日本法政学会 第 121 回 総会および研究会のご案内

日本法政学会
第 121 回
総会および研究会のご案内
平成26年10月15日
平素は日本法政学会の運営にご協力いただき、誠にありがとうございます。
さて、第121回総会および研究会を下記のとおり開催いたします。ご多忙のことと存
知ますが、万障お繰り合わせのうえ、何卒ご出席いただきますようご案内申し上げます。
日本法政学会
理事長 野畑 健太郎
日
時: 平成26年11月15日(土)午前9時50分より
平成26年11月16日(日)午前10時より
会
場: 岡山大学 鹿田キャンパス 歯学部棟4階 第1講義室
※会場は大学病院のある「鹿田キャンパス」となりますので、ご注意ください。
〒700-8525 岡山市北区鹿田町 2 丁目 5 番 1 号
電話:086-235-6735(研究室) / 090-8998-9046(当日直通)
総会幹事: 小河 達之(岡山大学)
【第 1 日目】平成26年11月15日(土曜日)
○開会の辞
9:50~10:00
○個人報告
第 1 報告(10:00~10:35)
エコツーリズムによる地域再生
―木で囲まれた安全・安心で豊かなまちづくり―
(司会:日本大学 池村 正道)
神戸山手大学 松永 光男
第2報告(10:35~11:10)
海洋保護区制度の発展に与える世界国立公園会議の影響
―第 6 回会議(2014 年)を中心として
(司会:東洋大学 斎藤 洋)
東京海洋大学大学院 青木 望美
第3報告(11:10~11:45)
21 世紀の青年会議所と選挙
(司会:日本大学 岩井 奉信)
法政大学政策科学研究所 佐賀 香織
1
第4報告(11:45~12:20)
アメリカ都市政治と政策決定に関する一考察
―ワシントン州シアトル市政を事例として―
(司会:環太平洋大学 林
紀行)
早稲田大学大学院 鈴木 隆志
○昼食・理事会(12:20~13:20)
○総会(13:20~14:00)
○シンポジウム(14:00~17:20)
統一テーマ
:岡山発 わが国の政策課題への処方箋
医療政策と法―医療を取り巻く諸政策を中心として
総合司会 和田美智代(宝塚医療大学)
、星野智子(大阪女子短期大学)
コーディネーター 瀬戸山 晃一(大阪大学)
第1報告
歯科医療に関わる法制度と現実の乖離
森田 学(岡山大学)
第2報告
アジア渡航移植患者の人権
粟屋 剛 (岡山大学)
第3報告
内務省の衛生官僚と伝染病予防法の制定
小島 和貴 (中部学院大学)
第4報告
医療の進歩と法政策
~パターナリズム論による診断(仮題)~
総括コメント
瀬戸山 晃一(大阪大学)
コーディネーター
瀬戸山 晃一(大阪大学)
質疑応答
○懇親会:
記念会館1階 「カフェテリア バンビ」
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(17:45~
)
【第2日目】 平成26年11月16日(日)
○個人報告
第5報告(10:00~10:35)
首相公選制における立法論の提唱
(司会:近畿大学 石田榮仁郎)
千葉大学 岡田 大助
第6報告(10:35~11:10)
改正国民投票法における投票権年齢をめぐる問題点の検証
(司会:朝日大学 斎藤康輝)
九州産業大学 大西 斉
第7報告(11:10~11:45)
逮捕に伴う令状主義についての憲法的考察
(司会:西武文理大学 阿部竹松)
筑波大学 辻 雄一郎
第8報告(11:45~12:20)
累犯性性犯罪者に対する特別法の制定に関する研究
(司会:北海学園大学 神元隆賢)
日本大学大学院 西山 智之
○昼食・理事会(12:20~13:20)
第9報告(13:20~13:55)
国際捜査・司法共助により獲得された証拠の証拠能力
(司会:朝日大学 大野正博)
日本大学 三明 翔
第10報告(13:55~14:30)
アメリカにおける大規模不法行為訴訟での広域係属訴訟手続
(司会:大阪体育大学 和田隆夫)
白鴎大学 楪 博行
第11報告(14:30~15:05)
占有の性質の転換についての一考察
(司会:国士舘大学 藤本 公明)
名古屋経済大学 永沼 淳子
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第12報告(15:05~15:35)
フランチャイズ契約間におけるフランチャイズ法創設の必要性について
―主として優越的地位の濫用を中心として―
(司会:大阪国際大学 吉田夏彦)
日本大学 山田 朋生
第13報告(15:35~16:05)
新たな事業再編手法としての信託活用
(司会:大阪国際大学 吉田夏彦)
愛知学泉大学 木内 清章
第12報告と第13報告の質疑応答 16:05~16:15
第12報告と第13報告は近接分野のため、吉田夏彦先生の司会で連続していただきます。
以上
*事務局からのお願い
1.総会および研究会並びに懇親会の出欠については、同封のはがきによりお知らせ下さ
い。返信は、11月5日(水)必着でお願いします。
2.共同研究・シンポジウムのテーマについて、ご意見をお寄せ下さい。ただし、本学会
の会員でこなせるテーマであることを条件とします。
3.次回学会(日本文化大学の予定)で研究報告をご希望の方は、平成27年1月31日
(土)までに、下記の事項を記載の上、事務局までお申し込み下さい。ただし、申し込
み資格は、入会後1年以上経過し、前年度までの会費を完納している方とします。採否
については、企画委員会の議を経て理事会で決定します。
①報告テーマおよび報告概要(300字程度)
②氏名および所属
③連絡先(住所・電話番号・電子メールアドレス)
【事務局】
〒671-0101 兵庫県姫路市大塩町 2042-2
近大姫路大学教育学部 東 裕研究室内 日本法政学会事務局
電話:079-247-7357(代表)
Eメール:[email protected]
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研究報告の概要
【第 1 日目】平成26年11月15日(土曜日)
○個人報告
第 1 報告
エコツーリズムによる地域再生
―木で囲まれた安全・安心で豊かなまちづくり―
神戸山手大学 松永 光男
第 114 回研究会において、エコツーリズム(自然環境体験型観光)による地域振興を発
表以降、エコツーリズムが地域振興政策として定着しつつある。その折、東日本大震災に
よって、東北地方太平洋沿岸部が大きな人的・物的被害を受け地域の経済的基盤のみなら
ずコミュニティも崩壊した。
この経験により、現在の地域社会に求められている課題として、地域の経済活性化に加
えて、まちの安全・安心の確保、地域コミュニティの再生、そして地域の環境保護による
持続可能性であることが明らかとなった。
こうした課題解決のために、エコツーリズムの理念(環境保護、地域振興、観光振興)に
「安全・安心」を加えることにより、エコツーリズムの取組を通して新たなる課題解決の
シナリオを提案したいと考える。
第2報告
海洋保護区制度の発展に与える世界国立公園会議の影響
―第 6 回会議(2014 年)を中心として
東京海洋大学大学院 青木 望美
近年、海洋環境の保護や生物多様性の保全の一手段として、海洋保護区という制度が国
際社会の様々な場面で議論されてきている。この海洋保護区の1つとして国立公園があげ
られるが、かかる空間では保護の対象は拡大されつつあり、さらには陸域も含めた広範な
範囲に設定される場合もある。この点について国際的には、1962 年以降約 10 年毎に開催さ
れる世界国立公園会議において議論されており、
その第 6 回目が 2014 年 11 月に開かれる。
これまで開催されてきた会議において、海域における国立講演制度が他の国家実行及び国
際的議論を踏まえてどのように変化してきたのかにつき、会議内容及び勧告などから分析
を試みる。そこから、公園制度による海域の線引きについて法的評価を行いたい。
第3報告
21 世紀の青年会議所と選挙
法政大学政策科学研究所 佐賀 香織
青年会議所(JC)は、OB に首相経験を持つ国会議員、地方自治体の首長、地方議員をは
じめとした政治家を多く輩出している。今日においても地方、国政を問わず選挙では、か
つて会員であった経験を持つ立候補者により青年会議所に所属していたことが強調される
こともある。
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その活動内容について具体的に取り上げた研究は多くない。加えて青年会議所と選挙と
の関わり方とはいったいどういうものなのか、具体的な研究事例というものはほとんど見
当たらないといえよう。
本報告では 2000 年以降の活動の一つである「公開討論会の実施」に注目する。東京青年
会議所での実施に対象を絞り、政治および選挙との関わりについて取り上げる。
第4報告
アメリカ都市政治と政策決定に関する一考察
―ワシントン州シアトル市政を事例として―
早稲田大学大学院 鈴木 隆志
アメリカ地方自治体の政策を決定づける要因は何かについて論述するのが、本報告
の中心課題である。アメリカ都市政治研究では、
「都市レジーム論」が普遍的な理論の
一つである。その理論によると、地方自治体(市長や議会など)の政策は、公的なア
クターとしての企業、住民、市民団体などの連携によって形成される「都市レジーム」
によって決定されると考えられている。近年、アメリカの地方自治体は、財政難に喘
ぎ、ティー・パーティー運動(Tea Party Movement )やオキュパイ運動(Occupy Mov
ement)などの全米規模の市民運動に翻弄されてきた。本報告では、ワシントン州のシ
アトル市政を例証して「都市レジーム論」を抜本的に解明する検証を試みる。
○シンポジウム
統一テーマ
:岡山発 わが国の政策課題への処方箋
医療政策と法 -医療を取り巻く諸政策を中心として
第 1 報告
歯科医療に関わる法制度と現実の乖離
森田 学(岡山大学)
2011 年 8 月に歯科口腔保健の推進に関する法律が成立しました。それに呼応して,各地
方自治体では,法律に沿った条例が制定されつつあります。歯科医師法や歯科衛生士法のよ
うな身分法以外で歯科に特化したものはこれまでありません。まさに画期的な出来事です。
その新たな法が成立された背景には,「口腔の健康は,国民が健康で質の高い生活を営む
上で重要である」ことが周知されてきたことがあげられます。少子高齢化に伴う歯科疾患
の疫学的特性は大きく推移しております(う蝕の減少,歯周病の高齢化,残存歯の増加な
ど)。従来型の歯科医療では,健康で質の高い生活を約束することはできません。今後は,
歯科医療や歯学教育が,時代の変化を敏感に反映しなくてはなりません。しかし,患者の
歯科受診動機や歯科保険制度を考えると,簡単には変われない事情が見え隠れします。今
回は,今の歯科医療をとりまく現状の問題点について社会歯科学の観点から考えてみたい
と思います。
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第 2 報告
アジア渡航移植患者の人権
粟屋 剛(岡山大学)
近時、外国とりわけアジアに出向いて移植を受けることは「移植ツーリズム」として国
際的な批判の対象になっている(WHO「ヒト細胞・組織・臓器の移植に関する WHO 指針」(2010
年)や国際移植学会「臓器取引と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言」(2008 年)
など)
。では、日本も含めて諸外国から中国、広くアジアに移植を受けに行く渡航移植患者
は責められても当然なのか。帰国後、診療拒否をされても当然なのか。日本では厚労省と
移植学会が連携して、実質的に、
「中国、広くアジアに行かせない、帰って来ても面倒をみ
ない」という政策を採っていると見受けられる。ある外国人論者は、各国政府は中国で移
植を受けた患者の入国(=帰国)を拒否せよ、とまで書いている(マリア・フィアタロン・
シング「医学の使命」謝冠園 監修(デービッド・マタス、トルステン・トレイ編集)『中
国の移植犯罪 国家による臓器狩り』
(自由社、2013 年)[原題『State organs: Transplant
abuse in China』])
。
仮にアジアへ臓器移植を受けに行く(行った)患者を例えば「人道」に反するなどとし
て倫理的に非難することが可能であるとしても、そのことを理由とする帰国後の診療拒否、
ひいては帰国そのものの拒否などが正当化されるのか。これらは、関連はあるが別の問題
と考えられなければならない。例えば中国について言えば、その移植政策に死刑囚等の人
権の問題があるとしても、それを良しとしない日本ないし WHO 等の移植政策を遂行するた
めに渡航移植患者にいわば出口から圧力をかけることが倫理的に正しいといえるかどうか。
これは、一定の政策実現のために、現実の、目の前の患者を犠牲にしてよいのか、という
問題である。なお、もちろん、法的にはいわゆる「診療拒否」(医師法第 19 条)の問題に
もなりうる。同条は「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事
由がなければ、これを拒んではならない」と規定しているが、中国、広くアジアで臓器移
植を受けて来たことが同条にいう診療拒否の「正当な事由」にあたるか、きわめて疑問で
ある。
以上のように、中国、広くアジアへの渡航移植患者の帰国後の診療拒否は「患者の人権」
侵害という大きな問題がありそうである。患者の人権は「生命倫理(学)
」の重大な関心事
である。臓器摘出対象とされる死刑囚・法輪功学習者や金銭のために臓器を売る貧しいド
ナー等に人権があるように、自国内で移植が受けられずに外国に出向く患者にも人権があ
る。前者が国家権力の下の弱者なら、後者は医療権力の下の弱者である(とくに日本の場
合)
。
「人道」を言うなら、これも人道である。「倫理」を攻撃の武器として使うなら、それ
はその使用者にも向けられる。選択肢のない患者に「座して死を待て」と言うことが真の
倫理とは考えられない。
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第 3 報告
内務省の衛生官僚と伝染病予防法の制定
小島 和貴(中部学院大学)
岩倉遣外使節団により帰国した長与専斉は衛生行政の日本への導入を模索し始めた。明
治 7 年には医制の制定に関与し、明治 10 年には大久保利通内務卿に自らの衛生行政構想と
して「衛生意見」を提出した。長与の近代衛生行政構想はこの時点では比較的速やかに実
現する可能性をもっていたのである。
ところが、明治 10 年よりコレラが流行しはじめた。コレラはそれ以降、流行を繰り返し、
時に 10 万人以上の支社を数える被害をもたらした。このため、長与はじめ内務省の衛生官
僚たちはその対策に忙殺されることとなったのである。そして、この一連の伝染病対策を
進める中で制定されたのが伝染病予防法であった。本研究では、同法の制定の意義を内務
省の衛生官僚たちとの関係性を踏まえて考察を行おうとするものである。
なお、我が国の伝染病(感染症)対策は、平成 10 年に伝染病予防法が廃止され、「感染
症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」
、いわゆる「感染症予防法」が制定
されたことで改めて注目されるようになった。そこで今日の感染症対策の動向についても、
若干の検討を加えることにしたい。
第 4 報告
医療の進歩と法政策
~パターナリズム論による診断(仮題)~
瀬戸山 晃一(大阪大学)
病を治療したり発症を予防する処方箋である薬には効用と副作用があるように、社会的
な諸問題を予防し治療する法規制も効用と副作用(波及効果)を有する場合が少なくない。
新薬や新治療法の開発には、その効用と安全性が臨床試験で十分検証されるが、法規制の
場合には、その副作用(波及効果)が十分検証される前に通常は導入される。医療技術は、
めまぐるしい速度で進歩している。生殖補助医療や終末期医療、そして遺伝子医療や再生
医療などにおいても、このような医療技術の進歩は、従来の法(制度や規範)が想定して
いなかった、新たな現実を生み出してきている。そのような現代医療の進歩に対して、法
はどういった処方箋を提供すべきなのであろうか。医療政策を考察する法学者は、この問
いに真剣に向き合う必要がある。
現代医療をめぐる法政治政策や社会保障制度のありかたは、生殖や終末期医療における
決断など、人々の人生計画や家族のあり方に強い影響を及ぼす。また、生命倫理の諸問題
に対する法規制は、良くも悪くも人々の行動や死生観にも影響を与え、将来世代の生のあ
り方を強く規定してしまう力を有する場合が少なくない。
本報告では、個人の自己決定(医療技術利用へのアクセス)を規制する正当化根拠の一
つであるパターナリスティックな法規制や言説を取上げ、パターナリズム論の観点から現
代医療をめぐる諸問題の診断を試みたいと考える。パターナリズムは、医療提供者と患者
との関係や、医療における自己決定権や自律、インフォームド・コンセントとの関係にお
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いて重要な主題であり、医療政策や生命倫理をめぐる諸問題を考える場合に避けて通るこ
とのできないテーマである。
近年、日本でも認知心理学の知見や洞察を経済学に取り入れた「行動経済学」が注目を
集めてきているが、その理論アプローチを法政策に取入れ、医療や社会保障政策において
も様々な提言をしてきているリバタリアン・パターナリズムによる「ナッジ戦略」の議論
を紹介する。その主要論客であるハーバード大ロースクールのキャス・サンステイン教授
は、米国オバマ大統領のブレインを務め、現実の政策にそのアプローチが活用されている。
本報告では、パターナリズム論の視角、そして選択の自由の余地を残すリバタリアン・パ
ターナリズム論の法政策への含意を、具体的な現代医療や医学研究の諸問題を取上げ検討
予定である。
【第2日目】 平成26年11月16日(日)
○個人報告
第5報告
首相公選制における立法論の提唱
千葉大学 岡田 大助
首相公選論は、政治腐敗や、政治と国民との乖離を解決する手段として、時折、議論に
なってきた。主なものとしては、日本国憲法制定時、1960 年代、そして 2000 年代である。
そして、最近では、2012 年に大阪維新の会(当時)による「維新八策」案の中で主張されて
いる。
しかし、近時の憲法改正論義における風潮の中でも、各党・各機関等による憲法改正案
には、具体的に改正条項として出てきていない。また、首相公選論肯定説にたちながら、
改正案まで具体的に言及している論者も少ない。そこで、本報告では肯定説にたち、各憲
法改正案を踏まえて、首相公選制実施のための具体的憲法改正案を提示する。そして、さ
らに、首相公選制実施のための法律案まで提示する。
第6報告
改正国民投票法における投票権年齢をめぐる問題点の検証
九州産業大学 大西 斉
憲法改正国民投票法の改正法案が、今年 6 月 13 日に成立した(以下、改正国民投票法)
。
選挙権年齢をめぐり、従前の国民投票法においては投票の実施が判然としない状態におか
れていただけに、今回の改正においてようやく国民が改憲の是非を判断する機会が保障さ
れたといえる。ただ、8 党合意のもと先送りされた事項も見られ、改正国民投票法において
18 歳以上に投票権を与えるとしても多くの問題が残る。投票権に関わる主だった論点だけ
でも、①憲法第 15 条第 3 項の「成年者」は、民法の「成年」を意味するか否か、②改正国
民投票法附則 3(法制上の措置)における投票権年齢と選挙権年齢の整合性の要否、③同じ
く選挙権年齢と成年年齢の整合性の要否、④投票年齢にあわせて選挙年齢の引き下げの是
非、⑤投票年齢にあわせて成年年齢引き下げの是非などが挙げられる。これらの問題点を
検証したものを報告していきたい。
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第7報告
逮捕に伴う令状主義についての憲法的考察
筑波大学 辻 雄一郎
アメリカ連邦第四修正は捜査において令状主義を要請し、不合理な捜索を禁止している。
従来、逮捕に伴う押収には令状を必要としてこなかった。被疑者の逮捕に伴い、スマート
フォンや携帯電話に記録された情報を令状なしに捜索することは許されるだろうか。携帯
電話から取得した情報を手がかりに新たに得た証拠を刑事裁判で提出できるだろうか。情
報流通の進展は、憲法学にどのような対応を求めるか。二〇一四年に連邦最高裁が下した
判決をもとに、第四修正の射程を憲法学の視点から検討する。
第8報告
累犯性性犯罪者に対する特別法の制定に関する研究
日本大学大学院 西山 智之
国民に大きな不安を与えている累犯生成犯罪者対策として、現在、強制段階及び更生保
護段階における医学的・心理学的な取り組みや、出所後の GPS 監視、情報公開制度が主に
論じられている。しかし、これに合わせて出所後の満期受刑者に対し治療行為を行うこと
が可能であるかや、危険な性犯罪者に対して刑期の上限を越えるような処遇を科すことが
可能かといった法的な議論はあまりなされていないように思われる。本研究では、危険な
累犯性性犯罪者に対して、特別法を制定し、処遇の期間を他の犯罪よりも長く設定するこ
とが可能か等について検討を行いたい。
第9報告
国際捜査・司法共助により獲得された証拠の証拠能力
日本大学 三明 翔
犯罪現象の国際化が進む現代では、犯罪に関する重要な証拠が外国に所在する場合も少
なくない。そのような場合には、相手国に対して証拠収集を要請することになるが、証拠
収集の過程でわが国では認められていない手続が用いられることにより、獲得された証拠
の証拠能力がわが国の刑事裁判において問題となることがある。本報告は、国際捜査・司
法共助により獲得された証拠の証拠能力に関し、ロッキード事件最高裁判決(最判平成7
年2月22日刑集49巻2号1頁)をはじめとするわが国の判例状況を整理し、また同分
野におけるアメリカ法の取扱いから示唆を得て、その判断枠組みについて考察するもので
ある。
第10報告
アメリカにおける大規模不法行為訴訟での広域係属訴訟手続
白鴎大学 楪 博行
アメリカでは、製造物の瑕疵など広域にわたり多数の者に人身損害を与える大規模不法
行為が発生すると、多くの裁判所に事実問題を共通とする訴えが提起される。連邦裁判所
は、紛争処理の効率化と矛盾した複数の判決が出されることを回避するために、単一の受
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訴裁判所に訴えを集約して正式な事実審理の前に証拠開示を行う広域係属訴訟手続をすす
めてきた。現在では、連邦裁判所に係属するほぼすべての大規模不法行為の訴えはその手
続を経由する状況に至っている。そこで本報告では、広域係属訴訟手続が大規模不法行為
の事案において不可欠となった理由を分析し、当該事案の手続による解決方法について検
討する。
第11報告
占有の性質の転換についての一考察
名古屋経済大学 永沼 淳子
所有権の時効取得には自主占有が必要とされ(民 162 条)、自主占有か否かは占有取得の
原因である事実の客観的性質によって定まるとされている。しかし、他主占有も、新たな
権原によりさらに所有の意思をもって占有を始めたのであれば、自主占有への性質の転換
が認められる(民 185 条)ので、相続もここでいう新権原にあたるかが問題になる。最判
昭 44.11.30 は、被相続人が他主占有であっても、相続を契機として相続人の占有が自主
占有に転換する場合があると判示したが、占有の態様の変更を必要とするかについて言及
していない。この点につき、大阪高判平 25.11.12 は、占有の態様の変更がなくても自主
占有への転換を認めたので、その当否について検討したい。
第12報告
フランチャイズ契約間におけるフランチャイズ法創設の必要性について
―主として優越的地位の濫用を中心として―
日本大学 山田 朋生
近年、各業界においてフランチャイズ契約(フランチャイズ・システム含む)を事業形
態とする業界及び事業者が急増する一方で、その契約の内容を巡る訴訟 (優越的地位の濫
用)及び事件も年々増加する傾向にある。本報告は、フランチャイズ契約における私的独
占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 (「独占禁 止法」)上の諸事例を用いながら、
フランチャーザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)間の基準法ともいうべきフラン
チャイズ法の創設の必要性 について 考察するものである。また、考察していく上で、近
年問題になっているバイトテロについても概観して論じていくものである。
第13報告
新たな事業再編手法としての信託活用
愛知学泉大学 木内 清章
事業再編において、分割会社が優良資産と弁済したい債務を恣意的に選別して承継させ
る濫用的会社分割は、2012 年最高裁判決に続く会社法改正においても重要課題であった。
この問題の本質は、客観性(分割会社と承継会社間の取引の経済合理性の立証)衡平性(財
産の交換価値が歪められることの防御)の確保にある。本報告では、その解決手法として
事業信託が有効であることを述べる。米国では、ビジネストラストが進化しているが、わ
が国においても、負債を含めた財産移転・責任財産のみを引当とする弁済責任・受益権証
券の流通性など、事業運営として利用する法的枠組みが備わっている。濫用的会社分割へ
の抑止機能としての側面を中心に、信託の法的効用を検討する。
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開催校からのお知らせ

岡山大学ではキャンパス敷地内は禁煙ですので、敷地外での喫煙をお願いいたします。
また校門付近での喫煙も受動喫煙の防止の観点からご遠慮頂きますようお願いいたし
ます。

昼食のお弁当の販売はございません。当日は土・日ともに会場の歯学部棟に隣接する
岡山大学病院内のコンビニエンスストア、フードコート等が営業しておりますので、
そちらをご利用ください。

ローソン岡大病院店
スターバックスコーヒー岡山大学病院店 ・・・・外来棟(医科)1階

売店マルシェドゥボンテ
フードコート・・・中央診療棟1階

宿泊につきましては、各自でご予約下さい。

懇親会は、キャンパス内にあります記念会館1階「カフェテリア バンビ」にて開催
予定です。ご出席の方は、懇親会費 5,000 円を当日受付でお支払い下さい。

役員の方は、理事会費 15 日 1,000 円、16 日 1,000 円を当日受付でお支払いください。
なお、理事会会場は、2階 第1会議室、です。

会場では岡山県公衆無線 LAN サービス「おかやまモバイル SPOT」が利用可能です。ま
た研究会会場の机には電源コンセントがあります

今回の研究会・総会は、公益財団法人岡山医学振興会 「医学に関する教育研究機関
及び地域社会との交流事業」に採択され助成を受けて開催させていただいております。
会場について

会場となります歯学部は、大学病院のある「鹿田キャンパス」です。本部等のある津
島キャンパスとは異なりますので、お間違いの無い様にお願いいたします

駐車場は有料です。学会参加での駐車場の割引等はございませんので、公共交通機関
をご利用ください

交通アクセス

岡山駅東口バスターミナル「5 番乗り場」から「2H」系統の岡電バスで「大学病院」
構内バス停(終点)下車 土日とも日中は 20 分おきの運行で一番便利です
12

岡山駅東口バスターミナルから「12」
・
「22」
・
「52」
・
「62」
・
「92」系統の岡電バス
で「大学病院入口」下車(大学構内には入りません)

岡山駅前(ドレミの街前または高島屋入口)から循環バスで「大学病院入口」下車
(大学構内には入りません)

岡山駅タクシー乗り場からタクシーで約 5~10 分

岡山駅前から「清輝橋」行き路面電車で 12 分「清輝橋」下車西へ徒歩 5~10 分
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