanako Takayama, Moritz Bälz (Hrsg.), Fuktionen des Vertrages: Deutsch-Japanische Perspektiven, S.103-115, 2013.
◆牧真理子「会社支配権争奪と権限分配」東北大学商法研究会(東北大学、2009 年 5 月 9 日)
◆牧真理子「農業協同組合における監事の任務懈怠」東北大学民法研究会(東北大学、2010 年 3 月 11 日)
◆牧真理子「企業買収の局面における労働者利益の保護」日独交流 150 周年記念事業、日独法律学シンポジ
ウム「法の継受と法整備支援」(慶応大学、2011 年 11 月 5 日)
Sebastian MASLOW*
● Maslow, Sebastian,“News Coverage in Perspective: A Review of‘News On Japan’
,”in Asian Politics &
Policy, vol.2, no.4, pp.679-681, 2010.
● Maslow, Sebastian, Translation: Kimoto, Kimiko,“Balanced Treatment of Employees in Japan: How the
[ NihonPolicy of‘Balanced Treatment of Full-Time Regular and Part-Time Employees’Works in Practice “
gata kinkō shogū”no igi to genkai:“seishain/pāto no kinkō shogū”seisaku no genjitsuka katei no bunseki],”
in Tsujimura, Miyoko and Mari Osawa (eds.), Gender Equality and Multicultural Conviviality: The Challenges of Complex Discrimination (GCOE Project Research Book Series), Tohoku University Press, pp.185213, 2010.
● Maslow, Sebastian,“United in Protest: Japanese Farmers’Struggle against TPP,”in East Asia Forum, March
24, 2011.
● Maslow, Sebastian,“Engagement with North Korea: A Viable Alternative by Sung Chull Kim and David
Kang (eds.),”in North Korean Review, vol.7 (1), pp.105-109, 2011.
● Maslow, Sebastian,“Schicksalsschlag für Japans Bauern [A Stroke of Fate for Japanese Farmers],”in Japan
Markt, pp.24-25, June, 2011.
● Maslow, Sebastian,“Nationalism 2.0 in Japan,”Asian Politics & Policy, vol.3 (2), pp.303-306, 2011.
● Maslow, Sebastian,“The Dynamics of Regionalism in Northeast Asia: Seeking New Pathways towards Regional Cooperation,”in Journal of Public Interest and Common Goods Studies, vol.11, no.1, pp.61-72, 2011.
● Maslow, Sebastian,“Japans TPP-Initiative: Politik zwischen Reform und Ablehnung, ”in Japan Markt,
pp.14-15, December, 2011.
● Maslow, Sebastian,“Im Angesicht des Blackouts: Die AKW-Gegner in Japan werden täglich mehr, die
GrüneWende ist aber nicht absehbar,”in Wiener Zeitung, p.9, January 28, 2012.
● Maslow, Sebastian and Stephanie Assmann,“Warten auf Reformen,”in Japan Markt, pp.16-19, March 2012.
● Maslow, Sebastian,“Renewable Energy and Civil Society in post-Fukushima Japan.”in East Asia Forum,
May 8, 2012.
● Maslow, Sebastian,“Zwischen Aufbruch und Krise: Strukturwandel in Tohoku,”in Japan Markt, pp.10-13,
June, 2012.
● Assmann, Stephanie and Sebastian Maslow,“Freihandel und die Zukunft der lokalen Agrarwirtschaft in Japan,”in Japan Markt, December 2012.
● Maslow, Sebastian,“Clandestine Journalism in North Korea: A Review of Rimjin-gang,”in Asian Politics &
Policy, vol.4 (2), pp.273-287, 2012.
● Maslow, Sebastian,“Right-Wing Politics in Postwar Japan (1945-Present),”in Louis G. Perez (ed.), Japan at
War: An Encyclopedia, Santa Barbara: ABC-Clio, 2013.
● Maslow, Sebastian,“The Making of Northeast Asia by Kent Calder and Min Ye,”in Political Studies Review, vol.11, no.2, 2013.
● Sofsky, Wolfgang 著、佐藤公徳・マスロー セバスティアン訳『安全の原理』
(法政大学出版局、2013 年)
◆マスロー セバスティアン「日本における社会的動員の政治学とその東北アジアの地域主義に対する影響」
政治社会学会第二回研究会(早稲田大学、2010 年 10 月 23 日)
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
137
10
2013.3
◆ Maslow, Sebastian,“The Relationship between Regionalism and Regionalization in the Building of an East
Asian Community: Challenges, Progress, and Opportunities,”presented at Peace and Development Forum
of Chungnam National University, Tsinghua University, and Tohoku University, Chungnam National University, Daejeon, South Korea, November 26, 2010.
◆ Maslow, Sebastian,“The Dynamics of Regionalism in Northeast Asia: Seeking New Pathways towards Regional Cooperation,”presented at International Conference Towards Multi-lineal International Order of East
Asia, Osaka School of International Public Policy (OSIPP), Osaka University, January 29, 2011.
◆ Maslow, Sebastian,“Democratic Governance and Participation in East Asian Politics,”presented at Seminar
held at International Christian University, June 14, 2011.
◆ Maslow, Sebastian,“Japan, Germany and the Governance of Regional Financial Crisis,”presented at Annual
Meeting of the Japanese Association for Comparative Politics, Hokkaidō University, June 18, 2011.
◆ Assmann, Stephanie and Sebastian Maslow,“Public Pressure and Political Purpose: The Abduction Issue,
Food Security and the Role of the State in Political Movements in Japan,”presented at Biennial Conference
of the Japanese Studies Association of Australia, University of Melbourne, Australia, July 7, 2011.
◆マスロー セバスティアン「ドイツにおける原発エネルギーと市民社会―『脱原発社会』への道程」シン
ポジウム「原発エネルギー政治と市民社会―日本、ドイツ、中東の選択」
(立教大学、2011 年 11 月 27 日)
◆マスロー セバスティアン「国内政治と国家安全保障政策のインターフェース―北朝鮮と小泉・安倍政権
における『外交の政治化』」日本政治学会(九州大学、2012 年 10 月 6 日)
◆ Maslow, Sebastian,“Deadlocked Diplomacy: North Korea and the Changing Boundaries of State Autonomy
in Japanese Foreign Policy Making,”presented at Japanese Studies Research Colloquium, Heidelberg Uni-
versity, November 17, 2012.
徐 学柳 *
●吉田浩・徐学柳「通信販売における顧客満足度と再購買行動についての実証分析」
『サービス・イノベー
ションの新展開』(東北大学大学院経済学研究科サービス・イノベーション人材推進プログラムテキスト)
(2010 年)21-40 頁
●徐学柳「国際的環境汚染問題と環境経済政策」Journal of Tohoku Economic Association(東北福祉大学、
2010 年 12 月 11 日)
● Xu, Xueliu,“Exhaustible Natural Resources and Garbage Dump: What is Sustainable Development? A Dynamic Model,”in APPEEC 2011 Asia-Pacific (IEEE Xplore, Ei Compendex and ISTP) pp.1-4, 2011.
● Xu, Xueliu,“International Environmental Pollution Problem and Environmental Policy,”in Journal of Tohoku Economic Association 2010 (Journal of Tohoku Economic Association) pp.30-39, 2011.
● Xu, Xueliu,“International Environmental Pollution Issues and Environmental Policies,”in The Keizai Gaku
Annual Report of The Economic Society, Tohoku University, vol.73, no.1・2, pp.115-116, 2012.
◆ Xu, Xueliu,“International Environmental Pollution Problem and Environmental Policy,”presented at Journal of Tohoku Economic Association, Sendai, Japan, 2010.
◆ Xu, Xueliu,“Exhaustible Natural Resources and Garbage Dump: What is Sustainable Development? A Dynamic Model,”presented at APPEEC2011, Wuhan, China, March 25-28, 2011.
猪瀬 貴道 *
●猪瀬貴道「ベルヌ条約上の日本と北朝鮮との間の権利義務関係が否定された事例」
(渉外判例研究第 545
回)」ジュリスト 1366 号(2008 年)172-175 頁
●猪瀬貴道「投資条約仲裁における国籍継続原則」東北法学 第 33 号(2009 年)97-115 頁
●猪瀬貴道「投資条約仲裁の人的管轄権」東北法学 第 34 号(2009 年)39-101 頁
)
」JCA ジャーナル(日本
●猪瀬貴道「偽装された投資家による仲裁申立(投資協定仲裁判断例研究(21)
商事仲裁協会)第 58 巻 2 号(2011 年)18-26 頁
●猪瀬貴道「投資条約仲裁手続における国籍国に対する請求」東北法学 第 37 号(2011 年)1-28 頁
138
●猪瀬貴道「EU 加盟による BIT への法的効果(投資協定仲裁判断例研究(28)
)
」JCA ジャーナル(日本商
事仲裁協会)第 58 巻 9 号(2011 年)32-38 頁
●猪瀬貴道「投資条約仲裁手続による国家行為の条約適合性判断」植木俊哉編『グローバル化時代の国際法』
(信山社、2012 年)257-295 頁
●猪瀬貴道「契約の紛争処理条項にも関わらず義務遵守条項により管轄権・受理可能性が認められた事例(投
資協定仲裁判断例研究(39))」JCA ジャーナル(日本商事仲裁協会)第 59 巻 9 号(2012 年)24-32 頁
●猪瀬貴道「投資条約仲裁手続における請求主体の制約要因としての権利濫用」日本国際経済法学会年報(日
本国際経済法学会/法律文化社)第 21 号(2012 年)
◆猪瀬貴道「投資条約仲裁における重国籍者」国際経済法研究会(国際文化会館、2010 年 2 月 18 日)
◆猪瀬貴道「Europe Cement Investment & Trade S.A. v. TURKEY.(ICSID Case no.ARB(AF)/07/2)」投資
協定仲裁判断例研究会(曽我・瓜生・糸賀法律事務所、2010 年 12 月 24 日)
◆猪瀬貴道「投資条約仲裁手続の人的管轄権判断における基準時(会社形態の投資家の場合を中心に)」国
際経済法研究会(明治大学、2011 年 7 月 15 日)
」投資協定仲裁判断例研究会(曽我・
◆猪瀬貴道「Eureko v. Slovakia.(PCA Case no.2008-13, UNCITRAL)
瓜生・糸賀法律事務所、2011 年 7 月 25 日)
◆猪瀬貴道「投資条約仲裁手続における『権利濫用』の意義とその判断基準―投資家の国籍の基準時との関
係を中心に」日本国際経済法学会 2011 年度研究大会(学習院大学、2011 年 10 月 30 日)
◆猪瀬貴道「仲裁合意を理由として訴えを却下した原判決に対する控訴を棄却した事例(東京高判平成
22・12・21)」渉外判例研究会(学習院大学、2012 年 3 月 17 日)
」投資協定仲
◆猪瀬貴道「SGS Société Générale de Surveillance v. Paraguay.(ICSID Case no.ARB/07/29)
裁判断例研究会(瓜生・糸賀法律事務所、2012 年 7 月 23 日)
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
139
10
2013.3
【連携拠点若手研究者】
萩原 久美子
●萩原久美子「『公的』セクターと女性」―ローカルなケア供給体制の変動への接近:福島県北の保育政策
(1950 − 2000 年代)を事例に」日本労働社会学会年報 第 22 号(2011 年)43-72 頁
●萩原久美子「『ワーク・ライフ・バランス』をめぐる二つの世界」女性学 第 19 号(2012 年)22-35 頁
● Hagiwara, Kumiko,“Who Wanted the Public Child Care Support?: Organization of Labor of Female Weavers in Rural Area in High Growth Era,”in GEMC journal, no.4, pp.72-91, 2012.
●大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研
(2012 年)
究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
●萩原久美子「同一価値労働同一賃金、その後―再び承認と包摂を問う」大沢真理・辻村みよ子監修、萩原
久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中討議・ジェンダー社会科学の可能
性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS
リサーチシリーズ no.50)(2012 年)46-51 頁
「イエスタ・エスピン=アンデルセン著『平等と効率の福祉革命――新しい女性の役割』」
●萩原久美子(書評)
生活経済政策 183 号(2012 年)40 頁
「藤原千沙・山田和代編著『労働再審③ 労働と女性』
」労働社会学年報 第 23 号(2012 年)
●萩原久美子(書評)
『ワークライフ
◆萩原久美子「ワーク・ライフ・バランスの二つの世界」日本女性学会全体シンポジウム「
バランス』『子ども手当』はジェンダー平等社会へつづく道なのか?∼ライフスタイルに中立な社会政策
を考える」(名古屋市男女平等参画推進センター、2011 年 7 月 30 日)
◆萩原久美子「基調報告:なぜ日本ではジェンダーギャップ解消が進まないのか―基本計画にみる仕事と家
庭」北京 JAC 全国研修セミナー in 静岡(静岡県男女共同参画センター、2011 年 10 月 6 日)
◆萩原久美子「家庭も大事、でも私は自分の意思で働き続けたい―その問いかけに応えて」ワーク・ライフ・
バランス講座(板橋区立男女平等推進センター、2011 年 12 月 10 日)
◆萩原久美子「日本の『WLB』政策―その批判的検討と改革の方向」ジェンダー・格差センシティブな働
き方と生活の調和セミナー(お茶の水女子大学、2012 年 1 月 18 日)
◆萩原久美子「同一価値労働同一賃金、その後に―再び承認と包摂を問う」東北大学 GCOE・東京大学社
(東京大学、
会科学研究所 GCOE 連携拠点主催シンポジウム「集中討議・ジェンダー社会科学の可能性」
2012 年 3 月 20 日)
◆ Hagiwara, Kumiko,“Work-Life Balance Policy in Japan for Whom: Widening Gaps among Women,”presented at the Panel hosted by Professor M. Brinton Work-Family Policies in Japan: Tensions, Contradictions, and Outcomes, Association for Asian Studies, San Diego, CA, March 22, 2012.
◆ Hagiwara, Kumiko,“Gender and Tohoku Reconstruction: an Approach from the Intersections of the Productive and Reproductive Spheres,”presented at Interdisciplinary Workshop, The Challenges and Opportunities
of Mainstreaming Gender and Diversity into Tohoku Reconstruction Policies and Planning, University of
Victoria, Center of Asia Pacific Initiative, June 11, 2012.
◆萩原久美子(討論者)「現金給付とジェンダー―分断、緊縮財政正当化の政治的ツールか?いかに乗り越
えられるのか?」経済理論学会(愛媛大学、2012 年 10 月 6 日)
◆萩原久美子「保育所における労働の時間的構造化とその困難―大阪市の多機能保育所における勤務シフト
表を糸口に」社会政策学会(長野大学、2012 年 10 月 14 日)
皆川 満寿美
●皆川満寿美「日本の災害・復興政策と男女共同参画 / ジェンダー平等」埼玉自治研 no.36(埼玉県地方自
治研究センター、2011 年)19-24 頁
●皆川満寿美「防災・災害復興になぜ女性の参画が必要なのかー『災害復興と男女共同参画 6.11 シンポ』
140
の活動を通して」現代女性とキャリア 第 4 号(日本女子大学現代女性キャリア研究所、2012 年)
●大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研
(2012 年)
究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
◆皆川満寿美「②高齢社会とジェンダー」TAMA 女性センター市民運営委員会企画学習会「ジェンダーの
現在(いま)」(TAMA 女性センター、2011 年 10 月 8 日)
◆皆川満寿美「男女平等を考える①―男女不平等社会・日本とその危機」2011 年度所沢市市民大学講座(所
沢市生涯教育センター、2011 年 10 月 13 日)
◆皆川満寿美「男女平等を考える②―男もつらいよ?」2011 年度所沢市市民大学講座(所沢市生涯教育セ
ンター、2011 年 10 月 20 日)
◆皆川満寿美「③震災とジェンダー」TAMA 女性センター市民運営委員会企画学習会「ジェンダーの現在(い
ま)」(TAMA 女性センター、2011 年 10 月 22 日)
「
〈女性からの政策提言講座〉女性たちよ、この社会の
◆皆川満寿美「災害・復興行政と男女共同参画政策」
羅針盤になろう!―男女共同参画の視点からの地域の災害・防災への政策提言―」
(埼玉県委託事業)(所
沢市男女共同参画推進センター「ふらっと」2011 年 11 月 13 日、熊谷市男女共同参画推進センター「ハー
トピア」2011 年 11 月 20 日、越谷市男女共同参画支援センター「ほっと越谷」2011 年 11 月 24 日)
◆皆川満寿美「防災・災害復興になぜ女性の参画が必要なのかー『災害復興と男女共同参画 6.11 シンポ』
の活動を通して」(日本女子大学現代女性キャリア研究所、2011 年 12 月 10 日)
◆皆川満寿美「防災に〈女性の視点〉を!」ネットワークフォーラム(越谷市男女共同参画支援センター「ほ
っと越谷」、2012 年 2 月 22 日)
◆皆川満寿美「第 2 回 税制と社会保障―「女子ども」と貧困」ハジメテ気づく男女共同参画講座(所沢市
男女共同参画推進センター「ふらっと」、2012 年 2 月 25 日)
◆皆川満寿美「第 3 回 学校教育とジェンダー―いかに教えられていないか」ハジメテ気づく男女共同参画
講座(所沢市男女共同参画推進センター「ふらっと」
、2012 年 3 月 3 日)
◆皆川満寿美「どうして今頃男女平等?―日本社会の持続可能性と男女共同参画」ところざわ倶楽部講演会
(所沢市中央公民館、2012 年 3 月 23 日)
◆皆川満寿美「どうして今頃男女平等?―日本社会の持続可能性と男女共同参画」松戸女性会議講演会(松
戸市女性センター「ゆうまつど」、2012 年 4 月 21 日)
」日本フェミニストカウンセリング学会教育訓練
◆皆川満寿美「ジェンダーとセクシュアリティ(の現在)
基礎講座(国際ファッションセンター、2012 年 7 月 15 日)
ウィメンズハウスとちぎ
「女性のためのカウンセリング講座」
◆皆川満寿美「(日本の)ジェンダー社会と女性」
(とちぎ男女共同参画センター「パルティ」
、2012 年 9 月 2 日)
◆皆川満寿美「格差社会と女性」おとなのための社会学セミナー(男女共同参画センター横浜「フォーラム」、
2012 年 9 月 22 日)
Jackie F. STEELE
● Steele, Jackie F.,“A Reflection upon Japan’
s Multicultural and Multinational Realities,”in Les Cahiers du
CRECQ, 2012.
● Steele, Jackie F.,“Approaching Gender Equality and Intercultural Competence as a Democratic Praxis:
Theoretical Challenges and Preliminary Implications for Tohoku Reconstruction,”in GEMC Journal, no.8,
pp.42-59, 2013.
●スティール若希「民主的実践としてのジェンダー平等と異文化間能力へのアプローチ―東北復興に向けた
理論的課題と予備的考察」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.10(2013 年)58-72 頁
● Steele, Jackie F.,“Re-penser le mythe de la citoyenneté japonaise post-guerre: Vers une reconnaissance des
réalités genrées, multiculturelles et postcoloniales?”in Diversité urbaine, 2013.
◆ Steele, Jackie F.,“Navigating the Surreal: No Communications, No Heat, No Lifelines, But Blessed by the
Bonds of Community,”Invited Lecture: JSAC 30th Anniversary Commemorative Lecture, Japan Studies As若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
141
10
2013.3
sociation of Canada Annual Conference, Carleton University, Ottawa, October 12-24, 2012.
高松 香奈 *
● Takamatsu, Kana,“Official Development Assistance and Human Security in Fragile States: Focusing on Migration from Myanmar,”in GEMC journal, no.2, Tohoku University, pp.68-79, 2010.
● Takamatsu, Kana,“Development Assistance Policy and Gender Equality,”in Social Science Japan Newsletter, no.44, Institute of Social Science, University of Tokyo, pp.19-25, 2011.
●高松香奈『政府開発援助政策と人間の安全保障』
(日本評論社、2011 年)
、大沢真理編『ジェンダー社会科学の可能性 第 4 巻 公正
●高松香奈「第 5 章 人身取引問題と国際協力」
なグローバルコミュニティを 地球的視野の政治経済』
(岩波書店、2011 年)121-145 頁
●高松香奈「難民政策の二重性」大西仁・吉原直樹監修、李善姫・中村文子・菱山宏輔編『移動の時代を生
(東信堂、2012 年)177-208 頁
きる―人・権力・コミュニティ』(GCOE 研究成果シリーズ)
●高松香奈「人身取引対策とジェンダー平等」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.10(2013 年)14-22 頁
‘Human Security’and‘Fragile States’in Japan’
◆ Takamatsu, Kana,“
s ODA Policy: from the Case of Myanmar,”presented at Fifth Annual East Asian Social Policy research Network, National Taiwan University, November 3, 2008.
◆ Takamatsu, Kana,“Looking for New Social Justice in the Globalizing World―from the Perspectives of Gender Equality and Multicultural Conviviality,”presented at Kick-off Seminar on GCOE Program on Gender
Equality and Multicultural Conviviality in the Age of Globalization, Tohoku University, February 3, 2009.
◆ Takamatsu, Kana,“The Approach to Human Security from a Gender Perspective,”presented at International
Association for Feminist Economics, Simmons College, June 28, 2009.
◆高松香奈「脆弱国家支援と人間の安全保障」日本平和学会 2009 年度秋季研究集会(立命館大学、2009 年
11 月 28 日)
◆ Takamatsu, Kana,“Human Security of People from Fragile States: the Qualitative Interviews of Undocumented Burmese Migrants,”presented at American Sociological Association, Hilton Hotel, Atlanta, August
17, 2010.
◆ Takamatsu, Kana,“Migration and Grave Risks to Human Security: Impacts on Families and Family Members in the Context of Myanmar Migrants,”presented at 2010 International Conference on Family At-risk,
National Taiwan University, November 9, 2010.
◆高松香奈「ジェンダーと開発―マクロレベル政策を中心に」国際開発学会 第 22 回全国大会(名古屋大学、
2011 年 11 月 26 日)
◆ Takamatsu, Kana,“International Development Policy and Family at Risk: Examine the Cases from CLMV
countries,”presented at International Conference Family at Risk―vulnerability and Complexity, East and
West, University of Oxford, May 4, 2012.
142
事業推進担当者の主な研究業績一覧
辻村 みよ子
●辻村みよ子『ジェンダーと人権』(日本評論社、2008 年 4 月)
●辻村みよ子「日本学術会議『提言:学術分野の男女共同参画促進のために』パネルディスカッション:
生殖補助医療はどうあるべきか II 人文社会科学等の観点から」学術の動向(特集:生殖補助医療のい
ま―社会的合意にむけて)(日本学術会議科学者委員会男女共同参画分科会 日本学術会議編、2008 年)
32-55 頁
● Tsujimura, Miyoko,“L’
intérêt général en droit constitutionnel français. Contre rapport japonais,”in Société
intérêt général au Japon et en France, Dalloz, FR, pp.169-179, August,
de Législation Comparée (ed.) L’
2008.
●辻村みよ子「ジェンダー平等をめぐる理論と政策」国際女性 21 号(2008 年)159 頁
●辻村みよ子「人権と憲法上の権利」大石眞・石川健治編、ジュリスト増刊・憲法の争点(2008 年)64-65
頁
(有斐閣、2009 年)
●辻村みよ子『憲法とジェンダー』(GCOE 著者シリーズ)
●辻村みよ子『諸外国における政策・方針決定過程への女性の参画に関する調査―オランダ王国・ノルウェ
ー王国・シンガポール共和国・アメリカ合衆国』内閣府男女共同参画局(2009 年)221-228 頁
●辻村みよ子「多文化共生社会のジェンダー平等―イスラムのスカーフ問題を中心に」GEMC journal(東
北大学 GCOE)no.1(2009 年)10-23 頁
●辻村みよ子「日本の男女共同参画社会基本法と諸政策」天野正子ほか編集委員、大沢真理解説『新版 日
本のフェミニズム 4 権力と労働』(岩波書店、2009 年)235-244 頁
●辻村みよ子「二つの憲法観―21 世紀の人権・家族・ジェンダー」憲法問題 第 20 号(2009 年)129-141 頁
●辻村みよ子「ジェンダー法・政策研究叢書の刊行をおえて」ジェンダーと法 第 6 号(2009 年)120-123 頁
●辻村みよ子「公開講演会の趣旨∼学術分野の男女共同参画を一層推進するために∼」学術の動向(特集:
学術分野における男女共同参画促進のために)
(2009 年 7 月)11-13 頁
(GCOE 研究成果シリーズ)
●辻村みよ子・大沢真理編『ジェンダー平等と多文化共生―複合差別を超えて』
(東北大学出版会、2010 年)
● Tsujimura, Miyoko and Mari Osawa (eds.) Gender Equality in Multicultural Societies: Gender, Diversity,
and Conviviality in the Age of Globalization (GCOE Project Research Book Series), Tohoku University
Press, 2010.
●辻村みよ子『フランス憲法と現代立憲主義の挑戦』
(有信堂、2010 年)
●辻村みよ子『ジェンダーと法(第二版)』(不磨書房、2010 年)
』
(三省堂、2010 年)
●初宿正典・辻村みよ子編『新解説 世界憲法集(第二版)
● Blang, Olivier 著、辻村みよ子監訳・解説『オランプ・ドゥ・グージュ―フランス革命と女性の権利宣言』
(信山社、2010 年)
● Tsujimura, Miyoko,“Gendering Strategy for‘Peace as Human Rights’
: Toward the Construction of an AntiMilitary Theory,”in GEMC journal, no.2, pp.80-94, 2010.
●辻村みよ子「政治的・公的分野における女性の参画」国際女性の地位協会編(山下泰子・辻村みよ子・浅
倉むつ子・戒能民江)『コンメンタール 女性差別撤廃条約』
(尚学社、2010 年)19-32 頁
●辻村みよ子「東北大学の男女共同参画−現状と課題」平成 21 年度東北大学男女共同参画委員会報告書(東
北大学、2010 年)89-104 頁
』
(三省堂、2010 年)223●辻村みよ子「フランス共和国」初宿・辻村編『新解説 世界憲法集(第二版)
272 頁
●辻村みよ子「憲法問題としてのジェンダー平等と多文化共生―『憲法とジェンダー』刊行によせて」書斎
の窓 第 594 号(2010 年)2-6 頁
●辻村みよ子「『人権としての平和』論の再構築―平和主義の『ジェンダー化戦略』を契機として」浦田一
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
143
10
2013.3
郎他編[山内敏弘先生古稀記念論文集]『立憲平和主義と憲法理論』
(法律文化社、2010 年)85-103 頁
●辻村みよ子「主権論・代表制論」法学教室 357 号(2010 年)6-10 頁
)
』2010
●辻村みよ子「あとがき」『学術の動向(特集「日本のジェンダー平等の達成と課題を総点検する」
年 9 月号(2010 年)61 頁
● Tsujimura, Miyoko and Jackie F. Steele (eds.), Gender Equality in Asia: Policies and Political Participation
(GCOE Project Research Book Series), Tohoku University Press, 2011.
●辻村みよ子『比較憲法(新版)』(岩波書店、2011 年)
『ジェンダー六法』
(信山社、2011 年)
●山下泰子・辻村みよ子・浅倉むつ子・二宮周平・戒能民江(編集委員)
(日本評論社、2011 年)
●樋口陽一・山内敏弘・辻村みよ子・蟻川恒正『新版 憲法判例を読みなおす』
(日本評論社、2011 年)
●辻村みよ子・長谷部恭男編『憲法理論の再創造』
』
(法律文化社、2011 年)
●辻村みよ子『憲法から世界を診る―人権・平和・ジェンダー〈講演録〉
(岩波書店、2011 年)
●辻村みよ子『ポジティヴ・アクション―「法による平等」の技法』
●辻村みよ子編著『ジェンダー社会科学の可能性 第 3 巻 壁を超える―政治と行政のジェンダー主流化』
(岩波書店、2011 年)
●辻村みよ子編著『ジェンダー社会科学の可能性 第 1 巻 かけがえのない個から―人権と家族をめぐる法
と制度』(岩波書店、2011 年)
●辻村みよ子「序論:男女共同参画型の多元的ガヴァナンスへ」辻村みよ子編著『ジェンダー社会科学の可
(岩波書店、2011 年)1-17 頁
能性 第 3 巻 壁を超える―政治と行政のジェンダー主流化』
●辻村みよ子「政治参画と代表制論の再構築―ポジティヴ・アクション導入の課題」辻村みよ子編著『ジェ
(岩波書店、2011 年)
ンダー社会科学の可能性 第 3 巻 壁を超える―政治と行政のジェンダー主流化』
21-63 頁
●辻村みよ子「序論:個人・家族・国家と法」辻村みよ子編著『ジェンダー社会科学の可能性 第 1 巻 か
けがえのない個から―人権と家族をめぐる法と制度』
(岩波書店、2011 年)1-19 頁
● Tsujimura, Miyoko,“A Gendering Strategy for Peace as a Human Right: Toward the Construction of an
Anti-Military Theory,”in Iwatake Mikako (ed.), New Perspective from Japan and China, Renvall Institute
Publications 27 (University of Helsinki), pp.51-73, 2011.
●辻村みよ子「『男女共同参画と多文化共生』への法学的アプローチ―
『憲法とジェンダー』
の課題をめぐって」
昭和女子大学女性文化研究所紀要 38 号(2011 年)75-85 頁
●辻村みよ子「オランプ・ドゥ・グージュと女性の権利の展開」日仏女性資料センター編『女性空間 28 号』
(2011 年 6 月)8-15 頁
●辻村みよ子「学術分野の男女共同参画『加速』の課題」学術の動向(日本学術会議編)vol.16, no.8(2011
年)64-66 頁
●辻村みよ子『憲法(第 4 版)』(日本評論社、2012 年)
(GCOE 研究成果
●辻村みよ子・スティール若希編著『アジアにおけるジェンダー平等―政策と政治参画』
シリーズ)(東北大学出版会、2012 年)
●辻村みよ子編著『ニューアングル憲法―憲法判例×事例研究』法律文化社(2012 年)
●辻村みよ子『代理母問題を考える』岩波ジュニア新書[日本学術会議・知の航海シリーズ]岩波書店(2012 年)
(三省堂、2012 年)
●辻村みよ子・糠塚康江『フランス憲法入門』
(日本評論社、2012 年)
●樋口陽一・森英樹・高見勝利・辻村みよ子・長谷部恭男編著『国家と自由・再論』
●辻村みよ子「リプロダクティヴ・ライツと国家の関与」樋口陽一・森英樹・高見勝利・辻村みよ子・長谷
部恭男編著『国家と自由・再論』(日本評論社、2012 年)189-211 頁
●辻村みよ子・スティール若希「序論」辻村みよ子・スティール若希編『アジアにおけるジェンダー平等―
(東北大学出版会、2012 年)3-22 頁
政策と政治参画』(GCOE 研究成果シリーズ)
●辻村みよ子「『人権としての平和』と生存権―憲法の先駆性から震災復興を考える」GEMC journal(東北
大学 GCOE)no.7(2012 年)48-59 頁
(法律文化社、
●辻村みよ子「参政権・政党」辻村みよ子編著『ニューアングル憲法―憲法判例×事例研究』
2012 年)
144
●辻村みよ子「人権主体と性差―リプロダクティヴ・ライツを中心に」ジェンダー法学会編〔編集委員、辻
』日本加除出版(2012
村みよ子ほか〕『講座 ジェンダーと法 第 4 巻「ジェンダー法学の切り拓く展望」
年)1-14 頁
●大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研
(2012 年)
究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
●辻村みよ子「既存の学問の壁を超え、さらにフロンティアへ」大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・
皆川満須美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グ
ローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシ
リーズ no.50)(2012 年)8-9 頁
●辻村みよ子「総括討論」大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・
西山千絵編『集中討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化
(2012 年)106-110 頁
共生」社会科学研究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
●辻村みよ子「カウンター・デモクラシーと選挙の効果的協同へ」世界 835 号(2012 年)199-205 頁
●辻村みよ子「リプロダクティヴ・ライツと生殖補助医療」櫻田嘉章・町野朔ほか共著『生殖補助医療と法』
日本学術財団(学術会議叢書 19)(日本学術協力財団、2012 年)97-113 頁
(敬文堂、2012 年)113-127
●辻村みよ子「クオータ制の合憲性」憲法理論研究会編『危機的状況と憲法』
頁
●辻村みよ子「ジェンダー社会科学」の確立をめざして―21 世紀 COE からグローバル COE へ」国際女性
26 号(2012 年)
●辻村みよ子編著『憲法基本判例』(尚学社、2013 年)
(2013 年)
●辻村みよ子「政治分野のクオータ制」WINWIN 冊子『クオータ制』
(尚学社、2013 年)
●辻村みよ子「投票価値の平等」辻村みよ子編『憲法基本判例』
●辻村みよ子「序文―5 年間の GCOE 活動を終えて―」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.10(2013 年)
6-12 頁
◆辻村みよ子「ポジティヴ・アクション:世界女性差別撤廃条約勧告をめぐって」日本弁護士連合会両性の
平等に関する委員会主催講演会(東京弁護士会館、2011 年 5 月 27 日)
◆辻村みよ子「第三次男女共同参画基本計画を実施するために」世界女性会議ネットワーク 関西・大阪府
男女共同参画推進財団共催シンポジウム基調講演(ドーンセンター、2011 年 7 月 30 日)
◆辻村みよ子「『人権としての平和』と生存権―日本国憲法の先駆性から震災復興を考える」仙台弁護士会
女性弁護士 9 条の会主催講演会(仙台弁護士会館、2011 年 11 月 15 日)
◆辻村みよ子「政治分野のポジティヴ・アクション―現状と課題」内閣府・ゾンタクラブ主催シンポジウム
「未来を創る女性リーダーの活躍」(ウィメンズプラザ、2012 年 3 月 17 日)
◆辻村みよ子「政治分野のクオータ制―ポジティヴ・アクション推進の課題」民主党・連合共催「クオータ
制に関する懇談会」(参議院議員会館、2012 年 5 月 29 日)
◆辻村みよ子「ポジティヴ・アクションの意義」内閣府・日本 BPW 連合会共催シンポジウム(甲府商工会議所、
2012 年 11 月 25 日)
◆辻村みよ子(コーディネーター)日本女性会議シンポジウム「きめる、うごく、東北(ここ)から」(仙
台国際センター、2012 年 10 月 27 日)
大西 仁
●大西仁「我々の学問的課題は何か―theoretical approach, normative, approach, policy science としての
GCOE プログラム―」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.5(2009 年)6-9 頁
●大西仁・吉原直樹監修、李善姫・中村文子・菱山宏輔編『移動の時代を生きる―人・権力・コミュニティ
―』(GCOE 研究成果シリーズ)(東信堂、2012 年)
(有斐閣、2012 年)
●加茂利男・大西仁・石田徹・伊藤恭彦『現代政治学・第 4 版』
●大西仁「まえがき」大西仁・吉原直樹監修、李善姫・中村文子・菱山宏輔編『移動の時代を生きる―人・
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
145
10
2013.3
権力・コミュニティ―』(GCOE 研究成果シリーズ)
(東信堂、2012 年)
◆ Ohnishi, Hitoshi,“Towards Peace and Security in East Asia: Focusing on the Transformation of the US-Japan Security Treaty Regime after the Change of Power in Japan,”Invited Lecture, Graduate School of Peace
and Security Studies, Chungnam National University, Korea, April 22, 2010.
◆ Ohnishi, Hitoshi,“Opening Lecture: The Past, Present and Future of Japan,”presented at ELyT School Sendai, Japan, October 25, 2010.
◆ Ohnishi, Hitoshi,“Beyond the Nation State: Can Japan Overcome the Third Major Difficulty in its Modern
History?”Invited Lecture, Department of Political Science, Yonsei University, Korea, November 24, 2010.
◆ Ohnishi, Hitoshi,“Why Have the Chinese and Japanese Peoples Lost Their Mutual Confidence?: Globalizas‘Lost Two Decades’and the Rise of Ethnocentric Nationalism,”Invited Lecture, Xiamen Unition, Japan’
versity, July 10, 2012.
◆ Ohnishi, Hitoshi, Commentator at GCOE International Seminar“Nationalism and Peace in East Asia,”Tohoku University, November 23, 2012.
水野 紀子
●水野紀子「夫による妻所有の不動産の売却と日常家事代理権の範囲 最高裁昭和 44 年 12 月 18 日判決評釈」
不動産取引判例百選〈第 3 版〉(2008 年)26-27 頁
●水野紀子「家族法の弱者保護機能について」鈴木禄弥先生追悼・太田知行・荒川重勝・生熊長幸編『民事
法学への挑戦と新たな構築』(創文社、2009 年)651-684 頁
●水野紀子「生殖補助医療を契機に日本実親子法をふりかえる」法曹時報 61 巻 5 号(2009 年)1-30 頁
●水野紀子「家庭破壊による慰謝料請求事件」北野俊光・梶村太市編『家事・人訴事件の理論と実務』(民
事法研究会、2009 年)147-152 頁
●水野紀子「民法の共有を目指して 能見善久=加藤新太郎編『論点体系・判例民法 9 親族・10 相続』」判例
タイムズ 1295 号(2009 年)91-92 頁
●水野紀子「特集・家族法改正 親権法」ジュリスト 1384 号(2009 年)58-74 頁
(信山社、2010 年)
●町野朔・水野紀子・辰井聡子・米村滋人編著『生殖医療と法』
●水野紀子「民法の観点からみた成年年齢引下げ」ジュリスト 1392 号(2010 年)162-167 頁
●水野紀子「非嫡出子の相続分をめぐる憲法論の対立」法学セミナー662 号(2010 年)4-5 頁
●水野紀子「児童虐待への法的対応と親権制限のあり方」季刊社会保障研究 45 巻 4 号(2010 年)361-372
頁
● Mizuno, Noriko,“Parent-Child Relationship in the Japanese Civil Code: Regarding Medical Technology for
Reproductive Treatment,”in GEMC journal, no.2, pp.16-35, 2010.
● Mizuno, Noriko,“A Comparative Perspective on Japanese Family Law,”in Journal of Intimate and Public
Spheres, Pilot Issue, pp.101-107, March, 2010.
●水野紀子「児童虐待、配偶者間暴力、離婚」町野朔編『児童虐待の予防と対応・科学研究費補助金・基盤
(2010 年)184-192 頁
研究(B)「児童虐待の予防と対応」報告書』
● Mizuno, Noriko,“Parent and Child Relationship in the Japanese Civil Code: Regarding Medical Technology
for Reproductive Treatment,”in Japanese Year Book of International Law, no.52, pp.387-412, 2010.
●水野紀子「第Ⅴ章 親子関係を巡る裁判例・解題」町野朔・水野紀子・辰井聡子・米村滋人編著『生殖医
療と法』(信山社、2010 年)231-234 頁
●水野紀子「代理出産による子と卵子および精子の提供者との特別養子の成立 神戸家裁姫路支部平成 20 年
12 月 26 日審判評釈」私法判例リマークス 41 号(2010 年)70-73 頁
松本恒雄・潮見佳男編
『判例プラクティス・民法Ⅲ親族・
●水野紀子「離婚の撤回 最高裁昭和 34 年 8 月 7 日判決」
相続』(2010 年)16 頁
●水野紀子「仮装離婚の効果 最高裁昭和 38 年 11 月 28 日判決」松本恒雄・潮見佳男編『判例プラクティス・
民法Ⅲ親族・相続』(2010 年)17 頁
(有斐閣、2010 年)119-149 頁
●水野紀子「親権法」中田裕康編『家族法改正―婚姻・親子関係を中心に』
146
●水野紀子「医療における意思決定と家族の役割―精神障害者の保護者制度を契機に、民法から考える―」
法学(東北大学)74 巻 6 号(2011)204-236 頁
●水野紀子「改正臓器移植法の問題点と今後の展開」医学のあゆみ 237 巻 5 号(2011 年)353-361 頁
●水野紀子「改正臓器移植法を考える」日本移植・再生医療看護学会誌 6 巻 2 号(2011 年)15-28 頁
●水野紀子「『相続させる』旨の遺言の功罪」久貴忠彦編集代表『遺言と遺留分・第 1 巻遺言〔第 2 版〕』(日
本評論社、2011 年)199-228 頁
●水野紀子「家族法の本来的機能の実現―男女共同参画社会へ向けて」ジュリスト 1424 号(2011 年)
46-53 頁
●水野紀子「改正臓器移植法の議論の背景と立法的問題点」肝胆膵 63 巻 1 号(2011 年)9-20 頁
●水野紀子「生涯婚姻したことのない被相続人の実子から養子に対して遺留分減殺請求をした事案において、
民法一〇四四条、九〇〇条四号ただし書前段の準用を違憲とした事例 東京高裁平成 22 年 3 月 10 日判決」
評釈私法判例リマークス 43 号(2011 年)74-77 頁
(有斐閣、
●水野紀子「遺体の法的地位」加藤一郎先生追悼・森島昭夫・塩野宏編『変動する日本社会と法』
2011 年)689-721 頁
」法学セミナー683 号(2011
●水野紀子「学問的世界と基礎教育の融合―窪田充見著『家族法―民法を学ぶ』
年)132 頁
●水野紀子「多様化する家族と法」都市問題 102 号(2011 年)62-69 頁
●水野紀子「民法から信託を考える―日本における民法の意義」信託法研究 36 号(2011 年)107-117 頁
(商事法務、
●大村敦志・河上正二・窪田充見・水野紀子編著『比較家族法研究 ―離婚・親子・親権を中心に』
2012 年)
●水野紀子「児童虐待、配偶者間暴力、離婚」町野朔・岩瀬徹編『児童虐待の防止―児童と家庭,児童裁判
所と家庭裁判所』(有斐閣、2012 年)118-133 頁
●水野紀子「親子関係法」大村敦志・河上正二・窪田充見・水野紀子編著『比較家族法研究 ―離婚・親子・
親権を中心に』(商事法務、2012 年)17-29 頁
(日本学術協
●水野紀子「生殖補助医療と民法の親子関係法」日本学術会議『叢書 19・生殖補助医療と法』
力財団、2012 年)193-209 頁
●水野紀子「日本の戸籍制度の沿革と家族法のあり方」アジア家族法学会編『戸籍と身分登録制度』(日本
加除出版、2012 年)
●水野紀子「書評・打越さく良『Q&A DV 事件の実務』日本評論社」自由と正義 vol.63, no.11(2012 年)
75 頁
●水野紀子「性同一性障害者の婚姻による嫡出推定について」松浦好治・松川正毅・千葉恵美子編『加賀山
茂先生還暦記念論文集』(信山社、2013 年)
(GCOE 研究成果シリーズ)
(有斐閣、2013 年)
●水野紀子編『社会法制・家族法制における国家の介入』
(GCOE
●水野紀子「公権力による家族への介入」水野紀子編『社会法制・家族法制における国家の介入』
研究成果シリーズ)(有斐閣、2013 年)
◆水野紀子「法律家からみた非配偶者間の生殖医療」第 29 回日本受精着床学会(京王プラザホテル東京、
2011 年 9 月 10 日)
◆水野紀子「日本の戸籍制度の沿革と家族法のあり方」新・アジア家族法三国会議(早稲田大学、2011 年
11 月 27 日)
◆水野紀子「日本家族法―フランス法の視点から」比較法研究所連続講演会(早稲田大学、
2012 年 1 月 21 日)
◆水野紀子「生殖補助医療と実親子関係法」最先端・次世代開発支援プログラム「グローバル化による生
殖補助医療技術の市場化と生殖ツーリズム:倫理的・法的・社会的問題」
(石川四高記念文化交流会館、
2012 年 5 月 19 日)
稲葉 馨
●稲葉馨「東日本大震災と政府対応」ジュリスト 1427 号(2011 年)21-26 頁
●稲葉馨「公務員制度改革関連法案と人事行政組織の再編」自治総研 38 巻 1 号(2012 年)1-26 頁
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
147
10
2013.3
●稲葉馨「『復興論』について考える」稲葉馨・高田敏文編著『今を生きる・第 4 巻 法と経済』
(東北大学出版会、
2013 年)
植木 俊哉
●植木俊哉「国際法学における『国内モデル試行』
『裁判中心的』批判と国際組織―国際法学における『国
際組織』分析の方法論をめぐって―」中川淳司・寺谷広司編『国際法学の地平:歴史、理論、実証(大沼
保昭先生記念文集)』(東信堂、2008 年)107-122 頁
●植木俊哉「憲法と条約」ジュリスト 1378 号(2009 年)81-91 頁
●植木俊哉「国連国際法委員会による『国際組織の責任』に関する条文草案の批判的考察」法学(東北大学)
第 73 巻 6 号(2010 年)70-102 頁
』
(有斐閣、2010 年)
●植木俊哉「第 7 章 国際組織法」小寺彰・岩沢雄司・森田章夫編『講義国際法(第 2 版)
181-206 頁
●植木俊哉「国際法協会第 74 回(2010 年)ハーグ(オランダ)大会報告 18.『国際組織の責任』に関する
スタディ・グループ」国際法外交雑誌 第 109 巻 3 号(2010 年)175 頁
』
(有斐閣、2011 年)
●中谷和弘・植木俊哉・河野真理子・森田章夫・山本良『国際法(第 2 版)
」別冊ジュリスト・国
●植木俊哉「国際組織の権限―武力紛争時の核兵器使用の合法性事件(WHO 諮問)
際法判例百選(第 2 版)(有斐閣、2011 年)84-85 頁
● Ueki, Toshiya,“Japan’
s Diplomatic Reactions towards the Kosovo’
s Declaration of Independence,”in Japanese Annual of International Law, vol.53, 2011.
●植木俊哉「国際法の主体と関与者」大沼保昭編『21 世紀の国際法―多極化する世界の力と法』
(日本評論社、
2011 年)97-111 頁
●植木俊哉「東日本大震災と福島原発事故をめぐる国際法上の問題点」ジュリスト 1427 号(2011 年)107117 頁
(信山社、2012 年)
●植木俊哉編『グローバル化時代の国際法』(GCOE 研究成果シリーズ)
●植木俊哉「国際法協会第 75 回(2012 年)ソフィア(ブルガリア)大会報告 19『国際組織の責任』に関す
るスタディ・グループ」国際法外交雑誌 第 111 巻 3 号(2012 年)
●植木俊哉「自然災害と国際法の理論」世界法年報 第 32 号(2013 年)1-20 頁
◆植木俊哉「大規模災害と国際法」第 161 回国際立法研究会(法政大学、2011 年 11 月 4 日)
◆ Ueki, Toshiya,“The Earthquake, Tsunami and Nuclear Accident and the Law of the Sea,”presented at The
5th Sino-Japanese Workshop on the Law of the Sea, Dalian, China, November 19, 2011.
◆ Ueki, Toshiya,“Natural Disasters and the Theory of International Law,”presented at the 4th Conference
of Four Societies of International Law: American Society of International Law, Australian & New Zealand
Society of International Law. Canadian Council of International Law and Japanese Society of International
Law, Berkeley, September 28, 2012.
樺島 博志
◆ Kabashima, Hiroshi,“Conception of Rule of Law from an Idealist Point of View,”presented at International
Conference“Rule of Law and Development,”Chinese Academy of Social Sciences, Beijing, December 1516, 2012.
久保野 恵美子
●久保野恵美子「親子の養育関係」ジュリスト 1384 号(2009 年)87-97 頁
(有斐閣、2010 年)173-192 頁
●久保野恵美子「親子の養育関係」中田裕康編『家族法改正』
●久保野恵美子「シンポジウム『成年後見の現状と課題―能力の定義と判定について』民法学の立場から」
法と精神医療 26 号(2011 年)94-104 頁
」実践成年後見 39 号(2011 年)88-96 頁
●久保野恵美子「成年後見における『居所指定』
責任)
」精神医学 54 巻第 2 号(2012
●久保野恵美子「精神保健福祉法と民法 714 条(責任無能力者の監督義務、
148
年)137-143 頁
●久保野恵美子「国際的な後見」論究ジュリスト 2 号(2012 年)142-149 頁
●久保野恵美子「親権(1)―『総則』『親権の喪失』を中心に」大村敦志・河上正二・窪田充見・水野紀子
編著『比較家族法研究―離婚・親子・親権を中心に』
(商事法務、2012 年)235-272 頁
●久保野恵美子「親権に関する外国法資料(1)―フランス法、イギリス法」大村敦志・河上正二・窪田充見・
水野紀子編著『比較家族法研究―離婚・親子・親権を中心に』
(商事法務、2012 年)385-422 頁
●久保野恵美子「日本の親権制度と児童の保護」町野朔・岩瀬徹編『児童虐待の防止―児童と家庭,児童裁
判所と家庭裁判所』(有斐閣、2012 年)102-117 頁
(GCOE 研究
●久保野恵美子「精神障害者と家族」水野紀子編『社会法制・家族法制における国家の介入』
成果シリーズ)(有斐閣、2013 年)
芹澤 英明
●芹澤英明・浅香吉幹・田中利彦・小杉丈夫・松本哲治「合衆国裁判所 2008-2009 年開廷期重要判例概観(座
談会)」アメリカ法 2009-no.2(2010 年)223-277 頁
●芹澤英明「アーキテクチャ時代のアメリカ情報法の課題」アメリカ法 no.1(2010 年)35-52 頁
戸澤 英典
●戸澤英典「EU のジェンダーにかかる域内政策と域外政策について―『規制帝国』の観点から―」法学(東
北大学)第 73 巻 6 号(2010 年)164-187 頁
平田 武
●平田武「政治発展と政治体制」東欧史研究 32 号(2010 年)48-61 頁
●平田武「『歴史の遺産』とその影響―旧東欧諸国における政治発展と制度選択・デモクラシー―」仙石
学・林忠行編『ポスト社会主義期の政治と経済─旧ソ連・中東欧の比較』
(北海道大学出版会、2011 年)
19-48 頁
〈パネルディスカッション〉ソ連崩壊 20 年とその後の
●宇山智彦・大串敦・杉浦史和・平田武・渡邊日日「
世界」ロシア・東欧研究 第 40 号(2012 年)1-33 頁
(GCOE 著者シリーズ)
(刀
● Köver, György 著、平田武訳『身分社会と市民社会―19 世紀ハンガリー社会史』
水書房、2013 年)
◆平田武「ハンガリー史における二つの象徴体系─『国民の祝日』を手がかりに─」科学研究費補助金研究
会「ヨーロッパ境界地域の歴史的経験とパトリア意識/市民権」
(東京外国語大学本郷サテライト、2011
年 7 月 9 日)
◆平田武「民主化・市民社会・中欧論から 20 年─東中欧比較政治研究の認識枠組み─」ロシア・東欧学会
2011 年度(第 40 回)研究大会・共通論題「ソ連崩壊 20 年とその後の世界」第 2 セッション:パネル・デ
ィスカッション(東京国際大学、2011 年 10 月 22 日)
牧原 出
●牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会、2009 年)
阿南 友亮
◆ Anami, Yusuke,“Perceptions and Misperceptions Regarding the Chinese Military: One Aspect of the‘Fragile
,”presented at GCOE Monthly Seminar, Tohoku University, January 25, 2012.
Superpower’
内海 博俊
●内海博俊「開札期日において入札を無効と判断されたため最高価買受申出人とされなかった入札人からの
売却許可決定に対する執行抗告の可否と当該入札の効力」判例評論 629 号(2011 年)20-28 頁
●内海博俊「定額郵便貯金債権が遺産に属することの確認を求める訴え」判例セレクトⅡ(2012 年)31 頁
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
149
10
2013.3
●内海博俊「手形に関する銀行の商事留置権と債務者の民事再生手続」ジュリスト 1445 号(2012 年)109112 頁
桑村 裕美子
●桑村裕美子「労働条件決定における国家と労使の役割(二)
」法学協会雑誌 125 巻 6 号(2008 年)1250頁
1301
」法学協会雑誌 125 巻 7 号(2008 年)1597●桑村裕美子「労働条件決定における国家と労使の役割(三)
1660 頁
」法学協会雑誌 125 巻 8 号(2008 年)1683●桑村裕美子「労働条件決定における国家と労使の役割(四)
1752 頁
」法学協会雑誌 125 巻 9 号(2008 年)1991●桑村裕美子「労働条件決定における国家と労使の役割(五)
2060 頁
」法学協会雑誌 125 巻 10 号(2008 年)
●桑村裕美子「労働条件決定における国家と労使の役割(六・完)
2216-2277 頁
●桑村裕美子「労働者保護法の現代的展開―労使合意に基づく法規制柔軟化をめぐる比較法的考察」日本労
働法学会誌 114 号(2009 年)95-109 頁
『判例サムアップ労働法』
(弘文堂、2011 年)
●山川隆一・森戸英幸編著(桑村裕美子ほか)
● Kuwamura, Yumiko,“Kollektive Gestaltung der Arbeitsbedingungen und Minderheitenschutz in Japan,”in
Recht der internationalen Wirtschaft, Jahr 2012, H.12, S.839-843, 2012.
● Kuwamura, Yumiko,“Die Flexibilisierung des Arbeitsrechts und die Vertretung der Arbeitnehmer in Japan,”
Recht der Arbeit, 85(3), S.155-159, 2012.
●桑村裕美子「協約自治制度と国家介入のあり方―ドイツにおける協約能力、協約単一原則、賃金下限規制
(有
をめぐる議論から」水野紀子編『社会法制・家族法制における国家の介入』
(GCOE 研究成果シリーズ)
斐閣、2013 年)
◆ Kuwamura, Yumiko,“Die Flexibilisierung des Arbeitsrechts und die Vertretung der Arbeitnehmer in Japan,”
presented at Ruhr-Universität Bochum sowie der deutsch-japanischen Gesellschaft für Arbeitsrecht, January
19, 2012.
◆ Kuwamura, Yumiko,“Die Flexibilisierung des Arbeitsrechts und die Vertretung der Arbeitnehmer in Japan,”
presented at Goethe-Universität Frankfurt, March 6, 2012.
◆ Kuwamura, Yumiko,“Gestaltung kollektiver Arbeitsbedingungen und Minderheitenschutz in Japan,”presented at Goethe-Universität Frankfurt, July 2, 2012.
◆桑村裕美子「協約自治制度と国家介入のあり方―ドイツ集団的労働法の新展開を契機として」東北法学会
(東北大学、2012 年 11 月 3 日)
滝澤 紗矢子
●滝澤紗矢子「専売制における公正競争阻害性」経済法判例・審決百選(別冊ジュリスト)199 号(2010 年)
142-143 頁
●滝澤紗矢子「〈判例紹介〉Bertelsmann v. IMPALA.」白石忠志・中野雄介編『判例米国・EU 競争法』商
事法務(2011 年)252-262 頁
●滝澤紗矢子「審決・判決評釈]旧日本道路公団発注高速道路情報表示設備工事談合損害賠償請求事件」公
正取引 729 号(2011 年)90-95 頁
●滝澤紗矢子「(評釈)自動読取区分機類談合事件課徴金審決」平成 22 年度重要判例解説 ジュリスト 1420
号(2011 年)290-292 頁
(GCOE
●滝澤紗矢子「国際事件における日本独禁法の適用・執行」植木俊哉編『グローバル化時代の国際法』
研究成果シリーズ)(信山社、2012 年)81-95 頁
●滝澤紗矢子「アメリカ競争規制に対する O・W・ホームズ・Jr. の理論的寄与」水野紀子編『社会法制・家
(有斐閣、2013 年)
族法制における国家の介入』(GCOE 研究成果シリーズ)
150
嵩 さやか
●嵩さやか「フランスの高齢者所得保障制度と日本への示唆」年金と経済(年金シニアプラン総合研究機構)
29 巻 3 号(通号 115 号)(2010 年)11-17 頁
●嵩さやか「所得比例年金の課題」日本社会保障法学会編『新・講座 社会保障法 1 これからの医療と年金』
(法律文化社、2012 年 7 月)215-235 頁
(GCOE 研究成
●嵩さやか「社会保障と私的扶養」水野紀子編『社会法制・家族法制における国家の介入』
果シリーズ)(有斐閣、2013 年)
◆嵩さやか「年金とジェンダー―遺族年金の男女格差を考える」ジェンダー法学会・プレ企画(東北大学、
2011 年 12 月 3 日)
森田 果
●森田果「ソーシャル・レンディング」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.3(2010 年)50-71 頁
● Morita, Hatsuru,“Can You Live on a Prayer?: An Empirical Analysis of a Marriage Market in Japan,”in
GEMC journal, no.4, pp.86-97, 2011.
● Morita, Hatsuru,“A Hedonic Approach to Radiation Contamination Damages,”in GEMC journal, no.6,
pp.26-37, 2012.
◆ Morita, Hatsuru,“Rescuing Victims and Rescuing TEPCO,”presented at Hagi Seminar, Tohoku University,
October 14, 2011.
◆ Morita, Hatsuru,“Rescuing the Fukushima Victims and Rescuing TEPCO: A Legal and Political Analysis,”
presented at the conference Socio-Legal Norms in Preventing and Managing Disasters in Japan: Asia-Pacific and Interdisciplinary Perspectives, Sydney Law School, March 1-2, 2012.
◆森田果「ヘドニック・アプローチの活用―放射線の地価への影響を分析する―」福島県不動産鑑定士協会
(郡山、2012 年 6 月 1 日)
◆ Morita, Hatsuru,“Rescuing Victims and Rescuing TEPCO: A Legal and Political Analysis of the TEPCO
Bailout,”presented at the Third East Asian Law and Society Conference, Shanghai, March 22-23, 2013(予定)
米村 滋人
●米村滋人「続クロストーク医療裁判 8 MRSA 感染症に関する医療機関の法的責任」病院 67 巻 8 号(2008
年)718-723 頁
●米村滋人「医療に関する基本権規範と私法規範」法学セミナー646 号(2008 年)28-32 頁
」Law & Technology(民事法研究会)第 42 号(2009
●米村滋人「研究室ノート・非法律家の実務的判断と『法』
年)160 頁
●米村滋人「生体試料の研究目的利用における私法上の諸問題」町野朔・辰井聡子編『ヒト由来資料の研究
利用』(上智大学出版、2009 年)80-109 頁
(信山社、2010 年)
●町野朔・水野紀子・辰井聡子・米村滋人編『生殖医療と法』
●米村滋人「『相当程度の可能性』法理の理論と展開」法学(東北大学)74 巻 6 号(2011 年)237-264 頁
●米村滋人「ヒトゲノム指針・臨床研究倫理指針・疫学研究倫理指針―基本概念から見た倫理指針の問題点」
青木清=町野朔編『医科学研究の自由と規制』
(上智大学出版、2011 年)75-91 頁
●米村滋人「医科学研究におけるインフォームド・コンセントの意義と役割」青木清=町野朔編『医科学研
究の自由と規制』(上智大学出版、2011 年)250-276 頁
● Yonemura, Shigeto,“The Rules on Catastrophic Harms in Japan―Liability and Insurance,”in ICCLP Publications, no.11, pp.50-64, 2011.
●米村滋人「ロー・クラス 医事法講義」1-9、法学セミナー687-695 号(2012 年)
●米村滋人「判例紹介 建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵[最高裁第一小法廷平成 23.7.21 判決]」
民商法雑誌 146 巻 1 号(2012 年)115-120 頁
(GCOE
●米村滋人「公的社会保障給付と私法契約」水野紀子編『社会法制・家族法制における国家の介入』
研究成果シリーズ)(有斐閣、2013 年)
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
151
10
2013.3
●米村滋人「『利他的医療』の法原理と国家法」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.10(2013 年)28-34
頁
◆米村滋人「人格権の譲渡性・相続性―ドイツ人格権理論の展開を契機として」東北法学会(東北大学、
2011 年 10 月 22 日)
◆米村滋人「人格権の譲渡性―著作者人格権・パブリシティ権・ヒト試料提供の法律構成」東北大学 GCOE
研究会・民法研究会(東北大学、2011 年 11 月 17 日)
◆米村滋人「医学研究における情報の法律関係―ドイツ遺伝子診断法の規律を手がかりに」医科学政策研究
会(明治学院大学、2012 年 2 月 18 日)
生田 久美子 *
● Martin, Jane Roland 著、生田久美子監訳、大岡一亘・奥井現理・尾崎博美訳『カルチュラル・ミスエデュ
ケーション』(東北大学出版会、2008 年)
●生田久美子「教育を文化的視座から捉えなおすことの意味―『文化』と『思考』に着目して―」教育哲学
研究第 99 号(2009 年)1-8 頁
」佐伯胖監修、渡部信一編『
「学び」の認知科学事典』(大修
●生田久美子「『ケアリング』としての『学び』
館書店、2010 年)81-94 頁
、竹村和久・北村英哉・住吉チカ編『感情と思考の
●生田久美子「わざの習得」、海保博之・松原望(監修)
科学事典』(朝倉書店、2010 年)264-265 頁
●生田久美子編著 坂本辰朗・水原克敏・尾崎博美・八木美保子・畠山大・ジェーン・ローランド・マーティン・
(GCOE 研究成果シ
スーザン・レアード著『男女共学・別学を問いなおす―新しい議論のステージへ―』
リーズ)(東洋館出版社、2011 年)
(慶應義塾大学出版会、2011 年)
●生田久美子・北村勝朗編『わざ言語―感覚の共有を通しての「学び」へ』
『甘え』
●生田久美子「『依存』対『自立』の二項図式を超えて―『甘え』理論が示唆すること」コロキウム「
の比較人間形成論―土居理論と教育現実のあいだ」近代教育フォーラム第 20 号(2011 年)204-206 頁
◆ Ikuta, Kumiko,“What is the Significance of Single-Sex Education?: From a Philosophical and Historical
Point of View (Cotillion 1),”presented at the Society for Educating Women 3rd Conference, University of
New Mexico, September 27-30, 2010.
◆ Ikuta, Kumiko,“Toward the New Form of Knowledge-Some Implications from Experiences in the Japanese
Performing Arts,”presented at the Educational Issues in Japan and Italy: From the viewpoint of Art and
Culture, University of Turin, January 7, 2011.
吉田 浩
●吉田浩「金融危機が大学進学に及ぼした影響」大学財務研究 vol.6(2009 年)91-109 頁
●吉田浩「日本における男女平等度指標の開発―ノルウェー統計局の男女平等度指標を参考に―」GEMC
journal(東北大学 GCOE)no.3(2010 年)82-92 頁
(2010
●吉田浩「玩具福祉プログラムの効果について」玩具福祉の理論と実践(玩具福祉協会 10 周年記念誌)
年)15-23 頁
●吉田浩「社会保障の選択のために国民に示すべき情報―世代会計の視点から―」生活経済学研究 第 32 巻
(2010 年)123-129 頁
●吉田浩「検査報告などに関する財務上の是正改善効果(21 年度試算)に対するコメント」会計検査研究
第 43 号(2010 年)125-131 頁
『サービス・イノベー
●吉田浩・徐学柳「通信販売における顧客満足度と再購買行動についての実証分析」
ションの新展開』(東北大学大学院経済学研究科サービス・イノベーション人材推進プログラムテキスト)
(2010 年)21-40 頁
●吉田浩「日本はスウェーデンに社会福祉を二度学べ」学際 第 23 号(2011 年)25-34 頁
●吉田浩「少子・高齢化と遺産・相続の意義と役割」個人金融 夏号(2011 年)8-18 頁
●吉田浩「都道府県別の高齢者福祉指数に関する研究」GEMC Journal(東北大学 GCOE)no.7(2012 年)
152
62-73 頁
●吉田浩「日本の高齢化の進展と介護・福祉の展望―新人口推計と社会保障費用増大に対応した玩具福祉の
役割―」玩具福祉研究 第 10 号(2012 年)25-32 頁
●吉田浩「台湾における高齢化と公的医療支出の実証分析」研究年報経済学(2012 年)
(GCOE 研究成果シリーズ)
(河
●吉田浩編著『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』
北新報出版センター、2013 年)
●吉田浩「現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画―社会制度に対する経済・経営・統計学的アプ
ローチ―」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.10(2013 年)36-54 頁
◆ Yoshida, Hiroshi,“An Economic Analysis of Japanese Aging,”presented at the Workshop at the National
Cheng Kung University, Taiwan, November 17, 2010.
◆ Yoshida, Hiroshi,“Population Aging and Economic Growth,”presented at The 2011 International Conference in Business and Information, Shih Chien University, Taiwan, May 31, 2011.
◆ Yoshida, Hiroshi,“A Comparative Study on the Fertility Difference between Scandinavian Countries and
East Asian Countries,”presented at Workshop at the EIJS, Stockholm School of Economics, August 6, 2011.
◆ Yoshida, Hiroshi,“Japanese Aging and its Effect on Economy,”presented at Japan Taiwan Joint Seminar on
Population Aging and Economic Growth, Tohoku University, December 16, 2011.
◆ Yoshida, Hiroshi,“Aging and its Effect on Japanese Economy,”presented at the Workshop of Taiwan-Japan
Joint Seminar, Tohoku University, December 16, 2011.
◆吉田浩「政策決定のための世代会計の情報提供の在り方について」第 2 回 明治大学経済学コンファレン
ス報告(明治大学、2012 年 3 月 17 日)
◆ Yoshida, Hiroshi,“Population Aging and its Effect on a Japanese Economy,”presented at the Workshop of
Taiwan-Japan Joint Seminar at the National Cheng Kung University, Taiwan, March 20, 2012.
◆ Yoshida, Hiroshi,“人口老齡化和長期護理保險研究 Aging and Long Term Nursing Care,”presented at tne
Workshop at the National Cheng Kung University, Taiwan, March 22, 2012.
田中 重人
●田中重人「親と死別したとき : 子ども役割の喪失」現代日本人の家族(有斐閣、2009 年)93-102 頁
●田中重人「NFRJ08 標本抽出と調査実施」家族社会学研究 21 巻(2009 年)208-213 頁
●田中重人「女性の経済的不利益と家族 : 分配的正義におけるミクロ・マクロ問題」辻村みよ子・大沢真
(東北大学出版会、
理編『ジェンダー平等と多文化共生―複合差別を超えて』
(GCOE 研究成果シリーズ)
2010 年)99-118 頁
● Tanaka Sigeto,“The Family and Women’
s Economic Disadvantage: a Micro-macro Problem for Distributive
Justice,”in Tsujimura, Miyoko and Mari Osawa (eds.), Gender Equality in Multicultural Societies: Gender,
Diversity, and Conviviality in the Age of Globalization (GCOE Project Research Book Series), Tohoku University Press, pp.215-234, 2010.
●田中重人・永井暁子編『第 3 回家族についての全国調査(NFRJ08)第 2 次報告書 1: 家族と仕事』
(日本社
会学会全国家族調査委員会、2011 年)
● Tanaka, Sigeto,“The Economic Situation of Those Who Have Experienced Divorce,”田中重人・永井暁子
(日本社会学会全国家族調査
編『第 3 回家族についての全国調査(NFRJ08)第 2 次報告書 1: 家族と仕事』
委員会、2011 年)143-163 頁
● Tanaka, Sigeto (ed.), Quantitative Picture of Contemporary Japanese Families: Tradition and Modernity in
the 21st Century (GCOE Project Research Book Series), Tohoku University Press, 2013.
◆ Tanaka, Sigeto,“A Quantitative Analysis of the Economic Situation of Those Who Have Undergone Divorce,”presented at Kyoto Seminar by International Sociological Association, Research Committee 06, Kyoto, September 12, 2011.
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
153
10
2013.3
坪野 吉孝 *
● Ito, Shinichiro, Takachi Ribeka, Manami Inoue, Norie Kurahashi, Motoki Iwasaki, Shizuka Sasazuki, Hiroyasu Iso, Yoshitaka Tsubono, Shoichiro Tsugane; JPHC Study Group,“Education in Relation to Incidence
of and Mortality from Cancer and Cardiovascular Disease in Japan,”in European Journal of Public Health,
18 (5) pp.466-472, 2008.
● Kuwahara A, Yoshitaka Tsubono, et al.,“Socioeconomic Status and Gastric Cancer Survival in Japan,”in
Gastric Cancer, vol.13, no.4, pp.222-230, 2010.
● Takachi R, Yoshitaka Tsubono, et al.,“Fruits and Vegetables in Relation to Prostate Cancer in Japanese Men:
The Japan Public Health Center-Based Prospective Study,”in Nutr Cancer, vol.62, no.1, pp.30-39, 2010.
矢野 恵美 *
●小竹聡・梅澤彩・矢野恵美「学会回顧ジェンダー」法律時報 1016 号(2009 年)330-337 頁
●矢野恵美「ハラスメントと差別に関する規定の可能性」犯罪学雑誌 75 巻 6 号(2009 年)173-178 頁
◆矢野恵美「矯正施設における処遇とジェンダー」ジェンダー法学会(東北大学、2011 年 12 月 4 日)
大沢 真理
●上野千鶴子・大熊由紀子・大沢真理・神野直彦・副田義也『ケア その思想と実践 6 ケアを実践するしかけ』
(岩波書店、2008 年)
●大沢真理「生活保障システムという射程の社会政策研究」社会政策・創刊号(2008 年)31-43 頁
●天野正子・伊藤公雄・伊藤るり・井上輝子・上野千鶴子・江原由美子・大沢真理・加納実紀代『新編 日
本のフェミニズム 4 権力と労働』(岩波書店、2009 年)
●大沢真理「希望が台無し 逆機能する生活保障システム」東大社研・玄田有史・宇野重規編『希望学[4]
希望のはじまり 流動化する世界で』(東京大学出版会、2009 年)154-183 頁
(GCOE 研究成果シリーズ)
●辻村みよ子・大沢真理編『ジェンダー平等と多文化共生―複合差別を超えて』
(東京大学出版会、2010 年)
● Tsujimura, Miyoko and Mari Osawa (eds.), Gender Equality in Multicultural Societies: Gender, Diversity,
and Conviviality in the Age of Globalization (GCOE Project Research Book Series), Tohoku University
Press, 2010.
●大沢真理『いまこそ考えたい 生活保障のしくみ』岩波ブックレット no.790(2010 年)
『現代生協論の探求 新たなステップをめざして』
●神野直彦・大沢真理「まえがき」,現代生協論編集委員会編
(コープ出版、2010 年)3-11 頁
,現代生協論編集委員会編『現代生協論の探求 新
●大沢真理「生活保障システムの再構築と生活の協同」
たなステップをめざして』(コープ出版、2010 年)19-43 頁
● Osawa, Mari,“Introduction: Income Inequality, Social Exclusion and Redistribution,”in Social Science Japan Journal, vol.13, no.1, pp.1-3, 2010.
● Osawa, Mari,“Reconstructing the Livelihood Security System through Co-operation,”in The Consumer Cos
operative Institute of Japan (ed.), Toward Contemporary Co-operative Studies: Perspectives from Japan’
Consumer Co-ops, Tokyo: Consumer Co-operative Institute of Japan, pp.184-206, 2010.
● Osawa, Mari, Social Security in Contemporary Japan, A Comparative Analysis, London and New York:
Routledge/University of Tokyo Series, 2011.
●大沢真理編著『社会的経済が拓く未来―危機の時代に「包摂する社会」を求めて―』
(ミネルヴァ書房、
2011 年)
(岩波書店、
●大沢真理編著『ジェンダー社会科学の可能性 第 2 巻 承認と包摂へ―労働と生活の保障―』
2011 年)
●大沢真理『ジェンダー社会科学の可能性 第 4 巻 公正なグローバル・コミュニティを―地球的視野の政
治経済―』(岩波書店、2011 年)
●大沢真理・堂本暁子・山地久美子共編著『「災害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジウム∼災害・復興
154
に男女共同参画の視点を∼』GCOE 東京大学社会科学研究所連携拠点研究成果シリーズ no.4(2011 年)
(岩波書店、
● Esping-Andersen, Gøsta 著、大沢真理監訳『平等と効率の福祉革命―新しい女性の役割―』
2011 年)
●大沢真理「危機や災害に脆い社会を再構築するために―「男性稼ぎ主」型からの脱却を―」女性と労働
21 no.78(2011 年)29-41 頁
●大沢真理・辻村みよ子監修、萩原久美子・皆川満寿美・李善姫・中根一貴・中村文子・西山千絵編『集中
討議・ジェンダー社会科学の可能性』GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」社会科学研
(2012 年)
究所連携拠点研究シリーズ no.5(ISS リサーチシリーズ no.50)
● Osawa, Mari,“Gender-Equality and the Revitalization of Japan’
s Society and Economy under Globalization,”in a Background Paper for the World Bank, World Development Report 2012: Gender Equality and
Development, pp.2-21, 2012.
●大沢真理「グローバル化、金融経済危機と生活保障システム」ジェンダー研究 第 15 号(2012 年)33-47
頁
●大沢真理「税・社会保障の逆機能と打開の道」生活経済政策 no.184(2012 年)11-17 頁
●大沢真理・中野麻美・林陽子・遠藤智子「ラウンド・テーブル記録集『生活・雇用・いのち“実現したい
私たちの一体改革”』」女性と労働 21 no.81(2012 年)6-45 頁
「逆機能」の解消を」公衆衛生 76 巻 10 号(2012 年)810-814
●大沢真理「税・社会保障一体改革により、
頁
● Osawa, Mari,“Japan’
s Postwar Model of Economic Development Has Rendered Japanese Society Vulnerable to Crises and Disasters,”in GEMC journal, no.8, pp.22-40, 2013.
●大沢真理「福祉レジーム論から生活保障システム論へ」GEMC journal(東北大学 GCOE)no.9(2013 年)
6-28 頁
◆大沢真理「戦後日本型の経済開発が災害に脆い社会をつくった」日本弁護士連合会シンポジウム「女性こ
そ主役に!災害復興―東日本大震災後の日本社会の在り方を問う―」
(弁護士会館、2011 年 9 月 8 日)
◆ Osawa, Mari,“Revenue-raising Side is More Problematic than Spending; The Case of Japan’
s Societal Crisis,”presented at the Conference on“Two Political Economies in Crisis: Historical and Comparative Perspectives on the Fiscal Dilemmas Facing Japan and the United States?”Keio University, December 10-11,
2011.
◆ Osawa, Mari,“Revenue-raising Side is More Problematic than Spending; The Case of Japan’
s Societal Crisis,”presented at the plenary session on“Sustainable Welfare States: Experiences in OECD World,”at the
Korean Association of Social Policy Conference on‘Towards Sustainable Welfare States, June 1, 2012.
◆ Osawa, Mari, ”
Contextualizing the Socio-Economic Strategy of the DPJ: Koizumi’
s Policy and the EU’
s
Lisbon Strategy,”presented at the SSK Networking Project: International Symposium on Social Risks and
Multi-dimensional Polarization in Welfare States, June 2, 2012.
◆ Osawa, Mari,“Postwar Japanese Model of Economic Development Has Rendered the Society Vulnerable
to Crises and Disasters,”presented at the Workshop on Post-311 Challenges and Opportunities: Gender and
Diversity Mainstreaming in the Priorities and Planning of Tohoku Reconstruction, June 11, 2012.
◆大沢真理「高齢社会論の最前線 問題提起」日本学術会議公開シンポジウム「高齢社会論の最前線」
(2012
年 9 月 29 日)
佐藤 博樹
●佐藤博樹編著『ワーク・ライフ・バランス―仕事と子育ての両立支援(子育て支援シリーズ第 2 巻)』(ぎ
ょうせい、2008 年)
(勁草書房、
●佐藤博樹・武石恵美子『人を活かす企業が伸びる―人事戦略としてのワーク・ライフ・バランス』
2008 年)
●佐藤博樹「企業経営とワーク・ライフ・バランス支援」ジュリスト 1383 号(2009 年)104-113 頁
(日本経済新聞出版社、2010 年)
●佐藤博樹・武石恵美子『職場のワーク・ライフ・バランス』
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
155
10
2013.3
●佐藤博樹・永井暁子・三輪哲編著『結婚の壁―非婚・晩婚の構造』
(勁草書房、2010 年)
(勁草書房、2011 年)
●佐藤博樹・武石恵美子編著『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』
●佐藤博樹『人材活用進化論』(日本経済新聞出版社、2012 年)
」社会科学研究 64 巻 1 号(2012 年)1-5 頁
●佐藤博樹「特集『ワークライフバランス』と『男女雇用均等』
◆ Yukiko Asai and Hiroki Sato,“The Impact of Government Initiatives in Promoting Work-Life Balance,”pre-
sented at Work and Family Researchers Network, New York, June 16, 2012.
◆佐藤博樹「正社員の限定化と非正社員の無限定化:人事管理の新しい課題」日本労務学会 第 42 回全国大
会(和歌山大学、2012 年 7 月 13 日 -15 日)
不破 麻紀子
●不破麻紀子「第 4 章:同棲経験者の結婚意欲」佐藤博樹・永井暁子・三輪哲編『結婚の壁―非婚・晩婚の
構造』(勁草書房、2010 年)77-96 頁
●不破麻紀子・筒井淳也「家事分担に対する不公平感の国際比較分析」家族社会学研究 22 巻 1 号(2010 年)
52-63 頁
● Fuwa, Makiko,“Child-related Employment Intermittence and Housework: USA, Sweden, and Japan,”in Social Science Japan Newsletter 44, pp.14-18, 2011.
● Esping-Andersen, Gøsta 著、不破麻紀子訳「女性の役割の革命と家族」Esping-Andersen, Gøsta 著、大沢
真理監訳『平等と効率の福祉革命―新しい女性の役割―』
(岩波書店、2011 年)21-56 頁
●不破麻紀子「就業環境の地域差と高学歴女性の就業」社会科学研究 64 巻 1 号(2012 年)114-133 頁
● Nemoto, Kumiko, Makiko Fuwa and Kuniko Ishiguro,“Never-Married Employed Men’
s Gender Beliefs and
Ambivalence Toward Matrimony in Japan,”Journal of Family Issues, 34(1), 2013.
● Fuwa, Makiko,“Work-Family Conflict and Attitudes toward Marriage,”in Journal of Family Issues.
●不破麻紀子「既婚男性の就業環境・働き方:家事分担を規定するか」佐藤博樹編「格差の連鎖と若者」『第
2 巻 若者の交際と結婚』(2013 年)
● Apitzsch, Birgit 著、不破麻紀子・石黒久仁子訳「ドイツ労働市場の柔軟化:自律的な職業人生への転換か?」
)
ドイツ日本研究所
(田
(
“Flexibization in the German Labor Market: Towards a Self-directed Working Life?”
中・岩田・ゴツィック)編『ライフコース選択のゆくえ』
(新曜社、2013 年)
◆ Fuwa, Makiko,“Cohabitation and Marital Relationship in Japan”presented at the Annual Meeting of the
American Sociological Association, Las Vegas, NV, August 22, 2011.
◆不破麻紀子「同棲経験と家事分担」家族社会学会第 21 回大会(甲南大学、2011 年 9 月 10 日)
◆ Fuwa, Makiko,“Housework and Marital Conflict”presented at Conference of Inequality of Well-being in
Asia and Beyond, National Taipei University, Taiwan, June, 2012.
◆ Fuwa, Makiko,“Cohabiting Couple’
s Division of Household Labor in Japan”presented at the Annual Meeting of the American Sociological Association, Denver, CO, August 18, 2012.
◆不破麻紀子「夫の働き方・就業環境と家事分担―社研パネル調査データから」第 22 回日本家族社会学会
大会(お茶の水大学、2012 年 9 月 17 日)
水町 勇一郎
●森戸英幸・水町勇一郎共編『差別禁止法の新展開』
(日本評論社、2008 年)331 頁
● Mizumachi, Yuichiro,“Why Are There Many Expendable Workers in Japan? Issues and Mechanisms Underlying the Non-Regular Worker Problem?”in Social Science Japan, vol.41, pp.7-10, 2009.
●水町勇一郎『労働法〔第 3 版〕』(有斐閣、2010 年)
(日本経済新聞
●水町勇一郎・連合総合生活開発研究所『労働法改革―参加による公正・効率社会の実現』
出版社、2010 年)
(日本評論社、
●鶴光太郎・樋口美雄・水町勇一郎編著『労働時間改革―日本の働き方をいかに変えるか』
2010 年)
●水町勇一郎「『上からの命令』『多数者による決定』から『現場・少数者の意見の反映・尊重』へ―『労働
156
法改革』のための議論のポイント」労働法律旬報 1724 号(2010 年)54-59 頁
● Mizumachi, Yuichiro,“Jurisprudence sur le licenciement pour raison économique: prudence des juges ou des
acteurs?,”in Revue de droit du travail, Dalloz, no.10, pp.607-609, 2010.
●水町勇一郎「うつ病により休職している労働者の解雇と使用者の責任―東芝(うつ病・解雇)事件・東京
地判平成 20・4・22 労判 965 号 5 頁」季刊労働法 229 号(2010 年)124-130 頁
●水町勇一郎「労働者のうつ病自殺と業務起因性判断―国・福岡東労基署長(粕屋農協)事件・福岡高裁平
成 21 年 5 月 19 日判決」ジュリスト 1413 号(2010 年)123-126 頁
●水町勇一郎『労働法入門』(岩波書店、2011 年)
●荒木尚志・奥田香子・島田陽一・土田道夫・中窪裕也・水町勇一郎・村中孝史・森戸英幸著『ケースブッ
ク労働法〔第 3 版〕』(有斐閣、2011 年)
●水町勇一郎「『同一労働同一賃金』は幻想か?―正規・非正規労働者間の格差是正のための法原則のあり方」
鶴光太郎・樋口美雄・水町勇一郎編著『非正規雇用改革―日本の働き方をいかに変えるか』
(日本評論社、
2011 年)271-297 頁
●水町勇一郎「労働組合法上の労働者性」ジュリスト 1426 号(2011 年)10-22 頁
●水町勇一郎『労働法〔第 4 版〕』(有斐閣、2012 年)
●水町勇一郎「労働組合法上の労働者」ロースクール研究 no.19(民事法研究会、2012 年)114-116 頁
●水町勇一郎「労働法―人間らしく生きるための闘い」法学教室 380 号(有斐閣、2012 年)23-26 頁
● Mizumachi, Yuichiro,“Métamorphpse du droit du travail: Le fondement théorique et le cas japonais,”in Re-
vure de droit compare du travail et de la sécurité sociale, pp.25-35, 2012.
●水町勇一郎「民法 623 条」土田道夫編『債権法改正と労働法』
(商事法務、2012 年)2-26 頁
●水町勇一郎「懲戒」別冊法学セミナー220 号『新基本法コンメンタール 労働基準法・労働契約法』(日本
評論社、2012 年)389-394 頁
●高橋陽子・水町勇一郎「労働審判制度利用者調査の分析結果と制度的課題」日本労働法学会誌 120 号(法
律文化社、2012 年)34-46 頁
石黒 久仁子 *
● Ishiguro, Kuniko,“Changes in Japanese Companies’Personnel Management Practices Relating to Female
Employees: From the Early 1980s to the Early 2000s,”in Sierk A. Horn (ed.) Emerging Perspectives in Japanese Human Resource Management, Peter Lang, pp.129-163, 2011.
● Ishiguro, Kuniko,“Japanese Employment in Transformation: The Growing Number of Non-regular Workers,”in Iles, Timothy (eds.), The ejcjs Omnibus: Ten Years of Investigation, Analysis, and Scholarship on Japan, Lexington Books, pp.179-213, 2012.
●石黒久仁子「女性管理職のキャリア形成―事例からの考察」GEMC Journal(東北大学 GCOE)no.7(2012
年)104-129 頁
● Apitzsch, Birgit 著、不破麻紀子・石黒久仁子訳「ドイツ労働市場の柔軟化:自律的な職業人生への転換か?」
)
ドイツ日本研究所
(田
(
“Flexibization in the German Labor Market: Towards a Self-directed Working Life?”
中・岩田・ゴツィック)編『ライフコース選択のゆくえ』
(新曜社、2013 年)
若手研究者・事業推進担当者の主な業績一覧
157
10
2013.3
主な研究会&ワークショップ等一覧
本 GCOE プログラムは、CNDC の新入生オリエンテーションを主目的に、毎年、春に桜セミナーを、秋
に萩セミナーを開催してきました。2012 年度は、2012 年 4 月に第 3 回桜セミナーを、10 月に第 4 回萩セミ
ナーを開きました。8 月には、本 GCOE プログラムの 5 年間の研究活動成果をまとめる総括研究会を開催し
ました。
また、プロジェクトの横断的な全体研究会を月例研究会として毎月開催しました。
桜セミナー2012
3 回目となる「桜セミナー2012」は、2012 年 4 月 12 日∼14 日に仙台の東北大学片平キャンパスと作並に
おいて開催されました。
今回の桜セミナーは、以下のような 5 部構成で行われました。
第1部では、2012年4月にCNDCに参加するために東北大学博士課程に編入学した3人の博士課程の学生(そ
れぞれ、シェフィールド大学、中国社会科学院、清華大学の博士課程にも在籍)が、各自の研究テーマにつ
いて紹介しました。
第 2 部では、2011 年度末に、東北大学とシェフィールド大学から博士のダブルディグリーを取得したばか
りの 5 人の若手研究者が両大学に提出した各自の博士論文について報告し、大変に活発な議論が展開されま
した。
(その中、5 名は清華大学、
第 3 部では、以前から東北大学博士課程で研究に従事している 8 人の CNDC 在学生
2 名は中国社会科学院、1 名は延世大学校の博士課程にも在籍)が、各自の博士論文の進捗状況について報
告し、ディスカッションが行われました。
第 4 部では、本 GCOE の 3 つの研究プログラムの研究成果として最近刊行された 3 冊の本についての報告と、
それをめぐる議論が展開されました。
第 5 部では、本 GCOE の数名の事業推進担当者が中心になって作成し刊行されたばかりの 4 巻本のシリー
ズの成果を基に、ジェンダー社会学の可能性についての議論がなされました。
震災から 1 年余りを経て開かれた、今回の桜セミナーは、大震災によって引き起こされた研究・教育活動
のしばしの休止を取り返して、なお余りある活発で豊かなものになりました。そして、上記のように、本
GCOE が、教育の面でも研究の面でも、着実な成果を上げつつあることを内外に示すセミナーにすること
ができました。
2012 年 3 月に学位取得したシェフィールド
大学の修了生 5 名と本拠点リーダー、サブリ
ーダー
158
4 月12日(木)
New CNDC Students’Ph.D. Thesis Introduction Reports
Chair: OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
KANDA Fumi (The University of Sheffield)
LI Meng (Chinese Academy of Social Sciences)
DENG Yicheng (Tsinghua University)
4 月13日(金)
Opening Remarks
Presenter: OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
Presentations of CNDC Ph.D. Degree Recipients
Chair: OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
Kamila SZCZEPANSKA (The University of Sheffield)
SHEA (The University of Sheffield)
Paul O’
Ra MASON (The University of Sheffield)
Paola CAVALIERE (The University of Sheffield)
Sven MATTHIESSEN (The University of Sheffield)
CNDC Students’Progress Reports
Chair: MORITA Hatsuru (Associate Professor, School of
Law, Tohoku University)
FAN Jian (Tsinghua University)
CAO Dongyuan (Chinese Academy of Social Sciences)
QU Tian (Chinese Academy of Social Sciences)
ZHANG Lingling (Tsinghua University)
CHEN Rui (Tsinghua University)
KIM Hyun (Yonsei University)
WU Teng (Tsinghua University)
FAN Shiwei (Tsinghua University)
4 月14日(土)
Presentations of GCOE Publications
Chair: OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
Ohnishi Project: GCOE Project Research Book Series
Id no jidai wo ikiru―hito, kenryoku, komyunithi [Migration in the Globalizing World: Has Human Development Become Easier?]
H. Ohnishi & N. Yoshihara (supervising eds.), Lee, Sunhee, Ayako Nakamura and Kosuke Hishiyama (eds.)
(Toshindo Publishing, March 2012)
◆ Presenters: NAKAMURA Ayako and LEE Sunhee (GCOE Fellows)
Tsujimura Project 2: GCOE Project Research Book Series
Ajia ni okeru jend by d ―Seisaku to seiji sankaku [Gender Equality in Asia: Policies and Political Participation]
M. Tsujimura & J.F. Steele (eds.)(Tohoku University Press, March 2012)
主な研究会&ワークショップ等一覧
159
10
2013.3
◆ Presenter: Jackie F. STEELE (Former Lecturer, Simon Fraser University)
Ueki Project: GCOE Project Research Book Series
Gur baruka jidai no kokusaih [International Law in the Age of Globalization], T. Ueki (ed.)(Shinzansha,
March 2012)
◆ Presenter: UEKI Toshiya (Professor, School of Law, Tohoku University)
Books Published by GCOE Project Members (not subsidized by GCOE)
Jend Shakaikagaku no Kanousei (zen 4 kan) [Gendering Social Sciences, on Micro, Socio-political and
Global Levels (4 volume series)]M. Tsujimura & M. Osawa (eds.)(Iwanami Shoten, 2011)
◆ Commentator: OSAWA Mari (Professor, The University of Tokyo)
◆ Presenter: Jackie F. STEELE (Former Lecturer, Simon Fraser University)
Closing Remarks
Presenter: OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School
of Law, Tohoku University)
GCOE 総括研究会
本 GCOE プログラムの 5 年間の総決算として、多様な研究活動の成果、とく
にそのシナジー効果を検証するため、2012 年 8 月 2 日、仙台国際センターで総
括研究会を開催しました。
当日は、人身取引、ワーク・ライフ・バランス、生殖補助医療、大震災復興
問題などをめぐって 4 本の報告と討論を行いました。これらは、いずれも、男
女共同参画(ジェンダー平等)と多文化共生問題研究のシナジー効果が明確に
示された分野であり、グローバル時代における問題の多面的側面と課題の深刻
さが明らかになりました。フロアには、研究教育協力者でもある橋本ヒロ子国
連女性の地位委員会日本代表、原ひろ子 JAICOWS(女性研究者の環境改善に
関する懇談会)代表、山下泰子国際女性の地位協会常務理事など、日本の男女
共同参画を担ってこられた多数のキーパーソンが参加して発言しました。これ
により、対外的にも、対内的にも、非常に充実した総括の機会を得ることがで
。
きました(内容については、本号掲載の報告とコメントを参照してください)
このほか、この研究会で報告されなかった分野を含め、総括的な研究成果の報告会を、2012 年の萩セミ
ナー(10 月 18 日− 21 日)の第 1 日に開催し、すべての研究プロジェクトが参加して成果と課題を論じあい
ました。
本拠点は、「グローバル時代におけるジェンダー平等と多文化共生に関わる様々な社会問題を抽出して理
論的に分析し、問題克服の糸口を解明して社会に還元する」という大きな課題に対して、それぞれの分野で、
大きな成果を得たと評することができます。我々の 5 年間の活動が、世界のジェンダー平等(男女共同参画)
と多文化共生の進展、諸課題の解決のために寄与し続けることができることを、
一同、
心より願っております。
GCOE 総括研究会「ジェンダー平等と多文化共生∼プロジェクト研究成果の統合∼」
日 時:2012 年 8 月 2 日(木)13:00 ∼17:45
会 場:仙台国際センター3 階「小会議室 8」
開会挨拶・趣旨説明 辻村 みよ子(GCOE 拠点リーダー、東北大学大学院法学研究科教授)
160
【報告 1】
報 告 「人間の安全保障と男女共同参画」
高松 香奈(国際基督教大学教養学部准教授)
コメンテータ 大沢 真理(GCOE 連携拠点リーダー、東京大学社会科学研究所教授)
司 会 萩原 久美子(東京大学社会科学研究所特任助教)
【報告 2】
報 告 「利他的医療の法原理と国家法」
米村 滋人(東北大学大学院法学研究科准教授)
コメンテータ 水野 紀子(GCOE 拠点サブリーダー、東北大学大学院法学研究科長・教授)
司 会 久保野 恵美子(東北大学大学院法学研究科教授)
【報告 3】
報 告 「現代日本の社会・経済戦略としての男女共同参画―社会制度に対する経済・経営・統計学
的アプローチ―」
吉田 浩(東北大学大学院経済学研究科教授)
大澤 理沙(東北大学大学院経済学研究科研究員)
コメンテータ 佐藤 博樹(東京大学大学院情報学環教授)
司 会 森田 果(東北大学大学院法学研究科准教授)
【報告 4】
報 告 “Mainstreaming Gender and Diversity into Tohoku Reconstruction: Theoretical and Practical
Hurdles”
スティール 若希(東京大学社会科学研究所准教授)
「災害と外国人移住女性達―ジェンダー平等と多文化共生の主流化をめざして―」
〔原稿参加〕
李 善姫(東北大学法学研究科 GCOE フェロー)
コメンテータ・司 会 樺島 博志(東北大学大学院法学研究科教授)
質 疑 討 論 辻村みよ子、水野紀子、大沢真理 ほか、参加者全員
閉 会 挨 拶 水野 紀子(GCOE 拠点サブリーダー、東北大学大学院法学研究科長・教授)
小森田秋夫教授(前
東京大学社会科学
研究所所長)
植木理事
主な研究会&ワークショップ等一覧
161
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2013.3
●フロアからの発言の様子
橋本ヒロ子教授
原ひろ子名誉教授
山下泰子名誉教授
萩セミナー2012
第 4 回で最後ともなる「萩セミナー2012」は、2012 年 10 月 18 日∼21 日に、
仙台の東北大学川内キャンパス、東北大学片平キャンパスと松島で開催されま
した。
プログラムは、次のような 6 部構成で行われました。
第 1 部では、本 GCOE の 15 の研究プロジェクトの全てがそれぞれの研究成
果を報告し、討論が行われました。
第 2 部では、CNDC プログラムに参加するために 2012 年 10 月に東北大学博
士課程に入学した 2 人の新入生が、自己紹介も兼ねて各自の研究テーマについ
て報告しました。
第 3 部では、2010 年度末に CNDC で初のダブルディグリー取得者となった
ポリーヌ・シュリエ氏(フランス・プロヴァンス大学准教授)が 2 年前に東北
大学とリヨン第 2 大学に提出した博士論文について報告し、討論が行われまし
た。本報告は、当初 2011 年 4 月に開催予定だった桜セミナー2011 でなされる
予定でしたが、同年 3 月に発生した大震災によって一旦取り止めとなり、やっと 1 年半遅れで実現したもの
でした。しかしその甲斐もあって博士論文完成後の新たな研究成果も取り入れた充実した内容の報告になり
ました。
第 4 部では、2012 年 4 月に東北大学に入学した 3 名の CNDC の学生の中 2 名(1 名は産休中)が作成中の
博士論文について中間報告を行いました。
第 5 部では、オーストラリア・サザンクロス大学のバードゥン・オフォード教授が同性婚の社会的制度
化について論じる報告を行いました。本 GCOE プログラムは、多文化共生を中心的テーマとしていながら、
これまで同性婚の問題には大きな関心を払ってきておりませんでした。それだけに、同報告は、本プログラ
ムが懐いてきた多文化共生の概念、問題意識の深化・再構成をも促す意味を有しており、報告に基づく議論
は知的刺激に満ちたものとなりました。
第 6 部では、3 つの本 GCOE のプロジェクトが、それぞれ総括のためのワークショップを開催しました。
今回の萩セミナーは、本 GCOE の全ての研究プロジェクトが一堂に会する最後の主要な機会となりまし
たが、本プログラムがこれまでに相当に充実した研究・教育成果を挙げてきたことを自ら確認し合い、また、
今後この成果をどのように社会に還元していくべきかについても議論
を深めることができました。そしてさらに今回のセミナーには、本
GCOE プログラムの参加者がプログラム終了後に取り組んでいかなけ
ればならない研究・教育課題を発見したり、明確化したりするのに役
立つ素材も多く含まれていました。
その意味で、「萩セミナー2012」は、本 GCOE プログラムの過去と
現在を総括して、未来へとつなげるものになったと思います。
162
10 月18日(木)
GCOE Research Projects’Final Reports
Chair: MIZUNO Noriko (Dean; Program Sub Leader; Professor, School of Law,
Tohoku University)
10 月19日(金)
Opening Session
Opening Remarks
OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
New CNDC Students’Dissertation Introduction Reports
Chair: OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
WANG Haijun (School of Law, Tsinghua University)
XU Shu (School of Law, Tsinghua University)
Workshop
Chair: OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School of Law,
Tohoku University)
Presenter: Pauline CHERRIER(Associate Professor, University of
Provence; the 1st CNDC double-PhD-degree-recipient)
“Between Brazil and Japan: Identities out of Place”
Discussant: Jon MORRIS (Doctoral Student, Graduate School of Arts and Letters, Tohoku University)
CNDC Students’Dissertation Progress Reports
Chair: OHNISHI Hitoshi (Program Sub Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
DENG Yicheng (School of Law, Tsinghua University)
LI Meng (Institute of Political Sciences, Chinese Academy of Social Science)
10 月20日(土)
Keynote Lecture
Chair: SASAKI Hiromichi (Professor, School of Law, Tohoku University)
Lecturer: Baden OFFORD(Associate Professor, School of Arts and Social
Sciences, Southern Cross University)
“Gender, Sexuality and Cosmopolitanism in Multicultural Australia: A Case
Study”
Closing Remarks
TSUJIMURA Miyoko (Program Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
10 月21日(日)
Workshop 1 [TSUJIMURA Project 1]: “Gender and Multicultural Conviviality”
Chair: TSUJIMURA Miyoko (Program Leader; Professor, School of Law, Tohoku University)
◆ Presenter: Baden OFFORD(Associate Professor, School of Arts and Social Sciences, Southern Cross Uni主な研究会&ワークショップ等一覧
163
10
2013.3
versity)
“Gender, Sexuality and Cosmopolitanism in Multicultural Australia: A Case Study”
◆ Presenter: SHIDA Yoko (Associate Professor, College of Art and Design, Musashino Art University)
“Multiculturalism and Gender Issues”
◆ MC & Interpreters for Discussion:
Jon MORRIS (Doctoral Student, Graduate School of Arts and Letters, Tohoku University)
NAKAMURA Ayako (Fellow, GCOE, School of Law, Tohoku University)
Workshop 2 [UEKI Project]:「現代国際法における『人権』諸相」(in Japanese)
“Some Aspects of‘Human Rights’in Contemporary International Law”
Chair: UEKI Toshiya (Executive Vice President, Tohoku University; Professor, School of Law, Tohoku University)
◆ Presenter: KATO Yuta (Doctoral Student, Graduate School of Law, Tohoku University)
「海上阻止行動とノン・ルフルマン」
“Shipping Interdiction and Non refoulement”
◆ Presenter: KIMURA Hajime (Postdoctoral Research Fellow, JSPS)
「戦間期における少数者の保護―少数者問題と常設国際司法裁判所―」
“Minority Protection in the Inter-war Period: Minority Problems before the Permanent Court of International
Justice”
Workshop 3 [MIZUNO Project 1]:“Criminal Justice System in Japan”
Chair: SAITO Minoru (Lawyer, Tokyo Bar Association)
◆ Presenter: SAITO Minoru (Lawyer, Tokyo Bar Association)
“Criminal Justice System in Japan”
164
2012 年 8 月27日●国際セミナー
水野プロジェクト2
「科学的証拠と訴訟手続~不確実な科学的状況での科学裁判、
特に法的・社会的意思決定の素材としての科学的専門知見の活用について~」
(共催:
「JST-RISTEX「科学技術と社会の相互作用」領域・研究プロジェクト「不確実な科学的状況での
法的意思決定」科学グループ」、水野プロジェクト 2)
(会場:東北大学片平キャンパスエクステンション教育研究棟 2 階)
司 会:米村 滋人(東北大学大学院法学研究科・准教授)
報 告:ピーター・マクレラン
(オーストラリア ニューサウスウェールズ州最高裁判所・コモンロー主席判事)
アンドリュー・スターリング(英国 サセックス大学・科学技術政策研究部長)
解 説:吉良 貴之(常盤大学・JST-RISTEX プロジェクト研究員)
参加者:杉山 悦子(一橋大学法学研究科・准教授)他
本研究会は、オーストラリアで発展した新たな専門家証人の活用方法であるコンカレント・エヴィデンス
制度に注目し、裁判手続における科学的専門知見の活用について考察することを目的として開催された。
まず、同制度を発展させたマクレラン判事から、制度の意義について報告がなされた。伝統的には、対審
構造を有する同国の民事裁判手続では、専門的知見は、各当事者から依頼された鑑定人によって提供されて
きた。各鑑定人は依頼者及び相手方側から尋問、反対尋問、再尋問を受けるところ、その過程では、尋問の
対象が専門的知見の内容から逸れ、鑑定人が不快な経験を強いられ、有能な科学者が出廷に消極的になるな
どの弊害が見られたという。コンカレント・エヴィデンスの方法は、尋問、反対尋問の形式ではなく、複数
の鑑定人と裁判所が共同で予め論点を整理した上で、法廷において鑑定人同士にそれらの論点について議論
をさせる形式をとることで、これらの弊害を防ぐ試みであり、科学的専門知見の真の問題点に集中して専門
家同士の議論を可能にすることで、法曹界及び科学者から高い評価を得ているという。吉良研究員による解
説により、実際の模擬的な裁判手続の様子も放映された。同方法の根底には科学的知見の不確実性に対する
認識が存するところ、この点については、科学技術社会論の研究を主導するスターリング教授から、報告が
なされた。同報告では、発電方法の種別ごとのリスク比較を例に、信頼できる科学的知見を含む報告書等を
世界中から複数集めれば、論者は任意に結論を導き得ることが具体的に示された上で、科学的不確実性の階
層を整理し明確化することが、裁判手続等でのより建設的な科学的知見の活用に資することが示唆された。
海外からの報告に対し、日本の状況について杉山准教授から簡潔な説明がなされた。討論においては、事前
の論点整理のあり方や刑事手続との対比等について、活発な議論が交わされ、意義深い研究会となった。
スターリング教授
杉山准教授
マクレラン判事
主な研究会&ワークショップ等一覧
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2012 年 10 月21日●萩セミナー・国際ワークショップ
辻村プロジェクト1
“Gender Equality and Multicultural Conviviality”
(会場 : 東北大学片平キャンパス エクステンション教育研究棟 3 階)
座 長:辻村 みよ子(東北大学大学院法学研究科・教授)
報 告:志田 陽子(武蔵野美術大学・教授)
バーデン・オフォード(オーストラリア サザンクロス大学・教授)
司 会:ジョン・モリス(東北大学大学院文学研究科・博士課程)
中村 文子(東北大学大学院法学研究科・GCOE フェロー)
本プロジェクトでは、2012 年度の萩セミナーで、欧米のフェミニズムと多文化共生問題をクロスさせた
研究を発表してこられた武蔵野美術大学の志田陽子教授(憲法学)と、オーストラリアのカルチュラル・ス
タディーズ研究を牽引してこられたサザンクロス大学のバーデン・オフォード(Baden OFFORD)教授を
お招きして、国際ワークショップ「Gender and Multicultural Conviviality」を開催しました。プロジェクト
責任者(辻村)が座長を務め、司会および質疑通訳を、ジョン・モリス(Jon MORRIS)文学研究科博士課
程後期学生および中村文子 GCOE フェローが務めました。
まず、本プロジェクト責任者であり本 GCOE 拠点リーダーである辻村より、開会挨拶と本 GCOE の 5 年
間の研究活動について報告があった後、志田教授とオフォード教授による研究報告がありました。
志田報告は、「Multiculturalism and Gender Issues」と題して、多文化共生とジェンダー問題の衝突につい
て事例を用いて紹介しながら、ジェンダー平等と多文化共生の二つの概念の間のテンションをめぐる法律的
あるいはより広範な社会的側面を分析するための枠組みを提示しました。他方、オフォード報告は、オース
トラリアの文化論や現代政治におけるジェンダー、人権の諸問題をめぐる事例を取り上げながら、報告タイ
トルである「Gender, Sexuality and Cosmopolitanism in Multicultural Australia: A Case Study」の方向性や可
能性について論じました。
これらの報告に対して、オフォード教授のコスモポリタニズム概念をめぐって、エリート間のみならず、
より国民的な概念として構築すべきではないか等の質疑が行われ、また、人権と多文化主義のテンションの
事例として EU での表現の自由について問題提起されるなど、活発な議論が展開されました。
このワークショップでの成果として、GEMC ジャーナル 8 号(英文)にオフォード報告、GEMC ジャー
ナル 9 号(和文)に志田報告の内容が掲載されていますので、ご覧ください。
1 列目左から、オフォード教授、志田教授、辻村教授
2 列目左 3 番目から、糠塚教授、佐々木教授、右 3 番目、田中准教授
166
これまでの主な国際シンポジウム・セミナー
2008 年 10 月 22 日・23 日(大西・水野 2・稲葉・戸澤プロジェクト)
グローバル化時代における新たな社会的イッシュー
2008 年 10 月 22 日、23 日に、北京の清華大学でワークショップを開き、日本・韓国・中国の研究者が表
題のテーマについて報告を行いました。このワークショップで印象的だったのは、参加者が、グローバリゼ
ーションが進行する今日、東アジア社会が多くの共通の社会問題に直面しているとの認識を共有しており、
同じような問題意識からそれらの社会問題の分析と解決策の模索を進めているという点でした。経済発展の
段階や政治体制で言えば、大きく異なるこれらの 3 国の研究者の間で、ここまで共通の問題意識が生じてい
ることがこのワークショップで浮き彫りにされました。
2008 年 10 月 22 日・23 日(大西・水野 2・稲葉・戸澤プロジェクト)
2009 年 8 月 3 日・4 日(辻村 1・大沢 2・田中プロジェクト)
多文化共生社会のジェンダー平等―グローバリゼーション下のジェンダー・多様性・共生
2009 年 8 月 3 日・4 日に国際セミナー「多文化共生社会のジェンダー平等―グローバリゼーション下のジ
ェンダー・多様性・共生」が東京大学会場と東北大学会場において開かれました。ジェンダー平等や多文化
共生に関する第一人者から気鋭の若手研究者までの多くの研究者が、ジェンダー平等と多文化共生に関する
理論だけでなく、移民の人権、シティズンシップ、移民政策、経済格差と家族・労働等の個別のテーマにつ
いても報告を行いました。この国際セミナーでは、本プロジェクトのテーマであるグローバリゼーション・
ジェンダー・多文化共生について活発な議論が行われました。
2009 年 8 月 3 日・4 日(辻村 1・大沢 2・田中プロジェクト)
主な研究会&ワークショップ等一覧
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10
2013.3
2010 年 8 月 15 日(水野プロジェクト1)
女性と子どもの被害に関する国際セミナー
共催:科学研究費補助金[基盤研究(B)]「犯罪の被害にあった女性・児童への対策に関する総合的研究」
2010 年 8 月 15 日に、東北大学東京分室において「女性と子どもの被害に関する国際セミナー」を実施し
ました。女性と子どもが多く被害にあう DV と性犯罪を取り上げ、アメリカやアジア諸国などから参加した
専門家や研究者が、各国の最新の状況と法制度上の対応について報告・議論しました。現在、
「女性に対す
る暴力」が世界的に注目を集めており、その点に配慮した立法も進んでいます。一方、これらの問題に対す
る日本の対応の遅れが浮き彫りになりました。
2010 年 8 月 15 日(水野プロジェクト 1)
2010 年 10 月 30 日(植木プロジェクト)
グローバル化時代の東アジアにおける海洋法、海洋政策と多文化共生
(第 4 回日中海洋法ワークショップ)
共催:日本海洋法研究会
2010 年 10 月 30 日に第 4 回日中海洋法ワークショップが、本 GCOE プログラムとの共催という形で開催さ
れました。今回のワークショップでは、日中両国から 10 名の研究者が、海賊問題への対応などの個別の事
例から、近時の国際判例の分析、国際法学における学問的方法論のあり方といった理論的問題まで極めて多
岐にわたる最先端の研究成果の報告と討論を行いました。それにより、両国から参加した研究者は相互に非
常に大きな学問的刺激を得ることができました。
2010 年 10 月 30 日(植木プロジェクト)
168
これまでの主な国際シンポジウム・セミナー
2012 年 11 月 23 日(大西プロジェクト)
東アジアのナショナリズムと平和
共催:延世大学校 後援:百想財団
2012 年 11 月 23 日に、百想財団(PaekSang Foundation)の協力を得まして、本 GCOE と延世大学校に
よる国際セミナー“Nationalism and Peace in East Asia”が開催されました。セミナーでは、延世大学校の
SEO Jungmin 副教授をはじめとする韓国からの参加者 9 名(ソウル市立大学校:LEE Byoungha 助教授、大
邱大学校:LEE Soyoung 助教授、国民大学校:Lim Eunjung 専任研究員、他)がセミナーのテーマに関連
する報告を行いました。それぞれの報告に対して、
日本からの討論者 7 名(東北大学:大西仁教授・柳淳教授、
福島大学:黒崎輝准教授、岐阜大学:上野友也准教授、他)がコメントしました。各セッションでは、人道
規範から現代中国のナショナリズムまでの多様なテーマが取り上げられ、活発な議論が長時間にわたり行わ
れました。また、報告者と討論者の大半を若手研究者が占めたことは特筆されるべきでしょう。これらの議
論を通じて、ナショナリスティックな感情に左右されない、未来志向の知的な交流が行われました。
東日本大震災に関連したセミナー
2011 年 6 月 11 日 日本学術会議フォーラム
「災害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジウム〜災害・復興に男女共同参画の視点を〜」
共催:「災害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジウム実行委員会、
日本学術会議人間の安全保障とジェンダー委員会、など
後援:ジェンダー法学会
東日本大震災から 3 か月後、「災害・復興と男女共同参画」6.11 シンポジウム∼災害・復興に男女共同参
画の視点を∼」(日本学術会議主催学術フォーラム)が開催されました。災害・復興に男女共同参画および
多文化共生の視点が必要なことは、阪神・淡路大震災を契機として認識されました。にもかかわらず、東日
本大震災への対応にその教訓が活かされていないことは明白であり、これらの視点から取り組みを進めるこ
とは急務でした。準備段階から大きな関心を呼んだ 6.11 シンポには、被災地を含む全国から幅広い人々が
参加し、熱心な議論が交わされました。連携拠点が発行したシンポ報告書は広く関係者に提供され、災害・
復興に男女共同参画の視点を、という趣旨が浸透しつつあります。
主な研究会&ワークショップ等一覧
169
執 筆 者 一 覧
所 属
名 前
東北大学大学院法学研究科教授
辻 村 みよ子
国際基督教大学教養学部准教授
高 松 香 奈
東京大学社会科学研究所教授
大 沢 真 理
東北大学大学院法学研究科准教授
米 村 滋 人
東北大学大学院法学研究科長・教授
水 野 紀 子
東北大学大学院経済学研究科教授
吉 田 浩
東京大学大学院情報学環教授
佐 藤 博 樹
東京大学社会科学研究所准教授
スティール若希
東北大学大学院法学研究科 GCOE フェロー
李 善 姫
東北大学大学院法学研究科教授
樺 島 博 志
171
10
2013.3
GEMC journal 投稿規定と執筆要領〔参考〕
学術雑誌「GEMC journal」
(以下、本誌といいます)
以外には、匿名とされます。
は、東北大学グローバル COE プログラム「グローバル時
5. 査読結果に異議があるときは、投稿者は編集委員会
代の男女共同参画と多文化共生」
(以下、本 GCOE とい
の定める期間内にそれを編集委員会に申し立てるこ
います)の一環として刊行されるものです(本 GCOE の
とができます。異議申し立てがあったときは、編集
趣旨や活動については、ホームページ http://www.law.
委員長は速やかに編集委員会を開催して審議し、審
tohoku.ac.jp/gcoe/ をごらんください)。
議の結果、再審査をすることがあります。
本誌は、
第一部「寄稿論文」と第二部「自由投稿論文」
からなります。寄稿論文とは、本 GCOE が主催・共催す
る行事における発表等から、編集委員会が本誌に掲載
Ⅱ 執筆要領
するに値すると判断した内容の報告者、また、編集委員
1. 原稿執筆における使用言語は原則として日本語また
会が本 GCOE の趣旨に沿って企画した本誌のテーマ趣旨
は英語とします。日本語/英語以外の言語による投
にふさわしい著者に編集委員会が執筆を依頼した論文で、
稿に関しては、編集委員会において検討してお認め
編集委員会が閲読して掲載を決定したものです。これに
する可能性があります。
対して、自由投稿論文とは、本 GCOE のテーマ趣旨と関
2. 論文は、Microsoft Word もしくは一太 郎等のワー
係する論文で、公募により投稿され、査読を通じて一定
プロソフトデータで作成してください。原則として
の学術的価値を有すると認められたものを言います。以
30000 字(脚注・参考文献等を含み、図表、見出し
下には、自由投稿論文について、投稿の手続きと本誌の
も文字数に換算)を上限としますが、多少の増加は
執筆要領をお知らせします。
お認めすることがあります。なお、本誌文字数は 1 ペ
ージあたり本文 2256 字(24 字× 47 行× 2 段)となっ
Ⅰ 投稿規定
1. どなたでも投稿できます。投稿にあたっては、投稿
者の所属機関及び所属機関外から各 1 名以上の教
授・准教授(これらに相当すると認められる研究者
ており、タイトル部分として 768 字分が使われます。
3. 本誌は横書き 2 段組の体裁となるため、二桁以上の
漢数字は使用せず、半角英数を使用してください。
また、英文についても半角英数を使用することとします。
4. 表 が入 る 場 合 は、 そ の 基 となる 数 値 の入った
等を含みます)による推薦を付してください。ただし、
Microsoft Excel 等の表計算ソフトのデータを添付、
本 GCOE の事業推進担当者の推薦がある場合には、
もしくはリンクをしてください。
これに代えることができます。
2. 本誌に掲載される論文は、本 GCOE のテーマ趣旨に
沿った学術的研究に寄与する内容のもので、投稿す
る原稿は未発表の初出原稿で完成原稿に限られます。
3. 投稿された論文は、編集委員会が任命する査読委
員会が行う厳正な査読の結果に基づいて、編集委員
会が掲載を決定します。また、掲載可能性のある論
5. 論文には、論文と同じ言語で、タイトル、執筆者名
を記載してください。日本語論文には、欧文で、タイ
トル、執筆者名を、別添でお送りください。
6. 書き出しは大見出し「Ⅰ.はじめに」からとし、以下、
、
小見出し「
(1)○○○○」
中見出し「1.○○○○」
と続くものとします。
7. 註については、ワープロソフトの脚注を使用し、対
文の著者には、本 GCOE が主催・共催する行事に
象ワードの右肩付け(句読点前)で、連続したアラビ
おける発表を依頼することがあります。
ア数字の文末脚注としてください。
4. 査読委員会は、投稿された各論文につき相当する専
門領域の研究者を選定して評価を依頼し、その結果
を基に審査を行うことにより、査読結果を決定します。
172
※ GEMC journal 発行元である東北大学グローバル COE
「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」プ
査読結果は、決定後速やかに編集委員会から本人
ログラムが 2013 年 3 月に終了することにより、GEMC
に通知されます。その場合、原論文の加筆・修正等
journalも 2012 年度の出版をもって最終号となります。
を掲載の条件とすることがあります。なお、各論文
従ってもう投稿は受け付けておりませんが、以上の投
の評価者は、査読委員会および編集委員会委員長
稿規定は、参考までに再掲したものです。
GCOE 事業推進担当者
東北大学大学院法学研究科
稲葉 馨 教授
植木 俊哉 東北大学理事、大学院法学研究科併任教授
大西 仁 教授(拠点サブリーダー)
樺島 博志 教授
久保野恵美子 教授
芹澤 英明 教授
辻村みよ子 教授(拠点リーダー)
戸澤 英典 教授
平田 武 教授
牧原 出 教授
水野 紀子 教授(拠点サブリーダー)
阿南 友亮 准教授
内海 博俊 准教授
桑村裕美子 准教授
滝澤紗矢子 准教授
嵩 さやか 准教授
中林 暁生 准教授
森田 果 准教授
米村 滋人 准教授
東北大学大学院経済学研究科
東北大学大学院文学研究科
吉田 浩 教授
田中 重人 准教授
東京大学社会科学研究所
大沢 真理 教授(連携拠点リーダー)
佐藤 博樹 教授
水町勇一郎 教授
不破麻紀子 准教授
GEMC journal 編集委員会
平田 武 教授
牧原 出 教授
水野 紀子 教授(委員長、編集長)
内海 博俊 准教授
桑村裕美子 准教授
滝澤紗矢子 准教授
嵩 さやか 准教授
中林 暁生 准教授
米村 滋人 准教授
173
10
編 集
2013.3
東北大学グローバル COE
「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」
GEMC journal 編集委員会
発 行 2013 年 3 月
東北大学グローバル COE
「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」
〒 980-8576 宮城県仙台市青葉区川内 27-1
電 話:022-795-3740,3163
FAX:022-795-5926
E-mail :[email protected]
URL:http://www.law.tohoku.ac.jp/gcoe/
装 丁
伊藤 滋章
印刷・製本 能登印刷株式会社