全文 - 愛媛県産業技術研究所 紙産業技術センター

愛媛県工業系研究報告 No.42 2004
報 文
エアースルー乾燥による湿式不織布の製造とその物性
兵頭 孝次 高橋 雅樹
Influence on Physical properties of Sheets by Airthrough Drying
HYOHDOH Kohji、 TAKAHASHI Masaki
抄紙機の従来の乾 燥 方 式 であるヤンキードライヤー(熱板圧着方式)に代わる方式として、エアースルードライヤー(熱風通気
方式)を検討するため、ポリエステル湿式不織布及び木材パルプ紙を試作し、二つの乾燥方式がシート物性に及ぼす影響につ
いて評価した。一般に紙の強度と柔軟性には負の相関性があるが、エアースルー乾燥方式による湿式不織布は、従来方式よりも
バルキー(嵩高)で柔軟性が高いにもかかわらず 、同 程 度の強度を持ち得ることが分かった。抄紙工程を経て製造される湿式不
織布は乾式に比べて生産性や地合の均一性で勝るものの、硬い質感を持つため用途が限られていたが、今回検討したエアース
ルー乾 燥 方 式を用いれば湿式の硬い質 感が改善されるため今後の利 用が期待できる。一方、エアースルーを木材パルプ紙に
適用した場合、適度な硬さと厚み感に加え、クレープ(シワ)を併せ持つことから、タオルペーパー等への利用が有望である。
キーワード:エアースルー、クレープ、湿式不織布、ソフトネス、バルキー
は じめ に
実 験 方 法
従来から、抄紙乾燥工程で主に使われているヤンキードラ
イヤー(熱 板 圧 着 方 式)は、薄物のシートをシワなく安定に乾
1.ポリエステル湿式不織布の実験材料
(1) 湿式不織布用原料繊維
燥させるのに適している。しかし、熱の供給はシリンダー(鉄製
主体繊維として単一ポリマー構造のポリエステル(ユニチカ
の缶体)表面からの熱伝達によるため、熱融着性繊維(バイン
エステル N801/3D5、ユニチカ㈱製)を使用 した。バインダー
ダー繊維)を使用した嵩高な湿式不織布を乾燥させる場合に
繊維は芯鞘構造のポリエステル(ユニチカエステル 4080/4D5 、
はシート表裏に温度差を生じ、乾燥ムラによるシワ発生、過乾
同左 2D5、ユニチカ㈱製、及びクラレエステル N720/2D10、
燥によるシリンダーへのバインダー貼付、乾燥不足による紙力
㈱クラレ製)を用いた。
1)
低下など技術的課題も多く、機械制御はシビアである。 また、
バインダー繊維は何れも芯鞘構造を有するポリエステルを
物性面では硬く締まった特性を持つことから、嵩高で柔軟性
選択したが、これは、主 体 繊 維に対する濡れ性が良く、接着
に優れる乾式不織布に比べ用途が限られている。
効果が高いことや接 着 後も芯の部分 が繊 維 形 態を有し、ソフ
一方、乾式不 織 布の製造 に使用されるエアースルードライ
トな風合いが期待できることが挙げられる。なお、3種類のバイ
ヤー(熱風通気方式)は、高温の乾燥空気を紙層に通して乾
ンダーを使用したのは繊度や繊維長による影響を見るためで
燥させる方式のため、通気性 の高いシートを均一に乾 燥させ
ある。また、これらの繊維の諸元を表1に示す。
るのに適している。また、使用済みの乾 燥 空 気 から熱 回 収す
ることによりエネルギー効率に優れ、機 械 制 御が比 較 的容易
表 1
湿 式 不 織 布 の原 料 繊 維
繊維
構造
繊度
繊維長
融点
その上、乾 燥 工 程 で自
<N801>3D5
単一
3.3dtex
5mm
260℃
然にクレープ処理(シワ付)がなされる付 加 価 値を持つことか
<4080>4D5
芯鞘
4.4dtex
5mm
110℃
ら、湿式不織布分 野への利用だけでなく、タオルペーパー等
<4080>2D5
芯鞘
2.2dtex
5mm
110℃
クレープ加工を要する紙パルプ分野への利用も期待される。
<N720>2D10
芯鞘
2.2dtex
10mm
110℃
2)∼ 5)
で適 応 範 囲が広 い利点がある。
本研究では、エアースルードライヤーを用いたポリエステル
繊維による湿式不織布の製造について検討した。その際、乾
燥工程で重要な役割を果たし、且つ製 品 物 性 に大きな影響
を与えるバインダー繊維の挙動について検討した。
(2) 湿式不織布用添加薬品
原 料 繊 維がポリエステル(PET) 100 %であることから、離解
の際の繊維のもつれを防ぐため、粘性と分散性の両方が期待
また、エアースルードライヤーを用いた場合、自 然にクレー
できるポリエチレンオキサイド(PEO,住友精化㈱) を使用した。
プ処理がなされるという利 点に注目して、ティッシュペーパー
また、PEOを高濃度で添加して離解を行う際、発 泡により繊
やタオルペーパーを想定したエアースルードライヤーによる木
維が浮上し不織布の地合悪化が予想されるため、消泡剤とし
材パルプ紙の製造も行い、市 販ティッシュペーパーやタオル
て高級アルコール系 Em(フォームレックス SAF-55、日華化学
ペーパーとの物性比較も行った。
㈱製)を使用した。
本研究は、「エアースルー乾燥技術開発研究」の予算で実施した。
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愛媛県工業系研究報告 No.42 2004
2.ポリエステル湿式不織布の抄造
4.ポリエステル湿式不織布の物性評価
3.3dtex×5mm の主体繊維と 4.4dtex ×5mm の芯鞘繊維
得られた湿式不織布を 23℃、50%(RH) の恒温恒湿室で前
(110℃mp)を標 準 離 解 機 にて離 解 後 、セミオートマチック角
処理後、各物性を次の方法で測定した。
型自動シートマシン(熊谷理機工業㈱製)で抄紙を行った。
(1) 嵩密度
なお、抄紙の際は 80mesh ワイヤー上に 200mesh ポリエステル
JIS P8124 の紙のメートル坪量試験方法により坪量を求め、
ネットを予め被せておき、シート形成後、サンプルをネットごとワ
KES-65 ハンディ圧縮試験機(カトーテック㈱製)にて 0.5kpa
イヤーから剥がして後の乾 燥 工 程に供した。これは、ポリエス
加圧時の厚さを測定し、坪量と厚みのデータより算出した。
テル繊維の場合、パルプの水素結合のような 結びつきを持た
(2) 裂断長
ず、シートのウエット強度が繊 維 同 士 の摩擦力 と繊 維 間に残
JIS L1913 の一般短繊維不織布試験法に準じて引張強さを
った水の凝集力だけで支えられ、非常に脆いためである。
測定し、JIS P8113 により求めた。
なお、抄紙条件を表2に示す。
表 2
(3) 比破裂度
湿 式 不 織 布 の抄 紙 条 件
項目
JIS L1913 の一般短繊維不織布試験法に準じて破裂強さ
を測定し、坪量で除して求めた。
条件
主体繊維
単一PET 3.3dtex×5mm
バインダー 1
芯鞘PET 4.4dtex×5mm
(4) 相対柔軟度 6)
JIS L1913 の一般短繊維不織布試験法の剛軟度B法(ガー
110℃mp
レ法) に準じて、試料幅 50.8mm、長さ 63.5mm で測定した。ま
バインダー 配合率
20%,40%,60%
バインダー 2
芯鞘PET 2.2dtex×5mm
110℃mp
た、坪量による影響を少なくするため、測定値を坪量で除して
バインダー 3
芯鞘PET 2.2dtex×10mm
110℃mp
100 を乗じた数値を相対柔軟度として評価した。
バインダー 配合率
40%
なお、この数値が小さいほど柔軟性が高いことを示す。
(5) 相対通気抵抗率 6)
紙料濃度
0.2∼0.3%
目標坪量
60,80,100g/ m2
添加薬品
PEO(粘剤・分散剤)
を測定し、坪量による影響を排すため、坪量で補正した相対
高級アルコール系Em(消泡剤)
通気抵抗率として評価した。
KES-F8API 通気性試験機(カトーテック㈱製)にて通気度
5.エアースルー乾燥による木材パルプ紙の作製
3.ポリエステル湿式不織布の乾燥
多目的不織布製造装置( 川之江造機㈱製) のエアースルー
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、及び広葉樹晒クラフトパ
ドライヤーを用いて湿紙の乾燥を行った。バインダー1の湿式
ルプ(LBKP )を等量混合し、標準離解機にて濃度 1.5%(w/v)
不織布については 、坪量(60∼100g/ ㎡)とバインダー配合率
で 30, 000 回転離解後、200mesh ポリエステルネットで濾過した。
(20∼60%)の異なる湿紙を作製して各々140 ∼170℃の4水準
上記離解パルプを絶乾重量にて 30g取り、蒸留水で全量を
で熱処理を行った。また、バインダー2、及び3については 、坪
300g に調整後、PFI
ミル(熊谷理機工業㈱製)にて、クリアラ
量 80g/㎡、バインダー配合率 40%で同様に熱処理を行った。
ンス0.2mm、相対速度 6.0m/sec 、4, 000 回転で叩解した。
叩解後、200mesh ポリエステルネットに包んで遠心脱水し、叩解
さらに、熱風通気方式のエアースルー乾燥試料の比較対照と
して、熱板圧着方式の回転 乾 燥 機 を用い、乾 燥 温 度 140℃
パルプ(500CSF) を得た。この叩解パルプを用いて、JIS P8222
で2分間の熱処理を行った。
に準じ、セミオートマチック角 型 自 動 シートマシン(熊 谷 理 機
工業㈱製)で坪量 15g/ ㎡のシートを作製し、エアースルードラ
なお、乾燥条件を表3に示す。
表 3
イヤーにて湿紙乾燥を行った。
湿 式 不 織 布 の乾 燥 条 件
項目
乾燥温度は 105 ℃の一定とし、ライン速度を変えて3水準の
条件
試作を行った。また、テスト用エンボス加工機(大 昌 鉄 工 所㈱
*
【エアースルードライヤー】
乾燥温度
140,150,160,170℃
ライン速度
1m/min
乾燥時間
2min(ドラム接触時間)
風量
100 ? /min
製)との併用も行った。なお、乾燥条件を表4に示す。
表 4
木 材 パ ル プ紙 の 乾 燥 条 件
項目
条件
【エアースルードライヤー】
【回転乾燥機】
乾燥温度
105℃
乾燥温度
140℃
ライン速度
1、3、7m/min
乾燥時間
2min
風量
50 ? /min
【テスト用エンボス加工機】
*ヒーター容量:19kw×3回路、静圧:
1000mmAq
風速:
5.6m/sec
処理温度
105℃
ドラム容積:1000mmφ×1000mm
処理速度
1m/min
ワイヤー:
二重織70メッシュ、線径0.45mm、通気度20,000cc/? ・min
ニップ圧
19.6kN/m
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られるが、坪量の増加と共に嵩密度が増えた原因については 、
結 果 と考 察
単位面積あたりのバインダー使用量が多いためと考えられる。
なお、回転乾燥機によるサンプル と比べエアースルードライ
1.エアースルー乾燥によるポリエステル湿式不織布について
ヤーによるサンプルは 1.5∼2倍ほど高バルキーであった。
エアースルードライヤー(熱風通気方式)で処理した湿式不
0.2
バインダー配合率20%(w/w)
バインダー配合率40%(w/w)
バインダー配合率60%(w/w)
織布と従来の抄 紙 乾 燥 装 置として使 われてきた ヤンキードラ
嵩密度(g/? )
イヤー(熱板圧着方式)の小 型 試 験 機としての回転乾燥機に
よるサンプルの電子顕微鏡写真(写真1)を示す。写真1より、
どちらのサンプルでもバインダー繊維の交点における溶融が
認められ 、熱融着が十分に進行しているものと推察される。
0.15
0.1
両者を比較すると回転乾燥機によるサンプル は一本一本の
繊維が直 線 基 調で平面的に折り重なっているのに対し、エア
0.05
ースルードライヤーによるサンプル は繊維が屈曲してより複雑
回 転 乾 燥 機 140℃ 150℃ 160℃ 170℃
140℃
に交絡している様子が認められる。
この理由としては、熱板圧着方式の回転乾燥機では、熱容
乾燥温度
図1 坪量 80g/㎡の湿式不織布の嵩密度
量の大きな鉄製の缶体からの熱伝 達で急 速に熱 が加えられ
0.2
坪量60g/㎡
坪量80g/㎡
坪量100g/㎡
るため、シリンダーに貼り付いた瞬 間に繊維の位置 が固 定さ
嵩密度(g/? )
れて熱処理中の繊維 の動きに自由度が無いこと。他方、エア
ースルーの場合、熱風による穏やかで均等な加熱が行われる
事から、熱融着が進む過程で繊 維の動きに自由度があり、そ
のため熱収縮により繊維が屈曲してくることが考えられる。
0.15
0.1
エアースルーのこのような 特徴がバルキー で風合いの良い
不織布を生み、物性に影響を与えていると思われる。
0.05
回 転 乾 燥 機 140℃
140℃
150℃
160℃
170℃
乾燥温度
図2 バインタ ゙ー配合率 40%(w/w)の湿式不織布の嵩密度
(2) 裂断長
湿式不織布 のバインダー配 合 率 ・乾 燥 温 度 と裂断 長の関
係を図3に示す。
バインダー配合率や乾 燥 温 度 の増加と共 に裂 断 長が大き
くなる傾向が見られた。また、バインダー配合率と裂断長の関
係は直線的な比例関係ではなく、徐々に収束していく傾向が
見られた。これについては、バインダー による接着効果が十分
に発現する配合率があり、それ以上にバインダーを増やしても
エアースルードライヤー
(熱風通気方式)
写真1
回転乾燥機
強度向上への寄与率が小さくなるからと理解できる。
(熱板圧着方式)
なお、高バインダー配合率による高 温 乾 燥を行った場 合、
湿式不織布の走査電子顕微鏡写真(×100)
回転乾燥機によるサンプル と同程度の強度が得られた。
8
バインダー配合率20%(w/w)
バインダー配合率40%(w/w)
バインダー配合率60%(w/w)
(1) 嵩密度
従来の抄 紙 乾 燥 装 置として使われてきたヤンキードライヤ
ーに比べ、エアースルードライヤーの乾燥品は嵩 高で柔らか
い質感を持つため、バルキー 性を嵩密度により評価した。
裂断長 (Km)
2.ポリエステル湿式不織布の物性について
6
4
2
坪量 80g/㎡でバインダー配合率と乾 燥 温 度 を変えたサン
プルの嵩密度を図1に、また、バインダー配合率 40%(w/w) で
坪量と乾燥温度を変えたサンプルの嵩密度を図2に示す。
回 転 乾 燥 機 140℃ 150℃ 160℃ 170℃
140℃
概ね、バインダー配合率や坪量の増加と共に嵩密度が増え
る傾向が見られたが、乾燥温度による影響は不明瞭だった。
乾燥温度
図3 坪量 80g/㎡の湿式不織布の裂断長
これらの傾向はバインダー繊維の熱 収 縮 に起因すると考え
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0
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(3) 比破裂度
8
湿式不 織 布のバインダー配 合 率 ・乾 燥 温 度 と比 破 裂 度 の
相対柔軟度
関係を図4に示す。
前述の裂断長と同じく、バインダー配合率や乾燥温度の増
加と共に比 破 裂 度が大きくなる傾向が見られたが、理由も同
様でバインダーの接着効果によると思われる。
坪量60g/㎡
坪量80g/㎡
坪量100g/㎡
6
4
2
また測定の際、破裂に至る過程を観察した結果、回転乾燥
0
機による乾 燥 試 料は一定圧 に達した瞬 間に破れるペーパー
回 転 乾 燥 機 140℃ 150℃ 160℃ 170℃
ライクな特性を示すのに 対して、エアースルー乾 燥 試 料は破
140℃
乾燥温度
裂度試 験 器 のゴム膜の膨らみに応じて伸びながら局 所 的 に
破断していくクロスライクな特 性を示 した。サンプルの破断箇
図6 バインタ ゙ー配合率 40%(w/w)の湿式不織布の相対柔軟度
所は繊 維 自 体と繊 維 間 接 着 部 の2カ所あるが、回 転 乾燥機
による乾燥試料は両者がほぼ同時に破断すると考えられるの
(5) 相対通気抵抗率
に対し、エアースルー乾 燥 試 料は接 着 部の伸長・破 断が先
行した後、遅れて繊維の破断が生じているためと考えられる。
比破裂度(kPa/g/㎡)
12
湿 式 不 織 布のバインダー配合率・乾 燥 温 度 と相対通気抵
抗率の関係を図7に示す。
一般的に、バインダー配 合 率 が増えるほど硬く締まって隙
バインダー配合率20%(w/w)
バインダー配合率40%(w/w)
バインダー配合率60%(w/w)
間の少ないウェブになるため通気抵抗が増すと考えられるが、
実際にはバインダー 配合率 40%(w/w)を頂点とする山型の依
8
存性を示した。そこで、図8のような模式図を考えてみた。
芯 鞘 構 造 のバインダーを使用 した場 合、溶けた鞘 部 分は
4
接着交点に移動してアヒル の水かきのような 形態で留まる。鞘
部分が溶けた後は一回り細い芯の部分が表れるが、溶ける前
0
より繊維間の隙間が大きくなるので通気性が増すと考えられる。
回 転 乾 燥 機 140℃ 150℃ 160℃ 170℃
140℃
しかし、これは熱収縮を考慮に入れてない場合であり、実際に
乾燥温度
はバインダー増加に伴う熱 収 縮(繊維間の空 隙 減 少 )の影響
図4 坪量 80g/㎡の湿式不織布の比破裂度
も大きくなるため、両者の兼ね 合いで通 気 性が左右されるの
ではないかと考えられる。
(4) 相対柔軟度
軟度の関係を図 5、図6に示す。なお、この数値が小さいほど
柔らかいことを示す。
バインダー配合率や 坪量の増加 と共に剛性 が増す傾 向が
見られたが、乾 燥 温 度 との関 係は不 明 瞭だった。また、相対
柔軟度と嵩 密 度との間に相関性が見られることから相対柔軟
度に影響を与える要因として繊維の接着交点の数が考えられ
る。バインダー配合率や坪量が大きいほど熱収縮の影響を受
相対通気抵抗率(%)
0.08
湿式不織布のバインダー配合率・坪量・乾燥温度 と相対柔
バインダー配合率20%(w/w)
バインダー配合率40%(w/w)
バインダー配合率60%(w/w)
0.06
0.04
回 転 乾 燥 機 140℃ 150℃ 160℃ 170℃
140℃
け易く、嵩密度が増すことは 先に述べたが、嵩密度の増加に
応じて繊維間距離が縮まり、接着交点が増えてウェブの骨格
乾燥温度
図7 坪量 80g/㎡の湿式不織布の相対通気性
をより強固なものにし、剛性が増すと考えられる。
相対柔軟度
8
バインダー配合率20%(w/w)
バインダー配合率40%(w/w)
バインダー配合率60%(w/w)
6
4
2
0
回 転 乾 燥 機 140℃ 150℃ 160℃ 170℃
140℃
図5
溶融前のバインダー繊維
乾燥温度
坪量 80g/㎡の湿式不織布の相対柔軟度
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熱融着後のバインダー繊維
図8 芯鞘バインダー繊維の溶融模式図
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3.バインダー繊維の繊度や繊維長による影響について
そこで、市販タオルペーパー(坪量 22g/ ㎡、1枚)のデータ
バインダーの繊度や繊維長を変えた場合の影響を調べるた
と比較したところ、ほぼ同レベルの引 張 強さと柔らかさ(硬さ)
め、繊度や 繊 維 長の相 異なる三種類 のバインダー繊 維を使
を持っていることが 分かった。(しかし、エアースルーによるサン
用したサンプル (坪量 80g/ ㎡、バインダー配合率 40%(w/w))
プルは坪量 15g/ ㎡の2枚重ねであるため、坪量 22g/㎡のタオ
の裂断長と比破裂度を図9、図 10 に示す。
ルペーパー 1枚と比べるとより柔らかくなっている)
バインダー繊維の径・長さとも、湿式不織布の強度に影響を
エアースルーで柔らかさを追求する際には、良質なパルプの
与えているのが分かる。バインダー繊維は細くて長い方が強
選択、又は叩 解 処 理 や 坪 量の調 整、そして エアースルー乾
度面では有 利である。これは繊維径 が細 いほど接 着 交 点 が
燥時の風量の低減などを検討すれば良いが、ウェットクレープ
増え、繊維長が長いほどより多くの繊維と交絡するためウェブ
の基本特性を考えればティッシュ(フェイシャルティッシュ)レベ
全体の強度が上がると理解できる。
ルの柔らかさを要する商品には不向きだといえる。
ルペーパー 等への用途には有望ではないかと思われる。
30
4
引張強さ
3
2
500
400
柔らかさ(mN/100mm)
柔らかさ
20
140℃
150℃
160℃
引張強さ(N)
裂断長(Km)
しかし、適度な柔らかさ(硬さ)と厚み感を持つことから、タオ
4.4dtex×5mm
2.2dtex×5mm
2.2dtex×10mm
5
170℃
300
200
10
乾燥温度
100
図9
三種類のバインダーによる裂断長の比較
0
ー
パ
゚ー
ルヘ
MD
タオ
ュ
ッシ D
C
ティ
ュ
ッシ
ティ
ス
ボ
7
ン
エ ー
ル
ス
3
ア
エ
ー
ル
ス
1
ア
エ
ー
ル
ス
ア
エ
比破裂度(kPa/g/㎡)
0
4.4dtex×5mm
2.2dtex×5mm
2.2dtex×10mm
8
6
図11
木材パルプ紙の引張強さと柔らかさ
4
2
ま と め
140℃
150℃
160℃
170℃
乾燥温度
従来の湿式不織布は硬くペーパーライクな風合いを持つこ
図10 三種類のバインダーによる比破裂度の比較
とから用途が限定され、柔軟でクロスライクな乾式不織布に対
し、シェアーにおいて大きく水をあけられていたが、エアースル
4.エアースルー乾燥による木材パルプ紙の物性について
ードライヤーを使用した場合、湿 式 特 有 の硬い質感が改 善さ
ライン速度1、3、7m/min (乾燥時間 120、40、17 秒)でエア
れた。また、木材パルプ紙の製造においては、クレープを加え
ースルードライヤーにより乾 燥を行った木材パ ル プ紙(坪 量
られる付 加 価 値を有しながら、硬さと厚み感を併せ持つ利点
15g/㎡)と市販ティッシュペーパー(坪量 13g/ ㎡)の引張強さ、
を生かしてタオルペーパー等への利用が期待できる。
及び柔らかさを図 11 に示す。共に2枚重ねの状態で測定した
1.ポリエステル湿式不織布をエアースルー乾燥により熱融着
データである。
させた場合、熱処理中の繊維の動きに自由度があるため、熱
市販ティッシュに比べ、エアースルーによるサンプルは 20 倍
収縮 による繊 維の屈曲 が生じ、従 来 法 に比べてバルキー で
ほど強く、硬い結果となり、ライン速度 ( 乾燥時間) による影響
柔らかい不織布が得られた。
は認められなかった。また、ライン速度1m/min のサンプルに
2.エアースルー乾燥によるポリエステル湿 式 不 織 布では、バ
エンボス加工を施してみたが、若干手触りが良くなったものの
インダー繊維の使い方が物性に大きな影響を与えるため、接
硬い質感に変化はなかった。これらの結果は主にクレープ処
着交点を増やす条件を整えれば従来法により抄造したサンプ
理の違いから生じたものと推定される。
ルに近い強度が確保できることがわかった。
市販ティッシュは乾燥後、ドクターブレードによりクレープを
3.バインダー繊 維の繊度や 繊 維 長も湿 式 不 織 布の物性に
付けるドライクレープ方式であるのに対し、エアースルーでは
影響を与える。バインダー繊 維が細く、長いほど強度 面では
湿紙の状態でクレープを付けるウェットクレープの類に属する。
有利に働くことがわかった。
一般的にウェットクレープはドライに比べて硬く厚み感があり、
4.エアースルー乾燥により製造した木材パルプ紙は市販ティ
7)
業務用タオルペーパーなどに採用されている。
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ッシュペーパーに比べ、20 倍ほど引張強さが大きく硬い質感
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愛媛県工業系研究報告 No.42 2004
を持つことがわかった。柔らかさを第一に求める用途には不向
きと思われるが、エアースルー乾燥品の独特の質感やウェット
336、64-68、( 200 2).
3) Alfred Watzl:不織布および 製 紙 業 用における通 気 乾 燥
クレープ固有 の厚み感を持っており、タオルペーパー等への
(Through Drying )の最近 の考え方(No.2) 、不 織 布 情 報、
利用が有望である。
337、31-37、(2002).
4) Alfred Watzl:不織布および 製 紙 業 用における通 気 乾 燥
文
(Through Drying )の最近 の考え方(No.3) 、不 織 布 情 報、
献
338、39-43、(2002).
5)斉藤竜太郎: 化繊紙研究会誌、12、21-26(19 73).
1)豊島節夫: 湿 式 不 織 布のウェットフォーミングとボンディング
6)宮地亀好、松本博、上野愛理: 再生 PET 繊維等による乾式
技術の動向、繊維学会誌、45-9、389-393(1989).
不織布の試作研究、機能紙研究会誌、31、29-37
2)Alfred Watzl : 不 織 布および 製 紙 業 用 における通 気 乾 燥
7)大王製紙㈱/家庭紙開発部: 特殊機能紙 2001、 ( 紙業タ
(Through Drying )の最近 の考え方(No.1) 、不 織 布 情 報、
愛媛県紙産業研究センター業績第 12 号
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イムス社) 、811-816( 2001) .