国際的な市場間競争の展開 - G-MAC

国際的な市場間競争の展開
(株)野村資本市場研究所 研究主幹
大崎 貞和
2006年 9月
(株)野村資本市場研究所
株式取引所の国際的な再編-1
経営統合提案
欧州
2000年9月
フランス
オランダ
ベルギー
2006年3月
2001年12月買収
(2002年買収完了)
2002年1月
米国
NYSEグループ
ユーロネクスト
NYSEマーケット
株式会社化
ロンドン国際金融
先物取引所(LIFFE)
ポルトガル
リスボン証券取引所
2006年3月統合
2005年11月
(2006年1月買収完了)
MTS
債券
60.37%
MBE
ホールディング
NYSE Arca
電子証券取引所
アーキペラゴ
2001年10月取引
所認可
ユーロネクスト、イタリア
証券取引所の合弁会社
(出所)野村資本市場研究所
2
(株)野村資本市場研究所
株式取引所の国際的な再編-2
LSE株式の25.1%を保有(2006年8月現在)
2006年8月取引
所として業務開始
ロンドン
証券取引所
欧州
英国
ロンドン
EDX London
合弁でデリバティブ取引所創
設(2003年∼)
北欧
OMX
【スウェーデン】
ストックホルム証取
HEX
2001年買収 【エストニア】
タリン
2000年10月 アイスランド証取
2002年買収 【ラトビア】
リガ
2002年
(出所)野村資本市場研究所
2001年3月
(※2003年末解消)ナスダック・ヨーロッパ
2003年3月
(※2003年8月解消)
ナスダック・ドイツ
【フィンランド】
ヘルシンキ証取
【デンマーク】
1999年 コペンハーゲン証取
【ノルウェー】
オスロ証取
2000年6月
ナスダック・ジャパン
(※2002年10月解消)
大証とのJV
EASDAQを
買収
2003年9月統合⇒
OM HEX誕生
2004年8月OMX
に社名変更
NOREX
米国
ナスダック
2004年買収 【リトアニア】
ビルニウス
2004年9月買収完了
2005年12月買収完了
BRUT LLC
Inet
ベルリン、ブレー
メンの各取引
所と合弁で
設立
ECN
ECN
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(株)野村資本市場研究所
株式取引所の国際的な再編-3
ドイツ
取引所
欧州
米国
フランクフルト
SWXグループ
Exchange Place
Holdings
1997年1
月
ユーレックス
米国取引所
持株会社
SWX
スイス証券取引所
2004年設立
2003年買収
バーテックス
2001年にSWXと英国
電子証券取引所トレ
ードポイントとが合弁
で設立。
ユーレックス
US
【デリバティブ市場】
(出所)野村資本市場研究所
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(株)野村資本市場研究所
デリバティブ市場における国際的な再編
上海先物
取引所(SHFE)
シカゴ・マーカンタイル
取引所(CME)
ロンドン国際金融
先物取引所(LIFFE)
ユーロネクスト
2001に友好的買収
2004.3 ドル金利先物を上場
競合
ユーロ・ダラー金利先物
S&P500等各種指数先物
各種通貨先物
2003.3 包括提携
東京証券
取引所
2002 S&P/TOPIX150
先物の24時間取引提携
ドイツ取引所
合弁
スイス取引所
ユーレックス
シカゴ商業
取引所(CBOT)
ユーレックスUS
2004.2 米先物取引所を開
設
台湾先物
取引所
2003.8 提携
競合
米トレジャリー先物
ダウ工業株指数先物
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(株)野村資本市場研究所
近年の取引所再編の動き
„ 米国では、注文執行の迅速性を求める機関投資家からの圧力
とそれを受けた規制の変化(レギュレーションNMS)を背景とし
てECN(PTS)の取り込みが進む。
„ 欧州では先物取引所と現物取引所、国境を越えた現物取引所
の統合が進む。
„ 取引所の統合は市場の統合ではない。各市場は、各国独自の
規制を受け、取引ルールや上場基準の共通化は進まない。
„ 市場に参加する投資家や上場企業から見ると、取引所統合の
意義は不明確だが、経営体としての取引所が事業基盤の安定
化と拡大を目指しているものと理解すべき。
„ 株主からの圧力が再編を後押ししている事実も見逃せない。
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(株)野村資本市場研究所
競争力強化策の限界
„ これまで各国の証券取引所は、様々な競争力強化のための方
策を打ち出してきたが、いずれも決め手に欠ける。
„ 新規上場企業の獲得(国内だけでは限界)。
„ 新商品の開発(ETFやREITが伸びているが)。
„ 取引仕法や取引時間の多様化(取引所よりもPTSが先行)。
„ 取引所間リンク(シンガポール、香港などの試みは成功せず)。
„ 関連ビジネスへの多角化(システム、情報サービスなど)。
„ 自力での競争力強化策に限界を感じ、他市場との統合をめざ
しているという側面もあるのでは。
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(株)野村資本市場研究所
取引所時価総額と株式市場の規模
‹株式会社としての取引所に対する市場の評価(時価総額)は、取引
所が運営する市場の規模だけで決まるものではない。
主要上場取引所のランキング
1
2
3
CME
取引所
時価総額
15,483
市場時価総額
2005年末
-
-
売買代金
2005年
-
-
ドイツ取引所
15,272
(8)
1,221,106
(6)
1,912,327
ニューヨーク証券取引所
12,522
(1)
13,310,592
(1)
14,125,294
ユーロネクスト
9,280
(6)
2,706,803
(5)
2,901,290
(9)
1,054,999
(16)
6
香港取引所
CBOT
6,411
6,306
-
7
4
5
-
-
465,285
-
ロンドン証券取引所
4,701
(4)
3,058,182
(3)
5,673,877
8
ナスダック
3,703
(3)
3,603,985
(2)
10,086,740
9
シンガポール証券取引所
2,592
(22)
257,340
(26)
116,351
(12)
804,015
(13)
672,518
11
オーストラリア証券取引所
OMX
2,407
2,270
(13)
802,561
(11)
950,988
12
大阪証券取引所
1,116
(5)
2,964,298
(20)
215,973
4,572,901
(4)
4,426,622
10
東京証券取引所
-
(2)
ジャスダック証券取引所
-
-
163,612
-
165,544
注) 1. 単位はすべて100万米ドル(取引所時価総額はブルームバーグの為替レート(2006年3月31日)でドル換算)
2. 取引所株の時価総額は2006年3月31日現在の数字(出所はブルームバーグ)
3. 市場時価総額及び売買代金の出所は世界取引所連盟。
4. ( )内はランキング。母集団は世界取引所連盟加盟の取引所。
5.ジャスダック証券取引所の数字は世界取引所連盟が用いている為替レート(1ドル=118.03円)を使ってドル換算。
出所) WFE、ブルームバーグより野村資本市場研究所作成
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(株)野村資本市場研究所
日本の証券取引所にとっての経営課題
„ 先物市場の強化や新商品の開発をどう進めるか。
„ 市場運営業務以外のビジネスへの多角化をどう考えるか。
„ 国際的な市場再編にどう関与していくのか。
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(株)野村資本市場研究所
取引所システムに求められるもの
„ 注文執行の場が多様化する一方、最良執行義務が強調される
中で、大量の小口注文への迅速な対応が求められている。
„ 日本においても、アルゴリズム取引の拡大が予想される。
„ 海外の取引所は処理性能の向上と応答時間短縮を進めている。
„ 機関投資家はダイレクト・マーケット・アクセスを求め、証券会
社の役割が変化していく。
„ いわゆる誤発注問題にもみられるように、取引所の市場監理
の役割は、不公正取引の防止だけではなくなっている。
„ システム化が進む中での市場監理はどのようにあるべきか。
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