望月先生No.2

第2回
オルターグローバリゼーションの思想 I
国際化/世界化/グローバル化
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フランス語の用法にみる3つの語の区別:
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internationalisation(国際化)
“L’internationalisation, d’où sont tirées les expressions «relations internationales», «études
internationales», «réseaux internationaux», nous réfère aux échanges de diverses natures,
économiques, politiques, culturelles, de nations, aux relations qui en résultent, pacifiques ou
conflictuelles, de complémentarité ou de concurrence.”
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mondialisation(世界化)
“Si l’on parle de mondialisation, on entend évoquer une autre réalité, contemporaine celle-là :
l’extension de ces relations et de ces échanges internationaux et transnationaux à l’échelle
du monde, conséquence de la rapidité toujours croissante des transports et des
communications dans la civilisation contemporaine.”
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globalisation(グローバル化)
“Quant à la globalisation, elle ferait référence à l’émergence d’un «système-monde» (le
world-system de Wallerstein) au-delà de la mondialisation, un fait social total au sens propre
du terme, un référent en soi. Comme le souligne Alain Crochet, «le terme mondial signifie
seulement que le phénomène étudié concerne le monde entier», alors que le terme «global»
fait référence à un «ensemble possédant alors des propriétés que ses composantes n’ont
pas». Il s’agit donc d’un nouvel «espace», démographique et géographique d’abord, comme
les géographes politiques aiment à le représenter, mais également sociologique, dans la
mesure où il se prête de mieux en mieux à une analyse systémique (le «système-monde»),
bref un espace totalement délocalisé et constituant un niveau spécifique de l’activité
économique, politique, sociale et culturelle. Mondialisation et globalisation feraient donc
référence à deux réalités de niveaux différents.”
(Guy Rocher, ‘La mondialisation : un phénomène pluriel’ [2001])
グローバリゼーションの諸定義(1)
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“Globalism is a state of the world involving networks of interdependence at multicontinental distances.
These networks can be linked through flows and influences of capital and goods, information and ideas, people and
force, as well as environmentally and biologically relevant substances (such as acid rain or pathogens). Globalization
and deglobalization refer to the increase or decline of globalism.
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“In comparison with interdependence, globalism has two special characteristics.
- Globalism refers to networks of connections (multiple relationships), not simply to single linkages. We would refer to
economic or military interdependence between the United States and Japan but not to globalism between the United
States and Japan. U.S.-Japanese interdependence is part of contemporary globalism but by itself is not globalism.
- For a network of relationships to be considered “global,” it must include multicontinental distances, not simply regional
networks. [...]
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The issue is not how old globalism is, but rather how “thin”
or “thick” it is at any given time. As an example of “thin globalization,” the Silk Road
provided an economic and cultural link between ancient Europe and Asia, but the route was plied by a small group of
hardy traders, and the goods that were traded back and forth had a direct impact primarily on a small (and relatively
elite) stratum of consumers along the road. In contrast, “thick” relations of globalization involve many relationships that
are intensive as well as extensive: long-distance flows that are large and continuous, affecting the lives of many people.
The operations of global financial markets today, for instance, affect people from Peoria to Penang. “Globalization” is
the process by which globalism becomes increasing thick.
(Keohane and Nye 2000)
グローバリゼーションの諸定義(2)
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「自分の製品の販路をたえず拡張しようとする欲求は、ブルジョアジーを地球の
すみずみに駆り立てる。彼らは、いたるところに巣をつくり、いたるところに住みつき、
いたるところに取引先ををつくらねばならない。/ブルジョアジーは世界市場の搾取
によって、各国各地の生産と消費とをコスモポリタン的なものにした。反動主義者が
ひどくなげいているように、産業から民族的地盤をとり去ってしまった。古来の民族
的産業は破壊され、なお日々に破壊されている。それら民族的産業は、その導入が
すべての文明国にとって死活問題であるところの新産業によって駆逐される。この新
産業というのは、もはや国産原料ではなく、遠隔の地からの原料に加工し、またその
製品も国内だけではなく、同時に世界中いたるところで消費されるものである。昔の、
国産品によって充たされた需要のかわりに、遠い外国の製品によらねば充たされな
い新しい需要が生じている。昔の地方的・一国的の自給自足と鎖国のかわりに、諸
民族相互間の全面的交易と、全面的依存が生じている。そして精神的生産も物質的
生産と同様である。個々の民族の精神的産物は、世界の共有財産となる。民族的偏
見と狭量は次第に不可能となり、多くの民族文学や地方文学から、一つの世界文学
が形成される。」(マルクス エンゲルス 塩田訳『共産党宣言』)
グローバリゼーションの諸定義(3)
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「…ともあれ、われわれがグローバリゼーションという語にこ
だわっている以上、その本質がはっきりと定義できるように、<
グローバリゼーション>の前に、一つ、あるいはいくつかの言
葉をつけた方が便利であろう。グローバリゼーションの有害な
影響に反対して闘っている人たちは、しばしば、「企業主導の」、
「金融にひきずられた」、あるいは 「新自由主義的(ネオ・リベラ
ル)」グローバリゼーションと言っている。アメリカでは、それを
「新保守主義的(ネオ・コンサバティブ)」グローバリゼーションと
呼ぶ人もいる。」
(スーザン・ジョージ『オルター・グローバリゼーション宣言』)
グローバリゼーションの諸定義(4)
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「企業主導の」であれ「金融にひきずられた」であれ「新自由主義的」であれ、どのような修飾語が付されようとも、これらの修飾
語の付いたグローバリゼーションは、1980年ごろに登場した世界の資本主義の最新段階を表わしている。そもそもの始めから
(約500年前から)資本主義は、地球規模の現象として存在していた。今日の資本主義と異なるのは、その領域と主要な推進者
(アクター)の性質である。つまり、巨大企業と巨大金融機関は、今や私たち一人ひとりを左右するような規則を定める、とてつも
ない “自由” を手にしているのだ。それは、彼らがまた、メディアをコントロールする力を持っているからでもある。彼らは各国の
政策や国際的な政策を、自分たちのニーズに従属させるために、絶えず権力を肥大化させようとしている。」
「…パーシー・バーネヴィック氏の見事なグローバリゼーションの定義を紹介しよう。
私は、グローバリゼーションを次のように定義する。つまり、私のグループ企業が望むときに望むところに投資する自由、そし
て、私のグループ企業が生産したいものを生産し、買いたいと思うところから買い、売りたいと思うところで売り、しかも労働法規
や社会慣行による制限を可能なかぎり撤廃する、そういった自由を享受することである。
この定義は、彼の正直な意見を率直に述べたものである。超国家的企業や財界人が求め、必要とする「自由」の “聖なる三位
一体” 、つまり、投資の自由、資本の移動の自由、障壁なしで国境を越えて商品やサービスを売買する自由がこの定義にはそ
ろっている。…」
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「…形式的に「グローバリゼーション」を定義したいのなら、「グローバリゼーション」とは世界資本主義の最新段階であり、それ
を繁栄させる政治的枠組である、とだけ言っておけばよいだろう。…」
(スーザン・ジョージ『オルターグローバリゼーション宣言』)
グローバル化時代の企業の問題点を描いたド
キュメンタリー映画
『ザ・コーポレーション』を見よう
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http://www.uplink.co.jp/corporation/trairer.php
Courtesy of UPLINK
オルターグローバリゼーション
(もう一つのグローバル化)運動の始まり(1)
マクドナルド事件 米国産ホルモン肥育牛肉のEUへの輸入禁止
措置に対抗して米国がEU産の約百品目に制裁関税を課したことに抗議するジョゼ・
ボヴェ José Bové が率いる農民同盟と羊乳生産者組合の呼びかけに応じた300人
の農民と市民が、南フランス アヴェロン県ミヨ市に建設中のマクドナルドを “襲撃”(「解
体」)。
¾1999年8月12日
ウェブサイト参照:
http://www.europe1.fr/presidentielle-2007/candidats.jsp?idCandidat=661190&idTheme=3644
Deleted based on
copyright concern.
象徴としてのマクドナルド
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「…そもそも私たちは、マクドナルドのボイコットを訴えたことなど一度もないよ。すぐ理解してくれ
た大部分のジャーナリストは、「アンチ・マクドナルド」という象徴の裏にある思想に反応したのだ
が、政治家の多くは「反米」の方を強調した。単純にフランスの伝統的食品を擁護する者から、
国粋主義を匂わせた国家主権主義者まで、政治家の態度にはポピュリズム的な傾向が露呈し
ている。問題に正面から立ち向かわずに、米国を非難して、自分たちが取り組むべき問題を国
境の外に追いやるのは簡単だよ。…」
(ジョゼ・ボヴェ&フランソワ・デュフール著、新谷淳一訳『地球は売り物じゃない
−−ジャンクフードと闘う農民たち−−』)
オルターグローバリゼーション
(もう一つのグローバル化)運動の始まり(2)
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1999年12月 シアトル
WTO(世界貿易機関)閣僚会議に対して抗議する市民が結集
→非常事態宣言、会議は失敗!
「…これだけはたしかだ。シアトルで抗議をおこなった人たちは、「反グローバル」主義で
はない。彼らは、会議に出席している貿易の専門家たちと同じくらいグローバル化してい
る。もしこの新しい運動が何かに「反対」しているとすれば、それは「企業」だ。彼らが異議
を唱えているのは、ビジネスにとって良いとされる規制緩和、海外進出、市場拡大は、だ
れにとっても良いことだという決めつけの論理である。この運動は、こうした論理に対抗す
るキャンペーンから始まった。…」
「…これはグローバル化推進派と保護主義者の対決ではない。
異なるビジョンのふたつのグローバル化のぶつかりあいなのだ。」
(ナオミ・クライン著、松島聖子訳『貧困と不正を生む資本主義を潰せ』)
http://www.nologo.org/http://www.mediaed.org/videos/CommercialismPoliticsAndMedia/NoLogo/
Deleted based on
copyright concern.
オルターグローバリゼーションとは?(1)
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「…私の知るすべての活動家は、熱烈な国際協調主義者です。私たちはむしろ、ひと
つのネオリベラルの経済モデルを世界に広げることに反対しているのです。
もし私たちが純粋な議論の場をもてるなら、いま「グローバル化」と呼ばれているもの
を、人間の進化の避けられない段階と見るのではなく、深淵な政治プロセスとして作り
直すことを考えねばなりません。「いかにグローバル化するか」について慎重で、話し合
いが可能で、後戻りのできる複数の選択肢が必要なのです。
私たちが「グローバル化」という言葉を使うときに混乱が生じるのは、この特定の経済
モデルが「貿易」を国際協調主義の一部ではなく、その大きな基盤ととらえる傾向がある
ためです。文化、人権、環境、民主主義などのすべてのものは、次第に貿易のなかに飲
み込まれてしまうのです。
私たちがこのモデルについて議論するときには、商品やサービスを国境を超えて貿易
することの利点ではなく、世界における極端な企業支配の影響について話をします。世
界の貿易システムに参加し、そのなかで競争するという名のもとに、ごく普通の人々の
生活が大きく変えられる現実について話し合います。つまり、公的な予算が減らされ、民
営化と規制緩和が進む現実です。…」
(ナオミ・クライン著、松島聖子訳『貧困と不正を生む資本主義を潰せ』)
オルターグローバリゼーションとは?(2)
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世界社会フォーラム(World Social Forum, 2001)憲章 より
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「(1) …わたしたちはネオリベラリズムを批判し、資本主義や帝国主義が世界を支
配するのに反対します。人間同士が実り多い関係を築き、人間と地球が豊かにつな
がる地球社会を作り上げるために行動します。
¾
「(2) …ポルトアレグレで宣言された「もう一つの世界が可能だ」という確かな合言
葉にもとづいて、もう一つの可能性を追求し実現する永続的な運動…
¾
「(4) …巨大多国籍企業とその利益に奉仕する諸国家・国際機関が推進している
グローバリゼーションに反対し、その代替案を提案します。世界史の新しい段階とし
て、連帯のグローバル化が生まれるでしょう。そうなると、どこの国にいても、どんな
環境におかれていても、男女を問わず市民の権利、普遍的な人権が尊重されます。
社会正義・平等・市民主権に奉仕する民主的な国際社会の仕組みと国際機関がそ
の基礎となります。
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「(8) …さまざまな価値や考え方を認め、信条の違いを超え、政府機関や政党とは関
係を持ちません。もう一つの世界を打ち立てるために、中央集権にならない方法で、
団体や運動組織がたがいに連携し、地域レベルから国際レベルまで具体的に活動
をすすめます。
(続き)
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「(9) …世界社会フォーラムは、多元主義(pluralism)を尊重する開かれたフォーラ
ムでありつづけます。参加を決めた団体や運動組織のあり方も、その活動も多様な
ものになります。憲章の原則に基づいて、ジェンダーや民族性、文化、世代、身体能
力などの違いを受け入れます。政党や軍事組織の代表者は参加することができま
せん。…
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「(10) …世界社会フォーラムは、経済や発展・歴史を一つの視点から解釈したり何
かの原則に還元したりすることに、すべて反対します。国家が、社会を統制するため
に暴力を使うことにも反対します。わたしたちは人権を尊重し、真の民主主義による
実践と参加型の民主主義を支持します。…
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「(11) …世界社会フォーラムは議論の場です。深く考察し、その結果をすべて公開
する思想運動の場です。資本による支配機構や手段について考えます。支配に抵
抗し、それを克服するための方法や活動について考えます。…
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「(13) …世界社会フォーラムは連帯を生み出すための仕組みです。…
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「(14) …世界社会フォーラムは一つの過程です。…
(別所珠樹・安濃一樹 暫定訳、2003)
WSFの思想的特徴
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新自由主義批判
連帯のグローバリズム(vs. 支配のグローバリズム)
市民性、人権、正義、平等、参加型民主主義の擁護
非政党、非政府、分権主義(反中央集権)
多元主義(プルラリズム)
ジェンダー、民族性、文化、世代の相対性を容認する
自らを「思想運動」と規定する
公共性
過程(プロセス)
☞ WSF公式ウェブサイト http://www.forumsocialmundial.org.br/