先行型市場志向と新市場創造 枚数:19 枚 指導教員名:水越康介 学修番号:06159014 氏名:星野優香 先行型市場志向と新市場創造 【目次】 要旨 1.序論 2 先行研究 2.1 市場志向の定義 2.2 市場志向の分類―反応型市場志向と先行型市場志向― 2.3 製品が潜在的なニーズを確定する 2.4 依存効果 3.問題提起 3.1 反応型市場志向から先行型市場志向への移り変わり 3.2 先行型市場志向と新市場創造 3.3 先行型市場志向における広告の役割 4.仮説 5.仮説の検討 (事例)シャンプー・リンス市場 5.1 仮説の検討方法 5.2 反応型市場志向の時代(2000 年から 2002 年) 5.2.1 根拠 1 顕在的なニーズを対象にした製品開発 5.2.2 根拠 2 価格競争 5.3 先行型市場志向への兆候 5.4.先行型市場志向の時代(2003 年から 2006 年) 5.4.1 高級シャンプー市場の概要 5.4.2 根拠 1 潜在的なニーズを対象とした製品開発 5.4.3 根拠 2 情緒性へのこだわり 5.4.4 根拠 3 大規模な広告投資 5.4.5 根拠 4 組織体制の変革 6.仮説の評価 6.1 評価 1 反応型市場志向から先行型市場志向への移り変わり 6.2 評価 2 先行型市場志向と新市場創造 6.3 評価 3 先行型市場志向における広告の役割 7.結論 参考文献 【要旨】 シャンプー・リンス市場を事例として考察することで、仮説 1 市場志向による製品開発 手法は、反応型市場志向から先行型市場志向へと移り変わっている、仮説 2 先行型市場志 向による製品開発を行なうことで、企業は新市場を創造できる、仮説 3 先行型市場志向に おいて、広告は潜在的なニーズを顧客に気付かせる役割をもつ、という 3 つの仮説を検討 した。 結果、3 つの仮説は正しいことが証明された。しかし、仮説 1 と仮説 2 については研究の 余地が残されている。仮説 1 については、成長市場から成熟市場へと推移する場合と成熟 市場が脱成熟を試みる場合にのみ当てはまるという条件つきであり、今後もシャンプー・ リンス市場に注目する必要がある。仮説 2 については、先行型市場志向の場合、反応型市 場志向の場合と比べて、事前に新市場を創造するという確信を抱きにくいという不安要素 があるという課題が浮き彫りとなった。 1.序論 市場志向とは、顧客の持つニーズを出発点とする考え方である。顧客の持つニーズは、 顕在的なニーズと潜在的なニーズの 2 つに分けられることは、マーケティングを学ぶ者に とって、当然の知識である。 しかし、今まで市場志向として研究されてきたものは、顕在的なニーズと潜在的なニー ズに分けることなく、同じ顧客ニーズとして扱われてきた。実際、顕在的なニーズと潜在 的なニーズに分けて市場志向を研究するようになったのは、2004 年とつい最近のことであ る。 本論文では、市場志向の中でも、先行型市場志向の有効性を明らかにすることが目的で ある。先行研究では、新製品成功との関連が既に立証されているが、新製品成功だけにと どまらず、先行型市場志向には新市場を創造する可能性があるのではないかという仮説を 立てた。もし、先行型市場志向によって新市場を創造することができることがわかれば、 競争の構図が変わり、競争優位に立つことができるかもしれないのである。 本論文では、先行研究を基に、問題提起を行い、3 つの仮説を立てた。それは、仮説 1 市 場志向による製品開発手法は、反応型市場志向から先行型市場志向へと移り変わっている、 仮説 2 先行型市場志向による製品開発を行なうことで、企業は新市場を創造できる、仮説 3 先行型市場志向において、広告は潜在的なニーズを顧客に気付かせる役割をもつ、の 3 つ である。 これら 3 つの仮説を明らかにする本論文の構成は以下のとおりである。まず、先行研究 を確認し、先行研究を基に問題提起を行なう。問題提起を基に、仮説の導出を行い、シャ ンプー・リンス市場を事例として、仮説の検討を行なう。仮説の検討結果を評価し、結論 として評価の結果と今後の課題について論述する。 2.先行研究 2.1 市場志向の定義 市場志向とは、文字通り市場を志向することである。ここで言う市場とは、「市場」を形 成する顧客のニーズであり、「志向する」とは顧客のニーズに主眼を置いた組織文化を行う ことを言う。マーケティングを学ぶ者が、第一に覚える言葉がニーズであり、ニーズを的 確に捉えることは、マーケティングに置いて基本的なことである。 しかし、マーケティングの基本であるニーズに主眼を置く市場志向は、1990 年代から議 論されるようになった概念であり、比較的新しい概念と言える。市場志向に関わる議論の 始まりとして、1990 年に 2 つの代表的な市場志向の定義がなされた。 1 つは、Kohli and Jaworski(1990)において定義されたものである。それは、市場志向と は、市場知識、もしくは現在の顧客や未来の顧客のニーズに関する情報の組織規模での生 成、部門間を横断する情報の普及、そしてそれに対する組織規模での反応であるいう定義 である(Kohli and Jaworski,1990,pp.4-6.)。もう 1 つは、Narver and Slater(1990)によ って、市場志向とは、バイヤーに対して優れた価値を生み出すために必要な行動を、最も 効果的かつ効率的に生み出すことであり、ビジネスにおける優れた成果を持続させる文化 であると定義されている(Narver and Slater,1990,p.21.)。 市場志向は、これら 2 つの代表的な定義が存在するが、市場という視点から既存および 潜在顧客をとらえ、顧客が求める価値を提供する組織文化であるという点で一致している と言える。 2.2 市場志向の分類−反応型市場志向と先行型市場志向− 市場志向は 1990 年に生まれた概念であり、様々な議論がなされてきたが、2004 年になっ て新たな動きが起こった。 Narver et al(2004)は、市場志向の概念は 2 つの概念に分類できることを主張した。そ の 2 つの概念とは、反応型市場志向と先行型市場志向である。 彼らは、市場志向の概念は、反応型市場志向と先行型市場志向の 2 つに分けられ、それ ぞれ顧客の顕在的なニーズと顧客の潜在的なニーズに焦点を当てた概念であると主張して いる。(Narver et al、2004、p.334)と主張したのである。 市場志向を反応型市場志向と先行型市場志向に分類するキーワードは、顕在的なニーズ と潜在的なニーズである。彼らによれば、顕在ニーズと潜在ニーズは以下のように分類さ れる。顕在的なニーズや顕在的なソリューションは、顧客が気付いており、表現できるニ ーズやソリューションと定義される(Narver et al、2004、p.336)。例えば、のどの渇きは 顕在的なニーズであり、水を飲むことが顕在的なソリューションだと言う。これに対して、 潜在的なニーズや潜在的なソリューションは、顧客が気付いていないニーズやソリューシ ョンと定義される(Narver et al、2004、p.336)。それは、例えばコンピューターの発展の はじまりにおける、パーソナルコンピューターの利便性は潜在的なニーズであるという。 つまり、製品あるいはサービスが提供されてはじめて、顧客が感じるニーズが潜在的なニ ーズと言える。 また、Narver et al(2004)は、反応型市場志向と先行型市場志向の 2 つの概念を主張す るだけではなく、新製品成功との関係を考察した。彼らは、反応型市場志向と先行型市場 志向の両方が新製品成功に関連し、新製品成功への関連の度合いは、反応型市場志向より も先行型市場志向の方が強いことを明らかにした。これは、彼らが企業に対して行なった 実験によって、信頼性が保証されている。これまで、市場志向は企業成果に良い影響をも たらすのか、ということが指摘されてきた。この結果は、市場志向の有効性を後押しする 結果となった。 2.3 製品が潜在的なニーズを確定する 先行型市場志向という言葉は使われていないものの、同様の概念を指すと思われる議論 が日本にも存在する。 石井(1993)は著書の中で、顧客に欲望はあるかという問題提起を行なっている。石井 (1993)は、顧客には潜在的に確固とした欲望があり、それに応じて製品に対するニーズが 出現するという前提を疑問視し、学問上ではなく、ビジネス上のマーケティングでは、顧 客欲望の存在を仮定するのは現実的ではなく、消費に先立って欲望をもっていると仮定す るより、消費しつつ欲望を構成すると主張している(石井、1993、p.39)。 石井(1993)の主張の根本は、顧客にはたして欲望はあるのかということである。これま で、マーケティングの研究では、顧客にはニーズがあるということが前提とされてきた。 その前提を基に、顧客のニーズに企業が応えるかたちで製品開発が行なわれてきた。そし て、それこそが市場志向である。石井(1993)の主張は、市場志向の前提であるニーズ(欲望) を否定していることになり、ニーズ(欲望)を否定することは市場志向の否定ということに なる。 しかし、石井(1993)が否定しているのは、顕在的なニーズだけを対象とする市場志向で あるととらえることができる。石井(1993)は主張の中で、 「消費に先立って欲望をもってい ると仮定するより、消費しつつ欲望を構成すると考える方が理にかなっている。 」(石井 1993 p.39)と述べている。「消費に先立って欲望をもっている」というのが、「ニーズが始 点となって消費が発生する」ととらえられるのに対し、「消費しつつ欲望を構成する」とい うのは、「消費することで、事後的にニーズが確定していく」ととらえることができる。 潜在的なニーズというのは、顧客自身がまだ気付いていないニーズであり、製品を消費 した後に事後的に確定していくものである。つまり、石井(1993)が主張していることは、 反応型市場志向の否定であるが、潜在的なニーズを対象とする先行型市場志向の存在を肯 定しているととらえることができる。 実際に、先行型市場志向という言葉が生まれるのは、2004 年になってからである。しか し、1993 年時点で既に先行型市場志向の存在を暗に示すような議論が日本で生まれていた のである。 2.4 依存効果 石井(1993)の主張と関連するのが、ガルブレイス(1985)の主張である。石井(1993)とガ ルブレイス(1985)に共通しているのは、欲望すなわちニーズについて論じている点である。 ニーズとは、市場志向を構成する基本的な概念である。 ガルブレイス(1985)は、ゆたかな社会になったからこそ起こった弊害を論じており、依 存効果について論じている。 依存効果とは、欲望は欲望を満足させる過程に依存することであり、ガルブレイスが初 めて用いた言葉である(ガルブレイス、1985、p.218)。ガルブレイスによると、欲望を満足 させる過程は 2 つある。 1 つは他人との張り合いである(ガルブレイス、1985、p.213)。例えば、隣人の新車への 羨望は、新たな欲望を生む。他人との張り合いによる欲望は、他人の存在がなくならない かぎり、きりがないと言える。なぜなら、他人に欲望がある限り、自己の欲望はなくなら ないからである。まさに、他人の欲望と自己の欲望は依存関係となるのである。 もう 1 つは生産者による積極的な宣伝や販売術である。ガルブレイス(1985)によると、 生産者が行なう宣伝と販売術の目的は欲望を作り出すことであるという(ガルブレイス、 1985、p.215)。この議論において、生産者は顧客の欲望に基づいて生産を行なうだけでは なく、宣伝や販売術を巧みに用いることにより、顧客の欲望を作り出すことも可能となる。 つまり、生産者は財貨の生産と欲望の造出という二重機能をもつというのである(ガルブレ イス、1985、p.215)。 ガルブレイスの挙げた 2 つの欲望を満足させる過程は、石井(1993)が主張したことと関 連する。 まず、2 つ目の生産者による欲望の造出は、まさに石井(1993)の顧客は消費しつつ欲望を 構成するという主張と同様の主張と言える。どちらも、既存の顧客の欲望が出発点ではな く、生産者によって生産された製品によって欲望が創出されると主張している。石井(1993) の主張でも、顧客と生産者の依存関係が浮き彫りにされている。 1 つ目の他人との張り合いは、他人との張り合いを自己実現という曖昧な欲望でとらえる とわかりやすい。石井(1993)は、手段(すなわち製品)が目的(すなわち欲望やニーズ)プロ を創出するという程度は、顧客の目的が自己実現や個性的というように抽象的な目的にな るほど強くなると主張している(石井、1993、p.41)。ガルブレイスはゆたかな社会におい て、顧客の欲望はゆたかになることによって減るどころか、より高い水準の欲望へと推移 していると考察する。他人との張り合いには、他人に負けまいという欲望が隠されており 他人からの羨望を集めたいという自己実現の欲望と結びついている。 ガルブレイス(1985)は不自由するものがなくて、何が不足しているかわからない人に対 してのみ、宣伝は有効にはたらくと主張している(ガルブレイス、1985、p.217)。ゆたかな 社会になると、自分自身の顕在的なニーズは、製品の生産者である企業によって満たされ ていく。経済的な制約を除けば、何でも手に入る社会において、顧客は自分が何を欲して いるのかを言葉にできなくなってきている。そのような社会においては、宣伝が訴える新 たなニーズを、顧客が自分自身のニーズと認識することも無理はないと言える。 3.問題提起 3.1 反応型市場志向から先行型市場志向へ 市場志向は Narver et al(2004)によって、反応型市場志向と先行型市場志向に分類され た。これは、学問としてのマーケティングの世界だけではなく、実社会のビジネスにおけ るマーケティングの世界においても浸透してきている。 市場志向は反応型市場志向と先行型市場志向に分類されるだけではなく、実社会のビジ ネスのマーケティングにおいての市場志向は、反応型市場志向から先行型市場志向へと移 り変わっていると仮定する。 最も初期の製品開発は、空腹を満たすものやのどの渇きを満たすものといったように、 生理的な欲求を満たす製品を生み出すことであった。しかし、経済が発展し、社会が豊か になっていくにつれて、人の欲求は多様化していった。多様化するニーズにも応える製品 がどんどん生み出されていく。そして、石井(1993)やガルブレイス(1985)が指摘するよう に、社会にものが溢れていくと、人は自分が何を欲しているのかわからなくなる。なぜな ら、自分が気付いている顕在的なニーズは、企業によって生み出された製品によって満た されていくからである。 「こういうものが欲しい」と思う間もなく、製品として生み出され ているのだ。企業にとっても、顧客のニーズを的確にとらえることで、顧客に受け入れら れる製品を生み出すことができる。これはまさに、ガルブレイス(1985)が主張した顧客と 生産者の依存効果である。 このように、初期の製品開発は、顧客の顕在的なニーズに忠実であれば成功した。企業 が顕在的なニーズに着目し、どんどん製品を生み出していくと、顧客の顕在的なニーズは 満たされていく。顕在的なニーズが満たされていったとき、顧客は自分が何を欲している のかわからなくなる。これは、ニーズがなくなるわけではない。顕在的なニーズが満たさ れることによって、潜在的なニーズが顧客のニーズの中心となるのである。そうなると、 企業は潜在的なニーズに着目せざるを得なくなる。 社会の発展とともに、市場志向の企業の中心課題は顕在的なニーズを満たすことから、 潜在的なニーズを探り、顧客に潜在的なニーズを気付かせることに移り変わっていった。 このようにして、市場志向は反応型市場志向から先行型市場志向へと移り変わっていった と言える。 3.2 先行型市場志向と新市場創造 Narver et al(2004)は市場志向と新製品成功の関連を論じている。市場志向を反応型市 場志向と先行型市場志向に分類した上で、反応型市場志向と先行型市場志向の両方が新製 品成功に関連し、新製品成功への関連の度合いは、反応型市場志向よりも先行型市場志向 の方が強いことを明らかにした。 しかし、先行型市場志向は、新製品を成功に導くだけではなく、新市場を創造する可能 性があると考える。 ここで、新市場というのは 2 つにわけることができる。今までになかったような新製品 を投入することによって切り拓かれた市場と既存の市場の中で新たなニーズに注目するこ とによって切り拓かれた市場である。例として、前者はどこでも電話をしたいというニー ズをかたちにした携帯電話であり、後者は既存の携帯音楽プレイヤー市場において、音楽 をファッションとして、自己実現のアイテムとして用いたいというニーズをかたちにした i pod が挙げられる。つまり、新市場の創造は、今までになかった全く新しい市場を創造する ことと、既存の市場から新たな市場を創造することの 2 つにわけることができる。 ではなぜ、先行型市場志向は新市場を創造すると考えるのかというと、先行型市場志向 では、既存のニーズとは異なるニーズをかたちにした新製品が生み出されるからである。 既存のニーズとは、顕在的なニーズとかつて潜在的であったニーズにわけられる。かつ て潜在的であったニーズとは、顧客に認識されることで、潜在的なニーズが顕在的なニー ズとなったものである。より厳密に言うと、潜在的なニーズは顧客に受け入れられること で、事後的に潜在的なニーズと認識されるが、認識されることで潜在的なニーズは既存の ニーズへと変わるのである。なぜなら、潜在的なニーズであったとしても、顧客に認識さ れた時点で、潜在的なニーズの定義である顧客が気付いていないニーズに反するものにな るからである。 では、なぜ先行型市場志向では既存のニーズとは異なるニーズをかたちにした新製品が 生み出されるのかというと、先行型市場志向では潜在的なニーズを対象とするからである。 潜在的なニーズとは顧客が気付いていないニーズのことである。つまり、顧客が気付いて いる顕在的なニーズ、もしくは企業によって気付かされた潜在的なニーズである既存のニ ーズと潜在的なニーズは異なるのである。異なるニーズを扱うのだから、生まれてくる製 品が異なるのは当然のことと言える。 既存のニーズは顕在的なニーズであり、潜在的なニーズとは異なる。顕在的なニーズを 追っていたこれまでの市場志向とは違う、潜在的なニーズを追うことは新市場を創造する 可能性を秘めていると仮定する。 3.3 先行型市場志向における広告の役割 ガルブレイス(1985)は宣伝と販売術の目的は欲望を作り出すこと、すなわちそれまで存 在しなかった欲望を生じさせることであると主張している(ガルブレイス、1985、 p.215)。 ガルブレイス(1985)の主張では、生産者である企業が行なう宣伝や販売術によって、顧客 は欲しいと思っていなかったものを欲しいと感じるようになるという。しかし、本当に企 業がニーズを創出することは可能なのだろうか。 企業がニーズを創出することは可能であると考える。しかし、ニーズを創出するという よりも、顧客が気付いていない潜在的なニーズに気付かせることが可能であると言う方が 正しい。顧客は宣伝を見て、自分がこのような製品を欲しいと思っていたことに気付く。 もし、潜在的なニーズがなければ、宣伝に対しての反応は薄くなるはずである。企業によ る宣伝や販売術は、ニーズを創出するというよりも、潜在的なニーズを顧客に気付かせる という重大な役割をもつと言える。 このように、宣伝や販売術が潜在的なニーズに気付かせるという役割をもつのは、潜在 的なニーズのある特性に関係している。ある特性とは、潜在的なニーズは製品が生まれて から、事後的に潜在的なニーズがあったと定められることである。 製品開発の大枠を、反応型市場志向と先行型市場志向とで比較する。反応型市場志向の 場合、顕在的なニーズを調査することから始まる。明らかとなった顕在的なニーズを基に、 製品開発を行なう。製品がヒットし、成功した場合、顕在的なニーズに的確にとらえられ ていたことが証明される。つまり、反応型市場志向では、製品開発のスタートは顕在的な ニーズなのである。 これに対して先行型市場志向の場合、潜在的なニーズの予測をするところから始まる。 予測を基に製品開発を行なうのである。製品がヒットし、成功した場合、潜在的なニーズ があったことが証明される。つまり、先行型市場志向では、製品開発のスタートは潜在的 なニーズと予測されるニーズなのである。 もちろん、顕在的なニーズであっても、製品を市場に投入する前に、このような顕在的 なニーズがあるという断定はできず、予測に近いこともある。しかし、顧客はこのような ニーズを持っているという確証を得やすいのは、潜在的なニーズよりも顕在的なニーズで あると言える。なぜなら、潜在的なニーズは顧客自身が気付いていない、言葉にできない ニーズであり、とらえることが非常に困難なためである。 先行型市場志向の場合、製品開発の時点では、このような潜在的なニーズがあるという 予測しかできない。実際に市場へ製品を投入し、受け入れられたときにのみ、潜在的なニ ーズがあったと事後的に言えるのである。そして製品が生まれた後に、潜在的なニーズの 存在を顧客に気付かせるための手段が、宣伝や販売術であると言える。 4.仮説 ここまで、先行事例をもとに問題意識をもち、3 つの問題提起を行なった。それは、反応 型市場志向から先行型市場志向への移り変わり、先行型市場志向と新市場創造、先行型市 場志向における広告の役割の 3 つである。この 3 つ問題提起を基に、3 つの仮説を主張する。 仮説 1 は、市場志向による製品開発手法は、反応型市場志向から先行型市場志向へと移 り変わっているという仮説である。仮説 2 は、先行型市場志向による製品開発を行なうこ とで、企業は新市場を創造できるという仮説である。仮説 3 は、先行型市場志向において、 広告は潜在的なニーズを顧客に気付かせる役割をもつというという仮説である。 この 3 つの仮説の中で、最も明らかにするべき仮説は、仮説 2 の先行型市場志向による 製品開発を行なうことで、企業は新市場を創造できるという仮説である。先行型市場志向 によって、新市場を創造することができることがわかれば、先行型市場志向が製品の差別 化が困難になっており、価格競争を抜け出せないでいる市場や企業にもたらす成果は大き いことが証明される。よって、シャンプー・リンス市場を事例として見ることで、先行型 市場志向は新市場を創造すること、先行型市場志向によって企業が競争優位に立てること を証明する。仮説 1 市場志向による製品開発手法は、反応型市場志向から先行型市場志向 へと移り変わっている、仮説 3 先行型市場志向において、広告は潜在的なニーズを顧客に 気付かせる役割をもつ、という 2 つの仮説についても、事例の中で確認していく。 5.仮説の検討 (事例)シャンプー・リンス市場 5.1 仮説の検討方法 シャンプー・リンス市場は、成熟市場である。しかし、昨今は週ごと、月ごとにめまぐ るしくシェアが変動し、活発な動きを見せている。競争を巻き起こしているのは、花王、 ユニリーバ・ジャパン、資生堂、P&Gの4社である。 本論文では、2000 年からの市場の動きを、2000 年から 2002 年、2003 年以降という 2 つ の期間にわけてみていく。2000 年から 2002 年までは反応型市場志向で製品開発が行なわれ ていた期間であり、2003 年以後、先行型市場志向で製品開発が行なわれるようになったと 予測する。まず、反応型市場志向の時代を考察し、反応型市場志向の時代に先行型市場志 向へと移り変わる兆候があったことを確認してから、先行型市場志向の時代を考察する。 仮説 1 市場志向による製品開発手法は、反応型市場志向から先行型市場志向へと移り変 わっているという仮説は、2000 年から 2002 年が反応型市場志向である根拠、2003 年以後 が先行型市場志向である根拠をそれぞれ挙げることで証明する。 中心的な仮説である、仮説 2 先行型市場志向による製品開発を行なうことで、企業は新 市場を創造できるという仮説は、先行型市場志向の時代と先行型市場志向の時代を比較す ることで、顕在的なニーズを扱う既存市場とは異なる、潜在的なニーズをかたちにした、 高級シャンプーという新市場が生まれたことを明らかにする。 仮説 3 先行型市場志向において、広告は潜在的なニーズを顧客に気付かせる役割をもつ という仮説は、2003 年以後先行型市場志向の財代が始まった根拠の中で明らかにする。 5.2 反応型市場志向の時代(2000 年から 2002 年) 2000 年から 2003 年の間は、企業が顧客の顕在的なニーズに忠実であり、反応型市場志向 による製品開発が行なわれていた時代であった。そのように考えるのは、2 つの根拠が存在 する。 5.2.1 根拠 1 顕在的なニーズを対象にした製品開発 反応型市場志向では、顕在的ニーズが対象となる。2000 年から 2002 年の間では、顧客の 顕在的なニーズに着目した製品が多く販売されている。シャンプー・リンス市場の花王、 資生堂の製品を例にすると、顧客の多様化した顕在的ニーズに応えている製品が売り出さ れていることがわかる。 2000 年、カラーリングによる髪のダメージを抑える製品が注目を集め、花王の「エッセ ンシャル・ダメージケア」などが売れた(『日経産業新聞』、2001 年 7 月 27 日、19 頁。)。 これは、「髪のダメージをどうにかしたい」という、顧客が言葉にすることができる顕在的 なニーズが注目を集めたと言える。 2001 年、資生堂は 30 代以降の女性の髪の悩みに「ハリ・コシがない」「柔らかくてスタ イルが決まらない」という声が多いことに着目し、髪にハリやコシを与えるというポリア クリレート―6 と呼ぶ新規成分を開発した(『日経産業新聞』 、2001 年 6 月 25 日、 23 頁。)。 これも、「ハリ・コシがない」「柔らかくてスタイルが決まらない」という、顧客が言葉に することができる顕在的なニーズである。 このように、2000 年から 2002 年の期間に売り出されていた製品に着目すると、顕在的な ニーズを対象にした製品が多く存在することがわかる。そして、この期間の製品は、「カラ ーリングによるダメージケア」、「ハリ・コシを与える」といったように、機能を重視した 製品が多く販売されていることもわかる。 このように、反応型市場志向の時代の根拠として、顕在的なニーズを対象としているこ とがわかる。 5.2.2 根拠 2 価格競争 企業が競って、反応型市場志向による製品開発を行い、同じニーズを追うことで、製品 の同質化が起こり、差別化が困難となって、価格競争に陥るという反応型市場志向の負の 過程は、Narver et al(2004)によって、指摘されている。 シャンプー・リンス市場でも価格競争が起こっており、Narver et al(2004)が指摘した 負の過程に陥っている。製品の特徴を見ていくことで、顕在的なニーズを対象としている ことは明らかになった。この顕在的なニーズを追うことで、ダメージケアできる製品、ハ リ・コシを与える製品、というように、ジャンル分けができるようになった。ジャンルに 分かれると、ジャンルの特徴はわかっても、あるジャンルに属する製品が主張する他の製 品の差というのは、顧客にわかりづらくなる。そうすると、ジャンルごとに製品の同質化 が起こり、差別化は難しくなり、価格競争に陥るのである。これはまさに、Narver et al(2004)が指摘する負の過程である。 しかし、シャンプー・リンス市場で価格競争が起こっているのは、製品の同質化による 差別化困難のためだけではない。他にもステークホルダーである、流通業者と顧客の 2 者 との関係によって、価格競争は起こったのである。 流通業者との関係では、小売企業が力を持つことによって、価格競争が起こったのであ る。価格競争は、2000 年から急に始まったわけではなく、以前から始まっていた。価格競 争を余儀なくされたユニリーバ・ジャパン、資生堂が、小売企業に対抗しようと打ち出し た戦略を見ると、小売企業が価格競争をもたらした原因の 1 つであることがわかる。 2000 年 4 月、資生堂はシャンプーなどファイントイレタリー(FT)部門の商取引慣行を全 面的に見直し、卸・小売企業向けのリベート取引の大半を廃止し、リベート分を差し引い た出荷価格を設定した(『日経産業新聞』、2000 年 4 月 17 日、15 頁。)。資生堂は取引制度 を見直すことによって、小売企業の販売拡大の意識を強めようと試みている。 日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)は、過去に苦い経験を持つ。1986 年に発売した「テ ィモテ」のシェア拡大に伴い、販促金を積み、売上数量を伸ばしたが、店頭価格は急落し、 広告で培ったブランドイメージは崩れ落ちたという苦い経験を繰り返さないために、1996 年に導入した新取引制度で販促金をなくした(『日経 MJ(流通新聞)』、2001 年 9 月 11 日、3 頁。)。販促金を渡し、販売は小売に任せっきりにする従来の方法を、抜け出すための判断 だと言える。 このように、小売企業が力を持っていたことも、価格競争が起こった原因とも言える。 メーカーである企業が、価格競争を抜け出すために、取引制度を見直したことがその根拠 である。 そして、価格競争をもたらした原因として、顧客の詰め替え用への需要の高まりも挙げ られる。その根拠は以下のようである。 顧客の環境志向から、詰め替えタイプの人気が高まっているというのである(『日経産業 新聞』、2001 年 7 月 27 日、19 頁。)。花王は「メリット」において、安売りの象徴となっ ている、詰め替えタイプの販促金をなくし、ポンプタイプに販促金を集中するという選択 をした(『日経 MJ(流通新聞)』、2001 年 9 月 11 日、 3 頁。)。これは、詰め替えタイプがも たらした価格競争を回避しようとしているためである。 顧客にとって、詰め替えタイプは、環境面でも、経済面でも魅力的な製品である。しか し、企業から見ればポンプタイプに比べて、安価で売らなければならないため、価格競争 に陥る原因にもつながる。顧客のニーズを追究するならば、環境に優しく、安価な詰め替 え用を企業は提供するべきでる。しかし、顧客のニーズに従い、詰め替え用に力を入れる と、価格競争に陥り、自分の首を絞めることになる。ここに、企業のジレンマが存在する。 そして、このジレンマこそが価格競争を招く原因の 1 つとなるのである。 ここまで見てきたように、実際にシャンプー・リンス市場では価格競争が起こった。価 格競争が起こった原因は 3 つあり、反応型市場志向による製品開発が行なわれていたこと、 小売企業が力をもっていたこと、顧客の環境意識の高まりである。そして、顕在的なニー ズを対象にしており、その結果価格競争が起こったことから、2000 年から 2002 年の期間は 反応型市場志向による製品開発が行なわれていたことがわかる。 5.3 先行型市場志向への兆候 2000 年から 2002 年の期間は、顕在的なニーズを対象とし、価格競争が起こっていること から、反応型市場志向による製品開発が行なわれていた時代であったと言える。これから、 先行型市場志向に製品開発が始まったとされる 2003 年以後のシャンプー・リンス市場の動 きを見ていく。しかし、2000 年から 2002 年の期間から 2003 年以後に変わることで、突然、 反応型市場志向から先行型市場志向に移り変わったわけではない。反応型市場志向の時代 に先行型市場志向へと移り変わる兆候があったのである。 2001 年 2 月、資生堂の子会社でトイレタリー事業を担当するエフティ資生堂は、ライフ スタイル提案型の新ブランド「ヴィルフランシュ」を発売し、シャンプー、入浴剤、虫よ けスプレーなど 81 品目を投入した(『日経流通新聞』、2000 年 11 月 16 日、13 頁。) 。この 「ヴィルフランシュ」の発売は、反応型市場志向から先行型市場志向へと製品開発の手法 が移り変わる兆候であると言える。 その理由は 2 つある。1 つは、コンセプトやイメージが、情緒性を重視していることであ る。 「ヴィルフランシュ」のコンセプトは、 「アーティスティック・ライフ・フォー・ラヴ」 (愛のための芸術的な生活)である(『日経産業新聞』、2000 年 11 月 24 日 、15 頁。)。また、 地中海をイメージとしており、20 から 30 代の女性をターゲットとし、安らぎやときめきを 感じられるイメージを目指した(『日経流通新聞』、2000 年 11 月 16 日、13 頁。) 。 「アーテ ィスティック・ライフ・フォー・ラヴ」というコンセプトも、安らぎやときめきを感じら れるイメージも、これまで機能を重視してきた反応型市場志向において、異質なものと言 える。なぜなら、「ヴィルフランシュ」のコンセプトとイメージは、いずれも情緒性を重視 したものであるからである。 もう 1 つは、高級シャンプー市場を予期させる高価格設定である。資生堂社長の弦間明 氏は「価格競争から価値競争への転換」を目指し、平均価格が約 500 円(ポンプタイプ:約 500ml)のシャンプーに、680 円という価格を設定した(『日経産業新聞』、2000 年 12 月 5 日、 26 頁。)。高級シャンプーの概要は後述するが、高級シャンプーは平均価格が約 500 円(ポ ンプサイズ:約 500ml)のシャンプーに対して、200 円から 300 円ほど高い高価格帯のシャ ンプーを言われており、 「ヴィルフランシュ」も含まれるのである。つまり、反応型市場志 向の時代に、後に生まれる高級シャンプーに位置づけられる製品が、既に存在していたこ とになる。 「ヴィルフランシュ」は、成功を収めることができなかったが、先行型市場志向への兆 候を表す製品であったことは間違いない。 5.4 先行型市場志向の時代(2003 年以後) 2003 年以後、企業が顧客の潜在的なニーズに訴えかける、先行型市場志向による製品開 発の時代が始まった。そして、先行型市場志向の時代が始まることによって、高級シャン プー市場という新たな市場が創造されたのである。 高級シャンプー市場の概要を説明し、2003 年以後先行型市場志向による製品開発が始ま った根拠を 4 つ挙げる。 5.4.1 高級シャンプー市場の概要 2003 年から始まった先行型市場志向による製品開発によって、高級シャンプーという新 製品が生み出された。 高級シャンプーとは、平均価格が約 500 円(ポンプサイズ:約 500ml)のシャンプーに対し て、200 円から 300 円ほど高い高価格帯のシャンプーをいう。 花王、ユニリーバ・ジャパン、資生堂、P&G の 4 社の内、最初に高級シャンプー市場を開 拓したのは、花王の「アジエンス」である。「アジエンス」は 2003 年 10 月に、550ml のポ ンプサイズで 700 円から 800 円という、当時としては異例の価格で発売された。 2003 年に高級シャンプー市場は開拓されたが、高級シャンプー競争を本格化させたのは、 2006 年 3 月に発売された資生堂の「ツバキ」であった。花王、資生堂の 2 社の動きに追随 したのは、ユニリーバ・ジャパンと P&G である。 ユニリーバ・ジャパンは 2007 年 6 月に「ラックス カラーシャイン」(1000 円前後)、8 月に 50 歳以上の女性向けに「ダヴ プロエイジシリーズ」(900 円前後)、9 月に「ラック ス スーパーリッチシャイン」(800 円前後)を発売した。P&G は 2007 年 3 月に、「パンテ ーン シルキースムースケア」を発売し 、4 月には 1000 円(280ml)を超える「パンテーン クリニケア 毛先までパサついて傷んだ髪用/髪のうねり・くせ用」新発売した。さらに、 9 月には 3 年ぶりの新ブランドとなる「h&s」(800 円から 900 円)を発売した。既にアジエ ンスによって、高級シャンプー市場を開拓した花王は、2007 年 4 月に 3 年半ぶりの中高年 向け新ブランド「セグレタ」を発売し、高級路線を強化した。 このように、2003 年に花王の「アジエンス」によって、高級シャンプー市場は開拓され、 資生堂、ユニリーバ・ジャパン、P&G をはじめとする競合企業が相次いで参入し、高級シャ ンプー市場は活発化したのである。 5.4.2 根拠 1 潜在的なニーズを対象とした製品開発 2003 年以後、顧客の潜在的なニーズに着目した製品が多く販売されている。つまり、先 行型市場志向による製品開発が行なわれていたのである。シャンプー・リンス市場の P&G を例に、潜在的なニーズを対象とした製品開発が行なわれていたことを明らかにする。 P&G ファー・イースト・インク社長、ヴァーナー・ガイスラーは、「弊社は顧客満足を提 供することを目的としている。ヘアケアカテゴリーにおける新しいニーズに着目し、また それに応える製品を発売することはまさに企業目的と言える。ハーバルエッセンスは、弊 社の日本史上最大の投資をもって行う、包括的マーケティング活動とあわせて、日本市場 に新しい旋風を巻き起こし、新規セグメントの市場を創造することだろう」とコメントし ている(2004 年 3 月 2 日、P&G プレスリリース)。同プレスリリースによると、ハーバルエ ッセンスは「快感シャンプー体験」を提供し、 「感情的満足」というニーズを満たす製品で あるという。 P&G 社長、ヴァーナー・ガイスラーのコメントで、「弊社は顧客満足を提供することを目 的としている」とあることから、P&G は市場志向による製品開発を行なっていることがわか る。また、「感情的満足」というのは、石井(1993)が抽象的な目的に含まれる。石井(1993) は、手段(すなわち製品)が目的(すなわち欲望やニーズ)プロを創出するという程度は、顧 客の目的が自己実現や個性的というように抽象的な目的になるほど強くなり、欲望と製品 との結びつきが明確でなくなった場合、製品を消費すること自体が欲望を確定していくと 主張している(石井、1993、p.41)。感情的満足と聞いて、シャンプーがまっさきに浮かぶ 人はほとんどいない。ハーバルエッセンスでシャンプーを行なうこと自体が、 「感情的満足」 というニーズを確定していくのである。潜在的なニーズというのは、顧客自身がまだ気付 いていないニーズであり、製品を消費した後に事後的に確定していくものである。つまり、 「感情的満足」は製品を消費した後に事後的に確定していくニーズであるから、潜在的な ニーズであると言える。 他にも例を挙げると、P&G の調査から、 「現代女性の多くは、 「モテ髪」「愛されヘア」と 名づけられたスタイルに心を惹かれる傾向があり、その理由のひとつは、「友達よりも目立 ち、注目されたい」、「まわりの男性の視線を引きつけたい」という潜在的小悪魔意識だと 考えられる」(2004 年 8 月 10 日、P&G プレスリリース。)という。P&G は同プレスリリース の中で、「思い通りの髪が手に入ったら、いつもより少し大胆になれるし自信がもてる。だ から女性なら憧れる『小悪魔的な行動』をしてみたい」という仮説をたてている。P&G は、 潜在的小悪魔意識という、潜在的なニーズをもとに製品開発を行なっていることがわかる。 P&G の例から、2003 年以後、潜在的なニーズを対象とした製品開発が始まったことがわ かる。 5.4.3 根拠 2 情緒性へのこだわり 情緒性とは、まさに石井(1993)が指摘した、自己実現や個性的というニーズと並ぶ、漠 然としたニーズである。石井(1993)は、手段(すなわち製品)が目的(すなわち欲望やニーズ) プロを創出するという程度は、顧客の目的が自己実現や個性的というように抽象的な目的 になるほど強くなり、欲望と製品との結びつきが明確でなくなった場合、製品を消費する こと自体が欲望を確定していくと主張している(石井、1993、p.41)。この主張に則れば、 情緒性という漠然としたニーズを顧客が持っている場合、製品を消費すること自体が情緒 性というニーズを確定していくと言えるのである。潜在的なニーズというのは、顧客自身 がまだ気付いていないニーズであり、製品を消費した後に事後的に確定していくものであ る。つまり、情緒性も製品を消費した後に事後的に確定していくという意味で、潜在的な ニーズと言えるのである。 情緒性は、シャンプー・リンス市場が高級シャンプー市場という新たな市場を切り拓く 上で、重要な概念である。いかに、情緒性を重要視していたかということを、花王を例に 見ていく。 花王社長、尾崎元規は、「花王はこれまで機能に強みを持った商品開発が得意だった。例 えば、ビューティーケアの商品を見てみると、機能から入っているものが多い。髪をきち んと洗い上げてくれるシャンプーとか、髪形がびしっと決まるスタイリング剤とか。しか し今は機能的な側面だけでなく、もう少し情緒的な要素を取り入れていかなければならな いと考えている。」と語っている(『日経ビジネス』、2007 年 1 月 8 日号、70∼72 頁。)。こ のコメントから、花王が機能重視の製品開発から、情緒性重視の製品開発に移行していく 戦略がわかる。実際に、2003 年に発売した「アジエンス」は、研究成果というシーズから 商品化するケースが多い花王にあって、珍しく、ブランドのコンセプトを先に決めてから 開発した商品であるという(『日経ビジネス』、2003 年 11 月 24 日号、24 頁。)。 社会がゆたかになると、モノが溢れ、機能という顕在的なニーズを追うだけでは、顧客 の潜在的なニーズに応えることはできず、差別化は困難になる。花王は、そのことに気付 き、情緒性に着目した反応型市場志向による製品開発を始めたのだと考える。 5.4.4 根拠 3 大規模な広告投資 先行型市場志向において、広告は重要な役割を果たす。広告について、ガルブレイス (1985)は、宣伝と販売術の目的は欲望を作り出すこと、つまりそれまで存在しなかった欲 望を生じさせることであると指摘している (ガルブレイス、1985、p.215)。ガルブレイス (1985)は、広告の役割はニーズを作り出すこととしている。しかし、先行型市場志向にお ける広告の役割は、顕在的なニーズではなく、潜在的なニーズを顧客に気付かせる役割を 持つと予測する。 実際、2003 年以後に売り出された製品では、大規模な広告投資が行われている。シャン プー・リンス市場の広告活動を、花王の「アジエンス」、ユニリーバ・ジャパンの「ラック ス」、資生堂の「ツバキ」 、P&G の「パンテーン」の、4 社の 4 製品に絞って見ていく。 花王では、これまでなされなかった広告活動が行われた。2003 年、試供品提供やテレビ CM を大量に投入し、9 月には初めて銀座で 1 週間のイベントを開いた(『日経 MJ(流通新聞)』、 2003 年 9 月 17 日、14 頁。)。2004 年 4 月には、カリスマ美容師によるシャンプーとスタイ リングというユニークな体験イベントが行われた(『日経 MJ(流通新聞)』、2004 年 5 月 25 日、1 頁。)。 ユニリーバ・ジャパンでは、既存商品リニューアル後の新たな価値を伝えるために、あ えて情報を絞った広告で勝負した。顧客に実際に商品を手に取ってもらうにはどうすれば いいか。出した答えは、情報量を絞ることで他社と差別化し、注目度を高めるということ だった(『日経 MJ(流通新聞)』、2005 年 1 月 14 日、6 頁。)。同記事をもとに、「ラックス」 の情報を絞った広告活動を見ていく。まず、白い容器の上半分のシルエットのみを広告に 載せ、 「誕生 ラックスを超えたラックス」とだけ訴えた。発売後も情報の抑制姿勢を貫き、 前面に出したのは「明日の髪のダメージまで防ぐ」というメッセージだけであった。その 代わり、コアターゲットとである 16 から 29 歳の女性がなるべく目にするように、至ると ころで商品の広告を出した。 資生堂は、社章である花椿のマークを、ネーミングにもボトルにもあしらった「ツバキ」 に社運をかけていた。その意気込みは、発売初年度 50 億円を投入した広告活動を見るだけ でも伝わってくる。2006 年 3 月には、4 月から流れる SMAP の新曲を起用したテレビ CM に 出演する、6 人の人気女優が東京・原宿の表参道ヒルズで販促イベントを行なった(『日経 MJ(流通新聞)』、2006 年 3 月 31 日、1 頁。)。従来、売り上げが鈍ると値下げで対抗し、 ブランド価値が低下して、さらに売れなくなるという負のサイクルが資生堂のパターンで あった(「資生堂 失速放置の勝算」、『日経ビジネス』、2006 年 12 月 11 日号。)。しかし、 同記事によると、2006 年 10 月、 「日本の女性は美しい」というキャッチコピーとともに、6 人の女優が出演した販売当初の CM に引き続き、「日本の女性にありがとう」とともに 12 人 の女性有名人が登場する新 CM が放映されたのである。この CM によって、「ツバキ」のシェ アは、2006 年 11 月には 10%に迫るまで回復し、資生堂は負のサイクルを抜け出したのであ る。 P&G の「パンテーン」も、既存商品でいかに他社製品と勝負するか悩まされていた。方法 としては、ユニリーバ・ジャパンと同様に、情報を絞ったものであるが、「パンテーン」は 製品の実力で勝負しようとしたのである。2003 年夏、「世界で 1 億 7000 万人もの女性に使 用されてるシャンプー。今は何も言いません」をキャッチコピーとした、異例とも言える 広告活動が 1 ヶ月間行われた(『日経 MJ(流通新聞)』 、2003 年 12 月 23 日、3 頁。)。同記事 によると、商品名を明かさないシャンプーの試供品が全国で 150 万個配布されたほか、 「?」 マークを全面に打ち出したテレビ CM が集中放映されたのだ。これら一連の販促には商品名 を隠すことで、先入観なしで商品自体を判断してもらうという狙いがあった。(『日経 MJ(流 通新聞)』、2003 年 12 月 23 日、3 頁。)。キャンペーン実施後の 2003 年 9 月の販売本数は 実施前の 3 倍になったことから、パンテーンは製品自体が評価されたと言える。 このように、上位 4 社は様々な広告活動を行っていることがわかる。これだけ活発に広 告活動が行われるのは、顧客の潜在的なニーズを刺激し、購買に至らせるためと言える。 5.4.5 根拠 4 組織体制の変革 組織体制を変革することは、全社的な判断が必要であり、経営戦略においても重要な決 断と言える。シャンプー・リンス市場では、組織体制の変革が度々起こっている。「組織は 戦略に従う」というのは、アルフレッド・D・チャンドラーが導き出した命題である。シャ ンプー・リンス市場において、まさに「組織は戦略に従う」であったと言える。ではなぜ、 組織体制の変革が、先行型市場志向に移り変わった根拠であると言えるのかというと、反 応型市場志向から先行型市場志向へと製品開発の手法が移り変わることは、戦略の変化を 表し、変化に適応するために、組織の変革が起こったと言えるからである。 ここで、全社的な組織体制の変革を行なった例として、資生堂の事例を見てみる。2000 年 2 月、資生堂はトイレタリー事業を分社することを決定し、4 月にエフティ資生堂を設立 し、10 月にファイントイレタリー(FT)事業本部を営業譲渡するという決断を下した(『日本 経済新聞 夕刊』、2000 年 2 月 15 日、1 頁。)。つまり、反応型市場志向による製品開発が 行なわれていた時代に、資生堂は組織体制の変革によって、主力の化粧品事業とシャンプ ー・リンス市場が含まれるトイレタリー事業を切り離す決断をしたのである。 この決断の背景には、経営責任の明確化がある。資生堂社長の弦間明氏は、分社化の理 由にについて、「責任を明確化し、独自経営の体質にするのが狙いだ。これまでは化粧品事 業におんぶにだっこという雰囲気が漂っていた。社員もどんぶり勘定的な感覚が強く、コ ストや収益の管理が甘かった。本当の力を発揮するには、ポートフォリオに基づいた経営 スタイルの確立が必要だ」と語っている(『日経流通新聞』、2000 年 9 月 28 日、15 頁。)。 実際、主力の化粧品の営業利益率が 12%程度なのに対し、トイレタリー部門は 4%程度と低 迷していることは事実であった(『日本経済新聞 夕刊』、2000 年 2 月 15 日、1 頁。)。こ の現状を打破するために、資生堂は分社化に踏み切ったと言える。 そして、この分社化において重要な点は、トイレタリー事業では、資生堂ブランドを用 いないという決断をしていることである。トイレタリー事業を担当する FT 資生堂の商品は 資生堂ブランドと切り離されるが、顧客の信頼が得られるかという質問に対し、資生堂社 長の弦間明氏は、「確かに商品の表に資生堂の文字は入らないが、製造元として裏面には表 記する。購買行動を調べると、日本に限らずアジア諸国でも裏面を見て製造元を確認する 顧客が多い。資生堂ブランドには化粧品メーカーとしての(高級な)イメージと、 『品質が保 証されている』というイメージがある。FTS は品質保証という意味で資生堂ブランドを活用 する」と答えている(『日経流通新聞』、2000 年 9 月 28 日、15 頁。)。 この弦間氏の発言は、トイレタリー事業には化粧品メーカーとしての(高級な)イメージ は必要がない、というようにとらえることができる。つまり、この時点では、高級シャン プーという将来の競争に備える準備はしていなかったことになる。 しかし、2006 年 4 月、前田新造社長は「会社をいったんつぶす覚悟」という強い決意で、 国内マーケティング組織を抜本的に改革し、子会社管轄のシャンプー・リンスなど日用品 を本体に取り込み、化粧品事業とトイレタリー事業を一本化した(『日経 MJ(流通新聞)』、 2006 年 3 月 31 日、1 頁。)。2000 年に分社化という決断を行なった資生堂は、わずか 6 年 後に化粧品事業とトイレタリー事業の融合という決断を下したのである。この融合の決断 は、従来の組織体制では、高級シャンプーという新たな市場で生き残れないという危機感 を抱いている証拠とも言える。なぜなら、機能を重視してきた従来のシャンプーとは異な り、高級シャンプーは情緒性を重視するシャンプーであるからである。 これまでの、シャンプー市場では、 「カラーリングによるダメージケア」、「ハリ・コシを 与える」等の機能を訴えた商品が多く、高級なイメージは必要なかった。これに対して、 高級シャンプーでは、顧客の感情的な満足に訴える必要があるため、情緒性は不可欠にな った。しかし、従来の機能を重視した戦略をとって組織では、情緒性を顧客に伝えること は難しくなった。情緒性を重視する上で、資生堂の持つ化粧品ブランドの高級なイメージ は、高級シャンプー競争で有利に働く。そこで、資生堂は化粧品のもつ高級なイメージを、 高級シャンプー競争に活かすために、化粧品事業とトイレタリー事業の融合を行なったの である。 シャンプー・リンス市場では、企業が対象とするニーズが機能中心の顕在的なニーズか ら情緒性中心の潜在的なニーズへと変化し、反応型市場志向から先行型市場志向へと、製 品開発の手法が変化した。ここで、確認すると反応型市場志向と先行型市場志向は、単な る製品開発の手法ではなく、Kohli and Jaworski(1990)や Narver and Slater(1990)の定義 をまとめると、市場という視点から既存および潜在顧客をとらえ、顧客が求める価値を提 供する組織文化なのである。組織文化というのが重要な点である。組織文化が変われば組 織は変わる。よって、組織文化が変われば組織体制の刷新が起こることは当然と言える。 6.仮説の評価 6.1 仮説 1 の評価 反応型市場志向から先行型市場志向への移り変わり 仮説 1、市場志向による製品開発手法は、反応型市場志向から先行型市場志向へと移り変 わっているという仮説は、2000 年から 2002 年が反応型市場志向である 2 つの根拠、2003 年以後が先行型市場志向である 4 つの根拠から、証明できたと言える。ただし、この仮説 は成長市場から成熟市場へと推移する場合と成熟市場が脱成熟を試みる場合にのみ当ては まるという条件つきである。シャンプー・リンス市場の場合、後者に属すると言える。 また、事例では 2000 年から現在までという短期間の動きしか見ていないため、反応型市 場志向から先行型市場志向へと移り変わった後、また反応型市場志向による製品開発へと 戻るという特殊なケースが存在する可能性もないと言えない。その点で、これからのシャ ンプー・リンス市場の動きにも注目する必要がある。 いずれにしても、経済的な制約を除けば、何でも手に入る社会において、顧客は自分が 何を欲しているのかを言葉にできなくなってきていることは、間違いないようである。 6.2 仮説 2 の評価 先行型市場志向と新市場創造 仮説 2、先行型市場志向による製品開発を行なうことで、企業は新市場を創造できるとい う仮説は、機能を重視した顕在的なニーズを扱う反応型市場志向から、情緒性を重視した 潜在的なニーズを扱う先行型市場志向へと製品開発手法が移り変わることで、高級シャン プー市場という新市場が誕生したことから証明されたと言える。 しかし、先行型市場志向の場合、反応型市場志向の場合と比べて、事前に新市場を創造 するという確信を抱きにくいと言える。なぜなら、先行型市場志向によって生み出された 製品は、製品が成功し、外部から評価されることで、潜在的なニーズがあったと事後的に 決定されるため、製品を市場に投入する前に、製品が成功し、新市場を創造することを断 定できないのである。これは、潜在的なニーズの特性上、仕方のないことである。 いずれにしても、既存の顕在的なニーズとは異なる、潜在的なニーズをかたちにするこ とで、新製品開発に成功するだけではなく、新市場を創造することができる可能性は高い と言える。 6.3 仮説 3 の評価 先行型市場志向における広告の役割 仮説 3、先行型市場志向において、広告は潜在的なニーズを顧客に気付かせる役割をもつ というという仮説は、2003 年以後に始まる先行型市場志向の時代に、大規模な広告投資が 行われたことから、証明できると考える。 顕在的なニーズを対象とする反応型市場志向の場合、広告の役割は顧客の顕在的なニー ズに対して、どれだけ自社製品が応えられているかを伝える役割を持っていた。これに対 して、潜在的なニーズを対象とする先行型市場志向の場合、広告の役割は顧客に潜在的な ニーズを気付かせる役割を持っていたのである。 7.結論 本論文では、仮説 1 市場志向による製品開発手法は、反応型市場志向から先行型市場志 向へと移り変わっている、仮説 2 先行型市場志向による製品開発を行なうことで、企業は 新市場を創造できる、仮説 3 先行型市場志向において、広告は潜在的なニーズを顧客に気 付かせる役割をもつ、という 3 つの仮説について、シャンプー・リンス市場を事例として 検討した。 結論を言えば、3 つの仮説は証明されたと言える。ただし、仮説 1 と仮説 2 については、 研究の余地が残っていると言える。 仮説 1 については、成長市場から成熟市場へと推移する場合と成熟市場が脱成熟を試み る場合にのみ当てはまるという条件つきである。また、反応型市場志向から先行型市場志 向へと移り変わった後、また反応型市場志向による製品開発へと戻るという特殊なケース が存在する可能性があるため、今後もシャンプー・リンス市場に注目する必要がある。 仮説 2 については、先行型市場志向の場合、潜在的なニーズは製品が市場に投入された 後に、事後的に確定するという特性を持つことから、反応型市場志向の場合と比べて、事 前に新市場を創造するという確信を抱きにくいという不安要素があることは事実である。 今後の課題としては、先行型市場志向による製品開発が行なわれている、シャンプー・ リンス市場以外の他の市場についても研究する必要があるということである。先行型市場 志向では、製品が市場に投入された後、製品が成功を収めた場合にのみ、事後的に潜在的 なニーズがあったと確定することができるという特性を持つ。先行型市場志向による製品 開発が行なわれた事例を研究することで、潜在的なニーズを的確にとらえるためのヒント が得られる可能性がある。 いずれにしても、先行型市場志向は、反応型市場志向によって顕在的なニーズが製品化 され尽くしたとも言える現代において、市場志向を続ける限り避けることはできない。潜 在的なニーズを的確にとらえることができれば、新市場を創造し、競争優位に立つことが できる可能性が高まる。学問と実際のビジネスが関わりあって、先行型市場志向の精緻化 を行なうことで、先行型市場志向が学問とビジネスにもたらす利益は増えていくはずであ る。 【参考文献】 石井淳蔵 (1993)『マーケティングの神話』日本経済新聞社。 J.K.ガルブレイス (1985)『ゆたかな社会』第 4 版 鈴木哲太郎訳 岩波書店。 『日経産業新聞』、2000 年 4 月 17 日、15 頁、2001 年 6 月 25 日、 23 頁、2001 年 7 月 27 日、 19 頁。 『日経プラスワン』、2001 年 8 月 11 日、1 頁 『日経 MJ(流通新聞)』、2000 年 9 月 28 日、15 頁、2000 年 11 月 16 日、13 頁、2000 年 11 月 24 日、15 頁、2000 年 12 月 5 日、26 頁、2001 年 9 月 11 日、3 頁、2003 年 9 月 17 日、 14 頁、2003 年 12 月 23 日、3 頁、2004 年 5 月 25 日、1 頁、2005 年 1 月 14 日、6 頁、2006 年 3 月 31 日、1 頁。 『日本経済新聞 夕刊』 、2000 年 2 月 15 日、1 頁。 P&G、プレスリリース、2004 年 3 月 2 日、2004 年 8 月 10 日。 「尾崎元規氏[花王社長] ブランドにもっと個性を」、 『日経ビジネス』、2007 年 1 月 8 日 号、70∼72 頁。 「花王 7 年ぶりの新シャンプーに「月のマーク」なし 高級感打ち出し、外資追撃」、『日 経ビジネス』 、2003 年 11 月 24 日号、24 頁。 Kohli, Ajay K. and Bernard J. Jaworski (1990), Market Orientation: The Construct, Research Propositions, and managerial Implications, Journal of Marketing, Vol.54, April, pp.4-6. Narver, John C. and Stanley F. Slater (1990), The Effect of a Market Orientation on Business Profitability, Journal of Marketing, Vol.54, October, p.21. Narver, John C., Slater, Stanley F. and Douglas L. MacLachla (2004), Orientation and New-Product Success, Resposive Market Journal of Marketing, Vol.21, pp.334-347. 評価 論文としてとても良くできていると思います。反応型市場志向と先行型市場志向につい ての研究を確認し、その課題を含めて事例を通じて確認していくというのは、形として整 っています。また、内容についても、時間の中で変化していく重要性や、具体的な手法と しての広告の可能性に注目している点も興味深く思いました。潜在的なニーズと情緒的な 価値がどのように結びついているのか、このあたりをさらに深化させることもできそうで す。
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