第 1245 号 - GIIGNL The International Group of Liquefied Natural

ダイアモンド・ガス・レポート
2016 年 04 月 06 日
第 1245 号
日本のエネルギーミックスのあるべき姿と今後の課題(第 22 回 DGO セミナー報告・下)
都市ガス大手 4 社、2016 年度の供給計画を発表
バングラデシュ初の LNG 受入基地、エクセラレートが FSRU を提供
クウェート、陸上 LNG 受入基地の建設を韓国コンソーシアムに発注
GIIGNL、2015 年の世界の LNG 市場調査報告書を発表
ダイアモンド・ガス・オペレーション株式会社
http://www.dgoweb.com
第 1245 号 <2016.04.06>
CONTENTS
今週のフォーカス
日本のエネルギーミックスのあるべき姿と今後の課題(第 22 回 DGO セミナー報告・下)……
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日本
四国電力、伊方原発 1 号機を廃止/同 3 号機は 7 月下旬に再稼働見込み ……………………… 14
都市ガス大手 4 社、2016 年度の供給計画を発表 …………………………………………………… 17
東アジア
中国の電気自動車市場:急成長/山積みの課題/不透明な先行き(上)………………………… 20
南アジア
バングラデシュ初の LNG 受入基地、エクセラレートが FSRU を提供 …………………………… 24
ヨーロッパ
仏 EDF、ダンケルク LNG 基地は 6 月に初カーゴを受入予定と発表 ……………………………… 26
中東
クウェート、陸上 LNG 受入基地の建設を韓国コンソーシアムに発注 …………………………… 28
北アメリカ
米 FERC、ゴールデン・パス PJ の環境影響評価草案を発行 ………………………………………… 30
ワールドワイド
GIIGNL、2015 年の世界の LNG 市場調査報告書を発表 ……………………………………………… 32
■天然ガス・原油先物価格 (3 月 29 日終値)
■日本向けスポット LNG 価格
NYMEX 軽質低硫黄原油(WTI)5 月限 38.28(ドル/バーレル)
<契約ベース>
NYMEX 天然ガス(HH)
5 月限 1.903(ドル/ MMBtu)
2月
6.5 ドル/ MMBtu(月次速報)
■ JCC(Japan Crude Cocktail)
1月
7.1 ドル/ MMBtu(月次確報)
2月
30.36 ドル/バーレル(月次速報)
<入着ベース>
1月
36.93 ドル/バーレル(月次確報)
2月
6.9 ドル/ MMBtu(月次速報)
1月
7.9 ドル/ MMBtu(月次確報)
■ JLC(Japan LNG Cocktail)
2月
7.82 ドル/ MMBtu(月次速報)
1月
7.76 ドル/ MMBtu(月次確報)
※ 本号の換算レート 114.44(円/ドル )
■地図凡例
液化基地(計画・建設中)
液化基地
(既存) 受入基地(計画・建設中)
受入基地(既存)
出典:NYMEX (EIA)、JCC (MC)、JLC( 財務省関税局/日本貿易振興機構より DGO 計算)
、日本向けスポット LNG 価格 (METI)、レート (MUFJ)
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日本のエネルギーミックスのあるべき姿と今後の課題(第 22 回 DGO セ
ミナー報告・下)
先週に引き続き、2016 年 3 月 7 日に開催されました弊社主催の第 22 回ダイアモンド・ガス・
セミナーの概要をお届け致します。本セミナーでは、東京理科大学大学院イノベーション研究科
教授で、政府の総合資源エネルギー調査会などで委員を務められている、橘川武郎氏[略歴参照]
に、
「日本のエネルギーミックスのあるべき姿と今後の課題」というテーマでご講演頂きました。
今週は、セミナーの後半部分をお伝えします。
天然ガスシフトと矛盾するエネルギーミックス
エネルギー基本計画でも謳われている天然ガスシフトだが、現在の電源ミックスはこれを体現し
ていない。まず、天然ガスシフトが何であるかを定義することが必要であり、次の二点が重要だ
と考える。一つは LNG 火力発電の基幹電源(ベースロード電源)化で、LNG をミドルとベース
両方として使用することだ。二つ目は、コジェネの全面的導入である。
<ベースロード電源化>
今回のミックスにおいては、一つ目が欠けている。LNG がベースロード電源から排除される理
由は、原発依存度が下がるからである。電源ミックスにおいて LNG 火力は 27%となっているが、
40%を超える現状から比べるとかなり後退する。また、27%というのは、東日本大震災以前と
同じレベルである。一次エネルギーミックスにおいても、一つのポイントであった 2 割を超え
ることなく、19%に留まった。これらのことから、現在のミックスは天然ガスシフトを体現し
たものではないと言える。天然ガスシフトと言えるためには、電源ミックスのガスのシェアを
27%から 30%に上げるべきだと考える。現在のミックスでは、LNG 火力があまり造られないと
いう想定であり、当然ながらガスパイプラインも出来てこない。パイプラインがあれば、(韓国
のように)タンクを集約し輸送コスト削減を図ることができるが、パイプラインが不十分だとそ
れもできなくなる。
<エネルギーミックス見直しの議論>
このように、LNG 火力をベースロードから外したことによって、色々なことが止まってしまっ
ているのが実態である。そして、実はここにきて、やはり今のミックスではまずいのでないかと
いう議論が、この間の基本政策分科会でも出始めている。そもそも、エネルギー基本計画自体が
3 年に一度変えるもので、次回は 2017 年 4 月になる。本来ミックスは基本計画と共に作り直さ
れるものであるため、電源/エネルギーミックスの作り直しが今年の後半頃から現実的に始まっ
てくるという地合いが、資源エネルギー庁官の発言からも見て取れる。エネルギーミックスの見
直しのポイントとなるのは三つで、原発のリプレース、LNG 火力のベースロード化、水素の活用、
となるだろう。
<ガス行政の今後への懸念>
更に天然ガスシフトを考える上で懸念されるのは、行政の問題である。電力システム改革により
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(電力の小売が全面自由化されるため)
、資源エネルギー庁の電力市場整備課がなくなり、電力市
場整備室へと変わった。2017 年 4 月からガスの小売全面自由化も始まるため、ガス市場整備課
が廃止となる。電力は電力市場整備課が廃止されても、基盤整備課・原子力政策課があるが、ガ
スにはそのような課が存在しない。ガスに関しても行政を主管する課が必要であり、LPG を含
めたガス行政をどうしていくのかを、真剣に議論していかなければならないと考える。
エネルギー価格動向
こうした行政・政策を方向付けるのは言うまでもなく価格動向である。<図表 6 >の通り、ヘ
ンリー・ハブ(HH)/日本輸入 LNG 平均 CIF(JLC)/英ナショナル・バランシング・ポイン
ト(NBP)/英ブレント原油価格の 4 種類の価格は全て急落しており、世界では、天然ガスの未
来は明るくないのではないか、との見方が強まっているが、その見方が正しいのかを検証したい。
MMBtu※
<図表6> エネルギー価格動向
ICE、EIA、財務省通関統計
JLC=日本輸入LNG平均CIF価格
LNG の需給と価格動向
< LNG 価格の急落と LNG 需給緩和の要因>
これらの価格急落は、需給の緩和傾向が背景となっている。日本においては、米国のサビーン・
パス LNG プロジェクトからの LNG 輸入の開始により、LNG 供給源の分散化がより一層進むこと
などが需給緩和の理由として挙げられる。サビーン・パス LNG プロジェクトからの LNG 輸入は、
急遽加わったものだが、これにより 2012 年から開始していた LPG の輸入に加え、シェールガ
スも米国から日本に輸入されることになった。また三菱商事も参画している米キャメロン LNG
プロジェクトや、国際石油開発帝石(INPEX)が推進する豪イクシス LNG プロジェクト等も進
められている。その他、インドネシア/カナダ/ロシア/モザンビークでもプロジェクトが進め
られており、多様化が進んでいる。また全体として流動性が増大しており、日本/中国/韓国で
は 2011 年以前の短期・スポット取引の比重は 10 − 15%程度だったが、現在は全て 3 割台位
まで上昇している。また、これまでは仕向地制限の問題が大きな制約要因となっていたが、北米
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産 LNG 輸出ではこの制約が基本的になく、短期・スポット取引の比重が高まる傾向が今後も徐々
に拡がる可能性がある。これらの要因を踏まえると、LNG 需給は更に緩和していくと考えられる。
<原油安の継続要因>
一方、ガスの未来を見る上で、他にも極めて重要となるのが原油価格動向である。<図表 6 >
の通り、ガス価格(特に JLC)は油価との連動性が高い。原油価格の低迷については、主に五つ
の要因が挙げられる。一つ目に米国シェールオイルの増産があり、二つ目には、これまで実現が
困難と目されていた米国産原油の輸出が 2015 年末に解禁されたことがある。また三つ目はロシ
アの高水準生産維持で、同国は原油価格が下落する中、生産を抑制するよりも輸出を促進し、売
上を確保するという戦略に出ている。四つ目はイランの国際市場への復帰、そして五つ目は石油
輸出国機構(OPEC)の生産見通しである。サウジアラビアが OPEC の減産をリードしなかった
最大の理由として、日本では米国産シェールガス潰しが報じられることが多いが、私は実際はそ
うではないと考える。一昨年サウジアラビアに行き強く感じたことは、サウジアラビアが最も恐
れていることは米国が中東から撤退することであり、最大の敵はスンニ派とシーア派問題で対立
するイランである。この二つの点を合わせれば、サウジアラビアと最も国益が共通しているのは
イスラエルであるなど、複雑な状況となっている。こうした状況の下で、五つの要因が短期的に
解決しそうにないことから、その間原油価格の低迷は続くと見られている。
< 図表 7> 世界の原油価格見通し
ドル/バーレル
※2015 年は実績値
出所:IEA WEO2015(中心シナリオ)
IEEJ アジア/アジア/世界エネルギーアウトルック 2015
<原油価格の長期見通し>
それでは原油価格の長期的な見通しはどうなっているだろうか。<図表 7 >の通り、国際エネ
ルギー機関(IEA)は 2015 年 11 月に発表した「2015 年版世界エネルギー見通し(WEO2015:
World Energy Outlook 2015)
」の中で、原油価格について、これまでの見通しから価格水準を
引き下げているものの、長期的にはいずれ元の水準まで上昇するとの見方を変えていない。また
日本エネルギー経済研究所(IEEJ)も同様の見通しを示している。これは、新興国を中心に原油
需要が底堅いとの予測に基づいたものである。一方で、供給余力があるのは中東に限られるだ
ろうという、基本的構図が変わっていないと思われる。こうした状況から、当面は原油価格も
LNG 価格も安値が続くが、中長期的にはかなりの蓋然性を持って再び価格が上昇すると読み取
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ることができる。このような状況で、LNG 資源開発から撤収するほうがいいのか、それとも逆
に価格の値下がりに乗じた投資を行うことがいいのか、正に経営能力を問われる局面にきている。
端的に言うとポートフォリオ戦略であり、短期的・長期的にバランスよく投資することが重要と
なってくる。政府も資源・燃料分科会で、原油価格下落の局面での上流政策を協議し、リスクマ
ネーの供給を続けることを明確にした。但し、審議会で常々感じるのは、民間企業が資源価格の
下落時にも上昇時にも政府に支援を求めることには違和感がある、ということだ。それでは話に
ならず、今後は、民間企業の経営力の目利き次第で、こういう状況の中で張れるか張れないかと
いうことが問われる時代にきていると考える。
例えば、発電事業について、世界各国の電源別発電構成をみると、中国は石炭の比率が約 75%、
インドが約 70%となっており、当面は両国において石炭火力発電所の増設が続くことは間違い
ない。ただし、例えば中国では、明日の微小粒子状物質(PM)濃度が人々のあいだの目下最大
の関心事項であり、石炭の高効率化を進める一方で、急速に石炭を減らす動きもでている。こう
いった状況を天然ガス産業に携わる企業がどう読むのかが重要である。また、今後は発電以外で、
石油のように、ガスについても、より付加価値の高い「ノーブル・ユース」の使い方に、市場開
拓の余地があるのでないかと考える。例えばシェールガス革命の米国では、革命の継続を化学部
門が牽引している。日本の場合も、発電燃料以外の活用方法での成長の可能性がある。こうした
状況の中でどのような判断を下すかが、現在の資源価格の低迷、或いは需給緩和の流れの中で、
問われる能力なのではないか。
<図表 8>主要国の電源年別発電電力量構成比(2010)
出所:IEA
シェール革命とその国際的影響
米国では、ガス価格低迷の影響で、上流ガス開発では業績が悪化しているが、パイプラインや液
化プロジェクトなどの下流の事業では成長が見られる。シェールガス革命の結果、米国は石炭よ
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り天然ガスの方が安価であるという稀な社会を生み出し、オバマ大統領が石炭火力への規制を強
化することとなった。これにより打撃を受けた米国の石炭販売業者が欧州に石炭を持ち込み、欧
州では当然ながら天然ガスより安い石炭へのシフトが起きた。欧州で炭素排出権が極めて安く
なっていたことも、石炭へのシフトが進んだ理由である。これに最も打撃を受けたのが、欧州で
天然ガスを販売していた露ガスプロムである。ガスプロムは、新たな市場として東アジア市場へ
の進出を目指している。そして、ロシアのプーチン大統領と最も仲が良いのは安倍首相だという
流れとなっている。
低廉な天然ガス調達への道
こうした流れは、日本にとりチャンスであり、多角的な施策を取ることで LNG を安価に調達す
ることが重要になる。一つ目の施策としては、原子力や石炭を使用する方針を明確にすることで
ある。資源小国である日本では、全てのエネルギーを重要視し、それらを組み合わせて互いの交
渉力を引き上げていく必要がある。二つ目は、イクシス LNG プロジェクトのガス供給源等、日
本企業の自前のガス田を確保することである。三つ目は LNG のまとめ買いである。最近では、
東京電力と中部電力による JERA が設立され、これにより JERA の LNG 調達規模は合計約 4,000
万トン/年となった。更に、東京ガス/大阪ガス/関西電力がここに加わって、LNG 調達規模
を 7,000 万トンに拡大することも、選択肢として考えられる。四つ目の施策として、三つ目と
同じ発想で、最大の LNG 輸入国である日本と、それに次ぐ韓国とで(両国の LNG 調達量を合わ
せると輸入シェアが 50%に到達する)、HH や NBP に次ぐ規模の東アジア LNG ハブを構築する
ことが挙げられる。しかし、これらの四つの施策は、全て合わせたとしても基本的には短期・ス
ポット取引に効くものであり、7 割を占める長期契約に対する直接の施策ではない。従って、こ
れら四つの施策で圧力をかけて、長期契約を有利に変えていくという、五つ目の施策が一番重要
となる。今はちょうど長期契約の集中更改期間で、トップシークレットなのであまり情報は出て
こないが、ここでも注目すべき新たな動きが始まっていると聞く。こういうことを天然ガス業界
として進めていく必要がある。
救世主としての石炭高度利用
<石炭技術移転のための二つの壁とその打開策>
ここで、どうしても気になってくるのが石炭の動向である。石炭は安価であることと、活用方法
次第で CO2 排出量削減の切り札となることは、先に説明したとおりであるが、そのためには二
つの事を考えなければならない。一つ目は、CO2 排出削減の切り札として石炭火力技術を海外移
転するためには、
(通常企業は技術移転に積極的でないため)インセンティブが必要な点である。
ここで重要になるのは、自由化との関連である。現在、日本国内で最低でも合計発電出力 17 ギ
ガワット(GW、1,700 万キロワット《kW》)の石炭火力発電所建設計画があるが、全てが承認
されたら日本の CO2 削減計画の達成は到底不可能だろう。石炭に対して、私はかなり肯定的な
立場をとっているが、それでも 5 GW(500 万 kW)が限度だと考える。つまり 1,700 万 kW を
500 万 kW に絞り込む必要があるが、その一つの方策として、環境影響評価の対象でない出力
11 万 kW 以下の石炭火力発電所は(産炭地の釧路で計画される 10 万 kW の案件を除いて)、燃
焼効率が悪いため、基本的にはだめなんじゃないかと個人的には考える。
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問題は、発電出力が 11 万 kW を超える石炭火力発電所の建設計画であるが、これに関しては、
海外への技術移転により CO2 排出量を大幅削減した事業者のみが、国内で石炭火力発電所を建
設できるという条件を課すことが、最も現実的な方法と考える。そうなると、誰に一番技術移転
能力があるのかという話になり、それは中国電力と電源開発(J パワー)となるので、私は 500
万 kW に一番近いのは、中国電力の三隅火力発電所(島根県浜田市)
、J パワーの高砂火力発電
所(兵庫県高砂市)と竹原火力発電所(広島県竹原市)
、そして両社が進める実験炉規模の大崎
クールジェンの石炭ガス化複合発電所(IGCC、広島県豊田郡)を、中国電力が原子炉を計画し
ていた山口県上関のより広い敷地において実用炉規模で遂行する、というのが 500 万 kW の最
も実現的なところと考える。そうすると関東地方の計画(袖ケ浦、市原など)は立ち上がらず、
どうするのかという話になるが、それについては後程触れる。二つ目は、技術移転をする際に国
際入札において中国など新興国と値段で勝てないのでないか、という問題である。私は、中国並
みの低価格で応札すればいいと考える。それにより出た赤字は政策金融で補えばよい。そのよう
にして、二国間クレジット制度(JCM)で、クレジットの一部を着実に日本のものにすることに
よって取り返す。かなり踏み込まないとできない政策と思うが、こういう組み合わせでしか石炭
火力発電を活かす道はないのではないかと考える。もちろん、その先の CO2 回収・貯留(CCS)
を含めた様々な技術革新を進めていく道もあるが、JCM で日本の技術を米国/中国/インドに
技術移転するだけで、1 年間に現在の日本の温室効果ガス(GHG)排出量 14 億トンよりも多い
15 億トンの GHG を減らせることができるほどの威力がある。ただし、全体としては石炭には厳
しい風が吹いており、オバマ政権以降もその風は変わらないだろうと見ている。
<石炭火力のゼロエミッション化>
日本のクリーン・コール・テクノロジー(CCT)技術開発は、国内で取り組まない限り進化しな
いという話は、先にも述べた通りである。ここで問題となる石炭火力新設計画の絞り込みに関し、
環境省は、環境アセスメントの強化を狙っている。それに対して経済産業省(METI)は省エネ
を掲げた。ただし、省エネは基本的には需要の話で少々政策の噛み合いが悪いということで、最
近、ゼロエミッション電源 44%を義務化、ということをエネルギー供給構造高度化法に絡めて
持ち出している。全ての小売事業者を対象に、電源構成に占めるゼロエミッション電源の割合を
2030 年までに 44%とすることを義務化するという。
その義務化を達成する前提として、電力業界が政府のエネルギー/電源ミックスに沿って策定し
たボトムアップの自主規制目標、つまり CO2 排出係数を 2030 年に 0.37 キログラム/キロワッ
ト時(kWh)にし、CO2 排出量を 2013 年比 35%削減とするとの目標が効いてくる、というこ
となのだが、果たして実現できるのだろうか。そもそも、この目標自体が、政府がミックスを決
めてから決定された実質的にはトップダウンの目標で、決してボトムアップではない。もう一つ
の問題は、
発電事業の CO2 排出削減の問題はまさに小売全面自由化後の競争戦略に直結するため、
調整が困難と予測されることである。そうなってくると、かなり高い確率でこの自主目標が実現
できず、炭素税等の増税というシナリオもあると考えられる。その場合、制度を分かりやすくす
るということで(2013 年よりも厳しい 2005 年を比較軸として)CO2 排出に取り組んでいる鉄
鋼のコークス炉や化学業界の石炭火力自家発電も増税対象にされたら、一挙に国際競争力がなく
なるという大変な問題になる。従って私は、もし炭素税となる場合には、何としてもエネルギー
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転換部門で止める仕組みが絶対に必要と考える。
<自由化後の電力業界>
この炭素税について、電力業界は表向きは反対だと思うが、本当に反対なのか真面目に考える必
要がある。例えば、関西電力のように石炭火力の占めるウェイトが低い電力会社にとっては、炭
素税は相対的に有利に働く。一方、石炭火力のウェイトが高い中国電力や北陸電力にとってはた
まったものでないだろう。そうなってくると、業界団体ベースの対応というのは実現するのかと
の疑問が生じる。個社としてこの問題を乗り越えるという動きが可能性としてあるのではないか
と考える。いずれにしてもエネルギー転換部門が CO2 削減に対してどのような対応をとるのか
ということが、今後非常に重要な注目ポイントとなる。電力自由化時代の電力業界は、今までの
ような横並びではなくなり、
様々な点で利害が対立してくるというのが非常に大きな変化であり、
そうした流れを電力業界自身がどう読み取っていくかが重要となる。
更にもう一つ重要な問題としては、固定価格買取制度(FIT)などの影響による再生可能エネル
ギー電源の規模拡大により、ベースロード電源まで出力調整する必要が近未来に出てくるかもし
れないという点がある。その場合、現在の政府の電源ミックス通りであれば、原発か石炭で出力
調整することになる。これはかなり最悪のシナリオで、コスト面だけでなく、施設への悪影響が
出る可能性もある。こうした観点から、石炭火力のリスクは環境面のみではなく、経済面のリス
クもあると考える。つまり、やはり天然ガス火力をベースロード電源とする必要があるというこ
とになる。天然ガスは価格が多少高くとも、ミドルとベースの両電源として運用することが可能
であり、ベースロード電源に天然ガスを含めない限り、安定的な仕組みとはならないのではない
か。こうした内容や天然ガス価格の低廉化を踏まえた LNG 火力の積極的な運用見通しについて
は、海外電力調査会(JEPIC)のレポートで既に示されている。
更に東京湾の火力発電所の問題に触れると、まず、日本のエネルギー問題のど真ん中である柏崎
刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市/刈羽村)について、新しい原発であるため、私は稼働させる
べきと考える。恐らく原子力規制委員会は 2016 年中に柏崎刈羽原子力発電所 6 号機及び 7 号
機の再稼働審査を合格とするだろう。しかし、再稼働のためには、東京電力ではない他社が動か
す必要がある。最大の問題は、同社が事故を起こしたということではなく、新潟県が供給エリア
外であるため、安心した避難計画が作られない懸念があることなどである。同地区を供給エリア
としているのは東北電力であるが、資金不足であるため政府が支援する必要が出てくる。しかし
政府が直接参画することはできないため、日本原子力発電を使うことになる。東北電力/日本原
電/新潟県が柏崎刈羽原子力発電所を稼働させることになれば、東京電力の新総合特別事業計画
が崩れるため、他の東京湾の LNG 火力発電所も全て売却されることになる。現在、超々臨界圧
(USC)石炭火力の新設として、千葉袖ケ浦火力発電所(
《仮称》、千葉県袖ケ浦市)を計画中の
東京ガス/九州電力/出光興産や、市原火力発電所(千葉県市原市)を計画中の関西電力/東燃
ゼネラルは、それを待つ方が、リスクが少ないということになる。こうした異なる形で、大型の
LNG 火力発電が東京湾エリアで手に入る可能性がある。
自由化とエネルギー供給
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自由化が始まることで、様々な競争が起きることになるが、そのうち二つについて述べる。電力
に関しては、小売全面自由化に伴う新規参入者の登場が非常に注目されているが、打てる手はセッ
ト販売とポイント制の二つに限られるだろう。あまり差別化が図れる競争ではないため、やらざ
るを得ない、しかし儲けを期待できる訳ではないという「切ない競争」となるだろう。
あり得る差別化は二つで、一つは電源において、再生可能エネルギーのみで電力供給していると、
しかも FIT なしでやっているのであれば、それを謳うことである。これは料金が高くとも売れる
可能性がある。小さな規模では山形県の水力発電所などがあるが、大きな規模で意外に注目すべ
きは出光と昭和シェルの合併である。出光は実は地熱・風力発電に強く、一方、昭和シェルは子
会社のソーラーフロンティア社や日本最大のバイオ燃料発電所を保有していることから、全ての
再生可能エネルギーが揃うことになる。石油企業 2 社の合併である点と、再生可能エネルギー
のみの電力供給を行うという 2 点で打ち出す場合、極めて興味深い事例になるだろう。石油企
業の統合は後ろ向き且つ守りの戦略としばしば言われるが、やりようによっては、世界に打って
出る攻めの体制を整えることができるのではないか。
もう一つの差別化の方法としては、ガス会社との提携がある。ガス会社の強みとして、顧客を訪
問して直接対話することができる(しかも保安問題のため靴を脱いで家の中まで上がることがで
きる)
という点が挙げられる。セット販売になると家計費全体に影響がある金額になることから、
最終的に料金のたたき合いになった場合、顔の見える信頼の置ける相手から購入できるという点
は極めて重要視されるだろう。例えば東京電力は、電力・ガスのセット販売の提携先として LP
会社の日本瓦斯(ニチガス)を選んでいる。
そういう意味でガス会社には可能性があるが、一方で、ガス事業には注意が必要な点もある。全
体として需要が伸びているのは天然ガスで、電力は横ばい、石油は減少傾向にある。経済学の常
識で考えれば、これらが一斉に自由化を図った場合、需要が伸びているところにプレーヤーが集
まる。しかもエネルギーに関していうと、都市ガス会社はメタン、LPG 会社は LPG だけの一本
足打法だが、石油会社や電力会社は総合エネルギー企業に近い。長い目で見れば電力システム改
革の方が目立っているが、ガスの方が草刈り場になる可能性が十分にある、ということが今度の
電力・ガスシステム改革のポイントの一つと考える。
そして電力もガスも、小売全面自由化により、家庭用・業務用小規模事業所への販売が可能にな
る訳だが、全体として競争マインドが上がることにより、既に規制は緩和されていたが今まで競
争があまり起きていなかった、或いは様々な規制により競争が抑制されていた、大口需要におけ
る競争が一挙に活発化する可能性がある。
特にガス会社の場合に、二重導管規制のありようによっ
ては、むしろ家庭用小規模事業所での競争というよりも、コンビナートでの大口のガスを巡る戦
いが大きくなる可能性がある。その辺のところが、あまり言われていないのだが、電力・ガスシ
ステム改革で考えなければならないポイントである。
最近メディアの取材を受けると、荒唐無稽なことを考えるということで「先生は漫画家みたいで
すね」とよく言われるのだが、電力・ガスの自由化の時代や石油元売りの再編がここまで進んで
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きた時代というのは、経営者にとっては色々なオプションを考えておき、それにどう対応するか
が益々重要となり、従来通りの発想ではいけないと考える。従来どおりの発想をしているのが、
政治家であり官僚であるので、彼らに依存しないことがやはり非常に重要なのでないか。それぞ
れが独自の戦略で決断をして行く。その際に難しいのが、長期的な見通しと短期的な見通しがず
れることで、長期でも短期でもちゃんと張れるようにポートフォリオ戦略をきっちり立てておく
ことが必要である。そうなってくると、総合商社などは非常に重要な可能性を持っていると考え
る。或いは、要するに、目先のことしか張れない経営だと厳しいということで、経営的に厳しい
状況下でどうやって長期的な種を入れていくのかが、重要になってくる。国際メジャーもかなり
大きな転換を図っている。もしかすると、ロイヤル・ダッチ・シェルは石油から天然ガスへ重点
をシフトしたのかもしれないとすら感じる。大きな動きが来ている時に、小さく対応しようとし
たら必ず失敗する。この大きな動きに対し、一人一人、一つ一つの会社が、如何に大きく動くか
を考えることが、エネルギーの未来を決めていくと感じる。
<質疑応答>
Q1:都市ガス改革における都市ガス以外のプレーヤーの活躍の場がどれだけ増えると見込める
のか。新規参入者は電力会社だけで、それ以外のプレーヤーは参入不可能に思えるが、他の事業
者(例えば LPG 事業者)の参入可能性はあると思うか。
A1:他事業者の参入可能性はあると思う。ガスシステム改革小委員会において、電力会社は、
都市ガスの需要家がスイッチングする際の費用が嵩むことから、これらも全て都市ガスの導管事
業者に任せることを主張したが、これは非常に拙劣な戦略であると感じる。顧客と接することが
最大の営業力の源となるため、これを手放してしまうのは間違っている。東京電力がニチガスと
提携したことは重要なポイントで、ニチガスはアグリゲーターとしての道を選ぶという一歩進ん
だ戦略を取り、内管の検査やメーターのチェックまで行うことや、マンション全体を一括受注す
ることも検討している。ニチガスのビジネスモデルは特筆すべきもので、LPG は通常ボンベへ
の入れ替えを充填所で行うが、同社はこれを港で行い、トレーラーで輸送することで規制の対象
外とした。また、小型配送車への積み替えには無人デポステーションを各地に設置し、24 時間
365 日間稼働可能とした。更に、使用している基幹業務クラウドシステム「雲の宇宙船」もレ
ベルが高い。同社と提携したということは、東京電力がガス事業に本格参入する可能性を示して
いる。
Q2:電力の送配電部門について、託送料金が(まだ)高いという話と、再生可能エネルギー導
入のためにもっと投資すべき(総括原価)という点は、矛盾しないか。託送料金の引き下げのた
めの方策はあるか。
A2:矛盾しないと考える。高い託送料金を維持して守られようという発想を続けている限り、
送配電部門は進歩しないだろう。託送料金が下がったとしても、自社の送配電網を使わざるを得
ないため、積極的に逆潮流を受け入れ、これを逆手に取って稼ぐ必要がある。逆潮流を受け入れ
るためには、事故が起きたときに、今までは一方通行だったため上流の方をカットすれば工事が
できた訳だが、逆潮流が増えてくると下流の方もカットしないと工事で感電事故が発生するので、
遮断の技術という技術開発も必要となる。このような点を考えると、自社のエネルギア総合研究
所などを通じて一歩進んだ研究を行っている中国電力などの例外はあるが、電力会社の持ってい
11
第 1245 号 <2016.04.06>
る、横並びで同じ制度で守られるという発想が最大の問題である。例え託送料が半分になっても
やっていけるビジネスモデルを構築するという発想が大事だ。送配電網部門ではないが、電力小
売全社の中で一番まともにビジネスモデルを検討しているのは東京電力の小売り会社だろう。あ
るシンポジウムで同社の小早川氏(常務執行役カスタマーサービス・カンパニー・プレジデント)
とご一緒した際に、長所、短所、機会、脅威の分析をされ、電源を短所に入れていた。他の電力
会社の小売り会社にとっては、当然ながら電源は長所である。原発が戻ってくれば最も安価な値
段をつけられると考えているためだ。これに対し小早川氏は、柏崎刈羽原子力発電所を自社が再
稼働できないことも想定しているのではないかと思われる。そのため、ニチガスと提携すること
や、原発反対の孫正義氏が率いるソフトバンクと提携するという手も打てる。要するに電力自由
化後の電力会社に求められるのは、民間企業として、リスクを背負いながらも思い切った決断が
できるかどうかということである。長期的にはそれが各企業の運命を左右するだろう。結局は原
発を再稼働すれば最もコストがかからないと考えている企業は、福島第一原子力発電所の事故前
から進歩していないということだ。
Q3:石炭火力発電の CO2 排出規制に伴う北米、欧州、アジア地域における既設/新設発電計画
への影響についてご教示頂きたい。
A3:長期的には、中国もインドも石炭火力発電所を削減していくだろうが、短期的には石炭火
力発電をかなり使用するだろう。その場合、こうした地域、特にインドでどのように技術移転を
行うかが課題となる。COP21 で安倍首相がパリを訪問したことがよく報じられていたが、帰国
後すぐにインドに行ったことの方が重要だと思われる。石炭火力を使用したがる地域は原発も使
用したいと考えていることが多いため、原子力と石炭火力をセット販売する方法も大事なのでは
ないか。石炭火力について言えば、日本の技術を移転し、CO2 を削減した企業のみに建設許可を
与えること、及び政策金融により中国に負けないような低価格入札を行うという二つの施策が進
めば、地球温暖化対策として日本の石炭火力が使用されることになると思われる。
Q4:ドイツのシュタットベルケ(地域の電力会社)のモデルは日本で実現可能か。また、実現
への課題は。
A4:ドイツのモデルは非常に興味深く、電力事業は垂直統合したまま自由化された。その結果、
電力会社は 4 社に絞られ、公営電力会社的なシュタットベルケの電力量が総発電力量に占める
割合はおよそ 25%も確保された。こうしたビジネスモデルを日本でも実現できればいいが、歴
史家としては困難なのではないかと考える。その理由は、ドイツはもともと公営電力が強く、送
配電網を保有している自治体がシュタットベルケになったということがあるが、日本ではこうし
た自治体がない。日本では、北九州市東田地区以外では、非常時にだけ送配電網を独立稼働させ
ることができる事例が一つあるのみで(仙台の北の「F −グリッド」
)
、送配電網の確保という点
でドイツとでは異なる。
Q5:原油価格の見通しについて、70 ドル台に戻るには 2017 年末ぐらいまでかかるか。
A5:<図表 7 >によると、
70 ドル台に戻るのは 2017 年末よりももう少し先となっている。私も、
後半で述べた原油安の五つの要因は中々変わらないため、70 ドル台に戻るのは 2017 年末より
後ではないかと考える。
12
第 1245 号 <2016.04.06>
Q6:物流コストの高い「メキシコ湾岸 LNG」に代えて、
「北米西岸 LNG」に注力して低コスト
LNG の確保に努めるべきではないか。
A6:もちろん、その通りである。ただし、北米西海岸からの LNG 輸出は、環境問題等の関係で
容易ではない。
Q7:ガスシステム改革は、電力システム改革と比べて、本当に新規参入を呼び起こして競争を
促しているものか疑問。プレーヤーを増やすためには、パイプラインを広域的に繋げないと、本
当のガス自由化は進まないのではないか。一方、より一層のガス(LNG)の流動化を進め、卸取
引を活性化させるためには、アジア域内でパイプラインが接続されないと意味が無いのではない
か(LNG ハブは液化コストが二重に負担になるため)
。
A7:自由化される都市ガス小口市場では、「電力+ LP ガス」の連携(将来的にはアグリゲーター
方式、つまり集合住宅等での一括供給方式も見込む)が、事実上、唯一の強力な新規参入者にな
るのではないか。むしろ、二重導管規制の緩和で、大口市場(例えばコンビナート内需要家)が、
競争の主戦場になると思われる。アジア域内パイプラインは理想形だが、そう簡単にはできない。
シンガポール、上海も、アジア域内 LNG ハブを目指しており、日韓連携によるハブについても、
経済ベースで構築することは不可能ではないと考える。(おわり)
[橘川武郎氏 略歴]
1951 年生まれ。和歌山県出身。1975 年東京大学経済学部卒業。1983 年東京大学大学院経済
学研究科博士課程単位取得。同年青山学院大学経営学部専任講師。1987 年同大学助教授、その
間ハーバード大学ビジネススクール客員研究員等を務める。1993 年東京大学社会科学研究所助
教授。1996 年同大学教授。経済学博士。2007 年一橋大学大学院商学研究科教授。2015 年よ
り現職。著書は『日本電力業発展のダイナミズム』(名古屋大学出版会)、『松永安左エ門』(ミネ
ルヴァ書房)、『ファンから観たプロ野球の歴史』(共著:日本経済評論社)
、『原子力発電をどう
するか』
(名古屋大学出版会)、
『東京電力 失敗の本質』(東洋経済新報社)、
『電力改革』(講談社)、
『日本のエネルギー問題』
(NTT 出版)など。総合資源エネルギー調査会委員。経営史学会会長。
【橋本】
※ 関連記事
第 1238 号「環境省、石炭火力発電所の新設を容認へ」
第 1232 号「IEA の WEO2015(上):低炭素化社会に向けた動きと化石燃料の動向」
第 1233 号「IEA の WEO2015(下):低炭素化社会に向けた動きと化石燃料の動向」
第 1226 号「INPEX、イクシス PJ の海底パイプライン敷設作業を完了」
第 1222 号「東京電力、ニチガス/ソフトバンク/ TOKAI と共同販売で業務提携」
第 1217 号「COP21、日本の約束草案(政府原案)とその前提」
第 1200 号「東京電力/中部電力、包括的アライアンスの新会社「JERA」を設立」
第 1177 号「米国のキャメロン LNG プロジェクトが着工」
第 1147 号「天然ガスシフトと日本の LNG 調達戦略(第 20 回 DGO セミナー報告・上)
」
第 1148 号「天然ガスシフトと日本の LNG 調達戦略(第 20 回 DGO セミナー報告・下)
」
13
第 1245 号 <2016.04.06>
四国電力、伊方原発 1 号機を廃止/同 3 号機は 7 月下旬に再稼働見込み
四国電力は 3 月 25 日、取締役会において伊方原子力発電所 1 号機(愛媛県西宇和郡伊方町)の
廃止を決定したと発表した。廃止予定日は 5 月 10 日。伊方 1 号機
(加圧水型、出力 56.6 万キロワッ
ト《kW》
)は、2017 年 9 月に営業運転開始から 40 年となることから、具体的な対策等につき
検討を進めてきた。その結果、供給力の確保の観点、各種安全対策工事の技術的成立性やそのた
めに必要となる工事費用、運転可能期間などを総合的に勘案し、運転期間延長認可申請は行わず、
廃止にすることを決定した。国内の原子炉で廃炉が決定されたのは 6 基目で、これを受け、国
内の既存の原子炉数は 42 基、合計出力は 4,163.4 万 kW となる(<表 1 >参照)
。
<表 1>国内の既存・建設中の原子炉
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泊1号
泊2号
北海道電力
泊3号
大飯3号
大飯4号
関西電力
高浜3号
高浜4号
四国電力
伊方3号
川内1号
川内2号
九州電力
玄海3号
玄海4号
柏崎刈羽6号
東京電力
柏崎刈羽7号
中国電力
島根2号
東北電力
女川2号
中部電力
浜岡4号
日本原子力発電
東海第二
東北電力
東通1号
北陸電力
志賀2号[註]
電源開発
大間
美浜3号
高浜1号
関西電力
高浜2号
中部電力
浜岡3号
日本原子力発電
敦賀2号
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57. 9
57. 9
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118
118
87
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89
89
89
118
118
135. 6
135. 6
82
82. 5
113. 7
110
110
135. 8
138. 3
82. 6
82. 6
82. 6
110
116
既存合計
25基
2, 499. 0
建設中
1基
138. 3
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加圧水型
同
同
同
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同
同
同
同
同
同
同
沸騰水型
同
同
同
同
同
同
同
同
加圧水型
同
同
沸騰水型
加圧水型
1989年6月
1991年4月
2009年12月
1991年12月
1993年2月
1985年1月
1985年6月
1994年12月
1984年7月
1985年11月
1994年3月
1997年7月
1996年11月
1997年7月
1989年2月
1995年7月
1993年9月
1978年11月
2005年12月
2006年3月
建設中
1976年12月
1974年11月
1975年11月
1987年8月
1987年2月
2013年7月8日
同
同
同
同
同
同
同
同
同
2013年7月12日
同
2013年9月27日
同
2013年12月25日
2013年12月27日
2014年2月14日
2014年5月20日
2014年6月10日
2014年8月12日
2014年12月16日
2015年3月17日
同
同
2015年6月16日
2015年11月5日
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2015年2月
2015年2月
2015年7月
2014年9月
2014年9月
2016年2月
2015年8月
2015年10月
[註]志賀2号はタービン整流板を設置して運転しているため、現在の定格電気出力は120. 6万kW
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四国電力
九州電力
女川1号
女川3号
福島第2−1号
福島第2−2号
福島第2−3号
福島第2−4号
柏崎刈羽1号
柏崎刈羽2号
柏崎刈羽3号
柏崎刈羽4号
柏崎刈羽5号
島根3号
浜岡5号
志賀1号
大飯1号
大飯2号
伊方2号
玄海2号
52. 4
82. 5
110
110
110
110
110
110
110
110
110
137. 3
138
54
117. 5
117. 5
56. 6
55. 9
既存合計
17基
1, 664. 4
建設中
1基
137. 3
東北電力
東京電力
中国電力
中部電力
北陸電力
関西電力
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㐠㌿㛤ጞ
沸騰水型
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
加圧水型
同
同
同
1984年6月
2002年1月
1982年4月
1984年2月
1985年6月
1987年8月
1985年9月
1990年9月
1993年8月
1994年8月
1990年4月
建設中
2005年1月
1993年7月
1979年3月
1979年12月
1982年3月
1981年3月
ソース:各社 HP 作表:DGO
14
第 1245 号 <2016.04.06>
原子力発電所の運転期間は、2013 年 7 月施行の改正原子炉等規制法において、運転開始日から
起算して 40 年とされており、その満了までに原子力規制委員会の認可を受けることで、1 回に
限り 20 年を上限として延長が可能とされている。これまでに廃炉が発表されているのは、日本
原子力発電の敦賀発電所 1 号機(福井県敦賀市)、関西電力の美浜 1 / 2 号機(福井県三方郡美
浜町)
、九州電力の玄海 1 号機(佐賀県東松浦郡玄海町)、中国電力の島根 1 号機(島根県松江市)
の 5 基で、
いずれも出力は 34 − 55.9 万 kW と伊方原子力 1 号機と同様に小規模な原子炉となっ
ている(<表 2 >参照)。尚、これまでに 40 年以上の運転の延長が申請されたのは、関西電力
の高浜 1 / 2 号機(福井県大飯郡高浜町、加圧水型、出力各 82.6 万 kW)
、及び美浜 3 号機(加
圧水型、出力 82.6 万 kW)の 3 基のみとなっている。
<表 2>廃炉が決定した原子炉
会社名
原子炉
炉型
定格出力(kW ) 営業運転開始
日本原子力発電 敦賀1号機 沸騰水型軽水炉
35.7万
1970年3月
美浜1号機 加圧水型軽水炉
34万
1970年11月
美浜2号機 加圧水型軽水炉
50万
1972年7月
九州電力
玄海1号機 加圧水型軽水炉
55.9万
1975年10月
中国電力
島根1号機 沸騰水型原子炉
46万
1974年3月
四国電力
伊方1号機 加圧水型軽水炉
56.6万
1977年9月
関西電力
備考
国内初の商業用
加圧水型原発
国産第1号
ソース:各社 HP 作表:DGO
一方、四国電力は 3 月 23 日、伊方 3 号機(加圧水型、出力 89 万 kW)の新規制基準への適合
性確認に係る申請書を原子力規制委員会に提出し、工事計画認可申請について同委員会より認可
を受けた。計画では、2016 年 7 月下旬の定格出力運転開始と 8 月の営業運転開始を見込む。同
機は、九州電力の川内 1 / 2 号機(鹿児島県薩摩川内市)、及び関西電力の高浜 3 / 4 号機に続
いて 2015 年 7 月に新規制基準による安全審査に合格していた。
四国電力は、伊方原子力 1 − 3 号機を保有し、原子力が同社の電源に占めるウェイトが高かった。
そのため、原子力発電の停止による影響も大きく、石炭や石油火力を中心に対応してきた。また、
LNG の輸入数量も、2010 年度の約 36 万トン(6 カーゴ)から、2014 年度に約 47 万トン(8
カーゴ)へ、
約 11 万トン増加している。四国電力の震災前(2010 年度)と震災後(2014 年度)
の電源構成(発受電電力量)の比較は<表 3 >の通り。
【五味】
15
第 1245 号 <2016.04.06>
<表 3 > 四国電力の発受電電力量構成
2010 年度
2014 年度
原子力
42.6%
0.0%
石炭火力
36.0%
56.3%
水力
8.7%
11.5%
石油等火力
6.6%
19.2%
LNG 火力
4.8%
7.8%
新エネルギー
1.2%
5.1%
四捨五入の関係で合計値が合わない場合があります
ソース:四国電力
作表:DGO
※ 関連記事
第 1212 号「四国電力、伊方原発 3 号機が再稼働の安全審査に合格」
第 1210 号「長期エネルギー見通し」案の原子力発電目標に必要な運転延長の検証」
第 1208 号「日本の 2010 − 14 年度の電力事情」
第 1196 号「日本原電/関電/九電/中国電、原子炉 5 基の廃炉を決定」
16
第 1245 号 <2016.04.06>
都市ガス大手 4 社、2016 年度の供給計画を発表
都市ガス大手 4 社(東京/大阪/東邦/西部)の 2016 年度の供給計画(事業計画、経営計画
を含む)が 3 月 30 日に出揃った。
各社のガス販売量、原料使用計画は、付表のとおり。
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東京ガスは、ガスシステム改革の議論の進展により、競争環境が厳しくなると想定される中、3
つの主要施策(「総合エネルギー事業の進化」
、
「グローバル展開の加速」、
「新たなグループフォー
メーションの構築」
)を中心に、長期経営計画「チャレンジ 2020 ビジョン」
(2011 年 11 月発
表)の実現に取り組む。ガス販売量は、緩やかな景気回復のもと、積極的な需要獲得によって工
業分野を中心に増加すると見込み、2015 − 20 年度にかけての年平均伸び率を 2.2%としている。
工業用では、広域エリアへの展開、他燃料からの切り替え、発電需要の獲得、コージェネレーショ
ン(CHP:Combined Heat and Power)システムの普及・拡大などの大口需要開発を見込む。一方、
家庭用/商業用他では、新規需要の獲得や、家庭用燃料電池エネファームや CHP システムの普
及・拡大に努めるものの、ガス小売り全面自由化の影響を考慮した結果、年平均伸び率は家庭用
が− 1.4%、商業用他は 0.4%と伸び悩む見込み。設備投資計画については、5 年間で総額 8,800
億円を投入する予定で、日立 LNG 基地の拡張、東京湾内 3 基地(根岸、袖ケ浦、扇島)におけ
る LNG 関連設備の拡充、茨城幹線などの主要導管網形成などに充てる。
17
第 1245 号 <2016.04.06>
大阪ガスは、国内外の経済情勢や油価・為替の変動、電力・ガスの全面自由化等、先行き不透明
で振れ幅の大きい事業環境が続く中で、ガス全面自由化に向けた準備や電力小売事業の早期拡大
を目指し、エネルギー供給以外の様々な付加サービスを組み合わせて、顧客に質の高い提案をし
ていく。ガス販売については、家庭用におけるエネファームの拡販や、業務用(工業用/商業用
/公用・医療用)における CHP など分散型エネルギーシステムの普及、他燃料からの切り替え
による需要開発などを見込み、2015 − 20 年度にかけてのガス販売量の年平均伸び率を 1.0%
としている。設備投資計画については、将来の需要増に対応した導管網の整備、保安・安定供給
のための供給設備の増強・入れ替え、災害を想定した製造・供給設備での対策工事などを中心に
累計で 2,261 億円を投入する予定。製造関連では姫路製造所、及び泉北製造所第一工場に LNG
気化器を増設し、供給関連では第 2 東部ライン、姫路東西連絡管、尼崎・西神ラインを敷設する。
東邦ガスは、地域経済の本格回復の足取りが重く、中国など新興国経済の減速、電力・ガス市場
の全面自由化などの事業環境の変化の中で、競争が更に激化すると想定しているが、環境性に優
れる天然ガスは、一層の市場拡大が期待されるとしている。そうした中、家庭用分野では、低コ
スト・省スペース型燃料電池「エネファーム typeS」の新製品の販売などを通じて、新築住宅に
加え集合住宅・既存住宅への販路拡大を図る。業務用分野では、都市ガスへの燃料転換や、業務
用厨房機器・より高効率な CHP など、顧客に最適なエネルギーシステムを提案して新規開拓を
進める。その結果、2016 年度のガス販売量は 2015 年度比 3.2%の伸び率を見込む。2016 年
度の設備投資計画については、製造基盤整備や広域的な導管整備、防災・保安対策を進め、前年
から 103 億円増の 464 億円を投入予定。製造設備では知多緑浜工場に 3 号 LNG タンク(貯蔵
能力 22 万キロリットル)やボイルオフガス(BOG)再液化設備を建設し、供給設備では三重幹
線などの基幹幹線整備を行う。
西部ガスは、ひびき LNG 受入基地稼働によるメリットを活かした積極的な営業展開によって、
2016 年度のガス販売量を 2015 年度比で 5%増加させる計画。2016 年度の設備投資額は 2015
年度見込みから 3%減の 113 億円を予定し、福岡∼北九州地区のセキュリティ向上のため、九
州北部幹線の建設工事を引き続き行うほか、新規顧客への供給や、設備更新のための本支管敷設
などを継続的に行う。
【橋本】
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※ 関連記事
第 1244 号「東京ガス、日立 LNG 基地の営業運転を開始」
第 1236 号「都市ガス販売量、2015 年は前年比 1.1%減」
第 1232 号「都市ガス大手 4 社、全社が小売電気事業者の事前登録を完了」
第 1229 号「大阪ガス、泉北製造所第一工場の 5 号タンクが完成」
第 1200 号「西部ガス、LNG サテライトプラント「久留米工場」が運転開始」
第 1198 号「都市ガス大手 4 社、2015 年度の供給計画を発表」
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第 1245 号 <2016.04.06>
中国の電気自動車市場:急成長/山積みの課題/不透明な先行き(上)
今週から 2 週に亘り、
FACTS Global Energy(FGE)
[註]発行の Energy Briefs 誌(2016 年 3 月号)
より、中国における電気自動車(EV)市場の現状についてのレポートをご紹介します。
概要
・ほぼ何もない所から始まった中国の EV 産業は、近年飛躍的な成長を遂げ、2015 年には年間
33 万台以上の売り上げを記録した。同国の 1 億 7,000 万台を超える自動車市場全体において、
そのシェアは僅かなものだが、目下、中国は世界最大の EV 市場となった。
・中央政府は、自国内の EV へ強力な後押しを行ってきた。EV の開発・販売支援策として、補助
金、税制上の優遇措置、その他一連の施策を実施している。更に省・地方政府も優遇措置を行っ
ている。
・しかしながら、インフラ不足、高額なコスト、政府補助金を悪用する消費者の不適切な知識、
そして EV のライフサイクルでの環境面への影響に関する議論や使用済バッテリーの廃棄問題等、
多くの課題も山積する。今後 5 年間で中国の EV は大きな成長を遂げようとしている。だが、既
に決定している補助金撤廃後の先行きは、全く見通せない。
・EV が石油・ガス産業へ与える影響は、燃料ごとに様々である。EV 台数の増加は、ディーゼル、
ガソリン、LPG と同様に、輸送燃料としての天然ガスにも影響するだろう。
2014 年以降、中国で EV は大きな話題を集めるようになり、その後 EV 市場は瞬く間に拡大の
一途を辿った。そして現在、同国は世界最大の EV 市場となった。中国の EV 市場の先行きや、
同国の自動車部門とその市況に与える変化、そして石油需要と天然ガス自動車(NGV)に対する
影響については幅広い見方がある。本稿では、中国の EV 販売、普及状況、政策の最新状況につ
いてお伝えする。また、同国が今後 EV 普及において直面する課題と、石油・ガス産業への影響
を再検証する。
1.EV 販売台数の急増
中国では EV の定義に混乱がある。本稿で取り上げる EV は、バッテリー式電気自動車(BEV)、
プラグインハイブリッド車(PHEV)
、燃料電池自動車(FCV)の 3 種類とする。この 3 種類の
EV は新エネルギー車(NEV)とも呼ばれる。しかし、中国では NEV の定義が広く、EV だけで
はなく、LNG 駆動車、圧縮天然ガス(CNG)車、ハイブリッド車(主燃料はガソリン)
、ソーラー
カーなども NEV に含まれる。そこで本稿では、EV を上述の 3 種類のみとし、誤解を避けるため
NEV という用語は使用しないものとする。
中国の EV 販売台数は、2008 年の 800 台から 2010 年には 7,200 台となり、2013 年には倍の
1 万 7,500 台、2014 年には更に倍増し 3 万 8,200 台となった。2015 年には、EV の生産台数
が 34 万 500 台、販売台数が 33 万 1,100 台と、激増している(<図表 1 >参照)
。2016 年初
頭の時点では国内に 58 万 3,200 台の EV があり、その内の 57%が BEV、残りの 43%がその他
の EV(主に PHEV)となっている。
20
第 1245 号 <2016.04.06>
図表 1: 中国の EV 生産・販売台数 (2014 ― 15 年)
生産台数
販売台数
バッテリー式
電気自動車 (BEV)
プラグイン
ハイブリッド車 (PHEV)
合
計
2. 政府の補助金と奨励策の大きな役割
中国政府は、EV の開発と販売を促進するため、過去 5 年間に亘り奨励策を実施してきた。2010
年に中国財政部(MOF)により開始されたこの奨励策は、2013 年 9 月に正式導入され、現在に
至る。2013 年以降の BEV / PHEV / FCV への補助金政策の詳細ついては<図表 2 >の通りで
ある。
図表 2: 中国の各種 EV 補助金の一覧 (2013 ー 16 年 )
商用バス
乗用車
公共(都市)バス
バッテリー式電気自動車
(BEV)
プラグイン
ハイブリッド車 (PHEV)
燃料電池車 (FCV)
参照例:
割引率:5.9%
運転寿命:35 年
BEV
燃料費:20 ユーロ/ MWh( 石炭 )
PHEV
FCV
BEV
PHEV
FCV
BEV
PHEV
FCV
: 換算レートは各年異なる
・特殊な用途の BEV(郵便/物流/都市下水・公衆衛生及び関連事業に使用されるもの)の補助
金は、電池容量を基準とする。2013 年は 2,000 元(333 ドル)/キロワット時(kWh)
、2014
21
第 1245 号 <2016.04.06>
年は 1,900 元(309 ドル)/ kWh、2015 年と 2016 年は 1,800 元(289 ドル)/ kWh。
・電気二重層キャパシタ(訳注:エネルギー貯蔵装置のこと)及びチタン酸リチウム急速充電バッ
テリーを搭載する BEV に対する補助金は 1 台あたり 15 万元。
・2016 年以降、BEV と PHEV の補助金は、現行の水準より 2017 − 18 年は 20%減、2019 −
20 年は 40%減に見直される予定。FCV の補助金については、2017 − 20 年は変更がない。現
時点では、政府は 2020 年末以降に EV の補助金を廃止する意向。
上記の補助金に加え、2014 年 9 月 1 日以降、新車購入時に通常課税される 10%の車両購置税
を EV 購入者に対しては免除している。同措置は 2017 年末まで適用される。
また、各地の省・地方政府も EV を後押ししている。北京市では、これまで新車のナンバープ
レート取得に抽選制を採用してきたが、
2015 年 10 月から EV 購入者は無抽選となった。つまり、
EV であれば待たずに車を購入出来るということだが、北京政府の指定した EV しか選択できず、
今のところ指定されているのは全て BEV である。河北省政府は、公共バス及び一部のカテゴリー
車(特種車両/警察車両/政党及び政府機関が使用する自動車等)の新車について、全て新エネ
ルギーを動力としなければならないと規定し、そうでないものはナンバープレートを交付しない
としている。
このような普及策が取られているが、MOF が当初から想定している最も重要な点は、これらの
補助金を、実施から数年後に段階的に廃止することである。現在は、2020 年以降に全ての補助
金を廃止することを目標にしている。10%の車両購置税の免除措置も、2017 年以降見直される
予定である。(次週に続く)
[註]FACTS Global Energy(FGE)
FGE グループ(http://www.fgenergy.com)は、世界の石油・ガス業界を専門とするコンサルティ
ンググループであり、その前身はフェレイドゥン・フェシャラキ博士により 1984 年に設立され
た FACTS Inc.(Fesharaki Associates Consulting & Technical Services, Inc.)で、当初はスエズ以
東の石油・ガス業界に特化していた。
同グループは、アジア太平洋市場に強みを持つ数少ないコンサルティンググループであり、
2006 年には Energy Market Consultants(EMC)を傘下に入れ、アジア太平洋/中東/北米/
欧州/旧ソ連諸国に専門範囲を広げている。現在はハワイ/シンガポール/ロンドン/ドバイ/
北京に拠点を置き、メルボルン/ムンバイ/東京/カリフォルニアにもサテライト・オフィスを
構える。
同グループの理念は、クライアントに対して石油・ガス市場に関する最良の戦略アドバイスを行
うことであり、一貫性及び客観性の伴った分析と最高品質のデータの迅速な提供を目指してい
る。また、クライアントそれぞれの特有なニーズに対応するため、オープンかつ直接的なコミュ
ニケーションを重視している。同社のサービスには、炭化水素プロジェクトの予備事業化調査(プ
レ F/S)
、シナリオ分析、輸出市場調査、国営石油・ガス会社の戦略研究などが含まれる。
22
第 1245 号 <2016.04.06>
【岡田】
※ 関連記事
第 1231 号「アジア太平洋ガス会議(APGC)2015 取材報告」
第 1220 号「第 4 回 LNG 産消会議(上)」
23
第 1245 号 <2016.04.06>
バングラデシュ初の LNG 受入基地、エクセラレートが FSRU を提供
バングラデシュの電力・エネルギー・鉱物資源省(MPEMR)によると、同国国営石油会社ペト
ロバングラは 3 月 31 日、米エクセラレート・エナジー/米 Astra Oil の合弁会社(AE)との間
で、
同国初の LNG 受入基地プロジェクト向けの浮体式 LNG 貯蔵/再ガス化設備(FSRU)に関し、
建設/保有/操業/移譲(BOOT)
[註 1]契約を締結した。契約期間は 15 年間で、2018 年の
操業開始を予定する。ペトロバングラが基地の使用権を保有する。両者は 2014 年 6 月に、同
契約の基本条件について合意に達していた。
同 FSRU は、 バ ン グ ラ デ シ ュ 南 東 部 チ ッ タ ゴ ン 港 の 南 方 約 90 キ ロ メ ー ト ル に 位 置 す る
Moheshkhali 島の沖合に係留され、LNG 貯蔵能力 13 万 8,000 立方メートル、再ガス化能力 5
億立方フィート/日(LNG 換算約 380 万トン/年)を有する予定。MPEMR によれば、AE は再
ガス化費用として 0.49 ドル/ 1,000 立方フィート(ドル/ MMBtu と同程度)を徴収する。こ
れに税金等[註 2]を含めると、単位当たりのガス料金は 17.10 ドル程度となる見込み。LNG
はカタールから輸入する計画で、バングラデシュ政府は 2011 年 1 月に、カタール政府との間
で約 400 万トン/年の LNG 売買に関する覚書(MOU)を締結している。MPEMR は、LNG の
輸入並びに FSRU の使用料として、年間 18 億ドル(約 2,100 億円)がテイク・オア・ペイ(TOP)
ベースで掛かると見ている。
バングラデシュは、一次エネルギー消費のうち天
然ガスの占める割合が 75%と非常に高いガス消費
ダッカ
バングラデシュ
国で、且つ天然ガス自給国である。2015 年版 BP
ガン
統計によると、2014 年の天然ガス消費量は 10 年
ジス
河
前に比べ 84%増の 236 億立方メートル(LNG 換
インド
チッタゴン
ミャンマー
Moheshkhali島
算約 1,700 万トン)であった。国内の天然ガス生
産も着実に増加しているものの、米国エネルギー
省エネルギー情報局(EIA)によると、既存の天
然ガス資源は枯渇しつつあり、特に発電部門でガ
ス不足の問題を抱えているという。陸上鉱区のガ
ベンガル湾
ス資源の生産が近い将来頭打ちになることを見越
し、同国では沖合ガス資源の開発を模索している
ほか、LNG など天然ガスの輸入計画を進めている。
MPEMR は、国内 2 ヵ所目となる LNG 受入基地プロジェクト(陸上式、受入能力 350 万トン/
年)も Moheshkhali 島の Matarbari で計画中しており、プロジェクト参画への意思表明書(EOI)
を過去複数回に亘り募集しているが、資金難等により計画は遅延し続けている。MPEMR は 3 月
21 日にも、同プロジェクトのコンサルティング・サービスに関し、EOI の募集を開始している。
[註 1]BOOT(Build, Own, Operate, Transfer)とは、民間企業が建設/保有/操業を行い、資
24
第 1245 号 <2016.04.06>
金回収後に政府に引き渡すプロジェクト方式。
[註 2]前払い所得税(AIT:Advanced Income Tax)
、付加価値税(VAT: Value Added Tax)等。
【岡田】
※ 関連記事
第 1235 号「FGE による世界のガス/ LNG 価格と LNG 需給の見通し」
第 1231 号「アジア太平洋ガス会議(APGC)2015 取材報告」
第 1161 号「バングラデシュ初の LNG 受入基地、エクセラレートの FSRU を長期傭船」
第 1159 号「バングラデシュ、陸上 LNG 受入基地 PJ の入札締切を延期」
第 989 号「サントス、バングラデシュ沖合ガス鉱区の権益を取得」
25
第 1245 号 <2016.04.06>
仏 EDF、ダンケルク LNG 基地は 6 月に初カーゴを受入予定と発表
仏電力大手 EDF の子会社ダンケルク LNG 社は 3 月 16 日、現在フランス北部で建設中のダンケ
ルク LNG 受入基地が 6 月にコミッショニング(試運転)用として最初の LNG カーゴを受け入
れる予定であると発表した。当初の計画では、2015 年末までの稼働開始を目標に、2012 年初
頭に着工予定であったが、実際に工事が開始されたのは 2012 年 10 月だった。ダンケルク LNG
によると、同基地には、当初の計画が策定された 2011 年以降の市場環境の変化を反映し、計画
に無かった LNG 再出荷設備などが追加されている。
同受入基地は、フランス北部ダンケルク湾に建設され、貯蔵タンク 3 基(貯蔵能力各 19 万立方メー
トル)やボイルオフガス(BOG)回収システム、世界最大級の LNG 船(27 万立方メートル級の
Q − Max 船)が着桟可能なバースなどを備え、受入能力は 130 億立方メートル(LNG 換算約
940 万トン)
/年。基地の所有者であるダンケルク LNG 社の株式保有比率は、
EDF 65%、ベルギー
のガス輸送会社 Fluxys 25%、仏トタール 10%。同基地の貯蔵/受入能力のうち、約 80 億立方メー
トル(同約 580 万トン)/年は EDF が、約 20 億立方メートル(同約 145 万トン)/年はトター
ルが、それぞれ使用権を有しており、残り約 30 億立方メートル(同約 215 万トン)/年はオー
プンとなっている。
天然ガスの供給の殆どをパイプラインガス輸入と
英国
LNG 輸入で賄うフランスには現在、北西部ブル
ベルギー
ダンケルク
受入基地
ターニュ地方のモントワール LNG 受入基地(受入
パリ
能力 100 億立方メートル《同約 730 万トン》/
モントワール
受入基地
年)
、南部マルセイユ近郊のフォスシュルメール港
のフォス・トンキン(フォス 1)LNG 受入基地(受
フランス
入能力 30 億立方メートル《同約 220 万トン》/
年)及びフォス・カバウ(フォス 2)LNG 受入基
ボルドー
地(受入能力 82 億 5,000 万立方メートル《同約
フォス2
受入基地
フォス1
受入基地
600 万トン》/年)の、合計 3 ヵ所の LNG 受入基
地(合計受入能力は約 1,550 万トン/年)が操業
フォス3
受入基地
(中止)
スペイン
マルセイユ
中[註]
。しかし、同国では天然ガス消費量が下降
傾向にあり、BP 統計によると 2005 年の 448 億立方メートル(LNG 換算約 3,200 万トン)か
ら 2014 年に 359 億立方メートル(同約 2,600 万トン)まで減少し、LNG 輸入量も 2005 年の
128 億 3,000 万立方メートル(同約 930 万トン)から、2014 年の 71 億立方メートル(同約
510 万トン)へ減少している。そのような背景から、フランスではダンケルク受入基地の他にも、
蘭ヴォパック/英蘭シェルが、フォスシュルメール港でフォス・ファスター LNG 受入基地(フォ
ス 3、初期受入能力約 80 億立方メートル《同約 580 万トン》/年)を計画中だったが、複数メ
ディアによると、同計画は中止された模様。
尚、EDF は、米シェニーレ・エナジーが米国テキサス州で建設中のコーパス・クリスティの第
26
第 1245 号 <2016.04.06>
2 − 3 液化トレインより、20 年間に亘り最大約 77 万トン/年の LNG 供給を受ける長期売買契
約(SPA)を締結している他、シェニーレの販売部門子会社であるシェニーレ・マーケティン
グ・インターナショナルから、ルイジアナ州のサビーン・パス LNG プロジェクトを中心とする
同社の LNG ポートフォリオより、2016 − 18 年にかけて最大 42 カーゴ(最大 1 億 5,000 万
MMBtu:同約 290 万トン)の LNG を DES(着船渡し)ベースで購入する予定。
[註]既存の LNG 受入基地 3 ヵ所はいずれも、仏 ENGIE の子会社 Elengy が操業している。
【海道】
※ 関連記事
第 1220 号「米サビーン・パス PJ、仏 EDF への短期 LNG 追加供給で合意」
第 1215 号「米サビーン・パス PJ、仏 EDF への LNG 短期供給で合意」
第 1164 号「米コーパス・クリスティ PJ、仏 EDF と長期 SPA を締結」
第 1116 号「仏フォス・トンキン受入基地、5,500 隻目の LNG カーゴを受け入れ」
第 1079 号「EDF、仏ダンケルク LNG 受入基地の建設を開始」
第 1018 号「EDF、仏ダンケルク LNG 受入基地 PJ で FID」
27
第 1245 号 <2016.04.06>
クウェート、陸上 LNG 受入基地の建設を韓国コンソーシアムに発注
韓国の現代建設は 3 月 16 日、現代エンジニアリング及び韓国ガス公社(KOGAS)と共に、クウェー
ト国営石油会社(KPC)の完全子会社である国営石油精製会社(KNPC)が計画する、大規模な
陸上 LNG 受入基地の建設を受注したと発表した。受注額は 29 億 3,000 万ドル
(約 3,400 億円)。
現代建設は 58 ヵ月の工期を見込んでおり、完工は 2021 年第 1 四半期頃となる見込み。
同受入基地は、KNPC が首都クウェート市から 90 キロメートル南のアルズール(Al-Zour)に
て計画する、アルズール石油精製プロジェクト[註]の敷地内に建設される。同基地は 8 基の
LNG 貯蔵タンクと再ガス化設備を備える予定で、現代建設が LNG 貯蔵タンク、現代エンジニア
リングが再ガス化設備の建設を担当する。KOGAS は、コミッショニング(試運転)やオペレーショ
ンのトレーニングを担当する。今回、現代建設は基地の受入能力について言及していないが、英
エイメック・フォスター・ウィーラーが 2014 年に KNPC より陸上基地の基本設計(FEED)を
受注した際、基地の送出能力は 15 億立方フィート/日(LNG 換算約 1,100 万トン/年)、LNG
貯蔵タンクは 4 基(貯蔵能力各 18 万立方メートル)となる計画で、将来的には送出能力と貯蔵
能力の倍増も検討すると発表していた。
イラク
ク ウ ェ ー ト で は 2009 年 に KNPC が、 ク
イラン
ウェート市の南東約 40 キロメートルのミー
ヨルダン
ナ・アル・アフマディ港で、国内だけでな
イスラエル
く中東地域としても初の LNG 受入基地とな エジプト
カタール
るミーナ・アル・アフマディ・ガスポート
オマーン
(MAAGP)LNG 受 入 基 地 を 操 業 開 始 し た。
同基地は当初、米エクセラレートが提供す
UAE
サウジアラビア
スーダン
る浮体式 LNG 貯蔵/再ガス化設備(FSRU)
イエメン
を採用していたが、現在はノルウェー系の
LNG 輸送会社 Golar LNG の新造 FSRU「Golar
Igloo」号(積載容量 17 万立方メートル級)
イラク
を傭船している(傭船期間は 2014 年 3 月
イラン
から 5 年間)
。今回の受入基地は、操業開始
すれば国内 2 件目となる。
クウェートの天然ガス消費量は、夏季冷房
サウジアラビア
クウェート
MAAGP LNG(FSRU)
アルズール(陸上)
用の電力需要の増加に合わせて年々増加し
ており、2015 年版 BP 統計によると、2014 年は 201 億立方メートル(同約 1,500 万トン)と、
10 年前に比べて 60%増加している。一方、2014 年の天然ガス生産量は 164 億立方メートル(同
約 1,200 万トン)であり、供給不足分を LNG 輸入で賄っている。パリに拠点を置く LNG 輸入者
による国際機関 International Group of Importers(GIIGNL)の最新情報によれば、クウェート
は 2015 年にカタール、オマーン、トリニダード・トバコなどから 304 万トンの LNG を輸入した。
28
第 1245 号 <2016.04.06>
LNG の調達については、KPC が、英蘭シェルと英 BP より、夏季の冷房需要期である 4 − 10 月
に両社から合計 250 万トン/年の LNG を 5 − 6 年間に亘り購入することで合意したと、2014
年 4 月に報じられていたが、GIIGNL によれば 2015 年の LNG 輸入量のうち 191 万トンはスポッ
トまたは 4 年以下の短期契約による調達だった。
[註]アルズール石油精製プロジェクトでは、石油精製能力 61 万 5,000 バーレル/日の設備を
建設する。KNPC は 2015 年 10 月、複数企業に建設業務を発注済み。2019 年 7 月に稼働開始予定。
【浦原】
※ 関連記事
第 1157 号「カタールガス、クウェートと 2014 年の LNG 供給で合意」
第 1152 号「シェル/ BP、クウェートと LNG 供給で合意」
第 1146 号「フォスター・ウィーラー、クウェートの陸上 LNG 受入基地の FEED を受注」
29
第 1245 号 <2016.04.06>
米 FERC、ゴールデン・パス PJ の環境影響評価草案を発行
米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は 3 月 25 日、米国テキサス州サビーン・パス近郊で推
進されるゴールデン・パス LNG プロジェクトに関し、環境影響評価草案(DEIS)を発行したと
発表した。カタール国営石油会社(QP)の国際投資部門カタール・ペトロリアム・インターナ
ショナル(QPI)と米エクソンモービルが出資するゴールデン・パス・プロダクツ(GPP:QPI
70%、エクソンモービル 30%)は 2014 年 7 月に同プロジェクトの建設・操業に関し、FERC
に正式な許可申請をしていた。FERC は 2015 年 6 月、最終環境影響評価書(FEIS)を 2016 年
3 月 4 日に発行し、それから 90 日以内に最終判断を下す予定と通知していたが、予定は大幅に
遅れている。
今般の DEIS の内容は、同プロジェクトから提供された情報及び、追加で要求したデータの審査、
現地調査等に基づいて決定された。FERC は DEIS において、同プロジェクトは幾分環境に影響
を及ぼすが、その影響レベルは同プロジェクトによる緩和対策及び FERC より推奨される追加的
対策を実施することにより、許容レベルまで縮小させることができるとしている。尚、FERC は
DEIS に関してのパブリック・コメントを 5 月 16 日まで募集する。
ゴールデン・パス LNG プロジェクトは、
ゴールデン・パス LNG ターミナル(QP 70%、エクソンモー
ビル 17.6%、米コノコフィリップス 12.4%)が 2011 年より操業するゴールデン・パス LNG 受
入基地(受入能力 1,560 万トン/年)の敷地内や隣接地に、LNG 液化トレイン 3 基(合計生産
能力 1,560 万トン/年)/原料ガス処理施設/自家発電設備(出力 20 − 25 万キロワット)等
を新設し、LNG 輸出/輸入双方向の基地に転換するもの。既存のバース 2 基や LNG 貯蔵タンク
5 基(容量各 15 万 5,000 立方メートル)等を活用すると共に、既存設備の改造も行われる。ま
た、州際パイプライン網に接続された既存のゴールデン・パス・パイプライン(GPPL、全長 69
マイル《約 110 キロメートル》)の双方向輸送を可能にするため、コンプレッション・ステーショ
ンやループ化のための導管の新設も行う。プロジェクト総工費はおよそ 100 億ドル
(約 1 兆 1,000
憶円)となる見込み。
原料ガスは、同パイプラインを通じてメキシコ湾沿岸の陸上部や沖合、更には内陸部から調達す
る計画で、生産された LNG については、QPI とエクソンモービルが 2013 年 5 月に締結した商
業的枠組み合意に基づき、
エクソンモービルが最大 1,560 万トン/年を販売する計画。供給先は、
QPI /エクソンモービルの合弁会社サウス・フック・ガス(SHG)が使用権を保有し管理する、
英国のサウス・フック LNG 受入基地(受入能力 1,560 万トン/年)等になる予定。また、輸出
許可に関しては、2012 年 9 月に、米国エネルギー省(DOE)より自由貿易協定(FTA)締結国
向けに 1,560 万トン/年の LNG を 25 年間に亘り輸出する許可を取得済み。同年 10 月に提出
した FTA 非締結国向けの申請(数量・期間ともに FTA 締結向けと同じ)については、FERC の
環境影響評価(EIS)の完了を待って輸出許可審査が行われる。
GPP は、第 1 液化トレインを 2019 年 9 月に、第 2 液化トレインを 2020 年 3 月に、第 3 液化
30
第 1245 号 <2016.04.06>
トレインを同年 9 月に操業開始することを目指し、FERC に 2015 年 7 月 1 日までの許可付与を
求めていた。2014 年 7 月には、千代田化工に米 CB&I との協業案件として基本設計(FEED)を
発注している。
【山下】
米国LNG輸出プロジェクトの政府許可状況
プロジェクト名
サビーン・パス
(シェニーレ)
生産規模
18.0
(4.5 x 4基)
13.5
キャメロン
(センプラ)
(4.5 x 3基)
フリーポート
(フリーポートLNG)
(4.4 x 3基)
コーブ・ポイント
(ドミニオン・コーブ)
コーパス・クリスティ
(シェニーレ)
サビーン・パス増設
(シェニーレ)
レイク・チャールズ
(BG/エナジー・トランスファー)
13.2[註2]
5.25
13.5
(4.5 x 3基)
9.0
(4.5 x 2基)
16.5
(5.5 x 3基)
6.0
ジョーダン・コーブ
(加Veresen)
(1.5 x 4基)
マグノリア
(豪LNG Ltd)
(2.0 x 4基)
エルバ・アイランド
(キンダー・モーガン)
キャメロン増設
(センプラ)
オレゴン
(LNGディベロップメント)
ゴールデン・パス
(カタール・ペトロリアム/
エクソンモービル)
8.0
2.5
(0.25 x 10基)
9.0
(4.5×2基)
9.0
①
2011年1月
①
④
2012年12月
②
②
2012年8月
③
⑤
2013年4月
④
③
2012年8月
⑤
⑧
2013年9月
⑥
(FTA非締結国向け輸出)
許可
2012年4月
(1年3ヵ月)
2014年6月
(1年6ヵ月)
2014年7月
(1年11ヵ月)
2014年9月
(1年5ヵ月)
2014年12月
(2年4ヵ月)
2015年4月
(1年7ヵ月)
2015年12月
許可
2011年5月
申請
① 2010年9月
①
⑤ 2011年11月
⑤
② 2010年12月
②
④ 2011年10月
⑨ 2012年8月
(追加分:2016年3月)[註1]
着工
2012年8月
2014年2月
2014年10月
2013年5月
(第3トレイン:同年11月)
2014年11月(第1/2トレイン)
2015年5月(第3トレイン)
④
2013年9月
2014年10月
⑧
2015年5月
⑬ 2013年9月
⑨
2015年6月
2015年5月
(第1/2トレイン)
2015年6月
(第5トレイン)
⑩
2014年3月
③ 2011年5月
③
2013年8月
2016年を目標
⑥
2013年5月
DEIS:2014年11月7日に発行済み。
FEIS:2015年9月30日に発行済み。
⑥ 2012年3月
⑥
2014年3月
2015年内を目標としていた
⑪
2014年5月
DEIS:2015年7月17日に発行済み。
FEIS:2015年11月13日に発行済み。
⑭ 2013年10月
FERCの許可後に審査
2016年半ばを目標
⑨
2014年3月
EA:2016年2月5日に発行済み。
⑧ 2012年8月
FERCの許可後に審査
2015年第4四半期を
目標としていた
⑦
(1年9ヵ月)
⑮
2015年9月
EA:2016年2月12日に発行済み。
⑮ 2015年5月
⑦
2013年6月
DEIS:2015年8月5日に発行済み。
FEIS:2016年6月3日に発行予定。
⑦ 2012年7月
⑫
2014年7月
DEIS:2016年3月25日に発行済み。
⑩ 2012年10月
FERCの許可後に審査
2015年7月1日までの許可
付与をFERCに求めていた
⑬
2015年6月
審査中
⑪ 2012年8月
FERCの許可後に審査
2016年9月を目標
⑭
2015年9月
審査中
⑫ 2013年5月
FERCの許可後に審査
2016年後半を目標
FERCの許可後に審査
2014年7月
⑦
15.6
(5.2 x 3基)
(5.0 x 2基)
合計(百万トン/年)
正式申請
(4.5 x 2基)
10.0
ガルフ
(GLLC)
ベンチャー・グローバル・
カルカシュー・パス
(ベンチャー・グローバル)
DOE
FERC
(百万トン/年)
2016年6月を目標
2017年半ばを目標としていた
10.0
(1.0×10基)
159.05
88.95
103.95
63.45
(FERC許可済み)
(DOE許可済み)
(着工済み)
ソース:FERC、DOE、各社HP
* ○内の数字は、申請ないしは許可の順番
作表:DGO
* DEISは、環境影響評価書草案
* FERC許可欄の( )内は、許可までに要した時間
[註1]シェニーレは2015年4月、第1−4トレインからの輸出許可に関し、追加で2,030億立方フィート(LNG換算約420万トン)/年の追加申請を行い、2016年3月に許可された。
[註2]フリーポートLNGは2015年6月15日、FERCに対し生産能力を約1,530万トン/年(約510万トン/年×3基)に変更する申請を行った。追加分は審査中。
※ 関連記事
第 1166 号「千代田化工/ CB&I、米ゴールデン・パス液化 PJ の FEED 業務を受注」
第 1162 号「米ゴールデン・パス LNG 液化 PJ、FERC に正式申請」
第 1107 号「米ゴールデン・パス、LNG 液化 PJ で FERC に予備申請提出」
第 1106 号「QPI /エクソン、ゴールデン・パス PJ の LNG 販売で枠組み合意締結」
第 1083 号「米ゴールデン・パス、FTA 非締結国向け LNG 輸出許可を申請」
第 1072 号「米ゴールデン・パス LNG 基地、DOE に輸出許可を申請」
31
第 1245 号 <2016.04.06>
GIIGNL、2015 年の世界の LNG 市場調査報告書を発表
パリに拠点を置く、LNG 輸入者による国際機関 International Group of Liquefied Natural Gas
Importers(GIIGNL)は 3 月 29 日、「2015 年の世界の LNG 市場調査報告書(The LNG Industry
in 2015)
」を発表した。報告書によると、2015 年の世界の LNG 取引量は前年比 2.5%増の 2 億
4,519 万トンで過去最高を記録した。浮体式 LNG 貯蔵/再ガス化設備(FSRU)の発展で LNG
輸入国は 34 ヵ国となり、
10 年前の 15 ヵ国から大幅に増加し、LNG 取引のグローバル化が進んだ。
また、アジアの需要落ち込みを、中東/北アフリカ/欧州が吸収した形となった。そのほか、油
価下落/世界的な需要成長鈍化/豊富な供給を背景に LNG 価格が世界的に下落し、価格レベル
のグローバル化も進んだ。
世界の LNG 輸入市場
2015 年の LNG 輸入量は、地域別に見ると、アジア 1 億 7,707 万トン(シェア 72%)
、欧州 3,757
万トン(15%)、米州 2,073 万トン(9%)、中東 982 万トン(4%)となった。輸入量の多い国
は順に日本 8,505 万トン(35%)
、韓国 3,342 万トン(14%)
、中国 2,002 万トン(8%)
、イ
ンド 1,460 万トン(6%)
、台湾 1,445 万トン(6%)だった。
アジアは引き続き世界需要を牽引する市場であるが、2015 年の輸入量は前年比 1.7%減となり、
世界市場におけるシェアも前年比 3%減の 72%となった。国別に見ると、新たに輸入国となっ
たパキスタンの増分(輸入量 105 万トン)があったものの、経済成長の鈍化、省エネルギーの
促進、穏やかな気候、代替燃料への移行などを要因として、日本と韓国がそれぞれ輸入量 4.7%減、
11.2%減となった。また、従来 LNG 需要を牽引すると見込まれてきた中国では、引き続き輸入
増となったものの [ 註 1]、伸び率は前年比 5.5%増と、前年に続き小さく留まった。このことか
ら、
北東アジア全体の輸入量は 2009 年の景気後退以降初めて減少した。インドの LNG 輸入量も、
2014 年並みとなった。
欧州の需要は、再輸出が前年比約 40%減となったこと、カタールから英国向け輸出が増えたこ
とを要因に、LNG 純輸入が前年比 15.8%増の 3,757 万トンとなった。国別に見ると、フランス(5%
減)
、トルコ(1.9%減)を除くすべての国で増加した。欧州最大の輸入国は前年に引き続き英国
で、1,008 万トン(前年比 20%増)を輸入した。
中東の LNG 輸入量は、エジプト(輸入量 260 万トン)、ヨルダン(185 万トン)の輸入開始な
どにより、純 LNG 需要が前年比 139.5%増の 982 万トンへと倍増以上となった。クウェートは
前年比 13.4%増の 304 万トンを輸入し、前年に引き続き地域最大の輸入国となった。
32
2015 年の LNG 輸出/輸入国の貿易量
出典:GIIGNL(www.giignl.org/)
(単位:百万トン)
第 1245 号 <2016.04.06>
33
第 1245 号 <2016.04.06>
米州の輸入量は、中南米地域の大幅な減少が主な要因となり、約 8%減の 2,073 万トンとなった。
国別に見ると、米国からのパイプライン輸入が増加したメキシコが前年比 24.9%減、水力発電
が増加したブラジルが 10.3%減、アルゼンチンが 7.7%減となっている。494 万トンを輸入し
たメキシコが前年に引き続き米州最大の輸入国であるが、2 位のブラジルとの差は僅かに 16 万
トンであった(2014 年の差は 125 万トン)。
世界の LNG 受入基地は、パキスタンのエングロ・エレンジー・ターミナル、エジプトのアイン・
スクナ受入基地、ヨルダンのアル・シェイク・サバーハ受入基地(いずれも FSRU を採用)が操
業・受入を開始したことで、LNG 輸入国は 34 ヵ国となり [ 註 2]、総受入能力は前年比約 2,350
万トン増の約 7 億 7,700 万トン/年となった。また、2015 年末時点で新規陸上受入基地プロジェ
クトが 15 件(内 8 件は中国)、拡張プロジェクトが中国(2 件)、インド(1 件)、タイ(1 件)、
ギリシャ(1 件)で 5 件建設中であり、建設中の受入能力(合計約 7,190 万トン)の内、71%
をアジアが占める。この他に 5 件の FSRU プロジェクト(チリ、コロンビア、ガーナ、プエルト
リコ、ウルグアイ)が建設中となっている。
世界の LNG 輸出市場
2015 年の LNG 輸出量の増加は、2014 年に操業を開始したパプアニューギニア LNG(PNG
LNG)が初めてフル生産(生産能力 730 万トン/年)を開始したこと、インドネシアでドンギ・
スノロ LNG プロジェクト(生産能力約 200 万トン/年)が操業を開始したこと、豪州で世界初
の CBM-LNG プロジェクトであるクイーンズランド・カーティス LNG(QCLNG)プロジェクト
の第 1 / 2 トレイン
(合計生産能力 850 万トン/年)が出荷を開始したこと、同じく豪州のグラッ
ドストーン LNG(GLNG)プロジェクトで第 1 液化トレイン(生産能力 390 万トン/年)が操
業を開始したことなどによる。世界最大の LNG 輸出国は引き続きカタールであるが、豪州がマ
レーシアを抜いて世界第 2 位の LNG 輸出国となった。地域別に見ると、太平洋地域が堅調に増
産し、前年から 1,000 万トン超増加して、2005 年以来初めて 1 億トンを記録した。一方、大西
洋地域では、原料ガスの枯渇などによりアルジェリア(4.6%減)、トリニダード・トバゴ(9.8%
減)で輸出量が減少し、
アンゴラ [ 註 3] とエジプト [ 註 4] の年間生産量がゼロだったこともあり、
輸出量は前年比 110 万トン減の 5,140 万トンとなった。中東は、カタールの生産が 200 万トン
増加したものの、政情不安のため 4 月以降生産を停止したイエメンの生産減などにより、330
万トン減の 9,318 万トンとなった。
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LNG 輸入量の増減(2014 年 vs 2015 年)
(単位:百万トン)
出典:GIIGNL(www.giignl.org/)
2015 年末時点で、液化プロジェクトは世界 19 ヵ国で操業しており、総トレイン数は 96 基、
総生産能力は 3 億 800 万トン/年で、
2014 年と比較すると、1,000 万トン増加した。エネルギー
の低価格環境が続くことで、今後 5 年間の LNG バリューチェーンの見通しが不透明となったた
め、アフリカ、カナダにおけるグリーンフィールド・プロジェクトの最終投資決定(FID)が遅
延し、2015 年に FID が下されたプロジェクトは、米サビーン・パスの第 5 トレイン、コーパス・
クリスティの第 1 / 2 トレイン、フリーポートの第 3 トレインと、カメルーンの FLNG プロジェ
クトの合計 5 トレイン(合計生産能力 1,920 万トン/年)のみであった。2015 年末時点で、約
1 億 4,000 万トン/年の液化能力が建設中であり、8 割を米国と豪州が占める。2016 年には新
たに 4,200 万トンの液化能力が追加となる予定で、その内 2,800 万トンを豪州が占める。
米国ではサビーン・パスが 2016 年 2 月に初カーゴを出荷し、同国がフレキシブルな LNG サプ
ライヤーとして、カタールと肩を並べる日が近づいている。エネルギーの低価格環境が続く中、
LNG 市場は米国からの LNG 輸出の好影響を待ち構えている状態である。
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(単位:千トン)
出典:GIIGNL(www.giignl.org/)
2015 年の LNG 輸出/輸入国のスポット・短期取引量
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世界のスポット/短期契約、再輸出
2015 年のスポット/短期 LNG 取引量(契約期間 4 年以下)は、世界的に供給増であったにも
拘わらず、日本・韓国のスポット/短期取引量の減少、イエメンの生産停止や価格差縮小による
地域間の裁定取引の減少などの影響を受け、前年比 1.7%減の 6,839 万トンとなった。世界の取
引量に占める割合は前年の 29%からほぼ横ばいの 28%だった。尚、スポット取引の内、契約締
結から 90 日以内に引き渡された本来のスポット取引は世界の取引量の約 15%を占めた。スポッ
ト/短期取引量の 68%はアジア向けで、特に日本は 30%(2,050 万トン)と引き続き最大を占
めたが、前年からは 530 万トン減となっている。供給側では、カタールが前年に引き続き 2,029
万トンと最大の供給者であるが(シェア 29.7%)取引量は前年比約 17.3%(約 420 万トン)減
であった。次いでナイジェリアが前年比 23.6%(約 240 万トン)増の 1,269 万トンを輸出した。
LNG スポット・短期取引量に占める地域別シェア
(単位:百万トン)
出典:GIIGNL(www.giignl.org/)
LNG スポット・短期取引量と総取引量に占める割合
(単位:百万トン)
出典:GIIGNL(www.giignl.org/)
2015 年の LNG 再輸出は、地域間価格差の縮小により、前年比 30.9%減の 439 万トンだった。
欧州が変わらず最大のシェア(83%)を占めているが、取引量は前年比 39.6%減の 364 万トン
となっている。スペインは、LNG 総輸入量は前年比 161 万トン減であったが、再輸出が減少し
たため、純輸入量では前年比 92 万トン増となった。
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LNG 船
LNG 船については、2014 年末から 2016 年初頭にかけて新たに 28 隻
(2014 年は 34 隻)が就航し、
2016 年初頭時点の総数は 449 隻となった。2016 年には 52 隻が新たに就航予定である。FSRU
は 23 隻と前年の 5 隻から飛躍的に増加しており、現在新たに 8 隻が発注済み。3 隻は 2016 年、
5 隻は 2017 年に操業開始予定となっている。2015 年に新規に LNG 受入を開始したパキスタン、
ヨルダン、エジプトは、いずれも FSRU を採用しており、世界の FSRU の受入能力は現在 7,700
万トン/年と、カタールの総液化能力に匹敵している。
LNG 市場予測
報告書は、今後の長期的な LNG 市場見通しは以下の通り明るいものであるとしている。
・多くの新興国が FSRU プロジェクトを検討している。
・今後 10 年で中国およびインドの LNG 需要は大幅増となる。
・浮体式液化設備(FLNG)プロジェクトが、各地のストランデッド・ガス田(遠隔地にあり小
規模なため開発が難しかったガス田)の生産を可能にする役割を果たす。
・イランが間もなく LNG 輸出国として台頭する。
・LNG は、特に海上及び陸上輸送といった将来性のある部門で、クリーンで柔軟性が高く競争力
のあるエネルギー・ソリューションとして認められ続ける。
[ 註 1] 米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)によると、2015 年の中国の LNG 輸入量は前
年比 1.1%減の約 1,970 万トン/年で、LNG 輸入開始以来初の前年割れとしている。
[ 註 2]2014 年まで含まれていなかったスウェーデン(既存の受入基地でノルウェーから LNG を
輸入した模様)を含めて 34 ヵ国。
[ 註 3] アンゴラ LNG プロジェクトは 2014 年 4 月に発生したフレアリング用パイプラインの破
裂事故を受けて操業を停止中。複数メディアによると 2016 年 1 月には操業再開に向けたコミッ
ショニング(試運転)を開始しており、LNG カーゴの出荷再開時期は 2016 年 7 月頃の見込み。
[ 註 4] エジプトは LNG 輸出国であったが、近年の政情不安による国内ガス資源開発の遅延と国
内ガス需要の増加により、天然ガス不足に見舞われており、LNG 輸出を中止して LNG 輸入を開
始した。
【大郷】
※ 関連記事
第 1242 号「セディガス、2015 年の世界の LNG 輸入量は 2.1%増加と発表」
第 1241 号「豪州の CBM-LNG プロジェクト、2016 年中頃に 2,500 万トン体制に」
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第 1237 号「中国の 2015 年の LNG 輸入量、初の前年割れ」
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第 1245 号 <2016.04.06>
第 1236 号「アンゴラ LNG プロジェクト、出荷再開は 2016 年第 2 四半期頃の見込み」
第 1235 号「日本の LNG 輸入、2015 年は前年比約 350 万トン減の 8,500 万トン」
第 1235 号「セディガス、2015 年の欧州 LNG 純輸入量は前年比 16.6%増と発表」
第 1235 号「イランに対する経済制裁解除−今後の LNG 事業への影響」
第 1234 号「英ウッド・マッケンジー、2015 年の LNG 取引量を発表」
第 1228 号「PNG LNG プロジェクト、生産能力を 730 万トン/年へ拡大」
第 1223 号「豪 GLNG プロジェクト、初カーゴを韓国向けに出荷」
第 1221 号「Golar LNG、カメルーン初の FLNG プロジェクトで最終合意」
第 1214 号「インドネシアのドンギ・スノロ LNG プロジェクト、LNG を初出荷」
第 1211 号「豪 QCLNG、第 2 液化トレインが操業開始」
第 1210 号「シェニーレ、サビーン・パス第 5 液化トレインの建設を開始」
第 1208 号「世界の LNG 船/ FSRU / FLNG 市場の最新状況」
第 1204 号「ヨルダン、初 LNG カーゴを積んだ FSRU が到着」
第 1203 号「シェニーレ、コーパス・クリスティ PJ に FID を下す/建設に着手」
第 1199 号「GIIGNL、2014 年の世界の LNG 市場調査報告書を発表」
第 1199 号「イエメン LNG プロジェクト、情勢悪化で出荷停止」
第 1198 号「エジプト初の LNG 受入基地に FSRU が到着/ LNG 輸入を開始」
第 1197 号「パキスタン、LNG 初カーゴをカタールから受け入れ」
第 1186 号「世界初の CBM − LNG プロジェクト、豪 QCLNG が操業開始」
第 1178 号「フリーポート LNG PJ が最終投資決定/ JBIC らと融資契約を締結」
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